説明

保冷・保温用装着具

【課題】使用者の欲する様々な部位に蓄熱部材をフィットするように配置することのできる保冷・保温用装着具を提供する。
【解決手段】少なくとも径方向が弾性的に伸長可能であって長手方向に延在するフレキシブルな略筒状体と、略筒状体の中に装填される蓄熱部材であって、当該蓄熱部材の幅方向のサイズが略筒状体の非伸長部の内径サイズよりも大きいように寸法構成されている扁平な蓄熱部材と、を備える保冷・保温用装着具であって、第一係合部が略筒状体の内面上に形成されるとともに、第二係合部が蓄熱部材の表面上に形成され、略筒状体の中に装填された蓄熱部材は、伸長している略筒状体からの弾性収縮力と、第一係合部及び第二係合部の間での係合構造とにより、略筒状体の中に位置決め保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の様々な部位を保冷・保温するための保冷・保温用装着具に関し、詳細には、使用者の欲する様々な部位に蓄熱部材をフィットするように配置することのできる保冷・保温用装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
身体の冷却又は加温すべき部位が平面であることは極めて稀であり、湾曲した曲面であることが多い。そして、特に、首や腰、肘や肩や膝等の関節部等の部位では、屈伸運動により、当該部位の外形形状が様々に変化する。冷却又は加温すべき部位の外形形状の変化に対応するべく、様々な保冷・保温用装着具が提案されている。
【0003】
従来の保冷・保温用装着具として、例えば、冷却又は加温の作用を有するシート体の表面に粘着剤を塗布して使用者の冷却又は加温すべき部位に貼着される貼着式のものがある。
【0004】
また、弾性的に伸長可能な本体に蓄熱材等を収納するための収納ポケットを備えたサポーター式のものが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−257049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の保冷・保温用装着具のうち、貼着式のものは、外形形状の変化に対する追従性・密着性に関しては良好であるが、シート体に塗布された粘着剤によって、貼着される部位がかぶれてしまう恐れがあるという問題がある。
【0007】
特許文献1に開示されているサポーターでは、矩形形状をした帯状の本体が弾性的に伸長可能な伸縮性基材から構成され、蓄冷剤を装填するための複数個の収納ポケットが設けられている。当該収納ポケットは、本体の上縁に開口が形成されるように、それ以外の部分を縫着して閉口している。しかしながら、収納ポケットを形成するための縫着部は、収納ポケットの領域を固定的に画定しており、本体が自在に伸縮することを規制・阻害するように作用する。その結果、矩形形状をした本体は、長手直交方向には屈曲可能であるものの、長手方向や幅方向に対しては自在に伸縮することができなくなっている。すなわち、矩形形状をした帯状の本体が弾性的に伸長可能であるという特性が十分に生かされておらず、様々な部位にフィットしづらいという問題がある。また、収納ポケットが形成されたところにしか蓄冷剤を装填することができないために、蓄冷剤を使用者の欲するところに配置することができないという問題がある。
【0008】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、使用者の欲する様々な部位に蓄熱部材をフィットするように配置することのできる保冷・保温用装着具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の保冷・保温用装着具が提供される。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1に係る保冷・保温用装着具では、
少なくとも径方向が弾性的に伸長可能であって長手方向に延在するフレキシブルな略筒状体と、
前記略筒状体の中に装填される蓄熱部材であって、当該蓄熱部材の幅方向のサイズが前記略筒状体の非伸長部の内径サイズよりも大きいように寸法構成されている扁平な蓄熱部材と、
を備える保冷・保温用装着具であって、
第一係合部が前記略筒状体の内面上に形成されるとともに、第二係合部が前記蓄熱部材の表面上に形成され、
前記略筒状体の中に装填された蓄熱部材は、伸長している前記略筒状体からの弾性収縮力と、前記第一係合部及び第二係合部の間での係合構造とにより、前記略筒状体の中に位置決め保持されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る保冷・保温用装着具では、
