説明

保護回路

【課題】 小型化可能な保護回路を提供する。
【解決手段】 保護回路1は、FET3、抵抗素子5、ツェナーダイオード7及び通電素子20を備える。FET3のドレインD及びソースSは、電源ラインB上のノードND1及びND2に接続される。FET3のゲートGは、抵抗素子を介して電源ラインGND上のノードND3に接続される。電源ラインB上のノードND2と電源ラインGND上のノードND5との間に、ツェナーダイオード7及び通電素子20が設けられる。ツェナーダイオード7の降伏電圧は、FET3のソースS及びゲートG間の耐電圧以下である第1の電圧に設定される。ツェナーダイオード7に逆方向バイアスが加えられ、ツェナーダイオード7が降伏する時だけ、通電素子20は、ノードND4とノードND5との間を通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ電源等の直流電源が逆に接続された場合、及びサージ電圧等の過電圧が直流電源ラインに生じた場合、ECU(electronic control unit)等の電子回路を保護する保護回路等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両に搭載されるバッテリを交換する時、バッテリの極性を逆接続してしまう場合がある。バッテリの極性を逆接続した結果、通常とは逆方向に電流が流れ、車両内の電子回路を破壊してしまう恐れがある。このため、一般に、車両又は車両内の電子機器は、バッテリの逆接続時に電子回路を保護する保護回路を備える。
【0003】
特許文献1の図1は、保護回路1を開示し、保護回路1は、PチャンネルFET3を備え、バッテリ電源等の直流電源が逆に接続された場合、PチャンネルFET3は、オフされ、回路4a等の電子回路を保護することができる。
【0004】
特許文献1の図1に示される保護回路1は、パワーツェナーダイオード8も備え、パワーツェナーダイオード8は、ロードダンプ時のサージ電圧を吸収することができる(特許文献1の段落[0014])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−37933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図1に示される保護回路1内のパワーツェナーダイオード8の形状は、大型であるため、保護回路1の全体の実装面積も、大きくなってしまう。また、特許文献1の図2及び図3は、パワーツェナーダイオード8の代わりに、双方向パワーパワーツェナーダイオード9,9'又はバリスタ11が必要であることを開示し、この場合も、保護回路1の全体の実装面積が、大きくなってしまう。言い換えれば、サージ電圧等の過電圧から回路4a等の電子回路を保護する例えばパワーツェナーダイオード8、双方向パワーパワーツェナーダイオード9,9'、バリスタ11等の専用の保護素子を直流電源ライン(+)と接地電源ライン(GND)との間に設ける場合、保護回路1が大きくなってしまう、又は部品点数が増加してしまう。
【0007】
本発明の1つの目的は、小型化可能な保護回路等を提供することである。本発明の他の目的は、以下に述べる複数の形態及び好ましい実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う複数の形態のうちの幾つかの形態を例示する。
【0009】
本発明に従う第1の形態は、ゲート、ドレイン及びソースを有するPチャンネルFETであって、前記ドレインが直流電源ライン上の直流電源の側の第1のノードに接続され、前記ソースが前記直流電源ライン上の電子回路の側の第2のノードに接続され、前記ゲートが接地電源ライン上の前記直流電源の側の第3のノードに接続される、PチャンネルFETと、
一端及び他端を有する抵抗素子であって、前記一端が第4のノードで前記PチャンネルFETの前記ゲートと接続され、前記他端が前記第3のノードと接続される、抵抗素子と、
カソード及びアノードを有する第1のツェナーダイオードであって、前記カソードが前記第2のノードに接続され、前記アノードが前記第4のノードに接続される、第1のツェナーダイオードと、
少なくとも第1の端及び第2の端を有する通電素子であって、前記第1の端が前記第4のノードに接続され、前記第2の端が前記接地電源ライン上の前記電子回路の側の第5のノードに接続される通電素子と、
を備え、
前記第1のツェナーダイオードの降伏電圧は、前記PチャンネルFETの前記ソース及び前記ゲート間の耐電圧以下である第1の電圧に設定され、
