説明

便座および便座を備えた便器

空気をボールから吸引する手段を有する便座の場合、便座における好都合な空気の流れが、便座の縦中心線(A)の両側に細長い吸引開口部(2,2´)を設けることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールから空気を吸引するための吸引開口部を有する便座に関し、便座は、これらの吸引開口部に接続されておりかつ便座に設けられた中空空間と、吸引手段と、フィルタ手段とを具備する。便座は、取付領域および前方領域を有する。更に、本発明は、便座を備えた便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、便座および明細書の最初の部分に記載のタイプの便器が公知である。この便座は、便座の穴を取り巻く中空空間を有する。空気が、ボールから、便座の下面にある複数の円形の吸引開口部を介して、中空空間へ吸引されることができる。このことは、便座の外側に設けられたファンを介してなされる。ファンは、ファンによって吸引される空気を、活性炭フィルタの中に供給する。特許文献2も、便座、およびボールから空気を吸引する手段を有する便器を示す。特許文献3は、便座の下方に設けられており、ボールの一側に1つのスロット状の開口部を有する流路を具備する中間リングを示す。ボールの他側にある第2の開口部は、空気出口として設けられている。その目的は、エアカーテンをボールの上方に作り出すためである。吸引された空気は、フィルタへ導かれない。
【0003】
これらの装置が、不快な臭いによる悩ましさを避けることが意図されているのは、臭いに満ちた空気をボールから吸引しかつ臭いを消し、あるいは、空気を排出することによってである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】GB-A 2 178 456
【特許文献2】US-A-6 055 677
【特許文献3】CH-A-469 869
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、空気の吸引、従ってまた消臭を改善することである。
【0006】
このことは、明細書の最初の部分に記載されたタイプの便座の場合、便座の縦中心線の両側で、複数の吸引手段のうち夫々少なくとも1つの吸引手段が、スロットとして構成されており、特に1つのスロットまたは複数のスロットが、実質的に、取付領域から前方領域まで延びていることによって、達成される。
【0007】
特に実質的に便座の穴の両側に沿って延びている、少数の、両側の、細長い、スロット状の吸引開口部によって、従来の技術に基づく複数の円形の開口部を用いるよりも、あるいは、従来の技術に基づく便座の下方にあるリングの一側に只1つのスロット状の開口部を用いるよりも、ボールからの空気のより良い吸引が可能であることが明らかになった。
【0008】
吸引開口部が、便座の縦中心線の側方のみに設けられており、前方領域自体には設けられていないことは好ましい。そこに、同様に、吸引開口部が設けられているとき、吸引開口部は、そこでは、スロット状の開口部として構成されていない。前方領域に隣接する、便座の穴の領域を、特に、ボールへの外気の流入のために、用いることが意図されることが明らかになった。このことは、前方領域に形成されたスロット状の吸引開口部によって、むしろ妨害される。実施の形態では、スロット状の吸引開口部は、便座の、ボール側の側壁に設けられている。他の実施の形態では、スロットは、便座の下面に設けられている。側壁および下面に設けられているスロットの組合せも、好ましい。下面にある吸引スロットが、変化する開口幅をもって、特に、便座の取付領域に向かって拡大する幅をもって構成されていることは好ましい。このことは、側壁に形成されたスロットにも、当てはまる。
【0009】
空気がボールから吸引開口部を介して流入する相手である中空空間が、中空空間として、便座全体を巡るようには延びていないことが、好都合であることが明らかになった。2つの中空空間部分が形成されていることは好ましい。それ故に、便座の前方には、空気を吸引する先である中空空間がない。
【0010】
中空空間部分のうちの少なくとも一方が、少なくとも、吸引開口部に連続して、変化する横断面を有することは好ましい。この横断面は、吸引開口部の構造との組合せで、便座における、均等な、特に大いに層状の空気流の達成を可能にする。特に、横断面が、中空空間部分の、夫々に閉じた端部から、開いた端部へ、または2つの中空空間を接続する端部へと、拡大する。このことは、便座に設けられたフィルタ手段への良好な流れを可能にする。
【0011】
