便座装置
【課題】ユーザがトイレルーム内を快適に過ごせるようにした便座装置を低消費電力なものとして提供する
【解決手段】本発明の便座装置は、トイレルーム内に設置された便座と、前記便座を加熱するヒーターと、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知し、ユーザが前記トイレルームに入室したことを検知するセンサ部と、前記ヒーターおよび前記センサ部を制御する制御部とを備えた便座装置であって、前記制御部は、少なくとも前記センサ部がユーザの人体を検知してから該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知するまでのアプローチ時間に基づいてトイレルーム内の衛生装置を制御することを特徴とする。
【解決手段】本発明の便座装置は、トイレルーム内に設置された便座と、前記便座を加熱するヒーターと、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知し、ユーザが前記トイレルームに入室したことを検知するセンサ部と、前記ヒーターおよび前記センサ部を制御する制御部とを備えた便座装置であって、前記制御部は、少なくとも前記センサ部がユーザの人体を検知してから該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知するまでのアプローチ時間に基づいてトイレルーム内の衛生装置を制御することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に係わり、例えば、便座を加熱する暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座装置は、便座内に内蔵された発熱線に常時電圧を印加することにより熱を発生させ、その熱によって、設定された所望の温度に便座を常に暖めておくものである。それにより、暖房便座装置は、ユーザが便座に着座する際に便座の冷たさによって不快を感じることを防止し、ユーザは快適に便座に着座することができる。
【0003】
このような暖房便座装置では、機器を使用しない時の消費電力は極力低下させる一方で、便器使用時には快適な温度の便座に着座できるように便座温度を制御することが望まれている。そこで従来、便器を使用しない時の消費電力を抑えるために、便座の待機温度を低く保ちつつ、焦電型赤外線センサを用いてトイレルームへ入室する人体を検知し、人体を検知した場合には、待機温度から目標とする着座温度まで便座の温度を昇温する即暖型の暖房便座装置が知られている(特許文献1)。このような即暖型の暖房便座装置は、ユーザが便器を使用するときに便座を急速加熱し、便器を使用しないときには待機温度を下げておくことができるので消費電力の低減に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165684号公報
【特許文献2】特許第4068648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の即暖型の暖房便座装置は、トイレルームに入室した後の人体を検知して待機温度から目標の着座温度まで昇温させる。通常、入室から着座までの時間は長くても6秒程度で、ユーザが軽装の場合はトイレルームに入室してから便座に着座するまでの時間は4秒程度である。したがって、待機温度から着座温度まで昇温させる時間には限りがあり、従来の即暖型暖房便座では、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できない場合があった。そこで、ユーザが着座する時点において便座を確実に快適な温度まで昇温するために、省エネ性を犠牲にして待機温度を高めに設定し、短い時間でも確実に着座温度まで昇温できるようにした暖房便座装置も知られていた。
【0006】
従って、ヒーターの加熱電力を低く維持しながら消費電力を低減させるためには、低い待機温度からでも確実に快適な温度まで昇温できるように昇温時間を長くすることが望ましい。このように昇温時間を長くするために、ユーザがトイレルーム内に進入する前に即暖による昇温制御を開始すべく、電灯スイッチを用いた方式が考えられる(特許文献2)。しかし、トイレの電灯スイッチは、通常、トイレの近傍に設置されるものであるため、昇温時間を長くとることはあまり期待できない。
【0007】
また、赤外線センサをトイレルームから遠く離れた位置に設置することによって、昇温時間を長くすることが考えられる。しかし、指向性の強い赤外線センサでユーザの進入の有無を判定しようとすると、トイレルーム外の廊下などに複数の赤外線センサを設置し、かつ、その各赤外線センサと暖房便座装置の暖房制御とをリンクさせる必要がある。便座の即暖制御のためだけにこのような手法を用いることは、現実的ではない。
【0008】
また、赤外線センサを設置することによって、トイレルームからユーザまでの距離を把握できたとしても、ユーザがその位置からトイレルームへ入室するまでの時間は、その位置からトイレルームまでの家の通路形態や、ユーザの歩行速度等に依存する。すなわち、センサがユーザを検知してからトイレルームへ入室するまでの時間は単純に位置情報から一義的に決まるものではない。このため、単に位置情報に基づいて即暖を開始させる構成では、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できないおそれがある。
【0009】
このように従来ではユーザの着座時までに便座を快適な温度にするなどユーザがトイレルーム内を快適に過ごすには多くの消費電力または大がかりな仕組みが必要となっていた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ユーザがトイレルーム内を快適に過ごせるようにした便座装置を低消費電力なものとして提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様としての便座装置は、トイレルーム内に設置された便座と、前記便座を加熱するヒーターと、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知し、ユーザが前記トイレルームに入室したことを検知するセンサ部と、前記ヒーターおよび前記センサ部を制御する制御部とを備えた便座装置であって、前記制御部は、少なくとも前記センサ部がユーザの人体を検知してから該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知するまでのアプローチ時間に基づいてトイレルーム内の衛生装置を制御することを特徴とする。
【0012】
電波を用いたセンサ部を便座装置に備え付けることで、複数の赤外線センサをトイレルーム外の廊下に配置するといった大がかりな仕組みを用いることなく、トイレルームから離れた位置にいるユーザの人体を検知することができる。トイレルームから離れた位置にいるユーザの人体を検知することで、ユーザの入室検知から着座までの時間のみならずトイレルーム外のユーザの人体検知から入室検知までのアプローチ時間も衛生装置の制御に当てることができ、それだけ衛生装置の制御のための時間を長くとることが可能となる。たとえば衛生装置が便座装置の場合は、ヒーターの昇温時間を長くとることができ、これによりヒーターの加熱電力を低くしつつも、ユーザの着座までに便座を所望の目標温度まで昇温させることが可能となる。また衛生装置が電気温水器(たとえば洗浄部)の場合は、ヒーターの加熱電力を低くしつつも、ユーザによる電気温水器の使用時にユーザにとって快適な温度の温水を出すことが可能である。衛生装置が空調装置の場合は、ヒーターの加熱電力を低くしつユーザの入室時にトイレルーム内の温度を快適な状態にすることが可能である。このようにヒーターの加熱電力を低くすることで、ユーザがトイレルームに入室しなかった場合の消費電力も可及的に小さく抑えつつ、ユーザがトイレルーム内で快適に過ごすことが可能になる。
【0013】
本発明の第2態様としての便座装置は、前記第1態様に係る便座装置において、前記ヒーターは、前記アプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする。アプローチ時間に応じて加熱電力を調整することで、加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時の便座の温度を所望の目標温度まで昇温することが可能となる。
【0014】
本発明の第3態様としての便座装置は、前記第2態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記便座の目標温度と前記便座の待機温度との差に応じて前記ヒーターの加熱電力を制御することを特徴とする。これにより、加熱電力をできるだけ低くしつつも、ユーザの着座時までに便座の温度を待機温度から目標温度まで昇温することができる。
【0015】
本発明の第4態様としての便座装置は、前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの時間を実測し、実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする。これにより便座装置の実際の設置環境に応じたアプローチ時間を決定することができる。その結果、加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時までに便座を所望の目標温度まで昇温することができる。
【0016】
本発明の第5態様としての便座装置は、前記第4態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記電波の反射波の測定値が所定の閾値を超えた時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間を計測することによって前記実測時間を取得し、前記ヒーターは、前記電波の反射波の測定値が前記所定の閾値を超えた時点から前記便座の加熱を開始することを特徴とする。このように、便座装置は、電波の反射波の測定値が所定の閾値を超えた時点からアプローチ時間の計測を開始する。閾値によってトイレルームの外側の検知範囲が変わるので、閾値を調整することで、アプローチ時間を制御することが可能となる。これにより、便座装置は、実際の設置環境に拘わらず、加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時までに便座を所望の目標温度まで昇温することが可能となる。
【0017】
本発明の第6態様としての便座装置は、前記第4または第5態様に係る便座装置において、前記アプローチ時間を記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたアプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする。アプローチ時間を記憶部に格納しておき、記憶部内のアプローチ時間を用いることで、過去の実測結果を反映したアプローチ時間を利用できる。
【0018】
本発明の第7態様としての便座装置は、前記第6態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記センサ部がユーザの人体を検知してから前記ユーザの入室を検知までの時間を実測し、実測した時間が前記記憶部に記憶されたアプローチ時間より小さいときは、トイレルーム入室前よりも入室後のヒーターの加熱電力を高くすることを特徴とする。これにより、実際にユーザの人体が検知されてからトイレルームの入室までに要した時間が、記憶部に記憶されていたアプローチ時間に比べて短かった場合でも、ユーザの着座時までに便座を所望の目標温度まで昇温することが可能となる。
【0019】
本発明の第8態様としての便座装置は、前記第6態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記実測時間を複数回取得し、複数の前記実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする。これにより、突発的または例外的な状況のみに基づいてアプローチ時間が決定されることを防止できる。
【0020】
本発明の第9態様としての便座装置は、前記第8態様に係る便座装置において、前記制御部は、複数の前記実測時間のうち時間の短い所定数の実測時間を平均した値を、前記アプローチ時間として決定することを特徴とする。これにより、移動速度の速いユーザに適合するようにアプローチ時間を決定できるため、ほとんどのユーザにおいて着座時までに便座を目標温度以上に昇温させることができる。
【0021】
本発明の第10態様としての便座装置は、前記第5態様に係る便座装置において、前記便座が設置される環境に対応する閾値を格納する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部において前記便座が実際に設置される環境に応じた閾値を前記所定の閾値として用いることを特徴とする。便座装置の設置環境に応じた閾値を所定の閾値として用いることにより、前記第5態様で得られる効果を、より確実なものとすることができる。
【0022】
本発明の第11態様としての便座装置は、前記第5または10態様に係る便座装置において、前記センサ部がユーザの人体を検知してから所定時間以内に該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知しなかった非入室推定の回数をカウントするカウンタをさらに備え、前記制御部は、前記非入室推定の回数に基づいて前記所定の閾値を変更することを特徴とする。非入室推定の頻度が多い場合、無駄な消費電力が大きくなる。従って、非入室推定の頻度が多い場合には、所定の閾値を変更して電波センサの検知範囲を狭く(アプローチ時間を短く)することによって非入室推定の頻度を低減させることができる。検知範囲が狭いと、アプローチ時間が短くなるので、加熱電力を上げる必要が生じる。しかし、加熱電力の上昇により消費電力が増大しても、非入室推定の頻度の低減による消費電力の低下によって、全体として消費電力が低下する限りにおいて、検知範囲を狭く(アプローチ時間を短く)するように所定の閾値を変更することは、消費電力の低減に繋がる。
【0023】
本発明の第12態様としての便座装置は、前記第6〜第9態様のいずれかに係る便座装置において、前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの更新用実測時間を測定し、前記記憶部に記憶された前記アプローチ時間を前記更新用実測時間に基づいて更新することを特徴とする。これにより、便座装置の設置環境が変化した場合も、前記第6〜第9の態様と同様の効果を得ることができる。
【0024】
本発明の第13態様としての便座装置は、前記第1〜第3態様のいずれかに係る便座装置において、前記便座装置が設置される環境に対応したアプローチ時間を格納する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が実際に設置される環境に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする。これにより、前記第1〜第3態様と同様の効果を、便座装置の設置環境に拘わらず、確実に得ることができる。
【0025】
本発明の第14態様としての便座装置は、前記第13態様に係る便座装置において、前記環境は、ユーザが前記トイレルームへ接近するときの進行方向、または、前記トイレルームの構造を含むことを特徴とする。これによりトイレルームの構造およびトイレルーム周辺の通路構造に拘わらず、前記第13態様と同様の効果を得ることができる。
【0026】
本発明の第15態様としての便座装置は、前記第13または14態様に係る便座装置において、前記環境は、ユーザの移動速度、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯、前記トイレルームにおけるドアの位置、前記トイレルームにおけるドアの開閉状態、前記トイレルームに通じる通路の延伸方向、あるいは、前記トイレルームの壁の材質またはドアの材質のいずれかを含むことを特徴とする。これによりユーザの生活リズムおよびトイレルームの詳細構造等にも拘わらず、前記第13または第14態様と同様の効果を得ることができる。
【0027】
本発明の第16態様としての便座装置は、前記第1〜第3態様に係る便座装置において、 時計機能を有するタイマと、複数の時期に対応する複数のアプローチ時間を格納する記憶部とをさらに備え、前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が使用される時期に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする。これにより、前記第1〜第3態様と同様の効果を、便座装置の使用時期に拘わらず、確実に得ることができる。
【0028】
本発明の第17態様としての便座装置は、前記第2または3態様に係る便座装置において、前記アプローチ時間が長いほど前記ヒーターの加熱電力を低くすることを特徴とする。これにより上述の非入室推定が生じた場合の消費電力をより低減することが可能となるとともに、便座装置のより安全な使用が達成される。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、ユーザがトイレルーム内を快適に過ごせるようにした便座装置を低消費電力なものとして提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置、トイレルーム、並びに、センサ部の検知領域を示す図。
【図2】第1の実施形態による便座装置の構成を示すブロック図。
【図3】センサ部によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図。
【図4】基準テーブルの一例を示す図。
【図5】便座の昇温過程を時間軸に沿って示すグラフ。
【図6】基準テーブルの作成に用いられる標準的なトイレルームの概念図。
【図7】即暖制御の基本的な処理の流れを示すフロー図。
【図8】適応テーブルに加熱電力を設定するために用いられる制御データテーブルの一例を示す図。
【図9】適応テーブルを自動作成の手順を示すフロー図。
【図10】適応テーブルの一例を示す図。
【図11】適応テーブルの更新の手順を示すフロー図。
【図12】複数の適応テーブルを設定する動作を示すフロー図。
【図13】本発明に係る第2の実施形態に従ったトイレルームの構造およびユーザの進入方向と、便座装置の設置環境(I)〜(V)と閾値との対応関係を示す閾値選択テーブルを示す図。
【図14】本発明に係る第3の実施形態に従った便座装置の設置環境(I)〜(V)と、閾値と、各種時間(アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotal)と、加熱電力との対応を示すアプローチ時間選択テーブル。
【図15】第3の実施形態に従った適応テーブルの設定手順を示すフロー図。
【図16】本発明に係る第4の実施形態に従った適応テーブルの更新の手順を示すフロー図。
【図17】第4の実施形態において適応テーブルの更新に用いられる閾値変更テーブルを示す図。
【図18】第5の実施形態に係る即暖フローを説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1(A)および図1(B)は、本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105、並びに、センサ部150の検知領域DR1、DR2を示す図である。トイレ装置100は、トイレルーム105内に設置されており、衛生装置の一例として便座装置110と、便器120とを備えている。便座装置110は、遠隔操作装置(リモートコントローラ)130と、便座140と、センサ部150と、制御部210とを備えた暖房便座装置である。便座140は、加熱部としてのヒーターを内蔵している。便座140は、ヒーターに電流を供給することによって加熱される。センサ部150は、電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを含む。トイレルーム105は、壁106およびドア107で囲まれた空間であり、ユーザはドア107からトイレルーム105へ入室する。
【0033】
電波センサ160は、例えば、マイクロ波の周波数帯域を利用したマイクロ波センサである。マイクロ波センサは、所定の検知領域に向かい電波ビームを放射し、検知領域内に侵入した人体等の対象物を検知する。また、マイクロ波センサは、ドップラ効果(定在波)を利用しているので、対象物の動き(速度)を検知することができる。さらに、マイクロ波は、木材や樹脂、陶器等の比誘電率が比較的小さい物質を透過する。従って、マイクロ波センサは、トイレルーム105の外側にいる人体を検知し、かつ、その人体の移動状態(速度)を検出することができる。
【0034】
マイクロ波とは電波の周波数による分類の一つである。一般的には波長100マイクロメートル〜1メートル、周波数300メガヘルツ〜3テラヘルツの電波(電磁波)を指す。この範囲の電波には、デシメートル波(UHF)、センチメートル波(SHF)、ミリメートル波(EHF)、サブミリ波が含まれる。尚、電波センサ160は、トイレルーム105の外側にいるユーザの人体を検知することができればよく、利用可能な周波数帯域はマイクロ波帯に限定されない。
【0035】
焦電センサ170は、例えば、焦電型赤外線センサであり、ユーザがトイレルーム105に入室したことを検知する。焦電型赤外線センサは、周囲環境の温度と、検知したい物体の温度との差を検知して、その空間に物体が存在するか否かを判断する。尚、本実施形態ではトイレルーム105に入室したユーザの人体を検知するために焦電センサ170を便座装置110に設置したが、焦電型赤外線センサに限定されない。
【0036】
着座センサ180は、例えば、反射型赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座140上にユーザが着座していることを検知する。尚、着座センサ180も、便座140上にユーザが着座していることを検知することができればよく、反射型赤外線センサに限定されない。
【0037】
電波センサ160および焦電センサ170は、便器120や遠隔操作装置130に取り付けてもよく、あるいは、トイレルーム105内の壁面、天井または床面に取り付けてもよい。
【0038】
第1の検知領域DR1は、電波センサ160が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の外側へ広がっている。第2の検知領域は、焦電センサ170が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の内側に制限されている。
【0039】
図2は、第1の実施形態による便座装置110の構成を示すブロック図である。便座装置110は、遠隔操作装置130と、センサ部150と、便座140と、洗浄部200と、制御部210とを備えている。
【0040】
遠隔操作装置130は、機能設定部132と、機能操作部134と、表示部136とを備えている。機能設定部132は、便座140の温度設定、洗浄部200の水温設定等の各種設定事項をユーザが入力/選択する手段である。機能操作部134は、機能設定部132で設定された設定事項に基づいて便座装置110および洗浄部200をユーザが操作する手段である。表示部136は、ユーザが機能設定部132または機能操作部134を用いて入力/選択した事項を表示する手段である。機能設定部132および機能操作部134は、例えば、ボタン、切替えスイッチを含み、ユーザは、ボタンを押し、あるいは、切替えスイッチを切替えることによって便座装置110の設定および操作を行う。表示部136は、例えば、液晶表示装置である。
【0041】
センサ部150は、上述の通り電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを備えている。電波センサ160は、送信アンテナ162と、発振回路164と、受信アンテナ166と、検波回路168とを備えている。本実施形態では、発振回路164は、所定の周波数の電波(マイクロ波)を生成し、送信アンテナ162からその電波を送信する。受信アンテナ166は、送信アンテナ162から送信された電波の反射波を受信する。検波回路168は、受信アンテナ166において受信された反射波から周波数の差分(検知信号)を抽出し、検知信号を制御部210へ送る。発振回路164に周波数可変回路を備えれば、反射波の位相状態から人体の移動速度だけでなく電波センサ160から人体までの距離を認識できる。また、検波回路168を複数備えれば、複数の検知信号の位相差から電波センサ160に対し人体が接近または離遠しているのかを識別できる。
【0042】
焦電センサ170は、検知領域を設定するレンズと人体から放射された赤外線を受信する受光素子を備え、着座センサ180は、赤外線を発光する発光素子と発光素子から送信された赤外線の反射波を受信する受光素子を備え、ともに受光素子にて受信した結果を制御部210へ送る。
【0043】
