説明

保護機能を備えた電動機制御装置

【課題】簡易な構成でアラーム停止を回避できる保護機能を備えた電動機制御装置を得ること。
【解決手段】コントローラから指令ないしは起動信号を受け取り、各種の機械を駆動するモータを制御し、前記コントローラへ動作完了信号を出力する電動機制御装置において、実効負荷率もしくは当該電動機制御装置と前記モータと前記機械との少なくともいずれか一つの温度に関する物理量を観測或いは推測し、過負荷になる可能性が高いと判断した場合に、前記コントローラから次の指令ないしは起動信号を受け取ってから、動作完了信号を前記コントローラに出力するまでの間における待機時間を引き延ばす過負荷回避動作を行う構成を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械を駆動するモータを制御する電動機制御装置に関し、特に保護機能を備えた電動機制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ制御装置としては、サーボアンプやインバータなど各種あるが、本明細書では、サーボアンプを例に挙げて説明する。サーボアンプは、上位コントローラから位置指令あるいは速度指令を受け取り、サーボモータからモータ位置あるいはモータ速度をフィードバック信号として取り込み、モータ位置あるいはモータ速度を指令に追従させるように位置制御あるいは速度制御を行ってサーボモータに電圧を印加することで、サーボモータのモータ位置あるいはモータ速度を制御するように構成される。
【0003】
ところで、各種機械を駆動するサーボモータは、サーボアンプから供給される駆動電流による発熱などにより加熱される。負荷が大きい場合などにおいてサーボモータに過度な電流が流れた場合、サーボモータは、発熱による焼損や永久磁石の減磁などにより損傷してしまうという問題がある。一方、サーボアンプについても、過度の電流を流れた場合、サーボアンプ内のスイッチング素子が損傷してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、従来では、サーボモータやサーボアンプを損傷してしまわないように、過負荷になる可能性が高まった場合は、過負荷アラームとしてサーボアンプを非常停止することにより、過負荷を防止する保護機能が一般的に備えられている。また、過負荷以外にも、過回生や過電圧・不足電圧などの非常時には、アラームを発生してサーボアンプを非常停止する保護機能が一般的に備えられている。
【0005】
しかし、このようなサーボアンプを非常停止する措置を講じた場合、ユーザ側では、停止・起動の繰り返しに対応する余分な手間が発生し、停止後再起動するための余分な段取り時間が発生し、アラーム停止による余分な歩留まりが発生し、アラーム停止による機械破損の可能性が発生する、などの問題が起こる。
【0006】
そのため、極力アラーム非常停止とならないように動作するサーボアンプをユーザに提供できることが望まれており、このような要請に応える種々の提案がなされている(例えば、特許文献1,2等)。
【0007】
特許文献1では、過負荷になる可能性が高まったと判断した場合、過負荷とならないような速度パターンに修正し、その速度指令にて運転を行う技術が提案されている。具体的には、モータ温度が高くなった場合に、速度指令の加減速時定数を下げて駆動電流を減らすことで、過負荷を防止するという技術である。
【0008】
また、特許文献2では、過負荷になる可能性が高まったと判断した場合、リミッタを利用し、速度変化もしくは電流リミットを下げて加速度・電流を下げた運転を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−194807号公報
【特許文献2】特開平11−122964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、本発明が対象とするサーボアンプは、一般産業機械用サーボアンプのように、指令パターンを生成する上位コントローラから指令をもらって動作するタイプのサーボアンプである。これに対して、特許文献1に記載の技術は、サーボアンプ内部に速度指令パターン生成部を有する場合の技術であるので、本発明が対象とするサーボアンプでは、利用が困難である。
【0011】
すなわち、上位コントローラから指令をもらって動作するタイプのサーボアンプに、かりに、特許文献1に記載の技術を適用する場合は、上位コントローラに対し実効負荷率や電流などのデータをリアルタイムに送付し、上位コントローラにて過負荷に関する判断・対策を行う必要がある。
【0012】
そうすると、上位コントローラでは過負荷判断・対策に遅れが発生し、上位コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量が増加し、上位コントローラのソフトウェア負荷の増大が発生するという問題が起こる。上位コントローラのソフトウェア負荷の増大は、機械ユーザのソフトウェア開発の増大にも繋がり好ましくない。また、特に上位コントローラからパルス列指令を受け取るパルス列タイプのサーボアンプの場合には、これらのデータ送信用に特別な配線を用意する必要があり、省配線の面で望ましくない。
【0013】
