説明

保冷バック

【課題】従来の保冷容器よりも、より効率的な使用を可能とする保冷バックを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は保冷バックであって、容器本体と容器本体の開口を開閉可能に覆う蓋部のうち少なくとも容器本体をエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体をシート状とした素材により形成したことを特徴とする。本発明の保冷バックは、従来の保冷容器等に用いられていた素材よりも高い保冷効果を有するエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を素材として構成されており、また、該素材はより高い保冷効果を備える状態でより高い強度および柔軟性を備えるため、袋状あるいは多面体状、球状等の様々な形状を有するように成形できる。また、例えば、非使用時には折り畳んで保管することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体をシート状の素材として、袋状あるいは多面体状、球状等の容器に形成した保冷バックに係り、特に繊維素材と同様にジッパー(登録商標)、面ファスナー(hook-and-loop fastener)等のファスナーを容器本体と、蓋体に縫い付けて容器の開閉を可能とする保冷バックに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品、チルド食品等の要冷凍物、冷蔵物を収容した保冷状態を少なくとも数時間維持できる保冷容器として種々のものが提案されている(例えば特許文献1)。当該保冷容器は、断熱性を有する発泡樹脂、例えば発泡スチロールや発泡ポリエチレンによって構成されており、その内部に冷凍物等が収容される。また、冷凍物等とともに、ドライアイスや蓄冷部材をその内部に収容することも、必要に応じて行われている。
【0003】
当該保冷容器は、一般に、上方が開口した方形である容器本体と、該容器本体の開口部を覆う蓋体とから構成されている。内部に冷凍物等を収容させるにあたっては、まず、蓋体を容器本体の上方から取り除いて容器の開口部を開放状態とし、該開口部を介して冷凍物等を容器本体内部に収めた後、再度蓋体を容器本体に装着して開口部を封する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−107655公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、従来の保冷容器においては、発泡スチロール製、発泡ポリエチレン製などの発泡樹脂を素材とするものや、アルミシート素材を用いたもの等があるが、発泡樹脂製の容器にあっては、容器の壁厚に厚みがあり、外形が大きい割に収容容積が小さい。また、例えば配達後や保管時などの不使用時にあっても、冷凍物等を収容した場合と同じだけの空間が必要となり、輸送効率および保管効率が悪い。
【0006】
さらに、発泡ポリエチレンからなるシート状素材あるいはアルミシート素材を用いた容器は破れやすく、複数回の使用には耐えられない。加えて、十分な強度がないためにジッパー(登録商標)等を縫い付けても、少しの荷重が加わっただけで糸によって切り裂かれてしまうため、開口部を開閉可能に密閉するために容器本体とは別体として蓋体を設ける必要があった。そのため、容器の形状が大きく限定されていた。
【0007】
すなわち、従来の保冷容器にあっては、使用における効率性に難点があった。
【0008】
本発明はこのような事情に基づきなされたものであり、より効率的な使用を可能とする、保冷バックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、容器本体と容器本体の開口を開閉可能に覆う蓋部のうち少なくとも容器本体をエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体をシート状とした素材により形成した保冷バックである。ここで、容器本体と蓋部とにファスナーを縫い付けて該蓋体を開閉可能であるようにしてもよい。さらに、エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体の発泡倍率の上限が20倍であるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の他の態様は、シート状のエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体により形成される収容部を備える保冷バックである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも容器本体または収容部が従来の素材よりも保冷効果が高く、また、より高い強度を備えるエチレン−オクテン重合体の発泡体を用いて構成されているため、より効率的な使用が可能である保冷バックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の保冷バックの斜視図である。
【図2】本実施形態の保冷バックの斜視図である。
【図3】本実施形態の保冷バックの保冷効果を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の1つについて、図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の保冷バック1の斜視図である。
【0015】
本実施形態の保冷バック1は、エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体をシート状とした素材を縫い合わせて方形状に成形されており、容器本体3と、蓋部5とにより構成されている。容器本体はそのうちの1つの面(以下、上面と称す)において開口しており、該開口部7のうち1辺(辺9)が蓋部5と連結して一体化している。したがって、当該辺9を軸として蓋部5を回動させることにより、容器本体3の開口部7を覆ったり、また、容器本体を開放の状態とすることができる。言い換えれば、蓋部5の回動により開放される容器本体内部が、バック内に収容される物品の収容部となる。
【0016】
また、上面のうち他の3辺においては、図1のA部から理解されるとおり、容器本体1と蓋部3に対し、ジッパー13(ファスナーに相当)が縫い付けられている。したがって使用者は、当該ジッパー13をつまんで動かすことにより、蓋部5を開閉可能とすることができる。
【0017】
なお、保冷バック1の寸法については特に限定されず、当業者が適宜設定できるが、例えば長さ方向(B)50cm、幅方向(W)60cm、および高さ(H)40cmとすることができる。
【0018】
次に、本実施形態の保冷バック1を構成する素材であるエチレンとα−オクテンの共重合体樹脂の発泡体について説明する。
【0019】
本実施形態の保冷バック1に係るエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体において、見かけ密度は、50〜140kg/mであり、より好ましくは70〜120kg/mである。見かけ密度が50g/mより小さい場合、範囲内にある場合よりも強度が不足し、補強が必要となる。また、見かけ密度が140kg/mより大きい場合、範囲内にある場合よりも重量が増加してしまう。なお、発泡体の見かけ密度は、JISK6767に従い測定することができる。また、発泡体の見かけ密度の値は、例えば発泡剤の添加量によって調整することができる。
