説明

保冷容器

【課題】成形後の離型時、落下衝撃により角部が損傷して外観の美感が損なわれるのを効果的に防止することができる保冷容器を提供する。
【解決手段】保冷容器1は、発泡合成樹脂よりなるマグロFを収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体10を備え、該容器本体10の底部と壁部とが交わって角をなす辺部に、容器本体10の重量に対する半径値の比[m/N]が1.7×10-4以上、1.9×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグロを保冷輸送する際に使用する発泡合成樹脂製の保冷容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マグロ、ブリ等の大型魚を保冷輸送する際に使用する容器として、発泡合成樹脂製の保冷容器が知られている(例えば特許文献1、特許文献2)。該保冷容器は、上向きに開放する開口を備えた容器本体と該容器本体の開口を閉塞する上蓋とから構成されたものである。
【0003】
そして、このような発泡合成樹脂製の保冷容器(発泡合成樹脂成形品)は、成形機(横型成形機あるいは縦型成形機)を用いて製造され、例えば特許文献3のような横型成形機を用いて製造されることが知られている。
【0004】
このような横型成形機は、例えば、水平方向(横方向)に接離可能に構成された第1金型と第2金型とを備えて構成され、第1及び第2金型の何れか一方に接離方向に沿って凸状に形成された凸状部を備え、第1及び第2金型の何れか他方に前記凸状部を水平方向(横方向)に差し入れ可能に形成された凹状部を備えている。
【0005】
上記構成からなる横型成形機による保冷容器の製造について説明すると、前記凸状部が凹状部に差し入れられた状態(型閉状態)で、凸状部と凹状部との間に形成される成形空間に樹脂材料を充填して発泡合成樹脂成形品を成形し、続いて前記成形品を成形空間から取り出すために、型閉状態から第1金型と第2金型とを離間(離型)する方向に相対移動させて凸状部を凹状部内から抜き出し、凹状部の内側から成形品を取り出して回収する。ここで、成形品の取り出し回収にあっては、第1金型と第2金型とを十分に離間させた後、成形品を凹状部内から押し出す押出手段によって、凹状部の開口方向に成形品を押し出し、成形品を地面に落下させて、その地面に落下した成形品を回収していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−230965号公報
【特許文献2】特開2006−151421号公報
【特許文献3】特開平1−314149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、大型魚用である上記保冷容器は、サイズが大きく、特にマグロ用ともなれば、発泡成型品としては重量物である。従って、成形品の取り出し回収時に、成形品を地面に落下させた際、落下の衝撃で、成形品の地面に衝突した部分が損傷することがある。特に成形品の角部は、落下衝撃による負荷が集中しやすく、損傷し易い。そして、このような成形品(保冷容器)の損傷は、保冷容器の外観の美感を損なわせかねないといった問題を引き起こす。
【0008】
また、上記問題は、横型成形機のみならず、縦型成形機についても共通する問題である。この点について具体的には、縦型成形機は、第1金型と第2金型の接離方向(第1金型と第2金型の何れか一方の凸状部が他方の凹状部に差し入れられ又は離間される方向)に関して、横型成形機が水平方向(横方向)であるのに対して、垂直方向(縦方向)となっている。つまり、横型成形機と縦型成形機とでは、離型時、成形機から成形品を地面に落下させた際、成形品が地面に落下する方向が異なることによって、成形品の損傷する部分が異なるものの、成形品の損傷による上記問題は共通している。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、成形後の離型時、落下衝撃により角部が損傷して外観の美感が損なわれるのを効果的に防止することができる保冷容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る保冷容器は、上記課題を解決するためになされたもので、発泡合成樹脂よりなるマグロを収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体の底部と壁部とが交わって角をなす辺部に、容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が1.7×10-4以上、1.9×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることを特徴とする。
【0011】
かかる構成からなる保冷容器によれば、成形機で成形した容器本体を離型させる際に容器本体が成形機から落下することに備えて、落下時に底部が下方側に位置するように容器本体を成形することにより、落下衝撃による辺部(底部と壁部とが交わって角をなす辺部)への負荷(応力集中)を効果的に低減させ、辺部の損傷を防止することができる。
