説明

保護ネットを活用した多目的植生用地及びその植生工法

【課題】 本発明は芝生の植生ができ且つ自動車による不陸が極力生じない多目的植生用地を提供する。
【解決手段】第1客土層(4)と、該第1客土層(4)の上に敷設された保護ネット(3)と、該保護ネット(3)の上に形成された第2客土層(4)と、該第2客土層(4)の上に敷設された植生材料(5)とよりなり、該植生材料(5)の上が覆土されていることを構成とする多目的植生用地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多目的植生用地に関し、更に詳しくは、芝生の植生ができ且つ自動車による不陸が極力生じない多目的植生用地に関する。
またその多目的植生用地の植生工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一定の期間は駐車場として使用され、それ以外の期間は遊び用の芝生広場等として利用されるいわゆる多目的な植生用地がある。
通常このような用地においては、遊び用のために主に芝生が植生されている。
このような芝生を植生させる方法としては、植生用マットを使った方法が採用されている(特許文献参照)。
この方法は植生マットの上に更にジオグリッドで覆うものであり、護岸の緑化には効果的である。
護岸以外の植生用地としては、用地の客土表面に多数の孔目を有する合成樹脂性の芝生保護材を敷設したものがある。
芝生は芝生保護材によって保護され植生が促されるため利用価値は高い。
【0003】
しかし、一方では、遊び用地として使用する場合、芝生保護材の突起物が座り心地を悪くし、或いは歩行者がつまずく原因となる欠点がある。
また自動車の駐車場として使用する場合は、車が芝生保護材の上に乗り入れると車輪圧によって下の客土が窪んで不陸となったり、或いは芝生保護材が割れたりする。
そのため、後から遊び用の用地として利用する場合、窪み部があちこちに生じたり、また芝生保護材の割れ片が人体に刺さったりして危険でもある。
またエアレーション等の維持管理作業が必ずしも容易ではない等の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−278255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の問題点を解決すべく開発されたものである。
すなわち本発明は芝生の植生ができ且つ自動車による不陸が極力生じない多目的植生用地を提供すること、及びその多目的植生用地の植生工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以上のような課題背景をもとに鋭意研究を重ねた結果、保護ネットの上に一定の層厚みを有する客土層を形成することにより、上記の課題を解決できることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0007】
すなわち本発明は、(1)、第1客土層と、該第1客土層の上に敷設された保護ネットと、該保護ネットの上に形成された第2客土層と、該第2客土層の上に敷設された植生材料とよりなり、該植生材料の上が覆土されている多目的植生用地に存する。
【0008】
また、本発明は、(2)、上記第2客土層の層厚みを3〜8cmとした上記(1)記載の多目的植生用地に存する。
【0009】
また、本発明は、(3)、上記各客土層の硬度が15〜25mmである上記(1)記載の多目的植生用地に存する。
【0010】
また、本発明は、(4)、路床の上にフィルター層が形成され、該フィルター層の上に第1客土層が形成されている上記(1)記載の多目的植生用地に存する。
【0011】
また、本発明は、(5)、植生材料が、芝種子、芝茎、又は張芝である上記(1)記載の多目的植生用地に存する。
【0012】
また、本発明は、(6)、上記(1)に記載の多目的植生用地に使用される保護ネットに存する。
【0013】
また、本発明は、(7)、下記1)〜5)の工程よりなる植生工法に存する。
1)路床の上に第1客土層を形成する第1客土層形成工程、
2)該第1客土層の上に保護ネットを敷設する保護ネット敷設工程、
3)該保護ネットの上に第2客土層を形成する第2客土層形成工程、
4)該第2客土層の上に植生材料を敷設する植生材料敷設工程
5)該植生材料の上を覆土する覆土工程、
【0014】
また、本発明は、(8)、路床の上にフィルター層を形成し、その後、第1客土層を形成する上記(7)記載の植生工法に存する。
【0015】
