説明

便座装置

【課題】便座使用時の余熱を有効活用することにより、省エネルギ性能の高い便座装置を提供すること。
【解決手段】便器上に設置可能な本体と、本体に回動自在に枢支された便座とを含み、便座は金属製の上部便座ケーシングと下部便座ケーシングとが、内周縁と外周縁で接合され、内部に空洞部が形成された構成とし、上部便座ケーシングの裏面には便座ヒータが貼着され、空洞部には蓄熱部材が配設され、上部便座ケーシングの前記内周縁および前記外周縁の少なくとも一方と、蓄熱部材とが連接された構成としたことにより、便座の使用時には、上部便座ケーシングに加えられた熱のうち、上部便座ケーシングの内周縁および外周縁まで伝わった余熱が蓄熱部材内に蓄熱され、蓄熱された熱は、便座の不使用時に上部便座ケーシングの保温に使用することが可能となり、省エネルギの効果を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱機能を便座に備えた便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の便座装置は、便座の着座面の裏面に便座ヒータを貼着し、便座ヒータの下面に蓄熱部材を密接して設けた構成となっており、電気料金の安い深夜の時間帯に便座ヒータに通電を行い、便座ヒータで発熱した熱を蓄熱部材に蓄熱を行い、昼間は便座ヒータへの通電を切断して、蓄熱部材の熱を便座の着座面に伝達することにより、着座面を快適な温度に維持するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の便座装置の断面を示すものである。図8に示すように、便座1は着座面となる上面部材2と下面部材3により中空状に形成されており、上面部材2の裏面にはヒータユニット4が両面テープ5を介して貼着されている。ヒータユニット4はアルミ箔からなるヒータ基材6に絶縁被覆を施したヒータ線7を接着剤を介して配設されている。ヒータユニット4と下面部材3の間には、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等からなる蓄熱剤をポリエチレン製の袋に充填した蓄熱部材8をヒータユニット4に密接するように設置されている。また、下面部材には便座脚9が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−309089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、便座の着座面を暖める熱は全て夜間に蓄熱部材に蓄熱し、便座装置の使用の有無に関係なく、また昼夜を問わず、便座の着座面を着座に快適な温度に維持するように蓄熱した熱を使用している。
【0006】
前記従来の便座装置が着座面を暖めるために要するエネルギを考察した場合、便座ヒータに通電して着座面を1日中一定温度に維持するために使用するのと同等のエネルギに加え、着座面の暖房に有効活用されない蓄熱部材からの無駄な放熱がなされていることが推察され、結果的に相当量の無駄なエネルギを消費しており、省エネルギの観点から改良の余地を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、便座装置の使用時の余熱を有効活用することにより、省エネルギ性能の高い便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の便座装置は、便器上に設置可能な本体と、本体に回動自在に枢支された便座とを含み、便座は金属製の着座面を含む略環状の上部便座ケーシングと、略環状の下部便座ケーシングとが、相互の内周縁および外周縁で接合されることにより、内部に空洞部が形成された構成とし、上部便座ケーシングの裏面には便座ヒータが貼着されており、空洞部には蓄熱部材が配設されており、上部便座ケーシングの前記内周縁および前記外周縁の少なくとも一方と、蓄熱部材とが連接された構成としたものである。
【0009】
これにより、便座の使用時には、上部便座ケーシングの着座面は便座ヒータによって加
熱され、快適に着座できる設定温度に昇温されるとともに、上部便座ケーシングに加えられた熱のうち、特に上部便座ケーシングの内周縁および外周縁まで伝わった余熱となる熱は、内周縁および外周縁の少なくとも一方を通じて蓄熱部材に伝達され、蓄熱部材内に熱が蓄熱され、蓄熱部材に蓄熱された熱は、便座の不使用時に上部便座ケーシングの保温に使用することが可能となり、便座使用時の余熱を便座の保温時に有効に活用できるため省エネルギの効果を向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の便座装置は、便座を暖房する電力を削減し省エネルギ効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における便座装置を便器上に設置した状態の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における便座装置の制御系の構成を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1おける便座の外観を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1おける便座の上部便座ケーシング内部の下面図
