説明

保水性舗装の下部構造

【課題】保水性舗装、特に保水性舗道のヒートアイランド現象を緩和する効果を、天候に左右されずに常時発揮させるため、保水性舗道の表面を形成する保水性舗装内部に向けて給水する機能を有する保水性舗装の下部構造を提供する。
【解決手段】保水性舗装層と基礎地盤の間に、土砂に固化材を添加しそれを混合撹拌・転圧することにより得られる、毛細管作用による透水性を有する下部構造体を設置し、それにより基礎地盤中の水を吸い上げることにより保水性舗装層への給水機能を持たせたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性舗装の下部構造に関し、さらに詳しくは、保水性舗装、特に保水性舗道のヒートアイランド現象を緩和する効果を天候に左右されずに常時発揮させるため、保水性舗道の表面を形成する保水性舗装層内部に向けて給水する機能を有する、保水性舗装の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートアイランド現象が問題となっている。その主な原因としては、アスファルト舗装及びコンクリート構造物等により自然地盤からの水の蒸発が阻害されることや、それらの蓄熱と照り返しによる輻射熱の増加、ビル等の空調による排熱の増加、並びに車輌の排出ガス熱の影響などが挙げられる。ここで、アスファルト等による道路舗装は、その色調が黒であるため太陽光を吸収しやすく表面温度が上昇し、特に、道路舗装比率の高い都市部でのヒートアイランド現象の発生要因の一つとなっている。
【0003】
このヒートアイランド現象の緩和に向けた道路舗装分野での取組みとしては、公的な機関での検証により、保水性舗装により舗装路面温度を下げることが有効であることが実証され、このため保水性舗装がなされた舗道が採用されるようになっている。ここで、保水性舗装とは、舗装体内に水分を吸水し保水する機能を持った舗装である。例えば、保水性舗道のヒートアイランド緩和作用は、雨水などを舗装内部に保水しておき、晴天時にこの雨水を蒸発させて気化熱を奪うことにより舗装路面温度を低下させることにより行なわれる。
【0004】
しかしながら、保水性舗装は、一般にその保水能力に限界があり、一方雨水による水分の供給は天候に左右されるので、例えば、真夏時にあっては2、3日雨が降らなければすぐに蒸発し保水状態はゼロとなる。このために、舗装路面に路面温度を下げる機能を常に持たせるようにするには、散水車によって水を定期的に供給しなくてはならず、その維持と管理のため多大なコストが必要とされていた。
【0005】
この解決策として、例えば、地下に埋設された雨水を溜める雨水貯留施設から吸水して表面の保水性舗装層内へ供給する吸水型の保水性舗装構造(例えば、特許文献1参照。)、道路の表層を構成する保水性混合物層と、該保水性混合物層下に設けて保水性混合物層に水分を供給する給水路盤と、該給水路盤下に設けた水分を含浸可能な給水材と、該給水材に供給する水分を貯留するための貯水部と、からなり、貯水部から給水材に供給した水分を給水路盤を通じて保水性混合物層に供給させて路面を冷却する給水型保水性舗装(例えば、特許文献2参照。)、内部に連続空隙を有する開粒度混合物層と、この連続空隙に充填された保水性及び吸湿性を有する充填材とからなり、吸湿材により外気中の水分を吸湿させるとともに、その水分を保水剤で保水するようにした保水性舗装構造(例えば、特許文献3参照。)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの提案において、保水性舗装の下部に雨水貯留施設等を設置して給水を行う手段を講じるものでは、設備費用及びメンテナンス等のコストがかかり、また、保水性舗装内部に保水剤と吸湿剤からなる充填材を有するものでは、その吸湿性に限界があるとともに高コストであるので、いずれの提案も経済的に得策でない。
以上の状況から、保水性舗装、特に、保水性舗道の保水性舗装層内部に向けて、低コストで給水することができる手段が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−293098号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】特開2005−2575号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献3】特開2005−68900号公報(第1頁、第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、保水性舗装、特に保水性舗道のヒートアイランド現象を緩和する効果を天候に左右されずに常時発揮させるため、保水性舗道の表面を形成する保水性舗装層内部に向けて給水する機能を有する、保水性舗装の下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために、保水性舗装の路盤構造について、鋭意研究を重ねた結果、保水性舗装の下部構造として、土砂を特定の条件で処理した毛細管作用による透水性を有する下部構造体を用いたところ、保水性舗道の表面を形成する保水性舗装層内部への給水機能を