説明

保存容器

【課題】内容物の鮮度を維持し、腐食を防止することができる保存容器を提供する。
【解決手段】保存容器1は、上面に開口部が設けられた外箱21と、外箱21に内包され、上面に開口部が設けられた内箱22とを有し、外箱21の上面開口部の外周部と内箱22の上面開口部の外周部とを接合した二重構造の箱体2と、箱体の上部開口部を閉塞し得る蓋体3と、外箱21と内箱22との間隙に嵌挿された断熱層4とを備え、断熱層4は、内箱21側から順にハニカム状板材41と、真空断熱パネル42と、発泡樹脂43とが積層された3層構造を有する断熱容器5と、断熱容器5内に収納されるオゾン発生装置7又はオゾンを氷の中に閉じ込めたオゾン氷91を内包するオゾン氷包装体9及び蓄冷材8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の鮮度を維持し、腐食を防止することのできる保存容器に関する。
【背景技術】
【0002】
生鮮食品等を輸送する場合、輸送する間、生鮮食品等の鮮度を維持し、生鮮食品等を腐食させないようにする必要があるが、その輸送時間が長いと、輸送する間に生鮮食品等の鮮度が落ちてしまったり、生鮮食品等が腐食してしまったりするおそれがある。生鮮食品等の腐食を防止するために、従来、生鮮食品等を、真空断熱パネルを用いた保存容器に収納し、保冷車等により配送している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のような保存容器に生鮮食品等を収納して保冷車等により輸送する場合、保存容器に用いられている真空断熱パネルは、輸送中に保冷車等の中で保存容器に外部等からの衝撃等が与えられると、その一部に損傷が生じてしまい、それにより真空断熱パネルの真空性が破壊されて断熱効果が失われてしまうという問題がある。
【0004】
このような問題に鑑みて、本発明は、容器内の温度を長時間一定温度に保持することのできる断熱容器、及び内容物の鮮度を維持し、腐食を防止することができる保存容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、上面に開口部が設けられた外箱と、当該外箱に内包され、上面に開口部が設けられた内箱とを有し、当該外箱の上面開口部の外周部と当該内箱の上面開口部の外周部とを接合した二重構造の箱体と、前記箱体の上部開口部を閉塞し得る蓋体と、前記外箱と前記内箱との間隙に嵌挿された断熱層とを備え、前記断熱層は、前記内箱側から順にハニカム状板材と、真空断熱パネルと、発泡樹脂とが積層された3層構造を有する断熱容器と、前記断熱容器内に収納されるオゾン発生装置又はオゾンを氷の中に閉じ込めたオゾン氷を内包するオゾン氷包装体及び蓄冷材とを備えることを特徴とする保存容器を提供する(請求項1)。
【0006】
断熱容器は、二重構造を有する箱体の中空部(外箱と内箱との間隙)に断熱層が形成されており、当該断熱層がハニカム状板材と真空断熱パネルと発泡樹脂が積層された3層構造を有するため、断熱効果に優れたものとなっており、その断熱容器内にオゾン発生装置又はオゾンを氷の中に閉じ込めたオゾン氷を内包するオゾン氷包装体及び蓄冷材が収納されることで、上記発明(請求項1)によれば、内容物の鮮度を維持し、腐食を防止することができる。
【0007】
上記発明(請求項1)においては、前記蓋体は、上部蓋部材の外周部と下部蓋部材の外周部とを接合した二重構造を有しており、前記上部蓋部材と前記下部蓋部材との間隙には、前記断熱層が嵌挿されていることが好ましい(請求項2)。
【0008】
上記発明(請求項2)によれば、箱体を閉塞する蓋体も中空二重構造を有しており、当該中空部に3層構造を有する断熱層が嵌挿されているため、断熱容器の断熱効果がさらに優れたものとなっており、内容物の鮮度をより維持し、腐食をより防止することができる。
【0009】
上記発明(請求項1,2)においては、前記真空断熱パネルは、熱伝導率の低いコア材と、前記コア材を被覆する合成樹脂フィルムとから構成されており、前記コア材は、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及びナイロン繊維のうちの少なくとも1種の繊維からなる繊維集合体であることが好ましい(請求項3)。
【0010】
上記発明(請求項1〜3)においては、前記断熱層の熱伝導率が、0.0098W/mK以下であることが好ましい(請求項4)。かかる発明(請求項4)によれば、断熱層の熱伝導率が上記数値以下であることで、断熱容器内の温度を長時間一定の温度に維持することができ、内容物の鮮度を維持し、腐食を防止することができる。
【0011】
