説明

保護制御装置

【課題】CPUカードに実装されるバックアップ回路面積を低減可能な保護制御装置を得る。
【解決手段】CPUカード100が保護制御装置から取り外された後にCPUカード100に装着される外付け電源11を備え、CPUカード100は、AD変換されたディジタルデータと保護制御装置より供給されるカード電源7a、7bと外付け電源11より供給されるバックアップ電源8bとを取り込むコネクタ5aと、リレー演算を行うCPU1と、ディジタルデータを保持する揮発性メモリ3と、カード電源7a、7bの供給が停止したときでも揮発性メモリ3への電源電圧の供給を継続可能に配設されると共に、カード電源7a、7bの供給が停止してからバックアップ電源8bの供給が開始されるまでの間、揮発性メモリ3内のデータを保持可能な容量に設定されたキャパシタ9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統事故発生における系統電圧および系統電流に関するデータや電力系統事故発生における接点ON/OFF情報等(以下「電力系統からの入力情報」と称する)を、揮発性メモリに保管するデータセーブ機能を有する保護制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の保護制御装置においては、電力系統からの入力情報を保管するCPUカードが搭載されているのが一般的である。このCPUカードには、例えば、電力系統からの入力情報に基づいてリレー演算を行う演算部や、電力系統からの入力情報を保持するための揮発性メモリなどが実装されている。この揮発性メモリは、一般的に不揮発性メモリよりも書き込み時間が早いため電力系統からの入力情報を保管するには適している。なお、電力系統からの入力情報を揮発性メモリに保持させる機能を「データセーブ機能」と称する。
【0003】
ただし、揮発性メモリは、公知の通り電源を供給しないと記録を保持することができない。したがって、例えば、保護制御装置から取り外されたCPUカードを所定の場所に持ち帰った上で電力系統からの入力情報を解析するような場合には、CPUカードを保護制御装置から取り外してからデータの解析を開始するまで揮発性メモリ内のデータを保持可能な電源(バックアップ回路)を用意して、この電源によって揮発性メモリ内のデータを保持することが必要となる。
【0004】
下記特許文献1に代表される従来技術では、CPUカードにバックアップ回路を実装することで、揮発性メモリ内のデータを所定時間保持可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−172252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に代表される従来技術は、CPUカードに実装されたバックアップ回路によって、リレー回路などの実装面積が減少するだけではなく、バックアップ回路分のコストアップを招くという課題があった。
【0007】
一方、従来の保護制御装置におけるバックアップ回路は、キャパシタによるバックアップ方式をとっている場合が多い。キャパシタバックアップ方式では、製品稼働年数が長くなるとキャパシタの容量抜けが起こり、バックアップ時間が少なくなるため、このキャパシタ抜けを考慮した大容量のキャパシタが必要となる。従って、キャパシタバックアップ方式を採用した従来の保護制御装置においては、キャパシタ抜けを考慮しつつも、バックアップ回路の規模を出来る限り最小にしたいというニーズに対応するためにバックアップ時間を犠牲にすることになり、その結果、保護制御装置の設置場所から情報解析場所までの間に不測の事態が発生した場合、揮発性メモリの内容が消えてしまう虞があるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、CPUカードに実装されるバックアップ回路面積を低減可能な保護制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電力系統からの系統電気量を用いてリレー演算を行う演算ユニットを備える保護制御装置であって、前記演算ユニットが前記保護制御装置から取り外された後に前記演算ユニットに装着される電源ユニットを備え、前記演算ユニットは、前記保護制御装置にてAD変換されたディジタルデータと、演算ユニットが前記保護制御装置に装着されているときに保護制御装置より供給される第1の電源電圧と、前記電源ユニットより供給される第2の電源電圧と、を取り込む第1の端子部と、前記