説明

保護シート剥離装置および保護シート剥離方法

【課題】 液晶パネルから保護シートを剥離する際に、偏光板表面に処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離速度などの剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる保護シート剥離装置およびその剥離方法を提供する。
【解決手段】 剥離部4が移動しながら液晶パネル2から保護シート8を剥離し、ミストを生成し、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面に向けてミストを吹き出し、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺にあるミストを吸引する。液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度を検出し、検出した湿度に基づいてミスト吹出量とミスト吸引量と前記剥離部4の移動速度とを制御するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルの偏光板を保護するために貼り付けられている保護シートを剥離するための保護シート剥離装置およびその剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの断面図を図10に示す。液晶パネル100は、ガラス基板などの光透過基板101,102の一方の表面に所定の形状の電極103,104を形成し、この電極103,104が形成された面同士を向かい合わせた2枚の光透過基板101,102を、基板間距離が均一となるようにスペーサ105を介在させてシール113によって平行に貼り合わせる。そして、この基板間に液晶材料106を封入し、さらに光透過基板101,102の電極103,104が形成された面と反対側の面に偏光板107,108を貼り付けた構成である。
【0003】
また上記の構成に、カラー表示を可能にするためのカラーフィルター110、たとえばRGB(Red Green Blue)のフィルターなどが設けられている液晶パネルもある。
【0004】
最近のテレビジョン受像機(以下、テレビと記す。)に代表される液晶パネル100には、何百万という薄膜トランジスタ(以下、TFT(Thin Film Transistor)と記す。)が利用されている。これらのTFTは、液晶パネル100のm×n行列形態の画素数にあわせてm本のゲート線とn本のソース線とが交差する場所毎に各線および各画素電極と接続されており、ゲート線からの走査信号とソース線からの画像制御信号とをTFTが受けることで各画素に形成されている表示動作のための画素電極に所定の電圧が印加される。これにより画素1つ1つのオン・オフを制御できるため、目的の画素を確実に点灯させたり消したりすることができ、高精細な画像の表示を可能としている。また、ゲート線およびソース線には、TFTを駆動するためのドライバーIC(Integrated circuit)が接続されている。
【0005】
これらの液晶パネル100に用いられている偏光板107,108の表面には、液晶パネル100の製造時の作業における偏光板107,108の表面の損傷を防ぐために保護シート111,112が貼り付けられているが、偏光板107,108は非常に帯電しやすい性質を有しているため、最終的に保護シート111,112を剥離する際に偏光板107,108の表面において非常に高い電位上昇を招いてしまう。
【0006】
このような保護シート111,112の剥離時に発生する偏光板107,108の表面における電位上昇によって、TFTや電極において瞬間的に大量の電荷が移動し、TFT破壊やTFT部分の絶縁膜破壊を引き起こしてしまう。
さらに、ゲート線やソース線を介してドライバーICの回路にも瞬間的に大量の電荷が流れるため、ドライバーICの破壊をも引き起こしてしまう。
上記のような問題を解決するために、たとえば、特許文献1では、偏光板107,108と保護シート111,112との間に抵抗値が10の9乗オームとなるような高抵抗の導電剤を塗布することにより、保護シート111,112の剥離時において偏光板107,108の表面に局所的に電位の高い部分が生じ、表示むらが発生することを防ぐことができることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−35571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし特許文献1のような処理を行ったとしても、温度や湿度などの保護シート剥離時の剥離環境や剥離速度などの剥離条件により表面電位が上昇する場合があることが懸念される。
【0009】
また、偏光板表面に直接処理を行わなければならず、この処理工程においては偏光板表面を保護できない点や、作業効率が悪くなる点で好ましくない。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶パネル表面にある偏光板から保護シートを剥離する際に、偏光板表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離速度などの剥離条件に影響されない安定した表面電位を保ち、TFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊を防ぐことができる保護シート剥離装置およびその剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護シートを剥離する剥離装置であって、
前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出する検出手段と、
ミストを生成し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けて前記ミストを吹き出すミスト吹出手段と、
前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にある前記ミストを吸引するミスト吸引手段と、
前記保護シートを前記パネルから剥離する剥離部と、
前記剥離部と固定され、前記剥離部を移動させるための移動部と、
前記検出手段によって検出された湿度に基づいて前記ミスト吹出手段からのミスト吹出量と前記ミスト吸引手段によるミスト吸引量と前記移動部の移動速度とを制御する制御手段とを具備することを特徴とする保護シート剥離装置である。
【0012】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記制御手段は、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を60%〜95%に制御することを特徴とする。
【0013】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記制御手段は、前記移動部の移動速度を湿度と最適な剥離速度との関係に基づいて制御することを特徴とする。
【0014】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記ミスト吹出手段は、前記ミストを水から生成し、前記ミストの粒子の平均粒径を5μm以下にすることを特徴とする。
【0015】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記ミスト吹出手段は、前記ミストを超音波によって生成することを特徴とする。
【0016】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記ミスト吹出手段および前記ミスト吸引手段が、前記保護シートの剥離と共に、前記保護シートの剥離速度と同じ速度で前記保護シートの剥離と同じ方向に移動することを特徴とする。
