説明

保冷用多層繊維構造体および保冷シートおよび繊維製品

【課題】優れた冷却効果を有し、しかも濡れ感の小さい保冷用多層繊維構造体および保冷シートおよび繊維製品を提供する。
【解決手段】有機繊維で構成される透水層、自重の20倍以上の吸水特性を有する吸水性繊維と160℃以下の温度で溶融または軟化する熱接着性繊維とで構成される吸水層、およびフィルムで構成される防水層をこの順に積層し、保冷用多層繊維構造体を得た後、該保冷用多層繊維構造体を用いて保冷シートを得て、必要に応じて繊維製品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた冷却効果を有し、しかも濡れ感の小さい保冷用多層繊維構造体および保冷シートおよび繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体を簡易的に冷却するために、冷凍した保冷剤を首バンドや帽子などの繊維製品の一部に組込み身体に当てることにより体温上昇を防ぐもの、高吸水性ポリマー粒子を繊維製品に組込み、多量の水を吸収させることでその気化熱を利用し体温上昇を防ぐものなどが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、冷凍した保冷剤を利用する場合、一定の保冷効果が得られるものの、体温との温度差が大きすぎるため大量の結露が発生することによる濡れや冷症等による不快感が発生するという問題があった。また、高吸水性ポリマー粒子を用いたものでは、吸水時に高吸水性ポリマー粒子同士が融合接着(ブロッキング)し液体が塊状になるため(冷却体自体の通気性が失われ)、液体の蒸発効率が悪く、冷却効果が得られにくいという問題があった。
なお、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維からなる吸水繊維は、例えば、特許文献3などで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−290822号公報
【特許文献2】特開平9−220250号公報
【特許文献3】特開2004−314311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた冷却効果を有し、しかも濡れ感の小さい保冷用多層繊維構造体および保冷シートおよび繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、吸水性繊維と熱接着性繊維とからなる吸水層は吸水時にブロッキングし難いため通気性が損われず、その結果、優れた冷却効果を有すること、また、かかる吸水層に防水フィルムを積層することにより濡れ感を低減することができることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「有機繊維で構成される透水層、吸水性繊維と熱接着性繊維とで構成される吸水層、およびフィルムで構成される防水層がこの順に積層され、かつ下記(1)および(2)の要件を同時に満足することを特徴とする保冷用多層繊維構造体。
(1)前記吸水繊維が、自重の20倍以上の吸水特性を有する吸水繊維である。
(2)前記熱接着性繊維が、160℃以下の温度で溶融または軟化する繊維である。」が提供される。
【0008】
その際、前記吸水性繊維が、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維またはアクリル繊維の表面を加水分解したアクリレート系繊維であることが好ましい。また、前記有機材料がポリエチレン繊維および/またはポリプロピレン繊維であることが好ましい。また、前記フィルムがポリオレフィンからなることが好ましい。
【0009】
本発明の保冷用多層繊維構造体において、多層繊維構造体の厚みが0.5〜5mmの範囲内であることが好ましい。また、多層繊維構造体の目付けが100〜500g/mの範囲内であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、前記の保冷用多層繊維構造体を用いてなる保冷シートが提供される。その際、保冷シートの外周縁部が熱圧着処理されていることが好ましい。また、保冷シートが切取り部および/または折り目部を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、前記保冷シートを備えてなる、衣服、バンド、バンダナ、帽子、はちまき、帽子、ヘルメット、首周り装具品、携帯ストラップ、眼鏡付属品、および鮮度保持材からなる群より選択される繊維製品が提供される。その際、前記保冷シートが着脱式であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた冷却効果を有し、しかも濡れ感の小さい保冷用多層繊維構造体および保冷シートおよび繊維製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の保冷シートの一例である。
