説明

便器

【課題】拭き掃除をより容易に行うことができるとともに、清潔な状態をより容易に維持することが可能な便器を得る。
【解決手段】上方に開口するボウル6を有する便器本体1と上下方向に回動可能に取り付けられている便座2とを有する便器であって、前記便器本体1は、ボウル6の周壁の上縁部をなすリム部8を備え、前記リム部8の上面8eを、リム部8の幅方向中央部を頂上とし幅方向両端に向けて下がる上に凸の曲面状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器の構造として、特許文献1に開示されるものが知られている。
【0003】
この特許文献1に開示される便器は、ボウルを有しており、当該ボウルの周壁上縁部としてリムを形成したものである。
【特許文献1】特開2001−26960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示される従来例にあっては、リムは、断面視で長方形状をしており、その上面が水平な平坦面となるようにボウル上部に設けられているため、拭き掃除用清掃具を用いて当該リム部分の上面と両側面を片手で把持して一度に拭こうとしても、手のひらおよび指をリムの形状にフィットさせることが難しかった。その結果、拭き掃除用清掃具のリム表面への接触圧のばらつきが大きくなってしまい、拭き残し部分が多く発生し効率的に拭くことができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、拭き掃除をより容易に行うことができるとともに、清潔な状態をより容易に維持することが可能な便器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、上方に開口するボウルを有する便器本体と上下方向に回動可能に取り付けられている便座とを有する便器であって、前記便器本体は、ボウルの周壁の上縁部をなすリム部を備え、前記リム部の上面を、リム部の幅方向中央部を頂上とし幅方向両端に向けて下がる上に凸の曲面状に形成したことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の便器において、前記便座の裏面に、前記リム部上面の曲面形状に対応する凹溝部を形成したことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明にあっては、請求項1に記載の便器において、前記便座の裏面に、前記リム部上面の曲面形状に対応する凹溝部が形成された便座支持部材を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リム部の上面を、上に凸の曲面状に形成しているため、リム部上面および両側面を片手で把持した際に手のひらおよび指をリム部の形状にフィットさせやすくなり、リム部を拭く際に、拭き残し部分の発生を抑制することができ、効率的に拭くことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)図1は、本実施形態にかかる便器の分解斜視図、図2は、図1のA−A断面図である。なお、以下では、便宜上、使用者が便座に着座した時の背面側を後方、正面側を前方と称することにする。
【0012】
本実施形態における便器は、図1に示すように、トイレの床面上に設置される樹脂製の便器本体(便器)1と、便器本体1内部に収容された局部洗浄装置15と、便器本体1に回動可能に取り付けられた便座2および便蓋4とを備えている。
【0013】
便器本体1は、上方に開口したボウル部7と、ボウル部7の上端部に設けられ、便器本体1の上端部をなすリム部8と、外周壁をなすスカート部9とを備えている。これらボウル部7,リム部8,スカート部9は別体の成型品であり、溶着等することで一体化される。そして、これらが一体化されてなる便器本体1の内部には空洞が形成される。
【0014】
リム部8はボウル部7の上側に装着され、これにより用を足すためのボウル6が形成されている。すなわち、リム部8は、ボウル6の周壁の上縁部をなすものである。
【0015】
本実施形態では、リム部8は、図1および図2に示すように、上壁部8aと、外側壁部8bと、内側壁部8cと、底壁部8dと、を備えている。そして、図2に示すように、外側壁部8bと底壁部8dとの間には隙間8fが形成されており、当該隙間8fにボウル部7の上側周壁部7aを嵌め込んでリム部8をボウル部7の上側に装着している。
【0016】
さらに、本実施形態では、リム部8の上壁部8aを、上が凸の略逆U字状となるように膨出形成することで、その上面8eがリム部8の幅方向中央部を頂上とし幅方向両端に向けて下がる上に凸の曲面状(断面の上縁が略円弧状となる曲面;半円柱面を略U字状または環状に湾曲させた曲面)となるようにしている。
【0017】
