説明

便器装置

【課題】待機時の溜水水位(溜水面)以下のボウル部を殺菌することができる便器装置を提供することを目的とする。
【解決手段】溜水を貯留可能なボウル部を有する便器本体と、前記ボウル部の殺菌を開始する指令に基づいて、前記ボウル部に貯留された前記溜水の水位を待機時よりも下げる殺菌準備と、前記ボウル部の殺菌と、を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする便器装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、便器装置に関し、具体的には便器のボウル部を殺菌することができる便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器のボウル部を掃除する場合には、例えば、ボウル内に封水として溜まった溜水や薬剤などを利用し、掃除用ブラシでボウル部を擦ることにより、ボウル部に付着した汚れなどを落としている。また、便器のボウル部の清潔性や衛生をより向上させ、そのボウル部を殺菌するために、ボウル部に向けて紫外線を照射する洋式便器装置やトイレ装置がある(特許文献1および2)。紫外線は、殺菌効果を有し、またバクテリアや細菌やカビなどの繁殖を抑制する効果を有するため、特許文献1および2に記載された装置によれば、ボウル部の殺菌や防汚や防臭を行うことができる。
【0003】
しかしながら、一般的に、ボウル部には水が溜まっているため、その溜水の水面(溜水面)以下の部分(喫水部)には紫外線が届きにくい、あるいは届かない。これは、紫外線が溜水に吸収されるためである。そのため、ボウル部の喫水部に付着した菌や微生物を殺すことが困難となり、そのボウル部の喫水部において殺菌効果を得ることができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−159798号公報
【特許文献2】特開2005−232949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、待機時の溜水水位(溜水面)以下のボウル部を殺菌することができる便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、溜水を貯留可能なボウル部を有する便器本体と、前記ボウル部の殺菌を開始する指令に基づいて、前記ボウル部に貯留された前記溜水の水位を待機時よりも下げる殺菌準備と、前記ボウル部の殺菌と、を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、通常使用時あるいは待機時には溜水で水没しているボウル部の部分を効果的に殺菌することができる。そのため、ボウル部の喫水部近傍に汚れが発生することを抑制することができる。また、ボウル部の清掃を簡略化させることができる、あるいはボウル部の清掃の手間を無くすことができる。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御部は、前記殺菌準備を開始した後に、前記ボウル部の殺菌を開始することを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、ボウル部の殺菌を開始する前に溜水の水位(溜水面)を下げるため、待機時の溜水面以下のボウル部を殺菌することができる。また、ボウル部の殺菌を無駄に実行することがないため、エネルギーロスを抑制したり、省エネルギー化を図ることができる。
【0008】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記制御部は、殺菌性を有する水を前記ボウル部に供給することにより前記ボウル部の殺菌を実行することを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、溜水の水位を待機時よりも下げた状態で殺菌水をボウル部に供給するため、待機時の溜水面以下のボウル部に殺菌水を付着させることができる。そのため、殺菌水の濃度が溜水により薄まることを抑制しつつ、待機時の溜水面以下のボウル部に殺菌水を付着させ殺菌することができる。
【0009】
また、第4の発明は、第1または第2の発明において、前記制御部は、紫外線を前記ボウル部に照射することにより前記ボウル部の殺菌を実行することを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、溜水の水位を待機時よりも下げた状態で紫外線をボウル部に照射するため、待機時の溜水面以下のボウル部に紫外線を照射することができる。そのため、紫外線が溜水により吸収されることを抑制しつつ、待機時の溜水面以下のボウル部に紫外線を照射し殺菌することができる。
【0010】
また、第5の発明は、第3または第4の発明において、前記制御部は、前記ボウル部の殺菌を開始した後に、前記待機時よりも下げられた前記溜水の水位を前記待機時の水位に復元する復水を開始することを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、溜水の水位を待機時よりも下げた状態のままで殺菌水をボウル部に供給したり、紫外線をボウル部に照射することができるため、待機時の溜水面以下のボウル部をより長時間にわたって殺菌することができる。また、ボウル部のより深い部分を殺菌することができる。
【0011】
また、第6の発明は、第4または第5の発明において、前記ボウル部の上方を覆う便蓋をさらに備え、前記制御部は、前記便蓋が閉じた状態において、前記ボウル部の殺菌を実行することを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、より高い殺菌性を有する周波数帯域の紫外線を使用して、ボウル部を殺菌することができる。すなわち、制御部は、便蓋を閉じた状態で紫外線を照射するため、より高い殺菌性を有する周波数帯域の紫外線をボウル部に照射しても人体に悪影響を及ぼすことはない。
【0012】
また、第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記ボウル部の殺菌を実行する際には、前記ボウル部に接続された排水管から逆流する臭気が前記ボウル部の外部へ拡散することを防止することを特徴とする便器装置である。
この便器装置によれば、いわゆる「封水切れ」が生じた場合でも、悪臭がトイレ室内に拡散することを抑制することができる。また、悪臭がトイレ室内に拡散することを抑制しつつ、ボウル部のより深い部分を殺菌することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、待機時の溜水水位(溜水面)以下のボウル部を殺菌することができる便器装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる便器装置を表す断面模式図である。
【図2】本実施形態にかかる便器装置の動作の概要を表すフローチャートである。
【図3】本実施形態の具体例にかかる便器装置の主な構成を表すブロック図である。
【図4】次亜塩素酸を含む溶液を生成する電解槽の内部を表す断面模式図である。
【図5】本具体例の便器装置の動作を表すタイムチャートである。
【図6】本具体例の便器装置の動作の変形例を表すタイムチャートである。
