説明

保護された触媒を使ったゾル−ゲル法

本発明は、少なくとも1種の金属酸化物前駆体が1種以上の対応する金属酸化物水酸化物を得るために加水分解処理にかけられ、そのようにして得られた金属酸化物水酸化物が金属−酸化物−金属化合物を形成するために縮合処理にかけられる金属−酸化物−金属化合物の混合物を製造するためのゾル−ゲル法であって、共有結合している不安定な保護基(P)と塩基(B)とを含む触媒の存在下に実施され、それによって保護基と塩基との間の共有結合が外部刺激への暴露によって開裂可能であり、そしてここで、かかる外部刺激への暴露後に放出された塩基がそのようにして得られた金属酸化物水酸化物中に存在する金属−水酸化物基の縮合を触媒することができる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、金属−酸化物−金属化合物の混合物を製造するためのゾル−ゲル法、前記混合物での基材もしくは物品のコーティング方法、前記方法によって得られる基材もしくは物品、前記混合物と前記方法によって得られる基材もしくは物品とを使ったセラミック物体の製造方法に関する。
【0002】
ゾル−ゲル化学は、金属アルコキシドまたは金属塩化物などの前駆体を典型的に含有する化学溶液から出発する金属−酸化物−金属化合物の製造のための湿式化学技術を含む。前駆体は通常、金属−オキソまたは金属−ヒドロキソポリマーを溶液中に形成するために加水分解処理および縮合処理にかけられる。加水分解工程および縮合工程の両方のメカニズムは、化学溶液の酸性度に大きく依存する。
【0003】
ポリシロキサンコーティングまたはセラミックの合成の場合、例えば、テトラアルコキシシランを前駆体材料として使用することができる。ゾル−ゲル反応はそのとき原則として2つのステップに分けることができる:
a)テトラアルコキシシランモノマー(1)の(部分)加水分解(スキーム1を参照)、および
b)ポリシロキサン(3)へのアルコキシシランとシラノール(2)との縮合(スキーム2を参照)。
【化1】



【化2】



【0004】
そのようにして得られたゾル−ゲル調合物は、例えばセラミック物体を製造するためになど多くの目的のために使用することができるか、または例えば浸漬被覆技術を用いて基材上に堆積させることができる。しかしながら、そのようにして得られたセラミック物体およびゾル−ゲルコーティングは両方とも一般に、周囲条件下で乾燥させた後に不十分な機械的強度を示す。ゾル−ゲルセラミックまたはコーティングの無機網状構造を強化するための一方法は、無機網状構造での結合度を増加させることである。この目的のために、熱ポスト縮合(硬化工程)が通常実施される。ゾル−ゲルコーティングの場合には、かかる硬化処理は、典型的には400〜600℃の範囲の温度で実施される。硬化工程中に、得られるゾル−ゲルコーティングの機械的特性を高めるさらなる縮合が達成される。セラミック物体の場合、ポスト縮合は400℃〜1500℃の温度での焼結中に起こる。
【0005】
公知のゾル−ゲル法の一欠点は、かかる高温で実施される硬化工程の使用が、可能な用途の範囲を限定することである。この点において、疎水化剤、典型的にはフルオロアルキル化合物、または染料などのゾル−ゲルコーティング中に組み入れられたほとんどの有機材料が不安定であり、高温で分解することが観察される。加えて、ほとんどのポリマー材料は、400℃より下のガラス転移温度および/または融点を有し、それは、ポリマー基材もしくは物品を機械的に安定なゾル−ゲルフィルムでコーティングすることを非常に困難にする。さらなる欠点は、高温での硬化または焼結が大量のエネルギーを消費し、特別なタイプの装置を必要とする可能性があり、かつ、生産プロセスを減速させ得ることである。
【0006】
塩基、例えば有機アミンは、ゾル−ゲル法のポスト縮合工程を触媒し、それによって硬化温度の低下を可能にすることが知られている。例えばY.Liu、H.Chen、L.Zhang、X.Yao著、Journal of Sol−Gel Science and Technology、25(2002)、95−101ページまたはI.Tilgner、P.Fischer、F.M.Bohnen、H.Rehage、W.F.Maier著、Microporous Materials、5(1995)、77−90ページを参照されたい。これらの塩基は一般的にはゾル−ゲル調合物に添加され、調合物の酸性度の変化をもたらす。ゾル−ゲル調合物の安定性は加水分解と縮合との比によって決定され、これらの工程の両方ともが酸性度に強く依存するので、塩基の添加は典型的には調合物の不安定化、それ故その寿命のかなりの低下をもたらす。
【0007】
