促進された共培養樹状細胞を使用して抗原特異的T細胞応答を刺激するための方法
本発明は、促進された共培養樹状細胞を使用することによって抗原特異的T細胞応答を刺激するための方法、並びにその使用、例えば疾病を診断するための方法、および特異的な免疫学的特性を示す単離されたT細胞クローンを産生するための方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗原特異的T細胞応答を刺激するための方法に関する。
【0002】
発明の背景
抗原(Ag)特異的T細胞応答の研究は、厄介な技術的課題をもたらす[Kern, Trends Immunol. 26:477, 2005]。これはAg特異的画分が一般的に、末梢血中に非常に低い頻度で示されるという事実に主に起因し、この特徴がその検出を困難なものとしている[Mallone, Clin.Immunol. 110:232, 2004]。この検出はCD4+T細胞を考える場合にはさらにより問題のあるものとなる。なぜなら、これらの画分は、しばしば、そのCD8+の同等物よりもさらにより低い頻度でしか存在しないからである[Homann, Nat.Med. 7:913, 2001; Seder, Nat.Immunol. 4:835, 2003]。
【0003】
多種多様な構造的または機能的な解読値を使用してこのようなAg特異的T細胞(CD4+およびCD8+)を検出することを可能とするいくつかの検出戦略が現在利用可能である[Kern, Trends Immunol. 26:477, 2005]。しかしながら、全ての技術によって共有される1つの欠点は、Ag特異的CD4+T細胞を、ex-vivoでは、およそ直接的に検出することができないことである。最も一般的には、これらの細胞を、5〜14日間のin vitroにおける培養工程を通して予め増殖させて、検出閾値に到達させる必要がある[Mallone, Clin.Immunol. 110:232, 2004]。このin vitroにおける増殖のために多くのアプローチを使用することができる。末梢血単核球(PBMC)は、適切な数のCD4+T細胞並びに抗原提示細胞(APC;単球、B細胞、および僅かな循環樹状細胞の画分(DC))を含むので、それらを、対象のペプチドエピトープまたはタンパク質Agでパルスし、そしてインターロイキン(IL)−2およびIL−7などの共刺激サイトカインを添加してまたは添加せずに増殖させることができる。
【0004】
あるいは、単球をまず単離し、そして5〜7日間かけて顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびIL−4を用いて未成熟DCへと分化させ、続いてさらに24〜48時間かけて異なる炎症誘発刺激を用いて成熟させることができる[Zhou et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:2588, 1996]。この戦略はDCのより高い刺激能力を活用することにより、より多くのCD4+T細胞の増殖を達成する。魅力的であるが、しかしながらそれはより多くの出発血液容量を必要とする。なぜなら単球はPBMCの僅かに約5〜15%を占め、そしてアロ特異的CD4+T細胞の選択を避けるために自己単球を理想的には使用するべきであるからである。それ故、単球由来DCが生成される間、T細胞は、培養液中にまたは凍結して保持される必要がある。より多くのPBMCが必要とされることの他に、この手順はまた、血液の天然のAPCに専ら依拠する手順よりも長い。
【0005】
さらに、T細胞刺激のためのペプチドエピトープの使用は、免疫応答によってターゲティングされるそのようなエピトープの事前の同定を必要とする。この同定手順は非常に大きな労力を要し、そして1つのHLAクラスIまたはクラスIIアレルに対して特異的である。従って、研究したいと思うヒト被験者に応じて、異なるHLAアレルに対して異なるエピトープを同定しなければならない。
【0006】
さらに特筆すべきことに、しばしば、CD4+T細胞を検出するだけではなく、さらなる機能的プロファイリングのためにそれらを単離および増殖することに関心がある。
【0007】
それ故、T細胞応答を測定し、そしてT細胞クローン、特にCD4+T細胞を単離するための感度が高く、多用途で、そして使い易い方法を提供するための充足されていない必要性が依然として当技術分野において存在する。
【0008】
発明の要約
本発明者らは、適切なサイトカイン混液および培養条件を使用して、未分画全血または末梢血単核球(PBMC)試料からの直接的な成熟樹状細胞と共にAg特異的T細胞を共培養することによって、Ag特異的T細胞応答を刺激することが可能であることを発見した。
【0009】
従って、本発明は、以下の工程:
a)樹状細胞(DC)の分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、被験体から単離した前記血液試料またはPBMC試料中において抗原(Ag)特異的T細胞応答を刺激するための方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、被験体における疾病を診断するための、および/または免疫療法の効果をモニタリングするためのこのような方法の使用に関する。
【0011】
本発明の別の局面は、Ag特異的T細胞クローンを産生するためのこのような方法の使用に関する。
【0012】
本発明のさらに別の局面は、治療タンパク質の免疫原性を評価するための並びにAg発見およびエピトープマッピング分析のための、このような方法の使用に関する。
【0013】
本発明のさらに別の局面は、Ag特異的制御性T細胞を生成するためのこのような方法の使用に関する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、被験体から単離した前記の血液試料またはPBMC試料中においてAg特異的T細胞応答を刺激するための方法に関する。
【0015】
1つの態様において、Ag特異的T細胞応答はCD4+T細胞応答である。別の態様において、Ag特異的T細胞応答はCD8+T細胞応答である。
【0016】
本発明者らは、本発明の方法を実施するために適切な生物学的試料は、血液試料、または慣用的な密度勾配分離プロトコールを使用して全血から精製したPBMC試料である。
【0017】
好ましい態様において、本発明の生物学的試料はPBMC試料である。本明細書において使用する「PBMC」または「末梢血単核球」または「未分画PBMC」という用語は、全PBMC、すなわち所与の亜集団群へと濃縮されていない、丸い核を有する白血球の1集団群を指す。典型的には、本発明によるPBMC試料は、接着性PBMC(実質的に90%超の単球からなる)または非接着性PBMC(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞およびDC前駆体を含む)のみを含むための選択工程にかけられていない。
【0018】
それ故、本発明によるPBMC試料は、リンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞)、単球およびその前駆体を含む。
【0019】
典型的には、これらの細胞を、血液の層を分離する親水性多糖であるフィコールを使用して全血から抽出することができ、PBMCは血漿の層の下に細胞輪を形成する。さらに、PBMCを、赤血球を優先的に溶解する低浸透圧性溶解を使用して全血から抽出することができる。このような手順は、当業者には公知である。
【0020】
あるいは、本発明による生物学的試料は血液試料でもよい。
【0021】
本明細書において使用する「血液試料」または「未分画血液試料」という用語は、被験体から単離され、そして適切な抗凝固剤(例えばヘパリンリチウムまたはクエン酸ナトリウム)を含むチューブまたは他の容器中に回収された粗血液標本を指す。血液試料は未分画の全血であり、そして血漿および血球(赤血球、白血球)を含む。それは新たに単離された血液試料(48時間未満)であっても、または以前に入手しそして使用まで凍結して保存されていた血液試料でもよい。
【0022】
本明細書において使用する「被験体」という用語は、哺乳動物、例えばげっ歯類(例えばマウスまたはラット)、ネコ、イヌまたは霊長類を指す。好ましい態様において、前記被験体はヒト被験者である。
【0023】
本発明による被験体は、健康な被験体であっても、または所与の疾病を患う被験体であってもよい。
【0024】
本明細書において使用する「抗原」(「Ag」)という用語は、T細胞応答を誘起することのできるタンパク質、ペプチド、組織または細胞の調製物を指す。好ましい態様において、前記Agは、組換えDNA技術によって、または異なる組織もしくは細胞源からの精製によって得ることができるタンパク質である。このようなタンパク質は、天然タンパク質に限定されず、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合することによって得られる改変タンパク質またはキメラ構築物も含む。本発明の別の態様において、前記Agは、Fmoc生化学的手順、大規模多重ピンペプチド合成、組換えDNA技術または他の適切な手順によって得られる合成ペプチドである。
【0025】
本発明の別の態様において、Agは、当業者には公知の種々の生化学的手順(例えば固定、溶解、細胞下分画、密度勾配分離)によって得られる粗または部分精製された組織または細胞の調製物である。
【0026】
工程a)DCの分化を誘導する培地中における血液試料またはPBMC試料の培養
本発明の方法は、DCの分化を誘導する培地中における血液試料またはPBMC試料の培養工程を含む。
【0027】
本発明を実施するのに適した培地は、PBMCの増殖、生存および分化に適した任意の培養培地である。典型的には、それは、ヒトまたは他の起源の血清および/または増殖因子および/または抗生物質を補充することのできる、栄養分(炭素源、アミノ酸)、pH緩衝液および塩を含む基礎培地からなり、これにDCの分化を誘導する物質を加える。
【0028】
典型的には、基礎培地は、RPMI 1640、DMEM、IMDM、X−VIVOまたはAIM−V培地であり得、その全てが市販されている標準培地である。
【0029】
本発明の態様において、PBMC試料よりもむしろ血液試料を培養する場合には、このような基礎培地の使用は不必要であり、培養培地としての役目を果たす血液中に直接、分化剤を加えることができる。
【0030】
細胞培養は、この目的に適した組織培養インキュベーターを使用して5%CO2雰囲気中37℃で実施し得る。
【0031】
好ましい態様において、前記培地は、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を含む。典型的には、1〜10,000U/ml、好ましくは10〜5,000U/ml、さらにより好ましくは約1,000U/mlの量のGM−CSFを使用する。
【0032】
GM−CSFを多種多様な起源から得ることができる。それは精製GM−CSFであっても、または組換えGM−CSFであってもよい。GM−CSFは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0033】
好ましい態様において、前記培地はさらに、インターロイキン4(IL−4)を含む。典型的には、0〜10,000U/ml、好ましくは10〜1,000U/ml、さらにより好ましくは約500U/mlの量のIL−4を使用する。IL−4を多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−4であっても、または組換えIL−4であってもよい。IL−4は、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0034】
別の好ましい態様において、前記培地は、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt−3)リガンドを含み、Flt−3リガンドは単独でまたはGM−CSFおよび/またはIL−4と組み合わせて使用され得る。典型的には、1〜1,000ng/ml、好ましくは10〜100ng/mlの量のFlt−3リガンドを使用する。
【0035】
Flt−3リガンドを多種多様な起源から得ることができる。それは精製Flt−3リガンドであっても、または組換えFlt−3リガンドであってもよい。Flt−3リガンドは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0036】
本発明によると、DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料をインキュベーションする工程は、前記血液試料またはPBMC試料のDCを濃縮するのに十分な時間をかけて行なわれる。当業者にとっては、これは、DCによって発現されるか、または発現されないことが知られるマーカーの相対的発現を調べることによって容易に試験することができる。例えば、血液試料またはPBMC試料の濃縮は、CD11c、HLA−DR、CD80およびCD86などのマーカーの増加および/またはCD14などのマーカーの減少によって反映され得る。多種多様なゲーティング戦略を使用して、分析中の細胞を、選択されたPBMCまたは全血サブセットに制限することによって、DC集団群上におけるこれらのマーカーの発現の特異性を評価することができる。例えば、DCは、他の亜集団群(例えばCD3、CD14、CD16、CD19、CD34;いわゆる系統陰性細胞)に典型的なマーカーを発現せず、そしてHLA−DRを発現している細胞として同定され得る。
【0037】
好ましい態様において、前記工程を、t(a)minからt(a)maxまでの時間t(a)をかけて行なう。
【0038】
典型的には、工程a)の最小インキュベーションのt(a)minは、約12時間、好ましくは約16時間、さらにより好ましくは約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、さらにより好ましくは約24時間であり得る。
【0039】
典型的には、工程a)の最大インキュベーションのt(a)maxは、約10日間、好ましくは約7日間、さらにより好ましくは約6日間、約5日間、約4日間、約3日間、約2日間、さらにより好ましくは約1日間であり得る。
【0040】
上に開示した最小および最大インキュベーション時間t(a)minおよびt(a)maxを組み合わせることができる。
【0041】
好ましい態様において、工程a)を、約16時間〜約7日間、好ましくは約20時間〜約4日間の時間t(a)をかけて行なう。
【0042】
好ましい態様において、工程a)を約24時間の時間t(a)をかけて行なう。
【0043】
実際に、本発明者らは、単離T細胞に加えられた場合にAg特異的T細胞応答をその後に刺激することができるDCを、出発物質として精製された単球を使用して産生するための慣用的なプロトコールを、共培養液中におけるDCの産生に適用することができ、従って、本発明の抗原特異的T細胞応答を刺激するための方法に適用することができることを実証した。このような方法は、例えば、Caux et al. Nature 360:258, 1992; Romani et al., J Exp Med. 180: 83, 1994 and Sallusto et al., J Exp Med. 179 : 1109, 1994に記載されている。
【0044】
さらに、本発明者らは、意外なことに、Dauer et al., [Dauer et al., J Immunol, 170:4069, 2003]によって記載された促進されたプロトコールを本発明の方法のためにも使用して、出発物質として未分画血液試料またはPBMC試料を使用して、Ag特異的T細胞応答を刺激することができることを実証した。
【0045】
工程b):DCの成熟化
本発明の方法によると、工程a)の最中に血液試料またはPBMC試料のDCを濃縮した後、前記DCを工程b)の最中に成熟させることができる。
【0046】
好ましい態様において、炎症誘発刺激および/またはウイルスもしくは細菌の攻撃を模倣する物質を、工程a)の培地に加える。
【0047】
本発明の方法に適した炎症誘発刺激の例は、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、プロスタグランジンE2(PGE2)、抗CD40モノクローナル抗体(mAb)、CD40リガンド(CD40L)組換えキメラタンパク質、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−7(IL−7)であるがそれらに限定されない。このような物質を、単独でまたは他の炎症誘発刺激またはウイルス/細菌模倣物質との種々の組合せで使用することができる。本発明の方法に適したウイルスまたは細菌の攻撃を模倣する物質の例は、リポ多糖(LPS)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリイノシン酸・ポリシチジン酸(ポリI:C)、Pam3CysSerLys4 (Pam3CSK4)、イミキモドであるがそれらに限定されない。このような物質を、単独でまたは他の炎症誘発刺激またはウイルス/細菌模倣物質との種々の組合せで使用することができる。
【0048】
1つの態様において、工程b)を、TNF−α、IL−1β、PGE2、抗CD40抗体、IFN−α 2a、LPS、ポリI:C、IFN−γ、IL−7およびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つの物質の存在下において行なう。
【0049】
前記物質(群)は、免疫応答を刺激することが知られる物質であり、そして当業者は、非特異的T細胞活性化を制限しつつDC成熟を得るために適切な各物質の濃度を選択することができるだろう。
【0050】
また、当業者は、DC成熟を刺激することが知られる他の物質もまた本発明の方法に従って使用することができることを容易に解釈するだろう。
【0051】
好ましい態様において、工程b)を、TNF−α、IL−1βおよびPGE2の存在下において行なう。
【0052】
典型的には、1〜10,000U/ml、好ましくは10〜5,000U/ml、さらにより好ましくは約1,000U/mlの量のTNF−αを使用する。TNF−αを多種多様な起源から得ることができる。それは精製TNF−αであっても、または組換えTNF−αであってもよい。TNF−αは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0053】
典型的には、0.1〜1,000ng/ml、好ましくは1〜100ng/ml、さらにより好ましくは約10ng/mlの量のIL−1βを使用する。IL−1βを多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−1βであっても、または組換えIL−1βであってもよい。IL−1βは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0054】
典型的には、0.01〜100μM、好ましくは0.1〜10μM、さらにより好ましくは1μMの量のPGE2を使用する。PGE2を多種多様な起源から得ることができる。PGE2は、例えばCalbiochem/MerckまたはSigmaなどの種々の会社から合成品として市販されている。
【0055】
別の態様において、工程b)を、抗CD40(例えばmAbクローンG28−5)およびIFN−αの存在下において行なう。
【0056】
典型的には、0.1〜50μg/ml、好ましくは1〜25μg/ml、さらにより好ましくは約10μg/mlの量の抗CD40mAbを使用する。好ましい態様において、抗CD40mAbはクローンG28−5である。精製G28−5もしくは他の抗CD40mAbは、社内でハイブリドーマ培養上清から当業者に公知の手順に従って産生しても、またはBioLegendもしくはeBioscienceなどの種々の業者から購入してもよい。
【0057】
代替的な態様において、抗CD40mAbを、単量体形または多量体形のいずれかで合成された組換えCD40リガンド分子を用いて置換してもよい。組換えCD40リガンド分子は、社内で当業者に公知の組換えDNA法を使用して産生しても、またはR&D Systemsなどの種々の業者から購入してもよい。
【0058】
典型的には、1〜10,000U/ml、好ましくは10〜5,000U/ml、さらにより好ましくは約1,000U/mlの量のIFN−αを使用する。好ましい態様において、IFN−αはIFN−α2aである。IFN−αを多種多様な起源から得ることができる。それは精製IFN−αであっても、または組換えIFN−αであってもよい。IFN−αは、例えばRoche (Roferon-A)、R&D SystemsまたはPeproTechなどの種々の会社から市販されている。
【0059】
別の態様において、工程b)をLPSの存在下において行なう。
【0060】
典型的には、1〜10,000ng/ml、好ましくは10〜1,000ng/ml、さらにより好ましくは約100ng/mlの量のLPSを使用する。LPSを多種多様な起源から得ることができる。それは種々の細菌株から精製されてもよい。適切な株は、E. coli、K. pneumoniae、P. aeruginosa、S. enterica、S. typhosa、S. marcescensであるがそれらに限定されない。LPSは、例えばSigmaなどの種々の会社から市販されている。
【0061】
別の態様において、工程b)をポリI:Cの存在下において行なう。
【0062】
典型的には、0.1〜1,000μg/ml、好ましくは1〜100μg/ml、さらにより好ましくは約20μg/mlの量のポリI:Cを使用する。ポリI:Cを多種多様な起源から得ることができる。それを当業者に公知の方法を使用して合成してもよい。ポリI:Cは、例えばSigmaなどの種々の会社から市販されている。
【0063】
好ましい態様において、低用量のIL−7を工程b)の物質に加える。
【0064】
典型的には、0.01〜10ng/ml、好ましくは0.1〜1ng/ml、さらにより好ましくは約0.5ng/mlの量のIL−7を使用する。IL−7を多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−7であっても、または組換えIL−7であってもよい。IL−7は、例えばR&D SystemsまたはPeproTechなどの種々の会社から市販されている。
【0065】
本発明の方法の好ましい態様によると、工程b)を、DCを成熟させるのに十分な時間t(b)をかけて行なう。典型的には、この時間t(b)は、約12〜約72時間、好ましくは約16〜約48時間、さらにより好ましくは約24時間である。
【0066】
代替的な態様において、工程b)を、0〜12時間というより短い時間t(b)をかけて行なう。
【0067】
抗原
理論によって練ることなく、本発明の方法にかけられた血液試料またはPBMC試料は、種々の成熟段階のDC(単球、未成熟DC、成熟DC)と、他の細胞の中でもとりわけT細胞との共培養液を含むと考えられる。
【0068】
この異種細胞集団群の中で、DCはAgを取り上げ、その表面上でそれをT細胞に提示し、これによってT細胞はAg特異的様式で刺激されると考えられている。
【0069】
好ましい態様において、前記Agは、組換えDNA技術によって、または異なる組織もしくは細胞源からの精製によって得ることのできるタンパク質である。典型的には、前記タンパク質は、10アミノ酸より長い、好ましくは15アミノ酸より長い、さらにより好ましくは20アミノ酸より長い長さを有し、理論的上限はない。このようなタンパク質は天然タンパク質に限定されないが、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合することによって得られる改変タンパク質またはキメラ構築物も含む。
【0070】
本発明の別の態様において、前記Agは合成ペプチドである。典型的には、前記合成ペプチドは、3〜40アミノ酸長、好ましくは5〜30アミノ酸長、さらにより好ましくは8〜20アミノ酸長である。合成ペプチドを、Fmoc生化学手順、大規模多重ピンペプチド合成、組換えDNA技術または他の適切な手順によって得ることができる。このようなペプチドは、天然ペプチドに限定されないが、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合することによって得られる改変ペプチドまたはキメラペプチドも含む。
【0071】
本発明の別の態様において、Agは、当業者に公知である種々の生化学的手順(例えば固定、溶解、細胞下分画、密度勾配分離)によって得られる粗または部分精製された組織または細胞の調製物である。
【0072】
当業者は、所望のT細胞刺激に依存して、適切なAgを選択することができる。
【0073】
当業者はまた、どの工程で前記Agを導入すべきかも知っているだろう。
【0074】
典型的には、Agがタンパク質または組織もしくは細胞の調製物である場合、それは一般的には工程a)の最中に加えられる。典型的には、Agがペプチドである場合、それを工程a)よりもむしろ工程b)で加えることができる。所与のペプチドがMHCクラスII分子に直接的に結合するか、またはMHCクラスII分子上への提示の前に樹状細胞によって取り込まれて処理されるかどうかを予測するための明確なアミノ酸長のカットオフ値はないが、各場合についての中間長ペプチドの添加時刻を最適化することは当業者の能力の範囲内である。
【0075】
刺激されたT細胞の検出
刺激されたT細胞の検出のための方法は、当業者には公知である。以下に記載した手順は、適切な方法のいくつかの例を提供する。しかしながら、当業者はAgに応答するT細胞の刺激を評価するのに適した任意の方法を使用することができることを容易に解釈することができる。
【0076】
酵素免疫スポット(ELISpot):
この手順を、以下の実施例1に詳述する。
【0077】
プレ培養ウェルからの非接着性細胞を、所望の抗サイトカイン捕捉抗体(Abs;例えば抗IFN−γ、抗IL−10、抗IL−2、抗IL−4)でコーティングされたプレートに移す。ビオチニル化二次Absおよび標準的な比色定量または蛍光定量検出法(例えばストレプトアビジン−アルカリホスファターゼおよびNBT−BCIP)を用いて顕色し、そしてスポットを計測する。その後、ELISpot解読値をスポット形成細胞(SFC)/106個のPBMCとして表現する。
【0078】
上清サイトカインアッセイ:
培養上清中に放出されたサイトカインを、種々の技術、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、BDサイトメトリックビーズアッセイ、Biorad Bio-Plexアッセイおよびその他の技術によって測定する。
【0079】
HLAクラスIIテトラマー:
この手順を用いて、特異的なペプチドエピトープを認識するAg反応性T細胞を、市販されている試薬(例えばProImmune MHCクラスII Ultimers)または社内で作成した試薬(例えば、Dr. G.T. Nepom, Benaroya Research Institute, Seattle, USAからの) [Novak et al., J.Clin.Invest. 104:R63, 1999]のいずれかを使用して検出する。
【0080】
活性化マーカー(例えばCD69、CD25、CD137)のアップレギュレーション:
この手順を用いて、Ag特異的T細胞応答を、Ag認識後に膜上に露出する活性化マーカーのその異なる発現によって検出する。
【0081】
サイトカイン捕捉アッセイ:
Miltenyi Biotechによって開発されたこのシステムは、そのサイトカイン応答に従ってAg特異的T細胞を可視化するためのELISpotに代わる有効なものである。さらに、それは、対象のT細胞の直接的な選別およびクローニングを可能とする(以下参照)。
【0082】
CD154アッセイ:
この手順は、近年、詳細に記載されている[Chattopadhyay et al., Nat.Med. 11:1113, 2005; Frentsch et al., Nat.Med. 11: 1118, 2005]。それはAg特異的CD4+T細胞の検出に限定される。
【0083】
CD107アッセイ:
この手順[Betts et al., J.Immunol.Methods 281:65, 2003]は、細胞障害能を有するAg特異的CD8+T細胞の可視化を可能とする。
【0084】
CFSE希釈アッセイ:
この手順は、Ag認識後のその増殖によりAg特異的T細胞(CD4+およびCD8+)を検出する[Mannering et al., J.Immunol.Methods 283:173, 2003]。
【0085】
方法の適用
本出願において記載したAg特異的T細胞応答を刺激するための方法は、迅速で、効率的で、特異的で、多用途な手順である。要約すると、伝統的な方法と比較しての利点は以下の通りである:
1.より高い感度;
2.未分画PBMCまたはさらには未分画血液(新鮮または凍結のいずれか)を使用することができる。事前の精製工程の必要がなく、このことがこの技術をより簡単にし、そして血液容量の点における負担をより少なくさせている;
3.事前の長期の増殖が必要でない;
4.タンパク質Agまたは組織もしくは細胞の調製物のAgを使用する場合には、特異的なエピトープの限定されたセットに対するレパートリーよりもむしろそうしたAgに対する全T細胞レパートリーを検出することができる;
5.HLA拘束性の制限がない;
6.ペプチドAgとも適合性;
7.T細胞活性化の種々の解読値と適合性
8.同じ刺激技術を使用して、Ag特異的CD4+T細胞を増殖させ、続いて選別し、そしてさらなる特徴付けのためにCD4+T細胞株およびクローンを生成することができる。
【0086】
従って、記載の方法は多くの適用を有する。
【0087】
それ故、本発明はまた、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記被験体において疾病を診断するための方法に関する。
【0088】
本発明はまた、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、疾病を患う前記被験体において免疫療法の効果をモニタリングするための方法に関する。
【0089】
実際に、本発明者らは、Ag特異的T細胞応答を刺激するための本発明の方法が、疾病を診断するためと、いくつかの設定において免疫療法の免疫学的効果をモニタリングするための両方のために有用であり得ることを発見した。
【0090】
好ましい態様において、前記疾病は自己免疫疾病からなる群より選択される。この群は、1型糖尿病(T1D)、ウェゲナー肉芽腫症、クローン病、セリアック病および多発性硬化症を含むがそれに限定されない。
【0091】
本発明の別の態様において、前記疾病は、癌疾病からなる群より選択される。この群は、メラノーマ、大腸癌、腎臓癌、および血液学的悪性疾患、例えば白血病、リンパ種および多発性骨髄腫を含むがそれらに限定されない。
【0092】
