説明

便座装置

【課題】簡単な構成で使用後の余熱の影響をなくすことで、乾燥動作時の実際の乾燥温度のみならず、乾燥温度に影響している温度便器内温度を1つの温度センサで温度を検出することができ、常に一定温度の乾燥とした便座装置を提供することである。
【解決手段】人体局部に温風を吹き出す温風吹き出し口を有する乾燥機能部7と、前記吹き出し口に温度を検出する温度センサ6と、乾燥機能部7による乾燥中に温度センサ6で検出される検出値に基づいて温風吹き出し温度を制御する温度制御部8とを備え、温度制御部8は乾燥時以外においても温度センサ6による温度検出を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥機能を有する便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置としては室内温度に応じて乾燥温度を制御するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された従来の便座装置を示すものである。図9に示すように、便座装置は、便器本体1と便座2とからなり、便座2の後部にはヒータ4および送風ファン5からなる乾燥機能部7と乾燥機能部7等を制御するためのマイクロコンピュータ(図示せず)を備える温度制御部8が配設されている。
【0004】
また、便器本体1の外側には室温センサ9が備えられており、温度制御部8は温風暖房運転が行なわれているときに乾燥動作状態となった場合は、前回の乾燥動作が終了した後室温センサ9により室温の検出を行ない、この検出した検出値に基づいて検出値の更新を行なう。
【特許文献1】特許第3460175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の室温を測定することによる制御においては、実際の便器内温度が水や便器の温度により影響を受け、実際の室温と比べて異なるため、室温によってそのまま便器内温度に反映されるとは限らない。また、使用者や便座装置の余熱等のない状態での便器内温度が乾燥温度に影響しているので、室温による制御ではより正確な乾燥温度を制御することは難しい。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、便器内温度のみならず、乾燥動作時の実際の乾燥温度を1つの温度センサで温度を検出することができ、常に一定温度の乾燥とした便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置の温度制御部は乾燥時以外においても前記温度センサによる温度検出を行うようにしたものである。
【0008】
これによって、便器内温度により乾燥時に出てくる温風は影響を受け、便器内温度に比例して乾燥温度が変化してしまうのを防ぐため乾燥時以外において便器内温度を検出し、乾燥時以外において便器内温度を検出する。さらに乾燥開始後の乾燥温度を検出することで、ヒータの通電率を変更して、常に設定した一定の乾燥温度を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の便座装置は、便器内温度のみならず、乾燥動作時の実際の乾燥温度を1つの温度センサで温度を検出することができ、常に一定温度の乾燥を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、人体局部に温風を吹き出す温風吹き出し口を有する乾燥機能部と、吹き出し口に温度を検出する温度センサと、乾燥機能部による乾燥中に前記温度センサで検出される検出値に基づいて温風吹き出し温度を制御する温度制御部とを備え、温度制御部は乾燥時以外においても温度センサによる温度検出を行うことにより、便器内温度と実際の乾燥温度を1つの温度センサで検出することができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の便座装置において、温度制御部は乾燥機能部による乾燥中に前記温度センサで検出される検出値に応じて温風吹き出し温度を制御するとともに、乾燥時以外に温度センサにより検出された温度に応じても制御するものである。その結果、人的影響や便座装置使用による余熱の影響をなくし、温度センサがより正確な便器内温度を検出することができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第2の便座装置において、人体の着座と脱座を検知する着座検知部を備え、温度制御部は着座検知部により人体の着座を検知されたときの温度を温度センサにより検出することにより、使用者が使用する直前の便器内温度を人的影響や便座装置使用による影響のない最良の状態で検出できる。
【0013】
第4の発明は、特に第3の便座装置において、温度制御部は前記着座検知部により人体の脱座を検知してから所定時間が経過するまでは温度センサによる温度の検出を行わないものであり、使用者が繰り返し乾燥を行なったり、前回の使用者の使用後に時間の経過していない状態で次の使用者が着座したことによる外的余熱が残った状態での温度センサの誤検知をなくすことができる。
【0014】
第5の発明は、特に第1〜4の便座装置において、乾燥機能部による乾燥中において、温度センサによる検出温度変化率が所定範囲内であれば温風吹き出し温度を一定とするもので、ヒータを一定の通電率にすることで温度センサ故障による危険を防止することができる。
【0015】