便座140は、加熱部としてのヒーター142と、温度検知部(サーミスタ)144と、便蓋146と、便蓋開閉センサ148を備えている。ヒーター142は、制御部210の制御を受けて便座140を加熱すなわち昇温する。温度検知部144は、便座140の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。便蓋開閉センサ148は便蓋146の開閉状態を検知する。
【0044】
ここでヒーター142の加熱電力は調整可能に構成される。ヒーター142の加熱電力は、単位時間当たりの消費電力量(例えば、ワット時(Wh))で表わされる。ヒーター142の加熱電力は、便座190の昇温速度に影響し、便座190の昇温速度は、単位時間当たりの上昇温度(例えば、℃/sec)で表わされる。ヒーター142としては、たとえば位相制御により電力を調整可能な加熱源を用いることができる。あるいは、ヒーター142は、それぞれ同一または異なる一定の出力電力を有する複数の加熱源を備えたものであってもよい。この場合、動作させる加熱源を組み合わせることで所望の加熱電力を得ることができる。
【0045】
洗浄部200は、ヒーター202と、温度検知部(サーミスタ)204と、ノズル駆動部206とを備えている。ヒーター202は、制御部210の制御を受けて、洗浄部200内のタンクに蓄えられた洗浄水を加熱する。温度検知部204は、洗浄水の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。ノズル駆動部206は、ノズルを駆動させ、洗浄水を吐出するように構成されている。
【0046】
制御部210は、演算処理部(CPU)212と、記憶部214と、タイマ216と、カウンタ218とを備え、遠隔操作装置130、センサ部150、便座140および洗浄部200を制御するように構成されている。
【0047】
図3は、センサ部150によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図である。電波センサ160によって検出された電圧波形がW1、焦電センサ170によって検出された電圧波形がW2、並びに、着座センサ180によって検出された電圧波形がW3で示されている。これらの電圧波形W1〜W3は、センサ部150によって受信された受信波を、制御部210に含まれる周波数帯域フィルタを用いてフィルタリングすることによって得られた所望の周波数帯域の波形である。制御部210は、電圧波形W1〜W3の振幅電圧の変化によって、電波センサ160がユーザの人体を検知したこと(人体検知)、焦電センサ170がユーザの入室を検知したこと(入室検知)、並びに、着座センサ180がユーザの着座を検知したこと(着座検知)を判断することができる。
【0048】
ユーザがトイレルーム105に接近し、電波センサ160の第1の検知領域DR1に進入すると、まず、電波センサ160によって検出されるマイクロ波の電圧振幅が大きくなる。このとき、マイクロ波の電圧振幅が所定の閾値±Vth(例えば、上限閾値電圧+Vthおよび/または下限閾値電圧−Vth)を超えると、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。閾値は、ユーザの人体を検知するために用いられるパラメータであり、例えば、ノイズの平均レベルを基準として設けられた上限閾値電圧および下限閾値電圧、あるいは、所定のS/N比により表現され得る。また、ユーザが第1の検知領域DR1に進入すると、マイクロ波は、電圧値だけでなく周波数も変化する。従って、電波センサ160は、ドップラ効果を利用し、マイクロ波の送信波と受信波との周波数差を検知することによって人体の移動速度を検知することができる。このため、閾値は、ユーザの移動速度の減速率で表現されてもよく、あるいは、送受信されるマイクロ波の周波数差で表現されてもよい。
【0049】
図3の閾値電圧±Vthは、所定のS/N比(Signal-to-Noise ratio)で決定される。例えば、閾値を決定する所定のS/N比(以下、判定S/N比ともいう)が1.5であるとすると、閾値電圧は、ノイズ(暗雑音)の電圧振幅の1.5倍の振幅を有する電圧の上限および下限となる。
【0050】
制御部210は、反射波の信号レベルが閾値を単位(所定)時間に所定回数超えた場合に、電波センサ160が人体を検知したものと判断してもよい。例えば、判定S/N比が1.5であり、かつ、所定回数が5回であるとすると、ノイズの振幅に対して1.5倍以上の振幅を有する反射波が単位時間に5回以上検知された場合に、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。この場合、カウンタ218は、上限閾値および下限閾値の両方または一方を超える反射波のピーク値およびボトム値をカウントする。尚、上記の単位時間や所定回数は、予め記憶部214に格納しておけばよい。
【0051】
電波センサ160による人体検知時点をt0とする。人体検知時点t0は、上限と下限との閾値幅を小さくすることによって(即ち、判定S/N比を小さくすることによって)、早めることができる。即ち、ユーザの人体を早く検出するためには、判定S/N比を小さくすればよい。これは、判定S/N比を小さくすることによって、第1の検知領域DR1を広げることができるからである。判定S/N比を限りなく小さくすれば、第1の検知領域DR1を非常に大きくすることができるので、電波センサ160は、トイレルーム105から遠く離れたユーザであってもその人体を検知することができる。
【0052】
ただし、第1の検知領域DR1を大きく広げれば、電波センサ160は、実際にトイレルーム105に入室しないユーザの人体を検知する頻度が多くなる。従って、閾値は、早い時点で人体を検知することと、非入室推定(人体を検知したにも拘わらずユーザがトイレルーム105に入室しないこと)の頻度の低減とのバランスを考慮して設定される。
【0053】
尚、後述するように、閾値は、予め決定されていても、演算処理部212によって演算で自動に決定されてもよく、あるいは、ユーザや施工業者によって手動で決定されてもよい。閾値は、決定後、記憶部214に格納される。
【0054】
ユーザは、第1の検知領域DR1に進入後、トイレルーム105のドアを開けて、トイレルーム105内に入る。ユーザが第2の検知領域DR2に進入すると、焦電センサ170は、ユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧(初期電圧値に対する変化量)を超えた場合に、制御部210は、焦電センサ170が人体を検知したものと判断する。焦電センサ170がユーザの入室を検知した時点を入室時点t1とする。
【0055】
本実施形態では、人体検知時点t0から入室時点t1までの時間をアプローチ時間T1と定義する。即ち、アプローチ時間T1は、マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えた時点(t0)からユーザがトイレルーム105に入室する時点(t1)までの時間である。さらに換言すると、アプローチ時間T1は、ユーザがトイレルーム105へ接近して第1の検知領域DR1に進入した時点(t0)から、ユーザが第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)までの時間である。
【0056】
その後、ユーザが便座140に着座すると、着座センサ180がユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧を超えた場合に、制御部210は、着座センサ180が人体を検知したものと判断すればよい。このように、着座センサ180がユーザの着座を検知した時点を着座時点t2とする。
【0057】
本実施形態では、入室時点t1から着座時点t2までの時間を着座時間T2と定義する。即ち、着座時間T2は、ユーザがトイレルーム105に入室して第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)から、ユーザが便座140に着座する時点(t2)までの時間である。
【0058】
また電波センサ160が人体を検知した時点(t0)から着座センサ180がユーザの着座を検知する時点(t2)までのトータル時間をTtotalと定義する。トータル時間Ttotalを長くすることによって、便座140のヒーター142の加熱電力が低くても、制御部210は、ユーザの着座時t2までに便座140を適温(目標温度)まで昇温させることができる。また便座140の加熱電力を低く抑えることで、トイレルーム外のユーザを検知しつつも所定時間内にユーザが入室しなかった非入室推定の場合の消費電力も低く抑えることができる。さらに、ヒーター142の加熱電力を低く抑えることで、暖房便座装置の安全な使用も図ることができる。
【0059】
尚、電波センサ160は、人体の移動速度の他に、トイレルーム105のドアの開閉も検出することができる。ドアの材質が比誘電率の比較的小さい木材であったとしても反射有効断面積が人体よりも大きい。従って、人体がドア付近を移動する時とドアが開閉する時の電波センサ160にて受信される反射波(検波後の電圧振幅値)を比較すると、ドアが開閉する時の方が極端に大きくなる。よって、電波センサ160は、人体の移動速度の減速率またはトイレルーム105のドアの開閉を検知することによって、ユーザの入室を検知できる。従って、焦電センサ170を省略して、電波センサ160によって、入室検知をしてもよい。さらに、電波センサ160は、マイクロ波の周波数(位相)あるいは電圧値の時系列変化によってユーザの着座も検知できる。従って、着座センサ180を省略して、電波センサ160によってユーザの着座検知を行ってもよい。このように、人体検知、入室検知、および、着座検知は電波センサ160のみにより実行することも可能である。この場合、焦電センサ170および着座センサ180が不要となるので、コストが低減される。
【0060】
ところで、第1の検知領域は実際にトイレ装置100を設置する環境によって変化する。第1の検知領域DR1が変化すると、人体検知から着座検知までの実際の時間(トータル時間Ttotal)も変化する。さらに、トータル時間Ttotalは、ユーザの移動速度によっても変化する。このため、トータル時間Ttotalの設定には或る程度の推測が必要となる。本実施形態による便座装置110は、実測値に基づいてトータル時間Ttotalを決定し、トータル時間Ttotalに応じてヒーター142の加熱電力を制御する。これにより、便座装置110は、ヒーター142の加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時までに便座を適切な温度まで昇温させる。このようにして、暖房便座装置の消費電力の低減および暖房便座装置の安全な使用を図ることができる。
【0061】
[基準テーブル]
図4は、基準テーブルの一例を示す図である。基準テーブルは、トイレ装置100の設置直後から便座装置110の即暖機能を利用することができるように、製造メーカによって出荷前に設定され記憶部214に予め格納されている。例えば、基準テーブルでは、目標温度TEMPtrgが29℃、待機温度(トイレ装置100が利用されていない待機時における便座140の温度)TEMPstbが26℃、トータル時間Ttotal内に昇温すべき温度ΔTEMP(ΔTEMP=TEMPtrg−TEMPstb)が3℃、トータル時間Ttotalが6秒、判定S/N比(閾値)が1.2、加熱電力が200Wに設定されている。尚、当初、どのようなユーザが使用したとしても、ユーザの着座時までに便座140を目標温度TEMPtrgまで昇温できるように、基準テーブルでは、加熱電力は高めに設定されている。
【0062】
上述の通り、電波センサ160が人体を検知してから着座センサ180がユーザの着座を検知するまでの実測時間(トータル時間Ttotalの実測値)は、トイレ装置100が実際に設置されている環境によって変化する。環境とは、たとえばトイレルーム105自体の構造、トイレルーム105の周辺の構造、ユーザ自身の特徴、トイレ装置100の使用状況等である。より具体的には、トイレルーム105のドアの位置、ユーザがトイレルームへ接近するときの進行方向、ユーザの移動速度、トイレルーム105の構造、トイレルームに通じる通路(廊下)の延伸方向、トイレルームにおけるドアの開閉状態、トイレルームの壁の材質またはドアの材質、ユーザの年齢(老若男女)、ユーザの着衣の多さ(季節)、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯等である。
【0063】
実際にユーザが第1の検知領域DR1に進入してから入室するまでの実測時間(アプローチ時間T1の実測値)は、例えば、トイレルーム105のドアの位置、ユーザがトイレルームへ接近するときの進行方向、ユーザの移動速度、トイレルーム105の構造、トイレルームに通じる通路(廊下)の延伸方向、トイレルームにおけるドアの有無、トイレルームの壁の材質またはドアの材質等によって変化する。実際にユーザが入室してから便座140に着座するまでの実測時間(着座時間T2の実測値)は、例えば、ユーザの年齢(老若男女)、ユーザの着衣の多さ(季節)等によって変化する。
【0064】
このような事情から、図4に示す基準テーブルは、必ずしもトイレ装置100が設置された環境に適合しているとは限らないため、この基準テーブルを、トイレ装置100の設置後にその環境に適合するように更新して適合テーブルを生成し適合テーブルに基づき即暖制御を行うことが好ましい。あるいは、基準テーブルを更新するのではなく、使用環境に適合するように別途新たに適合テーブルを生成するようにしてもよい。これらの方法は後述する。
【0065】
ここで基準テーブルの設定は、様々なユーザがトイレ装置100を利用した場合であっても、着座時点t2において便座140を確実に目標温度TEMPtrgまで昇温するために、基準テーブルの待機温度TEMPstbおよび加熱電力の設定は統計的に決定されることが好ましい。例えば、図6のような標準的なトイレルームを用意し、複数のユーザにトイレ装置100を使用してもらう。このとき、便座装置110は、人体検知時点t0から着座時点t2までの時間を実測する。この実測値のうち最小値を基準テーブルのトータル時間Ttotalとし、該トータル時間Ttotalに基づいて基準テーブルの待機温度TEMPstbおよび加熱電力を設定する。人体検知時点t0から着座時点t2までの実測時間のうち最小値をトータル時間Ttotalとして設定することで、どのようなユーザがトイレ装置100を利用しても、制御部210は、着座時点t2において便座140を確実に目標温度TEMPtrgまで昇温させることができる。
【0066】
代替的に、トータル時間Ttotalの実測値のヒストグラムから最も頻度の多い測定値をトータル時間Ttotalとして設定してもよい。ユーザがトイレルーム105へ駆け込んだ場合のように、人体検知時点t0から着座時点t2までの実測値が非常に短時間である場合がある。頻度の多い時間をトータル時間Ttotalとして設定することによって、このような例外的な状況を排除して、基準テーブルの待機温度TEMPstbを設定することができる。
【0067】
図5(A)は、トータル時間Ttotalと便座140の温度との関係を示すグラフである。待機温度TEMPstbは上述したように便器を使用していないときの便座140の温度、目標温度TEMPtrgはユーザが着座したときにユーザに不快感を与えないための便座190の温度、設定温度TEMPsetは、ユーザが所望する便座140の温度である。一般に目標温度TEMPtrgは、設定温度TEMPsetよりも低い温度である。便座140は、トータル時間Ttotal時間(本例では6秒)にて目標温度TEMPtrgに達するように、基準テーブルまたは後述の適合テーブルに設定された加熱電力(例えば300W)で加熱された後、設定温度TEMPsetまで加熱され、設定温度TEMPsetに維持される。
【0068】
人体検知時点t0まで制御部210は、便座140の温度を待機温度TEMPstbに維持している。人体検知時点t0において、制御部210はヒーター142によって便座140の温度を待機温度TEMPstbから加熱し始める。そして、着座時点t2において、便座140の温度が目標温度TEMPtrgに達していることが望まれる。図5(A)に示す便座140の温度変化T140aは、ヒーター142の電力、ヒーター142から便座140への熱伝達特性およびヒーター142への印加電圧とその通電時間に依存する。本例では温度変化T140aの傾きは一定であり、ヒーター142の電力は一定である。
【0069】
なお、図5(A)に示すように人体検知時点がt0からt0’にずれてトータル時間Ttotalの実測値が短くなった場合、t0の場合よりも便座140の加熱開始が遅くなるので、ユーザの着座時までに便座140の温度を目標温度TEMPtrgまで昇温するためには、矢印のように加熱電力を高くする必要がある。
【0070】
図5(A)の例では、基準テーブルまたは適応テーブルに設定された一定の加熱電力で便座140を加熱する例が示されるが、加熱の方法はこれに限定されない。
【0071】
たとえば目標温度TEMPtrgに達した以降は、当該テーブルで設定された加熱電力と異なる電力で加熱を行っても良い。たとえば目標温度に達した以降の電力を事前に指定してき、目標温度に達した以降はこの指定した電力で加熱を行っても良い。すなわちこの場合、当該テーブルで設定された値は目標温度TEMPtagに達するまでの加熱電力を意味する。上記指定の電力はたとえばテーブルに設定された加熱電力より小さくても大きくても良い。上記指定の電力が大きければユーザの所望する設定温度に速く達することができ、一方、小さければ安全性に優れた即暖を実現できる。
【0072】
また目標温度TEMPtrgに達するまでの加熱電力も常に一定でなく、時間に応じて変化してもよい。たとえば図5(B)の温度変化T140bに示すように、加熱開始から目標温度TEMPsetに達するまでの電力を時間に応じて2段階もしくはそれより大きい段階に分けてもよい。この場合、平均電力がテーブルで設定された加熱電力に一致または略一致するようにする。
【0073】
以降の説明では簡単のため加熱電力は常に一定であるとするが、本発明は上記のようにこれに限定されるものではない。
【0074】
図7は、便座装置110による即暖制御の基本的な動作の流れを示すフロー図である。即暖制御は基準テーブル(図4参照)または後述する適合テーブル(図10参照)に基づき行われる。
【0075】
まず、記憶部214に基準テーブルまたは適合テーブルが格納されているか否かを確認し、適合テーブルが格納されていれば適合テーブルを、格納されていなければ基準テーブルを読み出す(S10)。
【0076】
便座装置110は読み出したテーブルに基づき待機制御を行う(S11)。待機制御においては、制御部210は、便座140の温度を待機温度TEMPstbに維持する。
【0077】
ユーザから即暖機能オフの入力があった場合は(S12のYES)、本フローを終了する。
【0078】
即暖機能オフの入力がない場合は(S12のNO)は、マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたか否かを検査し(S13)、超えていない場合は(S13のSO)、ステップS11の制御に戻る。すなわち電波センサ160が人体を検知するまで、待機制御が行われる。
【0079】
ユーザがトイレルーム105に接近したことによりマイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えた場合(S13のYES)、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断して、便座装置110は便座140の昇温動作を開始し、タイマ216は計時を開始する(S14)。
【0080】
タイマ216による計時開始後、第1の制限時間以内に焦電センサ170がユーザの人体を検知しない場合は(S15のNO)、ユーザがトイレルーム105へ入室しないと制御部210は推定する。すなわち人体検知時点t0の後、焦電センサ170がユーザの人体を検知することなくタイマ216の時間が第1の制限時間を超えた場合、制御部210は、ユーザがトイレルーム105に入室しないと推定する。以下、便座装置110が昇温動作を開始した後に、ユーザが入室しないと制御部210が判定することを“非入室推定”という。
【0081】
制御部210が非入室推定を判断した場合(S15のNO)、制御部210は、便座140の昇温動作を停止し、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S16)。この後、ステップS11の待機制御に戻る。第1の制限時間は、記憶部214に予め格納されている。
【0082】
一方、焦電センサ170がユーザの入室を検知した(S15のYES)後、第2の制限時間以内に着座センサ180がユーザの着座を検知しない場合(たとえば男性小便時のような場合)(S17のNO)、ユーザがトイレ装置100を利用しないものと制御部210は推定する。すなわち人体入室検知時点t1の後、着座センサ180がユーザの着座を検知することなくタイマ216の時間が第2の制限時間を超えた場合、制御部210はユーザがトイレ装置100を利用しないものと推定する。以下、便宜的に、この推定を“非使用推定”という。
【0083】
制御部210が非使用推定を判断した場合(S17のNO)、昇温動作を停止し、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S16)。この後、便座装置110は、ステップS11の待機制御に戻る。第2の制御時間は、記憶部214に予め格納されている。
【0084】
ユーザの入室後、着座センサ180がユーザの着座を検知した場合(S17のYES)、タイマ215の計時を終了しタイマ216の時間をリセットし(S18)、その後、目標温度に達したか否かを確認する(S19)。目標温度に達するまで待機し(S19のNO)、目標温度に達したら(S19のYES)、保温制御を実行する(S20)。保温制御では、便座が設定温度になるまで加熱を継続し、設定温度に達したら、便座が設定温度に維持されるように制御する。
【0085】
保温制御中に着座センサ180がユーザの存在(使用)を検出している間は(S21のYES)は保温制御を継続し、ユーザの非使用を検出したら(S21のNO)、ステップS11の待機制御に戻る。なお、ステップS19において、目標温度に達する前に、着座センサ180がユーザの不在を検出したら、昇温動作を停止して、ステップS11の待機制御に戻ってもよい。
【0086】
[適応テーブルの自動設定]
図4に示す基準テーブルは、上述の通り、トイレ装置100が設置される環境に適合していない場合がある。このような場合、トイレ装置100が設置される環境に適合した適応テーブルを作成し、適応テーブルに基づき図7に示した即暖を行うことが望ましい。
【0087】
図8は、適応テーブルの待機温度TEMPstbを自動設定するために用いられる制御データテーブルを示す。本実施形態では、制御部210は、トイレ装置100の設置後に実際に測定されたトータル時間Ttotalの実測値と、ユーザ選択の待機温度TEMPstbに基づいて、トイレ装置100の設置環境に適合した加熱電力を制御データテーブルから選択する。この際、目標温度TEMPtrgおよび判定S/N比は、基準テーブルのそれらと同じ値に固定されているものとする。例えば、TEMPtrgは29℃、S/N比は1.2に固定されている。基準テーブルが無い場合には、目標温度TEMPtrgおよび判定S/N比は、ユーザまたは施工業者が遠隔操作装置130の機能設定部132を操作して設定すればよい。なお、待機温度TEMPstbもユーザ選択ではなく基準テーブルのそれと同じ値に固定されてもよい。
【0088】
例えば、トータル時間Ttotalの実測値が5.5秒で、待機温度TEMPstbが26℃であった場合、制御部210は、制御データテーブルに基づいて加熱電力を300Wに決定する。尚、図8に示すように、トータル時間Ttotalが長いほど、便座140の昇温時間を長くとれるので、加熱電力を低くできる。
【0089】
図8の例では、トータル時間Ttotalと待機温度TEMPstbに応じて加熱電力を決定するが、代替的に、着座時間T2を所定時間に固定し、アプローチ時間T1の実測値(実測時間)と待機温度TEMPstbに応じて加熱電力を決定してもよい。即ち、制御部210は、ユーザの人体検知から入室検知までの実測時間をアプローチ時間T1として決定し、該アプローチ時間T1と待機温度TEMPstbに基づいて加熱電力を設定する。この場合、図8の制御データテーブルに代えて、アプローチ時間T1と待機温度TEMPstbと加熱電力との対応関係を示す制御データテーブルを用いればよい。
【0090】
図8の例では目標温度を固定にした場合を示したが、目標温度をユーザ選択可能にしてもよい。この場合は図8と同様のテーブルを目標温度毎に用意し、ユーザが選択した目標温度に対応するテーブルを用いればよい。
【0091】
図9は、適応テーブルの自動作成の手順の流れを示すフロー図である。適応テーブルの自動作成は、図7に示した即暖フローの処理と並行して行われる。
【0092】