前記第1のツェナーダイオードに逆方向バイアスが加えられ、前記第1のツェナーダイオードが降伏する時だけ、前記通電素子は、前記第4のノードと前記第5のノードとの間を通電することを特徴とする保護回路に関係する。
【0010】
直流電源が逆に接続される場合、即ち、直流電源の正電極が接地電源ラインに接続され、直流電源の負電極が直流電源ラインに接続される場合、PチャンネルFETはオフされて、PチャンネルFETは、第1のノードと第2のノードとの間を断絶し、従って、逆接続から電子回路を保護することができる。直流電源が正常に接続される場合、即ち、直流電源の正電極が直流電源ラインに接続され、直流電源の負電極が接地電源ラインに接続される場合、PチャンネルFETはオンされて、PチャンネルFETは、第1のノードと第2のノードとの間を通電し、従って、電子回路は、直流電源で正常に動作することができる。
【0011】
PチャンネルFETのゲートとソースとの間には、即ち、第2のノードと第4のノードとの間には、第1のツェナーダイオードが設けられ、ここで、第1のツェナーダイオードの降伏電圧は、PチャンネルFETのソース及びゲート間の耐電圧以下である第1の電圧に設定されている。従って、第1のツェナーダイオードは、PチャンネルFETを保護している。このような第1のツェナーダイオードは、特許文献1の図1のツェナーダイオード7に対応する。
【0012】
第1のツェナーダイオードと接地電源ラインとの間には、抵抗素子だけでなく、通電素子も設けられている。即ち、第4のノードと第3のノードとの間には抵抗素子が設けられ、その抵抗素子と並列に、第4のノードと第5のノードとの間には、通電素子が設けられている。加えて、直流電源ラインに過電圧が加わり、即ち、第1のツェナーダイオードに逆方向バイアスが加えられ、第1のツェナーダイオードが降伏する時だけ、通電素子は、第4のノードと第5のノードとの間を通電する。従って、第1のツェナーダイオード及び通電素子の双方で、過電圧から電子回路を保護することができる。言い換えれば、過電圧は、第1のツェナーダイオード及び通電素子の双方の電力損失により効率良く分散される。
【0013】
このように、第1のツェナーダイオードは、PチャンネルFETを保護するだけでなく、通電素子と協働して、電子回路を保護することができる。従って、特許文献1の図1のパワーツェナーダイオード8等の専用の保護素子を直流電源ラインと接地電源ラインとの間に設ける必要がなく、本発明に従う第1の形態によれば、小型の保護回路を提供することができる。言い換えれば、特許文献1の図1のパワーツェナーダイオード8は、通電素子と協働するPチャンネルFETに相当する部分だけ、大きくなってしまう。
【0014】
第1の形態において、前記通電素子は、ゲート、ドレイン及びソースを有するNチャンネルFETであってもよく、前記第1の端は、前記NチャンネルFETの前記ドレインであってもよく、前記第2の端は、前記NチャンネルFETの前記ソースであってもよく、
前記抵抗素子は、直列接続される第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子を有してもよく、
前記NチャンネルFETの前記ゲートは、前記第1の抵抗素子と前記第2の抵抗素子との間に設けられる第6のノードに接続されてもよい。
【0015】
直流電源ラインに過電圧が加わり、即ち、第1のツェナーダイオードに逆方向バイアスが加えられ、第1のツェナーダイオードが降伏する時、第2のノードと第4のノードとの間は、第1の電圧(第1のツェナーダイオードの降伏電圧)が保たれる。この時、第4のノードの電位と接地電源ラインとの間の電圧は、第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子で抵抗分割され、第6のノード(第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子の接続ノード)と接地電源ラインとの間の電圧は、NチャンネルFETのゲート電圧として、NチャンネルFETに加わる。このゲート電圧によりNチャンネルFETがオンされ、第2のノードの電位はクランプされる。第2のノードと接地電源ラインとの間の電圧(クランプ電圧)は、第1の抵抗素子の抵抗値と第2の抵抗素子の抵抗値とを調整することで、任意の値に設定することができる。言い換えれば、想定される過電圧の大きさに応じて、第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子を含む保護回路を設計することができ、保護回路を設計する時の自由度が向上する。
【0016】