【図2】首冷却用や額冷却用に用いられるバンド(鉢巻状製品)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の保冷用多層構造体において、有機繊維で構成される透水層、吸水性繊維と熱接着性繊維とで構成される吸水層、およびフィルムで構成される防水層がこの順に積層されている。
【0015】
本発明で用いられる吸水性繊維としては、吸水量が自重の20倍以上であるものを用いる必要がある。吸水量が20倍未満のときは、保冷体に含むことができる水量が少なくなり、気化熱を利用し体温上昇を防ぐ効果が短時間になるため好ましくない。また吸水量20倍未満のもので所定の吸収量を確保するためには、繊維重量や厚みが実使用上問題になるおそれがある。吸水量が自重の20倍以上のときは保冷体に含むことが出来る水の量が確保しやすいため、冷却効果が長く、しかも薄くて軽い保冷体を作ることができる。特に吸水量が40倍以上(特に好ましくは50〜80倍)であることが好ましい。
【0016】
上記特性を備えた吸水性繊維の例としては、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維、アクリル繊維を後加工によりその表面を加水分解させた繊維などがあげられる。架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維の例としては、特開昭63−159405号公報にカルボン酸基を持つビニルモノマーとカルボン酸基と反応してエステル架橋結合を形成し得るヒドロキシル基を持つビニルモノマーの共重合体からなり、カルボン酸基の一部がナトリウム塩を形成しているポリマーからなる繊維が例示される。また、アクリル繊維の表面を加水分解して吸水性を付与する方法は、特開平1−183515号公報に例示される。これらの繊維は単独でまたは2種以上を併用してもよい。これらの吸放湿性繊維の市販品としては、例えば帝人ファイバー(株)製、商品名「ベルオアシス(登録商標)」や東洋紡績(株)製、商品名「ランシール」(登録商標)などがあげられる。特に「ベルオアシス(登録商標)」は架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維であり、純水の吸水率は5000wt%(自重の50倍)である。さらに該繊維は吸水速度が速く素早く保水させることができること、また他の高吸収性粉体と異なり概繊維を含むシートは多量の微粉末が流出することなく直接熱加工、超音波加工等を行うことができ、加工特性上好ましい。
【0017】
一方、熱接着性繊維とは、160℃以下の温度で溶融または軟化する繊維のことである。このような繊維を用いることにより接着剤を使用することなく繊維同士を熱接着し、吸水層を形成することができる。このような熱接着性繊維には単一成分からなる単一型熱接着性繊維と、低融点成分と高融点成分からなる複合型熱接着性繊維がある。単一型熱接着性繊維の例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなる繊維が挙げられる。一方、複合型熱接着性繊維の例としては、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)とホモPETからなる複合繊維、ポリオレフィンとPETからなる複合繊維等が挙げられる。本発明に使用する熱接着性繊維としては複合型のものが好ましい。複合型熱接着繊維を用いることにより熱接着後も高融点成分が溶融せずに残るため、繊維形態を保持し不織布としての強度も保持することができるためである。これらの繊維は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0018】
本発明において、吸水層には前記の吸水繊維と熱接着性繊維とが含まれる。その際、前記吸水繊維は吸水層の重量対比15〜50重量%(より好ましくは25〜50重量%)で吸水層に含まれることが好ましい。吸水繊維の含有量が該範囲よりも小さいと、保冷体が十分な吸水量を確保するために繊維量を多くする必要があり、厚みが大きくなり装着感が悪くなる他濡れ感が生じ実使用上問題となるおそれがある。逆に、吸水繊維の含有量が該範囲より大きいと吸水時に、吸水性繊維同士が重なりブロッキングを起こし通気性が損なわれ、水分蒸発が阻害されることにより、十分な冷却効果が得られないおそれがある。
【0019】