第6の発明は、特に第1〜5の便座装置において、乾燥機能部による乾燥中に温度センサで検出される検出値が、所定時間の間で乾燥時以外に前記温度センサにより検出された温度に基づいて定まる設定値とならないとき、温度制御部は温度センサの障害と判断するものである。その結果、温度センサが正常ではないという判断を容易に行う事ができ、温度センサによる誤作動を回避することができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1のように、便座装置は便器本体1と便座2とからなり、便座2の後部には人体の着座と脱座を検知する着座検知部3と、ヒータ4、送風ファン5及び乾燥温風の吹出し口近傍の温度センサ6からなる乾燥機能部7と、乾燥機能部7等を制御するためのマイクロコンピュータ(図示せず)を備える温度制御部8が配設されている。
【0018】
図2は図1の乾燥機能部7を詳細に示している。送風ファン5から流れる冷風がヒータ4を通過することで温風となり、その温風温度を乾燥温風の吹出し口近傍に設置されている温度センサ6が検出する仕組みになっている。
【0019】
以上のように構成された便座装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0020】
図3は、乾燥時においては各室温による便器内温度によって同じヒータ4の通電率によって乾燥を行なった際の時間による乾燥温度の関係である。同じヒータ4の通電率であっても便器内温度に深く影響してしまう。なお、本実施の形態における便器内温度とは、便器と便座装置で囲まれた便器内部の温度のことである。
【0021】
そこで、ヒータ4の通電率を図4のように温度センサ6により検出された便器内温度によって、ヒータ4の通電初期値を変化させ、乾燥開始後は温度センサ6から検出される実際の乾燥温度により通電率の補正を行なうことで、便器内温度により温風温度の変化に対して補正を行なう事ができる。
【0022】
その結果、図5のように便器内温度の高低に関わらず、初期通電率を変更させることにより、実際の乾燥温度を検出できるため、便器内温度が低くても短時間で設定温度まで温風温度を上げることが出来る。
【0023】
また、便器内部は便器や人体臀部、洗浄用水に囲まれて形成される空間であるから、便器内温度は室内温度と比較して短時間で急激に変化が起き、その一方で、局部は人体の中でも鋭敏な温度感覚を持っており、乾燥温風の温度変化に敏感である。そこで、図5のように便器内温度に応じて初期通電率を変更させて温風温度の制御を行うことによって、乾燥中は常に一定の温風温度が局部に当たるように制御され、人体にとって快適な乾燥を行うことができる。
【0024】
図6は、温度制御部8の制御シーケンスをフローチャートにしたものである。まず、着座検知部3が人体の着座状態を検知する(ステップ1)。
【0025】
次に、脱座後一定時間を経過しているかどうか判断を行なう(ステップ2)。なお、脱座後一定時間を経過しているかどうかを判断する理由は、前回の使用者の脱座から一定時間経過していれば乾燥温風等の外的余熱もなくなるが、前回の使用者の脱座から一定時間経過していなければ、乾燥温風で通常よりも温度センサ6の温度が上がっている可能性があるためである。
【0026】
そして、ステップ2において脱座後一定時間が経過していると判断されれば、便器内温度はこの検出値を用いる(ステップ3)。逆に、ステップ2において脱座後一定時間経過していないと判断されれば、便器内温度の更新を行なわないため、前回便器内温度の更新を行なった検出値を確定値として使用する(ステップ4)。そして、ステップ3、4で確定した便器内温度により、乾燥開始時の前記ヒータ4の初期通電率を変更させる(ステップ5)。
【0027】
そして、乾燥シーケンスに移る。乾燥シーケンスとは乾燥が開始されてから乾燥が終了するまでの事であり、本実施においては着座後の洗浄など本実施の制御に関して影響しないものについては記載せず、乾燥シーケンスのみ記載している。なお、乾燥シーケンスは下記に説明するステップ6〜9を指す。
【0028】
乾燥が開始されると(ステップ6)、温風温度を温度センサ6により検出し(ステップ7)、検出値に基づきヒータ4の通電率を変更させ、設定温風温度になるよう調整される(ステップ8)。乾燥が終了していなければステップ7に戻り(ステップ9)、再び温度の検出を行い、それによりステップ8で通電率を変化させ、常に温風温度により通電率を変更させる。
【0029】
乾燥が終了して脱座をしていない状態で再度乾燥された場合は、乾燥温風等の外的余熱が考えられるため、便器内温度は着座状態で確定している便器内温度(前回の乾燥と同様)でステップ6に戻り、乾燥を行なう。最後に乾燥が終了して脱座状態を検出する(ステップ10)。
【0030】
なお、ステップ6以降で乾燥開始後に温度センサ6による検出温度変化率が所定範囲内であれば温風吹き出し温度を一定とすることにより、温度センサ6の異常時にも高温等の危険もない。
【0031】
以上のように、本実施の形態においては、温度センサ6により、便器内温度と実際の乾燥温度を検出できるものであり、便器内温度に関わらず、常に一定の温風温度での乾燥を提供する。
【0032】
(実施の形態2)
図1のような便器本体1と便座2に対して、図2のように乾燥機能部7の中に温度センサ6がある温度制御部8において、乾燥動作時の温度センサは通常はヒータ4に一定の通電率で乾燥を行なった場合は、図3のように乾燥開始から時間が経ち、温度が一定温度に安定するまではヒータ4に通電する時間とともに増加していく。
【0033】
しかし、図7のように乾燥開始後一定時間経過後に検出される乾燥温度が明らかに低い場合や設定値まで上昇せずに一定値で安定してしまった場合は、温度センサ6の異常か、外的障害により温度センサ6の温度が上がらなくなっていると考えられる。この場合は、温度センサ6に障害が生じていると判断できる。
【0034】