【0012】
尚、かかる効果は、辺部における角取り部の半径値が大きいほど顕著となるが、辺部における角取り部の半径値が大きくなると、当該箇所の肉厚が薄くなり、そのため当該箇所の強度が低下し、また成形性も低下するので、上記のとおりの上限としている。また、辺部における角取り部の半径値が小さくなると、損傷が目立ち易くなるので、上記のとおりの下限としている。
【0013】
ここで、本発明に係る保冷容器は、前記容器本体の隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部に、容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が5.1×10-4以上、5.2×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることが好ましい。
【0014】
かかる構成からなる保冷容器によれば、容器本体の辺部(底部と壁部とが交わって角をなす辺部)と同様に、容器本体の隅部(隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部)の損傷をも防止できる。
【0015】
また、本発明に係る保冷容器は、発泡合成樹脂よりなるマグロを収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体の隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部に、容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が5.1×10-4以上、5.2×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることを特徴とする。
【0016】
かかる構成からなる保冷容器によれば、離型に伴う落下時に壁部が下方側に位置するように容器本体を成形することにより、落下衝撃による隅部(隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部)への負荷(応力集中)を低減させ、隅部の損傷を防止することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る保冷容器は、前記容器本体の上面の開口を閉塞する上蓋を備え、該上蓋の天部と壁部とが交わって角をなす辺部に、前記容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が1.7×10-4以上、1.9×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることが好ましい。
【0018】
かかる構成からなる保冷容器によれば、容器本体の辺部(底部と壁部とが交わって角をなす辺部)と同様に、上蓋の辺部(天部と壁部とが交わって角をなす辺部)の損傷を防止できる。
【0019】
また、本発明に係る保冷容器は、前記上蓋の隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部に、前記容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が5.1×10-4以上、5.2×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることが好ましい。
【0020】
かかる構成からなる保冷容器によれば、容器本体の隅部(隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部)と同様に、上蓋の隅部(隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部)の損傷を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る保冷容器によれば、容器本体の重量に応じた半径値(R値)が設定される角取り部を備えることにより、成形後の離型時、落下衝撃による角部(辺部や隅部)への負担(応力集中)が低減され、これにより、角部が損傷しにくくなるため、外観の美感が損なわれるのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る保冷容器にマグロを収納した断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る保冷容器の容器本体であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図3】同実施形態に係る保冷容器の容器本体であって、(a)は左右の側壁方向から見た図、(b)は前後の側壁方向から見た図、(c)は斜視図である。
【図4】同実施形態に係る保冷容器の上蓋であって、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)は(a)のD−D線断面図である。