別の態様において、前記疾病は感染症からなる群より選択される。この群は、M. tuberculosis、HIV、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルスなどの感染病原体によって引き起こされる疾病を含むがそれらに限定されない。
【0093】
別の態様において、前記疾病は、骨髄移植および類似の手順を複雑化させる移植片対宿主疾病である。
【0094】
診断適用のために、本発明の方法を使用して、疾病、好ましくは自己免疫疾病に関連した1つ以上のAg特異的T細胞応答を検出することができる。例えば、前記方法を使用して、1型糖尿病に関連したプレプロインスリン特異的またはグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)特異的なT細胞応答を検出することができる。
【0095】
本明細書において使用する「免疫療法をモニタリングする」という表現は、in vivoにおいて免疫調節剤を投与した後に、所与の被験体において誘導されるT細胞応答の変化の測定を指す。
【0096】
モニタリング適用については、疾病のタイプに応じて異なるタイプの状況が見られる。
【0097】
自己免疫疾病において、免疫調節療法を使用して、病的な免疫応答を鈍らせることができる。この結果を達成するための1つの戦略は、多くの免疫調節剤に基づいた非Ag特異的な介入に依拠する。例えば、薬剤、例えばシクロスポリンA(Stiller et al., Science 223:1362, 1984; Feutren et al., Lancet 19:119, 1986; Bougneres et al., Diabetes 39:1264, 1990)、ダクリズマブ、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン、インターロイキン−2、抗CD3モノクローナル抗体(Herold et al., N.Engl.J.Med. 346:1692, 2002; Keymeulen et al., N.Engl.J.Med. 352:2598, 2005)、抗CD20モノクローナル抗体、例えばリツキシマブ(Pescovitz et al., N.Engl.J.Med. 361:2143, 2009)、自己骨髄非破壊的な造血幹細胞移植(Voltarelli et al., JAMA 297:1568, 2007)、自己臍帯血細胞注入(Haller et al., Diabetes Care 32:2041, 2009)、ビタミンD、制御性T細胞適応療法が、T1Dの予防および/または介入のために試験されているか、または試験される可能性がある。第2のアプローチは、Ag特異的戦略、すなわち、免疫寛容誘発形態の疾病に関連したAgの投与に依拠する。例えば、薬剤、例えば(プロ)インスリン(DPT-1, N.Engl.J.Med. 346:1685, 2002; Skyler et al., Diabetes Care 28:1068, 2005; Nanto-Salonen et al., Lancet 372:1746, 2008)、GAD(Ludvigsson et al., N.Engl.J.Med. 359:1909, 2008)、NBI−6024(Alleva et al., Scand.J.Immunol. 63:59, 2006)、DiaPep277(Raz et al., DiabetesMetab.Res.Rev. 23:292, 2007)、およびその組合せ、β細胞Agと組み合わせた抗CD3(Bresson et al., J.Clin.Invest. 116:1371, 2006)、in vitroまたはin vivoにおけるDCへのAgのローディング(Mukhopadhaya et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:6374, 2008)、エピトープ−HLAマルチマー(Casares et al., Nat.Immunol. 3:383, 2002; Masteller et al., J.Immunol. 171:5587, 2003; Mallone et al., Blood 106:2798, 2005)が、T1Dの予防および/または介入のために試験されているか、または試験される可能性がある。
【0098】
癌および感染症における病気発生は、病的な免疫応答によって引き起こされるのではなく、むしろ、免疫系による制御を回避する組織細胞または感染病原体によって引き起こされる。それ故、癌または感染細胞/感染病原体に対する免疫応答は、疾病に拮抗しようとする生理学的適応である。これらの生理学的機序を、非Ag特異的戦略(例えば、メラノーマにおける単独でまたは種々の薬剤と組み合わせた、細胞障害性Tリンパ球関連抗原4の遮断;Yuan et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:20410, 2008; Maker et al., Ann.Surg.Oncol. 12:1005, 2005)、またはAg特異的アプローチ、すなわち免疫原性形態の疾病関連Ag(群)の投与(いわゆるワクチン接種)のいずれかを使用して治療的にブーストすることができる。これらの後者のアプローチは、Agを単独でまたは種々のアジュバント剤と組み合わせて投与することによって(例えば、メラノーマにおける腫瘍関連Agの投与;Di Pucchio et al, Cancer Res. 66:4943, 2006; Peterson et al., J.Clin.Oncol. 21:2342, 2003);AgでパルスされたDCを投与することによって(例えば、メラノーマにおける腫瘍関連AgでパルスされたDCの注入;Palucka et al., J.Immunother. 26:432, 2003; Banchereau et al., Cancer Res. 61:6451, 2001; Thurner et al., J.Exp.Med. 190:1669, 1999)または疾病関連Ag特異的T細胞の養子移植によって(例えば、メラノーマにおける腫瘍関連Ag特異的T細胞の注入;Vignard et al., J. Immunol. 175:4797, 2005)遂行され得る。
【0099】
それ故、このような介入によって誘導される免疫変化を追跡することは治療的に関心がある。成功裏の介入は、疾病関連Ag特異的T細胞応答の減少(自己免疫疾病の場合)または減少(癌および感染症の場合)を実現すべきである。疾病関連Ag特異的T細胞応答におけるこのような変化は、定量的(例えばAg特異的T細胞の頻度の変化)または定性的(例えばこのようなT細胞の表現型および/または機能の変化)であり得る。臨床的に効力のあるこれらの免疫代用マーカーを入手できることは、多種多様な適用のために非常に有用であり得る。例えば、患者の免疫応答に基づいた処置する患者および使用する治療剤のより良好な選択(例えば、GAD特異的T細胞応答を提示する患者におけるGAD投与);治療用量または投与レジメンの最適化および/またはテーラーメイド(例えば、免疫変化が記録されない場合の投与用量/投与頻度の増加)、従ってリスク・ベネフィットの比の向上;処置に応答するその確率による処置患者の予後層別化;誘導される免疫変化の維持に基づいてまたは基づかずに再度患者を処置するかどうかの決定。
【0100】
それ故、本発明のAg特異的T細胞応答を刺激するための方法は、これらの免疫変化の誘導をモニタリングするのに非常に有用であり得る。
【0101】
T細胞応答を検出する工程c)を、例えば、分泌される所与のサイトカインの量を測定することによって前記のように実施することができる。
【0102】
好ましい態様において、T細胞応答を検出する工程c)は、ELISpotによって実施される。
【0103】
本明細書において使用する「疾病関連抗原(Ags)」という表現は、免疫応答の分子ターゲットを構成するタンパク質またはペプチドを指す。前記分子ターゲットは、免疫応答によってターゲティングされる組織(群)または細胞(群)によって発現される。疾病関連Agの発現は、ターゲット組織に限定され得るか、またはさらに他の身体区画まで広がり得る。疾病関連Agは最初に、自己抗体またはT細胞免疫応答のターゲットであるとして、またはターゲット組織によるその選択的な発現に基づいて同定され得る。疾病関連タンパク質抗原のいくつかの例は、T1Dについては、プレプロインスリン(PPI)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ関連タンパク質2(IA−2)、膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)および亜鉛トランスポーター8(ZnT8);ウェゲナー肉芽腫症についてはミエロペルオキシダーゼよびプロテイナーゼ3;多発性硬化症におけるミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)およびミエリン塩基性タンパク質(MBP);セリアック病におけるグリアジン;メラノーマ癌におけるチロシナーゼ、メラン−A、MART−1、gp100およびNY−ESO1;M. tuberculosis感染についてはESAT−6およびHIV感染についてはgagである。
【0104】
疾病関連ペプチドAgの例は、Ag提示細胞(DCを含む)による処理および異なるHLAクラスIまたはクラスII分子の状況での提示の後に、前記の該タンパク質Agから得られる。それ故、前記ペプチドAgは、その起源のAgだけに依存するのではなく、それらが提示されるHLA分子にも依存して異なる。例えば、マウスおよびヒトの両方についてのT1D関連ペプチドAgのリストを、DiLorenzo et al., Clin.Exp.Immunol. 148:1, 2007に見出し得る。
【0105】
「疾病関連抗原」という表現はまた、免疫応答のターゲットを構成する組織または細胞を指す。疾病関連組織/細胞を、前記疾病の病態生理学および臨床症状に基づいて疾病のターゲットとして同定することができる。疾病関連組織/細胞のいくつかの例は、T1Dについてはインスリン産生膵β細胞;多発性硬化症における乏突起神経膠細胞;セリアック病における腸上皮;メラノーマ癌における悪性メラノサイト;結核感染についてのM. tuberculosis;およびHIV感染についてのHIVである。
【0106】
疾病関連Agに対して開始される免疫応答は、病的な免疫応答(すなわち自己免疫疾病の場合)、または別の進行中の生理学的過程の結果を制限することを目的とした、生理学的で有益な可能性のある免疫応答(すなわち癌または感染症の場合)であり得る。前記疾病の根底にある病的または生理学的免疫応答のおかげで、このような応答の検出を使用して、これらの疾病を診断することができるか、またはその天然のまたは治療により改変された展開を追跡することができる。それ故、疾病関連Ag特異的T細胞応答を測定することによって、本明細書において記載した方法を、前記疾病の免疫診断およびモニタリング(例えば免疫の段階、治療経過観察)の両方に適用することができる。
【0107】
当業者は、適切な疾病関連Agを選択する方法を知っているだろう。このような選択は、多種多様な戦略に基づく。T1D関連Agについてのこのような戦略の例を、Wenzlau et al. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007; Peakman et al., J.Clin.Invest. 1999; Nepom et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2001; Arif et al., J.Clin.Invest. 2004; Toma et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2005; Blancou et al., J.Immunol. 2007; Skowera et al., J.Clin.Invest. 2009に見出し得る。T1D関連ペプチドエピトープについてのこのような戦略のレビューを、Di Lorenzo et al., Clin.Exp.Immunol. 148:1, 2007およびMartinuzzi et al., Ann.N.Y.Acad.Sci. 1150:61, 2008に見出し得る。
【0108】
本発明の方法の別の適用は、治療タンパク質の免疫原性(または免疫寛容原性)のin vitroにおける研究のためのその使用に関する。
【0109】
本明細書において使用する「治療タンパク質」という用語は、治療効果を達成するためにヒト被験者にin vivoにおいて投与されるかまたは投与されることが計画される、任意のアミノ酸長のタンパク質またはペプチド化合物を指す。このような治療タンパク質の例は、疾病関連Ag(前記に定義した通り)、異なる種の抗体(その天然形または部分的/完全にヒト化された形態のいずれか)、サイトカイン、ホルモンまたはホルモン類似体、凝固因子、酵素、細菌またはウイルスタンパク質であるがそれらに限定されない。このようなタンパク質は、天然タンパク質に限定されないが、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合させることによって得られた、改変タンパク質またはキメラ構築物も含む。理論によって固めたくはないが、治療タンパク質の免疫原性の評価が関連する2つの異なる治療設定が存在する。
【0110】
1つの最初の治療設定は、免疫寛容原性効果(例えば自己免疫疾病の場合)または免疫原性効果(例えば癌または感染症の場合)を誘導する目的での、in vivo投与のための疾病関連Ag(前記に定義した通り)の使用に関する。前記の所望の治療効果を達成する能力をin vitroにおいてまず評価することが重要である。
【0111】
別の治療設定において、目的は、投与されたタンパク質に対して任意の種類の免疫原性応答を誘導することではなく、前記タンパク質が治療効果(このために前記タンパク質は設計されている)を達成することを可能とするためにこのような応答を回避することである。このような設定の例は、サイトカインに基づいた免疫療法、ホルモン補充療法、および凝固因子の欠損(例えば血友病Aにおける第VIII因子)または酵素欠損(例えばムコ多糖症VIIにおけるβ−グルクロニダーゼ)のための補充療法を含むがそれらに限定されない。全てのこれらの状況において、投与されたタンパク質に対する免疫原性応答の開始は望ましくない。なぜなら、これは所望の治療効果を達成するためには逆効果であるからである(例えば、サイトカイン放出症候群などの副作用;または治療タンパク質の中和/分解)。
【0112】
それ故、本発明はまた、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(治療タンパク質を、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記治療タンパク質の免疫原性を評価するための方法に関する。
【0113】
本発明の方法の別の適用は、Agまたはエピトープの発見(「マッピング」としても知られる)のための、すなわち、Ag特異的T細胞応答を誘起するものを選択するためにAgおよびエピトープをスクリーニングするための、その使用である。
【0114】
本明細書において使用する「エピトープ」という用語は、T細胞によって認識されるタンパク質Agの部分を指す。エピトープは、主要組織適合複合体(MHC)クラスIまたはクラスII分子に結合することのできる種々のアミノ酸長のペプチドである。このようにして形成されたペプチド−MHC複合体は、T細胞上に発現されるT細胞レセプター(TCR)によって認識されることができ、従って、T細胞の活性化およびエピトープAg特異的T細胞応答が開始される。
【0115】
AgおよびエピトープはT細胞の規定された分子ターゲットであるので、in vitroにおける適用(例えば診断、予後または治療目的のためのAg特異的T細胞応答の検出)またはin vivoにおける投与(例えば自己免疫疾病におけるAgまたはエピトープに基づいた免疫寛容原性療法;あるいは癌および感染症におけるAgまたはエピトープに基づいたワクチン接種)のために使用するための適切なタンパク質またはペプチドを設計するためにこのようなターゲットを正確に同定することはしばしば適切である。さらに、所与のMHC分子(例えばHLA−A2、A*0201;またはHLA−DR4、DR*0401)に結合するエピトープおよび/またはTCRシグナル伝達およびT細胞活性化のトリガーを支配する一般的な法則の定義が、所与のエピトープの挙動を予測することのできるコンピューター化アルゴリズムを開発する目的でしばしば求められる。このようなアルゴリズムの開発は、頻繁に、多くの実験データセットが入手できることを必要とする。
【0116】
それ故、本発明は、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(候補Agまたはエピトープを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、候補Agおよびエピトープをスクリーニングするための方法に関する。
【0117】
前記候補Agはまた、免疫応答によってターゲティングされる組織(群)もしくは細胞(群)、または、当業者に公知の生化学的または分子生物学技術によって候補Agまたはエピトープでコーティング、ローディングまたはそれを発現させるようにした任意のタイプの細胞であり得る。
【0118】
本発明の方法のさらに別の適用は、T細胞クローンを産生するためのその使用に関する。
【0119】
従って、本発明は、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)特異的な免疫学的特性を提示する少なくとも1つのT細胞を単離する工程
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を提示するT細胞クローンを産生するための方法に関する。
【0120】
前記の特異的な免疫学的特性は、工程a)および/またはb)の最中に加えられたAgの、単離T細胞による認識を含むがそれらに限定されない。例えば、前記の特異的な免疫学的特性はまた、IFN−γの産生、または認識されたAgを提示する細胞に対して細胞障害作用を発揮する能力も含み得る。IFN−γを産生または細胞障害作用を提示するT細胞クローンは、例えば癌および感染症の処置に有用であり得る。
【0121】
例えば、別の可能な特異的な免疫学的特性は、IL−10の産生であり得る。IL−10を産生するT細胞クローンは、自己免疫疾病の処置のための制御性T細胞として使用することができる。
【0122】
当業者は、血液試料またはPBMC試料から一旦単離された前記のAg特異的T細胞を増殖させる方法をよく知っている。T細胞クローニング法としても知られるこのような方法の例を、Reijonen et al., Diabetes 51:1375, 2002; Mallone et al., Blood 106:2798, 2005; Mannering et al., J.Immunol.Methods 298:83, 2005; Yee et al., J.Immunol. 162:2227, 1999; Mandruzzato et al., J.Immunol. 169:4017, 2002; Oelke et al., Nat.Med. 9:619, 2003; Skowera et al., J.Clin.Invest. 118:3390, 2009に見出し得る。
【0123】
当業者は、異なる免疫学的特性に基づいて生存状態の前記Ag特異的T細胞を単離するのに適した方法もよく知っている。例えば、IFN−γまたはIL−10産生T細胞の選択を、Miltenyiサイトカイン捕捉アッセイによって行なうことができる。別の例としては、細胞障害性T細胞の選択を、CD107のアップレギュレーションに基づいて行なうことができる[Betts et al., J.Immunol.Methods 281:65, 2003]。
【0124】
本発明の方法のさらに別の適用は、Ag特異的制御性T細胞を生成するためのその使用に関する。
【0125】
本明細書において使用する「制御性T細胞」という用語は、免疫系の活性化を制御および抑制するように作用し、これにより、免疫系の恒常性および自己Agに対する寛容性を維持する、T細胞の特殊な亜集団群を指す。規定された疾病関連Agを認識する前記制御性T細胞を、自己免疫および移植片対宿主疾病などの病的状況において免疫寛容性を回復するために治療的に使用することができる。多数のポリクローナル(すなわち多数の規定されていないAgを認識する)制御性T細胞を生成するための効率的な方法が記載されている[Putnam et al., Diabetes 58:652, 2009]。それにも関わらず、所与のAgに特異的な多数の制御性T細胞の生成は、依然として達成されていない。本明細書において記載する方法は、この目的に有用であることが証明され得る。
【0126】
従って、本発明は、以下の工程:
a)免疫寛容誘発特性を有するDCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)特異的な免疫学的特性を提示する少なくとも1つのT細胞を単離する工程
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を提示するAg特異的制御性T細胞を生成するための方法に関する。
【0127】
前記の特異的な免疫学的特性は、工程a)および/またはb)の最中に添加されるAgの、単離T細胞による認識を含むがそれらに限定されない。例えば、前記の特異的な免疫学的特性はまた、前記の制御性T細胞と物理的に接触してまたは空間的に近くに置かれたT細胞の増殖、サイトカイン分泌、細胞障害作用および他のエフェクター機能を抑制する能力;単独で、またはIFN−γなどの非制御性サイトカインと組み合わせて、IL−10、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−βファミリー、IL−35などの制御性サイトカインを産生する能力;IL−2の存在下においてのみ増殖する能力;制御性T細胞集団群に典型的なマーカーを発現する能力を含み得る。このようなマーカーは、CD25、CD127、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子レセプター(GITR)、フォークヘッドボックスP3(FoxP3)、HLA−DR、細胞障害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)、CD45RA、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)を含むがそれらに限定されない。
【0128】
当業者は、血液試料またはPBMC試料から一旦単離された前記の制御性T細胞を増殖させる方法をよく知っている。このような方法の例を、Putnam et al., Diabetes 58:652, 2009 and in Miyara et al., Immunity 30:899, 2009に見出し得る。
【0129】
当業者はまた、異なる免疫学的特性に基づいて生存状態の前記の制御性T細胞を単離するのに適した方法もよく知っている。例えば、IL−10産生制御性T細胞の選択は、Miltenyiサイトカイン捕捉アッセイによって行なうことができる。別の例としては、CD25が高くCD127が陰性である制御性T細胞の選択は、細胞表面染色に基づいて行なうことができる[Liu et al., J. Exp. Med. 203:1701, 2006, Seddiki et al., J. Exp. Med. 203:1693, 2006, Putnam et al., Diabetes 58:652, 2009 and in Miyara et al., Immunity 30:899, 2009]。
【0130】
本明細書において使用する「免疫寛容誘発特性を有するDC」という用語は、制御性T細胞を生じることのできるDCを指す。調節特性を有するサイトカインを以前に記載された培養プロトコールに加えることによって、前記の免疫寛容誘発特性を有するDCを得ることができる。
【0131】
好ましい態様において、前記の調節サイトカインはIL−10である。典型的には、IL−10は、1〜1,000ng/ml、好ましくは10〜100ng/mlの量で使用される。IL−10を多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−10であっても、または組換えIL−10であってもよい。IL−10は、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0132】
別の好ましい態様において、前記の制御性サイトカインは、TGF−β1などのTGF−βファミリーのメンバーである。典型的には、TGF−β1は、1〜1,000ng/ml、好ましくは1〜100ng/ml、さらにより好ましくは1〜10ng/mlの量で使用される。TGF−β1を多種多様な起源から得ることができる。それは精製TGF−β1であっても、または組換えTGF−β1であってもよい。TGF−β1は例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0133】
さらに他の態様において、前記の制御性サイトカインは、制御活性を発揮することが知られる他のサイトカイン、あるいはIL−10、TGF−βファミリーのメンバーおよび/または他の制御性サイトカインの任意の組合せである。制御活性を有する他のサイトカインの例は、IL−5、IL−13およびIL−35を含むがそれらに限定されない。
【0134】
好ましい態様において、工程a)を、t(a)minからt(a)maxまでの時間t(a)をかけて行なう。
【0135】
典型的には、工程a)の最小インキュベーションt(a)minは、約12時間、好ましくは約16時間、さらにより好ましくは約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、さらにより好ましくは約24時間であり得る。
【0136】
典型的には、工程a)の最大インキュベーションt(a)maxは、約10日間、好ましくは約7日間、さらにより好ましくは約6日間、約5日間、約4日間、約3日間、約2日間、さらにより好ましくは約1日間であり得る。
【0137】
上に開示した最小および最大インキュベーション時間t(a)minおよびt(a)maxを組み合わせることができる。
【0138】
好ましい態様において、工程a)を、約16時間〜約7日間、好ましくは約20時間〜約4日間の時間t(a)をかけて行なう。
【0139】
好ましい態様において、工程a)を、約24時間の時間t(a)をかけて行なう。
【0140】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは特許請求の範囲によって定義される保護の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1a】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図1b】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図1c】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図1d】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図2a】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図2b】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図2c】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図2d】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図3】acDCにより増殖されたAg特異的T細胞を単離およびクローニングすることができる。(a)acDC ELISpotおよびT細胞クローン生成手順の図解。GM−CSFおよびIL−4をタンパク質Agと共にCFSE標識PBMCに0日後に加えて、続いて1日後にTNF−α/PGE2/IL−1βを加えることによってacDCを誘導した。2日後に、非接着性細胞をELISpotウェルに6時間かけて移し、そして続いて回収し、そして培養液に戻した。Ag特異的応答を、ELISpotによって定量した。8〜10日後に、増殖(CFSE低度)細胞の対応する画分を1つの細胞毎に選別し、3回の刺激サイクルを通して増殖させ、そして28日後にAg特異性について試験した。(b)TTXまたは対照刺激の後の代表的なacDC IFN−γ ELISpot。(c)ELISpotウェルから回収したPBMCのCFSEの増殖。標準 vs acDCにより引き起こされる増殖の比較を示す。(d)TTX特異的CFSE低度画分を選別しそしてクローニングした。細胞内IFN−γ染色によるTTXおよび対照でパルスされたDC上におけるこれらのクローンの1つの想起アッセイを示す。
【図4】タンパク質/ペプチドAgおよび異なる刺激期間は、異なるT細胞応答をトリガーする。(a)acDCおよびmoDCにより引き起こされるIFN−γ ELISpotアッセイを図1bのように、6価ワクチン(Hexa)で刺激した磁力的にCD4を枯渇させたまたは枯渇させていないPBMCに対して実施した。(b)acDC混液の存在下または非存在下において培養したPBMCに対して行なったIFN−γ ELISpot。HLA−A2+(A*0201)−DR4+(DR*0401)被験体からのPBMCを、示したように、HLA−A2拘束性Flu MP58〜66ペプチド、DR4拘束性Flu HA306〜318ペプチドまたはTTXで刺激した。ペプチドを培養の開始から24時間後に加えたが、TTXは最初から導入した。(c)CD45RA+またはCD45RO+細胞を磁力的に枯渇させたまたは枯渇させないままにしたPBMCに対して実施したacDC刺激におけるTTX特異低IFN−γ ELISpot応答。結果を、枯渇されていないPBMCに正規化した相対的IFN−γ応答として表現する。(d)CFSEで標識されたacDCにより刺激されたPBMC上でのTTXおよびKLHに対するIFN−γおよびIL−10のELISpot応答。(e)CFSE標識PBMCを、パネルdのアッセイウェルから回収し、そしてさらに10日間さらなる刺激およびサイトカインの非存在下において培養した。異なるAgに対するCD4+およびCD8+T細胞のCFSEの増殖を示す。パネルa〜eの刺激は、acDCをTNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させることによって行なわれ、そして3回の独立した実験の代表である(パネルcを除いて、3回の別々の実験の平均±SEMを示す)。
