説明

保管温度管理システム

【課題】 消費者等が情報媒体に保存された保管温度情報を直接読取ることを可能とすると共に、バッテリ切れによる温度管理の失策の虞がない保管温度管理システムを提供する。
【解決手段】 温度管理対象物Bを保存又は輸送する際の温度情報を管理する保管温度管理システムであって、情報を非接触に受信する受信部と、受信部により受信した情報を表示可能な表示部11とを有する情報媒体10を温度管理対象物Bに貼付すると共に、温度管理対象物Bが収容される収容領域50内の温度を計測する温度センサ32と、温度センサ32の検出結果を情報媒体10に対して非接触に送信する送信部35と、からなる外部装置30を収容領域50内或いはその近傍に配置し、温度センサ32により得られた収容領域50内の温度情報を情報媒体10に向けて送信して、表示部10に受信した温度情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波により外部と通信可能な情報媒体を用いた保管温度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック等の基材の上にコイル状アンテナパターンを備え、このアンテナパターンと容量素子とにより共振回路を形成して一定周波数の電波を受信・送信できるように構成されたRFID(Radio Frequency Identification)データキャリア(ICタグ)が利用されており、RFIDデータキャリアを用いた様々なアプリケーションが提案されている。
例えば、冷蔵を要する飲料等の温度管理を行うものがある(特許文献1)。ビールやワイン等のように冷蔵を要する飲料等を製造元から消費者に提供されるまでの間に、所定の冷蔵温度以内に維持することが品質管理の上で重要である。しかし、製造元から消費者までの間に、卸業者や販売店等の複数の者により、保管、運搬されるので、その間の温度管理の実態を把握することは困難であった。そこで、温度センサ付きRFIDデータキャリアをビールやワイン等の容器に貼り付けることにより、製造元から消費者までの間の温度管理状況をRFIDデータキャリアに取得し、読出し可能とするものである。
【特許文献1】特開2001−187611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術では、RFIDデータキャリアに保存された温度データを読取るためには、専用のリーダが必要である。したがって、消費者がビールやワイン等を購入する際に、直接、RFIDデータキャリアに保存された保管温度情報を知ることができないという不都合がある。
また、温度センサ等を駆動するためにバッテリを搭載する必要があるので、バッテリ切れの場合には、保管温度の管理を行うことが不可能となってしまう等の問題がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、消費者等が情報媒体に保存された保管温度情報を直接読取ることを可能とすると共に、バッテリ切れによる温度管理の失策の虞がない保管温度管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る保管温度管理システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明は、温度管理対象物を保存又は輸送する際の温度情報を管理するシステムであって、温度管理対象物に関する保管温度情報を非接触に受信する受信部と、受信部により受信した保管温度情報を表示可能な表示部とを有する情報媒体を温度管理対象物に貼付すると共に、温度管理対象物が収容される収容領域内の温度を計測する温度センサと、温度センサの検出結果を情報媒体に対して非接触に送信する送信部と、からなる外部装置を収容領域内或いはその近傍に配置し、収容領域内に情報媒体が貼付された温度管理対象物を収容した際には、温度センサにより得られた収容領域内の保管温度情報を情報媒体に向けて送信して、表示部に受信した保管温度情報を表示させるようにした。
この発明によれば、温度管理対象物が保存又は輸送される際の温度情報を、温度管理対象物に貼り付けられた情報媒体に記憶することができるので、容易に温度管理対象物の品質管理(温度管理)状態を確認することができる。特に、情報媒体が温度管理対象物の品質管理状態を表示する表示を有するので、特別な読取装置を用いずに、品質管理状態を確認することができる。更に、情報媒体が、温度センサやバッテリを備える必要がないので、低コスト化を図ることができると共に、バッテリ切れによる品質管理の失策の虞をなくすことができる。
【0006】
また、収容領域が温度管理対象物が保存又は輸送される搬送経路中に複数設けられると共に、それぞれの収容領域に対して外部装置が設けられるものでは、
温度管理対象物が保存又は輸送される際に、温度管理対象物が保管される収容領域の保管温度情報を把握できるので、途切れのない品質管理を行うことができる。
また、情報媒体が可撓性を備え、温度管理対象物に密着して貼付されるものでは、温度管理対象物の表面が曲面であったとしても、その表面に情報媒体を良好に貼り付けることが可能となる。
また、表示部が不可逆的表示領域を有するものでは、温度管理対象物の製造年月日等の情報を表示させた場合には、その表示が不可逆的であるので、不正な改ざんを防止することができる。