【図5】本発明の実施の形態1おける便座の下部便座ケーシング内部の上面図
【図6】図3に示す便座のAA断面図
【図7】(a)便座使用時の昇温時における便座ヒータの通電パターンと便座の表面温度の変化を示すグラフ、(b)便座の使用時と待機時の便座ヒータの通電パターンと便座の表面温度と蓄熱部材の温度の変化を示すグラフ
【図8】従来の便座装置の便座の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、便器上に設置可能な本体と、前記本体に回動自在に枢支された便座とを含み、前記便座は、金属製の着座面を含む略環状の上部便座ケーシングと、略環状の下部便座ケーシングとが、相互の内周縁および外周縁で接合されることにより、内部に空洞部が形成された構成とし、前記上部便座ケーシングの裏面には便座ヒータが貼着されており、前記空洞部には蓄熱部材が配設されており、前記上部便座ケーシングの前記内周縁および前記外周縁の少なくとも一方と、前記蓄熱部材とが連接された構成としたものである。
【0013】
これにより、便座の使用時には、上部便座ケーシングの着座面は便座ヒータによって加熱され、快適に着座できる設定温度に昇温されるとともに、上部便座ケーシングに加えられた熱のうち、特に上部便座ケーシングの内周縁および外周縁まで伝わった余熱となる熱は、内周縁および外周縁の少なくとも一方を通じて蓄熱部材に伝達され、蓄熱部材内に熱が蓄熱され、蓄熱部材に蓄熱された熱は、便座の不使用時に上部便座ケーシングの保温に使用することが可能となり、便座使用時の余熱を便座の保温時に有効に活用できるため省エネルギの効果を向上することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記便座ヒータは、金属シートに線状のヒータ線を配設された構成とし、前記蓄熱部材は、前記便座ヒータと間隙を設けて、対向するように配設されたものである。
【0015】
これにより、蓄熱部材は便座ヒータから放出される輻射熱も受熱することが可能となり、蓄熱量が増加することにより、より省エネルギ効果を向上することができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記蓄熱部材は、金属材料で形成されたものである。
【0017】
これにより、上部便座ケーシングと蓄熱部材との接合を容易かつ確実に行うことができるため、上部便座ケーシングと蓄熱部材との熱伝達を効率的かつ安定して行うことができるとともに、蓄熱部材の生産を容易に行うことができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記本体に近付いた人体を検知する人体検知手段と、前記人体検知手段の検知信号に基づき、前記便座ヒータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人体検知手段が人体を検知していない場合は、前記便座ヒータへの通電を停止または小容量の通電を行い、前記着座面の温度が着座に適さない低い温度となる待機状態を維持するように制御し、前記人体検知手段が人体を検知したときは、前記便座ヒータへ大容量の通電を行い、前記着座面の温度が着座に適した設定温度に短時間に昇温するように制御するものである。
【0019】
これにより、着座面が設定温度に昇温されている時に蓄熱部材に蓄熱し、人体検知手段が人体を検知しない不使用時に、上部便座ケーシングを低い温度で保温するために蓄熱した熱を使用することができるため、便座装置の不使用時の無駄な通電量を抑制することとなり、無駄な電力を抑制する真の省エネルギの効果を得ることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における便座装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示し、図2は便座装置110の制御系の構成を示す模式図である。
【0022】
<1>便座装置の構成
図1に示すように、便座装置100は、本体200、便蓋300、便座400、リモートコントローラ500、人体検知センサ600により構成され、本体200、便蓋300、便座400は一体で構成され便器700の上面に設置される。
【0023】
本体200には、便蓋300および便座400が便座便蓋回動機構(図示せず)を介して電動で開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋300を開放した状態においては、便蓋300は便座装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋300を閉成すると便座400の上面を隠蔽する。
【0024】
また、本体200には、図示しない洗浄水供給機構(図示せず)、熱交換器(図示せず)、洗浄ノズル201等からなる洗浄機構と、乾燥ユニット(図示せず)と、制御部260等が内蔵される。
【0025】
本体200の前面コーナー部には着座センサ202設置してある。この着座センサ202は反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出することにより便座400上に使用者が存在することを検知する。また、本体200の側部には操作部203が設けてあり便座装置の主要な機能の操作が可能である。