更に、1つの中空空間部分につき、吸引手段が便座に設けられていることは、好ましい。この設置によって、ボールからの臭いの流出を著しく回避する、空気量の供給が達成可能である。便座の外側にある邪魔なファンを省略することができる。更に、フィルタ手段が、同様に、便座に収容されていることは好ましい。この配置にとって、2つの吸引手段すなわちファンを有する実施の形態が、特に好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づく便座の平面図である。便座の上面は、部分的に透明に示されている。
【図2】図の左半分と右半分にある吸引開口部の2つの異なった実施の形態を示す、図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図3】便座を下から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより良く理解するためにおよび複数の他の利点を説明するために、図面を参照して、実施の形態を詳述する。
【0014】
図1は、便座を、上から見た平面図で、すなわち便座面への眼差しの方向に示す。この便座面は、図1では、透明であると仮定されている。その目的は、便座において中空空間および便座の他の要素を見て取れるためである。便座1は、環状の便座面および便座の穴11を有する通常の形状を有する。便座は、縦中心線Aに対し対称的に構成されており、後方部分に、取付領域12を有する。この取付領域は、便器に便座を設けるための、図示しない取付手段を有する。ここでは、取付領域は、実質的に、便座の穴に接する仮想の線Dの後方の領域である。便座は、知られるように、便器に旋回可能に取り付けられるように、設けられている。便座の前方領域13は、便座の穴11に接する仮想の線Cの手前に位置しているように定められてもよい。プラスチック、木材または他の材料からなる便座の構造は、当業者には知られており、ここでは、基本的には、これ以上説明する必要はない。
【0015】
本発明に係わる便座は、内部に、中空空間4を有する。図示した好ましい実施の形態では、中空空間4は、縦中心線Aの両側に位置している2つの中空空間部分5および6に分割されている。これらの中空空間部分5および6は、取付領域12で、互いに接続されている。これに対し、中空空間部分は、便座1の前方領域13では、閉じられているか、互いに接続されていない。本発明では、今や、便座には、縦中心線Aの両側で、スロット状の吸引開口部2,2´が設けられている。吸引開口部を通って、空気が、ボールから中空空間へ吸引されることができる。これらの縦長のスロットは、実質的に、前方領域13と取付領域12との間で延びているが、好ましくは両者に達してはいない。図1では、矢印aによって、空気が、便座の穴11からまたはボールから、スロット状の開口部2,2´を通って、中空空間4または側方の中空空間部分5,6へ入り込む様が示されている。
【0016】
図1の好ましい実施の形態では、中空空間部分5,6は、これらの中空空間部分の横断面が中空空間の一部分に亘って変化するように、構成されている。中空空間部分5が、この中空空間部分が、スロット開口部2´を除いて閉じられていてなる、前方の端部領域5´に、まず、僅かな横断面を有し、取付領域12の方向に拡張していることが、見て取れる。中空空間部分6に関しては、幾らか異なった形状を有する類似の延びが示されている。横断面の変化は、スロット状の吸引開口部2および2´の形状との関連で、以下のように、すなわち、出来る限り同形の、特に層状の流れが、各々の中空空間部分で、少なくとも、吸引スロットの領域で調整されるように、選択される。中空空間における空気流は、矢印bで示されている。図示した好ましい実施の形態では、空気をボールから吸引スロットを介して吸引する吸引手段は、夫々中空空間5および6に割り当てられている2つのファン8および9を有する。これらのファンは、特に、例えば12ボルトの電圧の、低電圧電動機によって駆動される軸方向ファンまたはラジアルファンであってもよい。このとき、ファン8および9は、ファン用モータのための家庭用回線網(Haushaltnetz)の線間電圧を変圧する変圧器によって作動される。吸引手段を操作するための手動で動作されるスイッチが、便座1に設けられていてもよい。人による便座への荷重の際に、吸引手段を作動させるスイッチが設けられていてもよい。更に、便器の使用後にまだしばらくの間臭いの吸引を継続するために、スイッチが切られたか、スイッチへの負荷の軽減がなされた後に、吸引手段をまだ一定時間作動させ続ける回路が設けられていてもよい。このようなスイッチ入れ手段および時間回路の構造は、当業者には知られており、ここでは、詳しく説明する必要はない。