便座装置
【課題】待機温度に応じて、センサ部の測定値における開始判定値を決定することにより、非入室検知頻度と、着座時の便座温度との関係のバランスをとることにより、便座の消費電力の低減を図りつつ、ユーザが着座する際の快適性を確保する。
【解決手段】本発明に係る便座装置は、トイレルーム内に設置された便座部と、前記便座部を加熱する加熱部と、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知するセンサ部と、前記加熱部および前記センサ部を制御する制御部とを備え、前記加熱部により前記便座部の昇温を開始するタイミングを、前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知する前記センサ部の測定値が、開始判定値以上になったか否かで決定するとともに、前記センサ部の測定値が開始判定値以上になった時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間をアプローチ時間とし、待機温度を設定することにより前記アプローチ時間が決定され、この決定されたアプローチ時間に基づき開始判定値を決定する。
【解決手段】本発明に係る便座装置は、トイレルーム内に設置された便座部と、前記便座部を加熱する加熱部と、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知するセンサ部と、前記加熱部および前記センサ部を制御する制御部とを備え、前記加熱部により前記便座部の昇温を開始するタイミングを、前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知する前記センサ部の測定値が、開始判定値以上になったか否かで決定するとともに、前記センサ部の測定値が開始判定値以上になった時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間をアプローチ時間とし、待機温度を設定することにより前記アプローチ時間が決定され、この決定されたアプローチ時間に基づき開始判定値を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関し、例えば、便座を加熱する暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座装置は、便座内に内蔵された発熱線に常時電圧を印加することにより熱を発生させ、その熱によって設定された所望の温度に便座を常に暖めておくものである。それにより、暖房便座装置は、ユーザが便座に着座する際に便座の冷たさによって不快を感じることを防止し、ユーザは快適に便座に着座することができる。
【0003】
このような暖房便座装置では、便器を使用しない時の消費電力は極力低下させる一方で、便器使用時には快適な温度の便座に着座できるように便座温度を制御することが望まれている。そこで従来、便器を使用しない時の消費電力を抑えるために便座の待機温度を低く保った状態で焦電型赤外線センサを用いてトイレルームへ入室する人体を検知し、人体の検知があった場合は、待機温度から目標とする着座温度まで便座の温度を昇温する即暖型の暖房便座装置が知られている(特許文献1)。このような即暖型の暖房便座装置は、ユーザが便器を使用するときに便座を急速加熱するものであり、便器を使用しないときの待機温度を下げることができるので消費電力の低減に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165684号公報
【特許文献2】特許第4068648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の即暖型の暖房便座装置は、トイレルームに入室した後の人体を検知して待機温度から目標の着座温度まで昇温させるものである。通常、入室から着座までの時間は長くても6秒程度であり、ユーザが軽装の場合はトイレルームに入室してから便座に着座するまでの時間は4秒程度である。つまり、待機温度から着座温度まで昇温させる時間には限界があった。そのため、従来の即暖型の暖房便座装置は、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できないおそれがあった。あるいは、短い時間でもユーザが着座する時点において便座を確実に快適な温度まで昇温するために、省エネ性を犠牲にして待機温度を高目に設定していた。
【0006】
また、着座時点において便座を快適な温度まで昇温させつつ、消費電力を低減させるためには、ヒーターの昇温能力を高くし、短時間で便座を加熱すること考えられる。しかし、ヒーターの昇温能力を高くすることは、安全性の問題を生じさせる。さらに、ヒーターの昇温能力が高い場合、小便時など便座の昇温が必要でないにもかかわらず昇温させてしまったときに消費電力の無駄が大きくなってしまうという課題も生じる。
【0007】
従って、ヒーターの昇温能力を低く維持しながら消費電力を低減させるためには、低い待機温度からでも確実に快適な温度まで昇温できるように昇温時間を長くすることが望ましい。このように昇温時間を長くするために、ユーザがトイレルーム内に進入する前に即暖による昇温制御を開始すべく、電灯スイッチを用いた方式が考えられる(特許文献2)。しかし、トイレの電灯スイッチは、通常、トイレの近傍に設置されるものであり、昇温時間をあまり長くすることはできない。
【0008】
また、赤外線センサをトイレルームから遠く離れた位置に設置することによって、昇温時間を長くすることが考えられる。しかし、指向性の強い赤外線センサでユーザの進入の有無を判定しようとすると、トイレルーム外の廊下などに複数の赤外線センサを設置し、かつ、その各赤外線センサと暖房便座装置の暖房制御をリンクさせる必要がある。便座の即暖制御のためだけにこのような手法を用いることは、現実的ではない。
【0009】
また、赤外線センサを設置することによって、トイレルームから使用者までの距離を把握できたとしても、使用者がその位置からトイレルームへ入室するまでの時間は、その位置からトイレルームまでの家の通路形態や、使用者の歩行速度等に依存する。すなわち、センサがユーザを検知してからトイレルームへ入室するまでの時間は単に位置情報から一義的にきまるものではない。このため、単に位置情報に基づいて即暖を開始させる従来型の暖房便座装置では、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できないおそれがあった。
【0010】
このように、従来の即暖型の暖房便座装置では、ユーザの着座時点において便座を快適な温度まで昇温させることと、便座の待機温度を可及的に低下させて消費電力を低減させることとを両立させることは困難であった。
【0011】
また、従来の便座装置においては、トイレルームにユーザが入室する前に、固定的な開始判定値に基づいて便座部の昇温を開始するので、ユーザが待機温度を低く設定した場合、昇温性能が追いつかず、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができないという問題が生じていた。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、設定された待機温度に対し、便座の消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる暖房便座装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る便座装置は、トイレルーム内に設置された便座部と、前記便座部を加熱する加熱部と、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知するセンサ部と、前記加熱部および前記センサ部を制御する制御部とを備え、前記加熱部により前記便座部の昇温を開始するタイミングを、前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知する前記センサ部の測定値が、開始判定値以上になったか否かで決定するとともに、前記センサ部の測定値が開始判定値以上になった時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間をアプローチ時間とし、待機温度を設定することにより前記アプローチ時間が決定され、この決定されたアプローチ時間に基づき開始判定値を決定することを特徴とする。
【0014】
従来の便座装置においては、トイレルームにユーザが入室する前に、固定的な開始判定値に基づいて便座部の昇温を開始するので、ユーザが待機温度を低く設定した場合、昇温性能が追いつかず、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができないという問題が生じる恐れがあるが、本発明では、待機温度を設定することにより決定されるアプローチ時間に基づいて開始判定値を決定するため、便座の消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。さらに、本発明では、待機温度を設定することにより決定されるアプローチ時間に基づいて、昇温を開始するタイミングを定める開始判定値を決定することとしたので、例えばユーザが待機温度を低く設定した場合でも、アプローチ時間が長くなるように開始判定値が変更されるため、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができる。
【0015】
この場合、便座装置は、ユーザが前記待機温度の設定を手動で変更するための待機温度設定変更手段を、さらに備えるようにしてもよい。
【0016】
これにより、手動でユーザが待機温度の設定を変更できるようになり、ユーザの好みに応じた待機温度に変更することができるようになる。このため、例えば、老若男女による温度設定の好みや、季節の変化等に応じて、柔軟に待機温度を設定することができるようになる。このように待機温度を変更しても、待機温度を設定することにより決定されるアプローチ時間に基づいて開始判定値を決定するため、便座の消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。
【0017】
また、センサ部で検知した実際の測定値に基づいて、決定されたアプローチ時間が確保されるタイミングとなる測定値を記憶し、この記憶した測定値を開始判定値とするようにしてもよい。
【0018】
このように、センサ部で検知した実際の測定値に基づいて、開始判定値を決定することにより、開始判定値の設定精度を高めることができる。この結果、より一層の消費電力の低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。
【0019】
また、前記アプローチ時間は、前記待機温度に対して予め複数設定されており、これら複数のアプローチ時間の中から選択されるようにしてもよい。
【0020】
これにより、より使用環境に適したアプローチ時間を選択できるようになり、一層の消費電力の低減を図ることができる。例えば、トイレルームのドアの向きや廊下の配置などの住宅状況に基づいて、或いは、子供や老人の有無などの家族構成に基づいて、アプローチ時間を複数の中から適宜選択できるようになり、家族構成に合わせた即暖制御を行うことができるようになる。すなわち、使用状況や使用環境に応じて、消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させるように即暖制御を行うことができるようになる。
【0021】
この場合、前記複数のアプローチ時間は、住宅状況に応じて選択されるようにしてもよい。
【0022】
このように、住宅状況に応じてアプローチ時間を選択することにより、アプローチ時間に基づいて定まる開始判定値の設定精度をさらに高めることができる。例えば、暖房便座の設置された環境(ドア、壁、通路形態など)に応じて、トイレルームの外の電波放射強度にバラツキが生じ、アプローチ時間が変わる場合がある。このような場合を想定して、住宅状況に応じてアプローチ時間を選択できるようにすれば、住宅状況に適合して、消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させるように即暖制御を行うことができるようになる。
【0023】
また、前記開始判定値にはその値の下限である最低開始値があり、アプローチ時間に基づいて定められる開始判定値が前記最低開始値より低くなるような場合には、前記開始判定値は前記最低開始値に設定されているようにしてもよい。
【0024】
すなわち、センサ部の測定精度にも限界があり、開始判定値が所定の値より小さくなると、センサ部の測定信号値を適正に認識できない可能性がある。このため、待機温度とアプローチ時間とに基づいて開始判定値を定めると、センサ部で検知できないような測定信号値の開始判定値になる恐れもある。したがって、開始判定値に下限を設けて設定することにより、実際にセンサ部で測定可能な測定値の範囲で開始判定値を設定することができるようになり、結果として、開始判定値の設定精度を高めることができる。
【0025】
この場合、前記開始判定値の前記最低開始値に応じて定まるアプローチ時間に基づいて、前記待機温度を上昇補正して設定するようにしてもよい。
【0026】
すなわち、開始判定値を最低開始値まで上げてしまうと、設定されたままの待機温度では、着座時に目標昇温温度まで便座を昇温できないこととなるため、開始判定値の修正に合わせて待機温度も上方に修正して、便座の温度が低くて、着座時にユーザが不快に感じることがないようにしている。
【0027】
また、前記加熱部により前記便座部の昇温を開始した後、実際にユーザが入室したかのか、それとも実際には入室しなかったかの入室結果を用いて、前記待機温度を補正するようにしてもよい。
【0028】
このように、加熱部により便座部の昇温を開始した後、実際にユーザが入室したかのか、それとも実際には入室しなかったかの入室結果に基づいて、待機温度を補正することにより、待機温度と開始判定値との間の対応関係をより適切なものにすることができ、より一層の消費電力の低減を図ることができる。例えば、入室すると推定したにも拘わらず、そのユーザが入室しない非入室推定が発生しても、その発生頻度が低いような場合には、待機温度が低い設定であれば、非入室推定をほとんどしない待機温度の高い設定よりも、全体的な消費電力は低く抑えることができる。したがって、非入室推定の頻度と、待機温度の設定との対応関係を適宜補正することで、両者のバランスを考慮した、適切な設定が可能となり、ユーザの使用感の向上をも図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、設定された待機温度に対し、便座の消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる暖房便座装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105、並びに、センサ部150の検知領域DR1、DR2を示す図。
【図2】第1の実施形態による便座装置110の構成を示すブロック図。
【図3】センサ部150によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図。
【図4】基準テーブルの制御データテーブルの一例を示す図。
【図5】待機温度TEMPstbが26℃の場合と23℃の場合における、トータル時間Ttotalと便座部140の温度との関係のグラフを示す図。
【図6】制御部210の記憶部214に格納されている、第1の実施形態に係る適応テーブルTB20の構成の一例を示す図。
【図7】図2に示した便座装置110で実行される即暖制御処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図8】制御部210の記憶部214に格納されている、第2の実施形態に係る適応テーブルTB40の構成の一例を示す図。
【図9】第2の実施形態に係る便座装置110で実行される適応テーブル切替処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図10】第3の実施形態に係るトイレ装置100、トイレルーム105の構造およびユーザの進入方向を示す概念図。
【図11】制御部210の記憶部214に格納されている、第3の実施形態に係る適応テーブルTB40における一部の構成の一例を示す図。