なお、ボウル部7の下端部には、後方に向けて排水管部(図示せず)が突設されており、この排水管部(図示せず)からターントラップ装置(図示せず)を介してボウル6内の溜水が排水されるようになっている。
【0018】
また、ボウル部7の内周面には、図1に示すように、洗浄水の吐水孔13と、ボウル部7の内面全体に洗浄水を供給する溝状の洗浄水流路14とが形成されている。
【0019】
スカート部9は、後方に開口する平面視U字状に形成されており、その上端縁は、リム部8の下端縁に接続されている。
【0020】
局部洗浄装置15は、略箱状をしており、その内部には局部洗浄用のノズル(図示せず)や、当該ノズル(図示せず)をノズル孔18を介してボウル6内に進出するように駆動させるための各種装置、制御回路等が設けられている。
【0021】
なお、本実施形態では、この局部洗浄装置15を便器本体1内部の後部かつ上部に取り付け、便器本体1の後部側、すなわち局部洗浄装置15を装着した側の上端面1aが全域に亘って段差が無く滑らかでありかつほぼ平坦な平滑面状となるようにするとともに、上端面1aを後側程上方に位置するように傾斜させ、全体としては段差のない滑らかな緩斜面となるようにすることで、便器本体1の汚れを拭き取りやすくして、清潔な状態をより容易に維持できるようにしている。
【0022】
また、本実施形態では、便座2および便蓋4の両側端部には、それぞれ便器本体1に取り付けるための取付部3,3および取付部5,5が形成されており、これら取付部3,5は、図1に示すように、各本体部の後端部から側面視で略L字状となるように突出するアーム状に形成されている。そして、便座2の取付部3,3には貫通穴3a,3aが形成される一方、便蓋4の取付部5,5にはピン5a,5aが内側に向けて突設されている。また、便器本体1の両側壁部の上側かつ後側には、外側に向けてピン11,11が突設されている。そして、各取付部3に形成された貫通穴3aの両側にピン11およびピン5aを嵌め込むことで便器本体1に便座2および便蓋4が回動可能に取り付けられる。すなわち、便座2および便蓋4は、便器本体1に同軸上で回動支持されている。
【0023】
さらに本実施形態では、図2に示すように、便座2の裏面2aに、リム部8の上面8eの曲面形状に対応する凹溝部10が形成されており、この便座2を下げた際に、リム部8の上面8eが凹溝部10に収まるようにしている。
【0024】
以上の本実施形態によれば、リム部8の上面8eがリム部8の幅方向中央部を頂上とし幅方向両端部に向けて下がる上に凸の曲面状となるように、リム部8を形成しているため、リム部8の上面8eおよび両側面を片手で把持した際に手のひらおよび指がリム部8の形状にフィットし、拭き掃除用清掃具を用いてリム部を拭く際に、拭き掃除用清掃具のリム表面への接触圧のばらつきが抑制される。その結果、拭き残し部分の発生を抑制することができ、リム部8を効率的に拭くことが可能となる。
【0025】
また、本実施形態によれば、便座2を下げた際にリム部8の上面8eが収まるように、リム部8の上面8eの曲面形状に対応する凹溝部10を便座2の裏面2aに形成することで、便座2を下げて、上に凸状をしたリム部8の上側に載置させた際に、便座2のぐらつきの抑制を図っている。
【0026】
また、凹溝部10を設けて、便座2を下げた際にリム部8の上面8eが収まるようにしたため、便座2を下げることでリム部8の上面8eに蓋をすることができ、リム部8の上面8e上に汚れが溜まることを抑制することができるという利点もある。
【0027】
(第2実施形態)図3は、本実施形態にかかる便器の図1のA−Aと同位置における断面図である。なお、本実施形態にかかる便器は、上記第1実施形態にかかる便器と同様の構成要素を備える。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0028】
本実施形態にかかる便器では、図3に示すように、便座2Aの裏面2aAに便座支持部材としてのアダプタ2cが設けられている。
【0029】
そして、アダプタ2cの下面には、リム部8の上面8eの曲面形状に対応する凹溝部10Aが形成されており、この便座2Aを下げた際に、リム部8の上面8eが凹溝部10Aに収まるようにしている。
【0030】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0031】
(第3実施形態)図4は、本実施形態にかかる便器の図1のA−Aと同位置における断面図である。なお、本実施形態にかかる便器は、上記第1実施形態にかかる便器と同様の構成要素を備える。よって、それら同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0032】
本実施形態にかかる便器では、リム部8Bがボウル部7の上側に装着されることで用を足すためのボウル6Bが形成されている。
【0033】