まず、適応テーブルが記憶部214に格納されているか否か、すなわち既に作成済みであるか否かを確認する(S100)。適応テーブルが既に作成されているときは(S100のYES)、本処理を終了する。
【0093】
適応テーブルが記憶部214に格納されていない場合(S100のNO)、以降の自動作成ルーチン(ステップS130〜S240)に進む。
【0094】
制御部210は、図7の即暖フローのステップS13でマイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたと判定されるまで、すなわち電波センサ160が人体を検知するまで待機する(S130のNO)。マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたと判定されると(S130のYES)と、タイマ216による計時を開始する(S140)。このときタイマ216の計時は図7の即暖フローのステップS14と共通化してもよいし、当該ステップS14とは別途異なるタイマを用意し、このタイマを用いて行ってもよい(すなわち本フローと図7の即暖フローでタイマの計時開始、終了、リセットのタイミングは同一にできる。以下同様)。
【0095】
次に、図7の即暖フローのステップS15で、焦電センサ170によりユーザの人体が検知された場合(S150のYES)、すなわち電波センサ160が人体検知時点t0で人体を検知した後、第1の制限時間以内に焦電センサ170がユーザの人体を検知した場合、制御部210は、その時点におけるタイマ216の時刻に基づいてアプローチ時間T1を計算して記憶部214に記憶する(S160)。アプローチ時間T1は、電波センサ160の人体検知時点t0から焦電センサ170の入室検知時点t1までの時間(t1−t0)として計算される。即ち、この段階で、アプローチ時間T1の実測値が得られる。
【0096】
一方、図7の即暖フローにおいて電波センサ160により人体検知時点t0で人体が検知された後、第1の制限時間以内に焦電センサ170によりユーザの人体が検知されなかった場合は(S150のNO)、すなわち制御部210が非入室推定を判断した場合は、制御部210は、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S155)。この後、ステップS130の待機状態に戻る。ここで第1の制限時間は、図7の即暖フローで説明したものと同一である。第1の制限時間は、たとえば基準テーブルのアプローチ時間T1よりも長く設定される。
【0097】
次に、図7の即暖フローのステップS17において、着座センサ180によりユーザの着座が検知された場合(S170のYES)、すなわち、焦電センサ170によりユーザの入室が検知された後、第2の制限時間以内に着座センサ180によりユーザの着座が検知された場合、制御部210は、その時点におけるタイマ216の時刻に基づいて着座時間T2を計算して記憶部214に記憶する(S180)。着座時間T2は、焦電センサ170の入室検知時点t1から着座センサ180の着座検知時点t2までの時間(t2−t1)となる。また制御部210は、タイマ216の計時を終了し、タイマ216をリセットする。
【0098】
一方、図7の即暖フローにおいて焦電センサ170によりユーザの入室が検知された後、第2の制限時間以内に着座センサ180によりユーザの着座が検知されなかった場合(たとえば男性小便時のような場合)(S170のNO)、すなわち制御部210が非使用推定を判断した場合は、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S155)。この後、便座装置110は、ステップS130の待機状態に戻る。ここで第2の制限時間は、図7の即暖フローで説明したものと同一である。第2の制限時間は、たとえば基準テーブルのトータル時間Ttotalよりも充分に長い時間に設定されることが好ましい。また第2の制限時間は第1の制限時間よりも長いことが好ましい。なお、上記非使用推定がなされた場合、ステップS160において得られたアプローチ時間T1の実測値は、記憶部214から消去する。ただし、このアプローチ時間T1の実測値を消去せずに、後述のステップS200においてアプローチ時間T1を算出する際に利用することも可能である。
【0099】
ステップS180において着座時間T2の計算および記憶、タイマ216の計時終了およびリセットが完了したら、その後、カウンタ218が記憶回数を1だけ増加させる(S190)。記憶回数は、ステップS180において着座時間T2を記憶部214に記憶した回数に相当する。
【0100】
記憶回数が所定回数(例えば、10回)に達していない場合(S195のNO)、便座装置110は、待機状態(S130)に戻り、さらに、アプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値の測定を継続する。このように、便座装置110は、ステップS130〜S195を繰り返し実行する。
【0101】
記憶回数が所定回数に達した場合(S195のYES)、制御部210は、記憶部214に格納されたアプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値に基づき、適応テーブルの設定するべきアプローチ時間T1および着座時間T2を決定する(S200)。
【0102】
例えば、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値を単純に平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。あるいは、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値のうち最大値および最小値を除いた実測値を平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。さらに、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値のうち、値の小さい方から5個の実測値を平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。適応テーブルの着座時間T2についても、アプローチ時間T1と同様に演算することによって得られる。
【0103】
次のステップS210では演算処理部212は、適応テーブルのアプローチ時間T1および着座時間T2を足し算することにより適応テーブルのトータル時間Ttotalを計算する。トータル時間Ttotalの別の計算方法として。ステップS180で着座時間が計算された際にトータル時間の実測値(T1+T2)も併せて計算および記憶しておき、ステップS200において、アプローチ時間T1および着座時間T2と同様の計算により、適応テーブルのトータル時間Ttotalを計算してもよい。
【0104】
ステップS200およびS210において算出されたアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalは、適応テーブルの一部として記憶部214に記憶される(S220)。
【0105】
尚、適応テーブルに用いられるアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの算出方法は、上記演算に限定されない。
【0106】
次に、制御部210は、図8に示す制御データテーブルを参照し、適応テーブルのトータル時間Ttotalを用いて加熱電力を決定する(S230)。例えば、適応テーブルのトータル時間Ttotalが8.5秒、待機温度TEMPstbが26℃であった場合、制御部210は、加熱電力を150Wに決定する。本ステップS230で決定した加熱電力も、適応テーブルの一部として記憶部214に記憶される。
【0107】
この後、さらに基準テーブルの目標温度TEMPtrg、待機温度TEMPstb、昇温温度ΔTEMP、判定S/N比(閾値)と同一の値を適応テーブルに書き込み、これにより、トイレ装置110の設置された環境に適合した適応テーブルが作成される(S240)。作成された適応テーブルの一例が図10に示される。
【0108】
適応テーブルの作成後、便座装置110は、図7の即暖フローのステップS10でその適応テーブルを新たに読み込み、以降は、基準テーブルに代えて、適応テーブルに基づき即暖制御を実行する。
【0109】
このように、図9のフローでは、適応テーブルのアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalをそれらの実測値から決定し、決定したトータル時間Ttotalと、待機温度TEMPstbに基づいて制御テータテーブルから加熱電力を決定する。これにより、トイレ装置100の設置環境に適合した適応テーブルを作成することができる。
【0110】
また、図9のフローに従うことで、適応テーブルを自動で作成できるため、ユーザおよび施工業者が、設置環境に適合した適応テーブルの設定を自ら行う手間は生じない。
【0111】
また、図9のフローでは、ステップS200およびS210において、アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの計算の際、複数の実測値のうち最大値および最小値を除くようにしたため、ユーザがトイレルーム105へ駆け込んで入室した場合のような例外的な状況のみに基づいて適応テーブルが作成されることは阻止され、トイレ装置100の設置環境に対する適応テーブルの適合度を高くできる。
【0112】
さらに、図9のステップS200およびS210において、アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの計算の際、複数の実測値のうち値の小さい複数の実測値を用いるようにしたことにより、移動速度の速いユーザに適合するように適応テーブルを作成することができる。よって、制御部210は、ほとんどのユーザの場合に着座時までに便座140の温度を確実に目標温度TEMPtrgに昇温させることができる。
【0113】
例えば、移動速度の遅い(実際のアプローチ時間T1の長い)高齢者に適合するように適応テーブルを作成したとすると、高齢者よりも移動速度の速い若年者がトイレ装置100を使用した場合に、便座140の温度が目標温度TEMPtrgまで達しないことが生じ得る。このような状況を回避するために、本実施形態では、値の小さい実測値を用いることで、移動速度の速い(実際のアプローチ時間T1の短い)若年者に適合するように適合テーブルを作成する。これにより、若年者および高齢者のいずれがトイレ装置100を使用しても、便座140の温度は、ユーザの着座時までに、目標温度TEMPtrgまで確実に達し得る。
【0114】
[適応テーブルの更新]
適応テーブルは、既に説明したように、トイレ装置100の設置環境に適合するように作成されている。従って、一旦作成された適応テーブルは、そのまま継続的に即暖制御に用いられてもよい。しかし、トイレ装置100の設置された環境の変化によって、適応テーブルが実際の環境に適合しなくなる場合がある。例えば、ユーザの年齢の変化、季節の変化(ユーザの着衣の変化)、ユーザの在宅時間帯の変化、ユーザの睡眠時間帯の変化、リフォームによるトイレルーム105の構造の変化等により、人体検知時点t0から着座時点t2までの実際の時間が変化する場合がある。このような場合、ユーザの着座時t2に便座140の温度が目標温度TEMPtrgまで達しない可能性がある。そこで、このような場合は、新たな環境に適合するように適応テーブルを更新することが考えられる。
【0115】
図11は、適応テーブルの更新の手順を示すフロー図である。
【0116】
まず、図9の自動作成フローのステップS130〜S180を実行する。すなわち、アプローチ時間T1の実測値(更新用実測時間)および着座時間T2の実測値を新たに測定し、アプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値を、記憶部214に格納する。ここで、新たに測定されたアプローチ時間および着座時間の各実測値を、それぞれ更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nとする。
【0117】
次に、制御部210は、更新用アプローチ時間T1Nを適応テーブルのアプローチ時間T1と比較し、更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にあるか否かを判定する(S300)。これは、ユーザがトイレルーム105へ駆け込んだ場合にように例外的な状況で得られた時間T1Nを排除するためである。
【0118】
更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にある場合(S300のYES)、制御部210は、更新用アプローチ時間T1Nと適応テーブルのアプローチ時間T1との平均値を、新しいアプローチ時間T1として適応テーブルへ登録する(S310)。
【0119】
尚、新しいアプローチ時間T1の計算方法はこれに限定されず、他の演算により得られた値でもよい。例えば、アプローチ時間T1を得た際の実測回数に基づいてアプローチ時間T1と更新用アプローチ時間T1Nとに重み付けをして平均してもよい。具体的には、アプローチ時間T1がn個の実測時間の平均値である場合、更新用アプローチ時間T1Nは1回の実測値であるので、制御部210は、(T1×n+T1N×1)/(n+1)を演算した結果を新しいアプローチ時間T1としてよい。即ち、制御部210は、元のアプローチ時間T1の重み付けをnとし、実測された更新用アプローチ時間T1Nの重み付けを1として、平均値を演算する。このとき、カウンタ218は、アプローチ時間T1の測定回数をカウントし、nをn+1とする。次の新しいアプローチ時間T1を算出する際には、制御部210は、その時点での適応テーブルのアプローチ時間T1の重み付けを(n+1)とし、次に実測された更新用アプローチ時間T1Nの重み付けを1とすればよい。カウンタ218の測定回数は、必要に応じて手動または自動でリセットしてもよい。
【0120】
一方、更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にない場合(S300のNO)、制御部210は、適応テーブルのアプローチ時間T1を更新しない。
【0121】
次に、制御部210は、新しく測定された更新用着座時間T2Nを適応テーブルの着座時間T2と比較し、更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にあるか否かを判定する(S320)。これも、上述のように例外的な状況で得られた着座時間T2Nを排除するために行われるものである。
【0122】
更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にある場合(S320のYES)、制御部210は、更新用着座時間T2Nと適応テーブルの着座時間T2との平均値を、新しい着座時間T2として適応テーブルへ登録する(S330)。尚、新しい着座時間T2の計算方法はこれに限定されず、他の演算により得られた値でもよい。例えば、着座時間T2もアプローチ時間T1と同様に、着座時間T2を得た際の実測回数に基づいて元の着座時間T2と更新用着座時間T2Nとに重み付けをして平均してもよい。
【0123】
一方、更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にない場合(S320のNO)、制御部210は、適応テーブルの着座時間T2を更新しない。
【0124】
その後、制御部210は、図9の自動作成フローのステップS210〜S230を実行し、更新されたアプローチ時間T1および更新された着座時間T2に基づいて適応テーブルの加熱電力を更新する。
【0125】
適応テーブルの更新後、更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nの各実測値は不要となるので、記憶部214から消去する(S340)。便座装置110は、更新された適応テーブルを用いて即暖制御を実行する。
【0126】
このように、図11の更新フローでは、更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nの測定を継続して実行し、それらの実測値に基づいて適応テーブルの値(加熱電力等)を更新する。このようにして、トイレ装置100の設置環境の変化に応じて、適応テーブルを更新できる。例えば、季節の移り変わりにより、気温等の環境が変化すると、適切な加熱電力も変化する。このような場合であっても、更新用アプローチ時間T1Nの実測値に基づいて適応テーブルを更新することによって、加熱電力も適切に設定し直すことができる。
【0127】
[複数の適応テーブルからの選択]
ここでは複数の時間帯に応じてそれぞれ別個の適応テーブルを作成し、即暖制御の際はその時間帯に応じた適応テーブルを用いて即暖制御を行う場合を示す。例えば、ユーザの活動時間帯では、第1の検知領域DR1が広く設定されていると、ユーザの活動時に、ユーザは、第1の検知領域DR1を通過することが多くなる。これは、非入室判定の頻度を増大させる原因となる。従って、非入室推定の頻度を抑制するために、第1の判定S/N比は高目に設定した適応テーブルを作成することが望ましい。一方、ユーザの睡眠時間帯では、ユーザは第1の検知領域DR1を通過することが比較的少なく、非入室推定の頻度が低いと推測される。従って、第2の判定S/N比は低めに設定して電波センサ160が人体を早い段階で検出するようにした適応テーブルを作成することが望ましい。
【0128】
以下、複数の時間帯に応じてそれぞれ個別の適応テーブルを作成する手順を説明する。当該作成の手順は基本的には図9の自動作成フローと同じであるが、一部処理が拡張されている。以下ではその拡張された処理を中心に説明する。
【0129】
前提として、図2に示すタイマ216は、日時を計る時計機能を有し、記憶部214には、複数の時間帯に対応した複数の判定S/N比が格納されているものとする。本例では、1日の時間帯のうち、午前8時から午後10時までを第1の時間帯とし、午後10時から午前8時までを第2の時間帯とする。そして、記憶部214には、第1の時間帯に対応する第1の判定S/N比と、第2の時間帯に対応する第2の判定S/N比とを予め格納されている。第1の時間帯はユーザの活動時間帯に該当するため、非入室推定の頻度を抑制すべく第1の判定S/N比を高めに設定し、第2の時間帯はユーザの睡眠時間帯に該当するため、アプローチ時間を長くとって加熱電力を低くするべく、第2の判定S/N比を低めに設定する。
【0130】
図9のステップS130の閾値判定において、制御部210は時間帯に応じた閾値(判定S/N比)を用いて判定を行う。そしてステップS160、S180では、測定した時間T1および時間T2を、上記時間帯に分類して記憶する。たとえば午前9時に人体検出されたときは、測定した時間T1および時間T2を第1の時間帯のグループに分類して記憶する。
【0131】
図9のステップS195では時間帯毎にそれぞれ記憶回数が所定回数(たとえば10回)に達したか否かを判定し、所定回数に達した時間帯について、図9のステップS200〜S240を行う。
【0132】
この際、ステップS220では図12に示すフローの処理を行う。
【0133】
まず所定回数に達した時間帯が第1の時間帯および第2の時間帯のいずれであるかを判断する(S500)。
【0134】
所定回数に達した時間帯が第1の時間帯である場合(S500のYES)、制御部210は、決定されたアプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotalと、第1の判定S/N比とを第1の適応テーブルに格納し、第1の適応テーブルを記憶部214に第1の時間帯と関連づけて記憶する(S510)。そして図9のステップS230で加熱電力を決定して第1の適応テーブルに格納し、さらにステップS240で基準テーブル内の目標温度、待機温度、昇温温度と同一の値を第1の適応テーブルに格納し、これにより第1の適応テーブルが作成される。以降、便座装置110は、図7の即暖フローにおいて、第1の時間帯では、第1の適応テーブルを読み込み(図7のS10)、即暖制御を行う。
【0135】
一方、所定回数に達した時間帯が第2の時間帯である場合(S500のNO)も同様に、制御部210は、決定されたアプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotalと、第2の判定S/N比とを第2の適応テーブルに格納し、第2の適応テーブルを記憶部に第2の時間帯と関連づけて記憶する(S520)。そして図9のステップS230で加熱電力を決定して第2の適応テーブルに格納し、さらにステップS240で基準テーブル内の目標温度、待機温度、昇温温度と同一の値を第2の適応テーブルに格納し、これにより第2の適応テーブルが作成される。以降、便座装置110は、図7の即暖フローにおいて、第2の時間帯では、第2の適応テーブルを読み込み(図7のS10)、即暖制御を行う。
【0136】
以上により、便座装置110は、第1の時間帯では第1の適応テーブル、第2の時間帯では第2の適応テーブルのように、時間帯(時期)によって異なる適応テーブルを使い分けて即暖制御を行うことができる。すなわち、第1の時間帯(第1の時期)と第2の時間帯(第2の時期)に応じて異なるアプローチ時間に基づき即暖制御を行う。
【0137】
上述した例では、1日を2つの時間帯に分けた場合を説明したが、3つ以上の異なる時間帯に分けて、それぞれの時間帯毎に適応テーブルの生成および即暖制御を行ってもよい。
【0138】
上述した例では時間帯に応じて異なる閾値を用いて適応テーブルを作成したが、季節ごとに異なる目標温度TEMPtrgの適応テーブルを作成しても良い。例えば、制御部210は、タイマ216の時計が6月から9月において目標温度TEMPtrgを比較的低く設定し、10月〜5月において目標温度TEMPtrgを比較的高く設定する。目標温度TEMPtrgを比較的低く設定すれば、その分加熱電力も低く設定することができる。従って、制御部210は、トイレ装置100の設置環境の変化に応じて便座装置110の消費電力を低減させることができる。
【0139】
以上のように本実施形態によれば、トータル時間Ttotalまたはアプローチ時間T1の実測値に基づいて、トイレ装置100の設置環境に適合した加熱電力を設定することにより、ヒーターの加熱電力を可及的に低くしつつ、ユーザの着座時点における便座を適切な温度まで昇温させることができる。これにより消費電力を低減させるとともに、暖房便座装置の安全な使用を図ることができる。
【0140】
また、時間帯毎にそれぞれ異なる判定S/N比を設定して複数の適応テーブルを作成し、時間毎にそれぞれ応じた適応テーブルを用いて即暖制御を行うことによって、加熱電力を可及的に低くしつつ、非入室推定の頻度を低減させて、低消費電力を図ることができる。
【0141】
本実施形態では、トータル時間またはアプローチ時間に基づいて便座装置110を制御、より詳細に便座装置110が備えるヒーターの加熱電力を制御する例を示したが、本発明の制御対象は便座装置に限定されず、トイレルーム内に設けられる衛生装置であればどのような装置であってもよい。たとえば電気温水器(図2の洗浄部200でもよい)、空調装置(換気装置)等の装置であってもよい。これらの場合、トータル時間またはアプローチ時間に応じて、当該装置の動作を制御、たとえば当該装置内のヒーターの加熱電力を制御することで、当該電気温水器の使用時にユーザにとって快適な温度の温水を出し、またユーザの入室時にトイレルーム内の温度を快適な状態にすることが可能である。
【0142】
(第2の実施形態)
図13(A)は、本発明に係る第2の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105の構造およびユーザの進入方向を示す概念図である。
【0143】
第2の実施形態では、ユーザまたは施工業者が、トイレルーム105のドアの位置、ユーザの進入方向等の、便座装置110の設置環境に基づいて閾値を選択する。便座装置110は、選択された閾値を用いて図9に示す自動作成フローを実行し、適応テーブルを自動作成する。また本実施形態では閾値として判定S/N比と減速率との2種類を用いる。これにより非入室推定を効果的に排除し、ユーザの入室確率がより高い場合にのみ即暖制御を行う。なお第2の実施形態による便座装置110のブロック図は第1の実施形態と同様である。
【0144】
図13(A)の例では、便座装置110の環境として代表的にトイレルーム105のドアの位置およびユーザの進入方向を示すが、本発明で対象とする環境はこれに限定されず、前述したような他の環境を含んでもよい。たとえばドアの開閉の形態、ドアの材質、ユーザの年齢、ユーザの老若男女、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯を含んでよい。このように、より多くの環境を考慮することによって、より適した適応テーブルの生成および即暖制御が可能となる。
【0145】
図13(A)に示すように、ドアは、トイレルーム105の正面(トイレ装置110の前方の面)または側面(トイレ装置110の側方の面)のいずれかに設けられている。破線の矢印は、ドアの開閉方向を示す。
【0146】