【0017】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記パネルの表面電位を検出する帯電検出部を具備し、前記帯電検出部が、前記パネルの保護シートが剥離される側の面に対して反対側の面に配置され、検出した表面電位に基づいて前記ミスト吹出手段からのミスト吹出量と前記ミスト吸引手段によるミスト吸引量と前記移動部の移動速度とを制御することを特徴とする。
【0018】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記帯電検出部が、前記剥離境界部の表面電位と前記帯電検出部が配置されている部分の表面電位との相関関係に基づいて、前記剥離境界部の表面電位を検出することを特徴とする。
【0019】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記帯電検出部が表面電位計であることを特徴とする。
【0020】
また本発明の保護シート剥離装置は、前記パネルが液晶パネルであって、前記保護シートが液晶パネルの表面にある偏光板に貼り付けられていることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護シートを剥離する剥離方法であって、剥離部が移動しながら前記パネルから前記保護シートを剥離し、ミストを生成し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けて前記ミストを吹き出し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にある前記ミストを吸引し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出し、検出した湿度に基づいてミスト吹出量とミスト吸引量と前記剥離部の移動速度とを制御することを特徴とする保護シート剥離方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パネルから、パネルを保護するために貼り付けられている保護シートを剥離する剥離装置において、検出手段がパネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出し、ミスト吹出手段がミストを生成し、パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けてミストを吹き出し、ミスト吸引手段がパネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にあるミストを吸引し、制御手段が検出された湿度に基づいてミスト吹出手段からのミスト吹出量とミスト吸引手段によるミスト吸引量とを制御することによって、結露を防ぎつつパネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を高く保つことができ、パネル表面における帯電圧を低く抑えることができる。
【0023】
したがって、パネルから保護シートを剥離する際に、パネル表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0024】
また、剥離部が移動部によって移動させられながらパネルから保護シートを剥離し、制御手段が検出された湿度に基づいて移動部の移動速度を制御することによって、得られた湿度に基づいて剥離部の移動速度を制御しながらパネルから保護シートを剥離できるため、パネル表面における表面電位の上昇を防ぐことができる。
【0025】
したがって、パネルから保護シートを剥離する際に、パネル表面に対して処理を施すことなく、剥離速度などの剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0026】
また本発明によれば、制御手段が、パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を60%〜95%に制御することによって、確実に結露を防ぎつつパネル表面における帯電圧をより低く抑えることができる。
【0027】
また本発明によれば、制御手段が、移動部の移動速度を湿度と最適な剥離速度との関係に基づいて制御することによって、パネルの表面における表面電位の上昇を確実に防ぐことができる。さらに、帯電圧の許容範囲内で剥離速度を可能な限り速くすることができ、剥離時間を短縮することができる。
【0028】
また本発明によれば、ミスト吹出手段が、ミストを水から生成し、ミストの粒子の平均粒径を5μm以下にすることによって、パネルおよび保護シート剥離装置を構成する各部での濡れを防ぐことができる。
【0029】
また本発明によれば、ミスト吹出手段が、ミストを超音波によって生成することによって、ミストの粒子の平均粒径が小さいミストを容易に生成することができる。
【0030】
また本発明によれば、ミスト吹出手段およびミスト吸引手段が、パネルの表面における保護シートの剥離と共に、保護シートの剥離速度と同じ速度で保護シートの剥離と同じ方向に移動することによって、確実に剥離境界部付近の結露を防ぎつつ湿度を高く保つことができ、剥離境界部付近における帯電圧を低く抑えることができる。
【0031】
また本発明の保護シート剥離装置が、パネルの表面電位を検出する帯電検出部を具備し、この帯電検出部が、パネルの保護シートが剥離される側の面に対して反対側の面に配置されることによって、剥離される保護シートと干渉することなくパネルの表面電位を容易に検出することができる。
【0032】
さらに、帯電検出部が、検出した表面電位に基づいてミスト吹出手段からのミスト吹出量とミスト吸引手段によるミスト吸引量と移動部の移動速度とを制御することによって、パネル表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。さらに、湿度に基づく制御のみの場合と比較して、帯電圧の許容範囲内で剥離速度を可能な限り速くすることができ、より剥離時間を短縮することができる。
【0033】
また本発明によれば、前記帯電検出部が、剥離境界部の表面電位と帯電検出部が配置されている部分の表面電位との相関関係に基づいて、剥離境界部の表面電位を検出することによって、帯電検出部がパネルの保護シートが剥離される側の面に対して反対側の面に配置されていても、パネルの剥離境界部の表面電位を検出することができる。
【0034】
また本発明によれば、帯電検出部が表面電位計であることによって、パネルの表面電位をより定量的に検出することができる。
【0035】
また本発明によれば、前記パネルが液晶パネルであって、保護シートが液晶パネルの表面にある偏光板に貼り付けられていることによって、偏光板から保護シートを剥離する際に、偏光板表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境や剥離速度などの剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができ、保護シート剥離時のTFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊を防ぐことができる。
【0036】
また本発明によれば、パネルから、パネルを保護するために貼り付けられている保護シートを剥離する剥離方法において、剥離部が移動しながらパネルから保護シートを剥離し、ミストを生成し、パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けてミストを吹き出し、パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にあるミストを吸引し、パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出し、検出された湿度に基づいてミスト吹出量とミスト吸引量と剥離部の移動速度とを制御する。
