説明

保液性物質の加工方法及び保液性物質を加工するための加工装置

コーヒー豆Cを加工する方法であって、コーヒー豆Cを容器10に入れ、噴射液投入路23から噴射口23aを経て容器本体11内に水を噴射することにより、容器本体11内に水を供給し、容器本体11内を加圧及び加熱しながらコーヒー豆Cの内部に水を浸透させる工程と、この容器本体11内部を減圧することにより、コーヒー豆Cの内部に浸透させた水を気化させることにより膨張させ、この膨張力でコーヒー豆Cを多孔状に膨らませて破砕させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、保液性物質を加工する方法、及び、この加工方法に使用する加工装置に関するものである。
【背景技術】
従来、コーヒー豆に代表される豆類等、気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を内部に浸透させることが可能な保液性物質に、粉砕等の加工を施す方法としては、刃物を備えた加工機の中に前記保液性物質を入れ、この刃物を回転させることにより前記保液性物質を粉砕することが主に行われている。
しかしながら、前記加工機で前記保液性物質を加工する場合、保液性物質の内部を多孔質なものにすることが出来ず、その後に前記保液性物質のエキス等を抽出しようとしても効率よく抽出することが出来なかった。
そこで本発明は、保液性物質を多孔質なものに加工するための加工方法及び加工装置を提供するものである。
【発明の開示】
請求項1記載の発明は、気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を内部に浸透させることが可能な保液性物質に、前記気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を浸透させ、この保液性物質を加工用容器に入れた状態で、この容器内を減圧することにより、前記保液性物質の内部に浸透させた液体又は超臨界状態の流体を気化膨張させ、その膨張力で前記保液性物質を多孔状に膨らませたり多孔状にした状態で破砕させたりする減圧工程を有することを特徴とする保液性物質の加工方法である。
なお、本発明の液体には、臨界状態の流体も含むものとする。
請求項2記載の発明は、気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を内部に浸透させることが可能な保液性物質を加工用容器に入れる工程と、この保液性物質の内部に気化性の有する液体又は超臨界状態の流体を浸透させる浸透工程と、前記容器内を減圧することにより前記保液性物質の内部に浸透させた液体又は超臨界状態の流体を気化膨張させ、その膨張力で前記保液性物質を多孔状に膨らませたり多孔状にした状態で破砕させたりする減圧工程と、を有することを特徴とする。
以上の発明の方法を採れば、前記保液性物質の内部に気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を浸透させた状態で前記液体又は前記流体を気化膨張させるため、前記保液性物質を多孔質の状態に加工することが可能となる。さらに、前記減圧工程の減圧状況によっては前記保液性物質を破砕することも可能となる。特に請求項9記載の発明のように前記保液性物質がコーヒー豆である場合、このコーヒー豆を多孔質にすることによりその後の抽出作業を行いやすくすることが可能となる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程を行う際に、前記保液性物質を加熱することを特徴とする。
この発明の方法を採れば、前記浸透工程を行う際に加熱も行うため、加工作業の効率を向上させることが可能となる。特に、コーヒー豆を加工する場合においては、コーヒー豆を多孔質に加工若しくは多孔質に加工した状態で破砕するだけでなく、焙煎も行うことが出来るため、別途焙煎作業を行う必要がなく、加工作業の効率を向上させることが可能となる。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記減圧工程を行う際に、前記保液性物質を振動させることを特徴とする。
この発明の方法を採ると、前記減圧工程を行う際に前記保液性物質を振動させることが可能となるため、この振動により、前記保液性物質に浸透させた液体又は超臨界状態の流体を膨張させるためのきっかけを作り、前記液体又は流体を膨張しやすくし、前記保液性物質を多孔質な状態に加工することが容易となる。したがって、加工作業をより効率よく行うことが可能となる。
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程を行う際に前記容器内を加圧することを特徴とする。
この発明の方法を採ると、加圧しながら前記保液性物質に前記液体又は超臨界状態の流体を浸透させることが出来るため、前記液体又は流体の前記保液性物質への浸透を、より有効に行うことが可能となる。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程と前記減圧工程とを複数回繰り返すことを特徴とする。
この発明の方法を採ると、前記浸透工程と前記減圧工程とを複数回繰り返すことにより、前記保液性物質を多孔状に膨らませたり多孔状にした状態で破砕させたりすることを、より確実に行うことが可能となる。