ドア107がトイレルーム105の正面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の前方(正面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境(I))と、トイレルーム105の側方(正面に対してほぼ平行方向)から接近する場合(環境(II))とに分けることができる。尚、図1(B)に示すように、第1の検知領域DR1がトイレ装置110に関して左右対称に広がっている限りにおいて、閾値は、ユーザがトイレルーム105の右側方から進入する場合と左側方から進入する場合とにおいて同じでよい。
【0147】
ドア107がトイレルーム105の側面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の前方から接近する場合(環境(III))と、トイレルーム105の側方(側面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境(IV))と、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境(V))と、に分けることができる。尚、第1の検知領域DR1は、トイレ装置110に関して前後方向に非対称に広がっているので、トイレルーム105の前方から接近する場合(環境(III))と、トイレルーム105の後方から接近する場合(環境(V))とにおいて、閾値は相違させることが好ましい。
【0148】
図13(B)は、便座装置110の環境(I)〜(V)と閾値との対応関係を示す閾値選択テーブルである。閾値選択テーブルは、予め記憶部214に格納されている。閾値選択テーブルの閾値は、判定S/N比と減速率との2種類を含んでいる。
【0149】
減速率は、第1の検知領域DR1に進入した時点でのユーザの速度に対する減速の比率を示す。例えば、減速率=30%は、第1の検知領域DR1に進入したときのユーザの速度を100%として、その速度から30%低下した速度を閾値とすることを意味する。本実施形態の即暖制御では、判定S/N比が満たされた後、ユーザの移動速度がこの閾値(減速率)よりも低下したときに、便座140の昇温を開始する(図7のステップS13参照)。すなわちS/N比が満たされた後もユーザの移動速度が減速率以下にならないときはユーザがトイレルームに入らずにその近くを通過するだけであると判断して、便座140の昇温を行わない。
【0150】
本第2の実施形態での適応テーブルの自動作成フローは基本的に図9と同様であるが一部処理が拡張されている。以下拡張された処理を中心に説明を行う。
【0151】
まず制御部210は、トイレ装置100が実際に設置される環境に応じて閾値(判定S/N比と減速率)を閾値選択テーブルから選択し、これらの選択された閾値を図4に示す基準テーブルに書き込む。そして、制御部210は、その基準テーブルを読み込んで(図7のS10)、図7の即暖フローを行う。一方、図9の自動作成フローでは、ステップS120〜S240の処理により、トータル時間Ttotalを決定し、さらに加熱電力を決定して、適応テーブルを作成する。図7のステップS13(図9のステップS130)でのユーザの検知時刻t0は判定S/N比および減速率の2つの閾値が両方とも満たされた時刻である。
【0152】
尚、第1の実施形態で述べた[適応テーブルの自動設定]、[適応テーブルの更新]、および、[複数の適応テーブルからの選択]は、第2の実施形態に組み合わせてもよい。これにより、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0153】
また本実施形態では判定S/N比および減速率の2種類の閾値を用いたが、判定S/N比のみを用いて、設置環境に応じた適応テーブルを作成してもよい。
【0154】
以上のように、第2の実施形態では、判定S/N比および減速率の両方を閾値として用い、便座装置110は、判定S/N比が満たされても、ユーザの移動速度が減速率以下に減速しなければ便座140の昇温を開始しない。その結果、便座装置110は、非入室推定を効果的に排除し、ユーザの入室確率がより高い場合にのみ即暖制御を実行することができる。
【0155】
また第2の実施形態では、閾値(判定S/N比および/または減速率)をトイレ装置100の設置環境に応じて選択することによって、ユーザを早い時点で検知して(トータル時間Ttotalを長くして)便座140の加熱電力を可及的に低下させつつ、非入室推定の頻度を低減させることができる。
【0156】
(第3の実施形態)
図14は、本発明に係る第3の実施形態に従った便座装置110の環境(I)〜(V)と、閾値(判定S/N比、減速率)と、時間T1,T2,Ttotalの推定値と、加熱電力との対応関係を示すアプローチ時間選択テーブルを示す。目標温度は29℃、待機温度は26℃で固定であるとする。環境(I)〜(V)は、便宜的に、第2の実施形態の図13の環境(I)〜(V)に対応している。アプローチ時間選択テーブルは環境毎に閾値、各時間、待機温度、加熱電力間の適正な値を、非入室推定、消費電力等の観点から、事前に見積もって登録したものである。第3の実施形態による便座装置110のブロック図は、第1の実施形態のそれと同様である。図14のアプローチ時間選択テーブルは予め記憶部214に格納されている。
【0157】
第3の実施形態では、ユーザまたは施工業者が、遠隔操作装置300の機能設定部132を用いて環境(I)〜(V)のいずれかを選択することによって、閾値だけでなく、アプローチ時間T1、待機時間T2、トータル時間Ttotal、加熱電力も選択する。本実施形態では、このようなユーザまたは業者のマニュアルの選択作業に基づいて適応テーブルを作成する。尚、図14の例では、着座時間T2は所定の時間(例えば、5秒)に固定されており、従ってアプローチ時間T1の選択は、実質的にトータル時間Ttotalの選択と同じである。
【0158】
図15は、第3の実施形態に従った適応テーブルの設定手順を示すフロー図である。
【0159】
便座装置110は、便座装置110の実際の設置環境がまだ選択されていない場合(S400のNO)、記憶部214に予め格納されている基準テーブルを選択する(S410)。制御部210は、基準テーブルを記憶部214から読み出し、基準テーブルを用いて即暖制御(図7参照)を開始する。
【0160】
一方、便座装置110の実際の設置環境が選択された場合(S400のYES)、制御部210は、選択された環境に対応する閾適、アプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotal、加熱電力をアプローチ時間選択テーブルから得る(S420)。
【0161】
次に、制御部210は、アプローチ時間選択テーブルから得た閾値、アプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotal、および加熱電力を用いて適応テーブルを作成する(S430)。
【0162】
例えば、環境(III)を選択した場合、判定S/N比1.3、減速率40%、アプローチ時間T1として2秒、着座時間T2として5秒、トータル時間Ttotalとして7秒、加熱電力350Wの情報を含む適応テーブルが作成される。この際、適応テーブルには、目標温度TEMPtrgとして29℃、待機温度TEMPstbとして26℃と、昇温温度として4℃を含める。目標温度TEMPtrgおよび待機温度TEMPstbは上述の通り予め固定されており、昇温温度は目標温度TEMPtrgから待機温度TEMPstbを減算することより計算する。なお昇温温度もアプローチ時間選択テーブルに含めてもよく、この場合昇温温度の計算を省略できる。記憶部214は、作成された適応テーブルを記憶し、制御部210は、記憶された適応テーブルを読み出して即暖制御(図7参照)を行う。
【0163】
なおアプローチ時間選択テーブルを目標温度別かつ待機温度別に用意しておき、ユーザが所望の目標温度および所望の待機温度を指定し、該当するアプローチ時間選択テーブルを用いるようにしてもよい。
【0164】
ここで図14のアプローチ時間選択テーブルにおける環境と閾値等との関係について具体的に説明する。
【0165】
例えば、図13(A)の(I)のようにトイレ装置100の正面にドアが設けられており、かつ、ユーザがトイレ装置100の正面から接近する場合(ユーザが電波センサ160のマイクロ波の送信方向と逆方向に接近する場合)、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出しやすい(ユーザが比較的遠くにいても検出できる)。従って、環境(I)では、判定S/N比を大きくし、および/または、加熱電力を低く設定することができる。判定S/N比を大きくすると、非入室推定の頻度を低減させることができる。
【0166】
一方、図13(A)の(V)のようにトイレ装置100の側面にドアが設けられており、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(ユーザが第1の検知領域DR1の後方からマイクロ波の送信方向に移動する場合)、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し難い。従って、環境(V)では、環境(I)と比較して、判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を高く設定する必要がある。すなわち、判定S/N比を小さくすることで、ユーザの人体をできるだけ早く検知し、トータル時間Ttotalを長くしている。ただし、トイレ装置100の設置環境によって、実際、トータル時間Ttotalは、比較的短くなってしまう。この場合、待機温度TEMPstbを高く設定することで、非入室推定の場合の消費電力が増加するものの、制御部210は、短いトータル時間Ttotalで便座140の温度を目標温度TEMPtrgまで昇温させることができる。
【0167】
図14では、環境として代表的にトイレルーム105のドアの位置およびユーザの進入方向を含めている。しかし、環境は、第2の実施形態と同様により多くの他の環境を含んでもよい。他の環境としては、例えば、ドアの開閉の形態、ドアの材質、ユーザの年齢、ユーザの老若男女、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯等がある。これにより、さらに、トイレ装置100の設置環境により適した適応テーブルを得ることができる。
【0168】
より詳細に、ドアの材質が、樹脂等の電波透過性の良い材料である場合、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し易い。従って、この場合、判定S/N比を大きくし、および/または、加熱電力を低く設定することができる。
【0169】
一方、ドアの材質が、金属等の電波透過性の悪い材料である場合、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し難い。従って、この場合、ドアの材質が電波透過性の良い材料である場合と比較して、判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を高く設定する。
【0170】
またトイレルームにドア自体が無い場合がある。このような場合、ドアが設けられている場合よりも電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し易い。従って、この場合には、ドアが設けられている場合と比較して、判定S/N比を大きくし、および/または、加熱電力を低く設定することができる。
【0171】
またユーザが若い場合、ユーザの移動速度は比較的速い。即ち、アプローチ時間T1が短い。従って、ユーザの年齢が低い場合には、判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を低く設定する。
【0172】
さらに、ユーザの睡眠時間帯においては、トイレ装置100を利用する頻度が少なく、かつ、ユーザがトイレ装置100の使用という目的以外の目的でトイレルーム105に接近することも少ない。よって、ユーザが非入室のまま通過することは稀であると推測できる。従って、ユーザの睡眠時間帯においては、他の時間帯と比較して、判定S/N比を小さくし、加熱電力を低く設定する。
【0173】
以上のように第3の実施形態によれば、トイレ装置100の設置環境に対応した閾値およびアプローチ時間T1等を選択する。これにより、便座装置110は、トイレ装置100の設置環境に対応して加熱電力の低減、非入室推定の低減のバランスをとりつつ消費電力を可及的に低減させることができる。
【0174】
(第4の実施形態)
図16は、本発明に係る第4の実施形態に従った適応テーブルの更新の手順を示すフロー図である。第4の実施形態は、非入室推定の頻度が多い場合に、適応テーブルを更新する形態である。
【0175】
まず、便座装置110は、適応テーブルを用いて即暖制御を実行しつつ、図9のステップS130〜S195を実行する。第4の実施形態では、ステップS150において第1の制限時間内に入室検知が無かった場合に(S150のNO)、ステップS155のブロック内に括弧付で記載されているようにカウンタ218により、非入室推定の総回数をカウントする。尚、カウンタ218は、非使用推定(S170のNO)の回数をカウントする必要はない。
【0176】
制御部210は、ステップS195の記憶回数が所定値(例えば、10回)以上に達した場合に、カウンタ218による記憶回数と非入室推定の回数とを比較する(S600)。非入室推定の回数の割合が所定値以上の場合(S600のYES)、制御部210は、適応テーブルを更新する(S610)。例えば、記憶回数に対して非入室推定の回数の割合が2分の1以上になった場合に、制御部210は、適応テーブルを更新する。具体的に、制御部210は、非入室推定を低減するために、判定S/N比を大きくするように適応テーブルを更新する。あるいは、制御部210は、非入室推定を低減するために、減速率を大きくするように適応テーブルを更新する。より詳細な適応テーブルの更新方法は後述する。
【0177】
非入室推定の回数の割合が所定値よりも低い場合(S600のNO)、制御部210は、既存の適応テーブルをそのまま用いて即暖制御を継続する。尚、非入室推定の回数の割合の判断値(所定値)は、予め記憶部214に格納しておく。
【0178】
図17は、第4の実施形態において適応テーブルの更新の際に用いる閾値変更テーブルを示す図である。閾値変更テーブルは、図13(B)を参照して説明した環境(I)〜(V)のそれぞれに対応する変更前の閾値および変更後の閾値を含む。変更前の閾値は、図13(B)に示す閾値と同様である。変更後の閾値は、それぞれ変更前の閾値を変更した値である。
【0179】
例えば、変更後の判定S/N比は、変更前の判定S/N比に対して増加している。これにより、第1の検知領域DR1が変更前のそれに比べて狭くなり、非入室推定の頻度を低下させることができる。また、変更後の減速率も、変更前の減速率に対して増加している。この場合、電波センサ160の人体検知時におけるユーザの移動速度が比較的大きく低下したときに即暖制御が開始される。このため、非入室推定の頻度を低下させることができる。
【0180】
変更後の閾値と変更前の閾値との差は一定であってもよく、あるいは、変更前の閾値に比例した数値でもよい。変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差(判定S/Nの変更率)は、変更前の判定S/N比の大きさに従って変更してもよい。例えば、変更前の判定S/N比が大きいほど、変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差を大きくすることが好ましい。これにより、非入室推定の頻度の変化が認識しやすくなるからである。
【0181】
より具体的には、判定S/N比が大きい場合に、変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差が小さいと(変化率が小さいと)、非入室推定の頻度の変化が少なく、閾値の変更前後における非入室推定の頻度の低減効果が小さい。一方、判定S/N比が小さい場合には、変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差が小さいとも、変化率が大きくなる。従って、非入室推定の頻度の変化は大きく、閾値の変更前後における非入室推定の頻度の低減効果が大きい。尚、変更前後における非入室推定の頻度が減速率についても判定S/N比と同様のことが言える。
【0182】
図16の更新フローでは非入室推定の頻度が高い場合に閾値(判定S/N比、減速率)を大きくしたが、逆に、非入室推定の頻度が非常に少ない場合に、判定S/N比を低下させ、および/または、減速率を増大させるようにしてもよい。これにより、非入室推定の可能性が上昇するものの、アプローチ時間T1を長くし、加熱電力を低下させることができる。
【0183】
以上のように、第4の実施形態によれば、非入室推定の頻度に基づいて閾値(判定S/N比および/または減速率)を変更するようにしたことにより、非入室推定の頻度を低減させながらも、アプローチ時間T1をできるだけ長くし加熱電力を低下させることができる。
【0184】
(第5の実施形態)
本実施形態は、ユーザの着座時までに便座140を目標温度TEMPtrgまで高めることができないと見込まれる場合に、ヒーター142の加熱電力を上昇させようとするものである。
【0185】
本実施形態に係る即暖フローは第1の実施形態で示した即暖フローを拡張したものである。より詳細には、本実施形態に係る即暖フローは、図7の即暖フローのステップS15のブロックと、ステップS17のブロックとの間に、図18のフローを追加したものに相当する。
【0186】
前述したように図7のステップS15ではユーザの人体検知後、第1の制限時間内にユーザ入室が検知されたか否かを判断する。第1の制限時間内にユーザ入室が検知された場合に(S15のYES)、図18のステップS31では、制御部210が、ユーザの人体検知からユーザの入室検知までに要した時間(以下時間Sと記述する)が、アプローチ時間T1より小さいか否かを検査する(S31)。
【0187】
上記時間Sがアプローチ時間T1以上のときは(S31のNO)、ユーザがアプローチ時間T1以上の時間を要してトイレルームに入室したと判断し、特に特別な処理を行うことなく、図7のステップS17に進む。
【0188】
一方、上記時間Sがアプローチ時間T1より小さいときは(S31のYES)、ユーザがアプローチ時間T1よりも短い時間でトイレルームに入室したと判断して、制御部210は、ヒーター142による加熱電力を上昇させる(S32)。すなわち、基準テーブルまたは適応テーブルに設定された加熱電力は、アプローチ時間T1でユーザがトイレルームに入室することを想定しているため、時間Sが、アプローチ時間T1より小さい場合、ユーザが着座するまでに便座を目標温度TEMPtrgまで高められない可能性が大きくなる。そこで本ステップでは、時間Sがアプローチ時間T1より短い場合に当該テーブルに設定された加熱電力よりも大きな値に加熱電力を変更することで、このような問題を防止する。
【0189】
加熱電力を大きくする具体的な構成としては、たとえばアプローチ時間T1と時間Sとの差分値を計算し、差分値が大きいほど、電力の上昇幅を大きくすることが可能である。この場合、差分値の範囲毎にそれぞれ電力の上昇値Δを対応づけた上昇テーブルをあらかじめ記憶部214に格納しておき、計算した差分値に対応する上昇値Δだけ加熱電力を上昇させてもよい。
【0190】
また上述の上昇テーブルは待機温度毎に用意してもよい。この場合、基準テーブルまたは適用テーブルに設定された待機温度をもつ上昇テーブルを選択し、選択した上昇テーブルを用いて上昇幅Δを取得する。
【0191】
または、上述の上昇テーブルを加熱電力毎に用意してもよい。この場合、基準テーブルまたは適用テーブルに設定された加熱電力をもつ上昇テーブルを選択し、選択した上昇テーブル用いて上昇幅Δを取得する。
【0192】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザの人体検知から入室検知までに要した時間Sがアプローチ時間T1より短いときは、加熱電力を上昇させるようにしたことにより、ユーザが着座するまでに便座140を目標温度TEMPtrgまで上昇させる可能性を高めることができる。
【符号の説明】
【0193】
100・・・トイレ装置
105・・・トイレルーム
110・・・便座装置
120・・・便器
130・・・遠隔操作装置(リモコン)
140・・・便座
142・・・ヒーター(加熱部)
144・・・温度検知部
150・・・センサ部
160・・・電波センサ
170・・・焦電センサ
180・・・着座センサ
200・・・洗浄部
210・・・制御部
212・・・演算処理部
214・・・記憶部
216・・・タイマ
218・・・カウンタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に係わり、例えば、便座を加熱する暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座装置は、便座内に内蔵された発熱線に常時電圧を印加することにより熱を発生させ、その熱によって、設定された所望の温度に便座を常に暖めておくものである。それにより、暖房便座装置は、ユーザが便座に着座する際に便座の冷たさによって不快を感じることを防止し、ユーザは快適に便座に着座することができる。
【0003】
このような暖房便座装置では、機器を使用しない時の消費電力は極力低下させる一方で、便器使用時には快適な温度の便座に着座できるように便座温度を制御することが望まれている。そこで従来、便器を使用しない時の消費電力を抑えるために、便座の待機温度を低く保ちつつ、焦電型赤外線センサを用いてトイレルームへ入室する人体を検知し、人体を検知した場合には、待機温度から目標とする着座温度まで便座の温度を昇温する即暖型の暖房便座装置が知られている(特許文献1)。このような即暖型の暖房便座装置は、ユーザが便器を使用するときに便座を急速加熱し、便器を使用しないときには待機温度を下げておくことができるので消費電力の低減に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−165684号公報
【特許文献2】特許第4068648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の即暖型の暖房便座装置は、トイレルームに入室した後の人体を検知して待機温度から目標の着座温度まで昇温させる。通常、入室から着座までの時間は長くても6秒程度で、ユーザが軽装の場合はトイレルームに入室してから便座に着座するまでの時間は4秒程度である。したがって、待機温度から着座温度まで昇温させる時間には限りがあり、従来の即暖型暖房便座では、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できない場合があった。そこで、ユーザが着座する時点において便座を確実に快適な温度まで昇温するために、省エネ性を犠牲にして待機温度を高めに設定し、短い時間でも確実に着座温度まで昇温できるようにした暖房便座装置も知られていた。
【0006】
従って、ヒーターの加熱電力を低く維持しながら消費電力を低減させるためには、低い待機温度からでも確実に快適な温度まで昇温できるように昇温時間を長くすることが望ましい。このように昇温時間を長くするために、ユーザがトイレルーム内に進入する前に即暖による昇温制御を開始すべく、電灯スイッチを用いた方式が考えられる(特許文献2)。しかし、トイレの電灯スイッチは、通常、トイレの近傍に設置されるものであるため、昇温時間を長くとることはあまり期待できない。
【0007】
また、赤外線センサをトイレルームから遠く離れた位置に設置することによって、昇温時間を長くすることが考えられる。しかし、指向性の強い赤外線センサでユーザの進入の有無を判定しようとすると、トイレルーム外の廊下などに複数の赤外線センサを設置し、かつ、その各赤外線センサと暖房便座装置の暖房制御とをリンクさせる必要がある。便座の即暖制御のためだけにこのような手法を用いることは、現実的ではない。
【0008】
また、赤外線センサを設置することによって、トイレルームからユーザまでの距離を把握できたとしても、ユーザがその位置からトイレルームへ入室するまでの時間は、その位置からトイレルームまでの家の通路形態や、ユーザの歩行速度等に依存する。すなわち、センサがユーザを検知してからトイレルームへ入室するまでの時間は単純に位置情報から一義的に決まるものではない。このため、単に位置情報に基づいて即暖を開始させる構成では、着座する時点において便座を快適な温度まで昇温できないおそれがある。
【0009】