上記発明(請求項1〜4)においては、前記真空断熱パネルは、高強度繊維からなる保護材にて被覆されていることが好ましい(請求項5)。また、上記発明(請求項5)においては、前記高強度繊維は、アラミド繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び金属繊維のうちの少なくとも一種であることが好ましい(請求項6)。
【0012】
上記発明(請求項6)によれば、真空断熱パネルが高強度繊維であるアラミド繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等からなる保護材にて被覆されていることで、外部からの衝撃等があったとしても、それにより真空断熱パネルに損傷が生じるおそれがなく、真空断熱パネルを含む断熱層の断熱効果を維持することができる。
【0013】
上記発明(請求項1〜6)においては、前記オゾン発生装置は、特定の波長の紫外線を照射する紫外線ランプと、前記紫外線ランプに電力を供給するインバータ回路と、前記紫外線ランプを収納する紫外線ランプ収納室及び前記インバータ回路を収納するインバータ回路収納室を有するハウジングと、前記紫外線ランプ収納室に給気する給気部と、前記紫外線ランプ収納室の一の壁面に設けられ、前記紫外線ランプ収納室内にて発生したオゾンガスを排出する排出孔とを備えることが好ましい(請求項7)。
【0014】
オゾン発生装置が、紫外線ランプから特定の波長を有する紫外線が照射されることにより、ハウジング内の空気中の酸素がオゾンに変換されるため、容易にオゾンを生成することができるため、上記発明(請求項7)によれば、オゾン発生装置にて生成されたオゾンガスが有する殺菌効果により、内容物の鮮度を維持し、腐食を防止することができる。
【0015】
上記発明(請求項7)においては、前記給気部は、弁機構を介して前記紫外線ランプ収納室に設けられており、前記弁機構は、前記給気部からの給気が停止されたときに、前記紫外線ランプ収納室内から前記給気部側へのオゾンガスの逆流を防止し得ることが好ましい(請求項8)。
【0016】
給気部からの給気が停止されたときに、紫外線ランプ収納室内にて発生したオゾンガスが給気部に接触すると、給気部を構成する部材等がオゾンガスにより腐食するおそれがあるが、上記発明(請求項8)によれば、弁機構が設けられていることで、給気部側にオゾンガスが逆流することがないため、給気部を構成する部材等が腐食することもない。
【0017】
上記発明(請求項7,8)においては、前記オゾン発生装置は、前記インバータ回路から前記紫外線ランプへの電力の供給を制御する制御部をさらに備えることが好ましい(請求項9)。
【0018】
上記発明(請求項9)によれば、制御部により紫外線ランプへの電力の供給が制御されることで、消費電力を少なくすることができるとともに、過剰なオゾンガスの生成を抑制することができる。
【0019】
上記発明(請求項9)においては、前記制御部は、パルスタイマーであることが好ましい(請求項10)。保存容器内のオゾンガス濃度が所定値を超えてしまうと、例えば、内容物が変色してしまったり、断熱容器の内壁面が腐食してしまったりするおそれがあるが、上記発明(請求項10)によれば、パルスタイマーにより予め通電時間等を設定しておくことができるため、保存容器内における内容物の殺菌を目的とした必要十分量のオゾンガスを生成することができ、過剰なオゾンの生成を抑制することができる。
【0020】
上記発明(請求項7〜10)においては、前記紫外線ランプ収納室の内壁面には、前記紫外線ランプから照射された紫外線を反射し得る金属製シートが取り付けられていることが好ましい(請求項11)。
【0021】
上記発明(請求項11)によれば、紫外線ランプ収納室の内壁面に紫外線を反射し得る金属製シートが取り付けられていることで、紫外線ランプから照射される紫外線を効率的にオゾン生成に使用することができるとともに、紫外線ランプ収納室の内壁面に紫外線が照射されることによる当該内壁面の劣化を防止することができる。
【0022】