【図7】本実施形態の他の具体例にかかる便器装置の主な構成を表すブロック図である。
【図8】本具体例の便器装置の動作を表すタイムチャートである。
【図9】本具体例の便器装置の動作の変形例を表すタイムチャートである。
【図10】本具体例の便器装置の動作の他の変形例を表すタイムチャートである。
【図11】本発明の第2の実施の形態にかかる便器装置を表す断面模式図である。
【図12】本具体例の便器装置の動作を表すタイムチャートである。
【図13】本具体例の便器装置の動作の変形例を表すタイムチャートである。
【図14】溜水面を待機時よりも下げる動作の変形例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる便器装置を表す断面模式図である。
なお、図1は、本実施形態にかかる便器装置を前方から眺めたときの断面模式図であり、図1(a)に表した溜水水位(溜水面)は、待機時の状態を表しており、図1(b)に表した溜水水位(溜水面)は、待機時よりも下がった状態を表している。
【0016】
本実施形態にかかる便器装置10は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、「便器本体」と称する)100と、便器本体100の上に配置された便座200と、閉じた状態で便座200の上を覆う便蓋300と、便器本体100の後方上部に設置された局部洗浄装置400と、を有する。便座200と便蓋300とは、例えば局部洗浄装置400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0017】
便器本体100は、その内部にボウル部110を有する。そのボウル部110の下部には、水(溜水)120が溜められている。溜水120は、ボウル部110の下部に封水として一時的に貯留されることにより、悪臭や害虫類が排水管などを通ってトイレ室内に侵入することを防止することができる。また、便蓋300が閉じた状態では、ボウル部110は、その上方を便蓋300により覆われる。
【0018】
また、本実施形態にかかる便器装置10は、殺菌水をボウル部110に流す、あるいは噴射する殺菌水吐水口20を備える。殺菌水吐水口20は、例えば、便器本体100の上部に設けられている。但し、殺菌水吐水口20の設置位置は、これだけに限定されるわけではなく、局部洗浄装置400の下面あるいは前面や、便器本体100の鉛直方向の中央部などに設けられていてもよい。また、殺菌水をボウル部110の全体に流すために、あるいは噴射するために、殺菌水吐水口20にはスプレッダーや可動式ノズルなどが適宜設けられていてもよい。
【0019】
このように、殺菌水をボウル部110に流したり噴射することにより、便器本体100のボウル部110の清潔性や衛生をより向上させ、そのボウル部110を殺菌することができる。またさらに、ボウル部110の防汚や防臭を行うことができる。
【0020】
このとき、前述したように、ボウル部110の下部には、封水としての溜水120が存在する。そのため、殺菌水をボウル部110に流しても、溜水120の水位(溜水面)以下のボウル部110の部分では、殺菌作用あるいは殺菌効果が低下するおそれがある。これは、溜水120は、ボウル部110を洗浄する水(洗浄水)として適宜吐水され、一時的に封水として貯留された水であり、殺菌水の濃度がその溜水120により薄まるためである。そのため、待機時の溜水水位(溜水面)以下の部分(喫水部)を殺菌することができないおそれがある。
【0021】
そこで、本実施形態にかかる便器装置10は、殺菌水をボウル部110に流す、あるいは噴射するときには、溜水120の溜水面を待機時よりも下げることができる。すなわち、便器装置10は、ボウル部110の殺菌を行う場合には、溜水120の溜水面を下げる殺菌準備工程と、ボウル部110を殺菌する殺菌工程と、を実行することができる。殺菌準備工程および殺菌工程を行うタイミングや工程時間は、例えば局部洗浄装置400に内蔵された制御部410により制御される。なお、制御部410は、局部洗浄装置400に内蔵されていることに限定されず、例えば便器本体100に内蔵されていてもよい。
【0022】
次に、本実施形態にかかる便器装置10の動作の概要について、図面を参照しつつ説明する。
図2は、本実施形態にかかる便器装置の動作の概要を表すフローチャートである。
【0023】
まず、待機状態などの通常動作を行っているときに(ステップS101)、制御部410は、ボウル部110の殺菌を行う条件が適用されるか否かを判断する(ステップS103)。つまり、制御部410は、ボウル部110の殺菌の実行を開始する指令がなされたか否かを判断する(ステップS103)。
【0024】
ここで、制御部410が、ボウル部110の殺菌を行う条件が適用された(ステップS103:YES)と判断するのは、例えば、使用者が図示しないリモコンなどの操作装置に設けられた操作ボタンを押したときや、局部洗浄装置400あるいは便器本体100に設けられた操作ボタンなどを押したときである。あるいは、その判断のタイミングは、局部洗浄装置400が使用されていないとき、すなわち例えば、局部洗浄装置400に適宜設けられた図示しない人体検知センサなどがトイレ室内において人体を検知していないときであってもよい。あるいは、その判断のタイミングは、夜間や昼間において便器装置10が使用されていないときであってもよい。あるいは、その判断のタイミングは、適宜設定された回数だけボウル部110の洗浄が行われたときであってもよい。
【0025】
あるいは、制御部410は、使用者による便器装置10の使用頻度を記憶し、その使用頻度が少ない時間帯を学習してもよい。これによれば、制御部410は、その使用者の使用頻度が少ない時間帯において、ボウル部110の殺菌を行う条件が適用されたと判断し、ボウル部110の殺菌を行うことができる。
【0026】
あるいは、その判断のタイミングは、例えば、暖房便座の節電モードの1つである「おまかせ節電」が稼動しているときであってもよい。「おまかせ節電」とは、制御部410が使用者による便器装置10の使用頻度を記憶し、その使用頻度が少ない時間帯を学習して暖房便座などの温度を下げる機能である。これによれば、制御部410は、「おまかせ節電」が稼動しているということは使用者の使用頻度が少ない時間帯であると判断し、ボウル部110の殺菌を行うことができる。
【0027】
あるいは、その判断のタイミングは、例えば、暖房便座の節電モードの1つである「タイマー節電」が稼動しているときであってもよい。「タイマー節電」とは、使用者が好みにより設定した時刻になると、制御部410が暖房便座などの温度を自動的に下げる機能である。使用者は、一般的に、使用頻度が少ない時間帯にその時刻を設定する。これによれば、制御部410は、「タイマー節電」が稼動しているということは使用者の使用頻度が少ない時間帯であると判断し、ボウル部110の殺菌を行うことができる。
【0028】
このような種々のタイミングにおいて、制御部410は、ボウル部110の殺菌を行う条件が適用されたと判断すると(ステップS103:YES)、溜水面を待機時よりも下げる殺菌準備工程を実行する(ステップS105)。なお、殺菌準備工程の動作の詳細については後述する。続いて、制御部410は、殺菌水をボウル部110に流したりあるいは噴射したりして、ボウル部110を殺菌する殺菌工程を実行する(ステップS107)。一方、制御部410は、ボウル部110の殺菌を行う条件が適用されていないと判断すると(ステップS103:NO)、待機状態などの通常動作を行う(ステップS101)。
