説明

便器洗浄装置

【課題】節水化のために排水弁が排水口を迅速に閉鎖することを可能にしながら、排水弁による排水口の閉鎖時に発生する音を防ぐことができる便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明の便器洗浄装置18は、洗浄水タンク20と、この洗浄水タンクの排水口22を開放して便器本体2に洗浄水を供給し、排水口を閉鎖して洗浄水の供給を停止する排水弁38であって、閉弁行程において排水弁の開度が小さくなる程排水弁を閉鎖させる方向に増大した弁閉鎖力を洗浄水の流れにより受ける排水弁と、この排水弁を開閉させるように駆動するモータ42と、このモータを制御するコントローラ30と、を有し、コントローラは、洗浄水タンク内の洗浄水の一部を使用して便器本体2を洗浄する洗浄モードを実行すると共に、この洗浄モードにおける排水弁の閉弁行程において、排水弁に作用する弁閉鎖力に抗して排水弁を開放させる方向のブレーキ力が発生するようにモータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄装置に係り、特に、洗浄水タンクに溜めた洗浄水によって水洗大便器を洗浄する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、洗浄水タンクの排水口を開閉する弁体が玉鎖を介してアームの先端に連結され、洗浄水タンクの排水口を開放する際には、モータの駆動によってアームと共に弁体及び玉鎖を連動させて引き上げて排水口を開放し、排水口を閉鎖する際には、弁体の自重によって排水口を閉鎖し、便器の本体の洗浄に必要な洗浄水を便器へ供給し、大洗浄用と小洗浄用の2種類の洗浄水量による便器洗浄が可能な便器洗浄装置が知られている。
また、例えば、特許文献2に記載されているように、大洗浄用と小洗浄用の2種類の洗浄水量による便器洗浄が可能な従来の便器洗浄装置においては、便器の非洗浄時に、弁体が確実に排水口を閉鎖するように、ばねの付勢力を利用して弁体を閉弁する方向に付勢するようにしたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−25428号公報
【特許文献2】特開2004−211301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の便器洗浄装置において、特に、小洗浄を行う場合には、排水弁が上昇し、予め止水水位まで貯水されていた洗浄水タンクの排水口を開放し、洗浄水の一部のみを便器本体に供給した後、排水弁が下降し、排水口を閉鎖して小洗浄を行うため、この排水弁が開放状態から閉鎖状態へ至るまでの閉弁行程おいては、洗浄水タンク内に洗浄水を残したままの状態で行われる。この際、洗浄水タンク内に残された洗浄水が排水口から流出する流れが、排水弁を排水口に向けて吸い込む力(吸込み力)を発生させ、このような吸込み力が、排水弁の開度が小さくなる程、排水弁を閉鎖させる方向に作用して排水弁の閉弁速度を増大させるため、排水弁の閉鎖時には排水弁と排水口が勢いよく衝突して大きな音を発生させ、便器の使用者に不快感を与えてしまうおそれがあるという問題があり、特に、小洗浄時に発生しやすいこのような不快な音を抑制することが重要な課題となっている。
【0005】
また、上述した従来の便器洗浄装置においては、便器洗浄に使用される洗浄水量の節水化についても、従来から要請されている課題となっており、いかに排水弁が排水口を迅速に閉鎖して節水化を可能にしながら、洗浄水タンク内に洗浄水の一部のみを使用して小洗浄を行う際に発生しやすい不快な音を抑制することが重要な課題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、節水化のために洗浄水タンク内の洗浄水の一部のみを便器本体に供給して便器洗浄を行うような場合においても、排水弁が排水口を迅速に閉鎖することを可能にしながら、排水弁による排水口の閉鎖時に発生する音を防ぐことができる便器洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水タンクに溜めた洗浄水によって水洗大便器を洗浄する便器洗浄装置であって、底面に排水口が形成され、洗浄水を貯水する洗浄水タンクと、この洗浄水タンク内に配置され、上記排水口を開放して水洗大便器に洗浄水を供給し、上記排水口を閉鎖して洗浄水の供給を停止する開閉弁であって、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁の開度が小さくなる程上記開閉弁を閉鎖させる方向に増大した弁閉鎖力を洗浄水の流れにより受ける上記開閉弁と、この開閉弁を開閉させるように駆動するモータと、このモータを制御する制御手段と、を有し、上記制御手段は、上記洗浄水タンク内の洗浄水の一部を使用して水洗大便器を洗浄する洗浄モードを実行すると共に、この洗浄モードにおける上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁に作用する上記弁閉鎖力に抗して上記開閉弁を開放させる方向のブレーキ力が発生するように上記モータを制御することを特徴ことを特徴としている。
このように構成された本発明においては、洗浄水タンク内の洗浄水の一部を使用して水洗大便器を洗浄する洗浄モード(例えば、小洗浄モード)による開閉弁の閉弁行程において、開閉弁の開度が小さくなる程、開閉弁を閉鎖させる方向に増大した弁閉鎖力を開閉弁が洗浄水の流れによって受けていても、開閉弁に作用する弁閉鎖力に抗して開閉弁を開放させる方向のブレーキ力が発生するように制御手段がモータを制御するため、開閉弁の閉弁速度を調整するために別部材を用いることなく簡易な構成によって、モーターが発生させる開閉弁を開放させる方向のブレーキ力を単純に調整するだけで、開閉弁の閉弁速度を簡単に調整することができる。したがって、節水化のために洗浄水タンク内の洗浄水の一部のみを水洗大便器に供給して便器洗浄を行うような場合においても、開閉弁が排水口を迅速に閉鎖することを可能にしながら、開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音を防ぐことができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、更に、上記開閉弁に作用する弁閉鎖力を補正する弁閉鎖力補正手段を有し、上記弁閉鎖力と、上記弁閉鎖力補正手段が発生させる補正力との合力は、上記モータが発生させるブレーキ力よりも大きい。
