説明

保護コート用樹脂組成物及び無色透明な保護膜

【課題】 特に高硬度であって、基材密着性、初期の色調・透明性、平滑性、耐熱密着性および耐光性(経時的な着色、白化等の変質がない)に優れ、更には耐水性、耐薬品性、耐熱性に優れる等の諸性能を満足する保護膜(硬化膜)を提供すること。
【解決手段】 水酸基含有ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)およびメトキシシラン部分縮合物(2)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中に、金属酸化物(B)が平均粒子径(d50)100ナノメートル(nm)以下となるように分散されてなることを特徴とする保護コート用樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護コート用樹脂組成物、当該組成物を用いてなる無色透明な保護膜の製造法及び当該保護膜に関する。当該保護コート用樹脂組成物や保護膜は、詳しくは、ガラスを母体とする基材上に適用されるものである。更に詳しくは、当該保護膜は、液晶表示素子(LCD)用カラーフィルター、電荷結合素子(CCD)用カラーフィルターなどの光デバイス用保護膜として用いられる。
【背景技術】
【0002】
LCDやCCD等の放射線デバイスは、その製造工程中に、溶剤、酸またはアルカリ溶液等による表示素子の浸漬処理が行なわれ、またスパッタリングにより配線電極層を形成する際には、素子表面が局部的に高温に曝される。従って、このような処理による素子の劣化や損傷を防止するために、当該処理に対して耐性を有する薄膜からなる保護膜が当該素子の表面に設けられている。
【0003】
このような保護膜は、当該保護膜を形成すべき基体または下層、さらに保護膜上に形成される層に対して密着性が高いこと、膜自体が平滑で表面が高硬度であること、透明性を有すること、耐熱密着性および耐光性が高く、着色、白化等の変質を起こさないこと、耐水性、耐溶剤性、耐酸性および耐アルカリ性に優れること等の各種性能が要求される。これらの保護膜を形成するための材料として、例えば、グリシジル基を有する重合体を含む熱硬化性組成物が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
本願人は、既にアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を含有するコーティング剤を提案したが(例えば、特許文献2、3参照)、当該コーティング剤はLCDやCCD等の放射線デバイス用の保護膜としての上記要求性能に近い特性を発現しうるものの、特に皮膜硬度の点では不充分であった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−78453号公報
【特許文献2】特開2002−226770号公報
【特許文献3】特開2003−26990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特に高硬度であって、基材密着性、初期の色調・透明性、平滑性、耐熱密着性および耐光性(経時的な着色、白化等の変質がない)に優れ、更には耐水性、耐薬品性、耐熱性に優れる等の諸性能を満足する保護膜(硬化膜)を提供することを目的とする。また、当該保護膜を提供するための保護コート用樹脂組成物及び当該組成物を用いて得られる保護膜の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明者は鋭意検討した結果、特定のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂に着目し、当該樹脂の存在下に、填料である金属酸化物をできるだけ微小粒子径になるよう分散させて得られる組成物を用いることにより、前記課題を首尾よく解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、水酸基含有ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)およびメトキシシラン部分縮合物(2)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中に、金属酸化物(B)が平均粒子径(d50)100ナノメートル以下となるように分散されてなる保護コート用樹脂組成物に係わる。また本発明は、当該保護コート用樹脂組成物を加熱硬化させて得られる無色透明な保護膜の製造法に係わる。更に本発明は、当該製造法により得られる無色透明な保護膜に係わる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特に高硬度であって、基材密着性、初期の色調・透明性、平滑性、耐光性(経時的な着色、白化等の変質がない)に優れ、更には耐水性、耐薬品性、耐熱性に優れる等の性質を満足する保護膜を提供できる。当該諸物性を有する保護膜は、ガラスを母体とする基材上に好適に適用され、液晶表示素子(LCD)用カラーフィルター、電荷結合素子(CCD)用カラーフィルターなどの光デバイス用の保護膜として特に有用である。また、本発明によれば、当該保護膜を提供するための保護コート用樹脂組成物、及び当該組成物を用いて得られる保護膜の製造法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の原料である、水酸基含有ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)(以下、単にエポキシ樹脂(1)という)は、メトキシシラン部分縮合物(2)と脱メタノール反応しうる水酸基を含有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されないが、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンまたはβ−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドとの反応により得られたビスフェノール型エポキシ樹脂が機械的性質、化学的性質、電気的性質、汎用性などを考慮して好適である。ビスフェノール類としてはフェノールとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のアルデヒド類もしくはケトン類との反応の他、ジヒドロキシフェニルスルフィドの過酸による酸化、ハイドロキノン同士のエーテル化反応等により得られるものが挙げられる。また当該エポキシ樹脂(1)としては、2,6−ジハロフェノールなどハロゲン化フェノールから誘導されたハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂、リン化合物を化学反応させたリン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂など、難燃性に特徴があるものを使用することもできる。また、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂を水添して得られる脂環式エポキシ樹脂も使用できる。
