説明

便秘の処置用のプロスタグランジンアナログを含む用量単位

【課題】ヒト患者において便秘を処置するための組成物の提供。
【解決手段】下記式で示されるハロゲン化プロスタグランジンアナログと医薬上好適な賦形剤を含む組成物。


[式中、A1およびA2は同一であっても異なっていてもよいハロゲン原子、および、Bは、−COOHであり、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドを含む]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト患者における便秘の処置および予防のためのハロゲン化プロスタグランジンアナログの新規な用量単位(dosage unit)に関する。
【背景技術】
【0002】
便秘は一般に便通の回数が少なく便通に困難を伴うこととして定義される。医学的報告によると、米国において50人に1人が便秘をわずらっていると評価されており、便秘は米国人の中で最も一般的な障害の1つである。男性より女性のほうが便秘になりやすく、高年齢になるほど便秘になりやすいようであり、65歳を超えると指数関数的に増加することが示されている。実際、便秘は報告されている以上に起こっているようであり、専門化の治療を求めることなく家庭において多くの個人が便秘に苦しんでいる。
【0003】
便秘は閉塞により引き起こされる場合もあるが、ほとんどの便秘は、可溶性および不溶性繊維の少ない食事、運動不足、薬物の使用(特に、オピエート鎮痛薬、抗コリン抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、およびビンカアルカロイド)、腸障害、神経筋障害、代謝障害、低腹圧または筋無緊張症などの因子に関連付けられる。
【0004】
便秘を厳密に定量的に定義するのは困難である。というのは、「正常な」腸習慣と認識される範囲が広く、便秘には様々な症状および兆候が伴うからである。FDAは偶発的便秘には規範的な処置が必要であることを認識している。
【0005】
プロスタグランジン類(以後PG(類)として示す)はヒトまたは他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の一群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。
【化1】