このように構成された本発明においては、洗浄水タンク内の洗浄水の一部を使用して水洗大便器を洗浄する洗浄モードによる開閉弁の閉弁行程において、開閉弁に作用する弁閉鎖力に抗して開閉弁を開放させる方向のブレーキ力が弁閉鎖力と弁閉鎖力補正手段が発生させる補正力との合力以上になるようにモータを制御した場合には、それが一時的なものであったとしても、開閉弁が開放する方向に作動しようとするため、開閉弁の閉弁速度が遅くなり、開閉弁が閉鎖しにくく、返って節水効果を低下させてしまうことになるが、開閉弁の閉弁行程において、開閉弁に作用する弁閉鎖力に抗して開閉弁を開放させる方向のブレーキ力が弁閉鎖力と弁閉鎖力補正手段が発生させる補正力との合力よりも小さくなるようにモータを制御することにより、洗浄水タンク内の水位が低下すると共に開閉弁が閉鎖されるにつれて弁閉鎖力が増大しても、節水化のために開閉弁が排水口を迅速に閉鎖することを可能にしながら、開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音を確実に防ぐことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記弁閉鎖力補正手段は、上記弁閉鎖力と上記補正力との合力が弁開度にかかわらずほぼ一定の力となるように上記開閉弁を閉鎖させる方向の補正力を発生させる。
このように構成された本発明においては、弁閉鎖力補正手段が、弁閉鎖力と補正力との合力が弁開度にかかわらずほぼ一定の力となるように開閉弁を閉鎖させる方向の補正力を発生させるため、開閉弁を開放させる方向のブレーキ力をほぼ一定の力とすることができ、制御手段によるモータの制御を簡単に行うことができる。また、弁閉鎖力と補正力との合力がほぼ一定であるため、弁開度に応じてブレーキ力を変化させる必要がなくなり、弁開度の検知手段を設けることなく簡単な構成で開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記弁閉鎖力補正手段は、上記開閉弁を閉鎖させる方向の力を発生させる付勢部材であり、この付勢部材が発生させる付勢力は、上記開閉弁の開度が大きくなる程増大する。
このように構成された本発明においては、弁閉鎖力補正手段が、開閉弁を閉鎖させる方向の力を発生させる付勢部材であり、この付勢部材が発生させる付勢力が、開閉弁の開度が大きくなる程増大するため、付勢部材という簡易な構成によって、弁閉鎖力が補正されて弁開度に対して一定の力に近づかせることができる。したがって、弁開度の検知を行う必要がなく、制御手段によるモータの制御を簡単に行うことができ、開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記付勢部材は、上記開閉弁の開度が所定の開度以下の場合に、その付勢力がゼロになる。
このように構成された本発明においては、開閉弁の開度が所定の開度以下の場合に付勢部材の付勢力がゼロになるため、節水のために開閉弁が排水口を迅速に閉鎖することを可能にしながら、開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁により上記排水口を閉鎖しているときの弁閉鎖力と補正力の合力よりも上記モータが発生させるブレーキ力が常に小さくなるように上記モータを制御する。
このように構成された本発明においては、開閉弁の閉弁行程において、開閉弁により排水口を閉鎖しているときの弁閉鎖力と補正力の合力よりもモータが発生させるブレーキ力が常に小さくなるように制御手段がモータを制御するため、開閉弁が排水口を閉鎖し、洗浄水の流れによる開閉弁をさらに閉鎖させる方向の力(吸込み力)がなくなった状態で、モータの停止操作のタイミングを無造作に行ったりしたとしても、開閉弁が再び開放されてしまう不具合を防ぐことができ、開閉弁による排水口の閉鎖を確実に行うことができる。したがって、開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁が上記排水口を閉鎖した後も、上記ブレーキ力が発生しているように上記モータを制御する。
このように構成された本発明においては、開閉弁の閉弁行程において、開閉弁が排水口を閉鎖した後も、ブレーキ力が発生しているように制御手段がモータを制御するため、開閉弁が排水口を完全に閉鎖するまで、弁閉鎖力に抗して開閉弁を開放させる方向のブレーキ力を開閉弁に作用させることができ、開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記開閉弁が上記排水口を閉鎖しているときの弁閉鎖力は、上記開閉弁の自重により上記開閉弁を閉鎖させる方向に発生するものであり、上記制御手段は、上記開閉弁の自重により上記開閉弁を閉鎖させる方向に発生する弁閉鎖力よりも上記ブレーキ力が小さくなるように上記モータを制御する。
このように構成された本発明においては、開閉弁が排水口を閉鎖しているときの弁閉鎖力は、開閉弁の自重により開閉弁を閉鎖させる方向に発生するものであり、制御手段が、開閉弁の自重により開閉弁を閉鎖させる方向に発生する弁閉鎖力よりもブレーキ力が小さくなるようにモータを制御するため、開閉弁が排水口を閉鎖した後、洗浄水の流れによる開閉弁をさらに閉鎖させる方向の力(吸込み力)がなくなっても、簡易な構成によって、開閉弁による排水口の閉鎖を確実に行うことができ、開閉弁による排水口の閉鎖状態を維持することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記制御手段は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記モータに一定の電圧を加えることにより一定のブレーキ力を発生させる。
このように構成された本発明においては、開閉弁の閉弁行程において、制御手段がモータに一定の電圧を加えることにより一定のブレーキ力を発生させるため、弁開度の検知を行う必要がなく、制御手段によるモータの制御を簡単に行うことができ、開閉弁による排水口の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、上記付勢部材は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁が上記排水口を閉鎖した後も、上記開閉弁を閉鎖させる方向の付勢力を発生させる。