第1の形態において、前記通電素子は、カソード及びアノードを有する第2のツェナーダイオードであってもよく、前記第1の端は、前記第2のツェナーダイオードの前記カソードであってもよく、前記第2の端は、前記第2のツェナーダイオードの前記アノードであってもよい。
【0017】
直流電源ラインに過電圧が加わり、即ち、第1のツェナーダイオードに逆方向バイアスが加えられ、第1のツェナーダイオードが降伏する時、第2のノードと接地電源ラインとの間の電圧(クランプ電圧)は、抵抗素子で任意の値に設定することはできないが、抵抗素子を単一の素子で構成することができる。従って、保護回路を構成する部品点数を少なくすることができる。
【0018】
前記第1のツェナーダイオードが降伏する場合、前記第2のノード及び前記第5のノード間の電圧である第2の電圧は、前記第1の電圧と前記第4のノード及び前記第5のノード間の電圧である第3の電圧とを加算した値に設定されてもよい。
【0019】
直流電源ラインに過電圧が加わり、第1のノード及び第5のノード間の電圧が過電圧に伴って急激に上昇しても、過電圧は、第1のツェナーダイオード及び通電素子の双方で吸収される。従って、第2のノード及び第5のノード間の電圧(第2の電圧)は、過電圧に伴って急激に上昇することなく、第1の電圧(第1のツェナーダイオードの降伏電圧)と第3の電圧(例えば、NチャンネルFETのドレイン・ソース間電圧、第2のツェナーダイオードの降伏電圧等)とを加算した値に保つことができる。
【0020】
第1の形態において、前記直流電源は、車両に搭載されるバッテリであってもよく、
前記バッテリで動作可能なアクチュエータ又は前記バッテリを充電可能なオルタネータが、前記直流電源ラインと前記接地電源ラインとの間に設けられてもよく、
前記アクチュエータが動作している状態で前記バッテリと前記アクチュエータとの間の電気的通電が遮断した時、又は前記オルタネータが前記バッテリを充電している状態で前記バッテリと前記オルタネータとの間の電気的通電が遮断した時、前記第1のツェナーダイオードに前記逆方向バイアスの最大値が加えられてもよい。
【0021】
アクチュエータが動作している状態でバッテリとアクチュエータとの間の電気的通電が遮断した時、又はオルタネータがバッテリを充電している状態でバッテリとオルタネータとの間の電気的通電が遮断した時、最大の過電圧が発生した場合であっても、第1のツェナーダイオード及び通電素子(例えば、NチャンネルFET、第2のツェナーダイオード等)の双方で、過電圧から電子回路を保護することができる。
【0022】
当業者は、本発明に従う複数の形態の各々が、本発明の精神を逸脱することなく、変形され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に従う保護回路の概略構成例を示す。
【図2】本発明に従う保護回路の他の概略構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に説明する好ましい実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0025】
1.第1の実施形態
図1は、本発明に従う保護回路の概略構成例を示す。図1の例において、保護回路1は、PチャンネルFET3、抵抗素子5、第1のツェナーダイオード7及び通電素子20を備える。図1の例において、電気機器4は、電子回路4aを保護する保護回路1を備えるが、電気機器4の外部に保護回路1が設けられてもよい。電子回路4a又は電子機器4は、保護回路1を介して直流電源21からの電力を供給され、例えばECUを構成することができる。図1の例において、電子機器4は、第1の端子T1及び第2の端子T2を備え、第1の端子T1は、直流電源電圧ライン上の電位Bを入力し、第2の端子T2は、接地電源電圧ライン上の電位GNDを入力する。
【0026】
図1の例において、PチャンネルFET3は、ゲートG、ドレインD及びソースSを有し、PチャンネルFET3の寄生ダイオード3aが描かれている。PチャンネルFET3は、例えばPチャンネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成される。PチャンネルFET3のソースSは、直流電源ラインB上の直流電源21の側の第1のノードND1に接続され、PチャンネルFET3のドレインDは、直流電源ラインB上の電子回路4aの側の第2のノードND2に接続される。PチャンネルFET3のゲートGは、接地電源ラインGND上の直流電源21の側の第3のノードND3に接続され、具体的には、抵抗素子5を介して、第3のノードND3に接続される。
【0027】