【0006】
PG類は5員環部分の構造と置換基によって、例えば以下のようにいくつかのタイプに分類される:
プロスタグランジンA類(PGA類);
【化2】

プロスタグランジンB類(PGB類);
【化3】

プロスタグランジンC類(PGC類);
【化4】

プロスタグランジンD類(PGD類);
【化5】

プロスタグランジンE類(PGE類);
【化6】

プロスタグランジンF類(PGF類);
【化7】

などである。さらにPG類は、13,14−二重結合を含むPG類;5,6−および13,14−二重結合を含むPG類;そして5,6−、13,14−および17,18−二重結合を含むPG類に分類される。PG類が種々の薬理学的、生理的活性を有することは知られており、例えば、血管拡張、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋刺激作用、腸管筋刺激作用、抗潰瘍作用などが知られている。ヒトの胃腸(GI)系において産生される主なプロスタグランジン類は、E、IおよびF類のものである(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995))。
【0007】
正常な生理条件下で、内因的に産生されたプロスタグランジン類はGI機能の維持に主要な役割を果たし、これには腸管運動および輸送の調節、便の硬さの調節が含まれる(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981);Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109:285- 285-301 (1995); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol.、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990))。薬理学的用量投与した場合、PGEとPGF2αはともに腸管輸送を刺激し、下痢を引き起こすことが示された(Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostagrandins: Biology and Chemistry of Prostagrandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Robert、Adv Prostagrandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976))。さらに、消化性潰瘍疾患の処置のために開発されたPGEアナログであるミソプロストールの最も一般的に報告されている副作用は下痢である(Monk、et al.、Drugs 33 (1): 1-30 (1997))。
【0008】
PGEまたはPGFは腸を刺激し、腸管収縮を引き起こすことができるが、エンテロプーリング作用は弱い。したがって、PGE類またはPGF類を下剤として使用するのは、腸管収縮によって起こる腹痛などの副作用のために不可能である。
【0009】
腸神経応答の調節、平滑筋収縮の変化、粘膜分泌の刺激、細胞イオン輸送(ionic)(特に起電性Cl輸送)の刺激および腸管内容量の増加を含む多数の機構がプロスタグランジン類のGI効果に寄与していると報告されている(Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Rampton、Prostaglandins: Biology and Chemistry of Prostaglandins and Related Eicosanoids 323-344 (Churchill Livingstone、1988); Hawkey、et al.、Gastroenterology、89: 1162-1188 (1985); Eberhart、et al.、Gastroenterology、109: 285-301 (1995); Robert、Adv Prostaglandin Thromboxane Res、2:507-520 (1976); Main、et al.、Postgrad Med J、64 Suppl 1: 3-6 (1988); Sanders、Am J Physiol、247: G117 (1984); Pairet、et al.、Am J Physiol、250 (3 pt 1): G302-G308 (1986); Gaginella、Textbook of Secretory Diarrhea 15-30 (Raven Press、1990); Federal Register Vol. 50、No. 10 (GPO,1985); Pierce、et al.、Gastroenterology 60 (1): 22-32 (1971); Beubler、et al.、Gastroenterology、90: 1972 (1986); Clarke、et al.、Am J Physiol 259: G62 (1990); Hunt、et al.、J Vet Pharmacol Ther、8 (2): 165-173 (1985); Dajani、et al.、Eur J Pharmacol、34(1): 105-113 (1975); Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management 1451-1471 (WB Saunders Company、1998))。プロスタグランジン類は、さらに細胞保護効果を有することが示された(Sellin、Gastrointestinal and Liver Disease: Pathophysiology、Diagnosis、and Management. (WB Saunders Company、1998); Robert、Physiology of the Gastrointestinal Tract 1407-1434 (Raven、1981); Robert、Adv Prostaglandin Thromboxane Res 2:507-520 (1976); Wallace、et al.、Aiiment Pharmacol Ther 9: 227-235 (1995))。
【0010】
上野らの米国特許第5317032号は、二環式互変異性体の存在を含むプロスタグランジンアナログの下剤について記載しており、上野らの米国特許第6414016号は、抗便秘薬として顕著な活性を有する該二環式互変異性体について記載している。1または複数のハロゲン原子によって置換されている該二環式互変異性体は、低用量で便秘の緩和のために使用することができる。C−16位において、特にフッ素原子を有するものは低用量で便秘の緩和のために使用することができる。しかし、かかるプロスタグランジンアナログが最も有効である用量は知られていない。さらに、PGアナログの治療効果を発揮しつつ安全な範囲を決定する必要がある。臨床用量範囲の研究はPGアナログの安全性と許容性を評価するために必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ本発明の目的は、ヒト患者における便秘の軽減および予防のための製剤形態および実施可能な治療アプローチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、ヒト患者における便秘の軽減または予防に使用するための以下を含む用量単位を提供する:
(i)約6−96μgの範囲の、式(I)で表されるプロスタグランジン(PG)アナログおよび/またはその互変異性体:
【化8】

[式中、AおよびAは、同一であっても異なっていてもよいハロゲン原子であり、
Bは、−COOHであり、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドを含む];および、
(ii)医薬上好適な賦形剤。
【0013】
本発明の別の目的は、ヒト患者における便秘の処置方法を提供することである。したがって、本発明はまた、患者に以下を含む用量単位を投与することを含むヒト患者における便秘の軽減または予防方法を提供する:
(i)約6−96μgの範囲の式(I)で表されるPGアナログ、および/またはその互変異性体:
【化9】