塩基は硬化工程中に添加されることもある。例えば、S.Das、S.Roy、A.Patra、P.K.Biswas著、Materials Letters、57(2003)、2320−2325ページまたはF.Bauer、U.Decker、A.Dierdorf、H.Ernst、R.Heller、H.Liebe、R.Mehnert著、Progress in Organic Coatings、53(2005)、183−190ページを参照されたい。塩基は、硬化の温度でガス状である必要があり、典型的には硬化オーブン中へパージされる。これは、高価な耐腐食性装置の使用を必要とし、大規模プロセスにとって不都合である。
【0008】
ゾル−ゲル法が特定の触媒の存在下に実施されるときに、これまでよりもはるかに低い温度で硬化させることができるゾル−ゲルコーティングまたはセラミックを製造できることが今見いだされた。意外にも、本発明の方法は、先行技術方法の欠点の1つ以上を回避する。
【0009】
従って、本発明は、少なくとも1種の金属酸化物前駆体が1種以上の対応する金属酸化物水酸化物を得るために加水分解処理にかけられ、そのようにして得られた金属酸化物水酸化物が金属−酸化物−金属化合物を形成するために縮合処理にかけられる金属−酸化物−金属化合物の混合物を製造するためのゾル−ゲル法であって、共有結合している不安定な保護基(P)と塩基(B)とを含む触媒の存在下に実施され、それによって保護基と塩基との間の共有結合が外部刺激への暴露によって開裂可能であり、そしてここで、外部刺激への暴露後に放出された塩基がそのようにして得られた金属酸化物水酸化物中に存在する金属−水酸化物基の縮合を触媒することができる方法に関する。
【0010】
本発明に従ったゾル−ゲル法は、許容できる機械的特性を備えながら、はるかにより低い温度で硬化させることができるゾル−ゲルコーティングまたはセラミックの製造を可能にする。本発明の方法は、触媒が加水分解と縮合との比を変えることなく調合物に添加されることを可能にする。それ故に、浴安定性は大きく影響を受けない。
【0011】
触媒は、定義される外部刺激に暴露された後に主として活性であるにすぎない。本方法は、ゾル−ゲルでコーティングされる基材もしくは物品を着色するために、または得られるゾル−ゲルに所望の表面機能性を提供するために疎水化剤もしくは特定の染料などの、有機材料のゾル−ゲルへの包含を可能にし得る。
【0012】
本発明に従った方法では、少なくとも1種の金属酸化物前駆体が使用される。これは、1種類の金属酸化物前駆体または2種類以上の異なる金属酸化物前駆体の混合物が使用され得ることを意味する。
【0013】
好ましくは、1種類の金属酸化物前駆体が使用される。
【0014】
金属酸化物前駆体に使用される金属は好適には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、ランタノイド、アクチノイド、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛およびカドミウム、ならびにそれらの組み合わせから選択することができる。
【0015】
好ましくは、使用される金属は、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウムおよびそれらの組み合わせである。
【0016】
より好ましくは、金属はケイ素、チタン、アルミニウムおよびそれらの組み合わせである。
【0017】
好適には、金属酸化物前駆体は、少なくとも1種の加水分解可能な基を含有する。
【0018】
好ましくは、金属酸化物前駆体は、一般式RM(式中、Mは金属を表し、R1〜4は独立して、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シリルアミノまたはシリルオキシ基から選択される)を有する。
【0019】
本発明に使用される触媒は、共有結合している不安定な保護基(P)と塩基(B)とを含む。
【0020】
好ましくは、不安定な保護基(P)は、カルボベンジルオキシ(Cbz)、第三ブチルオキシカルボニル(BOC)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル(Bn)、p−メトキシフェニル(PMP)、(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル(Ddz)、(α,α−ジメチル−ベンジルオキシ)カルボニル、フェニルオキシカルボニル、p−ニトロフェニルオキシカルボニル、アルキルボラン、アルキルアリールボラン、アリールボランおよびそれらの混合物から選択される。
【0021】
より好ましくは、不安定な保護基は(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル(Ddz)またはフェニルオキシカルボニルである。
【0022】
最も好ましくは、不安定な保護基は(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル(Ddz)である。