このように従来ではユーザの着座時までに便座を快適な温度にするなどユーザがトイレルーム内を快適に過ごすには多くの消費電力または大がかりな仕組みが必要となっていた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ユーザがトイレルーム内を快適に過ごせるようにした便座装置を低消費電力なものとして提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様としての便座装置は、トイレルーム内に設置された便座と、前記便座を加熱するヒーターと、電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知し、ユーザが前記トイレルームに入室したことを検知するセンサ部と、前記ヒーターおよび前記センサ部を制御する制御部とを備えた便座装置であって、前記制御部は、少なくとも前記センサ部がユーザの人体を検知してから該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知するまでのアプローチ時間に基づいてトイレルーム内の衛生装置を制御することを特徴とする。
【0012】
電波を用いたセンサ部を便座装置に備え付けることで、複数の赤外線センサをトイレルーム外の廊下に配置するといった大がかりな仕組みを用いることなく、トイレルームから離れた位置にいるユーザの人体を検知することができる。トイレルームから離れた位置にいるユーザの人体を検知することで、ユーザの入室検知から着座までの時間のみならずトイレルーム外のユーザの人体検知から入室検知までのアプローチ時間も衛生装置の制御に当てることができ、それだけ衛生装置の制御のための時間を長くとることが可能となる。たとえば衛生装置が便座装置の場合は、ヒーターの昇温時間を長くとることができ、これによりヒーターの加熱電力を低くしつつも、ユーザの着座までに便座を所望の目標温度まで昇温させることが可能となる。また衛生装置が電気温水器(たとえば洗浄部)の場合は、ヒーターの加熱電力を低くしつつも、ユーザによる電気温水器の使用時にユーザにとって快適な温度の温水を出すことが可能である。衛生装置が空調装置の場合は、ヒーターの加熱電力を低くしつユーザの入室時にトイレルーム内の温度を快適な状態にすることが可能である。このようにヒーターの加熱電力を低くすることで、ユーザがトイレルームに入室しなかった場合の消費電力も可及的に小さく抑えつつ、ユーザがトイレルーム内で快適に過ごすことが可能になる。
【0013】
本発明の第2態様としての便座装置は、前記第1態様に係る便座装置において、前記ヒーターは、前記アプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする。アプローチ時間に応じて加熱電力を調整することで、加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時の便座の温度を所望の目標温度まで昇温することが可能となる。
【0014】
本発明の第3態様としての便座装置は、前記第2態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記便座の目標温度と前記便座の待機温度との差に応じて前記ヒーターの加熱電力を制御することを特徴とする。これにより、加熱電力をできるだけ低くしつつも、ユーザの着座時までに便座の温度を待機温度から目標温度まで昇温することができる。
【0015】
本発明の第4態様としての便座装置は、前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの時間を実測し、実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする。これにより便座装置の実際の設置環境に応じたアプローチ時間を決定することができる。その結果、加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時までに便座を所望の目標温度まで昇温することができる。
【0016】
本発明の第5態様としての便座装置は、前記第4態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記電波の反射波の測定値が所定の閾値を超えた時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間を計測することによって前記実測時間を取得し、前記ヒーターは、前記電波の反射波の測定値が前記所定の閾値を超えた時点から前記便座の加熱を開始することを特徴とする。このように、便座装置は、電波の反射波の測定値が所定の閾値を超えた時点からアプローチ時間の計測を開始する。閾値によってトイレルームの外側の検知範囲が変わるので、閾値を調整することで、アプローチ時間を制御することが可能となる。これにより、便座装置は、実際の設置環境に拘わらず、加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時までに便座を所望の目標温度まで昇温することが可能となる。
【0017】
本発明の第6態様としての便座装置は、前記第4または第5態様に係る便座装置において、前記アプローチ時間を記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたアプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする。アプローチ時間を記憶部に格納しておき、記憶部内のアプローチ時間を用いることで、過去の実測結果を反映したアプローチ時間を利用できる。
【0018】
本発明の第7態様としての便座装置は、前記第6態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記センサ部がユーザの人体を検知してから前記ユーザの入室を検知までの時間を実測し、実測した時間が前記記憶部に記憶されたアプローチ時間より小さいときは、トイレルーム入室前よりも入室後のヒーターの加熱電力を高くすることを特徴とする。これにより、実際にユーザの人体が検知されてからトイレルームの入室までに要した時間が、記憶部に記憶されていたアプローチ時間に比べて短かった場合でも、ユーザの着座時までに便座を所望の目標温度まで昇温することが可能となる。
【0019】
本発明の第8態様としての便座装置は、前記第6態様に係る便座装置において、前記制御部は、前記実測時間を複数回取得し、複数の前記実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする。これにより、突発的または例外的な状況のみに基づいてアプローチ時間が決定されることを防止できる。
【0020】
本発明の第9態様としての便座装置は、前記第8態様に係る便座装置において、前記制御部は、複数の前記実測時間のうち時間の短い所定数の実測時間を平均した値を、前記アプローチ時間として決定することを特徴とする。これにより、移動速度の速いユーザに適合するようにアプローチ時間を決定できるため、ほとんどのユーザにおいて着座時までに便座を目標温度以上に昇温させることができる。
【0021】
本発明の第10態様としての便座装置は、前記第5態様に係る便座装置において、前記便座が設置される環境に対応する閾値を格納する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部において前記便座が実際に設置される環境に応じた閾値を前記所定の閾値として用いることを特徴とする。便座装置の設置環境に応じた閾値を所定の閾値として用いることにより、前記第5態様で得られる効果を、より確実なものとすることができる。
【0022】
本発明の第11態様としての便座装置は、前記第5または10態様に係る便座装置において、前記センサ部がユーザの人体を検知してから所定時間以内に該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知しなかった非入室推定の回数をカウントするカウンタをさらに備え、前記制御部は、前記非入室推定の回数に基づいて前記所定の閾値を変更することを特徴とする。非入室推定の頻度が多い場合、無駄な消費電力が大きくなる。従って、非入室推定の頻度が多い場合には、所定の閾値を変更して電波センサの検知範囲を狭く(アプローチ時間を短く)することによって非入室推定の頻度を低減させることができる。検知範囲が狭いと、アプローチ時間が短くなるので、加熱電力を上げる必要が生じる。しかし、加熱電力の上昇により消費電力が増大しても、非入室推定の頻度の低減による消費電力の低下によって、全体として消費電力が低下する限りにおいて、検知範囲を狭く(アプローチ時間を短く)するように所定の閾値を変更することは、消費電力の低減に繋がる。
【0023】
本発明の第12態様としての便座装置は、前記第6〜第9態様のいずれかに係る便座装置において、前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの更新用実測時間を測定し、前記記憶部に記憶された前記アプローチ時間を前記更新用実測時間に基づいて更新することを特徴とする。これにより、便座装置の設置環境が変化した場合も、前記第6〜第9の態様と同様の効果を得ることができる。
【0024】
本発明の第13態様としての便座装置は、前記第1〜第3態様のいずれかに係る便座装置において、前記便座装置が設置される環境に対応したアプローチ時間を格納する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が実際に設置される環境に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする。これにより、前記第1〜第3態様と同様の効果を、便座装置の設置環境に拘わらず、確実に得ることができる。
【0025】
本発明の第14態様としての便座装置は、前記第13態様に係る便座装置において、前記環境は、ユーザが前記トイレルームへ接近するときの進行方向、または、前記トイレルームの構造を含むことを特徴とする。これによりトイレルームの構造およびトイレルーム周辺の通路構造に拘わらず、前記第13態様と同様の効果を得ることができる。
【0026】
本発明の第15態様としての便座装置は、前記第13または14態様に係る便座装置において、前記環境は、ユーザの移動速度、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯、前記トイレルームにおけるドアの位置、前記トイレルームにおけるドアの開閉状態、前記トイレルームに通じる通路の延伸方向、あるいは、前記トイレルームの壁の材質またはドアの材質のいずれかを含むことを特徴とする。これによりユーザの生活リズムおよびトイレルームの詳細構造等にも拘わらず、前記第13または第14態様と同様の効果を得ることができる。
【0027】
本発明の第16態様としての便座装置は、前記第1〜第3態様に係る便座装置において、 時計機能を有するタイマと、複数の時期に対応する複数のアプローチ時間を格納する記憶部とをさらに備え、前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が使用される時期に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする。これにより、前記第1〜第3態様と同様の効果を、便座装置の使用時期に拘わらず、確実に得ることができる。
【0028】
本発明の第17態様としての便座装置は、前記第2または3態様に係る便座装置において、前記アプローチ時間が長いほど前記ヒーターの加熱電力を低くすることを特徴とする。これにより上述の非入室推定が生じた場合の消費電力をより低減することが可能となるとともに、便座装置のより安全な使用が達成される。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、ユーザがトイレルーム内を快適に過ごせるようにした便座装置を低消費電力なものとして提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置、トイレルーム、並びに、センサ部の検知領域を示す図。
【図2】第1の実施形態による便座装置の構成を示すブロック図。
【図3】センサ部によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図。
【図4】基準テーブルの一例を示す図。
【図5】便座の昇温過程を時間軸に沿って示すグラフ。
【図6】基準テーブルの作成に用いられる標準的なトイレルームの概念図。
【図7】即暖制御の基本的な処理の流れを示すフロー図。
【図8】適応テーブルに加熱電力を設定するために用いられる制御データテーブルの一例を示す図。
【図9】適応テーブルを自動作成の手順を示すフロー図。
【図10】適応テーブルの一例を示す図。
【図11】適応テーブルの更新の手順を示すフロー図。
【図12】複数の適応テーブルを設定する動作を示すフロー図。
【図13】本発明に係る第2の実施形態に従ったトイレルームの構造およびユーザの進入方向と、便座装置の設置環境(I)〜(V)と閾値との対応関係を示す閾値選択テーブルを示す図。
【図14】本発明に係る第3の実施形態に従った便座装置の設置環境(I)〜(V)と、閾値と、各種時間(アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotal)と、加熱電力との対応を示すアプローチ時間選択テーブル。
【図15】第3の実施形態に従った適応テーブルの設定手順を示すフロー図。
【図16】本発明に係る第4の実施形態に従った適応テーブルの更新の手順を示すフロー図。
【図17】第4の実施形態において適応テーブルの更新に用いられる閾値変更テーブルを示す図。
【図18】第5の実施形態に係る即暖フローを説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図1(A)および図1(B)は、本発明に係る第1の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105、並びに、センサ部150の検知領域DR1、DR2を示す図である。トイレ装置100は、トイレルーム105内に設置されており、衛生装置の一例として便座装置110と、便器120とを備えている。便座装置110は、遠隔操作装置(リモートコントローラ)130と、便座140と、センサ部150と、制御部210とを備えた暖房便座装置である。便座140は、加熱部としてのヒーターを内蔵している。便座140は、ヒーターに電流を供給することによって加熱される。センサ部150は、電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを含む。トイレルーム105は、壁106およびドア107で囲まれた空間であり、ユーザはドア107からトイレルーム105へ入室する。
【0033】
電波センサ160は、例えば、マイクロ波の周波数帯域を利用したマイクロ波センサである。マイクロ波センサは、所定の検知領域に向かい電波ビームを放射し、検知領域内に侵入した人体等の対象物を検知する。また、マイクロ波センサは、ドップラ効果(定在波)を利用しているので、対象物の動き(速度)を検知することができる。さらに、マイクロ波は、木材や樹脂、陶器等の比誘電率が比較的小さい物質を透過する。従って、マイクロ波センサは、トイレルーム105の外側にいる人体を検知し、かつ、その人体の移動状態(速度)を検出することができる。
【0034】
マイクロ波とは電波の周波数による分類の一つである。一般的には波長100マイクロメートル〜1メートル、周波数300メガヘルツ〜3テラヘルツの電波(電磁波)を指す。この範囲の電波には、デシメートル波(UHF)、センチメートル波(SHF)、ミリメートル波(EHF)、サブミリ波が含まれる。尚、電波センサ160は、トイレルーム105の外側にいるユーザの人体を検知することができればよく、利用可能な周波数帯域はマイクロ波帯に限定されない。
【0035】
焦電センサ170は、例えば、焦電型赤外線センサであり、ユーザがトイレルーム105に入室したことを検知する。焦電型赤外線センサは、周囲環境の温度と、検知したい物体の温度との差を検知して、その空間に物体が存在するか否かを判断する。尚、本実施形態ではトイレルーム105に入室したユーザの人体を検知するために焦電センサ170を便座装置110に設置したが、焦電型赤外線センサに限定されない。
【0036】
着座センサ180は、例えば、反射型赤外線センサであり、人体から反射された赤外線を検出した場合に便座140上にユーザが着座していることを検知する。尚、着座センサ180も、便座140上にユーザが着座していることを検知することができればよく、反射型赤外線センサに限定されない。
【0037】
電波センサ160および焦電センサ170は、便器120や遠隔操作装置130に取り付けてもよく、あるいは、トイレルーム105内の壁面、天井または床面に取り付けてもよい。
【0038】
第1の検知領域DR1は、電波センサ160が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の外側へ広がっている。第2の検知領域は、焦電センサ170が人体を検出することができる範囲を示し、トイレルーム105の内側に制限されている。
【0039】
図2は、第1の実施形態による便座装置110の構成を示すブロック図である。便座装置110は、遠隔操作装置130と、センサ部150と、便座140と、洗浄部200と、制御部210とを備えている。
【0040】
遠隔操作装置130は、機能設定部132と、機能操作部134と、表示部136とを備えている。機能設定部132は、便座140の温度設定、洗浄部200の水温設定等の各種設定事項をユーザが入力/選択する手段である。機能操作部134は、機能設定部132で設定された設定事項に基づいて便座装置110および洗浄部200をユーザが操作する手段である。表示部136は、ユーザが機能設定部132または機能操作部134を用いて入力/選択した事項を表示する手段である。機能設定部132および機能操作部134は、例えば、ボタン、切替えスイッチを含み、ユーザは、ボタンを押し、あるいは、切替えスイッチを切替えることによって便座装置110の設定および操作を行う。表示部136は、例えば、液晶表示装置である。
【0041】
センサ部150は、上述の通り電波センサ160と、焦電センサ170と、着座センサ180とを備えている。電波センサ160は、送信アンテナ162と、発振回路164と、受信アンテナ166と、検波回路168とを備えている。本実施形態では、発振回路164は、所定の周波数の電波(マイクロ波)を生成し、送信アンテナ162からその電波を送信する。受信アンテナ166は、送信アンテナ162から送信された電波の反射波を受信する。検波回路168は、受信アンテナ166において受信された反射波から周波数の差分(検知信号)を抽出し、検知信号を制御部210へ送る。発振回路164に周波数可変回路を備えれば、反射波の位相状態から人体の移動速度だけでなく電波センサ160から人体までの距離を認識できる。また、検波回路168を複数備えれば、複数の検知信号の位相差から電波センサ160に対し人体が接近または離遠しているのかを識別できる。
【0042】
焦電センサ170は、検知領域を設定するレンズと人体から放射された赤外線を受信する受光素子を備え、着座センサ180は、赤外線を発光する発光素子と発光素子から送信された赤外線の反射波を受信する受光素子を備え、ともに受光素子にて受信した結果を制御部210へ送る。
【0043】
便座140は、加熱部としてのヒーター142と、温度検知部(サーミスタ)144と、便蓋146と、便蓋開閉センサ148を備えている。ヒーター142は、制御部210の制御を受けて便座140を加熱すなわち昇温する。温度検知部144は、便座140の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。便蓋開閉センサ148は便蓋146の開閉状態を検知する。
【0044】
ここでヒーター142の加熱電力は調整可能に構成される。ヒーター142の加熱電力は、単位時間当たりの消費電力量(例えば、ワット時(Wh))で表わされる。ヒーター142の加熱電力は、便座190の昇温速度に影響し、便座190の昇温速度は、単位時間当たりの上昇温度(例えば、℃/sec)で表わされる。ヒーター142としては、たとえば位相制御により電力を調整可能な加熱源を用いることができる。あるいは、ヒーター142は、それぞれ同一または異なる一定の出力電力を有する複数の加熱源を備えたものであってもよい。この場合、動作させる加熱源を組み合わせることで所望の加熱電力を得ることができる。
【0045】
洗浄部200は、ヒーター202と、温度検知部(サーミスタ)204と、ノズル駆動部206とを備えている。ヒーター202は、制御部210の制御を受けて、洗浄部200内のタンクに蓄えられた洗浄水を加熱する。温度検知部204は、洗浄水の温度を検知し、その温度情報を制御部210へフィードバックする。ノズル駆動部206は、ノズルを駆動させ、洗浄水を吐出するように構成されている。
【0046】
制御部210は、演算処理部(CPU)212と、記憶部214と、タイマ216と、カウンタ218とを備え、遠隔操作装置130、センサ部150、便座140および洗浄部200を制御するように構成されている。
【0047】
図3は、センサ部150によって検知された電波または赤外線の電圧波形を示す図である。電波センサ160によって検出された電圧波形がW1、焦電センサ170によって検出された電圧波形がW2、並びに、着座センサ180によって検出された電圧波形がW3で示されている。これらの電圧波形W1〜W3は、センサ部150によって受信された受信波を、制御部210に含まれる周波数帯域フィルタを用いてフィルタリングすることによって得られた所望の周波数帯域の波形である。制御部210は、電圧波形W1〜W3の振幅電圧の変化によって、電波センサ160がユーザの人体を検知したこと(人体検知)、焦電センサ170がユーザの入室を検知したこと(入室検知)、並びに、着座センサ180がユーザの着座を検知したこと(着座検知)を判断することができる。
【0048】
ユーザがトイレルーム105に接近し、電波センサ160の第1の検知領域DR1に進入すると、まず、電波センサ160によって検出されるマイクロ波の電圧振幅が大きくなる。このとき、マイクロ波の電圧振幅が所定の閾値±Vth(例えば、上限閾値電圧+Vthおよび/または下限閾値電圧−Vth)を超えると、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。閾値は、ユーザの人体を検知するために用いられるパラメータであり、例えば、ノイズの平均レベルを基準として設けられた上限閾値電圧および下限閾値電圧、あるいは、所定のS/N比により表現され得る。また、ユーザが第1の検知領域DR1に進入すると、マイクロ波は、電圧値だけでなく周波数も変化する。従って、電波センサ160は、ドップラ効果を利用し、マイクロ波の送信波と受信波との周波数差を検知することによって人体の移動速度を検知することができる。このため、閾値は、ユーザの移動速度の減速率で表現されてもよく、あるいは、送受信されるマイクロ波の周波数差で表現されてもよい。
【0049】
図3の閾値電圧±Vthは、所定のS/N比(Signal-to-Noise ratio)で決定される。例えば、閾値を決定する所定のS/N比(以下、判定S/N比ともいう)が1.5であるとすると、閾値電圧は、ノイズ(暗雑音)の電圧振幅の1.5倍の振幅を有する電圧の上限および下限となる。
【0050】
制御部210は、反射波の信号レベルが閾値を単位(所定)時間に所定回数超えた場合に、電波センサ160が人体を検知したものと判断してもよい。例えば、判定S/N比が1.5であり、かつ、所定回数が5回であるとすると、ノイズの振幅に対して1.5倍以上の振幅を有する反射波が単位時間に5回以上検知された場合に、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断する。この場合、カウンタ218は、上限閾値および下限閾値の両方または一方を超える反射波のピーク値およびボトム値をカウントする。尚、上記の単位時間や所定回数は、予め記憶部214に格納しておけばよい。
【0051】
電波センサ160による人体検知時点をt0とする。人体検知時点t0は、上限と下限との閾値幅を小さくすることによって(即ち、判定S/N比を小さくすることによって)、早めることができる。即ち、ユーザの人体を早く検出するためには、判定S/N比を小さくすればよい。これは、判定S/N比を小さくすることによって、第1の検知領域DR1を広げることができるからである。判定S/N比を限りなく小さくすれば、第1の検知領域DR1を非常に大きくすることができるので、電波センサ160は、トイレルーム105から遠く離れたユーザであってもその人体を検知することができる。
【0052】
ただし、第1の検知領域DR1を大きく広げれば、電波センサ160は、実際にトイレルーム105に入室しないユーザの人体を検知する頻度が多くなる。従って、閾値は、早い時点で人体を検知することと、非入室推定(人体を検知したにも拘わらずユーザがトイレルーム105に入室しないこと)の頻度の低減とのバランスを考慮して設定される。
【0053】
尚、後述するように、閾値は、予め決定されていても、演算処理部212によって演算で自動に決定されてもよく、あるいは、ユーザや施工業者によって手動で決定されてもよい。閾値は、決定後、記憶部214に格納される。
【0054】
