侵入検知装置
【課題】セキュリティを維持しながら利用者の利便性を向上可能な侵入検知装置を提供する。
【解決手段】記憶部23は、侵入検知エリア、重要物が存在する重要エリア、計測を妨げる遮蔽物の存在を検知するための遮蔽検知エリアを記憶する。変化領域抽出部242は撮像部21により重要物とその外周を含む侵入検知エリアを所定時間おきに計測して得た異なる時点の計測信号を比較して変化領域を抽出し、変化領域追跡部243は各時点の変化領域の抽出位置から移動距離を算出する。侵入判定部244は、侵入検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が予め設定された静止判定距離以上であると侵入者の存在を判定する。遮蔽検知エリアは重要エリアの周囲にて侵入者が静止判定距離を移動するときの移動距離を算出可能な範囲に設定され、遮蔽判定部245は、遮蔽検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が静止判定距離未満であると遮蔽物の存在を判定する。
【解決手段】記憶部23は、侵入検知エリア、重要物が存在する重要エリア、計測を妨げる遮蔽物の存在を検知するための遮蔽検知エリアを記憶する。変化領域抽出部242は撮像部21により重要物とその外周を含む侵入検知エリアを所定時間おきに計測して得た異なる時点の計測信号を比較して変化領域を抽出し、変化領域追跡部243は各時点の変化領域の抽出位置から移動距離を算出する。侵入判定部244は、侵入検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が予め設定された静止判定距離以上であると侵入者の存在を判定する。遮蔽検知エリアは重要エリアの周囲にて侵入者が静止判定距離を移動するときの移動距離を算出可能な範囲に設定され、遮蔽判定部245は、遮蔽検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が静止判定距離未満であると遮蔽物の存在を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリアを計測して侵入者を検知するとともに計測を妨害する遮蔽物の存在を検出する侵入検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
侵入者を検知するための画像センサー等では、侵入者の検知を継続的に行うために、その視野の一部または全部を遮る遮蔽物等の存在を異常検知していた。
【0003】
特許文献1に記載の画像センサでは、監視領域の画像を区分した判定ブロックごとに現画像と基準画像との類似度が判定され、類似度の小さい判定ブロック数が所定数以上であれば画像センサの視野を遮る障害物が置かれたなどの異常があると判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−194866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来技術においては、侵入者の存在を検知するための監視エリアと遮蔽物の存在を検知するための監視エリアとが同一であった。そのため、居住者等の正規利用者が監視エリアに所有物などの物品を置いても当該物品の存在が異常と判定され得るため、利用者の利便性を低下させる可能性があった。
【0006】
またこのことは、利用者の利便性を優先して物品設置可能なエリアを設ければ監視エリアを狭くすることになり、セキュリティを優先して監視エリアを広くすれば利用者の利便性を低下させる、というトレードオフを生じさせていた。
【0007】
さらに、このような利用者の利便性とセキュリティとのトレードオフを満たす監視エリアの確実な設定にはスキルと時間を要していた。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、セキュリティを維持しながら利用者の利便性を向上可能な侵入検知装置を実現することを目的とする。
【0009】
また本発明は、利用者の利便性とセキュリティのトレードオフを満たす監視エリアの設定を容易且つ確実に行なうことが可能な侵入検知装置を実現することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、本発明は、重要物とその外周を含む侵入検知エリアへの侵入者を検知する侵入検知装置であって、侵入検知エリアを所定時間おきに計測して計測信号を出力する計測部と、侵入検知エリア、重要物が存在する重要エリア、及び計測を妨げる遮蔽物の存在を検知するための遮蔽検知エリアを記憶する記憶部と、互いに異なる時点の計測信号を比較して変化領域を抽出する変化領域抽出部と、各時点における変化領域の抽出位置から移動距離を算出する移動距離算出部と、侵入検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が予め設定された静止判定距離以上であることに基づいて侵入者の存在を判定する侵入判定部と、遮蔽検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が静止判定距離未満であることに基づいて遮蔽物の存在を判定する遮蔽判定部と、を備え、遮蔽検知エリアは、重要エリアの周囲にて侵入者が静止判定距離を移動するときの移動距離を算出可能な範囲に設定されたことを特徴とする侵入検知装置を提供する。
【0011】
かかる侵入検知装置において、遮蔽検知エリアは侵入者が重要エリアの周囲にて所定時間で移動可能な範囲に設定されることが好ましい。これによれば、その計測間隔にて刻まれる1時刻の間に侵入者が移動可能な距離が静止判定距離より大きな計測部を用いて構成される侵入検知装置において好適な遮蔽検知エリアを設定できる。
【0012】
また、遮蔽検知エリアは侵入者が重要エリアの周囲にて静止判定距離を移動する範囲に設定されることが好ましい。これによれば、その計測間隔にて刻まれる1時刻の間に侵入者が移動可能な距離が静止判定距離以下の計測部を用いて構成される侵入検知装置において好適な遮蔽検知エリアを設定できる。
【0013】
また、計測部は侵入検知エリアを撮像して画像を出力し、さらに、画像を表示して当該表示上で重要エリアを入力可能な設定入力部と、設定入力部から入力された重要エリアを基準にして遮蔽検知エリアを算出する監視エリア設定部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、侵入検知エリアと遮蔽検知エリアを分けて侵入検知エリアを狭くすることなく侵入検知エリアより狭い遮蔽検知エリアを設定できるので、セキュリティを維持しつつ利用者の利便性向上を図ることが可能な侵入検知装置を実現できる。
【0015】
また本発明によれば、視認容易な重要エリアを設定入力すれば遮蔽検知エリアが自動設定されるので、監視エリアの設定を容易且つ確実に行なうことが可能な侵入検知装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】外周監視システム1の全体構成を表すブロック図である。
【図2】画像センサー2の構成を表すブロック図である。
【図3】建物とその外周を撮像した監視画像を例示したである。
【図4】図3の監視画像に対して設定された建物エリアを例示した図である。
【図5】図3の監視画像に対して設定された侵入検知エリアを例示した図である。
【図6】図3の監視画像に対して設定された遮蔽検知エリアを例示した図である。
【図7】幅W、高さH、静止判定距離Tdを説明する模式図である。
【図8】図3の監視画像に対して設定された別の遮蔽検知エリアを例示した図である。
【図9】事前設定処理を説明するフローチャートである。
【図10】画像監視処理を説明するフローチャートである。
【図11】異常判定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の侵入検知装置の好適な実施形態の一例として、建物外周を監視し、侵入者および遮蔽物を検知すると警備センターに通報する外周監視システム1について説明する。
【0018】
[外周監視システム1の構成]
図1は外周監視システム1の全体図である。外周監視システム1は画像センサー2、認証装置3、携帯端末4、コントローラー5及びセンター装置6を含んで構成される。
【0019】
画像センサー2及び認証装置3は通信線を介してコントローラー5に接続され、コントローラー5は電話回線又はインターネット回線等の広域通信網を介して警備センター等の遠隔地に設置されたセンター装置6と接続される。
【0020】
画像センサー2は屋外に設置されて侵入検知エリアである建物外周を監視する。画像センサー2は、侵入検知エリアへの侵入者を検知すると侵入異常信号を出力し、侵入検知エリアの一部に重ねて設定された遮蔽検知エリアにて侵入者の検知を阻害する遮蔽物を検知すると遮蔽異常信号を出力する。画像センサー2が出力したこれらの異常信号はコントローラー5を介してセンター装置6に送信される。
【0021】
認証装置3は侵入検知エリア内の携帯端末4と通信を行なうことにより侵入検知エリア内の居住者や従業員などの正規利用者を認証する。正規利用者が所持する携帯端末4は予め認証装置3に登録され、認証装置3は登録された携帯端末4を検出すると認証信号をコントローラー5経由で画像センサー2に出力する。画像センサー2は人を検知したときに認証信号の有無を参照して正規利用者か侵入者かを判別する。
【0022】
図2は画像センサー2の構成を示したブロック図である。画像センサー2は撮像部21、設定入力部22、記憶部23及び通信部25が制御部24に接続されてなる。
【0023】
撮像部21は侵入検知エリアを所定時間おきに計測して計測信号を出力する計測部である。撮像部21は監視カメラで実現され、侵入検知エリアを臨むように3〜4m程度の高さにその光軸を斜め下方に向けて固定設置される。撮像部21は、侵入検知エリアを例えば1/5秒間隔で撮像して監視画像を出力し、監視画像を制御部24に順次出力する。以下、この時間間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。
【0024】
図3は建物101とその外周を撮像した監視画像100を例示したものである。ちなみに図中の102は視野内の敷地外部分である。
【0025】
設定入力部22は画像センサー2にて用いられる各種設定を入力するインターフェース装置である。設定入力部22は、外周監視システム1の運用前に通信部25と一時的に接続されて制御部24との間で通信を行なう。設定入力部22にて入力された設定は制御部24を介して記憶部23に記憶される。
【0026】
設定入力部22は液晶タッチパネル等の入力表示手段及び通信手段を備え、撮像部21から受信した監視画像を表示して表示上で指示された位置を重畳表示し、また当該位置を制御部24に送信することができる。