【0023】
本触媒に使用される塩基(B)は好適には、第一級、第二級もしくは第三級アリール−もしくはアルキルアミノ化合物、アリールもしくはアルキルホスフィノ化合物、アルキル−もしくはアリールアルシノ化合物または任意の他の好適な化合物からなる群から選択することができる。
【0024】
好ましくは、塩基はアミンもしくはホスフィン、またはそれらの組み合わせである。
【0025】
より好ましくは、塩基はアミンである。本発明に従って使用される好適なアミンの例には、アニリン、ナフチルアミンおよびシクロヘキシルアミンのような第一級脂肪族および芳香族アミン、ジフェニルアミン、ジエチルアミンおよびフェネチルアミンのような第二級脂肪族、芳香族アミンもしくは混合アミン、トリフェニルアミン、トリエチルアミンおよびフェニルジエチルアミンのような第三級脂肪族、芳香族アミンもしくは混合アミンならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
好ましくは、アミンは第一級もしくは第二級アミンである。
【0027】
最も好ましくは、アミンは芳香族第一級アミンである。
【0028】
本発明によれば、使用される触媒は好ましくはカルバメートである。カルバメートは、官能基−NH(CO)O−を含有する。−HN−C−結合は非常に不安定である。好ましくは触媒は、保護基(P)が塩基(B)に共有結合しているカルバメートである。
【0029】
本発明に従って得られる金属−酸化物金属化合物の混合物(ゾル−ゲル)は好適には開裂処理にかけられ、その処理中に触媒の保護基(P)と塩基(B)との間の共有結合は外部刺激への暴露によって開裂され、そしてここで、こうして放出された塩基は、金属−酸化物−金属化合物中に存在する金属−水酸化物基の縮合を触媒する。
【0030】
本発明のゾル−ゲル法の主な一利点は、その後の硬化処理がより低い温度で実施されるのを可能にすることである。追加の利点には、ゾル−ゲルでコーティングされる基材もしくは物品を着色するために、または得られるコーティングに所望の表面機能性を提供するために特定の染料などの有機材料をゾル−ゲルに包含する可能性が含まれる。好適な表面機能性の例には、疎水性および親水性が挙げられる。疎水機能性は、例えば、フルオロアルキル化合物の添加によって達成することができる。親水機能性は、例えば、親水性ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)の添加によって達成することができる。
【0031】
開裂処理は、加水分解および縮合処理の直後に実施することができる。しかしながら、特定の実施形態では、金属−酸化物金属化合物の混合物は縮合処理後に回収される。そのようにして得られたゾル−ゲルコーティングまたはセラミック物体は、次に引き続いて開裂処理にかけることができる。
【0032】
外部刺激は、保護基(P)と塩基(B)との間の結合を開裂させ、それによって触媒を活性化させるために必要とされる。かかる刺激の例は、熱刺激、紫外線照射、マイクロ波照射、電子ビーム処理、レーザー処理、化学処理、X線照射、ガンマ線照射、およびそれらの組み合わせである。
【0033】
好ましくは、外部刺激は、熱刺激および/または紫外線照射から選択される。
【0034】
最も好ましくは、外部刺激は熱刺激である。
【0035】
硬化処理は好適には、0℃〜450℃の範囲の、好ましくは100〜300℃の範囲の、より好ましくは125〜250℃の範囲の温度で実施することができる。
【0036】
好適には、硬化処理に先行する工程(すなわち、加水分解および縮合)は、触媒の活性化を引き起こさない条件で実施される。
【0037】
特有の実施形態では、開裂処理は、硬化処理中に熱刺激によって開始される。
【0038】
本発明はさらに、本発明によるゾル−ゲル法を用いる、ゾル−ゲルセラミックの製造方法に関する。さらに、本発明は、本発明によるゾル−ゲル法を用いる、コーティングの製造方法および物体のコーティング方法であって、本発明のゾル−ゲル法で得られるような金属−酸化物化合物の混合物のコーティングが基材もしくは物品上に適用され、その後そのようにして得られたコーティングが開裂および硬化処理にかけられる方法に関する。
【0039】
それ故に、本発明はまた、基材をコーティングする本方法によって得られる基材に関する。加えて、本発明はまた、物品をコーティングする本方法によって得られる物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】Al/Si系についての耐引っ掻き性試験結果を示す。
【図2】触媒なしで硬化した酸化アルミニウムコーティングを示す。
【図3】触媒を使って硬化した酸化アルミニウムコーティングを示す。
【図4】浸漬および非浸漬セラミックを比較する摩擦曲線を示す。
【0041】
[実施例]