【図5】Ag特異的IFN−γ分泌およびCD137アップレギュレーションは、PBMCおよび全血中においてacDCにより増幅される。(a)acDCの非存在下(上の列)または存在下(下の列)においてPBMCに対して実施されたIFN−γ捕捉アッセイ。48時間のインキュベーション後、分泌IFN−γを、製造業者の指示に従って、非接着細胞の表面上で捕捉した。パーセントの付いた数字は、PBMCの中のIFN−γ+CD4+(左)またはIFN−γ+CD8+(右)画分を示す。(b)上のように、48時間の培養中のacDCによる増幅を含む(下の列)または含まない(上の列)精製PBMCに対して実施されたCD137アップレギュレーションアッセイ。(c)同じ採血に由来する全血を、平行して、acDCと共に(下)またはその非存在下において(上)、Agを加えることによって刺激した。48時間の培養終了時に、赤血球を溶解し、そして試料をパネルbと同様に分析した。ドットプロットをここでCD4+(左)またはCD8+(右)T細胞上でゲーティングし、PBMCと全血との比較を可能とした。それ故、パーセントの付いた数字は、CD4+またはCD8+T細胞の間のCD137+画分を示す。結果は、抗CD40/IFN−γ成熟混液を使用して3回実施した代表的な実験を指す。
【図6】acDCは、全血中のサイトカイン分泌を増幅する。(a)全血(250μl)を、48時間かけて、acDC(成熟のための抗CD40/IFN−γを含む)の存在下(丸)または非存在下(四角)においてTTXと共にまたはその非存在下において培養した。血漿上清を回収し、そしてサイトカインをLuminexビーズアッセイによって測定した。有意なAg特異的分泌を示したサイトカインのみを示す。結果を、基礎値(白抜きの記号によって示す)を差し引いた後の、正味のTTXで刺激されたサイトカイン濃度(黒い記号)として表現する。(b)2つの異なる被験体(それぞれ丸および菱形の記号)におけるacDCによる刺激後の、PBMC(黒い記号)と全血(白抜きの記号)との比較。結果を、基礎値を差し引いた後の、正味のTTXで刺激されたサイトカイン濃度として表現する。代表的な実験を、10回以上の実験が実施された両方のパネルに示す。
【図7】acDCに基づいたアッセイの図解。未分画PBMC(新鮮または凍結)または未希釈ヘパリン処理全血のいずれかを、GM−CSFおよびIL−4と共に24時間かけてタンパク質Agの存在下においてインキュベーションする。続いて成熟刺激をさらに24時間かけて加え、その後、増幅したT細胞応答を多種多様な解読値によって測定することができる。上の灰色のパネルはPBMCを用いて試験したT細胞の解読値を列挙し;下の灰色のパネルは、全血を用いて得られた解読値を示す。acDC増幅技術はまたペプチドAgとも適合性であり、これは成熟刺激と共に24時間後に加えられる。
【図8】KLH免疫化マウスにおけるIFN−γELISpot応答のacDCによる増幅。Balb/cマウスを、KLHまたはアジュバント単独(各々n=3)を用いて皮下免疫化し、そしてその単核球(1×106)は、acDC混液(LPS成熟)を使用してまたはサイトカインを全く使用せずに、KLHまたは対照Agを用いてin vitroにおいて想起した。*p<0.001;n.s.、有意ではない。結果は3連で実施した代表的な実験を指す。
【図9】HLAマルチマーによって同定されたエピトープ特異的T細胞のacDCにより引き起こされる増殖。(a)Fluまたは対照ペプチドをローディングしたHLA−A2ペンタマー(PMrs)を使用したFlu MP58〜66特異的CD8+T細胞のex vivoにおける検出。(b)PMrsによって検出されるFlu MP58〜66特異的CD8+T細胞のin vitroにおける増殖。PBMCを、FluMP58〜66ペプチドの非存在下(最初の縦列)または存在下(2番目および3番目の縦列)において培養した。培養を48時間かけて行なうか(最初および2番目の横列)、または非接着細胞を洗浄し、再播種し、そしてさらに7日後まで培養した(3番目および4番目の横列)。これらの培養を、示したように、acDC混液の存在下または非存在下において実施した。Flu特異的CD8+T細胞を、対応するHLA−A2 PMrsを用いて同定し(最初および2番目の縦列)、そしてバックグラウンド染色を対照PMr(3番目の縦列)を用いて決定した。(c、d)同じ実験を実施して、Fluまたは対照ペプチドのローディングされたHLA−DR4テトラマー(TMrs)を使用してFlu HA306〜318特異的CD4+T細胞を検出した。acDC成熟を、抗CD40/IFN−αを用いて誘導した。結果は、3回の独立した実験の代表である。
【図10】acDCにより増幅されるIL−1β分泌は、接着細胞に由来する。PBMCを、acDC手順に従ってTTXを用いてまたはAgを全く用いずに刺激した(抗CD40/IFN−α成熟)。48時間後、接着細胞および非接着細胞(2×105個/ウェル)を、別々に、IL−1β ELISpotアッセイにおいて6時間かけて試験した。*p<0.01;n.s.、有意ではない。結果は、3連で実施した代表的な実験を指す。
【0142】
実施例
実施例1:PBMC由来の促進された共培養DC(acDC)は、共培養T細胞のAg特異的応答(タンパク質Agによる刺激)を増幅する
材料および方法:
0日後に、全PBMC(2.5×106個の細胞/ウェル)を、48ウェルプレートの、1,000U/mlのGM−CSF、500U/mlのIL−4(両方共にR&D Systemsから)、および関連タンパク質Ag(10μg/ml)の補充されたAIM−V培地(Invitrogen)に播いた。試験したタンパク質抗原は破傷風トキソイド(TTX)、M. tubercolosis精製タンパク質誘導体(PPD)、6価ワクチンのインファンリックスヘキサ(GlaxoSmithKline)、プロインスリン(PI)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリンC−ペプチド、プレPIリーダー配列、ミエロペルオキシダーゼ、プロテイナーゼ3であった。陰性対照として使用したタンパク質の一例はウシ血清アルブミン(BSA)である。
【0143】
1日後に、炎症誘発刺激を加えて、DCの成熟を誘導した。
【0144】
いくつかの成熟プロトコールを開発して、以下に記載したように試験した。
【0145】
成熟プロトコールA:1000U/mlのTNF−α、10ng/mlのIL−1β(両方共にR&Dから)および1μMのPGE2(Calbiochem)
これは、FastDCを得るのに使用したのと同じサイトカイン混液であり[Dauer et al., J.Immunol. 170:4069, 2003]、そして慣用的な(7日後の)DCを生成するためにいくつかの他のグループによって記載されている。さらに、本発明者らは、低用量のIL−7(0.5ng/ml;R&D)を加え、これは本発明者らが、ELISpot検出システムを使用してAg特異的に(すなわちバックグラウンドの増加を伴うことなく)CD8+T細胞応答を大きく増殖させるために以前記載した[Martinuzzi et al., J.Immunol.Methods 333:61, 2008]。このプロトコールは、例えばIFN−γ、IL−10、IL−2、IL−4などを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0146】
成熟プロトコールB:抗CD40モノクローナル抗体(mAb;クローンG28−5、10μg/ml)、IFN−α 2a(Roferon-A, Roche; 1,000 U/ml)
慣用的な7日後のDCのための類似の成熟混液が記載されている[Luft et al., Int.Immunol. 14:367, 2002]。さらに、本発明者らは、低用量のIL−7(0.5ng/ml)を使用して応答をさらに増幅させた。
【0147】
このプロトコールは、例えばIFN−γおよびIL−10などを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0148】
成熟プロトコールC:LPS100ng/mlおよび低用量のIL−7(0.5ng/ml)
このプロトコールは、IL−10基礎(非刺激)分泌の大きな増加に因り、IL−10ではなく例えばIFN−γを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0149】
成熟プロトコールD:ポリI:C 20μg/mlおよび低用量のIL−7(0.5ng/ml)
このプロトコールは、IL−10基礎(非刺激)分泌の大きな増加に因り、IL−10ではなく例えばIFN−γを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0150】
T細胞検出手順:ELISpot。非接着細胞を洗浄し、新鮮なAIM-V培地に再懸濁し、そして所望の抗サイトカイン捕捉Abs(例えば抗IFN−γ、抗IL−10、抗IL−2、抗IL−4;全てU-CyTechから)を用いて一晩かけてコーティングされた、96ウェルPVDFプレートの3つのウェル(0.3×106個の細胞/ウェル)に分配した。さらなるAgまたはサイトカインは加えず、そしてプレートを6時間37℃、5%CO2でインキュベーションした。ビオチニル化二次Absおよび標準的な比色定量検出(例えばストレプトアビジン−アルカリホスファターゼおよびNBT−BCIP)を用いて顕色させた。スポットを、Bioreader 5000 Pro S-F (BioSys)ELISpot解読機または同等物で計測し、そして3つのウェルの平均を計算した。全てのELISpot解読値は、スポット形成細胞(SFC)/106個のPBMCとして表現した。陽性応答のカットオフは、平均基礎反応性(すなわちBSAまたは無抗原に対する反応性)より上の3SDに設定された。
【0151】
acDCの表現型分析:
acDCおよび慣用的な(7日後の、単球由来の)DC(未成熟または成熟のいずれか)の表現型を、HLA−DR、CD14、CD80、CD86、CD11cに特異的なmAbで染色することによって決定した。エンドサイトーシス活性をデキストラン−FITCと共にインキュベーションし、続いて取り込まれた蛍光を評価することによって評価した。全ての細胞を、FACSAriaフローサイトメーター(BD)で分析した。
【0152】
結果:
acDCの特徴付けにより、慣用的な7日後のDCのそれと同一な表現型が判明した。CD14のダウンレギュレーションは、HLA-DRおよび共刺激分子の発現増加と平行して起こったが、デキストラン取り込みは成熟時に減少した。
【0153】
本発明者らは、ELISpot検出システムを使用して、タンパク質Agでパルスした時にAg特異的T細胞応答を増幅するacDCの能力を試験した。24時間の成熟期間後に、非接着細胞を、抗IFN−γ、抗IL−10、抗IL−2または抗IL−4捕捉AbでコーティングされたELISpotプレートに移し、そしてさらに6時間かけてさらにAgまたはサイトカインの補充を全く行なうことなく培養した。acDCにより引き起こされる培養液は、慣用的な単球により引き起こされる条件(すなわちサイトカインを全く添加しない)と比較して、Ag特異的T細胞応答の誘起においてはるかにより効率的であった。関連しないタンパク質またはAg希釈剤のみに対するバックグラウンド応答は有意に増加しなかった。さらに、acDCは、未成熟のままのacDCと比較して(すなわち、GM−CSFおよびIL−4のみで処理)、炎症誘発刺激で成熟させた場合にはるかにより効率的であった。acDCの効率は、慣用的な7日後のDCと類似し、そしてIFN−γ、IL−10、IL−2およびIL−4を含む種々のサイトカイン応答を増幅する上で同様に効果的であった。例えば、TNF−α、PGE2およびIL−1βで成熟させたacDCを用いての特異的シグナルの中央値の増加は、単球と比較して、IFN−γについては2.2倍(1.5〜8.7の範囲)であり、IL−10については1.4倍(1.2〜5.0の範囲)であった。
【0154】
実施例2:ペプチドAgによる刺激
材料および方法:
実施例1に記載したのと同じ実験を、タンパク質Agによる刺激の代わりに、ペプチド抗原刺激を使用して行なった。試験したペプチドAgの例は、インフルエンザマトリックス(MP)58〜66、インフルエンザヘマグルニチン(HA)306〜318、GAD555〜567、GAD114〜123、PIB10〜18であった。陰性対照として使用したペプチドの例はピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PD)5〜13およびコラーゲンII(CII)261〜273であった。
【0155】
結果:
タンパク質AgでパルスされたacDC培養液中に誘起されたシグナルは専ら、CD4+T細胞を起源としていた。なぜなら、これらの細胞を除去した時に前記シグナルが完全に消失したからであった。Ag特異的CD8+T細胞応答は、より長い培養期間(7日間)かけてしか誘起することができなかった。7日後のDCを使用して全PBMCまたはCD4枯渇PBMCを刺激した場合に同じことが当てはまり、従って、acDCに特異的な欠陥特徴は除外される。このCD4特異的刺激は、CD8+T細胞の非効率的な活性化に起因せず、しかしむしろ、内部移行Agの交差提示を誘起するのに最適ではない培養条件に起因していた。実際に、タンパク質Agではなくペプチドエピトープを使用した場合、CD4+およびCD8+T細胞応答の両方がトリガーされ、そして両方が、単球と比較してacDCによって有意に増幅された。従って、本発明者らは、特異的なペプチドエピトープを認識するAg特異的T細胞を増殖および検出するための、acDC培養技術の改変形を綿密に作った。この場合、対象のペプチドを1日後に炎症誘発刺激と共に加える。この改変形は、所与のエピトープに対して特異的なCD4+およびCD8+T細胞の両方の検出を可能とする。
【0156】
従って、acDC培養プロトコールを使用して、タンパク質またはペプチドAgのいずれかを用いてT細胞を刺激することができる。
【0157】
実施例3:血中における直接的なacDCの誘導
サイトカイン混液およびタンパク質/ペプチドAgを、実施例1(タンパク質Agについて)または実施例2(ペプチドAgについて)のように、予めPBMC精製または血液希釈を全く行なっていない新しく採血したヘパリン処理した血液試料中に直接的に加えた。48時間の培養終了時に、血漿および/またはPBMCを回収し、そしてELISA(R&D)、サイトメトリックビーズアレイ(BD)、もしくはBio−Plex(Biorad)アッセイを使用した血漿中のサイトカイン測定によって、または赤血球溶解後の細胞画分に対するMiltenyiサイトカイン捕捉アッセイによって、Ag特異的T細胞応答について分析した。またこの場合、acDCにより引き起こされる培養液中において誘起されたAg特異的応答は、単球により引き起こされる培養液中において誘起されるものよりも高かった。使用する成熟プロトコールに依存して、これは、IFN−γ、IL−10、IL−2、IL−6、IL−13、TNF−α、G−CSF、IL−1βを含む試験した多くのサイトカインについて該当した。
【0158】
実施例4:acDC培養の下流にあるT細胞の増殖、選別およびクローニング、並びにT細胞応答の分析
acDC培養系はまた:1)さらなる機能的な特徴付け(例えばRT−PCR技術による)のためのAg特異的T細胞の選別;並びに2)さらなる分析のためのT細胞株およびクローンを生成するために適している。
【0159】
PBMCを、CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、0.5〜1μM)で予め標識し、acDC培養にかけ、そして前記のようにELISpotプレートに移した。6時間のELISpotでのインキュベーション後に、細胞を回収し、そしてさらに刺激を与えることなくさらに5日間かけて培養液中に戻した。この培養の終了時に、増殖しているCFSE低度細胞を1細胞毎に選別し、そして以前に記載されたプロトコールを使用して3回の刺激を通してさらに増殖させた[Mannering et al., J.Immunol.Methods 298:83, 2005]。一例として、破傷風トキソイド(TTX)特異的応答が、0.044%の頻度でELISpotによって検出され、これは3.0%のTTX特異的CFSE低度画分の選択に関連し、これは約68倍の増殖に対応する。またこのin vitroにおける培養について、acDCに基づいた培養は、慣用的な単球に基づいた増殖よりも優れていることが判明し、これは約10倍低いTTX特異的細胞(0.29%)を生じた。TTX特異的CFSE低度画分を選別し、そしてクローニングすることにより、TTX特異的CD4+クローンが得られた。このアプローチはまた、acDC培養液から検出された応答が実際にAg特異的であったことを確認した。
【0160】
実施例5:acDC培養系は、β細胞特異的CD4+T細胞応答を検出する
1型糖尿病(T1D)は、インスリン産生β細胞をターゲティングするT細胞により媒介される自己免疫疾病である。その発症率は着実に増加している(フランスにおいては1年当たり100,000中15人までが新たに診断される;1年あたり3〜4%の発症率の増加)。その独特な疫学から(それは主に小児および若年成人に生涯にわたり罹患する)、それは慢性的で費用がかかり衰弱させる疾病であり、重度の合併症(心臓血管疾病、腎症および末期腎疾病、網膜症および盲目)に至る。
【0161】
T1Dの臨床的発症および診断は、病的カスケードの後期の事象であり、これは大半のβ細胞がすでに自己反応性T細胞によってそれより以前の数カ月/数年間かかって破壊された後に行なわれる。その段階において、免疫機序の修正を目的とした原因関連療法のための余地は殆ど残されておらず、そしてインスリン補充が唯一の治療選択肢である。それ故、疾病の予測および経過観察のために適切なバイオマーカー、並びに全身的な免疫抑制を回避しつつβ細胞特異的T細胞応答を選択的に消失させることのできる適切な抗原(Ag)特異的療法が重大にも欠失している。
【0162】
T1Dのために、現在使用されている自己抗体は限界を有する。なぜならT1D患者の15%は自己抗体陰性であり;自己抗体はT1D発症までの時間を予測せず;そしてそれらは成功裏な免疫介入後に変化しないからである。
【0163】
あるいは、T細胞応答(CD8+T細胞応答またはCD4+T細胞応答)を、初期バイオマーカーとして使用することができる。
【0164】
サイトカインELISpotは、種々の条件において特異的な免疫応答の調査のために広く使用されているアッセイである。CD8+T細胞応答を、この方法によって容易に検出することができる。ヒトT1DについてのCD8+β細胞ターゲットエピトープに関する情報が殆どないということが依然として限界であるが、CD8+T細胞応答を測定するための既存の技術(ELISpotおよびテトラマーに基づいた)が、見込みある結果をもたらしている(Toma et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 102:10581, 2005; Mallone et al., Diabetes 56:613, 2007)。
【0165】
Ag特異的CD4+T細胞は、末梢血中に非常に低い頻度で存在し(約0.001〜0.0001%、そのCD8+対応物よりもさらに低い)、特に自己免疫設定におけるその検出を困難なものとしている。
【0166】
Alleva et al. (J Clin Invest. 107:173, 2001)は、直接的なELISpotアッセイを使用して、T1D患者におけるインスリンB9〜23エピトープに対する細胞応答の検出を報告した。
【0167】
Arif et al., (J Clin Invest. 113:451, 2004)は、間接的なELISpotアッセイを使用していくつかのプロインスリン由来ペプチドに対する細胞応答の検出を報告した。この文献において、末梢血単核球を、ELISpotアッセイ前に抗原性ペプチドと共にインキュベーションした。
【0168】
しかしながら、そうした研究は、最初に行なった研究室以外での復元をすることが全体的に困難であった。これは、このような手順の技術的なハードル、およびこれらの検出システムの全体的に低い感度を明白にする。
【0169】
それ故、本発明者らは、本出願において記載したacDCに基づいた手順を使用して。T1Dのβ細胞特異的なCD4+T細胞応答を調べた。種々のグループの患者を考察し、そしていくつかの重要な観察を行なった:最初に、診断時に引き抜かれたT1D成人は、プロインスリン(PI)特異的応答の高い罹患率(83.3%)によって特徴付けられ、これは長年の患者においてこれらの応答が稀であることと対照的であった(5.4%;P<0.0001)。これに対し、GAD特異的応答も同じように、T1Dの期間に関係なく、より低い頻度ではあるが提示された。第二に、新たに発症したT1D小児は全くPI特異的T細胞応答を示さなかった。健康な対照(成人および小児の両方)は2つの症例を除いて全くPI特異的T細胞応答を示さなかった(頻度8.7%)。どちらの症例においても、これらの被験者は、以前には認識されていなかったT1Dリスク因子を有し、1つの症例においてはHLA−DR4/DQ8感受性ハプロタイプに陽性であり、そして他方においては抗GAD Absに対して陽性であった。リスクのある第1度近親(n=10;頻繁には他のAbマーカーと共に、膵島細胞Abに陽性な個体として定義)は、どうにか中間の写真を示し、試験した個体の30.0%がPI特異的応答に陽性であった。重要なことには、試験した10人の個体の中の僅か1人が、現在までにT1Dを発症し、そしてacDCに基づいたELISpotアッセイによってT1D進行のリスクが高いと正しく同定されている。理論によって固めたくはないが、本発明者らは、新たに発症したT1D患者と長年のT1D患者との間に観察した差異は、インスリン処置によって誘導された制御応答を反映し、これは、リスクのある被験者における自己免疫によるβ細胞の破壊を遮断することによって疾病を予防することを目的とした臨床試験についての重要な示唆であると仮定する。この制御応答は、いくつかの場合、小児に見られるように、インスリン療法とは独立した天然の応答であり得る。
【0170】
実施例6 促進された共培養樹状細胞(acDC)による抗原特異的T細胞応答の増強された検出
アブストラクト
抗原(Ag)特異的T細胞の検出はしばしばアッセイ感度によって制限される。それ故、本発明者らは、in situにおいて樹状細胞(DC)の誘導および成熟を促進することによって(促進された共培養DC、acDCと呼ぶ)、ヒトおよびマウスの末梢血単核球(PBMC)中におけるAg処理およびT細胞への提示を増強するためのアプローチを考案した。未分画PBMCまたは全血を、タンパク質またはペプチドAgおよびサイトカイン混液と共に48時間かけてインキュベーションし、acDCを迅速かつ連続的に誘導、パルスおよび成熟させた。同様に、Agを処理および/または隣接するT細胞に提示し、これによりT細胞活性化に至る複数の工程を圧縮し、そして時間、操作および血液必要量を最小限とした。誘起されたT細胞応答は、種々の解読値(サイトカイン分泌、増殖、CD137アップレギュレーション、ヒト白血球Agマルチマーの結合)によって検出されたようにAg特異的であった。acDCに基づいたアッセイは、ウイルス、腫瘍および自己免疫疾病などの種々の設定においてT細胞応答をモニタリングするための価値ある適用を見出し得る。
【0171】
序論
種々の外来抗原および自己抗原(Ag)に対する応答を開始する上でのT細胞の中心的な役割にも関らず、例えば感染症または自己免疫疾病における免疫により媒介される過程の慣用的な診断検出は、主に、専らではなくても、抗体(Ab)応答の測定に依拠する。しかしながら、Absは基礎にある病態を常に媒介または反映しているわけではなく、そして免疫過程が主にT細胞により媒介されている場合にはより情報は少なくなるであろう(1)。現在までのAg特異的T細胞アッセイの唯一の信頼できる臨床的適用は、M. tuberculosis感染の診断においてであった(2)。さらに、T細胞免疫を効果的に測定する重要性は診断適用を超える(3)。T細胞のモニタリングは、ウイルスもしくは腫瘍特異的な免疫をブーストすることを、または自己組織(4)もしくは移植組織(5)に対する免疫を消失させることを目的とした、免疫調節療法を評価するためにも必要とされる。補充タンパク質(例えば凝固因子)(6)またはワクチン(7)の免疫原性能を評価するためのT細胞スクリーニングツールも等しく要求される。
【0172】
慣用的なヒトT細胞アッセイがないのは、T細胞応答を測定することが本質的に困難であることに起因する。所与のAgに特異的なT細胞は、血中に非常に低い頻度で存在する(すなわち0.1〜0.001%)(8)。これらの細胞はex vivoにおいて時折検出可能であるが、その稀少さは、酵素結合イムノスポット(ELISpot)およびフローサイトメトリーなどの技術の感度に挑戦する。あるいは、これらの細胞の頻度を、事前の増殖工程によって増大させることができるが、これらは追加の時間および操作を必要とする。T細胞レセプターによる提示および認識のためにヒト白血球Ag(HLA)分子に結合するエピトープペプチドが、T細胞応答を誘起するために頻繁に使用される。なぜなら、それらはAg提示細胞(APCs)による処理を必要としないからである。T細胞活性化のためのこの最初の律速工程を迂回するが、エピトープはそれにも関わらず、T細胞を刺激するための特異的なHLA分子に結合するとして予め同定される必要がある。さらに、ペプチドは、選択されたAg配列に対するT細胞応答の限定されたレパートリーを刺激する。
【0173】
樹状細胞(DC)は、匹敵するもののない処理特性および刺激特性を与えられた特殊なAPCである(9)。これらの特徴は、T細胞活性化をブーストし、従って、in vitroにおいてAg特異的T細胞の検出を増強するために、前記樹状細胞を魅力的なものとする。この目的を達成するために、DCは単球前駆体から慣用的には誘導され、手順は、最も一般的には顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびインターロイキン(IL)−4を用いての6日間の分化(10、11)、および一連の炎症誘発刺激を用いての少なくともさらにもう1日間かけての成熟を必要とし、これにより完全なT細胞刺激能が達成される(10〜12)。これらの時間の必要条件は、臨床実験慣行とは相容れない。より短いプロトコールが記載されているが(13)、それらは依然としてCD14+単球の事前の単離を必要とし、従って、血液必要量および手作業の仕事が非常に増える。
【0174】
これらの限界を克服するために、本発明者らは、DCを誘導および成熟させて、末梢血単核球(PBMC)中のin situにおいてAg提示およびT細胞活性化を促進することができるかどうかを調べた。このアプローチの利点は2つである。一方で、それは時間、精製工程および血液必要量を減少させるだろう。他方で、それは分化DCとリンパ球を接触させたままの状態とし、従ってAg処理、提示およびDC成熟が起こるようにT細胞を刺激するだろう。これらのDCが、同族のTリンパ球および他の血液細胞によって囲まれながら48時間以内に誘導およびAgパルスされるので、それらは促進された共培養DC(acDC)と呼ばれる。結果として、本発明者らは、多種多様なアッセイプラットフォームで検出されるAg特異的T細胞応答を増幅する、効率的で短時間の手順を開発した。
【0175】
結果
acDCはAg特異的T細胞応答を増幅する
acDCが共培養T細胞のAg特異的応答を増幅し得るかどうかを調べるために、acDCを、GM−CSFおよびIL−4によって24時間かけてPBMC混合物内において誘導した。同時に、異なるタンパク質Ag[例えば、破傷風トキソイド(TTX)、M. tuberculosis精製タンパク質誘導体(PPD)、6価ワクチンまたは無Ag]を培養開始時から加えた。さらに24時間の成熟の後、非接着細胞を、抗インターフェロン(IFN)−γ捕捉Abでコーティングされた酵素結合イムノスポット(ELISpot)プレートに移し、そして追加のAgまたはサイトカインの補充を行なうことなくさらに6時間かけて培養した(図解については、図7を参照されたい)。
【0176】
最も適切な成熟プロトコールを選択するために、本発明者らは最初に、異なる刺激で成熟させたacDCの刺激能を、サイトカインの非存在下において培養したPBMCの刺激能とを比較した(図1a)。ELISpot IFN−γ応答は、種々のプロトコールによって成熟させたacDCによって有意に増幅された。最も効果的であったのは、腫瘍壊死因子(TNF)−α/プロスタグランジン(PG)E2/IL−1β(PBMCのみよりも、42.0%のシグナルの増加;p=0.03)、ポリイノシン・ポリシチジン酸(ポリI:C)(69.3%のシグナル増加;p<0.001)、リポ多糖(LPS;55.2%の増加、p=0.01)、および抗CD40/IFN−α(170%の増加、p<0.001)であった。重要なことに、全てのこれらのプロトコールは、Ag特異的IFN−γシグナルを増加させたが、バックグラウンドは増加させず、従って、サイトカインによる非特異的T細胞活性化は除外される。Agの非存在下においてサイトカインに曝されたまたは曝されていないPBMCに由来するT細胞中の活性化マーカー(すなわちCD69、CD25、CD137)のアップレギュレーションがないことは、さらに非特異的活性化を除外した(データは示さず;CD137については図5参照)。他の成熟混液は、Ag特異的シグナル(TNF−α/PGE2、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリI:C/PGE2、抗CD40、抗CD40/IFN−γ)を増幅しなかったか、またはそれらがバックグラウンド(抗CD40/IL−1β)の有意な増加と共に増幅させたためのいずれかのために、除外された。
【0177】
ヒトacDCは、IFN−γ分泌応答を増幅できただけでなく、ELISpotによって検出される他のサイトカイン応答も増幅させることができた(図1b〜d)。抗CD40/IFN−α成熟はIFN−γを最も増幅させたが(2.7倍)、TNF−α/PGE2/IL−1βは、試験した全てのサイトカイン応答をブーストした唯一の組合せであった(IFN−γ、IL−10およびIL−4のぞれぞれについて1.2倍、50.0倍および2.9倍)。それ故、これらの2つの成熟混液を保持した。IL−17応答はこれらのいずれのプロトコールによっても増幅されなかった(データは示さず)。さらに、TTX記憶応答だけが有意にバックグラウンドを超え、KLH neoAgに対するナイーブ応答はそうではなかった(図1b〜d)。
【0178】
acDCによるT細胞応答の増幅はまた、成熟のためのGM−CSF/IL−4、次いでLPSと共にインキュベーションしたマウス単核球血液細胞を用いて得られた。1回の低用量のキーホールリムペットヘモシアニン(KLH)を用いて免疫化されたマウスからの細胞は、acDCサイトカインの存在下において有意により高いKLH特異的IFN−γELISpot想起応答を示した(図8)。
【0179】
acDCの特徴付けにより、慣用的な単球由来DC(moDCs)と同一な表現型が判明した(図2a)。CD14ダウンレギュレーションは、HLA−DRおよび共刺激分子の増加した発現と平行して起こったが、デキストラン取り込みは、moDCにおいてより効率的であったが、成熟時に減少した。acDCはまた、Ag特異的T細胞応答の誘起においてmoDCと少なくとも同程度に効率的であった(図2b)。予期した通り、acDCおよびmoDCの両方が、炎症誘発刺激を用いての刺激後により効率的であった(図2b)。