【0027】
なお設定入力部22をコントローラー5に接続し、設定入力部22と制御部24とがコントローラー5及び通信部25を介して通信を行なう構成とすることもできる。
【0028】
記憶部23は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。記憶部23は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部24との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、カメラパラメーター231、建物エリア232、侵入検知エリア233、遮蔽検知エリア234、背景画像235及び変化領域情報236が含まれる。
【0029】
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal
Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置を用いて構成され、記憶部23からプログラムを読み出して実行することで監視エリア設定部241、変化領域抽出部242、変化領域追跡部243、侵入判定部244及び遮蔽判定部245として機能する。
【0030】
通信部25はコントローラー5との間の通信回路及びドライバソフトフェアから構成され、通信部25の一方には制御部24、他方にはコントローラー5及び設定入力部22がそれぞれ接続される。制御部24からの異常信号等は通信部25を介してコントローラー5に送信され、コントローラー5からの認証信号等は通信部25を介して制御部24に入力される。また通信部25に設定入力部22が接続されたとき、撮像部21からの監視画像は制御部24及び通信部25を介して設定入力部22に送信され、設定入力部22からの設定情報等は通信部25を介して制御部24に入力される。
【0031】
以下、記憶部23に記憶されるカメラパラメーター231、建物エリア232、侵入検知エリア233、遮蔽検知エリア234、背景画像235及び変化領域情報236について説明する。
【0032】
カメラパラメーター231は、撮像部21の設置位置及び撮像方向といった外部パラメーター、撮像部21の焦点距離、画角、レンズ歪みその他のレンズ特性や、撮像素子の画素数といった内部パラメーターを含む。実際に計測するなどして得られたこれらのパラメーターが予め設定されて記憶部23に記憶されている。公知のピンホールカメラモデル等のカメラモデルにカメラパラメーター231を適用することにより、監視画像中の画素位置を撮像部21の撮像面における座標(撮像面座標)と実空間における座標(実座標)との間で座標変換することが可能となる。以下、カメラパラメーター231を用いた撮像面座標から実座標への変換を逆透視変換、カメラパラメーター231を用いた実座標から撮像面座標への変換を透視変換と称する。
【0033】
建物は本外周監視システム1において侵入者が侵入の目的とするものであり監視上の重要物である。本外周監視システム1において重要物が存在する重要エリアは建物エリア232である。建物エリア232は管理者により設定入力部22から監視画像中の画像領域として設定入力されて撮像面座標で記憶部23に記憶される。建物エリア232を基準として遮蔽検知エリア234が算出される。
【0034】
図4は、図3の監視画像100に対して設定された建物エリア111を例示したものである。
【0035】
侵入検知エリア233は本外周監視システム1が侵入者の存在を異常として検知する領域である。侵入検知エリア233は、特に指定のない限り撮像部21の視野全体となるが、管理者により設定入力部22から無監視エリアが設定入力された場合は撮像部21の視野から無監視エリアを除いた領域となる。侵入検知エリア233は監視画像中の画像領域として撮像面座標で記憶される。
【0036】
図5は、図3の監視画像100に対して設定された侵入検知エリア121を例示したものである。敷地外部分102と対応する部分が除かれて侵入検知エリア121が設定されている。
【0037】
遮蔽検知エリア234は侵入検知エリア233において遮蔽物の存在及び侵入者の存在を異常として検知する領域である。遮蔽検知エリア234は、侵入検知エリア233内の建物エリア232を囲んで侵入検知エリア233よりも狭く設定され、監視画像中の画像領域として撮像面座標で記憶される。遮蔽検知エリア234は建物エリア232を基に自動算出されて記憶部23に記憶される。
【0038】
図6において太線で囲まれた領域は、図3の監視画像100に対して設定された遮蔽検知エリア131の例である。図中の点線は建物エリア111の輪郭線である。実座標において建物エリア111を囲む幅W、高さHの範囲が算出され、この範囲が撮像面座標に変換されて遮蔽検知エリア131が設定される。
【0039】
図7は遮蔽検知エリアの幅Wと静止判定距離Tdと計測間隔(撮像間隔)の関係及び遮蔽検知エリアの高さHを説明する模式図である。図中のVは侵入者が計測間隔で刻まれる1時刻に移動可能な距離である。移動可能距離Vは高速移動する侵入者すなわち走り抜ける侵入者を想定して設定される。距離Vは計測間隔に依存する値である。また図中のSは侵入者の最大幅である。幅Sは前傾姿勢をとる侵入者すなわち走り抜ける侵入者を想定して設定される。静止判定距離Tdは移動物体である侵入者と静止物体である遮蔽物を弁別するために変化領域の移動距離と比較される閾値である。静止判定距離Tdは例えば0.5mに設定される。
【0040】
遮蔽検知エリアの幅Wは、計測信号(監視画像)に基づいて侵入者を検知可能な最小限度の幅、換言すると侵入者が静止判定距離Tdを移動するときの移動距離を算出可能な最小限度の幅に設定される。最小限度の幅に設定するのは、幅Wが正規利用者による物品の設置を制限する値でもあるため、できる限り狭い方が正規利用者にとって利便性が高くなるからである。幅Wの設定方法には計測間隔の長短によって以下の2通りの方法がある。
【0041】
幅Wの設定方法のひとつは計測間隔が長い場合すなわち移動可能距離Vが静止判定距離Tdより大きな場合の設定方法である。図7(a)はV>Tdの場合の設定を説明する図である。この場合、幅Wは少なくとも連続する2時刻において侵入者を計測可能な距離に設定される。つまり幅Wは計測間隔に侵入者が移動可能な距離に対応する幅に設定される。具体的には幅Wは移動可能距離Vに侵入者の最大幅Sを加えた幅(例えば2m)に設定される。侵入者の最大幅Sを加えるのは追跡処理において変化領域の特徴量を正しく抽出可能なことを保証するためである。
【0042】
幅Wの設定方法のもうひとつは計測間隔が短い場合すなわち移動可能距離Vが静止判定距離Td以下の場合の設定方法である。図7(b)はV≦Tdの場合の設定を説明する図である。この場合、幅Wは静止判定距離Tdに対応する幅に設定される。具体的には幅Wは静止判定距離Tdに侵入者の最大幅Sを加えた幅(例えば1.5m)に設定される。侵入者の最大幅Sを加えるのは上述したように追跡処理において変化領域の特徴量を正しく抽出可能なことを保証するためである。
【0043】
高さHは想定される最も高い侵入者の高さ(例えば2m)に設定される。遮蔽検知エリアに高さ成分を持たせることにより下部の抜けた旗のような遮蔽物も検知対象とすることができる。
【0044】
建物エリアを囲んだ遮蔽検知エリアは建物への侵入経路を網羅し、遮蔽検知エリアの幅Wを上述のように設定したことで侵入者検知性能を最低限確保できる。よって、このような遮蔽検知エリアを侵入検知エリア内に侵入検知エリアより狭く設定したことで、侵入検知エリアを狭めることなく侵入者検知性能を最低限確保でき且つ正規利用者による物品設置を最大限許容できる。
【0045】
図8において太線で囲まれた領域は、図3の監視画像100に対して設定された別の遮蔽検知エリア141の例である。図8の遮蔽検知エリア141は、図6の遮蔽検知エリア131よりも簡易的に設定されたものである。
【0046】
背景画像235は侵入検知エリアの背景のみが撮像されている画像である。背景画像235は異常検知処理に先立って生成されて記憶部23に記憶される。背景画像235には侵入者、正規利用者、新たに持ち込まれた遮蔽物が含まれておらず、背景画像235を監視画像と比較することでこれらの物体の出現によって監視画像が変化した部分を変化領域として検出できる。
【0047】
変化領域情報236は、各時刻の監視画像から抽出された変化領域の特徴量を対応する領域ごとに記憶させたデータである。特徴量は変化領域の抽出位置、変化領域の大きさ、変化領域の形状、変化領域における監視画像の輝度ヒストグラムなどである。各時刻において抽出された変化領域のうち互いに類似する変化領域は、追跡処理によって同一物体から生じた変化領域として対応付けられ、各変化領域の特徴量は対応付けられた領域ごとの識別符号(領域ID)と関連付けて管理される。各特徴量は追跡に用いられ、特に抽出位置は変化領域の移動距離算出及び異常判定にも用いられる。
【0048】
以下、制御部24がその機能として有する監視エリア設定部241、変化領域抽出部242、変化領域追跡部243、侵入判定部244及び遮蔽判定部245について説明する。
【0049】
監視エリア設定部241は、設定入力部22からの入力に基づいて、監視エリアである重要エリア(建物エリア232)、侵入検知エリア233、遮蔽検知エリア234を設定する。監視エリア設定部241の動作は後述する。
【0050】
変化領域抽出部242は、撮像部21から入力された監視画像を背景画像235と比較して当該監視画像における変化領域を抽出し、抽出した変化領域を変化領域追跡部243へ出力する。
【0051】
具体的には変化領域抽出部242は背景差分処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部242は、監視画像と背景画像235の対応する画素間で画素値の差の絶対値を算出し、差の絶対値が差分閾値以上である画素のうち互いに近接する画素をひとまとまりにして変化領域を抽出する。差分閾値は事前実験に基づき予め設定される。
【0052】
別の実施形態において変化領域抽出部242は背景相関処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部242は、上記差に代えて画素値の相関値を算出し、相関値が予め設定された相関閾値以下である画素を変化領域として抽出する。
【0053】
また変化領域抽出部242は、変化領域を正確に抽出し続けるために、監視画像を用いて背景画像235を適宜更新することで背景画像235を監視空間の環境変化に適応させる。
【0054】