また、前記熱接着性繊維は吸水層の重量対比10〜50重量%(より好ましくは20〜50重量%)で吸水層に含まれることが好ましい。前記熱接着性繊維の含有量が該範囲よりも小さいと、シート厚みを所定厚みにすることが困難で、吸水時に吸水性繊維同士が重なり通気性が損なわれ、水分蒸発が阻害されることにより、十分な冷却効果が得られないおそれがある。また、実使用上、保冷体の内部からの繊維流出を防ぐために外周縁部を覆う必要があるが、熱接着性繊維が当該範囲にあると、熱圧着、超音波シール、高周波ウェルダー等を用いて、直接保冷体の外周部を接合被覆することができ、工程短縮、安価提供の意味で有用である。
【0020】
本発明において、前記吸水層には、前記吸水性繊維と熱接着性繊維以外の他の繊維も使用することができる。その際、他の繊維の種類は特に限定しない。合成繊維、天然繊維、再生繊維などすべての有機系繊維を使用することが出来る。また、中空繊維、難燃繊維、消臭繊維、防カビ繊維等の機能性繊維を使用することにより、それぞれの機能を付与することもできる。これらの繊維は2種以上を混合して用いてもよい。また、吸水層中には必要に応じて、例えば粉末あるいは粒状の難燃剤、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤等の各種の添加剤を添加することもできる。
【0021】
前記吸水層において、その構造は特に限定されず織物、編物、不織布が例示される。特に、不織布が、組織間空隙が小さく好ましい。かかる不織布としては、エアレイド、ニードルパンチ、サーマルボンド、ケミカルボンドなどによって製造される不織布があげられる。特にエアレイドが好ましい。エアレイド製法で作製された不織布は、その構造体の中に吸水性繊維が均一に配置され易く好ましい。
【0022】
本発明において、透水層は有機繊維で構成される。その際、前記有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸(scPLA)またはこれらの共重合体からなるポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、コットン繊維などが例示される。なかでも、ポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維が、比較的融点が低いため、後記のように保冷シートの外周縁部を熱圧着しやすく好ましい。また、かかる透水層の構造としては、織物、編物、不織布などの布帛が好ましく、特に吸水層の繊維の脱落を防ぐ上で不織布が好ましい。なお、透水層の厚さとしては1.0mm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明において、防水層を構成するフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンからなるフィルムが好ましい。ポリオレフィンの融点が低いため後記のように保冷シートの外周縁部を熱圧着しやすく好ましい。また、かかるフィルムはフイルムに微細な孔開き加工を施した有孔フィルムであってもよい。なお、防水層の厚さとしては1.0mm以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の保冷用繊維構造体を製造する方法は、エアレイド、ニードルパンチ、サーマルボンド、ケミカルボンドなどによって製造される不織布があげられるが特に限定されない。
【0025】
例えば吸水繊維と熱接着性繊維とを混綿、開繊後、カード機にてウェッブを作製し、その後ニードルパンチなどを行い不織布(吸水層)とした後、乾燥機及びエンボスローラーにて所定厚みになる様に熱処理し、さらにその後、前記透水層および防水層をかかる不織布(吸水層)の表裏に積層接着させる方法、また吸引ネット上の通気性を有するシート上に吸引ネット側から吸水性繊維と熱融着性繊維を主とする繊維混合物を連続的に散布し、さらにその散布繊維の上からシートを積層させ三層構造とした後、所定厚みになる様に加熱処理をする方法等が挙げられる。
【0026】
かくして得られた保冷用繊維構造体において、形状は特に限定されないが、取扱い性の点で薄いシート状の形状を有することが好ましい。その際、厚みとしては0.5〜5mmの範囲内であることが好ましい。該厚みが0.3mmよりも小さいと十分な吸水性能が得られないおそれがある。逆に、該厚みが5mmよりも大きいと取扱い性が損なわれるおそれがある。また、保冷用繊維構造体の目付けとしては、100〜500g/m(より好ましくは150〜300g/m)の範囲内であることが好ましい。該目付けが100g/mよりも小さいと十分な吸水性能が得られないおそれがある。逆に、該目付けが500g/mよりも大きいと取扱い性が損なわれるおそれがある。
【0027】
また、保冷用繊維構造体の見掛け密度が0.02〜0.8g/cmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば適度な空隙が得られ、前記吸水時、吸水性繊維同士が重なり通気性が損なわれ、水分蒸発性の低下が少ない。さらに好ましくは0.05〜0.5g/cmである。