【0180】
acDCにより増幅されたT細胞応答の再現性
再現性を、同じPBMC調製物(すなわち、分析レベルにおけるアッセイ間変動性、これは採血および処理によって導入される差異を除外する;図2c)および同じ個体からの異なる時機に採取した血液に由来するPBMC調製物(すなわち、分析前レベルおよび分析レベルにおけるアッセイ間変動性、これは採血および処理に起因する差異を含む;図2d)からの異なる凍結細胞アリコートを試験することによって、再現性を評価した。両方の場合において、アッセイ変動度は10%未満であった。顕著には、新鮮な試料と凍結した試料との間の変動(6.9%)も小さかった(図2e)。
【0181】
acDCによって増殖されたAg特異的T細胞を単離およびクローニングすることができる
Ag特異的T細胞を選択および増殖するために、細胞に結合するダイであるカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)の希釈液を、増殖の解読値として使用し(14)、そしてacDC手順と併用した(図3a)。PBMCを最初にCFSEで標識し、その後、acDCにより増幅されたELISpot手順において使用した。それらをELISpotプレートから回収し、そしてさらに操作を行なうことなくさらに6〜8時間かけて培養した。その後、増殖している(CFSE低度)細胞をフローサイトメトリーによって同定し、単一細胞へと選別し、そして抗CD3Ab、IL−2およびIL−4を用いての3回の刺激を通してさらに増殖させた(15)。代表例を図3b〜dに示す。TTX特異的IFN−γELISpot応答が検出され(441個のIFN−γスポット形成細胞(SFC)/106個のPBMC;0.044%)(図3b)、これにより3.0%のTTX特異的CFSE(低度)画分が得られ、これは約68倍の増殖に対応する。acDC条件は、サイトカインの非存在下における慣用的な増殖よりも優れ、これは10倍少ないTTX特異的細胞を生じた(0.29%、p<0.001)。バックグラウンド増殖の有意な増加は全く観察されなかった(図3c)。TTX特異的CFSE(低度)画分(分裂細胞)を選別およびクローニングし、TTXvs対照でパルスしたDCの想起アッセイによって評価したところ、TTX特異的T細胞クローンが生成された(図3d)。
【0182】
ペプチドエピトープを用いての刺激、およびペプチド−HLAマルチマーで染色されたCD4+またはCD8+T細胞による検出の後に、類似の増殖が得られた(図9)。新鮮なPBMCを、acDCの非存在下または存在下においてペプチドで刺激した48時間後および7日後に、ex vivoにおいてHLAマルチマーで染色した。ex vivoにおいて検出されたHLA−A2拘束性Flu MP58〜66特異的CD8+T細胞(バックグラウンド染色を差し引いた後に0.063%)(図9a)を、ペプチド特異的刺激の48時間後ではなく7日後に増殖させた(サイトカインの非存在下において13.3倍vs0.54倍の増殖)(図9b)。Flu HA306〜318特異的HLA−DR4拘束性CD4+T細胞を分析することによって類似の結果が得られた。ex vivoにおけるペプチド特異的CD4+T細胞の頻度(バックグラウンドを差し引いた後に0.24%)(図9c)は、培養の7日後のみにおいてペプチド特異的増殖時に、およびacDC混液を使用した場合にのみ増加した(サイトカインの非存在下において13.5倍vs0.79倍の増殖)(図9d)。共に、これらのデータは、acDCが、より長い培養時にAg特異的T細胞の増殖を有意に増強し、そしてacDCにより増幅されたT細胞応答がAg特異的であることを示す。
【0183】
タンパク質およびペプチドAgは異なるT細胞応答をトリガーする
次に、本発明者らは、タンパク質およびペプチドAgでパルスされたacDCによるT細胞刺激を比較した。タンパク質Agを使用した場合、IFN−γELISpotによって追跡される48時間のacDC培養液中に誘起される応答は、専らCD4+T細胞を起源とした。なぜなら、刺激開始時または終了時のいずれかにおけるその枯渇は完全に応答を消失させたからである(図4a)。同じことがmoDCにも該当し、このことは、この特徴が、acDCに特有ではなかったことを実証する。弱いCD8+T細胞活性化は、48時間の培養中に取り込まれたAgの非効率的な交差提示に起因する可能性が高かった。従って、タンパク質Agを、HLAクラスIIまたはクラスI拘束性ペプチドエピトープによって置換した場合、CD4+およびCD8+T細胞応答がそれぞれトリガーされ(図4b)、ここでもCD4+およびCD8+T細胞の枯渇によって確認された(示さず)。さらに、両方のタイプの応答が、慣用的なPBMCと比較してacDCによって有意に増幅され(それぞれCD4+およびCD8+T細胞について3.2倍および6.3倍;p<0.05)、このことは、タンパク質およびペプチドAgの両方におけるacDC技術の有用性を実証する。
【0184】
acDCにより増幅されたELISpotによって検出されるAg特異的CD4+T細胞は主に記憶細胞であった。なぜなら、CD45RO+(CD45RA+ではなく)T細胞の枯渇が、応答を有意に減少させたからである(81.4%の減少、p<0.05;図4c)。これは、想起Ag TTXに対する応答と、neoAg KLHに対する応答とを比較することによって確認された。実際に、KLHは、48時間のacDC刺激中に有意なIFN−γまたはIL−10のT細胞応答を誘起しなかった(図4d)。しかしながら、これらの細胞(最初にCFSE標識された)をさらにもう1週間かけて培養した場合、低いグレードのKLH特異的CD4+応答が検出された(図4e)。さらに、TTX特異的CD8+T細胞も観察され、このことは交差提示がより長い刺激で起こったことを示唆する。
【0185】
acDCはPBMCまたは全血中のいずれかにおいて異なるT細胞応答を増強する
本発明者らは、acDC増幅が、精製PBMCを使用した他の機能的T細胞解読値にも適用されるかどうかをさらに調べた。IFN−γ分泌を、CD45(免疫細胞の表面に結合する)およびIFN−γに対する二重特異的mAbを用いての捕捉アッセイ(Miltenyi)によって検出した(図5a)。サイトカインの非存在下において有意なTTX特異的IFN−γ分泌は検出されなかった。しかしながら、IFN−γは、acDC増幅後のCD4+およびCD8+T細胞上の両方に検出され、バックグラウンドの増加は検出されなかった。IFN−γ+T細胞の数は、ELISpotによって検出されたものよりも高く、これは何故CD8+T細胞応答も可視化されたのかを説明し得る。T細胞活性化マーカーであるCD137の表面発現を用いて類似の結果が得られた(16、17)(図5b)。両方の解読値はまた、Ag特異的T細胞の下流の選別およびクローニングに適合性であった(データは示さず)。
【0186】
次に、本発明者らは、acDCが、全血中のAg特異的T細胞応答を増幅し得るかどうかを調べた。これらの実験は、図5bに示した精製PBMCに対するものと平行して、同じ採血を使用して、acDC混液(GM−CSF/IL−4、次いで抗CD40/IFN−α)を未希釈のヘパリン処理血液(250μl)にAgと共に直接加えることによって実施された。48時間後、溶血した血液を、CD137発現のフローサイトメトリー分析によってT細胞活性化について調べた(図5c)。CD137アップレギュレーションは、サイトカインを全く加えなかった場合に、精製PBMCよりも全血においてより高い感度で検出されたが、acDC条件については逆であった。全血でのacDCによって得られたより低度の増幅は、それにも関わらず、CD8+T細胞応答ではなく、CD4+T細胞応答を増強するのに十分であった。
【0187】
acDCは、全血中のAgにより刺激されるサイトカイン分泌を増幅する
最後に、本発明者らは、acDC増幅が、全血刺激後に回収した血漿でのAg特異的な大容量のサイトカイン分泌を検出できるかどうかを探索した。この目的を達成するために、ヘパリン処理した全血を、acDC混液(GM−CSF/IL−4、次に抗CD40/IFN−α)およびAgと共に上記のようにインキュベーションした。48時間後、血漿上清をサイトカイン測定のために回収した。いくつかのサイトカインが、Ag刺激時に有意な増加を示した(図6a)。マクロファージ炎症タンパク質(MIP)−1αを除いて、正味の(すなわちバックグラウンドを差し引いた)Ag特異的シグナルは、全てのマーカーについて「サイトカインなし」の条件よりもacDCにおいての方がより高かった(シグナル増幅の中央値、6.1倍;3.6〜41.9の範囲;p<0.001)。重要なことには、基礎分泌はacDC暴露時に増加せず、そしていくつかの場合には減少さえし、Ag特異的増幅効果を示す。CD137のアップレギュレーションについて本発明者らは、全血およびPBMC中におけるサイトカインの検出の感度を比較した(図6b)。サイトカインは、全血よりもPBMCを用いての方がより高い感度で検出され、濃度の中央値は、PBMCよりも約4倍高かった(1.0〜34.0の範囲;p<0.001)。
【0188】
驚くべきことに、T細胞によって分泌されることが知られていないいくつかのサイトカイン(G−CSF、IL−1β)もまた、Ag特異的活性化のマーカーとして挙動した。細胞内サイトカイン染色はさらに、Ag特異的IL−1βの分泌が、非接着細胞からではなく接着細胞に由来することを示した(図10)。
【0189】
考察
DCの治療能は、疾病に関連したAgに対する免疫原性または免疫寛容誘発T細胞応答を誘導するために活発に探索されている(18、19)。しかしながら、その強力なAg処理および提示特性にも関わらず、DCは、T細胞診断のためには活用されていない。これは、近づける循環DCの頻度が低いことによって、並びに単球および他の前駆体から開始してDC型APCを生成するのに必要とされる多くの血液容量によって示される拘束におそらく起因する。acDC技術は、慣用的な実験適用に受け入れられる短くて簡単な方法でAg特異的T細胞応答を増幅する手段を提供することによってこの欠陥を充足する。acDCとmoDCとを並べて比較することにより、表現型および刺激能の点の両方において顕著な類似性が判明した。acDCの顕著な利点は、未分画PBMCまたは全血のより生理学的設定において48時間以内にin situで生成されることである。さらに、試料必要量は最小限であり、僅かに106個のPBMC(約1mlの血液)または250μlの全血が必要とされるだけである。これは、特に小児におけるT細胞応答の長期モニタリングにおいて重要な考慮すべき事柄であり、そしてT細胞エピトープのためのペプチドライブラリーをスクリーニングする際の明確な利点である。
【0190】
大容量の培養において、acDCの誘導およびAgでのパルスを、T細胞の同時活性化(Ag特異的な)と共役させ、よってT細胞応答に至る3つの重要な工程を確保する。このタイプのアッセイにおける可能性ある問題は、acDCを誘導および成熟させるのに使用されるサイトカインによる非特異的なT細胞の活性化である。しかしながら、これは実情ではなかった。なぜなら、T細胞解読値(増殖、CD137のアップレギュレーション、サイトカインの分泌)についての基礎値は、acDCプロトコールによって僅かにしか影響を受けなかったからである。バックグラウンド値の限られた(10倍までの)増加が、以前に実証されたように、稀な(0.001%の頻度)T細胞応答の検出を妨げないことが関連している(20)。Ag提示acDCと応答するT細胞との間の掛け合い応答が、さらに相乗作用してAg特異的応答を増幅させることが可能である。acDCに基づいたアッセイにおいて検出される応答は真にAg特異的であった。なぜならin vitroにおいて増殖した選別されたT細胞がAg特異性を保持していたからである。他方で、HLA−ペプチドエピトープマルチマー研究は、T細胞前駆体の頻度が、acDCにより引き起こされるAg刺激の開始から48時間後まで増加しなかったことを実証した。それにも関わらず、活性化(CD137+)T細胞の数は、すでに48時間後までに増加した。このことは、機能的解読値によって検出されるようなAg特異的応答が、傍観者活性化機序によって拡大および判明することを示唆する。T細胞前駆体の頻度の正確な計測を必要とする研究設定のために、CFSE希釈度を、HLAマルチマー染色と共役させて、増殖T細胞の最初の数を決定することができた(21)。慣用的な臨床適用のために、48時間以内に得られたような増幅された解読値で十分であろう。
【0191】
acDC技術は、完全タンパク質Agおよびペプチドエピトープの両方のために役立つ。タンパク質Agは、エピトープ同定およびHLAタイプに基づいた患者の選択の必要性を排除する。さらに、それらは、処理されたエピトープの全レパートリーを用いての刺激を可能とする。DCの高いエンドサイトーシス能およびAg処理能により、acDCアッセイ(ドナー、腫瘍または自己免疫ターゲティング組織などの細胞材料をAg源として使用する)もまた想定することができた。acDCを成熟させるのに使用した刺激もまた重要なパラメーターであった。以前に報告したように(12)、抗CD40およびIFN−αはGM−CSF/IL−4と共に、IFN−γ産生Tヘルパー(Th)1応答をより効率的に増幅したが、TNFαおよびIL−1βをPGE2と合わせたものは(22)、より平衡のとれた表現型をもたらし、Th2(IL−4)および制御性T(IL−10)応答のより良好な検出を可能とした。
【0192】
acDC技術は、多種多様なT細胞解読値と適合性であり、そのいくつかはさらなる増殖および/または特徴付けのためにAg特異的細胞の下流の選別を用いて実行することができる。acDC技術の多用性は、単一細胞(サイトカインELISpot、CFSE増殖、IFN−γ捕捉、CD137アップレギュレーション、HLAマルチマー)およびバルク(血漿または培養上清中のサイトカイン)アッセイによって例示された。これらの異なるacDCアッセイフォーマットの感度は、各適用のために評価する必要がある。単一細胞アッセイがしばしば好ましい。なぜなら、それらは応答するT細胞の頻度および表現型についての情報を提供し、そしてバルクアッセイよりも頻繁により感度が高いからである。それにも関わらず、バルクアッセイは慣用的な設定において実施し易く、そしてその検出感度は、M. tuberculosisのためのIFN−γ酵素結合イムノソルベントアッセイの場合のように、多くの適用のために十分であり得る(23)。同様に、全血を使用するアッセイはPBMCの精製を回避し、従って、細胞をより生理学的な環境に保持し、そしてさらなる簡便性を提供する。acDC培養液からのサイトカインは、全血よりもPBMCを用いての方がより高い感度で見かけ上は検出されたが、差異は一部には、血液およびPBMC中における異なる細胞およびその濃度に起因し得る。実際に、PBMCを、5×103個の細胞/μlの最適濃度で再懸濁し、250μl/試料の全血の容量は、約1×103個のPBMC/μlに相当した。従って、精製PBMCは、血液細胞よりも約5倍濃縮されていた。
【0193】
バルクアッセイからの興味深い結果は、T細胞に由来しない、G−CSFおよびIL−1βの刺激された分泌であった。これらのサイトカインは、接着細胞および非接着細胞に対して実施されるIL−1β ELISpotアッセイによって示唆されるように、接着APCによって産生されたようである。Ag提示acDCと対応するT細胞との間の正のフィードバックループはさらにacDCを活性化させ得、それらを誘導してAg特異的にサインサイトカインを分泌させ得る。従って、APC由来サイトカインは、T細胞応答の価値ある間接的なバイオマーカーを構成し得る。
【0194】
in vitroにおいてacDC表現型を歪めることもまた、異なる特性を有するAg特異的T細胞を誘導する方法を提供し得る。例えば、IL−10処理DCは免疫寛容誘発性であり、そして制御特性を有するCD4+およびCD8+T細胞を生じ得る(24、25)。従って、IL−10の存在下におけるacDC刺激は、Ag特異的制御性T細胞を得る戦略を提供する。
【0195】
方法
抗原。以下のAgを使用した:ウシ血清アルブミン(BSA; Sigma, Lyon, France)、TTX(Dr. Rino Rappuoliの親切なる贈り物、Novartis, Siena, Italy)、M. tubercolosis PPD(Tubertest, Sanofi Pasteur, Lyon, France)、6価ワクチン(インファンリックスヘキサ、GlaxoSmithKline, Rixensart, Belgium)およびKLH(Sigma)。Ag純度はSDS−PAGEによって確認され、そしてエンドトキシン濃度はLumulus溶解液アッセイ(Lonza, Saint Beauzire, France)によって0.035EU/μg未満であった。ペプチドFlu MP58〜66およびFlu HA306〜318は、95%超で純粋であった(GL Biochem, Shanghai, China)。
【0196】
PBMC中におけるacDCの誘導。研究は倫理委員会によって承認され、そして全ての被験者は書面によるインフォームドコンセントを提出した。PBMCを単離し、そして記載の通りに新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで使用した(26)。0日後に、PBMCを、96ウェルの平底プレートの、1000U/mlのGM−CSF、500U/mlのIL−4(R&D, Lille, France)の補充され、そしたタンパク質Ag(0.1〜10μg/ml)を含むAIM−V培地中に播種した(106個の細胞/100μl/ウェル)。24時間後(1日後)、種々の組合せで以下の試薬を含む、成熟刺激を加えた(図1c参照):1000U/mlのTNF−α、10ng/mlのIL−1β、1000U/mlのIFN−γ(全てR&Dから)、1μMのPGE2(Calbiochem, San Diego, CA);CpG ODN2216(5μg/ml;Cell Sciences, Canton, MA)、ポリI:C(20μg/ml;Cayla/InvivoGen, Toulouse, France)、LPS(100ng/ml;E. coli 055:B5から、Sigma)、抗CD40Ab(10μg/ml;クローンG28.5、社内で産生)、IFN−α−2a(1000U/ml;Roferon-A, Roche, Neuilly-sur-Seine, France)。各実験において使用される成熟混液を図の説明文において詳述する。IL−7(0.5ng/ml;R&D)を成熟刺激と共に加えた(26)。使用した場合、ペプチドAgを1日後に成熟刺激と共に加えた。2日後に(培養開始から48時間後)、非接着細胞を回収し、洗浄し、そして分析した。
【0197】
全血中におけるacDCの誘導。新鮮で希釈されていないヘパリン処理血液(250μl)を、1.5mlのチューブに分配し、サイトカインおよびAgをPBMC刺激のために加え、そして溶血した血液および/または血漿上清を48時間後に分析した。
【0198】
DC特徴付け。moDCを生成するために、精製単球をGM−CSF/IL−4と共に6日間かけて培養し、そしてTNF−α/PGE2/IL−1βを用いてさらに24時間かけて成熟させた。acDCおよび7日後のmoDCの表現型を、HLA−DR、CD14、CD80、CD86およびCD11c(BD)に特異的なAbsで染色することによって決定した。エンドサイトーシス活性を、デキストラン−FITC蛍光取り込みによって評価した。フローサイトメトリー実験を、488、633および407nmレーザー(BD)の備え付けられたFACSAriaで実施した。
【0199】
ELISpotアッセイ。PBMC中におけるacDCの48時間のインキュベーション後に、非接着細胞を洗浄し、新鮮なAIM−Vに再懸濁し、そして記載のように6時間かけてアッセイした(27)。スポットをBioreader5000Pro−SF(BioSys, Karben, Germany)で計測し、3〜6つのリプレケートの平均を決定した。ELISpot解読値をSFC/106個のPBMCとして表現し、そしてバックグラウンドを差し引く(BSAの存在下またはAgの非存在下における自発的応答について、これは全ての場合において同一であった)(27)。
【0200】
CFSEアッセイおよびT細胞クローニング。PBMCを、0.1μMのCFSE(Invitrogen/Molecular Probes)で染色し、そして前記したようにacDC培養液のために使用した。2日後、非接着細胞を洗浄し、EliSpotプレートに6時間かけて移し、その後、96ウェルU底プレート中に再度播種した。5〜8日間培養した後、細胞をCD4/CD8について染色した。単一のCD4+CFSEdim細胞を、96ウェルU底プレートの各ウェルに選別した。各ウェルは、2つの関連していないドナーからの、IL−2(20U/ml;R&D)、IL−4(5ng/ml)、抗CD3(OKT3、30ng/ml)、および2×105個の照射PBMCを含んでいた(15)。細胞に、7日間毎に新鮮なサイトカインを与えた。成長しているクローンを、AgでパルスされたまたはパルスされていないmoDCと共にインキュベーションした後、細胞内IFN−γ染色によって約3週間後に試験した。
【0201】
IFN−γ捕捉およびCD137アップレギュレーションアッセイ。IFN−γ捕捉を、MiltenyiIFN−γアロフィコシアニンキットを使用して実施した。CD137を、フィコエリトリン(PE)標識4B4 Ab(BD)で染色した。
【0202】
HLAマルチマーアッセイ。Flu MP58〜66または対照ペプチド(ProImmune, Oxford, UK)をローディングしたPE標識HLA−A0201ペンタマーを、製造業者の指示に従って使用した。Flu HA306〜318または対照ペプチドのローディングされたPE標識HLA−DR0401テトラマーはDrs. E. JamesおよびG.T. Nepom (Benaroya Research Institute, Seattle, WA)によって親切にも提供され、そして記載の通りに使用した(28)。
【0203】
マウスacDC刺激。Balb/cマウスに、尾の付け根に完全フロイントアジュバント中の50μgのKLHを用いて皮下に免疫化した。14日後、血液細胞を収集し、溶血し、そして48ウェルプレート(2×106個の細胞/ウェル)に播種した。マウスGM−CSFおよびIL−4(R&D)を、KLH(0.1μg/ml)と共にまたは非存在下においてヒトacDCに対して加え;LPS(10ng/ml)を1日後に加え、そしてELISpotアッセイを記載のように2日後に実施した(27)。
【0204】
サイトカインマルチプレックスアッセイ。48時間後のacDC培養液からの上清を、以下のサイトカインおよびケモカイン:G−CSF、GM−CSF、IFN−γ、IL−1β、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13、IL−17、MIP−1α、MIP−1βおよびTNF−αを含むMilliplexパネル(Millipore/Abacus, Brisbane, QLD, Australia)を使用して、Luminexプラットフォーム(Bio-Plex 200, Bio-Rad, Gladesville, NSW, Australia)で分析した。
【0205】
統計学的分析。全てのグラフは、3つ以上の独立した実験の平均±SEMとして提示する。全ての統計学的分析は両側であり、そしてGraphPad Prism 5 (La Jolla, CA)を使用して可変分布および試料サイズに従って実施した。
【0206】
【表1】
【0207】
参考文献
本出願全体を通じて、種々の参考文献は、本発明が属する当技術分野の最新技術を記載する。これらの参考文献の開示は本明細書において本開示への参照により組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、抗原特異的T細胞応答を刺激するための方法に関する。
【0002】
発明の背景
抗原(Ag)特異的T細胞応答の研究は、厄介な技術的課題をもたらす[Kern, Trends Immunol. 26:477, 2005]。これはAg特異的画分が一般的に、末梢血中に非常に低い頻度で示されるという事実に主に起因し、この特徴がその検出を困難なものとしている[Mallone, Clin.Immunol. 110:232, 2004]。この検出はCD4+T細胞を考える場合にはさらにより問題のあるものとなる。なぜなら、これらの画分は、しばしば、そのCD8+の同等物よりもさらにより低い頻度でしか存在しないからである[Homann, Nat.Med. 7:913, 2001; Seder, Nat.Immunol. 4:835, 2003]。
【0003】
多種多様な構造的または機能的な解読値を使用してこのようなAg特異的T細胞(CD4+およびCD8+)を検出することを可能とするいくつかの検出戦略が現在利用可能である[Kern, Trends Immunol. 26:477, 2005]。しかしながら、全ての技術によって共有される1つの欠点は、Ag特異的CD4+T細胞を、ex-vivoでは、およそ直接的に検出することができないことである。最も一般的には、これらの細胞を、5〜14日間のin vitroにおける培養工程を通して予め増殖させて、検出閾値に到達させる必要がある[Mallone, Clin.Immunol. 110:232, 2004]。このin vitroにおける増殖のために多くのアプローチを使用することができる。末梢血単核球(PBMC)は、適切な数のCD4+T細胞並びに抗原提示細胞(APC;単球、B細胞、および僅かな循環樹状細胞の画分(DC))を含むので、それらを、対象のペプチドエピトープまたはタンパク質Agでパルスし、そしてインターロイキン(IL)−2およびIL−7などの共刺激サイトカインを添加してまたは添加せずに増殖させることができる。
【0004】
あるいは、単球をまず単離し、そして5〜7日間かけて顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびIL−4を用いて未成熟DCへと分化させ、続いてさらに24〜48時間かけて異なる炎症誘発刺激を用いて成熟させることができる[Zhou et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:2588, 1996]。この戦略はDCのより高い刺激能力を活用することにより、より多くのCD4+T細胞の増殖を達成する。魅力的であるが、しかしながらそれはより多くの出発血液容量を必要とする。なぜなら単球はPBMCの僅かに約5〜15%を占め、そしてアロ特異的CD4+T細胞の選択を避けるために自己単球を理想的には使用するべきであるからである。それ故、単球由来DCが生成される間、T細胞は、培養液中にまたは凍結して保持される必要がある。より多くのPBMCが必要とされることの他に、この手順はまた、血液の天然のAPCに専ら依拠する手順よりも長い。
【0005】
さらに、T細胞刺激のためのペプチドエピトープの使用は、免疫応答によってターゲティングされるそのようなエピトープの事前の同定を必要とする。この同定手順は非常に大きな労力を要し、そして1つのHLAクラスIまたはクラスIIアレルに対して特異的である。従って、研究したいと思うヒト被験者に応じて、異なるHLAアレルに対して異なるエピトープを同定しなければならない。
【0006】
さらに特筆すべきことに、しばしば、CD4+T細胞を検出するだけではなく、さらなる機能的プロファイリングのためにそれらを単離および増殖することに関心がある。
【0007】
それ故、T細胞応答を測定し、そしてT細胞クローン、特にCD4+T細胞を単離するための感度が高く、多用途で、そして使い易い方法を提供するための充足されていない必要性が依然として当技術分野において存在する。
【0008】
発明の要約
本発明者らは、適切なサイトカイン混液および培養条件を使用して、未分画全血または末梢血単核球(PBMC)試料からの直接的な成熟樹状細胞と共にAg特異的T細胞を共培養することによって、Ag特異的T細胞応答を刺激することが可能であることを発見した。
【0009】
従って、本発明は、以下の工程:
a)樹状細胞(DC)の分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、被験体から単離した前記血液試料またはPBMC試料中において抗原(Ag)特異的T細胞応答を刺激するための方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、被験体における疾病を診断するための、および/または免疫療法の効果をモニタリングするためのこのような方法の使用に関する。
【0011】
本発明の別の局面は、Ag特異的T細胞クローンを産生するためのこのような方法の使用に関する。
【0012】
本発明のさらに別の局面は、治療タンパク質の免疫原性を評価するための並びにAg発見およびエピトープマッピング分析のための、このような方法の使用に関する。
【0013】
本発明のさらに別の局面は、Ag特異的制御性T細胞を生成するためのこのような方法の使用に関する。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、被験体から単離した前記の血液試料またはPBMC試料中においてAg特異的T細胞応答を刺激するための方法に関する。
【0015】
1つの態様において、Ag特異的T細胞応答はCD4+T細胞応答である。別の態様において、Ag特異的T細胞応答はCD8+T細胞応答である。
【0016】
本発明者らは、本発明の方法を実施するために適切な生物学的試料は、血液試料、または慣用的な密度勾配分離プロトコールを使用して全血から精製したPBMC試料である。
【0017】
好ましい態様において、本発明の生物学的試料はPBMC試料である。本明細書において使用する「PBMC」または「末梢血単核球」または「未分画PBMC」という用語は、全PBMC、すなわち所与の亜集団群へと濃縮されていない、丸い核を有する白血球の1集団群を指す。典型的には、本発明によるPBMC試料は、接着性PBMC(実質的に90%超の単球からなる)または非接着性PBMC(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞およびDC前駆体を含む)のみを含むための選択工程にかけられていない。
【0018】
それ故、本発明によるPBMC試料は、リンパ球(B細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞)、単球およびその前駆体を含む。
【0019】
典型的には、これらの細胞を、血液の層を分離する親水性多糖であるフィコールを使用して全血から抽出することができ、PBMCは血漿の層の下に細胞輪を形成する。さらに、PBMCを、赤血球を優先的に溶解する低浸透圧性溶解を使用して全血から抽出することができる。このような手順は、当業者には公知である。
【0020】
あるいは、本発明による生物学的試料は血液試料でもよい。
【0021】