第一に変化領域抽出部242は、容認された遮蔽物(容認遮蔽物)を背景画像235に取り込んで当該遮蔽物の手前に現れる変化領域に当該遮蔽物による変化領域が混ざらないようにする。具体的には容認遮蔽物の変化領域において背景画像235を監視画像により置換する。
【0055】
第二に変化領域抽出部242は変化領域を除く領域において背景画像235を監視画像との平均画像に置換することで、背景画像235に監視空間の照明変動を反映させる。
【0056】
物体領域追跡部243は追跡処理により変化領域の移動距離を算出する移動距離算出部である。変化領域追跡部243は、前後する時刻の監視画像から抽出された変化領域のうち互いに類似する変化領域を対応付け、対応付けられた変化領域の抽出位置から当該変化領域の移動距離を算出し、算出した移動距離を侵入判定部244及び遮蔽判定部245に出力する。また変化領域追跡部243は対応付けた変化領域ごとに共通の領域IDを付与し、各変化領域の特徴量をその領域IDとを関連付けた変化領域情報236を記憶部23に記憶させる。
【0057】
変化領域が複数同時に存在する場合、上記処理は各変化領域に対して行なわれる。ちなみに、正規利用者による物品設置を行なわれるとき、運搬中は正規利用者と物品がひとつの変化領域として追跡され、設置後に離間すると正規利用者と物品が別個の変化領域として追跡される。
【0058】
ここで、撮像面座標で移動距離を算出すると変化領域の抽出位置により移動距離の格差が生じる。つまり撮像面座標では撮像部21の近くで抽出された変化領域ほど移動距離が大きく算出されやすくなる。そのため、変化領域追跡部243は逆透視変換により変化領域の抽出位置を実座標に変換して実座標における移動距離を算出する。
【0059】
侵入判定部244は、侵入検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が予め設定された静止判定距離以上であることに基づいて侵入異常信号を出力する。具体的には侵入判定部244は、各時刻における各変化領域の抽出位置を侵入検知エリア233と比較し、及び当該変化領域の当該時刻までの移動距離を静止判定距離と比較するとともに当該時刻における認証信号の有無を確認し、抽出位置が侵入検知エリア233内で移動距離が静止判定距離以上の変化領域があり、且つ認証信号が確認されない場合に監視空間に侵入者が存在するとして侵入異常信号を出力する。他方、侵入検知エリア233内で抽出された変化領域がない場合、移動距離が静止判定距離を超える変化領域がない場合及び認証信号が確認された場合、侵入判定部244は侵入異常信号を出力しない。
【0060】
なお侵入判定部244は、さらに変化領域の大きさや形状や動きをそれぞれ予め設定された人らしさの基準値や外乱らしさ(小動物らしさなど)の基準値と比較した比較結果、変化領域における監視画像と背景画像235のテクスチャの類似度(人なら類似度が低く、光や影なら類似度が高い)などを重み付け加算して変化領域の外乱属性値及び人属性値を算出し、外乱属性値よりも人属性値の方が高いことを侵入異常信号の出力条件に加えることもできる。
【0061】
遮蔽判定部245は、遮蔽検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が静止判定距離未満であることに基づいて遮蔽物の存在を判定する。具体的には遮蔽判定部245は、各時刻における各変化領域の抽出位置を遮蔽検知エリア234と比較し、及び当該変化領域の当該時刻までの移動距離を静止判定距離と比較するとともに当該変化領域の当該時刻までの追跡時間が予め設定された静止判定時間と比較し、抽出位置が遮蔽検知エリア234内、移動距離が静止判定距離未満且つ追跡時間の変化領域がある場合に、侵入検知を妨げる遮蔽物が存在するとして遮蔽異常信号を出力する。静止判定時間は一時停止している移動物体の誤認を防ぐための判定待機時間であり、例えば10秒に設定される。追跡時間は変化領域情報236に記憶されている各変化領域の抽出位置の数を換算すれば求まる。
【0062】
他方、移動距離が静止判定距離未満の変化領域であっても遮蔽検知エリア234外で追跡された変化領域であれば、遮蔽判定部245は、当該変化領域が侵入検知を妨げない遮蔽物(容認遮蔽物)によるものであるとしてこれを容認して遮蔽異常信号を出力しない。また遮蔽判定部245は背景画像235を更新するために容認遮蔽物による変化領域を変化領域抽出部242に出力する。
【0063】
また遮蔽判定部245は侵入者の大きさに比べてごく小さな変化領域をその追跡位置に拘わらず容認することとしてもよい。この場合、遮蔽判定部245は変化領域の大きさ(画素数)を予め設定された容認サイズと比較して大きさが容認サイズ未満であれば遮蔽異常信号を出力しない。容認サイズは例えば植木鉢程度の大きさ(20cm四方)とすることができる。
【0064】
[外周監視システム1の動作]
以下、画像センサー2の動作を中心に外周監視システム1の動作を説明する。
【0065】
<事前設定処理>
画像センサー2は監視に先立って監視エリア等の事前設定処理を行う。通信部25に設定入力部22が接続されると、制御部24と設定入力部22の間で通信部25を介した通信が可能となり、図9のフローチャートに示す事前設定処理が開始される。
【0066】
まず設定入力部22はカメラパラメーター231の入力を受け付ける。設定入力部22は管理者により入力されたカメラパラメーター231を制御部24に出力し、制御部24は設定入力部22から入力されたカメラパラメーター231を記憶部23に記憶させる(S1)。カメラパラメーター231の設定は各部から参照され、各部においてカメラパラメーター231を用いた透視変換、逆透視変換が可能となる。
【0067】
次に制御部24の監視エリア設定部241は設定入力部22に撮像部21からの監視画像を出力し、設定入力部22は表示手段に当該監視画像を表示して建物エリア232の入力を受け付ける。設定入力部22は、管理者が監視画像中の建物の像を目視確認しながら入力した建物エリア232を監視エリア設定部241に出力し、監視エリア設定部241は設定入力部22から入力された建物エリア232を記憶部23に記憶させる(S2)。建物は監視画像上で視認容易であるため、管理者は建物エリア232を容易に設定できる。
【0068】
建物エリアは、表示中の監視画像上でポインティングデバイスを用いて図形入力される。図3の例では、図2の建物101を含む監視画像100の表示と対応して4点P1,P2,P3,P4が設定入力部22にて入力される。監視エリア設定部241はこれら4点の互いに隣り合う2点同士を直線で結んだ四角形111の内側を建物エリアとして算出し、建物エリア111の内側と外側を異なる画素値に設定した2値画像110を記憶部23に記憶させる。
【0069】
続いて監視エリア設定部241は侵入検知エリア233を設定する(S3)。設定入力部22は建物所有者の敷地外などである無監視エリアの入力を受け付ける。設定入力部22は、管理者により入力された無監視エリアを監視エリア設定部241に出力し、監視エリア設定部241は設定入力部22から入力された無監視エリアを監視画像の全体領域から除いた侵入検知エリア233を記憶部23に記憶させる。なお無監視エリアが入力されなかった場合、侵入検知エリア233は監視画像の全体領域となる。
【0070】
図4の例では、図3の敷地外部分102を含む監視画像100の表示と対応して3点Q1,Q2,Q3が設定入力部22にて入力される。監視エリア設定部241はこれら3点を結んだ三角形の無監視エリアを全体領域から除いて侵入検知エリア121を算出し、侵入検知エリア121の内側と外側を異なる画素値に設定した2値画像120を記憶部23に記憶させる。
【0071】
続いて監視エリア設定部241は遮蔽検知エリア234を設定する。ここで用いられる幅W及び高さHは予め設定される。
【0072】
まず監視エリア設定部241は建物エリア232の外周に幅Wの接地領域を算出する(S4)。すなわち監視エリア設定部241は建物エリア232の輪郭画素を選出して各輪郭画素の座標を実座標(輪郭実座標)に逆透視変換する。このとき監視画像の外枠上の輪郭画素は除いてもよい。図3に例示した建物エリア111の場合、線分P2−P3,P3−P4上の画素が輪郭画素として選出・変換される。そして監視エリア設定部241は輪郭実座標のそれぞれを中心とする半径Wの円を算出して各円の和領域を撮像面座標に透視変換する。監視エリア設定部241はこうして得られた和領域から建物エリア232と重複する部分を除いて接地領域を算出する。
【0073】
次に監視エリア設定部241は接地領域に高さHの高さ成分を加えて遮蔽検知エリア234を算出し、記憶部23に記憶させる(S5)。すなわち監視エリア設定部241は接地領域の各画素の座標を実座標に逆透視変換する。そして監視エリア設定部241は接地領域の実座標のそれぞれから鉛直方向(撮像部21の高さ方向)に向かう長さHの線分を算出して各線分を撮像面座標に透視変換する。こうして変換された各線分で塗りつぶされる領域が幅W、高さHを有する遮蔽検知エリア234である。図3にて例示した建物エリア111からは図4の太線で示される遮蔽検知エリア131が算出される。監視エリア設定部241は遮蔽検知エリア131の内側と外側を異なる画素値に設定した2値画像130を記憶部23に記憶させる。
【0074】
また、監視エリア設定部241は設定した監視エリアを重畳させた監視画像を生成して設定入力部22に送信し、設定入力部22は受信した監視画像を表示手段に表示させる。この表示により、管理者及び利用者は物品設置が容認される範囲と物品設置が容認されない範囲を容易に確認できる。
【0075】
こうして監視エリアが設定されると事前設定処理は終了する。
【0076】
なお上記ステップS4では円を基にして接地領域を算出したが、線分を基にして簡易的に接地領域を算出することもできる。この場合、監視エリア設定部241は実空間の接地面において輪郭実座標から輪郭線に対して垂直な長さWの線分を算出して、これらの線分を透視変換することにより接地領域を算出することができる。図6の遮蔽検知エリア141は線分を基にした接地領域から算出した例である。
【0077】
<画像監視処理>
監視空間が無人であることを確認した管理者が事前設定処理を終えた画像センサー2を再起動させると、図10のフローチャートに示す画像監視処理が開始される。
【0078】
起動後、制御部24の変化領域抽出部242は予め設定された初期化時間の間だけ撮像部21からの監視画像を平均化することにより初期の背景画像235を作成して記憶部23に記憶させ(S10)、初期化時間が経過した後は、撮像部21から制御部24に監視画像が入力されるたびにステップS11〜S19の処理が繰り返される。以下、新たな監視画像が入力された時刻を現時刻と称する。
【0079】