【0037】
これにより、得られた湿度に基づいてミスト吹出量とミスト吸引量とを制御できるため、結露を防ぎつつパネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を高く保つことができ、パネル表面における帯電圧を低く抑えることができる。
【0038】
したがって、パネルから保護シートを剥離する際に、パネル表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0039】
また、得られた湿度に基づいて剥離部の移動速度を制御しながらパネルから保護シートを剥離できるため、パネル表面における表面電位の上昇を防ぐことができる。
【0040】
したがって、パネルから保護シートを剥離する際に、パネル表面に対して処理を施すことなく、剥離速度などの剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に実施の形態を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り特に限定されるものではない。
本発明の保護シート剥離装置は、製造時の作業における液晶パネルの表面にある偏光板の損傷を防ぐために偏光板表面を保護することを目的として貼り付けられている保護シートを剥離するための装置であって、液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出する検出手段と、ミストを生成し、液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けてミストを吹き出すミスト吹出手段と、液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にあるミストを吸引するミスト吸引手段と、保護シートを偏光板から剥離する剥離部と、剥離部と固定され、剥離部を移動させるための移動部と、検出手段によって検出された湿度に基づいてミスト吹出手段からのミスト吹出量とミスト吸引手段によるミスト吸引量と移動部の移動速度とを制御する制御手段とから構成されている。
【0042】
図1は、保護シートの剥離からの時間に対する剥離境界部における表面電位の変化を概略したグラフである。
【0043】
図1のグラフに示したように、液晶パネルの表面にある偏光板から保護シートを剥離すると、剥離時の帯電現象により、偏光板表面における保護シートの剥離された部分と剥離されていない部分との境界部分である剥離境界部では、瞬間的に表面電位が大きく上昇し、その後徐々に降下する。この瞬間的な表面電位の上昇は、液晶パネルの電気回路において大量の電荷移動を導き、最悪な場合はTFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊などの電気回路破壊が起こる。
【0044】
本発明の保護シート剥離装置は、上記のような保護シート剥離時に瞬間的に起こる表面電位の上昇を防ぐことを可能にした装置であり、湿度の変化および剥離速度の変化に対する剥離帯電による表面電位上昇量の変化を利用したものである。
【0045】
すなわち、液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を上げることで瞬間的な表面電位上昇量を低く抑えることが可能となり、電気回路破壊を防ぐことができる。
【0046】
本発明では、液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出し、検出された湿度に基づいて液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けてミストを吹き出す際のミスト吹出量と液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にあるミストを吸引する際のミスト吸引量とを制御することにより、液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を制御する。これによって、結露を防ぎつつ液晶パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を高く保つことができ、偏光板表面における帯電圧を低く抑えることができる。
【0047】
したがって、液晶パネルの表面にある偏光板から保護シートを剥離する際に、液晶パネル表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0048】
さらに、検出された湿度に基づいて剥離部の移動速度を制御する。これにより、剥離部の移動速度を偏光板表面における表面電位の上昇を低く抑える程度に制御することができ、電気回路破壊を防ぐことができる。
【0049】
したがって、液晶パネルの表面にある偏光板から保護シートを剥離する際に、液晶パネル表面に対して処理を施すことなく、剥離速度などの剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0050】
よって、本発明の保護シート剥離装置は、保護シート剥離時のTFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊を防ぐことができる。
【0051】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態における保護シート剥離装置1の概略図であり、図3は、保護シート8の一端の固定方法の一例を示す概略図である。
【0052】
図2に示すように、本発明の第1の実施形態における保護シート剥離装置1に適用される液晶パネル2の表面にある偏光板7には、偏光板7を保護するために保護シート8が貼り付けられている。
【0053】
液晶パネル2の大きさとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、テレビサイズにするためのパネル分断工程後に得られる1辺が400mmを超えるサイズのものなどが挙げられる。
【0054】
保護シート8の材質としては、特に限定されるものはないが、傷に強い樹脂、たとえば、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂などで作られたラミネートフィルムが好ましい。また、保護シート8は、偏光板7と同一サイズで液晶パネルの4辺の端から5mm〜10mm程度小さいサイズであることが好ましい。
【0055】
保護シート剥離装置1において、液晶パネル2はテーブル5上に設置され、テーブル5に埋め込まれた真空差圧を利用して液晶パネル2を吸着する複数の吸盤により固定されている。
【0056】
液晶パネル2の固定手段は、上記の構成に限られるものではなく、液晶パネル2を固定できる形状のものであればよい。
【0057】
液晶パネル2の一端部には、保護シート8を剥離するための剥離部4が配置されており、剥離部4には保護シート8の一端を固定するための保護シート挟持部6が配置されている。
【0058】
保護シート8の一端の固定方法としては、特に限定されるものではないが、たとえば、図3に示すように偏光板7上に貼り付けられている保護シート8の少なくとも四隅のいずれか1箇所に所定寸法の剥離テープ20を貼り付けた後、所定角度に引き起こして突起部21を形成し、この突起部21を剥離部4の保護シート挟持部6で挟持する方法などがある。
【0059】
剥離部4は、剥離部4を移動させるためのレール3に固定され、剥離部4の移動速度を制御する剥離部駆動系13と接続されている。
【0060】