この点、特許文献2に記載の技術では、電流リミットを下げると、駆動電流が減り、結果として過負荷が防止できる。本方式であれば、上位コントローラに依存せずサーボアンプ単体での過負荷回避動作も可能である。また、同様に速度リミットやトルクリミットを行えば過回生アラーム回避動作も可能である。
【0014】
しかし、リミッタで制限する動作は非線形動作であるので、特許文献2に記載の技術のように、これらをリミッタで制限するという方式を用いた場合には、振動やショックを増大させる可能性がある。また、アウターループ(位置ループなど)を組んだ場合に非線形動作によりハンチングや不安定を引き起こす可能性がある。それらの不安定を防止するた方策としては、リミッタ時の飽和量を再帰計算などで計算しなおしたり、飽和量をフィードバックしたりするなどの手法も存在するが、プログラムが増大・複雑になり、開発に大きな負荷が掛かることや、演算負荷が大きく演算時間が長くなるなど、新たな問題が発生する。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でアラーム停止を回避できる保護機能を備えた電動機制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するために、本発明は、コントローラから指令ないしは起動信号を受け取り、各種の機械を駆動するモータを制御し、前記コントローラへ動作完了信号を出力する電動機制御装置において、実効負荷率もしくは当該モータ制御装置と前記モータと前記機械との少なくともいずれか一つの温度に関する物理量を観測或いは推測し、過負荷になる可能性が高いと判断した場合に、前記コントローラから次の指令ないしは起動信号を受け取ってから、動作完了信号を前記コントローラに出力するまでの間における待機時間を引き延ばす過負荷回避動作を行う構成を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過負荷アラーム停止となるような過負荷の発生を予知した場合、待機時間を引き延ばすようにしたので、サイクルタイムが長くなり、実効負荷率を下げる方向に動作させることができ、簡易な構成で過負荷アラーム停止を回避することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、この発明の実施の形態1による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す過負荷回避回路の構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、通常モード時と過負荷回避モード時とでの動作内容を比較して示す動作波形の一例を示す応答波形図である。
【図4】図4は、図1に示す過負荷回避回路の他の構成例(シーケンス構成例)を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、この発明の実施の形態2による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態3による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、この発明の実施の形態4による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる保護機能を備えた電動機制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。図1において、まず、上位コントローラ1と、本実施の形態1による保護機能を備えた電動機制御装置であるサーボアンプ2aと、位置検出器3aが取り付けられているサーボモータ3との関係を説明する。
【0021】
上位コントローラ1は、位置指令aをサーボアンプ2aに出力する。サーボアンプ2aは、位置指令aに、サーボモータ3からフィードバックされる位置検出器3aにて検出されたモータ位置bが追従するようにサーボモータ3を駆動する。
【0022】
サーボアンプ2aは、位置決め動作が完了すると、位置決め完了信号cを上位コントローラ1に送信する。上位コントローラ1は、位置決め完了信号cを受け取ると、サーボアンプ2aの動作完了を認識し、次の動作シーケンスへと移り、サーボアンプ2aないしは他のサーボアンプへ位置指令を出力する。これの繰り返しにより、図示しない各種の機械が所望の状態に制御される。
【0023】
さて、サーボアンプ2aは、一般には、位置偏差演算器4、位置制御部5、速度演算器6、速度偏差演算器7、速度制御部8、トルク制御部9、および位置決め完了判定部10を備えているが、本実施の形態1では、過負荷アラーム停止を回避する手段として、過負荷回避回路11と、遅延回路12とを追加して設けてある。
【0024】
位置偏差演算器4は、上位コントローラ1から得られる位置指令aとサーボモータ3の位置検出器3aからフィードバックされたモータ位置bとから位置偏差dを演算して出力する。位置制御部5は、位置偏差dに基づいて位置制御を行って速度指令eを出力する。速度演算器6は、フィードバックされたモータ位置bに擬似微分演算などを実施してモータ速度fを演算して出力する。
【0025】
速度偏差演算器7は、位置制御出力である速度指令eとモータ速度fとから速度偏差gを演算して出力する。速度制御部8は、速度偏差gを受けて速度制御を行い、トルク指令hを出力する。トルク制御部9は、トルク指令hを受けて電流制御を行い、トルク指令h通りにモータ3が動くように駆動電圧を供給する。