有する下部構造が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、保水性舗装層と基礎地盤の間に、土砂に固化材を添加しそれを混合撹拌・転圧することにより得られる、毛細管作用による透水性を有する下部構造体を設置し、それにより基礎地盤中の水を吸い上げることにより保水性舗装層への給水機能を持たせたことを特徴とする保水性舗装の下部構造が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記土砂は、砂、砕石又は現地発生土から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする保水性舗装の下部構造が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記固化材は、石膏、セメント、石灰又は粘土鉱物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする保水性舗装の下部構造が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記下部構造体は、下記の式(1)を満足する透水係数(k)を有することを特徴とする保水性舗装の下部構造が提供される。
5×10−3>k>10−6 (1)
(ここで、kの単位は、cm/secである。)
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4いずれかの発明において、前記下部構造体は、砂層と砕石層の2層から構成されることを特徴とする保水性舗装の下部構造が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の保水性舗装の下部構造によれば、第1の発明においては、保水性舗装のため給水用の別途設備を設置することが不要であり、かつエネルギー効率の高い手段で保水性舗装層内部に向けて地中の水を給水することができ、これによって保水性舗装、特に保水性舗道のヒートアイランド現象を緩和する効果を天候に左右されずに常時発揮させることができるので、環境上及び経済上の価値は極めて大きい。
【0016】
また、第2又は3の発明によれば、土砂及び固化材として適切なものを選択して、保水性舗装の用途に応じて、より効果を発揮することができる。
また、第4の発明によれば、下部構造体の透水係数を測定し、それを所定値に調整することによって、好ましい透水性に管理することができるので、使用する土砂に対する固化材の種類と配合量の最適化、試験体による事前測定による配合割合の決定等のため、有用な手段が得られる。また、第5の発明によれば、適切な透水性とともにクッション機能と地耐力を保持する機能を保証することができるので、保水性舗道等の広範囲な用途に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の保水性舗装の下部構造について詳細に説明する。
本発明の保水性舗装の下部構造は、保水性舗装層と基礎地盤の間に、土砂に固化材を添加しそれを混合撹拌・転圧することにより得られる、毛細管作用による透水性を有する下部構造体を設置し、それにより基礎地盤中の水を吸い上げることにより保水性舗装層への給水機能を持たせたことを特徴とする。
【0018】
本発明において、保水性舗装の下部構造体として、土砂に固化材を添加しそれを混合撹拌・転圧することにより毛細管作用による透水性を付与した土砂を用いることが重要である。すなわち、この下部構造体を保水性舗装層と基礎地盤の間に設置することにより、保水性舗道の表面を形成する保水性舗装層内部に向けて毛細管作用により地中の水を給水する機能を有する下部構造が得られる。したがって、保水性舗装によるヒートアイランド現象を緩和する効果を天候に左右されずに常時発揮させることができる。また、同時に、下部構造体の施工性を向上させるとともに、下部構造に地耐力を保持する機能を付与することができる。
【0019】
まず、本発明の概要を、図を用いて説明する。図1は、本発明の毛細管作用を有する下部構造体を含む下部構造を用いた保水性舗道における給水の概念図を表す。
図1において、保水性舗装材、保水性ブロック材等の保水性舗装層1と、自然状態の土壌を整地した基礎地盤2との間に、下部構造体3が設置される。ここで、下部構造体3を通じて、基礎地盤2から保水性舗装層1への給水が行われる。すなわち、保水性舗装層1内部にある保水部4の水が蒸発されたとき、基礎地盤2中に自然状態で形成されている貯水部5から、毛細管作用による給水経路6を経由して、保水部4に水が吸い上げられる。なお、貯水部5の水は、地中に滲みこんだ雨水又は地下水脈により補充される。
【0020】
ところで、従来の保水性舗道の下部構造では、歩道、広場、車道等、舗装される路面の用途により、種々の路盤構造がとられる。例えば、保水性舗装層と基礎地盤との間に、サンドクッション(砂)層、透水性瀝青安定処理層、クラッシャーラン(砕石)層、フィルター層等が適宜設けられる。ここで、砂層は主に舗道を平滑に仕上げること、また砕石層は強度を分散することを目的としている。通常、これらの層に使用する砂又は砕石としては、粒度が粗いものが用いられる。このため、従来の砂層及び砕石層は、保水性舗装層から下部へ通水する用途には適しているが、下部の基礎地盤から水を吸い上げる機能を有していない。したがって、それらの下部の基礎地盤中に水があっても、これらの層を設けると、保水性舗装層内部へ向けての水の供給が絶たれ、地中の水を有効に活用することができなかった。