図1の例において、抵抗素子5は、第1の抵抗素子5a及び第2の抵抗素子5bで構成され、抵抗素子5の一端(第1の抵抗素子5aの一端)は、第4のノードND4でPチャンネルFET3のゲートGに接続され、第1の抵抗素子5aの他端及び第2の抵抗素子5bの一端は、第6のノードND6に接続され、抵抗素子5の他端(第2の抵抗素子5bの他端)は、第3のノードND3に接続される。
【0028】
直流電源21が正常に接続される場合、即ち、直流電源21の正電極+が直流電源ラインBに接続され、直流電源21の負電極−が接地電源ラインGNDに接続される場合、抵抗素子5(第1の抵抗素子5a及び第2の抵抗素子5b)を介してPチャンネルFET3のゲートGが接地電源ラインGNDに接続される。従って、PチャンネルFET3はオンされて、PチャンネルFET3は、第1のノードND1と第2のノードND2との間を通電し、直流電源21の電源電圧がほぼそのまま電子回路4aに供給される。電子回路4aは、例えば定電圧回路(図示せず)を有し、直流電源21の電源電圧を一定電圧(例えば3[V]、5[V]等)に変換する。定電圧回路は内部電源と呼ぶこともでき、電子回路4aは、例えばマイコン(図示せず)等の制御部を有し、マイコン又は制御部は、定電圧回路又は内部電源からの一定電圧(及び接地電源ラインGNDからの接地電圧)で動作することができる。
【0029】
なお、直流電源21が逆に接続される場合、即ち、直流電源21の正電極+が接地電源ラインGNDに接続され、直流電源21の負電極−が直流電源ラインBに接続される場合、PチャンネルFET3はオフされて、PチャンネルFET3は、第1のノードND1と第2のノードND2との間を断絶する。従って、PチャンネルFET3は、直流電源ラインB上を流れようとする電子回路4aから直流電源21への電流を遮断し、逆接続から電子回路4aを保護することができる。
【0030】
図1の例において、第1のツェナーダイオード7は、カソードC及びアノードAを有し、第1のツェナーダイオード7のカソードCは、第2のノードND2に接続され、第1のツェナーダイオード7のアノードAは、第4のノードND4に接続される。直流電源21が正常に接続される状態で、直流電源ラインBに直流電源21の電源電圧だけでなく、所定の過電圧が加わる時、第1のツェナーダイオード7(第2のノードND2と第3のノードND4との間、従って第2のノードND2と第4のノードND4との間)に逆方向バイアスが加えられ、第1のツェナーダイオード7が降伏する。第1のツェナーダイオード7が降伏する時、第2のノードND2と第4のノードND4との間は、第1の電圧(第1のツェナーダイオードの降伏電圧)が保たれる。第1のツェナーダイオード7の降伏電圧は、PチャンネルFET3のソースS及びゲートG間の耐電圧以下である第1の電圧に設定されるので、第1のツェナーダイオード7は、PチャンネルFET3を保護することができる。
【0031】
図1の例において、通電素子20は、ゲートG、ドレインD及びソースSを有するNチャンネルMOSFET等のNチャンネルFET20aで構成され、NチャンネルFET20aの寄生ダイオード20bが描かれている。通電素子20の第1の端(NチャンネルFET20aのドレインD)は、第4のノードND4に接続され、通電素子20の第2の端(NチャンネルFET20aのソースS)は、接地電源ラインGND上の電子回路4aの側の第5のノードND5に接続される。通電素子20の第3の端(NチャンネルFET20aのゲートG)は、第1の抵抗素子5aと第2の抵抗素子5bとの間に設けられる第6のノードND6に接続される。
【0032】
図1の例において、第1のツェナーダイオード7と接地電源ラインGNDとの間には、通電素子20(NチャンネルFET20a)だけでなく、抵抗素子5(第1の抵抗素子5a及び第2の抵抗素子5b)も設けられている。第1のツェナーダイオード7が降伏する時、第2のノードND2と第4のノードND4との間は、第1の電圧(第1のツェナーダイオード7の降伏電圧)が保たれる。この時、第4のノードND4の電位と接地電源ラインGNDとの間の電圧は、第1の抵抗素子5a及び第2の抵抗素子5bで抵抗分割され、第6のノードND6(第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子の接続ノード)と接地電源ラインGNDとの間の電圧は、NチャンネルFET20aのゲート電圧として、NチャンネルFET20aに加わる。このゲート電圧によりNチャンネルFET20aがオンされる。なお、通電素子20は、NチャンネルFET20aの代わりに、バイポーラトランジスタで構成するスイッチング素子であってもよい。