【図5】同実施形態に係る保冷容器の製造過程であって、(a)は型閉状態で金型による成形空間に樹脂材料を充填した状態の図、(b)は金型が離間して型開きした状態の図、(c)は成形品を金型から押し出して離型させる状態の図である。
【図6】辺部の損傷確認試験に用いた試験体1乃至37を示す。
【図7】隅部の損傷確認試験に用いた試験体38乃至74を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図5を参照しながら説明する。
【0024】
本実施形態にかかる保冷容器1は、図1に示すように、発泡合成樹脂を用いて形成された容器であって、マグロFを収容可能に構成されている。具体的には、保冷容器1は、上面開口(上向きに開放した開口)が開口する箱状の容器本体10と、該容器本体10の上面開口を閉塞する上蓋20とから構成され、容器本体10内にマグロFを収容した状態で開口を上蓋20で閉塞するように構成されている。以下では、容器本体10の開口を蓋体20が閉塞した状態を蓋閉状態と記載する。
【0025】
容器本体10は、収容するマグロFの大きさに応じた内部空間を備えるものである。具体的には、容器本体10は、図1乃至図3に示すように、マグロFが載置される本体底部11と該本体底部11の外周部から起立する本体周壁部12とから構成され、本体底部11と本体周壁部12によって囲まれた空間がマグロFを収容する内部空間となっている。
【0026】
本体底部11は、板状に形成されて外周部の全域から一体的に形成された本体周壁部12が起立するように形成されている。そして、本体底部11は、上面側11a(容器本体10内部側)にマグロFが載置され、底面11b側の四隅に、容器本体10を持ち上げる際に指を掛けるための窪み状の切欠部11cを備える。また、本実施形態では、本体底部11は、一方向が長手となるように形成された平面視四角形状(より詳しくは、長方形状)を有するものである。つまり、本実施形態では、容器本体10は、立方体状に形成されている。
【0027】
尚、以下では、容器本体10において、マグロFを収容した際にマグロFの頭部が位置する側を前と、尾部が位置する側を後と記載する。また、容器本体10の前後方向に直交する方向を左右方向と記載する。本実施形態では、マグロFを容器本体10に収容する際には、本体底部11の長手方向(即ち、容器本体10の長手方向)に沿ってマグロFが収容される。
【0028】
本体周壁部12は、本体底部11の外周に沿って一体的に形成されている。本実施形態では、本体周壁部12は、本体底部11の長手方向に沿って形成された対向する一対の本体周壁部(以下、左右の本体側壁)12A,12Aと、本体底部11の長手方向に直交する幅方向(左右方向)に沿って形成された対向する一対の本体周壁部(以下、前後の本体側壁)12B,12Bとから構成されている。
【0029】
また、本体周壁部12は、上端部が上蓋20と嵌合可能に構成されている。具体的には、本体周壁部12は、上端部の内周部(容器本体10の開口縁部)の全周に亘って、上方に向かって突出する嵌合用凸条13が形成され、該嵌合用凸条13が後述する上蓋20の嵌合用凸条23と嵌合するように構成されている。なお、本体周壁部12の上端部には、嵌合用凸条13が形成されたことによって、上端部の外周部が凹状に形成され、凹状に形成された部分に上蓋20の嵌合用凸条23が嵌り込み、嵌合するように構成されている。
【0030】
上蓋20は、図4に示すように、容器本体10に対して着脱可能に構成されている。また、上蓋20は、容器本体10に取り付けられた際に、容器本体10の開口を覆うように形成された上蓋天部21と、該上蓋天部21の外周部から容器本体10側に向かって形成された上蓋周壁部22とから構成され、上蓋天部21と上蓋周壁部22とによって囲まれた内部空間を備えている。
【0031】
前記上蓋天部21は、容器本体10に取り付けられた際に、本体底部11に対向するように形成されている。具体的には、上蓋天部21は、板状に形成されて外周部の全域から一体的に形成された上蓋周壁部22が容器本体10側に向かって形成されている。そして、上蓋天部21は、一方の面側が本体底部11に対向する。また、本実施形態では、上蓋天部21は、一方向が長手となるように形成された平面視四角形状(より詳しくは、長方形状)を有するものである。つまり、本実施形態では、上蓋天部21は、立方体状に形成されている。
【0032】
上蓋周壁部22は、上蓋天部21の外周に沿って一体的に形成されている。本実施形態では、上蓋周壁部22は、上蓋天部21の長手方向に沿って形成された対向する一対の上蓋周壁部(以下、左右の上蓋側壁)22A,22Aと、上蓋天部21の長手方向に直交する幅方向(左右方向)に沿って形成された対向する一対の上蓋周壁部(以下、前後の上蓋側壁)22B,22Bとから構成されている。
【0033】