請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程と前記減圧工程とを行った後、前記保液性物質を後加工すべく前記容器内を加圧させて前記保液性物質に後加工用流体を浸透させる後加工用浸透工程を行うことを特徴とする。
この発明の方法を採ると、前記保液性物質を後加工するための流体、例えば香り付けを行うための成分、調味料等を保液性物質の内部に浸透させることが可能となる。
請求項8記載の発明は、請求項7のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記後加工用浸透工程の際に前記保液性物質を加熱し、この後加工用浸透工程終了後に前記保液性物質を冷却する冷却工程を行って前記後加工用流体を固化させ、この冷却工程を行った後に前記容器内を減圧する後加工用減圧工程を行うことを特徴とする。
この発明の方法を採ると、前記保液性物質に前記後加工用流体を浸透させた状態で、前記後加工用流体を固化させるため、前記後加工用流体に含まれる成分を前記保液性物質の内部に保持させることが可能となる。
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の保液性物質の加工方法を行うための加工装置であって、内部に空間を備えた容器と、この容器の内部を調節して少なくとも減圧を行う圧力調節部とを備えたことを特徴とする。
この発明の構成を採ると、前記容器の内部に前記保液性物質を入れ、前記圧力調節部で前記容器の内部を減圧することにより、前記保液性物質の内部に浸透させた気化性の有する液体又は超臨界状態の流体を気化膨張させ、前記保液性物質を多孔状に膨らませたり多孔状にした状態で破砕させたりすることが可能となる。
請求項11記載の発明は、請求項10記載の加工装置において、前記容器内部を加熱及び冷却のうち少なくとも一方を行うための温度調節部を備えたことを特徴とする。
この発明の構成を採ると、前記保液性物質を加工する際、前記容器内部に存在する物質(保液性物質、保液性物質の内部に浸透させるための液体や流体等)の温度を調節することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態にかかる加工装置の概略を示した図である。
図2は、図1のAA断面図である。
図3は、本発明の一実施形態にかかる加工装置の制御部分を示したブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施の形態につき、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態の加工装置の概要を示した図であり、図2は、図1のAA断面図である。なお、本実施形態では保液性物質としてはコーヒー豆Cを用いる。
加工装置1は、コーヒー豆C等の物質が投入される容器10と、この容器10内の空間にコーヒー豆C等の物質を投入する投入路20と、容器10内からコーヒー豆C等の物質を排出する排出路30と、この加工装置1を制御するための制御部40(図3参照)とを備えている。
容器10は、内部にコーヒー豆C等の物質を入れるための空間が形成された容器本体11と、この空間を密閉可能とする蓋12と、ヒータ(図示せず)とを備えている。
容器本体11は、略円筒状の形成されており、その内周の沿うように、網目状のフィルター13が配置されている。
投入路20は、加圧した液体及びコーヒー豆Cを投入するための共通投入路21と、コンプレッサ(図示せず)により加圧した空気を投入するための空気投入路22と、容器本体11内に噴射するための液体を供給する噴射液投入路23とを備え、各々容器本体11内の空間に接続されている。なお、空気投入路22と容器本体11との接続部分には、前述のフィルター13が配置されることにより、空気投入路2及び容器本体11にコーヒー豆Cが侵入することが阻止されている。また、共通投入路21、空気投入路22、噴射液投入路23の途中には、弁(図示せず)が配置されている。
共通投入路21は、途中で、コーヒー豆Cを容器本体11内に投入するための保液性物質投入路24と、コンプレッサ(図示せず)等により加圧された液体を容器本体11内に投入するための加圧液体投入路25とに分岐されている。噴射液投入路23は、液体を加圧するためのコンプレッサ(図示せず)を備え、かつ、先端に容器本体11内に液体を噴射するための噴射口23aを備えている。
排出路30は、容器本体11内に存在する気体及びコーヒー豆Cを容器本体11内から排出するための共通排出路31と、容器本体11内に存在する液体を容器本体11内から排出する排液路32とを備え、各々容器本体11内の空間に接続されている。なお、排液路32と容器本体11との接続部分についても、前述のフィルター13が配置されることにより、空気投入路22及び容器本体11にコーヒー豆Cが侵入することが阻止されている。また、共通排出路31、排液路32にも、弁(図示せず)が配置されている。