【0029】
ここで、殺菌工程において使用する殺菌水としては、例えば、次亜塩素酸を含む溶液が挙げられる。この次亜塩素酸を含む溶液は、水道水を電気分解し、その水道水の中に含まれる塩素が次亜塩素酸に変化することにより生成される。これについては、後に詳述する。あるいは、殺菌工程において使用する殺菌水としては、例えば、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む水が挙げられる。またあるいは、例えば、電解塩素やオゾンなどを含む水があげられる。またあるいは、殺菌性を有する薬剤を含む溶液が挙げられる。これらのように、殺菌工程において使用する殺菌水は、特に限定されるわけではなく、殺菌性を有していればよい。なお、以下の説明においては、殺菌工程において使用する殺菌水が次亜塩素酸を含む溶液である場合を例に挙げて説明する。
【0030】
本実施形態にかかる便器装置10の動作によれば、ボウル部110の殺菌を行う場合、すなわち殺菌水をボウル部110に流したりあるいは噴射する場合には、制御部410は、溜水120の溜水面を待機時よりも下げる殺菌準備工程を実行する。そのため、本実施形態にかかる便器装置10は、殺菌水の濃度が溜水120より薄められることを抑制することができ、待機時の溜水面以下のボウル部110を殺菌することができる。
【0031】
次に、本実施形態にかかる便器装置10の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態の具体例にかかる便器装置の主な構成を表すブロック図である。
また、図4は、次亜塩素酸を含む溶液を生成する電解槽の内部を表す断面模式図である。
【0032】
まず、本実施形態の具体例にかかる便器装置10の主な構成について説明する。
便器本体100の後方には、図3に表したように、便器本体機能部30が設置されている。また、便器本体100には、汚物を受けるボウル部110と、このボウル部110の底部から延びる排水トラップ管路112と、ジェット吐水を行うジェット吐水口111と、リム吐水を行うリム吐水口114が形成されている。
ジェット吐水口111は、ボウル部110の底部に形成されており、排水トラップ管路112の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路112に向けて吐出するようになっている。
リム吐水口114は、ボウル部110の上部後方に形成されており、ボウル部110の上縁に沿って洗浄水や殺菌水を吐出するようになっている。すなわち、リム吐水口114は、図1に関して説明した殺菌水吐水口20として機能する。
【0033】
排水トラップ管路112は、入口部112aと、この入口部112aから上昇するトラップ上昇管112bと、このトラップ上昇管112bから下降するトラップ下降管112cと、を有し、トラップ上昇管112bとトラップ下降管112cとの間が頂部112dとなっている。なお、排水トラップ管路112のトラップ下降管112cの下端には、排水管115が接続されている。
【0034】
本実施形態にかかる便器装置10は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口114から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、便器本体機能部30に内蔵された貯水タンク51に貯水された洗浄水を加圧ポンプ52によって加圧して、大流量でジェット吐水口111から吐出させるようになっている。
【0035】
便器本体機能部30には、水道から洗浄水が供給される給水路41が設けられ、この給水路41には、ダイヤフラム式の電磁開閉弁42および給水路切替弁43がそれぞれ設けられている。なお、これらの電磁開閉弁42および給水路切替弁43は、図3に表したように、バルブユニット40として、一体的に組み立てられたものとなっている。
また、給水路切替弁43の下流側には、リム吐水口114に洗浄水を供給するためのリム側給水路44と、貯水タンク51に洗浄水を供給するためのタンク側給水路45が接続されている。ここで、給水路切替弁43は、リム側給水路44およびタンク側給水路45の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更できる切替弁である。
【0036】
また、貯水タンク51の下部には、ジェット側給水路53が接続されており、このジェット側給水路53の下流端は、ジェット吐水口111に接続されている。また、ジェット側給水路53の途中に加圧ポンプ52が設けられている。この加圧ポンプ52は、貯水タンク51に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口111から吐出させるためのものである。
【0037】
このジェット側給水路53は、加圧ポンプ52より上流側の上流ジェット側給水路53aと下流ジェット側給水路53bとを有する。ここで、下流ジェット側給水路53bは、図3に表したように、上方に向けて凸型に形成されており、この凸型部分の最も高い部分である頂部53cは、貯水タンク51からジェット吐水口111に至るジェット側給水路53の中で最も高い部分になっている。
【0038】
また、リム側給水路44の途中には、水道水を電気分解して次亜塩素酸を含む溶液を生成可能な電解槽60が設けられている。ここで、電解槽60について、図4を参照しつつさらに説明する。
【0039】
電解槽60は、図4に表したように、その内部に陽極板61および陰極板62を有し、制御部410からの通電の制御によって、内部を流れる水道水を電気分解できる。ここで、水道水は、塩素を含んでいるため、その塩素の電気化学反応により塩素イオンが生成されて次亜塩素酸を含む液に変化する。このように、給水路切替弁43から供給された水道水は、電解槽60において電気分解されて次亜塩素酸を含む溶液となり、リム吐水口114からボウル部110に流し出される。次亜塩素酸は、殺菌成分として機能し、その次亜塩素酸を含む溶液は、酸性を示すためアンモニアなどによる汚れを効率的に除去あるいは分解できる。
【0040】
給水路切替弁43からの給水は、電解槽60の下部に流入することが望ましく、そして電解槽60からリム吐水口114への流出口は電解槽60の頂上部に設けられることが望ましい。これにより、電解槽60の水が流出する際に内部での電気分解によって発生するOやH等のガスを流出水と一緒に排出できる。さらには、電解槽60からリム吐水口114への流出口には電解槽60の内部の圧力上昇時に大気開放されるバキュームブレーカ等の弁が設けられることが望ましい。これにより、電気分解によって発生するOやHのガスを流出中でも大気中に排出することができる。
【0041】
次に、溜水面を待機時よりも下げる動作(殺菌準備工程の動作)について説明する。