【図12】第3の実施形態に係る便座装置110で実行される適応テーブル切替処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図13】第4の実施形態に係る便座装置110で実行される非入室推定に基づく適応テーブル補正処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図14】図13の適応テーブル補正処理により、図6に示した適応テーブルTB20に補正を施した状態の適応テーブルTB20の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0032】
(第1の実施形態)
図1(A)および図1(B)は、本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105、並びに、センサ部150の検知領域DR1、DR2を示す図である。トイレ装置100は、トイレルーム105内に設置されており、便座装置110と、便器120とを備えている。便座装置110は、遠隔操作装置(リモートコントローラ)130と、便座部140と、センサ部150と、制御部210とを備えた暖房便座装置である。便座部140は、加熱部としてのヒーターを内蔵している。便座部140は、ヒーターに電流を供給することによって加熱される。センサ部150は、電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを含む。トイレルーム105は、壁106およびドア107で囲まれた空間であり、ユーザはドア107からトイレルーム105へ入室する。
【0033】
電波センサ160は、例えば、マイクロ波の周波数帯域を利用した電波センサである。マイクロ波センサは、所定の検知領域に向かい電波ビームを放射し、検知領域内に侵入した人体等の対象物を検知する。また、マイクロ波センサは、ドップラ効果(定在波)を利用しているので、対象物の動き(速度)を検知することができる。さらに、マイクロ波は、木材や樹脂、陶器等の比誘電率が比較的小さい物質を透過する。従って、マイクロ波センサは、トイレルーム105の外側にいる人体を検知し、かつ、その人体の移動状態(速度)を検出することができる。
【0034】
マイクロ波とは電波の周波数による分類の一つである。一般的には波長100マイクロメートル〜1メートル、周波数300メガヘルツ〜3テラヘルツの電波(電磁波)を指す。この範囲の電波には、デシメートル波(UHF)、センチメートル波(SHF)、ミリメートル波(EHF)、サブミリ波が含まれる。尚、電波センサ160は、トイレルーム105の外側にいるユーザの人体を検知することができればよく、利用可能な周波数帯域はマイクロ波帯に限定されない。
【0035】
焦電センサ170は、例えば、焦電型赤外線センサであり、ユーザがトイレルーム105に入室したことを検知する。焦電型赤外線センサは、周囲環境の温度と、検知したい物体の温度との差を検知して、その空間に物体が存在するか否かを判断する。尚、本実施例ではトイレルーム105に入室したユーザの人体を検知するために焦電センサ170を便座装置110に設置したが、焦電型赤外線センサに限定されない。
【0036】
着座センサ180は、例えば、反射型赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座部140上にユーザが着座していることを検知する。尚、着座センサ180も、便座部140上にユーザが着座していることを検知することができればよく、反射型赤外線センサに限定されない。
【0037】
電波センサ160および焦電センサ170は、便座装置110および/または便器120や遠隔操作装置130に取り付けてもよく、あるいは、便座装置110および遠隔操作装置130とは別にトイレルーム105内の壁面、天井または床面に取り付けてもよい。
【0038】
第1の検知領域DR1は、電波センサ160が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の外側へ広がっている。第2の検知領域は、焦電センサ170が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の内側に制限されている。
【0039】
図2は、第1の実施形態による便座装置110の構成を示すブロック図である。便座装置110は、遠隔操作装置130と、センサ部150と、便座部140と、洗浄部200と、制御部210とを備えている。
【0040】
遠隔操作装置130は、機能設定部132と、機能操作部134と、表示部136とを備えている。機能設定部132は、便座部140の温度設定、洗浄装置200の水温設定等の各種設定事項をユーザが入力/選択する手段である。機能操作部134は、機能設定部132で設定された設定事項に基づいて便座装置110および洗浄装置200をユーザが操作する手段である。表示部136は、ユーザが機能設定部132または機能操作部134を用いて入力/選択した事項を表示する手段である。機能設定部132および機能操作部134は、例えば、ボタン、切替えスイッチを含み、ユーザは、ボタンを押し、あるいは、切替えスイッチを切替えることによって便座装置110の設定および操作を行う。表示部136は、例えば、液晶表示装置でよい。
【0041】
センサ部150は、上述の通り電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを備えている。電波センサ160は、送信アンテナ162と、発振回路164と、受信アンテナ166と、検波回路168とを備えている。本実施形態では、発振回路164は、所定の周波数の電波(マイクロ波)を生成し、送信アンテナ162からその電波を送信する。受信アンテナ166は、送信アンテナ162から送信された電波の反射波を受信する。検波回路168は、受信アンテナ166において受信された反射波から周波数の差分(検知信号)を抽出し、検知信号を制御部210へ送る。発振回路164に周波数可変回路を備えれば、反射波の位相状態から人体の移動速度だけでなく電波センサ160から人体までの距離を認識できる。また、検波回路168を複数備えれば、複数の検知信号の位相差から電波センサ160に対し人体が接近または離遠しているのかを識別できる。
【0042】
焦電センサ170は、検知領域を設定するレンズと人体から放射された赤外線を受信する受光素子を備え、着座センサ180は、赤外線を発光する発光素子と発光素子から送信された赤外線の反射波を受信する受光素子を備え、ともに受光素子にて受信した結果を制御部210へ送る。
【0043】
便座部140は、加熱部としてのヒーター142と、温度検知部(サーミスタ)144とを備えている。ヒーター142は、制御部210の制御を受けて便座部140を加熱する。温度検知部144は、便座部140の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。
【0044】
洗浄部200は、ヒーター202と、温度検知部(サーミスタ)204と、ノズル駆動部206とを備えている。ヒーター202は、制御部210の制御を受けて、洗浄部200内のタンクに蓄えられた洗浄水を加熱する。温度検知部204は、洗浄水の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。ノズル駆動部206は、ノズルを駆動させ、洗浄水を吐出するように構成されている。
【0045】
制御部210は、演算処理部(CPU)212と、記憶部214と、タイマ216と、カウンタ218とを備え、遠隔操作装置130、センサ部150、便座部140および洗浄部200を制御するように構成されている。
【0046】
図3は、センサ部150によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図である。電波センサ160によって検出された電圧波形がW1、焦電センサ170によって検出された電圧波形がW2、並びに、着座センサ180によって検出された電圧波形がW3で示されている。これらの電圧波形W1〜W3は、センサ部150によって受信された受信波を、制御部210に含まれる周波数帯域フィルタを用いてフィルタリングすることによって得られた所望の周波数帯域の波形である。制御部210は、電圧波形W1〜W3の振幅電圧の変化によって、電波センサ160がユーザの人体を検知したこと(人体検知)、焦電センサ170がユーザの入室を検知したこと(入室検知)、並びに、着座センサ180がユーザの着座を検知したこと(着座検知)を判断することができる。制御部210は、電波の反射波の測定値が閾値を超え、電波センサ160が人体を検知した時点から便座部140の加熱を開始する。
【0047】
ユーザがトイレルーム105に接近し、電波センサ160の第1の検知領域DR1に進入すると、まず、電波センサ160によって検出されるマイクロ波の電圧振幅が大きくなる。このとき、マイクロ波の電圧振幅が所定の閾値±Vth(例えば、上限閾値電圧+Vthおよび/または下限閾値電圧−Vth)を超えると、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。閾値は、ユーザの人体を検知するために用いられるパラメータであり、例えば、ノイズの平均レベルを基準として設けられた上限閾値電圧および下限閾値電圧、あるいは、所定のS/N比により表現され得る。さらに、ユーザが第1の検知領域DR1に進入すると、マイクロ波は、電圧値だけでなく周波数も変化する。従って、電波センサ160は、ドップラ効果を利用し、マイクロ波の送信波と受信波との周波数差を検知することによって人体の移動速度を検知することができる。よって、閾値は、ユーザの移動速度の減速率で表現されてもよく、あるいは、送受信されるマイクロ波の周波数差で表現されてもよい。
【0048】
図3の閾値電圧±Vthは、所定のS/N比(Signal-to-Noise ratio)で決定される。例えば、閾値を決定する所定のS/N比(以下、判定S/N比ともいう)が1.5であるとすると、閾値電圧は、ノイズ(暗雑音)の電圧振幅の1.5倍の振幅を有する電圧の上限および下限となる。また、反射波の信号レベルが閾値を単位(所定)時間に所定回数超えた場合に、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断してもよい。例えば、判定S/N比が1.5であり、かつ、所定回数が5回であるとすると、ノイズの振幅に対して1.5倍以上の振幅を有する反射波が単位時間に5回以上検知された場合に、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。この場合、カウンタ218は、上限閾値および下限閾値の両方または一方を超える反射波のピーク値およびボトム値をカウントする。尚、上記の単位時間や所定回数は、予め記憶部214に格納しておけばよい。
【0049】
電波センサ160による人体検知時点をt0とする。人体検知時点t0は、上限と下限との閾値幅を小さくすることによって(即ち、判定S/N比を小さくすることによって)、早めることができる。即ち、ユーザの人体を早く検出するためには、判定S/N比を小さくすればよい。これは、判定S/N比を小さくすることによって、第1の検知領域DR1を広げることができるからである。判定S/N比を限りなく小さくすれば、第1の検知領域DR1を非常に大きくすることができるので、電波センサ160は、トイレルーム105から遠く離れたユーザであってもその人体を検知することができる。
【0050】
しかし、第1の検知領域DR1を大きく広げれば、電波センサ160は、実際にトイレルーム105に入室しないユーザの人体を検知する頻度が多くなる。従って、閾値は、早い時点で人体を検知することと、非入室推定の頻度の低減とのバランスを考慮して設定される。
【0051】
尚、後述するように、閾値は、予め決定されていてもよく、演算部210によって演算で自動に決定されてもよく、あるいは、ユーザや施工業者によって手動で決定されてもよい。閾値は、決定後、記憶部214に格納される。
【0052】
ユーザは、第1の検知領域DR1に進入後、トイレルーム105のドアを開けて、トイレルーム105内に入る。ユーザが第2の検知領域DR2に進入すると、焦電センサ170は、ユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧(初期電圧値に対する変化量)を超えた場合に、制御部210は、焦電センサ170が人体を検知したものと判断する。焦電センサ170がユーザの入室を検知した時点を入室時点t1とする。
【0053】
本実施形態では、人体検知時点t0から入室時点t1までの時間をアプローチ時間T1と規定する。即ち、アプローチ時間T1は、マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えた時点(t0)からユーザがトイレルーム105に入室する時点(t1)までの時間である。さらに換言すると、アプローチ時間T1は、ユーザがトイレルーム105へ接近して第1の検知領域DR1に進入した時点(t0)から、ユーザが第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)までの時間である。
【0054】
その後、ユーザが便座部140に着座すると、着座センサ180がユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧を超えた場合に、制御部210は、着座センサ180が人体を検知したものと判断すればよい。このように、着座センサ180がユーザの着座を検知した時点を着座時点t2とする。
【0055】
本実施形態では、入室時点t1から着座時点t2までの時間を着座時間T2と規定する。即ち、着座時間T2は、ユーザがトイレルーム105に入室して第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)から、ユーザが便座部140に着座する時点(t2)までの時間である。
【0056】
電波センサ160が人体を検知した時点(t0)から着座センサ180がユーザの着座を検知する時点(t2)までのトータル時間をTtotalと規定する。トータル時間Ttotalを長くすることによって、便座部140の待機温度が低くても、制御部210は、ユーザの着座時t2に便座部140を適温(目標温度)まで昇温させることができる。便座部140の待機温度を低くすることができれば、便座装置110の消費電力を低減させることができる。待機温度は、トイレ装置100が利用されていない待機時における便座部140の温度である。
【0057】
尚、電波センサ160は、人体の移動速度の他に、トイレルーム105のドアの開閉を検出することができる。ドアの材質が比誘電率の比較的小さい木材であったとしても反射有効断面積が人体よりも大きい。従って、人体がドア付近を移動する時とドアが開閉する時の電波センサ160にて受信される反射波(検波後の電圧振幅値)を比較すると、ドアが開閉する時の方が極端に大きくなる。よって、電波センサ160は、人体の移動速度の減速率またはトイレルーム105のドアの開閉を検知することによって、ユーザの入室を検知できる。従って、電波センサ160は、焦電センサ170に代わって入室検知をしてもよい。これにより、焦電センサ170を省略することができる。さらに、電波センサ160は、マイクロ波の周波数(位相)あるいは電圧値の時系列変化によってユーザの着座も検知できる。従って、着座センサ180も省略してもよい。即ち、人体検知、入室検知、および、着座検知は電波センサ160のみにより実行可能である。この場合、焦電センサ170および着座センサ180が不要となるので、コストが低減される。
【0058】
ところで、第1の検知領域は実際にトイレ装置100を設置する環境によって変化する。第1の検知領域DR1が変化すると、人体検知から着座検知までの実際の時間(トータル時間Ttotal)はばらつく。さらに、トータル時間Ttotalは、ユーザの移動速度によっても変化する。このため、トータル時間Ttotalの設定あるいは便座部140の待機温度の設定には或る程度の推測が必要となる。
【0059】
本実施形態による便座装置110は、ユーザが行った待機温度の設定に応じて、アプローチ時間T1を適宜変更し、ユーザが着座した際には、便座を適切な温度まで昇温させることができるようにしている。すなわち、ユーザが待機温度を低く設定した場合には、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を低く設定して、第1の検知領域DR1が広くなるようにして、アプローチ時間T1を長く確保できるようにする。これにより、ユーザが待機温度を低く設定した場合でも、ユーザが着座するまでに便座温度を快適な温度まで上げることができる。
