説明

供給ユニットの現場再飽和を利用するアンモニアの貯蔵および供給のための方法ならびにデバイス

アンモニアを貯蔵し、かつ、供給するための方法および当該方法を実施するためのデバイスが開示され、当該方法においては、消費によって第2の吸着/吸収物質のアンモニアを使い果たしたとき、コンテナ中の第2のアンモニア吸着/吸収物質用のアンモニア源として、第2のアンモニア吸着/吸収物質よりも、所与の温度で、より高い蒸気圧を有する貯蔵タンク中の第1のアンモニア吸着/吸収物質が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを貯蔵しかつ可逆的に結合および放出できる貯蔵物質からアンモニアを発生させるための方法およびデバイスに関する。特に、貯蔵物質は、可逆的にアンモニアを結合および放出できる固体金属アンミン錯体である。本方法およびデバイスは、NOの選択的接触還元において使用可能である。
【0002】
可搬式あるいは携帯式ユニットにおいて、あるいは液化アンモニアの貯蔵は過度に危険である特殊な化学合成方法において、アンモニアを使用するその他の用途もまた、本発明の実施形態として考えられる。これはまた燃料電池システムを含むが、この場合、アンモニアは効率のよい水素キャリアと見なされる。
【背景技術】
【0003】
特許文献1(本出願人の同時係属出願)に開示されるように、金属アンミン塩はアンモニア用の固体貯蔵媒体として使用できるが、これは、今度は、自動車、ボイラーおよび焼却炉からのNO放出物を低減するための選択的接触還元において還元剤として使用できる。したがって、金属アンミン塩はアンモニア用の固体貯蔵媒体を構成するが、これは、アンモニアの貯蔵および輸送のための安全かつ実用的な選択肢を体現する。これは、尿素あるいはアンモニアの水溶液として供給されるアンモニアを使用するNO除去に比べて有利であるが、これは、大量の留分(通常は65%超)の水が回避されるからである。特に、Mg(NH)Clは高い安全性によって特徴付けられるアンモニア貯蔵物質を体現するが、これは、室温での蒸気圧が0.1bar未満であるからである。それはまた、Mgが軽金属であるので、アンモニアの高い質量密度によって特徴付けられる。特許文献2(本出願人の同時係属出願)には、高い実証済み容積を備えた、さらなる貯蔵物質およびその製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献3は、アンモニアおよび還元触媒を用いた、酸素を含有する排気ガスにおける選択的接触NO還元のための方法およびデバイスを開示している。本方法によれば、ガス状アンモニアは、Ca(NH)ClあるいはSr(NH)Clからなる、好ましくは粒状物質である固体貯蔵媒体を加熱することによって供与される。
【0005】
だが、特許文献3から公知のアンモニア貯蔵媒体の使用には、自動車産業における一般的な使用を妨げる、さまざまな欠点がある。アンモニアを放出するためには物質を加熱する必要がある。これはそれ自体問題ではないが、この物質はかなり揮発しやすく、しかも加熱の制御を失敗した場合には、オーバーヒート状況に至ることが、したがって、100℃未満の温度でさえ、貯蔵コンテナ内のアンモニア圧が非常に高い値に達することがある。
【0006】
Mg(NH)Clの使用は非常に安全性が高く、しかも加熱されたユニットは、1bar超のアンモニア脱離圧を得るために、100℃超の温度に達する必要がある。したがって、MgClからなる脱離ユニットを有することは、熱脱離および安全性の良好な組み合わせである。だが、Mg(NH)Clは、アンモニアを三つのステップで放出する。まず、四つのアンモニア分子が80〜200℃の温度範囲で放出される。最後の二つの分子(単位MgCl当たり)は200℃超の温度で放出され、そしてこれら二つは脱離のためにより多くのエネルギーを必要とする。これは、脱離温度はより高く、しかも脱離エンタルピーは初めの四つの分子に関するそれよりも大きいからである。それゆえ、80〜200℃の温度範囲でのアンモニア放出のみを伴って作動するコンパクトな貯蔵システムは、安全性に関して利点を有する。だが、そうした高い温度まで加熱することを要しない、より揮発しやすい貯蔵物質(たとえばCa(NH)ClあるいはSr(NH)Cl)を含むコンテナは、商業的には興味深いものである。なぜなら、当該コンテナは、使用温度が100℃未満であるという事実によって、ポリマーから製造できるからである。
【0007】
その他のアンモニア吸着/吸収物質も同様の問題を抱えている。すなわち、それらは、低いアンモニア圧を有するので安全であるがアンモニア脱離のために比較的大きなエネルギーを必要とし、あるいは、アンモニア脱離のために少ないエネルギーしか必要としないが、高いアンモニア圧が生じ得るために安全性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/012903号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/081824号パンフレット
【特許文献3】国際公開第99/01205号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、貯蔵ユニットから放出された全てのアンモニアを得るために、たとえば200℃を超えて極めて大量の貯蔵物質を加熱するという難題を伴わずに、低いアンモニア圧を有する、MgClあるいはその他のアンモニア吸着/吸収物質の熱脱離の安全性を併せ持つ新規な技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記望ましい特性の両方をもたらす。それは、より揮発性の高い塩の大型コンテナと、揮発性に乏しい物質を含むがアンモニアを放出するために加熱手段もまた含む、より小さなコンテナとを有することに基づく。加熱期間中、たとえば約1時間の運転中、小さなコンテナが部分的にあるいは完全に脱気されたとき、ユニットは室温まで冷却することが可能であり、これによって二つの貯蔵コンテナ間の圧力勾配が作り出される。二つのコンテナが、間に開閉バルブを備えた接続チューブを有する場合、小型ユニットは大型ユニットからのアンモニアを吸収できる。これは有利であるが、なぜなら、貯蔵容量の大部分は、加熱手段を必ずしも必要としない揮発性貯蔵物質として存在し得るからである。揮発性に乏しい物質の制限された容量を備えた加熱されたコンテナの作動は周期的に利用され、そして使用の間、小型コンテナは、より揮発しやすい物質を含む大型コンテナに対する連結部を開放することによって受動的に再飽和させられる。二つの物質が異なる飽和圧を有する場合、大型のコンテナから小型の(そして部分的にあるいは完全に脱気された)コンテナへのアンモニアの移動のための原動力が存在する。これはまた、脱気期間中に加熱されるシステムに投入されるエネルギーが部分的に回収されることを意味するが、これは、補給(再充填)が固体中に貯蔵されたアンモニアの化学的ポテンシャルにおける勾配を使用して受動的になされるからである。