本具体例の便器装置10が溜水面を待機時よりも下げる場合には、まず、待機時において、給水路切替弁43は、リム側給水路44およびタンク側給水路45の両方に連通する中立位置となっている。次に、この待機時において、制御部410が、ボウル部110の殺菌を行う条件が適用された、すなわちボウル部110の殺菌の実行を開始する指令がなされたと判断すると、リム洗浄(前リム洗浄)が開始される。
【0042】
まず、制御部410は、給水路切替弁43をリム側給水路44に全開状態(リム側全開位置)に切り替え、洗浄水をリム吐水口114へ供給し、洗浄水をリム吐水口114から吐水する。このリム吐水により、ボウル部110の洗浄が行われる。
【0043】
次に、所定時間(例えば、約25秒程度)が経過した後、ジェット吐水(ジェット洗浄)を行うために、制御部410は、加圧ポンプ52をONとし、その加圧ポンプ52により貯水タンク51内の洗浄水をジェット吐水口111へ供給し、洗浄水をジェット吐水口111から吐水する。
【0044】
このとき、まず、制御部410は、加圧ポンプ52を比較的低速(例えば、約1000rpm程度)に保持し、ジェット側給水路53の頂部53cの近傍(即ち、ボウル部110の溜水面より上方に位置する部分)に残留する空気をゆっくりとジェット吐水口111から排出する。この結果、加圧ポンプ52をいきなり本来の高速回転で始動した場合に生じるジェット吐水口111からの空気の排出音の発生を防止することができる。
【0045】
また、制御部410は、加圧ポンプ52をONにすると、給水路切替弁43をリム側全開位置からタンク側全開位置に切り替え、上端フロートスイッチ55がONとなるまでタンク給水を行う。
【0046】
次に、制御部410は、加圧ポンプ52を高速回転(例えば、約3500rmp程度)させる。これにより、加圧ポンプ52による加圧力が大きくなり、ジェット吐水口111から大流量の洗浄水が吐水される。この大流量の洗浄水が、排水トラップ管路112の入口部112aに流入し、サイホン現象が急速に引き起こされ、ボウル部110内の溜水120が素早く排出される。
【0047】
次に、このサイホン作用起動後において、制御部410は、加圧ポンプ52の回転数をサイホン起動時の回転数より低い回転数(例えば、約3000rmp程度)に変更する。このときの状態は、「ブロー領域」などと呼ばれ、サイホン作用により、ボウル部110内の洗浄水が引き続き排水トラップ管路112を経て外部に排出されている領域である。
【0048】
次に、制御部410は、加圧ポンプ52を高速回転させてから所定時間(例えば、約1.5秒程度)が経過した後、加圧ポンプ52の作動を停止させる。この加圧ポンプ52が停止したとき、排水トラップ管路112のトラップ上昇管112b内の洗浄水が戻り水(水量Q1)としてボウル部110に戻ると共に、加圧ポンプ52の回転部の慣性力による回転によって、貯水タンク51内の洗浄水がボウル部110に供給される(水量Q2)。これらの水量(Q1+Q2)により、ボウル部110内には所定水位の溜水120が溜まる。但し、このときの溜水120の溜水面は、待機時の溜水面よりも低い。
【0049】
次に、前述したタンク給水により上端フロートスイッチ55がONとなると、貯水タンク51内の洗浄水のオーバフローを防止するため、制御部410は、電磁開閉弁42を閉じてタンク給水を停止させる。
このようにして、ボウル部110の溜水120の水位(溜水面)は、待機時よりも低水位となる。
【0050】
次に、本具体例の便器装置10の動作について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、本具体例の便器装置の動作を表すタイムチャートである。
まず、制御部410が、ボウル部110の殺菌を行う条件が適用された、すなわちボウル部110の殺菌の実行を開始する指令がなされたと判断すると、リム吐水を行い(時間t1〜t2)、続いてジェット吐水を行う(時間t2〜t3)ことにより、溜水120の溜水面を待機時よりも下げる。この殺菌準備工程(時間t1〜t3)の動作は、図3に関して前述した如くである。
【0051】
なお、図5に表した「リム吐水ON」とは、リム吐水口114から水が吐水されていることを意味するものとし、一方で、図5に表した「リム吐水OFF」とは、リム吐水口114から水が吐水されていないことを意味するものとする。また、図5に表した「ジェット吐水ON」とは、ジェット吐水口111から水が吐水されていることを意味するものとし、一方で、図5に表した「ジェット吐水OFF」とは、ジェット吐水口111から水が吐水されていないことを意味するものとする。これらは、後述する図6、図8〜図10、および図12〜図13においても同様である。
【0052】
ここで、リム吐水を行うときには(時間t1〜t2)、制御部410は、図5に表したように、電解槽60の陽極板61および陰極板62に電圧をかけていない。そのため、このときにリム吐水口114から吐水される水には、次亜塩素酸は含まれていない。すなわち、このときにリム吐水口114から吐水される水は、次亜塩素酸を含んだ溶液(殺菌水)ではない。但し、このリム吐水のときに、制御部410は、電解槽60の陽極板61および陰極板62に電圧をかけ、リム吐水口114から殺菌水を吐水させてもよい。これによれば、このタイミングにおいて、溜水面以上のボウル部110を殺菌することができる。
【0053】
続いて、制御部410は、殺菌準備工程(時間t1〜t3)により溜水120の溜水面を待機時よりも下げると、電解槽60の陽極板61および陰極板62に電圧をかける。そして、制御部410は、リム吐水を行う(時間t3〜t4)。これにより、次亜塩素酸を含んだ溶液(殺菌水)がリム吐水口114からボウル部110に流し出される。このとき、溜水面は、待機時よりも下がっているため、待機時の溜水面以下のボウル部110に殺菌水を付着させることができる。
【0054】
そして、リム吐水を行うことにより、封水としての溜水120を待機時の溜水面に復元する復水を殺菌水にて行うことができる(時間t3〜t4)。なお、本具体例では、殺菌水にて復水する場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されず、復水する水の全てを殺菌水とする必要はない。例えば、待機時の溜水120の80%に相当する水量を殺菌水にて復水し、待機時の溜水120の20%に相当する水量を殺菌水ではない水(水道水)にて復水してもよい。殺菌水と、殺菌水ではない水(水道水)と、の水量の割合については、適宜変更することができる。これによれば、電解槽60が、待機時の溜水120に相当する水量の殺菌水を短時間で生成できない場合であっても、殺菌水ではない水を補充することにより復水を完了することができる。
【0055】
本具体例の便器装置10の動作によれば、待機時の溜水面以下のボウル部110に殺菌水を付着させることができるため、待機時の溜水面以下のボウル部110を殺菌することができる。また、待機時の溜水面以下のボウル部110の清潔性や衛生をより向上させることができる。またさらに、待機時の溜水面以下のボウル部110の防汚や防臭を行うことができる。そのため、ボウル部110の清掃を簡略化させることができる、あるいはボウル部110の清掃の手間を無くすことができる。また、ボウル部110の殺菌を無駄に実行することがないため、エネルギーロスを抑制したり、省エネルギー化を図ることができる。
【0056】
