説明

保持装置

【課題】乗りかご上での保守作業に関する物を好適に保持する保持装置を提供することである。
【解決手段】主ロープ12に締結部326を用いて取り付けられる平板部322に設けられ、乗りかごの上での保守作業に関する物を保持する保持装置34であって、締結部326と平板部322との間に取り付けられる取付部342と、取付部342に設けられる蝶番346を介し、底面344aが重力方向Gに対して垂直となるように回動可能なトレイ部344と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置に係り、特に、乗りかごの上での保守作業に関する物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、商業施設等の様々な場所にエレベータが設置されている。当該エレベータを長期間使用するために定期的に保守点検作業が行われている。そして、必要に応じて部品の入れ替え作業等が行われている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、かごと、かごの天面に立設され、天面の周囲に沿った立設体と、立設体に設けられ、被支持体を支持する支持体とを備えたエレベータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−161346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エレベータの定期的な保守点検作業の中には、保守作業員が乗りかごの上に昇って実施する点検作業がある。このとき、乗りかごの上では、保守点検を行う際に用いる工具や必要に応じて入れ替えが行われる部品を一時的に置くためのスペースが少ない。このため、上記工具等を乗りかごの上の適当な場所に一時的に置くことがあるが、置いた場所を忘れて作業を行なうと、上記工具等を蹴飛ばしてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、乗りかご上での保守作業に関する物を好適に保持する保持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る保持装置は、主ロープに締結部材を用いて取り付けられる板部材に設けられ、乗りかごの上での保守作業に関する物を保持する保持装置であって、前記締結部材と前記板部材との間に取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられる蝶番を介し、底面が重力方向に対して垂直となるように回動可能なトレイ部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る保持装置において、前記トレイ部は、前記底面が前記重力方向に対して平行となるように回動可能であることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る保持装置において、前記板部材は、下部から平板面に垂直となる方向に突出した後に前記重力方向と反対方向に向かって曲がるフック部を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る保持装置において、前記板部材は、前記保守作業を行う際に用いる安全ロープを括りつけるための貫通孔部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、底面が重力方向に対して垂直となるように、トレイ部を回動させ、開口部からその内部に、乗りかご上での保守作業に関する物を収納して保持することができる。これにより、乗りかご上での保守作業に関する物を好適に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施の形態において、エレベータを示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、乗りかごの上の主ロープに設けられる掛け金の斜視図である。
【図3】図2で示された掛け金を反対側(裏側)から見た様子を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、保持装置を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、掛け金に取り付けられた保持装置の斜視図である。
【図6】図5で示された掛け金と保持装置を反対側(裏側)から見た様子を示す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、掛け金と保守装置とを側面側から見た様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において、同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、エレベータ10を示す図である。エレベータ10は、主ロープ12と、釣合錘14と、巻上機16と、制御盤18と、乗りかご20と、乗場扉28と、昇降路30と、掛け金32と、保持装置34とを備える。また、エレベータ10は、乗りかご20を各階27の間を昇降させることで乗客を移動させる。
【0015】
主ロープ12は、乗りかご20を吊るすためのロープであり、巻上機16に巻き掛けられている。そして、主ロープ12の一方端は乗りかご20に接続され、他方端は釣合錘14が接続されている。
【0016】
釣合錘14は、主ロープ12の他方端に接続され、主ロープ12の一方端に接続される乗りかご20との間でバランスを取るために必要な重量が設定される。
【0017】
巻上機16は、制御盤18の制御によって、巻き掛けられた主ロープ12を駆動させることで乗りかご20を昇降させるための装置である。また、巻上機16は、機械室8に配置されている。
【0018】
制御盤18は、乗りかご20の昇降速度や運行管理等を含んだエレベータ10全体の運行に関する制御を行う装置である。制御盤18は、動作モードが通常モードのときは、通常通りの運行制御を行う。また、制御盤18は、動作モードが点検モードのときは、保守点検のための運行制御を行う。なお、制御盤18は、機械室8に配置されている。
【0019】
乗りかご20は、制御盤18の制御によって、巻上機16が作動すると昇降路30内を昇降し、乗客を乗せるための構造物である。乗りかご20は、かご操作盤24と、乗りかご扉26とを含む。
【0020】
かご操作盤24は、乗りかご20内に乗り込んだ乗客が行先階を選択したり、乗りかご扉26を開閉したりするための押釦が配置されている。また、かご操作盤24には、上記押釦の他に、乗りかご20が位置している階やその他の情報を表示する表示画面242が取り付けられている。
【0021】
乗りかご扉26は、乗りかご20に設けられる扉であり、乗りかご20が各階27に着床した際に、当該着床階27の乗場扉28とともに開く。これにより、乗客が乗りかご20に対して乗り降りすることができる。
【0022】
乗場扉28は、各階27の乗場に設けられる扉であり、乗りかご20が着床した際に、乗りかご扉26とともに開く。これにより、乗客が乗りかご20に対して乗り降りすることができる。
【0023】