【0011】
したがって、本発明はアンモニアを貯蔵しかつ供給するための方法に関し、本方法では、消費によって第2のアセンブリ貯蔵物質のアンモニアを使い果たしたとき、第2のアンモニア貯蔵物質用のアンモニア源として、アンモニアを吸着あるいは吸収しかつ脱離させることができる第2のアンモニア貯蔵物質よりも、所与の温度で、より高い蒸気圧を有する、アンモニアを吸着あるいは吸収しかつ脱離させることができる第1のアンモニア貯蔵物質が使用される。
【0012】
好ましくは、上記第1および上記第2のアンモニア吸着/吸収物質は、流体連通状態にある異なるコンテナ内に収容される。好ましくは、この流体連通状態は遮断および回復が可能である。
【0013】
さらに、本発明は、アンモニアを消費ユニットへと供給するためのデバイスに関し、当該デバイスは、
アンモニアを吸収または吸着し、かつ、それを脱離させることが可能な、少なくとも二つの異なるアンモニア貯蔵物質と、
所与の温度にて飽和状態で第1のアンモニア蒸気圧を有する第1のアンモニア貯蔵物質を備えた第1の貯蔵コンテナと、
上記所与の温度にて飽和状態で第2のアンモニア蒸気圧を有する第2のアンモニア貯蔵物質を備えた第2の貯蔵コンテナと、
上記第2の貯蔵コンテナからアンモニアを放出するために上記第2の貯蔵物質を加熱するための加熱手段と、
上記第2の貯蔵コンテナから上記消費ユニットへとガス状アンモニアを運ぶための第1の手段と、
上記第1の貯蔵コンテナから上記第2の貯蔵コンテナへとアンモニアを運ぶための第2の手段と、を具備してなり、
上記第2のアンモニア蒸気圧は上記第1のアンモニア蒸気圧よりも低いものである。
【0014】
したがって、本発明は、たとえば車内に搭載されてもよい、アンモニア貯蔵および供給のためのシステムおよび方法に関し、この場合、貯蔵容量は少なくとも二つのコンテナあるいはコンパートメントへと分割される。当該コンテナあるいはコンパートメントは、異なるアンモニア結合強度を有することを、したがって同じ基準温度で異なるアンモニア蒸気圧を有することを特徴とする異なるアンモニア吸収物質を含んでいる。
【0015】
本発明に係るデバイスは、それゆえ、
a)選ばれたアンモニア吸収物質のより弱い結合エネルギー(より高いアンモニア圧)を有する貯蔵物質中に吸収されたアンモニアを含む貯蔵コンテナすなわちコンパートメントと、
b)(a)からの物質よりもより強いアンモニアの結合エネルギー(より低いアンモニア圧)を有する物質中に吸収されたアンモニアを含む、少なくとも一つの他の貯蔵コンテナすなわちコンパートメントと、
c)アンモニアの所望の脱離圧に達し、これによってコンテナから所望のアンモニア消費プロセスへとアンモニアを放出できるよう物質の温度を上昇させるために、b)における貯蔵物質を加熱するための手段と、
d)より弱い結合のアンモニアを含むコンテナ(a)から脱離させられたアンモニアによって、完全にあるいは部分的に脱気された貯蔵コンテナ(b)内でアンモニアを受動的に再吸収するために、二つの物質の揮発性の差を利用するために、二つのコンテナすなわちコンパートメントを連結するための手段と、を具備してなる。
【0016】
本発明に関する「揮発性の化合物、物質など」とは、相対的に高いアンモニア圧を有する、化合物、物質などを意味する。
【0017】
本発明はまた、NOの選択的接触還元における還元剤としてアンモニアが使用される、上述したような方法およびデバイスに関する。
【0018】
本発明はまた、本発明の原理を利用するシステムおよび他のデバイスおよび方法に関する。これらのシステムおよび他のデバイスおよび方法は、アンモニアを必要とするさまざまなプロセスのための貯蔵および放出コンセプトを利用可能である。そうしたデバイスあるいはシステムは、燃焼プロセスあるいはエンジンからの排気ガスに関するNO低減を伴うことができる。それはまた、貯蔵デバイスあるいはシステムから生み出されたアンモニアで、あるいはアンモニアの接触分解によって生じ得る水素で作動する燃料電池を含んでいてもよい。
【0019】
本発明はまた、より揮発しやすいアンモニア貯蔵物質を収容する大型コンテナを備えたアンモニア放出ユニットの受動的再生の原理の利用方法に関する。小型ユニットの部分的なあるいは完全な気体放出は、大型コンテナから小型ユニットへのアンモニアの移動によって逆転させられる。
【0020】
本発明について、図面を参照して詳細に説明する。アンモニアは、少なくとも一つのユニットから放出可能であり、かつ、少なくとも一つの大型ユニットは、加熱手段を有する小型ユニットにおけるアンモニアの受動的再吸収のための源であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態を示しており、総アンモニア貯蔵容量は二つ以上のコンテナあるいはコンパートメントへと分離させられている。
【図2】本発明の第2の実施形態を示しており、総アンモニア貯蔵容量は二つ以上のコンテナあるいはコンパートメントへと分離させられている。
【図3】本発明の第3の実施形態を示しており、総アンモニア貯蔵容量は二つ以上のコンテナあるいはコンパートメントへと分離させられている。
【図4】図1と類似の図であるが、燃焼式エンジンの排気システムの一部の代わりに、燃料電池およびアンモニア分解触媒を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、還元剤としてアンモニアを使用する選択的接触還元による、たとえばDeNO用の搭載型貯蔵および供給システムのために、たとえば使用可能な、アンモニアの貯蔵および供給のための方法、デバイスおよびシステムに関する。それは、コンパクトな貯蔵ユニットからのアンモニアの制御された投与/供給を必要とする、その他の目的のために使用可能である。
【0023】
本発明の一態様は、アンモニアを貯蔵しかつ供給するための方法であり、当該方法では、第2の吸着/吸収物質のアンモニアを使い果たしたとき、第2のアンモニア吸着/吸収物質用のアンモニア源として、第2のアンモニア吸着/吸収物質よりも、所与の温度で、より高い蒸気圧を有する第1のアンモニア吸着/吸収物質が使用される。
【0024】
本発明の他の態様はアンモニアの貯蔵および供給のためのデバイスであり、この場合、貯蔵容量は少なくとも二つのコンテナあるいはコンパートメントへと分割されるが、当該コンテナあるいはコンパートメントは、異なるアンモニア結合強度を有することを、したがって同じ基準温度で異なるアンモニア蒸気圧を有することを特徴とする異なるアンモニア吸収物質を含んでおり、当該デバイスは、
a)選ばれたアンモニア吸収物質のより弱い結合エネルギーあるいはより高いアンモニア圧を有する貯蔵物質中に吸収されたアンモニアを含む貯蔵コンテナすなわちコンパートメントと、