【0020】
また、本実施形態の保冷バック1に係るエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体において、発泡倍率の上限は20倍であることが好ましく、15倍であることがより好ましく、10倍であることがさらにより好ましい。発泡倍率が20倍よりも大きいとき、20倍以下である場合と比較して強度が低下し、補強が必要となる。また、発泡倍率の下限値については特に限定されないが、例えば8倍とすることができる。下限値を8倍とすることで、より高い断熱効果を備えることができる。なお、発泡倍率は、JISK6767に従い測定することができ、また、その値は、発泡剤の添加量等により調整可能である。
【0021】
本実施形態の保冷バック1は、シート状に成形されたエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を縫製した容器本体3と蓋部5とを成形するとともに、蓋部5と容器本体3に対しジッパー13を縫い付けることにより構成することができる。なお、縫製に用いる糸についても特に限定されないが、例えばポリエステルやナイロンとすることができる。
【0022】
また、シート状に成形されたエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体の製造方法についても特に限定されず、重合体樹脂の発泡体を得るための常法に従い共重合体樹脂の発泡体を得るとともに該発泡体をシート状に成形することで、製造することができる。例えば、エチレン−オクテン共重合体樹脂と、発泡剤とを混連し、成形することにより得ることができる。また、発泡剤に加えて、発泡助剤、充填剤、架橋剤等を混連するようにしてもよい。具体的には、エチレン−オクテン共重合体樹脂、発泡剤、発泡助剤、充填剤、架橋剤を、該架橋剤の分解温度以下でバンバリーミキサー、ロール或いは単軸または多軸押出機等を用いて溶融混練し、最終的に所要形状のダイスを介して押し出すことでシート形状の洗車ブラシ片に成形することにより製造することができる。
【0023】
本実施形態に係る発泡剤としては特に限定されず、化学系発泡剤である無機または有機発泡剤のいずれも使用することができ、また、物理系発泡剤であってもよい。化学系発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジニトロソテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびスルホニルヒドラジド類等が挙げられる。これらの中ではアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびスルホニルヒドラジド類が好ましい。また、物理発泡剤としては、プロパン、ブタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、窒素、炭酸ガス、空気等の無機ガスがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用してよい。発泡剤の配合量は当業者が適宜設定可能であるが、例えばエチレン−オクテン共重合体樹脂100質量部に対して3〜10質量部とすることができる。
【0024】
また、化学系発泡剤を用いる場合には、発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤については、使用される化学系発泡剤に合わせて当業者が適宜設定可能であるが、例えば尿素を主成分とする化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、各種脂肪酸または各種脂肪酸の金属塩等とすることができる。
【0025】
また、充填剤としては、カーボンブラック、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、または各種金属酸化物等を混合することができる。充填剤を混合することにより、発泡体の特性を改善することができ、特にカーボンブラック、軽質炭酸カルシウム、または重質の炭酸カルシウムがコスト低減に好適である。
【0026】
このほか、架橋剤についても当業者が適宜選択可能であるが、少なくともエチレン−オクテン共重合体樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有し、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してエチレン−オクテン共重合体樹脂の分子間に架橋結合を発生させる架橋剤とする。このような架橋剤としては、例えば有機過酸化物とすることができ、具体的には、例えばジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキシヘキセン、1,3−ビス−ターシャリーパーオキシイソプロピルベンゼン等が使用可能である。
【0027】
以上のようにエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を素材に用いて構成される本実施形態の保冷バック1は、従来の保冷容器等と比較して、より高い保冷効果を有する。そのため、従来の保冷容器等と比較して薄く成形することができる。また、エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体はより高い強度(具体的には、1.1〜1.4 MPAである引張強度)を有している。よって、縫製により製造することができるほか、ジッパー等の縫い付けも可能である。なお、引張強度は、JISK6767に従い測定することができる。さらに、本実施形態におけるエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体は、従来の保冷容器等に使用されていた素材と比較して、高い柔軟性を有する。
【0028】
よって、当該エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を素材に製造される本実施形態の保冷バックは、様々な形に成形可能であるため、収容できる容積を様々に設定することができるほか、容器本体の形状も限定されない。さらにまた、蓋部を容器本体と一体的な状態で設けることができるので、形状の限定をより少なくすることができる。
【0029】
加えて、本実施形態の保冷バック1によれば、例えば被冷却物が収容されないときには折り畳んで保管するような使用方法も可能であり、保管スペースを小さくすることができるほか、輸送コストを削減することも可能である。
【0030】
すなわち、本実施形態の保冷バック1は、従来の保冷容器等と比較して、極めて高い使用効率を有している。
【0031】
以上、本実施形態の保冷バック1について説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、他の態様とすることももちろん可能である。
【0032】