【0060】
一方、ユーザが待機温度を高く設定した場合には、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を高く設定することにより、第1の検知領域DR1が狭くなるようにして、アプローチ時間T1が短くなるようにする。これにより、未入室検知の頻度を可及的に減少させ、無駄な昇温動作による電力消費を抑制できるようにしている。
【0061】
[基準テーブル]
まず、トータル時間Ttotalあるいは便座部140の待機温度の基準テーブルについて説明する。
【0062】
図4は、基準テーブルの制御データテーブルの一例を示す図である。基準テーブルは、トイレ装置100の設置直後に便座装置110の加熱機能を利用することができるように製造メーカーによって出荷前に設定され、記憶部214に予め格納されたテーブルである。例えば、基準テーブルでは、目標温度TEMPtrgが29℃、待機温度TEMPstbが26℃、トータル時間Ttotal内に昇温する温度ΔTEMP(ΔTEMP=TEMPtrg−TEMPstb)が3℃、トータル時間Ttotalが6秒、並びに、判定S/N比が1.2に設定されている。尚、当初、いずれのユーザが使用したとしても、ユーザの着座時に便座部140の温度が目標温度TEMPtrgに達しているように、基準テーブルでは、待機温度TEMPstbは高めに設定されている。
【0063】
図5は、トータル時間Ttotalと便座部140の温度との関係を示すグラフである。便座部140の待機温度をTEMPstb、ユーザが着座したときに快適と感じる目標温度をTEMPtrg、ユーザによって設定される便座部140の設定温度をTEMPsetとする。設定温度TEMPsetは、ユーザが着座している期間に所望する便座部140の温度である。便座部140の温度は、短時間(例えば、6秒)にて目標温度を超えるよう大電力にて加熱された後、設定温度TEMPsetに維持される。一方、目標温度TEMPtrgは、着座時にユーザに不快感を与えないための便座部140の温度であり、便座部140を構成する材質や形状およびその厚みにより異なる。一般に設定温度TEMPsetよりも低い温度でよい。
【0064】
人体検知時点t0まで制御部210は、便座部140の温度を待機温度TEMPstbに維持している。ここでは、この待機温度TEMPstbが26℃であると仮定する。人体検知時点t0において、制御部210はヒーター142によって便座部140の温度を待機温度TEMPstbから加熱し始める。そして、着座時点t2において、便座部140の温度が目標温度TEMPtrgに達していることが必要となる。図5の例では、加熱を開始して6秒後に、目標温度TEMPtrgに到達している。尚、図5に示す便座部140の温度変化T140の傾きは、ヒーター142から便座部140への熱伝達特性およびヒーター142への印加電圧とその通電時間によって決定される。
【0065】
そして、例えば、ユーザが待機温度TEMPstbを26℃から23℃に変更した場合、当然、便座部140の加熱を開始してから目標温度TEMPtrgに到達するまでの時間も長くかかる。図5の例では、待機温度TEMPstbが23℃の場合、加熱を開始してから9秒後に目標温度TEMPtrgに到達していることが分かる。したがって、本実施形態においては、ユーザが設定した待機温度TEMPstbの値に応じて、必要な加熱時間、つまり必要なトータル時間Ttotalが確保できるように、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を変更するのである。すなわち、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を変更することにより、便座部140の昇温を開始するタイミングを前後にシフトすることができるため、これを利用して、設定された待機温度TEMPstbに応じたアプローチ時間T1を確保し、これにより、適切なトータル時間Ttotalが確保できるようにしている。
【0066】
図6は、このような待機温度TEMPstbに応じたトータル時間Ttotalの変更を実現するための適応テーブルTB20の一例を示す図である。この図6に示すように、適応テーブルTB20には、待機温度TEMPstb毎に、便座部140の加熱昇温を開始するタイミングを決定する電波センサ160の測定値の開始判定値が定められている。例えば、ユーザが設定した待機温度TEMPstbが26℃の場合、加熱を開始する開始判定値は、S/N比=1.4に定められており、これにより、1秒(アプローチ時間T1)+5秒(着座時間T2)=6秒のトータル時間Ttotalを確保することができる。同様に、ユーザが設定した待機温度TEMPstbが23℃の場合、加熱を開始する開始判定値は、S/N比=1.15に定められており、これにより、4秒(アプローチ時間T1)+5秒(着座時間T2)=9秒のトータル時間Ttotalを確保することができる。
【0067】
この図6に示した適応テーブルTB20は、例えば、制御部210の記憶部214に格納されている。この適応テーブルTB20を格納する際には、待機温度TEMPstbと、これに対応する開始判定値のS/N比の値だけを項目として保持させるようにしてもよいし、これに加えて、アプローチ時間T1や、着座時間T2、トータル時間Ttotalをも合わせて項目として保持させるようにしてもよい。また、ユーザは、任意の手法で、待機温度TEMPstbの設定を変更することができる。本実施形態においては、例えば、機能設定部132をユーザが操作することにより、手動で待機温度TEMPstbの設定を変更することができる。
【0068】
図7は、本実施形態に係る制御部210で実行される即暖制御処理の内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。この即暖制御処理は、便座装置110の電源が投入された際に起動される処理であるが、ユーザが待機温度TEMPstbを変更した場合にも、再起動される処理である。この即暖制御処理では、制御部210は、適応テーブルTB20を用いて、次のように便座部140の温度制御を行う。
【0069】
まず、制御部210は、ユーザが設定した待機温度TEMPstbに対応するS/N比の開始判定値を、適応テーブルTB20から取得する(ステップS100)。例えば、ユーザが待機温度TEMPstbを23℃に設定した場合、制御部210は、S/N比=1.15という開始判定値を、適応テーブルTB20から取得する。
【0070】
次に、制御部210は、電波センサ160の測定値を監視し、この測定値のS/N比が開始判定値の1.15以上になったかどうかを判断する(ステップS110)。電波センサ160の測定値が、この開始判定値以上になっていないと判断した場合(ステップS110:NO)には、このステップS110を繰り返し実行して、電波センサ160の測定値を監視を継続する。
【0071】
一方、電波センサ160の測定値のS/N比が1.15以上になったと判断した場合(ステップS110:YES)には、制御部210は、便座部140の昇温を開始する(ステップS120)。そして、制御部210は、焦電センサ170によるユーザのトイレルーム105内への入室が検知されたかどうかを判断する(ステップS130)。この入室が検知されていない場合(ステップS130:NO)には、制御部210は、昇温を開始してから所定時間経過したかどうかを判断する(ステップS140)。この所定時間は、例えば、6秒や10秒といった時間である。
【0072】
昇温を開始して所定時間経過していない場合(ステップS140:NO)には、制御部210は、ステップS130に戻り、トイレルーム105内へのユーザの入室が検知されたかどうかの判断を繰り返す。一方、昇温を開始して所定時間が経過した場合(ステップS140:YES)には、便座部140の昇温を中止して(ステップS150)、上述したステップS110に戻る。このように、制御部210は、所定時間を経過しても、ユーザがトイレルーム105に入室してこないときには、ユーザがトイレルーム105に入室しないと推定する。このように、便座装置110が便座部140の昇温動作を開始したにも拘わらず、ユーザが入室しないと制御部210が判定することを「非入室推定」という。
【0073】
一方、ステップS130において、トイレルーム105内へのユーザの入室を検知した場合(ステップS130:YES)には、制御部210は、設定温度TEMPsetに基づく温度制御を開始する(ステップS160)。ここで、設定温度が、35℃であると仮定すると、便座部140の温度が35℃になるように、温度制御を行う。
【0074】
次に、制御部210は、焦電センサ170が、トイレルーム105からのユーザの退室を検知したかどうかを判断する(ステップS170)。ユーザの退室を検知していない場合(ステップS170:NO)には、設定温度TEMPsetに基づく温度制御を継続する。
【0075】
一方、焦電センサ170が、トイレルーム105からのユーザの退室を検知した場合(ステップS170:YES)には、制御部210は、待機温度TEMPstbに基づく制御を開始して(ステップS180)、上述したステップS110に戻る。
【0076】
以上のように本実施形態に係る便座装置110によれば、ユーザの設定した待機温度TEMPstbに基づいて、アプローチ時間T1を決定し、この決定したアプローチ時間T1に基づいて開始判定値を決めるようにしたので、ユーザの設定した待機温度TEMPstbの値に拘わらず、ユーザの着座時点における便座を適切な温度まで昇温させることができるようになる。
【0077】
すなわち、固定的な開始判定値で便座部140の昇温を開始するだけでは、ユーザが待機温度TEMPstbを低く設定した場合、昇温性能が追いつかず、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができないという問題が生じる恐れがあるが、本実施形態では、待機温度TEMPstbに基づいて、アプローチ時間T1を決定し、この決定したアプローチ時間T1に基づいて電波センサ160の検知結果である開始判定値を決定することとしたので、非入室推定の頻度と、着座時の便座温度との関係のバランスをとることができる。
【0078】
また、ユーザが手動で待機温度TEMPstbの設定を変更できるようにしたので、ユーザの好みや要望に応じた待機温度TEMPstbを設定することができるようになる。このため、例えば、老若男女による温度設定の好みや、季節の変化等に応じて、柔軟に待機温度TEMPstbを設定できるようになる。このように待機温度TEMPstbを変更しても、待機温度TEMPstbを設定することにより決定されるアプローチ時間T1に基づいて開始判定値を決定するため、便座部140における消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座部140の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができるようになる。
【0079】
なお、本実施形態においては、図6の適応テーブルTB20において、各待機温度TEMPstbに対応する開始判定値を固定的に予め定めておくこととしたが、この開始判定値を実際の測定結果に基づいて動的に変更するようにしてもよい。例えば、設定されている待機温度TEMPstbが23℃である場合、アプローチ時間T1は4秒必要なことがわかる。このため、制御部210は、電波センサ160と焦電センサ170の実際の測定値の波形に基づいて、ユーザの入室時点t1を特定し、この入室時点t1から4秒前の時点における電波センサ160の測定値のS/N比を取得し、このS/N比を開始判定値とするようにしてもよい。このようにして決定された開始判定値であるS/N比は、適応テーブルTB20に格納して保持しておくことも可能である。このようにすることにより、開始判定値のS/N比を高い精度で定めることができる。
【0080】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る適応テーブルTB40の構成の一例を示す図である。この適応テーブルTB40も、制御部210の記憶部214に格納されている。図8の適応テーブルTB40においては、昼間用の開始判定値と、夜用の開始判定値とが別々に設定されている点で、上述した第1の実施形態と異なる。
【0081】
すなわち、昼間用のテーブルにおける、待機温度TEMPstbに対応する、開始判定値とアプローチ時間T1と着座時間T2とトータル時間Ttotalとの関係は、上述した第1実施形態の適応テーブルTB20と同じである。但し、夜用のテーブルにおける、待機温度TEMPstbに対応する、開始判定値とアプローチ時間T1と着座時間T2とトータル時間Ttotalとの関係は、上述した第1実施形態の適応テーブルTB20とは異なっている。
【0082】
夜用のテーブルにおいては、昼間のテーブルよりも開始判定値を小さくして、第1の検知領域DR1を広く設定するようにしている。これは、夜になるとトイレルーム105内の外の人の往来が少なくなり、人がトイレルーム105の近傍に進入する際には、トイレが目的であることが多いと考えられるためである。このため、アプローチ時間T1を長くして昇温時間を十分に確保しても、非入室推定となる可能性は低く抑えられるからである。
【0083】
この図8の例では、例えば、待機温度TEMPstbが26℃の場合、昼間の開始判定値がS/N比=1.4であるのに対し、夜間の開始判定値のS/N比=1.3である。このため、昼間より夜間の方がより早いタイミングで便座部140の昇温が開始され、アプローチ時間T1が長く確保されることとなる。
【0084】
なお、図8の適応テーブルTB40においては、開始判定値のS/N比の下限が1.1に設定されている。これは、電波センサ160の測定精度にも限界があり、開始判定値のS/N比が所定の値より小さくなると、電波センサ160の測定波形を適正に認識できない可能性があるためである。このため、開始判定値のS/N比に下限を設けて設定することにより、実際に電波センサ160で測定可能な測定値の範囲で開始判定値のS/N比を設定することができるようになり、結果として、開始判定値のS/N比の設定精度を高めることができるのである。
【0085】
また、この適応テーブルTB40を記憶部214に格納する際には、昼間用と夜間用のそれぞれの待機温度TEMPstbと、これに対応する開始判定値のS/N比の値だけを項目として保持させるようにしてもよいし、これに加えて、アプローチ時間T1や、着座時間T2、トータル時間Ttotalをも合わせて項目として保持させるようにしてもよい。
【0086】
図9は、本実施形態に係る制御部210で実行される適応テーブル切替処理の内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。この適応テーブル切替処理は、所定の周期(例えば10分に1回の割合)で定常的に実行される処理である。また、便座装置の電源が投入された際や、ユーザが待機温度TEMPstbを変更した際に実行される図7の即暖制御処理におけるステップS100が実行された際にも、ステップS100の処理として実行される処理でもある。この適応テーブル切替処理では、制御部210は、適応テーブルTB40を用いて、次のように開始判定値の切替を行う。
【0087】
まず、制御部210は、現在の時間を取得し、現在の時間が午前8時から午後10時の間であるかどうかを判断する(ステップS200)。もし、現在の時間が午前8時から午後10時の間にある場合(ステップS200:YES)には、制御部210は、設定されている待機温度TEMPstbに対応した昼間用の開始判定値を取得する(ステップS210)。例えば、待機温度TEMPstbが26℃である場合には、開始判定値としてS/N比=1.4を取得する。
【0088】
一方、もし、現在の時間が午前8時から午後10時の間にない場合(ステップS200:NO)には、制御部210は、設定されている待機温度TEMPstbに対応した夜間用の開始判定値を取得する。例えば、待機温度TEMPstbが26℃である場合には、開始判定値としてS/N比=1.3を取得する。
【0089】