ユーザは、第1の検知領域DR1に進入後、トイレルーム105のドアを開けて、トイレルーム105内に入る。ユーザが第2の検知領域DR2に進入すると、焦電センサ170は、ユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧(初期電圧値に対する変化量)を超えた場合に、制御部210は、焦電センサ170が人体を検知したものと判断する。焦電センサ170がユーザの入室を検知した時点を入室時点t1とする。
【0055】
本実施形態では、人体検知時点t0から入室時点t1までの時間をアプローチ時間T1と定義する。即ち、アプローチ時間T1は、マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えた時点(t0)からユーザがトイレルーム105に入室する時点(t1)までの時間である。さらに換言すると、アプローチ時間T1は、ユーザがトイレルーム105へ接近して第1の検知領域DR1に進入した時点(t0)から、ユーザが第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)までの時間である。
【0056】
その後、ユーザが便座140に着座すると、着座センサ180がユーザの人体を検出する。赤外線の信号レベルが所定の閾値電圧を超えた場合に、制御部210は、着座センサ180が人体を検知したものと判断すればよい。このように、着座センサ180がユーザの着座を検知した時点を着座時点t2とする。
【0057】
本実施形態では、入室時点t1から着座時点t2までの時間を着座時間T2と定義する。即ち、着座時間T2は、ユーザがトイレルーム105に入室して第2の検知領域DR2に進入した時点(t1)から、ユーザが便座140に着座する時点(t2)までの時間である。
【0058】
また電波センサ160が人体を検知した時点(t0)から着座センサ180がユーザの着座を検知する時点(t2)までのトータル時間をTtotalと定義する。トータル時間Ttotalを長くすることによって、便座140のヒーター142の加熱電力が低くても、制御部210は、ユーザの着座時t2までに便座140を適温(目標温度)まで昇温させることができる。また便座140の加熱電力を低く抑えることで、トイレルーム外のユーザを検知しつつも所定時間内にユーザが入室しなかった非入室推定の場合の消費電力も低く抑えることができる。さらに、ヒーター142の加熱電力を低く抑えることで、暖房便座装置の安全な使用も図ることができる。
【0059】
尚、電波センサ160は、人体の移動速度の他に、トイレルーム105のドアの開閉も検出することができる。ドアの材質が比誘電率の比較的小さい木材であったとしても反射有効断面積が人体よりも大きい。従って、人体がドア付近を移動する時とドアが開閉する時の電波センサ160にて受信される反射波(検波後の電圧振幅値)を比較すると、ドアが開閉する時の方が極端に大きくなる。よって、電波センサ160は、人体の移動速度の減速率またはトイレルーム105のドアの開閉を検知することによって、ユーザの入室を検知できる。従って、焦電センサ170を省略して、電波センサ160によって、入室検知をしてもよい。さらに、電波センサ160は、マイクロ波の周波数(位相)あるいは電圧値の時系列変化によってユーザの着座も検知できる。従って、着座センサ180を省略して、電波センサ160によってユーザの着座検知を行ってもよい。このように、人体検知、入室検知、および、着座検知は電波センサ160のみにより実行することも可能である。この場合、焦電センサ170および着座センサ180が不要となるので、コストが低減される。
【0060】
ところで、第1の検知領域は実際にトイレ装置100を設置する環境によって変化する。第1の検知領域DR1が変化すると、人体検知から着座検知までの実際の時間(トータル時間Ttotal)も変化する。さらに、トータル時間Ttotalは、ユーザの移動速度によっても変化する。このため、トータル時間Ttotalの設定には或る程度の推測が必要となる。本実施形態による便座装置110は、実測値に基づいてトータル時間Ttotalを決定し、トータル時間Ttotalに応じてヒーター142の加熱電力を制御する。これにより、便座装置110は、ヒーター142の加熱電力をできるだけ低くしつつ、ユーザの着座時までに便座を適切な温度まで昇温させる。このようにして、暖房便座装置の消費電力の低減および暖房便座装置の安全な使用を図ることができる。
【0061】
[基準テーブル]
図4は、基準テーブルの一例を示す図である。基準テーブルは、トイレ装置100の設置直後から便座装置110の即暖機能を利用することができるように、製造メーカによって出荷前に設定され記憶部214に予め格納されている。例えば、基準テーブルでは、目標温度TEMPtrgが29℃、待機温度(トイレ装置100が利用されていない待機時における便座140の温度)TEMPstbが26℃、トータル時間Ttotal内に昇温すべき温度ΔTEMP(ΔTEMP=TEMPtrg−TEMPstb)が3℃、トータル時間Ttotalが6秒、判定S/N比(閾値)が1.2、加熱電力が200Wに設定されている。尚、当初、どのようなユーザが使用したとしても、ユーザの着座時までに便座140を目標温度TEMPtrgまで昇温できるように、基準テーブルでは、加熱電力は高めに設定されている。
【0062】
上述の通り、電波センサ160が人体を検知してから着座センサ180がユーザの着座を検知するまでの実測時間(トータル時間Ttotalの実測値)は、トイレ装置100が実際に設置されている環境によって変化する。環境とは、たとえばトイレルーム105自体の構造、トイレルーム105の周辺の構造、ユーザ自身の特徴、トイレ装置100の使用状況等である。より具体的には、トイレルーム105のドアの位置、ユーザがトイレルームへ接近するときの進行方向、ユーザの移動速度、トイレルーム105の構造、トイレルームに通じる通路(廊下)の延伸方向、トイレルームにおけるドアの開閉状態、トイレルームの壁の材質またはドアの材質、ユーザの年齢(老若男女)、ユーザの着衣の多さ(季節)、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯等である。
【0063】
実際にユーザが第1の検知領域DR1に進入してから入室するまでの実測時間(アプローチ時間T1の実測値)は、例えば、トイレルーム105のドアの位置、ユーザがトイレルームへ接近するときの進行方向、ユーザの移動速度、トイレルーム105の構造、トイレルームに通じる通路(廊下)の延伸方向、トイレルームにおけるドアの有無、トイレルームの壁の材質またはドアの材質等によって変化する。実際にユーザが入室してから便座140に着座するまでの実測時間(着座時間T2の実測値)は、例えば、ユーザの年齢(老若男女)、ユーザの着衣の多さ(季節)等によって変化する。
【0064】
このような事情から、図4に示す基準テーブルは、必ずしもトイレ装置100が設置された環境に適合しているとは限らないため、この基準テーブルを、トイレ装置100の設置後にその環境に適合するように更新して適合テーブルを生成し適合テーブルに基づき即暖制御を行うことが好ましい。あるいは、基準テーブルを更新するのではなく、使用環境に適合するように別途新たに適合テーブルを生成するようにしてもよい。これらの方法は後述する。
【0065】
ここで基準テーブルの設定は、様々なユーザがトイレ装置100を利用した場合であっても、着座時点t2において便座140を確実に目標温度TEMPtrgまで昇温するために、基準テーブルの待機温度TEMPstbおよび加熱電力の設定は統計的に決定されることが好ましい。例えば、図6のような標準的なトイレルームを用意し、複数のユーザにトイレ装置100を使用してもらう。このとき、便座装置110は、人体検知時点t0から着座時点t2までの時間を実測する。この実測値のうち最小値を基準テーブルのトータル時間Ttotalとし、該トータル時間Ttotalに基づいて基準テーブルの待機温度TEMPstbおよび加熱電力を設定する。人体検知時点t0から着座時点t2までの実測時間のうち最小値をトータル時間Ttotalとして設定することで、どのようなユーザがトイレ装置100を利用しても、制御部210は、着座時点t2において便座140を確実に目標温度TEMPtrgまで昇温させることができる。
【0066】
代替的に、トータル時間Ttotalの実測値のヒストグラムから最も頻度の多い測定値をトータル時間Ttotalとして設定してもよい。ユーザがトイレルーム105へ駆け込んだ場合のように、人体検知時点t0から着座時点t2までの実測値が非常に短時間である場合がある。頻度の多い時間をトータル時間Ttotalとして設定することによって、このような例外的な状況を排除して、基準テーブルの待機温度TEMPstbを設定することができる。
【0067】
図5(A)は、トータル時間Ttotalと便座140の温度との関係を示すグラフである。待機温度TEMPstbは上述したように便器を使用していないときの便座140の温度、目標温度TEMPtrgはユーザが着座したときにユーザに不快感を与えないための便座190の温度、設定温度TEMPsetは、ユーザが所望する便座140の温度である。一般に目標温度TEMPtrgは、設定温度TEMPsetよりも低い温度である。便座140は、トータル時間Ttotal時間(本例では6秒)にて目標温度TEMPtrgに達するように、基準テーブルまたは後述の適合テーブルに設定された加熱電力(例えば300W)で加熱された後、設定温度TEMPsetまで加熱され、設定温度TEMPsetに維持される。
【0068】
人体検知時点t0まで制御部210は、便座140の温度を待機温度TEMPstbに維持している。人体検知時点t0において、制御部210はヒーター142によって便座140の温度を待機温度TEMPstbから加熱し始める。そして、着座時点t2において、便座140の温度が目標温度TEMPtrgに達していることが望まれる。図5(A)に示す便座140の温度変化T140aは、ヒーター142の電力、ヒーター142から便座140への熱伝達特性およびヒーター142への印加電圧とその通電時間に依存する。本例では温度変化T140aの傾きは一定であり、ヒーター142の電力は一定である。
【0069】
なお、図5(A)に示すように人体検知時点がt0からt0’にずれてトータル時間Ttotalの実測値が短くなった場合、t0の場合よりも便座140の加熱開始が遅くなるので、ユーザの着座時までに便座140の温度を目標温度TEMPtrgまで昇温するためには、矢印のように加熱電力を高くする必要がある。
【0070】
図5(A)の例では、基準テーブルまたは適応テーブルに設定された一定の加熱電力で便座140を加熱する例が示されるが、加熱の方法はこれに限定されない。
【0071】
たとえば目標温度TEMPtrgに達した以降は、当該テーブルで設定された加熱電力と異なる電力で加熱を行っても良い。たとえば目標温度に達した以降の電力を事前に指定してき、目標温度に達した以降はこの指定した電力で加熱を行っても良い。すなわちこの場合、当該テーブルで設定された値は目標温度TEMPtagに達するまでの加熱電力を意味する。上記指定の電力はたとえばテーブルに設定された加熱電力より小さくても大きくても良い。上記指定の電力が大きければユーザの所望する設定温度に速く達することができ、一方、小さければ安全性に優れた即暖を実現できる。
【0072】
また目標温度TEMPtrgに達するまでの加熱電力も常に一定でなく、時間に応じて変化してもよい。たとえば図5(B)の温度変化T140bに示すように、加熱開始から目標温度TEMPsetに達するまでの電力を時間に応じて2段階もしくはそれより大きい段階に分けてもよい。この場合、平均電力がテーブルで設定された加熱電力に一致または略一致するようにする。
【0073】
以降の説明では簡単のため加熱電力は常に一定であるとするが、本発明は上記のようにこれに限定されるものではない。
【0074】
図7は、便座装置110による即暖制御の基本的な動作の流れを示すフロー図である。即暖制御は基準テーブル(図4参照)または後述する適合テーブル(図10参照)に基づき行われる。
【0075】
まず、記憶部214に基準テーブルまたは適合テーブルが格納されているか否かを確認し、適合テーブルが格納されていれば適合テーブルを、格納されていなければ基準テーブルを読み出す(S10)。
【0076】
便座装置110は読み出したテーブルに基づき待機制御を行う(S11)。待機制御においては、制御部210は、便座140の温度を待機温度TEMPstbに維持する。
【0077】
ユーザから即暖機能オフの入力があった場合は(S12のYES)、本フローを終了する。
【0078】
即暖機能オフの入力がない場合は(S12のNO)は、マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたか否かを検査し(S13)、超えていない場合は(S13のSO)、ステップS11の制御に戻る。すなわち電波センサ160が人体を検知するまで、待機制御が行われる。
【0079】
ユーザがトイレルーム105に接近したことによりマイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えた場合(S13のYES)、制御部210は、電波センサ160が人体を検知したものと判断して、便座装置110は便座140の昇温動作を開始し、タイマ216は計時を開始する(S14)。
【0080】
タイマ216による計時開始後、第1の制限時間以内に焦電センサ170がユーザの人体を検知しない場合は(S15のNO)、ユーザがトイレルーム105へ入室しないと制御部210は推定する。すなわち人体検知時点t0の後、焦電センサ170がユーザの人体を検知することなくタイマ216の時間が第1の制限時間を超えた場合、制御部210は、ユーザがトイレルーム105に入室しないと推定する。以下、便座装置110が昇温動作を開始した後に、ユーザが入室しないと制御部210が判定することを“非入室推定”という。
【0081】
制御部210が非入室推定を判断した場合(S15のNO)、制御部210は、便座140の昇温動作を停止し、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S16)。この後、ステップS11の待機制御に戻る。第1の制限時間は、記憶部214に予め格納されている。
【0082】
一方、焦電センサ170がユーザの入室を検知した(S15のYES)後、第2の制限時間以内に着座センサ180がユーザの着座を検知しない場合(たとえば男性小便時のような場合)(S17のNO)、ユーザがトイレ装置100を利用しないものと制御部210は推定する。すなわち人体入室検知時点t1の後、着座センサ180がユーザの着座を検知することなくタイマ216の時間が第2の制限時間を超えた場合、制御部210はユーザがトイレ装置100を利用しないものと推定する。以下、便宜的に、この推定を“非使用推定”という。
【0083】
制御部210が非使用推定を判断した場合(S17のNO)、昇温動作を停止し、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S16)。この後、便座装置110は、ステップS11の待機制御に戻る。第2の制御時間は、記憶部214に予め格納されている。
【0084】
ユーザの入室後、着座センサ180がユーザの着座を検知した場合(S17のYES)、タイマ215の計時を終了しタイマ216の時間をリセットし(S18)、その後、目標温度に達したか否かを確認する(S19)。目標温度に達するまで待機し(S19のNO)、目標温度に達したら(S19のYES)、保温制御を実行する(S20)。保温制御では、便座が設定温度になるまで加熱を継続し、設定温度に達したら、便座が設定温度に維持されるように制御する。
【0085】
保温制御中に着座センサ180がユーザの存在(使用)を検出している間は(S21のYES)は保温制御を継続し、ユーザの非使用を検出したら(S21のNO)、ステップS11の待機制御に戻る。なお、ステップS19において、目標温度に達する前に、着座センサ180がユーザの不在を検出したら、昇温動作を停止して、ステップS11の待機制御に戻ってもよい。
【0086】
[適応テーブルの自動設定]
図4に示す基準テーブルは、上述の通り、トイレ装置100が設置される環境に適合していない場合がある。このような場合、トイレ装置100が設置される環境に適合した適応テーブルを作成し、適応テーブルに基づき図7に示した即暖を行うことが望ましい。
【0087】
図8は、適応テーブルの待機温度TEMPstbを自動設定するために用いられる制御データテーブルを示す。本実施形態では、制御部210は、トイレ装置100の設置後に実際に測定されたトータル時間Ttotalの実測値と、ユーザ選択の待機温度TEMPstbに基づいて、トイレ装置100の設置環境に適合した加熱電力を制御データテーブルから選択する。この際、目標温度TEMPtrgおよび判定S/N比は、基準テーブルのそれらと同じ値に固定されているものとする。例えば、TEMPtrgは29℃、S/N比は1.2に固定されている。基準テーブルが無い場合には、目標温度TEMPtrgおよび判定S/N比は、ユーザまたは施工業者が遠隔操作装置130の機能設定部132を操作して設定すればよい。なお、待機温度TEMPstbもユーザ選択ではなく基準テーブルのそれと同じ値に固定されてもよい。
【0088】
例えば、トータル時間Ttotalの実測値が5.5秒で、待機温度TEMPstbが26℃であった場合、制御部210は、制御データテーブルに基づいて加熱電力を300Wに決定する。尚、図8に示すように、トータル時間Ttotalが長いほど、便座140の昇温時間を長くとれるので、加熱電力を低くできる。
【0089】
図8の例では、トータル時間Ttotalと待機温度TEMPstbに応じて加熱電力を決定するが、代替的に、着座時間T2を所定時間に固定し、アプローチ時間T1の実測値(実測時間)と待機温度TEMPstbに応じて加熱電力を決定してもよい。即ち、制御部210は、ユーザの人体検知から入室検知までの実測時間をアプローチ時間T1として決定し、該アプローチ時間T1と待機温度TEMPstbに基づいて加熱電力を設定する。この場合、図8の制御データテーブルに代えて、アプローチ時間T1と待機温度TEMPstbと加熱電力との対応関係を示す制御データテーブルを用いればよい。
【0090】
図8の例では目標温度を固定にした場合を示したが、目標温度をユーザ選択可能にしてもよい。この場合は図8と同様のテーブルを目標温度毎に用意し、ユーザが選択した目標温度に対応するテーブルを用いればよい。
【0091】
図9は、適応テーブルの自動作成の手順の流れを示すフロー図である。適応テーブルの自動作成は、図7に示した即暖フローの処理と並行して行われる。
【0092】
まず、適応テーブルが記憶部214に格納されているか否か、すなわち既に作成済みであるか否かを確認する(S100)。適応テーブルが既に作成されているときは(S100のYES)、本処理を終了する。
【0093】
適応テーブルが記憶部214に格納されていない場合(S100のNO)、以降の自動作成ルーチン(ステップS130〜S240)に進む。
【0094】
制御部210は、図7の即暖フローのステップS13でマイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたと判定されるまで、すなわち電波センサ160が人体を検知するまで待機する(S130のNO)。マイクロ波の反射波の測定値が閾値を超えたと判定されると(S130のYES)と、タイマ216による計時を開始する(S140)。このときタイマ216の計時は図7の即暖フローのステップS14と共通化してもよいし、当該ステップS14とは別途異なるタイマを用意し、このタイマを用いて行ってもよい(すなわち本フローと図7の即暖フローでタイマの計時開始、終了、リセットのタイミングは同一にできる。以下同様)。
【0095】
次に、図7の即暖フローのステップS15で、焦電センサ170によりユーザの人体が検知された場合(S150のYES)、すなわち電波センサ160が人体検知時点t0で人体を検知した後、第1の制限時間以内に焦電センサ170がユーザの人体を検知した場合、制御部210は、その時点におけるタイマ216の時刻に基づいてアプローチ時間T1を計算して記憶部214に記憶する(S160)。アプローチ時間T1は、電波センサ160の人体検知時点t0から焦電センサ170の入室検知時点t1までの時間(t1−t0)として計算される。即ち、この段階で、アプローチ時間T1の実測値が得られる。
【0096】
一方、図7の即暖フローにおいて電波センサ160により人体検知時点t0で人体が検知された後、第1の制限時間以内に焦電センサ170によりユーザの人体が検知されなかった場合は(S150のNO)、すなわち制御部210が非入室推定を判断した場合は、制御部210は、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S155)。この後、ステップS130の待機状態に戻る。ここで第1の制限時間は、図7の即暖フローで説明したものと同一である。第1の制限時間は、たとえば基準テーブルのアプローチ時間T1よりも長く設定される。
【0097】
次に、図7の即暖フローのステップS17において、着座センサ180によりユーザの着座が検知された場合(S170のYES)、すなわち、焦電センサ170によりユーザの入室が検知された後、第2の制限時間以内に着座センサ180によりユーザの着座が検知された場合、制御部210は、その時点におけるタイマ216の時刻に基づいて着座時間T2を計算して記憶部214に記憶する(S180)。着座時間T2は、焦電センサ170の入室検知時点t1から着座センサ180の着座検知時点t2までの時間(t2−t1)となる。また制御部210は、タイマ216の計時を終了し、タイマ216をリセットする。
【0098】
一方、図7の即暖フローにおいて焦電センサ170によりユーザの入室が検知された後、第2の制限時間以内に着座センサ180によりユーザの着座が検知されなかった場合(たとえば男性小便時のような場合)(S170のNO)、すなわち制御部210が非使用推定を判断した場合は、タイマ216の計時を終了させ、タイマ216の時間をリセットする(S155)。この後、便座装置110は、ステップS130の待機状態に戻る。ここで第2の制限時間は、図7の即暖フローで説明したものと同一である。第2の制限時間は、たとえば基準テーブルのトータル時間Ttotalよりも充分に長い時間に設定されることが好ましい。また第2の制限時間は第1の制限時間よりも長いことが好ましい。なお、上記非使用推定がなされた場合、ステップS160において得られたアプローチ時間T1の実測値は、記憶部214から消去する。ただし、このアプローチ時間T1の実測値を消去せずに、後述のステップS200においてアプローチ時間T1を算出する際に利用することも可能である。
【0099】
ステップS180において着座時間T2の計算および記憶、タイマ216の計時終了およびリセットが完了したら、その後、カウンタ218が記憶回数を1だけ増加させる(S190)。記憶回数は、ステップS180において着座時間T2を記憶部214に記憶した回数に相当する。
【0100】
記憶回数が所定回数(例えば、10回)に達していない場合(S195のNO)、便座装置110は、待機状態(S130)に戻り、さらに、アプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値の測定を継続する。このように、便座装置110は、ステップS130〜S195を繰り返し実行する。
【0101】
記憶回数が所定回数に達した場合(S195のYES)、制御部210は、記憶部214に格納されたアプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値に基づき、適応テーブルの設定するべきアプローチ時間T1および着座時間T2を決定する(S200)。
【0102】
例えば、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値を単純に平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。あるいは、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値のうち最大値および最小値を除いた実測値を平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。さらに、制御部210は、記憶部214に格納された10個のアプローチ時間T1の実測値のうち、値の小さい方から5個の実測値を平均し、その平均値を適応テーブルのアプローチ時間T1としてもよい。適応テーブルの着座時間T2についても、アプローチ時間T1と同様に演算することによって得られる。
【0103】
次のステップS210では演算処理部212は、適応テーブルのアプローチ時間T1および着座時間T2を足し算することにより適応テーブルのトータル時間Ttotalを計算する。トータル時間Ttotalの別の計算方法として。ステップS180で着座時間が計算された際にトータル時間の実測値(T1+T2)も併せて計算および記憶しておき、ステップS200において、アプローチ時間T1および着座時間T2と同様の計算により、適応テーブルのトータル時間Ttotalを計算してもよい。