[式中、AおよびAは同一であっても異なっていてもよいハロゲン原子、および、
Bは、−COOHであり、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドを含む];および、
(ii)医薬上好適な賦形剤。
【0014】
本発明によると、式(I)のハロゲン化PGアナログは、下剤としての効果を示すべく好ましくはフッ素原子によってハロゲン化されたものである。本発明の用量単位は、式(I)のPGアナログおよび/またはその互変異性体を単位当たり約6−96μgの範囲で含む。約24−72μgの一日総用量が好ましい。例えば、PGアナログの好ましい一日総用量は約48μgである。
【0015】
本発明によると、経口投与される用量単位を提供するための医薬上の賦形剤は好ましくは中鎖脂肪酸である。
【0016】
(発明の詳細な記載)
本発明は、活性成分としてハロゲン化プロスタグランジンアナログを含む抗便秘組成物についての用量単位を提供する。
【0017】
下剤は便の水分含量を増加させ、腸内容物の輸送を促進する1または複数の機構の組み合わせによって作用すると考えられている。式(I)のハロゲン化プロスタグランジンアナログは、主に、腸管壁から血管および/または血管から腸への電解質と水分の輸送に影響を及ぼすために腸粘膜に作用することによって便秘を緩和するようである。この結果、水分吸収の減少および/または腸を介する水分分泌の上昇が起こり、腸管内水分容量が増加し、腸管内容物の輸送が促進される。
【0018】
本発明者らは、便秘の処置および予防のためのハロゲン化プロスタグランジンアナログの投与計画および好適な処方を見いだした。PGアナログと医薬上好適な賦形剤とを含む用量単位が本明細書において記載される。
【0019】
用量単位の調製
用量単位は、式(I)のプロスタグランジンアナログと医薬上好適な賦形剤を含むものである。用量単位に存在するPGアナログの量は典型的には約6−96μgの範囲である。本明細書に用いる、「約」という語は、測定単位とともに用いる場合、+/−30%および+/−20%、好ましくは+/−10%の意味である。例えば、約6−96μgの範囲は好ましくは、5.4−105.6μgの範囲を意味する。好ましい用量は約24−72μgの範囲である。より好適な態様において、用量は約24−60μgの範囲である。例えば、該ハロゲン化組成物の用量は約48μgとすればよい。本発明の用量単位はヒトの便秘の処置および予防療法に使用することができる。
【0020】
(i)PGアナログ
本発明におけるPGアナログは、式(I)で表される:
【化10】

[式中、AおよびAはハロゲン原子であり、Bは−COOH、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドである]。
【0021】
「ハロゲン」の語は、通常、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素原子を含むように用いられる。特に好ましくは、AおよびAのハロゲン原子はフッ素原子である。
【0022】
本発明において用いられる式(I)のハロゲン化PGアナログはアミド、塩またはエステルであってもよい。かかる塩には医薬上許容される塩、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、生理的に許容されるアンモニウム塩(例えばアンモニア塩、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロペンチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ベンジルアミン塩、ピペリジン塩、エチレンジアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノメチル−モノエタノールアミン塩、トロメタミン塩、リジン塩、プロカイン塩、カフェイン塩、アルギニン塩およびテトラアルキルアンモニウム塩等)が挙げられる。これらの塩類は、例えば対応する酸および塩基から常套の反応によってまたは塩交換によって製造し得る。
【0023】
エステルとしては、例えば1または複数の不飽和結合を有していてもよい直鎖または分枝鎖アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、イソプロピルエステル、イソブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、2−エチルヘキシルエステル)が含まれる。
【0024】
好ましいアミドは、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミド、イソプロピルアミドおよびブチルアミドである。
【0025】
好適な態様において、用量単位は、AおよびAがフッ素原子である式(I)のPGアナログを含む。さらに好ましくは、Bが−COOHのものである。
【0026】
本明細書において定義される用量単位とは、投与されるハロゲン化PGアナログの単位である。該用量を構成する単回または複数回用量単位を投与することができ、ここで該用量とは、所望の下剤効果をもたらすハロゲン化PGアナログの量である。
【0027】
本発明の活性薬剤は固体においては二環式化合物として存在するが、溶媒に溶解されると部分的に上記化合物の互変異性体が形成される。水の不在下では、式(I)で表される化合物は二環式化合物の形態で優勢に存在する。水性媒体中では、例えばC−15位のケトン位の間で水素結合が起こり、それによって二環式環形成が妨げられると考えられている。さらに、C−16位のハロゲン原子は、二環式環形成を促進すると考えられている。C−11位のヒドロキシとC−15位のケト部分との間の互変異性は、以下に示すように、13,14単結合およびC−16位に2つのフッ素原子を有する化合物の場合に特に顕著である。
【0028】
本発明の用量単位はハロゲン化PGアナログ化合物の異性体も含む。例えば、C−15位にケト基を有し、C−16位にハロゲン原子を有する単環式互変異性体が挙げられる。
【化11】