このように構成された本発明においては、付勢部材が、開閉弁の閉弁行程において、開閉弁が排水口を閉鎖した後も、開閉弁を閉鎖させる方向の付勢力を発生させるため、開閉弁が排水口を閉鎖し、洗浄水の流れによる開閉弁をさらに閉鎖させる方向の力(吸込み力)がなくなっても、開閉弁により排水口を閉鎖した後の開閉弁を閉鎖させる方向の付勢力によって、開閉弁による排水口の閉鎖状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の便器洗浄装置によれば、節水化のために洗浄水タンク内の洗浄水の一部のみを便器本体に供給して便器洗浄を行うような場合においても、排水弁が排水口を迅速に閉鎖することを可能にしながら、排水弁による排水口の閉鎖時に発生する音を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態による便器洗浄装置が適用された水洗大便器を示す側面断面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器から便器洗浄装置を取り外した状態の便器本体を示す平面図である。
【図3】図1に示す水洗大便器の便器本体及びこれに配置された便器洗浄装置を示す正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の内部を前方斜め上方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による便器洗浄装置を示す正面断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の駆動装置の内部を示す部分断面図である。
【図7】図7の(a)は本発明の第1実施形態による便器洗浄装置により実行される3種類の洗浄モード(大洗浄モード、小洗浄洗浄モード、エコ小洗浄モード)における排水弁の高さ(排水弁の開度)に関するタイムチャートであり、図7の(b)は本発明の第1実施形態による便器洗浄装置により実行される3種類の洗浄モード(大洗浄モード、小洗浄洗浄モード、エコ小洗浄モード)における駆動装置の電圧実効値に関するタイムチャートである。
【図8】図8の(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の排水弁が開放状態から閉鎖状態へ至るまで行程(排水弁の閉弁行程)における排水弁及び駆動装置の動作を模式的に説明した動作図である。
【図9】本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の排水弁の閉弁行程における排水弁の高さと排水弁に作用する力(合力)との関係を示す特性図である。
【図10】図10の(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態による便器洗浄装置の排水弁の閉弁行程における排水弁及び駆動装置の動作を模式的に説明した動作図である。
【図11】本発明の第2実施形態による便器洗浄装置の排水弁の閉弁行程における排水弁の高さと排水弁に作用する力(合力)との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面により、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置を説明する。
まず、図1〜図3により、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置が適用された水洗便器を説明する。
図1は本発明の第1実施形態による便器洗浄装置が適用された水洗大便器を示す側面断面図であり、図2は図1に示す水洗大便器から便器洗浄装置を取り外した状態の便器本体を示す平面図であり、図3は図1に示す水洗大便器の便器本体及びこれに配置された便器洗浄装置を示す正面図である。
【0020】
図1〜図3に示すように、符号1は洗い落し式の水洗大便器を示し、この洗い落し式の水洗大便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2の上部の前方側には、ボウル部4が形成され、後方側の上部には導水路6が、導水路6の下方にはボウル部4と連通する排水トラップ管路8が、それぞれ形成されている。
【0021】
便器本体2のボウル部4の上縁部内側にはオーバーハング形状のリム10が形成され、さらに、このリム10の一部には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部4を洗浄するようになっている。
【0022】
排水トラップ管路8の近傍で且つボウル部4の下方には、一点鎖線で溜水面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、上述した排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。
【0023】
また、ボウル部4の中心下部の溜水面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0024】
さらに、便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する便器洗浄装置18が設けられている。この便器洗浄装置18は、洗浄水タンク20を備え、この洗浄水タンク20の底部には、上下方向に延びる排水口22が形成され、この排水口22の下端は便器本体2の導水路6と連通し、洗浄水タンク20内の洗浄水が排水口22から便器本体2の導水路6に排水されるようになっている。
【0025】
つぎに、図4及び図5により、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置18について説明する。図4は本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の内部を前方斜め上方から見た斜視図であり、図5は本発明の第1実施形態による便器洗浄装置を示す正面断面図である。
ここで、図5において、洗浄水タンク20内のオーバーフロー水位をWOFで示し、洗浄水タンク20内の満水時の水位(止水水位)をWL1で示している。また、各洗浄モード(エコ小洗浄モード、小洗浄モード、大洗浄モード)における洗浄水タンク20内の排水時の最低水位をそれぞれWL2、WL3、WL4で示している。
【0026】