まず制御部24は現時刻の監視画像を取得し(S11)、制御部24の変化領域抽出部242は現時刻の監視画像と背景画像235を差分処理して変化領域を抽出する(S12)。抽出処理を終えた変化領域抽出部242は変化領域の抽出結果を制御部24の変化領域追跡部243に出力する。なお、変化領域がない場合、変化領域抽出部242は変化領域がない旨を変化領域追跡部243に出力する。
【0080】
変化領域追跡部243は、現時刻に抽出された変化領域と一時刻前に抽出された変化領域との間で類似する変化領域を対応づける(S13)。
【0081】
そのために変化領域追跡部243は一時刻前までに抽出された各変化領域の抽出位置及び特徴量を変化領域情報236として記憶部23に記憶させている。変化領域追跡部243は、現時刻に抽出された各変化領域の大きさ(画素数)を求めて記憶されている各変化領域の大きさとの差を算出し、現時刻に抽出された各変化領域の形状(縦横比)を求めて記憶されている各変化領域の形状との差を算出し、現時刻に抽出された各変化領域の輝度ヒストグラムを求めて記憶されている各変化領域の輝度ヒストグラムとの差を算出し、記憶されている各変化領域の抽出位置の履歴に現時刻の抽出位置を外挿して外挿された抽出位置と現時刻に検出された各変化領域の抽出位置との差を算出し、変化領域の組み合わせごとにこれらの各差を予め設定された評価関数に適用して類似度を算出し、予め設定された類似度閾値を超える組み合わせを対応付ける。
【0082】
対応付けを終えた変化領域追跡部243は、対応付け結果により変化領域情報236を更新する(S14)。
【0083】
すなわち変化領域追跡部243は、現時刻の変化領域の抽出位置及び特徴量に対応付けが得られた記憶部23の変化領域と同じ領域IDを付与して変化領域情報236に追記する。また変化領域追跡部243は、対応付けが得られなかった現時刻の変化領域を新規出現領域であるとして、当該変化領域の抽出位置及び特徴量に新たな領域IDを付与して変化領域情報236に加える。さらに変化領域追跡部243は、対応付けが得られなかった記憶部23の変化領域を消失領域であるとして、当該変化領域の抽出位置及び特徴量を変化領域情報236から削除する。
【0084】
続いて変化領域追跡部243は、変化領域情報236を参照して各変化領域の抽出位置からその移動距離を算出する(S15)。すなわち変化領域追跡部243は、各変化領域についてその抽出位置を逆透視変換により実位置に変換して前後する時刻の実位置間の距離を累積して移動距離を算出する。
【0085】
こうして追跡処理と移動距離算出処理が進捗すると、制御部24の侵入判定部244及び遮蔽判定部245により異常判定が行なわれる(S16)。図11を参照して異常判定処理を説明する。
【0086】
異常判定において制御部24は変化領域情報236に記憶されている各変化領域を順次注目変化領域に設定し、追跡中の変化領域についてS30〜S42のループ処理を実行する。
【0087】
ループ処理において、まず侵入判定部244は注目変化領域の移動距離を静止判定距離と比較し(S31)、移動距離が静止判定距離未満であれば以降のステップS32〜S36をスキップする(S31にてNO→S37)。また侵入判定部244は現時刻における注目変化領域の抽出位置が侵入検知エリア内であるか否かを確認し(S32)、抽出位置が侵入検知エリア内でなければ以降のステップS33〜S36をスキップする(S32にてNO→S37)。
【0088】
他方、移動距離が静止判定距離以上、且つ抽出位置が侵入検知エリア内であれば(S31にてYES)、注目変化領域は侵入者による変化領域の可能性があるとして、侵入判定部244はステップS33に処理を進める。侵入判定部244は注目変化領域の人属性値及び外乱属性値を算出してこれらの値を大小比較し(S33,S34)、人属性値が外乱属性値以上であれば注目変化領域は人による変化領域であるとして認証信号の受信有無を確認する(S34にてYES→S35)。認証信号が受信されていなければ侵入判定部244は注目変化領域が侵入者による変化領域であるとして侵入異常情報を生成して記憶部23に一時記憶させる(S35にてNO→S36)。
【0089】
一方、人属性値が外乱属性値未満であれば注目変化領域は小動物等の外乱によるものであるとして侵入判定部244はステップS35,S36をスキップする(S34にてNO→S37)。また認証信号の受信を受信していれば注目変化領域は正規利用者によるものであるとして侵入判定部244はステップS36をスキップする(S35にてYES→S37)。外乱及び正規利用者の変化領域は消失するまで追跡されることになる。
【0090】
続いて遮蔽判定部245により注目変化領域の判定が行なわれる。
【0091】
まずステップS37,S38にて遮蔽判定部245は注目変化領域が静止物による変化領域であることを確認する。すなわち遮蔽判定部245は、注目変化領域の移動距離を静止判定距離と比較し(S37)、移動距離が静止判定距離以上であれば以降のステップS38〜S42をスキップする(S37にてNO→S43)。移動距離が静止判定距離未満であれば(S37にてYES)、遮蔽判定部245はさらに追跡時間を静止判定時間と比較する(S38)。追跡時間が静止判定時間未満であれば、遮蔽判定部245は以降のステップS39〜S42をスキップする(S38にてNO→S43)。
【0092】
注目変化領域が静止物によるものと確認した遮蔽判定部245は現時刻における注目変化領域の抽出位置が遮蔽検知エリア内であるか否かを確認し(S39)、さらに注目変化領域の画素数(大きさ)を計数して容認サイズと比較する(S40)。抽出位置が遮蔽検知エリア内で大きさが容認サイズ以上であれば注目変化領域は侵入検知を妨げる遮蔽物によるものであるとして遮蔽異常情報を生成して記憶部23に一時記憶させる(S39にてYES→S40にてYES→S41)。
【0093】
他方、注目変化領域の抽出位置が遮蔽検知エリア内でなければ、又は大きさが容認サイズ未満であれば、注目変化領域は容認遮蔽物によるものであるとして注目変化領域の情報を容認遮蔽物情報に記憶させる(S39にてNO→S40,S40にてYES→S40)。
【0094】
遮蔽判定部245がステップS41又はS42の処理を終えると、制御部24は全変化領域の判定が終わったか確認する(S43)。全変化領域の判定が終わっていなければ(S43にてNO)、制御部24はステップS30に処理を戻して次の変化領域の判定を開始し、全変化領域の判定が終わったならば(S43にてYES)、制御部24は図10のステップS17へ処理を進める。
【0095】
図10に戻り、侵入判定部244及び遮蔽判定部245は一時記憶した異常情報の有無を確認し(S17)、侵入異常情報があれば侵入判定部244は当該情報を通信部25に出力し、遮蔽異常情報があれば遮蔽判定部245は当該情報を通信部25に出力する(S17にてYES→S18)。いずれの異常情報もなければ(S17にてNO)、ステップS18はスキップされる。
【0096】
続いて変化領域抽出部242は監視画像を用いて背景画像235を更新する(S19)。すなわち変化領域抽出部242は、監視画像から現時刻にて変化領域が検出されなかった領域を切り出して切り出した画像と背景画像235とをα:(1−α)の割合で重み付け加算して背景画像235を更新し、さらに現時刻にて容認遮蔽物の変化領域と判定された領域があれば監視画像から当該領域を切り出して、背景画像235における対応部分を切り出した画像で置換して背景画像235を更新する。ただしαは、0<α<1の範囲で予め設定された値である。
【0097】
以上の処理を終えると、処理はステップS11へ戻され、次時刻の監視画像に対する処理が行われる。
【0098】
上記実施形態においては計測部として監視カメラを用いた撮像部21を例示したが、走査型のレーザーセンサーを計測部として用いることもできる。この場合、計測部はレーザースキャンにより監視エリアを計測して距離画像を出力し、変化領域抽出部は距離画像を用いて背景画像の生成・更新と変化領域の抽出を行う。移動距離判定部(変化領域追跡部)、侵入判定部、及び遮蔽判定部による変化領域を用いた処理は上記実施形態と同様にして行なうことができる。
【0099】
また侵入判定部244は赤外線センサー、レーザーセンサー、マイクロ波センサー、熱画像センサーなどで実現することもできる。この場合、これらの侵入判定部244の視野と撮像部21の視野とが一致するように調整しておけばよい。
【0100】
また上記実施形態においては建物外周を監視する例を示したが、金庫とその周辺など屋内外を問わず各種重要物まわりを監視する用途に応用可能である。
【0101】
また上記実施形態においては遮蔽検知エリアを自動作成する例を示したが、管理者が設定入力部22を操作して遮蔽検知エリアを設定入力してもよい。この場合、管理者のひとりが動き判定距離を実測して複数の代表位置を指し示し、管理者のもうひとりが設定入力部22の表示上で実測者が指し示す位置を入力するとよい。
【符号の説明】
【0102】
1・・・外周監視システム
2・・・画像センサー
3・・・認証装置
4・・・携帯端末
5・・・コントローラー
6・・・センター装置
21・・・撮像部
22・・・設定入力部
23・・・記憶部
231・・・カメラパラメーター
232・・・建物エリア
233・・・侵入検知エリア
234・・・遮蔽検知エリア
235・・・背景画像
236・・・変化領域情報
24・・・制御部
241・・・監視エリア設定部
242・・・変化領域抽出部
243・・・変化領域追跡部
244・・・侵入判定部
245・・・遮蔽判定部
25・・・通信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリアを計測して侵入者を検知するとともに計測を妨害する遮蔽物の存在を検出する侵入検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
侵入者を検知するための画像センサー等では、侵入者の検知を継続的に行うために、その視野の一部または全部を遮る遮蔽物等の存在を異常検知していた。
【0003】
特許文献1に記載の画像センサでは、監視領域の画像を区分した判定ブロックごとに現画像と基準画像との類似度が判定され、類似度の小さい判定ブロック数が所定数以上であれば画像センサの視野を遮る障害物が置かれたなどの異常があると判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−194866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来技術においては、侵入者の存在を検知するための監視エリアと遮蔽物の存在を検知するための監視エリアとが同一であった。そのため、居住者等の正規利用者が監視エリアに所有物などの物品を置いても当該物品の存在が異常と判定され得るため、利用者の利便性を低下させる可能性があった。
【0006】