ディジタルデータを用いてリレー演算を行う演算部と、前記第1の電源電圧または前記第2の電源電圧の供給を受けて前記ディジタルデータを保持する揮発性メモリと、前記第1の電源電圧の供給が停止したときでも前記揮発性メモリへの電源電圧の供給を継続可能に配設されると共に、前記第1の電源電圧の供給が停止してから前記第2の電源電圧の供給が開始されるまでの間、前記揮発性メモリ内のデータを保持可能な容量に設定されたキャパシタと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、揮発性メモリへの電源をバックアップ可能な電源をCPUカードに装着するようにしたので、CPUカードに実装されるバックアップ回路面積を低減することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる保護制御装置に搭載されるCPUカードの構成図である。
【図2】図2は、CPUカードに接続される外付け電源の構成図である。
【図3】図3は、図1に示されるCPUカードと図2に示される外付け電源とを接続した状態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1にかかる保護制御装置のCPUカードと外付け電源との間における電源経路を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態2にかかる保護制御装置に搭載されるCPUカードの構成図である。
【図6】図6は、図5に示されるCPUカードと図2に示される外付け電源とを接続した状態を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2にかかる保護制御装置のCPUカードと外付け電源との間における電源経路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる保護制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる保護制御装置に搭載されるCPUカード100(演算ユニット)の構成図であり、図2は、CPUカード100に接続される外付け電源11(電源ユニット)の構成図である。また、図3は、図1に示されるCPUカード100と図2に示される外付け電源11とを接続した状態を示す図であり、図4は、本発明の実施の形態1にかかる保護制御装置のCPUカード100と外付け電源11との間における電源経路を説明するための図である。
【0014】
以下、説明の順としては、まず図1と図2を用いて、本実施の形態にかかる保護制御装置に搭載されるCPUカード100の構成と、CPUカード100に接続される外付け電源11の構成とを説明し、その後に図3と図4を用いてCPUカード100と外付け電源11の動作を説明する。
【0015】
図1に示されるCPUカード100は、図示しない保護制御装置に装着され、その主たる機能は、保護制御装置の基本的な動作を行わせるものであって、例えば、電力系統事故発生における系統電圧および系統電流に関するデータや接点ON/OFF情報等(電力系統からの入力情報)に基づいて、短絡などの事故判定処理(リレー演算処理)を実施して、その演算結果に基づいて送電線に繋がる遮断器等へのトリップ指令を出力することである。その他の機能としては、電力系統からの入力情報を保管するデータセーブ機能などがある。なお、電力系統からの入力情報は、AIデータ(Analog Input data)とも称し、保護制御装置内のAD変換部(図示せず)にて変換されたディジタルデータであり、CPUカード100は、このディジタルデータを保管すると共に、ディジタルデータを用いてリレー演算を行う。
【0016】
本実施の形態にかかるCPUカード100は、このような機能を実現するため、電力系統からの入力情報に基づいてリレー演算を行うCPU1(演算部)と、揮発性メモリ3と、バックアップ回路4と、コネクタ5a(第1の端子部)と、逆流防止回路10とを有して構成されている。
【0017】
コネクタ5aは、保護制御装置のマザーボード(図示せず)とCPUカード100とを接続可能にCPUカード100に配設され、マザーボードに接続可能に、かつ、後述する外付け電源11を接続可能に形成されている。コネクタ5aには、外付け電源11より供給されるバックアップ電源8b(第2の電源電圧)を揮発性メモリ3に供給する電源ピン6a(第1の電源ピン)が形成されると共に、CPUカード100が保護制御装置に装着されているときに保護制御装置より供給されるカード電源7a、7b(第1の電源電圧)を供給するためのピン(図示せず)が配設されている。