【0104】
ステップS200およびS210において算出されたアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalは、適応テーブルの一部として記憶部214に記憶される(S220)。
【0105】
尚、適応テーブルに用いられるアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの算出方法は、上記演算に限定されない。
【0106】
次に、制御部210は、図8に示す制御データテーブルを参照し、適応テーブルのトータル時間Ttotalを用いて加熱電力を決定する(S230)。例えば、適応テーブルのトータル時間Ttotalが8.5秒、待機温度TEMPstbが26℃であった場合、制御部210は、加熱電力を150Wに決定する。本ステップS230で決定した加熱電力も、適応テーブルの一部として記憶部214に記憶される。
【0107】
この後、さらに基準テーブルの目標温度TEMPtrg、待機温度TEMPstb、昇温温度ΔTEMP、判定S/N比(閾値)と同一の値を適応テーブルに書き込み、これにより、トイレ装置110の設置された環境に適合した適応テーブルが作成される(S240)。作成された適応テーブルの一例が図10に示される。
【0108】
適応テーブルの作成後、便座装置110は、図7の即暖フローのステップS10でその適応テーブルを新たに読み込み、以降は、基準テーブルに代えて、適応テーブルに基づき即暖制御を実行する。
【0109】
このように、図9のフローでは、適応テーブルのアプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalをそれらの実測値から決定し、決定したトータル時間Ttotalと、待機温度TEMPstbに基づいて制御テータテーブルから加熱電力を決定する。これにより、トイレ装置100の設置環境に適合した適応テーブルを作成することができる。
【0110】
また、図9のフローに従うことで、適応テーブルを自動で作成できるため、ユーザおよび施工業者が、設置環境に適合した適応テーブルの設定を自ら行う手間は生じない。
【0111】
また、図9のフローでは、ステップS200およびS210において、アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの計算の際、複数の実測値のうち最大値および最小値を除くようにしたため、ユーザがトイレルーム105へ駆け込んで入室した場合のような例外的な状況のみに基づいて適応テーブルが作成されることは阻止され、トイレ装置100の設置環境に対する適応テーブルの適合度を高くできる。
【0112】
さらに、図9のステップS200およびS210において、アプローチ時間T1、着座時間T2およびトータル時間Ttotalの計算の際、複数の実測値のうち値の小さい複数の実測値を用いるようにしたことにより、移動速度の速いユーザに適合するように適応テーブルを作成することができる。よって、制御部210は、ほとんどのユーザの場合に着座時までに便座140の温度を確実に目標温度TEMPtrgに昇温させることができる。
【0113】
例えば、移動速度の遅い(実際のアプローチ時間T1の長い)高齢者に適合するように適応テーブルを作成したとすると、高齢者よりも移動速度の速い若年者がトイレ装置100を使用した場合に、便座140の温度が目標温度TEMPtrgまで達しないことが生じ得る。このような状況を回避するために、本実施形態では、値の小さい実測値を用いることで、移動速度の速い(実際のアプローチ時間T1の短い)若年者に適合するように適合テーブルを作成する。これにより、若年者および高齢者のいずれがトイレ装置100を使用しても、便座140の温度は、ユーザの着座時までに、目標温度TEMPtrgまで確実に達し得る。
【0114】
[適応テーブルの更新]
適応テーブルは、既に説明したように、トイレ装置100の設置環境に適合するように作成されている。従って、一旦作成された適応テーブルは、そのまま継続的に即暖制御に用いられてもよい。しかし、トイレ装置100の設置された環境の変化によって、適応テーブルが実際の環境に適合しなくなる場合がある。例えば、ユーザの年齢の変化、季節の変化(ユーザの着衣の変化)、ユーザの在宅時間帯の変化、ユーザの睡眠時間帯の変化、リフォームによるトイレルーム105の構造の変化等により、人体検知時点t0から着座時点t2までの実際の時間が変化する場合がある。このような場合、ユーザの着座時t2に便座140の温度が目標温度TEMPtrgまで達しない可能性がある。そこで、このような場合は、新たな環境に適合するように適応テーブルを更新することが考えられる。
【0115】
図11は、適応テーブルの更新の手順を示すフロー図である。
【0116】
まず、図9の自動作成フローのステップS130〜S180を実行する。すなわち、アプローチ時間T1の実測値(更新用実測時間)および着座時間T2の実測値を新たに測定し、アプローチ時間T1および着座時間T2の各実測値を、記憶部214に格納する。ここで、新たに測定されたアプローチ時間および着座時間の各実測値を、それぞれ更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nとする。
【0117】
次に、制御部210は、更新用アプローチ時間T1Nを適応テーブルのアプローチ時間T1と比較し、更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にあるか否かを判定する(S300)。これは、ユーザがトイレルーム105へ駆け込んだ場合にように例外的な状況で得られた時間T1Nを排除するためである。
【0118】
更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にある場合(S300のYES)、制御部210は、更新用アプローチ時間T1Nと適応テーブルのアプローチ時間T1との平均値を、新しいアプローチ時間T1として適応テーブルへ登録する(S310)。
【0119】
尚、新しいアプローチ時間T1の計算方法はこれに限定されず、他の演算により得られた値でもよい。例えば、アプローチ時間T1を得た際の実測回数に基づいてアプローチ時間T1と更新用アプローチ時間T1Nとに重み付けをして平均してもよい。具体的には、アプローチ時間T1がn個の実測時間の平均値である場合、更新用アプローチ時間T1Nは1回の実測値であるので、制御部210は、(T1×n+T1N×1)/(n+1)を演算した結果を新しいアプローチ時間T1としてよい。即ち、制御部210は、元のアプローチ時間T1の重み付けをnとし、実測された更新用アプローチ時間T1Nの重み付けを1として、平均値を演算する。このとき、カウンタ218は、アプローチ時間T1の測定回数をカウントし、nをn+1とする。次の新しいアプローチ時間T1を算出する際には、制御部210は、その時点での適応テーブルのアプローチ時間T1の重み付けを(n+1)とし、次に実測された更新用アプローチ時間T1Nの重み付けを1とすればよい。カウンタ218の測定回数は、必要に応じて手動または自動でリセットしてもよい。
【0120】
一方、更新用アプローチ時間T1Nが、適応テーブルのアプローチ時間T1に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にない場合(S300のNO)、制御部210は、適応テーブルのアプローチ時間T1を更新しない。
【0121】
次に、制御部210は、新しく測定された更新用着座時間T2Nを適応テーブルの着座時間T2と比較し、更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にあるか否かを判定する(S320)。これも、上述のように例外的な状況で得られた着座時間T2Nを排除するために行われるものである。
【0122】
更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にある場合(S320のYES)、制御部210は、更新用着座時間T2Nと適応テーブルの着座時間T2との平均値を、新しい着座時間T2として適応テーブルへ登録する(S330)。尚、新しい着座時間T2の計算方法はこれに限定されず、他の演算により得られた値でもよい。例えば、着座時間T2もアプローチ時間T1と同様に、着座時間T2を得た際の実測回数に基づいて元の着座時間T2と更新用着座時間T2Nとに重み付けをして平均してもよい。
【0123】
一方、更新用着座時間T2Nが、適応テーブルの着座時間T2に対して所定の割合の範囲(例えば、±30%)内にない場合(S320のNO)、制御部210は、適応テーブルの着座時間T2を更新しない。
【0124】
その後、制御部210は、図9の自動作成フローのステップS210〜S230を実行し、更新されたアプローチ時間T1および更新された着座時間T2に基づいて適応テーブルの加熱電力を更新する。
【0125】
適応テーブルの更新後、更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nの各実測値は不要となるので、記憶部214から消去する(S340)。便座装置110は、更新された適応テーブルを用いて即暖制御を実行する。
【0126】
このように、図11の更新フローでは、更新用アプローチ時間T1Nおよび更新用着座時間T2Nの測定を継続して実行し、それらの実測値に基づいて適応テーブルの値(加熱電力等)を更新する。このようにして、トイレ装置100の設置環境の変化に応じて、適応テーブルを更新できる。例えば、季節の移り変わりにより、気温等の環境が変化すると、適切な加熱電力も変化する。このような場合であっても、更新用アプローチ時間T1Nの実測値に基づいて適応テーブルを更新することによって、加熱電力も適切に設定し直すことができる。
【0127】
[複数の適応テーブルからの選択]
ここでは複数の時間帯に応じてそれぞれ別個の適応テーブルを作成し、即暖制御の際はその時間帯に応じた適応テーブルを用いて即暖制御を行う場合を示す。例えば、ユーザの活動時間帯では、第1の検知領域DR1が広く設定されていると、ユーザの活動時に、ユーザは、第1の検知領域DR1を通過することが多くなる。これは、非入室判定の頻度を増大させる原因となる。従って、非入室推定の頻度を抑制するために、第1の判定S/N比は高目に設定した適応テーブルを作成することが望ましい。一方、ユーザの睡眠時間帯では、ユーザは第1の検知領域DR1を通過することが比較的少なく、非入室推定の頻度が低いと推測される。従って、第2の判定S/N比は低めに設定して電波センサ160が人体を早い段階で検出するようにした適応テーブルを作成することが望ましい。
【0128】
以下、複数の時間帯に応じてそれぞれ個別の適応テーブルを作成する手順を説明する。当該作成の手順は基本的には図9の自動作成フローと同じであるが、一部処理が拡張されている。以下ではその拡張された処理を中心に説明する。
【0129】
前提として、図2に示すタイマ216は、日時を計る時計機能を有し、記憶部214には、複数の時間帯に対応した複数の判定S/N比が格納されているものとする。本例では、1日の時間帯のうち、午前8時から午後10時までを第1の時間帯とし、午後10時から午前8時までを第2の時間帯とする。そして、記憶部214には、第1の時間帯に対応する第1の判定S/N比と、第2の時間帯に対応する第2の判定S/N比とを予め格納されている。第1の時間帯はユーザの活動時間帯に該当するため、非入室推定の頻度を抑制すべく第1の判定S/N比を高めに設定し、第2の時間帯はユーザの睡眠時間帯に該当するため、アプローチ時間を長くとって加熱電力を低くするべく、第2の判定S/N比を低めに設定する。
【0130】
図9のステップS130の閾値判定において、制御部210は時間帯に応じた閾値(判定S/N比)を用いて判定を行う。そしてステップS160、S180では、測定した時間T1および時間T2を、上記時間帯に分類して記憶する。たとえば午前9時に人体検出されたときは、測定した時間T1および時間T2を第1の時間帯のグループに分類して記憶する。
【0131】
図9のステップS195では時間帯毎にそれぞれ記憶回数が所定回数(たとえば10回)に達したか否かを判定し、所定回数に達した時間帯について、図9のステップS200〜S240を行う。
【0132】
この際、ステップS220では図12に示すフローの処理を行う。
【0133】
まず所定回数に達した時間帯が第1の時間帯および第2の時間帯のいずれであるかを判断する(S500)。
【0134】
所定回数に達した時間帯が第1の時間帯である場合(S500のYES)、制御部210は、決定されたアプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotalと、第1の判定S/N比とを第1の適応テーブルに格納し、第1の適応テーブルを記憶部214に第1の時間帯と関連づけて記憶する(S510)。そして図9のステップS230で加熱電力を決定して第1の適応テーブルに格納し、さらにステップS240で基準テーブル内の目標温度、待機温度、昇温温度と同一の値を第1の適応テーブルに格納し、これにより第1の適応テーブルが作成される。以降、便座装置110は、図7の即暖フローにおいて、第1の時間帯では、第1の適応テーブルを読み込み(図7のS10)、即暖制御を行う。
【0135】
一方、所定回数に達した時間帯が第2の時間帯である場合(S500のNO)も同様に、制御部210は、決定されたアプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotalと、第2の判定S/N比とを第2の適応テーブルに格納し、第2の適応テーブルを記憶部に第2の時間帯と関連づけて記憶する(S520)。そして図9のステップS230で加熱電力を決定して第2の適応テーブルに格納し、さらにステップS240で基準テーブル内の目標温度、待機温度、昇温温度と同一の値を第2の適応テーブルに格納し、これにより第2の適応テーブルが作成される。以降、便座装置110は、図7の即暖フローにおいて、第2の時間帯では、第2の適応テーブルを読み込み(図7のS10)、即暖制御を行う。
【0136】
以上により、便座装置110は、第1の時間帯では第1の適応テーブル、第2の時間帯では第2の適応テーブルのように、時間帯(時期)によって異なる適応テーブルを使い分けて即暖制御を行うことができる。すなわち、第1の時間帯(第1の時期)と第2の時間帯(第2の時期)に応じて異なるアプローチ時間に基づき即暖制御を行う。
【0137】
上述した例では、1日を2つの時間帯に分けた場合を説明したが、3つ以上の異なる時間帯に分けて、それぞれの時間帯毎に適応テーブルの生成および即暖制御を行ってもよい。
【0138】
上述した例では時間帯に応じて異なる閾値を用いて適応テーブルを作成したが、季節ごとに異なる目標温度TEMPtrgの適応テーブルを作成しても良い。例えば、制御部210は、タイマ216の時計が6月から9月において目標温度TEMPtrgを比較的低く設定し、10月〜5月において目標温度TEMPtrgを比較的高く設定する。目標温度TEMPtrgを比較的低く設定すれば、その分加熱電力も低く設定することができる。従って、制御部210は、トイレ装置100の設置環境の変化に応じて便座装置110の消費電力を低減させることができる。
【0139】
以上のように本実施形態によれば、トータル時間Ttotalまたはアプローチ時間T1の実測値に基づいて、トイレ装置100の設置環境に適合した加熱電力を設定することにより、ヒーターの加熱電力を可及的に低くしつつ、ユーザの着座時点における便座を適切な温度まで昇温させることができる。これにより消費電力を低減させるとともに、暖房便座装置の安全な使用を図ることができる。
【0140】
また、時間帯毎にそれぞれ異なる判定S/N比を設定して複数の適応テーブルを作成し、時間毎にそれぞれ応じた適応テーブルを用いて即暖制御を行うことによって、加熱電力を可及的に低くしつつ、非入室推定の頻度を低減させて、低消費電力を図ることができる。
【0141】
本実施形態では、トータル時間またはアプローチ時間に基づいて便座装置110を制御、より詳細に便座装置110が備えるヒーターの加熱電力を制御する例を示したが、本発明の制御対象は便座装置に限定されず、トイレルーム内に設けられる衛生装置であればどのような装置であってもよい。たとえば電気温水器(図2の洗浄部200でもよい)、空調装置(換気装置)等の装置であってもよい。これらの場合、トータル時間またはアプローチ時間に応じて、当該装置の動作を制御、たとえば当該装置内のヒーターの加熱電力を制御することで、当該電気温水器の使用時にユーザにとって快適な温度の温水を出し、またユーザの入室時にトイレルーム内の温度を快適な状態にすることが可能である。
【0142】
(第2の実施形態)
図13(A)は、本発明に係る第2の実施形態に従ったトイレ装置100、トイレルーム105の構造およびユーザの進入方向を示す概念図である。
【0143】
第2の実施形態では、ユーザまたは施工業者が、トイレルーム105のドアの位置、ユーザの進入方向等の、便座装置110の設置環境に基づいて閾値を選択する。便座装置110は、選択された閾値を用いて図9に示す自動作成フローを実行し、適応テーブルを自動作成する。また本実施形態では閾値として判定S/N比と減速率との2種類を用いる。これにより非入室推定を効果的に排除し、ユーザの入室確率がより高い場合にのみ即暖制御を行う。なお第2の実施形態による便座装置110のブロック図は第1の実施形態と同様である。
【0144】
図13(A)の例では、便座装置110の環境として代表的にトイレルーム105のドアの位置およびユーザの進入方向を示すが、本発明で対象とする環境はこれに限定されず、前述したような他の環境を含んでもよい。たとえばドアの開閉の形態、ドアの材質、ユーザの年齢、ユーザの老若男女、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯を含んでよい。このように、より多くの環境を考慮することによって、より適した適応テーブルの生成および即暖制御が可能となる。
【0145】
図13(A)に示すように、ドアは、トイレルーム105の正面(トイレ装置110の前方の面)または側面(トイレ装置110の側方の面)のいずれかに設けられている。破線の矢印は、ドアの開閉方向を示す。
【0146】
ドア107がトイレルーム105の正面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の前方(正面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境(I))と、トイレルーム105の側方(正面に対してほぼ平行方向)から接近する場合(環境(II))とに分けることができる。尚、図1(B)に示すように、第1の検知領域DR1がトイレ装置110に関して左右対称に広がっている限りにおいて、閾値は、ユーザがトイレルーム105の右側方から進入する場合と左側方から進入する場合とにおいて同じでよい。
【0147】
ドア107がトイレルーム105の側面に設けられている場合に、ユーザの進入方向は、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の前方から接近する場合(環境(III))と、トイレルーム105の側方(側面に対してほぼ垂直方向)から接近する場合(環境(IV))と、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(環境(V))と、に分けることができる。尚、第1の検知領域DR1は、トイレ装置110に関して前後方向に非対称に広がっているので、トイレルーム105の前方から接近する場合(環境(III))と、トイレルーム105の後方から接近する場合(環境(V))とにおいて、閾値は相違させることが好ましい。
【0148】
図13(B)は、便座装置110の環境(I)〜(V)と閾値との対応関係を示す閾値選択テーブルである。閾値選択テーブルは、予め記憶部214に格納されている。閾値選択テーブルの閾値は、判定S/N比と減速率との2種類を含んでいる。
【0149】
減速率は、第1の検知領域DR1に進入した時点でのユーザの速度に対する減速の比率を示す。例えば、減速率=30%は、第1の検知領域DR1に進入したときのユーザの速度を100%として、その速度から30%低下した速度を閾値とすることを意味する。本実施形態の即暖制御では、判定S/N比が満たされた後、ユーザの移動速度がこの閾値(減速率)よりも低下したときに、便座140の昇温を開始する(図7のステップS13参照)。すなわちS/N比が満たされた後もユーザの移動速度が減速率以下にならないときはユーザがトイレルームに入らずにその近くを通過するだけであると判断して、便座140の昇温を行わない。
【0150】
本第2の実施形態での適応テーブルの自動作成フローは基本的に図9と同様であるが一部処理が拡張されている。以下拡張された処理を中心に説明を行う。
【0151】
まず制御部210は、トイレ装置100が実際に設置される環境に応じて閾値(判定S/N比と減速率)を閾値選択テーブルから選択し、これらの選択された閾値を図4に示す基準テーブルに書き込む。そして、制御部210は、その基準テーブルを読み込んで(図7のS10)、図7の即暖フローを行う。一方、図9の自動作成フローでは、ステップS120〜S240の処理により、トータル時間Ttotalを決定し、さらに加熱電力を決定して、適応テーブルを作成する。図7のステップS13(図9のステップS130)でのユーザの検知時刻t0は判定S/N比および減速率の2つの閾値が両方とも満たされた時刻である。
【0152】
尚、第1の実施形態で述べた[適応テーブルの自動設定]、[適応テーブルの更新]、および、[複数の適応テーブルからの選択]は、第2の実施形態に組み合わせてもよい。これにより、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0153】
また本実施形態では判定S/N比および減速率の2種類の閾値を用いたが、判定S/N比のみを用いて、設置環境に応じた適応テーブルを作成してもよい。
【0154】
以上のように、第2の実施形態では、判定S/N比および減速率の両方を閾値として用い、便座装置110は、判定S/N比が満たされても、ユーザの移動速度が減速率以下に減速しなければ便座140の昇温を開始しない。その結果、便座装置110は、非入室推定を効果的に排除し、ユーザの入室確率がより高い場合にのみ即暖制御を実行することができる。
【0155】
また第2の実施形態では、閾値(判定S/N比および/または減速率)をトイレ装置100の設置環境に応じて選択することによって、ユーザを早い時点で検知して(トータル時間Ttotalを長くして)便座140の加熱電力を可及的に低下させつつ、非入室推定の頻度を低減させることができる。
【0156】
(第3の実施形態)
図14は、本発明に係る第3の実施形態に従った便座装置110の環境(I)〜(V)と、閾値(判定S/N比、減速率)と、時間T1,T2,Ttotalの推定値と、加熱電力との対応関係を示すアプローチ時間選択テーブルを示す。目標温度は29℃、待機温度は26℃で固定であるとする。環境(I)〜(V)は、便宜的に、第2の実施形態の図13の環境(I)〜(V)に対応している。アプローチ時間選択テーブルは環境毎に閾値、各時間、待機温度、加熱電力間の適正な値を、非入室推定、消費電力等の観点から、事前に見積もって登録したものである。第3の実施形態による便座装置110のブロック図は、第1の実施形態のそれと同様である。図14のアプローチ時間選択テーブルは予め記憶部214に格納されている。
【0157】
第3の実施形態では、ユーザまたは施工業者が、遠隔操作装置300の機能設定部132を用いて環境(I)〜(V)のいずれかを選択することによって、閾値だけでなく、アプローチ時間T1、待機時間T2、トータル時間Ttotal、加熱電力も選択する。本実施形態では、このようなユーザまたは業者のマニュアルの選択作業に基づいて適応テーブルを作成する。尚、図14の例では、着座時間T2は所定の時間(例えば、5秒)に固定されており、従ってアプローチ時間T1の選択は、実質的にトータル時間Ttotalの選択と同じである。
【0158】
図15は、第3の実施形態に従った適応テーブルの設定手順を示すフロー図である。
【0159】
便座装置110は、便座装置110の実際の設置環境がまだ選択されていない場合(S400のNO)、記憶部214に予め格納されている基準テーブルを選択する(S410)。制御部210は、基準テーブルを記憶部214から読み出し、基準テーブルを用いて即暖制御(図7参照)を開始する。
【0160】
一方、便座装置110の実際の設置環境が選択された場合(S400のYES)、制御部210は、選択された環境に対応する閾適、アプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotal、加熱電力をアプローチ時間選択テーブルから得る(S420)。
【0161】
次に、制御部210は、アプローチ時間選択テーブルから得た閾値、アプローチ時間T1、着座時間T2、トータル時間Ttotal、および加熱電力を用いて適応テーブルを作成する(S430)。