【0021】
これに対して、本発明の保水性舗装の下部構造を用いた舗道では、固化材を添加して毛細管作用による透水性を持たせるように調製された下部構造体によって、下部の基礎地盤から効率良く水を吸い上げて、地中の水を有効に活用することができる。
【0022】
本発明の下部構造としては、保水性舗装層と接する毛細管作用による透水性を有する下部構造体と、自然状態の土壌を整地した基礎地盤とからなるものである。
上記下部構造体としては、現地発生土、砂、砕石、又はこれらの混合物の単層構造の他、歩道、広場、車道等の路面の用途に対して適切なクッション機能と地耐力を保持する機能を保証するために、所定の地耐力、厚さ等を有する複数の層から構成される路盤構造をとることができる。例えば、毛細管作用による透水性を持たせた砂層、砕石層及びそれらの混合層、ならびに、それらを組合せたものが適宜用いられる。特に、現地発生土の特性、調達しやすい土砂、及び舗装路面の用途等により、現地発生土又は調達された砂、砕石等による砂層と砕石層の2層構造が選ばれる。
【0023】
さらに、必要に応じて、保水性舗装層と前記下部構造体との層間、下部構造体を構成する各層の層間、又は前記下部構造体と基礎地盤との間に、所望の透水性を有する透水性シート、又は所望の吸水性を有する不織布等の吸水性シートを設けることができる。
【0024】
上記砂層、砕石層及びそれらの混合層としては、固化材を添加しそれを混合攪拌・転圧することにより、土砂内部の空隙径を調整したものが用いられる。これによって、砂層、砕石層及びそれらの混合層内部に毛細管作用を付与することにより所望の透水性を保持し、地中の水を下部の基礎地盤の土壌から上部の保水性舗装層へ供給する機能を維持することができる。
【0025】
上記下部構造体の調製方法としては、土砂に固化材を添加しそれを混合攪拌・転圧することにより、毛細管作用による透水性が保持されるように行なう。すなわち、上記毛細管作用による透水性としては、固化材の種類と配合量、混合方法等を変えて土砂の空隙径を調整して、所望の透水性を下部構造体に持たせることによって達成される。しかも、上記方法で調製された調合物は施工性が良好であるので、上記調合物を整地された基礎地盤上に敷設することにより下部構造体が形成される。
【0026】
上記混合撹拌としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタビライザー等の混合装置を用いて、土砂中に固化材が分散され所望の透水性を有するように行なう。また、上記転圧としては、振動ローラ等の締固め機械を用いて、土砂中に分散された固化材が土砂に密着され所望の透水性を有するように行なう。
【0027】
上記土砂としては、特に限定されるものではなく、調達が容易な砂、砕石又は現地発生土から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。一般に、現地発生土としては、実質上不透水である粘性土、透水性が低いシルト、砂―シルト―粘土の混合土等、透水性の高い粗砂、礫等が含まれる。これらの中で、例えば、前述した舗装路面の用途に応じて、現地発生土を主資材として用い、これに地耐力を勘案して砂、砕石等を調合して用いるのが経済上好ましい。
【0028】
上記固化材としては、特に限定されるものではなく、上記土砂の透水性を改質する作用がある石膏、セメント、石灰又は粘土鉱物から選ばれる少なくとも1種が用いられる。ここで、石膏系固化材としては、凝結硬化する性質を有する半水石膏、例えば市販の焼石膏が好ましい。また、セメント系固化材としては、超速硬性セメント、普通ポルトランドセメント、超早強セメント、早強セメント、高炉セメント等の市販のセメントから、施工条件等を考慮し適宜選択して用いる。また、石灰系固化材としては、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等の粉末が挙げられる。また、粘土鉱物としては、カオリナイト、ベントナイト等の粉末が挙げられる。
【0029】
上記固化材の選定では、使用する土砂が本来有している透水性の度合いに応じて適切な透水性が付与されるように行うことが望ましい。例えば、土砂が実質上不透水である粘性土の場合には、石灰、半水石膏等の凝結硬化性の固化材を用いて土砂を団粒化させ透水性を上昇させるように改質する。また、透水性の高い礫の場合には、上記固化材を用いて透水性を低下させるように改質する。また、透水性が中位の砂の場合には、上記固化材のいずれかを用いてより適切な透水性に上昇させる。
【0030】
上記固化材の配合量としては、特に限定されるものではなく、使用する土砂の種類により下部構造体において所望の透水性が得られるように、また、得られる下部構造体の施工性と地耐力を勘案して決定されるが、通常、土砂に対して、3〜20重量%が用いられる。