これらステップS210又はステップS220で取得した開始判定値のS/N比に基づいて、制御部210は、図7の即暖制御処理を実行する。このため、昼間と夜間とでは、同じ待機温度TEMPstbであっても、異なる開始判定値に基づいて、即暖制御を行うことができる。すなわち、異なるアプローチ時間T1、つまり、トータル時間Ttotalに基づいて、便座部140の昇温を行うことができる。
【0090】
このように、本実施形態に係る便座装置110によれば、一日のうちの時間帯に応じて、異なるアプローチ時間T1を設定できるようになり、使用環境に適切に対応して、一層の消費電力の低減を図ることができる。
【0091】
なお、本実施形態においては、1つの待機温度TEMPstbに対して複数のアプローチ時間T1(つまり、開始判定値のS/N比)を設定して、一日のうちの時間帯に応じて、異なるアプローチ時間T1を選択できるようにしたが、子供や老人の有無、また、その人数等により、複数のアプローチ時間T1の中から1つのアプローチ時間T1を選択するようにしてもよい。
【0092】
(第3の実施形態)
図10は、本実施形態に係るトイレ装置100が設けられたトイレルーム105の構造と、このトイレルーム105に対するユーザの進入方向を示す概念図である。
【0093】
一般に、トイレルーム105のドアは、トイレルーム105の正面(トイレ装置110の前方の面)または側面(トイレ装置110の側方の面)のいずれかに設けられている。ドア107がトイレルーム105の正面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の前方(正面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境情報(I))と、トイレルーム105の側方(正面に対してほぼ平行方向)から接近する場合(環境情報(II))とに分けることができる。なお、図1(B)に示すように、第1の検知領域DR1がトイレ装置110に関して左右対称に広がっている限りにおいて、閾値は、ユーザがトイレルーム105の右側方から進入する場合と左側方から進入する場合とにおいて同じでよい。
【0094】
ドア107がトイレルーム105の側面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレブース105の前方から接近する場合(環境情報(III))と、トイレルーム105の側方(側面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境情報(IV))と、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))と、に分けることができる。なお、第1の検知領域DR1は、トイレ装置110に関して左右対称に広がっているので、トイレルーム105の前方から接近する場合(環境情報(III))と、トイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))とにおいて、開始判定値のS/N比は相違させることが好ましい。図10において、破線の矢印は、ドアの開閉方向を示している。
【0095】
図11は、本実施形態に係る適応テーブルTB60の一部の構成の一例を示す図である。この適応テーブルTB60も、制御部210の記憶部214に格納されている。図11の適応テーブルTB60においては、複数のアプローチ時間T1の中から、住宅状況に応じて、1つのアプローチ時間T1を選択する。
【0096】
すなわち、住宅状況が環境情報(IV)である場合における、待機温度TEMPstbと開始判定値のS/N比との対応関係を定めるテーブルと、住宅状況が環境情報(V)である場合における、待機温度TEMPstbと判定値のS/N比との対応関係を定めるテーブルとが、図11の適応テーブルTB60に設けられている。
【0097】
例えば、設定されている待機温度TEMPstbが26℃である場合、住宅状況が環境情報(IV)のときには、開始判定値はS/N比=1.25であるが、住宅状況が環境情報(V)のときには、開始判定値はS/N比=1.1である。これは、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))の方が、トイレルーム105の側方(側面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境情報(IV))よりも、電波センサ160で検知しにくいという特性があるためである。すなわち、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))の感度を上げるために、環境情報(IV)の開始判定値のS/N比よりも、環境情報(V)の開始判定値のS/N比を小さくしているのである。
【0098】
なお、図11の適応テーブルTB60においても、電波センサ160の測定精度に限界があることから、開始判定値のS/N比の下限が1.1に設定されている。また、図11においては、ユーザが設定できる待機温度TEMPstbにも下限を設けている。例えば、住宅状況が環境情報(IV)である場合、待機温度TEMPstbの下限値は23℃であり、ユーザは待機温度TEMPstbを22℃に設定できない仕組みになっている。もし、ユーザが待機温度TEMPstbを22℃に設定しようとすると、制御部210は、ユーザが設定した温度を強制的に23℃に上昇補正して設定する。同様に、住宅状況が環境情報(V)である場合、待機温度TEMPstbの下限値は26℃であり、ユーザは待機温度TEMPstbを26℃未満には設定できない仕組みになっている。もし、ユーザが待機温度TEMPstbを26℃未満に設定しようとすると、制御部210は、ユーザが設定した温度を強制的に26℃に上昇補正して設定する。このように、待機温度TEMPstbを強制的に上方に修正することにより、昇温が間に合わずに、着座時に便座の温度が低くて、ユーザが不快に感じることがないようにしている。
【0099】
また、図11においては、環境情報(IV)のテーブルと、環境情報(V)のテーブルとを備える適応テーブルTB60を例示しているが、制御部210の記憶部214に実際に格納される適応テーブルTB60には、他の環境情報(I)〜(iii)のテーブルも備えられている。さらに、この適応テーブルTB60を記憶部214に格納する際には、待機温度TEMPstbと、これに対応する開始判定値のS/N比の値だけを項目として保持させるようにしてもよいし、これに加えて、アプローチ時間T1や、着座時間T2、トータル時間Ttotalをも合わせて項目として保持させるようにしてもよい。
【0100】
図12は、本実施形態に係る制御部210で実行される適応テーブル切替処理の内容を説明するフローチャートの一例を示す図である。この適応テーブル切替処理は、図7の即暖制御処理におけるステップS100として実行される処理である。すなわち、図12に示すように、ステップS100の処理として、制御部210は、住宅状況の設定がなされているかどうかを判断する(ステップS300)。すなわち、ユーザは、この便座装置110の設置状況が環境情報(I)〜(V)のいずれに該当するのかを、遠隔操作装置130の機能設定部132を自ら操作して予め設定入力する。
【0101】
住宅状況の設定がなされていないと判断した場合(ステップS300:NO)には、制御部210は、図4に示した基準テーブルから、開始判定値のS/N比を取得する(ステップS310)。この図4の例では、制御部210は、開始判定値としてS/N比=1.2を取得する。すなわち、この基準テーブルを用いる場合、開始判定値のS/N比は、待機温度TEMPstbの値に拘わらず所定の値に固定される。
【0102】
一方、ステップS300で住宅状況の設定がなされていると判断した場合(ステップS300:YES)には、図11に示した適応テーブルTB60から、開始判定値のS/N比を取得する(ステップS320)。具体的には、設定されている住宅状況に対応したテーブルを用いて、待機温度TEMPstbの値に対応する開始判定値のS/N比を取得する。例えば、ユーザが設定した住宅状況が環境情報(IV)であり、且つ、ユーザが設定した待機温度TEMPstbが26℃である場合には、制御部210は、開始判定値としてS/N比=1.25を取得する。
【0103】
これらステップS310又はステップS320を図7のステップS100として実行した後、制御部210は、図7のステップS110に移行して、即暖制御処理を続行する。
【0104】
以上のように、本実施形態に係る便座装置110によれば、同じ待機温度TEMPstbでも、異なる複数の開始判定値を用意し、ユーザが設定した住宅状況に基づいて、これら複数の開始判定値の中から1つを選択して使用することとしたので、便座装置110が設置された住宅状況に応じて、より適正なアプローチ時間T1を設定することができる。
【0105】
(第4の実施形態)
図13は、本実施形態に係る便座装置110で実行される非入室推定に基づく適応テーブル補正処理の一例を説明するフローチャートを示す図である。この適応テーブル補正処理は、便座装置110の制御部210において、所定の周期で実行される処理である。例えば、1時間に1回の割合で定期的に実行されるようにしてもよいし、或いは、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったと判断した回数をカウントし、このカウントが10回になる都度実行されるようにしてもよい。
【0106】
本実施形態においては、この非入室推定に基づく適応テーブル補正処理を行うことにより、10回中5回以上、非入室推定があるような場合は、待機温度TEMPstbと開始判定値のS/N比との関係が精度良く対応づけられていないと判断して、補正を行うこととしている。
【0107】
より具体的には、図13に示すように、まず、制御部210は、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったとカウントした回数10回のうち、非入室推定となった回数が5回以上あるかどうかを判断する(ステップS400)。本実施形態においては、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になった直近の10回だけを抽出して、そのうち、何回、非入室推定となったかを判断基準としている。つまり、本実施形態に係る制御部210は、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になった回数をカウントしているとともに、そのうちの非入室推定になった回数もカウントしている。
【0108】
電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったとカウントした回数10回のうち、非入室推定となった回数が5回以上あると判断した場合(ステップS400:YES)には、適応テーブルの待機温度の補正を行う(ステップS410)。例えば、第1の実施形態で説明したように、図6の適応テーブルTB20を用いて開始判定値のS/N比を決定している場合、この適応テーブルTB20の待機温度の補正を行う。すなわち、非入室推定の頻度が多く、精度が悪いという判断の下、適応テーブルTB20により設定されるアプローチ時間T1が短くなるように、補正を行う。
【0109】
図14は、図6の適応テーブルTB20に、この補正を施した後の適応テーブルTB20の一例を示す図である。これら図6と図14とを見比べると分かるように、非入室推定の頻度を減らすべく、待機温度TEMPstbの温度を1℃ずつ下げている。例えば、開始判定値のS/N比=1.4に対応する待機温度TEMPstbは、26℃から25℃に変更されている。逆の見方をすると、待機温度TEMPstbが26℃の場合、開始判定値のS/N比は、1.4から1.5に変更されている。この変更により、便座部140の昇温を開始するタイミングを遅くすることができ、その結果、非入室推定の頻度を減少させることができる。なお、第2の実施形態に係る適応テーブルTB40や第3の実施形態に係る適応テーブルTB60についても、これと同様の補正を行うことができる。
【0110】
一方、上述したステップS400において、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったとカウントした回数10回のうち、非入室推定となった回数が5回以上ではないと判断した場合(ステップS400:NO)には、適応テーブルの待機温度の補正は行わない。
【0111】
以上のように、本実施形態に係る便座装置110によれば、便座部140の昇温を開始したにも拘わらず非入室推定となった回数をカウントし、非入室推定となった回数に基づいて、適応テーブルの待機温度を補正することとしたので、待機温度と開始判定値との間の対応関係をより適切なものにすることができ、より一層の消費電力の低減を図ることができる。例えば、ある開始判定値に基づいて、ユーザが入室すると推定して便座部140の昇温を開始したにも拘わらず、そのユーザが入室しない非入室推定が所定の頻度で発生するような場合には、開始判定値を大きくし、便座部140の昇温を開始するタイミングを遅らせて、アプローチ時間T1を短くすることができるようになる。この結果、当初は、適応テーブルにおけるアプローチ時間を長めに設定しておくことも可能になり、非入室推定の頻度と、待機温度の設定との対応関係を適宜補正することで、両者のバランスを考慮した、適切な設定が可能となり、ユーザの使用感の向上をも図ることができる。
【0112】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず種々に変形可能である。例えば、上述した各実施形態においては、便座部140の昇温を開始するタイミングを決定する閾値である開始判定値として、電波センサ160の測定値のS/N比を用いる例を説明したが、この開始判定値は、電波センサ160の測定値S/N比に限定されるものではない。例えば、電波センサ160の測定値の減速度を用いて、開始判定値を定めるようにしてもよいし、或いは、電波センサ160の測定値のS/N比と減速度とを組み合わせて用いて、開始判定値を定めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0113】
100・・・トイレ装置
105・・・トイレルーム
110・・・便座装置
120・・・便器
130・・・遠隔操作装置(リモコン)
140・・・便座部
142・・・ヒーター
144・・・温度検知部
150・・・センサ部
160・・・電波センサ
170・・・焦電センサ
180・・・着座センサ
200・・・洗浄部
210・・・制御部
212・・・演算処理部
214・・・記憶部
216・・・タイマ
218・・・カウンタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関し、例えば、便座を加熱する暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座装置は、便座内に内蔵された発熱線に常時電圧を印加することにより熱を発生させ、その熱によって設定された所望の温度に便座を常に暖めておくものである。それにより、暖房便座装置は、ユーザが便座に着座する際に便座の冷たさによって不快を感じることを防止し、ユーザは快適に便座に着座することができる。
【0003】
このような暖房便座装置では、便器を使用しない時の消費電力は極力低下させる一方で、便器使用時には快適な温度の便座に着座できるように便座温度を制御することが望まれている。そこで従来、便器を使用しない時の消費電力を抑えるために便座の待機温度を低く保った状態で焦電型赤外線センサを用いてトイレルームへ入室する人体を検知し、人体の検知があった場合は、待機温度から目標とする着座温度まで便座の温度を昇温する即暖型の暖房便座装置が知られている(特許文献1)。このような即暖型の暖房便座装置は、ユーザが便器を使用するときに便座を急速加熱するものであり、便器を使用しないときの待機温度を下げることができるので消費電力の低減に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165684号公報