また、上蓋周壁部22は、上端部が容器本体10と嵌合可能に構成されている。具体的には、上蓋周壁部22は、蓋閉状態において容器本体10側に突出するように形成された嵌合用凸条23が先端部の外周縁に沿って形成されている。該嵌合用凸条23は、上蓋周壁部22の上端部の全周に亘って形成されており、蓋閉状態において、容器本体10の嵌合用凸条13と嵌合するように構成されている。なお、上蓋周壁部22の先端部には、嵌合用凸条23が形成されたことによって、先端部の内周部が凹状に形成され、凹状となった部分に容器本体10の嵌合用凸条13が嵌り込み、嵌合するように構成されている。
【0034】
ここで、上記のような構成からなる保冷容器1における本実施形態の特徴である角部について説明する。角部とは、突出した角が形成される部分であって、容器本体の角部とは、容器本体の外面に形成される角をなす辺部と隅部との総称である。具体的には、辺部とは、容器本体の平面視において、辺にあたる箇所であって、容器本体の底部と壁部とが交わって角をなす箇所である。また、隅部とは、容器本体の平面視において、隅にあたる箇所であって、隣り合う二つの壁部が交わって角をなす箇所である。
【0035】
本実施形態では、容器本体10の角部は、R状(湾曲状)の角取り部30(辺部角取り部30A、隅部角取り部30B)となるように形成される。具体的には、図1乃至図3に示すように、容器本体10の角部として、前後の本体側壁12B,12Bと本体底部11とが交わる箇所、左右の本体側壁12A,12Aと本体底部11とが交わる箇所が、R状(湾曲状)の辺部角取り部30Aとなるように形成される。さらに、容器本体10の角部として、容器本体10の前の本体側壁12Bと左の本体側壁12Aとが交わる箇所、前の本体側壁12Bと右の本体側壁12Aとが交わる箇所、後の本体側壁12Bと左の本体側壁12Aとが交わる箇所、後の本体側壁12Bと右の本体側壁12Aとが交わる箇所が、R状(湾曲状)の隅部角取り部30Bとなるように形成される。
【0036】
前記角取り部30(辺部角取り部30A、隅部角取り部30B)のR値(半径値)は、発泡合成樹脂成型品で通常用いられるR値よりも大きく設定される。後述の実施例の結果のように、辺部角取り部30Aについては、R値[m]は、容器本体10の重量[N]に対する比で、1.7×10-4以上であり、好ましくは、3.4×10-4以上であり、より好ましくは、4.4×10-4以上であり、また、1.9×10-3以下であり、好ましくは、1.3×10-3以下であり、より好ましくは、1.1×10-3以下であり、これらの範囲内で適宜設定される。
【0037】
また、隅部角取り部30Bについては、R値[m]は、容器本体10の重量[N]に対する比で、5.1×10-4以上であり、好ましくは、8.4×10-4以上であり、より好ましくは、1.1×10-3以上であり、また、5.2×10-3以下であり、好ましくは、3.2×10-3以下であり、より好ましくは、2.6×10-3以下であり、これらの範囲内で適宜設定される。
【0038】
また、上蓋の角部とは、容器本体の角部と同様に、上蓋の外面に形成される角をなす辺部と隅部との総称である。具体的には、辺部とは、上蓋の平面視において、辺にあたる箇所であって、上蓋の天部と壁部とが交わって角をなす箇所である。また、隅部とは、上蓋の平面視において、隅にあたる箇所であって、隣り合う二つの壁部が交わって角をなす箇所である。
【0039】
本実施形態では、上蓋20の角部は、R状(湾曲状)の角取り部31(辺部角取り部31A、隅部角取り部31B)となるように形成される。具体的には、図1や図4に示すように、上蓋20の角部として、前後の上蓋側壁22B,22Bと上蓋天部21とが交わる箇所、左右の上蓋側壁22A,22Aと上蓋天部21とが交わる箇所が、R状(湾曲状)の辺部角取り部31Aとなるように形成される。そして、辺部角取り部31AのR値(半径値)は、容器本体10の辺部角取り部30AのR値と等しく設定され、即ち上蓋20の辺部角取り部31Aと容器本体10の辺部角取り部30Aとは同じ形状となる。
【0040】
また、上蓋20の角部として、上蓋20の前の上蓋側壁22Bと左の上蓋側壁22Aとが交わる箇所、前の上蓋側壁22Bと右の上蓋側壁22Aとが交わる箇所、後の上蓋側壁22Bと左の上蓋側壁22Aとが交わる箇所、後の上蓋側壁22Bと右の上蓋側壁22Aとが交わる箇所が、R状(湾曲状)の隅部角取り部31Bとなるように形成される。そして、隅部角取り部31BのR値(半径値)は、容器本体10の隅部角取り部30BのR値と等しく設定され、即ち上蓋20の隅部角取り部31Bと容器本体10の隅部角取り部30Bとは同じ形状となる。よって、上蓋20と容器本体10とは、角部に同じ造形処理がなされることで、全体として統一のある外観の美観を生じさせている。
【0041】
また、本体底部11の底面における切欠部11cの角部(エッジ部)は、R状(湾曲状)の角取り部32となるように形成される。具体的には、図3に示すように、切欠部11cと左又は右の本体側壁12A,12Aとが交わる箇所がR状の角取り部32となるように形成される。そして、この角取り部32のR値は、容器本体10の角取り部30(辺部角取り部30A、隅部角取り部30B)のR値より小さく設定される。