【0011】
エポキシ樹脂(1)は、メトキシシラン部分縮合物(2)との脱メタノール縮合反応により、珪酸エステルを形成しうる水酸基を有するものである。当該水酸基は、エポキシ樹脂(1)を構成する全ての分子に含まれている必要はなく、これら樹脂として、水酸基を有していればよい。上記のようなエポキシ樹脂(1)のなかでも、汎用性を考えるとビスフェノールA型エポキシ樹脂が、低価格であり好ましい。
【0012】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一般式(a):
【0013】
【化1】

【0014】
で表される化合物である。
【0015】
なお、本発明において、エポキシ樹脂(1)のエポキシ当量は、特に限定されないが、生成する保護膜の強度と密着性の点から、またエポキシ樹脂(1)として2種類以上のビスフェノール型エポキシ樹脂を用いてもよく、全体としてのエポキシ当量を上記値の範囲内とするのが好ましい。エポキシ当量が300未満では硬化収縮が大きい為に保護膜に亀裂が生じるおそれがあり、また1000を超えるとメトキシシラン部分縮合物(2)との相溶性が劣る傾向があるため、脱メタノール縮合反応速度が低下する傾向がある。
【0016】
エポキシ樹脂(1)は、メトキシシラン部分縮合物(2)と脱メタノール縮合反応して、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)を与える。そのため、エポキシ樹脂(1)中には、水酸基が存在しなければならないが、例えば、一般式(a)のビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合には、水酸基を持たない分子(一般式(a)におけるm=0の分子)も存在する。水酸基を持たないエポキシ樹脂分子はメトキシシラン部分縮合物(2)とは反応しないため、未反応のままメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中に存在している。当該分子は、保護膜形成時にエポキシ樹脂用硬化剤を介してシラン変性されたビスフェノール型エポキシ樹脂分子と化学結合することになるが、エポキシ樹脂(1)中に水酸基を持たない分子が多く含まれる場合には、最終的に得られる保護膜(硬化膜)が十分な耐熱性を発現しにくくなる傾向がある。
【0017】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)を構成するメトキシシラン部分縮合物(2)としては、酸又は塩基触媒の存在下、下記メトキシシラン化合物および水を加え、部分的に加水分解、縮合したものを用いることができる。
【0018】
当該メトキシシラン化合物としては、例えば、一般式(b):
Si(OCH4−p
(式中、pは0または1を示す。Rは、炭素原子に直結した低級アルキル基、アリール基または不飽和脂肪族残基を示す。)で表される化合物を例示できる。
【0019】
メトキシシラン部分縮合物(2)の構成原料である上記メトキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
上記の中でも、メトキシシランとしては、テトラメトキシシランの部分縮合物、メチルトリメトキシシランの部分縮合物を用いた場合が、低温での硬化性に特に優れているため好ましい。
【0021】
メトキシシラン部分縮合物(2)は、例えば次の一般式(c):
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R1は、炭素数1〜5の低級アルキル基、アリール基、又はメトキシ基を示す。)で示される。
【0024】
当該メトキシシラン部分縮合物(2)の数平均分子量は230〜2000程度、一般式(c)において、平均繰り返し単位数nは2〜11が好ましい。nの値が11を超えると、溶解性が悪くなる傾向があり、反応温度において、エポキシ樹脂(1)との相溶性が低下し、エポキシ樹脂(1)や後述するエポキシ化合物(3)との反応性が落ちる傾向があるため好ましくない。nが2未満であると反応途中に反応系外にメタノールと一緒に留去されてしまうため好ましくない。
【0025】
本発明におけるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の構成成分として、エポキシ樹脂(1)に加えて、1分子中に1つの水酸基を持つ炭素数3以上12以下のエポキシ化合物(3)(以下、単にエポキシ化合物(3)という)を使用できる。本発明では、エポキシ樹脂(1)中に水酸基を持たないエポキシ樹脂分子が存在する場合に、エポキシ化合物(3)を構成成分として用いることにより、最終的に得られる保護膜の耐熱性を高度に保持できるという利点や、エポキシ当量が700g/eqを超え、メトキシシラン部分縮合物(2)と相溶性が悪いエポキシ樹脂(1)を用いる場合にも溶解性を向上させ、脱メタノール縮合反応を助長する利点がある。
【0026】
エポキシ化合物(3)の具体例は、次の一般式(d)で表される。
【0027】
【化3】

【0028】
エポキシ化合物(3)の中でも、一般式(d)におけるpが1〜10であるものが好ましく、当該化合物としては、グリシドール(日本油脂(株)製、商品名「エピオールOH」)やエポキシアルコール(クラレ(株)製、商品名「EOA」)を例示できる。なお、pの値が10を超えると、最終的に得られる複合体硬化物の耐熱性が低下する傾向にある。