本明細書において使用する「血液試料」または「未分画血液試料」という用語は、被験体から単離され、そして適切な抗凝固剤(例えばヘパリンリチウムまたはクエン酸ナトリウム)を含むチューブまたは他の容器中に回収された粗血液標本を指す。血液試料は未分画の全血であり、そして血漿および血球(赤血球、白血球)を含む。それは新たに単離された血液試料(48時間未満)であっても、または以前に入手しそして使用まで凍結して保存されていた血液試料でもよい。
【0022】
本明細書において使用する「被験体」という用語は、哺乳動物、例えばげっ歯類(例えばマウスまたはラット)、ネコ、イヌまたは霊長類を指す。好ましい態様において、前記被験体はヒト被験者である。
【0023】
本発明による被験体は、健康な被験体であっても、または所与の疾病を患う被験体であってもよい。
【0024】
本明細書において使用する「抗原」(「Ag」)という用語は、T細胞応答を誘起することのできるタンパク質、ペプチド、組織または細胞の調製物を指す。好ましい態様において、前記Agは、組換えDNA技術によって、または異なる組織もしくは細胞源からの精製によって得ることができるタンパク質である。このようなタンパク質は、天然タンパク質に限定されず、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合することによって得られる改変タンパク質またはキメラ構築物も含む。本発明の別の態様において、前記Agは、Fmoc生化学的手順、大規模多重ピンペプチド合成、組換えDNA技術または他の適切な手順によって得られる合成ペプチドである。
【0025】
本発明の別の態様において、Agは、当業者には公知の種々の生化学的手順(例えば固定、溶解、細胞下分画、密度勾配分離)によって得られる粗または部分精製された組織または細胞の調製物である。
【0026】
工程a)DCの分化を誘導する培地中における血液試料またはPBMC試料の培養
本発明の方法は、DCの分化を誘導する培地中における血液試料またはPBMC試料の培養工程を含む。
【0027】
本発明を実施するのに適した培地は、PBMCの増殖、生存および分化に適した任意の培養培地である。典型的には、それは、ヒトまたは他の起源の血清および/または増殖因子および/または抗生物質を補充することのできる、栄養分(炭素源、アミノ酸)、pH緩衝液および塩を含む基礎培地からなり、これにDCの分化を誘導する物質を加える。
【0028】
典型的には、基礎培地は、RPMI 1640、DMEM、IMDM、X−VIVOまたはAIM−V培地であり得、その全てが市販されている標準培地である。
【0029】
本発明の態様において、PBMC試料よりもむしろ血液試料を培養する場合には、このような基礎培地の使用は不必要であり、培養培地としての役目を果たす血液中に直接、分化剤を加えることができる。
【0030】
細胞培養は、この目的に適した組織培養インキュベーターを使用して5%CO2雰囲気中37℃で実施し得る。
【0031】
好ましい態様において、前記培地は、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)を含む。典型的には、1〜10,000U/ml、好ましくは10〜5,000U/ml、さらにより好ましくは約1,000U/mlの量のGM−CSFを使用する。
【0032】
GM−CSFを多種多様な起源から得ることができる。それは精製GM−CSFであっても、または組換えGM−CSFであってもよい。GM−CSFは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0033】
好ましい態様において、前記培地はさらに、インターロイキン4(IL−4)を含む。典型的には、0〜10,000U/ml、好ましくは10〜1,000U/ml、さらにより好ましくは約500U/mlの量のIL−4を使用する。IL−4を多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−4であっても、または組換えIL−4であってもよい。IL−4は、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0034】
別の好ましい態様において、前記培地は、FMS様チロシンキナーゼ3(Flt−3)リガンドを含み、Flt−3リガンドは単独でまたはGM−CSFおよび/またはIL−4と組み合わせて使用され得る。典型的には、1〜1,000ng/ml、好ましくは10〜100ng/mlの量のFlt−3リガンドを使用する。
【0035】
Flt−3リガンドを多種多様な起源から得ることができる。それは精製Flt−3リガンドであっても、または組換えFlt−3リガンドであってもよい。Flt−3リガンドは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0036】
本発明によると、DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料をインキュベーションする工程は、前記血液試料またはPBMC試料のDCを濃縮するのに十分な時間をかけて行なわれる。当業者にとっては、これは、DCによって発現されるか、または発現されないことが知られるマーカーの相対的発現を調べることによって容易に試験することができる。例えば、血液試料またはPBMC試料の濃縮は、CD11c、HLA−DR、CD80およびCD86などのマーカーの増加および/またはCD14などのマーカーの減少によって反映され得る。多種多様なゲーティング戦略を使用して、分析中の細胞を、選択されたPBMCまたは全血サブセットに制限することによって、DC集団群上におけるこれらのマーカーの発現の特異性を評価することができる。例えば、DCは、他の亜集団群(例えばCD3、CD14、CD16、CD19、CD34;いわゆる系統陰性細胞)に典型的なマーカーを発現せず、そしてHLA−DRを発現している細胞として同定され得る。
【0037】
好ましい態様において、前記工程を、t(a)minからt(a)maxまでの時間t(a)をかけて行なう。
【0038】
典型的には、工程a)の最小インキュベーションのt(a)minは、約12時間、好ましくは約16時間、さらにより好ましくは約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、さらにより好ましくは約24時間であり得る。
【0039】
典型的には、工程a)の最大インキュベーションのt(a)maxは、約10日間、好ましくは約7日間、さらにより好ましくは約6日間、約5日間、約4日間、約3日間、約2日間、さらにより好ましくは約1日間であり得る。
【0040】
上に開示した最小および最大インキュベーション時間t(a)minおよびt(a)maxを組み合わせることができる。
【0041】
好ましい態様において、工程a)を、約16時間〜約7日間、好ましくは約20時間〜約4日間の時間t(a)をかけて行なう。
【0042】
好ましい態様において、工程a)を約24時間の時間t(a)をかけて行なう。
【0043】
実際に、本発明者らは、単離T細胞に加えられた場合にAg特異的T細胞応答をその後に刺激することができるDCを、出発物質として精製された単球を使用して産生するための慣用的なプロトコールを、共培養液中におけるDCの産生に適用することができ、従って、本発明の抗原特異的T細胞応答を刺激するための方法に適用することができることを実証した。このような方法は、例えば、Caux et al. Nature 360:258, 1992; Romani et al., J Exp Med. 180: 83, 1994 and Sallusto et al., J Exp Med. 179 : 1109, 1994に記載されている。
【0044】
さらに、本発明者らは、意外なことに、Dauer et al., [Dauer et al., J Immunol, 170:4069, 2003]によって記載された促進されたプロトコールを本発明の方法のためにも使用して、出発物質として未分画血液試料またはPBMC試料を使用して、Ag特異的T細胞応答を刺激することができることを実証した。
【0045】
工程b):DCの成熟化
本発明の方法によると、工程a)の最中に血液試料またはPBMC試料のDCを濃縮した後、前記DCを工程b)の最中に成熟させることができる。
【0046】
好ましい態様において、炎症誘発刺激および/またはウイルスもしくは細菌の攻撃を模倣する物質を、工程a)の培地に加える。
【0047】
本発明の方法に適した炎症誘発刺激の例は、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、プロスタグランジンE2(PGE2)、抗CD40モノクローナル抗体(mAb)、CD40リガンド(CD40L)組換えキメラタンパク質、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−7(IL−7)であるがそれらに限定されない。このような物質を、単独でまたは他の炎症誘発刺激またはウイルス/細菌模倣物質との種々の組合せで使用することができる。本発明の方法に適したウイルスまたは細菌の攻撃を模倣する物質の例は、リポ多糖(LPS)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリイノシン酸・ポリシチジン酸(ポリI:C)、Pam3CysSerLys4 (Pam3CSK4)、イミキモドであるがそれらに限定されない。このような物質を、単独でまたは他の炎症誘発刺激またはウイルス/細菌模倣物質との種々の組合せで使用することができる。
【0048】
1つの態様において、工程b)を、TNF−α、IL−1β、PGE2、抗CD40抗体、IFN−α 2a、LPS、ポリI:C、IFN−γ、IL−7およびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つの物質の存在下において行なう。
【0049】
前記物質(群)は、免疫応答を刺激することが知られる物質であり、そして当業者は、非特異的T細胞活性化を制限しつつDC成熟を得るために適切な各物質の濃度を選択することができるだろう。
【0050】
また、当業者は、DC成熟を刺激することが知られる他の物質もまた本発明の方法に従って使用することができることを容易に解釈するだろう。
【0051】
好ましい態様において、工程b)を、TNF−α、IL−1βおよびPGE2の存在下において行なう。
【0052】
典型的には、1〜10,000U/ml、好ましくは10〜5,000U/ml、さらにより好ましくは約1,000U/mlの量のTNF−αを使用する。TNF−αを多種多様な起源から得ることができる。それは精製TNF−αであっても、または組換えTNF−αであってもよい。TNF−αは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0053】
典型的には、0.1〜1,000ng/ml、好ましくは1〜100ng/ml、さらにより好ましくは約10ng/mlの量のIL−1βを使用する。IL−1βを多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−1βであっても、または組換えIL−1βであってもよい。IL−1βは、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0054】
典型的には、0.01〜100μM、好ましくは0.1〜10μM、さらにより好ましくは1μMの量のPGE2を使用する。PGE2を多種多様な起源から得ることができる。PGE2は、例えばCalbiochem/MerckまたはSigmaなどの種々の会社から合成品として市販されている。
【0055】
別の態様において、工程b)を、抗CD40(例えばmAbクローンG28−5)およびIFN−αの存在下において行なう。
【0056】
典型的には、0.1〜50μg/ml、好ましくは1〜25μg/ml、さらにより好ましくは約10μg/mlの量の抗CD40mAbを使用する。好ましい態様において、抗CD40mAbはクローンG28−5である。精製G28−5もしくは他の抗CD40mAbは、社内でハイブリドーマ培養上清から当業者に公知の手順に従って産生しても、またはBioLegendもしくはeBioscienceなどの種々の業者から購入してもよい。
【0057】
代替的な態様において、抗CD40mAbを、単量体形または多量体形のいずれかで合成された組換えCD40リガンド分子を用いて置換してもよい。組換えCD40リガンド分子は、社内で当業者に公知の組換えDNA法を使用して産生しても、またはR&D Systemsなどの種々の業者から購入してもよい。
【0058】
典型的には、1〜10,000U/ml、好ましくは10〜5,000U/ml、さらにより好ましくは約1,000U/mlの量のIFN−αを使用する。好ましい態様において、IFN−αはIFN−α2aである。IFN−αを多種多様な起源から得ることができる。それは精製IFN−αであっても、または組換えIFN−αであってもよい。IFN−αは、例えばRoche (Roferon-A)、R&D SystemsまたはPeproTechなどの種々の会社から市販されている。
【0059】
別の態様において、工程b)をLPSの存在下において行なう。
【0060】
典型的には、1〜10,000ng/ml、好ましくは10〜1,000ng/ml、さらにより好ましくは約100ng/mlの量のLPSを使用する。LPSを多種多様な起源から得ることができる。それは種々の細菌株から精製されてもよい。適切な株は、E. coli、K. pneumoniae、P. aeruginosa、S. enterica、S. typhosa、S. marcescensであるがそれらに限定されない。LPSは、例えばSigmaなどの種々の会社から市販されている。
【0061】
別の態様において、工程b)をポリI:Cの存在下において行なう。
【0062】
典型的には、0.1〜1,000μg/ml、好ましくは1〜100μg/ml、さらにより好ましくは約20μg/mlの量のポリI:Cを使用する。ポリI:Cを多種多様な起源から得ることができる。それを当業者に公知の方法を使用して合成してもよい。ポリI:Cは、例えばSigmaなどの種々の会社から市販されている。
【0063】
好ましい態様において、低用量のIL−7を工程b)の物質に加える。
【0064】
典型的には、0.01〜10ng/ml、好ましくは0.1〜1ng/ml、さらにより好ましくは約0.5ng/mlの量のIL−7を使用する。IL−7を多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−7であっても、または組換えIL−7であってもよい。IL−7は、例えばR&D SystemsまたはPeproTechなどの種々の会社から市販されている。
【0065】
本発明の方法の好ましい態様によると、工程b)を、DCを成熟させるのに十分な時間t(b)をかけて行なう。典型的には、この時間t(b)は、約12〜約72時間、好ましくは約16〜約48時間、さらにより好ましくは約24時間である。
【0066】
代替的な態様において、工程b)を、0〜12時間というより短い時間t(b)をかけて行なう。
【0067】
抗原
理論によって練ることなく、本発明の方法にかけられた血液試料またはPBMC試料は、種々の成熟段階のDC(単球、未成熟DC、成熟DC)と、他の細胞の中でもとりわけT細胞との共培養液を含むと考えられる。
【0068】
この異種細胞集団群の中で、DCはAgを取り上げ、その表面上でそれをT細胞に提示し、これによってT細胞はAg特異的様式で刺激されると考えられている。
【0069】
好ましい態様において、前記Agは、組換えDNA技術によって、または異なる組織もしくは細胞源からの精製によって得ることのできるタンパク質である。典型的には、前記タンパク質は、10アミノ酸より長い、好ましくは15アミノ酸より長い、さらにより好ましくは20アミノ酸より長い長さを有し、理論的上限はない。このようなタンパク質は天然タンパク質に限定されないが、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合することによって得られる改変タンパク質またはキメラ構築物も含む。
【0070】
本発明の別の態様において、前記Agは合成ペプチドである。典型的には、前記合成ペプチドは、3〜40アミノ酸長、好ましくは5〜30アミノ酸長、さらにより好ましくは8〜20アミノ酸長である。合成ペプチドを、Fmoc生化学手順、大規模多重ピンペプチド合成、組換えDNA技術または他の適切な手順によって得ることができる。このようなペプチドは、天然ペプチドに限定されないが、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合することによって得られる改変ペプチドまたはキメラペプチドも含む。
【0071】
本発明の別の態様において、Agは、当業者に公知である種々の生化学的手順(例えば固定、溶解、細胞下分画、密度勾配分離)によって得られる粗または部分精製された組織または細胞の調製物である。
【0072】
当業者は、所望のT細胞刺激に依存して、適切なAgを選択することができる。
【0073】
当業者はまた、どの工程で前記Agを導入すべきかも知っているだろう。
【0074】
典型的には、Agがタンパク質または組織もしくは細胞の調製物である場合、それは一般的には工程a)の最中に加えられる。典型的には、Agがペプチドである場合、それを工程a)よりもむしろ工程b)で加えることができる。所与のペプチドがMHCクラスII分子に直接的に結合するか、またはMHCクラスII分子上への提示の前に樹状細胞によって取り込まれて処理されるかどうかを予測するための明確なアミノ酸長のカットオフ値はないが、各場合についての中間長ペプチドの添加時刻を最適化することは当業者の能力の範囲内である。
【0075】
刺激されたT細胞の検出
刺激されたT細胞の検出のための方法は、当業者には公知である。以下に記載した手順は、適切な方法のいくつかの例を提供する。しかしながら、当業者はAgに応答するT細胞の刺激を評価するのに適した任意の方法を使用することができることを容易に解釈することができる。
【0076】
酵素免疫スポット(ELISpot):
この手順を、以下の実施例1に詳述する。
【0077】
プレ培養ウェルからの非接着性細胞を、所望の抗サイトカイン捕捉抗体(Abs;例えば抗IFN−γ、抗IL−10、抗IL−2、抗IL−4)でコーティングされたプレートに移す。ビオチニル化二次Absおよび標準的な比色定量または蛍光定量検出法(例えばストレプトアビジン−アルカリホスファターゼおよびNBT−BCIP)を用いて顕色し、そしてスポットを計測する。その後、ELISpot解読値をスポット形成細胞(SFC)/106個のPBMCとして表現する。
【0078】
上清サイトカインアッセイ:
培養上清中に放出されたサイトカインを、種々の技術、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、BDサイトメトリックビーズアッセイ、Biorad Bio-Plexアッセイおよびその他の技術によって測定する。
【0079】
HLAクラスIIテトラマー:
この手順を用いて、特異的なペプチドエピトープを認識するAg反応性T細胞を、市販されている試薬(例えばProImmune MHCクラスII Ultimers)または社内で作成した試薬(例えば、Dr. G.T. Nepom, Benaroya Research Institute, Seattle, USAからの) [Novak et al., J.Clin.Invest. 104:R63, 1999]のいずれかを使用して検出する。
【0080】
活性化マーカー(例えばCD69、CD25、CD137)のアップレギュレーション:
この手順を用いて、Ag特異的T細胞応答を、Ag認識後に膜上に露出する活性化マーカーのその異なる発現によって検出する。
【0081】
サイトカイン捕捉アッセイ:
Miltenyi Biotechによって開発されたこのシステムは、そのサイトカイン応答に従ってAg特異的T細胞を可視化するためのELISpotに代わる有効なものである。さらに、それは、対象のT細胞の直接的な選別およびクローニングを可能とする(以下参照)。
【0082】
CD154アッセイ:
この手順は、近年、詳細に記載されている[Chattopadhyay et al., Nat.Med. 11:1113, 2005; Frentsch et al., Nat.Med. 11: 1118, 2005]。それはAg特異的CD4+T細胞の検出に限定される。
【0083】
CD107アッセイ:
この手順[Betts et al., J.Immunol.Methods 281:65, 2003]は、細胞障害能を有するAg特異的CD8+T細胞の可視化を可能とする。
【0084】
CFSE希釈アッセイ:
この手順は、Ag認識後のその増殖によりAg特異的T細胞(CD4+およびCD8+)を検出する[Mannering et al., J.Immunol.Methods 283:173, 2003]。
【0085】
方法の適用
本出願において記載したAg特異的T細胞応答を刺激するための方法は、迅速で、効率的で、特異的で、多用途な手順である。要約すると、伝統的な方法と比較しての利点は以下の通りである:
1.より高い感度;
2.未分画PBMCまたはさらには未分画血液(新鮮または凍結のいずれか)を使用することができる。事前の精製工程の必要がなく、このことがこの技術をより簡単にし、そして血液容量の点における負担をより少なくさせている;
3.事前の長期の増殖が必要でない;
4.タンパク質Agまたは組織もしくは細胞の調製物のAgを使用する場合には、特異的なエピトープの限定されたセットに対するレパートリーよりもむしろそうしたAgに対する全T細胞レパートリーを検出することができる;
5.HLA拘束性の制限がない;
6.ペプチドAgとも適合性;
7.T細胞活性化の種々の解読値と適合性
8.同じ刺激技術を使用して、Ag特異的CD4+T細胞を増殖させ、続いて選別し、そしてさらなる特徴付けのためにCD4+T細胞株およびクローンを生成することができる。
【0086】
従って、記載の方法は多くの適用を有する。
【0087】
それ故、本発明はまた、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記被験体において疾病を診断するための方法に関する。
【0088】
本発明はまた、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、疾病を患う前記被験体において免疫療法の効果をモニタリングするための方法に関する。
【0089】
実際に、本発明者らは、Ag特異的T細胞応答を刺激するための本発明の方法が、疾病を診断するためと、いくつかの設定において免疫療法の免疫学的効果をモニタリングするための両方のために有用であり得ることを発見した。
【0090】
好ましい態様において、前記疾病は自己免疫疾病からなる群より選択される。この群は、1型糖尿病(T1D)、ウェゲナー肉芽腫症、クローン病、セリアック病および多発性硬化症を含むがそれに限定されない。
【0091】
本発明の別の態様において、前記疾病は、癌疾病からなる群より選択される。この群は、メラノーマ、大腸癌、腎臓癌、および血液学的悪性疾患、例えば白血病、リンパ種および多発性骨髄腫を含むがそれらに限定されない。
【0092】
別の態様において、前記疾病は感染症からなる群より選択される。この群は、M. tuberculosis、HIV、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルスなどの感染病原体によって引き起こされる疾病を含むがそれらに限定されない。
【0093】
別の態様において、前記疾病は、骨髄移植および類似の手順を複雑化させる移植片対宿主疾病である。
【0094】
診断適用のために、本発明の方法を使用して、疾病、好ましくは自己免疫疾病に関連した1つ以上のAg特異的T細胞応答を検出することができる。例えば、前記方法を使用して、1型糖尿病に関連したプレプロインスリン特異的またはグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)特異的なT細胞応答を検出することができる。
【0095】
本明細書において使用する「免疫療法をモニタリングする」という表現は、in vivoにおいて免疫調節剤を投与した後に、所与の被験体において誘導されるT細胞応答の変化の測定を指す。
【0096】
モニタリング適用については、疾病のタイプに応じて異なるタイプの状況が見られる。
【0097】
自己免疫疾病において、免疫調節療法を使用して、病的な免疫応答を鈍らせることができる。この結果を達成するための1つの戦略は、多くの免疫調節剤に基づいた非Ag特異的な介入に依拠する。例えば、薬剤、例えばシクロスポリンA(Stiller et al., Science 223:1362, 1984; Feutren et al., Lancet 19:119, 1986; Bougneres et al., Diabetes 39:1264, 1990)、ダクリズマブ、ミコフェノール酸モフェチル、ラパマイシン、インターロイキン−2、抗CD3モノクローナル抗体(Herold et al., N.Engl.J.Med. 346:1692, 2002; Keymeulen et al., N.Engl.J.Med. 352:2598, 2005)、抗CD20モノクローナル抗体、例えばリツキシマブ(Pescovitz et al., N.Engl.J.Med. 361:2143, 2009)、自己骨髄非破壊的な造血幹細胞移植(Voltarelli et al., JAMA 297:1568, 2007)、自己臍帯血細胞注入(Haller et al., Diabetes Care 32:2041, 2009)、ビタミンD、制御性T細胞適応療法が、T1Dの予防および/または介入のために試験されているか、または試験される可能性がある。第2のアプローチは、Ag特異的戦略、すなわち、免疫寛容誘発形態の疾病に関連したAgの投与に依拠する。例えば、薬剤、例えば(プロ)インスリン(DPT-1, N.Engl.J.Med. 346:1685, 2002; Skyler et al., Diabetes Care 28:1068, 2005; Nanto-Salonen et al., Lancet 372:1746, 2008)、GAD(Ludvigsson et al., N.Engl.J.Med. 359:1909, 2008)、NBI−6024(Alleva et al., Scand.J.Immunol. 63:59, 2006)、DiaPep277(Raz et al., DiabetesMetab.Res.Rev. 23:292, 2007)、およびその組合せ、β細胞Agと組み合わせた抗CD3(Bresson et al., J.Clin.Invest. 116:1371, 2006)、in vitroまたはin vivoにおけるDCへのAgのローディング(Mukhopadhaya et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:6374, 2008)、エピトープ−HLAマルチマー(Casares et al., Nat.Immunol. 3:383, 2002; Masteller et al., J.Immunol. 171:5587, 2003; Mallone et al., Blood 106:2798, 2005)が、T1Dの予防および/または介入のために試験されているか、または試験される可能性がある。
【0098】
癌および感染症における病気発生は、病的な免疫応答によって引き起こされるのではなく、むしろ、免疫系による制御を回避する組織細胞または感染病原体によって引き起こされる。それ故、癌または感染細胞/感染病原体に対する免疫応答は、疾病に拮抗しようとする生理学的適応である。これらの生理学的機序を、非Ag特異的戦略(例えば、メラノーマにおける単独でまたは種々の薬剤と組み合わせた、細胞障害性Tリンパ球関連抗原4の遮断;Yuan et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:20410, 2008; Maker et al., Ann.Surg.Oncol. 12:1005, 2005)、またはAg特異的アプローチ、すなわち免疫原性形態の疾病関連Ag(群)の投与(いわゆるワクチン接種)のいずれかを使用して治療的にブーストすることができる。これらの後者のアプローチは、Agを単独でまたは種々のアジュバント剤と組み合わせて投与することによって(例えば、メラノーマにおける腫瘍関連Agの投与;Di Pucchio et al, Cancer Res. 66:4943, 2006; Peterson et al., J.Clin.Oncol. 21:2342, 2003);AgでパルスされたDCを投与することによって(例えば、メラノーマにおける腫瘍関連AgでパルスされたDCの注入;Palucka et al., J.Immunother. 26:432, 2003; Banchereau et al., Cancer Res. 61:6451, 2001; Thurner et al., J.Exp.Med. 190:1669, 1999)または疾病関連Ag特異的T細胞の養子移植によって(例えば、メラノーマにおける腫瘍関連Ag特異的T細胞の注入;Vignard et al., J. Immunol. 175:4797, 2005)遂行され得る。
【0099】
それ故、このような介入によって誘導される免疫変化を追跡することは治療的に関心がある。成功裏の介入は、疾病関連Ag特異的T細胞応答の減少(自己免疫疾病の場合)または減少(癌および感染症の場合)を実現すべきである。疾病関連Ag特異的T細胞応答におけるこのような変化は、定量的(例えばAg特異的T細胞の頻度の変化)または定性的(例えばこのようなT細胞の表現型および/または機能の変化)であり得る。臨床的に効力のあるこれらの免疫代用マーカーを入手できることは、多種多様な適用のために非常に有用であり得る。例えば、患者の免疫応答に基づいた処置する患者および使用する治療剤のより良好な選択(例えば、GAD特異的T細胞応答を提示する患者におけるGAD投与);治療用量または投与レジメンの最適化および/またはテーラーメイド(例えば、免疫変化が記録されない場合の投与用量/投与頻度の増加)、従ってリスク・ベネフィットの比の向上;処置に応答するその確率による処置患者の予後層別化;誘導される免疫変化の維持に基づいてまたは基づかずに再度患者を処置するかどうかの決定。
【0100】
それ故、本発明のAg特異的T細胞応答を刺激するための方法は、これらの免疫変化の誘導をモニタリングするのに非常に有用であり得る。
【0101】
T細胞応答を検出する工程c)を、例えば、分泌される所与のサイトカインの量を測定することによって前記のように実施することができる。
【0102】
好ましい態様において、T細胞応答を検出する工程c)は、ELISpotによって実施される。
【0103】
