説明

便器用設備

【課題】音響機器として十分な機能を発揮することができる便器用設備を提供する。
【解決手段】便鉢をもつ洋風便器本体2に揺動可能に設けられ、便鉢上への人の着座を可能にする便座3と、洋風便器本体2に揺動可能に設けられ、便鉢を便座3とともに隠蔽する便蓋4と、音データを出力可能な音響装置10とを備えた便器用設備である。音響装置10は、便座3及び便蓋4の少なくとも一方の開閉状態に応じ、音データの出力時の音質を変化させる音質変更手段S4、S5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、便鉢をもつ洋風便器本体に揺動可能に設けられ、便鉢上への人の着座を可能にする便座と、洋風便器本体に揺動可能に設けられ、便鉢を便座とともに隠蔽する便蓋と、音データを出力可能な音響装置とを備えた便器用設備が知られている。特に、この便器用設備は内部に洋風便器本体の便鉢を洗浄するための洗浄タンクを収納したタンクカバーを備えており、タンクカバーに便座及び便蓋が揺動可能に構成されている。また、タンクカバーには、使用者を検知可能な人体検知センサが設けられているとともに、便座及び便蓋を開閉するアクチュエータも設けられている。
【0003】
この便器用設備は、洋風便器本体上に固定され、洋風水洗式便器を構成する。この便器用設備は、人体検知センサが人を検知すると、音響装置のスピーカより音楽等の音声を音データに基づいて出力する。また、人体検知センサが人を検知しなくなると、音響装置は音量を徐々に下げる。そのため、この便器用設備によれば、落ち着いた気分で用便を足すことができ、用便時の快適さを維持することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−176559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、一人又は夫婦のみで暮らすための住宅が増加しており、このような住宅においては、洋風水洗式便器を閉じられた空間であるトイレ室に設けず、開放感のある空間に設けることが提案されつつある。例えば、寝室に隣接する浴室に洋風水洗式便器を設けた住宅である。ここで、上記従来の便器用設備は、洋風水洗式便器の使用状態が異なっていても、音響装置の設定を変えない限り、一定の音質の音声を出力するため、音質の変化が乏しい。また、この便器用設備は、人体検知センサが人を検知しないと音声を出力しないため、洋風水洗式便器を使用をしない状態においては、音声を出力することができない。このため、開放感のある空間にこのような便器用設備を存在させたとしても、その便器用設備は、音響機器として十分な機能を発揮することができない。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、音響機器として十分な機能を発揮することができる便器用設備を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の便器用設備は、便鉢をもつ洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢上への人の着座を可能にする便座と、該洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢を該便座とともに隠蔽する便蓋と、音データを出力可能な音響装置とを備えた便器用設備において、
前記音響装置は、前記便座及び前記便蓋の少なくとも一方の開閉状態に応じ、前記音データの出力時の音質を変化させる音質変更手段を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の便器用設備では、便蓋のみ開いている場合、便座と便蓋との両方が開いている場合等の便器用設備の使用状態に応じ、音響装置の音質変更手段が音データの出力時の音質を変化させるため、異なった音質の音を出力することができる。
【0009】
したがって、第1発明の便器用設備によれば、音響機器として十分な機能を発揮することができる。
【0010】
なお、音データとは、デジタル圧縮の有無を問わず、声音、楽器音、自然音、擬音等の全ての音をデジタル化したデータである。
【0011】
第1発明の便器用設備は、使用者を検知可能な人体検知センサと、人体検知センサの検知信号によって便座及び便蓋の少なくとも一方を開閉するアクチェータとを備え得る。この場合、音質変更手段は人体検知センサの検知信号によって音データの出力時の音質を変化させることが好ましい。こうであれば、便器用設備の使用状態に応じて自動的に音質が変化し、音響機器としてより十分な機能を発揮することができる。例えば、使用者が便座に着座しておれば、音響装置から出力される音は、便鉢内にこもったり、便蓋により前方への高音域の伝播が抑制される。また、便蓋だけが上方に揺動した状態で使用者が用を足しておれば、音響装置から出力される音は、便蓋で前方への移動が阻止され、低音になり易い。このような場合、この便器用設備は、音響装置から出力される音を高音側に変化させ、使用者は通常の音質でその音を聞くことができる。
