説明

保水剤及びこれを用いた除湿剤と衛生用品

【課題】 現在、保水剤としてポリアクリルアミドが多用されている。ポリアクリルアミドの構成要素であるアクリルアミドは発がん性物質であることから、ポリアクリルアミドの廃棄には十分注意する必要がある。そこで、ポリアクリルアミドに代わる環境にやさしい安価な保水剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 上記課題を解決する保水剤は、粘性多糖質の含有量が70%以上の保水剤である。特にこの保水剤は、オオバコの種皮の粉末又はこんにゃく芋の粉末からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、保水剤及びこれを用いた除湿剤と衛生用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、保水剤が生理用品、紙おむつなどの衛生材料や土壌保水剤などに幅広く用いられている。この様な保水剤の代表例として、ポリアクリルアミド系のものが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、ポリアクリルアミドを構成するアクリルアミドは、発がん性物質として知られ、また、生殖に影響を及ぼす可能性も指摘されている。ポリアクリルアミドは、光や熱などによってアクリルアミドに分解されるので、その廃棄方法に十分な配慮が必要となる。
【特許文献1】特開2002−336694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ポリアクリルアミドは、様々な用途に用いられるにもかかわらず、廃棄方法に問題点を抱えている。また、単価も安くない。このように環境保全が求められる現在においても、高価なポリアクリルアミドが用いられているのは、これに代わる保水剤が開発されていないためである。
【0005】
本発明は、こうした現状を打開すべく、ポリアクリルアミドに代わる環境にやさしい新たな保水剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る保水剤は、粘性多糖質の含有量が70%以上であることを特徴とする。
【0007】
また、前記保水剤は、オオバコの種皮の粉末からなることを特徴とする。
【0008】
また、前記保水剤は、こんにゃく芋の粉末からなることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る除湿剤は、前記保水剤と塩化カルシウムを有することを特徴とする。
【0010】
また、前記除湿剤は、打錠成型されてなることを特徴とする。
【0011】
また、前記除湿剤は、さらに石灰を含有することを特徴とする。
【0012】
また、前記除湿剤は、透過性のある不織布またはフィルムからなる包装材に収納されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る衛生用品は、前記保水剤を有することを特徴とする。
【0014】
また、前記衛生用品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、またはペット用排尿処理用品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願発明は、粘性多糖質が主原料であるので、焼却処分や埋め立て処分しても環境への影響は小さく、しかも安価で製造できる。また、ポリアクリルアミドなどの保水剤と比べても保水効率が高い。さらにオオバコの種皮の粉末は、一度吸収した水分をほとんど放出しないので周囲を水浸しにすることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
オオバコの種皮を粉砕機などで粉砕し、粉状に精製する。こうして出来た粉状体は、従来の保水剤と比較して数倍の保水量をほこり、さらに、一度保水するとゲル状になり水分をほとんど放出しない。従って、汚水を吸収させた場合でもしっかり保水するので周囲を汚すことがない。
【0018】
なお、オオバコの種皮はサイリウムと呼ばれ、粘性多糖質の占める割合が高い。
【0019】
また、こんにゃく芋を粉末に精製したものも保水性に優れるので、オオバコの種皮の粉末の代用品とすることができる。こんにゃく芋の精粉も、サイリウム同様に粘性多糖質の占める割合が高い。
【0020】
これらは原料が粘性多糖質であるので焼却処分や埋め立て処分しても環境への影響が小さくて済む。また、従来の保水剤と比べ、安価で製造できるので様々な用途での利用が期待される。特にオオバコは、漢名では車前(しゃぜん)または車前草(しゃぜんそう)といい、人や車の踏み通る道端の跡に好んで生える非常に生命力の強い草である。従って、大量生産するに当たり、生産管理が容易である。
【0021】
次に、オオバコの種皮の粉末やこんにゃく芋の粉末と塩化カルシウムを混合させた除湿剤について説明する。
【0022】
塩化カルシウムは、大気中の水分を吸収し水に溶ける性質(潮解性)を有する。この性質と、オオバコの種皮の粉末やこんにゃく芋の粉末が有する高い保水性を組合せることで、高い除湿性能を有する除湿剤を提供することができる。つまり、塩化カルシウムが大気中の水分を吸湿し、これをオオバコの種皮の粉末やこんにゃく芋の粉末が保水しゲル状化するのである。
【0023】
