説明

保護用具

【課題】感染症の発生をさらに抑制することのできる保護用具を提供する。
【解決手段】チューブ90が生体の皮膚を貫通するチューブ貫通部を感染から保護するための保護用具10であって、チューブ貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部20と、チューブ貫通部を被覆してチューブ貫通部を囲む内部空間P2を形成するための被覆部であってチューブ90を通す部位P1を有する被覆部40と、を有し、前記被覆部40には、蓋80などで開閉自在な開口部P3が設けられてなることを特徴とする保護用具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に埋め込まれたチューブやケーブル等(以下、「チューブ等」という。)の医療用具が生体の皮膚を貫通する部分を感染から保護するための保護用具に関する。また、この保護用具に用いられる部品やこの保護用具を用いた血液ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体内に埋め込まれたチューブ等の医療用具を用いて種々の治療が行われている。例えば、心臓手術の術中・術後における人工心臓の使用、人工透析、腹膜透析などである。これらの治療においては、チューブ等が皮膚を貫通する部分(以下、「チューブ等貫通部」という。)における感染症が、臨床的に大きな問題となっている。これは、チューブ等貫通部においてチューブ等の表面と皮膚近傍の生体組織との結合力が弱いために、外力によってチューブ等の表面と生体組織との間で容易に剥離がおこり、その部分から細菌が皮膚組織内に侵入して感染症を引き起こしてしまうからである。ひとたびチューブ等の貫通部分に感染症が起きてしまうと、チューブ等に沿って感染が生体組織内に深く進展し、敗血症等の重篤な合併症を引き起こす危険性が高まることになる。
【0003】
そこで、本出願人は、この問題を解決するための固定具を開発し、すでに特許出願している(特開2000−140125号参照)。図16は、この固定具の断面図である。図16に示されるように、この固定具910は、チューブ990が生体の皮膚を貫通するチューブ貫通部を感染から保護するための固定具であって、チューブ貫通部の周囲において生体の皮膚902に貼り付けられる貼付部920と、 チューブ貫通部を被覆してチューブ貫通部を囲む内部空間908を形成するための被覆部であってチューブ990を通す部位980を有する被覆部940と、を有している。
【0004】
従って、この固定具910によれば、生体の皮膚を貫通するチューブを動きにくくすることができるため、外力によるチューブと生体組織との剥離が抑制される結果、感染症の発生を効果的に防止することができる。さらに、この固定具910によれば、チューブ貫通部を囲む内部空間908に薬剤を充填することができるため、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−140125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チューブ等貫通部における感染症は、その感染範囲がチューブ等に沿って生体組織内に深く進展・拡大して敗血症等の重篤な合併症を引き起こす危険性が高いため、この感染症の発生をさらに抑制することが求められている。
【0007】
本発明は、この感染症の発生をさらに抑制することのできる保護用具を提供することを目的とする。また、本発明は、このような保護用具に用いられる部品やこのような保護用具を用いた血液ポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の保護用具は、チューブ、ケーブル等(以下、「チューブ等」という。)が生体の皮膚を貫通する部分(以下、「チューブ等貫通部」という。)を、感染から保護するための保護用具であって、
チューブ等貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部と、
チューブ等貫通部を被覆してチューブ等貫通部を囲む内部空間を形成するための被覆部であってチューブ等を通す部位を有する被覆部と、を有し、
前記被覆部には、蓋などで開閉自在な開口部が設けられてなることを特徴とする。
【0009】
このため、本発明の保護用具によれば、被覆部にチューブ等を通す部位があるので、生体の皮膚を貫通するチューブ等を動きにくくすることができる。このため、外力によりチューブ等と生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。また、本発明の保護用具によれば、チューブ等貫通部を囲む内部空間に薬剤を充填することができる。これらのため、感染症の発生を効果的に防止することができる。
【0010】
さらに、本発明の保護用具によれば、被覆部に開閉自在の開口部が設けられてなるため、この開口部を介してチューブ等貫通部への薬剤の補充や、チューブ等貫通部における必要な治療を容易に行うことができ、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。また、この開口部を用いると、チューブ等貫通部への通気を行うことによりチューブ等貫通部を乾燥させることができ、雑菌の繁殖を抑制できる結果、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0011】
なお、前記チューブ等は生体の皮膚又は経皮を貫通しているため、「前記チューブ等貫通部」は「皮膚貫通部」又は「経皮貫通部」と言い替えることもできる。
【0012】
(2)上記(1)に記載の保護用具においては、前記開口部を閉じるための蓋をさらに有することが好ましい。
このように構成すれば、普段は蓋を閉じておけば、外気からチューブ等貫通部への細菌の浸入を防止できるため、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0013】
(3)上記(2)に記載の保護用具においては、前記蓋は通気性を有し、かつ、細菌の浸入を防ぐフィルター機能を有することが好ましい。
このように構成すれば、蓋を閉じることにより水分や細菌の浸入を抑制することができ、さらにその状態でチューブ等貫通部への通気を行うことができるため貫通部を乾燥させることができ、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0014】
(4)上記(3)に記載の保護用具においては、前記蓋は、樹脂材料からなる外周枠と、この外周枠の内側に配置された通気性のあるフィルムと、が一体化された構造を有することが好ましい。一体化は、前記外周枠と前記フォルムとを接着、溶着したり、インサート成形したりすることにより行うことができる。
このように構成すれば、外周枠が樹脂材料からなるため、蓋の開閉を行う際の衝撃が緩和され、外力によりチューブ等と生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。また、蓋を開閉する際の患者の痛みを軽減することができる。また、外周枠と通気性のあるフィルムとを一体化させたため、信頼性の高い構造となっており、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。外周枠は、作業性や密着性の観点から、そのショア硬度Aが50程度であることが好ましい。
【0015】
(5)上記(4)に記載の保護用具においては、前記フィルムはポリウレタンフィルム中にシルクプロテイン粒が分散された構造を有していることが好ましい。この構成は、フィルムにより水や細菌などの浸入を防ぎつつ通気性を確保するのに好適である。
【0016】