剥離部4がレール3上を保護シート挟持部6により挟持されている保護シート8の一端とは反対側にある一端に向かって移動することによって、保護シート8を偏光板7から剥離することができる。
【0061】
レール3の構造としては、たとえば、リニアモータやボールネジ駆動のリニアガイドステージなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0062】
液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺には、図示しないミスト生成機により生成されるミストを矢印11で示すミスト吹き出し方向、すなわち液晶パネルの保護シート8が貼り付けられている面の方向に吹き出すためのミスト吹出ノズル9が配置され、ミスト吹出ノズル9に対向する位置には、ミスト吸引ノズル10が配置されている。ミスト吸引ノズル10は、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺にあるミストを矢印12で示すミスト吸引方向、すなわちミスト吸引ノズル10の方向に吸引する。
【0063】
ミストは水から生成されミストの粒子の平均粒径は5μm以下であることが好ましい。ミストの粒子の平均粒径が5μm以下であると、ミストの粒子の表面張力によりミストの粒子が物に当たっても濡れにくい。そのため、液晶パネル2および保護シート剥離装置1を構成する各部での濡れを防ぐことができる。また、ミストに用いられる水としては、抵抗率が1MΩ・cm〜10MΩ・cm程度の純水であることがより好ましい。
【0064】
また、このような平均粒径のミストの粒子を生成するためには超音波を用いることが好ましい。超音波の周波数を高くすることによって、ミストの粒子を細かくすることができるため、ミストの粒子の平均粒径が小さいミストを容易に生成することができる。
【0065】
また、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の中央部周辺には、温度および湿度を検出するプローブである温度湿度検出部16が設けられ、この温度湿度検出部16は、検出された温度および湿度を測定するための温度湿度計15と接続されている。
【0066】
テーブル5の内部には、テーブル5の液晶パネル2が設置されている側の面の温度を検出するプローブであるテーブル温度検出部17が設けられ、このテーブル温度検出体17は、検出された温度を測定するためのテーブル温度計18と接続されている。
【0067】
さらに、テーブル5の内部には発熱体19が設けられ、この発熱体19は、発熱体19に電流を流して発熱させるための給電回路22と接続されている。
【0068】
発熱体19としては、電流の供給により発熱するものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、クロム線やニッケル・クロム線などの電熱線などが挙げられる。
【0069】
ミスト吹出ノズル9、ミスト吸引ノズル10、温度湿度計15、剥離部駆動系13、テーブル温度計18および給電回路22は制御回路14と接続されている。
【0070】
制御回路14には、温度湿度計15によって測定された液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の温度および湿度が入力される。
【0071】
制御回路14は入力された湿度に基づいて、ミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量とミスト吸引ノズル10によるミスト吸引量とを制御することにより、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度を以下に示すように制御する。
【0072】
図4は湿度と帯電圧との関係を示すグラフである。図4から判るように、湿度が高くなるほど帯電圧は小さくなり、湿度が60%を超えると湿度の上昇量に対する帯電圧の減少量は小さくなる。また、湿度が100%になると結露することから、本発明の第1の実施形態における保護シート剥離装置1では、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度を60%〜95%の範囲内に保つように制御する。これにより、結露を防ぎつつ偏光板7表面の帯電圧を抑えることができる。
【0073】
なお、湿度が高くなるほど帯電圧が小さくなることから上記の60%〜95%の範囲の中で、比較的湿度が高い値、たとえば90%を目標値として定め、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度がこの値に近づくように制御してもよい。
【0074】
また制御回路14は、入力された湿度に基づいて剥離部4の移動速度を以下に示すように算出する。
【0075】
保護シート8の剥離による帯電状況は、保護シート8や偏光板7の材質、また剥離速度や剥離環境などの様々な条件によって異なる。また、帯電圧も液晶パネル2のサイズや配線パターン、基板の種類などの条件によって異なる。
【0076】
したがって、保護シート8や偏光板7の材質、液晶パネル2のサイズなどが異なる様々な条件下において保護シート8の剥離試験を行い、それぞれの条件における湿度と最適な剥離速度との相関関係を求め、それらを蓄積したデータベースを作成しておく。そして、このデータベースに保護シート8や偏光板7の材質、液晶パネル2のサイズなどの条件の情報を入力することにより入力した条件に近い湿度と最適な剥離速度との相関関係を取得できるようにしておく。
【0077】
そして保護シート8の剥離開始前には、上記のデータベースから所望の条件に近い湿度と最適な剥離速度との相関関係を取得しておき、あらかじめ制御回路14に記憶させておく。
【0078】
なお、上記の相関関係は、条件が異なる場合は、その都度上記データベースから取得し直して制御回路14に記憶させる必要がある。
【0079】
制御回路14では、上記のように制御回路14に記憶させてある湿度と最適な剥離速度との相関関係に基づいて、制御回路14に入力された湿度に対応する剥離速度を求め、さらに、剥離部4の移動速度は剥離速度の2倍であるため、算出された剥離速度の値を2倍することにより剥離部4の移動速度を算出する。
【0080】
そして、上記のようにして算出された剥離部4の移動速度に基づいて剥離部駆動系13の動作を調整するために、剥離部4の移動速度を決定する。
【0081】
温度湿度検出部16による温度および湿度検出のサンプリングは、1秒毎に行うことが好ましい。
【0082】
剥離部4の移動速度の算出は、温度および湿度を検出する毎に行うことが好ましい。また、3回分の検出値の平均値に基づいて算出してもよい。
【0083】
上記のように移動部4の移動速度が制御されることによって、液晶パネル2の表面における表面電位の上昇を確実に防ぐことができる。さらに、帯電圧の許容範囲内で剥離速度を可能な限り速くすることができ、剥離時間を短縮することができる。
【0084】
なお、上記に述べた剥離部4の移動速度の算出方法では、あらかじめ制御回路14に記憶させておいた湿度と最適な剥離速度との相関関係に基づいて剥離部4の移動速度を算出したが、特にこれに限定されるものではなく、保護シート8を剥離しながら湿度と最適な剥離速度との相関関係を求め、その結果に基づいて剥離部4の移動速度を算出してもよい。
【0085】
さらに、制御回路14には、テーブル温度計18によって測定されたテーブル5の液晶パネル2が設置されている側の面の温度が入力される。
【0086】
制御回路14は入力された温度に基づいて、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の温度が25℃となるように、給電回路22から発熱体19に流す電気量を調整する。
【0087】
