説明

保護部材が取り付けられたワイヤハーネス及びその保護部材の製造方法

【課題】複数の電線を含むワイヤハーネス本体をフラット状にして効率よく配索することができる保護部材が取り付けられたワイヤハーネス、及びその保護部材を極めて簡易且つ安価に形成することのできるワイヤハーネスの保護部材の製造方法を提供する。
【解決手段】保護部材10が、長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で半環状に形成された半環状コルゲート状壁50と、当該半環状コルゲート状壁50から電線60を含んだワイヤハーネス本体が離脱するのを防止するテープ部材と、を備え、前記半環状コルゲート状壁には当接面部11が前記長手方向にわたって形成されている。そして、前記保護部材10がワイヤーハーネス1Aの外周部に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の車体などの所定の設置面に沿ってワイヤハーネスを配索する際、複数の電線を含むワイヤハーネス本体を外部から保護するために取り付けられる保護部材を備えたワイヤハーネス及びその保護部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電線を含むワイヤハーネス本体を薄く(フラット状に)配策するため、接着剤が塗布されたベースフィルム上に単芯線を載せて、その後、別途接着剤が塗布されたカバーフィルムをその上から重ねるもの、或いはU字状の電線保持溝を有する電線係止ピン間に電線をフラット状に係止する手段を備えたもの、が知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、この種の他の従来例としては、インテグレーションパネルなどのパネルと一体にフラット導体固定部を形成しておき、このフラット導体固定部にフラット導体を固定するようにしたものが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0004】
ところで、保護部材としてコルゲートチューブを用いて、ワイヤハーネスを配索するものとしては、半環形状のハーフタイプ・コルゲートチューブ内部に複数の電線を含むワイヤハーネス本体を収納し、当該ハーフタイプ・コルゲートチューブにテープ巻きを施して前記ワイヤハーネス本体を固定するものが知られている(例えば特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−115346号公報
【特許文献2】特開平2−155127号公報
【特許文献3】特開平10−42423号公報
【特許文献4】特開2003−134626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれも電線を含むワイヤハーネスをフラット状に配策するため、別途専用の固定部材或いは特別な工程が必要となってしまい、簡易にフラット状にすることができず、製造コストの増大に繋がってしまう嫌いがあった。
【0007】
例えば、上記特許文献1は、接着剤及びフィルムに単芯線を仮止めし、そして加熱圧着して冷却しワイヤハーネスをフラット状にするものであり、確かにそのフラット化は期待できるが、一方これら工程に係る設備が必要となってしまい、製造コストの大幅な増大を招いてしまう虞があった。
【0008】
また、上記特許文献2、3は両者ともに専用の保持具(固定具)が必要になってしまうため、これらを成形するための金型がさらに必要となってしまい、上記特許文献1と同様に製造コスト増大に繋がっていた。
それに加えて、電線を含むワイヤハーネス本体の保持具へ固定も従来のワイヤハーネスの工程とは別に、特別な作業工程が発生してしまい、配索の作業効率上効率がよいとは言えなかった。
【0009】
一方、上記特許文献4は、軽量化が主な目的のものであってワイヤハーネス本体を収納する箇所が単純な半環形状であり、電線の収納本数に限りがあった。さらに、外形が円弧状であるため、配索の際、設置面に安定して設置することが難しく、別途保持手段を用意する必要があった。
また、上記特許文献4においては、ワイヤハーネス本体を外部から保護するため保護部材としてハーフタイプ・コルゲートチューブを取り付ける際、電線の一部(下半部)のみにハーフタイプ・コルゲートチューブを被せてテープ巻きを施したものであり(図5)、電線の一部(上半部)が突出した形状となってしまいフラット状に配策することが期待できず改良の余地があった。
【0010】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の電線を含むワイヤハーネス本体をフラット状にして効率よく配索することができる保護部材が取り付けられたワイヤハーネス、及びその保護部材を極めて簡易且つ安価に形成することのできるワイヤハーネスの保護部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の前述した課題は、下記の構成により達成される。
(1) 複数の電線を含むワイヤハーネス本体と、前記ワイヤハーネス本体を外部から保護するために該ワイヤハーネス本体の外周部に取り付けられた保護部材と、を備え、前記ワイヤハーネス本体が所定の設置面に沿って配索されるように前記保護部材を介して前記所定の設置面に配置されるワイヤハーネスであって、
