説明

便座装置

【課題】スペースやコストの削減が可能で、動作の信頼性、及び書き換えの利便性を向上させること。
【解決手段】所定の機能を有する機能部4A、4B、4Cと、所定の機能、又は使用者の存在を検出する検出部3Aと、検出部3Aからの情報に基づいて機能部4A、4B、4Cの動作を制御する制御部(1、2)と、を備えた便座装置において、制御部(1、2)と検出部3Aの間に電気的かつ機械的に着脱可能なコネクタ6を備え、制御部(1、2)は、データの記憶が可能であり、コネクタ6から検出部3Aを外して、コネクタ6に外部装置10と電気的かつ機械的に接続することにより、データの書き換え又は書き込みが行えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄、乾燥、暖房、脱臭等の機能部を備えた便座装置に関し、特に、機能部を制御する制御部を備えた便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗浄、乾燥、暖房、脱臭等の機能部を備えた便座装置は、機能の多様化に伴い、機能部を制御するためのプログラムのバリエーションも多様になっている。プログラムの多様化に伴って、プログラムの書き換えの必要性が高まっている。従来の便座装置において、プログラムの書き換えが可能なフラッシュメモリを備えたマイクロコンピュータ(フラッシュマイコン)を搭載したものが登場している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の衛生装置(便座装置)では、プリント基板に実装後でもプログラムの書き換え可能なフラッシュマイコンを搭載し、フラッシュマイコンへプログラムを書き込むための通信ポートおよびコネクタと、フラッシュマイコンのRAM内容をモニタするなどのための通信ポートおよびコネクタを共用する回路構成にしたものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−98623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の衛生装置では、プログラムを書き換えたり、RAMの内容をモニタするために専用のコネクタを設けている。当該コネクタは、VDD、RXD、TXD、GND、RESET、VPP等の各端子を有するため、比較的大きな構成である。当該コネクタを搭載するにはプリント基板上に大きなスペースが必要となり、プリント基板上が大きくなってしまうといった問題がある。
【0006】
また、このようなコネクタをプリント基板上に搭載すると、フラッシュマイコンからコネクタまでの配線パターンが長くなり、ノイズ等によってフラッシュマイコンが誤作動するおそれがある。特に、フラッシュマイコンのVpp端子、Reset端子に係る配線パターンが長いと、一瞬のノイズでも誤作動してしまうおそれがある。
【0007】
また、このようなコネクタを用いると、これに対応した専用の書き込み装置が必要となり、当該書き込み装置を取り扱える特定の者にしか書き換えが行えないおそれがある。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の衛生装置は、通常の使用時において、コネクタに何も接続されないため、コネクタの端子に水分や異物が付着することで端子が酸化、短絡してしまうおそれがある。
【0009】
本発明の主な課題は、スペースやコストの削減が可能で、動作の信頼性、及び書き換えの利便性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一視点においては、所定の機能を有する機能部と、前記所定の機能、又は使用者の存在を検出する検出部と、前記検出部からの情報に基づいて前記機能部の動作を制御する制御部と、を備えた便座装置において、前記制御部と前記検出部の間に電気的かつ機械的に着脱可能なコネクタを備え、前記制御部は、データを記憶する機能を有し、前記コネクタから前記検出部を外して、前記コネクタに外部装置と電気的かつ機械的に接続することにより、データの書き換え又は書き込みが行えるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シリアルポート1つで外部インターフェースと接続できるため、フラッシュライタを用いる場合のようにプログラムの書き換えだけに用いる回路や専用のコネクタを必要としないため、スペースやコストの削減が可能になる。また、ノイズ等により一瞬でリセット、暴走等の誤動作や書き換えモードに入ることがないため、信頼性が向上する。