【0026】
位置決め完了判定部10は、位置指令aとモータ位置bとの偏差を取ってドループ信号を作成し、そのドループ信号がドループ基準範囲内に入っているか否かを判定した位置決め完了信号iを出力する。
【0027】
ここで、過負荷回避回路11は、実効負荷率jを入力とし、例えば、図2や図4に示す構成によって、過負荷回避動作時に、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iに与える遅延時間の生成を行い、生成した遅延時間kを遅延回路12に出力する。
【0028】
遅延回路12は、過負荷回避回路11からの遅延時間kがゼロである場合は、遅延処理を行わず、位置決め完了判定部10からの位置決め完了信号iをそのまま位置決め完了信号cとしてコントローラ1へ出力する。一方、過負荷回避回路11からの遅延時間kがゼロではなく、或る値(Tdi)である場合は、遅延回路12は、位置決め完了判定部10からの位置決め完了信号iを遅延時間Tdiだけ遅延させた位置決め完了信号cをコントローラ1へ出力する遅延処理を行う。
【0029】
次に、図2は、図1に示す過負荷回避回路11の構成例を示すブロック図である。過負荷回避回路11は、例えば図2に示すように、実効負荷率偏差演算部13と、スイッチ部14と、実効負荷率制御部15と、制限器16とを備えている。
【0030】
実効負荷率偏差演算部13は、実効負荷率基準値mと実効負荷率jとの実効負荷率偏差nを演算して出力する。なお、実効負荷率基準値mとしては、事前に過負荷非常停止となるレベルよりも低い値が設定されている。スイッチ部14は、過負荷回避動作のオン(実行:過負荷回避モード)/オフ(非実行:通常モード)を決定する。実効負荷率制御部15は、例えばPI制御などを行って、実効負荷率偏差nに応じて、位置決め完了決定部10が決定した位置決め完了信号iの送出を遅延させる遅延時間量pを決定する。制限器16は、入力される遅延時間量pに遅延時間の制限範囲を適用した遅延時間kを遅延回路12に出力する。
【0031】
次に、図3をも参照して、動作について説明する。なお、図3は、通常モード時と過負荷回避モード時とでの動作内容を比較して示す動作波形の一例を示す応答波形図である。図3では、(a)過負荷アラーム停止が起こらない運転状態である通常モード時の応答波形と、(b)過負荷アラーム停止が起こる可能性が高い運転状態の場合に行われる過負荷回避モード時の応答波形とが示されている。
【0032】
実効負荷率jに目立った上昇気配が無く実効負荷率基準値m以下であり、過負荷アラーム停止が起こるような過負荷になる可能性の低い通常モード時では、過負荷回避回路11では、スイッチ部14がオフしていて後段の実効負荷率制御部15以降は動作しない。遅延回路12は、過負荷回避回路11からの遅延時間kがゼロであり遅延処理を行わない。そのため、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iが、そのまま位置決め完了信号cとしてサーボアンプ2aの位置決めが完了すると同時に出力される。
【0033】
図3(a)において、通常モード時では、速度指令20に少し遅れて実速度21が追従し、速度指令払出完了22から若干時間の経過後に実速度21がほぼ零23に収束する。位置指令aとモータ位置bとの位置偏差dであるドループ信号も同様の動作をするため、速度指令払出完了22から若干時間の経過後にドループ信号がドループ基準範囲内に収束し、実速度21がほぼ零23に収束するタイミングで、位置決め完了信号cが低レベルから高レベルに立ち上がる。これによって、上位コントローラ1は、位置決め完了信号cの入力を認識し、次の動作シーケンスへ移行し、新たな位置指令aをサーボアンプ2aに出力する。
【0034】
一方、上位コントローラ1から適切でない位置指令aが入ってきた場合や、負荷が増大した場合、あるいは主回路電圧が低下した場合などにより、実効負荷率jが実効負荷率基準値mを超えて上昇し、過負荷アラーム停止が起こるような過負荷になる可能性が高まった場合は、過負荷回避回路11では、スイッチ部14がオンとなって、後段の実効負荷率制御部15が動作し、過負荷回避モードとなる。
【0035】
過負荷回避モードでは、実効負荷率制御部15にて位置決め完了信号iに与える遅延時間量pが決定され、制限器16にて上下限の制限処理されたゼロでない遅延時間kが遅延回路12に出力され、遅延回路12にて位置決め完了信号iを遅延時間kだけ遅延させて位置決め完了信号cとする動作(過負荷回避動作)が行われる。
【0036】
具体的に説明する。図2において、過負荷アラーム停止が起こるような過負荷になる可能性が高まると、実効負荷率基準値mに対し実効負荷率jが大きな値となるため、実効負荷率偏差nは負の値となる。そこで、実効負荷率制御部15は、実効負荷率jが下がるように位置決め完了信号iに与える遅延時間量pを増大する方向に制御する。
【0037】