また、情報媒体が、受信した保管温度情報が所定の温度条件を逸脱する場合には、不可逆的表示領域に警告情報を表示するものでは、温度管理対象物が保存又は輸送される搬送経路中における品質管理に問題が発生した場合には、不可逆的表示領域に警告情報を表示することにより、品質管理上問題のある温度管理対象物を容易に識別することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の保管温度管理システムの実施形態について図を参照して説明する。なお、本実施形態では、RFID(Radio Frequency Identification)、いわゆるICタグを酒類のビンに貼り付けて、この酒類の保管温度を記録する場合を例にして説明する。
【0008】
〔RFID〕
図1は、本実施形態の保管温度管理システムの構成を示す図である。図2は、保管温度管理システムに用いられるRFID10を示す平面図である。図3は、EPD11の断面を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の保管温度管理システムにおいては、RFID10が用いられる。そして、RFID10は、図2に示すように、電気泳動表示デバイス(表示素子、Electro Phoretic Display、以下、EPD11と称する。)と、ICチップ12と、アンテナ13とを備える。
EPD11は、図3に示すように、可撓性を有するプラスチック基材115上に、電極フィルム211d、電気泳動表示層211c、電極フィルム211b及びこの表示部を保護する表面保護層211aが積層されて構成されている。なお、表面保護層211aは省略することも可能である。
【0009】
電極フィルム211bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の寸法安定性の優れた透明なプラスチックフィルムに電極が形成されているものである。電極フィルム211dも同様な基材の電極が形成されてなるものであるが、必ずしも透明性は要求されない。なお、電極フィルム211bと電極フィルム211dとは、上下動通電極211fにより導通される。
電極フィルム211bは、全面に同一の電位がかかる共通電極となり、一方、電極フィルム211dにはアクティブマトリックス電極或いはセグメント電極等が形成されて駆動電極となる。
【0010】
電気泳動表示層211cを形成するマイクロカプセル211は、アラビアガム・ゼラチンの複合膜、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、尿素樹脂等をカプセル殻とし、カプセル殻の作製方法としては、界面重合法、in−situ重合法、相分離法、界面沈殿法、スプレードライング法、等の公知のマイクロカプセル化手法を採用することができる。内部には泳動粒子と分散媒が封入される。
泳動粒子としては有機あるいは無機の粒子(高分子あるいはコロイド)が用いられる。たとえば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ、ジイスアゾン、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、アントラキノン系染料、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等の1種又は2種以上を用いることができる。分散媒としては無色または染料により染色された水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブ等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等の各種エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ぺンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等の長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、カルボン酸塩又はその他の種々の油類等の単独又はこれらの混合物に界面活性剤等を配合したものを用いることができる。
【0011】
電気泳動は、電気泳動粒子は予め正または負に帯電させられており、また、分散媒と電気泳動粒子とは、互いに異なる着色がなされている。例えば白の粒子である酸化チタンを正電荷に、一方黒の粒子であるカーボンブラックを負電荷にした場合、二つの電極フィルム211b,211dに電界を印加して、電極フィルム211bが負極、電極フィルム211dが正極になると、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211b側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211d側に引かれるので、電極フィルム211bを透明電極としておくことにより、電極フィルム211b側の上方から観察すると、その部分が白く見えるようになる。逆に、電極フィルム211bが正極、電極フィルム211dが負極になった場合には、正に帯電した白の粒子が電極フィルム211d側に引かれ、黒の粒子が電極フィルム211b側に引かれるので、電極フィルム211bの上方から観察するとその部分が黒く見える。