b)(a)からの物質よりもより強いアンモニアの結合エネルギーあるいはより低いアンモニア圧を有する物質中に吸収されたアンモニアを含む、少なくとも一つの他の貯蔵コンテナすなわちコンパートメントと、
c)アンモニアの所望の脱離圧に達し、これによってコンテナから所望のアンモニア消費プロセスへとアンモニアを放出できるよう物質の温度を上昇させるために、b)における貯蔵物質を加熱するための手段と、
d)より弱く結合されたアンモニアを含むコンテナ(a)から脱離させられたアンモニアによって、完全にあるいは部分的に脱気された貯蔵コンテナ(b)内でアンモニアを受動的に再吸収するために、二つの物質の揮発性の差を利用するために、二つのコンテナすなわちコンパートメントを連結するための手段と、を具備してなる。
【0025】
ある実施形態では、請求項5のステップd)における適当な原動力を実現するために、同じ基準温度で測定した飽和状態で、より高いアンモニア圧を有するアンモニア貯蔵物質、および、より低いアンモニア圧を有するアンモニア貯蔵物質の蒸気圧は、2倍超だけ異なる。
【0026】
さらなる実施形態では、飽和状態で、より高いアンモニア圧を有する貯蔵物質のアンモニア蒸気圧は、室温(298K)で測定して、1bar未満である。
【0027】
さらに他の実施形態では、飽和状態で、より低いアンモニア圧を有する貯蔵物質のアンモニア蒸気圧は、室温(298K)で測定して、0.1bar未満である。
【0028】
ある実施形態では、貯蔵コンテナあるいはコンパートメントの少なくとも一つは、金属アンミン錯体(metal ammine complex)として貯蔵されたアンモニアを収容する。
【0029】
二つの異なるアンモニア貯蔵物質は、一般式:M(NH)の金属アンミン錯体として知られる物質の群から選択可能であり、ここで、Mは、Li、Na、KあるいはCsなどのアルカリ金属、Mg、CaあるいはSrなどのアルカリ土類金属、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuあるいはZnなどの遷移金属、あるいはNaAl、KAl、KZn、CsCuあるいはKFeなどのその化合物から選ばれた少なくとも一つのカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアネート、硫酸塩、モリブデン酸塩およびリン酸イオンから選ばれた少なくとも一つのアニオンであり、aは塩分子当たりのカチオンの数であり、zは塩分子当たりのアニオンの数であり、nは2ないし12の配位数である。
【0030】
飽和状態で、より低い蒸気圧を有する上記あるいはある貯蔵物質は、Mg(NH)Clであってもよい。
【0031】
飽和状態で、より高い蒸気圧を有する上記あるいはある貯蔵物質は、Sr(NH)ClあるいはCa(NH)Clあるいはその組み合わせであってもよい。
【0032】
さらなる実施形態では、飽和状態で、より低い蒸気圧を有する物質は、Mg(NH)Clであり、かつ、飽和状態で、より高い蒸気圧を有する貯蔵物質の一つ以上は、Sr(NH)ClあるいはCa(NH)Clあるいはその組み合わせである。
【0033】
ある実施形態では、飽和状態で、より高い蒸気圧を有する貯蔵物質(より揮発しやすい物質)を含むコンテナ内でのアンモニアの再吸収は(それは周囲温度で維持される)、より低いアンモニア圧を有する加熱されたコンテナからの脱離によるアンモニアの放出中、好適なワンウェイバルブあるいは閉鎖バルブによって阻止される。
【0034】
ある実施形態は、揮発性に乏しい物質を含む加熱されたコンテナからのアンモニアの所望の期間の脱離を、
a)加熱されたコンテナの加熱をやめること、
b)続いて、温かいコンテナを冷やすべく吸熱性のアンモニア放出を利用するために、(a)における加熱をやめた後、過剰なアンモニア圧を有する温かいコンテナから、ある量のアンモニアを吸収するために、二つのコンテナ間のバルブを開放すること、
c)こうして、1bar室温付近あるいはそれ未満のシステムにおける総圧の状態に達することによって、終わらせることによって特徴付けられる。
【0035】
より揮発しやすいアンモニア貯蔵物質を含むコンテナあるいはコンパートメントは、二つのコンテナあるいはコンパートメントが、さもなければ周囲温度で維持される場合、再吸収段階中にアンモニア圧の差を増大させるために、加熱手段を備えていてもよい。
【0036】
二つのコンテナ内の物質が同一である実施形態も考えられ、当該手法は、アンモニア再飽和のための原動力を増大させるために、二つのコンテナあるいはコンパートメントの最大貯蔵容量を有する最大貯蔵ユニットの加熱のための手段を含む。他の実施形態では、それらは、(同じ基準温度で飽和物質として測定して)2倍よりも少ないアンモニア蒸気圧の差を有する。
【0037】
より揮発しやすい貯蔵物質を収容する貯蔵コンテナあるいはコンパートメントは、室温(298K)におけるレベルを上回るアンモニア脱離圧が立ち上がる速度を低減させるために、貯蔵ユニットが温かい環境に、すなわち40〜50℃超の温度に置かれた場合に内部物質の受動加熱の速度を低減するために、断熱処置が施されてもよい。
【0038】
ある実施形態では、アンモニア含有物質は、コンテナの所与の貯蔵容積内にうまく収まるよう、飽和固体物質の理論最大スケルトン密度の75%超の密度を備えた、高密度ブロック、ロッド、円筒リングあるいは立方体のような角のあるユニットへと圧縮されてもよい。
【0039】
脱離アンモニアは、燃焼プロセスすなわちエンジンからの酸素含有排気ガス中のNOの選択的接触還元において使用可能である。
【0040】
ある実施形態では、脱離アンモニアは、燃料電池において燃料として使用されるが、当該使用は、
(a)アンモニアを接触アンモニア分解反応器を通過させ、そしてガス状水素で作動可能な燃料電池へ(任意の精製後に)生み出された水素を供給すること、あるいは
(b)アンモニアによって直接運転可能な燃料電池(たとえば固体酸化物型燃料電池あるいはダイレクトアンモニア型燃料電池)へアンモニアを送り込むことを含んでいてもよい。
【0041】
アンモニア貯蔵物質は、上述した特徴のいずれか、あるいはいくつかを有していてもよい。
【0042】
ある実施形態は、上記第1および/または第2の供給手段を制御するための制御手段を備えた、NO除去システムにアンモニアを供与するためのデバイスを具備し、少なくとも二つの異なる貯蔵物質は脱離によってアンモニアを放出することができる。
【0043】
上記デバイスは、さらに、
a)アンモニアに関して、より低い結合エネルギーを有する第1のアンモニア貯蔵物質を備えた第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)と、
b)アンモニアに関して、より高い結合エネルギーを有する第2のアンモニア貯蔵物質を備えた第2の貯蔵コンテナ(1;1a,1b)と、