上記(4)に記載の保護用具においては、前記フィルムとして、上記の他に、ポリウレタンフィルム中にシルクプロテイン粒が分散された構造を有するフィルムとナイロントリコットフィルムをラミネートしたフィルムも好適に用いることができる。このフィルムは、通気性に優れているため、貫通部を速やかに乾燥させることができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、防水性にも優れるため、湿潤から貫通部を保護することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、強度にも優れるため、作業が容易になりケアが容易になる。また、防菌性があり、貫通部への細菌の浸入を防止することができ、これによっても感染症を抑制することができる。また、透明性があり蓋を開放しなくても内部の状態を観察することが可能となるため、蓋の開閉回数を減らすことができ、結果として感染症を抑制することができる。
【0017】
また、前記フィルムとして、熱可塑性ポリエステルフィルムも好適に用いることができる。このフィルムは、通気性に優れているため、貫通部を速やかに乾燥させることができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、透明性に優れているため、蓋を開放しなくても内部の状態を観察することが容易となり、蓋の開閉回数を減らすことができ、結果として効果的に感染症を抑制することができる。また、強度にも優れるため、作業が容易になりケアが容易になる。また、防水性があるため、湿潤から貫通部を保護することができ、これによっても感染症を抑制することができる。
【0018】
また、前記フィルムとして、ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルムとナイロンフィルムをラミネートしたフィルムや、ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルムと透湿性無孔質フィルムをラミネートしたフィルムも好適に用いることができる。これらのフィルムは、防水性に優れるため湿潤から貫通部を保護することができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、防菌性にも優れるため、貫通部への細菌の浸入を防止することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、強度にも優れるため、作業が容易になりケアが容易になる。また、通気性があるため、貫通部を乾燥させることができ、これによっても感染症を抑制することができる。
【0019】
また、前記フィルムとして、減菌紙も好適に用いることができる。この減菌紙は、通気性に優れているため、貫通部を速やかに乾燥させることができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、防菌性にも優れるため、貫通部への細菌の浸入を防止することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、強度にも優れるため、作業が容易になりケアが容易になる。
【0020】
また、前記フィルムとして、ポリプロピレン不織布も好適に用いることができる。この不織布は、通気性に優れているため、貫通部を速やかに乾燥させることができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、防水性にも優れるため、湿潤から貫通部を保護することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、防菌性があるため、貫通部への細菌の浸入を防止することができ、これによっても感染症を抑制することができる。また、強度もあるため、作業が容易になりケアが容易になる。
【0021】
また、前記フィルムとして、ポリウレタンフィルムも好適に用いることができる。このフィルムは、通気性に優れているため、貫通部を速やかに乾燥させることができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、防水性にも優れるため、湿潤から貫通部を保護することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、防菌性にも優れるため、貫通部への細菌の浸入を防止することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、透明性にも優れるため、蓋を開放しなくても内部の状態を観察することが容易となり、蓋の開閉回数を減らすことができ、結果として感染症を抑制することができる。
【0022】
また、前記フィルムとして、ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルムにポリエチレンフィルムをラミネートしたフィルムも好適に用いることができる。このフィルムは、通気性に優れているため、貫通部を速やかに乾燥させることができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、防水性にも優れるため、湿潤から貫通部を保護することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、防菌性にも優れるため、貫通部への細菌の浸入を防止することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、強度があるため、作業が容易になりケアが容易になる。
【0023】
また、前記フィルムとして、微多孔積層ポリオレフィンフィルムと不織布をラミネートしたフィルムも好適に用いることができる。このフィルムは、通気性に優れているため、貫通部を速やかに乾燥させることができ、効果的に感染症を抑制することができる。また、防水性にも優れるため、湿潤から貫通部を保護することができ、さらに効果的に感染症を抑制することができる。また、強度にも優れるため、作業が容易になりケアが容易になる。
【0024】
外周枠は、ポリエステルエラストマーからなるが好ましい。そうすれば、インサート成型により外周枠とフィルムとの一体構造を容易に成型できる。
【0025】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の保護用具においては、この保護用具にチューブ等を固定するためのチューブ等固定部をさらに有することが好ましい。
このように構成すれば、生体の皮膚を貫通するチューブ等の動きがさらに効果的に抑制され、外力によりチューブ等と生体組織とが剥離してしまうのをさらに効果的に抑制することができる。
【0026】
(7)上記(6)に記載の保護用具においては、前記チューブ等固定部は、前記貼付部又は前記被覆部に固定可能な構造を有するとともに、内周面がチューブ等の外周面に対応し軸方向に切れ込みが入った穴を有することが好ましい。
【0027】
(8)上記(6)に記載の保護用具においては、前記チューブ等固定部は、前記貼付部又は前記被覆部に一体化された構造を有するとともに、内周面がチューブ等の外周面に対応し軸方向に切れ込みが入った穴を有することも好ましい。
【0028】
このため、上記(7)又は(8)に記載の保護用具によれば、チューブ等がこのチューブ等固定部を介して保護用具に固定されるため、生体の皮膚を貫通するチューブ等の動きが確実に抑制される。また。内周面がチューブ等の外周面に対応しているため、チューブ等の動きが確実に抑制されるとともに、チューブ等貫通部を囲む内部空間への細菌の浸入が極力抑制される。また、穴には軸方向に切れ込みが入っているため、チューブ等を穴に通すのが容易になる。
【0029】
チューブ等固定部は、そのショア硬度Aが40程度であることが好ましい。これにより、切り込みを指で開くことができ、保護用具へのチューブ等の固定(脱着)作業が容易になる。また、その材料はシリコーンゴムであることが好ましい。
【0030】
(9)上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の保護用具においては、前記被覆部は、ショア硬度Aが30以上かつ90以下であることが好ましい。
