説明

便座

【課題】製造及び分解を容易に行なうことのできる便座を提供する。
【解決手段】便座は、座表部材10の縁部の下面と座裏部材20の縁部21の上面23とが溶着された溶着部40を有し、座表部材10と座裏部材20とにより空洞部30が形成されている。座表部材10は、座面を形成する表面部材13と、表面部材13の端部13Bに接合され、表面部材13の端部13Bより下方に延び、座表部材10の縁部を形成する縁部材14とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の便座が開示されている。この便座は、座表部材の縁部と座裏部材の縁部とが接合され、座表部材と座裏部材とにより空洞部が形成されている。座表部材は、座面を形成する金属製の表面部材と、表面部材の縁部の裏面に接合された内縁部材とを有している。表面部材の下面と内縁部材の下面とは同一面上に形成されている。内縁部材の下面には、下向きに開口して設けられた凹部が形成されている。座裏部材の縁部には、内縁部材の凹部を形成する内壁に係合する一対の立上り片が設けられている。座裏部材の一対の立上り片を内縁部材の凹部を形成する内壁に係合させた状態で凹部に溶融樹脂が流し込まれる。凹部に流し込まれた溶融樹脂が固化することにより、座表部材と座裏部材とが強固に接合される。このようにして、表面部材を有する便座を製造することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2008−105325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の便座では、内縁部材の下面に凹部を設けたり、座裏部材に一対の立上り片を設けたりしなければならない。また、座表部材と座裏部材とを接合するには溶融樹脂を用意し、凹部へ流し込まなければならない。このため、製造に手間を要する。
【0005】
内縁部材の凹部を形成する内壁に座裏部材の一対の立上り片が係合した状態の凹部に溶融樹脂が流し込まれ、固化している。固化した溶融樹脂を凹部から取り除くことは困難であるため、凹部と立上り片との係合を解除して座表部材と座裏部材とを分離することは困難である。このため、便座を廃棄する際等に便座を分解するには、座表部材又は座裏部材を破壊するしかなく、そのためには多大な力が必要となる。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、製造及び分解を容易に行なうことのできる便座を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便座は、座表部材の縁部の下面と座裏部材の縁部の上面とが溶着された溶着部を有し、座表部材と座裏部材とにより空洞部が形成された便座において、
前記座表部材は、座面を形成する表面部材と、表面部材の端部に接合され、表面部材の端部より下方に延び、座表部材の縁部を形成する縁部材とを有していることを特徴とする。
【0008】
この便座は、表面部材の端部に接合された縁部材の下面が座裏部材の縁部の上面に溶着することにより、座表部材と座裏部材とを接合することができる。このため、容易に製造することができる。
【0009】
溶着部は、設定強度を有しつつ、振動摩擦等により溶融しやすいように小さく形成される。このため、溶着部は破断し易く、便座を廃棄する際等には、溶着部を破断することにより、座表部材と座裏部材とを容易に分離することができる。
【0010】
したがって、本発明の便座は、製造及び分解を容易に行なうことができる。
【0011】
前記縁部材の外側面と前記表面部材の外側面とは、面一状態に連続して形成され得る。この場合、表面部材と縁部材との間に隙間や段差が生じないため、座表部材の外側面に汚れが溜まり難く、汚れが付着した場合でも容易に拭き取ることができる。
【0012】
前記溶着部は、前記空洞部側が残存するように前記縁部材の一部と前記座裏部材の縁部の一部とともに切削又は/及び研磨され得る。この場合、溶着部の外側面は、前記縁部材の外側面及び前記座裏部材の外側面に面一に形成されるため、段差や隙間が形成されず、座表部材と座裏部材との接合部が視認され難い。また、接合部に汚れが溜まり難く、汚れが付着した場合でも容易に拭き取ることができる。
【0013】
前記表面部材は金属製であり得る。この場合、表面部材を面状ヒーター等により即時に暖めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の便座を具体化した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1の便座は、図1に示すように、平面視において、外形の後端部が略直線状であり、前後方向に長い略半楕円状に形成されている。この便座の中央部には、前後方向に長い略楕円状の開口が形成されている。便座の後端部には、左右の2個所に後方に延びた一対のヒンジ部11が形成されている。ヒンジ部11は、貫通孔12が形成されている。貫通孔12には、便器本体の上面に取り付けられる図示しない便座装置のケース本体から延出する軸部材が挿通される。便座装置が便器本体の上面に取り付けられることにより、便器本体に対して便座が回動自在に取り付けられる。
【0016】