【特許文献2】特許第4068648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の即暖型の暖房便座装置は、トイレルームに入室した後の人体を検知して待機温度から目標の着座温度まで昇温させるものである。通常、入室から着座までの時間は長くても6秒程度であり、ユーザが軽装の場合はトイレルームに入室してから便座に着座するまでの時間は4秒程度である。つまり、待機温度から着座温度まで昇温させる時間には限界があった。そのため、従来の即暖型の暖房便座装置は、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できないおそれがあった。あるいは、短い時間でもユーザが着座する時点において便座を確実に快適な温度まで昇温するために、省エネ性を犠牲にして待機温度を高目に設定していた。
【0006】
また、着座時点において便座を快適な温度まで昇温させつつ、消費電力を低減させるためには、ヒーターの昇温能力を高くし、短時間で便座を加熱すること考えられる。しかし、ヒーターの昇温能力を高くすることは、安全性の問題を生じさせる。さらに、ヒーターの昇温能力が高い場合、小便時など便座の昇温が必要でないにもかかわらず昇温させてしまったときに消費電力の無駄が大きくなってしまうという課題も生じる。
【0007】
従って、ヒーターの昇温能力を低く維持しながら消費電力を低減させるためには、低い待機温度からでも確実に快適な温度まで昇温できるように昇温時間を長くすることが望ましい。このように昇温時間を長くするために、ユーザがトイレルーム内に進入する前に即暖による昇温制御を開始すべく、電灯スイッチを用いた方式が考えられる(特許文献2)。しかし、トイレの電灯スイッチは、通常、トイレの近傍に設置されるものであり、昇温時間をあまり長くすることはできない。
【0008】
また、赤外線センサをトイレルームから遠く離れた位置に設置することによって、昇温時間を長くすることが考えられる。しかし、指向性の強い赤外線センサでユーザの進入の有無を判定しようとすると、トイレルーム外の廊下などに複数の赤外線センサを設置し、かつ、その各赤外線センサと暖房便座装置の暖房制御をリンクさせる必要がある。便座の即暖制御のためだけにこのような手法を用いることは、現実的ではない。
【0009】
また、赤外線センサを設置することによって、トイレルームから使用者までの距離を把握できたとしても、使用者がその位置からトイレルームへ入室するまでの時間は、その位置からトイレルームまでの家の通路形態や、使用者の歩行速度等に依存する。すなわち、センサがユーザを検知してからトイレルームへ入室するまでの時間は単に位置情報から一義的にきまるものではない。このため、単に位置情報に基づいて即暖を開始させる従来型の暖房便座装置では、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できないおそれがあった。
【0010】
このように、従来の即暖型の暖房便座装置では、ユーザの着座時点において便座を快適な温度まで昇温させることと、便座の待機温度を可及的に低下させて消費電力を低減させることとを両立させることは困難であった。
【0011】
また、従来の便座装置においては、トイレルームにユーザが入室する前に、固定的な開始判定値に基づいて便座部の昇温を開始するので、ユーザが待機温度を低く設定した場合、昇温性能が追いつかず、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができないという問題が生じていた。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、設定された待機温度に対し、便座の消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる暖房便座装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る便座装置は、トイレルーム内に設置された便座部と、前記便座部を加熱する加熱部と、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知するセンサ部と、前記加熱部および前記センサ部を制御する制御部とを備え、前記加熱部により前記便座部の昇温を開始するタイミングを、前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知する前記センサ部の測定値が、開始判定値以上になったか否かで決定するとともに、前記センサ部の測定値が開始判定値以上になった時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間をアプローチ時間とし、待機温度を設定することにより前記アプローチ時間が決定され、この決定されたアプローチ時間に基づき開始判定値を決定することを特徴とする。
【0014】
従来の便座装置においては、トイレルームにユーザが入室する前に、固定的な開始判定値に基づいて便座部の昇温を開始するので、ユーザが待機温度を低く設定した場合、昇温性能が追いつかず、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができないという問題が生じる恐れがあるが、本発明では、待機温度を設定することにより決定されるアプローチ時間に基づいて開始判定値を決定するため、便座の消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。さらに、本発明では、待機温度を設定することにより決定されるアプローチ時間に基づいて、昇温を開始するタイミングを定める開始判定値を決定することとしたので、例えばユーザが待機温度を低く設定した場合でも、アプローチ時間が長くなるように開始判定値が変更されるため、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができる。
【0015】
この場合、便座装置は、ユーザが前記待機温度の設定を手動で変更するための待機温度設定変更手段を、さらに備えるようにしてもよい。
【0016】
これにより、手動でユーザが待機温度の設定を変更できるようになり、ユーザの好みに応じた待機温度に変更することができるようになる。このため、例えば、老若男女による温度設定の好みや、季節の変化等に応じて、柔軟に待機温度を設定することができるようになる。このように待機温度を変更しても、待機温度を設定することにより決定されるアプローチ時間に基づいて開始判定値を決定するため、便座の消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。
【0017】
また、センサ部で検知した実際の測定値に基づいて、決定されたアプローチ時間が確保されるタイミングとなる測定値を記憶し、この記憶した測定値を開始判定値とするようにしてもよい。
【0018】
このように、センサ部で検知した実際の測定値に基づいて、開始判定値を決定することにより、開始判定値の設定精度を高めることができる。この結果、より一層の消費電力の低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる。
【0019】
また、前記アプローチ時間は、前記待機温度に対して予め複数設定されており、これら複数のアプローチ時間の中から選択されるようにしてもよい。
【0020】
これにより、より使用環境に適したアプローチ時間を選択できるようになり、一層の消費電力の低減を図ることができる。例えば、トイレルームのドアの向きや廊下の配置などの住宅状況に基づいて、或いは、子供や老人の有無などの家族構成に基づいて、アプローチ時間を複数の中から適宜選択できるようになり、家族構成に合わせた即暖制御を行うことができるようになる。すなわち、使用状況や使用環境に応じて、消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させるように即暖制御を行うことができるようになる。
【0021】
この場合、前記複数のアプローチ時間は、住宅状況に応じて選択されるようにしてもよい。
【0022】
このように、住宅状況に応じてアプローチ時間を選択することにより、アプローチ時間に基づいて定まる開始判定値の設定精度をさらに高めることができる。例えば、暖房便座の設置された環境(ドア、壁、通路形態など)に応じて、トイレルームの外の電波放射強度にバラツキが生じ、アプローチ時間が変わる場合がある。このような場合を想定して、住宅状況に応じてアプローチ時間を選択できるようにすれば、住宅状況に適合して、消費電力を低減させながら、且つユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させるように即暖制御を行うことができるようになる。
【0023】
また、前記開始判定値にはその値の下限である最低開始値があり、アプローチ時間に基づいて定められる開始判定値が前記最低開始値より低くなるような場合には、前記開始判定値は前記最低開始値に設定されているようにしてもよい。
【0024】
すなわち、センサ部の測定精度にも限界があり、開始判定値が所定の値より小さくなると、センサ部の測定信号値を適正に認識できない可能性がある。このため、待機温度とアプローチ時間とに基づいて開始判定値を定めると、センサ部で検知できないような測定信号値の開始判定値になる恐れもある。したがって、開始判定値に下限を設けて設定することにより、実際にセンサ部で測定可能な測定値の範囲で開始判定値を設定することができるようになり、結果として、開始判定値の設定精度を高めることができる。
【0025】
この場合、前記開始判定値の前記最低開始値に応じて定まるアプローチ時間に基づいて、前記待機温度を上昇補正して設定するようにしてもよい。
【0026】
すなわち、開始判定値を最低開始値まで上げてしまうと、設定されたままの待機温度では、着座時に目標昇温温度まで便座を昇温できないこととなるため、開始判定値の修正に合わせて待機温度も上方に修正して、便座の温度が低くて、着座時にユーザが不快に感じることがないようにしている。
【0027】
また、前記加熱部により前記便座部の昇温を開始した後、実際にユーザが入室したかのか、それとも実際には入室しなかったかの入室結果を用いて、前記待機温度を補正するようにしてもよい。
【0028】
このように、加熱部により便座部の昇温を開始した後、実際にユーザが入室したかのか、それとも実際には入室しなかったかの入室結果に基づいて、待機温度を補正することにより、待機温度と開始判定値との間の対応関係をより適切なものにすることができ、より一層の消費電力の低減を図ることができる。例えば、入室すると推定したにも拘わらず、そのユーザが入室しない非入室推定が発生しても、その発生頻度が低いような場合には、待機温度が低い設定であれば、非入室推定をほとんどしない待機温度の高い設定よりも、全体的な消費電力は低く抑えることができる。したがって、非入室推定の頻度と、待機温度の設定との対応関係を適宜補正することで、両者のバランスを考慮した、適切な設定が可能となり、ユーザの使用感の向上をも図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、設定された待機温度に対し、便座の消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができる暖房便座装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105、並びに、センサ部150の検知領域DR1、DR2を示す図。
【図2】第1の実施形態による便座装置110の構成を示すブロック図。
【図3】センサ部150によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図。
【図4】基準テーブルの制御データテーブルの一例を示す図。
【図5】待機温度TEMPstbが26℃の場合と23℃の場合における、トータル時間Ttotalと便座部140の温度との関係のグラフを示す図。
【図6】制御部210の記憶部214に格納されている、第1の実施形態に係る適応テーブルTB20の構成の一例を示す図。
【図7】図2に示した便座装置110で実行される即暖制御処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図8】制御部210の記憶部214に格納されている、第2の実施形態に係る適応テーブルTB40の構成の一例を示す図。
【図9】第2の実施形態に係る便座装置110で実行される適応テーブル切替処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図10】第3の実施形態に係るトイレ装置100、トイレルーム105の構造およびユーザの進入方向を示す概念図。
【図11】制御部210の記憶部214に格納されている、第3の実施形態に係る適応テーブルTB40における一部の構成の一例を示す図。
【図12】第3の実施形態に係る便座装置110で実行される適応テーブル切替処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図13】第4の実施形態に係る便座装置110で実行される非入室推定に基づく適応テーブル補正処理の一例を説明するフローチャートを示す図。
【図14】図13の適応テーブル補正処理により、図6に示した適応テーブルTB20に補正を施した状態の適応テーブルTB20の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0032】
(第1の実施形態)
図1(A)および図1(B)は、本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105、並びに、センサ部150の検知領域DR1、DR2を示す図である。トイレ装置100は、トイレルーム105内に設置されており、便座装置110と、便器120とを備えている。便座装置110は、遠隔操作装置(リモートコントローラ)130と、便座部140と、センサ部150と、制御部210とを備えた暖房便座装置である。便座部140は、加熱部としてのヒーターを内蔵している。便座部140は、ヒーターに電流を供給することによって加熱される。センサ部150は、電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを含む。トイレルーム105は、壁106およびドア107で囲まれた空間であり、ユーザはドア107からトイレルーム105へ入室する。
【0033】
電波センサ160は、例えば、マイクロ波の周波数帯域を利用した電波センサである。マイクロ波センサは、所定の検知領域に向かい電波ビームを放射し、検知領域内に侵入した人体等の対象物を検知する。また、マイクロ波センサは、ドップラ効果(定在波)を利用しているので、対象物の動き(速度)を検知することができる。さらに、マイクロ波は、木材や樹脂、陶器等の比誘電率が比較的小さい物質を透過する。従って、マイクロ波センサは、トイレルーム105の外側にいる人体を検知し、かつ、その人体の移動状態(速度)を検出することができる。
【0034】
マイクロ波とは電波の周波数による分類の一つである。一般的には波長100マイクロメートル〜1メートル、周波数300メガヘルツ〜3テラヘルツの電波(電磁波)を指す。この範囲の電波には、デシメートル波(UHF)、センチメートル波(SHF)、ミリメートル波(EHF)、サブミリ波が含まれる。尚、電波センサ160は、トイレルーム105の外側にいるユーザの人体を検知することができればよく、利用可能な周波数帯域はマイクロ波帯に限定されない。
【0035】
焦電センサ170は、例えば、焦電型赤外線センサであり、ユーザがトイレルーム105に入室したことを検知する。焦電型赤外線センサは、周囲環境の温度と、検知したい物体の温度との差を検知して、その空間に物体が存在するか否かを判断する。尚、本実施例ではトイレルーム105に入室したユーザの人体を検知するために焦電センサ170を便座装置110に設置したが、焦電型赤外線センサに限定されない。
【0036】
着座センサ180は、例えば、反射型赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座部140上にユーザが着座していることを検知する。尚、着座センサ180も、便座部140上にユーザが着座していることを検知することができればよく、反射型赤外線センサに限定されない。
【0037】
電波センサ160および焦電センサ170は、便座装置110および/または便器120や遠隔操作装置130に取り付けてもよく、あるいは、便座装置110および遠隔操作装置130とは別にトイレルーム105内の壁面、天井または床面に取り付けてもよい。
【0038】