そうすると、図3(b)において、通常モード時では速度指令払出完了22から若干時間の経過後に実速度21がほぼ零23に収束するタイミングで低レベルから高レベルに立ち上がっていた位置決め完了信号cが、過負荷回避モード時では、過負荷回避回路11から得られた遅延時間k=Tdiだけ遅延させたタイミングで低レベルから高レベルに立ち上がる位置決め完了信号cとして出力される。これによって、上位コントローラ1は、位置決め完了信号cの入力を遅延時間k=Tdiだけ遅れて認識することになり、次の位置指令aの入力時期が通常モード時よりも遅延時間k=Tdiだけ遅れることになる。
【0038】
このように、位置決め完了信号iの送出を遅延させると、上位コントローラ1から次の位置指令aが入力されるまでの待機時間が通常モード時よりも長くなる。その結果、実効負荷率jが下がり、実効負荷率基準値mを下回ることとなり、実効負荷率偏差jは正の値となる。これにより、実効負荷率制御部15は、今度は実効負荷率jが上がるように、位置決め完了信号iに与える遅延時間量pを減らす方向に制御する。位置決め完了信号iの送出を遅延させる時間が前回よりも少し短くなる。以上の動作が繰り返されて、実効負荷率jは、実効負荷率基準値mに近づくように、位置決め完了信号iに与える遅延時間量pが増減制御される。
【0039】
要するに、サーボアンプ2aでは、過負荷回避モードになると、各動作シーケンスにおける位置指令aの入力を待機する時間が延びることになる。その結果、図3(a)(b)に示すように、サーボアンプ2aの過負荷回避モード時でのサイクルタイム25は、通常モード時でのサイクルタイム24から、遅延時間Tdiだけ増加することになる。サーボアンプ2aでは、サイクルタイムが引き延ばされると、その分だけ実効負荷率が下がることになるので、過負荷アラーム停止となるような過負荷が起こる状況でも、過負荷アラーム停止が回避されることになる。
【0040】
次に、過負荷回避回路11の他の構成例を説明する。図2は、過負荷回避回路11が過負荷回避動作を線形制御的に行う場合の構成例であるが、例えば図4に示すように、過負荷回避回路11は、過負荷回避動作をシーケンス制御的に行う構成も可能である。なお、図4は、図1に示す過負荷回避回路11の他の構成例(シーケンス構成例)を説明するフローチャートである。図4では、各処理ステップは、符号Sを付して表してある。
【0041】
図4において、最初のS1では、事前に何らかの方法で設定されている過負荷回避モード突入レベル・回避レベルを入力する。そして、電流値等から演算された実効負荷率を観測し(S2)、現在の動作状態が過負荷回避モード中か否かを判断する(S3)。S3での判断結果、過負荷回避モード中で無い場合(S3:No)は、実効負荷率が回避モード突入レベルよりも大きいか否かを判断する(S4)。
【0042】
S4での判断結果、実効負荷率が回避モード突入レベルよりも小さい場合(S4:No)は、遅延時間の生成を行わずに本手順を終了し、通常モードを継続する。一方、S4での判断結果、実効負荷率が回避モード突入レベルよりも大きい場合(S4:Yes)は、過負荷回避モードに突入し(S5)、送出する位置決め完了信号を遅延させる処理を行い(S6)、本手順を終了する。
【0043】
ここで、S6での遅延時間は、現行運転パターンでの、ある時定数期間における実効負荷率の低減率と位置決め回数などに基づいて必要な遅延時間を推測して設定すればよい。例えば、ある時定数期間Tでの位置決め回数をN回とし、そのときの実効負荷率をJとし、実効負荷率Jをα%低減させた実効負荷率J’=α/100×Jとするための遅延時間Tdiは、次の式(1)で求めることが可能である。
Tdi={(100/α)−1}T/N …(1)
【0044】
但し、式(1)は、停止中の実効負荷がおよそ無視できる場合に適用されるので、上下軸などのアンバランストルクがある場合や静止摩擦が大きい場合など、停止時に何らかのトルクを発生させているケースではその分の補正が必要となる。
【0045】
また、先のS3の判断において、過負荷回避モード中である場合(S3:Yes)、実効負荷率が回避モード離脱レベルよりも大きいか否かを判断する(S7)。その結果、実効負荷率が回避モード離脱レベルを超過している場合(S7:Yes)は、過負荷回避モードでの動作を継続し、本手順を終了する。
【0046】
その結果、S1〜S3を経由したS7において、実効負荷率が回避モード離脱レベルよりも小さくなった場合(S7:No)は、過負荷回避モードを離脱し(S8)、遅延時間を元の値に戻し(S9)、本手順を終了する。このようなシーケンスを行えば、過負荷回避モードへの突入・離脱を繰り返すチャタリングを発生させること無しに、サイクルタイムを引き延ばす過負荷回避動作を行うことが可能となる。
【0047】
このように、本実施の形態1によれば、過負荷アラーム停止となるような過負荷の発生を予知した場合、位置決め完了の通知を遅延させ待機時間を引き延ばすようにしたので、サイクルタイムが長くなり、実効負荷率を下げる方向に動作させることができ、過負荷アラーム停止を回避することができる。
【0048】
このとき、サーボアンプ単体で過負荷対策ができるので、コントローラは過負荷を意識する必要が無い。したがって、コントローラの負荷削減、コントローラのユーザソフトウェア作成の簡易化、構成の単純化、コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量削減などを実現できる。
【0049】