ここで、復水された溜水120は、殺菌水を有するため、溜水面以下のボウル部110は、待機時においても殺菌水で浸されている。そのため、本具体例の便器装置10の動作によれば、溜水面以下のボウル部110の殺菌効果をより持続させることができる。但し、殺菌水にて復水を行ってから所定時間が経過した後に、殺菌水ではない水(水道水)により再び復水してもよい。これによれば、排水トラップ管路112に貯留された殺菌水を有する溜水120を排水しつつ、殺菌水により除去した汚れなどを外部に排出することができる。
【0057】
図6は、本具体例の便器装置の動作の変形例を表すタイムチャートである。
本変形例の動作では、制御部410は、ジェット吐水を行いつつ、リム吐水口114から殺菌水を吐水する。すなわち、図5に関して前述した動作では、制御部410は、ジェット吐水の終了(時間t3)と略同時に、あるいはその後にリム吐水口114から殺菌水を吐水するが、本変形例の動作では、ジェット吐水中(時間t2〜t4)にリム吐水(殺菌水の吐水)を開始する(時間t3)。
【0058】
より具体的には、まず、時間t1〜t3における動作については、図5に関して前述した殺菌準備工程(時間t1〜t3)の動作と同様である。但し、制御部410は、時間t3においてジェット吐水を終了させない。そして、制御部410は、ジェット吐水を終了させる前に、電解槽60の陽極板61および陰極板62に電圧をかけ、リム吐水口114から殺菌水を吐水する(時間t3)。
【0059】
これによれば、図5に関して前述した動作の場合よりも、ボウル部110のより下の部分(深い部分)にまで殺菌水を付着させることができる。これは、溜水120の溜水面がより下がった状態において、リム吐水口114から殺菌水を吐水することができるためである。
【0060】
より具体的には、図5に関して前述した動作の場合には、ジェット吐水の終了させてから殺菌水を吐水するため、殺菌水を吐水したときには、図3に関して前述したように、ボウル部110内には所定水量(Q1+Q2)の溜水120が溜まっている。一方、本変形例の動作では、ジェット吐水を行いつつ殺菌水を吐水するため、殺菌水を吐水したときには、サイホン作用によりボウル部110内の水が排水トラップ管路112を経て外部に排出されている。そのため、本変形例の動作では、ボウル部110のより下の部分(深い部分)にまで殺菌水を付着させることができる。
【0061】
続いて、制御部410は、リム吐水口114からの殺菌水の吐水を開始してから所定時間後に、ジェット吐水を終了する(時間t4)。続いて、制御部410は、ジェット吐水を終了してから所定時間後に、リム吐水口114からの殺菌水の吐水を終了する(時間t5)。これにより、リム吐水口114から吐水される殺菌水により、復水を行うことができる。なお、本変形例の動作においても、復水する水の全てを殺菌水とする必要はない。
【0062】
本変形例の動作によれば、ボウル部110のより下の部分にまで殺菌水を付着させることができるため、ボウル部110のより下の部分を殺菌することができる。また、ボウル部110のより下の部分の清潔性や衛生をより向上させることができる。また、その他の効果についても、図5に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0063】
なお、本変形例の動作では、ジェット吐水を行いつつ殺菌水を吐水するため、排水管115とボウル部110とが貫通する場合がある。すなわち、いわゆる「封水切れ」を生ずる場合がある。そうすると、悪臭が排水管115からトイレ室内に侵入する場合がある。そこで、本変形例の動作を実行する場合には、制御部410は、排水管から逆流する臭気がボウル部110外へ飛散することを防止する臭気飛散防止工程を実行することがより好ましい。
【0064】
例えば、制御部410は、局部洗浄装置400に適宜設置される「脱臭ユニット」を起動させることがより好ましい。あるいは、局部洗浄装置400や便器本体100に加圧機を適宜設け、その加圧機により排水トラップ管路112や排水管115に向かって圧力(風圧)をかけてもよい。あるいは、局部洗浄装置400や便器本体100にいわゆる「エアカーテン」を適宜設け、その「エアカーテン」により悪臭の拡散を抑制してもよい。あるいは、逆止弁などのような構造を有する蓋体を排水トラップ管路112や排水管115に適宜設けてもよい。あるいは、例えば銀イオンなどを発生させて、悪臭を分解させてもよい。
【0065】
次に、本実施形態の他の具体例にかかる便器装置10について、図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態の他の具体例にかかる便器装置の主な構成を表すブロック図である。
【0066】
図3に関して前述した具体例の便器装置10では、次亜塩素酸を含んだ溶液(殺菌水)を生成する電解槽60は、リム側給水路44の途中に設けられているが、本具体例の便器装置10では、その電解槽60は、局部洗浄装置400に内蔵されている。また、本具体例の便器装置10では、制御部410は、局部洗浄装置400に内蔵されている。
【0067】
便器本体機能部30の給水路41に設けられた分岐金具31により分岐された分岐給水路33は、局部洗浄装置400の内部において、ノズル側給水路451と電解槽側給水路452とに分岐されている。ノズル側給水路451には、給水圧にかかわらず水の流量を一定に保つ定流量弁421と、通電により開弁して下流への通水/止水を選択的に切り替える電磁弁422と、が設けられている。
【0068】
また、電磁弁422の下流には、熱交換器430が設けられている。熱交換器430は、例えばシーズヒータなどの加熱源であるヒータ431を備えており、上流の電磁弁422を通して供給される水を貯留して加熱する。電磁弁422を通して水が供給されると、熱交換器430の上部に設けられた出湯口432から、加熱された水が押し出されて流出する。
【0069】
熱交換器430の下流には、切替弁441と、洗浄ノズル443と、が設けられている。熱交換器430から流出した水は、切替弁441によって、その供給先を洗浄ノズル443に設けられた複数の吐水口のいずれかに切り替えられる。なお、吐水口がひとつしか設けられていない場合には、切替弁441は設けられていなくともよい。洗浄ノズル443は、その先端部に設けられた吐水口から水を噴射して、便座に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、使用者は、洗浄ノズル443から吐出される水の水勢及び温度を好みに応じて変更することが可能であり、図示しないリモコンによりヒータ431の加熱量を調節する。
【0070】
一方、電解槽側給水路452には、通電により開弁して下流への通水/止水を選択的に切り替える電磁弁424と、水道水を電気分解して次亜塩素酸を含む溶液を生成可能な電解槽60と、が設けられている。電解槽60の構造は、図4に関して前述した構造と同様である。そして、電磁弁424を通して供給された水(水道水)は、電解槽60の内部で塩素の電気化学反応により次亜塩素酸を含む液(殺菌水)に変化する。電解槽60において生成された殺菌水は、電解槽側給水路452を通して局部洗浄装置400の下面などに適宜設けられた殺菌水吐水口20(図1参照)、あるいはリム吐水口114に導かれ、ボウル部110に流し出される。その他の構造については、図3に関して前述した具体例の便器装置10の構造と同様である。また、溜水面を待機時よりも下げる動作(殺菌準備工程の動作)についても、図3に関して前述した具体例の便器装置10の動作と同様である。