本発明の目的に添ったものであれば上記(1)から(8)の発明を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の多目的植生用地は、第1客土層と、該第1客土層の上に敷設された保護ネットと、該保護ネットの上に形成された第2客土層と、該第2客土層の上に敷設された植生材料とよりなり、該保護ネットの上に一定層厚の第2客土層が形成されているので、第2客土層の上に車輪等により押圧力や踏圧が加わっても、保護ネットの下の第1客土層は硬くならない。
【0017】
さらに、上記各客土層の硬度が15〜25mmとすると芝等の生育に支障とならない。
【0018】
また 本発明の多目的植生用地の植生工法は、路床の上に第1客土層を形成する第1客土層形成工程、該第1客土層の上に保護ネットを敷設する保護ネット敷設工程、該保護ネットの上に第2客土層を形成する第2客土層形成工程、該第2客土層の上に植生材料を敷設する植生材料敷設工程、該植生材料の上を覆土する覆土工程の各工程よりなるので、効率良く多目的植生用地の施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、多目的植生用地を説明する断面図である。
【図2】図2は、多目的植生用地の別の例を説明する断面図である。
【図3】図3は、多目的植生用地の植生工法を説明するブロック図である。
【図4】図4は、3ケースの実験用地を示す断面図である。
【図5】図5は、轍深さと走行回数との関係を示す表である。
【図6】図6は、客土増加硬度と走行回数の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の多目的植生用地は、芝生の植生ができ且つ自動車による不陸が生じない多目的植生用地である。
多目的に使用されるため、遊びの広場として使用する場合は芝の育成が十分可能であることが重要である。
また、駐車場として使用する場合は、自動車を乗り入れた場合は、車輪荷重によって地面に圧力が加わるが、轍が目立つような不陸になってはならない。
このような2つの条件を満足するために、本発明では敢えて保護ネットを境として上下に2つの客土層を設ける構成とした。
そして上の客土層上に植生材料を敷設する用地構造とした。
【0022】
図1は、その用地構造を断面で示した図である。
すなわち、図1に示すように、本発明の多目的植生用地においては、まず路床1の上に一定厚みを有する第1客土層2が形成されている。
そして該第1客土層の上には保護ネット3が敷設されている。
ここで第1客土層2としての層厚は、10〜20cmが好ましく採用される。
保護ネット3の上には、また一定厚みの第2客土層4が形成されている。
第2客土層4としての層厚は、3〜8cmが好ましく採用される。
【0023】
第1客土層2、及び第2客土層4は転圧ローラを使った転圧効果により硬度は、15〜20mm(硬度は山中式土壌硬度計による測定値)である。
なお、硬度が26mm以上になると硬すぎて根が育たない。
【0024】
第2客土層4の上には植生材料5が敷設されている。
このように保護ネット3は上下の客土層の境にあり、客土層中に敷設されているので、保護ネット3の下に位置する第1客土層2の不陸や客土自体の固結が防止される。
【0025】
ここで保護ネット3は、例えば、ジオグリッドを使用する。
ジオグリッドは、樹脂製の直交する2方向の部材を格子状にし、交点で結合した格子状構造を有するネットである。
格子状の目合いは、3〜6cmが好ましく採用される。
【0026】
本発明の多目的植生用地においては、車の車輪荷重が作用すると、ジオグリッドの有する摩擦力と引っ張り力により抵抗が発生する。
ジオグリッドより下にある第1客土層2については、ジオグリッドにより圧縮応力が軽減されるため、客土自体の固結が防止される。
また第1客土層2の下方への変位は極めて少なく限られたものとなる(実験例参照)。
【0027】
因みに、ジオグリッドを客土間に配置しないで用地表面に配置した従来の用地構造の場合は、車の車輪荷重が作用すると、客土層が大きく圧縮されいわゆる土くさびが形成される。
この現象が生じると土くさびが周囲に波及し客土が大きく窪む。
【0028】
ところでジオグリッドを敷設する際は、一定広さを有するシート状片のジオグリッドを均一な平面状に多数枚連結していくことで施工面積を広める。
その場合、孔目が小さくならないようにジオグリッド同士の端部を重ねないで突き合わせとすることが好ましい。
そのためジオグリッドの連結には結束具を使用する。
【0029】
一方、先述した植生材料5としては、芝をはじめ、種々の植物となる出発材料がある。