さらに、プログラムを提供すれば、パソコンを持ったユーザでも書き換えができるため、ユーザの要望する動作のプログラムを送るだけで書き換えが達成でき、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る便座装置では、所定の機能を有する機能部(図1の4A、4B、4C)と、前記所定の機能、又は使用者の存在を検出する検出部(3A)と、前記検出部(3A)からの情報に基づいて前記機能部(4A、4B、4C)の動作を制御する制御部(1、2)と、を備えた便座装置において、前記制御部(1、2)と前記検出部(3A)の間に電気的かつ機械的に着脱可能なコネクタ(6)を備え、前記制御部(1、2)は、データを記憶する機能を有し、前記コネクタ(6)から前記検出部(3A)を外して、前記コネクタ(6)に外部装置(図2の10)と電気的かつ機械的に接続することにより、データの書き換え又は書き込みが行えるように構成されている。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1に係る便座装置について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係る便座装置の構成を模式的に示した通常使用時のブロック図である。図2は、本発明の実施例1に係る便座装置の構成を模式的に示した書き換え時のブロック図である。
【0014】
図1を参照すると、便座装置は、便座に洗浄、乾燥、暖房、脱臭等の機能を有する機能部4A、4B、4Cを備えた装置であり、回路基板1と、フラッシュマイコン2と、センサ3A、3B、3Cと、機能部4A、4B、4Cと、入力部5と、コネクタ6、7と、を有する。
【0015】
回路基板1は、電子回路が形成された基板である。回路基板1には、フラッシュマイコン2及びコネクタ6に実装されている。
【0016】
フラッシュマイコン2は、プログラム(制御プログラム)の書き換え又は書き込みが可能なメモリ(フラッシュメモリ)を備えたマイクロコンピュータである。フラッシュマイコン2は、回路基板1に実装されている。フラッシュマイコン2は、入力部5からの入力信号(操作信号)に応じて便座装置の機能部4A、4B、4Cの動作を制御する。フラッシュマイコン2は、センサ3A、3B、3Cからの情報(検出信号)に基づいて所定の機能部4A、4B、4Cの動作を制御する。
【0017】
フラッシュマイコン2には、制御プログラムとは別に、書き換え又は書き込みを行うための専用プログラムが記憶されている。フラッシュマイコン2は、専用プログラムを実行することで、パソコン(図2の10)等との通信と、フラッシュメモリの書き換え又は書き込みを行う。このように、専用プログラムを実行することで、パソコン(図2の10)等との通信と、フラッシュメモリの書き換え又は書き込みを行う機能を、セルフプログラミング機能という。フラッシュマイコン2は、入力部5において所定の操作(通常では行われない特殊な隠し操作)が行われることで、セルフプログラミング機能が起動する。なお、ここでは、フラッシュメモリを備えたフラッシュマイコンを例に説明しているが、フラッシュマイコンに限らず、書き換え又は書き込み可能なメモリ(不揮発性メモリ)を備えたマイコンであればよい。
【0018】
フラッシュマイコン2には、機能部4A、4B、4Cやセンサ3A、3B、3Cの故障を解析するための故障解析用データを生成・保存するプログラムが記憶されている。フラッシュマイコン2は、パソコン10と電気的に接続されているときに、パソコン10からの要求に応じて、故障解析用データを読み出してパソコン10に向けて出力する。
【0019】
フラッシュマイコン2は、TxD、RxD、I/O、FLMD0等の端子を有する。TxD端子は、送信信号用のシリアルポートであり、回路基板1の回路及びコネクタ6、7を介してセンサ3Aと電気的に接続されている。RxD端子は、受信信号用のシリアルポートであり、回路基板1の回路及びコネクタ6、7を介してセンサ3Aと電気的に接続されている。TxD端子及びRxD端子は、通常使用時(図1参照)においてセンサ3Aからの検出信号を入力するためのポートとして用いられ、書き換え又は書き込み時(図2参照)においてインターフェース(図2の9)を介してパソコン(図2の10)と通信するためのポートとして用いられる。I/O端子は、入出力信号用の端子であり、回路基板1の回路を介してセンサ3B、3C、機能部4A、4B、4C、及び、入力部5と電気的に接続されている。FLMD0端子(flash memory programming mode setting pin)は、書き換えモード(書き込みモード)か通常使用モードかを切り替えるためのポートである。FLMD0端子は、I/O端子のうち抵抗を介してグランドに接続されている出力ポート(余ったI/O端子)と電気的に接続されている。フラッシュマイコン2は、FLMD0端子にHighレベルの信号が入力されると通常使用モードとなり、FLMD0端子にLowレベルの信号が入力されると書き換えモード(書き込みモード)となる。なお、フラッシュマイコン2における図示されていない端子には、抵抗を介してグランド等に接続されている。
【0020】