【0012】
EPD11は、上述したマイクロカプセル211を多数有しているので、電極フィルム211b,211dの各アドレス電極の電界を制御することで、所望の文字、数字、或いは記号を白と黒の画素で表示させることが可能となっている。
なお、マイクロカプセル211をアクティブマトリックス駆動法で駆動する場合は、電極フィルム211dは画素電極として画素毎に独立してパターニングされ、不図示の薄膜トランジスタ、信号電極、および走査電極を併設し、電極フィルム211bは光透過性基材上に一様に形成された透明な共通電極とする。この場合、電極フィルム211bを共通電極にすると全面同一電位になるので(例えば電位をゼロとする)、電極フィルム211d側の各アドレス電極の電界を制御(正または負の電位を与える)することで、上述した原理に基づき電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させ、所望の画像を表示させることができる。同様に、電極フィルム211dを共通電極とし、電極フィルム211b側の各アドレス電極の電界を制御することで、電極位置のマイクロカプセル211内の粒子を移動させることで所望の画像を表示させるようにしてもよい。
時分割駆動の場合は、電極フィルム211b、211dは互いに直交するライン状のITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の透明導電体からなる透明電極により構成され、両電極の交わる領域にマイクロカプセル211を配置する。
駆動方式は上述したものに限定されず、用途に応じて最適なものを選択すればよい。また、マイクロカプセル211の径は、種々のものを採用することが可能である。
このようなEPD11は、表示画像を記憶するメモリ性を有している。具体的には、電極フィルム211b,211dの間に電圧を一度付与するだけで、EPD11の画像は保持され、電圧が付与されていない状態で表示画像が残るようになっている。従って、一度表示した画像を電源が切れても保持するという特性を有し、低消費電力が実現可能となっている。
【0013】
EPD11においては、薄膜トランジスタを利用することにより電気泳動表示層211cに電圧を付与している。このような薄膜トランジスタは、SUFTLA(Surface Free Technology by Laser Ablation)(登録商標)等の剥離転写技術によりプラスチック基材115に形成されたものである。具体的には、耐熱性に優れ、透明性を有する、例えばガラス基板上に低温ポリシリコンTFTを予め形成し、その後、レーザー照射によって所定の薄膜トランジスタを剥離し、当該薄膜トランジスタをプラスチック基材115上に転写して形成するものである。このような技術を用いることにより、従来まではガラス基板のような硬くて耐熱性を有する基板のみにしか形成することができなかった薄膜トランジスタを、例えばガラス基板よりも耐熱性が劣るような、プラスチック板に転写形成することが可能となる。
従って、柔軟性を有するプラスチック基材115等に容易に薄膜トランジスタを形成することが可能となり、EPD11を備えると共に可撓性を有するRFID10が実現可能となる。
【0014】
図2に戻り、ICチップ12は、ICチップ12内に演算処理部12aと記憶部12bと送受信部12cを備えており、更に、当該ICチップ12に電力を供給する電源部12dを備えている。そして、演算処理部12aからの指令に基づいて、送受信部12cを介して得た情報を記憶部12bに記憶すると共に、その情報に関する所望の文字、数字或いは記号をEPD11に情報表示させる。
なお、演算処理部12aにより、EPD11の一部の領域11aが書き換えすることができないように規定されている。すなわち、一旦、領域11aに所定の表示を行った場合には、その表示が半永久的に維持されるようになっている。
【0015】
また、アンテナ13は、RFID10と後述する外部装置30との間で情報の入出力や送受信(通信)を行うためのものである。すなわち、アンテナ13は、RFID10を使用する際に、外部装置30と電磁的に入出力信号を送受信するものである。そして、アンテナ13は、RFID10のICチップ12の送受信部12cに接続されており、外部装置とRFID10で入出力信号を送受信するようになっている。
【0016】
上述したEPD11、ICチップ12、アンテナ13は、配線電極とともに可撓性を有するカバーフィルムで挟んで保持される。更に、複数枚の透明な保護フィルム等に挟んで保持されることによりRFID10が構成される。
保護フィルムとしては、有色または無色透明なプラスチック、例えばポリビニルカーボネート(PVC)や耐熱性PVC、非結晶性ポリエステル樹脂(PET−G)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が使用できる。保護フィルム上には、印刷を行っても良い。保護フィルムに反射防止や防湿、耐引っ掻き性等の機能を付与しても良い。
【0017】
そして、上述したRFID10は、温度管理が必要な酒類等の容器、例えばビンBの表面に容易に引き剥がしができないように貼り付けられる。なお、ビンBの表面形状が曲面であったとしても、RFID10は可撓性を有するので、密着して貼り付けられる。