【0029】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂(1)、メトキシシラン部分縮合物(2)および必要によりエポキシ化合物(3)を脱メタノール縮合反応させることにより得られる。エポキシ化合物(3)を用いる場合には、エポキシ樹脂(1)およびエポキシ化合物(3)と、メトキシシラン部分縮合物(2)との使用重量比は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中にメトキシ基が実質的に残存するような割合であれば特に制限はされないが、エポキシ樹脂(1)の水酸基とエポキシ化合物(3)の水酸基との合計当量/メトキシシシラン部分縮合物(3)のメトキシ基の当量(当量比)=0.03〜0.5程度であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.3である。上記当量比が0.03未満であると未反応メトキシシラン部分縮合物(2)が増える傾向があり、また0.5を超えると得られる保護膜の耐熱性、密着性、耐光性が低下する傾向がある。
【0030】
本発明における脱メタノール縮合反応では、反応温度は50〜130℃程度、好ましくは70〜110℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。この反応は、メトキシシラン部分縮合物(2)自体の重縮合反応を防止するため、実質的に無水条件下で行うのが好ましい。またメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂の製造は、反応時間を短くするために、エポキシ化合物(3)が蒸発しない範囲で、減圧下で行うこともできる。
【0031】
また、上記の脱メタノール縮合反応に際しては、反応促進のために従来公知の触媒の内、エポキシ環を開環しないものを使用することができる。該触媒としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガンのような金属;これら金属の酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、メトキシド等が挙げられる。これらのなかでも、特に有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等が有効である。
【0032】
また、上記の脱メタノール縮合反応は、溶剤存在下または無溶剤下で行うことができる。しかしながら、エポキシ樹脂(1)やメトキシシラン部分縮合物(2)の分子量が大きい時には、反応温度において、反応系が不均一となる場合が見られ反応が進行しにくくなるため、溶剤を使用するのが好ましい。溶剤としては、エポキシ樹脂(1)、エポキシ化合物(3)およびメトキシシラン部分縮合物(2)を溶解し、且つこれらに対し非活性である有機溶剤であれば特に制限はない。このような有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレグリコールジメチルエーテルなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0033】
こうして得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂は、メトキシシラン部分縮合物のメトキシ基が、エポキシ樹脂(1)残基やエポキシ化合物(3)残基で置換されたものを主成分とするが、当該樹脂中には未反応のエポキシ樹脂(1)、エポキシ化合物(3)、メトキシシラン部分縮合物(2)が含有されていてもよい。なお、未反応のメトキシシラン部分縮合物(2)は、ゾル−ゲル硬化反応によりメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)とシロキサン結合で結ばれる。
【0034】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は、その分子中にメトキシシラン部分縮合物(2)に由来するメトキシ基を有している。当該メトキシ基の含有量は、特に限定はされないが、このメトキシ基は溶剤の蒸発や加熱処理により、又は水分(湿気)との反応により、ゾル−ゲル反応や脱メタノール縮合して、相互に結合、または金属酸化物(B)の表面に存在する官能基と反応し、Si−O−Si或いはSi−O−M(金属酸化物)の共有結合を形成する。したがって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)は、通常、反応原料となるメトキシシラン部分縮合物(2)のメトキシ基の30〜95モル%程度、好ましくは40〜80モル%を未反応のままで保持しておくのがよい。
【0035】
当該メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)を含有してなる保護コート用樹脂組成物から形成される本発明の保護膜は、ゾル−ゲル硬化により形成した微細なシリカ部位(シロキサン結合の高次網目構造)とそれに一体化した金属酸化物(B)とを有するものである。メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)としては、硬化残分中のSi含有量が、シリカ重量換算で2〜60重量%程度となることが好ましい。硬化残分中のシリカ重量換算Si含有量とは、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のメトキシシリル部位が上記ゾル−ゲル硬化反応を経て、シリカ部位に硬化した時のシリカ部位の重量パーセントである。2重量%未満であると、得られる保護膜(硬化膜)の耐熱性、密着性、透明性、耐酸性、耐傷つき性など本発明の効果を得難くなる傾向があり、また60重量%を越えると、得られる保護膜が脆くなり、厚膜の硬化膜を得難くなる傾向がある。
【0036】
本発明の保護コート用樹脂組成物では、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)と、機械的分散方法により平均粒子径(d50)が100ナノメートル(nm)以下になる金属酸化物(B)(以下、フィラー(B)と略す)を必須成分としている。本発明において、平均粒子径(d50)とは、体積より測定した粒度分布の50%頻度の粒子径を表す。フィラー(B)の種類は特に限定されないが、得られる保護膜の硬度や透明性、フィラーの汎用性(入手容易性)を考慮すると、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫、ジルコニア、ITO(インジウム錫オキサイド)、ATO(アンチモン錫オキサイド)等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナ、酸化亜鉛が特に耐熱性、硬度に特長を有する。