本明細書において使用する「疾病関連抗原(Ags)」という表現は、免疫応答の分子ターゲットを構成するタンパク質またはペプチドを指す。前記分子ターゲットは、免疫応答によってターゲティングされる組織(群)または細胞(群)によって発現される。疾病関連Agの発現は、ターゲット組織に限定され得るか、またはさらに他の身体区画まで広がり得る。疾病関連Agは最初に、自己抗体またはT細胞免疫応答のターゲットであるとして、またはターゲット組織によるその選択的な発現に基づいて同定され得る。疾病関連タンパク質抗原のいくつかの例は、T1Dについては、プレプロインスリン(PPI)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリノーマ関連タンパク質2(IA−2)、膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)および亜鉛トランスポーター8(ZnT8);ウェゲナー肉芽腫症についてはミエロペルオキシダーゼよびプロテイナーゼ3;多発性硬化症におけるミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)およびミエリン塩基性タンパク質(MBP);セリアック病におけるグリアジン;メラノーマ癌におけるチロシナーゼ、メラン−A、MART−1、gp100およびNY−ESO1;M. tuberculosis感染についてはESAT−6およびHIV感染についてはgagである。
【0104】
疾病関連ペプチドAgの例は、Ag提示細胞(DCを含む)による処理および異なるHLAクラスIまたはクラスII分子の状況での提示の後に、前記の該タンパク質Agから得られる。それ故、前記ペプチドAgは、その起源のAgだけに依存するのではなく、それらが提示されるHLA分子にも依存して異なる。例えば、マウスおよびヒトの両方についてのT1D関連ペプチドAgのリストを、DiLorenzo et al., Clin.Exp.Immunol. 148:1, 2007に見出し得る。
【0105】
「疾病関連抗原」という表現はまた、免疫応答のターゲットを構成する組織または細胞を指す。疾病関連組織/細胞を、前記疾病の病態生理学および臨床症状に基づいて疾病のターゲットとして同定することができる。疾病関連組織/細胞のいくつかの例は、T1Dについてはインスリン産生膵β細胞;多発性硬化症における乏突起神経膠細胞;セリアック病における腸上皮;メラノーマ癌における悪性メラノサイト;結核感染についてのM. tuberculosis;およびHIV感染についてのHIVである。
【0106】
疾病関連Agに対して開始される免疫応答は、病的な免疫応答(すなわち自己免疫疾病の場合)、または別の進行中の生理学的過程の結果を制限することを目的とした、生理学的で有益な可能性のある免疫応答(すなわち癌または感染症の場合)であり得る。前記疾病の根底にある病的または生理学的免疫応答のおかげで、このような応答の検出を使用して、これらの疾病を診断することができるか、またはその天然のまたは治療により改変された展開を追跡することができる。それ故、疾病関連Ag特異的T細胞応答を測定することによって、本明細書において記載した方法を、前記疾病の免疫診断およびモニタリング(例えば免疫の段階、治療経過観察)の両方に適用することができる。
【0107】
当業者は、適切な疾病関連Agを選択する方法を知っているだろう。このような選択は、多種多様な戦略に基づく。T1D関連Agについてのこのような戦略の例を、Wenzlau et al. Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007; Peakman et al., J.Clin.Invest. 1999; Nepom et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2001; Arif et al., J.Clin.Invest. 2004; Toma et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2005; Blancou et al., J.Immunol. 2007; Skowera et al., J.Clin.Invest. 2009に見出し得る。T1D関連ペプチドエピトープについてのこのような戦略のレビューを、Di Lorenzo et al., Clin.Exp.Immunol. 148:1, 2007およびMartinuzzi et al., Ann.N.Y.Acad.Sci. 1150:61, 2008に見出し得る。
【0108】
本発明の方法の別の適用は、治療タンパク質の免疫原性(または免疫寛容原性)のin vitroにおける研究のためのその使用に関する。
【0109】
本明細書において使用する「治療タンパク質」という用語は、治療効果を達成するためにヒト被験者にin vivoにおいて投与されるかまたは投与されることが計画される、任意のアミノ酸長のタンパク質またはペプチド化合物を指す。このような治療タンパク質の例は、疾病関連Ag(前記に定義した通り)、異なる種の抗体(その天然形または部分的/完全にヒト化された形態のいずれか)、サイトカイン、ホルモンまたはホルモン類似体、凝固因子、酵素、細菌またはウイルスタンパク質であるがそれらに限定されない。このようなタンパク質は、天然タンパク質に限定されないが、例えば選択されたアミノ酸配列を変化させることによって、または異なるタンパク質の部分を融合させることによって得られた、改変タンパク質またはキメラ構築物も含む。理論によって固めたくはないが、治療タンパク質の免疫原性の評価が関連する2つの異なる治療設定が存在する。
【0110】
1つの最初の治療設定は、免疫寛容原性効果(例えば自己免疫疾病の場合)または免疫原性効果(例えば癌または感染症の場合)を誘導する目的での、in vivo投与のための疾病関連Ag(前記に定義した通り)の使用に関する。前記の所望の治療効果を達成する能力をin vitroにおいてまず評価することが重要である。
【0111】
別の治療設定において、目的は、投与されたタンパク質に対して任意の種類の免疫原性応答を誘導することではなく、前記タンパク質が治療効果(このために前記タンパク質は設計されている)を達成することを可能とするためにこのような応答を回避することである。このような設定の例は、サイトカインに基づいた免疫療法、ホルモン補充療法、および凝固因子の欠損(例えば血友病Aにおける第VIII因子)または酵素欠損(例えばムコ多糖症VIIにおけるβ−グルクロニダーゼ)のための補充療法を含むがそれらに限定されない。全てのこれらの状況において、投与されたタンパク質に対する免疫原性応答の開始は望ましくない。なぜなら、これは所望の治療効果を達成するためには逆効果であるからである(例えば、サイトカイン放出症候群などの副作用;または治療タンパク質の中和/分解)。
【0112】
それ故、本発明はまた、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(治療タンパク質を、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記治療タンパク質の免疫原性を評価するための方法に関する。
【0113】
本発明の方法の別の適用は、Agまたはエピトープの発見(「マッピング」としても知られる)のための、すなわち、Ag特異的T細胞応答を誘起するものを選択するためにAgおよびエピトープをスクリーニングするための、その使用である。
【0114】
本明細書において使用する「エピトープ」という用語は、T細胞によって認識されるタンパク質Agの部分を指す。エピトープは、主要組織適合複合体(MHC)クラスIまたはクラスII分子に結合することのできる種々のアミノ酸長のペプチドである。このようにして形成されたペプチド−MHC複合体は、T細胞上に発現されるT細胞レセプター(TCR)によって認識されることができ、従って、T細胞の活性化およびエピトープAg特異的T細胞応答が開始される。
【0115】
AgおよびエピトープはT細胞の規定された分子ターゲットであるので、in vitroにおける適用(例えば診断、予後または治療目的のためのAg特異的T細胞応答の検出)またはin vivoにおける投与(例えば自己免疫疾病におけるAgまたはエピトープに基づいた免疫寛容原性療法;あるいは癌および感染症におけるAgまたはエピトープに基づいたワクチン接種)のために使用するための適切なタンパク質またはペプチドを設計するためにこのようなターゲットを正確に同定することはしばしば適切である。さらに、所与のMHC分子(例えばHLA−A2、A*0201;またはHLA−DR4、DR*0401)に結合するエピトープおよび/またはTCRシグナル伝達およびT細胞活性化のトリガーを支配する一般的な法則の定義が、所与のエピトープの挙動を予測することのできるコンピューター化アルゴリズムを開発する目的でしばしば求められる。このようなアルゴリズムの開発は、頻繁に、多くの実験データセットが入手できることを必要とする。
【0116】
それ故、本発明は、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)T細胞応答を検出する工程
(候補Agまたはエピトープを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、候補Agおよびエピトープをスクリーニングするための方法に関する。
【0117】
前記候補Agはまた、免疫応答によってターゲティングされる組織(群)もしくは細胞(群)、または、当業者に公知の生化学的または分子生物学技術によって候補Agまたはエピトープでコーティング、ローディングまたはそれを発現させるようにした任意のタイプの細胞であり得る。
【0118】
本発明の方法のさらに別の適用は、T細胞クローンを産生するためのその使用に関する。
【0119】
従って、本発明は、以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)特異的な免疫学的特性を提示する少なくとも1つのT細胞を単離する工程
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を提示するT細胞クローンを産生するための方法に関する。
【0120】
前記の特異的な免疫学的特性は、工程a)および/またはb)の最中に加えられたAgの、単離T細胞による認識を含むがそれらに限定されない。例えば、前記の特異的な免疫学的特性はまた、IFN−γの産生、または認識されたAgを提示する細胞に対して細胞障害作用を発揮する能力も含み得る。IFN−γを産生または細胞障害作用を提示するT細胞クローンは、例えば癌および感染症の処置に有用であり得る。
【0121】
例えば、別の可能な特異的な免疫学的特性は、IL−10の産生であり得る。IL−10を産生するT細胞クローンは、自己免疫疾病の処置のための制御性T細胞として使用することができる。
【0122】
当業者は、血液試料またはPBMC試料から一旦単離された前記のAg特異的T細胞を増殖させる方法をよく知っている。T細胞クローニング法としても知られるこのような方法の例を、Reijonen et al., Diabetes 51:1375, 2002; Mallone et al., Blood 106:2798, 2005; Mannering et al., J.Immunol.Methods 298:83, 2005; Yee et al., J.Immunol. 162:2227, 1999; Mandruzzato et al., J.Immunol. 169:4017, 2002; Oelke et al., Nat.Med. 9:619, 2003; Skowera et al., J.Clin.Invest. 118:3390, 2009に見出し得る。
【0123】
当業者は、異なる免疫学的特性に基づいて生存状態の前記Ag特異的T細胞を単離するのに適した方法もよく知っている。例えば、IFN−γまたはIL−10産生T細胞の選択を、Miltenyiサイトカイン捕捉アッセイによって行なうことができる。別の例としては、細胞障害性T細胞の選択を、CD107のアップレギュレーションに基づいて行なうことができる[Betts et al., J.Immunol.Methods 281:65, 2003]。
【0124】
本発明の方法のさらに別の適用は、Ag特異的制御性T細胞を生成するためのその使用に関する。
【0125】
本明細書において使用する「制御性T細胞」という用語は、免疫系の活性化を制御および抑制するように作用し、これにより、免疫系の恒常性および自己Agに対する寛容性を維持する、T細胞の特殊な亜集団群を指す。規定された疾病関連Agを認識する前記制御性T細胞を、自己免疫および移植片対宿主疾病などの病的状況において免疫寛容性を回復するために治療的に使用することができる。多数のポリクローナル(すなわち多数の規定されていないAgを認識する)制御性T細胞を生成するための効率的な方法が記載されている[Putnam et al., Diabetes 58:652, 2009]。それにも関わらず、所与のAgに特異的な多数の制御性T細胞の生成は、依然として達成されていない。本明細書において記載する方法は、この目的に有用であることが証明され得る。
【0126】
従って、本発明は、以下の工程:
a)免疫寛容誘発特性を有するDCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養する工程;
b)場合により、前記DCを成熟させる工程;
c)特異的な免疫学的特性を提示する少なくとも1つのT細胞を単離する工程
(Agを、工程a)および/またはb)の最中に加える)
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を提示するAg特異的制御性T細胞を生成するための方法に関する。
【0127】
前記の特異的な免疫学的特性は、工程a)および/またはb)の最中に添加されるAgの、単離T細胞による認識を含むがそれらに限定されない。例えば、前記の特異的な免疫学的特性はまた、前記の制御性T細胞と物理的に接触してまたは空間的に近くに置かれたT細胞の増殖、サイトカイン分泌、細胞障害作用および他のエフェクター機能を抑制する能力;単独で、またはIFN−γなどの非制御性サイトカインと組み合わせて、IL−10、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−βファミリー、IL−35などの制御性サイトカインを産生する能力;IL−2の存在下においてのみ増殖する能力;制御性T細胞集団群に典型的なマーカーを発現する能力を含み得る。このようなマーカーは、CD25、CD127、グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子レセプター(GITR)、フォークヘッドボックスP3(FoxP3)、HLA−DR、細胞障害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)、CD45RA、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)を含むがそれらに限定されない。
【0128】
当業者は、血液試料またはPBMC試料から一旦単離された前記の制御性T細胞を増殖させる方法をよく知っている。このような方法の例を、Putnam et al., Diabetes 58:652, 2009 and in Miyara et al., Immunity 30:899, 2009に見出し得る。
【0129】
当業者はまた、異なる免疫学的特性に基づいて生存状態の前記の制御性T細胞を単離するのに適した方法もよく知っている。例えば、IL−10産生制御性T細胞の選択は、Miltenyiサイトカイン捕捉アッセイによって行なうことができる。別の例としては、CD25が高くCD127が陰性である制御性T細胞の選択は、細胞表面染色に基づいて行なうことができる[Liu et al., J. Exp. Med. 203:1701, 2006, Seddiki et al., J. Exp. Med. 203:1693, 2006, Putnam et al., Diabetes 58:652, 2009 and in Miyara et al., Immunity 30:899, 2009]。
【0130】
本明細書において使用する「免疫寛容誘発特性を有するDC」という用語は、制御性T細胞を生じることのできるDCを指す。調節特性を有するサイトカインを以前に記載された培養プロトコールに加えることによって、前記の免疫寛容誘発特性を有するDCを得ることができる。
【0131】
好ましい態様において、前記の調節サイトカインはIL−10である。典型的には、IL−10は、1〜1,000ng/ml、好ましくは10〜100ng/mlの量で使用される。IL−10を多種多様な起源から得ることができる。それは精製IL−10であっても、または組換えIL−10であってもよい。IL−10は、例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0132】
別の好ましい態様において、前記の制御性サイトカインは、TGF−β1などのTGF−βファミリーのメンバーである。典型的には、TGF−β1は、1〜1,000ng/ml、好ましくは1〜100ng/ml、さらにより好ましくは1〜10ng/mlの量で使用される。TGF−β1を多種多様な起源から得ることができる。それは精製TGF−β1であっても、または組換えTGF−β1であってもよい。TGF−β1は例えばR&D SystemsまたはPeproTechのような種々の会社から市販されている。
【0133】
さらに他の態様において、前記の制御性サイトカインは、制御活性を発揮することが知られる他のサイトカイン、あるいはIL−10、TGF−βファミリーのメンバーおよび/または他の制御性サイトカインの任意の組合せである。制御活性を有する他のサイトカインの例は、IL−5、IL−13およびIL−35を含むがそれらに限定されない。
【0134】
好ましい態様において、工程a)を、t(a)minからt(a)maxまでの時間t(a)をかけて行なう。
【0135】
典型的には、工程a)の最小インキュベーションt(a)minは、約12時間、好ましくは約16時間、さらにより好ましくは約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、さらにより好ましくは約24時間であり得る。
【0136】
典型的には、工程a)の最大インキュベーションt(a)maxは、約10日間、好ましくは約7日間、さらにより好ましくは約6日間、約5日間、約4日間、約3日間、約2日間、さらにより好ましくは約1日間であり得る。
【0137】
上に開示した最小および最大インキュベーション時間t(a)minおよびt(a)maxを組み合わせることができる。
【0138】
好ましい態様において、工程a)を、約16時間〜約7日間、好ましくは約20時間〜約4日間の時間t(a)をかけて行なう。
【0139】
好ましい態様において、工程a)を、約24時間の時間t(a)をかけて行なう。
【0140】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは特許請求の範囲によって定義される保護の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1a】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図1b】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図1c】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図1d】未分画ヒトPBMCは、T細胞を刺激するacDCを生じる。(a)acDCを示したような異なる刺激を用いて成熟させることによって得られた、TTXまたは対照Agに対するIFN−γのELISpot応答の比較(詳細については方法および補足図1を参照されたい)。点線は、サイトカインの非存在下において得られたIFN−γのシグナルを印す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.03および**p<0.001。(b〜d)TTX、KLHまたは対照Agに対するIFN−γ(b)、IL−10(c)およびIL−4(d)応答のELISpotによる検出について前記で選択したacDC成熟プロトコールの比較。点線は、サイトカインの非存在下において得られたTTX特異的サイトカインシグナルを示す。有意なバックグラウンド増加の非存在下における「サイトカインなし」条件との比較について*p<0.04。全てのパネルにおいて、少なくとも3回の実験の1つの代表を示す。
【図2a】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図2b】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図2c】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図2d】acDCとmoDCとの比較、およびacDCにより増幅されたIFN−γのELISpotアッセイの再現性。(a)acDC(上)とmoDC(下)との間の表現型比較。未分画PBMCを48時間かけて、GM−CSF/IL−4単独(青いプロファイル)でまたはTNF−α/PGE2/IL−1β(最後の24時間の間に加える;赤いプロファイル)と組み合わせて培養することによってacDCを得た。精製した単球を7日間かけて同じサイトカイン混液(TNF−α/PGE2/IL−1βを最後の24時間の間に加える)と共に培養することによってmoDCを生成した。アイソタイプ対照染色(影の付いたプロファイル)とサイトカインの非存在下における培養液(点線のプロファイル)との比較を示す。成熟acDCおよびmoDCを抗CD40/IFN−αを用いて成熟させることによって類似の結果が得られた(示さず)。(b)TNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させるかまたは未成熟のままであるacDCおよびmoDCの、IFN−γのELISpotアッセイにおける刺激能。acDCについては、全PBMC(1×106個/ウェル)を、48時間、M. tubercolosisPPDの存在下または非存在下において以前のように培養した。自己単球をPBMC接着によって単離し(1×106個/ウェル)、そして前記のように7日間刺激して、moDCを得た。その後、新鮮な自己PBMC(1×106個/ウェル)を、PPDを含むまたは含まないmoDCに48時間かけて加えた。続いて非接着性細胞を回収し、そしてIFN−γELISpotにかけた。(c)acDC IFN−γ ELISpotの分析アッセイ間の変動性。同じ採血に由来する凍結した3つのPBMCアリコートを解凍し、そして記載のように試験した。変動係数(CV)=9.6%。基礎(「Agなし」)およびTTX誘導IFN−γスポット数を、正味の(基礎を差し引いた)TTX応答と共に、ここにおよびその後のパネルd、e(抗CD40/IFN−αで成熟させたacDC培養液)に示す。(d)acDC IFN−γ ELISpotの分析前および分析アッセイ間変動性。PBMCを、4つの異なる時機に同じ個体から得て、そして記載の通りに試験した。CV=5.4%。(e)新鮮な試料と凍結保存試料との間の変動性。1回の採血に由来するPBMCを、新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで試験し、そしてその後、解凍時に試験した。CV=6.9%。全てのパネルは、3回実施した実験の代表である。
【図3】acDCにより増殖されたAg特異的T細胞を単離およびクローニングすることができる。(a)acDC ELISpotおよびT細胞クローン生成手順の図解。GM−CSFおよびIL−4をタンパク質Agと共にCFSE標識PBMCに0日後に加えて、続いて1日後にTNF−α/PGE2/IL−1βを加えることによってacDCを誘導した。2日後に、非接着性細胞をELISpotウェルに6時間かけて移し、そして続いて回収し、そして培養液に戻した。Ag特異的応答を、ELISpotによって定量した。8〜10日後に、増殖(CFSE低度)細胞の対応する画分を1つの細胞毎に選別し、3回の刺激サイクルを通して増殖させ、そして28日後にAg特異性について試験した。(b)TTXまたは対照刺激の後の代表的なacDC IFN−γ ELISpot。(c)ELISpotウェルから回収したPBMCのCFSEの増殖。標準 vs acDCにより引き起こされる増殖の比較を示す。(d)TTX特異的CFSE低度画分を選別しそしてクローニングした。細胞内IFN−γ染色によるTTXおよび対照でパルスされたDC上におけるこれらのクローンの1つの想起アッセイを示す。
【図4】タンパク質/ペプチドAgおよび異なる刺激期間は、異なるT細胞応答をトリガーする。(a)acDCおよびmoDCにより引き起こされるIFN−γ ELISpotアッセイを図1bのように、6価ワクチン(Hexa)で刺激した磁力的にCD4を枯渇させたまたは枯渇させていないPBMCに対して実施した。(b)acDC混液の存在下または非存在下において培養したPBMCに対して行なったIFN−γ ELISpot。HLA−A2+(A*0201)−DR4+(DR*0401)被験体からのPBMCを、示したように、HLA−A2拘束性Flu MP58〜66ペプチド、DR4拘束性Flu HA306〜318ペプチドまたはTTXで刺激した。ペプチドを培養の開始から24時間後に加えたが、TTXは最初から導入した。(c)CD45RA+またはCD45RO+細胞を磁力的に枯渇させたまたは枯渇させないままにしたPBMCに対して実施したacDC刺激におけるTTX特異低IFN−γ ELISpot応答。結果を、枯渇されていないPBMCに正規化した相対的IFN−γ応答として表現する。(d)CFSEで標識されたacDCにより刺激されたPBMC上でのTTXおよびKLHに対するIFN−γおよびIL−10のELISpot応答。(e)CFSE標識PBMCを、パネルdのアッセイウェルから回収し、そしてさらに10日間さらなる刺激およびサイトカインの非存在下において培養した。異なるAgに対するCD4+およびCD8+T細胞のCFSEの増殖を示す。パネルa〜eの刺激は、acDCをTNF−α/PGE2/IL−1βで成熟させることによって行なわれ、そして3回の独立した実験の代表である(パネルcを除いて、3回の別々の実験の平均±SEMを示す)。
【図5】Ag特異的IFN−γ分泌およびCD137アップレギュレーションは、PBMCおよび全血中においてacDCにより増幅される。(a)acDCの非存在下(上の列)または存在下(下の列)においてPBMCに対して実施されたIFN−γ捕捉アッセイ。48時間のインキュベーション後、分泌IFN−γを、製造業者の指示に従って、非接着細胞の表面上で捕捉した。パーセントの付いた数字は、PBMCの中のIFN−γ+CD4+(左)またはIFN−γ+CD8+(右)画分を示す。(b)上のように、48時間の培養中のacDCによる増幅を含む(下の列)または含まない(上の列)精製PBMCに対して実施されたCD137アップレギュレーションアッセイ。(c)同じ採血に由来する全血を、平行して、acDCと共に(下)またはその非存在下において(上)、Agを加えることによって刺激した。48時間の培養終了時に、赤血球を溶解し、そして試料をパネルbと同様に分析した。ドットプロットをここでCD4+(左)またはCD8+(右)T細胞上でゲーティングし、PBMCと全血との比較を可能とした。それ故、パーセントの付いた数字は、CD4+またはCD8+T細胞の間のCD137+画分を示す。結果は、抗CD40/IFN−γ成熟混液を使用して3回実施した代表的な実験を指す。
【図6】acDCは、全血中のサイトカイン分泌を増幅する。(a)全血(250μl)を、48時間かけて、acDC(成熟のための抗CD40/IFN−γを含む)の存在下(丸)または非存在下(四角)においてTTXと共にまたはその非存在下において培養した。血漿上清を回収し、そしてサイトカインをLuminexビーズアッセイによって測定した。有意なAg特異的分泌を示したサイトカインのみを示す。結果を、基礎値(白抜きの記号によって示す)を差し引いた後の、正味のTTXで刺激されたサイトカイン濃度(黒い記号)として表現する。(b)2つの異なる被験体(それぞれ丸および菱形の記号)におけるacDCによる刺激後の、PBMC(黒い記号)と全血(白抜きの記号)との比較。結果を、基礎値を差し引いた後の、正味のTTXで刺激されたサイトカイン濃度として表現する。代表的な実験を、10回以上の実験が実施された両方のパネルに示す。
【図7】acDCに基づいたアッセイの図解。未分画PBMC(新鮮または凍結)または未希釈ヘパリン処理全血のいずれかを、GM−CSFおよびIL−4と共に24時間かけてタンパク質Agの存在下においてインキュベーションする。続いて成熟刺激をさらに24時間かけて加え、その後、増幅したT細胞応答を多種多様な解読値によって測定することができる。上の灰色のパネルはPBMCを用いて試験したT細胞の解読値を列挙し;下の灰色のパネルは、全血を用いて得られた解読値を示す。acDC増幅技術はまたペプチドAgとも適合性であり、これは成熟刺激と共に24時間後に加えられる。
【図8】KLH免疫化マウスにおけるIFN−γELISpot応答のacDCによる増幅。Balb/cマウスを、KLHまたはアジュバント単独(各々n=3)を用いて皮下免疫化し、そしてその単核球(1×106)は、acDC混液(LPS成熟)を使用してまたはサイトカインを全く使用せずに、KLHまたは対照Agを用いてin vitroにおいて想起した。*p<0.001;n.s.、有意ではない。結果は3連で実施した代表的な実験を指す。
【図9】HLAマルチマーによって同定されたエピトープ特異的T細胞のacDCにより引き起こされる増殖。(a)Fluまたは対照ペプチドをローディングしたHLA−A2ペンタマー(PMrs)を使用したFlu MP58〜66特異的CD8+T細胞のex vivoにおける検出。(b)PMrsによって検出されるFlu MP58〜66特異的CD8+T細胞のin vitroにおける増殖。PBMCを、FluMP58〜66ペプチドの非存在下(最初の縦列)または存在下(2番目および3番目の縦列)において培養した。培養を48時間かけて行なうか(最初および2番目の横列)、または非接着細胞を洗浄し、再播種し、そしてさらに7日後まで培養した(3番目および4番目の横列)。これらの培養を、示したように、acDC混液の存在下または非存在下において実施した。Flu特異的CD8+T細胞を、対応するHLA−A2 PMrsを用いて同定し(最初および2番目の縦列)、そしてバックグラウンド染色を対照PMr(3番目の縦列)を用いて決定した。(c、d)同じ実験を実施して、Fluまたは対照ペプチドのローディングされたHLA−DR4テトラマー(TMrs)を使用してFlu HA306〜318特異的CD4+T細胞を検出した。acDC成熟を、抗CD40/IFN−αを用いて誘導した。結果は、3回の独立した実験の代表である。