共通排出路31は、途中で、コーヒー豆Cを容器本体11内から排出するための保液性物質排出路33と、気体を吸入するためのバキュームポンプ(図示せず)を備えて容器本体11内の気体を吸引、排出する気体吸引路34とに分岐されている。また、保液性物質排出路33と気体吸引路34とが分岐する箇所には、気体吸引路34にコーヒー豆Cが入り込むことを阻止するためのバリアーメッシュ35が備えられている。
さらに、保液性物質排出路33の先には、コーヒー豆Cを粉砕するための粉砕機51と、コーヒー豆Cを運搬するためのベルトコンベア52と、コーヒー豆Cを篩にかけるための篩53と、コーヒー豆Cを貯めておくための貯留用容器54とが備えられている。なお、粉砕機51には、粉砕刃55が備えられ、この粉砕刃55により、粉砕機51に搬送されたコーヒー豆Cが粉砕される。
次に、加工装置1を制御する制御部について、図3を用いて説明する。
制御部40は、圧力調節部41と、温度調節部42と、振動制御部43と、投入量調節部44と、排出量調節部45とを備えている。
圧力調節部41は、容器本体11内の圧力や容器10に供給する流体の圧力を調節するためのものであり、共通投入路21、空気投入路22、噴射液投入路23、及び、共通排出路31に配置されている弁の開度を調節したり、空気投入路22から供給される空気量、及び、気体吸引路34から排出される空気量を調節したりすることにより容器本体11内の圧力を調節する。また、噴射液投入路23及び加圧液体投入路25に備えられているコンプレッサを調節することにより、噴射液投入路23から供給される液体の圧力を調節する。
温度調節部42は、容器本体11内の温度を調節するためのものであって、容器10に備えられたヒータを制御し、容器本体11内を加熱したり冷却したりすることにより容器本体11内の温度を調節する。
振動制御部43は、容器本体11内に入れられているコーヒー豆C等の物質を振動させるためのものであって、容器本体11内の物質に超音波を与えることにより、容器本体11内に存在する物質を振動させる。
投入量調節部44は、空気投入路22から投入される空気、保液性物質投入路24から容器本体11内に投入するコーヒー豆C、噴射液投入路23及び加圧液体投入路25から投入される液体の量を調節することにより、容器本体11内に投入される物質の量を調節する。
排出量調節部45は、共通排出路31及び排液路32に配置されている弁の開度を調節し、排液路32から排出される液体、保液性物質排出路33から排出されるコーヒー豆C、及び、気体吸引路34から排出される気体吸引路34の量を調節することにより、容器本体11内から排出される物質の量を調節する。
以下、コーヒー豆Cを加工する工程について説明する。なお、図1において蓋12は開いた状態となっているが、加工する際には、蓋12は閉まった状態となっている。
工程一:圧力調節部41及び排出量調節部45により、共通投入路21及び噴射液投入路23に配置された弁以外の弁を閉じた状態で投入量調節部44を作動させ、保液性物質投入路24からコーヒー豆Cを容器本体11内に供給する。
工程二:噴射液投入路23及び噴射口23aを通じて水を容器本体11内に供給し、圧力調節部41によりすべての弁を閉じた状態、すなわち容器本体11内を密閉した状態で、コーヒー豆Cの内部にこの水を浸透させる(浸透工程)。また、この浸透工程を行う際に、圧力調節部41を作動させて空気投入路22に配置された弁を開け、空気投入路22から空気を供給することにより容器本体11内を加圧し、コーヒー豆C内部にこの水を浸透させることを促進させる。さらに、前記浸透工程を行う際に温度調節部42も作動させ、容器本体11内の温度を加熱し、コーヒー豆Cを焙煎する。
工程三:圧力調節部41を調節し、共通排出路31に配置された弁を開くとともに気体吸引路34で容器本体11内の空気を一気に吸引して容器本体11内の圧力を下げ、この吸引作業とほぼ同時に振動制御部43でコーヒー豆C等、容器本体11内部に存在するものに振動を加えることにより、コーヒー豆Cに浸透させた水を急激に気化させ、気化にともなう膨張によりコーヒー豆Cを多孔状に膨らませて破砕する(減圧工程)。
工程四:加圧液体投入路25から香りづけ用の成分や調味成分を有する液体又は気体を供給し、この液体又は気体をコーヒー豆Cの内部に浸透させる(後加工用浸透工程)。さらに、容器本体11内を加圧するように圧力調節部41を調節した状態で、空気投入路22から空気を供給することにより、この浸透を促進させる。
工程五:排出量調節部45で、共通排出路31及び排液路32に配置されている弁の開度を調節し、容器本体11に存在するコーヒー豆Cを共通排出路31を経て保液性物質排出路33に向けて排出するとともに、容器本体11内に存在する液体を排液路32から外部に排出する。
工程六:保液性物質排出路33にある存在するコーヒー豆Cを、粉砕機51により、さらに細かく粉砕する。
工程七:粉砕機51で粉砕したコーヒー豆Cをベルトコンベア52で篩53まで運搬し、このコーヒー豆Cを篩53にかけて、ティーバックに封入出来ない粒径となっているコーヒー豆Cのみ、貯留用容器54内に貯留する。
工程八:貯留用容器54内に貯留されなかったコーヒー豆Cを、ティーバックに封入し、その後、プラスチック製の袋等を用いて包装する。
以上の方法を採れば、コーヒー豆Cの内部に水を浸透させた状態で、この水を気化させることにより膨張させるため、コーヒー豆Cを多孔質な状態に加工することが可能となる。したがって、エキスを抽出しやすいコーヒー豆Cを製造することが可能となる。さらに、かかる膨張によって、コーヒー豆Cを粉砕することも可能となるため、この方法を用いてコーヒー豆Cを粉砕することが可能となる。