吸引手段の好ましい2つのファンの代わりに、只1つのファンが設けられていてもよい。このファンは、ファンが2つの吸引開口部2,2´を介して空気を吸引することができるように、設けられている。図1に示した好ましい実施の形態では、更に、便座自体に、フィルタ手段10が設けられており、フィルタ手段は、活性炭フィルタ15と、流れ方向に前置された前置フィルタ17とを有する。ファン8および9から流れ出る空気は、この場合、まず前置フィルタ17およびその後に活性炭フィルタ15を通過し、次に、洗浄されて便座1から外へ流れる。このような空気流出開口部は、取付領域12の後方部分に設けられているが、図示されてはいない。矢印bは、空気が、両側の中空空間部分5,6で、ファン8,9に達し、これらのファンを通って流れ、互いに接続されている中空空間部分5,6に達し、フィルタ手段10を介して外へ流れる様を示す。この目的のために、便座の、フィルタ手段10を収容する部分は、フィルタの、流れ方向後方に、空気流出開口部を有する。便座のこの部分は、更に、カバーを有する。その目的は、フィルタ手段を容易に交換することができるようにするためである。
【0017】
図2は、図1からの線B−Bに沿った断面図を示す。図2の左半分および右半分には、異なった実施の形態が示されている。便座1では、通常、一方の実施の形態または他方の実施の形態のみが選択される。それ故に、縦中心軸線Aの両側には、同一の実施の形態が選択されている。しかしながら、異なった実施の形態を説明するために、図2は、しかるべく(entsprechend)分割された。図2の右半分には、スロット状の吸引開口部2´が、便座の、ボール側の側壁7に設けられていてなる便座1の実施の形態が示されている。かくて、空気は、側方へ、便座1の中空空間5に流入する。便座1が、便器の、示されただけのボール縁部20に載っている様が示されている。スロット状の吸引開口部2´は、1本の細長い開口部であってもよく、あるいは、複数の細長い開口部に区分されていてもよい。吸引スロットの開口幅dは、スロットの全長に亘って同じであってもよいし、あるいは、全長に沿って変化してもよい。例えば、中空空間の前方領域5´におけるスロットの開口幅は、取付側の後方領域5´´よりも小さくてもよい。図2の左半分には、一方の細長い吸引開口部または場合によっては複数の細長い吸引開口部が、便座の下側に設けられていてなる、他の実施の形態が示されている。下側の吸引開口部2で、吸引開口部の開口幅dがスロットに沿って異なっているのは好ましい。開口幅が中空空間6の横断面の変化に対応することは好ましい。それ故に、この実施の形態でも、中空空間の閉じた端部6´の領域に、僅かな開口幅が生じ、中空空間6の、取付側の後方領域6´´に、より大きな開口幅が生じることは好ましい。この場合、特に、スロットの開口幅は、前側の領域における小さい開口幅から、取付側の領域におけるより大きな開口幅へと、連続的に増大する。
【0018】
図3は、便座1の下面に吸引開口部を有する実施の形態を底面図で示す。図3の右半分には、吸引開口部2´が、増大する開口幅を有する細長いスロットとして示されている。スロットは、複数の細長いスロットによって形成されてもいるだろう。それ故に、クロスピース22は、スリットに沿って設けられているだろう。右半分に示した実施の形態では、スロット開口部は、実質的に、中空空間の境界と対応している。それ故に、中空空間は、スロットの幅に対応して変化する横断面を有する。図の左半分には、細長い、スロット状の吸引開口部2が示されている。吸引開口部は、前側の領域を除いて、実質的に同一の開口幅を有する。更に、破線によって、中空空間部分6が示されている。この中空空間部分は、この場合、横断面を有する。横断面は、取付領域に向かっては、スロット2の開口幅に対応していない。
【0019】
本願では、本発明の好ましい実施の形態が記載されている。とはいえ、本発明がこれらの実施の形態に限定されず、以下の請求項の範囲内で、他の方法で実施されることができることをはっきり指摘する。
【符号の説明】
【0020】
1 便座
2 吸引開口部
2´ 吸引開口部
4 中空空間
5 中空空間
6 中空空間
8 吸引手段
9 吸引手段
10 フィルタ手段
13 前方領域
A 縦中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールから空気を吸引するための吸引開口部(2,2´)を有する便座(1)であって、これらの吸引開口部に接続されておりかつ前記便座に設けられた中空空間(4,5,6)と、吸引手段(8,9)と、フィルタ手段(10)とを具備し、前記便座は、取付領域(12)および前方領域(13)を有し、