【0018】
なお、本実施の形態では、説明の便宜上、記号7a、7bを「カード電源」と称しているが、これは保護制御装置内の所定の電源ユニットから供給される電源電圧を示す。
【0019】
図1において、電源ピン6aは、逆流防止回路10とバックアップ回路4との接続端に接続されているが、これに限定されるものではなく、キャパシタ9から揮発性メモリ3に至るまでの区間に接続する態様でもよい。
【0020】
揮発性メモリ3は、揮発性メモリ3には、電力系統からの入力情報だけでなく、保護制御装置自体が故障した際の故障データがログとして格納される。電力系統からの入力情報は、上述したように、電力系統事故発生における系統電圧および系統電流に関するデータや接点ON/OFF情報等である。
【0021】
電力系統事故発生における系統電圧および系統電流に関するデータは、例えば、電力系統事故が発生した時点よりも数サイクル前から、電力系統事故が発生した時点よりも数サイクル後までのデータ(以下「事故データ」と称する)である。揮発性メモリ3には、電力系統事故が発生したタイミング毎にこの事故データが記録され、電力系統事故が複数回発生した場合にはそのタイミング毎に事故データが記録される。その結果、揮発性メモリ3には、少なくとも2セット以上の事故データ(例えば、数時間前に発生した事故データと数分前に発生した事故データ)が記録されているものとする。
【0022】
カード電源7a、7bは、コネクタ5aに配設されたピン(図示せず)を通じてマザーボードから供給される電源である。コネクタ5aが保護制御装置のマザーボードに接続されている間、カード電源7aがCPU1に供給され、カード電源7bが逆流防止回路10を通じて揮発性メモリ3およびキャパシタ9に供給される。逆流防止回路10に関しては後述する。従って、キャパシタ9には、カード電源7bによって所定の電荷が蓄電される。他方、CPUカード100が保護制御装置から抜き取られたとき、カード電源7bから揮発性メモリ3およびキャパシタ9への電源供給は停止することとなる。
【0023】
バックアップ回路4は、バックアップ電源8aとキャパシタ9とから成り、カード電源7bの供給が停止した直後に、揮発性メモリ3へ一時的に電源を供給するためのものである。
【0024】
なお、本実施の形態では、説明の便宜上、記号8aを「バックアップ電源」と称しているが、これはカード電源7bの供給が停止した際にキャパシタ9から揮発性メモリ3に供給される電源電圧を示す。
【0025】
キャパシタ9の容量を説明する。キャパシタ9は、CPUカード100が保護制御装置から抜き取られてから、CPUカード100が外付け電源11に接続されるまでの時間(以下「第1の時間」と称する)に、揮発性メモリ3のデータを保持可能な容量を有している。第1の時間は、保護制御装置から抜き取られたCPUカード100に外付け電源11を即座に接続可能であれば数秒〜数十秒程度である。
【0026】
なお、上記説明では、CPUカード100が保護制御装置から抜き取られてから外付け電源11に接続されるまでの間を「第1の時間」と定義しているが、保護制御装置の電源をOFFにしてから、保護制御装置から抜き取られたCPUカード100を外付け電源11に接続するまでの時間を「第1の時間」と定義してもよい。換言すれば、第1の時間は、カード電源7bの供給が停止してから外付け電源11からの電源供給が開始されるまでの時間、と言える。
【0027】
逆流防止回路10は、2つのトランジスタと2つの抵抗とを有して構成されている。CPUカード100が保護制御装置に装着されている場合、カード電源7bの供給によってこれらのトランジスタがON状態となり、揮発性メモリ3およびキャパシタ9にはカード電源7bが供給される。一方、CPUカード100が保護制御装置から抜き取られたとき、カード電源7bの供給が断となることによってこれらのトランジスタがOFF状態となるため、キャパシタ9の電荷が各トランジスタに流入することはない。従って、キャパシタ9の電荷は揮発性メモリ3に供給され、揮発性メモリ3はキャパシタ9内の電荷量に略比例した時間だけデータを保持することが可能である。なお、図1に示される逆流防止回路10は、一例としてトランジスタと抵抗を組み合わせて構成されているが、これに限定されるものではなく、キャパシタ9の電荷が出力(キャパシタ9および揮発性メモリ3)側から入力(カード電源7b)側へ逆流することを阻止でき、かつ、キャパシタ9の電荷を消費しないものであれば、公知の技術を用いてもよい。