これらのフィラー(B)は粉体の状態では、凝集して2次粒子化しており、分散機を用いて平均粒子径(d50)が100nm以下になるように、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)溶液中で分散する必要がある。フィラー(B)の平均粒子径(d50)が100nmを超えると、保護膜の平坦性や透明性を保持できなくなる。また同様の理由で、フィラー(B)の1次粒子の平均粒子径(d50)は100nm以下でなければならず、保護膜の厚みが3μmを越える場合には、より高度の透明性、平坦性が要求されるため、当該粒子径は80nm以下とするのがよい。また、フィラー(B)としては、表面処理剤や界面活性剤などを用いずに調製されたものを用いるのが好ましい。何故なら、フィラー(B)は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)のゾル−ゲル硬化時に、Si−O−M結合を形成して一体化するが、前記のように表面処理が施されている場合には、当該結合が生成しにくく、また界面活性剤等の使用は保護コート剤用樹脂組成物の保存安定性が低下し、保護膜の耐水性が低下する傾向があるからである。
【0037】
本発明の保護コート用樹脂組成物に用いるフィラー(B)の使用量は、特に限定されないが、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の硬化残分に対し、1〜50重量%程度であることが好ましい。1重量%未満では、得られる保護膜の硬度が不十分であり、また50重量%を超えると膜厚5μm以上の保護膜を作製したときに亀裂が入ることがあり、いずれも好ましくない。
【0038】
本発明の保護コート用樹脂組成物を製造するためにはフィラー(B)の微小分散が不可欠である。使用する分散機としては格別限定されず、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ペイントシェイカー、3本ロールなどの従来公知のものを使用できるが、得られる保護膜の透明性を考慮すると、最も分散能力の高いビーズミルを使用することが好ましい。当該分散機に用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、SUS、ジルコニアなどが市販されており、何れも使用可能であるが、特に分散性、耐久性を考慮すると、ジルコニアが好ましい。またビーズの粒子径は、特に限定されず、通常φ1mm程度以下のものであれば好ましいが、フィラー(B)を短時間で目的粒子径に分散するには、φ0.5mm以下のビーズを用いることがより好ましい。
【0039】
前記フィラー(B)は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)を含有する溶剤溶液中で分散させるのがよく、分散時の系内粘度、除熱の容易さ、分散性などを考慮して、後述するような溶剤種や溶剤使用量を適宜に決定すればよい。各種分散機によって微細分散されたフィラー(B)は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)が介在するために、再凝集することなく微細分散状態が保たれる。なお、当該分散工程では相当の摩擦熱が発生するため、後述するエポキシ樹脂硬化剤(C)を含有しない状態で分散させるのがよい。エポキシ樹脂硬化剤(C)の存在下にフィラー(B)を分散させて本発明の保護コート用樹脂組成物を調製する場合は、系内温度が50℃以下になるよう冷却しながら分散させるのがよい。
【0040】
本発明の保護コート用樹脂組成物においては、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)とフィラー(B)を含有されていればよく、その他の配合成分については特に限定されないが、当該用途や要求性能を考慮して、各種公知のエポキシ樹脂やエポキシ樹脂用硬化剤(C)等を併用してもよく、また本発明の保護コート用樹脂組成物を使用する際にこれら配合物を添加混合しても差し支えない。
【0041】
前記エポキシ樹脂用硬化剤(C)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として使用されている各種のもの、例えばフェノール系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリカルボン酸系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等を適宜選定して使用できる。得られる保護膜の透明性や耐光性をより考慮すると、フェノール系硬化剤の中では、ビスフェノールAやビスフェノールS、ビスフェノールFが好ましい。またポリアミン系硬化剤では、得られる保護膜の透明性、耐光性に加えて、保護コート用樹脂組成物のポットライフを考慮する必要があり、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環式アミンが好ましい。ポリカルボン酸系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられ、これら化合物を用いることにより本発明の目的性能を満足しうる保護膜を収得できる。イミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルへキシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウム・トリメリテート、2−フェニルイミダゾリウム・イソシアヌレート等が挙げられる。これらの中でもポリカルボン酸系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤が反応性と硬化膜の耐薬品性の点で特に好ましい。
上記エポキシ樹脂用硬化剤(C)は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中のエポキシ環と反応してエポキシ開環硬化に関与するだけではなく、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中のメトキシシリル部位やメトキシ基が互いにシロキサン縮合していく反応のための触媒としても機能する。したがって、前述のように、エポキシ樹脂用硬化剤(C)はフィラー(B)の分散工程では添加せず、フィラー(B)の分散後に添加して保護コート用樹脂組成物を調製するのがよい。
【0042】
エポキシ樹脂用硬化剤(C)の使用量は、特に限定されないが、通常、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対し、当該硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.2〜1.5当量程度とされる。
