説明

保持部材、電子部品

【課題】引き抜き力に対して大きな耐力を確保しつつも、スルーホールの内面を損傷せずに脚部を嵌入することができ、さらに、はんだ付け後の電気回路基板への電子部品の取付けを強固に行う。
【解決手段】電気回路基板50にコネクタ200を保持する保持部材1であって、スルーホール51に嵌入される一対の第1脚部20と、一対の第1脚部20の間に設けられた第2脚部30とを備える。そして、第1脚部20には、その板厚方向に貫通するスリット27が形成されている。保持部材1をスルーホール51に嵌入させて突出部26、26が電気回路基板50のはんだ面50bに係合した状態において、スリット27は、その上端部27aが、電気回路基板50の実装面50aの近傍、より好ましくは実装面50aよりも上方に突出した位置となるよう形成するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路基板に設けられたスルーホールに嵌入されて電気回路基板に電子部品を保持する保持部材、および保持部材を備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コネクタのような大型の電子部品を電気回路基板に実装する技術として、電子部品に取り付けた保持部材を電気回路基板に形成されたスルーホールに嵌入させる技術が知られている。また、コネクタを電気回路基板に強固に固定するため、保持部材は、電気回路基板にはんだ付けされる場合がある。ここで、電子部品を保持する保持部材の例として、コネクタを保持する保持部材が特許文献1〜5に示されている。
【0003】
図8は、従来の保持部材の一例を示す断面図である。
保持部材105は、金属板を打ち抜いて形成された平面的なものである。保持部材105は、頭部151から二股状に延びる固定脚部152の両外側に、圧入凸部154および引掛り部153が設けられた形状を有している。保持部材105がコネクタ102の取付穴および電気回路基板101のスルーホール103に圧入されると、引掛り部153が、電気回路基板101のスルーホール103を貫通して、電気回路基板101に引っ掛かる。保持部材105によって、コネクタ102は、電気回路基板101から脱落しないよう保持される。
【0004】
上記したような保持部材においては、圧入時には、固定脚部152が方向Wに弾性変形することで、引掛り部153が電気回路基板101のスルーホール103を通り抜ける。しかしながら、保持部材105は平面的であり、固定脚部152は、面内方向で弾性変形するため、弾性変形量が小さい。このため、電気回路基板のスルーホール103を精度よく形成する必要がある。
また、電気回路基板101のスルーホール103の内面には、通常、銅めっきが施されている。このスルーホール103の内面に、固定脚部152のエッジが接することにより、銅めっきが損傷し易い。
さらに、電気回路基板への保持部材のはんだ付けは、通常、はんだフロー工程により行われる。はんだ付けによる保持部材の固定は、コネクタの端子に過大な力が加わらないように、強固であることが求められている。
【0005】
そこで、スルーホールの精度を低下させても対応可能であり、スルーホールの内面を損傷せずに脚部が嵌入でき、さらに、はんだ付け後の電気回路基板への電子部品の取付け強度が高い保持部材が提案されている(特許文献6参照。)。この保持部材は、電子部品に固定される板状の基部と、基部から互いに略同じ方向に延び、上記スルーホールの内面に干渉しながらこのスルーホールに嵌入される、互いに対向した向きの一対の板状の第1脚部と、基部から、一対の第1脚部どうしの間に、この第1脚部と同一方向に延びる、この第1脚部に縁面を向けた板状の第2脚部とを備えた構成を有している。
このような保持部材では、スルーホールに嵌入される一対の第1脚部が、互いに対向する向きにあるため、第1脚部は、スルーホールに嵌入される際、幅方向でなく厚さ方向に弾性変形する。したがって、スルーホールの径の精度を従来より低下させても対応可能なので生産性が向上する。また、スルーホールの内面には、通常、銅めっき層が形成されている。本発明の保持部材では、一対の第1脚部が、スルーホールの径方向に変位するように、スルーホールの内面に面接触することとなるため、スルーホールの損傷を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−162886号公報
【特許文献2】実開平6−62486号公報
【特許文献3】特開平9−274975号公報
【特許文献4】特開平10−40979号公報
【特許文献5】特開2009−170310号公報