図4及び図5に示すように、本実施形態による便器洗浄装置18の洗浄水タンク20内には、洗浄水タンク20内に洗浄水を供給する給水装置24、便器本体2へ洗浄水を供給する排水装置26、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位Wが止水水位WL1となった状態を検知するフロートスイッチである水位センサ28が設けられ、また、洗浄水タンク20外には、種々の装置を制御する制御手段であるコントローラ30、使用者が操作する操作ボタン32、及び、排水装置26を駆動する駆動装置34が設けられている。
操作ボタン32は、例えば、3種類の洗浄水量による洗浄モード(大洗浄モード、小洗浄モード、エコ小洗浄モード)の操作ボタンを備え、洗浄水量は、例えば、大洗浄モードで4.8リットル、小洗浄モードで4.0リットル、エコ洗浄モードで3.8リットルとなっている。
【0027】
コントローラ30は、給水装置24、水位センサ28、操作ボタン32、及び、駆動装置34と接続され、操作ボタン32から受信した洗浄開始信号や水位センサ28からの検知情報に基づいて給水装置24や駆動装置34の作動を制御するようになっている。
【0028】
給水装置24は、水道等の給水源(図示せず)に接続された定流量弁24a、給水バルブ24b、及び、給水口24cを備え、水位センサ28の水位検知情報に基づいてコントローラ30からの指令により給水バルブ24bの開閉動作が制御され、給水装置24の給水口24cから洗浄水タンク20内への洗浄水の給水又は止水が切り替えられるようになっている。
【0029】
排水装置26は、オーバーフロー管36と、オーバーフロー管36の下端部に固着されて排水口22を開閉する開閉弁である排水弁38と、オーバーフロー管36を電気的駆動力により上下動させることにより排水弁38を開閉操作する駆動装置34(詳細は後述する)を備えている。
また、洗浄水タンク20の排水口22の周辺部には、排水弁38の上下動をガイドし且つ高さ位置を規制するガイド部材40が取り付けられている。
【0030】
オーバーフロー管36は、洗浄水タンク20の排水口22と対向する下端開口部36aから上端開口部36bまで延びる円筒状の管部材である。そして、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位Wが、満水時の止水水位WL1を超えてさらに水位WOFまで上昇し、オーバーフロー管36の上端開口部36bの高さ位置を上回ったときには、洗浄水がオーバーフローし、オーバーフロー管36の上端開口部36bから下端開口部36aを経て洗浄水タンク20の排水口22から便器本体2側に排水(供給)されるようになっている。
【0031】
つぎに、図6により、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置18の駆動装置34について説明する。図6は本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の駆動装置の内部を示す部分断面図である。
駆動装置34は、ケーシング34a内に設けられたDCモータ42、このケーシング34の内部から洗浄水タンク20内の中央に向って水平方向に延びる出力回転軸44、中間ギヤ46、出力回転軸44に固定された出力ギヤ48、及び、ねじりコイルばね50を備えている。
【0032】
DCモータ42は、モータ回転軸42aを備え、このモータ回転軸42aの先端にはギヤ42bが取り付けられている。このDCモータ42のギヤ42bは中間ギヤ46と噛み合い、この中間ギヤ46が出力ギヤ48と噛み合うことにより、DCモータ42のモータ回転軸42aの回転力が、ギヤ42b、中間ギヤ46、出力ギヤ48を介して出力回転軸44に伝達されるようになっている。
なお、本実施形態では、駆動装置34に使用するモータの一例としてDCモータを採用しているが、DCモータ以外の種類のモータ(例えば、ACモータ、その他のモータ等)についても適用可能である。
【0033】
また、出力ギヤ48の中央部は、出力回転軸44を取り囲むように、洗浄水タンク20の内部に向けて軸方向にほぼ円筒状に突出する円筒部48aを形成し、この出力ギヤ48の円筒部48aの外周部には、ねじりコイルばね50が取り付けられている。
【0034】
さらに、ケーシング34aの内部には、ねじりコイルばね50の下側部分を下方から支持するようにばね受け部34bが形成されており、ねじりコイルばね50の下側部分は、出力ギヤ48の円筒部48a及びばね受け部34bの双方によって保持されるようになっている。
【0035】
ねじりコイルばね50を成形するばね素線の両端部は、ねじりコイルばね50の外側に所定長さ突出するアーム部50a,50bを形成し、これらのアーム部50a,50bに荷重が作用することにより、ねじりコイルばね50のコイル中心軸回りのトルクが発生して、ねじりコイルばね50全体がねじり変形するようになっている。
【0036】
また、出力ギヤ48は、円筒部48aの外周側の一部と対向するように、円筒部48aから径方向外側に所定間隔を置いて形成されたばね付勢部48bを備えている。このばね付勢部48bは、出力ギヤ48が出力回転軸44と共に回転した際に、この回転した方向に応じて、ねじりコイルばね50のアーム部50a,50bのいずれか一方を付勢することができるようになっている。
【0037】
さらに、この駆動装置34から延びる出力回転軸44の先端には、玉鎖52が取り付けられている。この玉鎖52の下方部分は、オーバーフロー管36の下端開口部36aから下方に突出する玉鎖取付部36cに取り付けられている。
駆動装置34が玉鎖52を上方に引き上げるように出力回転軸44を回転させると、オーバーフロー管36及び排水弁38が玉鎖52と共に上昇し、駆動装置34が玉鎖52を引き下げるように出力回転軸44を回転させると、オーバーフロー管36及び排水弁38が玉鎖52と共に下降するようになっている。
【0038】
つぎに、図7〜図9により、上述した本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の動作(作用)を説明する。
まず、図7により、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置により実行される3種類の洗浄モード(大洗浄モード、小洗浄洗浄モード、エコ小洗浄モード)における排水弁及び駆動装置の動作に関するタイムチャートについて概略的に説明する。