また、本発明は、上面に開口部が設けられた外箱と、当該外箱に内包され、上面に開口部が設けられた内箱とを有し、当該外箱の上面開口部の外周部と当該内箱の上面開口部の外周部とを接合した二重構造の箱体と、前記箱体の上部開口部を閉塞し得る蓋体と、前記外箱と前記内箱との間隙に嵌挿された断熱層とを備え、前記断熱層は、前記内箱側から順にハニカム状板材と、真空断熱パネルと、発泡樹脂とが積層された3層構造を有する断熱容器と、前記断熱容器内に収納されるオゾン発生装置又はオゾンを氷の中に閉じ込めたオゾン氷を内包するオゾン氷包装体及び蓄冷材とを備えることを特徴とする生鮮食品保存用容器を提供する(請求項12)。かかる発明(請求項12)によれば、生鮮食品の鮮度を維持し、腐食を防止することができる生鮮食品保存用容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、容器内の温度を長時間一定の温度に維持することのできる断熱容器、及び内容物の鮮度を維持し、腐食を防止することができる保存容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る保存容器を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る保存容器における断熱容器を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示す断熱容器のA−A線断面図であり、図3は、本実施形態に係る保存容器におけるオゾン発生装置を示す概略構成図であり、図4は、本実施形態に係る保存容器におけるオゾン発生装置を示すブロック図であり、図5(A)は、本実施形態におけるオゾン氷包装体を示す概略斜視図であり、図5(B)は、本実施形態におけるオゾン氷包装体において、オゾン氷を袋体に収容する過程を示す概略斜視図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る保存容器1は、中空二重構造を有する箱体2、箱体2の上部開口部2Aを閉塞する、中空二重構造を有する蓋体3、並びに箱体2の中空部2B及び蓋体3の中空部3Bに嵌挿された断熱層4を備える断熱容器5と、断熱容器5の断熱空間に内容物6とともに収容されるオゾン発生装置7又はオゾン氷91を内包するオゾン氷包装体9及び蓄冷材8とを備える。
【0026】
本実施形態における断熱容器5を構成する箱体2は、上面に開口部を有する外箱21と、外箱21に内包される、上面に開口部を有する内箱22とを有し、外箱21の上面開口部の外周部21Aと内箱22の上面開口部の外周部22Aとは、互いに接合されてなり、これにより、箱体2の中空部2Bが形成されている。
【0027】
本実施形態において、外箱21及び内箱22は、いずれも熱可塑性樹脂からなるものであり、外箱21の上面開口部の外周部21Aと内箱22の上面開口部の外周部22Aとを加熱融着させることにより、中空部2Bを有する箱体2を形成することができる。
【0028】
断熱層4は、ハニカム状板材41と、真空断熱パネル42と、発泡樹脂43とが積層された3層構造を有しており、ハニカム状板材41が内箱22側に位置するようにして箱体2の中空部2Bに嵌挿されている。
【0029】
本実施形態において、断熱層4を構成するハニカム状板材41は、断面正六角形の空隙を有するハニカム状に形成された板材である。ハニカム状板材41は、例えば、紙製、アルミ製、合成樹脂製のいずれでもよいが、これらのうち優れた断熱効果を有する紙製であることが好ましい。ハニカム状板材41の厚さは、2〜7mmであることが好ましく、特に3〜5mmであることが好ましい。
【0030】
断熱層4を構成する真空断熱パネル42は、熱伝導率の低いコア材と、コア材を被覆する合成樹脂フィルムとから構成されるものであり、合成樹脂フィルムにて被覆された内部が減圧された状態で当該合成樹脂フィルムの端縁が接合され、密封されたものである。
【0031】
真空断熱パネル42を構成するコア材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及びナイロン繊維のうちの少なくとも1種の繊維からなる繊維集合体等を使用することができ、必要に応じてポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及びナイロン繊維のうちの少なくとも1種の繊維からなる繊維集合体等をバインダー等により結着したものであってもよい。真空断熱パネル42の厚さは、2〜5mmであることが好ましく、特に、2〜3mmであることが好ましい。
【0032】
真空断熱パネル42は、保護材により被覆されていることが好ましい。外部からの衝撃等により真空断熱パネル42に損傷等が生じると、真空断熱パネル42の断熱効果が損なわれてしまうが、真空断熱パネル42が保護材により被覆されていることで、例えば箱体2の外部又は内部から衝撃等を受けたとしても、真空断熱パネル42に損傷等が生じるおそれがない。
【0033】
保護材は、高強度繊維の織布又は不織布からなるものであることが好ましい。保護材を構成する繊維としては、高強度繊維であれば特に限定されるものではなく、例えば、ケブラー繊維(アラミド繊維)、PBO繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