【0043】
また、前記の保護コート用樹脂組成物には、硬化温度に応じて、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤を配合できる。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。
【0044】
前記の硬化促進剤は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ基や任意成分として用いたエポキシ樹脂の合計エポキシ基1重量部に対して、0.1〜5重量部の割合で使用するのが好ましい。また、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂中のメトキシシリル部位やメトキシ基をシロキサンへと縮合反応を促進するために、従来公知の酸又は塩基性触媒、金属系触媒などのゾル−ゲル硬化触媒を配合できる。これらのなかでも、オクチル酸錫やジブチル錫ジラウレート、テトラプロポキシチタンなど金属系触媒が、活性が高く好ましい。
【0045】
本発明の保護コート用樹脂組成物には、熱および/または放射線により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤と略す)を更に配合することができる。酸発生剤の使用量は、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の硬化残分当たり、通常10重量部程度以下、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0046】
本発明の保護コート用樹脂組成物は、上記した諸態様をとりうるが、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて上記以外の成分(例えば、界面活性剤、溶剤、他のポリマー材料等)を含有していてもよい。
【0047】
上記の任意添加成分である界面活性剤は、保護コート用樹脂組成物の塗布性を向上するために添加される。このような界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等が挙げられ、ポリオキシエチレンアリールエーテル類としては、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙げられ、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類としては、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等が挙げられる。これらの界面活性剤の添加量は、保護コート用樹脂組成物中のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(1)の硬化残分当たり、通常0.01〜1重量%で使用される。
【0048】
また上記の任意添加成分である溶媒としては、本発明の保護コート用樹脂組成物を各種コーターに適合する粘度に希釈するために用いられる。使用される溶媒としては、当該組成物の各成分を溶解または分散し、且つ各成分と反応しないものが用いられる。このような溶媒としては、前述のメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造時に用いた溶剤の他、高沸点溶媒を併用することができる。併用できる高沸点溶媒としては、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられる。
【0049】
また上記の任意添加成分である他のポリマー材料としては、例えばアクリルポリマーが挙げられ、スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル/メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン/アククリル酸/アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル/アクリル酸グリシジル共重合体、スチレン/メタクリル酸/フェニルマレイミド/メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン/アクリル酸/フェニルマレイミド/アクリル酸グリシジル共重合体、スチレン/メタクリル酸/シクロヘキシルマレイミド/メタクリル酸グリシジル共重合体、ブタジエン/スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル/メタクリル酸グリシジル共重合体、ブタジエン/メタクリル酸/メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル/メタクリル酸グリシジル共重合体、スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル/メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル共重合体、スチレン/アクリル酸/無水マレイン酸/メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル共重合体、t−ブチルメタクリレート/アクリル酸/無水マレイン酸/メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル共重合体、スチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、p−メトキシスチレン/メタクリル酸/シクロヘキシルアクリレート/メタクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。これらのポリマー材料は保護膜の平坦性に寄与する。
【0050】
本発明の保護コート用樹脂組成物の塗布方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法、インクジェット法などの公知各種の方法を適宜採用できる。塗工後の予備乾燥の条件としては、各成分の種類や配合割合などによっても異なるが、通常70〜120℃で1〜15分間程度の条件を採用できる。塗膜形成後の加熱処理は、ホットプレートやオーブンなどの適宜の加熱装置により実施することができる。加熱処理温度としては、150〜250℃程度が好ましく、加熱装置としてホットプレート使用の場合は5〜30分間、オーブン使用の場合は、30〜90分間の処理時間を採用することが好ましい。