c)第2の貯蔵コンテナ(1;1a,1b)からアンモニアを放出させるために、第2の貯蔵コンテナを加熱するための加熱手段(3)と、
d)第2の貯蔵コンテナ(1;1a,1b)からNO除去システム(8)へガス状アンモニアを供給するための第1の手段と、
e)第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)から第2のコンテナ(1;1a,1b)へアンモニアを供給するための第2の手段と、
f)上記第1および/または第2の供給手段を制御するための制御手段と、を備えていてもよい。
【0044】
ある実施形態は、ガス状アンモニアおよびNO還元触媒を使用することによって、燃焼式エンジンあるいは燃焼プロセスの酸素含有排気ガス中のNOの選択的接触還元のためのアンモニアを供給するためのデバイスからなるが、当該デバイスは、異なる揮発性を有する少なくとも二つの異なるアンモニア貯蔵物質中に貯蔵されたアンモニアをベースとし、かつ、当該デバイスはさらに、
a)選択されたアンモニア吸収物質のより弱い結合エネルギーを有する貯蔵物質中に吸収されたアンモニアを含む貯蔵コンテナあるいはコンパートメントと、
b)(a)からの物質よりも、より強いアンモニアの結合エネルギーを有する物質中に吸収されたアンモニアを含む、少なくとも一つの他の貯蔵コンテナあるいはコンパートメントと、
c)所望のアンモニアの脱離圧に達し、これによってコンテナからアンモニアを放出させることができるよう、物質の温度を上昇させるために、(b)における貯蔵物質を加熱するための手段と、
d)加熱されたコンテナからのガス状アンモニアを制御し、そしてそれをNO還元触媒前の排気ライン中に導入するための手段と、
e)最も弱く結合されたアンモニアを含むコンテナ(a)から脱離されたアンモニアを含む完全にあるいは部分的に脱ガスされた貯蔵コンテナ(b)内でアンモニアを受動的に再吸収するために、二つの物質の揮発性の差を利用するために、アンモニア投与期間の終了後、二つのアンモニア貯蔵コンテナあるいはコンパートメントを連結するための手段と、
f)(e)で規定された再吸収プロセスの開始を制御するためのバルブと、を具備してなる。
【0045】
本発明の所望のアンモニア貯蔵能力によってアンモニアを貯蔵しかつ放出する方法の実施形態において、異なるアンモニア貯蔵物質は少なくとも二つのコンパートメントに別個に収用され、貯蔵されたアンモニアの少なくとも半分はより揮発しやすい貯蔵物質として貯蔵され、かつ、続いて揮発性に乏しい物質からアンモニアを放出するために熱脱離が利用され、その後、加熱されたユニットの冷却後の二つの貯蔵物質間の自然発生圧力勾配が、揮発性に乏しいアンモニア貯蔵物質を含むコンテナ内へとアンモニアを再吸収するために使用される。
【0046】
ある実施形態は、選択的接触還元によってNOを除去するために、放出されたアンモニアを燃焼プロセスからの排気ガスへ供給することを備えていてもよい。
【0047】
さらなる実施形態では、放出されたアンモニアは、
a)水素を発生させ、そして水素で作動可能な燃料電池に水素の少なくとも一部を供給するために接触アンモニア分解反応装置へと、あるいは、
b)アンモニアで直接運転できる燃料電池、たとえば固体酸化物型燃料電池すなわちダイレクトアンモニア燃料電池へと供給される。
【0048】
アンモニア吸着/吸収物質は、好ましくは、アルカリアンミン複合塩などの複合アンミン配位化合物から選択される。しかしながら、カーボンあるいはアンモニア吸収ゼオライトに吸着されたアンモニアなど、その他のアンモニア吸着/吸収物質も考えられる。
【0049】
好適なデバイスは、以下のものを備えていてもよい。
1.可逆アンモニア貯蔵(吸着および/または吸収/脱離)が可能な物質を含む主貯蔵タンク。物質は、飽和状態でむしろ揮発しやすいものであるべきである。これは、Ca(NH)ClあるいはSr(NH)Clであってもよく、これは、室温(298K)で、0.1〜1barの範囲の蒸気圧を有する。安全のために、室温で1bar未満の圧力で貯蔵物質を使用することが好ましい。主タンクは、任意選択で、アンモニア放出のための加熱手段を備えることができる。主タンクの全容量は、ユニットがたとえば車におけるDeNO用のアンモニア供給源として使用される場合には、適当な長さの運転期間/距離のための要求に合致すべきである。たとえば、通常の乗用車にNO低減のために貯蔵された3〜5kgのアンモニアによって、15,000ないし40,000kmの航続距離が実現される。
2.主タンク内の貯蔵物質よりも(同じ基準温度で飽和状態で測定して)揮発性に乏しい完全にあるいは部分的に飽和したアンモニア貯蔵物質を含む運転貯蔵ユニット。これは、Mg(NH)Clであってもよい。当該物質は、加熱手段を備えたコンテナ内に配置される。この小さなタンクは、より長い期間にわたって駐車/停車される前に、通常の運転/作動の期間/距離をカバーする容量を有する。乗用車用のそうしたユニットは、50g〜1kgのアンモニアを貯蔵する容量を有するが、エンジンサイズおよび駐車/停車間の所望の作動距離/期間に応じたものよりも大きくても、あるいは小さくてもよい。少なくとも一つのユニットが常に飽和状態であることを保証するために、第2の(おそらくは小型の)ユニットが存在してもよい。運転/作動中、選択的接触還元によるNO還元のために排気ラインにアンモニアを放出するために、アンモニアの適当な脱離圧を得るために、アンモニアは加熱によって小型のユニットから脱気される。
3.システム制御を改善するための、貯蔵ユニットと放出されたアンモニア用の投与バルブとの間の任意のバッファー容積。
4.さらに、投与バルブ、加熱ユニット(項目2)の作動圧を測定するための圧力センサー、MgClベースユニット(項目2)からのアンモニアの熱脱離のためのおよび所望の量のアンモニアの投与のためのパワー供給を制御するためのコントローラーを備えることができる。コントローラーはまた、駐車/停車中に主貯蔵タンクの開放手段を制御できる。
5.それによって(少なくとも二つの)コンテナあるいはコンパートメントが連結される適当な配管。この配管は、タンク間の接続を、そしてタンクからアンモニア消費ユニットに至る接続を制御することを可能とするためのバルブ(シャットオフバルブあるいは適当ばワンウェイバルブ)を備えていてもよい。
【0050】
上記例における作動原理は以下のとおりである。揮発性に乏しい貯蔵物質、たとえばMg(NH)Cl(項目2から)を含む小型ユニットが、好ましくは、決して交換されない固定コンポーネントとして車内に組み込まれる。車が所定時間にわたって、たとえば2時間だけ路上を走行した場合、Mg(NH)Clユニットは所定量のアンモニアを使用し、したがってMg(NH)Cl(ここで、車が駐車のために放置された場合、x<6である)になる。MgClベースユニットが室温まで冷えたとき、Mg(NH)Clユニットにおけるアンモニア圧は、室温における物質の脱離圧まで降下する。これによって、化学発生的真空が形成される。飽和したMg(NH)Clは室温で概ね2mbarのアンモニア圧を有し、かつ、主タンク(これは、Ca(NH)ClあるいはSr(NH)Clあるいはその混合物を含む)は室温で0.1〜1barの圧力を有する。この結果、MgClベースユニットは主タンク内の揮発性貯蔵物質からアンモニアを引き出し、そして小型のMgClベースユニットを補給する。所与の補給時間の後、MgClベースユニットは完全にあるいは部分的に再充填され、そして素早い始動および投与の準備が完了する。