【図10】acDCにより増幅されるIL−1β分泌は、接着細胞に由来する。PBMCを、acDC手順に従ってTTXを用いてまたはAgを全く用いずに刺激した(抗CD40/IFN−α成熟)。48時間後、接着細胞および非接着細胞(2×105個/ウェル)を、別々に、IL−1β ELISpotアッセイにおいて6時間かけて試験した。*p<0.01;n.s.、有意ではない。結果は、3連で実施した代表的な実験を指す。
【0142】
実施例
実施例1:PBMC由来の促進された共培養DC(acDC)は、共培養T細胞のAg特異的応答(タンパク質Agによる刺激)を増幅する
材料および方法:
0日後に、全PBMC(2.5×106個の細胞/ウェル)を、48ウェルプレートの、1,000U/mlのGM−CSF、500U/mlのIL−4(両方共にR&D Systemsから)、および関連タンパク質Ag(10μg/ml)の補充されたAIM−V培地(Invitrogen)に播いた。試験したタンパク質抗原は破傷風トキソイド(TTX)、M. tubercolosis精製タンパク質誘導体(PPD)、6価ワクチンのインファンリックスヘキサ(GlaxoSmithKline)、プロインスリン(PI)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、インスリンC−ペプチド、プレPIリーダー配列、ミエロペルオキシダーゼ、プロテイナーゼ3であった。陰性対照として使用したタンパク質の一例はウシ血清アルブミン(BSA)である。
【0143】
1日後に、炎症誘発刺激を加えて、DCの成熟を誘導した。
【0144】
いくつかの成熟プロトコールを開発して、以下に記載したように試験した。
【0145】
成熟プロトコールA:1000U/mlのTNF−α、10ng/mlのIL−1β(両方共にR&Dから)および1μMのPGE2(Calbiochem)
これは、FastDCを得るのに使用したのと同じサイトカイン混液であり[Dauer et al., J.Immunol. 170:4069, 2003]、そして慣用的な(7日後の)DCを生成するためにいくつかの他のグループによって記載されている。さらに、本発明者らは、低用量のIL−7(0.5ng/ml;R&D)を加え、これは本発明者らが、ELISpot検出システムを使用してAg特異的に(すなわちバックグラウンドの増加を伴うことなく)CD8+T細胞応答を大きく増殖させるために以前記載した[Martinuzzi et al., J.Immunol.Methods 333:61, 2008]。このプロトコールは、例えばIFN−γ、IL−10、IL−2、IL−4などを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0146】
成熟プロトコールB:抗CD40モノクローナル抗体(mAb;クローンG28−5、10μg/ml)、IFN−α 2a(Roferon-A, Roche; 1,000 U/ml)
慣用的な7日後のDCのための類似の成熟混液が記載されている[Luft et al., Int.Immunol. 14:367, 2002]。さらに、本発明者らは、低用量のIL−7(0.5ng/ml)を使用して応答をさらに増幅させた。
【0147】
このプロトコールは、例えばIFN−γおよびIL−10などを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0148】
成熟プロトコールC:LPS100ng/mlおよび低用量のIL−7(0.5ng/ml)
このプロトコールは、IL−10基礎(非刺激)分泌の大きな増加に因り、IL−10ではなく例えばIFN−γを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0149】
成熟プロトコールD:ポリI:C 20μg/mlおよび低用量のIL−7(0.5ng/ml)
このプロトコールは、IL−10基礎(非刺激)分泌の大きな増加に因り、IL−10ではなく例えばIFN−γを産生するAg特異的CD4+T細胞応答を検出するのに適していた。
【0150】
T細胞検出手順:ELISpot。非接着細胞を洗浄し、新鮮なAIM-V培地に再懸濁し、そして所望の抗サイトカイン捕捉Abs(例えば抗IFN−γ、抗IL−10、抗IL−2、抗IL−4;全てU-CyTechから)を用いて一晩かけてコーティングされた、96ウェルPVDFプレートの3つのウェル(0.3×106個の細胞/ウェル)に分配した。さらなるAgまたはサイトカインは加えず、そしてプレートを6時間37℃、5%CO2でインキュベーションした。ビオチニル化二次Absおよび標準的な比色定量検出(例えばストレプトアビジン−アルカリホスファターゼおよびNBT−BCIP)を用いて顕色させた。スポットを、Bioreader 5000 Pro S-F (BioSys)ELISpot解読機または同等物で計測し、そして3つのウェルの平均を計算した。全てのELISpot解読値は、スポット形成細胞(SFC)/106個のPBMCとして表現した。陽性応答のカットオフは、平均基礎反応性(すなわちBSAまたは無抗原に対する反応性)より上の3SDに設定された。
【0151】
acDCの表現型分析:
acDCおよび慣用的な(7日後の、単球由来の)DC(未成熟または成熟のいずれか)の表現型を、HLA−DR、CD14、CD80、CD86、CD11cに特異的なmAbで染色することによって決定した。エンドサイトーシス活性をデキストラン−FITCと共にインキュベーションし、続いて取り込まれた蛍光を評価することによって評価した。全ての細胞を、FACSAriaフローサイトメーター(BD)で分析した。
【0152】
結果:
acDCの特徴付けにより、慣用的な7日後のDCのそれと同一な表現型が判明した。CD14のダウンレギュレーションは、HLA-DRおよび共刺激分子の発現増加と平行して起こったが、デキストラン取り込みは成熟時に減少した。
【0153】
本発明者らは、ELISpot検出システムを使用して、タンパク質Agでパルスした時にAg特異的T細胞応答を増幅するacDCの能力を試験した。24時間の成熟期間後に、非接着細胞を、抗IFN−γ、抗IL−10、抗IL−2または抗IL−4捕捉AbでコーティングされたELISpotプレートに移し、そしてさらに6時間かけてさらにAgまたはサイトカインの補充を全く行なうことなく培養した。acDCにより引き起こされる培養液は、慣用的な単球により引き起こされる条件(すなわちサイトカインを全く添加しない)と比較して、Ag特異的T細胞応答の誘起においてはるかにより効率的であった。関連しないタンパク質またはAg希釈剤のみに対するバックグラウンド応答は有意に増加しなかった。さらに、acDCは、未成熟のままのacDCと比較して(すなわち、GM−CSFおよびIL−4のみで処理)、炎症誘発刺激で成熟させた場合にはるかにより効率的であった。acDCの効率は、慣用的な7日後のDCと類似し、そしてIFN−γ、IL−10、IL−2およびIL−4を含む種々のサイトカイン応答を増幅する上で同様に効果的であった。例えば、TNF−α、PGE2およびIL−1βで成熟させたacDCを用いての特異的シグナルの中央値の増加は、単球と比較して、IFN−γについては2.2倍(1.5〜8.7の範囲)であり、IL−10については1.4倍(1.2〜5.0の範囲)であった。
【0154】
実施例2:ペプチドAgによる刺激
材料および方法:
実施例1に記載したのと同じ実験を、タンパク質Agによる刺激の代わりに、ペプチド抗原刺激を使用して行なった。試験したペプチドAgの例は、インフルエンザマトリックス(MP)58〜66、インフルエンザヘマグルニチン(HA)306〜318、GAD555〜567、GAD114〜123、PIB10〜18であった。陰性対照として使用したペプチドの例はピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PD)5〜13およびコラーゲンII(CII)261〜273であった。
【0155】
結果:
タンパク質AgでパルスされたacDC培養液中に誘起されたシグナルは専ら、CD4+T細胞を起源としていた。なぜなら、これらの細胞を除去した時に前記シグナルが完全に消失したからであった。Ag特異的CD8+T細胞応答は、より長い培養期間(7日間)かけてしか誘起することができなかった。7日後のDCを使用して全PBMCまたはCD4枯渇PBMCを刺激した場合に同じことが当てはまり、従って、acDCに特異的な欠陥特徴は除外される。このCD4特異的刺激は、CD8+T細胞の非効率的な活性化に起因せず、しかしむしろ、内部移行Agの交差提示を誘起するのに最適ではない培養条件に起因していた。実際に、タンパク質Agではなくペプチドエピトープを使用した場合、CD4+およびCD8+T細胞応答の両方がトリガーされ、そして両方が、単球と比較してacDCによって有意に増幅された。従って、本発明者らは、特異的なペプチドエピトープを認識するAg特異的T細胞を増殖および検出するための、acDC培養技術の改変形を綿密に作った。この場合、対象のペプチドを1日後に炎症誘発刺激と共に加える。この改変形は、所与のエピトープに対して特異的なCD4+およびCD8+T細胞の両方の検出を可能とする。
【0156】
従って、acDC培養プロトコールを使用して、タンパク質またはペプチドAgのいずれかを用いてT細胞を刺激することができる。
【0157】
実施例3:血中における直接的なacDCの誘導
サイトカイン混液およびタンパク質/ペプチドAgを、実施例1(タンパク質Agについて)または実施例2(ペプチドAgについて)のように、予めPBMC精製または血液希釈を全く行なっていない新しく採血したヘパリン処理した血液試料中に直接的に加えた。48時間の培養終了時に、血漿および/またはPBMCを回収し、そしてELISA(R&D)、サイトメトリックビーズアレイ(BD)、もしくはBio−Plex(Biorad)アッセイを使用した血漿中のサイトカイン測定によって、または赤血球溶解後の細胞画分に対するMiltenyiサイトカイン捕捉アッセイによって、Ag特異的T細胞応答について分析した。またこの場合、acDCにより引き起こされる培養液中において誘起されたAg特異的応答は、単球により引き起こされる培養液中において誘起されるものよりも高かった。使用する成熟プロトコールに依存して、これは、IFN−γ、IL−10、IL−2、IL−6、IL−13、TNF−α、G−CSF、IL−1βを含む試験した多くのサイトカインについて該当した。
【0158】
実施例4:acDC培養の下流にあるT細胞の増殖、選別およびクローニング、並びにT細胞応答の分析
acDC培養系はまた:1)さらなる機能的な特徴付け(例えばRT−PCR技術による)のためのAg特異的T細胞の選別;並びに2)さらなる分析のためのT細胞株およびクローンを生成するために適している。
【0159】
PBMCを、CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、0.5〜1μM)で予め標識し、acDC培養にかけ、そして前記のようにELISpotプレートに移した。6時間のELISpotでのインキュベーション後に、細胞を回収し、そしてさらに刺激を与えることなくさらに5日間かけて培養液中に戻した。この培養の終了時に、増殖しているCFSE低度細胞を1細胞毎に選別し、そして以前に記載されたプロトコールを使用して3回の刺激を通してさらに増殖させた[Mannering et al., J.Immunol.Methods 298:83, 2005]。一例として、破傷風トキソイド(TTX)特異的応答が、0.044%の頻度でELISpotによって検出され、これは3.0%のTTX特異的CFSE低度画分の選択に関連し、これは約68倍の増殖に対応する。またこのin vitroにおける培養について、acDCに基づいた培養は、慣用的な単球に基づいた増殖よりも優れていることが判明し、これは約10倍低いTTX特異的細胞(0.29%)を生じた。TTX特異的CFSE低度画分を選別し、そしてクローニングすることにより、TTX特異的CD4+クローンが得られた。このアプローチはまた、acDC培養液から検出された応答が実際にAg特異的であったことを確認した。
【0160】
実施例5:acDC培養系は、β細胞特異的CD4+T細胞応答を検出する
1型糖尿病(T1D)は、インスリン産生β細胞をターゲティングするT細胞により媒介される自己免疫疾病である。その発症率は着実に増加している(フランスにおいては1年当たり100,000中15人までが新たに診断される;1年あたり3〜4%の発症率の増加)。その独特な疫学から(それは主に小児および若年成人に生涯にわたり罹患する)、それは慢性的で費用がかかり衰弱させる疾病であり、重度の合併症(心臓血管疾病、腎症および末期腎疾病、網膜症および盲目)に至る。
【0161】
T1Dの臨床的発症および診断は、病的カスケードの後期の事象であり、これは大半のβ細胞がすでに自己反応性T細胞によってそれより以前の数カ月/数年間かかって破壊された後に行なわれる。その段階において、免疫機序の修正を目的とした原因関連療法のための余地は殆ど残されておらず、そしてインスリン補充が唯一の治療選択肢である。それ故、疾病の予測および経過観察のために適切なバイオマーカー、並びに全身的な免疫抑制を回避しつつβ細胞特異的T細胞応答を選択的に消失させることのできる適切な抗原(Ag)特異的療法が重大にも欠失している。
【0162】
T1Dのために、現在使用されている自己抗体は限界を有する。なぜならT1D患者の15%は自己抗体陰性であり;自己抗体はT1D発症までの時間を予測せず;そしてそれらは成功裏な免疫介入後に変化しないからである。
【0163】
あるいは、T細胞応答(CD8+T細胞応答またはCD4+T細胞応答)を、初期バイオマーカーとして使用することができる。
【0164】
サイトカインELISpotは、種々の条件において特異的な免疫応答の調査のために広く使用されているアッセイである。CD8+T細胞応答を、この方法によって容易に検出することができる。ヒトT1DについてのCD8+β細胞ターゲットエピトープに関する情報が殆どないということが依然として限界であるが、CD8+T細胞応答を測定するための既存の技術(ELISpotおよびテトラマーに基づいた)が、見込みある結果をもたらしている(Toma et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 102:10581, 2005; Mallone et al., Diabetes 56:613, 2007)。
【0165】
Ag特異的CD4+T細胞は、末梢血中に非常に低い頻度で存在し(約0.001〜0.0001%、そのCD8+対応物よりもさらに低い)、特に自己免疫設定におけるその検出を困難なものとしている。
【0166】
Alleva et al. (J Clin Invest. 107:173, 2001)は、直接的なELISpotアッセイを使用して、T1D患者におけるインスリンB9〜23エピトープに対する細胞応答の検出を報告した。
【0167】
Arif et al., (J Clin Invest. 113:451, 2004)は、間接的なELISpotアッセイを使用していくつかのプロインスリン由来ペプチドに対する細胞応答の検出を報告した。この文献において、末梢血単核球を、ELISpotアッセイ前に抗原性ペプチドと共にインキュベーションした。
【0168】
しかしながら、そうした研究は、最初に行なった研究室以外での復元をすることが全体的に困難であった。これは、このような手順の技術的なハードル、およびこれらの検出システムの全体的に低い感度を明白にする。
【0169】
それ故、本発明者らは、本出願において記載したacDCに基づいた手順を使用して。T1Dのβ細胞特異的なCD4+T細胞応答を調べた。種々のグループの患者を考察し、そしていくつかの重要な観察を行なった:最初に、診断時に引き抜かれたT1D成人は、プロインスリン(PI)特異的応答の高い罹患率(83.3%)によって特徴付けられ、これは長年の患者においてこれらの応答が稀であることと対照的であった(5.4%;P<0.0001)。これに対し、GAD特異的応答も同じように、T1Dの期間に関係なく、より低い頻度ではあるが提示された。第二に、新たに発症したT1D小児は全くPI特異的T細胞応答を示さなかった。健康な対照(成人および小児の両方)は2つの症例を除いて全くPI特異的T細胞応答を示さなかった(頻度8.7%)。どちらの症例においても、これらの被験者は、以前には認識されていなかったT1Dリスク因子を有し、1つの症例においてはHLA−DR4/DQ8感受性ハプロタイプに陽性であり、そして他方においては抗GAD Absに対して陽性であった。リスクのある第1度近親(n=10;頻繁には他のAbマーカーと共に、膵島細胞Abに陽性な個体として定義)は、どうにか中間の写真を示し、試験した個体の30.0%がPI特異的応答に陽性であった。重要なことには、試験した10人の個体の中の僅か1人が、現在までにT1Dを発症し、そしてacDCに基づいたELISpotアッセイによってT1D進行のリスクが高いと正しく同定されている。理論によって固めたくはないが、本発明者らは、新たに発症したT1D患者と長年のT1D患者との間に観察した差異は、インスリン処置によって誘導された制御応答を反映し、これは、リスクのある被験者における自己免疫によるβ細胞の破壊を遮断することによって疾病を予防することを目的とした臨床試験についての重要な示唆であると仮定する。この制御応答は、いくつかの場合、小児に見られるように、インスリン療法とは独立した天然の応答であり得る。
【0170】
実施例6 促進された共培養樹状細胞(acDC)による抗原特異的T細胞応答の増強された検出
アブストラクト
抗原(Ag)特異的T細胞の検出はしばしばアッセイ感度によって制限される。それ故、本発明者らは、in situにおいて樹状細胞(DC)の誘導および成熟を促進することによって(促進された共培養DC、acDCと呼ぶ)、ヒトおよびマウスの末梢血単核球(PBMC)中におけるAg処理およびT細胞への提示を増強するためのアプローチを考案した。未分画PBMCまたは全血を、タンパク質またはペプチドAgおよびサイトカイン混液と共に48時間かけてインキュベーションし、acDCを迅速かつ連続的に誘導、パルスおよび成熟させた。同様に、Agを処理および/または隣接するT細胞に提示し、これによりT細胞活性化に至る複数の工程を圧縮し、そして時間、操作および血液必要量を最小限とした。誘起されたT細胞応答は、種々の解読値(サイトカイン分泌、増殖、CD137アップレギュレーション、ヒト白血球Agマルチマーの結合)によって検出されたようにAg特異的であった。acDCに基づいたアッセイは、ウイルス、腫瘍および自己免疫疾病などの種々の設定においてT細胞応答をモニタリングするための価値ある適用を見出し得る。
【0171】
序論
種々の外来抗原および自己抗原(Ag)に対する応答を開始する上でのT細胞の中心的な役割にも関らず、例えば感染症または自己免疫疾病における免疫により媒介される過程の慣用的な診断検出は、主に、専らではなくても、抗体(Ab)応答の測定に依拠する。しかしながら、Absは基礎にある病態を常に媒介または反映しているわけではなく、そして免疫過程が主にT細胞により媒介されている場合にはより情報は少なくなるであろう(1)。現在までのAg特異的T細胞アッセイの唯一の信頼できる臨床的適用は、M. tuberculosis感染の診断においてであった(2)。さらに、T細胞免疫を効果的に測定する重要性は診断適用を超える(3)。T細胞のモニタリングは、ウイルスもしくは腫瘍特異的な免疫をブーストすることを、または自己組織(4)もしくは移植組織(5)に対する免疫を消失させることを目的とした、免疫調節療法を評価するためにも必要とされる。補充タンパク質(例えば凝固因子)(6)またはワクチン(7)の免疫原性能を評価するためのT細胞スクリーニングツールも等しく要求される。
【0172】
慣用的なヒトT細胞アッセイがないのは、T細胞応答を測定することが本質的に困難であることに起因する。所与のAgに特異的なT細胞は、血中に非常に低い頻度で存在する(すなわち0.1〜0.001%)(8)。これらの細胞はex vivoにおいて時折検出可能であるが、その稀少さは、酵素結合イムノスポット(ELISpot)およびフローサイトメトリーなどの技術の感度に挑戦する。あるいは、これらの細胞の頻度を、事前の増殖工程によって増大させることができるが、これらは追加の時間および操作を必要とする。T細胞レセプターによる提示および認識のためにヒト白血球Ag(HLA)分子に結合するエピトープペプチドが、T細胞応答を誘起するために頻繁に使用される。なぜなら、それらはAg提示細胞(APCs)による処理を必要としないからである。T細胞活性化のためのこの最初の律速工程を迂回するが、エピトープはそれにも関わらず、T細胞を刺激するための特異的なHLA分子に結合するとして予め同定される必要がある。さらに、ペプチドは、選択されたAg配列に対するT細胞応答の限定されたレパートリーを刺激する。
【0173】
樹状細胞(DC)は、匹敵するもののない処理特性および刺激特性を与えられた特殊なAPCである(9)。これらの特徴は、T細胞活性化をブーストし、従って、in vitroにおいてAg特異的T細胞の検出を増強するために、前記樹状細胞を魅力的なものとする。この目的を達成するために、DCは単球前駆体から慣用的には誘導され、手順は、最も一般的には顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびインターロイキン(IL)−4を用いての6日間の分化(10、11)、および一連の炎症誘発刺激を用いての少なくともさらにもう1日間かけての成熟を必要とし、これにより完全なT細胞刺激能が達成される(10〜12)。これらの時間の必要条件は、臨床実験慣行とは相容れない。より短いプロトコールが記載されているが(13)、それらは依然としてCD14+単球の事前の単離を必要とし、従って、血液必要量および手作業の仕事が非常に増える。
【0174】
これらの限界を克服するために、本発明者らは、DCを誘導および成熟させて、末梢血単核球(PBMC)中のin situにおいてAg提示およびT細胞活性化を促進することができるかどうかを調べた。このアプローチの利点は2つである。一方で、それは時間、精製工程および血液必要量を減少させるだろう。他方で、それは分化DCとリンパ球を接触させたままの状態とし、従ってAg処理、提示およびDC成熟が起こるようにT細胞を刺激するだろう。これらのDCが、同族のTリンパ球および他の血液細胞によって囲まれながら48時間以内に誘導およびAgパルスされるので、それらは促進された共培養DC(acDC)と呼ばれる。結果として、本発明者らは、多種多様なアッセイプラットフォームで検出されるAg特異的T細胞応答を増幅する、効率的で短時間の手順を開発した。
【0175】
結果
acDCはAg特異的T細胞応答を増幅する
acDCが共培養T細胞のAg特異的応答を増幅し得るかどうかを調べるために、acDCを、GM−CSFおよびIL−4によって24時間かけてPBMC混合物内において誘導した。同時に、異なるタンパク質Ag[例えば、破傷風トキソイド(TTX)、M. tuberculosis精製タンパク質誘導体(PPD)、6価ワクチンまたは無Ag]を培養開始時から加えた。さらに24時間の成熟の後、非接着細胞を、抗インターフェロン(IFN)−γ捕捉Abでコーティングされた酵素結合イムノスポット(ELISpot)プレートに移し、そして追加のAgまたはサイトカインの補充を行なうことなくさらに6時間かけて培養した(図解については、図7を参照されたい)。
【0176】
最も適切な成熟プロトコールを選択するために、本発明者らは最初に、異なる刺激で成熟させたacDCの刺激能を、サイトカインの非存在下において培養したPBMCの刺激能とを比較した(図1a)。ELISpot IFN−γ応答は、種々のプロトコールによって成熟させたacDCによって有意に増幅された。最も効果的であったのは、腫瘍壊死因子(TNF)−α/プロスタグランジン(PG)E2/IL−1β(PBMCのみよりも、42.0%のシグナルの増加;p=0.03)、ポリイノシン・ポリシチジン酸(ポリI:C)(69.3%のシグナル増加;p<0.001)、リポ多糖(LPS;55.2%の増加、p=0.01)、および抗CD40/IFN−α(170%の増加、p<0.001)であった。重要なことに、全てのこれらのプロトコールは、Ag特異的IFN−γシグナルを増加させたが、バックグラウンドは増加させず、従って、サイトカインによる非特異的T細胞活性化は除外される。Agの非存在下においてサイトカインに曝されたまたは曝されていないPBMCに由来するT細胞中の活性化マーカー(すなわちCD69、CD25、CD137)のアップレギュレーションがないことは、さらに非特異的活性化を除外した(データは示さず;CD137については図5参照)。他の成熟混液は、Ag特異的シグナル(TNF−α/PGE2、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、ポリI:C/PGE2、抗CD40、抗CD40/IFN−γ)を増幅しなかったか、またはそれらがバックグラウンド(抗CD40/IL−1β)の有意な増加と共に増幅させたためのいずれかのために、除外された。
【0177】
ヒトacDCは、IFN−γ分泌応答を増幅できただけでなく、ELISpotによって検出される他のサイトカイン応答も増幅させることができた(図1b〜d)。抗CD40/IFN−α成熟はIFN−γを最も増幅させたが(2.7倍)、TNF−α/PGE2/IL−1βは、試験した全てのサイトカイン応答をブーストした唯一の組合せであった(IFN−γ、IL−10およびIL−4のぞれぞれについて1.2倍、50.0倍および2.9倍)。それ故、これらの2つの成熟混液を保持した。IL−17応答はこれらのいずれのプロトコールによっても増幅されなかった(データは示さず)。さらに、TTX記憶応答だけが有意にバックグラウンドを超え、KLH neoAgに対するナイーブ応答はそうではなかった(図1b〜d)。
【0178】
acDCによるT細胞応答の増幅はまた、成熟のためのGM−CSF/IL−4、次いでLPSと共にインキュベーションしたマウス単核球血液細胞を用いて得られた。1回の低用量のキーホールリムペットヘモシアニン(KLH)を用いて免疫化されたマウスからの細胞は、acDCサイトカインの存在下において有意により高いKLH特異的IFN−γELISpot想起応答を示した(図8)。
【0179】
acDCの特徴付けにより、慣用的な単球由来DC(moDCs)と同一な表現型が判明した(図2a)。CD14ダウンレギュレーションは、HLA−DRおよび共刺激分子の増加した発現と平行して起こったが、デキストラン取り込みは、moDCにおいてより効率的であったが、成熟時に減少した。acDCはまた、Ag特異的T細胞応答の誘起においてmoDCと少なくとも同程度に効率的であった(図2b)。予期した通り、acDCおよびmoDCの両方が、炎症誘発刺激を用いての刺激後により効率的であった(図2b)。
【0180】
acDCにより増幅されたT細胞応答の再現性
再現性を、同じPBMC調製物(すなわち、分析レベルにおけるアッセイ間変動性、これは採血および処理によって導入される差異を除外する;図2c)および同じ個体からの異なる時機に採取した血液に由来するPBMC調製物(すなわち、分析前レベルおよび分析レベルにおけるアッセイ間変動性、これは採血および処理に起因する差異を含む;図2d)からの異なる凍結細胞アリコートを試験することによって、再現性を評価した。両方の場合において、アッセイ変動度は10%未満であった。顕著には、新鮮な試料と凍結した試料との間の変動(6.9%)も小さかった(図2e)。
【0181】
acDCによって増殖されたAg特異的T細胞を単離およびクローニングすることができる
Ag特異的T細胞を選択および増殖するために、細胞に結合するダイであるカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFSE)の希釈液を、増殖の解読値として使用し(14)、そしてacDC手順と併用した(図3a)。PBMCを最初にCFSEで標識し、その後、acDCにより増幅されたELISpot手順において使用した。それらをELISpotプレートから回収し、そしてさらに操作を行なうことなくさらに6〜8時間かけて培養した。その後、増殖している(CFSE低度)細胞をフローサイトメトリーによって同定し、単一細胞へと選別し、そして抗CD3Ab、IL−2およびIL−4を用いての3回の刺激を通してさらに増殖させた(15)。代表例を図3b〜dに示す。TTX特異的IFN−γELISpot応答が検出され(441個のIFN−γスポット形成細胞(SFC)/106個のPBMC;0.044%)(図3b)、これにより3.0%のTTX特異的CFSE(低度)画分が得られ、これは約68倍の増殖に対応する。acDC条件は、サイトカインの非存在下における慣用的な増殖よりも優れ、これは10倍少ないTTX特異的細胞を生じた(0.29%、p<0.001)。バックグラウンド増殖の有意な増加は全く観察されなかった(図3c)。TTX特異的CFSE(低度)画分(分裂細胞)を選別およびクローニングし、TTXvs対照でパルスしたDCの想起アッセイによって評価したところ、TTX特異的T細胞クローンが生成された(図3d)。
【0182】
ペプチドエピトープを用いての刺激、およびペプチド−HLAマルチマーで染色されたCD4+またはCD8+T細胞による検出の後に、類似の増殖が得られた(図9)。新鮮なPBMCを、acDCの非存在下または存在下においてペプチドで刺激した48時間後および7日後に、ex vivoにおいてHLAマルチマーで染色した。ex vivoにおいて検出されたHLA−A2拘束性Flu MP58〜66特異的CD8+T細胞(バックグラウンド染色を差し引いた後に0.063%)(図9a)を、ペプチド特異的刺激の48時間後ではなく7日後に増殖させた(サイトカインの非存在下において13.3倍vs0.54倍の増殖)(図9b)。Flu HA306〜318特異的HLA−DR4拘束性CD4+T細胞を分析することによって類似の結果が得られた。ex vivoにおけるペプチド特異的CD4+T細胞の頻度(バックグラウンドを差し引いた後に0.24%)(図9c)は、培養の7日後のみにおいてペプチド特異的増殖時に、およびacDC混液を使用した場合にのみ増加した(サイトカインの非存在下において13.5倍vs0.79倍の増殖)(図9d)。共に、これらのデータは、acDCが、より長い培養時にAg特異的T細胞の増殖を有意に増強し、そしてacDCにより増幅されたT細胞応答がAg特異的であることを示す。
【0183】
タンパク質およびペプチドAgは異なるT細胞応答をトリガーする
次に、本発明者らは、タンパク質およびペプチドAgでパルスされたacDCによるT細胞刺激を比較した。タンパク質Agを使用した場合、IFN−γELISpotによって追跡される48時間のacDC培養液中に誘起される応答は、専らCD4+T細胞を起源とした。なぜなら、刺激開始時または終了時のいずれかにおけるその枯渇は完全に応答を消失させたからである(図4a)。同じことがmoDCにも該当し、このことは、この特徴が、acDCに特有ではなかったことを実証する。弱いCD8+T細胞活性化は、48時間の培養中に取り込まれたAgの非効率的な交差提示に起因する可能性が高かった。従って、タンパク質Agを、HLAクラスIIまたはクラスI拘束性ペプチドエピトープによって置換した場合、CD4+およびCD8+T細胞応答がそれぞれトリガーされ(図4b)、ここでもCD4+およびCD8+T細胞の枯渇によって確認された(示さず)。さらに、両方のタイプの応答が、慣用的なPBMCと比較してacDCによって有意に増幅され(それぞれCD4+およびCD8+T細胞について3.2倍および6.3倍;p<0.05)、このことは、タンパク質およびペプチドAgの両方におけるacDC技術の有用性を実証する。