【0029】
単環式形態である本発明の好ましい化合物は通常のプロスタグランジンの命名法に従って、13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE、と名付けることができる。
【0030】
(ii)医薬上好適な賦形剤
本発明によると、本発明の用量単位はいかなる形態で処方してもよい。医薬上好適な賦形剤は、それゆえ所望の用量単位の形態に応じて選択すればよい。本発明によると、「医薬上好適な賦形剤」とは、不活性物質であって、本発明の活性成分と組み合わせた形態に好適なものである。
【0031】
例えば、本発明の経口投与用の固体組成物には、錠剤、調製品、顆粒剤などが含まれる。かかる固体組成物において、1または複数の活性成分を少なくとも1つの不活性な希釈剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど)と混合してもよい。常法にしたがって、組成物は不活性希釈剤以外の添加剤、例えば、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等);錠剤分解物質(線維性グルコン酸カルシウム等);安定剤(シクロデキストリン類、例えば、α,β−またはγ−シクロデキストリン;ジメチル−α−、ジメチル−β−、トリメチル−β−、またはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等のエーテル化シクロデキストリン;グルコシル−、マルトシル−シクロデキストリン等の分枝鎖シクロデキストリン;ホルミル化シクロデキストリン、硫黄含有シクロデキストリン;リン脂質等)を含んでいてもよい。上記シクロデキストリン類を用いる場合、シクロデキストリン類との包接化合物を形成させて安定性を向上させてもよい。あるいは、リン脂質を用いてリポソームを形成し、安定性を向上させてもよい。
【0032】
錠剤または丸剤は、所望により胃や腸において溶解するフィルム(例えば、糖類、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)でコーティングしてもよい。さらに錠剤または丸剤は、ゼラチンなどの吸収可能な物質を用いてカプセルとして製剤してもよい。好ましくは、用量単位は、ハロゲン化PGアナログと中鎖脂肪酸トリグリセリドの液体内容物を含む軟ゼラチンカプセルとして処方する。本発明に用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドの例としては、分枝鎖を有していてもよい炭素原子数6−14の飽和または不飽和脂肪酸のトリグリセリドが含まれる。好ましい脂肪酸は直鎖飽和脂肪酸、例えば、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)およびミリスチン酸(C14)である。さらに、2以上の中鎖脂肪酸トリグリセリドを組み合わせて用いてもよい。さらに好適な賦形剤は公表されたPCT出願WO01/27099号に開示されている。
【0033】
経口投与用の液体組成物は、医薬上許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤であってよく、一般的に用いられている不活性希釈剤を用いるとよい。かかる組成物は、不活性希釈剤に加えて、補助剤(例えば滑沢剤および懸濁剤、甘味料、香味料、保存料、溶解剤、抗酸化剤など)を含んでいてもよい。添加剤の詳細については薬学分野で一般的なテキストに記載されているものから適宜選択すればよい。かかる液体組成物は直接軟カプセルに封入してもよい。本発明による非経口投与用溶液、例えば、坐薬、浣腸などには、無菌の、水性または非水性溶液、懸濁液、乳濁液、界面活性剤などが含まれる。水性溶液および懸濁液には、例えば、蒸留水、生理的食塩水、およびリンゲル液が含まれる。
【0034】
非水性溶液および懸濁液には、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸トリグリセリド、オリーブ油などの植物油、エタノールなどのアルコール、ポリソルビン酸などが含まれる。かかる組成物は、保存料、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗酸化剤などの補助剤を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の用量単位は非経口的に使用できるが、経口的に用いるのが好ましい。被験物質は好ましくはPanacet800(Nippon Oil & Fat Co.、Ltd.(尼崎、日本)によって製造された中鎖脂肪酸トリグリセリド)に溶解し、カプセルに充填する(各カプセルは200μLの混合物を含有する)。
【0036】
便秘の処置方法
本発明はさらに、以下を含む用量単位を患者に投与することを含む、ヒト患者における便秘の軽減または予防方法を提供する。
(i)約6−96μgの範囲の、式(I)によって表されるPGアナログまたはその互変異性体:および、
【化12】