この便座は、座表部材10及び座裏部材20を有している。座表部材10は、図2及び図3に示すように、座面を形成する金属製の薄板状の表面部材13を有している。表面部材13は、図1のX−X矢視断面において、便座の中央部の開口に向けて上面がわずかに傾斜する中央部13Aと、中央部13Aの両端に連続し、下方に向けて延びる両端部13Bとから形成されている。表面部材13の中央部13Aの裏面には、電熱線61とアルミシート62とからなる面状ヒーター60が貼着されている。表面部材13が金属製であるため、表面部材13を面状ヒーター60により即時に暖めることができる。面状ヒーター60への電力供給は、ヒンジ部11において電磁誘導を利用し、便座装置側から給電される。このため、便座と便座装置との間には、配線が繋がっておらず、便座を便座装置から取り外すことができるため、便座を取り外して丸洗いをすることができる。
【0017】
座表部材10は、表面部材13の両端部13Bの裏面側に接合された樹脂製の縁部材14を有している。縁部材14は、成形型に表面部材13をインサートして一体成形されたものである。縁部材14は、表面部材13の両端部より下方に延びている。表面部材13の両端部は、縁部材14が接合して端面及び角部が露出しないため、表面部材13の両端部の角部を面取りする等の処理を不要にすることができる。
【0018】
縁部材14の下端部15が座表部材10の縁部を形成している。縁部材14の下端部15の外側面15Hは、表面部材13の両端部13Bの外側面13Hに対して、面一状態に連続して形成されている。このため、座表部材10の外側面に汚れが溜まり難く、汚れが付着した場合でも容易に拭き取ることができる。座裏部材20に溶着される前の縁部材14の下端部15には、外縁側に下方の延びる凸部16が形成されている。
【0019】
座裏部材20は薄板状に形成されている。このため、座裏部材20を容易に形成することができる。溶着される前の座裏部材20の縁部21は、R面取りされた下隅部24を有している。また、座裏部材20の縁部21には、座表部材10の各縁部材14の下端部15(座表部材10の縁部)の間隔よりも座裏部材20の幅が広くなるように突出部22が形成されている。つまり、図3に示すように、縁部材14の下端部15の下面17と座裏部材20の縁部21の上面23とを当接させた際に、座裏部材20の縁部21の方が外側に突出するように突出部22が形成されている。このため、座表部材10及び座裏部材20の製造時に生じる寸法誤差や、座表部材10及び座裏部材20を溶着機へ組み付ける際に生じる組み付け誤差を吸収し、縁部材14の下端部15に形成された凸部16の下面17と座裏部材20の縁部21の上面23とを確実に当接させることができ、強固に溶着することができる。
【0020】
座裏部材20の縁部21の上面23には、縁部材14が溶着される溶着面に沿って、内側に溝25が形成されている。溝25は、溶着時に発生する熱が溝25で放熱され、溝25より内側の座裏部材20に伝わることを防止することができる。このため、座裏部材20の変形を防止することができる。
【0021】
座表部材10及び座裏部材20は、溶着機に組み付けられ、縁部材14の下端部15に形成された凸部16の下面17と座裏部材20の縁部21の上面23とが当接される。この状態で、座表部材10と座裏部材20とが押し合う方向に加圧しながら振動が加えられる。これにより、図4に示すように、凸部16及び座裏部材20の縁部21の上面23の一部が溶融し、縁部材14の凸部16(座表部材10の縁部の下面)と座裏部材20の縁部21の上面23とが溶着される。これにより、座表部材10と座裏部材20とにより空洞部30が形成される。また、凸部16より内側の下面18が座裏部材20の縁部21の上面23に当接される。この際、縁部材14の下端部15の一部である凸部16を溶融させることにより、座裏部材20の縁部21の上面23に溶着させることができる。このため、少ないエネルギーで凸部16を溶融させ、確実に溶着させることができる。溶着部40の端から外側にはみ出した溶着ビード41は、座裏部材20の突出部22上に盛り上がる。
【0022】
縁部材14の凸部16と座裏部材20の縁部21の上面23とを溶着した後、図5に示すように、空洞部30側の溶着部40が残存するように縁部材14の下端部15の一部と座裏部材20の縁部21の一部とともに外縁側の溶着部40を切削する。切削面(加工面)50の下端部51は、下隅部24の中間部に連続している。切削面50と下隅部24とはバフ掛けにより研磨されて仕上げられている。切削及び研磨後の溶着部40は設定強度を有している。
【0023】
このようにして、便座を容易に製造することができる。また、溶着部40は小さく形成されているため、便座を廃棄する際等には、溶着部40を破断することにより、座表部材10と座裏部材20とを容易に分離することができる。
【0024】
したがって、実施例1の便座は、製造及び分解を容易に行なうことができる。
【0025】
また、切削面50(縁部材14の下端部15から溶着部40を介して座裏部材20に亘る外側面)は面一に形成され、滑らかな曲面に仕上げられている。このため、段差や隙間が形成されず、座表部材10と座裏部材20との接合部が視認され難い。また、汚れが溜まり難く、汚れが付着した場合でも容易に拭き取ることができる。
【0026】
また、この便座では、切削面50の下端部51を下隅部24の中間部に連続するように切削すればよいため、切削範囲を少なくすることができ、かつ縁部材14の下端部15の外側面15Hから座裏部材20の下面に亘って連続する曲面を容易に形成することができる。
【0027】