保護材を構成する繊維の引張強度は、20cN/dtex以上であることが好ましい。当該繊維の引張強度が20cN/tex未満であると、繊維の強度が不足し、箱体2の外部又は内部から衝撃等を受けた際に、真空断熱パネル42に損傷が生じてしまい、断熱容器5の断熱効果が損なわれてしまうおそれがある。
【0035】
断熱層4を構成する発泡樹脂43としては、例えば、発泡ウレタン樹脂等が挙げられる。断熱層4を構成する発泡樹脂43は、外箱21と内箱22との間隙にハニカム状板材41と真空断熱パネル42とを嵌挿し、間隙に液体状の発泡樹脂を流し込んで固化させることにより形成することができるものである。このような発泡樹脂43の厚さは、ハニカム状板材41の厚さ、真空断熱パネル42の厚さ、及び外箱21と内箱22との間隙により適宜決定されるものであるが、10〜30mm程度であることが好ましい。
【0036】
このようにして構成される断熱層4は、外箱21と内箱22との間隙(箱体2の中空部2B)に、ハニカム状板材41が内箱22側に位置するようにして嵌挿されている。そして、ハニカム状板材41の外側には、真空断熱パネル42が位置し、真空断熱パネル42の外側には、発泡樹脂43が位置するようにして、外箱21と内箱22との間隙に嵌挿されている。このような断熱層4の熱伝導率は、0.0098W/mK以下であることが好ましく、特に0.0040W/mK以下であることが好ましい。
【0037】
蓋体3は、上部蓋部材31と下部蓋部材32とを有し、上部蓋部材31の外周部31Aと下部蓋部材32の外周部32Aとが互いに接合されている。これにより、蓋体3の中空部が形成されている。下部蓋部材32は、下側に突出した突出部33を有しており、その突出部33が箱体2の上部開口部に嵌合し得る形状を有していることで、蓋体3により箱体2を閉塞することができる。
【0038】
蓋体3の突出部33には、凹部33Aが形成されており、当該凹部33Aには、オゾン発生装置7又はオゾン氷包装体9が収納されている。オゾンは、比重が大きいため、このような構成にすることで、オゾン発生装置7により生成され、断熱容器5の内部に放出されたオゾン、又はオゾン氷包装体9に収納されているオゾン氷91が溶解することにより断熱容器5の内部に放出されたオゾンは、断熱容器5内にて沈降し、これにより内容物6と接触し、内容物6の殺菌をすることができる。なお、オゾン発生装置7は、蓋体3の凹部33Aに保持部材(図示せず)を介して取り付けられていればよく、オゾン氷包装体9は、蓋体3の凹部33Aに両面テープ等で取り付けられていればよい。
【0039】
蓋体3の中空部には、上述した箱体2と同様に、ハニカム状板材41、真空断熱パネル42及び発泡樹脂43が積層された3層構造を有する断熱層4が、ハニカム状板材41が下側に位置するようにして設けられている。このように、蓋体3の中空部3Bに断熱層4が設けられていることで、断熱容器5の断熱効果をさらに優れたものとすることができる。
【0040】
図3及び図4に示すように、オゾン発生装置7は、紫外線ランプ71と、紫外線ランプ71の周辺に空気(酸素)を供給する電動ファン72と、紫外線ランプ71に電気的に接続されたインバータ回路73と、電動ファン72及びインバータ回路73に電気的に接続された電源装置74及びパルスタイマー75と、紫外線ランプ71、インバータ回路72、電動ファン73、電源装置74及びパルスタイマー75を収納するハウジング76とを有する。
【0041】
ハウジング76は、紫外線ランプ71を収納する紫外線ランプ収納室761、紫外線ランプ収納室761に給気する電動ファン72を収納する電動ファン収納室762、インバータ回路73を収納するインバータ回路収納室763、電源装置74を収納する電源収納室764、及びパルスタイマー75を収納するタイマー収納室765に区画されている。
【0042】
電動ファン収納室762の壁面には、ハウジング76の外側に連通する給気孔7Aが設けられており、その給気孔7Aが設けられている壁面と対向する位置にある、紫外線ランプ収納室761の壁面には、排気孔7Bが設けられている。そして、紫外線ランプ収納室761と電動ファン収納室762との間には、紫外線ランプ収納室761から電動ファン収納室762へのオゾンガスの逆流を防止する逆止弁が設けられており、その逆止弁により紫外線ランプ収納室761と電動ファン収納室762とが区画されている。
【0043】