またこのことは、利用者の利便性を優先して物品設置可能なエリアを設ければ監視エリアを狭くすることになり、セキュリティを優先して監視エリアを広くすれば利用者の利便性を低下させる、というトレードオフを生じさせていた。
【0007】
さらに、このような利用者の利便性とセキュリティとのトレードオフを満たす監視エリアの確実な設定にはスキルと時間を要していた。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、セキュリティを維持しながら利用者の利便性を向上可能な侵入検知装置を実現することを目的とする。
【0009】
また本発明は、利用者の利便性とセキュリティのトレードオフを満たす監視エリアの設定を容易且つ確実に行なうことが可能な侵入検知装置を実現することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、本発明は、重要物とその外周を含む侵入検知エリアへの侵入者を検知する侵入検知装置であって、侵入検知エリアを所定時間おきに計測して計測信号を出力する計測部と、侵入検知エリア、重要物が存在する重要エリア、及び計測を妨げる遮蔽物の存在を検知するための遮蔽検知エリアを記憶する記憶部と、互いに異なる時点の計測信号を比較して変化領域を抽出する変化領域抽出部と、各時点における変化領域の抽出位置から移動距離を算出する移動距離算出部と、侵入検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が予め設定された静止判定距離以上であることに基づいて侵入者の存在を判定する侵入判定部と、遮蔽検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が静止判定距離未満であることに基づいて遮蔽物の存在を判定する遮蔽判定部と、を備え、遮蔽検知エリアは、重要エリアの周囲にて侵入者が静止判定距離を移動するときの移動距離を算出可能な範囲に設定されたことを特徴とする侵入検知装置を提供する。
【0011】
かかる侵入検知装置において、遮蔽検知エリアは侵入者が重要エリアの周囲にて所定時間で移動可能な範囲に設定されることが好ましい。これによれば、その計測間隔にて刻まれる1時刻の間に侵入者が移動可能な距離が静止判定距離より大きな計測部を用いて構成される侵入検知装置において好適な遮蔽検知エリアを設定できる。
【0012】
また、遮蔽検知エリアは侵入者が重要エリアの周囲にて静止判定距離を移動する範囲に設定されることが好ましい。これによれば、その計測間隔にて刻まれる1時刻の間に侵入者が移動可能な距離が静止判定距離以下の計測部を用いて構成される侵入検知装置において好適な遮蔽検知エリアを設定できる。
【0013】
また、計測部は侵入検知エリアを撮像して画像を出力し、さらに、画像を表示して当該表示上で重要エリアを入力可能な設定入力部と、設定入力部から入力された重要エリアを基準にして遮蔽検知エリアを算出する監視エリア設定部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、侵入検知エリアと遮蔽検知エリアを分けて侵入検知エリアを狭くすることなく侵入検知エリアより狭い遮蔽検知エリアを設定できるので、セキュリティを維持しつつ利用者の利便性向上を図ることが可能な侵入検知装置を実現できる。
【0015】
また本発明によれば、視認容易な重要エリアを設定入力すれば遮蔽検知エリアが自動設定されるので、監視エリアの設定を容易且つ確実に行なうことが可能な侵入検知装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】外周監視システム1の全体構成を表すブロック図である。
【図2】画像センサー2の構成を表すブロック図である。
【図3】建物とその外周を撮像した監視画像を例示したである。
【図4】図3の監視画像に対して設定された建物エリアを例示した図である。
【図5】図3の監視画像に対して設定された侵入検知エリアを例示した図である。
【図6】図3の監視画像に対して設定された遮蔽検知エリアを例示した図である。
【図7】幅W、高さH、静止判定距離Tdを説明する模式図である。
【図8】図3の監視画像に対して設定された別の遮蔽検知エリアを例示した図である。
【図9】事前設定処理を説明するフローチャートである。
【図10】画像監視処理を説明するフローチャートである。
【図11】異常判定処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の侵入検知装置の好適な実施形態の一例として、建物外周を監視し、侵入者および遮蔽物を検知すると警備センターに通報する外周監視システム1について説明する。
【0018】
[外周監視システム1の構成]
図1は外周監視システム1の全体図である。外周監視システム1は画像センサー2、認証装置3、携帯端末4、コントローラー5及びセンター装置6を含んで構成される。
【0019】
画像センサー2及び認証装置3は通信線を介してコントローラー5に接続され、コントローラー5は電話回線又はインターネット回線等の広域通信網を介して警備センター等の遠隔地に設置されたセンター装置6と接続される。
【0020】
画像センサー2は屋外に設置されて侵入検知エリアである建物外周を監視する。画像センサー2は、侵入検知エリアへの侵入者を検知すると侵入異常信号を出力し、侵入検知エリアの一部に重ねて設定された遮蔽検知エリアにて侵入者の検知を阻害する遮蔽物を検知すると遮蔽異常信号を出力する。画像センサー2が出力したこれらの異常信号はコントローラー5を介してセンター装置6に送信される。
【0021】
認証装置3は侵入検知エリア内の携帯端末4と通信を行なうことにより侵入検知エリア内の居住者や従業員などの正規利用者を認証する。正規利用者が所持する携帯端末4は予め認証装置3に登録され、認証装置3は登録された携帯端末4を検出すると認証信号をコントローラー5経由で画像センサー2に出力する。画像センサー2は人を検知したときに認証信号の有無を参照して正規利用者か侵入者かを判別する。
【0022】
図2は画像センサー2の構成を示したブロック図である。画像センサー2は撮像部21、設定入力部22、記憶部23及び通信部25が制御部24に接続されてなる。
【0023】
撮像部21は侵入検知エリアを所定時間おきに計測して計測信号を出力する計測部である。撮像部21は監視カメラで実現され、侵入検知エリアを臨むように3〜4m程度の高さにその光軸を斜め下方に向けて固定設置される。撮像部21は、侵入検知エリアを例えば1/5秒間隔で撮像して監視画像を出力し、監視画像を制御部24に順次出力する。以下、この時間間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。
【0024】
図3は建物101とその外周を撮像した監視画像100を例示したものである。ちなみに図中の102は視野内の敷地外部分である。
【0025】
設定入力部22は画像センサー2にて用いられる各種設定を入力するインターフェース装置である。設定入力部22は、外周監視システム1の運用前に通信部25と一時的に接続されて制御部24との間で通信を行なう。設定入力部22にて入力された設定は制御部24を介して記憶部23に記憶される。
【0026】
設定入力部22は液晶タッチパネル等の入力表示手段及び通信手段を備え、撮像部21から受信した監視画像を表示して表示上で指示された位置を重畳表示し、また当該位置を制御部24に送信することができる。
【0027】
なお設定入力部22をコントローラー5に接続し、設定入力部22と制御部24とがコントローラー5及び通信部25を介して通信を行なう構成とすることもできる。
【0028】
記憶部23は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。記憶部23は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部24との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、カメラパラメーター231、建物エリア232、侵入検知エリア233、遮蔽検知エリア234、背景画像235及び変化領域情報236が含まれる。
【0029】
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal
Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置を用いて構成され、記憶部23からプログラムを読み出して実行することで監視エリア設定部241、変化領域抽出部242、変化領域追跡部243、侵入判定部244及び遮蔽判定部245として機能する。
【0030】
通信部25はコントローラー5との間の通信回路及びドライバソフトフェアから構成され、通信部25の一方には制御部24、他方にはコントローラー5及び設定入力部22がそれぞれ接続される。制御部24からの異常信号等は通信部25を介してコントローラー5に送信され、コントローラー5からの認証信号等は通信部25を介して制御部24に入力される。また通信部25に設定入力部22が接続されたとき、撮像部21からの監視画像は制御部24及び通信部25を介して設定入力部22に送信され、設定入力部22からの設定情報等は通信部25を介して制御部24に入力される。
【0031】
以下、記憶部23に記憶されるカメラパラメーター231、建物エリア232、侵入検知エリア233、遮蔽検知エリア234、背景画像235及び変化領域情報236について説明する。
【0032】
カメラパラメーター231は、撮像部21の設置位置及び撮像方向といった外部パラメーター、撮像部21の焦点距離、画角、レンズ歪みその他のレンズ特性や、撮像素子の画素数といった内部パラメーターを含む。実際に計測するなどして得られたこれらのパラメーターが予め設定されて記憶部23に記憶されている。公知のピンホールカメラモデル等のカメラモデルにカメラパラメーター231を適用することにより、監視画像中の画素位置を撮像部21の撮像面における座標(撮像面座標)と実空間における座標(実座標)との間で座標変換することが可能となる。以下、カメラパラメーター231を用いた撮像面座標から実座標への変換を逆透視変換、カメラパラメーター231を用いた実座標から撮像面座標への変換を透視変換と称する。
【0033】
建物は本外周監視システム1において侵入者が侵入の目的とするものであり監視上の重要物である。本外周監視システム1において重要物が存在する重要エリアは建物エリア232である。建物エリア232は管理者により設定入力部22から監視画像中の画像領域として設定入力されて撮像面座標で記憶部23に記憶される。建物エリア232を基準として遮蔽検知エリア234が算出される。