第1の検知領域DR1は、電波センサ160が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の外側へ広がっている。第2の検知領域は、焦電センサ170が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の内側に制限されている。
【0039】
図2は、第1の実施形態による便座装置110の構成を示すブロック図である。便座装置110は、遠隔操作装置130と、センサ部150と、便座部140と、洗浄部200と、制御部210とを備えている。
【0040】
遠隔操作装置130は、機能設定部132と、機能操作部134と、表示部136とを備えている。機能設定部132は、便座部140の温度設定、洗浄装置200の水温設定等の各種設定事項をユーザが入力/選択する手段である。機能操作部134は、機能設定部132で設定された設定事項に基づいて便座装置110および洗浄装置200をユーザが操作する手段である。表示部136は、ユーザが機能設定部132または機能操作部134を用いて入力/選択した事項を表示する手段である。機能設定部132および機能操作部134は、例えば、ボタン、切替えスイッチを含み、ユーザは、ボタンを押し、あるいは、切替えスイッチを切替えることによって便座装置110の設定および操作を行う。表示部136は、例えば、液晶表示装置でよい。
【0041】
センサ部150は、上述の通り電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを備えている。電波センサ160は、送信アンテナ162と、発振回路164と、受信アンテナ166と、検波回路168とを備えている。本実施形態では、発振回路164は、所定の周波数の電波(マイクロ波)を生成し、送信アンテナ162からその電波を送信する。受信アンテナ166は、送信アンテナ162から送信された電波の反射波を受信する。検波回路168は、受信アンテナ166において受信された反射波から周波数の差分(検知信号)を抽出し、検知信号を制御部210へ送る。発振回路164に周波数可変回路を備えれば、反射波の位相状態から人体の移動速度だけでなく電波センサ160から人体までの距離を認識できる。また、検波回路168を複数備えれば、複数の検知信号の位相差から電波センサ160に対し人体が接近または離遠しているのかを識別できる。
【0042】
焦電センサ170は、検知領域を設定するレンズと人体から放射された赤外線を受信する受光素子を備え、着座センサ180は、赤外線を発光する発光素子と発光素子から送信された赤外線の反射波を受信する受光素子を備え、ともに受光素子にて受信した結果を制御部210へ送る。
【0043】
便座部140は、加熱部としてのヒーター142と、温度検知部(サーミスタ)144とを備えている。ヒーター142は、制御部210の制御を受けて便座部140を加熱する。温度検知部144は、便座部140の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。
【0044】
洗浄部200は、ヒーター202と、温度検知部(サーミスタ)204と、ノズル駆動部206とを備えている。ヒーター202は、制御部210の制御を受けて、洗浄部200内のタンクに蓄えられた洗浄水を加熱する。温度検知部204は、洗浄水の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。ノズル駆動部206は、ノズルを駆動させ、洗浄水を吐出するように構成されている。
【0045】
制御部210は、演算処理部(CPU)212と、記憶部214と、タイマ216と、カウンタ218とを備え、遠隔操作装置130、センサ部150、便座部140および洗浄部200を制御するように構成されている。
【0046】
図3は、センサ部150によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図である。電波センサ160によって検出された電圧波形がW1、焦電センサ170によって検出された電圧波形がW2、並びに、着座センサ180によって検出された電圧波形がW3で示されている。これらの電圧波形W1〜W3は、センサ部150によって受信された受信波を、制御部210に含まれる周波数帯域フィルタを用いてフィルタリングすることによって得られた所望の周波数帯域の波形である。制御部210は、電圧波形W1〜W3の振幅電圧の変化によって、電波センサ160がユーザの人体を検知したこと(人体検知)、焦電センサ170がユーザの入室を検知したこと(入室検知)、並びに、着座センサ180がユーザの着座を検知したこと(着座検知)を判断することができる。制御部210は、電波の反射波の測定値が閾値を超え、電波センサ160が人体を検知した時点から便座部140の加熱を開始する。
【0047】
ユーザがトイレルーム105に接近し、電波センサ160の第1の検知領域DR1に進入すると、まず、電波センサ160によって検出されるマイクロ波の電圧振幅が大きくなる。このとき、マイクロ波の電圧振幅が所定の閾値±Vth(例えば、上限閾値電圧+Vthおよび/または下限閾値電圧−Vth)を超えると、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。閾値は、ユーザの人体を検知するために用いられるパラメータであり、例えば、ノイズの平均レベルを基準として設けられた上限閾値電圧および下限閾値電圧、あるいは、所定のS/N比により表現され得る。さらに、ユーザが第1の検知領域DR1に進入すると、マイクロ波は、電圧値だけでなく周波数も変化する。従って、電波センサ160は、ドップラ効果を利用し、マイクロ波の送信波と受信波との周波数差を検知することによって人体の移動速度を検知することができる。よって、閾値は、ユーザの移動速度の減速率で表現されてもよく、あるいは、送受信されるマイクロ波の周波数差で表現されてもよい。
【0048】
図3の閾値電圧±Vthは、所定のS/N比(Signal-to-Noise ratio)で決定される。例えば、閾値を決定する所定のS/N比(以下、判定S/N比ともいう)が1.5であるとすると、閾値電圧は、ノイズ(暗雑音)の電圧振幅の1.5倍の振幅を有する電圧の上限および下限となる。また、反射波の信号レベルが閾値を単位(所定)時間に所定回数超えた場合に、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断してもよい。例えば、判定S/N比が1.5であり、かつ、所定回数が5回であるとすると、ノイズの振幅に対して1.5倍以上の振幅を有する反射波が単位時間に5回以上検知された場合に、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。この場合、カウンタ218は、上限閾値および下限閾値の両方または一方を超える反射波のピーク値およびボトム値をカウントする。尚、上記の単位時間や所定回数は、予め記憶部214に格納しておけばよい。
【0049】
電波センサ160による人体検知時点をt0とする。人体検知時点t0は、上限と下限との閾値幅を小さくすることによって(即ち、判定S/N比を小さくすることによって)、早めることができる。即ち、ユーザの人体を早く検出するためには、判定S/N比を小さくすればよい。これは、判定S/N比を小さくすることによって、第1の検知領域DR1を広げることができるからである。判定S/N比を限りなく小さくすれば、第1の検知領域DR1を非常に大きくすることができるので、電波センサ160は、トイレルーム105から遠く離れたユーザであってもその人体を検知することができる。
【0050】
しかし、第1の検知領域DR1を大きく広げれば、電波センサ160は、実際にトイレルーム105に入室しないユーザの人体を検知する頻度が多くなる。従って、閾値は、早い時点で人体を検知することと、非入室推定の頻度の低減とのバランスを考慮して設定される。
【0051】
尚、後述するように、閾値は、予め決定されていてもよく、演算部210によって演算で自動に決定されてもよく、あるいは、ユーザや施工業者によって手動で決定されてもよい。閾値は、決定後、記憶部214に格納される。
【0052】
ユーザは、第1の検知領域DR1に進入後、トイレルーム105のドアを開けて、トイレルーム105内に入る。ユーザが第2の検知領域DR2に進入すると、焦電センサ170は、ユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧(初期電圧値に対する変化量)を超えた場合に、制御部210は、焦電センサ170が人体を検知したものと判断する。焦電センサ170がユーザの入室を検知した時点を入室時点t1とする。
【0053】
本実施形態では、人体検知時点t0から入室時点t1までの時間をアプローチ時間T1と規定する。即ち、アプローチ時間T1は、マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えた時点(t0)からユーザがトイレルーム105に入室する時点(t1)までの時間である。さらに換言すると、アプローチ時間T1は、ユーザがトイレルーム105へ接近して第1の検知領域DR1に進入した時点(t0)から、ユーザが第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)までの時間である。
【0054】
その後、ユーザが便座部140に着座すると、着座センサ180がユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧を超えた場合に、制御部210は、着座センサ180が人体を検知したものと判断すればよい。このように、着座センサ180がユーザの着座を検知した時点を着座時点t2とする。
【0055】
本実施形態では、入室時点t1から着座時点t2までの時間を着座時間T2と規定する。即ち、着座時間T2は、ユーザがトイレルーム105に入室して第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)から、ユーザが便座部140に着座する時点(t2)までの時間である。
【0056】
電波センサ160が人体を検知した時点(t0)から着座センサ180がユーザの着座を検知する時点(t2)までのトータル時間をTtotalと規定する。トータル時間Ttotalを長くすることによって、便座部140の待機温度が低くても、制御部210は、ユーザの着座時t2に便座部140を適温(目標温度)まで昇温させることができる。便座部140の待機温度を低くすることができれば、便座装置110の消費電力を低減させることができる。待機温度は、トイレ装置100が利用されていない待機時における便座部140の温度である。
【0057】
尚、電波センサ160は、人体の移動速度の他に、トイレルーム105のドアの開閉を検出することができる。ドアの材質が比誘電率の比較的小さい木材であったとしても反射有効断面積が人体よりも大きい。従って、人体がドア付近を移動する時とドアが開閉する時の電波センサ160にて受信される反射波(検波後の電圧振幅値)を比較すると、ドアが開閉する時の方が極端に大きくなる。よって、電波センサ160は、人体の移動速度の減速率またはトイレルーム105のドアの開閉を検知することによって、ユーザの入室を検知できる。従って、電波センサ160は、焦電センサ170に代わって入室検知をしてもよい。これにより、焦電センサ170を省略することができる。さらに、電波センサ160は、マイクロ波の周波数(位相)あるいは電圧値の時系列変化によってユーザの着座も検知できる。従って、着座センサ180も省略してもよい。即ち、人体検知、入室検知、および、着座検知は電波センサ160のみにより実行可能である。この場合、焦電センサ170および着座センサ180が不要となるので、コストが低減される。
【0058】
ところで、第1の検知領域は実際にトイレ装置100を設置する環境によって変化する。第1の検知領域DR1が変化すると、人体検知から着座検知までの実際の時間(トータル時間Ttotal)はばらつく。さらに、トータル時間Ttotalは、ユーザの移動速度によっても変化する。このため、トータル時間Ttotalの設定あるいは便座部140の待機温度の設定には或る程度の推測が必要となる。
【0059】
本実施形態による便座装置110は、ユーザが行った待機温度の設定に応じて、アプローチ時間T1を適宜変更し、ユーザが着座した際には、便座を適切な温度まで昇温させることができるようにしている。すなわち、ユーザが待機温度を低く設定した場合には、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を低く設定して、第1の検知領域DR1が広くなるようにして、アプローチ時間T1を長く確保できるようにする。これにより、ユーザが待機温度を低く設定した場合でも、ユーザが着座するまでに便座温度を快適な温度まで上げることができる。
【0060】
一方、ユーザが待機温度を高く設定した場合には、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を高く設定することにより、第1の検知領域DR1が狭くなるようにして、アプローチ時間T1が短くなるようにする。これにより、未入室検知の頻度を可及的に減少させ、無駄な昇温動作による電力消費を抑制できるようにしている。
【0061】
[基準テーブル]
まず、トータル時間Ttotalあるいは便座部140の待機温度の基準テーブルについて説明する。
【0062】
図4は、基準テーブルの制御データテーブルの一例を示す図である。基準テーブルは、トイレ装置100の設置直後に便座装置110の加熱機能を利用することができるように製造メーカーによって出荷前に設定され、記憶部214に予め格納されたテーブルである。例えば、基準テーブルでは、目標温度TEMPtrgが29℃、待機温度TEMPstbが26℃、トータル時間Ttotal内に昇温する温度ΔTEMP(ΔTEMP=TEMPtrg−TEMPstb)が3℃、トータル時間Ttotalが6秒、並びに、判定S/N比が1.2に設定されている。尚、当初、いずれのユーザが使用したとしても、ユーザの着座時に便座部140の温度が目標温度TEMPtrgに達しているように、基準テーブルでは、待機温度TEMPstbは高めに設定されている。
【0063】
図5は、トータル時間Ttotalと便座部140の温度との関係を示すグラフである。便座部140の待機温度をTEMPstb、ユーザが着座したときに快適と感じる目標温度をTEMPtrg、ユーザによって設定される便座部140の設定温度をTEMPsetとする。設定温度TEMPsetは、ユーザが着座している期間に所望する便座部140の温度である。便座部140の温度は、短時間(例えば、6秒)にて目標温度を超えるよう大電力にて加熱された後、設定温度TEMPsetに維持される。一方、目標温度TEMPtrgは、着座時にユーザに不快感を与えないための便座部140の温度であり、便座部140を構成する材質や形状およびその厚みにより異なる。一般に設定温度TEMPsetよりも低い温度でよい。
【0064】
人体検知時点t0まで制御部210は、便座部140の温度を待機温度TEMPstbに維持している。ここでは、この待機温度TEMPstbが26℃であると仮定する。人体検知時点t0において、制御部210はヒーター142によって便座部140の温度を待機温度TEMPstbから加熱し始める。そして、着座時点t2において、便座部140の温度が目標温度TEMPtrgに達していることが必要となる。図5の例では、加熱を開始して6秒後に、目標温度TEMPtrgに到達している。尚、図5に示す便座部140の温度変化T140の傾きは、ヒーター142から便座部140への熱伝達特性およびヒーター142への印加電圧とその通電時間によって決定される。
【0065】
そして、例えば、ユーザが待機温度TEMPstbを26℃から23℃に変更した場合、当然、便座部140の加熱を開始してから目標温度TEMPtrgに到達するまでの時間も長くかかる。図5の例では、待機温度TEMPstbが23℃の場合、加熱を開始してから9秒後に目標温度TEMPtrgに到達していることが分かる。したがって、本実施形態においては、ユーザが設定した待機温度TEMPstbの値に応じて、必要な加熱時間、つまり必要なトータル時間Ttotalが確保できるように、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を変更するのである。すなわち、電波センサ160の測定値に対する閾値(開始判定値)を変更することにより、便座部140の昇温を開始するタイミングを前後にシフトすることができるため、これを利用して、設定された待機温度TEMPstbに応じたアプローチ時間T1を確保し、これにより、適切なトータル時間Ttotalが確保できるようにしている。