図7の(a)は、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置により実行される3種類の洗浄モード(大洗浄モード、小洗浄洗浄モード、エコ小洗浄モード)における排水弁の高さ(排水弁の開度)に関するタイムチャートであり、図7の(b)は、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置により実行される3種類の洗浄モード(大洗浄モード、小洗浄洗浄モード、エコ小洗浄モード)における駆動装置の電圧実効値に関するタイムチャートである。
【0039】
まず、図7(a)及び図7(b)に示すように、大洗浄モードの場合には、時刻t0において、使用者が操作ボタン32の大洗浄モードを選択すると、駆動装置34のDCモータ42の電圧実効値がV1(例えば、V1=24[V])となり、排水弁38が上昇して排水口22を開放し、排水弁38の開弁行程が開始する。時刻t1で、図5に示す洗浄水タンク20の底面20aの排水口22に対する排水弁38の高さH(排水弁38の開度)がH1に到達し、時刻t7までDCモータ42の電圧実効値V1と排水弁38の高さH1が一定に保持された状態で、排水口22が開放される。
その後、時刻t7で、駆動装置34のDCモータ42の電圧実効値がV1からV2(例えば、V2=5[V])まで低下すると、排水弁38が下降して排水弁38の閉弁行程が開始し、その後、時刻t9にかけて、排水弁38の閉弁速度が、排水弁38を開放させる方向の一定のブレーキ力が排水弁38に作用し、時刻t0〜t1までの排水弁38の開弁速度よりも遅くなるように、コントローラ30が駆動装置34を制御する。ここで、排水弁38は、駆動装置34により排水弁38を開放させる方向の一定のブレーキ力の他に、排水弁38の密度が水よりも大きいので、排水弁38を閉鎖させる方向(下方向)の自重が作用している。
時刻t9で排水弁38が排水口22を閉鎖した後、所定時間経過した時刻t10で駆動装置34のDCモータ42の電圧実効値がゼロとなり、排水弁38が排水口22を閉鎖した後の時刻t10まで、排水弁38を開放させる方向の一定のブレーキ力が発生するようにコントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御する。
ここで、時刻t9で排水弁38が排水口22を閉鎖した際には、洗浄水タンク20内の貯水された洗浄水のほぼすべての量(4.8リットルの洗浄水量)が排水口22から便器本体2の導水路6に供給され、図5に示す洗浄水タンク20内の最低水位WL4はゼロとなる。
【0040】
つぎに、図7(a)及び図7(b)に示すように、小洗浄モードの場合には、時刻t0〜t1までは、排水弁38の閉弁速度が大洗浄モードの場合と同一である。
また、小洗浄モードの場合の開弁行程時間(時刻t0〜t4)が、大洗浄モードの場合(時刻t0〜t7)よりも短くなっている。
さらに、小洗浄モードの場合の閉弁行程時間(時刻t4〜t6)が、大洗浄モードの場合(時刻t7〜t9)よりも短くなっている。
また、時刻t6で排水弁38が排水口22を閉鎖した後、所定時間経過した時刻t8で駆動装置34のDCモータ42の電圧実効値がゼロとなり、排水弁38が排水口22を閉鎖した後の時刻t8まで、排水弁38を開放させる方向の一定のブレーキ力がするようにコントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御する。
ここで、時刻t6で排水弁38が排水口22を閉鎖した際には、洗浄水タンク20内の貯水された洗浄水のすべての量(4.8リットルの洗浄水量)のうちの一部(4.0リットルの洗浄水量)が排水口22から便器本体2の導水路6に供給され、残りの洗浄水が図5に示す洗浄水タンク20内の最低水位WL3で貯水されている。
【0041】
つぎに、図7(a)及び図7(b)に示すように、エコ小洗浄モードの場合には、時刻t0〜t1までは、排水弁38の閉弁速度が大洗浄モードの場合と同一である。
また、エコ小洗浄モードの場合の開弁行程時間(時刻t0〜t2)が、小洗浄モードの場合(時刻t0〜t4)よりもさらに短くなっている。
さらに、エコ小洗浄モードの場合の閉弁行程時間(時刻t2〜t3)が、小洗浄モードの場合(時刻t4〜t6)とほぼ同一、又はこれよりも短くなっている。
また、時刻t3で排水弁38が排水口22を閉鎖した後、所定時間経過した時刻t5で駆動装置34のDCモータ42の電圧実効値がゼロとなり、排水弁38が排水口22を閉鎖した後の時刻t5まで、排水弁38を開放させる方向の一定のブレーキ力がするようにコントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御する。
ここで、時刻t3で排水弁38が排水口22を閉鎖した際には、洗浄水タンク20内の貯水された洗浄水のすべての量(4.8リットルの洗浄水量)のうちの一部(3.8リットルの洗浄水量)が排水口22から便器本体2の導水路6に供給され、残りの洗浄水が図5に示す洗浄水タンク20内の最低水位WL2で貯水され、この最低水位WL2は、小洗浄モードの場合の最低水位WL3よりも高くなっている。
【0042】
つぎに、図8及び図9により、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の排水弁が開放状態から閉鎖状態へ至るまで行程(排水弁の閉弁行程)に着目し、特に、洗浄水タンク内の洗浄水の一部を使用して便器を洗浄するエコ小洗浄モード又は小洗浄モードに関する排水弁及び駆動装置の動作について、具体的に説明する。
図8の(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の排水弁の閉弁行程における排水弁及び駆動装置の動作を模式的に説明した動作図である。ここで、図8の(a)〜(d)に示されている駆動装置については、図6のVIII−VIII線に沿った断面について示している。
【0043】
また、図9は、本発明の第1実施形態による便器洗浄装置の排水弁の閉弁行程における排水弁の高さと排水弁に作用する力(合力)との関係を示す特性図である。ここで、図9の横軸は、閉弁行程における排水弁の高さ(排水弁の開度)を示しており、図9の縦軸は、排水弁に作用する排水弁を開放させる方向の力を正とし、排水弁を閉鎖させる方向の力を負としている。また、図9の線図(i)は、排水弁の自重と排水口の吸込み力が排水弁に作用する力を示し、図9の線図(ii)は、ねじりコイルばねが排水弁を閉鎖させる方向に作用する力(付勢力)を示し、図9の線図(iiiあ)は、コントローラが駆動装置のモータを制御して排水弁に作用させている排水弁を開放させる方向の一定のブレーキ力を示している。さらに、図9の線図(i)+(ii)は、ぞれぞれの線図(i)と線図(ii)の2つの合力を示しており、図9の線図(i)+(ii)+(iii)は、各線図(i),(ii),(iii)の3つの合力を示している。
