説明

保護フィルム用組成物、保護フィルム、および、基材の保護方法

【課題】基材を確実に保護することができ、基材に優れた防汚性、防水性および保護性を付与し、さらには、優れた剥離性を有する保護フィルムを形成することのできる保護フィルム用組成物、保護フィルムおよび基材の保護方法を提供すること。
【解決手段】水酸基価が60mgKOH/g以下であり、かつ、酸価が5mgKOH/g以下であるフルオロオレフィン共重合体樹脂と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、炭化水素系溶剤とを配合して、保護フィルム用組成物を調製する。これを、基材に塗布することにより、保護フィルムを形成する。その後、一定期間経過後に、保護フィルム用組成物を剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルム用組成物、保護フィルム、および、基材の保護方法、詳しくは、基材の保護に用いられる保護フィルム用組成物、保護フィルム、および、基材の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディーまたはバンパーの塗装面などには、鳥の糞害、虫の付着、雨水による劣化、小石による小傷を防止するために、ストリッパブルペイント組成物を塗布することにより、塗膜を形成し、これにより、塗装面を被覆および保護することが知られている。なお、塗膜は、塗装面を一定期間保護した後に剥離している。
そのようなストリッパブルペイント組成物として、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、可塑剤、レシチンおよびイソプロピルアルコールを含有する易剥離性塗料組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−59310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の易剥離性塗料組成物では、塗装面における塗膜を溶解させるおそれがある。また、塗装面がラッカー塗料などにより被覆および補修されている場合には、ラッカー塗料の被膜を溶解させるおそれもある。
また、このようなストリッパブルペイント組成物から得られる塗膜には、塗装面において、汚れに対する防汚性、雨水に対する防水性、小石に対する保護性などが要求されるところ、特許文献1の易剥離性塗料組成物から得られる塗膜では、これらの性能が十分でない。
【0004】
さらにまた、このような塗膜には、一定期間経過後に容易に引き剥がされる、優れた剥離性が要求されるところ、特許文献1の易剥離性塗料組成物から得られる塗膜では、剥離性が十分でない。
本発明の目的は、基材を確実に保護することができ、基材に優れた防汚性、防水性および保護性を付与し、さらには、優れた剥離性を有する保護フィルムを形成することのできる保護フィルム用組成物、保護フィルム、および、基材の保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を解決するために、本発明の保護フィルム用組成物は、水酸基価が60mgKOH/g以下であり、かつ、酸価が5mgKOH/g以下であるフルオロオレフィン共重合体樹脂と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、炭化水素系溶剤とを含有することを特徴としている。
また、本発明の保護フィルム用組成物では、前記フルオロオレフィン共重合体樹脂が下記平均組成式(1)で示されることが好適である。
【0006】
【化1】

【0007】
(平均組成式(1)中、Xは、ハロゲンまたはパーフルオロアルキル基、R1は、アルキレン基またはシクロアルキレン基、R2は、アルキレン基またはアリレン基、R3は、アルキル基、フッ素化アルキル基またはシクロアルキル基、R4は、アルキレン基またはシクロアルキレン基を示す。(a+b+c)は、0.25〜0.75を示す。)
また、本発明の保護フィルム用組成物では、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが下記一般式(2)で示されることが好適である。
【0008】
【化2】

【0009】
(一般式(2)中、R5は、炭素数3〜20の1価の炭化水素基を示す。nは、4〜52の整数を示す。)
また、本発明の保護フィルム用組成物では、前記フルオロオレフィン共重合体樹脂および前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合割合は、前記フルオロオレフィン共重合体樹脂および前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの総量100重量部に対して、前記フルオロオレフィン共重合体樹脂が80〜95重量部であり、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが5〜20重量部であることが好適である。
【0010】
また、本発明の保護フィルムは、上記した保護フィルム用組成物を基材に塗布することにより得られることが好適である。
また、本発明の保護フィルムでは、前記基材が、車両の塗装面、車両の樹脂面、車両の補修面、車両の金属面、車両のガラス、屋外固定設置物および屋外固定構造物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