【0066】
図6は、このような待機温度TEMPstbに応じたトータル時間Ttotalの変更を実現するための適応テーブルTB20の一例を示す図である。この図6に示すように、適応テーブルTB20には、待機温度TEMPstb毎に、便座部140の加熱昇温を開始するタイミングを決定する電波センサ160の測定値の開始判定値が定められている。例えば、ユーザが設定した待機温度TEMPstbが26℃の場合、加熱を開始する開始判定値は、S/N比=1.4に定められており、これにより、1秒(アプローチ時間T1)+5秒(着座時間T2)=6秒のトータル時間Ttotalを確保することができる。同様に、ユーザが設定した待機温度TEMPstbが23℃の場合、加熱を開始する開始判定値は、S/N比=1.15に定められており、これにより、4秒(アプローチ時間T1)+5秒(着座時間T2)=9秒のトータル時間Ttotalを確保することができる。
【0067】
この図6に示した適応テーブルTB20は、例えば、制御部210の記憶部214に格納されている。この適応テーブルTB20を格納する際には、待機温度TEMPstbと、これに対応する開始判定値のS/N比の値だけを項目として保持させるようにしてもよいし、これに加えて、アプローチ時間T1や、着座時間T2、トータル時間Ttotalをも合わせて項目として保持させるようにしてもよい。また、ユーザは、任意の手法で、待機温度TEMPstbの設定を変更することができる。本実施形態においては、例えば、機能設定部132をユーザが操作することにより、手動で待機温度TEMPstbの設定を変更することができる。
【0068】
図7は、本実施形態に係る制御部210で実行される即暖制御処理の内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。この即暖制御処理は、便座装置110の電源が投入された際に起動される処理であるが、ユーザが待機温度TEMPstbを変更した場合にも、再起動される処理である。この即暖制御処理では、制御部210は、適応テーブルTB20を用いて、次のように便座部140の温度制御を行う。
【0069】
まず、制御部210は、ユーザが設定した待機温度TEMPstbに対応するS/N比の開始判定値を、適応テーブルTB20から取得する(ステップS100)。例えば、ユーザが待機温度TEMPstbを23℃に設定した場合、制御部210は、S/N比=1.15という開始判定値を、適応テーブルTB20から取得する。
【0070】
次に、制御部210は、電波センサ160の測定値を監視し、この測定値のS/N比が開始判定値の1.15以上になったかどうかを判断する(ステップS110)。電波センサ160の測定値が、この開始判定値以上になっていないと判断した場合(ステップS110:NO)には、このステップS110を繰り返し実行して、電波センサ160の測定値を監視を継続する。
【0071】
一方、電波センサ160の測定値のS/N比が1.15以上になったと判断した場合(ステップS110:YES)には、制御部210は、便座部140の昇温を開始する(ステップS120)。そして、制御部210は、焦電センサ170によるユーザのトイレルーム105内への入室が検知されたかどうかを判断する(ステップS130)。この入室が検知されていない場合(ステップS130:NO)には、制御部210は、昇温を開始してから所定時間経過したかどうかを判断する(ステップS140)。この所定時間は、例えば、6秒や10秒といった時間である。
【0072】
昇温を開始して所定時間経過していない場合(ステップS140:NO)には、制御部210は、ステップS130に戻り、トイレルーム105内へのユーザの入室が検知されたかどうかの判断を繰り返す。一方、昇温を開始して所定時間が経過した場合(ステップS140:YES)には、便座部140の昇温を中止して(ステップS150)、上述したステップS110に戻る。このように、制御部210は、所定時間を経過しても、ユーザがトイレルーム105に入室してこないときには、ユーザがトイレルーム105に入室しないと推定する。このように、便座装置110が便座部140の昇温動作を開始したにも拘わらず、ユーザが入室しないと制御部210が判定することを「非入室推定」という。
【0073】
一方、ステップS130において、トイレルーム105内へのユーザの入室を検知した場合(ステップS130:YES)には、制御部210は、設定温度TEMPsetに基づく温度制御を開始する(ステップS160)。ここで、設定温度が、35℃であると仮定すると、便座部140の温度が35℃になるように、温度制御を行う。
【0074】
次に、制御部210は、焦電センサ170が、トイレルーム105からのユーザの退室を検知したかどうかを判断する(ステップS170)。ユーザの退室を検知していない場合(ステップS170:NO)には、設定温度TEMPsetに基づく温度制御を継続する。
【0075】
一方、焦電センサ170が、トイレルーム105からのユーザの退室を検知した場合(ステップS170:YES)には、制御部210は、待機温度TEMPstbに基づく制御を開始して(ステップS180)、上述したステップS110に戻る。
【0076】
以上のように本実施形態に係る便座装置110によれば、ユーザの設定した待機温度TEMPstbに基づいて、アプローチ時間T1を決定し、この決定したアプローチ時間T1に基づいて開始判定値を決めるようにしたので、ユーザの設定した待機温度TEMPstbの値に拘わらず、ユーザの着座時点における便座を適切な温度まで昇温させることができるようになる。
【0077】
すなわち、固定的な開始判定値で便座部140の昇温を開始するだけでは、ユーザが待機温度TEMPstbを低く設定した場合、昇温性能が追いつかず、着座時に快適な温度まで便座温度を上げることができないという問題が生じる恐れがあるが、本実施形態では、待機温度TEMPstbに基づいて、アプローチ時間T1を決定し、この決定したアプローチ時間T1に基づいて電波センサ160の検知結果である開始判定値を決定することとしたので、非入室推定の頻度と、着座時の便座温度との関係のバランスをとることができる。
【0078】
また、ユーザが手動で待機温度TEMPstbの設定を変更できるようにしたので、ユーザの好みや要望に応じた待機温度TEMPstbを設定することができるようになる。このため、例えば、老若男女による温度設定の好みや、季節の変化等に応じて、柔軟に待機温度TEMPstbを設定できるようになる。このように待機温度TEMPstbを変更しても、待機温度TEMPstbを設定することにより決定されるアプローチ時間T1に基づいて開始判定値を決定するため、便座部140における消費電力を低減させながら、ユーザの着座時点における便座部140の温度を快適な温度まで確実に昇温させることができるようになる。
【0079】
なお、本実施形態においては、図6の適応テーブルTB20において、各待機温度TEMPstbに対応する開始判定値を固定的に予め定めておくこととしたが、この開始判定値を実際の測定結果に基づいて動的に変更するようにしてもよい。例えば、設定されている待機温度TEMPstbが23℃である場合、アプローチ時間T1は4秒必要なことがわかる。このため、制御部210は、電波センサ160と焦電センサ170の実際の測定値の波形に基づいて、ユーザの入室時点t1を特定し、この入室時点t1から4秒前の時点における電波センサ160の測定値のS/N比を取得し、このS/N比を開始判定値とするようにしてもよい。このようにして決定された開始判定値であるS/N比は、適応テーブルTB20に格納して保持しておくことも可能である。このようにすることにより、開始判定値のS/N比を高い精度で定めることができる。
【0080】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る適応テーブルTB40の構成の一例を示す図である。この適応テーブルTB40も、制御部210の記憶部214に格納されている。図8の適応テーブルTB40においては、昼間用の開始判定値と、夜用の開始判定値とが別々に設定されている点で、上述した第1の実施形態と異なる。
【0081】
すなわち、昼間用のテーブルにおける、待機温度TEMPstbに対応する、開始判定値とアプローチ時間T1と着座時間T2とトータル時間Ttotalとの関係は、上述した第1実施形態の適応テーブルTB20と同じである。但し、夜用のテーブルにおける、待機温度TEMPstbに対応する、開始判定値とアプローチ時間T1と着座時間T2とトータル時間Ttotalとの関係は、上述した第1実施形態の適応テーブルTB20とは異なっている。
【0082】
夜用のテーブルにおいては、昼間のテーブルよりも開始判定値を小さくして、第1の検知領域DR1を広く設定するようにしている。これは、夜になるとトイレルーム105内の外の人の往来が少なくなり、人がトイレルーム105の近傍に進入する際には、トイレが目的であることが多いと考えられるためである。このため、アプローチ時間T1を長くして昇温時間を十分に確保しても、非入室推定となる可能性は低く抑えられるからである。
【0083】
この図8の例では、例えば、待機温度TEMPstbが26℃の場合、昼間の開始判定値がS/N比=1.4であるのに対し、夜間の開始判定値のS/N比=1.3である。このため、昼間より夜間の方がより早いタイミングで便座部140の昇温が開始され、アプローチ時間T1が長く確保されることとなる。
【0084】
なお、図8の適応テーブルTB40においては、開始判定値のS/N比の下限が1.1に設定されている。これは、電波センサ160の測定精度にも限界があり、開始判定値のS/N比が所定の値より小さくなると、電波センサ160の測定波形を適正に認識できない可能性があるためである。このため、開始判定値のS/N比に下限を設けて設定することにより、実際に電波センサ160で測定可能な測定値の範囲で開始判定値のS/N比を設定することができるようになり、結果として、開始判定値のS/N比の設定精度を高めることができるのである。
【0085】
また、この適応テーブルTB40を記憶部214に格納する際には、昼間用と夜間用のそれぞれの待機温度TEMPstbと、これに対応する開始判定値のS/N比の値だけを項目として保持させるようにしてもよいし、これに加えて、アプローチ時間T1や、着座時間T2、トータル時間Ttotalをも合わせて項目として保持させるようにしてもよい。
【0086】
図9は、本実施形態に係る制御部210で実行される適応テーブル切替処理の内容の一例を説明するフローチャートを示す図である。この適応テーブル切替処理は、所定の周期(例えば10分に1回の割合)で定常的に実行される処理である。また、便座装置の電源が投入された際や、ユーザが待機温度TEMPstbを変更した際に実行される図7の即暖制御処理におけるステップS100が実行された際にも、ステップS100の処理として実行される処理でもある。この適応テーブル切替処理では、制御部210は、適応テーブルTB40を用いて、次のように開始判定値の切替を行う。
【0087】
まず、制御部210は、現在の時間を取得し、現在の時間が午前8時から午後10時の間であるかどうかを判断する(ステップS200)。もし、現在の時間が午前8時から午後10時の間にある場合(ステップS200:YES)には、制御部210は、設定されている待機温度TEMPstbに対応した昼間用の開始判定値を取得する(ステップS210)。例えば、待機温度TEMPstbが26℃である場合には、開始判定値としてS/N比=1.4を取得する。
【0088】
一方、もし、現在の時間が午前8時から午後10時の間にない場合(ステップS200:NO)には、制御部210は、設定されている待機温度TEMPstbに対応した夜間用の開始判定値を取得する。例えば、待機温度TEMPstbが26℃である場合には、開始判定値としてS/N比=1.3を取得する。
【0089】
これらステップS210又はステップS220で取得した開始判定値のS/N比に基づいて、制御部210は、図7の即暖制御処理を実行する。このため、昼間と夜間とでは、同じ待機温度TEMPstbであっても、異なる開始判定値に基づいて、即暖制御を行うことができる。すなわち、異なるアプローチ時間T1、つまり、トータル時間Ttotalに基づいて、便座部140の昇温を行うことができる。
【0090】
このように、本実施形態に係る便座装置110によれば、一日のうちの時間帯に応じて、異なるアプローチ時間T1を設定できるようになり、使用環境に適切に対応して、一層の消費電力の低減を図ることができる。
【0091】
なお、本実施形態においては、1つの待機温度TEMPstbに対して複数のアプローチ時間T1(つまり、開始判定値のS/N比)を設定して、一日のうちの時間帯に応じて、異なるアプローチ時間T1を選択できるようにしたが、子供や老人の有無、また、その人数等により、複数のアプローチ時間T1の中から1つのアプローチ時間T1を選択するようにしてもよい。
【0092】
(第3の実施形態)
図10は、本実施形態に係るトイレ装置100が設けられたトイレルーム105の構造と、このトイレルーム105に対するユーザの進入方向を示す概念図である。
【0093】
一般に、トイレルーム105のドアは、トイレルーム105の正面(トイレ装置110の前方の面)または側面(トイレ装置110の側方の面)のいずれかに設けられている。ドア107がトイレルーム105の正面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の前方(正面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境情報(I))と、トイレルーム105の側方(正面に対してほぼ平行方向)から接近する場合(環境情報(II))とに分けることができる。なお、図1(B)に示すように、第1の検知領域DR1がトイレ装置110に関して左右対称に広がっている限りにおいて、閾値は、ユーザがトイレルーム105の右側方から進入する場合と左側方から進入する場合とにおいて同じでよい。
【0094】
ドア107がトイレルーム105の側面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレブース105の前方から接近する場合(環境情報(III))と、トイレルーム105の側方(側面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境情報(IV))と、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))と、に分けることができる。なお、第1の検知領域DR1は、トイレ装置110に関して左右対称に広がっているので、トイレルーム105の前方から接近する場合(環境情報(III))と、トイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))とにおいて、開始判定値のS/N比は相違させることが好ましい。図10において、破線の矢印は、ドアの開閉方向を示している。
【0095】
図11は、本実施形態に係る適応テーブルTB60の一部の構成の一例を示す図である。この適応テーブルTB60も、制御部210の記憶部214に格納されている。図11の適応テーブルTB60においては、複数のアプローチ時間T1の中から、住宅状況に応じて、1つのアプローチ時間T1を選択する。
【0096】
すなわち、住宅状況が環境情報(IV)である場合における、待機温度TEMPstbと開始判定値のS/N比との対応関係を定めるテーブルと、住宅状況が環境情報(V)である場合における、待機温度TEMPstbと判定値のS/N比との対応関係を定めるテーブルとが、図11の適応テーブルTB60に設けられている。
【0097】
例えば、設定されている待機温度TEMPstbが26℃である場合、住宅状況が環境情報(IV)のときには、開始判定値はS/N比=1.25であるが、住宅状況が環境情報(V)のときには、開始判定値はS/N比=1.1である。これは、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))の方が、トイレルーム105の側方(側面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境情報(IV))よりも、電波センサ160で検知しにくいという特性があるためである。すなわち、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境情報(V))の感度を上げるために、環境情報(IV)の開始判定値のS/N比よりも、環境情報(V)の開始判定値のS/N比を小さくしているのである。