【0051】
たとえば、15,000ないし40,000kmの運行後、主貯蔵タンクは容易に交換できるが、これは、それがたいていは複雑な内部部品および加熱装置を含んでいないからである。概して言うと固体アンモニア貯蔵物質を含むタンクだけである。
【0052】
本発明は、かなりの利点をもたらし、しかも、従来技術に存在する主たる問題を解決する。これは以下に要約するとおりであって、ここでは、車に搭載された本発明に基づくシステムについて度々言及するが、当業者には明らかであるように、これは本発明の実施に関する実例に過ぎない。
【0053】
a)たとえばMg(NH)Clのような極度に安全なアンモニアの貯蔵を専らベースとするシステムとは対照的に、(Mg(NH)ClからMg(NH)Clへと脱離する)最初の四つのアンモニア分子と「協働」し、したがって加熱ユニットの200℃の作動温度未満に留まるだけでよい、という利点が得られる。この小さな、作動ユニットは常に補給され、しかも始動時にはフレッシュである。MgClの最も強く結合された二つのアンモニア分子を脱離させる必要はない。これには200℃超の温度を必要とするであろう。
【0054】
b)Mg(NH)Clよりも高い揮発性を備えた金属アンミン錯体(あるいは他の吸着体/吸収体)は原理上興味深いが、これは、アンモニアは、より少ないパワー消費によって、より低い温度(たとえば40〜100℃)で脱離可能であるからである。これは、専ら、Sr(NH)ClあるいはCa(NH)Clをベースとするシステムとすることができる。だが、100℃付近の温度まで能動的に加熱される車上コンテナ内に大量の揮発しやすい金属アンミン錯体を所持することは過度に危険であると考えられている。なぜなら、8〜15barあるいはそれ以上の圧力に達することがあるからである。本発明によれば、かなり揮発しやすいアンモニア錯体と能動的加熱とを組み合わせる必要はない。化学的に生じる真空によって押しやられるアンモニアは、補給期間中、アンモニアキャリア物質としてMgCl(揮発性に乏しい貯蔵物質)を含む部分的に脱ガスされたコンテナ内へと、より揮発しやすいコンポーネントから受動的に移動する。これは重要なことである。というのは、コンテナ内の大量のより揮発しやすい塩を過熱するリスクを回避できるからである。
【0055】
c)加熱が貯蔵物質全体の一体部分であるシステムとは対照的に、サービスインターバルで交換されることになる、簡素で、大型のタンクが設けられる。このコンテナは常に周囲温度で維持され、かつ、ポリマー素材から構成可能である。
【0056】
d)上述したように、Mg(NH)Clベースアンモニア貯蔵物質を専ら収容するコンテナは非常に安全であると考えられるが、それはまたよりエネルギー要求が厳しいものである。というのは、貯蔵されたアンモニアの1/3は200℃超の温度で気体を放出するからである。本発明によれば、パワー要求が著しく低減されるが、これは、全貯蔵質量の限られた部分だけしか加熱する必要がなく、しかも加熱は200℃未満の温度レベルでなされるからである。さらに、システムが一つの大きなMg(NH)Clタンクをベースとする場合に比べて、下側タンク容積は断熱処理が施される必要がある。本発明では、より揮発しやすいコンポーネントを含む主タンクは、加熱したり、効果的な断熱材内にカプセル化する必要はない。それには、たとえばコンテナを備えた車が直射日光にさらされた状態で(たとえば40〜60℃で)駐車される場合に、受動的加熱速度を低減するために、ある程度の断熱処置が施されてもよい。
【0057】
e)本発明によって、システム能力は、事実上「無限」のものへと拡大される。ベース作動ユニット(上記項目2)が存在するが、これは、全ての通常の運転状況に対応するよう構成され、しかもそれは主タンクに接続される。主タンクは、原理上は、無制限なサイズのものであってもよい。使用中のMgClユニットを補給するための非常に大きな主タンクを製造するための技術的障壁は存在しない。
【0058】
f)本発明に係る現場(in-situ)補充はまた、全ての周囲温度レベルにおいて機能する。室温で二つの物質間に原動力が存在する場合、たとえば−30℃で同様の大きさのものがまた存在する。
【0059】
g)純粋なMgClベースシステムに関する(安全に関する)利点であり、また、ある課題であるのは、システムが駐車されて室温まで冷えたときに達してしまう低い圧力(0.01bar未満)である。これによって、ユニット内には真空が生じるが、それは密封状態を維持しなければならない(あるいは排気ラインからシステムへと空気を逆流させることが、すなわち周囲の空気によってバッファーを最充填することができる)。本発明によれば、冷えたユニット内の圧力は、最も揮発しやすいコンポーネントのレベルで、すなわち室温での周囲圧力を僅かに下回るレベルで維持される。
【0060】
h)運転中、作動ユニット(上記項目2のMgCl)は、排気ラインにアンモニアを放出するために1bar超の圧力で作動させられる。駐車時、排気ラインへの投与バルブは閉鎖され、かつ、メインタンクへのバルブが開放される。これによって、バッファーおよび加熱されたMgClユニットの圧力は急速に降下するが、これは、アンモニアは最初に、メインコンテナの部分的に飽和した揮発性塩内に流入するからである。作動ユニット(MgCl)の冷却後、Mg(NH)Clユニットにおける低い圧力によって、メイン貯蔵タンクからMgClユニット内にアンモニアが再吸収されるのに必要な真空が生じる。この結果、小さなタンクは、駐車後、常に使用可能であり、かつ、再生させられ、しかもユニットは内部圧が過剰な状態で駐車されたままとなることはない。
【0061】
適切な原動力を持つために、同じ温度で完全に飽和した物質に関して測定したアンモニア蒸気圧における差は少なくとも2倍であるべきである。これによって、適切な再補給速度が実現され、かつ、補給中に、アンモニアを供給するユニットが僅かに冷却され、かつ、受け側ユニットが僅かに暖められたときでさえ、勾配が存在することが可能となる。
【0062】
以下、本発明の実施形態を示す図面を参照して、本発明について、さらに詳しく説明する。
【0063】
図1、図2および図3を参照するが、これらは、本発明に基づくシステムの異なる実施形態を示している。
【0064】
図1は、以下で説明する実施形態を示している。
【0065】