【0051】
こうして形成された保護膜は、無色透明であるため、特にガラスを母体とする基材に対する保護膜として有用である。なお、本発明の保護膜がカラーフィルターの段差を有する基板上に形成される場合には、その膜厚が通常、0.1〜30μm程度、好ましくは1〜20μmである。なお、本発明の保護膜がカラーフィルターの段差を有する基板上に形成される場合には、上記の膜厚は、カラーフィルターの最上部からの厚さとして理解されるべきである。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、%は特記なし限り重量基準である。
【0053】
製造例1(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造)
攪拌機、分水器、温度計、窒素吹き込み口を備えた反応装置に、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート1001」、エポキシ当量475g/eq、m=2.15)660g、およびジプロピレグリコールジメチルエーテル(日本乳化剤(株)製)560gを加え、90℃で溶融混合させた。更にテトラメトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)製、商品名「Mシリケート51」、平均繰り返し単位数n=4.0)1280g、および触媒としてジブチル錫ジラウレート0.6gを加え、窒素気流下にて、90℃で4時間、脱メタノール反応させることにより、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は1790g/eqであった。エポキシ樹脂(1)の当量/メトキシシシラン部分縮合物(2)のメトキシ基の当量(当量比)=0.055であった。
【0054】
製造例2(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、エピコート1001を750g、ジプロピレグリコールジメチルエーテルを900g加え、100℃で溶融混合した。更にメチルトリメトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)製、商品名「MTMS-A」、平均繰り返し単位数n=3.2)を1100g、およびジブチル錫ジラウレートを4.12g加え、窒素気流下にて、100℃で6時間、脱メタノール反応させることにより、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は1744g/eqであった。エポキシ樹脂(1)の当量/メトキシシシラン部分縮合物(2)のメトキシ基の当量(当量比)=0.099であった。
【0055】
製造例3(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、エピコート1001を530g、および半固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名「エピコート828」、エポキシ当量189g/eq、m=0.1)890gを加え、90℃で溶融混合した。当該混合物にMシリケート51を1140g、グリシドール(日本油脂(株)製、商品名「エピオールOH」)260gを加え、更にジブチル錫ジラウレートを0.5g加えたのち窒素気流下にて、90℃で14時間、脱メタノール反応させることにより、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。なおエポキシ樹脂(1)の水酸基とエポキシ化合物(3)の水酸基との合計当量/メトキシシシラン部分縮合物(2)のメトキシ基の当量(当量比)=0.20であった。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は265g/eqであった。
【0056】
製造例4(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、エピコート1001を510g、エピコート828を1280g加え、90℃で溶融混合した。当該混合物にMシリケート51を980g、グリシドール135gを加え、更にジブチル錫ジラウレート1.4gを加えたのち窒素気流下にて、100℃で14時間、脱メタノール反応させることにより、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。なおエポキシ樹脂(1)の水酸基とエポキシ化合物(3)の水酸基との合計当量/メトキシシシラン部分縮合物(2)のメトキシ基の当量(当量比)=0.44であった。得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は254g/eqであった。
【0057】
製造例5(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、ノボラック型エポキシ樹脂(東都化成(株)製、商品名「エポトートYDPN−638P」、エポキシ当量177g/eq、数平均フェノール核体数5.2)615gとビスフェノールA80gとを125℃で溶解させ、開環変性の触媒として、N,N−ジメチルベンジルアミン0.2gを加え、4時間反応させることによって、水酸基含有エポキシ樹脂であるビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂を得た。次いで、これにMシリケート51を630g、メチルエチルケトン990g、グリシドール100g、および触媒としてジブチル錫ジラウレート1gを加え、窒素気流下にて、80℃で5時間、脱メタノール反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、エポキシ樹脂(1)の水酸基とエポキシ化合物(3)の水酸基との合計当量/メトキシシシラン部分縮合物(2)のメトキシ基の当量(当量比)=0.17であった。得られた樹脂のエポキシ当量は610g/eqであった。
【0058】
製造例6(メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)の製造)