【0026】
また、洗浄水供給機構と熱交換器は洗浄ノズル201に接続されており、水道配管から供給される洗浄水を熱交換器で加熱することにより温水を洗浄ノズルに供給し、洗浄ノズルから使用者の局部に向けて洗浄水を噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。洗浄ノズルはお尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデノズル部を備えている。
【0027】
また、乾燥ユニットは洗浄水により濡れた局部に向けて温風を噴出し、局部を乾燥する
ことができる。
【0028】
なお、洗浄機構と乾燥ユニットは便座装置の必須構成要素ではなく、これらの構成要素を具備しない便座装置でもよい。
【0029】
リモートコントローラ500には、複数の操作スイッチが設けられている。リモートコントローラ500は便座400上に着座した使用者が操作可能なトイレルームの壁面等の場所に取り付けられ、便座装置100の各機能の操作を行う。
【0030】
人体検知センサ600はトイレルームの壁面等に取り付けられる。人体検知センサ600は、反射型の赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0031】
本体200の制御部260は、リモートコントローラ500、人体検知センサ600および着座センサ202から送信される信号に基づいて、便座装置100の各部の動作を制御する。
【0032】
本発明の便座装置100はトイレルームに使用者が存在しない場合は、便座ヒータ450への通電を停止、もしくは18℃程度の低温に保温している。トイレルームに使用者が入室すると、人体検知センサ600からの信号を受け、便座ヒータ450に通電を行う。便座のヒータは800W程度の非常に高出力のヒータであり、使用者がトイレルームに入出してから便座に着座するまでの6秒から10秒程度の間に、便座400の着座面を40℃程度の適温に温める。便座が適温に達した後は、便座ヒータへの通電を50W程度の低ワットに下げ、適温を保つ。使用者がトイレ室内から出ると、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃以下の低温保温となる。つまり、トイレルームに使用者がいないときの電力を大幅に削減した便座装置である。
【0033】
<2>便座400の構成
図3は便座400の組立状態の斜視図を示し、図4は便座400の上部便座ケーシングの内部の下面図を示し、図5は便座400の下部便座ケーシングの内部の上面図を示し、図6は図3に示す便座400のAA断面図を示すものである。
【0034】
図に示すように、便座400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の環状の上部便座ケーシング410と、合成樹脂により形成された略楕円形状の環状の下部便座ケーシング420と、上部便座ケーシング410の裏面に粘着した略馬蹄形状の便座ヒータ450と、金属材料で形成された蓄熱部材430を主構成部品として構成されている。
【0035】
以下、着座した使用者から見て前方側を便座400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座400の後部とする。
【0036】
上部便座ケーシング410は、厚さ約1mmのアルミニウム板をプレス加工等により成形し、表面および裏面には絶縁性と耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜が形成されている。ピンホールの生じにくい粉体塗装を採用することで、絶縁性能を向上することができる。
【0037】
上部便座ケーシング410は略楕円形の環状の着座面411の後部に起曲部412が連続して形成されている。着座面411は内周部より外周部が高い傾斜を有する上方に凸の曲面を成している。
【0038】
起曲部412と着座面411と連続的な凹曲面で繋がっており、上部は傾斜面となっている。起曲部412の上縁は水平線に近い大きな曲線となっており、起曲部412の幅は着座面411の横幅と略同寸法となっている。
【0039】
また、上部便座ケーシング410の内周縁415と外周縁416は内方に向かって折れ曲がって形成されており、内周縁415と外周縁416の複数箇所には、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420を係合する複数の係合孔418が形成されている。
【0040】
図4に示すように、上部便座ケーシング410の裏面のほぼ全面に便座ヒータ450が粘着固定されており、便座ヒータ450の後部表面には温度過昇防止装置として、サーモスタット450Qと、温度ヒューズ450Rが設置してある。また便座ヒータ450の側部表面には、便座ヒータ450を便座400の着座部411の温度に基づいてフィードバック制御するための便座温度検知用のサーミスタ401aが設置されている。また、上部便座ケーシング410の外周縁416には安全性を確保するアース線480が接続してある。