【0012】
また、音質変更手段はリモコンの操作信号によって音データの出力時の音質を変化させることが好ましい。こうであれば、使用者が便器用設備から離れていても、音質を変化させることができる。この際、便座及び便蓋の少なくとも一方をリモコンによって開閉し、それによって音質を変化させることもできる。
【0013】
第2発明の便器用設備は、便鉢をもつ洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢上への人の着座を可能にする便座と、該洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢を該便座とともに隠蔽する便蓋と、音データを出力可能な音響装置と、該便座及び該便蓋の少なくとも一方を開閉するアクチェータとを備えた便器用設備において、
前記音響装置は、前記音データの出力時の音質に応じて前記アクチェータを駆動して前記便座及び前記便蓋の少なくとも一方を開閉する開閉手段を有することを特徴とする。
【0014】
第2発明の便器用設備は、音響装置の開閉手段が音データの出力時の音質に応じてアクチェータを駆動し、便座及び便蓋の少なくとも一方を開閉する。このため、例えば、便蓋を揺動させたり、半開きにする等により、より好みの音を出力することができる。
【0015】
したがって、第2発明の便器用設備によっても、音響機器として十分な機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1の便器用設備は、図1に示すように、寝室に隣接する浴室内に設置された洋風水洗式便器1に設けられている。
【0018】
洋風水洗式便器1は、便鉢をもつ陶磁器製の洋風便器本体2、便座3、便蓋4及びタンクカバー5を備えている。タンクカバー5は、ロータンク6を内蔵し、水洗装置7を上部に配置している。また、タンクカバー5は、音響装置10、左右一対のスピーカ11(L)、11(R)、中央のスピーカ12及び図示しない便蓋開閉用モータ4a、便座開閉用モータ3aを内臓するとともに、上部表面に人体検知センサ16を備えている。さらに、浴室の壁面90には、リモコン17が取り外し可能に設けられている。また、浴室の入り口には、図示しない入室検知センサ15が設けられている。ここで、便座3、便蓋4、音響装置10、スピーカ11(L)、11(R)、12、便蓋開閉用モータ4a、便座開閉用モータ3a、入室検知センサ15、人体検知センサ16及びリモコン17が便器用設備である。また、便蓋開閉用モータ4a、便座開閉用モータ3aがアクチェータである。
【0019】
次に、この便器用設備の電気的な接続を示すブロック図を図2(A)に示す。音響装置10には、入室検知センサ15、人体検知センサ16及びリモコン17からの入力信号が入力されるようになっている。また、音響装置10から、便蓋開閉用モータ4a、便座開閉用モータ3a及びスピーカ11(L)、11(R)、12へ出力信号が出力されるようになっている。音響装置10は、図2(B)に示すように、制御部101、記憶装置102、再生部103、音質変更部104、音量調節部105及びアンプ106を備えている。
【0020】
記憶装置102はデジタル圧縮された音データを記憶し、再生部103はこの音データをデコードした後、D/A変換して再生する。この記憶装置102としては、SDカード等のメモリーカード、ハードディスク等を採用することができる。ここでは、取り出し可能なSDカードを採用している。
【0021】
そして、音質変更部104は再生された音データの音質を変更し、音量調節部105は音質が変更された音データの音量を調節する。さらに、アンプ106は音量が調節された音データを増幅し、スピーカ11(L)、11(R)、12は増幅された音データを音として出力する。また、制御部101は記憶装置102、再生部103、音質変更部104及び音量調節部105を制御する。なお、図2(B)においては、入室検知センサ15、人体検知センサ16、リモコン17、便蓋開閉用モータ4a、便座開閉用モータ3a及びこれらのインターフェイスについては省略している。
【0022】
以上のように構成された便器用設備の動作を、図3に示すフローチャートにより説明する。まず、便器用設備に電力が供給されると、ステップS1が実行される。ステップS1においては、入室検知センサ15により浴室に入室する者がいるかどうかを判断する。浴室に入室する者がいない場合、再度ステップS1を実行する。また、入室する者がいる場合、ステップS2が実行される。