【0028】
かくして得られた保冷用繊維構造体において、吸水繊維を含む吸水層は透水層を通して吸水した水分を含み体積変化をする。その際、吸水層には所定量の熱接着性繊維が含まれるため、吸水時にブロッキングし難いため通気性が損われず、その結果、優れた冷却効果を有すること、また、かかる吸水層に防水層が積層されているので、防水層を肌側に使用することにより濡れ感を低減することが可能になる。
【0029】
次に、本発明の保冷シートは、前記の保冷用多層繊維構造体を用いてなる保冷シートである。ここで、保冷シートは、保冷シートの外周縁部からの内容物の流出を防ぐため、適当な大きさ及び形状にカットし、切り口を封鎖することが好ましい。外周縁部を封鎖する(覆う)方法は特に限定しないが、一例として、当概保冷シートの外周部を直接熱圧着、超音波シール、高周波ウェルダー等を用いて接合被覆する方法や、保冷シートを包装材に収納して使用することもできる。この時、該包装材は少なくとも一部が透湿性または通気性を有する素材であることが好ましく、さらに該包装材はその外周縁部が接合されていることが好ましい。包装材または前記保冷シートの表裏材に、難燃性、消臭性、抗菌性、防カビ性、電気絶縁性等の各種の機能を有した素材を用いることによりこれらの機能を有した保冷シートを得ることもできる。
【0030】
さらに図1に示す様に、取り付け部位に応じて、大きさを可変することを目的として切取り加工部や、曲げて使用されることも考慮し、前記加工方法を用いて予め折り目部を有する保冷シートであってもよい。
【0031】
かくして得られた保冷シートにおいて、その吸水量は自重の10倍以上、好ましくは20倍以上であることが好ましい。保冷シートは、製品に縫製等で組み込まれることなく、予ポケットの様なものを利用して出し入れして使用する方法(着脱式)が好ましい。保冷シートのみを水に浸漬しポケット内で使用することで、浸漬時従来品に多く見られる保冷体以外の部分への水付着による濡れ感を軽減することができ、さらには、長時間使用により乾燥した場合に保冷シートのみ取り出し、水の追添加によって冷却効果の延長が容易である。また取外し容易な保冷シートに水を吸収させた状態で予め冷蔵し、使用することで冷却持続時間の延長も行うことも可能である。
なお、保冷シートの裏面に両面テープを取り付け、着衣や帽子にそのまま貼り付けて使用することも有用である。
【0032】
次に、本発明の繊維製品は、前記保冷シートを備えてなる、衣服、バンド、バンダナ、帽子、はちまき、帽子、ヘルメット、首周り装具品、携帯ストラップ、眼鏡付属品、および鮮度保持材からなる群より選択される繊維製品である。特に、本発明の繊維製品は優れた冷却効果を有し、しかも濡れ感の小さいので、暑い屋内外環境時に着用するウエアやヘルメット、帽子、バンダナ、首周り着用具の一部として、また、生鮮品の輸送時に使用する部材として、過温上昇抑制、過乾燥抑制等の目的で特に好適に使用することができる。さらには、本発明の繊維製品は薄くて軽く、濡れ感が少なく取扱い性にも優れる。衣服や装具品など本発明の繊維製品を使用することで、炎天下の作業時に生じやすい体温の過上昇を和らげることが可能となる。
ここで、前記繊維製品において、保冷シートが図2のようなポケット式または、面ファスナーなどにより着脱式であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)厚さ
多層構造体の厚さをJIS L1085により測定した。
(2)吸水率
20℃、65%RHの恒温恒湿槽中に一晩(12時間以上)静置調湿した素材(原綿)を市販のティーバックの中入れ、開口部をシールする。素材が入ったティーバックごと水に30分間浸漬、その後水から取り出し10分間吊下げた後の重量と初期重量との比率で、吸水率(倍)を算出した。
吸水率(倍)=10分間吊下げた後の重量/初期重量
(3)目付け
多層構造体の目付をJIS L1085により測定した。
(4)融点
Du Pont社製 熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とした。
(5)表面温度
保冷シートを発砲スチロールの上に置き、温度35℃、湿度60%RH下の室内に放置した。この時、保冷シートと発砲スチロールの間に温度センサーを取り付け、放置1時間後の保冷シートの温度を測定した。
(6)保冷持続性
保冷シートを35℃、湿度60%RH下の室内に放置し、保冷シート中の水分が気化した変化量を1時間おきに測定、8時間後の残存水分率を計測した。
(7)濡れ感
試験者3人が官能評価により濡れ感を、○:濡れ感がない、△:濡れ感が少しある、×:濡れ感がある、の3段階に評価した。
(8)保冷シートの外周縁部熱圧着加工性
保冷シートを水中に1分間浸漬させ30秒放置、外周縁部の破れの有無を目視判定し、○:破れがない、△:破れが少しある、×:破れがある、の3段階に評価した。