[実施例1:触媒の活性化のために熱刺激を用いる無機シロキサンコーティング用Ddz−Ph触媒の評価]
【化3】



式I:Ddz−Ph触媒(R=Ph);開裂温度=164℃
2−プロパノール中のプレ−オリゴマー化テトラエトキシシラン(POT)(104.2g、固形分=4.8%)を2−プロパノール(145.8g)で2%の固形分に希釈した。次に、Ddz−Ph触媒を様々なステップで(1ステップ当たり50mg、固形分を基準として1%)添加した。試験サンプルを、異なる量の触媒の生じた混合物からガラス基材(8×10cmサンプル;Guardian Float Glass−Extra Clear Plus)を浸漬被覆することによって調製した。サンプルを、次の温度プログラム:100℃(0.5時間)、次に150℃(0.5時間)、次に250℃(3時間)を用いて湿った環境中で硬化させた。
【0042】
POTの合成:2−プロパノール(368.5g)中のオルトケイ酸テトラエチル(135.2g)の撹拌される溶液を水(124g)および酢酸(13.8g)で処理した。次に、生じた混合物を室温で24時間撹拌した。24時間後に、反応混合物を2−プロパノール(372.6g)で希釈し、硝酸(2.90g)で酸性化してPOTを得た。
【0043】
これらのコーティングの耐引っ掻き性を、Leuvenberg Test Techniek(Amsterdam)によって供給されるErichsen Hardness Test Pencil Model 318を使用して測定した。結果を下の表1に示す。
【0044】
【表1】



【0045】
結論:この無機試験系について、添加される触媒の最適量は、調合物中の固体重量を基準として2%である。触媒の使用時の硬度の増加は、触媒なしの系と比べて少なくとも倍数7である。
【0046】
[実施例2:触媒の活性化のために熱刺激を用いるハイブリッドシロキサンコーティング用Ddz−Ph触媒の評価]
メチルトリメトキシシラン(MTMS)(1.64g)を、4.8%の濃度のDOT(100g)に滴加した。生じた調合物を15分間撹拌し、その後POTからの2%シリカの最終濃度に2−プロパノール(150g)で希釈した。Ddz−Ph触媒(100mg、2%)をこの混合物に添加した。試験サンプルを、それぞれ、0%および2%触媒を含有する混合物からガラス基材(8×10cmサンプル;Guardian Float Glass−Extra Clear Plus)を浸漬被覆することによって調製した。サンプルを、次の温度プログラム:100℃(0.5時間)、次に150℃(0.5時間)、次に250℃(3時間)を用いて湿った環境中で硬化させた。これらのコーティングの耐引っ掻き性を、Leuvenberg Test Techniek(Amsterdam)によって供給されるErichsen Hardness Test Pencil Model 318を使用して測定した。結果を下の表2に示す。
【0047】
【表2】



【0048】
結論:このハイブリッド試験系について、触媒の使用時の硬度の増加は倍数2である。
【0049】
[実施例3:Ddz−Ph触媒の活性化のための紫外線照射刺激の評価]
Ddz−Ph触媒(25mg)を乾燥テトラヒドロフラン(10ml)に溶解させ、450W中圧水銀灯を使用することによって室温で10時間照射した。生じた溶液組成物をGC−MSによって分析した。光分解生成物としてのアニリンの存在を、この塩基それ自体の共注入によって明らかにした。
【0050】
結論:Ddz−Ph触媒は、紫外線照射刺激によって活性化することができる。
【0051】
[実施例4:触媒の活性化のために熱刺激を用いる無機シロキサンコーティング用Ph−TDI触媒の評価]
【化4】



式II:Ph−TDI触媒;開裂温度=130℃
Ph−TDI触媒を、実施例1に記載されるような、POT系で評価した。この触媒は2−プロパノールに不十分にしか溶けないので、トルエンを、触媒の完全な溶解性を保証するために加えた。次に、プレートを0および2%触媒で浸漬した。これらのコーティングの耐引っ掻き性結果を下の表3に示す。
【0052】
【表3】



【0053】
結論:この無機試験系について、2%Ph−TDI触媒の使用は、触媒なしの系と比べて倍数7の硬度の増加をもたらす。
【0054】
[実施例5:触媒の活性化のために熱刺激を用いる無機チタニアコーティング用Ddz−Ph触媒の評価]
チタン−イソプロポキシド(12.0g)を室温で、氷酢酸(2.5g)でゆっくり処理した。次に、この混合物を2−プロパノール(240g)で希釈した。Ddz−Ph触媒(2%)をこの混合物に添加した。試験サンプルを、それぞれ、0%および2%触媒を含有する混合物からガラス基材(8×10cmサンプル;Guardian Float Glass−Extra Clear Plus)を浸漬被覆することによって調製した。サンプルを、次の温度プログラム:100℃(0.5時間)、次に150℃(0.5時間)、次に250℃(3時間)を用いて湿った環境中で硬化させた。これらのコーティングの耐引っ掻き性を、Leuvenberg Test Techniek(Amsterdam)によって供給されるErichsen Hardness Test Pencil Model 318を使用して測定した。結果を下の表4に示す。