製造例1と同様の反応装置に、エポトートYDPN−638Pを680gとビスフェノールA90gとを125℃で溶解させ、4時間反応させることによって、水酸基含有エポキシ樹脂A−1を得た。次いでこれにMTMS−Aを505g、メチルエチルケトン1150g、グリシドール75g、および触媒としてジブチル錫ジラウレート2gを加え、窒素気流下にて、80℃で5時間、脱メタノール反応させることによって、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を得た。
なお、水酸基含有エポキシ樹脂A−1(1)の水酸基とグリシドール(3)の水酸基との合計当量/メトキシシシラン部分縮合物(2)のメトキシ基の当量(当量比)は=0.26であった。得られた樹脂のエポキシ当量は614g/eqであった。
【0059】
実施例1(保護コート用樹脂組成物の作製)
製造例1で得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂7000gに、アルミナフィラー(昭和電工(株)製、商品名「UFA150」、1次粒子の平均粒子径(d50)15nm)490g(硬化残分対比10%)を容器に仕込み、ハイパーミキサーにて20分間攪拌して、予備的分散組成物(1−1)を調製した。次にビーズミル(アシザワファインッテック(株)製、商品名「スターミル」)、ビーズ(粒径0.3mmのジルコニアビーズ)4600gを用いて、当該組成物(1−1)を1時間分散させることにより、保護コート用樹脂組成物(1−2)を得た。粒子径測定装置(日機装(株)製、商品名 マイクロトラック粒度分布測定装置 Nanotrac MODEL「UPA−EX150」(以後、マイクロトラックと略す))にて測定したところ、当該分散粒子の平均粒子径(d50)は45nmであった。
【0060】
当該樹脂組成物(1−2)に対してエポキシ樹脂用硬化剤(C)として4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を、保護コート用樹脂組成物(1−2)に由来するエポキシ基1当量あたり、当該硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.9当量になるように加え、更に硬化残分当りオクチル酸錫0.5%を加えることにより、保護コート用樹脂組成物(1−3)を得た。
【0061】
実施例2(保護コート用樹脂組成物の作製)
実施例1に記載の予備的分散組成物(1−1)を140ml容のガラス瓶に60g秤量し、次いで粒径0.3mmのジルコニアビーズを100g仕込み、ペイントシェイカーにて10時間分散させた。得られた保護コート用樹脂組成物(2−1)をマイクロトラックにて測定したところ、当該分散粒子の平均粒子径(d50)は60nmであった。
【0062】
当該樹脂組成物(2−1)に対して、−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を、当該樹脂組成物(2−1)由来のエポキシ基1当量あたり、当該硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.9当量になるように加え、更に硬化残分当りオクチル酸錫0.5%を加えることにより、保護コート用樹脂組成物(2−2)を得た。
【0063】
実施例3(保護コート用樹脂組成物の作製)
製造例2で得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に行い、保護コート用樹脂組成物(3−1)を得た。当該樹脂組成物(3−1)をマイクロトラックにて測定したところ、当該分散粒子の平均粒子径(d50)は45nmであった。当該樹脂組成物(3−1)に対して実施例1と同様に4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とオクチル酸錫を加えることにより、保護コート用樹脂組成物(3−2)を得た。
【0064】
実施例4(保護コート用樹脂組成物の作製)
シリカフィラー(旭化成ワッカーシリコーン(株)社製、商品名「HDK N 20」、1次粒子の平均粒子径(d50)20nm)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、保護コート用樹脂組成物(4−1)を得た。当該樹脂組成物(4−1)をマイクロトラックにて測定したところ、当該分散粒子の平均粒子径(d50)は45nmであった。当該樹脂組成物(4−1)に対して実施例1と同様に4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とオクチル酸錫を加えることにより、保護コート用樹脂組成物(4−2)を得た。
【0065】
実施例5(保護コート用樹脂組成物の作製)
製造例5で得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に行い、保護コート用樹脂組成物(5−1)を得た。当該樹脂組成物(5−1)をマイクロトラックにて測定したところ、当該分散粒子の平均粒子径(d50)は55nmであった。当該樹脂組成物(5−1)に対して実施例1と同様に4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とオクチル酸錫を加えることにより、保護コート用樹脂組成物(5−2)を得た。
【0066】
実施例6(保護コート用樹脂組成物の作製)
エポキシ樹脂硬化剤としてトリメリット酸無水物を用いた以外は、実施例1と同様に行い、保護コート用樹脂組成物(6−2)を得た。
【0067】
比較例1(保護コート用樹脂組成物の作製)
エピコート1001をジプロピレグリコールジメチルエーテルに溶解し、不揮発分濃度50重量%の溶液を調製した。当該溶液に4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を、エピコート1001由来のエポキシ基1当量に対し、当該硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.9になるように加え、更に硬化残分当りオクチル酸錫0.5%を加え、保護コート用樹脂組成物(C1)を調整した。
【0068】
比較例2(保護コート用樹脂組成物の作製)
製造例1で得られたメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂に4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を、当該メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂由来のエポキシ基1当量あたり、当該硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.9になるように加え、更に硬化残分当りオクチル酸錫0.5%を加えることにより、保護コート用樹脂組成物(C2)を得た。