【0031】
本発明に用いる下部構造体の透水係数(k)としては、特に限定されるものではないが、下記の式(1)を満足するように、固化材の種類、配合量等を調整することが、所望の透水性を得るため好ましい。さらに、下記の式(2)を満足するように調整することが、より好ましい。
【0032】
5×10−3>k>10−6 (1)
10−3>k>10−5 (2)
(ここで、kの単位は、cm/secである。)
【0033】
すなわち、透水係数(k)が10−6未満では、透水性が非常に低い状態であるので、吸着が卓越し毛細管作用による給水機能が発揮されにくい。一方、透水係数(k)が5×10−3を超えると、透水性が高い状態であり、通水性が勝るので、毛細管作用による給水機能が発揮されにくい。
【0034】
また、調製された下部構造体の透水係数を測定することにより、使用する土砂に対する固化材の種類、配合量の最適化を図ることができる。特に、固化材の選定においては、試験体による事前の測定により、配合割合を決めることができるので、設計及び施工に際して有用な手段となる。
【0035】
本発明に用いる保水性舗装層としては、特に限定されるものではなく、通常使用されている保水性舗装材、又は保水性インター、保水性平板等の保水性ブロック材を用いて施工されるものである。特に、内部に保水部につながる連続空隙を有し、下部からの透水性を阻害しないものを用いる。
上記保水性舗装材としては、透水性アスファルト混合物、セメントコンクリート、セメントモルタル、石油樹脂混合物等のポーラス材料の空隙に保水性のある充填材が添加された複合材料が挙げられる。また、上記保水性ブロック材としては、前記複合材料、及びセラミックス焼結体からなる多孔質成形ブロックが挙げられる。例えば、アスファルト舗装等の粗骨材、細骨材等の間に形成される空隙に、保水材、吸湿材等が充填されているものが用いられる。ここで、骨材としては、例えば、砕石、砂利、スラグ、砂及び再生骨材等が適宜用いられ、また、充填材及び硬化材として、消石灰、セメント、フライアッシュ、石灰石等の岩石を粉砕した石粉等が使用可能である。
【0036】
上記保水材としては、特に限定されるものではなく、吸水時に体積変化及び膨張が起きない性質と十分な吸上げ能力とを備えているものが用いられるが、石炭灰クリンカー、陶器瓦、レンガ破砕物等が好ましい。また、上記吸湿材としては、特に限定されるものではなく、塩化カルシウム、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等が用いられる。これらは、通常、アスファルト舗装等が硬化された後で、空隙の中にミルク状にして流し込まれる。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた透水係数の評価方法は、以下の通りである。
(1)透水係数の測定:定水位透水試験で行った。
【0038】
(実施例1)
土砂として、透水係数(k)が2×10−1cm/secである砂を用いて、それに固化材を配合して下部構造体材料を得て、それを保水性舗装材の下部構造に用いた場合の毛細管作用による給水機能を調べた。
上記砂の100重量部に対して、固化材として半水石膏3重量部を混合攪拌・締固めて下部構造材を作成し、3日空気中、4日水中で養生した後にその透水係数を測定した。その結果下部構造体材の透水係数(k)は2×10−3cm/secとなり、所望の透水性が得られた。
次に通常の基礎地盤上に、上記下部構造体材料を5cmの厚さで敷設し、さらにその上に5cmの保水性舗道材を敷設した。その後、給水機能を調べるため、保水性舗装層の表面を夏場の晴天日に相当する900W/mで4時間加熱し、保水性舗道材内の水分を蒸発させたのちに含まれる水分量を再測定した。その結果、前記水分量の前後の変化は見られず、毛細管作用による給水機能を有することが確認された。
【0039】
(実施例2)
固化材として、半水石膏と高炉セメントを80:20の重量割合で配合して得た混合物4重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に行ない、下部構造体材料を得て、透水係数を測定した。その結果、下部構造体材料の透水係数(k)は7×10−4cm/secとなり、所望の透水性が得られた。
次に、通常の基礎地盤上に、上記下部構造体材料を5cmの厚さで敷設し、さらにその上に保水性舗道材を5cmの厚さで敷設した。その後、給水機能を調べるため、保水性舗装層の表面を夏場の晴天日に相当する900W/mで4時間加熱し、保水性舗道材内の水分を蒸発させたのちに含まれる水分量を再測定した。その結果、前記水分量の前後の変化は見られず、毛細管作用による給水機能を有することが確認された。
【0040】
(実施例3)
土砂として、透水係数(k)が5cm/secである礫を用いて、それに固化材を配合して下部構造体材料を得て、それを保水性舗装材の下部構造に用いた場合の毛細管作用による給水機能を調べた。
上記砂礫の100重量部に対して、固化材として半水石膏と粉状粘土を50:50の重量割合で配合して得た混合物10重量部を添加し、それを混合撹拌・締固めて下部構造体材料を得て、透水係数を測定した。その結果、下部構造体材料の透水係数(k)は3×10−4cm/secとなり、所望の透水性が得られた。