【0162】
例えば、環境(III)を選択した場合、判定S/N比1.3、減速率40%、アプローチ時間T1として2秒、着座時間T2として5秒、トータル時間Ttotalとして7秒、加熱電力350Wの情報を含む適応テーブルが作成される。この際、適応テーブルには、目標温度TEMPtrgとして29℃、待機温度TEMPstbとして26℃と、昇温温度として4℃を含める。目標温度TEMPtrgおよび待機温度TEMPstbは上述の通り予め固定されており、昇温温度は目標温度TEMPtrgから待機温度TEMPstbを減算することより計算する。なお昇温温度もアプローチ時間選択テーブルに含めてもよく、この場合昇温温度の計算を省略できる。記憶部214は、作成された適応テーブルを記憶し、制御部210は、記憶された適応テーブルを読み出して即暖制御(図7参照)を行う。
【0163】
なおアプローチ時間選択テーブルを目標温度別かつ待機温度別に用意しておき、ユーザが所望の目標温度および所望の待機温度を指定し、該当するアプローチ時間選択テーブルを用いるようにしてもよい。
【0164】
ここで図14のアプローチ時間選択テーブルにおける環境と閾値等との関係について具体的に説明する。
【0165】
例えば、図13(A)の(I)のようにトイレ装置100の正面にドアが設けられており、かつ、ユーザがトイレ装置100の正面から接近する場合(ユーザが電波センサ160のマイクロ波の送信方向と逆方向に接近する場合)、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出しやすい(ユーザが比較的遠くにいても検出できる)。従って、環境(I)では、判定S/N比を大きくし、および/または、加熱電力を低く設定することができる。判定S/N比を大きくすると、非入室推定の頻度を低減させることができる。
【0166】
一方、図13(A)の(V)のようにトイレ装置100の側面にドアが設けられており、トイレルーム105の側面に対してほぼ平行方向にトイレルーム105の後方から接近する場合(ユーザが第1の検知領域DR1の後方からマイクロ波の送信方向に移動する場合)、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し難い。従って、環境(V)では、環境(I)と比較して、判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を高く設定する必要がある。すなわち、判定S/N比を小さくすることで、ユーザの人体をできるだけ早く検知し、トータル時間Ttotalを長くしている。ただし、トイレ装置100の設置環境によって、実際、トータル時間Ttotalは、比較的短くなってしまう。この場合、待機温度TEMPstbを高く設定することで、非入室推定の場合の消費電力が増加するものの、制御部210は、短いトータル時間Ttotalで便座140の温度を目標温度TEMPtrgまで昇温させることができる。
【0167】
図14では、環境として代表的にトイレルーム105のドアの位置およびユーザの進入方向を含めている。しかし、環境は、第2の実施形態と同様により多くの他の環境を含んでもよい。他の環境としては、例えば、ドアの開閉の形態、ドアの材質、ユーザの年齢、ユーザの老若男女、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯等がある。これにより、さらに、トイレ装置100の設置環境により適した適応テーブルを得ることができる。
【0168】
より詳細に、ドアの材質が、樹脂等の電波透過性の良い材料である場合、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し易い。従って、この場合、判定S/N比を大きくし、および/または、加熱電力を低く設定することができる。
【0169】
一方、ドアの材質が、金属等の電波透過性の悪い材料である場合、電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し難い。従って、この場合、ドアの材質が電波透過性の良い材料である場合と比較して、判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を高く設定する。
【0170】
またトイレルームにドア自体が無い場合がある。このような場合、ドアが設けられている場合よりも電波センサ160は、ユーザの人体を比較的検出し易い。従って、この場合には、ドアが設けられている場合と比較して、判定S/N比を大きくし、および/または、加熱電力を低く設定することができる。
【0171】
またユーザが若い場合、ユーザの移動速度は比較的速い。即ち、アプローチ時間T1が短い。従って、ユーザの年齢が低い場合には、判定S/N比を小さくし、および/または、加熱電力を低く設定する。
【0172】
さらに、ユーザの睡眠時間帯においては、トイレ装置100を利用する頻度が少なく、かつ、ユーザがトイレ装置100の使用という目的以外の目的でトイレルーム105に接近することも少ない。よって、ユーザが非入室のまま通過することは稀であると推測できる。従って、ユーザの睡眠時間帯においては、他の時間帯と比較して、判定S/N比を小さくし、加熱電力を低く設定する。
【0173】
以上のように第3の実施形態によれば、トイレ装置100の設置環境に対応した閾値およびアプローチ時間T1等を選択する。これにより、便座装置110は、トイレ装置100の設置環境に対応して加熱電力の低減、非入室推定の低減のバランスをとりつつ消費電力を可及的に低減させることができる。
【0174】
(第4の実施形態)
図16は、本発明に係る第4の実施形態に従った適応テーブルの更新の手順を示すフロー図である。第4の実施形態は、非入室推定の頻度が多い場合に、適応テーブルを更新する形態である。
【0175】
まず、便座装置110は、適応テーブルを用いて即暖制御を実行しつつ、図9のステップS130〜S195を実行する。第4の実施形態では、ステップS150において第1の制限時間内に入室検知が無かった場合に(S150のNO)、ステップS155のブロック内に括弧付で記載されているようにカウンタ218により、非入室推定の総回数をカウントする。尚、カウンタ218は、非使用推定(S170のNO)の回数をカウントする必要はない。
【0176】
制御部210は、ステップS195の記憶回数が所定値(例えば、10回)以上に達した場合に、カウンタ218による記憶回数と非入室推定の回数とを比較する(S600)。非入室推定の回数の割合が所定値以上の場合(S600のYES)、制御部210は、適応テーブルを更新する(S610)。例えば、記憶回数に対して非入室推定の回数の割合が2分の1以上になった場合に、制御部210は、適応テーブルを更新する。具体的に、制御部210は、非入室推定を低減するために、判定S/N比を大きくするように適応テーブルを更新する。あるいは、制御部210は、非入室推定を低減するために、減速率を大きくするように適応テーブルを更新する。より詳細な適応テーブルの更新方法は後述する。
【0177】
非入室推定の回数の割合が所定値よりも低い場合(S600のNO)、制御部210は、既存の適応テーブルをそのまま用いて即暖制御を継続する。尚、非入室推定の回数の割合の判断値(所定値)は、予め記憶部214に格納しておく。
【0178】
図17は、第4の実施形態において適応テーブルの更新の際に用いる閾値変更テーブルを示す図である。閾値変更テーブルは、図13(B)を参照して説明した環境(I)〜(V)のそれぞれに対応する変更前の閾値および変更後の閾値を含む。変更前の閾値は、図13(B)に示す閾値と同様である。変更後の閾値は、それぞれ変更前の閾値を変更した値である。
【0179】
例えば、変更後の判定S/N比は、変更前の判定S/N比に対して増加している。これにより、第1の検知領域DR1が変更前のそれに比べて狭くなり、非入室推定の頻度を低下させることができる。また、変更後の減速率も、変更前の減速率に対して増加している。この場合、電波センサ160の人体検知時におけるユーザの移動速度が比較的大きく低下したときに即暖制御が開始される。このため、非入室推定の頻度を低下させることができる。
【0180】
変更後の閾値と変更前の閾値との差は一定であってもよく、あるいは、変更前の閾値に比例した数値でもよい。変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差(判定S/Nの変更率)は、変更前の判定S/N比の大きさに従って変更してもよい。例えば、変更前の判定S/N比が大きいほど、変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差を大きくすることが好ましい。これにより、非入室推定の頻度の変化が認識しやすくなるからである。
【0181】
より具体的には、判定S/N比が大きい場合に、変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差が小さいと(変化率が小さいと)、非入室推定の頻度の変化が少なく、閾値の変更前後における非入室推定の頻度の低減効果が小さい。一方、判定S/N比が小さい場合には、変更後の判定S/N比と変更前の判定S/N比との差が小さいとも、変化率が大きくなる。従って、非入室推定の頻度の変化は大きく、閾値の変更前後における非入室推定の頻度の低減効果が大きい。尚、変更前後における非入室推定の頻度が減速率についても判定S/N比と同様のことが言える。
【0182】
図16の更新フローでは非入室推定の頻度が高い場合に閾値(判定S/N比、減速率)を大きくしたが、逆に、非入室推定の頻度が非常に少ない場合に、判定S/N比を低下させ、および/または、減速率を増大させるようにしてもよい。これにより、非入室推定の可能性が上昇するものの、アプローチ時間T1を長くし、加熱電力を低下させることができる。
【0183】
以上のように、第4の実施形態によれば、非入室推定の頻度に基づいて閾値(判定S/N比および/または減速率)を変更するようにしたことにより、非入室推定の頻度を低減させながらも、アプローチ時間T1をできるだけ長くし加熱電力を低下させることができる。
【0184】
(第5の実施形態)
本実施形態は、ユーザの着座時までに便座140を目標温度TEMPtrgまで高めることができないと見込まれる場合に、ヒーター142の加熱電力を上昇させようとするものである。
【0185】
本実施形態に係る即暖フローは第1の実施形態で示した即暖フローを拡張したものである。より詳細には、本実施形態に係る即暖フローは、図7の即暖フローのステップS15のブロックと、ステップS17のブロックとの間に、図18のフローを追加したものに相当する。
【0186】
前述したように図7のステップS15ではユーザの人体検知後、第1の制限時間内にユーザ入室が検知されたか否かを判断する。第1の制限時間内にユーザ入室が検知された場合に(S15のYES)、図18のステップS31では、制御部210が、ユーザの人体検知からユーザの入室検知までに要した時間(以下時間Sと記述する)が、アプローチ時間T1より小さいか否かを検査する(S31)。
【0187】
上記時間Sがアプローチ時間T1以上のときは(S31のNO)、ユーザがアプローチ時間T1以上の時間を要してトイレルームに入室したと判断し、特に特別な処理を行うことなく、図7のステップS17に進む。
【0188】
一方、上記時間Sがアプローチ時間T1より小さいときは(S31のYES)、ユーザがアプローチ時間T1よりも短い時間でトイレルームに入室したと判断して、制御部210は、ヒーター142による加熱電力を上昇させる(S32)。すなわち、基準テーブルまたは適応テーブルに設定された加熱電力は、アプローチ時間T1でユーザがトイレルームに入室することを想定しているため、時間Sが、アプローチ時間T1より小さい場合、ユーザが着座するまでに便座を目標温度TEMPtrgまで高められない可能性が大きくなる。そこで本ステップでは、時間Sがアプローチ時間T1より短い場合に当該テーブルに設定された加熱電力よりも大きな値に加熱電力を変更することで、このような問題を防止する。
【0189】
加熱電力を大きくする具体的な構成としては、たとえばアプローチ時間T1と時間Sとの差分値を計算し、差分値が大きいほど、電力の上昇幅を大きくすることが可能である。この場合、差分値の範囲毎にそれぞれ電力の上昇値Δを対応づけた上昇テーブルをあらかじめ記憶部214に格納しておき、計算した差分値に対応する上昇値Δだけ加熱電力を上昇させてもよい。
【0190】
また上述の上昇テーブルは待機温度毎に用意してもよい。この場合、基準テーブルまたは適用テーブルに設定された待機温度をもつ上昇テーブルを選択し、選択した上昇テーブルを用いて上昇幅Δを取得する。
【0191】
または、上述の上昇テーブルを加熱電力毎に用意してもよい。この場合、基準テーブルまたは適用テーブルに設定された加熱電力をもつ上昇テーブルを選択し、選択した上昇テーブル用いて上昇幅Δを取得する。
【0192】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザの人体検知から入室検知までに要した時間Sがアプローチ時間T1より短いときは、加熱電力を上昇させるようにしたことにより、ユーザが着座するまでに便座140を目標温度TEMPtrgまで上昇させる可能性を高めることができる。
【符号の説明】
【0193】
100・・・トイレ装置
105・・・トイレルーム
110・・・便座装置
120・・・便器
130・・・遠隔操作装置(リモコン)
140・・・便座
142・・・ヒーター(加熱部)
144・・・温度検知部
150・・・センサ部
160・・・電波センサ
170・・・焦電センサ
180・・・着座センサ
200・・・洗浄部
210・・・制御部
212・・・演算処理部
214・・・記憶部
216・・・タイマ
218・・・カウンタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレルーム内に設置された便座と、
前記便座を加熱するヒーターと、
電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知し、ユーザが前記トイレルームに入室したことを検知するセンサ部と、
前記ヒーターおよび前記センサ部を制御する制御部とを備えた便座装置であって、
前記制御部は、少なくとも前記センサ部がユーザの人体を検知してから該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知するまでのアプローチ時間に基づいてトイレルーム内の衛生装置を制御する
ことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記アプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記便座の目標温度と前記便座の待機温度との差に応じて前記ヒーターの加熱電力を制御することを特徴とする請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの時間を実測し、実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電波の反射波の測定値が所定の閾値を超えた時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間を計測することによって前記実測時間を取得し、
前記電波の反射波の測定値が前記所定の閾値を超えた時点から前記便座の加熱が開始されるように前記ヒーターを制御することを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項6】
前記アプローチ時間を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されたアプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする請求項4または5に記載の便座装置
【請求項7】
前記制御部は、前記センサ部がユーザの人体を検知してから前記ユーザの入室を検知までの時間を実測し、実測した時間が前記記憶部に記憶されたアプローチ時間より小さいときは、トイレルーム入室前よりも入室後のヒーターの加熱電力を高くすることを特徴とする請求項6に記載の便座装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記実測時間を複数回取得し、複数の前記実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする請求項6に記載の便座装置。
【請求項9】
前記制御部は、複数の前記実測時間のうち時間の短い所定数の実測時間を平均した値を、前記アプローチ時間として決定することを特徴とする請求項8に記載の便座装置。
【請求項10】
前記便座が設置される環境に対応する閾値を格納する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部において前記便座が実際に設置される環境に応じた閾値を前記所定の閾値として用いることを特徴とする請求項5に記載の便座装置。
【請求項11】
前記センサ部がユーザの人体を検知してから所定時間以内に該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知しなかった非入室推定の回数をカウントするカウンタをさらに備え、
前記制御部は、前記非入室推定の回数に基づいて前記所定の閾値を変更することを特徴とする請求項5または10に記載に便座装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの更新用実測時間を測定し、前記記憶部に記憶された前記アプローチ時間を前記更新用実測時間に基づいて更新することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項13】
前記便座装置が設置される環境に対応するアプローチ時間を格納した記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が実際に設置される環境に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項14】
前記環境は、ユーザが前記トイレルームへ接近するときの進行方向、または、前記トイレルームの構造を含むことを特徴とする請求項10または13に記載の便座装置。
【請求項15】
前記環境は、ユーザの移動速度、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯、前記トイレルームにおけるドアの位置、前記トイレルームにおけるドアの開閉状態、前記トイレルームに通じる通路の延伸方向、あるいは、前記トイレルームの壁の材質またはドアの材質のいずれかを含むことを特徴とする請求項10または13ないし14に記載の便座装置。
【請求項16】
時計機能を有するタイマと、
複数の時期に対応する複数のアプローチ時間を格納する記憶部とをさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が使用される時期に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記アプローチ時間が長いほど前記ヒーターの加熱電力を低くすることを特徴とする請求項2または3に記載の便座装置。
【請求項1】
トイレルーム内に設置された便座と、
前記便座を加熱するヒーターと、
電波によって前記トイレルームの外側にいるユーザの人体を検知し、ユーザが前記トイレルームに入室したことを検知するセンサ部と、
前記ヒーターおよび前記センサ部を制御する制御部とを備えた便座装置であって、
前記制御部は、少なくとも前記センサ部がユーザの人体を検知してから該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知するまでのアプローチ時間に基づいてトイレルーム内の衛生装置を制御する
ことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記アプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記便座の目標温度と前記便座の待機温度との差に応じて前記ヒーターの加熱電力を制御することを特徴とする請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの時間を実測し、実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電波の反射波の測定値が所定の閾値を超えた時点からユーザが前記トイレルームに入室するまでの時間を計測することによって前記実測時間を取得し、
前記電波の反射波の測定値が前記所定の閾値を超えた時点から前記便座の加熱が開始されるように前記ヒーターを制御することを特徴とする請求項4に記載の便座装置。
【請求項6】
前記アプローチ時間を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されたアプローチ時間に応じた加熱電力で前記便座を加熱することを特徴とする請求項4または5に記載の便座装置
【請求項7】
前記制御部は、前記センサ部がユーザの人体を検知してから前記ユーザの入室を検知までの時間を実測し、実測した時間が前記記憶部に記憶されたアプローチ時間より小さいときは、トイレルーム入室前よりも入室後のヒーターの加熱電力を高くすることを特徴とする請求項6に記載の便座装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記実測時間を複数回取得し、複数の前記実測時間に基づいて前記アプローチ時間を決定することを特徴とする請求項6に記載の便座装置。
【請求項9】
前記制御部は、複数の前記実測時間のうち時間の短い所定数の実測時間を平均した値を、前記アプローチ時間として決定することを特徴とする請求項8に記載の便座装置。
【請求項10】
前記便座が設置される環境に対応する閾値を格納する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部において前記便座が実際に設置される環境に応じた閾値を前記所定の閾値として用いることを特徴とする請求項5に記載の便座装置。
【請求項11】
前記センサ部がユーザの人体を検知してから所定時間以内に該ユーザの前記トイレルームへの入室を検知しなかった非入室推定の回数をカウントするカウンタをさらに備え、
前記制御部は、前記非入室推定の回数に基づいて前記所定の閾値を変更することを特徴とする請求項5または10に記載に便座装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記センサ部によるユーザの人体検知から該ユーザの入室検知までの更新用実測時間を測定し、前記記憶部に記憶された前記アプローチ時間を前記更新用実測時間に基づいて更新することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項13】
前記便座装置が設置される環境に対応するアプローチ時間を格納した記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が実際に設置される環境に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項14】
前記環境は、ユーザが前記トイレルームへ接近するときの進行方向、または、前記トイレルームの構造を含むことを特徴とする請求項10または13に記載の便座装置。
【請求項15】
前記環境は、ユーザの移動速度、ユーザの在宅時間帯あるいは不在時間帯、ユーザの睡眠時間帯、前記トイレルームにおけるドアの位置、前記トイレルームにおけるドアの開閉状態、前記トイレルームに通じる通路の延伸方向、あるいは、前記トイレルームの壁の材質またはドアの材質のいずれかを含むことを特徴とする請求項10または13ないし14に記載の便座装置。
【請求項16】
時計機能を有するタイマと、
複数の時期に対応する複数のアプローチ時間を格納する記憶部とをさらに備え、
前記制御部は、前記記憶部において前記便座装置が使用される時期に応じたアプローチ時間を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の便座装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記アプローチ時間が長いほど前記ヒーターの加熱電力を低くすることを特徴とする請求項2または3に記載の便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−212192(P2011−212192A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82599(P2010−82599)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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