センサ3A、3B、3Cは、温度、光等を検出部であり、例えば、洗浄用温水の温度を検出する温度センサ、使用者が便座に座ったことを検出する着座センサ、使用者が便座装置に近づいたことを検出する人感センサ等を用いることができる。センサ3Aは、コネクタ7と電気的に接続されており、通常使用時にはコネクタ7、6、及び回路基板1の回路を介してフラッシュマイコン2のTxD端子及びRxD端子と電気的に接続される。センサ3B、3Cは、回路基板1の回路を介してフラッシュマイコン2のI/O端子と電気的に接続されている。センサ3A、3B、3Cは、検出した信号をフラッシュマイコン2に向けて出力する。
【0021】
機能部4A、4B、4Cは、便座装置の洗浄、乾燥、暖房、脱臭等の機能を実施する装置であり、例えば、便座ヒータ、温風ファン、温風ヒータ、ポンプ、アクチュエータ等を用いることができる。機能部4A、4B、4Cは、回路基板1の回路を介してフラッシュマイコン2のI/O端子と電気的に接続されている。機能部4A、4B、4Cは、フラッシュマイコン2からの制御信号に基づいて動作する。
【0022】
入力部5は、操作情報を入力する部分であり、例えば、操作パネル、リモコン(図示せず)からの信号を受信する受信器、受光器等を用いることができる。入力部5は、回路基板1の回路を介してフラッシュマイコン2のI/O端子と電気的に接続されている。入力部5は、操作された情報を操作信号としてフラッシュマイコン2に向けて出力する。
【0023】
コネクタ6、7は、センサ3Aと回路基板1を着脱可能に電気的かつ機械的に接続する部品である。コネクタ6は、回路基板1に実装されており回路を通じてフラッシュマイコン2のTxD端子及びRxD端子と電気的に接続されている。コネクタ6は、コネクタ(図2の8)とも着脱可能である。コネクタ7は、センサ3Aと電気的に接続されている。なお、図1のコネクタ6、7はセンサ3Aを着脱可能にしているが、他のセンサ3B、3Cや機能部4Aについてもコネクタを用いて着脱可能な構成にしてもよい。
【0024】
コネクタ8は、コネクタ6に対して着脱可能に電気的かつ機械的に接続する部品である(図2参照)。コネクタ8は、インターフェース9と電気的に接続されている。
【0025】
インターフェース9は、フラッシュマイコン2とパソコン1との間のシリアル通信を仲介する装置である(図2参照)。インターフェース9には、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)−USB(Universal Serial Bus)変換機能を有するものを用いることができる。
【0026】
パソコン10は、フラッシュマイコン2を書き換え又は書き込みを行う際に用いるパーソナルコンピュータである(図2参照)。パソコン10は、書き換え又は書き込みを行う際、インターフェース9、コネクタ8、6、回路基板1の回路を介してフラッシュマイコン2と電気的に接続される。パソコン10は、フラッシュマイコン2のプログラムの書き換え又は書き込みを制御する。また、パソコン10は、フラッシュマイコン2に保存された故障解析用のデータの読み出して故障解析することが可能である。
【0027】
次に、本発明の実施例1に係る便座装置におけるマイコンの書き換え動作について図面を用いて説明する。図3は、本発明の実施例1に係る便座装置におけるフラッシュマイコンの書き換え動作を模式的に示したフローチャートである。
【0028】
フラッシュマイコンの書き換えを行うにあたって、センサ(図1の3A)のコネクタ(図1の7)をコネクタ6から外し、コネクタ6にインターフェース9のコネクタ9を接続し、インターフェース9とパソコン10を接続する(図2の状態)。ただし、この状態では、フラッシュマイコン2は、通常使用モードとなっており(ステップA1)、専用プログラムが起動しておらず、書き換えを行うことができない。
【0029】
ここで、専用プログムを起動させる方法として、例えば、操作パネル(入力部5)の複数のスイッチを同時に一定時間以上押した後、ある時間内にどれかのスイッチを押す、何れかのスイッチを押しながら電源投入し、その後、何れかのスイッチを押す等、通常では行わない特殊な隠し操作(モード切替操作)がある。そのため、操作パネルやリモコンにおいて、セルフプログラミングを起動させるための専用のスイッチ等回路部品を必要としない。
【0030】
ステップA1の後、フラッシュマイコン2は、モード切替操作が行われたか否かを判定する(ステップA2)。モード切替操作が行われていない場合(ステップA2のNO)、ステップA1に戻る。
【0031】