前記第一係合部が編物の編み面であり、前記第二係合部が蓄熱部材の表面に形成された粗面又は凹凸であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る保冷・保温用装着具では、
前記第二係合部の粗面又は凹凸は、前記蓄熱部材の表面を少なくとも部分的に覆う不織布によって提供されることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る保冷・保温用装着具では、
前記第一係合部が編み面であり、前記第二係合部が外方に突出した突出部であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る保冷・保温用装着具では、
前記突出部は、内方に折り畳み可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に係る保冷・保温用装着具では、
前記蓄熱部材は、別体の複数個の蓄熱要素から構成されており、当該蓄熱要素のそれぞれは、前記略筒状体の中で離間配置されることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に係る保冷・保温用装着具では、
前記蓄熱部材は扁平な形状をしていることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8に係る保冷・保温用装着具では、
前記略筒状体には、その中に装填される前記蓄熱部材の配置を容易ならしめるための目印が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項9に係る保冷・保温用装着具では、
前記目印は、模様であることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項10に係る保冷・保温用装着具セットでは、
前記請求項1乃至9のいずれか一つに記載の保冷・保温用装着具と、
前記蓄熱部材を前記略筒状体に対して脱離・装填することをガイドするためのガイドパイプであって、当該ガイドパイプの外径サイズが前記略筒状体の非伸長部の内径サイズよりも大きくて、且つ当該ガイドパイプの内径サイズが蓄熱部材の幅方向のサイズよりも大きいように寸法構成されているガイドパイプと、
を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項11に係る保冷・保温用装着具セットでは、
前記ガイドパイプの長手方向長さは、前記蓄熱部材の長手方向長さ以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項12に係る保冷・保温用装着具セットでは、
前記請求項1乃至9のいずれか一つに記載の保冷・保温用装着具と、
前記蓄熱部材を前記略筒状体に対して位置決めするための平滑介在体であって、当該平滑介在体が前記略筒状体と前記蓄熱部材との間に介在配置されている平滑介在体と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項13に係る保冷・保温用装着具セットでは、
前記平滑介在体は、シート形状をしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る本発明では、径方向に弾性的に伸長された略筒状体の弾性収縮力と、略筒状体と蓄熱部材との間での係合構造とにより、蓄熱部材が略筒状体の所望の位置に保持される。すなわち、使用者の保冷・保温したい部位に蓄熱部材を確実且つ自在に位置決め保持することができるという効果を奏する。
【0024】
請求項2に係る本発明では、略筒状体を編物から構成し、その編み面が微視的に凹凸を有する非平滑面であることを利用して編み面を第一係合部として用いるとともに、蓄熱部材上に形成された粗面や凹凸を第二係合部として用いて、簡単な構成で係合構造を実現するという効果を奏する。
【0025】
請求項3に係る本発明では、不織布を略筒状体と蓄熱部材との間に介在させることにより、係合構造を実現するとともに、不織布の低熱伝導性に基づくおだやかな保冷・保温を提供するという効果を奏する。
【0026】
請求項4に係る本発明では、蓄熱部材に設けられた突出部という外形形状に基づく簡単な構成で係合構造を実現するという効果を奏する。
【0027】