【0011】
また、本発明の基材の保護方法は、上記した保護フィルム用組成物を基材に塗布することにより、基材に保護フィルムを形成する工程と、前記保護フィルムを剥離する工程とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の保護フィルム用組成物を基材に塗布すれば、保護フィルムを形成して、基材を確実に保護することができる。さらに、特別な装置や煩雑な操作を必要とすることなく、簡便な作業で保護フィルム用組成物を塗布することにより、外観に優れ、かつ、透明で均一な保護フィルムを形成することができる。
その結果、この保護フィルムは、基材に優れた防汚性、防水性および保護性を付与することができる。さらに、この保護フィルムは、基材からの優れた剥離性を有している。
【0013】
そのため、本発明の保護フィルム用組成物を基材に塗布して保護フィルムを形成し、次いで、一定期間が経過した後、保護フィルムを剥離すれば、保護したい期間のみを保護し、基材の保護が終了すれば、保護フィルムを除去できる。その結果、保護したい期間のみに、基材を簡便に保護することができる。さらに、保護フィルムの剥離では、連続的に容易に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の保護フィルム用組成物は、フルオロオレフィン共重合体樹脂と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、炭化水素系溶剤とを含有している。
本発明において、フルオロオレフィン共重合体樹脂は、保護フィルム用組成物に主に含有される樹脂であって、フルオロオレフィンと、ビニルエーテルとの共重合体樹脂であって、より具体的には、下記平均組成式(1)で示される。
【0015】
【化3】

【0016】
(平均組成式(1)中、Xは、ハロゲンまたはパーフルオロアルキル基、R1は、アルキレン基またはシクロアルキレン基、R2は、アルキレン基またはアリレン基、R3は、アルキル基、フッ素化アルキル基またはシクロアルキル基、R4は、アルキレン基またはシクロアルキレン基を示す。(a+b+c)は、0.25〜0.75を示す。)
平均組成式(1)において、Xで示されるハロゲンとしては、例えば、クロロ、フルオロ、ブロマイド、ヨードなど挙げられる。好ましくは、ハロゲンとして、クロロ、フルオロが挙げられる。
【0017】
Xで示されるパーフルオロアルキル基は、例えば、その炭素数が、1〜4、好ましくは、1〜3である。このようなパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロiso−プロピル、パーフルオロブチルなどが挙げられる。
1で示されるアルキレン基としては、例えば、直鎖または分岐鎖のアルキレン基であって、その炭素数は、例えば、1〜9、好ましくは、3〜9である。アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、iso−プロピレン、ブチレン、iso−ブチレン、sec−ブチレン、ヘキシレン、2−エチルヘキシレン、ノニレンなどが挙げられる。
【0018】
1で示されるシクロアルキレン基は、その炭素数が、例えば、3〜8、好ましくは、4〜6である。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレンなどが挙げられる。好ましくは、シクロアルキレン基として、シクロヘキシレンが挙げられる。
2で示されるアルキレン基としては、上記したR1で示されるアルキレン基と同一のものが挙げられる。
【0019】
2で示されるアリレン基は、その炭素数が、例えば、6〜10であって、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、ナフチレンなどが挙げられる。好ましくは、フェニレンが挙げられる。
3で示されるアルキル基としては、例えば、直鎖または分岐鎖のアルキル基であって、その炭素数は、例えば、1〜8、好ましくは、1〜5である。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0020】
3で示されるフッ素化アルキル基としては、例えば、アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換されるパーフルオロアルキル基、アルキル基中の一部の水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
フッ素化アルキル基において、フッ素原子で置換されるアルキル基としては、上記したアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0021】
このようなフッ素化アルキル基としては、より具体的には、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピルなどが挙げられる。
3で示されるシクロアルキル基は、炭素数が、例えば、3〜8、好ましくは、4〜6である。このようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
【0022】
好ましくは、R2として、シクロアルキル基が挙げられる。
4で示されるアルキレン基としては、上記したアルキレン基と同様のものが挙げられ、R4で示されるシクロアルキレン基は、上記したシクロアルキレン基と同様のものが挙げられる。