【0028】
次に、図2に示される外付け電源11に関して説明する。
【0029】
図2に示される外付け電源11は、外付け電源用コネクタ5b(第2の端子部、以下単に「コネクタ5b」と称する)と、蓄電部20と、コネクタ5bと蓄電部20との間に介在するスイッチ部16とを有して構成されている。
【0030】
コネクタ5bは、コネクタ5aとの接続が可能なように、外付け電源11の所定箇所に設置されている。このコネクタ5bには、スイッチ部16を介して蓄電部20の出力を揮発性メモリ3に供給すべく電源ピン6aと接触可能に形成された電源ピン6b(第2の電源ピン)が形成されている。この電源ピン6bは、スイッチ部16の一端に接続されている。
【0031】
なお、本実施の形態では、説明の便宜上、記号8bを「バックアップ電源」と称しているが、これは蓄電部20より供給される電源電圧を示している。
【0032】
蓄電部20は、電池13および大容量キャパシタ14(以下単に「キャパシタ14」と称する)から成る。電池13の出力端とスイッチ部16の他端との間には、電池13からの電源電圧を揮発性メモリ3が駆動可能な電圧へ降圧させる降圧回路15が接続されている。なお、図2に示される蓄電部20は、一例として電池13およびキャパシタ14で構成されているが、これに限定されるものではなく、電池13またはキャパシタ14の何れか一方のみで構成してもよい。
【0033】
蓄電部20の容量を説明する。蓄電部20は、CPUカード100へのバックアップ電源8bの供給が開始された時から、揮発性メモリ3内のデータが読み出されるまでの時間(以下、「第2の時間」)に、揮発性メモリ3内のデータを保持可能な容量を有している。より厳密には、第2の時間は、保護制御装置から抜き取られたCPUカード100がコネクタ5bに接続され、かつ、外付け電源11のスイッチ部16がONになったときから、揮発性メモリ3内のデータが読み出されるまでの時間である。
【0034】
蓄電部20の容量の選定に際しては、例えば、電池13またはキャパシタ14の充電完了からCPUカード100を接続するまでの期間における自己放電量や、第2の時間を見込んだ放電量などを考慮することが重要である。電池13またはキャパシタ14の容量を小さくすれば外付け電源11の持ち運びが容易であるものの、不測の事態が発生した場合(持ち運び時間が遅延した場合など)でも揮発性メモリ3内のデータを解析可能とするためである。
【0035】
スイッチ部16は、電源ピン6aと電源ピン6bとの接続を検知する検知回路(図示せず)からの検知信号に応じて動作するものである。スイッチ部16の一端は、電源ピン6bに接続され、スイッチ部16の他端は、降圧回路15の出力とキャパシタ14の出力との接続端に接続されている。なお、上述したように降圧回路15が不要である場合には、スイッチ部16の他端は電池13に直接接続される。
【0036】
ここで、スイッチ部16の動作を簡単に説明する。電源ピン6aと電源ピン6bとが接続された場合、電源ピン6aと電源ピン6bとが接続されたことを示す検知信号が検知回路から出力される。この検知信号が出力されたとき、スイッチ部16の接点がONとなるため、電池13またはキャパシタ14からの電源が電源ピン6bに供給される。
【0037】
他方、電源ピン6aと電源ピン6bとの接続が解除された場合、前記検知信号の出力が停止するため、スイッチ部16の接点はOFFとなる。スイッチ部16の接点がOFFとなったとき、電池13またはキャパシタ14からの電源は断となる。
【0038】
このように、外付け電源11は、コネクタ5aに接続可能に形成されたコネクタ5bと、バックアップ電源8bの供給元であって、コネクタ5bがコネクタ5aに接続されたときから揮発性メモリ3内のデータが読み出されるまでの間、揮発性メモリ3内のデータを保持可能な容量に設定された蓄電部20と、コネクタ5bと蓄電部20との間に介在し、コネクタ5bがコネクタ5aに接続されたことを検知して蓄電部20の出力端とコネクタ5bとを導通させるスイッチ部16とを有して構成されている。さらに、コネクタ5aには、外付け電源11から供給されるバックアップ電源8bを揮発性メモリ3に供給する電源ピン6a(第1の電源ピン)が形成され、コネクタ5bには、スイッチ部16を介して蓄電部20の出力を揮発性メモリ3に供給すべく電源ピン6aと接触可能に形成された電源ピン6b(第2の電源ピン)が形成されている。
【0039】
次に、図3および図4を用いて、CPUカード100および外付け電源11の動作を説明する。