【0055】
【表4】



【0056】
結論:この無機試験系について、触媒の添加は、触媒なしの系と比べて倍数2だけ硬度の増加をもたらす。
【0057】
[実施例6:熱硬化−接触硬化の比較]
構成成分I:テトラエトキシシラン(17.11g)を2−プロパノール(15.52g)に溶解させ、0℃に冷却した。次に、0.1Mの水性p−トルエンスルホン酸(1.76g)を添加した。0℃で0.5時間の撹拌後に、水性p−トルエンスルホン酸の第2部分(1.76g)を添加した。生じた混合物を0℃で1時間撹拌した。
【0058】
構成成分II:エチルアセトネート(1.98g)を2−プロパノール(1.24g)に溶解させ、0℃でアルミニウム−第二ブトキシド(3.72g)で処理した。生じた混合物を0℃で30分間撹拌した。
【0059】
構成成分IIを0℃で構成成分Iに加え、水性p−トルエンスルホン酸(2.36g)で処理する。生じた混合物を0℃で30分間撹拌し、その後激しい撹拌下に室温で2−プロパノール(136.4g)に注ぎ込む。
【0060】
Ddz−Ph触媒を添加し、生じた混合物を浸漬被覆によってガラス基材に適用した。サンプルを、次の温度プログラム:100℃(0.5時間)、次に150℃(0.5時間)、次に250℃(3時間)または450℃(4時間)を用いて湿った環境中で硬化させた。これらのコーティングの耐引っ掻き性を、Leuvenberg Test Techniek(Amsterdam)によって供給されるErichsen Hardness Test Pencil Model 318を使用して測定した。耐引っ掻き性結果を、Al/Si系についての試験結果、熱硬化と接触硬化との比較を示す図1に示す。
【0061】
結論:この無機試験系について、250℃での接触硬化で得られた機械的強度は、450℃での熱硬化で得られた機械的強度より高い。
【0062】
[実施例7:触媒の活性化のために熱刺激を用いる酸化アルミニウムセラミックにおけるDdz−Ph触媒の使用についてのモデル化実験]
エチルアセトネート(1.98g)を2−プロパノール(1.24g)に溶解させ、0℃でアルミニウム−第二ブトキシド(3.72g)で処理した。生じた混合物を0℃で30分間撹拌した。重量固形分を基準として2%の触媒を添加した(図2および図3はそれぞれ、触媒なしおよび触媒を使って硬化させた酸化アルミニウムコーティングを示す)。サンプルを、次の温度プログラム:100℃(0.5時間)、次に150℃(0.5時間)、次に250℃(3時間)を用いて湿った環境中で硬化させた。
【0063】
結論:触媒がない場合、酸化アルミニウムコーティングは硬化後に亀裂を示す。対照的に、触媒を使ったコーティングは亀裂形成の徴候を全く示さない。
【0064】
[実施例8:酸化アルミニウムセラミック系への触媒の影響]
α−酸化アルミニウムペレットの調製:2つのペレットを、アルミニウム−ミョウバン法で製造したサブミクロン粉末から調製した。ペレットを、30kNの圧力で5分間プレスした。生じたペレットの密度は1.67g・cm−3であった。
【0065】
1つのペレットを実施例5に記載されたような溶液中に一晩浸漬した。両ペレットを、次の温度プログラム:100℃(0.5時間)、次に150℃(0.5時間)、次に250℃(3時間)を用いて湿った環境中で硬化させた。次に、ペレットを空気中1350℃で1時間焼結させた。
【0066】
摩擦測定を両サンプルに関して行った。非浸漬サンプルは、急勾配の増加および比較的大きい変動を示した(図4で浸漬および非浸漬セラミックを比較する摩擦曲線を参照されたい)。対照的に、浸漬サンプルははるかにより高い均一性を示した。これは、実施例6に記載されたような、モデル系の結果と一致している。
【0067】
結論:摩擦挙動は、触媒で浸漬されたサンプルについて異なる。これは、実施例5に記載されたような、酸化アルミニウムモデル系で得られた結果によって説明することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の金属酸化物前駆体が1種以上の対応する金属酸化物水酸化物を得るために加水分解処理にかけられ、そのようにして得られた金属酸化物水酸化物が金属−酸化物−金属化合物を形成するために縮合処理にかけられる金属−酸化物−金属化合物の混合物を製造するためのゾル−ゲル法であって、共有結合している不安定な保護基(P)と塩基(B)とを含む触媒の存在下に実施され、それによって保護基と塩基との間の共有結合が外部刺激への暴露によって開裂可能であり、そしてここで、かかる外部刺激への暴露後に放出された塩基がそのようにして得られた金属酸化物水酸化物中に存在する金属−水酸化物基の縮合を触媒することができる方法。