【0034】
図4は、図3の監視画像100に対して設定された建物エリア111を例示したものである。
【0035】
侵入検知エリア233は本外周監視システム1が侵入者の存在を異常として検知する領域である。侵入検知エリア233は、特に指定のない限り撮像部21の視野全体となるが、管理者により設定入力部22から無監視エリアが設定入力された場合は撮像部21の視野から無監視エリアを除いた領域となる。侵入検知エリア233は監視画像中の画像領域として撮像面座標で記憶される。
【0036】
図5は、図3の監視画像100に対して設定された侵入検知エリア121を例示したものである。敷地外部分102と対応する部分が除かれて侵入検知エリア121が設定されている。
【0037】
遮蔽検知エリア234は侵入検知エリア233において遮蔽物の存在及び侵入者の存在を異常として検知する領域である。遮蔽検知エリア234は、侵入検知エリア233内の建物エリア232を囲んで侵入検知エリア233よりも狭く設定され、監視画像中の画像領域として撮像面座標で記憶される。遮蔽検知エリア234は建物エリア232を基に自動算出されて記憶部23に記憶される。
【0038】
図6において太線で囲まれた領域は、図3の監視画像100に対して設定された遮蔽検知エリア131の例である。図中の点線は建物エリア111の輪郭線である。実座標において建物エリア111を囲む幅W、高さHの範囲が算出され、この範囲が撮像面座標に変換されて遮蔽検知エリア131が設定される。
【0039】
図7は遮蔽検知エリアの幅Wと静止判定距離Tdと計測間隔(撮像間隔)の関係及び遮蔽検知エリアの高さHを説明する模式図である。図中のVは侵入者が計測間隔で刻まれる1時刻に移動可能な距離である。移動可能距離Vは高速移動する侵入者すなわち走り抜ける侵入者を想定して設定される。距離Vは計測間隔に依存する値である。また図中のSは侵入者の最大幅である。幅Sは前傾姿勢をとる侵入者すなわち走り抜ける侵入者を想定して設定される。静止判定距離Tdは移動物体である侵入者と静止物体である遮蔽物を弁別するために変化領域の移動距離と比較される閾値である。静止判定距離Tdは例えば0.5mに設定される。
【0040】
遮蔽検知エリアの幅Wは、計測信号(監視画像)に基づいて侵入者を検知可能な最小限度の幅、換言すると侵入者が静止判定距離Tdを移動するときの移動距離を算出可能な最小限度の幅に設定される。最小限度の幅に設定するのは、幅Wが正規利用者による物品の設置を制限する値でもあるため、できる限り狭い方が正規利用者にとって利便性が高くなるからである。幅Wの設定方法には計測間隔の長短によって以下の2通りの方法がある。
【0041】
幅Wの設定方法のひとつは計測間隔が長い場合すなわち移動可能距離Vが静止判定距離Tdより大きな場合の設定方法である。図7(a)はV>Tdの場合の設定を説明する図である。この場合、幅Wは少なくとも連続する2時刻において侵入者を計測可能な距離に設定される。つまり幅Wは計測間隔に侵入者が移動可能な距離に対応する幅に設定される。具体的には幅Wは移動可能距離Vに侵入者の最大幅Sを加えた幅(例えば2m)に設定される。侵入者の最大幅Sを加えるのは追跡処理において変化領域の特徴量を正しく抽出可能なことを保証するためである。
【0042】
幅Wの設定方法のもうひとつは計測間隔が短い場合すなわち移動可能距離Vが静止判定距離Td以下の場合の設定方法である。図7(b)はV≦Tdの場合の設定を説明する図である。この場合、幅Wは静止判定距離Tdに対応する幅に設定される。具体的には幅Wは静止判定距離Tdに侵入者の最大幅Sを加えた幅(例えば1.5m)に設定される。侵入者の最大幅Sを加えるのは上述したように追跡処理において変化領域の特徴量を正しく抽出可能なことを保証するためである。
【0043】
高さHは想定される最も高い侵入者の高さ(例えば2m)に設定される。遮蔽検知エリアに高さ成分を持たせることにより下部の抜けた旗のような遮蔽物も検知対象とすることができる。
【0044】
建物エリアを囲んだ遮蔽検知エリアは建物への侵入経路を網羅し、遮蔽検知エリアの幅Wを上述のように設定したことで侵入者検知性能を最低限確保できる。よって、このような遮蔽検知エリアを侵入検知エリア内に侵入検知エリアより狭く設定したことで、侵入検知エリアを狭めることなく侵入者検知性能を最低限確保でき且つ正規利用者による物品設置を最大限許容できる。
【0045】
図8において太線で囲まれた領域は、図3の監視画像100に対して設定された別の遮蔽検知エリア141の例である。図8の遮蔽検知エリア141は、図6の遮蔽検知エリア131よりも簡易的に設定されたものである。
【0046】
背景画像235は侵入検知エリアの背景のみが撮像されている画像である。背景画像235は異常検知処理に先立って生成されて記憶部23に記憶される。背景画像235には侵入者、正規利用者、新たに持ち込まれた遮蔽物が含まれておらず、背景画像235を監視画像と比較することでこれらの物体の出現によって監視画像が変化した部分を変化領域として検出できる。
【0047】
変化領域情報236は、各時刻の監視画像から抽出された変化領域の特徴量を対応する領域ごとに記憶させたデータである。特徴量は変化領域の抽出位置、変化領域の大きさ、変化領域の形状、変化領域における監視画像の輝度ヒストグラムなどである。各時刻において抽出された変化領域のうち互いに類似する変化領域は、追跡処理によって同一物体から生じた変化領域として対応付けられ、各変化領域の特徴量は対応付けられた領域ごとの識別符号(領域ID)と関連付けて管理される。各特徴量は追跡に用いられ、特に抽出位置は変化領域の移動距離算出及び異常判定にも用いられる。
【0048】
以下、制御部24がその機能として有する監視エリア設定部241、変化領域抽出部242、変化領域追跡部243、侵入判定部244及び遮蔽判定部245について説明する。
【0049】
監視エリア設定部241は、設定入力部22からの入力に基づいて、監視エリアである重要エリア(建物エリア232)、侵入検知エリア233、遮蔽検知エリア234を設定する。監視エリア設定部241の動作は後述する。
【0050】
変化領域抽出部242は、撮像部21から入力された監視画像を背景画像235と比較して当該監視画像における変化領域を抽出し、抽出した変化領域を変化領域追跡部243へ出力する。
【0051】
具体的には変化領域抽出部242は背景差分処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部242は、監視画像と背景画像235の対応する画素間で画素値の差の絶対値を算出し、差の絶対値が差分閾値以上である画素のうち互いに近接する画素をひとまとまりにして変化領域を抽出する。差分閾値は事前実験に基づき予め設定される。
【0052】
別の実施形態において変化領域抽出部242は背景相関処理により変化領域を抽出する。すなわち変化領域抽出部242は、上記差に代えて画素値の相関値を算出し、相関値が予め設定された相関閾値以下である画素を変化領域として抽出する。
【0053】
また変化領域抽出部242は、変化領域を正確に抽出し続けるために、監視画像を用いて背景画像235を適宜更新することで背景画像235を監視空間の環境変化に適応させる。
【0054】
第一に変化領域抽出部242は、容認された遮蔽物(容認遮蔽物)を背景画像235に取り込んで当該遮蔽物の手前に現れる変化領域に当該遮蔽物による変化領域が混ざらないようにする。具体的には容認遮蔽物の変化領域において背景画像235を監視画像により置換する。
【0055】
第二に変化領域抽出部242は変化領域を除く領域において背景画像235を監視画像との平均画像に置換することで、背景画像235に監視空間の照明変動を反映させる。
【0056】
物体領域追跡部243は追跡処理により変化領域の移動距離を算出する移動距離算出部である。変化領域追跡部243は、前後する時刻の監視画像から抽出された変化領域のうち互いに類似する変化領域を対応付け、対応付けられた変化領域の抽出位置から当該変化領域の移動距離を算出し、算出した移動距離を侵入判定部244及び遮蔽判定部245に出力する。また変化領域追跡部243は対応付けた変化領域ごとに共通の領域IDを付与し、各変化領域の特徴量をその領域IDとを関連付けた変化領域情報236を記憶部23に記憶させる。
【0057】
変化領域が複数同時に存在する場合、上記処理は各変化領域に対して行なわれる。ちなみに、正規利用者による物品設置を行なわれるとき、運搬中は正規利用者と物品がひとつの変化領域として追跡され、設置後に離間すると正規利用者と物品が別個の変化領域として追跡される。
【0058】
ここで、撮像面座標で移動距離を算出すると変化領域の抽出位置により移動距離の格差が生じる。つまり撮像面座標では撮像部21の近くで抽出された変化領域ほど移動距離が大きく算出されやすくなる。そのため、変化領域追跡部243は逆透視変換により変化領域の抽出位置を実座標に変換して実座標における移動距離を算出する。
【0059】
侵入判定部244は、侵入検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が予め設定された静止判定距離以上であることに基づいて侵入異常信号を出力する。具体的には侵入判定部244は、各時刻における各変化領域の抽出位置を侵入検知エリア233と比較し、及び当該変化領域の当該時刻までの移動距離を静止判定距離と比較するとともに当該時刻における認証信号の有無を確認し、抽出位置が侵入検知エリア233内で移動距離が静止判定距離以上の変化領域があり、且つ認証信号が確認されない場合に監視空間に侵入者が存在するとして侵入異常信号を出力する。他方、侵入検知エリア233内で抽出された変化領域がない場合、移動距離が静止判定距離を超える変化領域がない場合及び認証信号が確認された場合、侵入判定部244は侵入異常信号を出力しない。
【0060】
なお侵入判定部244は、さらに変化領域の大きさや形状や動きをそれぞれ予め設定された人らしさの基準値や外乱らしさ(小動物らしさなど)の基準値と比較した比較結果、変化領域における監視画像と背景画像235のテクスチャの類似度(人なら類似度が低く、光や影なら類似度が高い)などを重み付け加算して変化領域の外乱属性値及び人属性値を算出し、外乱属性値よりも人属性値の方が高いことを侵入異常信号の出力条件に加えることもできる。
【0061】
遮蔽判定部245は、遮蔽検知エリアにて抽出された変化領域の移動距離が静止判定距離未満であることに基づいて遮蔽物の存在を判定する。具体的には遮蔽判定部245は、各時刻における各変化領域の抽出位置を遮蔽検知エリア234と比較し、及び当該変化領域の当該時刻までの移動距離を静止判定距離と比較するとともに当該変化領域の当該時刻までの追跡時間が予め設定された静止判定時間と比較し、抽出位置が遮蔽検知エリア234内、移動距離が静止判定距離未満且つ追跡時間の変化領域がある場合に、侵入検知を妨げる遮蔽物が存在するとして遮蔽異常信号を出力する。静止判定時間は一時停止している移動物体の誤認を防ぐための判定待機時間であり、例えば10秒に設定される。追跡時間は変化領域情報236に記憶されている各変化領域の抽出位置の数を換算すれば求まる。