【0041】
便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成されている。便座ヒータ450は、アルミニウムからなる2枚の金属箔の間に、線状ヒータを蛇行させて配設して構成されている。便座ヒータ450は着座面411と起曲部412を加熱できるように線状ヒータを配設あり、特に着座した使用者の大腿部と臀部が快適に加熱されるように場所によって密度を変えて配設してある。
【0042】
下部便座ケーシング420は樹脂材料を使用した成型品であり、平面形状が上部便座ケーシング410と略同形状の本体部421と、本体部421の両側後方に斜め上方に突出した腕部422で構成されている。
【0043】
下部便座ケーシング420の内周縁425と外周縁426には、蓄熱部材430を支持する段部427と、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420を係合する複数の係合爪428が形成されている。
【0044】
蓄熱部材430は、左右2個に分割して形成されており、下部便座ケーシング420の両側部と略相似の外形をしており、厚さ約3mmの鋼板をプレス成型により形成されたものであり、表面に黒色の塗装が施されており、輻射熱を吸収しやすい構成となっている。
【0045】
蓄熱部材430は、図5および図6に示すように下部便座ケーシングの段部427に設置され、上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420を結合することにより、上部便座ケーシング410の内周縁415および外周縁416が蓄熱部材430の上面に当接されるようになっており、上部便座ケーシング410と蓄熱部材430との熱伝達が可能な構成となっている。また、図6に示すように便座ヒータ450と蓄熱部材430とは相互の表面が対向するように設置されており、便座ヒータ450からの輻射熱を受熱しやすい配置となっている。
【0046】
上部便座ケーシング410と下部便座ケーシング420とは、下部便座ケーシング420に形成された係合爪428が上部便ケーシング410に形成された係合孔418に係合することにより結合され、内部に空洞部400aが形成される構成となっており、結合部には水密手段が施されている。
【0047】
なお、上記のように、上部便座ケーシング410はアルミニウム板を使用して形成したが、これに限るものではなく、銅やステンレス等の板材あるいはマグネシウム合金の成型
品等の熱伝導の良い他の金属を使用してもよい。また、アルミニウム板に施される表面処理は上記仕様に限定されるものではなく、他の化学的な処理やアクリル系やウレタン系の塗料を使用した他の塗装等も選択可能である。
【0048】
<3>便座装置の制御系の構成
図2は便座装置110の制御系の構成を示す模式図である。
【0049】
本体200内の温度測定部401は、便座450の金属箔の表面に設置したサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座400の温度を測定する。以下、サーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される便座400の温度を測定温度値と称する。
【0050】
サーミスタ401aによる測定温度値と、実際の便座400の着座面411の表面温度とは若干の差があり、制御部260における温度設定は、その温度差を考慮して温度設定がなされている。
【0051】
また、本体200内のヒータ駆動部402は、便座400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
【0052】
本実施の形態において、便座装置100は次のように動作する。初期設定時では、制御部260がヒータ駆動部402を制御することにより、便座400が例えば約18℃となるように温度調整され、このときの温度を待機温度と称する。このときの便座の温度は、サーミスタ401aの測定値によるものである。
【0053】
なお、室温が18℃以上の場合は、便座400の測定値も当然18℃以上となるため、制御部260は便座ヒータ450への通電を遮断する。
【0054】
ここで、使用者がリモートコントローラ500の便座温度調整スイッチを操作することにより、便座を使用しているときの便座の温度がリモコン受光センサを介して制御部260に送信される。制御部260は、リモートコントローラ500から受信した設定温度を制御部260記憶手段に記憶する。このとき温度を設定温度と称し、設定温度は複数の温度が予め準備されており、使用者の好みで選択可能となっている。
【0055】
使用者がトイレ室に入室すると、人体検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号がリモコン受光センサを介して制御部260に送信される。
【0056】
制御部260は、人体検知センサ600からの検知信号により使用者のトイレ室への入室を検知する。制御部260は、便座便蓋回動機構を駆動させて便蓋300を開放するとともに、便座部400の測定温度値、および記憶手段に記憶された設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