【0018】
[外部装置]
図1に戻り、RFID10に対して所定の情報を非接触に入出力する外部装置30は、ホストコンピュータ31と温度センサ32とリーダライタ35からなる。
温度センサ32は、設置された領域の温度を検出するものであって、その検出結果をホストコンピュータ31に送信する。
ホストコンピュータ31は、温度センサ32からの情報を処理して、処理した情報(例えば温度とその計測日時等)を所定のタイミングでリーダライタ35に送信するものである。
リーダライタ35は、制御部36、アンテナ37、入出力部38等を備える。アンテナ37は、RFID10に対して電磁的に入出力信号を送受信するものである。また、入出力部33は、ホストコンピュータ31と接続され、リーダライタ35とホストコンピュータ31との間で各種情報が入出力される。そして、制御部36はリーダライタ35を統括的に制御するものであって、ホストコンピュータ31から入出力部33に対して各種情報が入力されると、その情報をアンテナ37からRFID10に対して送信するように制御する。
【0019】
上述した外部装置30は、RFID10が表面に貼り付けられたビンBを収容する冷蔵庫50の近傍に設置される。特に、温度センサ32は、冷蔵庫50の内部に設置され、冷蔵庫50内の温度を計測する。また、リーダライタ35は、冷蔵庫50の内部或いは近傍に設けられる。そして、冷蔵庫50に収容したビンBに貼り付けられたRFID10に対して通信を行う。
【0020】
なお、外部装置30は、酒類が充填されたビンBの保存状態(保管温度)をビンBに貼り付けられたRFID10に対して送信するために、酒類が充填されたビンBが製造元から消費者に届けられるまでの販売経路中に存在する全ての冷蔵庫50にそれぞれ設置される。例えば、酒類が充填されたビンBを輸送するための冷蔵庫付きトラック内にも設置される。
【0021】
[保管温度管理システム]
次に、上記構成を有する保管温度管理システムの作用について説明する。
図4は、保管温度管理システムの作用を示すフローチャートである。
まず、ビンBの表面にはRFID10が貼り付けられる。そして、酒類の製造元において、ビンBに酒類が充填した際には、酒類の製造情報(製造日、賞味期限日等)を所定の情報入力装置によってRFID10のICチップ12内の記憶部12bに記憶させる。同時に、充填した酒類を保管する際の上限温度に記憶させる。なお、これらの情報は、RFID10のEPD11に表示してもよい。
【0022】
そして、酒類が充填されたビンBが製造元から販売店等に向けて運送され販売店等において保管されるが、この運送及び保管の際には、酒類が充填されたビンBは、冷暗所や冷蔵庫50等に収容される。
酒類が充填されたビンBが収容された冷蔵庫50等には、上述したように外部装置30が設置されている。そして、冷蔵庫50等の内部温度、すなわち酒類が充填されたビンBの保管温度は、温度センサ32により計測され(ステップS1)、その計測結果は、ホストコンピュータ31に送られる。
ホストコンピュータ31は、温度センサ32の計測結果を処理して酒類が充填されたビンBの保管温度情報を求める(ステップS2)。保管温度情報は、例えは、温度とその温度の計測日時及び場所の情報等である。また、酒類が充填されたビンBの保管温度が設定された上限温度を逸脱したか否かを確認する処理を行い(ステップS3)、逸脱が認められた場合には、異常情報を付加する(ステップS4)。
そして、求めた保管温度情報の全て或いはその一部、例えば、1時間毎の保管温度情報をリーダライタ35に送信する。リーダライタ35に保管温度情報を送信するタイミングは、所定時間毎でもよいし、冷蔵庫50等から酒類が充填されたビンBを搬出する直前のみであってもよい。
【0023】
リーダライタ35は、ホストコンピュータ31から酒類が充填されたビンBの保管温度情報を受信すると、その情報をアンテナ37からRFID10に対して送信するように制御される(ステップS5)。
すると、酒類が充填された各ビンBの表面に貼り付けられたそれぞれのRFID10では、リーダライタ35から送信された保管温度情報を受信する(ステップS6)。そして、受信した保管温度情報情報は、ICチップ12の記憶部12bに記憶されると共に、その一部は、EPD11に表示される(ステップS7)。
【0024】
このようにして、EPD11には、酒類の保管温度の保管温度情報、保管温度の履歴等が表示される。
このような酒類の保管温度管理システムによれば、ビンBに充填された酒類の保管温度情報を良好に記憶、表示することができる。特に、RFID10にEPD11を設けたので、特別な読取装置を用いずに、ビンBに充填された酒類の保管温度情報を確認することができる。
【0025】
更に、EPD11にはその表示が不可逆的、すなわち書き換えできない領域11aを設けたので、この領域11aに酒類の製造年月日や賞味期限情報を表示させることにより、情報の改ざんを防止することができる。更に、酒類が充填されたビンBの保管温度が設定された上限温度を逸脱、すなわち高温状態で保管された場合には、その情報をEPD11の不可逆的な領域11aに表示させることにより、消費者等がビンBに充填された酒類の保管温度に関する品質を容易に知ることが可能となる。