【0033】
第1のツェナーダイオード7が降伏する時だけ、NチャンネルFET20a等の通電素子20は、第4のノードND4と第5のノードND5との間を通電する。従って、第1のツェナーダイオード7及び通電素子20の双方で、過電圧から電子回路4aを保護することができる。言い換えれば、過電圧は、第1のツェナーダイオード7及び通電素子20の双方の電力損失により効率良く分散される。このように、第1のツェナーダイオード7は、PチャンネルFET3を保護するだけでなく、通電素子20と協働して、電子回路4aを保護することができる。従って、特許文献1の図1のパワーツェナーダイオード8等の専用の保護素子を直流電源ラインBと接地電源ラインGNDとの間に設ける必要がなく、小型の保護回路1が提供される。
【0034】
図1の例において、NチャンネルFET20aがオンされ、第4のノードND4と第5のノードND5との間が通電される時、第2のノードND2の電位はクランプされる。即ち、クランプ電圧又は第2の電圧(第2のノードND2及び第5のノードND5間の電圧)は、第1の電圧(第1のツェナーダイオード7の降伏電圧)と第3の電圧(第4のノードND4及び第5のノードND5間の電圧である、NチャンネルFET20aがオンされる時のNチャンネルFET20aのドレイン・ソース間電圧)とを加算した値を表す。第1のツェナーダイオード7が降伏する場合、第2の電圧は、過電圧に伴って急激に上昇することなく、第1の電圧と第3の電圧とを加算した値に保つことができる。
【0035】
第1の抵抗素子5aの抵抗値をR1、第2の抵抗素子5bの抵抗値をR2、NチャンネルFET20aの閾値をVthとする場合、第3の電圧(NチャンネルFET20aがオンされる時のNチャンネルFET20aのドレイン・ソース間電圧)は、(R1+R2)/R2×Vthで表すことができる。
【0036】
ところで、第1の電圧が一定(第1のツェナーダイオード7の降伏電圧)である場合であっても、クランプ電圧又は第2の電圧は、第1の抵抗素子5aの抵抗値と第2の抵抗素子5bの抵抗値とを調整すること、即ち、第3の電圧を調整することで、任意の値に設定することができる。言い換えれば、想定される過電圧の大きさに応じて、第3の電圧及びクランプ電圧又は第2の電圧を設定した上で、保護回路1(及び保護回路1及び電子回路4aを備える電子機器4)を設計することができ、保護回路1又は電子機器4を設計する時の自由度が向上する。
【0037】
また、第1の電圧を調整することで、第1のツェナーダイオード7にかかる電力の負荷とNチャンネルFET20aにかかる電力との負荷との間の比率を調整することもできる。言い換えれば、第1のツェナーダイオード7及びFET20aの能力に応じて、第1の電圧及び第3の電圧を設定した上で、保護回路1又は電子機器4の部品を選定する時の自由度も向上する。
【0038】
図1の例において、直流電源21は、例えば、車両(図示せず)に搭載されるバッテリで構成することができ、直流電源ラインBと接地電源ラインGNDとの間に直流電源21又はバッテリを充電可能なオルタネータ21を設けることができる。オルタネータ21は、例えばエンジン等の原動機(図示せず)の回転運動によって発電電圧を得ることができ、発電電圧でバッテリを充電することができる。なお、オルタネータ21の発電量は、エンジンの回転数等に基づき電子回路4aで調整してもよい。
【0039】
オルタネータ21がバッテリを充電している状態で、例えばバッテリ又は直流電源21の正極+と直流電源ラインBとの間の電気的通電が断線、端子外れ等で遮断し、従って、バッテリ又は直流電源21とオルタネータ21との間の電気的通電が遮断した時、いわゆるロードダンプ時の過電圧(サージ電圧)が直流電源ラインBに加わる。サージ電圧の最大値は、理論的又は実験的に求めることができ、サージ電圧の最大値に対応する逆方向バイアスの最大値が第1のツェナーダイオード7に加えられても、第1のツェナーダイオード5及びNチャンネルFET20aの双方で、サージ電圧から電子回路4aを保護することができるように、保護回路1を設計することができる。
【0040】
2.第2の実施形態
図2は、本発明に従う保護回路の他の概略構成例を示す。図2において、図1の符号と同一の符号は、図1の構成と同一の構成を示し、その同一の構成についての説明を省略する。
【0041】
図2の例において、通電素子20は、カソードC及びアノードAを有する第2のツェナーダイオードで20c構成される。通電素子20の第1の端(第2のツェナーダイオード20cのカソードC)は、第4のノードND4に接続され、通電素子20の第2の端(第2のツェナーダイオード20cのアノードA)は、接地電源ラインGND上の電子回路4aの側の第5のノードND5に接続される。