また、制御回路14は、温度湿度計15によって測定された温度に基づいて液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の温度を、図示しない剥離雰囲気を加熱するためのヒータにより25℃に保つように制御してもよい。
【0088】
湿度が同じであれば温度が高い方が飽和水蒸気量が大きくなり、空気中に存在する水分量が多くなるため、帯電圧が低くなる。したがって、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面およびその周辺の温度は高いほうが好ましい。さらには、ミストの気化熱により温度が低下するため25℃に保つように制御することが好ましい。
【0089】
次に、図5を用いて本発明の第1の実施形態における保護シート剥離装置1の動作について説明する。図5(a)は、保護シート8の剥離開始前の状態を示す概略図、図5(b)は保護シート8の剥離開始時の状態を表す概略図、図5(c)は、保護シート8の剥離途中の状態を表す概略図、図5(d)は保護シート8の剥離終了後の状態を表す概略図である。
【0090】
図5(a)に示すように、保護シート剥離装置1には、液晶パネル2がテーブル5上に設置されている。
【0091】
液晶パネル2に貼り付けられている保護シート8の剥離を開始するにあたって、まず液晶パネル2の表面にある偏光板7の保護シート8の一端が剥離部4の保護シート挟持部6に挟持され固定される。
【0092】
そして、ミスト吹出ノズル9から液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面に向けてミストが吹き出され、ミスト吸引ノズル10により液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺のミストが吸引される。
【0093】
次いで、温度湿度検出部16によって液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の温度および湿度が検出され、検出された温度および湿度は温度湿度計15によって測定される。
【0094】
測定された温度および湿度は制御回路14に入力され、制御回路14は入力された湿度に基づいて、ミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量およびミスト吸引ノズル10によるミスト吸引量を制御し、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度を60%〜95%に保つように制御する。
【0095】
また、テーブル温度検出部17によってテーブル5の液晶パネル2が設置されている側の面の温度が検出され、検出された温度はテーブル温度計18によって測定される。
【0096】
そして測定された温度は制御回路14に入力され、制御回路14は入力された温度に基づいて、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の温度が25℃となるように、給電回路22から発熱体19に流れる電気量を調整する。
【0097】
上記の温度湿度検出部16による温度および湿度の検出と温度湿度計15による測定、テーブル温度検出部17による温度の検出とテーブル温度計18による測定、ならびに制御回路14による温度および湿度の制御は、保護シート8の剥離が終了するまで続けられる。
【0098】
次いで図5(b)に示すように、剥離部4がレール3上を矢印Aの方向、すなわち液晶パネル2の保護シート挟持部6で固定されている保護シート8の一端とは反対側にある一端に向かって移動し始めると、保護シート8の剥離が開始される。
【0099】
剥離開始とともに、制御回路14は、あらかじめ記憶させてある湿度と最適な剥離速度との相関関係に基づいて、入力された湿度に対応する剥離部4の最適な移動速度を算出し、得られた算出結果に基づいて剥離部駆動系13の動作を調整するために、剥離部4の移動速度を決定する。
【0100】
そして、図5(c)に示すように、制御回路14および剥離部駆動系13によって液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の温度およびその周辺の湿度、剥離部4の移動速度が制御されつつ、液晶パネル2から保護シート8が全て剥離されるまで剥離部4は移動する。
【0101】
剥離が完了すると図5(d)に示すように、保護シート8が偏光板7から完全に剥離され、剥離部4の保護シート挟持部6の固定を外すことで、装置から保護シート8を排出できる。
【0102】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態における保護シート剥離装置31の概略図である。
本発明の第2の実施形態における保護シート剥離装置31において、第1の実施形態における保護シート剥離装置1と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0103】
図6に示すように、保護シート剥離装置31において、保護シート剥離装置1と異なる部分はミスト吹出ノズル9とミスト吸引ノズル10の設置部分であり、ミスト吹出ノズル9とミスト吸引ノズル10は、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺に設けられるようにノズル台32に互いに対向するように固定される。
【0104】
ノズル台32は、ノズル台32を移動させるためのレール3に固定され、ノズル台32の移動速度を制御するノズル台駆動系33と接続されており、ノズル台駆動系33は制御回路14と接続されている。
【0105】
制御回路14は、制御回路14に記憶させてある湿度と最適な剥離速度との相関関係に基づいて、制御回路14に入力された湿度に対応する剥離速度を算出する。
【0106】
ノズル台32の移動速度は上記剥離速度と同じであり、移動方向は保護シート8の剥離と同じ方向である。また、剥離速度は剥離部4の移動速度の2分の1である。
【0107】
そして、制御回路14は、上記のようにして算出された剥離速度に基づいてノズル台駆動系33の動作を調整するために、ノズル台32の移動速度を決定する。
【0108】
ノズル台32がレール3上を保護シート8の剥離と共に、保護シート8の剥離速度と同じ速度で保護シート8の剥離と同じ方向に移動することによって、常に剥離境界部付近の湿度をミスト吹出ノズル9およびミスト吸引ノズル10によって制御できるようになるため、確実に剥離境界部付近の結露を防ぎつつ湿度を高く保つことができ、剥離境界部付近における帯電圧を低く抑えることができる。
【0109】
なお、第2の実施形態において、温度湿度検出部16は第1の実施形態と同様に固定されていたが、特にこれに限定されるものではなく、たとえば、保護シート8の剥離と共に剥離速度と同じ速度で、保護シート8の剥離と同じ方向に移動する構成であってもよい。
【0110】
次に、図7を用いて本発明の第2の実施形態における保護シート剥離装置31の動作について説明する。図7(a)は保護シート8の剥離開始前の状態を表す概略図、図7(b)は保護シート8の剥離開始時の状態を表す概略図、図7(c)は、保護シート8の剥離途中の状態を表す概略図、図7(d)は保護シート8の剥離終了後の状態を表す概略図である。
【0111】
図7(a)に示すように、保護シート剥離装置31には、液晶パネル2がテーブル5上に設置されている。
【0112】
液晶パネル2に貼り付けられている保護シート8の剥離を開始するにあたって、まず液晶パネル2の表面にある偏光板7の保護シート8の一端が剥離部4の保護シート挟持部6に挟持され固定される。
【0113】
そして、ミスト吹出ノズル9から液晶パネル2のこれから保護シート8の剥離が開始される部分に向けてミストが吹き出され、ミスト吸引ノズル10により液晶パネル2のこれから保護シート8の剥離が開始される部分の周辺のミストが吸引される。