したがって、消費者は、EPD11の表示された保管温度情報により、品質管理の行き届いた商品(酒類)のみを購入することが可能となる。また、酒類取扱業者においても、商品価値を落さないために、保管温度の管理を厳格に行うようになるので、保管温度管理の行き届いた商品が提供されるようになることが期待できる。
【0026】
また、EPD11は、電力の供給がなくとも長時間維持される性質を有するので、酒類が充填されたビンBが消費者の手に渡るまでの間、確実に保管温度情報を表示し続けることができる。なお、EPD11の表示能力に限りがある場合には、例えば、最新の保管温度情報のみを表示したり、或いは保管温度が適切であった旨を表意したりしてもよい。
【0027】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、RFID10を貼り付ける対象は、ビンに場合に限らず、紙パックであってもよい。
【0028】
また、上述した実施形態においては、温度管理対象物として酒類を挙げたが、清涼飲料であってよく、また生鮮野菜、肉類、魚類等であってもよい。
【0029】
また、外部装置30としては、必ずしもホストコンピュータ31を単独に設ける必要はない。例えば、温度センサ32の検出結果を処理する機能をリーダライタ35に設ければよい。また、外部装置30を冷蔵庫50等の近傍に設ける場合について説明したが、例えば、ビールの場合には、ビール瓶を収容するビール瓶ケースに取り付けることも可能である。
また、外部装置30には、温度センサ32と共に、湿度センサ等を設けても良い。

また、ホストコンピュータ31において、酒類が充填されたビンBの保管温度が設定された上限温度を逸脱したか否かを確認する処理を行ったが、RFID10のICチップ12において、このような判断処理を行ってもよい。
【0030】
また、EPD11の不可逆的な領域11aは、EPD11の一部の領域であってもよいし、分離して別個に設けても良い。
【0031】
また、ビルBに貼り付けたRFID10のEPD11の表示能力に限りがあり、EPD11に記憶された情報の全てを同時に表示することができない場合には、
RFID10に記憶された情報をリーダライタ50等で読取って、ホストコンピュータ31等に表示させて、各種品質管理に役立ててもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】保管温度管理システムの構成を示す図である。
【図2】RFID10を示す平面図である。
【図3】EPD11の断面を示す断面図である。
【図4】保管温度管理システムの作用を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
B…ビン温度(管理対象物)、 10…RFID(情報媒体)、 11…EPD(表示部)、 11a…領域(不可逆的表示領域)、 13…アンテナ(受信部)、 30…外部装置、 32…温度センサ、 35…リーダライタ(送信部)、 50…冷蔵庫(収容領域)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度管理対象物を保存又は輸送する際の温度情報を管理するシステムであって、
前記温度管理対象物に関する保管温度情報を非接触に受信する受信部と、前記受信部により受信した保管温度情報を表示可能な表示部とを有する情報媒体を前記温度管理対象物に貼付すると共に、
前記温度管理対象物が収容される収容領域内の温度を計測する温度センサと、前記温度センサの検出結果を前記情報媒体に対して非接触に送信する送信部と、からなる外部装置を前記収容領域内或いはその近傍に配置し、
前記収容領域内に前記情報媒体が貼付された前記温度管理対象物を収容した際には、前記温度センサにより得られた前記収容領域内の保管温度情報を前記情報媒体に向けて送信して、前記表示部に受信した前記保管温度情報を表示させることを特徴とする保管温度管理システム。
【請求項2】
前記収容領域は、前記温度管理対象物が保存又は輸送される搬送経路中に複数設けられると共に、それぞれの前記収容領域に対して前記外部装置が設けられることを特徴とする請求項1に記載の保管温度管理システム。
【請求項3】
前記情報媒体は、可撓性を備え、前記温度管理対象物に密着して貼付されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の保管温度管理システム。
【請求項4】
前記表示部は、不可逆的表示領域を有することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の保管温度管理システム。
【請求項5】
情報媒体は、受信した保管温度情報が所定の温度条件を逸脱する場合には、前記不可逆的表示領域に警告情報を表示することを特徴とする請求項4に記載の保管温度管理システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−138740(P2006−138740A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328604(P2004−328604)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】