(ii)医薬上好適な賦形剤。
式(I)によって表されるPGアナログのAおよびAはハロゲン原子であり、Bは−COOH、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドである。好ましくは、ハロゲン原子はフッ素原子である。
【0037】
本発明の方法によると、本発明の用量単位は、経口または、坐薬、浣腸などを含む非経口投与手段によって全身的または局所的に投与することができる。単回または複数回用量単位を投与して所望の用量を達成してもよい。
【0038】
好ましくは、PGアナログの一日総用量は約24−72μgの範囲である。PGアナログの一日総用量は約24−60μgの範囲であるのも好ましい。さらにより好ましくは、PGアナログの一日総用量は約48μgである。用量は、患者の年齢および体重、症状、治療効果、投与経路、処置期間などに応じて医師の決定により、ある程度変動するであろう。
【実施例】
【0039】
以下の実施例において本発明を説明するが、本発明の範囲を限定する意図ものもではない。以下の実施例において以下の略記を用いる:
AE 有害事象
ITT 包括解析
PO 経口による(経口的)
PP パー・プロトコル
SE 安全性評価可能
【0040】
二重盲検試験薬物療法の少なくとも1用量を服用したすべての無作為患者から安全性評価可能(SE)集団を構成した。これら患者を、個体統計データ、ベースライン特性データおよび安全性分析に含めた。有効性のために、同じデータセットを用い、これを包括解析(ITT)集団と称する。処置法に適合しなかった患者または認承されない同時薬物療法を受けた患者をプロトコル違反者とみなした。主要有効性分析も、パー・プロトコル(PP)集団について行い、これからはプロトコル違反者について影響を受けた週のすべてのデータを排除した。処置が適合した患者をその元の処置群(即ち、無作為群)において分析した。
【0041】
(実施例1)
第1相用量研究
経口化合物A(13,14−ジヒドロ−15−ケト−16,16−ジフルオロ−PGE)の安全性と許容性を16名のボランティアで一人あたりの用量を6μg、12μg、24μg、48μg、72μg、および96μgと増加させて単回用量第1相研究(第1a相)において比較評価し、24名のボランティアで一人あたりの用量を化合物Aを24μg、30μg、および36μgと増加させ、1日3回(TID)、6日間投与する複数回用量第1相研究(第1b相)において評価した(即ち、一人あたり1日総用量72μg、90μgおよび108μg)。
【0042】
第1相研究における用量を制限する毒性は悪心であった。化合物Aの最大許容性の単回一人あたり用量は96μgであり、化合物Aの最大許容性複数回一人あたり用量はTID服用で36μgであった(即ち、一日総用量108μg)。
【0043】
単回増加用量研究
96μgが化合物Aの最大許容性単回経口用量であった。第1a相研究において、重篤な有害事象(SAE)はいかなる用量レベルにおいても起こらなかったが、全部で49のAEが起こった。これらは17名のボランティアのうち13名に起こり、すべて回復した。偽薬を服用したボランティアでは5のAEが起こった。ほとんどのAEは、第1相臨床試験において一般的に報告される応答または事象(例えば頭痛や意識朦朧)または化合物Aの予測される薬力学応答(例えば、緩い腸管運動、下痢および腹部痙攣)のいずれかに分類された。
【0044】
有害事象の数は用量とともに増加した。AEの頻度と重篤度の増加は、最初の4回の用量増加と最後の2回の用量増加の間にみられ、加えてさらに最後の2回の用量増加の間にAEが増加し、これによって96μgが最大許容性単回経口化合物A用量であることが示唆された。
【0045】
腸管運動頻度を各用量レベル群について投薬後24時間の間に評価した。腸管運動は偽薬およびすべての活性用量群においてみられた。偽薬で処置された対象と比べて化合物Aで処置された対象における方が腸管運動が活発な傾向にあった。もっとも著しい効果は、96μgの用量レベルで処置された対象においてみられた。偽薬群において12名の対象のうち3名のみに腸管運動がみられたのに対し、96μgの化合物A群の6名の対象すべてに腸管運動がみられた。さらに、化合物A群における対象一人あたりの腸管運動の平均数(1.5)は、偽薬群における対象一人あたりの腸管運動の平均数(0.5)の3倍であった。