【0057】
選択されたヒータ制御パターンおよび時間情報に基づいてヒータ駆動部402の駆動を制御する。
【0058】
それにより、便座ヒータ450が駆動され、便座部400の着座面411が設定温度へと瞬時に上昇される。
【0059】
<4>便座ヒータの通電パターンと便座温度の変化
便座ヒータ450の駆動の制御は、便座ヒータ450を駆動する通電容量を大きく3つ
に変化させることにより行う。
【0060】
便座400を第1の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約800Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(800W駆動)。
【0061】
また、便座400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約400Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(400W駆動)。
【0062】
さらに、便座400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、800W駆動および400W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
【0063】
800W駆動、400W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部90の通電率切替回路により、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御する位相制御により行われる。
【0064】
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
【0065】
図7は(a)便座使用時の昇温時における便座ヒータの通電パターンと便座の表面温度の変化を示すグラフ、(b)便座の使用時と待機時の便座ヒータの通電パターンと便座の表面温度と蓄熱部材の温度の変化を示すグラフである。
【0066】
図7(a)および(b)においては、いずれも便座400の表面温度および蓄熱部材と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。(a)は便座400の昇温時の短時間における変化を詳細に示すものであり、時間軸は秒単位のものであり、(b)は便座の昇温時および待機時を含む長時間の変化を示すものであり時間軸は時間単位のものである。本実施の形態においては、便座の設定温度を38℃に設定し、室温が18℃よりも低い場合を想定したものである。
【0067】
人体検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機状態の間は、便蓋300は便座400の放熱を抑制するために便座を覆うように閉成されており、便座部400の着座面411の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。
【0068】
時刻t1で人体検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、制御部290は、便座便蓋回動機構を駆動して便蓋300を開放するとともに、あらかじめ設定した突入電流低減期間D2の間、400W駆動を行う。なお、この400W駆動は、突入電流を十分に低減するために行うもので本実施の形態においては0.5秒間である。この場合、便座部400の表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
【0069】
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ450の800W駆動を開始し、あらかじめ設定した第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の800W駆動を継続する。本実施の形態においては、昇温期間D3は5.5秒間に設定されており、着座面411の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
【0070】
ここで、便座400の着座面411の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の800W駆動は、便座部400の着座面411の表面温度が所定温度に達するまで行われる。この所定温度は設定温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感を生じない最低限界の温度(この温度を限界温度と称する)以上であればよい。この限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
【0071】
このように、第1の昇温期間D3においては、着座面411の表面温度が800W駆動により迅速に限界温度を超える温度まで上昇される。この時点で、使用者は便座400を冷たいと感じることなく便座400に着座することが可能となる。
【0072】