請求項5に係る本発明では、突出部の折り畳みにより、蓄熱部材を略筒状体の中で移動させることを容易にするという効果を奏する。
【0028】
請求項6に係る本発明では、個別的に且つフレキシブルに所望の部位を保冷・保温することができるという効果を奏する。
【0029】
請求項7に係る本発明では、所望の部位への密着性を向上することができるという効果を奏する。
【0030】
請求項8に係る本発明では、略筒状体の中での蓄熱部材の位置決めを容易にするという効果を奏する。
【0031】
請求項9に係る本発明では、デザイン性を提供するという効果を奏する。
【0032】
請求項10に係る本発明では、略筒状体に対する蓄熱部材の脱離・装填を容易にするという効果を奏する。
【0033】
請求項11に係る本発明では、ガイドパイプに対する蓄熱部材の取扱性を向上させるという効果を奏する。
【0034】
請求項12に係る本発明では、略筒状体に対する蓄熱部材の初期の位置決めを容易にするという効果を奏する。
【0035】
請求項13に係る本発明では、取扱が容易で、低コスト化を可能にするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第一実施形態に係る保冷・保温用装着具の平面図である。
【図2】図1に示した保冷・保温用装着具のA−A断面図である。
【図3】図1に示した保冷・保温用装着具の使用形態を説明する図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る保冷・保温用装着具の平面図である。
【図5】図4に示した保冷・保温用装着具のB−B断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る保冷・保温用装着具セットであって、ガイドパイプを用いて略筒状体の中に蓄熱部材を脱離・装填する様子を説明する図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る保冷・保温用装着具セットであって、ガイドパイプを用いて略筒状体の中に蓄熱部材を脱離・装填する様子を説明する図である。
【図8】本発明の第四実施形態に係る保冷・保温用装着具セットであって、平滑介在体を用いて略筒状体の中に蓄熱部材を初期の位置決めする様子を説明する図である。
【図9】本発明の変形例に係る保冷・保温用装着具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の第一実施形態に係る保冷・保温用装着具1を、図1乃至3を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の第一実施形態に係る保冷・保温用装着具1の正面図である。図1において、保冷・保温用装着具1は、略筒状体10と、蓄熱部材20と、から構成されている。略筒状体10は、正面視、方形形状をしており、径方向(すなわち幅方向)が短寸で、長手方向に延在する筒状の伸縮自在素材から構成され、両端に開口部16を有している。略筒状体10が、伸縮自在素材として好適である編地から構成されている場合、その外面及び内面(編み面13)は、微視的には粗面又は凹凸面という非平滑性を有しており、その内面(編み面13)は、第一係合部を構成する。
【0039】
略筒状体10は、径方向及び長手方向の両方向に弾性的に伸長することも可能であるが、蓄熱部材20(蓄熱要素22)の保持に略筒状体10の径方向弾性収縮力を利用するために、少なくとも径方向に弾性的に伸長可能に構成されている。略筒状体10の非伸長時に対する径方向の伸長率は、10%以上であり、好ましくは10%乃至200%であり、より好ましくは15%乃至100%である。図1に示すように、略筒状体10では、非伸長部12における幅方向寸法がD1であり、伸長部14における幅方向寸法がD2である。
【0040】
弾性及び伸縮性を有する略筒状体10は、編地、織地、強撚布又はネット地、或いはスパンボンド不織布に伸縮糸又は伸縮糸と非伸縮糸を編みこんだ不織布伸縮性編地等から構成される。略筒状体10の厚みは、使用部位や素材特性等により適宜に決定されるが、保冷・保温すべき部位との密着性や追従性、あるいは耐久性を考慮すると、0.05乃至1.5mmが好ましく、さらに好ましくは0.1乃至1.0mmである。
【0041】