芝の例でいうと、芝種子、芝茎、張り芝等があり、後ほど、述べるように、それらを敷設する作業が行われる。
芝の横に伸びる「ほふく茎」を付着したシートを植生材料5として採用することも可能である。
その1つとして、例えばZN工法で使う植生シートが利用される。
これは「ほふく茎」を2枚の綿ウエブで挟んだシートであり、根群の発達が早い。
上記のような植生材料5の上には、1cm程度、覆土6が施され、その覆土の上から散水される。
【0030】
(変形例)
図2は、多目的植生用地の別の例を説明する断面図である。
多目的植生用地は、路床1の上に第1客土層2が形成されているがフィルター層を設けてもよい。
図のように路床1の上に、まず、フィルター層(透水層ともいう)1Aが形成された後、第1客土層2が形成される構造である。
このような構造の場合、客土層からの排水が極めて効率良く行われる。
【0031】
(多目的植生用地の植生工法)
上述したような多目的植生用地を構築するための植生工法を次に述べる。
図3は、この植生工法における工程を説明するブロック図である。
【0032】
(第1客土層形成工程)
まず、対象となる路床1を整地する。次に整地された路床1の上に第1客土層2を形成する。
この場合、第1客土層2の厚みは、10〜20cmが好ましく採用される。
客土としては土壌改良土を使うが、転圧ローラにより十分転圧する。
ここで第1客土層2を形成する前に、その整地された路床1の上にフィルター層(透水層ともいう)1Aを設ける工程を入れることもある。
水捌けの悪い場所によってはこの方法が採用される。
フィルター層1Aとしては、砂を使用し、砂敷均しを行う。
フィルター層1Aは、通常、5〜10cmの層厚とする。
【0033】
(保護ネット敷設工程)
次に第1客土層2の上に保護ネット3を敷設する。
保護ネット3としては、例えばジオグリッドを使用する。
これはプラスチック製の格子部材で格子状の目合いは、3〜6cmが好ましく採用される。
【0034】
(第2客土層形成工程)
次に保護ネット3の上に第2客土層4を形成する。
この場合、第2客土層4の層厚は3〜8cmが好ましい。
客土としては、第1客土層2と同じように土壌改良土を使うが、転圧ローラにより十分転圧する。
【0035】
(植生材料敷設工程)
次に第2客土層4の上に植生材料5を形成する。
この場合、植生材料5としては、芝の例でいうと、先述したような、芝種子、芝茎、張り芝等があり、例えば、芝種子を使う場合は、第2客土層4の上に播種作業が行われ芝種子が敷設される。
また、芝苗を使う場合は、第2客土層4の上に、芝苗が植え付けられ芝種子が敷設される。
また、張芝の場合は、第2客土層4の上に張芝が行われて、張芝が敷設される。
「ほふく茎」を付着したシートを植生材料5とした場合は、その1つとして、例えばZN工法で使う植生シートが利用されることも可能である。
これは「ほふく茎」を2枚の綿ウエブで挟んだシートであり、根群の発達が早い。
【0036】
(覆土工程)
次に植生材料の上に目土が散布される。
1cm程度覆土されたら、その覆土の上から散水する。
【0037】
(実験例1)
多目的植生用地(8400m)の一部領域を使って次の3ケース(図4参照)について実験を行った。
ケース1)フィルター層1Aの上に客土層2A(20cm)を設けた。
ケース2)客土層2A(20cm)の表面にジオグリッド3を設けた。
ケース3)第1客土層2(15cm)と第2客土層4(5cm)の間にジオグリッド3を敷設した(本発明に相当)。
【0038】
上記各ケースについて乗用車による走行実験を行い、「轍の深さ」、及び「表面硬度(水散布後)」を測定した。
なお、表面硬度は山中式土壌硬度計を使って測定した。
図5、図6はその結果を示す。
【0039】
「轍の深さ」は、ケース1やケース2に比べ、ケース3(本発明に相当)の場合には、半分以下に低減されることが分かる。
車輪圧により、ある程度、第2客土層が圧縮されるものの、ジオグリッドの支持力によって、第1客土層は、圧縮応力が低減され、固結防止されることが明らかである。
よって、ケース3(本発明に相当)が一番、駐車場として優れていることが分かる。
【0040】
(実験例2)
多目的植生用地(8400m)一部領域を使って次の3ケース(図示しない)について実験を行った。
ケース4)フィルター層の上に客土層(20cm)を設け、その上に植生材料を敷設し、1cm程度の覆土を行った。
ケース5)客土層(20cm)の表面にジオグリッドを設け、その上に植生材料を敷設し、1cm程度の覆土を行った。