【特許文献6】特開2007−128772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献6に記載の保持部材においても、保持部材を基板から引き抜く方向への力に対する耐力を向上させようとすると、保持部材の突起部の突出寸法を大きくする等が必要となり、その結果、保持部材がスルーホールを通過する際の一対の第1脚部のスルーホールの内面に対する反力が強くなる。すると、スルーホールの内面の銅めっき層を損傷しやすくなってしまうため、さらなる改善が望まれている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、引き抜き力に対して大きな耐力を確保しつつも、スルーホールの内面を損傷せずに脚部を嵌入することができ、さらに、はんだ付け後の電気回路基板への電子部品の取付けを強固に行うことのできる保持部材、電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明は、電気回路基板に設けられたスルーホールに嵌入されて該電気回路基板に電子部品を保持する保持部材であって、電子部品に固定される板状の基部と、基部から互いに略同じ方向に延び、スルーホールの内面に干渉しながら該スルーホールに嵌入される一対の板状の第1脚部と、一対の第1脚部どうしの間に設けられ、基部から第1脚部と同一方向に延びる第2脚部とを備え、第1脚部は、当該第1脚部の先端部に、第2脚部とは反対側に突出する突出部が形成されるとともに、第2脚部に近接する側と第2脚部とは反対側との中間部に、溝または貫通スリットが形成されていることを特徴とする。
このような保持部材によれば、第1脚部に形成された溝または貫通スリットにより、第1脚部の剛性が低くなっているため、第1脚部がスルーホールの内面に干渉しながらスルーホールに嵌入されるときに、第1脚部が容易に弾性変形し、スルーホールの内面と強く干渉するのを抑えることができる。
また、溝または貫通スリットを通してはんだを吸い上げることもできる。
【0009】
このような溝または貫通スリットは、第1脚部の基部に近接した側から突出部が形成された先端部までの少なくとも一部に形成すればよい。ここで、溝または貫通スリットは、第1脚部の基部に近接した側から突出部が形成された先端部まで連続して形成するのが特に好ましい。
溝または貫通スリットを通してのはんだの吸い上げ効果を有効に発揮させるには、溝または貫通スリットの上端部は、保持部材をスルーホールに嵌入させた状態において、電気回路基板において電子部品が実装される側の表面の近傍に位置するよう形成するのが好ましい。
【0010】
一対の第1脚部のそれぞれは、第2脚部の縁面との間に、溶融はんだが毛細管現象により流入する隙間をおいた位置に配置されたものであるのが好ましい。これにより、溶融はんだを確実に吸い上げてはんだ付けを確実に行える。
【0011】
また、本発明は、スルーホールが設けられた電気回路基板に保持される電子部品であって、スルーホールに挿入される脚部を有し、電気回路基板に電子部品を保持させる保持部材を備え、保持部材は、電子部品に固定される板状の基部と、基部から互いに略同じ方向に延び、スルーホールの内面に干渉しながら該スルーホールに嵌入される一対の板状の第1脚部と、一対の第1脚部の間に設けられ、基部から第1脚部と同一方向に延びる第2脚部とを備え、第1脚部は、当該第1脚部の先端部に、第2脚部とは反対側に突出する突出部が形成されるとともに、第2脚部に近接する側と第2脚部とは反対側との中間部に、溝または貫通スリットが形成されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1脚部に形成された溝または貫通スリットにより、第1脚部の剛性が低くなっているため、第1脚部がスルーホールの内面に干渉しながらスルーホールに嵌入されるときに、第1脚部が容易に弾性変形し、スルーホールの内面と強く干渉するのを抑えることができる。これにより、保持部材を、スルーホールの内面を損傷せずに脚部を嵌入することができる。その結果、突起部の突出寸法を大きくすることが可能となるので、引き抜き力に対して大きな耐力を確保して、はんだ付け後の電気回路基板への電子部品の取付けを強固に行うことが可能となる。
また、溝または貫通スリットを通してはんだを吸い上げることもできるため、この点においても、はんだ付け後の電気回路基板への電子部品の取付けを強固に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態における保持部材を示す斜視図である。
【図2】保持部材を基板のスルーホールに嵌入させた状態を示す断面図である。
【図3】保持部材を基板のスルーホールに挿入していくときの流れを示す断面図である。
【図4】電気回路基板に取り付けられたコネクタを示す斜視図である。
【図5】電気回路基板に取り付けられたコネクタを示す側面図である。
【図6】保持部材の他の例を示す斜視図である。
【図7】保持部材のさらに他の例を示す斜視図である。
【図8】従来の保持部材を基板のスルーホールに嵌入させた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1および図2に示すように、保持部材1は、電気回路基板50に設けられたスルーホール51(図2参照)に嵌入されて電気回路基板50にコネクタ(電子部品)200を保持するものである。保持部材1は、真ちゅう製の板が、打抜き、印圧及び曲げ加工されることにより形成されている。また、保持部材1には、表面が溶融はんだによって濡れるように、錫めっき処理が施されている。保持部材1は、基部10と、一対の第1脚部20と、これら一対の第1脚部20との間に設けられた第2脚部30とから構成されている。