前記便座の縦中心線(A)の両側では、前記複数の吸引手段のうち夫々少なくとも1つの吸引手段が、細長いスロット(2,2´)として構成されていることを特徴とする便座(1)。
【請求項2】
前記便座の縦中心線(A)によって定められている便座の両半分の、その各々には、1つの細長いスロット(2,2´)が設けられていること、あるいは、1つのクロスピース(22)または複数のクロスピースによって分けられた複数のスロットが設けられており、これらのスロットは、実質的に、前記取付領域から前記前方領域まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の便座。
【請求項3】
前記前方領域には、スロット状の吸引開口部が設けられておらず、特に吸引開口部は全然設けられていないことを特徴とする請求項1または2に記載の便座。
【請求項4】
前記吸引開口部は、前記便座の側壁(7)に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の便座。
【請求項5】
前記吸引開口部は、前記便座の下面(14)に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の便座。
【請求項6】
前記スロットは、自らの縦の長さに沿って、異なった開口幅(d)を有し、特に、前記スロットの前側の端部(5´,6´)から前記スロットの取付側の端部(5´´,6´´)へ増大する開口幅を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の便座。
【請求項7】
前記中空空間(4)は、前記縦中心線(A)の両側に設けられた2つの中空空間部分(5,6)を有し、これらの中空空間部分は、前記取付領域で互いに接続されており、前側の端部(5´,6´)で閉じられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の便座。
【請求項8】
前記中空空間または前記中空空間部分は、変化する横断面を有し、特に、横断面が、前記中空空間の前側の端部(5´,6´)から前記便座の前記取付領域へ増大することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の便座。
【請求項9】
前記スロットの前記開口幅の増大と、このスロットを介して接近可能な前記中空空間の横断面の増大とが、実質的に対応することを特徴とする請求項6または8に記載の便座。
【請求項10】
前記吸引手段(8,9)は、前記便座に設けられた少なくとも1つのファンを有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の便座。
【請求項11】
前記吸引手段は、前記便座の前記縦中心線(A)の両側に設けられている2つのファン(8,9)を有することを特徴とする請求項10に記載の便座。
【請求項12】
各々の中空空間部分(5,6)には、1つのファン(8,9)が設けられていることを特徴とする請求項7または11に記載の便座。
【請求項13】
前記フィルタ手段(10)は、前記便座に設けられていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の便座。
7に記載の便座。
【請求項14】
前記フィルタ手段(10)は、活性炭フィルタ(15)と、流れ方向に関してこの活性炭フィルタに前置された前置フィルタ(17)とを有することを特徴とする請求項13に記載の便座。
【請求項15】
前記フィルタ手段は、前記取付領域で前記縦軸線(A)に対し横方向に設けられたフィルタ・ブロックによって形成されることを特徴とする請求項13または14に記載の便座。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の便座を有する便器(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−510836(P2010−510836A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538566(P2009−538566)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000680
【国際公開番号】WO2008/064498
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509153881)
【氏名又は名称原語表記】Luedi, Raymond
【住所又は居所原語表記】Herrenweg 185, CH−8706 Meilen, Switzerland
【Fターム(参考)】