【0071】
次に、本具体例の便器装置10の動作について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、本具体例の便器装置の動作を表すタイムチャートである。
まず、時間t1〜t3における動作については、図5に関して前述した殺菌準備工程(時間t1〜t3)の動作と同様である。これにより、ボウル部110の溜水120の溜水面を待機時よりも下げることができる。続いて、制御部410は、電解槽60の陽極板61および陰極板62に電圧をかけ、電磁弁424を開放して殺菌水をボウル部110に吐水する(時間t3〜t4)。これにより、次亜塩素酸を含んだ溶液(殺菌水)がボウル部110に流し出される。
【0072】
なお、図8に表した「殺菌水吐水ON」とは、殺菌水吐水口20あるいはリム吐水口114などから殺菌水が吐水されていることを意味するものとし、一方で、図8に表した「殺菌水吐水OFF」とは、殺菌水吐水口20あるいはリム吐水口114などから殺菌水が吐水されていないことを意味するものとする。これは、後述する図9および図10においても同様である。
【0073】
そして、次亜塩素酸を含んだ溶液(殺菌水)がボウル部110に流し出されるときには、溜水面は、待機時よりも下がっているため、待機時の溜水面以下のボウル部110に殺菌水を付着させることができる。これにより、待機時の溜水面以下のボウル部110を殺菌することができる。また、ボウル部110に吐水される殺菌水により、復水を行うことができる(時間t3〜t4)。なお、本具体例の動作においても、図5に関して前述したように、復水する水の全てを殺菌水とする必要はない。また、その他の効果についても、図5に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
図9は、本具体例の便器装置の動作の変形例を表すタイムチャートである。
まず、時間t1〜t3における動作については、図5に関して前述した殺菌準備工程(時間t1〜t3)の動作と同様である。これにより、ボウル部110の溜水120の溜水面を待機時よりも下げることができる。続いて、制御部410は、リム吐水を行う(時間t3〜t4)。これにより、待機時の溜水120の一部に相当する水量を殺菌水ではない水(水道水)にて復水することができる。続いて、制御部410は、電解槽60の陽極板61および陰極板62に電圧をかけ、電磁弁424を開放して殺菌水をボウル部110に吐水する(時間t4〜t5)。これにより、次亜塩素酸を含んだ溶液(殺菌水)がボウル部110に流し出される。
【0075】
ここで、次亜塩素酸を含んだ溶液(殺菌水)がボウル部110に流し出されるときには、溜水面は、待機時よりも下がっている。つまり、待機時の溜水120の一部に相当する水量については、殺菌水ではない水(水道水)にて復水されているが、そのときの溜水120の溜水面は、待機時の溜水120よりも低い。そのため、待機時の溜水面以下のボウル部110に殺菌水を付着させることができる。また、電磁弁424を開放して殺菌水をボウル部110に吐水することにより、待機時の溜水120の他部に相当する水量を殺菌水にて復水することができる。つまり、殺菌水と、殺菌水ではない水(水道水)と、により溜水120を待機時の溜水面に復元することができる。
【0076】
本具体例によれば、電解槽60が、待機時の溜水120に相当する水量の殺菌水をより短時間に生成できない場合であっても、殺菌水ではない水を排水トラップ管路112に予め補充しておくことにより復水を完了することができる。また、その他の効果についても、図5に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0077】
図10は、本具体例の便器装置の動作の他の変形例を表すタイムチャートである。
本変形例の動作では、制御部410は、図6に関して前述した動作と同様に、ジェット吐水を行いつつ、ボウル部110に殺菌水を吐水する。すなわち、図8および図9に関して前述した動作では、制御部410は、ジェット吐水の終了(時間t3)と略同時に、あるいはその後にボウル部110に殺菌水を吐水するが、本変形例の動作では、ジェット吐水中(時間t2〜t4)に殺菌水の吐水を開始する(時間t3)。
【0078】
より具体的には、まず、時間t1〜t3における動作については、図5に関して前述した殺菌準備工程(時間t1〜t3)の動作と同様である。これにより、ボウル部110の溜水120の溜水面を待機時よりも下げることができる。但し、制御部410は、時間t3においてジェット吐水を終了させない。そして、制御部410は、ジェット吐水を終了させる前に、電解槽60の陽極板61および陰極板62に電圧をかけ、電磁弁424を開放して殺菌水をボウル部110に吐水する(時間t3)。これによれば、図6に関して前述したように、図8および図9に関して前述した動作の場合よりも、ボウル部110のより下の部分(深い部分)にまで殺菌水を付着させることができる。
【0079】
続いて、制御部410は、殺菌水の吐水を開始してから所定時間後に、ジェット吐水を終了する(時間t4)。続いて、制御部410は、ジェット吐水を終了してから所定時間後に、殺菌水の吐水を終了する(時間t5)。これにより、ボウル部110に吐水される殺菌水により、復水を行うことができる。なお、本変形例の動作においても、復水する水の全てを殺菌水とする必要はない。
【0080】
なお、本変形例の動作では、ジェット吐水を行いつつ殺菌水を吐水するため、排水管115とボウル部110とが貫通する場合がある。すなわち、いわゆる「封水切れ」を生ずる場合がある。そのため、図6に関して前述したように、本変形例の動作を実行する場合には、制御部410は、排水管から逆流する臭気がボウル部110外へ飛散することを防止する臭気飛散防止工程を実行することがより好ましい。また、その他の効果についても、図5に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0081】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図11は、本発明の第2の実施の形態にかかる便器装置を表す断面模式図である。
なお、図11は、本実施形態にかかる便器装置を前方から眺めたときの断面模式図であり、図11(a)に表した溜水水位(溜水面)は、待機時の状態を表しており、図11(b)に表した溜水水位(溜水面)は、待機時よりも下がった状態を表している。
【0082】
図1〜図10に関して前述した便器装置10は、殺菌水をボウル部110に流す、あるいは噴射する殺菌水吐水口20やリム吐水口114を備えるが、本実施形態にかかる便器装置10は、ボウル部110に紫外線(UV:ultraviolet)を照射する紫外線照射体70を備える。紫外線照射体70は、例えば、便器本体100の上部に設けられている。但し、紫外線照射体70の設置位置は、これだけに限定されるわけではなく、局部洗浄装置400の下面あるいは前面や、便器本体100の鉛直方向の中央部などに設けられていてもよい。また、紫外線照射体70としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、ブラックライト、ケミカルライト、水銀ランプ、あるいはキセノンランプなどが挙げられる。