【0031】
ショア硬度Aが90以下であれば、貼付部に応力がかかりにくいため、被覆部との剥離が生じにくくなる。また、貼付部が身体の形状に従って変形するのに柔軟に追随することができるため、床づれなどが起こりにくくなる。また、ショア硬度Aが30以上であれば、ある程度は硬いため貫通部を保持する内部空間の形状を確保することができる。また、この硬度の範囲内であれば蓋を被覆部に取り付けることが容易になる。この観点からいえば、ショア硬度Aが35以上かつ80以下であることがさらに好ましい。被覆部は樹脂からなることが好ましく、なかでもシリコーンゴムからなることがさらに好ましい。
【0032】
(10)上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の保護用具においては、前記貼付部は、粘着層からなる構造を有していることが好ましい。
【0033】
(11)上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の保護用具においては、前記貼付部は、発泡層と粘着層とが積層された構造を有していることも好ましい。
【0034】
このため、上記(10)又は(11)に記載の保護用具によれば、貼付部全体として柔軟なものとなるため、また、皮膚への固定が粘着により行われるため、貼り付ける部分の皮膚形状に従って変形しやすくなり、貼付部の皮膚への固定を円滑に行うことができる。また、床づれなども起こりにくくなる。また、軽量なものとなるため、患者への負担を軽くすることができる。
【0035】
(12)上記(11)に記載の保護用具においては、前記発泡層は、発泡ポリイソブチレンからなることが好ましい。発泡イソブチレンは、軟膏などの薬剤との相性がよいため、多くの薬剤を選択できるようになる。
【0036】
(13)上記(10)乃至(12)のいずれかに記載の保護用具においては、前記粘着層は、皮膚保護剤からなることが好ましい。皮膚保護剤を用いれば、皮膚への負担が軽くなるので、この保護用具を長期間に渡って使用することができる。また、かぶれによる患者への不快感を低減させることができ、さらにかぶれによる皮膚との粘着力の低下を抑制することができる。皮膚保護剤としては、カラヤ系皮膚保護剤、CMC系皮膚保護剤又はカラヤ系とCMC系とが混合された混合系皮膚保護剤を好ましく用いることができ、なかでも、カラヤガム及び柑橘系ペクチンを主原料とする混合系皮膚保護剤を特に好ましく用いることができる。貼付部を使用する前には、粘着層の表面に剥離紙を貼り表面を保護しておくとよい。
【0037】
貼付部の厚さは3.3mm程度が好ましい。この場合、前記貼付部が発泡層と粘着層とが積層された構造を有している場合には、発泡層が1.4mm程度で粘着層が1.9mm程度となる。
貼付部の厚さは貼付部の大きさ等に応じて定められればよい。また、貼付部における開口部の大きさは、作業性を考えると、直径1〜5cm程度が好ましい。
【0038】
(14)上記(1)乃至(13)のいずれかに記載の保護用具においては、前記貼付部は、チューブ等貫通部に対応する開口部を有するとともに、この開口部から外周部に至る切れ込みを有することが好ましい。
このように構成すれば、チューブ等貫通部に対応する開口部を有しているため、チューブ等貫通部を囲むように、貼付部を皮膚に貼り付けることができる。また、開口部から外周部に至る切れ込みを有しているため、貼付部をチューブ等貫通部の周囲に貼り付ける際の作業を円滑に行うことができる。
【0039】
(15)上記(1)乃至(13)のいずれかに記載の保護用具において、前記貼付部は、それぞれがチューブ等貫通部に対応して設けられた凹部を有する2以上の副部材からなることが好ましい。
このように構成すれば、上記凹部をチューブ等貫通部に対向するように配置することにより、チューブ等貫通部を囲むように、貼付部を皮膚に貼り付けることができる。また、貼付部が2以上の副部材に分離されているので、貼付部をチューブ等貫通部の周囲に貼り付ける際の作業を円滑に行うことができる。
【0040】
(16)上記(1)乃至(15)のいずれかに記載の保護用具においては、前記貼付部と被覆部とは別体として構成されてなることが好ましい。
【0041】
このように構成すれば、貼付部と被覆部は、求められる性能が異なることにより構造や材料が異なるため、別体とする方が、無理なく製造することができる。製造工程的に楽だからである。
【0042】
(17)上記(16)に記載の保護用具において、前記貼付部に前記被覆部を固定するための接着剤又は粘着剤が、前記貼付部又は前記被覆部にコートされてなることが好ましい。
このように構成すれば、前記貼付部に前記被覆部を固定する作業を簡便に行うことが可能となる。接着剤又は粘着剤をコートする方法としては、両面テープを貼り付ける方法が特に好ましい。
【0043】
(18)上記(2)乃至(5)のいずれかに記載の保護用具においては、前記被覆部に前記蓋を固定するための接着剤又は粘着剤が、前記被覆部又は前記蓋にコートされてなることが好ましい。
このように構成すれば、前記被覆部に前記蓋を固定する作業を簡便に行うことが可能となる。接着剤又は粘着剤をコートする方法としては、両面テープを貼り付ける方法が特に好ましい。
【0044】
(19)上記(2)乃至(5)のいずれかに記載の保護用具においては、前記被覆部及び前記蓋部は、前記蓋が前記被覆部に対して嵌め込み自在の構造を有してなることが好ましい。
このように構成すれば、前記被覆部に前記蓋を固定したり脱着したりする作業を簡便に行うことが可能となる。
【0045】
(20)上記(7)に記載の保護用具においては、前記貼付部又は前記被覆部に前記チューブ等固定部を固定するための接着剤又は粘着剤が、前記貼付部若しくは前記被覆部又はチューブ等固定部にコートされてなることが好ましい。
このように構成すれば、前記貼付部又は被覆部に前記チューブ等固定部を固定する作業を簡便に行うことが可能となる。接着剤又は粘着剤をコートする方法としては、両面テープを貼り付ける方法が特に好ましい。
【0046】
(21)上記(1)乃至(20)のいずれかに記載の保護用具においては、前記チューブ等が、生体内に埋め込まれた血液ポンプと、この血液ポンプを制御するための外部コントローラと、の接続に用いられるチューブであることが好ましい。
このように構成すれば、血液ポンプの埋め込み手術後における治療をより安全にかつ円滑に行うことができる。
【0047】
(22)上記(1)乃至(20)のいずれかに記載の保護用具においては、前記チューブ等が、生体と人工透析装置との間で血液を循環させるためのチューブであることが好ましい。
このように構成すれば、人工透析による治療をより安全にかつ円滑に行うことができる。
【0048】
(23)上記(1)乃至(20)のいずれかに記載の保護用具においては、前記チューブ等が、腹膜透析を行うために生体に埋め込まれるチューブであることが好ましい。
このように構成すれば、腹膜透析による治療をより安全にかつ円滑に行うことができる。
【0049】
(24)本発明の血液ポンプシステムは、血液ポンプと、この血液ポンプを制御するための外部コントローラと、前記血液ポンプと前記外部コントローラとの接続に用いられるチューブ等と、上記(1)乃至(21)のいずれかに記載の保護用具と、を有することを特徴とする。
【0050】
このため、本発明の血液ポンプシステムによれば、上記したようにチューブ等貫通部において極めて感染症の発生しにくい保護用具を用いているため、血液ポンプの埋め込み手術後における治療に適した血液ポンプシステムとなる。
【0051】
(25)本発明の蓋は、上記(2)に記載の保護用具に用いられる蓋であることを特徴とする。このため、本発明の蓋は、チューブ等貫通部において極めて感染症の発生しにくい保護用具を実現するために特に適した蓋といえる。
【0052】