【0023】
ステップS2においては、記憶装置102にデジタル圧縮されて記録されている音データが再生される。すなわち、制御装置101により、記憶装置102の音データが再生部103、音質変更部104、音量調節部105、アンプ106及びスピーカ11(L)、11(R)、12を介して音として出力される。ただし、記憶装置102の音データは修正されることなく再生される。また、この際、任意に定めた音データを再生することができ、又いくつかの音データの中からランダムに再生するすることもできる。
【0024】
ステップS3においては、人体検知センサ16により洋風水洗式便器1の使用者がいるかどうかを判断する。洋風水洗式便器1の使用者がいない場合、再度ステップS3を実行する。また、使用者がいる場合、ステップS4が実行される。
【0025】
ステップS4においては、便蓋開閉用モータ4aを正転させ、便蓋4を開ける。この際、スピーカ12から出力される音は、便蓋4により前方への高音域の伝播が抑制される。そのため、高音域を強調するように音データを変化させて出力する。これにより、使用者は通常の音質、すなわち、便座3及び便蓋4が閉じているときと同じような音質でその音を聞くことができる。
【0026】
ステップS5においては、洋風水洗式便器1の使用状況に応じ、音質を変化させる。例えば、使用者が便座3に着座しておれば、音響装置10から出力される音は、便鉢内にこもったり、便蓋4により前方への高音域の伝播が抑制される。そのため、高音域を強調するように音データを変化させたり、こもり音を減らすための音データの修正処理をして出力する。これにより、使用者は通常の音質、すなわち、便座3及び便蓋4が閉じているときと同じような音質でその音を聞くことができる。ここで、ステップS4及びステップS5が音質変更手段である。
【0027】
ステップS6においては、人体検知センサ16により洋風水洗式便器1の使用者がいるかどうかを判断する。洋風水洗式便器1の使用者がいる場合、ステップS5に戻る。また、使用者がいない場合、ステップS7が実行される。
【0028】
ステップS7においては、便座開閉用モータ3a及び便蓋開閉用モータ4aを逆転させ、便座3及び便蓋4を閉じる。また、音データが修正されることなく再生され、スピーカ11(L)、11(R)、12から出力される。
【0029】
ステップS8においては、入室検知センサ15により、使用者が浴室から退室したかどうかを判断する。浴室から使用者が退室していない場合、再度ステップS8を実行する。また、使用者が退室した場合、ステップS9が実行される。ステップS9においては、音データの再生を停止する。そして、ステップS1に戻る。
【0030】
なお、リモコン17を持って浴室から退室し、浴室に隣接した寝室において、リモコン17の操作信号によって音データを再生するとともに、便座3及び便蓋4を開閉することもできる。
【0031】
実施例1の便器用設備では、ステップS4及びステップS5において、便座3及び便蓋4の開閉状態に応じ、音データの出力時の音質を変化させているため、洋風水洗式便器1の使用状態に応じ、異なった音質の音を出力することができる。これにより、使用者は通常の音質でその音を聞くことができる。
【0032】
したがって、実施例1の便器用設備によれば、音響機器として十分な機能を発揮することができる。
【実施例2】
【0033】
実施例2の便器用設備は、実施例1と同様、浴室内に設置された図1に示す洋風水洗式便器1に設けられている。図1及び図2に示すように、洋風水洗式便器1の構成及び便器用設備の電気的な接続も実施例1と同様である。
【0034】
次に、実施例2の便器用設備の動作を、図4に示すフローチャートにより説明する。まず、便器用設備に電力が供給されると、ステップS21が実行される。ステップS21においては、リモコン17の音再生スイッチがONされたか否かをチェックする。音再生スイッチがONされていない場合、再度ステップS21を実行する。また、音再生スイッチがONされている場合、ステップS22が実行される。
【0035】
ステップS22においては、記憶装置102にデジタル圧縮されて記録されている音データが再生される。すなわち、制御装置101により、記憶装置102の音データが再生部103、音質変更部104、音量調節部105、アンプ106及びスピーカ11(L)、11(R)、12を介して音として出力される。ただし、記憶装置102の音データは修正されることなく再生される。この際、リモコン17のスイッチにより、記憶装置102内の音データを指定して再生することもでき、ランダムに再生することもできる。
【0036】