(a+b+c)は、0.25〜0.75を示し、好ましくは、0.3〜0.7を示す。
【0023】
また、フルオロオレフィン共重合体樹脂は、モノマーとして、Xを含有するフルオロエチレン(CF2=CFX)と、R1を含有するヒドロキシビニルエーテル(CH2=C(R1OH)H)と、R3を含有するビニルエーテル(CH2=C(OR3)H)と、R4を含有するヒドロキシビニルエーテル(CH2=C(O−R4OH)H)とを共重合し、次いで、R1を含有するヒドロキシビニルエーテル部分を、2塩基酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水フタル酸など)で変性させることにより得られる。
【0024】
Xを含有するフルオロエチレンとしては、例えば、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、パーフルオロブチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
1を含有するヒドロキシビニルエーテルとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシノニルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0025】
3を含有するビニルエーテルとしては、例えば、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
4を含有するヒドロキシビニルエーテルとしては、例えば、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
フルオロオレフィン共重合体樹脂は、その水酸基価が、60mgKOH/g以下であり、好ましくは、55mgKOH/g以下、さらに好ましくは、50mgKOH/g以下である。水酸基価が上記した範囲を超えると、剥離性および耐水性が低下する。
【0026】
また、このフルオロオレフィン共重合体樹脂は、その酸価が、5mgKOH/g以下であり、好ましくは、4mgKOH/g以下であり、通常、1mgKOH/g以上である。酸価が上記した範囲を超えると、剥離性が低下する。
このようなフルオロオレフィン共重合体樹脂は、市販品を用いることができ、例えば、ザフロンFC220などのザフロンシリーズ(東亞合成(株)製)、例えば、セフラルコートcc−03などのセフラルコートシリーズ(セントラル硝子(株)製)などが挙げられる。
【0027】
これらフルオロオレフィン共重合体樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
保護フィルム用組成物では、フルオロオレフィン共重合体樹脂を含有するので、優れた防水性、保護性を付与でき、さらに、優れた剥離性を付与することができる。
本発明において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、保護フィルム用組成物に離型剤として含有されるものであって、例えば、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリオキシブチレンモノアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルであって、より具体的には、下記一般式(2)で示される。
【0028】
【化4】

【0029】
(一般式(2)中、R5は、炭素数3〜20の1価の炭化水素基を示す。nは、4〜52の整数を示す。)
一般式(2)において、R5で示される炭素数3〜20の1価の炭化水素基は、好ましくは、その炭素数が、3〜18、さらに好ましくは、4〜14である。また、このような炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基が挙げられる。
【0030】
アルキル基は、直鎖または分岐鎖のアルキル基であって、例えば、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ヘキサデシル、オクタデシル(ステアリル、C1838−)、イコシル(C3368−)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ブチルが挙げられる。
【0031】
一般式(2)において、−C36O−で示されるオキシプロピレンとしては、例えば、オキシiso−プロピレン(−CH2CH(CH3)O−)、オキシn−プロピレン(−CH2CH2CH2O−)が挙げられ、好ましくは、オキシiso−プロピレンが挙げられる。
一般式(2)において、nは、オキシプロピレンの重合度であって、例えば、4〜52の整数、好ましくは、12〜40の整数を示す。
【0032】
このようなポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルは、市販品を用いることができ、例えば、ユニルーブシリーズ、ユニセーフシリーズ(以上、日本油脂(株)製。)などが挙げられる。