【0044】
特に、洗浄水タンク20内の洗浄水の一部を使用して便器本体2を洗浄するエコ小洗浄モード又は小洗浄モードに関する排水弁38の図8の(a)〜(d)に示す閉弁行程では、まず、図9の線図(i)で示されているように、排水弁38の高さが低く、排水弁38の開度が小さくなる程、排水弁38の自重と洗浄水の流れによる排水口22の吸込み力によって排水弁38を閉鎖させる方向(負方向)の力(以下「弁閉鎖力」)の大きさが増大して作用している。
【0045】
一方、排水弁38の閉弁行程では、図9の線図(iii)で示されているように、排水弁38に作用する弁閉鎖力に抗して、排水弁38を開放させる方向(正方向)の一定のブレーキ力が発生するようにコントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御している。
【0046】
さらに、排水弁38の閉弁行程では、図9の線図(ii)で示されているように、ねじりコイルばね50が、排水弁38に作用する弁閉鎖力を補正する弁閉鎖力補正手段として機能し、排水弁38の高さが高く、排水弁38の開度が大きくなる程、排水弁38を閉鎖させる方向の付勢力の大きさがほぼ一定の増加割合で増大し、このようなねじりコイルばね50の付勢力が、弁閉鎖力の補正力として作用している。
すなわち、図8の(a)に示されているように、排水弁38の高さ(開度)が上限に達した状態では、排水弁38を開放するために駆動装置34の出力回転軸44が玉鎖52を引き上げる方向に所定角度回転した状態を維持するように一定のブレーキ力が発生していると共に、出力回転軸44の出力ギア48のばね付勢部48bが、ねじりコイルばね50のアーム部50aを最大限に付勢した状態となっている。このとき、出力回転軸44の出力ギア48のばね付勢部48bは、駆動装置34によってケーシング34aのばね受け部34bの下方の基準位置から所定角度上昇すると共に、ねじりコイルばね50のアーム部50aによって、排水弁38を閉鎖させる方向に出力回転軸44の出力ギア48のばね付勢部48bを回転させようとする付勢力が、上述した弁閉鎖力の補正力として作用している。
【0047】
また、図9の線図(i)+(ii)及び線図(iii)に示すように、線図(iii)の駆動装置34のDCモータ42による排水弁38を開放させる方向のブレーキ力の大きさは、排水弁38の高さ(開度)にかかわらず、排水弁38を閉鎖させる方向の線図(i)に示す弁閉鎖力と線図(ii)に示す補正力との合力の大きさよりも常時小さくなっている。
さらに、図9の線図(i)+(ii)+(iii)に示すように、排水弁38の閉弁行程では、排水弁38に作用する各線図(i),(ii),(iii)の3つの合力が、排水弁38の高さ(開度)に対して常時排水弁38を閉鎖させる方向(負方向)の力として作用し、且つ、排水弁38の高さ(開度)に対して一定の力に近づくような力特性となる。
すなわち、図8の(a)で洗浄水タンク20から便器本体2へ洗浄水が供給されて洗浄水タンク20内の水位が止水水位WL1から次第に低下すると、排水弁38の高さ(開度)も水位の低下と共に低下し、図8の(b)を経て、図8の(c)の状態で、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位が最低水位(エコ小洗浄の場合はWL2、小洗浄の場合はWL3)まで低下すると、駆動装置34のDCモータ42による排水弁38を開放させる方向(正方向)の一定のブレーキ力の大きさを上回る線図(i)の弁閉鎖力と線図(ii)の補正力との合力によって、排水弁38の高さ(開度)がゼロとなって排水口22が閉鎖される。
【0048】
また、図8の(c)及び(d)に示されているように、図8の(c)で排水弁38の高さ(開度)がゼロに減少した後については、排水口22が閉鎖されているため、図9の線図(i)のうちの排水弁38の自重のみが作用し、排水口22の洗浄水の流れによる吸込み力は作用していない状態であるが、図8の(d)では、ねじりコイルばね50のアーム部50aによって、排水弁38を閉鎖させる方向に出力回転軸44の出力ギア48のばね付勢部48bを回転させようとする付勢力が発生して維持されている。
【0049】
上述した本発明の第1実施形態による便器洗浄装置18によれば、洗浄水タンク20内の洗浄水の一部を使用して便器本体2を洗浄する小洗浄モード又はエコ小洗浄モードによる排水弁38の閉弁行程において、排水弁38の開度が小さくなる程、排水弁38を閉鎖させる方向に増大した弁閉鎖力を排水弁38が洗浄水の流れによって受けていても、排水弁38に作用する弁閉鎖力に抗して排水弁38を開放させる方向のブレーキ力が発生するようにコントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御するため、排水弁38の閉弁速度を調整するために別部材を用いることなく簡易な構成によって、DCモータ42が発生させる排水弁38を開放させる方向のブレーキ力を単純に調整するだけで、排水弁38の閉弁速度を簡単に調整することができる。したがって、節水のために排水弁38が排水口を迅速に閉鎖することを可能にしながら、排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音を防ぐことができる。
【0050】
また、本実施形態による便器洗浄装置18によれば、洗浄水タンク20内の洗浄水の一部を使用して便器本体2を洗浄する小洗浄モード又はエコ小洗浄モードによる排水弁38の閉弁行程において、排水弁38に作用する弁閉鎖力に抗して排水弁38を開放させる方向のブレーキ力が弁閉鎖力とねじりコイルばね50が発生させる付勢力(補正力)との合力以上になるように駆動装置34のDCモータ42を制御した場合には、それが一時的なものであったとしても、排水弁38が開放する方向に作動しようとするため、排水弁38の閉弁速度が遅くなり、排水弁38が閉鎖しにくく、洗浄水タンク20の排水口22から便器本体2に供給される洗浄水の節水効果を返って低下させてしまうことになるが、排水弁38の閉弁行程において、排水弁38に作用する弁閉鎖力に抗して排水弁38を開放させる方向のブレーキ力が弁閉鎖力とねじりコイルばね50が発生させる付勢力(補正力)との合力よりも小さくなるようにDCモータ42を制御することにより、洗浄水タンク20内の水位が低下すると共に排水弁38が閉鎖されるにつれて弁閉鎖力が増大しても、節水化のために洗浄水タンク20内の洗浄水の一部のみを使用して便器本体2を洗浄するような場合においても、排水弁38が排水口22を迅速に閉鎖することを可能にしながら、排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音を確実に防ぐことができる。