【0114】
次いで、温度湿度検出部16によって液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の温度および湿度が検出され、検出された温度および湿度は温度湿度計15によって測定される。
【0115】
測定された温度および湿度は制御回路14に入力され、制御回路14は入力された湿度に基づいて、ミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量および吸引ノズル10によるミスト吸引量を制御し、液晶パネル2のこれから保護シート8の剥離が開始される部分の周辺の湿度を60%〜95%に保つように制御する。
【0116】
また、テーブル温度検出部17によってテーブル5の液晶パネル2が設置されている側の面の温度が検出され、検出された温度はテーブル温度計18によって測定される。
【0117】
そして測定された温度は制御回路14に入力され、制御回路14は入力された温度に基づいて、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の温度が25℃となるように、給電回路22から発熱体19に流れる電気量を調整する。
【0118】
上記の温度湿度検出部16による温度および湿度の検出と温度湿度計15による測定、テーブル温度検出部17による温度の検出とテーブル温度計18による測定、ならびに制御回路14による温度および湿度の制御は、保護シート8の剥離が終了するまで続けられる。
【0119】
次いで図7(b)に示すように、剥離部4がレール3上を矢印Aの方向、すなわち液晶パネル2の保護シート挟持部6で固定されている保護シート8の一端とは反対側にある一端に向かって移動し始めると、保護シート8の剥離が開始される。
【0120】
剥離開始とともに、制御回路14は、あらかじめ記憶させてある湿度と最適な剥離速度との相関関係に基づいて、入力された湿度に対応する剥離部4の最適な移動速度を算出し、得られた算出結果に基づいて剥離部駆動系13の動作を調整するために、剥離部4の移動速度を決定する。
【0121】
そして、ノズル台32はレール3上を矢印Aの方向に保護シート8の剥離と共に移動し、それにともなって、ミスト吹出ノズル9およびミスト吸引ノズル10も移動し、剥離境界部付近の湿度を制御する。
【0122】
制御回路14は、あらかじめ記憶させてある湿度と最適な剥離速度との相関関係に基づいて、入力された湿度に対応するノズル台32の最適な移動速度を算出し、得られた算出結果に基づいてノズル台駆動系33の動作を調整するために、ノズル台32の移動速度を決定する。
【0123】
そして、図7(c)に示すように、制御回路14、剥離部駆動系13およびノズル台駆動系33によって液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の温度、剥離境界部付近の湿度、剥離部4およびノズル台32の移動速度が制御されつつ、偏光板7から保護シート8が全て剥離されるまで剥離部4は移動する。
【0124】
剥離が完了すると図7(d)に示すように、保護シート8が偏光板7から完全に剥離され、剥離部4の保護シート挟持部6の固定を外すことで、装置から保護シート8を排出できる。
【0125】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態における保護シート剥離装置41の概略図である。
本発明の第3の実施形態における保護シート剥離装置41において、第1および第2の実施形態における保護シート剥離装置1,31と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0126】
図8に示すように、保護シート剥離装置41において、保護シート剥離装置1,31と異なる構成は表面電位計42を設置した部分である。表面電位計42は、液晶パネル2から表面電位計42までの高さ方向の距離が一定になるように、液晶パネル2の保護シート8が剥離される側の面に対して反対側の面の中心に固定され、制御回路14と接続されている。
【0127】
上記のように表面電位計42が配置されることにより、剥離される保護シート8と干渉することなく偏光板7の表面電位を容易に検出することができる。また、表面電位の検出手段として表面電位計42を用いることにより、偏光板7の表面電位をより定量的に検出することができる。
【0128】
表面電位計42のプローブは、液晶パネル2の保護シート8が剥離される側の面に対して反対側の面の中心部に位置しており、液晶パネル2とは非接触で所定の距離だけ離れている。液晶パネル2と表面電位計42のプローブとの距離は測定器に依存しており、各測定器に適した距離であればよい。
【0129】
本発明の保護シート剥離装置41の構成では、表面電位計42は、保護シート8の剥離時において、液晶パネル2の剥離境界部のある側の面に対して反対側の面の中心に固定されているため、剥離境界部における実際の表面電位を検出することはできない。
【0130】
そこで表面電位計を用いて、剥離境界部の表面電位と表面電位計42が配置されている部分の表面電位とを検出し、それぞれの表面電位の相関関係を求めておき、あらかじめ制御回路14に記憶させておく。
【0131】
なお、上記の相関関係は、剥離条件が異なる場合は、その都度求め直し、制御回路14に記憶させる必要がある。
【0132】
制御回路14では、上記のように制御回路14に記憶させてある表面電位の相関関係に基づいて、表面電位計42の検出値を剥離境界部の表面電位の値に換算し、その換算値が許容電圧、たとえば2000Vを超えないように、すなわち許容電圧の値が換算値より大きくなるようにミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量とミスト吸引ノズル10によるミスト吸引量を制御し、さらに剥離部駆動系13の動作を調整するために、剥離部4の移動速度を決定している。
【0133】
上記のように、剥離境界部の表面電位と表面電位計42が配置されている部分の表面電位との表面電位の相関関係に基づいて、剥離境界部の表面電位を検出することによって、表面電位計42が液晶パネル2の保護シート8が剥離される側の面に対して反対側の面に配置されていても、剥離境界部の表面電位を検出することができる。
【0134】
また、上記の制御方法では、上記換算値が許容電圧を超えないように、ミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量とミスト吸引ノズル10によるミスト吸引量と剥離部4の移動速度とを制御しているが、たとえば、あらかじめ求めておいた所定の表面電位値に近づくように制御してもよい。
【0135】
上記の所定の表面電位値としては、剥離条件によって異なるため特に限定されるものではないが、1000V以下であることが好ましく、さらには500V以下であることが好ましい。
【0136】
なお、表面電位計42による表面電位の検出のサンプリング時間は、100msec以下であることが好ましく、さらには10msec以下であることが好ましい。
【0137】
上記の表面電位計42の検出値に基づく制御は、表面電位値が許容電圧を超えない程度の間隔で行えばよいが、たとえば、10回〜30回検出する毎に行うことが好ましい。また、5回〜10回分の検出値の平均値に基づいて制御してもよい。
【0138】
上記のように表面電位計42によって検出された表面電位に基づいてミスト吹出手段からのミスト吹出量とミスト吸引手段によるミスト吸引量と移動部の移動速度とが制御されることによって、偏光板7表面における電位上昇をより確実に防ぐことができる。さらに、湿度に基づく制御のみの場合と比較して、帯電圧の許容範囲内で剥離速度を可能な限り速くすることができ、より剥離時間を短縮することができる。