紫外線ランプ71は、電源装置74からインバータ回路73を介して所定の周波数に変換された電流が供給されることにより、特定の波長を有する紫外線を発することができるものである。具体的には、130〜160nmの波長を有する紫外線を照射することができ、140〜150nmの波長にピークを有する紫外線を照射することができるものであることが好ましく、特に波長149.9nmにピークを有する紫外線を照射することができるものであることが好ましい。このように、特定の波長を有する紫外線が照射されることで、空気中の酸素が分解されて、オゾンが生成される。紫外線ランプ71の形状は、特に限定されるものではなく、直管型、U字管型、L字管型等であればよい。
【0044】
インバータ回路73は、電源装置74から供給された電流を所定の周波数の電流に変換し、紫外線ランプ71に供給する。このように、電源装置74からインバータ回路73を介して紫外線ランプ71に電力が供給されるようにすることで、紫外線ランプ71から特定の波長を有する紫外線を安定的に照射し得るようにすることができる。
【0045】
電源装置74としては、紫外線ランプ71及び電動ファン72に十分な電力を供給し得るものであれば特に制限されるものではなく、一般に、充電式電池、乾電池等を用いることができる。
【0046】
紫外線ランプ収納室761の内壁には、アルミニウム製のシート77が取り付けられている。紫外線ランプ収納室761内においては、紫外線ランプ71から照射される紫外線により、紫外線ランプ収納室761内に供給された空気(酸素)からオゾンが生成されるが、オゾンは強力な酸化力を有するため、その酸化力により紫外線ランプ収納室761の内壁等が腐食してしまうおそれがあるが、当該内壁にアルミニウム製のシート77が取り付けられることで、オゾンによる腐食から保護することができる。なお、本実施形態における紫外線ランプ収納室761の内壁に取り付けられているシート77は、アルミニウム製のものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、紫外線を反射し得る金属製のシートであればよく、このような金属としては、例えば、金、銀、チタン、アルミニウム等が挙げられる。これらのうち、オゾン発生装置7の製造コストを考慮すると、アルミニウムを使用するのが好ましい。
【0047】
パルスタイマー75は、電源装置74から紫外線ランプ71及び電動ファン72への電力供給時間を計時することができるとともに、予め通電時間を設定しておくことで、当該通電時間が経過したときに、電源装置74から紫外線ランプ71及び電動ファン72への電力の供給を停止したり、再開したりすることができる。
【0048】
このようなオゾン発生装置7において、電源装置74からインバータ回路73を介して紫外線ランプ71に電力が供給されると、紫外線ランプ71から紫外線が照射される。そして、電源装置74から電動ファン72に電力が供給されると、電動ファン72が駆動する。それにより、紫外線ランプ収納室76A内に空気(酸素)が供給され、その空気中の酸素に紫外線ランプ71から紫外線が照射されることで、当該酸素からオゾンが生成される。生成されたオゾンガスは、排出孔7Bを通じて断熱容器5内に放出される。
【0049】
パルスタイマー75により予め設定された時間が経過すると、電源装置74は、紫外線ランプ71及び電動ファン72への電力の供給を停止する。このようにして、断熱容器5内のオゾン濃度を一定の範囲内に維持することができ、保存容器1内にて保存されている内容物6(例えば、生鮮食品等)の鮮度を維持するために殺菌することができるとともに、断熱容器5内のオゾン濃度が高すぎることによる内容物6の変色等を防止することもできる。
【0050】
図5(A),(B)に示すように、オゾン氷包装体9は、略円筒形状のオゾン氷91と、当該オゾン氷91を内包する袋体92とを有する。
【0051】
オゾン氷91は、オゾンを含む水(オゾン水)を凍結させることにより製造することができる。オゾン氷91を製造する際、オゾン水の凍結に時間がかかると、オゾン水が凍結する前にオゾン水に溶解したオゾンが気化してしまうため、オゾンを高濃度で含むオゾン氷91を製造するためには、短時間でオゾン水を凍結させる必要がある。具体的には、オゾン水を約0.5MPaの圧力条件下で約25分間凍結させることにより、オゾン氷を得ることができる。本実施形態においては、オゾン氷91の形状は、略円筒形状であるが、これに限定されるものではなく、例えば、立方体形状、直方体形状等を含む多面体形状、球状等のいずれの形状であってもよい。
【0052】
オゾン氷91からのオゾン放出量は、内容物6の殺菌、並びに腐食及び変色防止に必要なオゾン量と相対的な関係にあるので、あらかじめ計算して必要量のオゾンが放出されるように、オゾン氷91内にオゾンを封じ込める必要がある。オゾン氷91内に含まれるオゾン量は、原料であるオゾン水のオゾン濃度により決定される。
【0053】