略筒状体10が編地から構成される場合、例えば、毛、綿、麻、絹、アクリル、ポリアミド系合成繊維、ポリウレタン合成繊維、それらの混紡により筒状に編み上げられている。その編み方はトリコット編、ラッシェル編、ミラニーズ編を含む経メリヤス及び、平型編、円形編を含む緯(ヨコ)メリヤス編み等によって仕上げられている。編み物本来の特性である伸縮性に、ゴム糸及び弾性糸による伸縮性を加えることも可能である。編地で構成された略筒状体10は、良好な風合い(肌触り)や通気性を提供する。本発明を限定しない略筒状体10の伸縮自在素材を例示すると、薄さ、柔らかさ、伸長度、光沢感等の面から、ポリアミド系繊維やポリエステル繊維と共にポリウレタン繊維(スパンデックス)が編みこまれている繊維を用いた、縦編みの編み地である2ウェイトリコット生地が好適である。
【0042】
略筒状体10が織地やネット地から構成される場合、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル繊維等の合成繊維に「S撚り」、「Z撚り」等の特殊加工を施すことにより伸縮性を持たせたストレッチヤーン、テックスチヤードヤーン、コンシュゲートヤーンやポリウレタン系弾性糸等のように伸縮性の大きい合繊糸を単独で編成したものや、このような合繊糸とポリエステル繊維や綿、レーヨン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース等のように伸縮性の小さい繊維とを混合して編成したものが利用可能である。
【0043】
また、略筒状体10は、天然ゴム又は合成ゴムの伸縮性薄膜から構成されてもよい。その場合、ゴムとしては、天然ゴム、或いはポリクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムが用いられる。良好な伸縮特性面から、天然ゴムが好ましい。ゴム薄膜の厚さは、ゴムの材質にもよるが、0.01乃至1mm、好ましくは0.05乃至0.5mmである。ゴム等の伸縮性薄膜で構成された略筒状体10は、蓄熱要素22に対する良好な密着保持性や、保冷・保温すべき部位での良好な密着性を提供する。
【0044】
蓄熱部材20は、少なくとも1つの蓄熱要素22から構成されている。蓄熱部材20として、長尺物の1つの蓄熱要素22から構成することも可能であるが、蓄熱要素22が長すぎると、保冷・保温すべき様々な部位へのフィット感(密着性)が低下する。そこで、蓄熱部材20は、複数個の蓄熱要素22から構成されていることが好適である。したがって、以下の蓄熱要素22という用語には、長尺物の蓄熱要素22や小さく分割された複数個の蓄熱要素20からなる蓄熱部材20の意味を含んでいる。
【0045】
各蓄熱要素22は、ナイロンフィルムとポリエチレンフィルムとを積層した上下のラミネートフィルムを重ね合わせて三辺を熱圧着(熱融着)して袋状体を形成し、形成された袋状空間にゲル状の蓄熱剤を封入したあと開口部を熱圧着して密封閉止したものである。各蓄熱要素22は、略筒状体10の中に装着可能なように寸法構成されている。略筒状体10の中に装着される蓄熱要素22の個数は、使用者の保冷・保温したい部位の領域に応じて決定される。
【0046】
ラミネートフィルムとしては、エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・メチルメタクリレート共重合体等も使用可能である。後述するゲル状の蓄熱剤の成分が透過して漏出しないように、すなわち高いバリア性を得るために、ナイロンフィルムの厚みを厚くしたり、ナイロンフィルムの上にアルミニウムをコーティングしたりすることもできる。
【0047】
ゲル状の蓄熱剤としては、保冷剤として公知である様々な材料が使用可能であるが、ポリアクリル酸ナトリウムに多量の水を含んだゲル状物質や、硫酸ナトリウム10水塩(Na2SO4・10H2O)と水(H2O)とを適量調合した硫酸ナトリウム10水塩が例示される。
【0048】
各蓄熱要素22は、図1に示すように、平面視、方形形状をしており、図2に示すように、断面視、厚みを考慮すると左右方向に大きく扁平した略楕円形状をしている。大きく扁平した略楕円形状は、ボール形状や円柱形状と比較して、保冷・保温すべき部位との接触領域をより大きく確保することができる。
【0049】
蓄熱要素22においては、幅方向寸法がD2であり、長手方向寸法がLである。図1に示すように、略筒状体10の非伸長部12の幅方向寸法がD1であり、蓄熱要素22の幅方向寸法(略筒状体10の肉厚を無視すれば、実質的には略筒状体10の伸長部14に等しい)がD2であることから、幅方向においては、蓄熱要素22が略筒状体10の非伸長部12よりも径方向寸法差D3だけ大きい。略筒状体10の伸長部14では、径方向寸法差D3の分だけ径方向外側に伸長・拡大しており、径方向寸法差D3の大きさに応じて内側に向けて弾性的に収縮する力が大きくなる。この弾性収縮力が蓄熱要素22を略筒状体10の中に位置決め保持するように作用する。