(26)本発明のチューブ等固定部は、上記(7)に記載の保護用具に用いられるチューブ等固定部であることを特徴とする。このため、本発明のチューブ等固定部は、チューブ等貫通部において極めて感染症の発生しにくい保護用具を実現するために特に適したチューブ等固定部といえる。
【0053】
(27)本発明の被覆部は、上記(1)に記載の保護用具に用いられる被覆部であることを特徴とする。このため、本発明の被覆部は、チューブ等貫通部において極めて感染症の発生しにくい保護用具を実現するために特に適した被覆部といえる。
【0054】
(28)本発明の貼付部は、上記(1)に記載の保護用具に用いられる貼付部であることを特徴とする。このため、本発明の貼付部は、チューブ等貫通部において極めて感染症の発生しにくい保護用具を実現するために特に適した貼付部といえる。
【0055】
(29)本発明の保護用具は、生体の皮膚を貫通して配置される医療用具が皮膚を貫通する部分(以下、「医療用具貫通部」という。)を、感染から保護するための保護用具であって、
医療用具貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部と、
医療用具貫通部を被覆して医療用具貫通部を囲む内部空間を形成するための被覆部と、を有し、
前記被覆部には、蓋などで開閉自在な開口部が設けられてなることを特徴とする。
【0056】
このため、本発明の保護用具によれば、医療用具貫通部が被覆部に囲まれているため、医療用具貫通部に外力がかかりにくくなっていることから、医療用具を動きにくくすることができる。このため、外力により医療用具と生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。
また、本発明の保護用具によれば、医療用具貫通部を囲む内部空間に薬剤を充填することができる。このため、感染症の発生を効果的に防止することができる。
【0057】
さらに、本発明の保護用具によれば、医療用具貫通部を囲む内部空間に開閉自在の開口部が設けられてなるため、この開口部を介して医療用具貫通部への薬剤の補充や、医療用具貫通部における必要な治療を行うことができ、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。また、この開口部を用いて、医療用具貫通部への通気を行うことにより医療用具貫通部を乾燥させることができ、雑菌の繁殖を抑制できる結果、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0058】
(30)上記(29)に記載の保護用具においては、前記開口部を閉じるための蓋をさらに有することが好ましい。
このように構成すれば、普段は蓋を閉じておけば、外気から医療用具貫通部への細菌の浸入を防止できるため、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0059】
(31)上記(30)に記載の保護用具においては、前記蓋は通気性を有し、かつ、細菌の浸入を防ぐフィルター機能を有することが好ましい。
このように構成すれば、蓋を閉じることにより水分や細菌の浸入を抑制することができ、さらにその状態でチューブ等貫通部への通気を行うことができるため貫通部を乾燥させることができ、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0060】
(32)上記(31)に記載の保護用具においては、前記蓋は、樹脂材料からなる外周枠と、この外周枠の内側に配置された通気性のあるフィルムと、が一体化された構造を有することが好ましい。一体化は、前記外周枠と前記フォルムとを接着、溶着したり、インサート成形したりすることにより行うことができる。
このように構成すれば、外周枠が樹脂材料からなるため、蓋の開閉を行う際にかかる力が緩和され、外力により医療用具と生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。また、蓋を開閉する際の患者の痛みを軽減することができる。また、外周枠と通気性のあるフィルムとを一体化させたため、信頼性の高い構造となっており、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0061】
(33)上記(32)に記載の保護用具においては、前記フィルムはポリウレタンフィルム中にシルクプロテイン粒が分散された構造を有していることが好ましい。この構成は、フィルムにより水や細菌などの浸入を防ぎつつ通気性を確保するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態1に係る保護用具の断面図である。
【図2】本発明の実施形態1の変形例に係る保護用具の断面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る保護用具の断面図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る血液ポンプシステムを説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る血液ポンプを説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態3に係るチューブを説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る保護用具の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る保護用具を構成する各部品を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る保護用具を構成する貼付部の三面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る保護用具を構成するチューブ固定部の三面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る保護用具を構成する被覆部の三面図である。
【図12】本発明の実施形態3に係る保護用具を構成する蓋の三面図である。
【図13】本発明の実施形態3に係る保護用具を貫通部に取り付ける際の組み立て工程図である。
【図14】本発明の実施形態3に係る保護用具を貫通部に取り付ける際の組み立て工程図である。
【図15】本発明の実施形態3の変形例に係る保護用具を構成する貼付部の上面図である。
【図16】従来の保護用具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0064】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る保護用具の断面図である。図1に示されるように、保護用具10は、チューブ90が生体の皮膚を貫通するチューブ貫通部を、感染から保護するための保護用具である。そして、この保護用具10は、チューブ貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部20と、チューブ貫通部を被覆してチューブ貫通部を囲む内部空間P2を形成するための被覆部であってチューブを通す部位P1を有する被覆部40とを有している。そして、被覆部40には、蓋80で開閉自在な開口部P3が設けられている。
【0065】
このため、この保護用具10によれば、被覆部40にチューブを通す部位P1があるので、チューブ90を動きにくくすることができる。このため、外力によりチューブ90と生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。また、この保護用具10によれば、チューブ貫通部を囲む内部空間P2に薬剤を充填することができる。これらのため、感染症の発生を効果的に防止することができる。
【0066】