なおここで、両側の第1脚部20、20と第2脚部30とが並ぶ方向を「幅方向」と称する。
【0015】
基部10は、矩形状で、コネクタ200の絶縁ハウジングの側面に設けられた溝に圧入される。基部10の側縁11には凹部12が設けられている。
また、基部10には、曲げ強度を高めるためのリブ13が、印圧加工により形成されている。基部10の一辺から、一対の板状の第1脚部20が、略同じ方向に延びて形成されている。また、基部10からは、板状の第2脚部30が、第1脚部20と同一方向に延びている。
【0016】
一対の第1脚部20は、電気回路基板50に設けられるスルーホール51に干渉しながら嵌入されるものである。一対の第1脚部20は、それぞれ、基部10の端部から細長く延びる板が曲げ形成されたものである。各第1脚部20は、基部10から延びる撓み変形部21と、撓み変形部21から連続して延びる嵌入部22とから構成されている。
【0017】
撓み変形部21は、基部10から実装面50aに略平行となるよう略90°に折り曲げられた基部21aから、第2脚部30とは反対側に延び、基部10に略垂直でかつ実装面50aに略平行とされた第一平行部21bと、第一平行部21bから略U字状に折り返された折り返し部21cと、折り返し部21cから第2脚部30側に延び、基部10に略垂直でかつ実装面50aに略平行な第二平行部21dとから構成されている。これにより、帯状の撓み変形部21が、基部10に直交するように形成され、第1脚部20の嵌入部22を第2脚部30に接近・離間する方向に変位させたときに、この撓み変形部21が、その厚み方向に容易に弾性変形するようになっている。
【0018】
嵌入部22は、スルーホール51に嵌入される部分である。嵌入部22は、第二平行部21dから略90°に折り曲げられ、基部10に平行で、実装面50aに略垂直に延びて形成されている。
嵌入部22の先端部には、第2脚部30とは反対側に突出する突出部26が形成されている。嵌入部22は、先端22aから突出部26に向けて、その幅が漸次拡大するテーパ状とされている。この突出部26は、スルーホール51を貫通し、電気回路基板50の反対側の面に係合する。
【0019】
このような第1脚部20において、嵌入部22および突出部26には、その板厚方向に貫通するスリット(貫通スリット)27が形成されている。このスリット27が形成されることで、嵌入部22および突出部26は、その外形に沿って延びるほぼ一定幅のビーム状の部材28によって形成されたごとき構成となっている。
【0020】
第1脚部20は、基部10に支えられたばねであり、それ全体が、基部10を中心として、嵌入部22の先端部が幅方向に弾性変位する。さらに、第1脚部20は、スリット27により、幅方向の外側(第2脚部30とは反対側)に位置する外側ビーム部28aと、幅方向内側(第2脚部30側)に位置する内側ビーム部28bがそれぞれ弾性変形可能となっている。
【0021】
第2脚部30は、一対の第1脚部20どうしの間に、基部10の基部10から、第1脚部20と同一方向に延びている。より詳細には、第2脚部30は、基部10から略90°に折り曲げられて延びる繋ぎ部31と、繋ぎ部31から略90°に折り曲げられて連続して延びる嵌入部32とで構成される。嵌入部32は、電気回路基板50のスルーホール51に挿入される。第2脚部30は、第1脚部20の間に配置されているため、第1脚部20とともに電気回路基板50のスルーホール51に挿入されても、スルーホール51の内面に直接的に干渉しない。
第2脚部30の縁面33と、第1脚部20との隙間は、溶融はんだが毛細管現象により流入する幅を有している。より具体的には、幅の平均は、例えば約0.4mmとすることができる。
【0022】
図2に示したように、このような保持部材1が嵌入される電気回路基板50には、スルーホール51が形成されている。スルーホール51の内面およびスルーホール51近傍の電気回路基板50上には、銅めっき層52が形成されている。電気回路基板50の厚さとしては、1.2mm以上1.6mm以下が好ましい。
【0023】
保持部材1は、電気回路基板50の実装面50a側から矢印の方向に押し込まれることにより、保持部材1は、スルーホール51に挿入される。詳細には、一対の第1脚部20および第2脚部30がスルーホール51に挿入される。
図3(a)に示す状態から保持部材1をスルーホール51に挿入していくと、図3(b)に示すように、両側の第1脚部20が、それぞれ幅方向内側の第2脚部30側に弾性変形することで、両側に突出した突出部26、26が幅方向内側に変位してスルーホール51を通過する。そして、突出部26、26がスルーホール51を完全に通過すると、幅方向内側に弾性変形していた第1脚部20、20が幅方向外側に復帰し、この状態で、突出部26、26が電気回路基板50のはんだ面50bに係合する。これにより、保持部材1は、はんだ付け前に電気回路基板50が裏返されても、コネクタ200が自重で脱落しないよう、コネクタ200を保持する。これを、コネクタ200に対して見ると、コネクタ200が電気回路基板50を保持するかたちとなる。