【0042】
図2の例において、第1のツェナーダイオード7及び第2のツェナーダイオード20cが降伏する時、第2のノードND2と第4のノードND4との間は、第1の電圧(第1のツェナーダイオード7の降伏電圧)が保たれ、第4のノードND4と第5のノードND5との間は、第3の電圧(第2のツェナーダイオード20cの降伏電圧)が保たれる。第1のツェナーダイオード7が降伏する時だけ、第2のツェナーダイオード20c等の通電素子20は、第4のノードND4と第5のノードND5との間を通電する。従って、第1のツェナーダイオード7及び通電素子20の双方で、過電圧から電子回路4aを保護することができる。このように、第1のツェナーダイオード7は、PチャンネルFET3を保護するだけでなく、第2のツェナーダイオード20cと協働して、電子回路4aを保護することができる。従って、特許文献1の図1のパワーツェナーダイオード8等の専用の保護素子を直流電源ラインBと接地電源ラインGNDとの間に設ける必要がなく、小型の保護回路1が提供される。
【0043】
図2の例において、第1のツェナーダイオード7及び第2のツェナーダイオード20cが降伏する時、第2のノードND2の電位はクランプされる。即ち、クランプ電圧又は第2の電圧(第2のノードND2及び第5のノードND5間の電圧)は、第1の電圧(第1のツェナーダイオード7の降伏電圧)と第3の電圧(第2のツェナーダイオード20cの降伏電圧)とを加算した値を表す。第1のツェナーダイオード7が降伏する場合、第2の電圧は、過電圧に伴って急激に上昇することなく、第1の電圧と第3の電圧とを加算した値に保つことができる。
【0044】
ところで、抵抗素子5は、単一の抵抗素子で構成することができ、保護回路1を構成する部品点数を少なくすることができる。図2の例において、第1の電圧が一定(第1のツェナーダイオード7の降伏電圧)である場合、クランプ電圧又は第2の電圧は、抵抗素子5の抵抗値を調整しても、第3の電圧(第2のツェナーダイオード20cの降伏電圧)を調整することができず、任意の値に設定することができない。
【0045】
但し、第1の電圧及び第3の電圧を調整することで、第1のツェナーダイオード7にかかる電力の負荷と第2のツェナーダイオード20cにかかる電力との負荷との間の比率を調整することもできる。言い換えれば、第1のツェナーダイオード7及び第2のツェナーダイオード20cの能力に応じて、第1の電圧及び第3の電圧を設定した上で、保護回路1又は電子機器4の部品を選定する時の自由度は向上する。
【0046】
図2の例において、直流電源21は、例えば、車両(図示せず)に搭載されるバッテリで構成することができ、直流電源ラインBと接地電源ラインGNDとの間に直流電源21又はバッテリで動作可能なアクチュエータ22を設けることができる。アクチュエータ22は、例えばエンジン等の原動機(図示せず)のクランク軸を回転させるスタータであり、スタータ又はアクチュエータ22は、例えばイグニッションスイッチ24のオンを検出し、原動機を始動させることができる。なお、スタータ又はアクチュエータ22は、電子回路4aで制御されてもよい。
【0047】
アクチュエータ22が動作している状態で、例えばバッテリ又は直流電源21の正極+と直流電源ラインBとの間の電気的通電が遮断し、従って、バッテリ又は直流電源21とアクチュエータ22との間の電気的通電が遮断した時、サージ電圧が直流電源ラインBに加わる。サージ電圧の最大値は、理論的又は実験的に求めることができ、サージ電圧の最大値に対応する逆方向バイアスの最大値が第1のツェナーダイオード7に加えられても、第1のツェナーダイオード5及び第2のツェナーダイオード20cの双方で、サージ電圧から電子回路4aを保護することができるように、保護回路1を設計することができる。
【0048】
なお、図2の例において、アクチュエータ22の代わりに又はアクチュエータ22に加えて、図1のオルタネータ23が設けられてもよく、代替的に、図2の例において、アクチュエータ22及びイグニッションスイッチ24の少なくとも1つを省略してもよい。また、図1の例において、オルタネータ23の代わりに又はオルタネータ23に加えて、図2のアクチュエータ22及びイグニッションスイッチ24の少なくとも1つが設けられてもよく、代替的に、図1の例において、オルタネータ23を省略してもよい。
【0049】
なお、本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0050】