また、待機時間を引き延ばす方式であれば、サーボアンプ単体でトルク制限や速度制限する方法と違って線形動作するので、ショックや振動は発生しない。不安定・ハンチングを発生させない。サーボアンプの構成が単純、演算量が少ないなどの効果がある。
【0050】
さらに、サーボモータの動き方自体が変わらないため、特性変動の心配が無い。次のサイクルタイムでの過負荷アラーム停止を回避することができる。サーボモータは、とりあえず指令どおりに動作するので、例えば他軸と同期・補間動作を行っている場合に同期性が損なわれにくいなどの効果もある。
【0051】
なお、本実施の形態1では、遅延回路12を用いて位置決め完了信号iを遅延させて位置決め完了信号cとする場合を説明したが、遅延の形態は、これに限定されるものではない。例えば、遅延回路12を用いずに、過負荷回避回路11が生成した遅延時間kを位置決め完了判定部10に与え、位置決め完了判定部10において、遅延時間kに応じて、ドループ基準範囲を狭くしたり、ドループ演算値自体を遅延させたりする方法など、故意に遅延時間を生成する方法であればいかなる方法でも構わない。
【0052】
また、実効負荷率演算は、通常ばらつきを抑えるために長い時定数のフィルタを用いて演算されるが、フィルタ時定数分だけアラーム回避動作が遅れてしまう場合は、別途短い時定数フィルタを準備し、フィルタを準備した短い時定数フィルタに切り替えて、その短い時定数フィルタを用いて計算した実効負荷率を用いてアラーム回避動作を行えばよい。
【0053】
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図5では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、本実施の形態2に関わる部分を中心に説明する。
【0054】
本実施の形態2では、遅延する対象を位置指令に変更した場合について説明する。すなわち、図5に示すように、本実施の形態2による保護機能を備えた電動機制御装置であるサーボアンプ2bでは、図1(実施の形態1)に示した構成において、過負荷回避回路11と遅延回路12とを削除し、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号をそのまま位置決め完了信号cとして上位コントローラに出力する。その代わり、上位コントローラからの位置指令aを遅延させて取り込む遅延回路27と、過負荷回避回路28とが設けられている。
【0055】
過負荷回避回路28は、実施の形態1にて説明した内容の実効負荷率jを入力とし、上位コントローラからの位置指令aに与える遅延時間の変更を行い、変更した遅延時間kを遅延回路27に出力する。なお、位置指令aに与える遅延時間の変更は、例えば、マルチタップの遅延ブロックから必要な箇所のデータを取り出すなどの方法で実現可能である。
【0056】
遅延回路27は、過負荷回避回路28からの遅延時間kがゼロである場合は、上位コントローラからの位置指令aをそのまま位置偏差演算器4と位置決め完了判定部10とに出力するが、過負荷回避回路28からの遅延時間kがゼロでなく或る値T1を有する場合には、位置指令aを遅延時間T1だけ遅延させて位置偏差演算器4と位置決め完了判定部10とに出力する。
【0057】
この構成では、過負荷回避動作時に位置偏差演算器4と位置決め完了判定部10とは、それぞれ、遅延回路27にて遅延された位置指令を用いて偏差の演算を行う。但し、位置決め完了判定部10は、遅延前の位置指令aを用いてもよい。
【0058】
以上のように位置指令aの取り込みを遅延させる場合でも、その遅延分だけ位置指令を受け取ってから位置決め完了信号を吐き出すまでの時間が延びることになり、待機時間を引き延ばすことができる。その結果、実施の形態1と同様に、サイクルタイムが延びることにより、実効負荷率が下がるため、過負荷アラーム停止となる過負荷が起こる状況であっても、過負荷アラーム停止を回避することが可能になる。
【0059】
このように、本実施の形態2では、過負荷アラーム停止となるような過負荷の発生を予知した場合、位置指令の取り込みを遅延させて待機時間を引き延ばすようにしたので、実施の形態1と同様に、サイクルタイムが長くなり、実効負荷率を下げる方向に動作させることができ、過負荷アラーム停止を回避することができる。
【0060】
加えて、本実施の形態2では、実施の形態1に比べて次のような効果が得られる。
(1)実施の形態1では、位置決め完了信号を遅延させるので、動作してからの待ち時間が長くなるのに対し、本実施の形態2では、位置指令を遅延させるので、待ってから動作を行うことになり、実効負荷率が早めに下がり、過負荷回避動作時間が短くなる効果が得られる。
【0061】
(2)また、ある運転サイクル中に過負荷回避モードに入った場合に、自軸の次サイクルの動作が遅延されることになるので、(今回サイクルの後の)他軸の動作は遅らせることなく継続して動作完了できる効果も得られる。この点、実施の形態1では、位置決め完了信号を遅延させるので、(自軸の今回サイクルの後の)他軸の動作が遅延させられてしまうことが起こるという難点がある。
【0062】
(3)さらに、もし自軸のサーボアンプの動作開始を待って他の軸と同期を行うようなシーケンスが組まれていたケースの場合、本実施の形態2による方が、同期性を損なわないという効果も発生する。
【0063】
実施の形態3.