また、一般的に便座400の表面温度を急激に上昇させると、設定温度以上まで昇温するオーバーシュートが生じる。しかしながら、本実施に形態では、便座400の着座面411の表面温度が限界温度を超える温度に達したときに、便座ヒータ450の800W駆動を400W駆動に切替えることにより、温度勾配を緩やかにしてオーバーシュートを抑制し、着座面411の表面温度は設定温度を超えないように制御している。その結果、使用者が着座時に便座400を熱いと感じることが防止される。
【0073】
便座ヒータ450の400W駆動は、便座400の着座面411の表面温度が設定温度の38℃に達するまで第2の昇温期間D4行われ、サーミスタ401aの測定値が設定温度に到達すると、400W駆動を停止し次の駆動に切替える。昇温期間D4は9〜10秒間程度である。
【0074】
制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座400の着座面411の表面温度は設定温度で一定に維持される。
【0075】
制御部90は、時刻t5で着座センサ290により使用者の便座400への着座が検知された場合、第1の着座期間D6の間便座400の表面温度が設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本実施に形態では、第1の着座期間D6は約10分間に設定される。
【0076】
そして、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座400の着座面411の表面温度が設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。この設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。このように、使用者が便座400に着座した後、制御部90が便座部400の表面温度を低下させることにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
【0077】
制御部90は、時刻t7で着座センサ290により使用者が便座400から離れたことを検知すると、停止期間D8の間便座ヒータ450の駆動を停止する。本実施の形態の場合D8は約20分である。それにより、便座400の着座面411の表面温度が低下し、便座400の表面温度が18℃に達した時刻t8で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座400の表面温度が待機温度である18℃で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
【0078】
使用者が便座400から離れた後、トイレ室から退出すると、人体検知センサ600は人体を検知しなくなり、制御部260は、便座400の放熱を抑制するために便座便蓋回動機構を駆動して便蓋300を閉成する。
【0079】
<5>蓄熱部材の温度変化
図7(b)の破線で示すものが蓄熱部材430の温度変化を示すものである。
蓄熱材430の温度変化は、昇温時および降下時ともに便座400の温度変化より遅れて変化するが、特に、本実施の形態における便座装置100は便座400の着座面411を短時間に昇温する高容量の便座ヒータ450を備えたものであり、昇温時の遅れは相当に大きい。
【0080】
図に示すように、着座面411の表面温度は時刻t1より秒単位で設定温度に到達するのに対し、蓄熱部材430の昇温は時刻t1より分単位で昇温し、便座の使用が終了する時刻t7まで昇温を継続し、通常は便座400の設定温度より低い温度まで到達する。この間便座ヒータ450の熱は、便座400の着座面411に伝達され、便座400の上部便座ケーシング410の内周縁415と外周縁416まで伝導された熱が蓄熱部材430に伝達され、蓄熱部材430全体に熱伝導されるという伝達経路で蓄熱部材430が昇温される。この上部便座ケーシング410の内周縁415と外周縁416まで伝導された熱は、着座面411の加熱に有効に活用されなかった余熱であり、蓄熱材430は余熱により昇温される。
【0081】
また、蓄熱部材430は便座ヒータ450と略平行に対向して配設されているため、便座ヒータ450が放射する輻射熱を蓄熱部材430は受熱する。便座ヒータ450から放射される輻射熱は便座400の着座面411の加熱には活用されない余熱であり、蓄熱部材430はこの点においても余熱を有効に活用している。
【0082】
このように、伝達経路において時間差が生じる構成であるのに加え、上部便座ケーシング410は熱容量の小さいアルミニウムを素材として形成しているため、短時間に昇温するのに対し、蓄熱部材430は熱容量の大きい鋼板を素材としているため、長い昇温時間を要するものである。また、蓄熱部材430の昇温は、上部便座ケーシング410の内周縁415と外周縁416まで伝導した余熱で行うものであり、熱量の絶対量は少ないことが遅延の最大の要因である。
【0083】
一方、便座の使用が終了し、便座ヒータ450への通電が遮断された後は、蓄熱部材430の温度は便座400の表面温度より遅れて降下する。蓄熱部材430が便座400の空洞部400a内に設置されており、便座400が断熱材の機能を果たしているからである。この間蓄熱部材430に蓄熱された熱は上部便座ケーシング410に伝達され、便座400の表面温度の降下を遅くするように作用する。