【0051】
さらに、本実施形態による便器洗浄装置18によれば、弁閉鎖力補正手段であるねじりコイルばね50が、排水弁38の弁閉鎖力とねじりコイルばね50の付勢力(補正力)との合力が弁開度にかかわらずほぼ一定の力となるように排水弁38を閉鎖させる方向の付勢力(補正力)を発生させるため、排水弁38を開放させる方向のブレーキ力をほぼ一定の力とすることができ、コントローラ30によるDCモータ42の制御を簡単に行うことができる。また、弁閉鎖力と補正力との合力がほぼ一定であるため、弁開度に応じてブレーキ力を変化させる必要がなくなり、弁開度の検知手段を設けることなく簡単な構成で排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0052】
また、本実施形態による便器洗浄装置18によれば、ねじりコイルばね50が発生させる排水弁38を閉鎖させる方向の付勢力が、排水弁38の開度が大きくなる程増大するため、ねじりコイルばね50という簡易な付勢部材によって、排水弁38に作用する弁閉鎖力が補正されて排水弁38の開度に対して一定の力に近づかせることができる。したがって、排水弁38の開度の検知を特別に行う必要がなく、コントローラ30による駆動装置34のDCモータ42の制御を簡単に行うことができ、排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0053】
さらに、本実施形態による便器洗浄装置18によれば、排水弁38の閉弁行程において、駆動装置34のDCモータ42がさせる排水弁38を開放させる方向のブレーキ力の大きさが、排水弁38により排水口22を閉鎖しているときの弁閉鎖力とねじりコイルばね50の付勢力(補正力)の合力の大きさよりも常に小さくなるように、コントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御しているため、排水弁38が排水口を閉鎖し、洗浄水の流れによる排水弁38をさらに閉鎖させる方向の力(吸込み力)がなくなった状態で、DCモータ42の停止操作のタイミングを無造作に行ったりしたとしても、排水弁38が再び開放されてしまう不具合を防ぐことができ、排水弁38による排水口の閉鎖を確実に行うことができる。したがって、排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0054】
また、本実施形態による便器洗浄装置18によれば、排水弁38の閉弁行程において、排水弁38が排水口22を閉鎖した後も、排水弁38を開放させる方向のブレーキ力が発生しているようにコントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御するため、排水弁38が排水口22を完全に閉鎖するまで、弁閉鎖力に抗して排水弁38を開放させる方向のブレーキ力を排水弁38に作用させることができ、排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0055】
さらに、本実施形態による便器洗浄装置18によれば、排水弁38の閉弁行程において、コントローラ30がDCモータ42に一定の電圧を加えることにより一定のブレーキ力を発生させるため、排水弁38の開度の検知を特別に行う必要がなく、コントローラ30によるDCモータ42の制御を簡単に行うことができ、排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態による便器洗浄装置18によれば、ねじりコイルばね50が、排水弁38の閉弁行程において、排水弁38により排水口22を閉鎖した後も、排水弁38を閉鎖させる方向の付勢力を発生させるため、排水弁38が排水口を閉鎖し、洗浄水の流れによる排水弁38をさらに閉鎖させる方向の力(吸込み力)がなくなっても、排水弁38により排水口22を閉鎖した後の排水弁38を閉鎖させる方向の付勢力によって、排水弁38による排水口22の閉鎖状態を維持することができる。
【0057】
つぎに、図10及び図11を参照して、本発明の第2実施形態による便器洗浄装置を説明する。
図10の(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態による便器洗浄装置の排水弁の閉弁行程における排水弁及び駆動装置の動作を模式的に説明した動作図であり、図11は、本発明の第2実施形態による便器洗浄装置の排水弁の閉弁行程における排水弁の高さと排水弁に作用する力(合力)との関係を示す特性図である。ここで、図10及び図11において、図8及び図9に示す本発明の第1実施形態による便器洗浄装置と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明は省略する。
【0058】
本発明の第2実施形態による便器洗浄装置においては、特に、図10の(c)に示すように、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位が止水水位WL1と最低水位(エコ小洗浄の場合はWL2、小洗浄の場合はWL3)との間の所定水位に達して排水弁38の高さ(開度)が所定値H2以下になると、ねじりコイルばね50のアーム部50aによって、排水弁38を閉鎖させる方向に出力回転軸44の出力ギア48のばね付勢部48bを回転させようとする付勢力がゼロとなる。
しかしながら、図11の線図(i)+(ii)+(iii)に示す3つの合力は、排水弁38の高さ(開度)に対して常時排水弁38を閉鎖させる方向(負方向)の力として作用しており、たとえ、ねじりコイルばね50のアーム部50aが出力回転軸44の出力ギア48のばね付勢部48bを付勢する付勢力がゼロとなっている状態であっても、排水口22が排水弁38により閉鎖されている。
また、図11の線図(i)の排水弁38の高さ(開度)がゼロとなって排水弁38が排水口22を閉鎖しているときの弁閉鎖力は、排水弁38の自重により排水弁38を閉鎖させる方向に発生するものであり、コントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御して排水弁38を開放させる方向(正方向)に発生させている一定のブレーキ力の大きさは、排水弁38の自重により発生する排水弁38を閉鎖させる方向の弁閉鎖力の大きさよりも小さくなっている。