【0046】
複数回増加用量研究
化合物Aは、24μg用量TIDで投与した場合に最適であり、少なくとも6日間TID投与した場合に36μgまで安全かつ許容性であることが判定された。観察されたAEは化合物Aの予測された医薬活性に関連するものであった。しかし、腸管運動の最大総数が24μg用量レベルで達成され、用量の増加は薬力学効果の増加と関係ないが、AEプロフィールの増加と関係があるとすると、24μg用量レベルが健康なボランティアにおいて最良の許容される有効用量であると判定された。
【0047】
ボランティアにはSAEは観察されなかった。研究中に観察される主要な用量を制限する副作用は悪心であった。24μgの用量レベルにおいて、1名のボランティアが3回の悪心を起こし、30μgの用量レベルでは、2名のボランティアが全部で3回の悪心を起こした。36μgの用量レベルでは、悪心の発症が顕著に増加し、13回の悪心がこのレベルを投薬された6名のボランティアのうち5名に起こった。これに加えて、36μgレベルのボランティアの1名において投薬期間中に12回、下痢または軟便が発症し、2回、悪心が発症し、そして、3回、腹部痙攣が発症した。すべてのバイタルサインおよびECGの測定は研究期間の間正常であり、中枢神経系または肉体的異常は観察されなかった。TID処置法について36μgの用量レベルを最大許容性複数回経口用量と判定した。
【0048】
腸管運動頻度もこの研究において評価した。第1相単回増加用量研究におけるように、化合物A処置群は偽薬群と比較して腸管運動が多かった。全部で193回の腸管運動がこの研究において観察された。このなかで、31回は偽薬群において起こり、70回は24μg群において起こり、51回は30μg群において起こり、そして41回は36μg群において起こった。
【0049】
(実施例2)
第2相用量研究
適格性の患者を偽薬または1日総用量24μg、48μgまたは72μgの化合物Aで21日間処置した。1つの偽薬または化合物Aカプセルを1日3回服用させた(午前、正午および午後)。化合物Aを24μgの経口カプセルとして投与した。1日総用量24μg用量の化合物Aを服用することになった患者は1つの化合物Aカプセルを午前に服用し、1つの対応する偽薬カプセルを正午と午後に服用した;1日総用量48μg用量の化合物Aを服用することになった患者は1つの化合物Aカプセルを午前と午後に服用し、1つの対応する偽薬カプセルを正午に服用した;1日総用量72μgの化合物Aを服用することになった患者は1つの化合物Aカプセルを午前、正午および午後に服用した。
【0050】
結果的な全体の有効性に基づいて、化合物Aは24μgの低用量で便秘を軽減する傾向にあるが、統計分析に基づくと、化合物Aの最小有効用量は1日48μgであった。偽薬処置と比較して、化合物Aを48または72μg服用した患者では統計的に有意な自発的腸管運動の一日平均回数の増加が第1週目および第2週目において観察された。48または72μgの化合物Aの投与によって、1日目に自発的腸管運動が観察された患者の割合が統計的に有意に増加した。便の堅さにおける統計的に有意な改善は化合物Aを48および72μg服用した患者においてすべてベースライン期間の後に観察された。便秘の重篤度における統計的に有意な改善は化合物Aを48μg服用した患者において3週目に観察され、化合物Aを72μg服用した患者において2および3週目に観察された。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、包括解析集団(intent-to-treat population)における自発的腸管運動の一日平均回数を示すグラフである。1日の腸管運動は、薬剤投与の0、1、2および3週間、化合物Aの0μg、24μg、48μgおよび72μg用量について評価した。グラフにおいて、[]は、統計的に有意なCochran−Mantel Haenszel(CMH)検定に基づく全体p−値であり、この検定は、改変riditスコアを用いて部位を制御し、Shaffer改変順次否定(sequentially rejective)多重検定手順を用いる。は、Cochran−Mantel Haenszel(CMH)検定に基づく統計的に有意な多重対比較であり、この検定は、改変riditスコアを用いて偽薬と活性薬剤を比較し、部位を制御し、そしてShaffer改変順次否定多重検定手順を用いる。