図6は、本発明の実施の形態3による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図6では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、本実施の形態3に関わる部分を中心に説明する。
【0064】
図6において、本実施の形態3による保護機能を備えた電動機制御装置であるサーボアンプ2cでは、図1(実施の形態1)に示した構成において、実効負荷率jを入力とする過負荷回避回路11に代えて、回生負荷率rを入力とする過回生回避回路31が設けられている。
【0065】
過回生回避回路31に入力される回生負荷率rは、例えば、回生コンバータの回生電流や回生トランジスタのオン/オフの回数・デューティーなどを基に逐次計算されるものである。過回生回避回路31は、過負荷回避回路11と同様の考えで、過回生回避動作を行うものであり、図2や図4に示した構成と類似の構成を有している。
【0066】
次に、動作について説明する。過回生回避回路31は、入力される回生負荷率rに目立った上昇気配がなく基準値を下まわり、過回生アラーム停止となるような過回生になる可能性が低い場合には、過回生回避動作を行わず、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iに与える遅延時間を生成しないので、遅延回路12への遅延時間kはゼロである。つまり、遅延回路12は、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iをそのまま位置決め完了信号cとして出力する。
【0067】
このように、過回生アラーム停止となるような過回生とならない通常の動作の場合は、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iは、サーボアンプ2cの位置決めが完了すると同時に出力される。
【0068】
一方、過回生回避回路31は、入力される回生負荷率rが基準値を超えて上昇し、過回生アラーム停止となるような過回生になる可能性が高くなった場合には、過回生回避動作を行い、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iに与える遅延時間を生成し、生成したゼロでない遅延時間kを遅延回路12に出力する。
【0069】
これによって、上位コントローラ1に出力される位置決め完了信号cは、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iに、過回生回避回路31にて生成された遅延時間kだけの遅延処理が施された信号となる。
【0070】
上位コントローラ1は、サーボアンプ2cの位置決め完了信号cを待って次の動作シーケンスへと移行するので、サーボアンプ2cでは、次の動作シーケンスにおける位置指令aの入力を待機する時間が延びることになる。その結果、サーボアンプ2cの過回生回避動作時でのサイクルタイムは、通常の過回生とならないような動作時よりも増加することになる。サーボアンプ2cでは、サイクルタイムが引き延ばされると、回生負荷率が下がることになり、過回生アラーム停止となるような過回生が起こる状況でも、過回生アラーム停止が回避されることになる。
【0071】
このように、本実施の形態3によれば、過回生アラーム停止となるような過回生の発生を予知した場合、位置決め完了の通知を遅らせて待機時間を引き延ばすようにしたので、サイクルタイムが長くなり、回生負荷率を下げる方向に動作させることができ、過回生アラーム停止を回避することができる。
【0072】
このとき、サーボアンプ単体で過回生対策ができるので、コントローラは過回生を意識する必要が無い。したがって、コントローラの負荷削減、コントローラのユーザソフトウェア作成の簡易化、構成の単純化、コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量削減などを実現できる。
【0073】
また、待機時間を引き延ばす方式であれば、サーボアンプ単体でトルク制限や速度制限する方法と違い、線形動作するのでショックや振動が発生しない。不安定・ハンチングを発生させない。サーボアンプの構成が単純、演算量が少ないなどの効果がある。
【0074】
さらに、サーボモータの動き方自体が変わらないため、特性変動の心配が無い。次のサイクルタイムでの過回生アラーム停止を回避することができる。サーボモータは、とりあえず指令どおりに動作するので、例えば他軸と同期・補間動作を行っている場合に同期性が損なわれにくいなどの効果もある。
【0075】
なお、本実施の形態3では、遅延回路12を用いて位置決め完了信号iを遅延させて位置決め完了信号cとする場合を説明したが、遅延の形態は、これに限定されるものではない。例えば、遅延回路12を用いずに、過回生回避回路31が生成した遅延時間kを位置決め完了判定部10に与え、位置決め完了判定部10において、遅延時間kに応じて、ドループ基準範囲を狭くしたり、ドループ演算値自体を遅延させたりする方法など、故意に遅延時間を生成する方法であればいかなる方法でも構わない。
【0076】
実施の形態4.
図7は、本発明の実施の形態4による保護機能を備えた電動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図7では、図1(実施の形態1)に示した構成要素と同一ないしは同等である構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、本実施の形態4に関わる部分を中心に説明する。
【0077】
図7において、本実施の形態4による保護機能を備えた電動機制御装置であるサーボアンプ2dでは、図1(実施の形態1)に示した構成において、実効負荷率jを入力とする過負荷回避回路11に代えて、母線電圧などの主回路電圧sを入力とする電圧アラーム回避回路41が設けられている。
【0078】
電圧アラーム回避回路41は、過負荷回避回路11と同様の考えで、過電圧・不足電圧の回避動作を行うものであり、図2や図4に示した構成と類似の構成を有している。
【0079】
次に、動作について説明する。電圧アラーム回避回路41は、入力される主回路電圧sに目立った上昇変化・下降変化の気配がなく、過電圧・不足電圧になる可能性が低い場合には、遅延処理を行う電圧アラーム回避動作を行わず、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iに与える遅延時間を生成しないので、遅延回路12への遅延時間kはゼロである。つまり、遅延回路12は、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iをそのまま位置決め完了信号cとして出力する。