【0040】
図3には、コネクタ5aとコネクタ5bとが接続された状態が示されており、図3に示される電源ピン6は、図1に示した電源ピン6aと図2に示した電源ピン6bとが接続された後のピンを模式的に示したものである。図4には、第1の時間における揮発性メモリ3への電源供給フロー(1〜2)と、第2の時間における揮発性メモリ3への電源供給フロー(3)とが示されている。
【0041】
保護制御装置からCPUカード100を取り外す場合、まず保護制御装置の電源をOFFにするのが一般的である。保護制御装置の電源がOFFされたことによりカード電源7bから揮発性メモリ3への電源供給が停止する(フロー1)。
【0042】
なお、上記説明では、説明の便宜上、保護制御装置の電源がOFFされたことによりカード電源7aおよびカード電源7bが断となった状態を説明しているが、カード電源7aおよびカード電源7bが断となる状況としては、保護制御装置からCPUカード100が取り外された場合も同様である。
【0043】
ただし、この場合でも、キャパシタ9の電圧が揮発性メモリ3に印加されているため、バックアップ電源8aが揮発性メモリ3へ供給される(フロー2)。すなわち、揮発性メモリ3へのカード電源7bの供給が断となった時、キャパシタ9は、揮発性メモリ3内のデータを保持するためのバックアップ電源8aとして機能する。従って、第1の時間の間、揮発性メモリ3は、キャパシタ9から供給される電源(バックアップ電源8a)によってバックアップされることとなる。
【0044】
続いて、コネクタ5aに外付け電源11のコネクタ5bを接続したとき、スイッチ部16がONとなり、バックアップ電源8bが電源ピン6を介して揮発性メモリ3に供給される(フロー3)。このバックアップ電源8bの供給は、揮発性メモリ3内のデータが読み出されるまでの間継続する。
【0045】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる保護制御装置は、CPUカード100(演算ユニット)が保護制御装置から取り外された後にCPUカード100に装着される外付け電源11(電源ユニット)を備え、CPUカード100は、保護制御装置にてAD変換されたディジタルデータと、CPUカード100が保護制御装置に装着されているときに保護制御装置より供給されるカード電源7a、7b(第1の電源)と、外付け電源11より供給されるバックアップ電源8b(第2の電源電圧)と、を取り込むコネクタ5a(第1の端子部)と、ディジタルデータを用いてリレー演算を行うCPU1(演算部)と、カード電源7a、7bまたはバックアップ電源8bの供給を受けてディジタルデータを保持する揮発性メモリ3と、カード電源7a、7bの供給が停止したときでも揮発性メモリ3への電源電圧の供給を継続可能に配設されると共に、カード電源7a、7bの供給が停止してからバックアップ電源8bの供給が開始されるまでの間、揮発性メモリ3内のデータを保持可能な容量に設定されたキャパシタ9と、を備えるようにしたので、キャパシタ9の小型化を図ることが可能である。従来の保護制御装置に装着されていたCPUカードは、本実施の形態にかかる外付け電源11を接続可能な態様ではないため、そのCPUカードに実装されているキャパシタは、上述した第1の時間と第2の時間とを合算した時間を見込む容量を有するものであった。本実施の形態にかかるCPUカード100によれば、キャパシタ9は第1の時間を見込む容量のみ有していればよいため、CPUカード100におけるバックアップ回路4の占有面積を低減可能である。その結果、CPUカード100の設計上の制約が緩和されると共に、CPUカード100の製作コストを低減することが可能である。さらに、CPUカード100に外付け電源11を装着することにより、従来のキャパシタのみの方式に比べて揮発性メモリ3のバックアップ時間が大幅に延びるため、現地派遣員の作業時間の制約やCPUカード100の持ち運び時間の制約などが軽減され、現地派遣員の心理的な負担を減らすことができる。
【0046】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる保護制御装置は、キャパシタの小型化を図ると共に、重要度が高いデータを保持可能に構成されている。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0047】