【0042】
尚、保冷容器1の内部構造について、以下に説明しておくと、図2に示すように、容器本体10の内部において、本体底部11と本体周壁部12との間には、少なくとも前後方向に沿って肉厚補強部14が形成されており、肉厚補強部14が形成された部分が他の部分よりも肉厚となるように構成されている。本実施形態では、肉厚補強部14は、容器本体10の内側において、本体底部11と本体周壁部12とが交差する稜部の全域に亘って形成されている。また、肉厚補強部14は、容器本体10の内部において本体底部11と本体周壁部12とが交差する稜部を埋め込むと共に、凹状となるように円弧状に形成されている。
【0043】
また、容器本体10の前後方向に沿って形成された肉厚補強部14は、容器本体10の前後方向における所定の領域毎に、異なる半径で湾曲するように形成されている。具体的には、前後方向に沿って形成された肉厚補強部14のうち、前後方向の中央領域であって前後方向の全長の約1/2〜1/4程度の領域(以下、中央領域14aと記す)の半径が最も大きくなるように形成されている。また、前後の本体側壁12B,12Bに最も近い領域(以下、外側領域14cと記す)の半径が最も小さくなるように形成されている。そして、中央領域14aと外側領域14cとの間の領域(以下、テーパー領域14bと記す)の半径が中央領域14aから離れるに従って小さくなるように形成されている。
【0044】
また、本体周壁部12は、マグロFの頭部又は尾部が当接する領域(以下、マグロ当接領域と記す)が他の領域よりも硬質となるように構成されている。具体的には、本体周壁部12は、マグロ当接領域に補強用硬質部15を備えている。本実施形態では、前後の本体側壁12B,12Bにおけるマグロ当接領域に、容器本体10とは別体に形成された補強板15が配置されることで、補強用硬質部15が構成されている。補強板15は、前後の本体側壁12B,12Bに配置された状態で、前後方向に沿った方向からの力に対して本体周壁部12よりも強い強度を有するように構成されている。補強板15を構成する素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、段ボール、各種プラスチック、ベニヤ等が挙げられる。また、補強板15の厚みも任意に選択することができる。
【0045】
さらに、容器本体10は、補強板15を着脱可能に構成されている。具体的には、容器本体10は、補強板15を保持する保持部16を備え、該保持部16が補強板15を着脱可能に保持するように構成されている。該保持部16は、補強板15を容器本体10の内側から前後方向に沿って規制する前後規制部16aと、保持部16を左右方向から規制する左右規制部16bとから構成されている。
【0046】
前後規制部16aは、板状の形状を有し、前後の周壁部12bに沿って形成されると共に、前後の周壁部12bとの間で補強板15を挟み込むことが可能となるように構成されている。また、前後規制部16aは、肉厚補強部14の外側領域14cから起立するように形成されていると共に、容器本体10の左右方向の中央部に形成されている。
【0047】
また、左右規制部16bは、前後規制部16aの左右方向端部から前後の周壁部12bに向かって形成されている。これにより、上方に向かって開放する保持溝17が保持部16に形成され、該保持溝17へ補強板15を抜き差しすることで、補強板15が容器本体10に対して着脱可能となっている。
【0048】
以上のような構成からなる保冷容器1の製造方法について説明する。上記本実施形態に係る保冷容器1(容器本体10や上蓋20)を製造する際には、成形機(横型成形機や縦型成形機)が用いられる。本実施形態では、成形機として横型成形機40は、図5に示すように、第一金型41と水平方向(横方向)に接離可能に構成された第二金型42とを備え、第二金型42は接離方向に沿って凸状に形成された凸状部を有し、また第一金型41は前記凸状部を水平方向(横方向)に差し入れ可能に形成された凹状部を備え、また第一金型41は、成形品を押し出すための押出ピン43を備える。ここで、第一金型41の凹状部内側の形状は、例えば保冷容器1の容器本体10の成形の場合には、本発明に係る容器本体10の上面を除く外形の形状と同じように構成される。
【0049】
前記成形機による保冷容器1の製造について具体的に説明すると、図5(a)のように、第二金型42の凸状部が第一金型41の凹状部に差し入れられた状態(型閉状態)で、凸状部と凹状部との間に形成される成形空間に樹脂材料を充填して発泡合成樹脂成形品を成形する。続いて、図5(b)のように、前記成形品を成形空間から取り出すために、型閉状態にある第一金型41から第二金型42を離間させて型開きし、第一金型41から第二金型42を十分に離間させた後、図5(c)のように、第一金型41に残った成形品を凹状部内から凹状部の開口方向に押出ピン43によって押し出し、成形品を地面に落下させて、その地面に落下した成形品を回収する。そして、この回収された成形品が、保冷容器1として使用されることとなる。
【0050】