より具体的には、市販品としては、例えば、ポリオキシプロピレン(4)ブチルエーテル(括弧内の数値は、一般式(2)におけるnを示す。以下同じ。)(商品名:ユニルーブMB−2)、ポリオキシプロピレン(12)ブチルエーテル(商品名:ユニルーブMB−7)、ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル(商品名:ユニルーブMB−11)、ポリオキシプロピレン(20)ブチルエーテル(商品名:ユニルーブMB−14))、ポリオキシプロピレン(24)ブチルエーテル(商品名:ユニルーブMB−19))、ポリオキシプロピレン(33)ブチルエーテル(商品名:ユニルーブMB−38)、ポリオキシプロピレン(40)ブチルエーテル(商品名:ユニルーブMB−370)、ポリオキシプロピレン(52)ブチルエーテル(商品名:ユニルーブMB−700)、ポリオキシプロピレン(3)ステアリルエーテル(商品名:ユニセーフMM−15K)などが挙げられる。
【0033】
これらポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、単独使用または2種以上併用することができる。
フルオロオレフィン共重合体樹脂およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合割合は、これらの総量に対して、フルオロオレフィン共重合体樹脂が、例えば、80〜95重量部、好ましくは、85〜90重量部であり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、例えば、5〜20重量部、好ましくは、10〜15重量部である。フルオロオレフィン共重合体樹脂の配合割合が上記した範囲を超える(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合割合が上記した範囲に満たない)と、剥離性が低下する場合がある。一方、フルオロオレフィン共重合体樹脂の配合割合が上記した範囲に満たない(ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合割合が上記した範囲を超える)と、耐水性が低下する場合がある。
【0034】
保護フィルム用組成物では、上記したポリオキシアルキレンアルキルエーテルを離型剤として含有するので、塗装面や補修面の劣化を防止しながら、優れた剥離性を付与することができる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット(ミネラルターペン)、ソルベントナフサなどの石油系炭化水素系溶媒、例えば、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、例えば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、トリメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、メチルエチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロノナンなどの脂環式炭化水素系溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0035】
これらのうち、塗装面や補修面への劣化を防止する観点から、好ましくは、石油系炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。
これら炭化水素系溶剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
炭化水素系溶剤の配合割合は、保護フィルム用組成物の使用(塗布)方法に応じて適宜選択されるが、フルオロオレフィン共重合体樹脂100重量部に対して、例えば、5〜300重量部、好ましくは、10〜250重量部である。後述する刷毛などで塗布する場合には、例えば、5〜100重量部に設定することができる。また、後述するエアゾールとして吹き付けて塗布する場合には、好ましくは、200〜300重量部に設定することもできる。
【0036】
なお、炭化水素系溶剤は、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶媒を含有しない。
そして、本発明の保護フィルム用組成物を得るには、フルオロオレフィン共重合体樹脂と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、炭化水素系溶剤とを、上記した配合割合で適宜配合して、適宜の分散機または攪拌機などにより、分散または攪拌して混合する。
【0037】
なお、本発明の保護フィルム用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、保護フィルム用組成物に通常添加される、例えば、フェノール系酸化防止剤やリン酸系酸化防止剤などの酸化防止剤、例えば、アンチブロッキング剤、充填剤(無機フィラーなど)、界面活性剤、抗菌剤、殺菌剤、防かび剤、顔料、分散剤(顔料系分散剤を含む)、紫外線吸収剤、防錆剤、消泡剤などの添加剤を適宜の配合割合で配合することができる。
【0038】
次に、このようにして得られた本発明の保護フィルム用組成物を用いて、本発明の保護フィルムを基材に形成する本発明の基材の保護方法について説明する。
この方法では、本発明の保護フィルム用組成物を、基材に塗布する。