例えば、本実施形態においては容器本体3および蓋部5をエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を素材として構成しているが、これに限定されるものではなく、蓋部5を例えばアルミシートなどの異なる素材により構成するようにしてもよい。
【0033】
また、本実施形態の保冷バックはシート状のエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を縫製することで製造しているが、これに限定されるものではなく、他の方法によって製造されるようにしてもよい。例えば、複数のシート状のエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を接着剤の使用や熱融着により接着して袋状に成形して製造するようにしてもよい。
【0034】
また、蓋部を開閉可能とする手段としてジッパーを例に挙げたがこれに限定されず、他の手段によって開閉可能とされるようにしてもよい。また、本実施形態においては容器本体と蓋部とを一体的に形成しているが、分離できるように構成してもよい。
【0035】
さらに、保冷バックにおいて持ち手等の構成物品が付加された態様とすることももちろん可能である。このとき、本発明によれば、該持ち手等は、縫着により保冷バックに設けることができる。
【0036】
さらにまた、収容部においては、シート状のエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体によって構成されていればよく、容器本体の外側や内部において他の素材(例えばアルミシートなど)等が貼り付けられるなどしていてもよい。言い換えれば、容器本体が、エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体と、該発泡体とは異なる素材との多重構造により構成されるようにしてもよい。なお、エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体が断面視において複数重なるような多重構造とすることも、もちろん可能である。
【0037】
さらにまた、本実施形態においては蓋部5を設ける構成としているがこれに限定されるものではなく、蓋部を備えない構成として保冷バックを形成するようにしてもよい。例えば、シート状のチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を重ね合わせ、1辺を残して端部を接合して袋状に成形し、袋状の内部を物品の収容部とする保冷バックとしてもよい。このとき、残り1辺の内側にマジックテープ(登録商標)を縫い付け、収容部を開閉可能としてもよい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の保冷バックに係るエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体の保冷効果について、詳しく説明する。しかしながら、本実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0039】
(実施例)
エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体の構成
主原料として、エチレン−オクテン共重合体樹脂を用いた。また、該エチレン−オクテン共重合体樹脂100質量部に対して、各副原料を混合した。副原料としては、発泡剤としてのp,p'-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)を5質量部、架橋剤としてのDicumyl peroxideを3質量部、充填剤としての炭酸カルシウムを40質量部用いた。そして表面温度100℃のロール上で前述の主原料および副原料全てを混練して混合物とし、これを所要形状の金型内に充填し80kg/cm2で加圧プレスを行ない、温度145℃、45分間の条件で加熱して架橋発泡させて、シート状のエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体(大きさ1.000×2.000×40(mm))を得た。当該発泡体の見かけ密度は110kg/mであり、また、発泡倍率は10倍であった。
【0040】
上記のようにして得たシート状のエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体を2つ重ね、開口部となる部分を残して端部を熱融着によりシールし、袋状の保冷バックとした。
【0041】
(比較例)
市販のポリエチレンフォーム(厚さ5mm)を材料として実施例と同じ大きさの袋状とし、比較例1とした。また、アルミ/ポリエチレンフォーム(厚さ2mm)を材料として実施例と同じ大きさの袋状とし、比較例2とした。また、二色成形であるポリエチレンフォーム/ポリウレタンフォーム(厚さ5mm)を材料として同様に袋状に成形し、比較例3とした。
【0042】
実施例および比較例について、保冷効果に関する検討を行った。
【0043】
まず、蓄冷部材(高吸水性ポリマー)に温度ロガーを貼り付け、−10℃に設定された冷凍庫にて16時間以上凍らせた。次に、蓄冷部材を冷凍庫から取り出し、開口部を介して挿入することにより、実施例および比較例、それぞれの保冷バック内に収容した。続いて、蓄冷部材が収容された状態の各保冷バックを40℃の恒温槽に入れ、温度変化を測定した。
【0044】
結果を図3に示す。図3のように、実施例においては、比較例に比べて大きな温度上昇が見られず、300分経過後に測定された温度は14.2℃であった。一方、比較例はいずれも、特に240分経過後から温度が上昇し始め、300分後にはいずれも26℃を超えていた。
【符号の説明】
【0045】
1 保冷バック
3 容器本体
5 蓋部
7 開口部
13 ジッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と前記容器本体の開口を開閉可能に覆う蓋部のうち少なくとも前記容器本体をエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体をシート状とした素材により形成した保冷バック。
【請求項2】
前記容器本体と前記蓋部とにファスナーを縫い付けて該蓋体を開閉可能とする請求項1に記載の保冷バック。
【請求項3】
前記エチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体の発泡倍率の上限が20倍である請求項1または2に記載の保冷バック。
【請求項4】
シート状のエチレン−オクテン共重合体樹脂の発泡体により形成される収容部を備える保冷バック。





































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201554(P2011−201554A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67905(P2010−67905)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(509172701)ファインテック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】