以上の保冷容器1の製造過程において、離型時、保冷容器1(容器本体10又は上蓋20)を落下させ、例えば保冷容器1の損傷し易い角部が地面と衝突した場合でも、保冷容器1の角部が上記形状の角取り部となるように形成されるため、落下衝撃による角部への負荷(応力集中)を効果的に低減させて、保冷容器1の角部の損傷を防止することができる。
【0051】
従って、本実施形態にかかる保冷容器1によれば、保冷容器1の製造過程において、離型時、保冷容器1を落下させ、保冷容器1が地面と衝突することに対して、保冷容器1の角部の損傷を防止することができる結果、外観の美感が損なわれる(発泡合成樹脂成型品としての商品価値が落ちる)のを防止することができる。
【0052】
さらに、かかる構成からなる保冷容器1によれば、前記容器本体10の本体底部11の切欠部11cのエッジ部において角取り部32が形成されており、該角取り部32が丸みを帯びているため、切欠部11cの角部の損傷を防止することができるだけでなく、角取り部32のR値が、容器本体10の角取り部30のR値と比較して小さく設定されているため、切欠部11cに指を掛けて保冷容器1を持つ際に、指が滑り易くなることを防止できる。
【実施例】
【0053】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
(辺部の損傷確認試験)
上記保冷容器の製造方法(図5を参照)によって、サイズ(寸法)、発泡倍率(重量)、辺部角取り部の曲率半径の各々のパラメータを変化させた種々の保冷容器を製造して、保冷容器の辺部における、落下の衝撃による損傷程度を目視で確認した。図6は、辺部の損傷確認試験に用いた試験体であって、各パラメータ(サイズ(寸法)、発泡倍率(重量)、辺部角取り部の曲率半径)を変更した試験体1乃至37の一覧を示した図である。また、試験体毎に、辺部角取り部の曲率半径を重量で除算した値を算出し、図6に表記している。尚、サイズは、LL,L,M,SS,L2の5種類であり、各サイズの寸法は、長さ、幅、高さの順に、LLが、1650(mm)×680(mm)×297.5(mm)であり、Lが、1650(mm)×585(mm)×320(mm)であり、またMが、1520(mm)×555(mm)×310(mm)であり、SSが、1400(mm)×470(mm)×300(mm)であり、L2は、1400(mm)×550(mm)×320(mm)である。
【0055】
試験体1,2では、辺部角取り部の曲率半径は小さいので、辺部において程度の大きい損傷を目視で確認した。試験体3〜37では、損傷する程度は小さくほぼ無いに等しい、もしくは、損傷しないことを目視で確認した。ただし、試験体36,37では、辺部角取り部の曲率半径は大きく、当該箇所の肉厚が薄くなり、そのため当該箇所の強度が弱くなるだけでなく、容器自体の強度も弱く(成形性も弱く)なった。よって、試験体3〜35が好ましく、即ち、辺部角取り部について、R値[m]は、容器本体の重量[N]に対する比で、1.7×10-4以上であり、1.9×10-3以下である場合、容器自体の強度(成形性)を保持しつつ、辺部の損傷を有効に防止することができ、その結果、外観の美感が損なわれることはないことがわかった。
【0056】
(隅部の損傷確認試験)
辺部の損傷確認試験と同様に、上記保冷容器の製造方法(図5を参照)によって、サイズ(寸法)、発泡倍率(重量)、隅部角取り部の曲率半径の各々のパラメータを変化させた種々の保冷容器を製造して、保冷容器の隅部における、落下の衝撃による損傷程度を目視で確認した。図7は、隅部の損傷確認試験に用いた試験体であって、各パラメータ(サイズ(寸法)、発泡倍率(重量)、隅部角取り部の曲率半径)を変更した試験体38乃至74の一覧を示した図である。また、試験体毎に、隅部角取り部の曲率半径を重量で除算した値を算出し、図7に表記している。
【0057】
試験体38,39では、隅部角取り部の曲率半径は小さいので、隅部において程度の大きい損傷を目視で確認した。試験体40〜74では、損傷する程度は小さくほぼ無いに等しい、もしくは、損傷しないことを目視で確認した。ただし、試験体73,74では、隅部角取り部の曲率半径は大きく、当該箇所の肉厚が薄くなり、そのため当該箇所の強度が弱くなるだけでなく、容器自体の強度も弱く(成形性も弱く)なった。よって、試験体40〜72が好ましく、即ち、隅部角取り部について、R値[m]は、容器本体10の重量[N]に対する比で、5.1×10-4以上であり、5.2×10-3以下である場合、容器自体の強度(成形性)を保持しつつ、隅部の損傷を有効に防止することができ、その結果、外観の美感が損なわれることはないことがわかった。
【0058】
尚、本発明に係る保冷容器1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、容器本体10の左右の本体側壁12A,12Aの上部や前後の本体側壁12B,12Bの上部(上蓋20の嵌合用凸条23が嵌合する容器本体10上部面の周囲部)には、R値が大きな角取り部が形成されていないが、角取り部30のようなR値が大きい角取り部を形成することも可能である。また、上蓋20の左右の上蓋側壁22A,22Aの下部や前後の上蓋側壁22B,22Bの下部(上蓋の嵌合用凸条23の容器本体10に嵌合する上蓋20下面の外側周囲部)についても、上記容器本体10の左右の本体側壁12A,12Aの上部、前後の本体側壁12B,12Bの上部と同様に、R値が大きい角取り部を形成することが可能である。