揮発性に乏しい貯蔵物質を含むコンテナ1が、断熱処置2が施されたコンテナ内に存在する。このコンテナは加熱手段3を有する。物質1が加熱された際、アンモニアは任意のバッファー5内に放出され、そして圧力センサー10によって圧力が検出される。アンモニアは、投与バルブ13を経て、エンジンすなわち燃焼プロセス7からの排気ライン9内に投与され、続いて、混合ガスは選択的接触還元触媒8(ここで、NOおよびアンモニアは無害種へと変換される)に流入する。
【0066】
アンモニアの放出および投与は、別体のコントローラー11によって、あるいは、さらなる実施形態では、車両のエンジン制御ユニット(EUC)(図示せず)によって制御される。コントローラー11は、センサー10によって検出されたアンモニアの圧力に基づいて、コンテナ1の加熱要素3へのエネルギー供給を制御する。
【0067】
コンテナ1からのアンモニアの放出中(運転中)、加熱されたコンテナ1と、より揮発しやすいアンモニア貯蔵物質を収容する主貯蔵タンク4との間のバルブ12は閉鎖される。これによって、通常作動中は、コンテナ1から主貯蔵タンク4内へのアンモニアの再吸収が回避される。
【0068】
駐車中、投与バルブ13は閉鎖され、そして主貯蔵タンク4へのバルブ12が開放される。これによって、加熱されたユニットは急速に冷えるが、これは、「駐車」中にコントローラー11によって加熱3が終了させられ、かつ、アンモニアの一時的吸熱性脱離は、温かいコンテナを、圧力が大気圧を下回る、より低い温度まで冷却するからである。この後、アンモニアは、主タンク4内の物質からコンテナ1へと移動し、そして次の運転期間のための準備が整うよう、このユニットを満たす。
【0069】
次の使用期間が望まれる場合、バルブ12は閉塞され、かつ、加熱手段3がスイッチオンされ、そして圧力が適切なレベル(すなわち排気ラインの圧力を上回るレベル)に達したとき、投与バルブ13は、エンジンオペレーションによって、あるいは個々のアンモニア消費ユニットによって確定されたデマンドに基いて、コントローラー11によって作動させられる。
【0070】
図2は、図1に提示されたシステムに類似する、さらなる実施形態を示す。図2のシステムにおいては、1a,1bが付された、両方とも加熱3によってアンモニアを放出できる脱ガスのための(必要ならば同一の)二つのユニットが存在する。これによって、作動期間が制限されないシステムが実現されるが、これは、一方のユニット、たとえば1aは、他方1bが主貯蔵タンク4から補給を受けている間に脱ガスされるからである。開閉バルブ12a〜dの適当な構造によって、たとえばユニット1aは、他方1bがユニット4からアンモニアを補給されている間に、排気ラインに脱ガス可能となる。
・コンテナ1aからの脱ガス中、バルブ12bおよび12cは開放され、そしてバルブ12aおよび12dは閉鎖される。これによって、コンテナ1aは脱ガスされながら、アンモニアはユニット4からコンテナ1bへと補給のために供給される。
・コンテナ1bからの脱ガス中、バルブ12bおよび12cは閉鎖され、そしてバルブ12aおよび12dは開放される。これによって、コンテナ1bは脱ガスされながら、アンモニアはユニット4からコンテナ1aへと補給のために供給される。
【0071】
図3は、図1に提示されたシステムに類似する、さらなる実施形態を示す。当該システムは、より揮発しやすい塩の総貯蔵容量が異なるコンテナ4aおよび4bに配分されるよう設計されている。これによって、主貯蔵タンク装置の調整が可能となる。二つのバルブ12eおよび12fによって、確実に、システムコントローラーが脱ガスユニット1の補給のために二つの(あるいは潜在的にはそれ以上の)ユニット間で選択可能となる。
【0072】
図2および図3のシステムには、コントローラー11および圧力センサー10(図1参照)が示されていないが、図2および図3のシステムはいずれもまた、圧力センサー10およびコントローラー11を含んでいてもよい。制御はまた、車両のECUによってなされてもよい。
【0073】
図1ないし図3に示す主貯蔵コンテナ4;4a,4bは、−40℃ないし70℃の作動温度を維持するために断熱材を備える。貯蔵物質の温度を作動温度範囲内に維持するために、任意の温度制御手段(図示せず)が設けられてもよい。
【0074】
第2の貯蔵コンテナ1;1a,1b用の加熱手段は、独立した熱源(たとえば電気式)によって、および/または燃焼式エンジンからの廃熱によって機能させることができる。同じことが、第1の貯蔵コンテナ4;4a,4bの温度制御手段(図示せず)にも当てはまる。
【0075】
バルブ12;12aないし12d;12e,12fおよび13は、第1および第2の貯蔵コンテナ4;4a,4bおよび1;1a,1b間での、あるいは第2の貯蔵コンテナ1;1a,1bからアンモニア消費ユニット8,9あるいはバッファー5への、所望のアンモニア流量を実現しかつそれを制御するのに適した、いかなるタイプのもの(たとえば、チェックバルブ、制御バルブ、スロットルバルブ、ワンウェイバルブ)であってもよい。所望のアンモニア流量の制御を改善するために、さらなる圧力センサー10および/または流量検出手段(図示せず)を設けることができる。
【0076】
以下、図1のシステムのさらなる代表的実施形態について説明する。
【0077】
加熱可能な貯蔵タンクは、500gの貯蔵物質(Mg(NH)Cl)を収容し、かつ、大型ユニット(4)は10kgのSr(NH)Cl(Ca(NH)Clであってもよい)を収容する。
【0078】
現代的なエンジンを備えた普通の乗用車は、1キロメートル運転当たり概ね0.2〜0.4gのNOを除去する必要がある。0.3gのNOの質量が、NO低減のための、0.3g/km×17/30=0.17gNH/kmの消費に相当すると考えられる。こうした諸元を仮定すれば、上記のとおり形成されたシステムは以下の航続距離を実現する。
・[500gMg(NH)Cl]×[0.517gNH/gMg(NH)Cl]/[0.17gNH/km]=専ら小型ユニットをベースとする1520kmの航続距離
・[10,000gSr(NH)Cl]×[0.462gNH/gMg(NH)Cl]/[0.17gNH/km]=大型ユニットをベースとする27200kmの航続距離
【0079】
60km/hrの平均速度でのアンモニアの流量は、概ね0.3g/km×60km/hr=18gNH/hrである。これは、一時間の作動によって、MgClベースユニットから18gのNHが放出されることを意味する。したがって、ほんの18gあるいは25リッターよりも僅かに少ないガスが、大型ユニットから小型ユニットへと、後者内の貯蔵物質を完全に飽和させるために移動する必要がある。0.5リッターNH(g)/分の適当な移送速度を仮定すれば、完全な再充填のためには、僅か50分の駐車が必要なだけである。いくらかの運転間隔の間に完全な補給が完了しなくても、一定時間の補給が必要になる前に依然として1000km超の運転が可能である。
【0080】