次に、通常の基礎地盤上に、上記下部構造体材料を15cmの厚さで敷設し、さらにその上に保水性舗道材を5cmの厚さで敷設した。その後、給水機能を調べるため、保水性舗装層の表面を夏場の晴天日に相当する900W/mで4時間加熱し、保水性舗道材内の水分を蒸発させたのちに含まれる水分量を再測定した。その結果、前記水分量の前後の変化は見られず、毛細管作用による給水機能を有することが確認された。
【0041】
(実施例4)
土砂として、透水係数(k)が2×10−6cm/secである粘性土を用いて、それに固化材を配合して下部構造体材料を得て、それを保水性舗装材の下部構造に用いた場合の毛細管作用による給水機能を調べた。
上記粘性土の100重量部に対して、固化材として半水石膏と石灰を50:50の重量割合で配合して得た混合物10重量部を添加し、それを混合撹拌して下部構造体材料を得て、透水係数を測定した。その結果、下部構造体材料の透水係数(k)は5×10−5cm/secとなり、所望の透水性が得られた。
次に、通常の基礎地盤上に、上記下部構造体材料を15cmの厚さで敷設し、さらにその上に保水性舗道材を5cmの厚さで敷設した。その後、給水機能を調べるため、保水性舗装層の表面を夏場の晴天日に相当する900W/mで4時間加熱し、保水性舗道材内の水分を蒸発させたのちに含まれる水分量を再測定した。その結果、前記水分量の80%が回復し、毛細管作用による給水機能を有することが確認された。
【0042】
(比較例1)
通常の基礎地盤上に、下部構造体材料として、透水係数(k)が2×10−1cm/secである砂を5cmの厚さで敷設し、さらにその上に5cmの保水性舗道材を敷設した。その後、給水機能を調べるため、保水性舗装層の表面を夏場の晴天日に相当する900W/mで4時間加熱し、保水性舗道材内の水分を蒸発させたのちに含まれる水分量を再測定した。その結果、水分量の回復は見られず、毛細管作用による給水機能が確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上より明らかなように、本発明の保水性舗装の下部構造は、保水性舗道の表面を形成する保水性舗装層内部に向けて給水する機能を有する下部構造体によって、保水性舗装、特に保水性舗道のヒートアイランド現象を緩和する効果を天候に左右されずに常時発揮させることができるので、保水性舗装の下部構造として好適である。また、下部構造体の透水係数の測定により、使用する土砂に対する固化材の種類、配合量を調整し最適化を図ることができ、特に、試験体による事前測定により、配合割合を決めることができるので、設計及び施工に際して有用な手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の毛細管作用を有する下部構造体を含む下部構造を用いた保水性舗道における給水の概念図を表す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 保水性舗装層
2 基礎地盤
3 下部構造体
4 保水部
5 貯水部
6 毛細管作用による給水経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保水性舗装層と基礎地盤の間に、土砂に固化材を添加しそれを混合撹拌・転圧することにより得られる、毛細管作用による透水性を有する下部構造体を設置し、それにより基礎地盤中の水を吸い上げることにより保水性舗装層への給水機能を持たせたことを特徴とする保水性舗装の下部構造。
【請求項2】
前記土砂は、砂、砕石又は現地発生土から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の保水性舗装の下部構造。
【請求項3】
前記固化材は、石膏、セメント、石灰又は粘土鉱物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の保水性舗装の下部構造。
【請求項4】
前記下部構造体は、下記の式(1)を満足する透水係数(k)を有することを特徴とする請求項1に記載の保水性舗装の下部構造。
5×10−3>k>10−6 (1)
(ここで、kの単位は、cm/secである。)
【請求項5】
前記下部構造体は、砂層と砕石層の2層から構成されることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の保水性舗装の下部構造。

【図1】
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【公開番号】特開2006−342585(P2006−342585A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169402(P2005−169402)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(597057254)有限会社マグマ (10)
【出願人】(000129611)株式会社クレー・バーン技術研究所 (11)
【Fターム(参考)】