一般に、生鮮食品の鮮度を維持し、腐食を防止するために、オゾン氷91の原料であるオゾン水のオゾン濃度は、25〜40mg/Lであることが好ましく、特に30〜40mg/Lであることが好ましい。かかるオゾン濃度が、25mg/L未満であると、内容物6の鮮度を維持するために複数のオゾン氷包装体9を保存容器1に内包しなければならず、内容物6の保存にコストがかかってしまうおそれがあり、40mg/Lを超えると、内容物4の鮮度を維持し、腐食を防止することはできるが、内容物4を変色させたり、漂白させたりしてしまうおそれがある。
【0054】
袋体92は、織布又は不織布から形成されるものであって、オゾンガスを透過し、かつ水を透過させない性質を有するものである。このような織布又は不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維等が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0055】
袋体92は、略長方形又は略正方形の織布又は不織布を一対の対辺が相互に重なり合うようにして折り畳み、開口する3つの端縁を封止することにより形成される。図5(B)に示すように、オゾン氷包装体9は、袋体92の開口する3つの端縁のうち、2つの端縁を封止して第1の封止部92A及び第2の封止部92Bを形成し、残りの1つの端縁を開口部92Cとして形成し、袋体92の開口部92Cからオゾン氷91を挿入して、袋体92内にオゾン氷91を収納して開口部92Cを封止することにより形成される。
【0056】
袋体92の3つの端縁(第1の封止部92A、第2の封止部92B及び開口部92C)を封止する封止手段としては、例えば、超音波溶着等が挙げられる。超音波溶着によれば、袋体92の3つの端縁に亀裂を生じさせることなく、確実に封止することができる。
【0057】
袋体92の3つの端縁(第1の封止部92A、第2の封止部92B及び開口部92C)を超音波溶着により封止する場合には、袋体92は、ポリプロピレン繊維からなる不織布により構成されていることが好ましい。袋体92がポリプロピレン繊維からなる不織布により構成されていることにより、容易に超音波溶着により封止することができる。
【0058】
袋体92を構成する織布又は不織布の目付量は、30〜50g/mであることが好ましく、特に40〜45g/mであることが好ましい。目付量が30g/m未満であると、袋体92の耐水性が低くなり漏水するおそれがあり、50g/mを超えると、通気度が低くなり、オゾンが袋体92を十分に透過できないおそれがある。
【0059】
また、袋体92を構成する織布又は不織布の通気度は、40〜48cc/sec/cmであるのが好ましく、特に43〜45cc/sec/cmであるのが好ましい。袋体92の通気度が、40cc/sec/cm未満であると、十分な量のオゾンが透過できないおそれがあり、48cc/sec/cmを超えると、オゾン氷が溶けて、水の漏出が生じるおそれがある。
【0060】
さらに、袋体92を構成する織布又は不織布の耐水圧は、525mmHO以上であるのが好ましく、特に540mmHO以上であるのが好ましく、さらには550〜560mmHOであるのが好ましい。袋体92の耐水圧が525mmHO未満であると、オゾン氷が溶けて水が漏出するおそれがある。
【0061】
なお、袋体92は、上述したような織布又は不織布を、複数積層させた構成を有していてもよい。このような構成にすることで、袋体92は、オゾンをより透過し、かつ水をより透過しないものとして形成されるとともに、より高強度に形成される。したがって、オゾン氷包装体9は、オゾン氷91が溶けても、水がオゾン氷包装体9から外に漏出することがないため、水に接触させることが好ましくない内容物6(例えば、刺身等の生鮮食品)であっても、当該内容物6とともに断熱容器5内に収容することができる。これにより、当該内容物6の鮮度を維持し、腐食を防止することができる。
【0062】
蓄冷材8は、蓄冷媒体と、当該蓄冷媒体を収容する蓄冷媒体容器とから構成されるものである。蓄冷媒体としては、常温ではゲル状又は液状をなし、凍結させることにより固体状をなすものであればよい。
【0063】
蓄冷媒体容器は、不透水性基材からなるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、レーヨン繊維等からなる不織布等であることが好ましい。蓄冷媒体容器がレーヨン繊維からなる不織布により形成されていることで、蓄冷材8を断熱容器5内に収納したとしても、レーヨン繊維が断熱容器5内の水分を吸収し、断熱容器5内での結露の発生を防止することができる。
【0064】