【図2】図2は、包括解析集団における自発的腸管運動の週あたりの平均回数を示すグラフである。腸管運動の平均回数を0週間、1週間、2週間、3週間、異なる処置群について比較した。グラフにおいて、[]は、統計的に有意なCochran−Mantel Haenszel(CMH)検定に基づく全体p−値であり、この検定は、改変riditスコアを用いて部位を制御し、Shaffer改変順次否定多重検定手順を用いる。は、Cochran−Mantel Haenszel(CMH)検定に基づく統計的に有意な多重対比較であり、この検定は、改変riditスコアを用いて偽薬と活性薬剤を比較し、部位を制御し、そしてShaffer改変順次否定多重検定手順を用いる。破線は、週あたり自発的腸管運動が3回未満であるとして定義された便秘のカットラインを表す。
【図3】図3は、包括解析集団における薬剤有効性の研究のグラフである。異なる処置群についての被検薬剤の有効性を0−4のスケールにランク付けし、4が最も高い有効性を表す。グラフにおいて、[]は、統計的に有意なCochran−Mantel Haenszel(CMH)検定に基づく全体p−値であり、この検定は、改変riditスコアを用いて部位を制御し、Shaffer改変順次否定多重検定手順を用いる。は、Cochran−Mantel Haenszel(CMH)検定に基づく統計的に有意な多重対比較であり、この検定は、改変riditスコアを用いて偽薬と活性薬剤を比較し、部位を制御し、そしてShaffer改変順次否定多重検定手順を用いる。スケールのランク:0は全く有効でない、1はわずかに有効、2は中程度に有効、3はかなり有効、そして4は非常に有効。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)によって表されるプロスタグランジン(PG)アナログおよび/またはその互変異性体、および医薬上好適な賦形剤を含むヒト患者における便秘の軽減または予防に使用する用量単位であって、該PGアナログを約6−96μgの範囲で含有する用量単位:
【化1】

[式中、AおよびAは同一であっても異なっていてもよいハロゲン原子、および、
Bは、−COOHであり、その医薬上許容される塩、エステルまたはアミドを含む]。
【請求項2】
PGアナログが式(I)の単環式互変異性体である、請求項1の用量単位。
【請求項3】
PGアナログが約24−72μgの範囲で存在する、請求項1の用量単位。
【請求項4】
PGアナログが約24−60μgの範囲で存在する、請求項3の用量単位。
【請求項5】
PGアナログが約48μg存在する、請求項4の用量単位。
【請求項6】
医薬上好適な賦形剤が経口的に許容されるものである、請求項1の用量単位。
【請求項7】
医薬上好適な賦形剤が中鎖脂肪酸である、請求項1の用量単位。
【請求項8】
およびAがフッ素原子である、請求項1の用量単位。
【請求項9】
Bが−COOHである、請求項8の用量単位。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201905(P2011−201905A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117231(P2011−117231)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【分割の表示】特願2003−543603(P2003−543603)の分割
【原出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【出願人】(501131276)スキャンポ・アーゲー (37)
【氏名又は名称原語表記】Sucampo AG
【Fターム(参考)】