モード切替操作が行われた場合(ステップA2のYES)、フラッシュマイコン2は、出力ポートを操作し、FLMD0端子を0(Lowレベル)にセットし、専用プログラムを起動させる(ステップA3)。これにより、パソコン10との通信が可能となり、パソコン10からのコマンド及び書き換える制御プログラムを受け、書き換え処理を行う。また、この際、フラッシュマイコン2のフラッシュメモリや、回路基板1に搭載されたRAM(Random Access Memory)及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の外部メモリ(図示せず)に記憶されたデータ(機能の設定状態、使用回数、エラー情報等)を呼び出すことで製品のメンテナンスを行うことができる。
【0032】
ステップA3の後、フラッシュマイコン2は、制御プログラムの書き換えを完了したか否かを判定する(ステップA4)。制御プログラムの書き換えを完了したか否かは、パソコン10からの完了に係るコマンドを受けたか否かで判定される。書き換えを完了していない場合(ステップA4のNO)、ステップA4に戻る。
【0033】
書き換えを完了した場合(ステップA4のYES)、フラッシュマイコン2は、FLMD0端子を1(Highレベル)にセットし(ステップA5)、通常動作モード(ステップA1)に戻る。
【0034】
実施例1によれば、シリアルポート1つで外部インターフェースと接続できるため、フラッシュライタを用いる場合のようにプログラムの書き換えだけに用いる回路や専用のコネクタを必要としないため、スペースやコストの削減が可能になる。また、ノイズ等により一瞬でリセット、暴走等の誤動作や書き換えモードに入ることがないため、信頼性が向上する。また、プログラムを提供すれば、パソコンを持ったユーザでも書き換えができるため、ユーザの要望する動作のプログラムを送るだけで書き換えが達成でき、利便性が向上する。また、ホームページに様々な動作のプログラムをダウンロード可能に掲載することで、ユーザが好みの動作を選択し、体感してもらうことができる。また、代表機種のプログラムを搭載した1種類に統一し、プログラム違いの派生機種は便座装置組付け時に書き換えることで、基板ユニットをプログラム違いで何種類も設定する必要がなくなり、管理工数等のロスが削減できる。さらに、何機種にも対応したプログラムを予め搭載しておく必要がなくなるため、プログラム容量の削減が可能となり、マイコンのコスト削減になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1に係る便座装置の構成を模式的に示した通常使用時のブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る便座装置の構成を模式的に示した書き換え時のブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に係る便座装置におけるフラッシュマイコンの書き換え動作を模式的に示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
1 回路基板(制御部)
2 フラッシュマイコン(マイコン、制御部)
3A、3B、3C センサ(検出部)
4A、4B、4C 機能部
5 入力部
6、7、8 コネクタ
9 インターフェース
10 パソコン(外部装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する機能部と、
前記所定の機能、又は使用者の存在を検出する検出部と、
前記検出部からの情報に基づいて前記機能部の動作を制御する制御部と、
を備えた便座装置において、
前記制御部と前記検出部の間に電気的かつ機械的に着脱可能なコネクタを備え、
前記制御部は、データを記憶する機能を有し、前記コネクタから前記検出部を外して、前記コネクタに外部装置と電気的かつ機械的に接続することにより、データの書き換え又は書き込みが行えるように構成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記制御部は、データの書き換えが可能なマイコンと、前記マイコンを搭載する回路基板と、を備え、
前記コネクタは、前記マイコンの送受信用のシリアルポートに電気的に接続された第1コネクタと、前記検出部と電気的に接続されるとともに、前記第1コネクタと電気的かつ機械的に着脱可能な第2コネクタと、を備え、
前記第1コネクタは、前記回路基板に実装され、前記回路基板の回路を介して前記マイコンの送受信用のシリアルポートに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記外部装置は、パソコンであり、
前記パソコンは、前記マイコンに記憶されたデータの読み出しが行えることを特徴とする請求項2記載の便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−7346(P2010−7346A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167295(P2008−167295)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】