【0069】
比較例3(保護コート用樹脂組成物の作製)
エピコート1001をジプロピレグリコールジメチルエーテルにて溶解し、不揮発分濃度50%の溶液を調製した。当該溶液7000gにUFA150を490g(硬化残分対比10%)を加え、ハイパーミキサーにて20分間分散させて予備的分散組成物(C3−1)を調製した。当該組成物(C3−1)をスターミルにて、粒径0.3mmのジルコニアビーズ4600gを使用して1時間分散させて、保護コート用樹脂組成物(C3−2)を得た。当該樹脂組成物(C3−2)をマイクロトラックにて測定したところ、当該分散粒子の平均粒子径(d50)は180nmであった。当該樹脂組成物(C3−2)に対して、当該樹脂組成物(C3−2)由来のエポキシ基1当量あたり、当該硬化剤中の活性水素を有する官能基が0.9になるように加え、更に硬化残分当りオクチル酸錫0.5%を加えることにより、保護コート用樹脂組成物(C3−3)を得た。
【0070】
(保護膜の作製)
実施例1〜6および比較例1〜3で得られた各保護コート用樹脂組成物を、線幅80μmの赤、青、緑のストライプパターンが20μmの間隔で形成された6インチガラス基板上に、スピンナーにより塗布し、100℃で10分、更に230℃で1時間、加熱硬化させることにより、膜厚2.0μmの各保護膜を得た。
【0071】
(平坦性)
各保護コート用樹脂組成物の塗布前後での画素間段差(赤色画素と緑色画素の中心部分の高さの差)を、走査型電子顕微鏡で測定した。下式に基づき測定結果から平坦性を求めた。結果を表1に示す。
平坦性(R)=d2(塗布後段差)/d1(塗布前段差)
○:平坦性優れる(R=0.3未満)
×:平坦性が劣る(R=0.3以上)
【0072】
(色調)
各保護膜の色調を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:透明
×:淡黄色
【0073】
(透明性)
各保護膜を用い、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所製、商品名「ヘーズメーターMH−150」)にて測定し、ガラス基板のヘーズを差し引いた値を測定値とした。結果を表1に示す。
○:ヘーズが1%未満。
×:ヘーズが1%以上。
【0074】
(硬度)
各保護膜を用いて、JIS K−5400の塗料一般試験方法による鉛筆引っかき試験を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(密着性)
各保護膜を用いて、JIS K−5400の一般試験法によるゴバン目セロハンテープ剥離試験を行い、以下の基準で判定した。評価結果を表1に示す。
○:100/100
△:99〜95/100
×:94〜0/100
【0076】
(耐熱性)
各保護膜を、250℃の順風乾燥機に1時間入れたのち、上記と同様の方法で密着性および色調を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
(耐薬品性)
各保護膜を、各薬品(N−メチルピロリドン、炭酸ナトリウム10%水溶液、1Nの塩酸水)にそれぞれ別々に室温で1時間浸漬したのち、密着性評価と同様の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)およびメトキシシラン部分縮合物(2)を脱メタノール縮合反応させて得られるメトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)中に、金属酸化物(B)が平均粒子径(d50)100ナノメートル(nm)以下となるように分散されてなることを特徴とする保護コート用樹脂組成物。
【請求項2】
メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(A)が、水酸基含有ビスフェノール型エポキシ樹脂(1)、メトキシシラン部分縮合物(2)および1分子中に1つの水酸基を持つ炭素数3以上12以下のエポキシ化合物(3)を脱メタノール縮合反応させて得られるものである請求項1記載の保護コート用樹脂組成物。
【請求項3】
メトキシシラン部分縮合物(2)がメチルトリメトキシシランの部分縮合物またはテトラメトキシシランの部分縮合物である請求項1又は2に記載の保護コート用樹脂組成物。
【請求項4】
金属酸化物(B)が、当該1次粒子の平均粒子径(d50)100nm以下のものである請求項1〜3のいずれかに記載の保護コート用樹脂組成物。
【請求項5】
金属酸化物(B)が、アルミナ、シリカ及び酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の保護コート用樹脂組成物。
【請求項6】
ポリカルボン酸系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(C)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の保護コート用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の保護コート用樹脂組成物を加熱硬化させて得られる無色透明な保護膜の製造法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の保護コート用樹脂組成物を70〜120℃で乾燥後、150〜250℃で硬化させて得られる請求項7記載の製造法。
【請求項9】
ガラスを母体とする基材上に形成されてなる請求項7又は8に記載の製造法。
【請求項10】
基材がカラーフィルターである請求項9記載の製造法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかの製造法により得られる無色透明な保護膜。

【公開番号】特開2006−36900(P2006−36900A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218025(P2004−218025)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【出願人】(591153983)日本ペルノックス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】