また、切削面50の上端部の稜線52が縁部材14の下端部15の外側面15Hの上方に行き過ぎないため、縁部材14のうねりや引けにより生じる稜線52の波うちを抑制することができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2の便座は、図6に示すように、座表部材10の構成を上記実施例1とは異なる形状としたものである。その他の構成については、上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0029】
実施例2の座表部材10は、座面を形成する金属製の薄板状の表面部材113を有している。表面部材113は、便座の中央部の開口に向けて上面がわずかに傾斜する中央部113Aと、中央部113Aの両端に連続し、下方に向けて延びる両端部113Bとから形成されている。両端部113Bの下端には、空洞部30側に折曲し、更に下方向けて折曲した鉤状の接合部113Cが形成されている。
【0030】
座表部材10は、接合部113Cの外面側に接合された樹脂製の縁部材114を有している。縁部材114は、成形型に表面部材113をインサートして一体成形されたものである。縁部材114は、表面部材113の両端部より下方に延びている。表面部材113の両端部の端面及び角部は、表面部材113の内側で接合され、露出しないため、表面部材113の両端部の角部を面取りする等の処理を不要にすることができる。
【0031】
縁部材114が座表部材10の縁部を形成している。縁部材114の外側面114Hは、表面部材113の両端部113Bの外側面113Hに対して、面一状態に連続して形成されている。このため、座表部材10の外側面に汚れが溜まり難く、汚れが付着した場合でも容易に拭き取ることができる。座裏部材20に溶着される前の縁部材14には、図示しないが、外縁側に下方に延びる凸部が形成されている。
【0032】
実施例2の便座も、縁部材114の凸部を溶融させることにより、座表部材10と座裏部材20とを溶着し、容易に製造することができる。また、溶着部40は小さく形成されているため、便座を廃棄する際等には、溶着部40を破断することにより、座表部材10と座裏部材20とを容易に分離することができる。
【0033】
したがって、実施例2の便座も、製造及び分解を容易に行なうことができる。
【0034】
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1及び2では、表面部材の裏面に貼着された面状ヒータにより表面部材を暖めているが、誘導加熱コイルを空洞部内に配置し、金属製の表面部材を誘導加熱により暖めてもよい。
(2)上記実施例1及び2では、縁部材の下端部の一部と座裏部材の縁部の一部とともに外縁側の溶着部が切削され、研磨されているが、切削のみでもよく、切削をせずに研磨のみにより側板部の下端部の一部と座裏部材の縁部の一部とともに外縁側の溶着部を除去するようにしてもよい。
(3)上記実施例1及び2では、座表部材と座裏部材との溶着を振動溶着方式で行う説明をしたが、超音波溶着方式、熱板溶着方式等の種々の溶着方式を採用することができる。
(4)上記実施例1及び2では、表面部材は金属製であるが、他の素材でも良く、座裏部材及び縁部材と色の違う樹脂製であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1及び2の便座をあらわす平面図である。
【図2】実施例1の溶着前の便座に係り、図1のX−X矢視断面図である。
【図3】実施例1の溶着前の便座に係り、座表部材と座裏部材を当接させた状態をあらわす図1のX−X矢視断面図である。
【図4】実施例1の溶着後の便座をあらわす図1のX−X矢視断面図である。
【図5】実施例1の切削及び研磨後の便座をあらわす図1のX−X矢視断面図である。
【図6】実施例2の切削及び研磨後の便座をあらわす図1のX−X矢視断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10…座表部材
13、113…表面部材
13B、113B…(表面部材の)端部
13H、113H…(表面部材の)外側面
14、114…縁部材
15H、114H…(縁部材の)外側面
20…座裏部材
21…(座裏部材の)縁部
30…空洞部
40…溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座表部材の縁部の下面と座裏部材の縁部の上面とが溶着された溶着部を有し、座表部材と座裏部材とにより空洞部が形成された便座において、
前記座表部材は、座面を形成する表面部材と、表面部材の端部に接合され、表面部材の端部より下方に延び、座表部材の縁部を形成する縁部材とを有していることを特徴とする便座。
【請求項2】
前記縁部材の外側面と前記表面部材の外側面とは、面一状態に連続して形成されていることを特徴とする便座。
【請求項3】
前記溶着部は、前記空洞部側が残存するように前記縁部材の一部と前記座裏部材の縁部の一部とともに切削又は/及び研磨されていることを特徴とする請求項1又は2記載の便座。
【請求項4】
前記表面部材は金属製であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−119631(P2010−119631A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296348(P2008−296348)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】