そこで、図8のように本実施の形態2においては第1の実施の形態で述べた図6のフローチャートにある乾燥シーケンスの温度制御構成に従い、下記に説明するステップ9−1〜ステップ9−3を加えた構成とすることにより、前記温度センサ6による誤動作を回避できる。仕組みとしては、乾燥が開始されてから一定時間時間経過した状態であるかどうかを測定し(ステップ9−1)、設定した乾燥温度に対しての正常な範囲が検出されているかどうかを判定し(ステップ9−2)、異常時であれば温度センサ6の異常として検出して乾燥を終了する(ステップ9−3)。
【0035】
なお、ステップ9−2で述べた正常な範囲とは、ヒータ4の通電率の変化に対しての変化率、温度センサ6で検出される温度(温度センサ6両端にかかる電圧値、AD値など)が、設定温度に対して想定される範囲であることを示す。
【0036】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、次の効果が得られる。
【0037】
本発明の便座装置は、1つの温度センサで便器内温度と乾燥動作時の実際の乾燥温度を検出する2つの温度検出を行う事ができる。
【0038】
これにより、室温に対して類推した乾燥温度制御による実際の乾燥温度が不明確になることも、2つの温度センサを用いて室温と実際の乾燥温度を検出する必要もない。
【0039】
また、便器内温度の検出を脱座から所定時間が経過するまで温度の検出を行わないことにより、外的影響をなくした正確な便器内温度の検出をする事ができる。
【0040】
さらに、使用者が着座した際に現在の便器内温度を確定させる事により、使用者が使用する直前までの便器内温度を外的影響のない使用直前の状態で得ることができる。
【0041】
それにより、検出された便器内温度によって乾燥動作開始時の初期通電率を変更させ、いかなる便器内温度であっても一定の温風温度での乾燥を行うことができる。
【0042】
ここで、使用者が乾燥後に再度乾燥をした場合、また、脱座後に一定時間経過前に着座して乾燥を使用した場合でも、室温自体の変化は少ないために便器内温度の変化も少なく、便器内温度の更新は行なわれず、温度センサを乾燥内部にあるために生じる余熱の影響を回避することができる。
【0043】
また、温度センサが何らかの障害で故障してしまい、乾燥開始時から乾燥温度検出値が変化しなかった場合、ヒータを一定の通電率にすることで温度センサ故障による危険を防止することができる。それに加えて乾燥温度検知により便器内温度も異常値であることが発見でき、温度センサの故障、異常を容易に発見することができる。
【0044】
なお、ここに挙げた第1の実施の形態、及び第2の本実施の形態において制御方法はこれに限るものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる便座装置は1つの温度センサで室温と乾燥動作時の実際の乾燥温度を検出する2つの温度検出を行う事ができ、乾燥機能を有する便座装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置の概観図
【図2】本発明の実施の形態1における乾燥機能部の概略図
【図3】一般的な各室温時の便器内温度でのヒータ一定通電率による乾燥温度−時間グラフ
【図4】本発明の実施の形態1における各室温時の便器内温度での通電率−時間グラフ
【図5】本発明の実施の形態1における各室温時の便器内温度でのヒータ一定通電率による乾燥温度−時間グラフ
【図6】本発明の実施の形態1における温度制御のフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2における異常時でのヒータ一定通電率による乾燥温度−時間グラフ
【図8】本発明の実施の形態2における温度制御のフローチャート
【図9】特許文献における便座装置の概略図
【符号の説明】
【0047】
1 便器本体
2 便座
3 着座検知部
4 ヒータ
5 送風ファン
6 温度センサ
7 乾燥機能部
8 温度制御部
9 室温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体局部に温風を吹き出す温風吹き出し口を有する乾燥機能部と、前記吹き出し口に温度を検出する温度センサと、前記乾燥機能部による乾燥中に前記温度センサで検出される検出値に基づいて温風吹き出し温度を制御する温度制御部とを備え、前記温度制御部は乾燥時以外においても前記温度センサによる温度検出を行う便座装置。
【請求項2】
温度制御部は乾燥機能部による乾燥中に前記温度センサで検出される検出値に応じて温風吹き出し温度を制御するとともに、乾燥時以外に温度センサにより検出された温度に応じても制御する請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
人体の着座と脱座を検知する着座検知部を備え、温度制御部は前記着座検知部により人体の着座を検知されたときの温度を温度センサにより検出する請求項2記載の便座装置。
【請求項4】
温度制御部は前記着座検知部により人体の脱座を検知してから所定時間が経過するまでは温度センサにより温度の検出を行わないことを特徴とする請求項3記載の便座装置。
【請求項5】
乾燥機能部による乾燥中において、温度センサによる検出温度変化率が所定範囲内であれば、温風吹き出し温度を一定とする請求項1〜4記載の便座装置。
【請求項6】
乾燥機能部による乾燥中に温度センサで検出される検出値が、所定時間の間で乾燥時以外に前記温度センサにより検出された温度に基づいて定まる設定値とならないとき、温度制御部は温度センサの障害と判断する請求項1〜5記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−233473(P2006−233473A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46757(P2005−46757)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】