【0060】
また、上記実施形態の保冷容器1の内部構造についても、以下のように種々の変更が可能である。
【0061】
上記実施形態では、補強用硬質部15として補強板15を用いているが、これに限定されるものではなく、前後の本体側壁12B,12Bにおけるマグロが当接する部分が他の部分よりも強度が高くなるように構成されてもよい。例えば、マグロが当接する部分の発泡倍率が他の部分よりも低くなるように形成することで強度を部分的に向上させても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、容器本体10に肉厚補強部14と補強用硬質部15とが備えられているが、これに限定されるものではなく、肉厚補強部14及び補強用硬質部15のうち何れか一方、或いは両方を備えない容器本体10であっても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、上蓋20が蓋体周壁部22を備えているが、これに限定されるものではなく、上蓋天部21のみから上蓋20が構成されてもよい。かかる場合には、上蓋天部21の外周部に嵌合用凸条23が形成され、上蓋天部21によって容器本体10の開口が閉塞されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1…保冷容器、10…容器本体、11…本体底部、12…本体周壁部、13…嵌合用凸条、20…上蓋、23…嵌合用凸条、30…(容器本体の)角取り部、30A…辺部角取り部、30B…隅部角取り部、31…(上蓋の)角取り部、31A…辺部角取り部、31B…隅部角取り部、32…(切欠部の)角取り部、F…マグロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡合成樹脂よりなるマグロを収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体の底部と壁部とが交わって角をなす辺部に、容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が1.7×10-4以上、1.9×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることを特徴とする保冷容器。
【請求項2】
前記容器本体の隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部に、容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が5.1×10-4以上、5.2×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の保冷容器。
【請求項3】
発泡合成樹脂よりなるマグロを収容するための容器であって、上面が開口する箱状の容器本体を備え、該容器本体の隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部に、容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が5.1×10-4以上、5.2×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることを特徴とする保冷容器。
【請求項4】
前記容器本体の上面の開口を閉塞する上蓋を備え、該上蓋の天部と壁部とが交わって角をなす辺部に、前記容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が1.7×10-4以上、1.9×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保冷容器。
【請求項5】
前記容器本体の上面の開口を閉塞する上蓋を備え、該上蓋の隣り合う二つの壁部が交わって角をなす隅部に、前記容器本体の重量に対する半径値の比[m/N]が5.1×10-4以上、5.2×10-3以下の範囲内で設定される角取り部が形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3又は請求項2に従属する請求項4に記載の保冷容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66848(P2012−66848A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213608(P2010−213608)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】