【0062】
他方、移動距離が静止判定距離未満の変化領域であっても遮蔽検知エリア234外で追跡された変化領域であれば、遮蔽判定部245は、当該変化領域が侵入検知を妨げない遮蔽物(容認遮蔽物)によるものであるとしてこれを容認して遮蔽異常信号を出力しない。また遮蔽判定部245は背景画像235を更新するために容認遮蔽物による変化領域を変化領域抽出部242に出力する。
【0063】
また遮蔽判定部245は侵入者の大きさに比べてごく小さな変化領域をその追跡位置に拘わらず容認することとしてもよい。この場合、遮蔽判定部245は変化領域の大きさ(画素数)を予め設定された容認サイズと比較して大きさが容認サイズ未満であれば遮蔽異常信号を出力しない。容認サイズは例えば植木鉢程度の大きさ(20cm四方)とすることができる。
【0064】
[外周監視システム1の動作]
以下、画像センサー2の動作を中心に外周監視システム1の動作を説明する。
【0065】
<事前設定処理>
画像センサー2は監視に先立って監視エリア等の事前設定処理を行う。通信部25に設定入力部22が接続されると、制御部24と設定入力部22の間で通信部25を介した通信が可能となり、図9のフローチャートに示す事前設定処理が開始される。
【0066】
まず設定入力部22はカメラパラメーター231の入力を受け付ける。設定入力部22は管理者により入力されたカメラパラメーター231を制御部24に出力し、制御部24は設定入力部22から入力されたカメラパラメーター231を記憶部23に記憶させる(S1)。カメラパラメーター231の設定は各部から参照され、各部においてカメラパラメーター231を用いた透視変換、逆透視変換が可能となる。
【0067】
次に制御部24の監視エリア設定部241は設定入力部22に撮像部21からの監視画像を出力し、設定入力部22は表示手段に当該監視画像を表示して建物エリア232の入力を受け付ける。設定入力部22は、管理者が監視画像中の建物の像を目視確認しながら入力した建物エリア232を監視エリア設定部241に出力し、監視エリア設定部241は設定入力部22から入力された建物エリア232を記憶部23に記憶させる(S2)。建物は監視画像上で視認容易であるため、管理者は建物エリア232を容易に設定できる。
【0068】
建物エリアは、表示中の監視画像上でポインティングデバイスを用いて図形入力される。図3の例では、図2の建物101を含む監視画像100の表示と対応して4点P1,P2,P3,P4が設定入力部22にて入力される。監視エリア設定部241はこれら4点の互いに隣り合う2点同士を直線で結んだ四角形111の内側を建物エリアとして算出し、建物エリア111の内側と外側を異なる画素値に設定した2値画像110を記憶部23に記憶させる。
【0069】
続いて監視エリア設定部241は侵入検知エリア233を設定する(S3)。設定入力部22は建物所有者の敷地外などである無監視エリアの入力を受け付ける。設定入力部22は、管理者により入力された無監視エリアを監視エリア設定部241に出力し、監視エリア設定部241は設定入力部22から入力された無監視エリアを監視画像の全体領域から除いた侵入検知エリア233を記憶部23に記憶させる。なお無監視エリアが入力されなかった場合、侵入検知エリア233は監視画像の全体領域となる。
【0070】
図4の例では、図3の敷地外部分102を含む監視画像100の表示と対応して3点Q1,Q2,Q3が設定入力部22にて入力される。監視エリア設定部241はこれら3点を結んだ三角形の無監視エリアを全体領域から除いて侵入検知エリア121を算出し、侵入検知エリア121の内側と外側を異なる画素値に設定した2値画像120を記憶部23に記憶させる。
【0071】
続いて監視エリア設定部241は遮蔽検知エリア234を設定する。ここで用いられる幅W及び高さHは予め設定される。
【0072】
まず監視エリア設定部241は建物エリア232の外周に幅Wの接地領域を算出する(S4)。すなわち監視エリア設定部241は建物エリア232の輪郭画素を選出して各輪郭画素の座標を実座標(輪郭実座標)に逆透視変換する。このとき監視画像の外枠上の輪郭画素は除いてもよい。図3に例示した建物エリア111の場合、線分P2−P3,P3−P4上の画素が輪郭画素として選出・変換される。そして監視エリア設定部241は輪郭実座標のそれぞれを中心とする半径Wの円を算出して各円の和領域を撮像面座標に透視変換する。監視エリア設定部241はこうして得られた和領域から建物エリア232と重複する部分を除いて接地領域を算出する。
【0073】
次に監視エリア設定部241は接地領域に高さHの高さ成分を加えて遮蔽検知エリア234を算出し、記憶部23に記憶させる(S5)。すなわち監視エリア設定部241は接地領域の各画素の座標を実座標に逆透視変換する。そして監視エリア設定部241は接地領域の実座標のそれぞれから鉛直方向(撮像部21の高さ方向)に向かう長さHの線分を算出して各線分を撮像面座標に透視変換する。こうして変換された各線分で塗りつぶされる領域が幅W、高さHを有する遮蔽検知エリア234である。図3にて例示した建物エリア111からは図4の太線で示される遮蔽検知エリア131が算出される。監視エリア設定部241は遮蔽検知エリア131の内側と外側を異なる画素値に設定した2値画像130を記憶部23に記憶させる。
【0074】
また、監視エリア設定部241は設定した監視エリアを重畳させた監視画像を生成して設定入力部22に送信し、設定入力部22は受信した監視画像を表示手段に表示させる。この表示により、管理者及び利用者は物品設置が容認される範囲と物品設置が容認されない範囲を容易に確認できる。
【0075】
こうして監視エリアが設定されると事前設定処理は終了する。
【0076】
なお上記ステップS4では円を基にして接地領域を算出したが、線分を基にして簡易的に接地領域を算出することもできる。この場合、監視エリア設定部241は実空間の接地面において輪郭実座標から輪郭線に対して垂直な長さWの線分を算出して、これらの線分を透視変換することにより接地領域を算出することができる。図6の遮蔽検知エリア141は線分を基にした接地領域から算出した例である。
【0077】
<画像監視処理>
監視空間が無人であることを確認した管理者が事前設定処理を終えた画像センサー2を再起動させると、図10のフローチャートに示す画像監視処理が開始される。
【0078】
起動後、制御部24の変化領域抽出部242は予め設定された初期化時間の間だけ撮像部21からの監視画像を平均化することにより初期の背景画像235を作成して記憶部23に記憶させ(S10)、初期化時間が経過した後は、撮像部21から制御部24に監視画像が入力されるたびにステップS11〜S19の処理が繰り返される。以下、新たな監視画像が入力された時刻を現時刻と称する。
【0079】
まず制御部24は現時刻の監視画像を取得し(S11)、制御部24の変化領域抽出部242は現時刻の監視画像と背景画像235を差分処理して変化領域を抽出する(S12)。抽出処理を終えた変化領域抽出部242は変化領域の抽出結果を制御部24の変化領域追跡部243に出力する。なお、変化領域がない場合、変化領域抽出部242は変化領域がない旨を変化領域追跡部243に出力する。
【0080】
変化領域追跡部243は、現時刻に抽出された変化領域と一時刻前に抽出された変化領域との間で類似する変化領域を対応づける(S13)。
【0081】
そのために変化領域追跡部243は一時刻前までに抽出された各変化領域の抽出位置及び特徴量を変化領域情報236として記憶部23に記憶させている。変化領域追跡部243は、現時刻に抽出された各変化領域の大きさ(画素数)を求めて記憶されている各変化領域の大きさとの差を算出し、現時刻に抽出された各変化領域の形状(縦横比)を求めて記憶されている各変化領域の形状との差を算出し、現時刻に抽出された各変化領域の輝度ヒストグラムを求めて記憶されている各変化領域の輝度ヒストグラムとの差を算出し、記憶されている各変化領域の抽出位置の履歴に現時刻の抽出位置を外挿して外挿された抽出位置と現時刻に検出された各変化領域の抽出位置との差を算出し、変化領域の組み合わせごとにこれらの各差を予め設定された評価関数に適用して類似度を算出し、予め設定された類似度閾値を超える組み合わせを対応付ける。
【0082】
対応付けを終えた変化領域追跡部243は、対応付け結果により変化領域情報236を更新する(S14)。
【0083】
すなわち変化領域追跡部243は、現時刻の変化領域の抽出位置及び特徴量に対応付けが得られた記憶部23の変化領域と同じ領域IDを付与して変化領域情報236に追記する。また変化領域追跡部243は、対応付けが得られなかった現時刻の変化領域を新規出現領域であるとして、当該変化領域の抽出位置及び特徴量に新たな領域IDを付与して変化領域情報236に加える。さらに変化領域追跡部243は、対応付けが得られなかった記憶部23の変化領域を消失領域であるとして、当該変化領域の抽出位置及び特徴量を変化領域情報236から削除する。
【0084】
続いて変化領域追跡部243は、変化領域情報236を参照して各変化領域の抽出位置からその移動距離を算出する(S15)。すなわち変化領域追跡部243は、各変化領域についてその抽出位置を逆透視変換により実位置に変換して前後する時刻の実位置間の距離を累積して移動距離を算出する。
【0085】
こうして追跡処理と移動距離算出処理が進捗すると、制御部24の侵入判定部244及び遮蔽判定部245により異常判定が行なわれる(S16)。図11を参照して異常判定処理を説明する。
【0086】
異常判定において制御部24は変化領域情報236に記憶されている各変化領域を順次注目変化領域に設定し、追跡中の変化領域についてS30〜S42のループ処理を実行する。
【0087】
ループ処理において、まず侵入判定部244は注目変化領域の移動距離を静止判定距離と比較し(S31)、移動距離が静止判定距離未満であれば以降のステップS32〜S36をスキップする(S31にてNO→S37)。また侵入判定部244は現時刻における注目変化領域の抽出位置が侵入検知エリア内であるか否かを確認し(S32)、抽出位置が侵入検知エリア内でなければ以降のステップS33〜S36をスキップする(S32にてNO→S37)。
【0088】