【0098】
なお、図11の適応テーブルTB60においても、電波センサ160の測定精度に限界があることから、開始判定値のS/N比の下限が1.1に設定されている。また、図11においては、ユーザが設定できる待機温度TEMPstbにも下限を設けている。例えば、住宅状況が環境情報(IV)である場合、待機温度TEMPstbの下限値は23℃であり、ユーザは待機温度TEMPstbを22℃に設定できない仕組みになっている。もし、ユーザが待機温度TEMPstbを22℃に設定しようとすると、制御部210は、ユーザが設定した温度を強制的に23℃に上昇補正して設定する。同様に、住宅状況が環境情報(V)である場合、待機温度TEMPstbの下限値は26℃であり、ユーザは待機温度TEMPstbを26℃未満には設定できない仕組みになっている。もし、ユーザが待機温度TEMPstbを26℃未満に設定しようとすると、制御部210は、ユーザが設定した温度を強制的に26℃に上昇補正して設定する。このように、待機温度TEMPstbを強制的に上方に修正することにより、昇温が間に合わずに、着座時に便座の温度が低くて、ユーザが不快に感じることがないようにしている。
【0099】
また、図11においては、環境情報(IV)のテーブルと、環境情報(V)のテーブルとを備える適応テーブルTB60を例示しているが、制御部210の記憶部214に実際に格納される適応テーブルTB60には、他の環境情報(I)〜(iii)のテーブルも備えられている。さらに、この適応テーブルTB60を記憶部214に格納する際には、待機温度TEMPstbと、これに対応する開始判定値のS/N比の値だけを項目として保持させるようにしてもよいし、これに加えて、アプローチ時間T1や、着座時間T2、トータル時間Ttotalをも合わせて項目として保持させるようにしてもよい。
【0100】
図12は、本実施形態に係る制御部210で実行される適応テーブル切替処理の内容を説明するフローチャートの一例を示す図である。この適応テーブル切替処理は、図7の即暖制御処理におけるステップS100として実行される処理である。すなわち、図12に示すように、ステップS100の処理として、制御部210は、住宅状況の設定がなされているかどうかを判断する(ステップS300)。すなわち、ユーザは、この便座装置110の設置状況が環境情報(I)〜(V)のいずれに該当するのかを、遠隔操作装置130の機能設定部132を自ら操作して予め設定入力する。
【0101】
住宅状況の設定がなされていないと判断した場合(ステップS300:NO)には、制御部210は、図4に示した基準テーブルから、開始判定値のS/N比を取得する(ステップS310)。この図4の例では、制御部210は、開始判定値としてS/N比=1.2を取得する。すなわち、この基準テーブルを用いる場合、開始判定値のS/N比は、待機温度TEMPstbの値に拘わらず所定の値に固定される。
【0102】
一方、ステップS300で住宅状況の設定がなされていると判断した場合(ステップS300:YES)には、図11に示した適応テーブルTB60から、開始判定値のS/N比を取得する(ステップS320)。具体的には、設定されている住宅状況に対応したテーブルを用いて、待機温度TEMPstbの値に対応する開始判定値のS/N比を取得する。例えば、ユーザが設定した住宅状況が環境情報(IV)であり、且つ、ユーザが設定した待機温度TEMPstbが26℃である場合には、制御部210は、開始判定値としてS/N比=1.25を取得する。
【0103】
これらステップS310又はステップS320を図7のステップS100として実行した後、制御部210は、図7のステップS110に移行して、即暖制御処理を続行する。
【0104】
以上のように、本実施形態に係る便座装置110によれば、同じ待機温度TEMPstbでも、異なる複数の開始判定値を用意し、ユーザが設定した住宅状況に基づいて、これら複数の開始判定値の中から1つを選択して使用することとしたので、便座装置110が設置された住宅状況に応じて、より適正なアプローチ時間T1を設定することができる。
【0105】
(第4の実施形態)
図13は、本実施形態に係る便座装置110で実行される非入室推定に基づく適応テーブル補正処理の一例を説明するフローチャートを示す図である。この適応テーブル補正処理は、便座装置110の制御部210において、所定の周期で実行される処理である。例えば、1時間に1回の割合で定期的に実行されるようにしてもよいし、或いは、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったと判断した回数をカウントし、このカウントが10回になる都度実行されるようにしてもよい。
【0106】
本実施形態においては、この非入室推定に基づく適応テーブル補正処理を行うことにより、10回中5回以上、非入室推定があるような場合は、待機温度TEMPstbと開始判定値のS/N比との関係が精度良く対応づけられていないと判断して、補正を行うこととしている。
【0107】
より具体的には、図13に示すように、まず、制御部210は、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったとカウントした回数10回のうち、非入室推定となった回数が5回以上あるかどうかを判断する(ステップS400)。本実施形態においては、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になった直近の10回だけを抽出して、そのうち、何回、非入室推定となったかを判断基準としている。つまり、本実施形態に係る制御部210は、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になった回数をカウントしているとともに、そのうちの非入室推定になった回数もカウントしている。
【0108】
電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったとカウントした回数10回のうち、非入室推定となった回数が5回以上あると判断した場合(ステップS400:YES)には、適応テーブルの待機温度の補正を行う(ステップS410)。例えば、第1の実施形態で説明したように、図6の適応テーブルTB20を用いて開始判定値のS/N比を決定している場合、この適応テーブルTB20の待機温度の補正を行う。すなわち、非入室推定の頻度が多く、精度が悪いという判断の下、適応テーブルTB20により設定されるアプローチ時間T1が短くなるように、補正を行う。
【0109】
図14は、図6の適応テーブルTB20に、この補正を施した後の適応テーブルTB20の一例を示す図である。これら図6と図14とを見比べると分かるように、非入室推定の頻度を減らすべく、待機温度TEMPstbの温度を1℃ずつ下げている。例えば、開始判定値のS/N比=1.4に対応する待機温度TEMPstbは、26℃から25℃に変更されている。逆の見方をすると、待機温度TEMPstbが26℃の場合、開始判定値のS/N比は、1.4から1.5に変更されている。この変更により、便座部140の昇温を開始するタイミングを遅くすることができ、その結果、非入室推定の頻度を減少させることができる。なお、第2の実施形態に係る適応テーブルTB40や第3の実施形態に係る適応テーブルTB60についても、これと同様の補正を行うことができる。
【0110】
一方、上述したステップS400において、電波センサ160の測定値が開始判定値以上になったとカウントした回数10回のうち、非入室推定となった回数が5回以上ではないと判断した場合(ステップS400:NO)には、適応テーブルの待機温度の補正は行わない。
【0111】
以上のように、本実施形態に係る便座装置110によれば、便座部140の昇温を開始したにも拘わらず非入室推定となった回数をカウントし、非入室推定となった回数に基づいて、適応テーブルの待機温度を補正することとしたので、待機温度と開始判定値との間の対応関係をより適切なものにすることができ、より一層の消費電力の低減を図ることができる。例えば、ある開始判定値に基づいて、ユーザが入室すると推定して便座部140の昇温を開始したにも拘わらず、そのユーザが入室しない非入室推定が所定の頻度で発生するような場合には、開始判定値を大きくし、便座部140の昇温を開始するタイミングを遅らせて、アプローチ時間T1を短くすることができるようになる。この結果、当初は、適応テーブルにおけるアプローチ時間を長めに設定しておくことも可能になり、非入室推定の頻度と、待機温度の設定との対応関係を適宜補正することで、両者のバランスを考慮した、適切な設定が可能となり、ユーザの使用感の向上をも図ることができる。
【0112】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず種々に変形可能である。例えば、上述した各実施形態においては、便座部140の昇温を開始するタイミングを決定する閾値である開始判定値として、電波センサ160の測定値のS/N比を用いる例を説明したが、この開始判定値は、電波センサ160の測定値S/N比に限定されるものではない。例えば、電波センサ160の測定値の減速度を用いて、開始判定値を定めるようにしてもよいし、或いは、電波センサ160の測定値のS/N比と減速度とを組み合わせて用いて、開始判定値を定めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0113】
100・・・トイレ装置
105・・・トイレルーム
110・・・便座装置
120・・・便器
130・・・遠隔操作装置(リモコン)
140・・・便座部
142・・・ヒーター
144・・・温度検知部
150・・・センサ部
160・・・電波センサ
170・・・焦電センサ
180・・・着座センサ
200・・・洗浄部
210・・・制御部
212・・・演算処理部
214・・・記憶部
216・・・タイマ
218・・・カウンタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレルーム内に設置された便座部と、
前記便座部を加熱する加熱部と、
電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知するセンサ部と、
前記加熱部および前記センサ部を制御する制御部とを備え、
前記加熱部により前記便座部の昇温を開始するタイミングを、前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知する前記センサ部の測定値が、開始判定値以上になったか否かで決定するとともに、
前記センサ部の測定値が開始判定値以上になった時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間をアプローチ時間とし、待機温度を設定することにより前記アプローチ時間が決定され、この決定されたアプローチ時間に基づき開始判定値を決定する、
ことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
ユーザが前記待機温度の設定を手動で変更するための待機温度設定変更手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
センサ部で検知した実際の測定値に基づいて、決定されたアプローチ時間が確保されるタイミングとなる測定値を記憶し、この記憶した測定値を開始判定値とする、ことを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項4】
前記アプローチ時間は、前記待機温度に対して予め複数設定されており、これら複数のアプローチ時間の中から選択される、ことを特徴とする請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記複数のアプローチ時間は、住宅状況に応じて選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項6】
前記開始判定値にはその値の下限である最低開始値があり、アプローチ時間に基づいて定められる開始判定値が前記最低開始値より低くなるような場合には、前記開始判定値は前記最低開始値に設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項7】
前記開始判定値の前記最低開始値に応じて定まるアプローチ時間に基づいて、前記待機温度を上昇補正して設定する、ことを特徴とする請求項6に記載の便座装置。
【請求項8】
前記加熱部により前記便座部の昇温を開始した後、実際にユーザが入室したかのか、それとも実際には入室しなかったかの入室結果を用いて、前記待機温度を補正する、ことを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項1】
トイレルーム内に設置された便座部と、
前記便座部を加熱する加熱部と、
電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知するセンサ部と、
前記加熱部および前記センサ部を制御する制御部とを備え、
前記加熱部により前記便座部の昇温を開始するタイミングを、前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知する前記センサ部の測定値が、開始判定値以上になったか否かで決定するとともに、
前記センサ部の測定値が開始判定値以上になった時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間をアプローチ時間とし、待機温度を設定することにより前記アプローチ時間が決定され、この決定されたアプローチ時間に基づき開始判定値を決定する、
ことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
ユーザが前記待機温度の設定を手動で変更するための待機温度設定変更手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
センサ部で検知した実際の測定値に基づいて、決定されたアプローチ時間が確保されるタイミングとなる測定値を記憶し、この記憶した測定値を開始判定値とする、ことを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項4】
前記アプローチ時間は、前記待機温度に対して予め複数設定されており、これら複数のアプローチ時間の中から選択される、ことを特徴とする請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記複数のアプローチ時間は、住宅状況に応じて選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項6】
前記開始判定値にはその値の下限である最低開始値があり、アプローチ時間に基づいて定められる開始判定値が前記最低開始値より低くなるような場合には、前記開始判定値は前記最低開始値に設定されている、ことを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項7】
前記開始判定値の前記最低開始値に応じて定まるアプローチ時間に基づいて、前記待機温度を上昇補正して設定する、ことを特徴とする請求項6に記載の便座装置。
【請求項8】
前記加熱部により前記便座部の昇温を開始した後、実際にユーザが入室したかのか、それとも実際には入室しなかったかの入室結果を用いて、前記待機温度を補正する、ことを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−212191(P2011−212191A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82598(P2010−82598)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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