図4は図1に類似した図であるが、それは、燃焼式エンジンの排気システムの一部分の代わりに、燃料電池15およびアンモニア分解(クラッキング)触媒14を示している点で相違する。
【0081】
本明細書において引用した全ての特許、特許出願および刊行論文は、その全体が、この引用によって本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 コンテナ
2 断熱処置
3 加熱手段
4 主貯蔵タンク
5 バッファー
7 エンジン
8 接触還元触媒
9 排気ライン
10 圧力センサー
11 コントローラー
12 バルブ
13 投与バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを消費ユニット(8,9)へと供給するためのデバイスであって、
アンモニアを吸収または吸着し、かつ、それを脱離させることが可能な、少なくとも二つの異なるアンモニア貯蔵物質と、
所与の温度にて飽和状態で第1のアンモニア蒸気圧を有する第1のアンモニア貯蔵物質を備えた第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)と、
前記所与の温度にて飽和状態で第2のアンモニア蒸気圧を有する第2のアンモニア貯蔵物質を備えた第2の貯蔵コンテナ(1;1a,1b)と、
前記第2の貯蔵コンテナ(1;1a,1b)からアンモニアを放出するために前記第2の貯蔵物質を加熱するための加熱手段(3)と、
前記第2の貯蔵コンテナ(1;1a,1b)から前記消費ユニット(8,9)へとガス状アンモニアを運ぶための第1の手段(5,10,13)と、
前記第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)から前記第2の貯蔵コンテナ(1;1a,1b)へとアンモニアを運ぶための第2の手段(12;12a,12b,12c,12d;12e,12f)と、を具備してなり、
前記第2のアンモニア蒸気圧は、前記第1のアンモニア蒸気圧よりも低いものであることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
同じ基準温度で測定した前記第1のアンモニア貯蔵物質および前記第2のアンモニア貯蔵物質の前記蒸気圧は2倍超だけ異なることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
同じ基準温度で測定した前記第1のアンモニア貯蔵物質および前記第2のアンモニア貯蔵物質の前記蒸気圧は2倍以下だけ異なることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1の貯蔵物質の前記アンモニア蒸気圧は室温(298K)で測定して1bar未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の貯蔵物質の前記アンモニア蒸気圧は室温(298K)で測定して0.1bar未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも二つの貯蔵物質のうちの少なくとも一方は、金属アンミン錯体であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記金属アンミン錯体は一般式:M(NH)のものであり、ここで、Mは、Li、Na、KあるいはCsなどのアルカリ金属、Mg、CaあるいはSrなどのアルカリ土類金属、および/またはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuあるいはZnなどの遷移金属、あるいはNaAl、KAl、KZn、CsCuあるいはKFeなどのその化合物から選ばれた少なくとも一つのカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアネート、硫酸塩、モリブデン酸塩およびリン酸イオンから選ばれた少なくとも一つのアニオンであり、aは塩分子当たりのカチオンの数であり、zは塩分子当たりのアニオンの数であり、nは2ないし12の配位数であることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第2のアンモニア貯蔵物質は、Mg(NH)Clであることを特徴とする請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1のアンモニア貯蔵物質は、Sr(NH)ClあるいはCa(NH)Clあるいはその組み合わせであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2のアンモニア貯蔵物質は、Mg(NH)Clであり、かつ、前記第1のアンモニア貯蔵物質は、Sr(NH)ClあるいはCa(NH)Clあるいはその組み合わせであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2のアンモニア貯蔵コンテナ(1;1a,1b)からのアンモニアの放出の間、前記第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)内へのアンモニアの吸収は、好適なワンウェイバルブあるいは閉鎖バルブ(12)によって阻止されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)は、さらに、加熱手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)には断熱処理が施されていることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1および/または第2のアンモニア貯蔵物質は、飽和固体アンモニア貯蔵物質の理論最大スケルトン密度の75%超の密度を備えたユニットへと圧縮されていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
脱離アンモニアは、燃焼プロセスすなわちエンジン(7)からの酸素含有排気ガス中のNOの選択的接触還元のための触媒(8)へと供給されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
脱離アンモニアは、
(a)直接的に、あるいは
(b)アンモニアを水素および窒素へと分解するための接触アンモニア分解反応装置を介して、
燃料電池へと供給されるようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1の供給手段(5,10,13)および/または第2の供給手段(12;12a,12b,12c,12d;12e,12f)を制御するための制御手段(11)を用いて、NO除去システム(8)へアンモニアを供給するための請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第1の貯蔵コンテナ(4;4a,4b)からのガス状アンモニアを制御し、かつ、それをNO低減触媒(8)前の排気ライン(9)中へと導入するための手段(5,10,11,13)と、