このリム部8Bは、その上壁部8aBを断面視で上に凸状に形成するとともに、内側壁部8cBを断面視で略S字状となるように形成することで、リム部8Bの表面が滑らかな曲面状となるように形成されている。そして、内側壁部8cBの下端部をリム部8Bの下方に位置するボウル部7の上側周壁部7aに溶着等して、リム部8Bをボウル部7の上側に装着させている。
【0034】
さらに、上記第1実施形態と同様に、便座2の裏面2aに、リム部8Bの上面8eBの曲面形状に対応する凹溝部10を形成し、この便座2を下げた際に、リム部8Bの上面8eBが凹溝部10に収まるようにしている。
【0035】
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
その上、本実施形態によれば、リム部8Bは、その表面が滑らかな曲面状となるように形成されているため、上記第1実施形態および第2実施形態よりも拭きやすくすることができる。さらに、リム部8Bの表面を滑らかな曲面状とすることで、吐水孔13からの洗浄水が、ボウル6の外部にこぼれることなくリム部8Bの内側面に沿ってボウル6の内周面全体を旋回するため、ボウル6全体をむらなく洗浄することができる上、滑らかな曲面状として角部をなくした分、水切れがよく汚れも溜まりにくくなる(水垢が発生しにくくなる)という利点もある。
【0037】
以上、本発明にかかる局部洗浄装置付便器の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限ることなく要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。
【0038】
例えば、便器の上端面を傾斜のない水平面としてもよいし、湾曲等のないほぼ完全な平坦面としてもよい。
【0039】
また、上記第1〜第3実施形態においては、局部洗浄装置付便器を例示して説明したが、暖房便座装置付便器としても本発明を実施することができるし、かかる装置の付いていない便器としても本発明を実施することができる。
【0040】
また、上記第1〜第3実施形態においては、局部洗浄装置が便器本体に内蔵された局部洗浄装置付便器を例示して説明したが、局部洗浄装置を便器本体上面に載設させた便器としても本発明を実施することができる。
【0041】
また、上記第1〜第3実施形態においては、便器および局部洗浄装置の材質として樹脂を用いているが、例えばそれらの一部又は全部を陶器等の他の材質を用いて形成してもよい。
【0042】
さらに、上記第1〜第3実施形態において使用される便器および局部洗浄装置の形状は、種々の形状を取り得る。
【0043】
また、上記第1〜第3実施形態においては、ターントラップ式便器について例示したが、サイフォン式便器としても本発明を実施することができる。その場合、逆U字状配管の上側に形成される空間に、局部洗浄装置を配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる便器の分解斜視図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる便器の図1のA−Aと同位置における断面図。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる便器の図1のA−Aと同位置における断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 便器本体
2 便座
2a 裏面
2c アダプタ(便座支持部材)
6 ボウル
8 リム部
8e 上面
10 凹溝部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口するボウルを有する便器本体と上下方向に回動可能に取り付けられている便座とを有する便器であって、
前記便器本体は、ボウルの周壁の上縁部をなすリム部を備え、
前記リム部の上面を、リム部の幅方向中央部を頂上とし幅方向両端に向けて下がる上に凸の曲面状に形成したことを特徴とする便器。
【請求項2】
前記便座の裏面に、前記リム部上面の曲面形状に対応する凹溝部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記便座の裏面に、前記リム部上面の曲面形状に対応する凹溝部が形成された便座支持部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の便器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−291643(P2007−291643A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118218(P2006−118218)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】