基材としては、鳥の糞(腐食成分としてアンモニアなどを含む糞)害、虫の付着、雨水(酸性雨など腐食性の硫酸や、塩などを含む雨水)による劣化、物体(接触により基材に傷を生じさせるものであり、例えば、砂や小石など)による傷を防止したい部材であれば特に限定されない。基材としては、例えば、車両の塗装面、車両の樹脂面、これら塗装面または樹脂面における補修面、車両の金属面(メッキされた金属面を含む。)、車両のガラス、屋外固定設置物および屋外固定構造物などが挙げられる。好ましくは、基材として、自動車およびバイクのボディーの塗装面、または、自動車のバンパーの塗装面、あるいは、これら塗装面がラッカー塗料などで補修された補修面が挙げられる。
【0039】
基材に対する塗布は、特に限定されず、刷毛、ローラなどで直接塗布することができる。また、スプレーなどでエアゾールとして吹き付けることもできる。スプレーなどでエアゾールとして吹き付ければ、簡便に塗布することができる。
その後、これを、例えば、常温で、例えば、1〜3時間乾燥する。
これにより、炭化水素系溶剤が揮発して、塗膜(被膜)が形成されて、基材の表面に保護フィルムが形成される。
【0040】
このようにして形成される保護フィルムの厚みは、例えば、50〜300μm、好ましくは、100〜200μmに設定される。
その後、保護フィルムの形成から一定期間経過した後、保護フィルムを剥離する。
保護フィルムの形成から剥離までの期間は、基材を保護したい所望の期間であって、特に限定されず、保護フィルムの耐用期間の観点から、例えば、1〜6月間、好ましくは、2〜4月間に設定される。
【0041】
保護フィルムの剥離は、特に限定されず、例えば、保護フィルムの端部から引き剥がし、続いて、すべての保護フィルムを連続的に引き剥がせばよい。
そして、本発明の保護フィルム用組成物を基材、とりわけ、自動車のボディーまたはバンパーの塗装面、または、これらの補修面に塗布することにより、保護フィルムを形成して、これらの塗装面または補修面を確実に保護することができる。さらに、特別な装置や煩雑な操作を必要とすることなく、刷毛やスプレーによる簡便な作業で保護フィルム用組成物を塗布して、外観に優れ、かつ、透明で均一な保護フィルムを形成することができる。
【0042】
その結果、この保護フィルムは、塗装面または補修面における、汚れに対する優れた防汚性、雨水などに対する優れた防水性、および、鳥の糞、小石や砂に対する優れた保護性を有している。
さらに、この保護フィルムは、塗装面または補修面からの優れた剥離性を有している。
そして、本発明の基材の保護方法では、保護フィルム用組成物を塗装面または補修面に塗布して保護フィルムを形成して、一定期間が経過した後、保護フィルムを剥離できるので、保護したい期間のみを確実に保護し、その保護が終了すれば、保護フィルムを連続的に容易に剥離して除去できる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例および比較例に何ら限定されるものではない。
1. 保護フィルム用組成物の調製
実施例1
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 90重量部
(商品名:ザフロンFC220、東亞合成(株)製
水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル 10重量部
(商品名:ユニルーブMB−11、日本油脂(株)製)
・ミネラルターペン 10重量部
(商品面:ペガゾール3040、モービル石油(株)製)
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0044】
実施例2
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 95重量部
(商品名:セフラルコートcc−03、セントラル硝子(株)製
水酸基価48mgKOH/g、酸価4mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル 5重量部
(商品名:ユニルーブMB−11、日本油脂(株)製)
・ミネラルターペン 10重量部
(商品面:ペガゾール3040、モービル石油(株)製)
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0045】
実施例3
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 80重量部
(商品名:ザフロンFC220、東亞合成(株)製
水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(33)ブチルエーテル 20重量部
(商品名:ユニルーブMB−38、日本油脂(株)製)
・ミネラルターペン 10重量部
(商品面:ペガゾール3040、モービル石油(株)製)
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0046】
実施例4
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 90重量部
(商品名:ザフロンFC220、東亞合成(株)製
水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(4)ブチルエーテル 10重量部
(商品名:ユニルーブMB−2、日本油脂(株)製)
・イソオクタン 10重量部
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0047】
実施例5
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 98重量部