掛け金32は、乗りかご20の上の主ロープ12において、保守作業員が無理のない姿勢で安全ロープを括りつけることができる程度の高さ位置(例えば、乗りかご上から100〜120cm位の高さ位置)に設けられている。そして、保持装置34は、掛け金32に取り付けられる装置であるが、各要素の構成を分かり易くするために、まず、図2,3を用いて保持装置34が取り付けられていない状態の掛け金32について説明し、その後に、図4〜図6を用いて掛け金32に取り付けられる保持装置34について説明する。
【0024】
図2は、乗りかご20の上の主ロープ12に設けられる掛け金32の斜視図である。図3は、図2で示された掛け金32を反対側(裏側)から見た様子を示す図である。掛け金32は、平板部322と、フック部324と、締結部326とを有する。
【0025】
平板部322は、長方形の板部材を長手方向の両端に丸みを持たせるように形成された部材である。平板部322は、締結部326の先端部326aを挿通するための2つの貫通孔322aを有している。また、平板部322は、保守作業員が保守作業を行う際に用いる安全ロープを括りつけるための4つの貫通孔322bを有する。もちろん、貫通孔322bは、上記安全ロープを括りつける以外の用途に用いてもよい。さらに、平板部322の裏側には、図3に示されるように締結部326と協働して主ロープ12を拘束するようなU字形状を含む拘束部322cを有している。
【0026】
締結部326は、U字形状を有する部材であり、螺子切りされた2つの先端部326aは、平板部322の2つの貫通孔322aに挿通される。そして、2つの先端部326aには、それぞれナット部326bが螺合されて締め付けられる。これにより、平板部322が主ロープ12にしっかりと取り付けられるとともに、主ロープ12が平板部322の拘束部322cと締結部326とによって拘束される。
【0027】
フック部324は、平板部322の下部から平板部322の平板面と垂直となる方向に、かつ、その幅が先細りとなるように突出する。そして、フック部324は、当該突出した後に重力方向(矢印G)と反対方向に向かって曲げられたフック形状を有する。これにより、フック部324は、保守作業員が保守を行う際に、例えば、紐付き工具等を吊り下げることができる。
【0028】
図4は、保持装置34を示す斜視図である。図5は、掛け金32に取り付けられた保持装置34の斜視図である。図6は、図5で示された掛け金32と保持装置34を反対側(裏側)から見た様子を示す図である。保持装置34は、取付部342と、トレイ部344と、蝶番346とを有する。
【0029】
取付部342は、T字形状を有する平板部材であり、突出部342aの幅は、当該突出部342aが主ロープ12とともに、平板部322の拘束部322cと締結部326とによって拘束されることが可能な程度の幅である。
【0030】
蝶番346は、取付部342を固定した場合に、トレイ部344が図4に示される矢印A方向あるいは矢印A方向と反対方向に回動可能となるように、取付部342とトレイ部344の端面に跨って取り付けられるヒンジである。
【0031】
トレイ部344は、底面344aの四方を囲むように比較的低い高さの壁面344bが立設された容器である。また、トレイ部344の底面344aの面積は、保守作業員が保守を行う際に用いる工具や部品等を数点配置できる程度の面積であればよい。そして、底面344aの四方を囲む壁面344bの高さは、トレイ部344の開口部からその内部に工具や部品等を収納した際に、乗りかご20が多少振動した場合であってもこれらが落ちない程度の高さであればよい。一例を挙げると、底面344aの面積は、45cm×30cm=1350cm2で、壁面344bの高さは、8cmとすることができる。もちろん、これらの値は適宜変更することができる。
【0032】
続いて、上記構成のエレベータ10の作用について、図1〜図7を用いて説明する。図7は、掛け金32と保持装置34とを側面側から見た様子を示す図である。保守作業が行われないときは、トレイ部344の底面344aは、図7において実線で示されるように、重力方向Gに沿って平行となるような位置となっている。そして、保守作業員が乗りかご20の上に昇って保守作業を行うときに、トレイ部344を矢印A方向(図4,7ともに矢印A方向は同じ方向)に回動させ、図7において点線で示されるトレイ部344のように、底面344aが重力方向Gに対して垂直となるような位置とする。このようにトレイ部344を回動させた状態が図5,6に示されている。
【0033】
そして、保守作業員は、保守を行う際に用いる工具や部品等をトレイ部344の開口部からその内部に配置して収納し、必要な保守作業を行う。ここで、保持装置34は、上述したように、例えば、乗りかご20の上から100〜120cm位の高さ位置にあるため、保守を行う際に用いる工具や部品等を無理のない姿勢で配置することができる。また、乗りかご20の上の適当な場所に置く場合に比べて、保守作業員の目の付きやすいところに配置されているため、それらを置いたことを忘れにくく、また、蹴飛ばしてしまうことについても抑制することができる。したがって、保守作業員は、乗りかご20上に昇って保守作業を行う際に、保守作業に関する物を好適に保持することができる。なお、保持装置34は、保守を行う際に用いる工具や部品等を保持する必要がないときは、トレイ部344の底面344aを重力方向Gに沿って平行となるような位置とすることができるため、保守作業員の作業の邪魔にならないようにすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
8 機械室、10 エレベータ、12 主ロープ、14 釣合錘、16 巻上機、18制御盤、24 かご操作盤、26 乗りかご扉、27 着床階、28 乗場扉、30 昇降路、32 掛け金、34 保持装置、242 表示画面、322 平板部、322a 貫通孔、322b 貫通孔、322c 拘束部、324 フック部、326 締結部、326a 先端部、326b ナット部、342 取付部、342a 突出部、344 トレイ部、346 蝶番、344a 底面、344b 壁面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ロープに締結部材を用いて取り付けられる板部材に設けられ、乗りかごの上での保守作業に関する物を保持する保持装置であって、
前記締結部材と前記板部材との間に取り付けられる取付部と、
前記取付部に設けられる蝶番を介し、底面が重力方向に対して垂直となるように回動可能なトレイ部と、
を備えることを特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保持装置において、
前記トレイ部は、前記底面が前記重力方向に対して平行となるように回動可能であることを特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保持装置において、
前記板部材は、下部から平板面に垂直となる方向に突出した後に前記重力方向と反対方向に向かって曲がるフック部を有することを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の保持装置において、
前記板部材は、前記保守作業を行う際に用いる安全ロープを括りつけるための貫通孔部を有することを特徴とする保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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