【0050】
各蓄熱要素22の表面には、不織布26が貼着固定されている。不織布26は、蓄熱要素22の表面を、全面的に覆うことも可能であるが、少なくとも部分的に覆っている。不織布26の表面は、微視的には粗面又は凹凸面という非平滑性を有しており、第二係合部を構成する。不織布26として、スパンボンド法によって製造されたポリエステル長繊維不織布(エクール(登録商標):東洋紡製)や、スパンボンド不織布をベースにアクリル樹脂等のドット加工を施したもの(SANX NSセフティシート)を例示することができる。
【0051】
第一係合部としての編み面13の内面と、第二係合部としての不織布26の表面とが、摩擦係合する係合構造が、蓄熱要素22を略筒状体10の中に位置決め保持するように作用する。
【0052】
したがって、略筒状体10の中に蓄熱要素22を装填した伸長部14では、略筒状体10の弾性収縮力と、編み面13の内面と不織布26の表面との間での摩擦係合構造とによって、蓄熱要素22が略筒状体10の中に位置決め保持されている。また、不織布26を介在させることにより、不織布26の低熱伝導性に基づく、おだやかな保冷・保温を提供することができる。
【0053】
そして、上述したように、蓄熱部材20は、好適には、別体の複数個の蓄熱要素22から構成されている。各蓄熱要素22は、略筒状体10の中で離間配置される。複数個の蓄熱要素22が離間配置された略筒状体10は、蓄熱要素22が存在しないために幅方向に伸長されていない非伸長部12(幅方向寸法がD1の部分)と、蓄熱要素22によって幅方向に伸長された伸長部14(幅方向寸法がD2の部分)と、から構成される。蓄熱要素22が存在しない非伸長部12によって長手方向や幅方向やそれらの直交方向に対して自在に変形することが可能になるために、保冷・保温用装着具1は、個別的に且つフレキシブルに所望の部位を保冷・保温することを可能にする。
【0054】
図3は、上述した保冷・保温用装着具1の使用形態を説明する図であり。保冷・保温用装着具1は、使用者の首や腰、肘や肩や膝等の関節部等の部位に沿うように円環状に巻き回され、保冷・保温用装着具1の左右の端部が適宜の位置で結び付けられて、結び目40で左右の端部が連結されている。結び目40の代わりに、保冷・保温用装着具1の左右の端部のそれぞれに形成された面ファスナーやホック等の連結部材で左右の端部を連結することも可能である。その結果、図3に示すように、第一実施形態に係る保冷・保温用装着具1は、使用者の保冷・保温したい部位に蓄熱要素22を確実且つ自在に位置決め保持することができるという効果を奏する。
【0055】
次に、本発明の第二実施形態に係る保冷・保温用装着具1について、図4及び5を参照しながら説明する。
【0056】
当該第二実施形態では、上述した第一実施形態における不織布26の非平滑性を利用した摩擦係合構造の代わりに、蓄熱要素22に設けられた突出部27の外形形状を利用した係合構造を用いることを特徴としている。したがって、当該第二実施形態における保冷・保温用装着具1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用装着具1と類似しているので、相違点を中心に以下に説明する。
【0057】
本発明の第二実施形態に係る保冷・保温用装着具1では、図4及び5に示すように、各蓄熱要素22が不織布26を備えておらず、各蓄熱要素22の表面が平滑性を有している。そして、各蓄熱要素22が、半円弧状に突出した突出部27を2つ備えている。図4のように、突出部27が蓄熱要素22の上辺と下辺の上にそれぞれ形成されている。各突出部27は、蓄熱要素22の上辺及び下辺のそれぞれに対して、幅方向寸法D4で幅方向に突出している。図5に示すように、各突出部27と蓄熱要素22の上縁及び下縁との境界には、折り目28が形成されており、各突出部27を折り畳むことができるように構成されている。
【0058】
全ての突出部27が折り畳まれていると、径方向寸法差D3の大きさに応じて内側に向けて弾性的に収縮する力によって、蓄熱要素22が略筒状体10の中に位置決め保持される。突出部27が外方に突出していると、上記弾性収縮力に加えて、突出部27の形状的な引っ掛かり係合構造が、蓄熱要素22を略筒状体10の中に位置決め保持するように作用する。
【0059】