(商品名:ザフロンFC220、東亞合成(株)製
水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル 2重量部
(商品名:ユニルーブMB−11、日本油脂(株)製)
・ミネラルターペン 10重量部
(商品面:ペガゾール3040、モービル石油(株)製)
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0048】
実施例6
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 75重量部
(商品名:ザフロンFC220、東亞合成(株)製
水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル 25重量部
(商品名:ユニルーブMB−11、日本油脂(株)製)
・ミネラルターペン 10重量部
(商品面:ペガゾール3040、モービル石油(株)製)
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0049】
比較例1
・ポリビニルアセタール樹脂 95重量部
(商品名:デンカブチラール#3000−3、電気化学工業(株)製)
・ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル 5重量部
(商品名:ユニルーブMB−11、日本油脂(株)製)
・イソプロピルアルコール 10重量部
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0050】
比較例2
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 90重量部
(商品名:ザフロンFC220、東亞合成(株)製
水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル 10重量部
(商品名:ユニルーブMB−11、日本油脂(株)製)
・酢酸エチル 10重量部
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0051】
比較例3
・フッ素樹脂 90重量部
(商品名:フルオネートK−705、大日本インキ(株)製
水酸基価1〜3mgKOH/g、酸価66〜78mgKOH/g)
・ポリオキシプロピレン(17)ブチルエーテル 10重量部
(商品名:ユニルーブMB−11、日本油脂(株)製)
・ミネラルターペン 10重量部
(商品面:ペガゾール3040、モービル石油(株)製)
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
【0052】
比較例4
・フルオロオレフィン共重合体樹脂 95重量部
(商品名:ザフロンFC220、東亞合成(株)製
水酸基価50mgKOH/g、酸価2mgKOH/g)
・ジブチルフタレート(大八化学(株)社製) 5重量部
・ミネラルターペン 10重量部
(商品名:ペガゾール3040、モービル石油(株)製)
上記の各成分をコーレス分散機により、1時間攪拌・分散することにより、保護フィルム用組成物を得た。
2. 保護フィルムの作製
まず、焼付け塗装板および補修板をそれぞれ用意した。
【0053】
焼付け塗装板としては、平成18年式トヨタカローラバンのボンネット部分(塗色:トヨタ202)を用意した。また、補修板としては、リン酸亜鉛処理したSPCC鋼板にラッカー塗料(ボデーペン、塗色:トヨタ202、(株)ソフト99コーポレーション製)を塗布して、室温で7日乾燥させて、厚み30μmのラッカー被膜を形成したものを用意した。
【0054】
次いで、各実施例および各比較例の保護フィルム用組成物を、用意した焼付け塗装板および補修板に刷毛塗りによりそれぞれ塗布した。その後、25℃(室温)で48時間乾燥させることにより、厚み100μmの保護フィルムを、焼付け塗装板および補修板の表面にそれぞれ形成した。
3. 評価
1) 剥離性
得られた保護フィルムを剥離するときの剥離抗力(JIS Z 1708に準拠)を測定した。また、保護フィルムが形成された焼付け塗装板および補修板を屋外に放置して、雨水や日光などに暴露した状態で3ヶ月放置した。その後、保護フィルムの剥離抗力(JIS Z 1708に準拠)を測定した。なお、剥離性は、剥離抗力の値が低いほど、良好であることを示す。
【0055】
その結果を表1に示す。なお、表1中、保護フィルムを剥離できないもの、または、剥離途中で破断したものを×で示す。
2) 防汚性
保護フィルムが形成された焼付け塗装板を、色差計(型番SM−5、スガ試験機社製)を用いて汚染の程度を測定することにより、防汚性を評価した。また、保護フィルムが形成された焼付け塗装板を屋外に放置して、雨水や日光などに暴露した状態で3ヶ月放置した。その後、焼付け塗装板の防汚の程度を、色差計により汚染の程度を測定することにより、防汚の程度を測定して、防汚性を評価した。
【0056】
その結果を表1に示す。なお、表1中の略号を以下に示す。
◎:汚染がない (色差2未満)
○:ほとんど汚染がない (色差2以上3未満)
△:少し汚染がある (色差3以上4未満)
×:汚染がある (色差4以上)
3) 耐水性
保護フィルムが形成された焼付け塗装板を、25℃で72時間、水中に浸漬させた後、水中から取り出して、焼き付け塗装板の表面を目視により観察した。
【0057】