さらに、この保護用具10によれば、チューブ貫通部を囲む内部空間P2に開閉自在の開口部P3が設けられているため、この開口部P3を介してチューブ貫通部への薬剤の補充や、チューブ貫通部における必要な治療を行うことができ、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。また、この開口部P3を用いると、チューブ貫通部への通気が可能となることからチューブ貫通部を乾燥させることができる。この結果、雑菌の繁殖を抑制でき、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0067】
また、普段は蓋80を閉じておけば、外気からチューブ貫通部への細菌の浸入を防止できるため、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0068】
このチューブ90は、生体内に埋め込まれた血液ポンプと、この血液ポンプを制御するための外部コントローラと、の接続に用いられるチューブであることもできる。こうすれば、血液ポンプの埋め込み手術後における治療をより安全にかつ円滑に行うことができる。
【0069】
また、このチューブ90は、生体と人工透析装置との間で血液を循環させるためのチューブであることもできる。こうすれば、人工透析による治療をより安全にかつ円滑に行うことができる。
【0070】
また、このチューブ90は、腹膜透析を行うために生体に埋め込まれるチューブであることもできる。こうすれば、腹膜透析による治療をより安全にかつ円滑に行うことができる。
【0071】
(変形例)
図2は、本発明の実施形態1の変形例に係る保護用具12の断面図である。図2に示されるように、保護用具12は、チューブ92が生体の皮膚を貫通するチューブ貫通部を、感染から保護するための保護用具である。そして、この保護用具12は、チューブ貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部22と、チューブ貫通部を被覆してチューブ貫通部を囲む内部空間P2を形成するための被覆部であってチューブ92を通す部位を有する被覆部42とを有している。そして、被覆部42には、蓋82で開閉自在な開口部P3が設けられている。従って、基本的には、保護用具12は保護用具10と同じ基本構造を有している。
【0072】
しかしながら、保護用具12は、チューブを通すための部位P1の位置が保護用具10のそれと異なっている。すなわち、保護用具10においては、チューブを通すための部位P1が被覆部のほぼ中央部に設けられているのに対して、保護用具12においては、被覆部42の外周部分に設けられている。
このため、保護用具12においては、体内から突出するチューブ92を生体の皮膚面にほぼ平行に配置することができるため、このチューブ92が外力の影響を受けにくくなっている。
【0073】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2に係る保護用具の断面図である。図3に示されるように、保護用具14は、生体の皮膚を貫通して配置される医療用具94が皮膚を貫通する医療用具貫通部を、感染から保護するための保護用具である。そして、この保護用具14は、医療用具貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部24と、医療用具貫通部を被覆して医療用具貫通部を囲む内部空間P2を形成するための被覆部44と、を有している。そして、この被覆部44には、蓋84などで開閉自在な開口部P3が設けられている。
【0074】
このため、この保護用具14によれば、医療用具貫通部が被覆部44に囲まれているため、医療用具貫通部に外力がかかりにくくなっていることから、医療用具94を動きにくくすることができる。このため、外力により医療用具94と生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。
また、この保護用具14によれば、医療用具貫通部を囲む内部空間P2に薬剤を充填することができる。このため、感染症の発生を効果的に防止することができる。
【0075】
さらに、この保護用具14によれば、医療用具貫通部を囲む内部空間P2に開閉自在の開口部P3が設けられてなるため、この開口部P3を介して医療用具貫通部への薬剤の補充や、医療用具貫通部における必要な治療を行うことができ、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。また、この開口部P3を用いて、医療用具貫通部への通気を行うことにより医療用具貫通部を乾燥させることができ、雑菌の繁殖を抑制できる結果、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0076】
また、普段は蓋84を閉じておけば、外気から医療用具貫通部への細菌の浸入を防止できるため、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0077】
また、蓋84は通気性を有している。このため、蓋84を閉じた状態であっても、医療用具貫通部への通気を行うこともできるので、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0078】
(実施形態3)
図4〜図14を用いて、本発明の実施形態3に係る保護用具を説明する。
図4は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を適用した血液ポンプシステム500を説明するための図である。図4に示されるように、第3の実施形態に係る血液ポンプシステム500は、血液ポンプ100と、この血液ポンプ100を制御するための外部コントローラ200と、血液ポンプ100と外部コントローラ200との接続に使用されるチューブ300と、チューブ貫通部を感染から保護するための保護用具400とを備えている。
【0079】
図5は、図4の血液ポンプシステム500に用いられる血液ポンプ100を説明するための図である。図5に示されるように、この血液ポンプ100は、円筒形のモータを有するポンプ基部120と、このポンプ基部120に接続されるポンプ部110を有している。ポンプ部110は、モータの回転軸を介して駆動されるポンプ翼118と、このポンプ翼118を覆う様にポンプ基部に接続されるケーシング116を有している。ケーシング116の端点に設けられた流入口112から左心室A内の血液がケーシング内へ流入し、ケーシング内のポンプ翼118によりエネルギーを付加された後、ケーシングの側面に設けられた流出口114および人工血管Cを経て大動脈Bへ吐出される。
【0080】
ポンプ基部120とポンプ翼118との間には、端面接触式の血液シール(以下、「メカニカルシール」ともいう。)が設けられており、血液成分の浸入によるモータ回転軸の軸受けが凝着するのを防止している。また、ポンプ基部120には、循環液の入口132および出口134が設けられており(図5からは分かりづらいが、入口132と出口134は紙面に垂直方向に分離されて設けられている。)、これら循環液の入口132および出口134は、チューブ300に収容されたインナーチューブ302(図6参照)を介して、コントローラ200に接続されている。コントローラ200中には、循環液用ポンプがあり、この循環液用ポンプによりメカニカルシール近傍にまで循環液を循環させている。その結果、メカニカルシール摺動面の潤滑、冷却及び拡散が行われ、さらにコントローラ200中に設けられたフィルタによって、循環液中へ浸入することがある微量の血液成分を除去することにより、メカニカルシールおよび軸受けの摺動面は常にクリーンに維持される。
血液ポンプ100としては、遠心ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプなどを好適に用いることができる。また、血液シールはメカニカルシールに限定されるものではなく、オイルシール等他の接触式シールも用いることができる。
【0081】