ステップS23においては、再生された音データの音質に応じて、便蓋開閉用モータ4a、便座開閉用モータ3aを正転又は逆転させ、便蓋4、便座3の一方、又は両方を開閉させる。この際、図5に示すように、便蓋開閉用モータ4aの正転、逆転を繰り返し、便蓋4を揺動させることもできる。また、便蓋開閉用モータ4a、便座開閉用モータ3aの回転を途中で停止させ、便蓋4、便座3の一方、又は両方を半開きにすることもできる。さらに、リモコン17の操作信号によって便座3及び便蓋4を開閉することができる。これにより、個性的で深みのある音質に変化させることができる。このステップS23が開閉手段である。
【0037】
ステップS24においては、リモコン17の音再生スイッチがOFFされたか否かをチェックする。音再生スイッチがOFFされていない場合、ステップS23に戻る。また、音再生スイッチが0FFされている場合、ステップS25が実行される。ステップS25においては、音データの再生を停止する。そして、ステップS21に戻る。
【0038】
実施例2の便器用設備では、再生された音データの音質に応じて、便蓋4、便座3の一方、又は両方を開閉させることができるため、より効果的に音データを出力することができる。また、リモコン17により音データの出力をコントロールすることができるため、自分の好みに合った音を出力することができる。
【0039】
したがって、実施例2の便器用設備によっても、音響機器として十分な機能を発揮することができる。また、実施例1及び実施例2の両方の機能を1つの便器用設備に持たすこともできる。なお、実施例1、2の便器用設備は、ロータンク6を備える洋風水洗式便器1に用いられたが、タンクレス便器であっても同様に用いることができる。また、実施例1、2の便器用設備は、洋風便器本体と一体として販売することもでき又既存の洋風便器本体とは別に販売することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は洋風水洗便器等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1、2に係り、洋風水洗式便器の斜視図である。
【図2】実施例1、2に係り、便器用設備のブロック図である。
【図3】実施例1の便器用設備のフローチャートである。
【図4】実施例2の便器用設備のフローチャートである。
【図5】実施例2の便器用設備の洋風水洗式便器の斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
2…洋風便器本体
3…便座
4…便蓋
10…音響装置
16…人体検知センサ
3a、4a…アクチェータ(3a…便座開閉用モータ、4a…便蓋開閉用モータ)
17…リモコン
S4、S5…音質変更手段
S23…開閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢をもつ洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢上への人の着座を可能にする便座と、該洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢を該便座とともに隠蔽する便蓋と、音データを出力可能な音響装置とを備えた便器用設備において、
前記音響装置は、前記便座及び前記便蓋の少なくとも一方の開閉状態に応じ、前記音データの出力時の音質を変化させる音質変更手段を有することを特徴とする便器用設備。
【請求項2】
使用者を検知可能な人体検知センサと、該人体検知センサの検知信号によって前記便座及び前記便蓋の少なくとも一方を開閉するアクチェータとを備え、前記音質変更手段は該人体検知センサの検知信号によって前記音データの出力時の音質を変化させる請求項1記載の便器用設備。
【請求項3】
前記音質変更手段はリモコンの操作信号によって前記音データの出力時の音質を変化させる請求項1又は2記載の便器用設備。
【請求項4】
便鉢をもつ洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢上への人の着座を可能にする便座と、該洋風便器本体に揺動可能に設けられ、該便鉢を該便座とともに隠蔽する便蓋と、音データを出力可能な音響装置と、該便座及び該便蓋の少なくとも一方を開閉するアクチェータとを備えた便器用設備において、
前記音響装置は、前記音データの出力時の音質に応じて前記アクチェータを駆動して前記便座及び前記便蓋の少なくとも一方を開閉する開閉手段を有することを特徴とする便器用設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−51446(P2007−51446A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236317(P2005−236317)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】