その結果を表1に示す。なお、表1中の略号を以下に示す。
◎:変化がない
○:曇りをかすかに生じる、または、わずかに変色する
△:白化する、または、変色する
×:焼き付け塗装板の塗膜が膨れて欠け落ちる
4) 耐アルカリ性
鳥の糞には、腐食成分の主成分としてアンモニア(アルカリ)が含まれると推定されるため、鳥の糞害に対する保護フィルムの保護性の評価に代えて、耐アルカリ性を評価した。
【0058】
具体的には、保護フィルムが形成された焼付け塗装板に5%アンモニア水を滴下して、25℃で24時間放置させた。その後、焼き付け塗装板の表面を目視により観察した。
その結果を表1に示す。なお、表1中の略号を以下に示す。
◎:変化がない
○:曇りをかすかに生じる、または、わずかに変色する
△:白化する、または、変色する
×:焼き付け塗装板の塗膜が膨れて欠け落ちる
5) 耐酸性
酸性雨には、腐食成分の一成分として硫酸(酸)が含まれると推定されるため、酸性雨に対する劣化の保護フィルムの保護性の評価に代えて、耐酸性を評価した。
【0059】
具体的には、保護フィルムが形成された焼付け塗装板に3%硫酸水を滴下して、25℃で24時間放置させた。その後、焼き付け塗装板の表面を目視により観察した。
その結果を表1に示す。なお、表1中の略号を以下に示す。
◎:変化がない
○:曇りをかすかに生じる、または、わずかに変色する
△:白化する、または、変色する
×:焼き付け塗装板の塗膜が膨れて欠落する
6) 耐摩耗性
物体による傷、特に屋外では、砂との接触による摩耗が想定されるため、物体による傷に対する保護フィルムの保護性の評価に代えて、海砂による耐摩耗性を評価した。
【0060】
具体的には、保護フィルムが形成された焼付け塗装板を落砂摩耗試験機(JIS H−6882、JIS H−8503、JIS A−5423、ASTM D968)にセットし、落下高さ940mmで、25℃にて、海砂(平均粒子径1mm)2Lを22±2秒で、焼付け塗装板に落下させた。その後、焼き付け塗装板の表面を目視により観察した。
その結果を表1に示す。なお、表1中の略号を以下に示す。
【0061】
◎:変化がない
○:傷がかすかに入る
△:傷が入る
×:焼き付け塗装板の塗膜が完全に取れる
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が60mgKOH/g以下であり、かつ、酸価が5mgKOH/g以下であるフルオロオレフィン共重合体樹脂と、
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、
炭化水素系溶剤と
を含有することを特徴とする、保護フィルム用組成物。
【請求項2】
前記フルオロオレフィン共重合体樹脂が下記平均組成式(1)で示されることを特徴とする、請求項1に記載の保護フィルム用組成物。
【化1】

(平均組成式(1)中、Xは、ハロゲンまたはパーフルオロアルキル基、R1は、アルキレン基またはシクロアルキレン基、R2は、アルキレン基またはアリレン基、R3は、アルキル基、フッ素化アルキル基またはシクロアルキル基、R4は、アルキレン基またはシクロアルキレン基を示す。(a+b+c)は、0.25〜0.75を示す。)
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが下記一般式(2)で示されることを特徴とする、請求項1または2に記載の保護フィルム用組成物。
【化2】

(一般式(2)中、R5は、炭素数3〜20の1価の炭化水素基を示す。nは、4〜52の整数を示す。)
【請求項4】
前記フルオロオレフィン共重合体樹脂および前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの配合割合は、前記フルオロオレフィン共重合体樹脂および前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの総量100重量部に対して、前記フルオロオレフィン共重合体樹脂が80〜95重量部であり、前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが5〜20重量部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の保護フィルム用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の保護フィルム用組成物を基材に塗布することにより得られることを特徴とする、保護フィルム。
【請求項6】
前記基材が、車両の塗装面、車両の樹脂面、車両の補修面、車両の金属面、車両のガラス、屋外固定設置物および屋外固定構造物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項5に記載の保護フィルム。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の保護フィルム用組成物を基材に塗布することにより、基材に保護フィルムを形成する工程を備えていることを特徴とする、基材の保護方法。

【公開番号】特開2008−260875(P2008−260875A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105664(P2007−105664)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】