【0083】
紫外線は、殺菌効果を有し、またバクテリアや細菌やカビなどの繁殖を抑制する効果を有する。そのため、紫外線照射体70から紫外線をボウル部110に照射することにより、便器本体100のボウル部110の清潔性や衛生をより向上させ、そのボウル部110を殺菌することができる。またさらに、ボウル部110の防汚や防臭を行うことができる。
【0084】
このとき、ボウル部110の下部には、封水としての溜水120が存在するため、ボウル部110に紫外線を照射しても、溜水120の溜水面以下のボウル部110の部分では、殺菌作用あるいは殺菌効果が低下するおそれがある。これは、紫外線照射体70から照射された紫外線が溜水120により吸収されるためである。そのため、待機時の溜水面以下の部分(喫水部)を殺菌することができないおそれがある。
【0085】
そこで、本実施形態にかかる便器装置10は、紫外線照射体70から照射するときには、溜水120の溜水面を待機時よりも下げることができる。すなわち、便器装置10は、図1〜図10に関して説明した便器装置10と同様に、ボウル部110の殺菌を行う場合には、溜水120の溜水面を下げる殺菌準備工程と、ボウル部110を殺菌する殺菌工程と、を実行することができる。なお、その他の構造や動作の概要については、図1および図2に関して説明した構造や動作の概要と同様である。
【0086】
次に、本具体例の便器装置10の動作について、図面を参照しつつ説明する。
図12は、本具体例の便器装置の動作を表すタイムチャートである。
まず、時間t1〜t3における動作については、図5に関して前述した殺菌準備工程(時間t1〜t3)の動作と同様である。つまり、図3に関して前述したように、制御部410は、リム吐水を行い、ジェット吐水を行い、加圧ポンプ52の作動を停止させることにより、ボウル部110の溜水120の溜水面を待機時よりも下げることができる。
【0087】
続いて、制御部410は、紫外線照射体70から紫外線をボウル部110に照射する(時間t3〜t4)。これにより、ボウル部110を紫外線により殺菌することができる。このとき、溜水面は、待機時よりも下がっているため、待機時の溜水面以下のボウル部110に紫外線照射体70からの紫外線を照射することができる。
【0088】
また、制御部410は、紫外線照射体70から紫外線をボウル部110に照射するときには、便蓋300を開閉させる図示しない便蓋駆動装置により、便蓋300を閉じることがより好ましい。これによれば、より高い殺菌性を有する周波数帯域の紫外線を使用して、ボウル部110を殺菌することができる。すなわち、制御部410は、便蓋300を閉じた状態で紫外線を照射するため、より高い殺菌性を有する周波数帯域の紫外線をボウル部110に照射しても人体に悪影響を及ぼすことはない。
【0089】
続いて、制御部410は、紫外線の照射を停止させると、リム吐水を行う(時間t4〜t5)。これにより、封水としての溜水120を待機時の溜水面に復元する復水を行うことができる。
【0090】
本具体例の便器装置10の動作によれば、待機時の溜水面以下のボウル部110に紫外線を照射することができるため、待機時の溜水面以下のボウル部110を殺菌することができる。また、待機時の溜水面以下のボウル部110の清潔性や衛生をより向上させることができる。またさらに、待機時の溜水面以下のボウル部110の防汚や防臭を行うことができる。
【0091】
なお、溜水120の溜水面を待機時よりも下げた後に紫外線を照射する場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されず、制御部410は、紫外線照射体70から紫外線を照射しつつ溜水120の溜水面を下げてもよい。つまり、制御部410は、図12に表した時間t3〜t4の間に、溜水120の溜水面を下げる動作を開始してもよい。これによっても、待機時の溜水面以下のボウル部110に紫外線照射体70からの紫外線を照射し殺菌することができる。
【0092】
図13は、本具体例の便器装置の動作の変形例を表すタイムチャートである。
本変形例の動作では、制御部410は、ジェット吐水を行いつつ、紫外線照射体70からの紫外線を照射する。すなわち、図12に関して前述した動作では、制御部410は、ジェット吐水の終了(時間t3)と略同時に、あるいはその後に紫外線照射体70からの紫外線を照射するが、本変形例の動作では、ジェット吐水中(時間t2〜t4)に紫外線の照射を開始する(時間t3)。
【0093】
より具体的には、まず、時間t1〜t3における動作については、図5に関して前述した殺菌準備工程(時間t1〜t3)の動作と同様である。但し、制御部410は、時間t3においてジェット吐水を終了させない。そして、制御部410は、ジェット吐水を終了させる前に、紫外線の照射を開始する(時間t3)。これによれば、図12に関して前述した動作の場合よりも、ボウル部110のより下の部分(深い部分)にまで紫外線を照射することができる。続いて、制御部410は、リム吐水を行うことにより、腹水を行うことができる(時間t4〜t5)。
【0094】
本変形例の動作によれば、ボウル部110のより下の部分にまで紫外線を照射し殺菌することができる。また、ボウル部110のより下の部分の清潔性や衛生をより向上させることができる。また、その他の効果についても、図12に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0095】
なお、本変形例の動作では、ジェット吐水を行いつつ紫外線を照射するため、排水管115とボウル部110とが貫通する場合がある。すなわち、いわゆる「封水切れ」を生ずる場合がある。そのため、図6に関して前述したように、制御部410は、排水管から逆流する臭気がボウル部110外へ飛散することを防止する臭気飛散防止工程を実行することがより好ましい。
【0096】
次に、溜水面を待機時よりも下げる動作(殺菌準備工程の動作)の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図14は、溜水面を待機時よりも下げる動作の変形例を説明するための断面模式図である。
【0097】
図3〜図10および図12〜図13に関して前述した便器装置10の構造および動作では、リム吐水を行い、ジェット吐水を行い、加圧ポンプ52の作動を停止させることにより、ボウル部110の溜水120の溜水面を待機時よりも下げる場合を例に挙げて説明したが、これだけに限定されるわけではない。例えば、図14に表したように、排水トラップを回動自在とすることにより、ボウル部110の溜水120の溜水面を待機時よりも下げてもよい。
【0098】
より具体的には、図14に表した便器装置は、便器本体100の後方下部に設けられボウル部110内に一定の封水(溜水)120を確保するための回動トラップ部140を備える。局部洗浄装置400の内部には、制御部410と、電磁弁422と、回動トラップ部140の最上位置と最下位置とをそれぞれ検知する検知センサ461と、が設けられている。電磁弁422は、例えば、水道に直結されており、電磁弁422を開放することによりボウル部110内に溜水120を確保することができる。