【0024】
ここで、保持部材1をスルーホール51に嵌入させて突出部26、26が電気回路基板50のはんだ面50bに係合した状態において、スリット27は、その上端部27aが、電気回路基板50の実装面50aの近傍、より好ましくは実装面50aよりも上方に突出した位置となるよう形成するのが好ましい。
【0025】
さて、上記のように保持部材1をスルーホール51に嵌入させると、第1脚部20は、スリット27により剛性が落とされているので、突出部26、26がスルーホール51を通過するときに、容易に弾性変形する。したがって、保持部材1がスルーホール51から抜け難くするために突出部26、26の突出寸法を大きくしても、第1脚部20とスルーホール51の銅めっき層52との干渉を弱めることができる。これにより、スルーホール51の銅めっき層52の損傷を低減できる。ここで、第1脚部20がスルーホール51から抜け難くするためには、突出部26、26の幅方向両側への突出寸法を大きくすることが必要である。この保持部材1によれば、突出部26、26の幅方向両側への突出寸法を大きくしても、スルーホール51の銅めっき層52を損傷することがないので、コネクタ200の電気回路基板50に対する係合力を十分に強くすることができる。
【0026】
図4および図5に示すように、保持部材1により電気回路基板50に保持されるコネクタ200は、電子機器に内蔵される電気回路基板50に実装され、対となる他のコネクタ200(図示しない)と嵌合することにより、電気回路基板50上の回路と、電気回路基板50上以外の回路とを電気的に接続するものである。
【0027】
コネクタ200は、上述した保持部材1と、電気回路基板50上の回路と接続するコンタクト201と、保持部材1およびコンタクト201を固定するハウジング202とを備えている。保持部材1の基部10が、コネクタ200に設けられた溝(図示無し)に圧入されることで、保持部材1がコネクタ200に取付けられる。
【0028】
そして、保持部材1がスルーホール51に嵌入されることにより、コネクタ200が、電気回路基板50に保持される。この状態の電気回路基板50がはんだフロー工程を経ると、保持部材1は、はんだフロー工程において、コネクタ200の端子と共に電気回路基板50にはんだ付けされる。これにより、コネクタ200が電気回路基板50に保持される。
【0029】
はんだフロー工程では、保持部材1がスルーホール51に嵌入された状態で、電気回路基板50のはんだ面50bが、溶融はんだに浸される。すると、スルーホール51の銅めっき層52と、保持部材1が、溶融はんだで濡れる。溶融はんだは、第1脚部20の表面、およびスルーホール51の銅めっき層52を伝ってスルーホール51内に吸い上げられる。第1脚部20の間には、第2脚部30が配置されているため、溶融はんだは、第2脚部30の表面も伝って吸い上げられる。しかも、第2脚部30の縁面33と、第1脚部20との隙間は、溶融はんだが毛細管現象により流入する幅を有している。このため、溶融はんだは、毛細管現象により、第2脚部の縁面33と第1脚部との隙間を伝って吸い上げられる。さらに、第1脚部20に形成されたスリット27を通しても、溶融はんだが毛細管現象により吸い上げられる。
やがて、スルーホール51内に吸い上げられた溶融はんだは、第1脚部20の第二平行部21dの表面を伝って実装面50aまで上昇する。
【0030】
この結果、溶融はんだは、スルーホール51を完全に埋め、さらに、電気回路基板50の実装面50a上には、第1脚部20の第二平行部21dと、電気回路基板50の実装面50aとを覆うはんだフィレット70が形成される。
このとき、第1脚部20に形成されたスリット27を通しても、溶融はんだが毛細管現象により吸い上げられる。保持部材1をスルーホール51に嵌入させて突出部26、26が電気回路基板50のはんだ面50bに係合した状態において、スリット27の上端部27aが、電気回路基板50の実装面50aの近傍に位置するよう形成しておくことで、フィレット70をさらに良好に形成できる。
この溶融はんだが冷えて固化することにより、電気回路基板50にコネクタ200が固定される。
【0031】
なお、上記実施形態では、第1脚部20にスリット27を形成する構成としたが、図6に示すように、スリット(貫通スリット)27’は、突出部26よりも基部10側における第1脚部20のみに形成してもよいし、また、図7に示すように、スリット(貫通スリット)27”は、突出部26の部分のみに形成してもよい。さらに、スリット27を、場所によってその深さを異ならせることもできる。例えば、スリット27を突出部26の部分においては貫通させ、突出部26よりも基部10側における第1脚部20、20においては非貫通とすること等も可能である。