図5は、本発明の実施の形態2にかかる保護制御装置に搭載されるCPUカード200(演算ユニット)の構成図であり、図6は、図5に示されるCPUカード200と図2に示される外付け電源11とを接続した状態を示す図であり、図7は、本発明の実施の形態2にかかる保護制御装置のCPUカード200と外付け電源11との間における電源経路を説明するための図である。
【0048】
図5に示されるCPUカード200は、CPU17(演算部)と、揮発性メモリ3と、バックアップ回路21と、コネクタ5aと、逆流防止回路10と、不揮発性メモリ2とを有して構成されている。実施の形態1にかかるCPUカード100と異なる点は、揮発性メモリ3に不揮発性メモリ2が接続され、バックアップ電源8aが揮発性メモリ3だけでなくCPU17にも供給されている点である。
【0049】
カード電源7a、7bは、コネクタ5aに配設されたピン(図示せず)を通じてマザーボードから供給される電源である。コネクタ5aが保護制御装置のマザーボードに接続されている間、カード電源7aがCPU17に供給され、カード電源7bが逆流防止回路10を通じて揮発性メモリ3およびキャパシタ19に供給される。逆流防止回路10に関しては後述する。従って、キャパシタ19には、カード電源7bによって所定の電荷が蓄電される。他方、CPUカード200が保護制御装置から抜き取られたとき、カード電源7bから揮発性メモリ3およびキャパシタ19への電源供給は停止することとなる。
【0050】
バックアップ回路21は、バックアップ電源8aとキャパシタ19とから成り、カード電源7bの供給が停止した直後に、揮発性メモリ3およびCPU17へ一時的に電源を供給するためのものである。このバックアップ電源8aは、カード電源7bの供給が停止した際にキャパシタ19から供給される電源を示している。
【0051】
逆流防止回路10は、2つのトランジスタと2つの抵抗とを有して構成されている。CPUカード200が保護制御装置に装着されている場合、カード電源7bの供給によってこれらのトランジスタがON状態となり、揮発性メモリ3およびキャパシタ19にはカード電源7bが供給される。一方、CPUカード200が保護制御装置から抜き取られたとき、カード電源7bの供給が断となるためこれらのトランジスタがOFF状態となるため、キャパシタ19の電荷が各トランジスタに流入することはない。従って、キャパシタ19の電荷は揮発性メモリ3およびCPU17に供給され、揮発性メモリ3はキャパシタ19内の電荷量に略比例した時間だけデータを保持することが可能である。なお、図1に示される逆流防止回路10は、一例としてトランジスタと抵抗を組み合わせて構成されているが、これに限定されるものではなく、出力(キャパシタ19および揮発性メモリ3)側から入力(カード電源7b)側への逆流電流を防止でき、かつ、キャパシタ19の電荷を消費することがないものであれば、公知の技術を用いてもよい。
【0052】
CPU17は、電力系統からの入力情報に基づいてリレー演算を行うと共に、カード電源7aの供給が断となったときにバックアップ電源8aの供給により、揮発性メモリ3内の一部のデータを不揮発性メモリ2に記録する。
【0053】
より具体的に説明すると以下の通りである。揮発性メモリ3には、上述したように、例えば、電力系統事故が発生した時点よりも数サイクル前から電力系統事故が発生した時点よりも数サイクル後までのデータ(事故データ)が少なくとも2セット以上記録されている。CPU17は、複数の事故データの中から重要度が高いデータ(例えば最新の事故データ)を不揮発性メモリ2へ移動させる。このCPU17の記録動作により、バックアップ電源8a(すなわちキャパシタ19の電荷)が消費されるものの、重要度が高いデータは不揮発性メモリ2に保持される。
【0054】
なお、不揮発性メモリ2に記録されるデータ(重要度が高いデータ)は、最新の事故データに限定されるものではなく、例えば、過去数回〜数十回分の事故データであってもよい。また、例えば、事故データが所定の期間以内に所定回数以上記録されているような場合(すなわち事故発生の頻度が高いとき)には、その期間における事故データのみ不揮発性メモリ2に記録するように構成してもよい。
【0055】
キャパシタ19の容量を説明する。キャパシタ19は、CPUカード200が保護制御装置から抜き取られてから、CPUカード200が外付け電源11に接続されるまでの時間(第1の時間)に、揮発性メモリ3のデータを保持可能な容量を有している。第1の時間は、保護制御装置から抜き取られたCPUカード200に外付け電源11を即座に接続可能であれば数秒〜数十秒程度である。
【0056】