【0184】
acDCにより増幅されたELISpotによって検出されるAg特異的CD4+T細胞は主に記憶細胞であった。なぜなら、CD45RO+(CD45RA+ではなく)T細胞の枯渇が、応答を有意に減少させたからである(81.4%の減少、p<0.05;図4c)。これは、想起Ag TTXに対する応答と、neoAg KLHに対する応答とを比較することによって確認された。実際に、KLHは、48時間のacDC刺激中に有意なIFN−γまたはIL−10のT細胞応答を誘起しなかった(図4d)。しかしながら、これらの細胞(最初にCFSE標識された)をさらにもう1週間かけて培養した場合、低いグレードのKLH特異的CD4+応答が検出された(図4e)。さらに、TTX特異的CD8+T細胞も観察され、このことは交差提示がより長い刺激で起こったことを示唆する。
【0185】
acDCはPBMCまたは全血中のいずれかにおいて異なるT細胞応答を増強する
本発明者らは、acDC増幅が、精製PBMCを使用した他の機能的T細胞解読値にも適用されるかどうかをさらに調べた。IFN−γ分泌を、CD45(免疫細胞の表面に結合する)およびIFN−γに対する二重特異的mAbを用いての捕捉アッセイ(Miltenyi)によって検出した(図5a)。サイトカインの非存在下において有意なTTX特異的IFN−γ分泌は検出されなかった。しかしながら、IFN−γは、acDC増幅後のCD4+およびCD8+T細胞上の両方に検出され、バックグラウンドの増加は検出されなかった。IFN−γ+T細胞の数は、ELISpotによって検出されたものよりも高く、これは何故CD8+T細胞応答も可視化されたのかを説明し得る。T細胞活性化マーカーであるCD137の表面発現を用いて類似の結果が得られた(16、17)(図5b)。両方の解読値はまた、Ag特異的T細胞の下流の選別およびクローニングに適合性であった(データは示さず)。
【0186】
次に、本発明者らは、acDCが、全血中のAg特異的T細胞応答を増幅し得るかどうかを調べた。これらの実験は、図5bに示した精製PBMCに対するものと平行して、同じ採血を使用して、acDC混液(GM−CSF/IL−4、次いで抗CD40/IFN−α)を未希釈のヘパリン処理血液(250μl)にAgと共に直接加えることによって実施された。48時間後、溶血した血液を、CD137発現のフローサイトメトリー分析によってT細胞活性化について調べた(図5c)。CD137アップレギュレーションは、サイトカインを全く加えなかった場合に、精製PBMCよりも全血においてより高い感度で検出されたが、acDC条件については逆であった。全血でのacDCによって得られたより低度の増幅は、それにも関わらず、CD8+T細胞応答ではなく、CD4+T細胞応答を増強するのに十分であった。
【0187】
acDCは、全血中のAgにより刺激されるサイトカイン分泌を増幅する
最後に、本発明者らは、acDC増幅が、全血刺激後に回収した血漿でのAg特異的な大容量のサイトカイン分泌を検出できるかどうかを探索した。この目的を達成するために、ヘパリン処理した全血を、acDC混液(GM−CSF/IL−4、次に抗CD40/IFN−α)およびAgと共に上記のようにインキュベーションした。48時間後、血漿上清をサイトカイン測定のために回収した。いくつかのサイトカインが、Ag刺激時に有意な増加を示した(図6a)。マクロファージ炎症タンパク質(MIP)−1αを除いて、正味の(すなわちバックグラウンドを差し引いた)Ag特異的シグナルは、全てのマーカーについて「サイトカインなし」の条件よりもacDCにおいての方がより高かった(シグナル増幅の中央値、6.1倍;3.6〜41.9の範囲;p<0.001)。重要なことには、基礎分泌はacDC暴露時に増加せず、そしていくつかの場合には減少さえし、Ag特異的増幅効果を示す。CD137のアップレギュレーションについて本発明者らは、全血およびPBMC中におけるサイトカインの検出の感度を比較した(図6b)。サイトカインは、全血よりもPBMCを用いての方がより高い感度で検出され、濃度の中央値は、PBMCよりも約4倍高かった(1.0〜34.0の範囲;p<0.001)。
【0188】
驚くべきことに、T細胞によって分泌されることが知られていないいくつかのサイトカイン(G−CSF、IL−1β)もまた、Ag特異的活性化のマーカーとして挙動した。細胞内サイトカイン染色はさらに、Ag特異的IL−1βの分泌が、非接着細胞からではなく接着細胞に由来することを示した(図10)。
【0189】
考察
DCの治療能は、疾病に関連したAgに対する免疫原性または免疫寛容誘発T細胞応答を誘導するために活発に探索されている(18、19)。しかしながら、その強力なAg処理および提示特性にも関わらず、DCは、T細胞診断のためには活用されていない。これは、近づける循環DCの頻度が低いことによって、並びに単球および他の前駆体から開始してDC型APCを生成するのに必要とされる多くの血液容量によって示される拘束におそらく起因する。acDC技術は、慣用的な実験適用に受け入れられる短くて簡単な方法でAg特異的T細胞応答を増幅する手段を提供することによってこの欠陥を充足する。acDCとmoDCとを並べて比較することにより、表現型および刺激能の点の両方において顕著な類似性が判明した。acDCの顕著な利点は、未分画PBMCまたは全血のより生理学的設定において48時間以内にin situで生成されることである。さらに、試料必要量は最小限であり、僅かに106個のPBMC(約1mlの血液)または250μlの全血が必要とされるだけである。これは、特に小児におけるT細胞応答の長期モニタリングにおいて重要な考慮すべき事柄であり、そしてT細胞エピトープのためのペプチドライブラリーをスクリーニングする際の明確な利点である。
【0190】
大容量の培養において、acDCの誘導およびAgでのパルスを、T細胞の同時活性化(Ag特異的な)と共役させ、よってT細胞応答に至る3つの重要な工程を確保する。このタイプのアッセイにおける可能性ある問題は、acDCを誘導および成熟させるのに使用されるサイトカインによる非特異的なT細胞の活性化である。しかしながら、これは実情ではなかった。なぜなら、T細胞解読値(増殖、CD137のアップレギュレーション、サイトカインの分泌)についての基礎値は、acDCプロトコールによって僅かにしか影響を受けなかったからである。バックグラウンド値の限られた(10倍までの)増加が、以前に実証されたように、稀な(0.001%の頻度)T細胞応答の検出を妨げないことが関連している(20)。Ag提示acDCと応答するT細胞との間の掛け合い応答が、さらに相乗作用してAg特異的応答を増幅させることが可能である。acDCに基づいたアッセイにおいて検出される応答は真にAg特異的であった。なぜならin vitroにおいて増殖した選別されたT細胞がAg特異性を保持していたからである。他方で、HLA−ペプチドエピトープマルチマー研究は、T細胞前駆体の頻度が、acDCにより引き起こされるAg刺激の開始から48時間後まで増加しなかったことを実証した。それにも関わらず、活性化(CD137+)T細胞の数は、すでに48時間後までに増加した。このことは、機能的解読値によって検出されるようなAg特異的応答が、傍観者活性化機序によって拡大および判明することを示唆する。T細胞前駆体の頻度の正確な計測を必要とする研究設定のために、CFSE希釈度を、HLAマルチマー染色と共役させて、増殖T細胞の最初の数を決定することができた(21)。慣用的な臨床適用のために、48時間以内に得られたような増幅された解読値で十分であろう。
【0191】
acDC技術は、完全タンパク質Agおよびペプチドエピトープの両方のために役立つ。タンパク質Agは、エピトープ同定およびHLAタイプに基づいた患者の選択の必要性を排除する。さらに、それらは、処理されたエピトープの全レパートリーを用いての刺激を可能とする。DCの高いエンドサイトーシス能およびAg処理能により、acDCアッセイ(ドナー、腫瘍または自己免疫ターゲティング組織などの細胞材料をAg源として使用する)もまた想定することができた。acDCを成熟させるのに使用した刺激もまた重要なパラメーターであった。以前に報告したように(12)、抗CD40およびIFN−αはGM−CSF/IL−4と共に、IFN−γ産生Tヘルパー(Th)1応答をより効率的に増幅したが、TNFαおよびIL−1βをPGE2と合わせたものは(22)、より平衡のとれた表現型をもたらし、Th2(IL−4)および制御性T(IL−10)応答のより良好な検出を可能とした。
【0192】
acDC技術は、多種多様なT細胞解読値と適合性であり、そのいくつかはさらなる増殖および/または特徴付けのためにAg特異的細胞の下流の選別を用いて実行することができる。acDC技術の多用性は、単一細胞(サイトカインELISpot、CFSE増殖、IFN−γ捕捉、CD137アップレギュレーション、HLAマルチマー)およびバルク(血漿または培養上清中のサイトカイン)アッセイによって例示された。これらの異なるacDCアッセイフォーマットの感度は、各適用のために評価する必要がある。単一細胞アッセイがしばしば好ましい。なぜなら、それらは応答するT細胞の頻度および表現型についての情報を提供し、そしてバルクアッセイよりも頻繁により感度が高いからである。それにも関わらず、バルクアッセイは慣用的な設定において実施し易く、そしてその検出感度は、M. tuberculosisのためのIFN−γ酵素結合イムノソルベントアッセイの場合のように、多くの適用のために十分であり得る(23)。同様に、全血を使用するアッセイはPBMCの精製を回避し、従って、細胞をより生理学的な環境に保持し、そしてさらなる簡便性を提供する。acDC培養液からのサイトカインは、全血よりもPBMCを用いての方がより高い感度で見かけ上は検出されたが、差異は一部には、血液およびPBMC中における異なる細胞およびその濃度に起因し得る。実際に、PBMCを、5×103個の細胞/μlの最適濃度で再懸濁し、250μl/試料の全血の容量は、約1×103個のPBMC/μlに相当した。従って、精製PBMCは、血液細胞よりも約5倍濃縮されていた。
【0193】
バルクアッセイからの興味深い結果は、T細胞に由来しない、G−CSFおよびIL−1βの刺激された分泌であった。これらのサイトカインは、接着細胞および非接着細胞に対して実施されるIL−1β ELISpotアッセイによって示唆されるように、接着APCによって産生されたようである。Ag提示acDCと対応するT細胞との間の正のフィードバックループはさらにacDCを活性化させ得、それらを誘導してAg特異的にサインサイトカインを分泌させ得る。従って、APC由来サイトカインは、T細胞応答の価値ある間接的なバイオマーカーを構成し得る。
【0194】
in vitroにおいてacDC表現型を歪めることもまた、異なる特性を有するAg特異的T細胞を誘導する方法を提供し得る。例えば、IL−10処理DCは免疫寛容誘発性であり、そして制御特性を有するCD4+およびCD8+T細胞を生じ得る(24、25)。従って、IL−10の存在下におけるacDC刺激は、Ag特異的制御性T細胞を得る戦略を提供する。
【0195】
方法
抗原。以下のAgを使用した:ウシ血清アルブミン(BSA; Sigma, Lyon, France)、TTX(Dr. Rino Rappuoliの親切なる贈り物、Novartis, Siena, Italy)、M. tubercolosis PPD(Tubertest, Sanofi Pasteur, Lyon, France)、6価ワクチン(インファンリックスヘキサ、GlaxoSmithKline, Rixensart, Belgium)およびKLH(Sigma)。Ag純度はSDS−PAGEによって確認され、そしてエンドトキシン濃度はLumulus溶解液アッセイ(Lonza, Saint Beauzire, France)によって0.035EU/μg未満であった。ペプチドFlu MP58〜66およびFlu HA306〜318は、95%超で純粋であった(GL Biochem, Shanghai, China)。
【0196】
PBMC中におけるacDCの誘導。研究は倫理委員会によって承認され、そして全ての被験者は書面によるインフォームドコンセントを提出した。PBMCを単離し、そして記載の通りに新鮮なまままたは凍結させてのいずれかで使用した(26)。0日後に、PBMCを、96ウェルの平底プレートの、1000U/mlのGM−CSF、500U/mlのIL−4(R&D, Lille, France)の補充され、そしたタンパク質Ag(0.1〜10μg/ml)を含むAIM−V培地中に播種した(106個の細胞/100μl/ウェル)。24時間後(1日後)、種々の組合せで以下の試薬を含む、成熟刺激を加えた(図1c参照):1000U/mlのTNF−α、10ng/mlのIL−1β、1000U/mlのIFN−γ(全てR&Dから)、1μMのPGE2(Calbiochem, San Diego, CA);CpG ODN2216(5μg/ml;Cell Sciences, Canton, MA)、ポリI:C(20μg/ml;Cayla/InvivoGen, Toulouse, France)、LPS(100ng/ml;E. coli 055:B5から、Sigma)、抗CD40Ab(10μg/ml;クローンG28.5、社内で産生)、IFN−α−2a(1000U/ml;Roferon-A, Roche, Neuilly-sur-Seine, France)。各実験において使用される成熟混液を図の説明文において詳述する。IL−7(0.5ng/ml;R&D)を成熟刺激と共に加えた(26)。使用した場合、ペプチドAgを1日後に成熟刺激と共に加えた。2日後に(培養開始から48時間後)、非接着細胞を回収し、洗浄し、そして分析した。
【0197】
全血中におけるacDCの誘導。新鮮で希釈されていないヘパリン処理血液(250μl)を、1.5mlのチューブに分配し、サイトカインおよびAgをPBMC刺激のために加え、そして溶血した血液および/または血漿上清を48時間後に分析した。
【0198】
DC特徴付け。moDCを生成するために、精製単球をGM−CSF/IL−4と共に6日間かけて培養し、そしてTNF−α/PGE2/IL−1βを用いてさらに24時間かけて成熟させた。acDCおよび7日後のmoDCの表現型を、HLA−DR、CD14、CD80、CD86およびCD11c(BD)に特異的なAbsで染色することによって決定した。エンドサイトーシス活性を、デキストラン−FITC蛍光取り込みによって評価した。フローサイトメトリー実験を、488、633および407nmレーザー(BD)の備え付けられたFACSAriaで実施した。
【0199】
ELISpotアッセイ。PBMC中におけるacDCの48時間のインキュベーション後に、非接着細胞を洗浄し、新鮮なAIM−Vに再懸濁し、そして記載のように6時間かけてアッセイした(27)。スポットをBioreader5000Pro−SF(BioSys, Karben, Germany)で計測し、3〜6つのリプレケートの平均を決定した。ELISpot解読値をSFC/106個のPBMCとして表現し、そしてバックグラウンドを差し引く(BSAの存在下またはAgの非存在下における自発的応答について、これは全ての場合において同一であった)(27)。
【0200】
CFSEアッセイおよびT細胞クローニング。PBMCを、0.1μMのCFSE(Invitrogen/Molecular Probes)で染色し、そして前記したようにacDC培養液のために使用した。2日後、非接着細胞を洗浄し、EliSpotプレートに6時間かけて移し、その後、96ウェルU底プレート中に再度播種した。5〜8日間培養した後、細胞をCD4/CD8について染色した。単一のCD4+CFSEdim細胞を、96ウェルU底プレートの各ウェルに選別した。各ウェルは、2つの関連していないドナーからの、IL−2(20U/ml;R&D)、IL−4(5ng/ml)、抗CD3(OKT3、30ng/ml)、および2×105個の照射PBMCを含んでいた(15)。細胞に、7日間毎に新鮮なサイトカインを与えた。成長しているクローンを、AgでパルスされたまたはパルスされていないmoDCと共にインキュベーションした後、細胞内IFN−γ染色によって約3週間後に試験した。
【0201】
IFN−γ捕捉およびCD137アップレギュレーションアッセイ。IFN−γ捕捉を、MiltenyiIFN−γアロフィコシアニンキットを使用して実施した。CD137を、フィコエリトリン(PE)標識4B4 Ab(BD)で染色した。
【0202】
HLAマルチマーアッセイ。Flu MP58〜66または対照ペプチド(ProImmune, Oxford, UK)をローディングしたPE標識HLA−A0201ペンタマーを、製造業者の指示に従って使用した。Flu HA306〜318または対照ペプチドのローディングされたPE標識HLA−DR0401テトラマーはDrs. E. JamesおよびG.T. Nepom (Benaroya Research Institute, Seattle, WA)によって親切にも提供され、そして記載の通りに使用した(28)。
【0203】
マウスacDC刺激。Balb/cマウスに、尾の付け根に完全フロイントアジュバント中の50μgのKLHを用いて皮下に免疫化した。14日後、血液細胞を収集し、溶血し、そして48ウェルプレート(2×106個の細胞/ウェル)に播種した。マウスGM−CSFおよびIL−4(R&D)を、KLH(0.1μg/ml)と共にまたは非存在下においてヒトacDCに対して加え;LPS(10ng/ml)を1日後に加え、そしてELISpotアッセイを記載のように2日後に実施した(27)。
【0204】
サイトカインマルチプレックスアッセイ。48時間後のacDC培養液からの上清を、以下のサイトカインおよびケモカイン:G−CSF、GM−CSF、IFN−γ、IL−1β、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−13、IL−17、MIP−1α、MIP−1βおよびTNF−αを含むMilliplexパネル(Millipore/Abacus, Brisbane, QLD, Australia)を使用して、Luminexプラットフォーム(Bio-Plex 200, Bio-Rad, Gladesville, NSW, Australia)で分析した。
【0205】
統計学的分析。全てのグラフは、3つ以上の独立した実験の平均±SEMとして提示する。全ての統計学的分析は両側であり、そしてGraphPad Prism 5 (La Jolla, CA)を使用して可変分布および試料サイズに従って実施した。
【0206】
【表1】
【0207】
参考文献
本出願全体を通じて、種々の参考文献は、本発明が属する当技術分野の最新技術を記載する。これらの参考文献の開示は本明細書において本開示への参照により組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)樹状細胞(DC)の分化を誘導する培地中において血液試料または末梢血単核球(PBMC)試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること
ここで、抗原(Ag)を、工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、被験体から単離した血液試料またはPBMC試料中においてAg特異的T細胞応答を刺激するための方法。
【請求項2】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記被験体において疾病を診断するための方法。
【請求項3】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、疾病を患う前記被験体において免疫療法の効果をモニタリングするための方法。
【請求項4】
前記疾病が、自己免疫疾病、例えば1型糖尿病(T1D)、ウェゲナー肉芽腫症、クローン病、セリアック病および多発性硬化症;癌疾病、例えばメラノーマ、大腸癌、腎臓癌および血液学的悪性疾患、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫;M. tuberculosis、HIV、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルスなどの感染病原体によって引き起こされる感染症;並びに移植片対宿主疾病からなる群より選択される、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、治療タンパク質を工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記治療タンパク質の免疫原性を評価するための方法。
【請求項6】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、候補Agまたはエピトープを工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、候補Agまたはエピトープをスクリーニングするための方法。
【請求項7】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)特異的な免疫学的特性を示す少なくとも1つのT細胞を単離すること
ここで、Agを工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を示すT細胞クローンを産生するための方法。
【請求項8】
以下の工程:
a)免疫寛容誘発特性を有するDCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)特異的な免疫学的特性を示す少なくとも1つのT細胞を単離すること
ここで、Agを工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を示すAg特異的制御性T細胞を生成するための方法。
【請求項9】
DCの分化を誘導する前記培地が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および/またはFlt−3リガンドを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
DCの分化を誘導する前記培地が、さらにインターロイキン4(IL−4)を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程a)を、約16時間〜約7日間、好ましくは約20時間〜約4日間、さらにより好ましくは約24時間の間に含まれる時間t(a)をかけて行なう、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程b)を、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、プロスタグランジンE2(PGE2)、抗CD40抗体、インターフェロン−α2a(IFN−α 2a)、リポ多糖(LPS)、ポリイノシン・ポリシチジン酸(ポリI:C)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−7(IL−7)およびその混合物からなる群より選択される、少なくとも1つの炎症誘発刺激および/またはウイルスもしくは細菌の攻撃を模倣する物質の存在下において行なう、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記方法が工程b)を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程b)を、約12〜約72時間、好ましくは約16〜約48時間、さらにより好ましくは約24時間の間に含まれる時間t(b)をかけて行なう、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記の生物学的試料が、PBMC試料である、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記の生物学的試料が血液試料である、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
以下の工程:
a)樹状細胞(DC)の分化を誘導する培地中において血液試料または末梢血単核球(PBMC)試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること
ここで、抗原(Ag)を、工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、被験体から単離した血液試料またはPBMC試料中においてAg特異的T細胞応答を刺激するための方法。
【請求項2】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記被験体において疾病を診断するための方法。
【請求項3】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、1つ以上の疾病に関連したAgを、工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、疾病を患う前記被験体において免疫療法の効果をモニタリングするための方法。
【請求項4】
前記疾病が、自己免疫疾病、例えば1型糖尿病(T1D)、ウェゲナー肉芽腫症、クローン病、セリアック病および多発性硬化症;癌疾病、例えばメラノーマ、大腸癌、腎臓癌および血液学的悪性疾患、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫;M. tuberculosis、HIV、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、インフルエンザウイルスなどの感染病原体によって引き起こされる感染症;並びに移植片対宿主疾病からなる群より選択される、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、治療タンパク質を工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記治療タンパク質の免疫原性を評価するための方法。
【請求項6】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)T細胞応答を検出すること
ここで、候補Agまたはエピトープを工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、候補Agまたはエピトープをスクリーニングするための方法。
【請求項7】
以下の工程:
a)DCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)特異的な免疫学的特性を示す少なくとも1つのT細胞を単離すること
ここで、Agを工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を示すT細胞クローンを産生するための方法。
【請求項8】
以下の工程:
a)免疫寛容誘発特性を有するDCの分化を誘導する培地中において被験体から得た血液試料またはPBMC試料を培養すること;
b)場合により、前記DCを成熟させること;
c)特異的な免疫学的特性を示す少なくとも1つのT細胞を単離すること
ここで、Agを工程a)および/またはb)の間に加える
を含む、前記被験体から前記の特異的な免疫学的特性を示すAg特異的制御性T細胞を生成するための方法。
【請求項9】
DCの分化を誘導する前記培地が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および/またはFlt−3リガンドを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
DCの分化を誘導する前記培地が、さらにインターロイキン4(IL−4)を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程a)を、約16時間〜約7日間、好ましくは約20時間〜約4日間、さらにより好ましくは約24時間の間に含まれる時間t(a)をかけて行なう、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程b)を、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、プロスタグランジンE2(PGE2)、抗CD40抗体、インターフェロン−α2a(IFN−α 2a)、リポ多糖(LPS)、ポリイノシン・ポリシチジン酸(ポリI:C)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−7(IL−7)およびその混合物からなる群より選択される、少なくとも1つの炎症誘発刺激および/またはウイルスもしくは細菌の攻撃を模倣する物質の存在下において行なう、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記方法が工程b)を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程b)を、約12〜約72時間、好ましくは約16〜約48時間、さらにより好ましくは約24時間の間に含まれる時間t(b)をかけて行なう、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記の生物学的試料が、PBMC試料である、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記の生物学的試料が血液試料である、請求項1〜15のいずれか1項記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2012−523242(P2012−523242A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505147(P2012−505147)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054826
【国際公開番号】WO2010/119033
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054826
【国際公開番号】WO2010/119033
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】
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