【0084】
便座ヒータ450への通電が遮断された後は、便座400の表面温度は待機温度である18℃まで降下するが、本願発明の蓄熱部材430を設置した場合の温度変化を実線で示すようにD8の期間で降下するのに対し、蓄熱部材430を設置しない場合は1点鎖線で示すようにD9の期間で降下する。本実施の形態の場合、室温が約10℃の場合D9は約15分である。18℃まで降下するまでの時間はD8(20分)とD9(15分)の差であり約5分の差が生じる。この時間は便座400を待機温度に維持するための低電力駆動を実施する必要がなく、待機状態における電力消費を低減することができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態の便座装置は、蓄熱部材に便座ヒータの余熱を蓄熱し、便座の使用終了後における着座面の表面温度の低下を遅らせることにより、待機状態における電力の消費を低減することが可能となり、省エネルギの効果を得ることができる。
【0086】
特に、本願発明の蓄熱部材は、便座の着座面より熱伝達される余熱に加え、便座ヒータの余熱である輻射熱の受熱量を増やすために、蓄熱部材の表面に黒色の塗装を施したものであり、省エネルギの効果を一層高めることができる。
【0087】
また、本実施の形態における便座装置は、不使用時には、便座を極めて低い温度に維持し、便座使用時に高容量の便座ヒータにより瞬時に便座を昇温するものであり、便座使用時に使用される電力の多くは有効に活用されているエネルギ効率の高い便座装置をベースとして、蓄熱部材の設置により、不使用時の電気エネルギを抑制することが可能としたものであり、便座装置全体の省エネルギ効果を限界まで近付けたものである。
【0088】
なお、本実施の形態においては、使用者が便座400から離れたことが検知されると、直ちに便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座部400から離れたことが検知されたから一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座400に着座する際にも、便座400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座400に着座することができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明にかかる便座装置は、待機状態における消費電力の抑制が可能となるので、使用状態と待機状態の切替機能を備えた暖房機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0090】
100 便座装置
200 本体
260 制御部
400 便座
400a 空洞部
410 上部便座ケーシング
411 着座面
415 内周縁
416 外周縁
420 下部便座ケーシング
425 内周縁
426 外周縁
430 蓄熱部材
450 便座ヒータ
600 人体検知センサ(人体検知手段)
700 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に設置可能な本体と、
前記本体に回動自在に枢支された便座とを含み、
前記便座は、金属製の着座面を含む略環状の上部便座ケーシングと、略環状の下部便座ケーシングとが、相互の内周縁および外周縁で接合されることにより、内部に空洞部が形成された構成とし、
前記上部便座ケーシングの裏面には便座ヒータが貼着されており、
前記空洞部には蓄熱部材が配設されており、
前記上部便座ケーシングの前記内周縁および前記外周縁の少なくとも一方と、前記蓄熱部材とが連接された構成の便座装置。
【請求項2】
前記便座ヒータは、金属シートに線状のヒータ線を配設された構成とし、
前記蓄熱部材は、前記便座ヒータと間隙を設けて、対向するように配設された、
請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記蓄熱部材は、金属材料で形成された、
請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記本体に近付いた人体を検知する人体検知手段と、
前記人体検知手段の検知信号に基づき、前記便座ヒータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、前記人体検知手段が人体を検知していない場合は、前記便座ヒータへの通電を停止または小容量の通電を行い、前記着座面の温度が着座に適さない低い温度となる待機状態を維持するように制御し、
前記人体検知手段が人体を検知したときは、前記便座ヒータへ大容量の通電を行い、前記着座面の温度が着座に適した設定温度に短時間に昇温するように制御することを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−161124(P2011−161124A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29777(P2010−29777)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】