塩化カルシウムとオオバコの種皮の粉末の混合粉について吸湿保水実験を行った。実験は、塩化カルシウム100グラムとオオバコの種皮の粉末40グラムの混合粉を包装材に収納し、摂氏30度、湿度90%の庫内に置いた。
【0024】
すると、本発明である除湿剤は、500グラムの水を吸湿保水した。注目すべき点は、塩化カルシウムとオオバコの種皮の粉末の混合割合である。現在市販されている除湿剤では、吸湿機能を果たす塩化カルシウムの割合が除湿剤全体の33%程度に抑えられている。これは、ポリアクリルアミドを始めとする現在使用されている保水剤の保水能力に限界があるためであり、33%を超える塩化カルシウムを含有させると保水剤が水分を保水しきれず、水浸しの状態になるからである。これに対し、本発明である除湿剤は、保水剤であるオオバコの種皮の粉末の保水能力が高いので、70%を超える割合の塩化カルシウムを含有させることができる。このことから、従来の製品と比較しても2倍以上の除湿性能を有しているといえる。また、40グラムのオオバコの種皮の粉末が、500グラムの水を保水したことも注目に値する。
【0025】
オオバコの種皮の粉末やこんにゃく芋の粉末と塩化カルシウムを混合したものは、不織布などの包装材に収納するとよい。ここで、粉状体を打錠成型して包装材に収納することもできる。こんにゃく芋の粉末を打錠成型する際には、石灰を混合するとよい。石灰を混合すると固まりやすくなるからである。
【0026】
次に、オオバコの種皮の粉末やこんにゃく芋の粉末を有する衛生用品について説明する。
【0027】
本発明において、衛生用品は、上記オオバコの種皮の粉末又はこんにゃく芋の粉末を含むものであればよく、その存在形態は特に制限されず、適当な形態のものを従来のまたは市販の使い捨ておむつ、生理用ナプキン中に設ければよい。具体的には、2枚のシート材の間に上記の粉末を挟着担持させたもの;シート材からなる袋体内に上記粉末を適当量導入したもの、複数のシート材の間に上記粉末を含ませて層状にしたものなどが挙げられる。この際、シート材の材質は、特に制限されず、公知の材質が使用できる。例えば、紙質材;綿、羊毛などの天然繊維材料;レーヨンなどの半合成繊維材料;ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの合成繊維材料;さらには、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、PTFE繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維などが挙げられる。また、シート材は、上記繊維の、織布、編布、不織布などのいずれの形態を有していてもよい。シート材の大きさは衛生用品の大きさに応じて適宜選択できる。また、必要であれば、これらのシート材に脱臭・防虫・抗菌・除湿用の吸着剤をさらに含浸させてもよい。
【0028】
本発明において、衛生用品への粉末の充填量は、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
本発明の衛生用品としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ペット用排尿処理用品等がある。この衛生用品は、廃棄が容易な点で優れている。また、オオバコの種皮の粉末は、一度保水するとゲル状になり汚水の放湿率は他の保水剤と比べると極めて低いことから、衛生用品を使用する者に不快感を与えることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性多糖質の含有量が70%以上であることを特徴とする保水剤。
【請求項2】
請求項1に記載の保水剤において、
保水剤は、オオバコの種皮の粉末からなることを特徴とする保水剤。
【請求項3】
請求項1に記載の保水剤において、
保水剤は、こんにゃく芋の粉末からなることを特徴とする保水剤。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の保水剤と塩化カルシウムを有することを特徴とする除湿剤。
【請求項5】
請求項4に記載の除湿剤において、
前記除湿剤が、打錠成型されてなることを特徴とする除湿剤。
【請求項6】
請求項5に記載の除湿剤において、
前記除湿剤が、石灰を含有することを特徴とする除湿剤。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか一項に記載の除湿剤において、
前記除湿剤が、透過性のある不織布またはフィルムからなる包装材に収納されていることを特徴とする除湿剤。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の保水剤を有することを特徴とする衛生用品。
【請求項9】
請求項8に記載の衛生用品において、
前記衛生用品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、またはペット用排尿処理用品であることを特徴とする衛生用品。

【公開番号】特開2006−326502(P2006−326502A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154285(P2005−154285)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505195409)
【Fターム(参考)】