【0099】
そして、溜水面を待機時よりも下げる場合には、まず、制御部410は、図14(a)から図14(b)に表したように、図示しないモータを駆動して回動トラップ部140を矢印A1の方向に下回動させつつ、電磁弁422を開放する。その結果、溜水120は回動トラップ部140の上部から矢印A2の方向に排出される。続いて、溜水120の容量がEに表した容量分だけ減少すると、制御部410は、図14(b)から図14(c)に表したように、回動トラップ部140をさらに矢印A4の方向に下回動させ、溜水120を一気に矢印A3の方向に排出する。このようにして、ボウル部110の溜水120の水位(溜水面)は、待機時よりも低水位となる。
【0100】
そして、図5〜図6、図8〜図10、および図12〜図13に関して前述したタイミングと同様のタイミングにおいて、ボウル部110に殺菌水を吐水したり紫外線を照射することにより、待機時の溜水面以下のボウル部110を殺菌することができる。なお、図14に表した便器装置では、いわゆる「封水切れ」を生ずる場合があるが、逆止弁などのような構造を有する蓋体を回動トラップ部140に適宜設けることにより、悪臭が排水管からトイレ室内に侵入することを抑制することができる。
【0101】
なお、回動トラップ部140に溜水120を復水する場合には、まず、検知センサ461が回動トラップ部140の最下位置を検知し、ボウル部110に殺菌水を吐水したり紫外線を照射してから所定時間が経過する。そうすると、制御部410は、図示しないモータを駆動して回動トラップ部140を上回転させつつ、電磁弁422を開放する。回動トラップ部140が上回転し、検知センサ461が回動トラップ部140の最上位置を検知すると、制御部410は回動トラップ部140の回動を停止させる。その後、所定時間が経過し、ボウル部110に溜水120が確保されると、制御部410は電磁弁422を閉止して例えば水道からの給水を停止する。
【0102】
以上説明したように、本実施形態によれば、便器装置10は、ボウル部110の殺菌を行う場合には、溜水120の溜水面を下げる殺菌準備工程と、ボウル部110を殺菌する殺菌工程と、を実行することができる。これにより、待機時の溜水面以下のボウル部110に殺菌水を付着させたり、紫外線を照射することができる。そのため、待機時の溜水面以下のボウル部110を殺菌することができる。また、待機時の溜水面以下のボウル部110の清潔性や衛生をより向上させることができる。またさらに、待機時の溜水面以下のボウル部110の防汚や防臭を行うことができる。そのため、ボウル部110の清掃を簡略化させることができる、あるいはボウル部110の清掃の手間を無くすことができる。また、ボウル部110の殺菌を無駄に実行することがないため、エネルギーロスを抑制したり、省エネルギー化を図ることができる。
【0103】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便器本体100および局部洗浄装置400などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや殺菌水吐水口20、リム吐水口114、および紫外線照射体70の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、ボウル部の殺菌を行う条件が適用された場合に限らず、便器本体を洗浄するたびに殺菌工程を実行するようにしてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0104】
10 便器装置、 20 殺菌水吐水口、 30 便器本体機能部、 31 分岐金具、 33 分岐給水路、 40 バルブユニット、 41 給水路、 42 電磁開閉弁、 43 給水路切替弁、 44 リム側給水路、 45 タンク側給水路、 51 貯水タンク、 52 加圧ポンプ、 53 ジェット側給水路、 53a 上流ジェット側給水路、 53b 下流ジェット側給水路、 53c 頂部、 55 上端フロートスイッチ、 60 電解槽、 61 陽極板、 62 陰極板、 70 紫外線照射体、 100 便器本体、 110 ボウル部、 111 ジェット吐水口、 112 排水トラップ管路、 112a 入口部、 112b トラップ上昇管、 112c トラップ下降管、 112d 頂部、 114 リム吐水口、 115 排水管、 120 溜水、 140 回動トラップ部、 200 便座、 300 便蓋、 400 局部洗浄装置、 410 制御部、 421 定流量弁、 422 電磁弁、 424 電磁弁、 430 熱交換器、 431 ヒータ、 432 出湯口、 441 切替弁、 443 洗浄ノズル、 451 ノズル側給水路、 452 電解槽側給水路、 461 検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溜水を貯留可能なボウル部を有する便器本体と、
前記ボウル部の殺菌を開始する指令に基づいて、前記ボウル部に貯留された前記溜水の水位を待機時よりも下げる殺菌準備と、前記ボウル部の殺菌と、を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とする便器装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記殺菌準備を開始した後に、前記ボウル部の殺菌を開始することを特徴とする請求項1記載の便器装置。
【請求項3】
前記制御部は、殺菌性を有する水を前記ボウル部に供給することにより前記ボウル部の殺菌を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項4】
前記制御部は、紫外線を前記ボウル部に照射することにより前記ボウル部の殺菌を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ボウル部の殺菌を開始した後に、前記待機時よりも下げられた前記溜水の水位を前記待機時の水位に復元する復水を開始することを特徴とする請求項3または4に記載の便器装置。
【請求項6】
前記ボウル部の上方を覆う便蓋をさらに備え、
前記制御部は、前記便蓋が閉じた状態において、前記ボウル部の殺菌を実行することを特徴とする請求項4または5に記載の便器装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ボウル部の殺菌を実行する際には、前記ボウル部に接続された排水管から逆流する臭気が前記ボウル部の外部へ拡散することを防止することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の便器装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−248786(P2010−248786A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99387(P2009−99387)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】