また、外部コントローラ200は、血液ポンプ100のメカニカルシール近傍へ循環液を供給する循環液ポンプ、チューブ300に収容されたケーブル304を介して血液ポンプ100の駆動を電気的に制御するポンプ制御部、これら各手段の動作状態及びデータなどを表示する表示部、外部と情報交換を行う通信部、これら各手段へ電力を供給する電力供給部、及びこれら各手段を制御する制御部とからなるシステム駆動部を有しており、これらの各部はコンパクトな筐体内に収納されている。
【0082】
また、本例においては、外部コントローラ200は手押し車の形態をなしているが、その他に、車椅子状のもの、バッグ状のものもあり、患者の容体および生活環境に適した形態のものが用いられる。さらに、車輪にモータを付加した電動移動型のコントローラも用いられる。
【0083】
図6は、図4の血液ポンプシステム500に用いられるチューブ300を説明するための図である。図6に示されるように、第3の実施形態に係るチューブ300は、血液ポンプ100と、この血液ポンプ100を制御するための外部コントローラ200との接続に使用されるチューブである。そして、このチューブ300は、血液ポンプ100と外部コントローラ200との間に液体を循環させるためのインナーチューブ302と、血液ポンプ100に接続される電線を内部に含むケーブル304と、インナーチューブ302とケーブル304とを収容するアウターチューブ306と、を有している。
【0084】
このため、第3の実施形態に係るチューブ300においては、インナーチューブ302やケーブル304などが生体の動きや外力による引張りや曲げを受けにくいので、インナーチューブ302は変形しにくく、ケーブル304は断線しにくくなっている。また、第3の実施形態に係るチューブ300においては、生体の貫通部分も1ヵ所(チューブ貫通部)ですむので生体への影響を最小限に抑えることができる。
【0085】
第3の実施形態に係るチューブ300は、インナーチューブ302を2本有しており、このインナーチューブを2本用いて、血液ポンプ100と外部コントローラ200との間に純水を循環させている。純水は、血液ポンプのモータ部の冷却剤、血液シール摺動部の潤滑剤、血液ポンプ部とモータ部との間のシール剤として機能する。さらに、純水を血液ポンプとコントローラとの間に循環させることにより、たとえ血液が浸入したとしても血液が純水で薄められて血液の凝固が抑制されるためモータの回転が止まってしまうのを効果的に防止することができる。また、純水を濾過することにより血液成分を除去することができるので、モータの回転が止まってしまうのをさらに効果的に防止することができる。さらにまた、純水を循環させることにより、血液ポンプにおける熱を放散させることができるという効果もある。
【0086】
図7は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を説明するための斜視図である。図8は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成する部品を説明するための説明図である。図9は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成する貼付部420の三面図である。図10は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成するチューブ固定部440の三面図である。図11は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成する被覆部440の三面図である。図12は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成する蓋480の三面図である。
【0087】
図7及び図8に示されるように、実施形態3に係る保護用具400は、チューブ300が生体の皮膚を貫通するチューブ貫通部を感染から保護するための保護用具であって、チューブ貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部420と、チューブ貫通部を被覆してチューブ貫通部を囲む内部空間を形成するための被覆部であってチューブ300を通す部位462を有する被覆部460と、を有している。さらに、この被覆部460には、蓋などで開閉自在な開口部464が設けられている。そして、この保護用具400は、保護用具400にチューブ300を固定するためのチューブ固定部460をさらに有している。さらに、この保護用具400は、開口部を閉じるための蓋480をさらに有している。
【0088】
図9は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成する貼付部420の三面図である。図9に示されるように、貼付部420は、チューブ貫通部に対応する開口部422を有するとともに、この開口部422から外周部に至る切れ込み424を有している。このため、チューブ貫通部を囲むように、貼付部420を皮膚に貼り付けることができる。また、切れ込み424を有しているため、貼付部420をチューブ貫通部の周囲に貼り付ける際の作業を円滑に行うことができる。貼付部420における開口部422の大きさは、作業性を考えて、短径2cm、長径4cmとしている。
【0089】
また、貼付部420には、貼付部420に被覆部460やチューブ固定部440を固定するための両面テープ426が貼り付けられている。このため、貼付部420に被覆部460を固定する作業を簡便に行うことが可能となる。被覆部460やチューブ固定部440に両面テープが貼り付けられていてもよい。
【0090】
また、貼付部420は、発泡層430と粘着層428とが積層された構造を有している。このため、貼付部全体として柔軟なものとなるため、また、皮膚への固定が粘着により行われるため、貼り付ける部分の皮膚形状に従って変形しやすくなり、貼付部の皮膚への固定を円滑に行うことができる。また、床づれなども起こりにくくなる。また、軽量なものとなるため、患者への負担を軽くすることができる。
【0091】
発泡層430は、発泡ポリイソブチレンからなる。発泡イソブチレンは、軟膏などの薬剤との相性がよいため、多くの薬剤を選択することができる。
【0092】
粘着層428は、皮膚保護剤からなる。皮膚への負担が軽くなるので、この保護用具を長期間に渡って使用することができる。皮膚保護剤としては、カラヤガム及び柑橘系ペクチンを主原料とする混合剤を用いた。この貼付部420を使用する前には、粘着層428の表面に剥離紙を貼り表面を保護しておく。
【0093】
貼付部の厚さは、チューブ貫通部の場所、チューブの太さなどにより適宜定められればよいが、実施形態3においては、3.3mmとした。発泡層が1.4mm、粘着層が1.9mmである。
【0094】
なお、貼付部としては、発泡層と粘着層とが積層された構造を有しているものに代えて、粘着層からなる構造を有しているものを好適に用いることもできる。
【0095】
図10は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成するチューブ固定部440の三面図である。図7、8、10に示されるように、実施形態3に係る保護用具400は、チューブ固定部を有している。このため、チューブ300の動きがさらに効果的に抑制され、外力によりチューブ300と生体組織とが剥離してしまうのをさらに効果的に抑制することができる。
【0096】
チューブ固定部440は、両面テープで貼付部420に貼り付けれらるとともに、外周部が被覆部460の凹部462に収納されるように構成されている。また、内周面がチューブ300の外周面に対応し軸方向に切れ込み444が入った穴442を有している。このため、チューブ300がこのチューブ固定部440を介して保護用具400に固定されるため、チューブ300の動きが確実に抑制される。また。内周面がチューブ外周面に対応しているため、チューブ300の動きが確実に抑制されるとともに、チューブ貫通部を囲む内部空間への細菌の浸入が極力抑制される。また、穴442には軸方向に切れ込み444が入っているため、チューブ444を穴に通したり穴から取り外したりするのが容易になる。