【0139】
なお、上記に述べた制御方法では、あらかじめ制御回路14に記憶させておいた表面電位の相関関係に基づいて、ミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量とミスト吸引ノズル10によるミスト吸引量と剥離部4の移動速度とを制御しているが、特にこれに限定されるものではなく、保護シート8を剥離しながら表面電位の相関関係を求め、その結果に基づいて制御してもよい。
【0140】
また、第3の実施形態において、表面電位計42は固定されていたが、特にこれに限定されるものではなく、たとえば、表面電位計42をレールなどに固定することにより保護シート8の剥離と共に、保護シート8の剥離速度と同じ速度で保護シート8の剥離と同じ方向に表面電位計42を移動させながら表面電位を測定する構成であってもよい。
【0141】
次に、図9を用いて本発明の第3の実施形態における保護シート剥離装置41の動作について説明する。図9(a)は、保護シート8の剥離開始前の状態を示す概略図、図9(b)は保護シート8の剥離開始時の状態を表す概略図、図9(c)は、保護シート8の剥離途中の状態を表す概略図、図9(d)は保護シート8の剥離終了後の状態を表す概略図である。
【0142】
図9(a)に示すように、保護シート剥離装置41には、液晶パネル2がテーブル5上に設置されている。
【0143】
液晶パネル2に貼り付けられている保護シート8の剥離を開始するにあたって、まず液晶パネル2の表面にある偏光板7の保護シート8の一端が剥離部4の保護シート挟持部6に挟持され固定される。
【0144】
そして、ミスト吹出ノズル9から液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面に向けてミストが吹き出され、ミスト吸引ノズル10により液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺のミストが吸引される。
【0145】
次いで、温度湿度検出部16によって液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の温度および湿度が検出され、検出された温度および湿度は温度湿度計15によって測定される。
【0146】
測定された温度および湿度は制御回路14に入力され、制御回路14は入力された湿度に基づいて、ミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量およびミスト吸引ノズル10によるミスト吸引量を制御し、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度を60%〜95%に保つように制御する。
【0147】
また、テーブル温度検出部17によってテーブル5の液晶パネル2が設置されている側の面の温度が検出され、検出された温度はテーブル温度計18によって測定される。
【0148】
そして測定された温度は制御回路14に入力され、制御回路14は入力された温度に基づいて、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の温度が25℃となるように、給電回路22から発熱体19に流れる電気量を調整する。
【0149】
上記の温度湿度検出部16による温度および湿度の検出と温度湿度計15による測定、テーブル温度検出部17による温度の検出とテーブル温度計18による測定、ならびに制御回路14による温度の制御は、保護シート8の剥離が終了するまで続けられる。
【0150】
次いで図9(b)に示すように、剥離部4がレール3上を矢印Aの方向、すなわち液晶パネル2の保護シート挟持部6で固定されている保護シート8の一端とは反対側にある一端に向かって移動し始めると保護シート8の剥離が開始され、表面電位計42は剥離境界部の表面電位を検出し始める。
【0151】
剥離開始とともに、制御回路14には、測定された湿度および検出された表面電位が入力され、制御回路14は入力された情報のうち少なくともどちらか一方の情報に基づいて、剥離部4の最適な移動速度を算出し、得られた算出結果に基づいて剥離部駆動系13の動作を調整するために、剥離部4の移動速度を決定する。
【0152】
また、制御回路14は上記と同様に入力された情報のうち少なくともどちらか一方の情報に基づいて、最適なミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量および吸引ノズル10によるミスト吸引量を算出し、得られた算出結果に基づいて液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度を制御する。
【0153】
そして、図9(c)に示すように、制御回路14および剥離部駆動系13によって液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の温度およびその周辺の湿度、剥離部4の移動速度が制御されつつ、液晶パネル2から保護シート8が全て剥離されるまで剥離部4は移動する。
【0154】
剥離が完了すると図9(d)に示すように、保護シート8が偏光板7から完全に剥離され、剥離部4の保護シート挟持部6の固定を外すことで、装置から保護シート8を排出できる。
【0155】
なお、上記第1〜第3の実施形態における液晶パネル2は矩形であるが、本発明の保護シート剥離装置が対象とする液晶パネルの形状は特に矩形に限定されるものではない。
【0156】
また、剥離部4およびノズル台32は液晶パネル2の長手方向に移動しているが、移動方向はこれに限定するものではなく、例えば液晶パネル2の対角方向へ移動してもよい。
【0157】
また、剥離部4は、特に上記第1〜第3の実施形態に示した構成に限定されるものではなく、たとえば、表面に偏光板7と保護シート8との粘着力よりも大きい粘着力を有している回転ローラなどを用いてもよい。
【0158】
回転ローラを用いる場合、回転ローラは、液晶パネル2の上方に液晶パネル2の表面と回転軸とが平行になるように配置され、さらに回転ローラの下端を液晶パネル2の表面と接触する位置まで下降させることを可能にする、たとえばエアシリンダーや電動モーターシリンダーなどの昇降装置を設置する。
【0159】
そして、リニアガイドステージやレールなどにより両支持になるように固定し、回転ローラが液晶パネル2の表面と平行な一方方向に移動できるようにする。
【0160】
上記のような構成の回転ローラが移動しながら保護シート8を巻き取ることにより偏光板7から保護シート8を安定して剥離することができる。
【0161】
以上に説明したように、本発明の保護シート剥離装置1,31,41は、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の温度および湿度を検出する温度湿度検出部16および温度湿度計15と、ミストを生成し、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面に向けてミストを吹き出すミスト吹出ノズル9と、液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺にあるミストを吸引するミスト吸引ノズル10と、保護シート8を偏光板7から剥離する剥離部4と、剥離部4と固定され、剥離部4を移動させるためのレール3と、検出された湿度に基づいてミスト吹出ノズル9からのミスト吹出量とミスト吸引ノズル10によるミスト吸引量と移動部4の移動速度とを制御する制御回路14とから構成されていることによって、検出された湿度に基づいてミスト吹出量とミスト吸引量とを制御できるため、結露を防ぎつつ液晶パネル2の保護シート8が貼り付けられている面の周辺の湿度を高く保つことができ、偏光板7表面における帯電圧を低く抑えることができる。