【0080】
このように、過電圧・不足電圧とならないような通常の動作の場合は、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iは、サーボアンプ2dの位置決めが完了すると同時に出力される。
【0081】
一方、電圧アラーム回避回路41は、入力される主回路電圧sが基準値を超えて上昇し、過電圧になる可能性が高くなった場合には、遅延処理を行う過電圧回避動作を行い、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iに与える遅延時間を生成し、生成したゼロでない遅延時間kを遅延回路12に出力する。
【0082】
これによって、上位コントローラ1に出力される位置決め完了信号cは、位置決め完了判定部10が判定した位置決め完了信号iに、電圧アラーム回避回路41にて生成された遅延時間kだけの遅延処理が施された信号となる。
【0083】
上位コントローラ1は、サーボアンプ2dからの位置決め完了信号cを待って次の動作シーケンスへと移行するので、サーボアンプ2dでは、次の動作シーケンスにおける位置指令aの入力を待機する時間が延びることになる。サーボアンプ2dでは、待機時間内はサーボ動作を行わないため、高くなりかけた主回路電圧sが抑制されることになり、次の運転サイクルにおいて過電圧となる可能性を下げることが可能になる。
【0084】
なお、図7では示していないが、過電圧になる可能性が高くなった場合、過電圧アラーム回避信号を上位コントローラ1に送信し、上位コントローラ1が過電圧の発生を回避するように、動作シーケンスや指令パターンの変更を行うという手法も可能である。
【0085】
また、電圧アラーム回避回路41は、入力される主回路電圧sが瞬停などで基準値以下に下降し、不足電圧になる可能性が高くなった場合は、遅延処理を行う不足電圧回避動作が行われ、上記と同様に位置決め完了信号iの遅延処理が行われる。その結果、遅延処理による待機時間の間はサーボ運転を行わないため、電力消費が減り、主回路電圧sの低下を減少させることができ、次の運転サイクルにおいて、不足電圧となる可能性を下げることが可能となる。
【0086】
なお、図7では示していないが、不足電圧になる可能性が高くなった場合、不足電圧アラーム回避信号を上位コントローラに送信し、上位コントローラが不足電圧の発生を回避するように、動作シーケンスや指令パターンの変更を行うという手法も可能である。
【0087】
ここで、図7では、電圧アラーム回避回路41は、主回路電圧を監視する場合を示したが、電圧値自体を検出する手段を有しない場合などにおいては、主回路電圧が過電圧の閾値レベルを超過したことを判断するフラグや、不足電圧の閾値レベルを下回ったことを判断するフラグを監視するようにしてもよい。
【0088】
なお、本実施の形態4では、遅延回路12を用いて位置決め完了信号iを遅延させて位置決め完了信号cとする場合を説明したが、遅延の形態は、これに限定されるものではない。例えば、遅延回路12を用いずに、電圧アラーム回避回路41が生成した遅延時間kを位置決め完了判定部10に与え、位置決め完了判定部10において、遅延時間kに応じて、ドループ基準範囲を狭くしたり、ドループ演算値自体を遅延させたりする方法など、故意に遅延時間を生成する方法であればいかなる方法でも構わない。
【0089】
このように、本実施の形態4によれば、過電圧アラーム停止となるような過電圧の発生を予知した場合や、不足電圧アラーム停止となるような不足電圧の発生を予知した場合には、位置決め完了の通知を遅らせて待機時間を引き延ばすようにしたので、主回路電圧の上昇を抑える、或いは、主回路電圧の減少を少なくすることができ、次運転サイクルでの過電圧アラーム停止や不足電圧アラーム停止を回避することができる。
【0090】
このとき、サーボアンプ単体で過電圧・不足電圧対策ができるので、コントローラは過電圧・不足電圧を意識する必要が無い。したがって、コントローラの負荷削減、コントローラのユーザソフトウェア作成の簡易化、構成の単純化、コントローラとサーボアンプとの間のデータ通信量削減などを実現できる。
【0091】
また、待機時間を引き延ばす方式であれば、サーボアンプ単体でトルク制限や速度制限する方法と違い、線形動作するのでショックや振動は発生しない。不安定・ハンチングを発生させない。サーボアンプの構成が単純、演算量が少ないなどの効果がある。
【0092】
さらに、サーボモータの動き方自体が変わらないため、特性変動の心配が無い。次のサイクルタイムでの過電圧・不足電圧のアラーム停止を回避することができる。サーボモータは、とりあえず指令どおりに動作するので、例えば他軸と同期・補間動作を行っている場合に同期性が損なわれにくいなどの効果もある。
【0093】
ここで、本発明は、以上説明した実施の形態1〜4に限定されるものではなく、以下に示す各種の態様が可能である。
【0094】
(1)実施の形態1に対して実施の形態2があるように、本実施の形態3,4に対しても実施の形態2と同様の考えで、位置指令を取り込んでから実際に起動する時間を遅延させて待機時間を引き延ばすようにしてもよい。
【0095】
(2)実施の形態1〜4では、位置制御モードの場合における説明をしているが、速度制御モードや圧力制御モードなどの場合においても同様の動作が可能である。例えば、速度制御モードの場合には、位置指令の代わりに速度指令を用い、位置決め完了信号の代わりに、零速度近傍になったことを検出する零速度検出信号もしくはモータ速度が指令速度に到達したことを検出する速度到達信号(速度一致検出信号)を用いればよい。速度指令ないしは零速度検出信号、速度到達信号を遅延させることで同様の動作を実現できる。
【0096】
(3)実施の形態1,2では、過負荷回避回路への入力は実効負荷率を用いているが、実効負荷率の2乗や推定した負荷率を用いても、過負荷回避動作を行うことが可能である。また、サーボモータやエンコーダ、サーボアンプ、機械などの温度に関連する様々な観測値ないしは推定値を用いても、過負荷回避動作を行うことが可能である。
【0097】
(4)実施の形態1〜4では、サーボアンプのタイプとして、上位コントローラから位置指令・速度指令を受け取って動作するタイプを対象に説明したが、本発明は、上位コントローラから目標位置や起動信号などを受け取りサーボアンプ内部にて指令パターンを生成する位置決め内蔵タイプなどにも同様に適用することができる。
【0098】