【0097】
チューブ固定部440は、そのショア硬度Aが40のシリコーンチューブを用いた。このため、切り込みを指で容易に開くことができ、保護用具へのチューブの固定(脱着)作業が容易になる。
【0098】
なお、チューブ等固定部としては、最初から貼付部に一体化された構造又は最初から被覆部に一体化された構造を有するものも好適に用いることもできる。
【0099】
図11は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成する被覆部460の三面図である。図7、8、11に示されるように、実施形態3に係る保護用具400は被覆部460を有している。このため、チューブ300をさらに動きにくくすることができる。このため、外力によりチューブ300と生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。また、実施形態3に係る保護用具400によれば、チューブ貫通部を囲む内部空間に薬剤を充填することができる。これらのため、感染症の発生を効果的に防止することができる。
【0100】
また、実施形態3に係る保護用具400によれば、被覆部460に開閉自在の開口部464が設けられてなる。このため、この開口部464を介してチューブ貫通部への薬剤の補充や、チューブ貫通部における必要な治療を行うことができ、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。また、この開口部464を用いると、チューブ貫通部への通気を行うことによりチューブ貫通部を乾燥させることができ、雑菌の繁殖を抑制できる結果、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0101】
被覆部460は、ショア硬度Aが40であるシリコーンゴムを用いた。このため、貼付部420に応力がかかりにくいため貼付部420との剥離が生じにくくなる。また、貼付部が身体の形状に従って変形するのに柔軟に追随することができるため、床づれなどが起こりにくくなる。また、ある程度は硬いため内部空間の形状を確保することができる。被覆部460には、さらに蓋480を固定するための両面テープが貼り付けられている。被覆部460に蓋480を固定する作業を簡便に行うことが可能となる。蓋480に両面テープが貼り付けられていてもよい。
【0102】
図12は、本発明の実施形態3に係る保護用具400を構成する蓋480の三面図である。図12に示されるように、実施形態3に係る保護用具400における蓋480は、図12に示されるように、樹脂材料からなる外周枠482と、この外周枠482の内側に配置された通気性のあるフィルム484とが一体化された構造を有している。
【0103】
このため、外周枠482が樹脂材料からなっているため、蓋480の開閉を行う際の衝撃が緩和され、外力によりチューブと生体組織とが剥離してしまうのを効果的に抑制することができる。また、蓋480を開閉する際の患者の痛みを軽減することができる。また、外周枠482と通気性のあるフィルム484とを一体化させたため、信頼性の高い構造となっており、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。外周枠は、ショア硬度Aが50であるポリエステルエラストマーからなる。そして、この外周枠と内周部のフィルムとを、接着、溶着したり、インサート成形したりすることにより一体化させている。
また、通気性のフィルムを用いているので、蓋480を閉じた状態であっても、チューブ貫通部への通気を行うこともでき、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0104】
このフィルム484は、ポリウレタンフィルム中にシルクプロテイン粒が分散された構造を有している。このため、通気性が確保される一方で、フィルムを通して細菌が浸入することはなくなるため、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0105】
実施形態3に係る保護用具400によれば、普段は蓋464を閉じておけば、外気からチューブ貫通部への細菌の浸入を防止できるため、感染症の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0106】
図13及び図14は、本発明の実施形態3に係る保護用具400をチューブ貫通部に取り付ける際の組み立て工程図である。図13及び図14に示されるように、実施形態3に係る保護用具400は、人体の右腹部に貼り付けられる(図4参照。)。
【0107】
(1)まず、貼付部420を粘着層を下にして、チューブ貫通部が開口部422に位置するように、チューブ貫通部の周囲に貼り付ける。このとき、貼付部420の切り込み424を広げて、チューブに外力が加わらないようにする。
(2)次に、両面テープ426の剥離紙を剥がした状態で、チューブ固定部440を貼付部420の所定位置に貼り付ける。このとき、チューブ固定部の切り込みを広げて、チューブに外力が加わらないようにチューブをチューブ固定部に挿入する。
(3)次に、被覆部460を貼付部420の所定位置に貼り付ける。このとき、チューブ固定部440を挟み込むようにする。
(4)次に、被覆部460の開口部464よりチューブ貫通部を消毒する。その後、長期にわたる感染防止のために、被覆部460によって形成されたチューブ貫通部を囲む内部空間に、所定の軟膏薬剤を所定量加える。
(5)最後に、被覆部460の開口部464の部分に、両面テープで、蓋480を貼り付ける。
【0108】
このため、実施形態3に係る保護用具400は、4つの部品を順序良く貼り付けていくだけの工程で組み立てることができるので、生体に過度な外力を加えることなく、すわわち、生体に過度な負担をかけることなく、生体に装着することができる。
【0109】
(変形例)
図15は、本発明の実施形態3の変形例に係る保護用具を構成する貼付部の上面図である。図15に示されるように、この貼付部421は、それぞれがチューブ貫通部に対応して設けられた凹部を有する2つの副部材421aと421bとからなっている。このため、上記凹部をチューブ貫通部に対向するように配置することにより、チューブ貫通部を囲むように、貼付部を皮膚に貼り付けることができる。また、貼付部が2以上の副部材に分離されているので、貼付部をチューブ貫通部の周囲に貼り付ける際の作業を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0110】
10,12,14・・・保護用具
20,22,24・・・貼付部
40,42,44・・・被覆部
60,62・・・チューブ固定部
80,82,84・・・蓋
90,92・・・チューブ
94・・・医療用具
100・・・血液ポンプ
200・・・外部コントローラ
300・・・チューブ
400・・・保護用具
420、421・・・貼付部
422・・・貼付部の開口部
424・・・貼付部の切り込み
426・・・両面テープ
428・・・粘着層
430・・・発泡層
440・・・チューブ固定部
442・・・穴
444・・・切り込み
460・・・被覆部
462・・・被覆部の凹部
464・・・被覆部の開口部
480・・・蓋
482・・・外枠部
484・・・通気性のフィルム
486・・・蓋の取っ手
500・・・血液ポンプシステム
A・・・左心室
B・・・大動脈
C・・・人工血管
D・・・皮膚
E・・・貫通部
P1・・・チューブを通す部位
P2・・・チューブ貫通部を囲む内部空間
P3・・・開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ、ケーブル等(以下、「チューブ等」)が生体の皮膚を貫通する部分(以下、「チューブ等貫通部」という。)を、感染から保護するための保護用具であって、