【0162】
そのため、偏光板7から保護シート8を剥離する際に、液晶パネル2の表面に対して処理を施すことなく、温度や湿度などの剥離環境に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0163】
また、検出された湿度に基づいて剥離部4の移動速度を制御しながら偏光板7から保護シート8を剥離できるため、偏光板7表面における表面電位の上昇を防ぐことができる。
【0164】
そのため、偏光板7から保護シート8を剥離する際に、液晶パネル2の表面に対して処理を施すことなく、剥離速度などの剥離条件に影響されない安定した表面電位を保つことができる。
【0165】
したがって、偏光板7から保護シート8を剥離する際に、TFT破壊、絶縁膜破壊およびドライバーIC破壊を防ぐことができる。
【0166】
なお、上記の第1〜第3の実施形態において、本発明の保護シート剥離装置は液晶パネル2のみを対象としたが、これに限られることなく、保護シート8を剥離する際に生じる表面電位の上昇が問題となる他のパネルにおいても本発明の保護シート剥離装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】保護シートの剥離からの時間に対する剥離境界部における表面電位の変化を概略したグラフである。
【図2】本発明の第1の実施形態における保護シート剥離装置の概略図である。
【図3】保護シートの一端の固定方法の一例を示す概略図である。
【図4】湿度と帯電圧との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態における保護シート剥離装置の動作について説明する工程図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における保護シート剥離装置の概略図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における保護シート剥離装置の動作について説明する工程図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における保護シート剥離装置の概略図である。
【図9】本発明の第3の実施形態における保護シート剥離装置の動作について説明する工程図である。
【図10】液晶パネルの構造を表す断面図である。
【符号の説明】
【0168】
1,31,41 保護シート剥離装置
2 液晶パネル
3 レール
4 剥離部
5 テーブル
6 保護シート挟持部
7 偏光板
8 保護シート
9 ミスト吹出ノズル
10 ミスト吸引ノズル
11 ミスト吹き出し方向
12 ミスト吸引方向
13 剥離部駆動系
14 制御回路
15 温度湿度計
16 温度湿度検出部
17 テーブル温度検出部
18 テーブル温度計
19 発熱体
20 剥離テープ
21 突起部
22 給電回路
32 ノズル台
33 ノズル台駆動系
42 表面電位計
100 液晶パネル
101,102 光透過基板
103,104 電極
105 スペーサー
106 液晶材料
107,108 偏光板
110 カラーフィルター
111,112 保護フィルム
113 シール
A 剥離部4の移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護シートを剥離する剥離装置であって、
前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出する検出手段と、
ミストを生成し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けて前記ミストを吹き出すミスト吹出手段と、
前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にある前記ミストを吸引するミスト吸引手段と、
前記保護シートを前記パネルから剥離する剥離部と、
前記剥離部と固定され、前記剥離部を移動させるための移動部と、
前記検出手段によって検出された湿度に基づいて前記ミスト吹出手段からのミスト吹出量と前記ミスト吸引手段によるミスト吸引量と前記移動部の移動速度とを制御する制御手段とを具備することを特徴とする保護シート剥離装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を60%〜95%に制御することを特徴とする請求項1に記載の保護シート剥離装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記移動部の移動速度を湿度と最適な剥離速度との関係に基づいて制御することを特徴とする請求項1または2に記載の保護シート剥離装置。
【請求項4】
前記ミスト吹出手段は、前記ミストを水から生成し、前記ミストの粒子の平均粒径を5μm以下にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の保護シート剥離装置。
【請求項5】
前記ミスト吹出手段は、前記ミストを超音波によって生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の保護シート剥離装置。
【請求項6】
前記ミスト吹出手段および前記ミスト吸引手段が、前記保護シートの剥離と共に、前記保護シートの剥離速度と同じ速度で前記保護シートの剥離と同じ方向に移動することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の保護シート剥離装置。
【請求項7】
前記パネルの表面電位を検出する帯電検出部を具備し、前記帯電検出部が、前記パネルの保護シートが剥離される側の面に対して反対側の面に配置され、検出した表面電位に基づいて前記ミスト吹出手段からのミスト吹出量と前記ミスト吸引手段によるミスト吸引量と前記移動部の移動速度とを制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の保護シート剥離装置。
【請求項8】
前記帯電検出部が、前記剥離境界部の表面電位と前記帯電検出部が配置されている部分の表面電位との相関関係に基づいて、前記剥離境界部の表面電位を検出することを特徴とする請求項7に記載の保護シート剥離装置。
【請求項9】
前記帯電検出部が表面電位計であることを特徴とする請求項7または8に記載の保護シート剥離装置。
【請求項10】
前記パネルが液晶パネルであって、前記保護シートが液晶パネルの表面にある偏光板に貼り付けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の保護シート剥離装置。
【請求項11】
パネルから、前記パネルを保護するために貼り付けられている保護シートを剥離する剥離方法であって、剥離部が移動しながら前記パネルから前記保護シートを剥離し、ミストを生成し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面に向けて前記ミストを吹き出し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺にある前記ミストを吸引し、前記パネルの保護シートが貼り付けられている面の周辺の湿度を検出し、検出した湿度に基づいてミスト吹出量とミスト吸引量と前記剥離部の移動速度とを制御することを特徴とする保護シート剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−83418(P2008−83418A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263588(P2006−263588)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】