したがって、略筒状体10の中に蓄熱要素22を装填した伸長部14では、略筒状体10の弾性収縮力と、突出部27の形状的な引っ掛かり係合構造とによって、蓄熱要素22が略筒状体10の中に位置決め保持されている。また、各突出部27を折り畳むと、形状的な引っ掛かり係合構造が無くなって略筒状体10の弾性収縮力だけが作用することにより、蓄熱要素22を略筒状体10の中で移動させることが容易になる。
【0060】
したがって、第二実施形態に係る保冷・保温用装着具1によれば、形状的な引っ掛かり係合構造において、係合状態と非係合状態とを適宜に切り替えることができるという効果を奏する。
【0061】
次に、本発明の第三実施形態に係る保冷・保温用装着具セット3について、図6及び7を参照しながら説明する。
【0062】
当該第三実施形態では、保冷・保温用装着具セット3として、ガイドパイプ30が上述した保冷・保温用装着具1と一緒に用いられることを特徴としている。したがって、当該第三実施形態における保冷・保温用装着具1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用装着具1と実質的に同じであるので、相違点を中心に以下に説明する。
【0063】
本発明の第三実施形態に係る保冷・保温用装着具セット3では、図6に示すように、各蓄熱要素22を略筒状体10に対して脱離・装填する際のガイド部材としてのガイドパイプ30をさらに備えている。図6のように、ガイドパイプ30は、略筒状体10の右側の開口部16を通じて略筒状体10の中に出し入れされる。
【0064】
ガイドパイプ30の断面形状は、円形や楕円形や方形や三角形や菱形等の様々な形状とすることができる。例えば、ガイドパイプ30の断面形状が円形である場合、ガイドパイプ30の外径サイズは、略筒状体10の非伸長部12の内径サイズよりも大きくて、且つ当該ガイドパイプ30の拡大開口部17の内径サイズが各蓄熱要素22の幅方向のサイズよりも大きいように寸法構成されている。また、ガイドパイプ30の断面形状が楕円形である場合、ガイドパイプ30の長軸方向の外径サイズは、略筒状体10の非伸長部12の内径サイズよりも大きくて、且つ当該ガイドパイプ30の拡大開口部17の長軸方向の内径サイズが各蓄熱要素22の幅方向のサイズよりも大きいように寸法構成されている。ガイドパイプ30の外面によって、略筒状体10の弾性収縮力に抗して略筒状体10の押し広げられた状態を保持することができ、ガイドパイプ30の拡大開口部17を通じて各蓄熱要素22を略筒状体10の中に出し入れすることが容易になる。したがって、このように構成することで、ガイドパイプ30が、略筒状体10に対して各蓄熱要素22を脱離・装填する際のガイド部材として機能して、当該脱離・装填の操作が容易になるという効果を奏する。
【0065】
ガイドパイプ30の長手方向長さが、蓄熱要素22の長手方向長さより長いと、ガイドパイプ30の中に蓄熱要素22が入り込んで、蓄熱要素22をガイドパイプ30の中から取り出すのが面倒になる。そこで、ガイドパイプ30に対する蓄熱要素22の取扱性を向上させるために、ガイドパイプ30の長手方向長さが、蓄熱要素22の長手方向長さ以下であることが好適である。また、図6や7に示すように、略筒状体10の右側部分を小さく折り畳んで寄せ集め部19としてガイドパイプ30の上に寄せ集めることができる。蓄熱要素22の取扱性や略筒状体10の寄せ集め性を考慮して、ガイドパイプ30と蓄熱要素22との関係を例示すると、ガイドパイプ30の長手方向長さが、蓄熱要素22の長手方向長さに対して、20%乃至100%、好ましくは25%乃至95%である。
【0066】
したがって、第三実施形態に係る保冷・保温用装着具セット3によれば、ガイドパイプ30を介在させることで、略筒状体10に対する各蓄熱要素22の脱離・装填を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0067】
次に、本発明の第四実施形態に係る保冷・保温用装着具セット3について、図8を参照しながら説明する。
【0068】
当該第四実施形態では、保冷・保温用装着具セット3として、上述した保冷・保温用装着具1が平滑介在体32と一緒に用いられることを特徴としている。したがって、当該第四実施形態における保冷・保温用装着具1の基本構造は、上記実施形態における保冷・保温用装着具1と実質的に同じであるので、相違点を中心に以下に説明する。
【0069】