したがって、このような蓄冷材8を断熱容器5に収納することで、水に濡れることが好ましくないような内容物6であっても、好適な温度条件下にて保存することができ、当該内容物6の鮮度を維持し、腐食を防止することができる。
【0065】
以上説明した本実施形態に係る保存容器1は、その内容物6として生鮮食品等を収納し、生鮮食品保存用容器として使用することができる。これにより、内容物6としての生鮮食品等の鮮度を維持し、腐食を防止することができる。これにより、生鮮食品等の鮮度を維持したまま長時間の輸送等も行うことができる。
【0066】
本実施形態に係る保存容器1によれば、断熱容器5内に内容物6とともにオゾン発生装置7又はオゾン氷包装体9と蓄冷材8とを収納することで、オゾン発生装置7から放出されるオゾンガスにより、内容物6を殺菌し、また消臭することができるとともに、断熱容器5が優れた断熱効果を有しているため、蓄冷材8により冷却された保存容器1内の温度を一定の温度に維持することができる。これにより、内容物6の鮮度を維持し、腐食を防止することができる。
【0067】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0068】
例えば、本実施形態に係る保存容器1は、断熱容器5内に、内容物6とともにオゾン発生装置7又はオゾン氷包装体9と蓄冷材8とを収容しているが、蓄冷材8を収納していなくてもよい。
【0069】
また、本実施形態に係る保存容器1は、断熱容器5内に蓄冷材8を収容する収容室を有していてもよい。これにより、保存容器1に内容物6として生鮮食品等を収納して保存したり、輸送したりする場合に、生鮮食品等と蓄冷材8とが接触することがなく、内容物6である生鮮食品等を衛生的に保存したり、輸送したりすることができる。
【0070】
さらに、本実施形態に係る保存容器1におけるオゾン発生装置7は、断熱容器5内のオゾン濃度を検知するセンサーと、当該センサーからの信号に基づき電源装置74から紫外線ランプ71及び電動ファン72への電力の供給を制御する制御装置を備えていてもよい。このような構成とすることで、制御装置が、断熱容器5内のオゾン濃度が所定値未満のときは電源装置74からの電力供給をするように制御し、断熱容器5内のオゾン濃度が所定値以上のときは電源装置74からの電力供給を停止するように制御することで、断熱容器5内のオゾン濃度を一定に維持することができる。
【0071】
さらにまた、本実施形態におけるオゾン発生装置7の電動ファン72は、インバータ回路73に電気的に接続されるようにしてもよい。このようにすることで、インバータ回路73は、電源装置74から供給された電流を所定の周波数に変換して電動ファン72に供給することができ、これにより、電動ファン72の回転数を制御することができ、紫外線ランプ収納室761への通気量を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、生鮮食品を輸送又は保存する場合に、その生鮮食品を収納する容器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態に係る保存容器を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る保存容器のA−A線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるオゾン発生装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるオゾン発生装置を示すブロック図である。
【図5】(A)は、本発明の一実施形態におけるオゾン氷包装体を示す概略斜視図であり、(B)は、本発明の一実施形態におけるオゾン氷包装体において、オゾン氷を袋体に収容する過程を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
1…保存容器
2…箱体
21…外箱
22…内箱
3…蓋体
31…上部蓋部材
32…下部蓋部材
3B…中空部
4…断熱層
41…ハニカム状板材
42…真空断熱パネル
43…発泡樹脂
5…断熱容器
6…内容物
7…オゾン発生装置
71…紫外線ランプ
72…電動ファン(給気部)
73…インバータ回路
74…電源装置
75…パルスタイマー
76…ハウジング
761…紫外線ランプ収納室
762…電動ファン収納室
763…インバータ回路収納室
764…電源収納室
765…タイマー収納室
8…蓄冷材
9…オゾン氷包装体
91…オゾン氷