なお、上記説明では、CPUカード200が保護制御装置から抜き取られてから外付け電源11に接続されるまでの間を「第1の時間」と定義しているが、保護制御装置の電源をOFFにしてから、保護制御装置から抜き取られたCPUカード200を外付け電源11に接続するまでの時間を「第1の時間」と定義してもよい。換言すれば、第1の時間は、カード電源7bが断となってから外付け電源11からの電源供給が開始されるまでの時間、と言える。
【0057】
次に、図6および図7を用いて、CPUカード200および外付け電源11の動作を説明する。
【0058】
図6には、図3と同様にコネクタ5aとコネクタ5bとが接続された状態が示されている。また、図7には、上記第1の時間における揮発性メモリ3への電源供給フロー(1、2a、2b)と、上記第2の時間における揮発性メモリ3への電源供給フロー(3)と、が示されている。なお、図4と図7の相違点は、フロー2がフロー2aに変更され、かつ、フロー2bおよびフロー2cが追加されている点である。
【0059】
保護制御装置からCPUカード200を取り外す場合、まず保護制御装置の電源をOFFにするのが一般的である。保護制御装置の電源がOFFされたことにより揮発性メモリ3へのカード電源7bの供給が停止する(フロー1)。なお、上記説明では、説明の便宜上、保護制御装置の電源がOFFされたことによりカード電源7a、7bが断となった状態を説明しているが、カード電源7a、7bが断となる状況としては、保護制御装置からCPUカード200が取り外された場合も同様である。
【0060】
ただし、この場合でも、キャパシタ19の電圧が揮発性メモリ3に印加されているため、バックアップ電源8aが揮発性メモリ3へ供給される(フロー2a)。また、キャパシタ19の電圧がCPU17にも印加されているため、バックアップ電源8aがCPU1へ供給される(フロー2b)。すなわち、カード電源7bから揮発性メモリ3への電源が断となった時、キャパシタ19は、揮発性メモリ3内のデータを保持するためのバックアップ電源8aとして機能する。従って、第1の時間の間、揮発性メモリ3は、キャパシタ19から供給される電源(バックアップ電源8a)によってバックアップされることとなる。
【0061】
一方、CPU1は、フロー2bと平行して、バックアップ電源8aを受けて揮発性メモリ3内の重要度が高いデータを不揮発性メモリ2に記録する(フロー2c)。CPU1は、この記録動作が完了した時点で、バックアップ電源8aからの供給をカットする。このことによりキャパシタ19の電荷の消費を抑制する。
【0062】
続いて、コネクタ5aに外付け電源11のコネクタ5bを接続したとき、スイッチ部16がONとなり、バックアップ電源8bが電源ピン6を介して揮発性メモリ3に供給される(フロー3)。
【0063】
以上に説明したように、本実施の形態にかかる保護制御装置によれば、CPUカード200(演算ユニット)は不揮発性メモリ2を備え、CPU1(演算部)は、カード電源7a、7bの供給が停止したとき、キャパシタ19からの電源電圧の供給を受けて揮発性メモリ3内に保持されている複数のデータの中から重要度の高いデータを読み出して不揮発性メモリ2へ転送し、当該データの転送後にキャパシタ19からの電源電圧の供給を絶つようにしたので、キャパシタ19を小型化すると共に、重要度が高いデータを確実に保持することが可能である。その結果、実施の形態1にかかる保護制御装置と同様の効果に加えて、外付け電源11からの電源が供給される前にキャパシタ19の電荷が無くなった場合でも重要度が高いデータを解析することが可能である。
【0064】
なお、実施の形態1および2において、外付け電源11が装着されたCPUカード(100、200)を運搬する際、衝撃などによってコネクタ5bがコネクタ5aから外れる虞があるため、外付け電源11とCPUカード(100、200)との電気的な接続を維持可能に形状された枠材を内包する専用ケースを用いることが望ましい。より望ましくは、この枠材は、外付け電源11およびCPUカード(100、200)において発生する虞のある短絡を防止可能な絶縁性能や、外部からの衝撃によって外付け電源11およびCPUカード(100、200)が破損することを防止可能な緩衝性能を有するものであるほうがよい。
【0065】
なお、上記説明では、一例として、バックアップ電源8bを用いて揮発性メモリ3のデータをバックアップする方法を保護制御装置のCPU1に適用した場合に関して説明したが、当該バックアップ方法は、揮発性メモリを用いて一定の期間データを保持する情報処理装置にも適用可能である。