また、前記浸透工程を行う際に加熱も行うため、コーヒー豆Cを多孔質な状態に加工するだけでなく、焙煎も行うことが出来るため、別途焙煎作業を行う必要がなく、加工作業の効率を向上させることが可能となる。
さらに、前記減圧工程を行う際、振動制御部43で、コーヒー豆C等容器本体11内に存在するものを振動させるため、コーヒー豆Cに浸透させた水を膨張させるためのきっかけを作り、コーヒー豆Cを多孔質な状態に膨らませて破砕することが容易となる。したがって、加工作業をより効率よく行うことが可能となる。
また、前記浸透工程は、容器本体11内を加圧しながら行っているため、この水をコーヒー豆Cに浸透させることをより効果的に行うことが可能となる。
さらに、前記後加工工程で、コーヒー豆Cの内部に香りづけ用の成分や調味成分を有する液体又は気体を浸透させているため、コーヒー豆Cの香りや味を向上させることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の具体的構成は前記実施形態に限定されず、特許請求の範囲内で種々変更可能である。以下、他の実施形態について例示する。なお、以下に記載した実施形態において、前記実施形態と同構成のものについては、同一符号を付するのみとし、その詳細な説明は省略する。
(一) 工程二において、圧力調節部41及び温度調節部42を調節することにより、容器本体11内の水を臨界状態にしてもよいし超臨界状態にしてもよい。特に臨界状態にした場合、少しの振動を与えた場合においても即座に気化しやすい状態にあるため、工程三のように振動を加えた状態で減圧を行ったときにおいて迅速に気化させることができ、より効率よくコーヒー豆Cを多孔質なものにすることが出来る。
(二) 工程二でコーヒー豆C内に浸透させるものは、水に限定されず、例えば二酸化炭素等、液体(臨界状態を含む)及び超臨界状態から気化しうるものであればよい。
(三) 工程二を行う際、空気投入路22から空気を供給する代わりに、アルゴン、酸素を含まない窒素等の不活性ガスを供給してもよい。かかる場合、加熱によるコーヒー豆Cの酸化を阻止することができ、味や香りが劣化することを阻止できる。
(四) 工程四を行った後、ゼラチン、でん粉等の糊状物質を、コーヒー豆Cの表面にコーティングしてもよい。かかる場合、工程四でコーヒー豆Cの内部に浸透させた香りづけ用の成分や調味成分を、コーヒー豆Cの内部に保持することができるため、コーヒー豆Cの味や香りを保持したり、コーヒー豆Cが酸化することを阻止することが可能となる。
また、このコーティング作業についても、容器本体11内を加圧しながら行うと、コーヒー豆Cの内部に糊状物質を若干浸透させた状態でコーティングすることが可能となり、コーヒー豆Cの内部に浸透させた芳香成分や調味成分を、より効果的に保持することが可能となる。
(五) 工程四の後加工用浸透工程においては、振動制御部43によりコーヒー豆Cに振動を加えた状態で行ってもよい。この場合、コーヒー豆Cに浸透させる液体又は気体を、より効果的にコーヒー豆C内に浸透させることが可能となる。
(六) 工程四で用いる芳香成分や調味成分を含む液体又は気体については、常温において固体であるものを用いてもよい。この場合、温度調節部42で容器本体11内を加熱し、この固体を液化又は気化させた状態で、前記後加工用浸透工程を行い、その後冷却することによってコーヒー豆C内で前記液体又は気体を再度固化させることにより、コーヒー豆C内部に香りづけを行う成分や調味成分を保持することが可能となる。
(七) 工程八において、コーヒー豆Cを包装する際、袋内に窒素やアルゴン等の不活性ガスを封入してもよい。かかる場合、コーヒー豆Cの酸化を阻止し、味や香りが劣化することを阻止することが可能となる。なお、かかる不活性ガスを封入する際、加圧封入してもよい。
(八) 前記浸透工程と前記減圧工程とは、複数回繰り返し行ってもよい。これらの工程を繰り返し行うことにより、コーヒー豆Cを多孔状にした状態で破砕することを、より確実に行うことができる。
(九) 本発明に使用する保液性物質は、コーヒー豆Cに限定されるものではなく、例えば大豆、小豆等に代表される豆類、米、粟等の穀物類、どんぐりの実、等の食物の実や種等にすることも可能である。
さらに、前記保液性物質は、朝鮮人参、ごぼう、葛の根、樹木の皮、葉等のように、煎じて飲用したり内部に含まれるエキス分を加工して食用するもの、すなわち内部のエキス分を抽出して食用及び飲用するものにしてもよい。この場合、前記保液性物質を多孔質にすることにより、前記保液性物質に含まれるエキスを効率よく抽出することが可能となる。
またさらに、前記保液性物質を香木にしてもよい。この場合、この香木を多孔質のものにすることにより、より芳香成分を外気に放出することが可能となる。
(十) 工程三において、減圧を行うと同時に、容器本体11内に存在するコーヒー豆Cを、保液性物質排出路33に向けて排出してもよい。この場合、減圧工程とコーヒー豆Cの排出とを同時に行うことが可能となるため、作業効率を向上させることが可能となる。