【0034】
[実施例1〜4]
保冷用繊維構造体を、目付けおよび厚みが表1に示す値となるよう下記製造方法により作製した。吸水繊維には帝人ファイバー(株)製「ベルオアシス」(架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維、吸水率(自重の50倍)、10dtex、5mm)、一方、熱融着性繊維には、芯にポリプロピレン、鞘にポリエチレン(融点132℃)を複合した芯鞘型熱融着性繊維(チッソ(株)製、4.4dtex、6mm)、その他繊維にはセルロース繊維(パルプ)を、また表面シートaにはポリプロピレン、ポリエチレン繊維からなるスパンボンド不織布(シンテックス(商品名)、目付け20g/m)を使用、表面シートbには厚さ30μmのポリエチレンフイルムを使用した。
表1に記載の組成で繊維を混綿した後、該繊維を吸引ネット上の表面シートa上に均一になるようにエアレイド法により連続的に散布し、吸水層を形成した。次にこの吸水層を100〜150℃で加熱処理し、さらに加熱処理ゾーン出口にて、その上に表面シートbを積層して三層構造とし、ローラーで圧縮して全体を接着した。またその後、30mm×100mmのサイズにて超音波溶断し、端外周部を接合被覆し保冷シートを得た。
【0035】
[比較例1]
市販パイル状の綿100%タオルを、30mm×100mmのサイズにカットし試料を得た。
得られた綿100%タオルを、水の中に5分間浸し、表面の余剰水をティッシュで拭き取り、その後チャック付のビニール袋に入れ5℃に設定した冷蔵庫内で12時間冷却。冷却後綿100%タオルをビニール袋から取り出し、表面温度、保冷持続性を測定した。その測定値は表2に記載した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、優れた冷却効果を有し、しかも濡れ感の小さい保冷用多層繊維構造体および保冷シートおよび繊維製品が得られ、その工業的価値は極めて大である。
【符号の説明】
【0039】
1:外周縁部
2:外周縁部
3:保冷シート保冷部
4:切取加工部(折り目部)
5:切取加工部(折り目部)
6:保冷シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維で構成される透水層、吸水性繊維と熱接着性繊維とで構成される吸水層、およびフィルムで構成される防水層がこの順に積層され、かつ下記(1)および(2)の要件を同時に満足することを特徴とする保冷用多層繊維構造体。
(1)前記吸水繊維が、自重の20倍以上の吸水特性を有する吸水繊維である。
(2)前記熱接着性繊維が、160℃以下の温度で溶融または軟化する繊維である。
【請求項2】
前記吸水性繊維が、架橋ポリアクリル酸ナトリウム系繊維またはアクリル繊維の表面を加水分解したアクリレート系繊維である、請求項1に記載の保冷用多層繊維構造体。
【請求項3】
前記有機材料がポリエチレン繊維および/またはポリプロピレン繊維である、請求項1または請求項2に記載の保冷用多層繊維構造体。
【請求項4】
前記フィルムがポリオレフィンからなる、請求項1〜3のいずれかに記載の保冷用多層繊維構造体。
【請求項5】
多層繊維構造体の厚みが0.5〜5mmの範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の保冷用多層繊維構造体。
【請求項6】
多層繊維構造体の目付けが100〜500g/mの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の保冷用多層繊維構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の保冷用多層繊維構造体を用いてなる保冷シート。
【請求項8】
保冷シートの外周縁部が熱圧着処理されてなる、請求項7に記載の保冷シート。
【請求項9】
保冷シートが切取り部および/または折り目部を有する、請求項7または請求項8に記載の保冷シート。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の保冷シートを備えてなる、衣服、バンド、バンダナ、帽子、はちまき、帽子、ヘルメット、首周り装具品、携帯ストラップ、眼鏡付属品、および鮮度保持材からなる群より選択される繊維製品。
【請求項11】
前記保冷シートが着脱式である、請求項10に記載の繊維製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−62916(P2011−62916A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215572(P2009−215572)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】