本発明の第四実施形態に係る保冷・保温用装着具セット3では、図8に示すように、略筒状体10に対する各蓄熱要素22の初期の位置決めを補助するための平滑介在体32をさらに備えている。図8のように、平滑介在体32は、略筒状体10の中に挿入されており、その左側端部が略筒状体10の左側の開口部16からはみ出している。
【0070】
平滑介在体32は、略筒状体10と蓄熱要素22との間に介在配置され、略筒状体10や各蓄熱要素22との間で摩擦係合を引き起こさない平滑性を有しており、スムーズに滑動することができる。平滑介在体32は、平滑面を有するシート形状やパイプ形状やチューブ形状とすることができる。スライド性を向上させるために、平滑介在体32の表面に公知の潤滑層(シリコン系やフッ素系)を設けることも好適である。
【0071】
上述したように蓄熱要素22は、大きく扁平した略楕円形状の断面であることが好ましいために、当該蓄熱要素22の扁平形状に合わせて、平滑介在体32がシート形状であることが好ましい。シート形状の平滑介在体32は、取扱が容易で、低コスト化を可能にする。シート形状の平滑介在体32は、上側の当接部分と下側の当接部分のそれぞれに予め配置される。
【0072】
図8に示したように、保冷・保温用装着具セット3は、平滑介在体32を略筒状体10と各蓄熱要素22との間に予め介在配置した状態で提供される。平滑介在体32を介在配置した各伸長部14においては、略筒状体10の弾性収縮力が作用しているだけであるので、蓄熱要素22を略筒状体10に対して比較的容易に移動させることができる。平滑介在体32を介在配置した状態で、蓄熱要素22を長手方向にスライド移動させて、蓄熱要素22を所望とする初期の位置決めを行う。そして、略筒状体10から平滑介在体32を引き抜くと、上述した摩擦係合構造や形状的な引っ掛かり係合構造が作用する。したがって、各伸長部14における略筒状体10の弾性収縮力と係合構造とにより、使用者の保冷・保温したい部位に各蓄熱要素22を確実且つ自在に位置決め保持することができる。
【0073】
したがって、第四実施形態に係る保冷・保温用装着具セット3によれば、平滑介在体32を介在配置することで、略筒状体10に対する各蓄熱要素22の初期の位置決めを容易に行うことができるという効果を奏する。
【0074】
さらに、図9に示すように、保冷・保温用装着具1は、略筒状体10の中に装填される各蓄熱要素22の配置を容易ならしめるための目印38を備える変形例も可能である。すなわち、変形例に係る保冷・保温用装着具1では、略筒状体10の表面に何らかの目印38が形成されている。略筒状体10が編地や織地等から構成されている場合、模様や彩色を目印38として予め組み入れておくことができる。略筒状体10の一部分を、他の部分に対して模様や彩色を異なったものにして、それを目印38として用いるものである。模様や彩色は、保冷・保温用装着具1にデザイン性を提供することができる。目印38として目盛りを用いることもできるが、デザイン性が劣る。
【0075】
したがって、変形例に係る保冷・保温用装着具1によれば、使用者は、略筒状体10に形成された目印38を参照しながら、略筒状体10に対する各蓄熱要素22の位置決めを容易に行うことができるという効果を奏する。
【0076】
なお、本願発明において、保冷・保温すべき対象は、人間に限られず、犬や猫や牛や馬等の動物であっても良いことは言うまでもない。また、蓄熱部材20(蓄熱要素22)は、冷蔵庫等で冷却する場合には保冷剤として使用され、電子レンジ等で加熱される場合には保温剤として使用される。
【0077】
また、図2及び5の断面図においては、蓄熱部材20(蓄熱要素22)が、単一体の形態で図示されているが、複数個に小分けされた蓄熱要素22を積層した形態や、単一体の蓄熱要素22を二つ折りや三つ折りに折り曲げた形態とすることもできる。複数個に小分けされた蓄熱要素22を積層したものを使用する形態では、保冷・保温すべき対象部位に適した形状とすることでより優れたフィット感を使用者に提供でき、異なった温度で保冷・保温された蓄熱要素22を組み合わせて積層することで表面側や裏面側で異なった温感を楽しむことができるという効果を奏する。そして、単一体の蓄熱要素22を折り曲げて使用する形態では、他の用途で使用される大きめの蓄熱要素22を転用して低コスト化を図ることができ、保冷・保温すべき対象部位に合わせて折り曲げ部分の位置を変えて外形サイズを容易に変更して蓄熱要素22を様々な用途に共用することができ、折り曲げられる部分がシール部に相当する部分となってシール部分の作製費用を削減することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0078】