(十一) 本発明に使用するコーヒー豆Cは、必ずしも容器本体11内で水を浸透させる必要はなく、容器本体11に入れる前に予め水を浸透させ、かかる状態で容器本体11内にいれてもよい。なお、この状態のコーヒー豆Cを容器本体11内にいれた場合、工程二の浸透工程は行う必要はない。
(十二) ティーバックに封入できない粒径である貯留用容器54内に貯留された紛体状のコーヒー豆Cについては、再度ミルにかけて更に細かい粒子とし、挽いた豆としての用途や、インスタントコーヒー用としての用途等に使用してもよい。かかる場合、コーヒー豆Cの歩留まり率を向上させることができ、生産効率を高めることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
以上の発明の方法を採れば、前記保液性物質の内部に気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を浸透させた状態で前記液体又は前記流体を気化膨張させるため、前記保液性物質を多孔質の状態に加工することが可能となる。さらに、前記減圧工程の減圧状況によっては前記保液性物質を破砕することも可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を内部に浸透させることが可能な保液性物質に、前記気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を浸透させ、この保液性物質を加工用容器に入れた状態で、この容器内を減圧することにより、前記保液性物質の内部に浸透させた液体又は超臨界状態の流体を気化膨張させ、その膨張力で前記保液性物質を多孔状に膨らませたり多孔状にした状態で破砕させたりする減圧工程を有することを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項2】
気化性を有する液体又は超臨界状態の流体を内部に浸透させることが可能な保液性物質を加工用容器に入れる工程と、この保液性物質の内部に気化性の有する液体又は超臨界状態の流体を浸透させる浸透工程と、前記容器内を減圧することにより前記保液性物質の内部に浸透させた液体又は超臨界状態の流体を気化膨張させ、その膨張力で前記保液性物質を多孔状に膨らませたり多孔状にした状態で破砕させたりする減圧工程と、を有することを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項3】
請求項2記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程を行う際に、前記保液性物質を加熱することを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記減圧工程を行う際に、前記保液性物質を振動させることを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程を行う際に前記容器内を加圧することを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項6】
請求項5記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程と前記減圧工程とを複数回繰り返すことを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記浸透工程と前記減圧工程とを行った後、前記保液性物質を後加工すべく前記容器内を加圧させて前記保液性物質に後加工用流体を浸透させる後加工用浸透工程を行うことを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項8】
請求項7のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記後加工用浸透工程の際に前記保液性物質を加熱し、この後加工用浸透工程終了後に前記保液性物質を冷却する冷却工程を行って前記後加工用流体を固化させ、この冷却工程を行った後に前記容器内を減圧する後加工用減圧工程を行うことを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の保液性物質の加工方法において、前記保液性物質はコーヒー豆であることを特徴とする保液性物質の加工方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の保液性物質の加工方法を行うための加工装置であって、内部に空間を備えた容器と、この容器の内部を調節して少なくとも減圧を行う圧力調節部とを備えたことを特徴とする加工装置。
【請求項11】
請求項10記載の加工装置において、前記容器内部を加熱及び冷却のうち少なくとも一方を行うための温度調節部を備えたことを特徴とする加工装置。

【国際公開番号】WO2005/067728
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516952(P2005−516952)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000361
【国際出願日】平成16年1月19日(2004.1.19)
【出願人】(503375289)
【Fターム(参考)】