1・・・保護回路、3・・・PチャンネルFET、3a・・・寄生ダイオード、4・・・電子機器、4a・・・電子回路、5・・・抵抗素子、5a・・・第1の抵抗素子、5b・・・第2の抵抗素子、7・・・第1のツェナーダイオード、20・・・通電素子、20a・・・NチャンネルFET、20b・・・寄生ダイオード、20c・・・第2のツェナーダイオード、21・・・直流電源、22・・・アクチュエータ、23・・・オルタネータ、24・・・イグニッションスイッチ、A・・・アノード、B・・・直流電源ライン、C・・・カソード、D・・・ドレイン、ND1〜ND6・・・ノード、G・・・ゲート、GND・・・接地電源ライン、S・・・ソース、T1,T2・・・端子、+・・・正極、−・・・負極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート、ドレイン及びソースを有するPチャンネルFETであって、前記ドレインが直流電源ライン上の直流電源の側の第1のノードに接続され、前記ソースが前記直流電源ライン上の電子回路の側の第2のノードに接続され、前記ゲートが接地電源ライン上の前記直流電源の側の第3のノードに接続される、PチャンネルFETと、
一端及び他端を有する抵抗素子であって、前記一端が第4のノードで前記PチャンネルFETの前記ゲートと接続され、前記他端が前記第3のノードと接続される、抵抗素子と、
カソード及びアノードを有する第1のツェナーダイオードであって、前記カソードが前記第2のノードに接続され、前記アノードが前記第4のノードに接続される、第1のツェナーダイオードと、
少なくとも第1の端及び第2の端を有する通電素子であって、前記第1の端が前記第4のノードに接続され、前記第2の端が前記接地電源ライン上の前記電子回路の側の第5のノードに接続される通電素子と、
を備え、
前記第1のツェナーダイオードの降伏電圧は、前記PチャンネルFETの前記ソース及び前記ゲート間の耐電圧以下である第1の電圧に設定され、
前記第1のツェナーダイオードに逆方向バイアスが加えられ、前記第1のツェナーダイオードが降伏する時だけ、前記通電素子は、前記第4のノードと前記第5のノードとの間を通電することを特徴とする保護回路。
【請求項2】
前記通電素子は、ゲート、ドレイン及びソースを有するNチャンネルFETであり、前記第1の端は、前記NチャンネルFETの前記ドレインであり、前記第2の端は、前記NチャンネルFETの前記ソースであり、
前記抵抗素子は、直列接続される第1の抵抗素子及び第2の抵抗素子を有し、
前記NチャンネルFETの前記ゲートは、前記第1の抵抗素子と前記第2の抵抗素子との間に設けられる第6のノードに接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の保護回路。
【請求項3】
前記通電素子は、カソード及びアノードを有する第2のツェナーダイオードであり、前記第1の端は、前記第2のツェナーダイオードの前記カソードであり、前記第2の端は、前記第2のツェナーダイオードの前記アノードであることを特徴とする請求項1に記載の保護回路。
【請求項4】
前記第1のツェナーダイオードが降伏する場合、前記第2のノード及び前記第5のノード間の電圧である第2の電圧は、前記第1の電圧と前記第4のノード及び前記第5のノード間の電圧である第3の電圧とを加算した値に設定されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の保護回路。
【請求項5】
前記直流電源は、車両に搭載されるバッテリであり、
前記バッテリで動作可能なアクチュエータ又は前記バッテリを充電可能なオルタネータが、前記直流電源ラインと前記接地電源ラインとの間に設けられ、
前記アクチュエータが動作している状態で前記バッテリと前記アクチュエータとの間の電気的通電が遮断した時、又は前記オルタネータが前記バッテリを充電している状態で前記バッテリと前記オルタネータとの間の電気的通電が遮断した時、前記第1のツェナーダイオードに前記逆方向バイアスの最大値が加えられることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の保護回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−222885(P2012−222885A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83800(P2011−83800)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】