この位置決め内蔵タイプなどのサーボアンプを用いる場合は、サーボアンプ内部にて指令を生成するため、起動タイミングを遅らせる動作を実現しようとした場合、起動信号を遅らせるだけでよく、実施の形態2のように指令を遅らせるよりも簡易な回路で遅延処理を行うことができる。
【0099】
(5)また、位置決め内蔵タイプなどのサーボアンプを用いる場合では、サーボアンプ内部で指令パターンを変更することで過負荷・過回生などのアラーム回避を行うことも可能である。この場合、本発明は、動作開始・終了の待ち時間を変更するのみであり、モータの動き方は変わらないため、指令パターンを変更する方式と比較して、特性変動の心配が無いという点で望ましい。また、両者を併用することももちろん可能である。
【0100】
(6)実施の形態1〜4では、サーボアンプを例に挙げて説明したが、インバータなどその他のモータ制御装置でも同様に適用可能であることはいうまでもない。
【0101】
(7)実施の形態1〜4では、遅延時間の大きさをサーボアンプ内で決定しているが、上位コントローラにアラーム回避モードの要否を送信し、上位コントローラから遅延時間を指定してもらう手法も可能である。同期や補間などを行う機械では、他軸との連動が必要であることから上位コントローラで遅延時間を決定できることが望ましい。もちろん、遅延時間をサーボアンプ内にて決定し上位コントローラに送信するという方法や、事前にサーボアンプに設定した遅延時間を上位コントローラにおいて認識しておき、サーボアンプがアラーム回避モードに入ったことを上位コントローラに知らせるという方法などでもよい。
【0102】
(8)また、実施の形態1〜4は、組み合わせての利用も可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上のように、本発明にかかるモータ制御装置は、簡易な構成でアラーム停止を回避できる保護機能を備えたモータ制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0104】
1 コントローラ
2a,2b,2c,2d サーボアンプ
3 サーボモータ(電動機)
3a 位置検出器
4 位置偏差演算器
5 位置制御部
6 速度演算器
7 速度偏差演算器
8 速度制御部
9 トルク制御部
10 位置決め完了判定部
11,28 過負荷回避回路
12,27 遅延回路
13 実効負荷率偏差演算部
14 スイッチ部
15 実効負荷率制御部
16 制限器
31 過回生回避回路
41 電圧アラーム回避回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラから指令ないしは起動信号を受け取り、各種の機械を駆動するモータを制御し、前記コントローラへ動作完了信号を出力する電動機制御装置において、
実効負荷率もしくは当該電動機制御装置と前記モータと前記機械との少なくともいずれか一つの温度に関する物理量を観測或いは推測し、過負荷になる可能性が高いと判断した場合に、前記コントローラから次の指令ないしは起動信号を受け取ってから、動作完了信号を前記コントローラに出力するまでの間における待機時間を引き延ばす過負荷回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項2】
コントローラから指令ないしは起動信号を受け取り、各種の機械を駆動するモータを制御し、前記コントローラへ動作完了信号を出力する電動機制御装置において、
回生負荷率もしくは回生コンバータと回生抵抗体との少なくともいずれか一方の温度に関する物理量を観測或いは推測し、過回生になる可能性が高いと判断した場合に、前記コントローラから次の指令ないしは起動信号を受け取ってから、動作完了信号を前記コントローラに出力するまでの間における待機時間を引き延ばす過回生回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項3】
コントローラから指令ないしは起動信号を受け取り、各種の機械を駆動するモータを制御し、前記コントローラへ動作完了信号を出力する電動機制御装置において、
当該電動機制御装置の主回路電圧値もしくは前記主回路電圧が閾値を超えるのを知らせるフラグを観測し、過電圧になる可能性が高いと判断した場合に、前記コントローラから次の指令ないしは起動信号を受け取ってから、動作完了信号を前記コントローラに出力するまでの間における待機時間を引き延ばす過電圧回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項4】
コントローラから指令ないしは起動信号を受け取り、各種の機械を駆動するモータを制御し、前記コントローラへ動作完了信号を出力する電動機制御装置において、
当該電動機制御装置の主回路電圧値もしくは前記主回路電圧が閾値を下回るのを知らせるフラグを観測し、不足電圧になる可能性が高いと判断した場合に、前記コントローラから次の指令ないしは起動信号を受け取ってから、動作完了信号を前記コントローラに出力するまでの間における待機時間を引き延ばす不足電圧回避動作を行う構成、
を備えたことを特徴とする保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項5】
前記待機時間の引き延ばしは、前記コントローラへ出力する前記動作完了信号を遅延させることにより行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項6】
前記動作完了信号は、位置決め完了信号であることを特徴とする請求項5に記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項7】
前記動作完了信号は、零速度検出信号と速度到達信号の一方または両方であることを特徴とする請求項5に記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項8】
前記待機時間の引き延ばしは、起動タイミングを遅延させることにより行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項9】
前記起動タイミングの遅延は、前記コントローラから入力される前記位置指令もしくは前記速度指令を遅延させることにより行われることを特徴とする請求項8に記載の保護機能を備えた電動機制御装置。
【請求項10】
前記起動タイミングの遅延は、前記コントローラから入力される起動信号を遅延させることによって行われることを特徴とする請求項8に記載の保護機能を備えた電動機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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