【請求項2】
前記金属が、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモン、ビスマス、ランタノイド、アクチノイド、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、およびカドミウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属がケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウムまたはそれらの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属酸化物前駆体が一般式RM(式中、Mは金属を表し、R1〜4は独立して、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シリルアミノまたはシリルオキシ基から選択される)を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不安定な保護基(P)が、カルボベンジルオキシ(Cbz)、第三ブチルオキシカルボニル(BOC)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、ベンジル(Bn)、p−メトキシフェニル(PMP)、(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル(Ddz)、(α,α−ジメチル−ベンジルオキシ)カルボニル、フェニルオキシカルボニル、p−ニトロフェニルオキシカルボニル、アルキルボラン、アルキルアリールボラン、アリールボランおよびそれらの混合物から選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基(B)が、第一級、第二級もしくは第三級アリール−もしくはアルキルアミノ化合物、アリールもしくはアルキルホスフィノ化合物、アルキル−もしくはアリールアルシノ化合物からなる群から選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基がアミンもしくはホスフィンである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基がアミンである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒がカルバメートを含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記保護基と前記塩基との間の共有結合が、熱刺激、紫外線照射、マイクロ波照射、電子ビーム処理、レーザー処理、化学処理、X線照射およびガンマ線照射、またはそれらの任意の好適な組み合わせへの暴露によって開裂可能である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記保護基と前記塩基との間の共有結合が熱刺激および/または紫外線照射への暴露によって開裂可能である請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において得られるような金属−酸化物化合物の混合物のコーティングが基材もしくは物品上に適用され、その後そのようにして得られたコーティングが硬化処理にかけられる基材もしくは物品のコーティング方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって得られる基材もしくは物品。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項において得られるような金属−酸化物化合物の混合物がセラミック物体を製造するために使用され、その後そのようにして得られた物体が硬化処理にかけられるセラミック物体の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって得られる基材もしくは物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506247(P2011−506247A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537472(P2010−537472)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067567
【国際公開番号】WO2009/077509
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】