このような第1脚部20は、スリット27に代えて溝を形成することもでき、その断面形状は、略U字状、H字状等とすることができる。もちろんこれ以外であってもよい。
【0032】
なお、上記実施形態では、本発明の電子部品の一例としてコネクタ200を説明したが、本発明は、これに限るものではなく、保持部材により電気回路基板50に保持される他の電子部品にも適用される。
【0033】
また、上記実施形態では、はんだフロー工程によりはんだ付けされる例を説明したが、本発明は、これに限るものではない。はんだ付けは、例えば、はんだペーストをスルーホール51内に予め充填することにより、はんだリフロー工程で行うことも可能である。
【0034】
また、保持部材1の実施形態では、一対の第1脚部20のそれぞれは、第2脚部30の縁面33から溶融はんだが毛細管現象により流入する隙間をおいて配置されたものとして説明したが、本発明はこれに限るものではない。スルーホール51の銅めっき層52に干渉しない第2脚部30は、縁面33を第1脚部20に向けたものであればよく、スルーホール51の形状や第1脚部20の形状に拘束されずに配置されたものであってよい。ただし、実施形態で説明したように、毛細管現象により流入する隙間をおいて配置されることにより、溶融はんだが、スルーホール51内にさらに吸い上げられ易くなる。
【0035】
また、保持部材1は、錫めっき処理が施された真ちゅう製であるとして説明したが、本発明はこれに限るものではない。保持部材は、表面が溶融はんだによって濡れる金属製であればよく、例えば、保持部材が銅合金製であれば、錫めっき処理は必要とされない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…保持部材、10…基部、20…第1脚部、21…撓み変形部、22…嵌入部、26…突出部、27、27’、27”…スリット(貫通スリット)、27a…上端部、30…第2脚部、50…電気回路基板、50a…実装面、50b…はんだ面、51…スルーホール、52…銅めっき層、70…フィレット、200…コネクタ(電子部品)、201…コンタクト、202…ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路基板に設けられたスルーホールに嵌入されて該電気回路基板に電子部品を保持する保持部材であって、
前記電子部品に固定される板状の基部と、
前記基部から互いに略同じ方向に延び、前記スルーホールの内面に干渉しながら該スルーホールに嵌入される一対の板状の第1脚部と、
一対の前記第1脚部どうしの間に設けられ、前記基部から前記第1脚部と同一方向に延びる第2脚部とを備え、
前記第1脚部は、
当該第1脚部の先端部に、前記第2脚部とは反対側に突出する突出部が形成されるとともに、
前記第2脚部に近接する側と前記第2脚部とは反対側との中間部に、溝または貫通スリットが形成されていることを特徴とする保持部材。
【請求項2】
前記溝または前記貫通スリットは、前記第1脚部の前記基部に近接した側から前記突出部が形成された先端部までの少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保持部材。
【請求項3】
前記溝または前記貫通スリットは、前記第1脚部の前記基部に近接した側から前記突出部が形成された先端部まで連続して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の保持部材。
【請求項4】
前記溝または前記貫通スリットは、その上端部が、前記第1脚部を前記スルーホールに嵌入させた状態において、前記電子回路基板において前記電子部品が実装される側の表面の近傍に位置するよう形成されていることを特徴とする請求項3に記載の保持部材。
【請求項5】
一対の前記第1脚部のそれぞれは、前記第2脚部の縁面との間に、溶融はんだが毛細管現象により流入する隙間をおいた位置に配置されたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の保持部材。
【請求項6】
スルーホールが設けられた電気回路基板に保持される電子部品であって、
前記スルーホールに挿入される脚部を有し、前記電気回路基板に前記電子部品を保持させる保持部材を備え、
前記保持部材は、
前記電子部品に固定される板状の基部と、
前記基部から互いに略同じ方向に延び、前記スルーホールの内面に干渉しながら該スルーホールに嵌入される一対の板状の第1脚部と、
一対の前記第1脚部の間に設けられ、前記基部から前記第1脚部と同一方向に延びる第2脚部とを備え、
前記第1脚部は、
当該第1脚部の先端部に、前記第2脚部とは反対側に突出する突出部が形成されるとともに、
前記第2脚部に近接する側と前記第2脚部とは反対側との中間部に、溝または貫通スリットが形成されていることを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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