ケース6)第1客土層(15cm)と第2客土層(5cm)の間にジオグリッドを敷設し、第2客土層の上に植生材料を敷設し、1cm程度の覆土を行った。
【0041】
上記各ケースについて多目的植生用地を5ヶ月放置し、芝が一定長さ育成した後、乗用車の乗り入れによる走行実験を行った。
走行実験後、掘り起こして芝根の状態を調べたところ、ケース4、及びケース5は、芝根が潰れている状態のところが多い。
しかし、ケース6では、第1客土層の芝根は殆ど潰れていない。
このような現象は、第2客土層が圧縮されても第1客土層にはその力が及びにくくなった結果、第1客土層の圧力応力が低減され、客土の固結が防止されたことが原因であることが理解される。
よって、ケース6(本発明に相当)が一番、芝根の育成に適していることが分かる。
またケース6の場合には、芝根への酸素供給のためのエアレーション作業が極めて容易に行えた。
【0042】
遊びの広場として使用する場合は芝の育成が十分可能であること、駐車場として使用する場合は自動車の車輪が乗った場合、轍が目立つような不陸が防止されることの2つの条件が満足されることが、多目的植生用地の目的であるが、この条件を満足できるのは、実験例1及び実験例2の結果からケース6(本発明に相当)であることが分かる。
以上、本発明をその一実施形態を例に説明したが、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、植生材料は、客土層の上の一定領域に植物の出発材料となるものを付与できるものであれば、種々のものが使用可能である。
また、保護シートは、車輪荷重を受け止めるに十分な強度を有するものであれば、種々のものが使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は多目的植生用地に関するもので、芝生の植生ができ且つ自動車による不陸が極力生じない利点を有する。
したがって、この利点を利用する限り、一定の期間に供する駐車場、期間限定の遊び場、屋外イベント会場、運動場、芝生広場等の種々の場所に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…路床
1A…フィルター層(透水層)
2…第1客土層
2A…客土層
3…保護ネット(ジオグリッド)
4…第2客土層
5…植生材料
6…覆土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1客土層と、該第1客土層の上に敷設された保護ネットと、該保護ネットの上に形成された第2客土層と、該第2客土層の上に敷設された植生材料とよりなり、該植生材料の上が覆土されていることを特徴とする多目的植生用地。
【請求項2】
上記第2客土層の層厚みを3〜8cmとしたことを特徴とする請求項1記載の多目的植生用地。
【請求項3】
上記各客土層の硬度が15〜25mm(土壌硬度計による)であることを特徴とする請求項1記載の多目的植生用地。
【請求項4】
路床の上にフィルター層が形成され、該フィルター層の上に第1客土層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の多目的植生用地。
【請求項5】
植生材料が、芝種子、芝茎、又は張芝であることを特徴とする請求項1記載の多目的植生用地。
【請求項6】
請求項1に記載の多目的植生用地に使用されることを特徴とする保護ネット。
【請求項7】
下記1)〜5)の工程よりなる植生工法。
1)路床の上に第1客土層を形成する第1客土層形成工程、
2)該第1客土層の上に保護ネットを敷設する保護ネット敷設工程、
3)該保護ネットの上に第2客土層を形成する第2客土層形成工程、
4)該第2客土層の上に植生材料を敷設する植生材料敷設工程、
5)該植生材料の上を覆土する覆土工程
【請求項8】
路床の上にフィルター層を形成し、その後、第1客土層を形成することを特徴とする請求項7記載の植生工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−78347(P2011−78347A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232874(P2009−232874)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(501438153)国土交通省四国地方整備局長 (5)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】