【0059】
上述した本発明の第2実施形態による便器洗浄装置によれば、排水弁38の高さ(開度)が所定値H2以下になると、ねじりコイルばね50が発生させる付勢力がゼロになるため、節水化のために洗浄水タンク20内の洗浄水の一部のみを便器本体2に供給して便器洗浄を行うような場合においても、排水弁38が排水口22を迅速に閉鎖することを可能にしながら、排水弁38による排水口22の閉鎖時に発生する音をより確実に防ぐことができる。
【0060】
また、本発明の第2実施形態による便器洗浄装置によれば、排水弁38の開度がゼロとなって排水弁38が排水口22を閉鎖しているときの弁閉鎖力が、排水弁38の自重により排水弁38を閉鎖する方向に発生するものであり、排水弁38を開放させる方向のブレーキ力の大きさが、排水弁38の自重により排水弁38を閉鎖させる方向に発生する弁閉鎖力の大きさよりも小さくなるようにコントローラ30が駆動装置34のDCモータ42を制御するため、排水弁38が排水口22を閉鎖した後、洗浄水の流れによる排水弁38をさらに閉鎖させる方向の力(吸込み力)がなくなっても、簡易な構成によって、排水弁38による排水口22の閉鎖を確実に行うことができ、排水弁38による排水口22の閉鎖状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 排水トラップ管路
8a 排水トラップ管路の入口
8b 排水トラップ管路の上昇路
8c 排水トラップ管路の下降路
10 リム
12 第1吐水口
14 溜水部
16 第2吐水口
18 便器洗浄装置
20 洗浄水タンク
20a 洗浄水タンクの底面
22 排水口
24 給水装置
24a 定流量弁
24b 給水バルブ
24c 給水口
26 排水装置
28 水位センサ
30 コントローラ(制御手段)
32 操作ボタン
34 駆動装置
34a ケーシング
34b ばね受け部
36 オーバーフロー管
36a オーバーフロー管の下端開口部
36b オーバーフロー管の上端開口部
36c オーバーフロー管の玉鎖取付部
38 排水弁
40 ガイド部材
42 DCモータ
42a モータ回転軸
42b ギヤ
44 出力回転軸
46 中間ギヤ
48 出力ギヤ
48a 出力ギヤの円筒部
48b 出力ギヤのばね付勢部
50 ねじりコイルばね(付勢部材)
50a,50b ねじりコイルばねのアーム部
52 玉鎖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水タンクに溜めた洗浄水によって水洗大便器を洗浄する便器洗浄装置であって、
底面に排水口が形成され、洗浄水を貯水する洗浄水タンクと、
この洗浄水タンク内に配置され、上記排水口を開放して水洗大便器に洗浄水を供給し、上記排水口を閉鎖して洗浄水の供給を停止する開閉弁であって、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁の開度が小さくなる程上記開閉弁を閉鎖させる方向に増大した弁閉鎖力を洗浄水の流れにより受ける上記開閉弁と、
この開閉弁を開閉させるように駆動するモータと、
このモータを制御する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、上記洗浄水タンク内の洗浄水の一部を使用して水洗大便器を洗浄する洗浄モードを実行すると共に、この洗浄モードにおける上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁に作用する上記弁閉鎖力に抗して上記開閉弁を開放させる方向のブレーキ力が発生するように上記モータを制御することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
更に、上記開閉弁に作用する弁閉鎖力を補正する弁閉鎖力補正手段を有し、上記弁閉鎖力と、上記弁閉鎖力補正手段が発生させる補正力との合力は、上記モータが発生させるブレーキ力よりも大きい請求項1記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
上記弁閉鎖力補正手段は、上記弁閉鎖力と上記補正力との合力が弁開度にかかわらずほぼ一定の力となるように上記開閉弁を閉鎖させる方向の補正力を発生させる請求項2記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
上記弁閉鎖力補正手段は、上記開閉弁を閉鎖させる方向の力を発生させる付勢部材であり、この付勢部材が発生させる付勢力は、上記開閉弁の開度が大きくなる程増大する請求項3記載の便器洗浄装置。
【請求項5】
上記付勢部材は、上記開閉弁の開度が所定の開度以下の場合に、その付勢力がゼロになる請求項4記載の便器洗浄装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁により上記排水口を閉鎖しているときの弁閉鎖力と補正力の合力よりも上記モータが発生させるブレーキ力が常に小さくなるように上記モータを制御する請求項3記載の便器洗浄装置。
【請求項7】
上記制御手段は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁が上記排水口を閉鎖した後も、上記ブレーキ力が発生しているように上記モータを制御する請求項6記載の便器洗浄装置。
【請求項8】
上記開閉弁が上記排水口を閉鎖しているときの弁閉鎖力は、上記開閉弁の自重により上記開閉弁を閉鎖させる方向に発生するものであり、上記制御手段は、上記開閉弁の自重により上記開閉弁を閉鎖させる方向に発生する弁閉鎖力よりも上記ブレーキ力が小さくなるように上記モータを制御する請求項5記載の便器洗浄装置。
【請求項9】
上記制御手段は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記モータに一定の電圧を加えることにより一定のブレーキ力を発生させる請求項3記載の便器洗浄装置。
【請求項10】
上記付勢部材は、上記開閉弁の閉弁行程において、上記開閉弁が上記排水口を閉鎖した後も、上記開閉弁を閉鎖させる方向の付勢力を発生させる請求項4記載の便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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