92…袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部が設けられた外箱と、当該外箱に内包され、上面に開口部が設けられた内箱とを有し、当該外箱の上面開口部の外周部と当該内箱の上面開口部の外周部とを接合した二重構造の箱体と、前記箱体の上部開口部を閉塞し得る蓋体と、前記外箱と前記内箱との間隙に嵌挿された断熱層とを備え、前記断熱層は、前記内箱側から順にハニカム状板材と、真空断熱パネルと、発泡樹脂とが積層された3層構造を有する断熱容器と、
前記断熱容器内に収納されるオゾン発生装置又はオゾンを氷の中に閉じ込めたオゾン氷を内包するオゾン氷包装体及び蓄冷材と
を備えることを特徴とする保存容器。
【請求項2】
前記蓋体は、上部蓋部材の外周部と下部蓋部材の外周部とを接合した二重構造を有しており、
前記上部蓋部材と前記下部蓋部材との間隙には、前記断熱層が嵌挿されていることを特徴とする請求項1に記載の保存容器。
【請求項3】
前記真空断熱パネルは、熱伝導率の低いコア材と、前記コア材を被覆する合成樹脂フィルムとから構成されており、
前記コア材は、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及びナイロン繊維のうちの少なくとも1種の繊維からなる繊維集合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の保存容器。
【請求項4】
前記断熱層の熱伝導率が、0.0098W/mK以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の保存容器。
【請求項5】
前記真空断熱パネルは、高強度繊維からなる保護材にて被覆されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の保存容器。
【請求項6】
前記高強度繊維は、アラミド繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び金属繊維のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載の保存容器。
【請求項7】
前記オゾン発生装置は、特定の波長の紫外線を照射する紫外線ランプと、前記紫外線ランプに電力を供給するインバータ回路と、前記紫外線ランプを収納する紫外線ランプ収納室及び前記インバータ回路を収納するインバータ回路収納室を有するハウジングと、前記紫外線ランプ収納室に給気する給気部と、前記紫外線ランプ収納室の一の壁面に設けられ、前記紫外線ランプ収納室内にて発生したオゾンガスを排出する排出孔とを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の保存容器。
【請求項8】
前記給気部は、弁機構を介して前記紫外線ランプ収納室に設けられており、
前記弁機構は、前記給気部からの給気が停止されたときに、前記紫外線ランプ収納室内から前記給気部側へのオゾンガスの逆流を防止し得ることを特徴とする請求項7に記載の保存容器。
【請求項9】
前記オゾン発生装置は、前記インバータ回路から前記紫外線ランプへの電力の供給を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の保存容器。
【請求項10】
前記制御部は、パルスタイマーであることを特徴とする請求項9に記載の保存容器。
【請求項11】
前記紫外線ランプ収納室の内壁面には、前記紫外線ランプから照射された紫外線を反射し得る金属製シートが取り付けられていることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の保存容器。
【請求項12】
上面に開口部が設けられた外箱と、当該外箱に内包され、上面に開口部が設けられた内箱とを有し、当該外箱の上面開口部の外周部と当該内箱の上面開口部の外周部とを接合した二重構造の箱体と、前記箱体の上部開口部を閉塞し得る蓋体と、前記外箱と前記内箱との間隙に嵌挿された断熱層とを備え、前記断熱層は、前記内箱側から順にハニカム状板材と、真空断熱パネルと、発泡樹脂とが積層された3層構造を有する断熱容器と、
前記断熱容器内に収納されるオゾン発生装置又はオゾンを氷の中に閉じ込めたオゾン氷を内包するオゾン氷包装体及び蓄冷材と
を備えることを特徴とする生鮮食品保存用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−246097(P2007−246097A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68361(P2006−68361)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(599102158)
【Fターム(参考)】