他方、移動距離が静止判定距離以上、且つ抽出位置が侵入検知エリア内であれば(S31にてYES)、注目変化領域は侵入者による変化領域の可能性があるとして、侵入判定部244はステップS33に処理を進める。侵入判定部244は注目変化領域の人属性値及び外乱属性値を算出してこれらの値を大小比較し(S33,S34)、人属性値が外乱属性値以上であれば注目変化領域は人による変化領域であるとして認証信号の受信有無を確認する(S34にてYES→S35)。認証信号が受信されていなければ侵入判定部244は注目変化領域が侵入者による変化領域であるとして侵入異常情報を生成して記憶部23に一時記憶させる(S35にてNO→S36)。
【0089】
一方、人属性値が外乱属性値未満であれば注目変化領域は小動物等の外乱によるものであるとして侵入判定部244はステップS35,S36をスキップする(S34にてNO→S37)。また認証信号の受信を受信していれば注目変化領域は正規利用者によるものであるとして侵入判定部244はステップS36をスキップする(S35にてYES→S37)。外乱及び正規利用者の変化領域は消失するまで追跡されることになる。
【0090】
続いて遮蔽判定部245により注目変化領域の判定が行なわれる。
【0091】
まずステップS37,S38にて遮蔽判定部245は注目変化領域が静止物による変化領域であることを確認する。すなわち遮蔽判定部245は、注目変化領域の移動距離を静止判定距離と比較し(S37)、移動距離が静止判定距離以上であれば以降のステップS38〜S42をスキップする(S37にてNO→S43)。移動距離が静止判定距離未満であれば(S37にてYES)、遮蔽判定部245はさらに追跡時間を静止判定時間と比較する(S38)。追跡時間が静止判定時間未満であれば、遮蔽判定部245は以降のステップS39〜S42をスキップする(S38にてNO→S43)。
【0092】
注目変化領域が静止物によるものと確認した遮蔽判定部245は現時刻における注目変化領域の抽出位置が遮蔽検知エリア内であるか否かを確認し(S39)、さらに注目変化領域の画素数(大きさ)を計数して容認サイズと比較する(S40)。抽出位置が遮蔽検知エリア内で大きさが容認サイズ以上であれば注目変化領域は侵入検知を妨げる遮蔽物によるものであるとして遮蔽異常情報を生成して記憶部23に一時記憶させる(S39にてYES→S40にてYES→S41)。
【0093】
他方、注目変化領域の抽出位置が遮蔽検知エリア内でなければ、又は大きさが容認サイズ未満であれば、注目変化領域は容認遮蔽物によるものであるとして注目変化領域の情報を容認遮蔽物情報に記憶させる(S39にてNO→S40,S40にてYES→S40)。
【0094】
遮蔽判定部245がステップS41又はS42の処理を終えると、制御部24は全変化領域の判定が終わったか確認する(S43)。全変化領域の判定が終わっていなければ(S43にてNO)、制御部24はステップS30に処理を戻して次の変化領域の判定を開始し、全変化領域の判定が終わったならば(S43にてYES)、制御部24は図10のステップS17へ処理を進める。
【0095】
図10に戻り、侵入判定部244及び遮蔽判定部245は一時記憶した異常情報の有無を確認し(S17)、侵入異常情報があれば侵入判定部244は当該情報を通信部25に出力し、遮蔽異常情報があれば遮蔽判定部245は当該情報を通信部25に出力する(S17にてYES→S18)。いずれの異常情報もなければ(S17にてNO)、ステップS18はスキップされる。
【0096】
続いて変化領域抽出部242は監視画像を用いて背景画像235を更新する(S19)。すなわち変化領域抽出部242は、監視画像から現時刻にて変化領域が検出されなかった領域を切り出して切り出した画像と背景画像235とをα:(1−α)の割合で重み付け加算して背景画像235を更新し、さらに現時刻にて容認遮蔽物の変化領域と判定された領域があれば監視画像から当該領域を切り出して、背景画像235における対応部分を切り出した画像で置換して背景画像235を更新する。ただしαは、0<α<1の範囲で予め設定された値である。
【0097】
以上の処理を終えると、処理はステップS11へ戻され、次時刻の監視画像に対する処理が行われる。
【0098】
上記実施形態においては計測部として監視カメラを用いた撮像部21を例示したが、走査型のレーザーセンサーを計測部として用いることもできる。この場合、計測部はレーザースキャンにより監視エリアを計測して距離画像を出力し、変化領域抽出部は距離画像を用いて背景画像の生成・更新と変化領域の抽出を行う。移動距離判定部(変化領域追跡部)、侵入判定部、及び遮蔽判定部による変化領域を用いた処理は上記実施形態と同様にして行なうことができる。
【0099】
また侵入判定部244は赤外線センサー、レーザーセンサー、マイクロ波センサー、熱画像センサーなどで実現することもできる。この場合、これらの侵入判定部244の視野と撮像部21の視野とが一致するように調整しておけばよい。
【0100】
また上記実施形態においては建物外周を監視する例を示したが、金庫とその周辺など屋内外を問わず各種重要物まわりを監視する用途に応用可能である。
【0101】
また上記実施形態においては遮蔽検知エリアを自動作成する例を示したが、管理者が設定入力部22を操作して遮蔽検知エリアを設定入力してもよい。この場合、管理者のひとりが動き判定距離を実測して複数の代表位置を指し示し、管理者のもうひとりが設定入力部22の表示上で実測者が指し示す位置を入力するとよい。
【符号の説明】
【0102】
1・・・外周監視システム
2・・・画像センサー
3・・・認証装置
4・・・携帯端末
5・・・コントローラー
6・・・センター装置
21・・・撮像部
22・・・設定入力部
23・・・記憶部
231・・・カメラパラメーター
232・・・建物エリア
233・・・侵入検知エリア
234・・・遮蔽検知エリア
235・・・背景画像
236・・・変化領域情報
24・・・制御部
241・・・監視エリア設定部
242・・・変化領域抽出部
243・・・変化領域追跡部
244・・・侵入判定部
245・・・遮蔽判定部
25・・・通信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重要物とその外周を含む侵入検知エリアへの侵入者を検知する侵入検知装置であって、
前記侵入検知エリアを所定時間おきに計測して計測信号を出力する計測部と、
前記侵入検知エリア、前記重要物が存在する重要エリア、及び前記計測を妨げる遮蔽物の存在を検知するための遮蔽検知エリアを記憶する記憶部と、
互いに異なる時点の前記計測信号を比較して変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
各時点における前記変化領域の抽出位置から移動距離を算出する移動距離算出部と、
前記侵入検知エリアにて抽出された前記変化領域の前記移動距離が予め設定された静止判定距離以上であることに基づいて前記侵入者の存在を判定する侵入判定部と、
前記遮蔽検知エリアにて抽出された前記変化領域の前記移動距離が前記静止判定距離未満であることに基づいて前記遮蔽物の存在を判定する遮蔽判定部と、
を備え、
前記遮蔽検知エリアは、前記重要エリアの周囲にて前記侵入者が前記静止判定距離を移動するときの前記移動距離を算出可能な範囲に設定されたことを特徴とする侵入検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の侵入検知装置において、
前記遮蔽検知エリアは前記侵入者が前記重要エリアの周囲にて前記所定時間で移動可能な範囲に設定された侵入検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の侵入検知装置において、
前記遮蔽検知エリアは前記侵入者が前記重要エリアの周囲にて前記静止判定距離を移動する範囲に設定された侵入検知装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかひとつに記載の侵入検知装置において、
前記計測部は前記侵入検知エリアを撮像して画像を出力し、
さらに、前記画像を表示して当該表示上で前記重要エリアを入力可能な設定入力部と、
前記設定入力部から入力された重要エリアを基準にして前記遮蔽検知エリアを算出する監視エリア設定部と、
を備えた侵入検知装置。
【請求項1】
重要物とその外周を含む侵入検知エリアへの侵入者を検知する侵入検知装置であって、
前記侵入検知エリアを所定時間おきに計測して計測信号を出力する計測部と、
前記侵入検知エリア、前記重要物が存在する重要エリア、及び前記計測を妨げる遮蔽物の存在を検知するための遮蔽検知エリアを記憶する記憶部と、
互いに異なる時点の前記計測信号を比較して変化領域を抽出する変化領域抽出部と、
各時点における前記変化領域の抽出位置から移動距離を算出する移動距離算出部と、
前記侵入検知エリアにて抽出された前記変化領域の前記移動距離が予め設定された静止判定距離以上であることに基づいて前記侵入者の存在を判定する侵入判定部と、
前記遮蔽検知エリアにて抽出された前記変化領域の前記移動距離が前記静止判定距離未満であることに基づいて前記遮蔽物の存在を判定する遮蔽判定部と、
を備え、
前記遮蔽検知エリアは、前記重要エリアの周囲にて前記侵入者が前記静止判定距離を移動するときの前記移動距離を算出可能な範囲に設定されたことを特徴とする侵入検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の侵入検知装置において、
前記遮蔽検知エリアは前記侵入者が前記重要エリアの周囲にて前記所定時間で移動可能な範囲に設定された侵入検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の侵入検知装置において、
前記遮蔽検知エリアは前記侵入者が前記重要エリアの周囲にて前記静止判定距離を移動する範囲に設定された侵入検知装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかひとつに記載の侵入検知装置において、
前記計測部は前記侵入検知エリアを撮像して画像を出力し、
さらに、前記画像を表示して当該表示上で前記重要エリアを入力可能な設定入力部と、
前記設定入力部から入力された重要エリアを基準にして前記遮蔽検知エリアを算出する監視エリア設定部と、
を備えた侵入検知装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−215983(P2012−215983A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79618(P2011−79618)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】
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