【0066】
なお、実施の形態1および2に示した保護制御装置は、本発明の内容の一例を示すものであり、更なる別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは無論である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明は、電力系統事故発生における系統電圧および系統電流に関するデータや接点ON/OFF情報等のデータセーブ機能を有するディジタル保護制御装置に適用可能であり、特に、CPUカードに実装されるバックアップ回路面積を低減可能な発明として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1、17 CPU(演算部)
2 不揮発性メモリ
3 揮発性メモリ
4、21 バックアップ回路
5a コネクタ(第1端子部)
5b 外付け電源用コネクタ(第2端子部)
6a 電源ピン(第1の電源ピン)
6b 電源ピン(第2の電源ピン)
7a、7b カード電源(第1の電源電圧)
8a バックアップ電源
8b バックアップ電源(第2の電源電圧)
9、19 キャパシタ
10 逆流防止回路
11 外付け電源(電源ユニット)
13 電池
14 大容量キャパシタ
15 降圧回路
16 スイッチ部
20 蓄電部
100、200 CPUカード(演算ユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からの系統電気量を用いてリレー演算を行う演算ユニットを備える保護制御装置であって、
前記演算ユニットが前記保護制御装置から取り外された後に前記演算ユニットに装着される電源ユニットを備え、
前記演算ユニットは、
前記保護制御装置にてAD変換されたディジタルデータと、演算ユニットが前記保護制御装置に装着されているときに保護制御装置より供給される第1の電源電圧と、前記電源ユニットより供給される第2の電源電圧と、を取り込む第1の端子部と、
前記ディジタルデータを用いてリレー演算を行う演算部と、
前記第1の電源電圧または前記第2の電源電圧の供給を受けて前記ディジタルデータを保持する揮発性メモリと、
前記第1の電源電圧の供給が停止したときでも前記揮発性メモリへの電源電圧の供給を継続可能に配設されると共に、前記第1の電源電圧の供給が停止してから前記第2の電源電圧の供給が開始されるまでの間、前記揮発性メモリ内のデータを保持可能な容量に設定されたキャパシタと、
を備えたことを特徴とする保護制御装置。
【請求項2】
前記演算ユニットは、不揮発性メモリを備え、
前記演算部は、前記第1の電源電圧の供給が停止したとき、前記キャパシタからの電源電圧の供給を受けて前記揮発性メモリ内に保持されている複数のデータの中から重要度の高いデータを読み出して前記不揮発性メモリへ転送し、当該データの転送後に前記キャパシタからの電源電圧の供給を絶つことを特徴とする請求項1に記載の保護制御装置。
【請求項3】
前記電源ユニットは、
前記第1の端子部に接続可能に形成された第2の端子部と、
前記第2の電源電圧の供給元であって、前記第2の端子部が前記第1の端子部に接続されたときから前記揮発性メモリ内のデータが読み出されるまでの間、前記揮発性メモリ内のデータを保持可能な容量に設定された蓄電部と、
前記第2の端子部と前記蓄電部との間に介在し、前記第2の端子部が前記第1の端子部に接続されたことを検知して前記蓄電部の出力端と前記第2の端子部とを導通させるスイッチ部と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の保護制御装置。
【請求項4】
前記蓄電部は、電池または大容量キャパシタにて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の保護制御装置。
【請求項5】
前記第1の端子部には、前記電源ユニットより供給される前記第2の電源電圧を前記揮発性メモリに供給する第1の電源ピンが形成され、
前記第2の端子部には、前記スイッチ部を介して前記蓄電部の出力を前記揮発性メモリに供給すべく前記第1の電源ピンと接触可能に形成された第2の電源ピンが形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の保護制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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