チューブ等貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部と、
チューブ等貫通部を被覆してチューブ等貫通部を囲む内部空間を形成するための被覆部であってチューブ等を通す部位を有する被覆部と、を有し、
前記被覆部には、蓋などで開閉自在な開口部が設けられてなることを特徴とする保護用具。
【請求項2】
請求項1に記載の保護用具において、前記開口部を閉じるための蓋をさらに有することを特徴とする保護用具。
【請求項3】
請求項2に記載の保護用具において、前記蓋は通気性を有し、かつ、細菌の浸入を防ぐフィルター機能を有することを特徴とする保護用具。
【請求項4】
請求項3に記載の保護用具において、前記蓋は、樹脂材料からなる外周枠と、この外周枠の内側に配置された通気性のあるフィルムと、が一体化された構造を有することを特徴とする保護用具。
【請求項5】
請求項4に記載の保護用具において、前記フィルムはポリウレタンフィルム中にシルクプロテイン粒が分散された構造を有していることを特徴とする保護用具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の保護用具において、この保護用具にチューブ等を固定するためのチューブ等固定部をさらに有することを特徴とする保護用具。
【請求項7】
請求項6に記載の保護用具において、前記チューブ等固定部は、前記貼付部又は前記被覆部に固定可能な構造を有するとともに、内周面がチューブ等の外周面に対応し軸方向に切れ込みが入った穴を有することを特徴とする保護用具。
【請求項8】
請求項6に記載の保護用具において、前記チューブ等固定部は、前記貼付部又は前記被覆部に一体化された構造を有するとともに、内周面がチューブ等の外周面に対応し軸方向に切れ込みが入った穴を有することを特徴とする保護用具。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の保護用具において、前記被覆部は、ショア硬度Aが30以上かつ90以下であることを特徴とする保護用具。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の保護用具において、前記貼付部は、粘着層からなる構造を有していることを特徴とする保護用具。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の保護用具において、前記貼付部は、発泡層と粘着層とが積層された構造を有していることを特徴とする保護用具。
【請求項12】
請求項11に記載の保護用具において、前記発泡層は、発泡ポリイソブチレンからなることを特徴とする保護用具。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の保護用具において、前記粘着層は、皮膚保護剤からなることを特徴とする保護用具。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の保護用具において、前記貼付部は、チューブ等貫通部に対応する開口部を有するとともに、この開口部から外周部に至る切れ込みを有することを特徴とする保護用具。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれかに記載の保護用具において、前記貼付部は、それぞれがチューブ等貫通部に対応して設けられた凹部を有する2以上の副部材からなることを特徴とする保護用具。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載の保護用具において、前記貼付部と被覆部とは別体として構成されてなることを特徴とする保護用具。
【請求項17】
請求項16に記載の保護用具において、前記貼付部に前記被覆部を固定するための接着剤又は粘着剤が、前記貼付部又は前記被覆部にコートされてなることを特徴とする保護用具。
【請求項18】
請求項2乃至5のいずれかに記載の保護用具において、前記被覆部に前記蓋を固定するための接着剤又は粘着剤が、前記被覆部又は前記蓋にコートされてなることを特徴とする保護用具。
【請求項19】
請求項2乃至5のいずれかに記載の保護用具において、前記被覆部及び前記蓋部は、前記蓋部が前記被覆部に対して嵌め込み自在の構造を有してなることを特徴とする保護用具。
【請求項20】
請求項7に記載の保護用具において、前記貼付部又は前記被覆部に前記チューブ等固定部を固定するための接着剤又は粘着剤が、前記貼付部若しくは前記被覆部又はチューブ等固定部にコートされてなることを特徴とする保護用具。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれかに記載の保護用具において、前記チューブ等が、生体内に埋め込まれた血液ポンプと、この血液ポンプを制御するための外部コントローラと、の接続に用いられるチューブであることを特徴とする保護用具。
【請求項22】
請求項1乃至20のいずれかに記載の保護用具において、前記チューブ等が、生体と人工透析装置との間で血液を循環させるためのチューブであることを特徴とする保護用具。
【請求項23】
請求項1乃至20のいずれかに記載の保護用具において、前記チューブ等が、腹膜透析を行うために生体に埋め込まれるチューブであることを特徴とする保護用具。
【請求項24】
血液ポンプと、この血液ポンプを制御するための外部コントローラと、前記血液ポンプと前記外部コントローラとの接続に用いられるチューブと、請求項1乃至21のいずれかに記載の保護用具と、を有することを特徴とする血液ポンプシステム。
【請求項25】
請求項2に記載の保護用具に用いられることを特徴とする蓋。
【請求項26】
請求項7に記載の保護用具に用いられることを特徴とするチューブ等固定部。
【請求項27】
請求項1に記載の保護用具に用いられることを特徴とする被覆部。
【請求項28】
請求項1に記載の保護用具に用いられることを特徴とする貼付部。
【請求項29】
生体の皮膚を貫通して配置される医療用具が皮膚を貫通する部分(以下、「医療用具貫通部」という。)を、感染から保護するための保護用具であって、
医療用具貫通部の周囲において生体の皮膚に貼り付けられる貼付部と、
医療用具貫通部を被覆して医療用具貫通部を囲む内部空間を形成するための被覆部と、を有し、
前記被覆部には、蓋などで開閉自在な開口部が設けられてなることを特徴とする保護用具。
【請求項30】
請求項29に記載の保護用具において、前記開口部を閉じるための蓋をさらに有することを特徴とする保護用具。
【請求項31】
請求項30に記載の保護用具において、前記蓋は通気性を有し、かつ、細菌の浸入を防ぐフィルター機能を有することを特徴とする保護用具。
【請求項32】
請求項31に記載の保護用具において、前記蓋は、樹脂材料からなる外周枠と、この外周枠の内側に配置された通気性のあるフィルムと、が一体化された構造を有することを特徴とする保護用具。
【請求項33】
請求項32に記載の保護用具において、前記フィルムはポリウレタンフィルム中にシルクプロテイン粒が分散された構造を有していることを特徴とする保護用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−178570(P2009−178570A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115103(P2009−115103)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【分割の表示】特願2003−70186(P2003−70186)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(392000796)株式会社サンメディカル技術研究所 (9)
【Fターム(参考)】