前記第1のアンモニア貯蔵コンテナ(4;4a,4b)と前記第2のアンモニア貯蔵コンテナ(1;1a,1b)とを連結するための手段(12;12a,12b,12c,12d;12e,12f)と、を具備してなることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1のアンモニア貯蔵コンテナ(4;4a,4b)と前記第2のアンモニア貯蔵コンテナ(1;1a,1b)とを連結するための手段(12;12a,12b,12c,12d;12e,12f)はバルブ(12)を具備してなることを特徴とする請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
アンモニアを貯蔵しかつ供給するための方法であって、アンモニアを吸収または吸着し、かつ、それを脱離させることが可能な第2のアンモニア貯蔵物質よりも、所与の温度にて、より高いアンモニア蒸気圧を有する、アンモニアを吸収または吸着し、かつ、それを脱離させることが可能な第1のアンモニア貯蔵物質が、消費によって前記アンモニア貯蔵物質のアンモニアを使い果たしたとき、前記第2のアンモニア貯蔵物質用のアンモニア源として使用されることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記第1および前記第2のアンモニア貯蔵物質は、流体連通状態にある異なるコンテナ内に収容されていることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記流体連通状態は遮断および回復可能であることを特徴とする請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
同じ基準温度で測定した前記第1のアンモニア貯蔵物質および前記第2のアンモニア貯蔵物質の前記蒸気圧は2倍超だけ異なることを特徴とする請求項20ないし請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
同じ基準温度で測定した前記第1のアンモニア貯蔵物質および前記第2のアンモニア貯蔵物質の前記蒸気圧は2倍以下だけ異なることを特徴とする請求項20ないし請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の貯蔵物質の前記アンモニア蒸気圧は室温(298K)で測定して1bar未満であることを特徴とする請求項20ないし請求項24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の貯蔵物質の前記アンモニア蒸気圧は室温(298K)で測定して0.1bar未満であることを特徴とする請求項20ないし請求項25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも二つの貯蔵物質のうちの少なくとも一方は、金属アンミン錯体であることを特徴とする請求項20ないし請求項26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記金属アンミン錯体は一般式:M(NH)のものであり、ここで、Mは、Li、Na、KあるいはCsなどのアルカリ金属、Mg、CaあるいはSrなどのアルカリ土類金属、および/またはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuあるいはZnなどの遷移金属、あるいはNaAl、KAl、KZn、CsCuあるいはKFeなどのその化合物から選ばれた少なくとも一つのカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアネート、硫酸塩、モリブデン酸塩およびリン酸イオンから選ばれた少なくとも一つのアニオンであり、aは塩分子当たりのカチオンの数であり、zは塩分子当たりのアニオンの数であり、nは2ないし12の配位数であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2のアンモニア貯蔵物質は、Mg(NH)Clであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のアンモニア貯蔵物質は、Sr(NH)ClあるいはCa(NH)Clあるいはその組み合わせであることを特徴とする請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のアンモニア貯蔵物質は、Mg(NH)Clであり、かつ、前記第1のアンモニア貯蔵物質は、Sr(NH)ClあるいはCa(NH)Clあるいはその組み合わせであることを特徴とする請求項29または請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1および/または第2のアンモニア貯蔵物質は、飽和固体アンモニア貯蔵物質の理論最大スケルトン密度の75%超の密度を備えたユニットへと圧縮されていることを特徴とする請求項20ないし請求項31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
脱離アンモニアは、燃焼プロセスすなわちエンジンからの酸素含有排気ガス中のNOの選択的接触還元のための触媒へと供給されることを特徴とする請求項20ないし請求項32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
脱離アンモニアは、
(a)直接的に、あるいは
(b)アンモニアを水素および窒素へと分解するための接触アンモニア分解反応装置(14)を介して、
燃料電池(15)へと供給されることを特徴とする請求項20ないし請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記流体連通状態は、前記第2のアンモニア貯蔵物質がアンモニアの脱離のために加熱されている間は遮断され、かつ、前記流体連通状態は、加熱を止めたときに回復させられることを特徴とする請求項22ないし請求項34のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−513004(P2010−513004A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541923(P2009−541923)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011502
【国際公開番号】WO2008/077652
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(506320842)
【Fターム(参考)】