1:保冷・保温用装着具
3:保冷・保温用装着具セット
10:略筒状体
12:非伸長部
13:編み面(第一係合部)
14:伸長部
16:開口部
17:拡大開口部
18:突出部
19:寄せ集め部
20:蓄熱部材
22:蓄熱要素
24:蓄熱剤パック
26:不織布(第二係合部)
27:突出部(第二係合部)
28:折り目
30:ガイドパイプ
32:平滑介在体
38:目印
40:結び目(連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも径方向が弾性的に伸長可能であって長手方向に延在するフレキシブルな略筒状体と、
前記略筒状体の中に装填される蓄熱部材であって、当該蓄熱部材の幅方向のサイズが前記略筒状体の非伸長部の内径サイズよりも大きいように寸法構成されている扁平な蓄熱部材と、
を備える保冷・保温用装着具であって、
第一係合部が前記略筒状体の内面上に形成されるとともに、第二係合部が前記蓄熱部材の表面上に形成され、
前記略筒状体の中に装填された蓄熱部材は、伸長している前記略筒状体からの弾性収縮力と、前記第一係合部及び第二係合部の間での係合構造とにより、前記略筒状体の中に位置決め保持されることを特徴とする保冷・保温用装着具。
【請求項2】
前記第一係合部が編物の編み面であり、前記第二係合部が蓄熱部材の表面に形成された粗面又は凹凸であることを特徴とする、請求項1に記載の保冷・保温用装着具。
【請求項3】
前記第二係合部の粗面又は凹凸は、前記蓄熱部材の表面を少なくとも部分的に覆う不織布によって提供されることを特徴とする、請求項2に記載の保冷・保温用装着具。
【請求項4】
前記第一係合部が編み面であり、前記第二係合部が外方に突出した突出部であることを特徴とする、請求項1に記載の保冷・保温用装着具。
【請求項5】
前記突出部は、内方に折り畳み可能に構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の保冷・保温用装着具。
【請求項6】
前記蓄熱部材は、別体の複数個の蓄熱要素から構成されており、当該蓄熱要素のそれぞれは、前記略筒状体の中で離間配置されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の保冷・保温用装着具。
【請求項7】
前記蓄熱部材は扁平な形状をしていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の保冷・保温用装着具。
【請求項8】
前記略筒状体には、その中に装填される前記蓄熱部材の配置を容易ならしめるための目印が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一つに記載の保冷・保温用装着具。
【請求項9】
前記目印は、模様であることを特徴とする、請求項8に記載の保冷・保温用装着具。
【請求項10】
前記請求項1乃至9のいずれか一つに記載の保冷・保温用装着具と、
前記蓄熱部材を前記略筒状体に対して脱離・装填することをガイドするためのガイドパイプであって、当該ガイドパイプの外径サイズが前記略筒状体の非伸長部の内径サイズよりも大きくて、且つ当該ガイドパイプの内径サイズが蓄熱部材の幅方向のサイズよりも大きいように寸法構成されているガイドパイプと、
を備えることを特徴とする保冷・保温用装着具セット。
【請求項11】
前記ガイドパイプの長手方向長さは、前記蓄熱部材の長手方向長さ以下であることを特徴とする、請求項10に記載の保冷・保温用装着具セット。
【請求項12】
前記請求項1乃至9のいずれか一つに記載の保冷・保温用装着具と、
前記蓄熱部材を前記略筒状体に対して位置決めするための平滑介在体であって、当該平滑介在体が前記略筒状体と前記蓄熱部材との間に介在配置されている平滑介在体と、
を備えることを特徴とする保冷・保温用装着具セット。
【請求項13】
前記平滑介在体は、シート形状をしていることを特徴とする、請求項12に記載の保冷・保温用装着具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−231894(P2012−231894A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101615(P2011−101615)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(506229741)株式会社タカラ (13)
【Fターム(参考)】