前記保護部材が、長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で半環状に形成された半環状コルゲート状壁と、当該半環状コルゲート状壁から前記ワイヤハーネス本体が離脱するのを防止する離脱防止部材と、を備え、
前記半環状コルゲート状壁には平坦部が前記長手方向にわたって形成されている
ことを特徴とするワイヤハーネス。
(2) 複数の電線を含むワイヤハーネス本体を外部から保護するために該ワイヤハーネス本体の外周部に取り付けられ、該ワイヤハーネス本体と共にワイヤハーネスに具備され且つ、前記ワイヤハーネス本体が所定の設置面に沿って配索されるように前記所定の設置面に配置される保護部材の製造方法であって、
長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で環状に形成された環状コルゲート状壁を備え、前記長手方向にわたって対向しながら延長する二つの平坦部が前記環状コルゲート状壁に形成されたコルゲートチューブを用意する準備ステップと、
前記二つの平坦部の一方を含む第1部分と前記二つの平坦部の他方を含む第2部分とに分けるように、前記コルゲートチューブの環状コルゲート状壁を前記長手方向に沿って2つに分割し、これにより半環状コルゲート状壁を二つ形成する半環状コルゲート状壁形成ステップと、
を含む
ことを特徴とするワイヤハーネスの保護部材の製造方法。
(3) さらに、
二つの前記半環状コルゲート状壁のうち一方の半環状コルゲート状壁の内側に前記長手方向に沿って収容された前記ワイヤハーネス本体の、前記一方の半環状コルゲート状壁からの離脱を防止するために離脱防止部材を前記一方の半環状コルゲート状壁に取り付ける離脱防止部材取付ステップと、
を含む
ことを特徴とする上記(2)のワイヤハーネスの保護部材の製造方法。
(4) 前記半環状コルゲート状壁形成ステップにおいて、
前記長手方向に直交する方向の前記環状コルゲート状壁の断面形を線対称とする対称軸が通る箇所で前記長手方向に沿って前記環状コルゲート状壁が前記第1部分と前記第2部分とに分割され、
これにより二つの同形状の前記半環状コルゲート状壁が形成される
ことを特徴とする上記(2)又は(3)のワイヤハーネスの保護部材の製造方法。
(5) 複数の電線を含むワイヤハーネス本体と、前記ワイヤハーネス本体を外部から保護するために該ワイヤハーネス本体の外周部に取り付けられた保護部材と、を備え、前記ワイヤハーネス本体が所定の設置面に沿って配索されるように前記保護部材を介して前記所定の設置面に配置されるワイヤハーネスであって、
前記保護部材が、長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で半環状に形成された半環状コルゲート状壁と、当該半環状コルゲート状壁から前記ワイヤハーネス本体が離脱するのを防止する離脱防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネス本体が、前記長手方向に交差する方向にある前記半環状コルゲート状壁の開口部から突出しないように収納されている
ことを特徴とするワイヤハーネス。
(6) 前記ワイヤハーネス本体が、前記半環状コルゲート状壁の開口部から突出しないように、前記離脱防止部材により規制されている
ことを特徴とする上記(5)のワイヤハーネス。
【0012】
(1)のワイヤハーネスによれば、ワイヤハーネス本体の外周部に取り付けられる保護部材が長手方向にコルゲート状に形成され且つ長手方向に交差する方向の断面視で半環状に形成された半環状コルゲート状壁と、この半環状コルゲート状壁からワイヤハーネス本体が離脱するのを防止する離脱防止部材とを備え、その半環状コルゲート状壁には平坦部が前記長手方向にわたって形成されているので、保護部材の断面形状が設置面に沿って細長にすることができ、より多くの電線を収納できながらもフラット状とすることができる。また、ワイヤハーネスを配策する際、この平坦部を例えば車両パネルなどの所定の設置面に平行に配置して面接触させることができるので、ワイヤハーネスを所定の設置面に安定して効率的に配索することができ、さらに経年による設置面とのずれなどが起きづらい。さらに、その配策の際、別途特別な保持手段を必要とせず、また従来と同様に例えばテープ巻きによる電線の固定が可能であるので、簡易・安価な構造でありがならも従来と同様な配索作業で済み、作業効率を損なうことがない。
そして、(2)のワイヤハーネスの保護部材の製造方法によれば、長手方向にコルゲート状に形成され且つ長手方向に交差する方向の断面視で環状に形成された環状コルゲート状壁を備え、その長手方向にわたって対向しながら延長する二つの平坦部が前記環状コルゲート状壁に形成されたコルゲートチューブを予め用意し、その後、二つの平坦部の一方を含む第1部分と二つの平坦部の他方を含む第2部分とに分けるように、コルゲートチューブの環状コルゲート状壁を長手方向に沿って2つに分割し、これにより半環状コルゲート状壁を二つ形成する半環状コルゲート状壁形成する。これにより、専用の部材又は装置を必要とせず、従来の設備をそのまま用いて製造することができて、ワイヤハーネスを所定の設置面に安定して効率的に組み付けることができ、且つワイヤハーネスをフラット状に配索することができる保護部材を簡便且つ安価に形成することができる。
また、(3)のワイヤハーネスの保護部材の製造方法によれば、上記(2)のワイヤハーネスの保護部材の製造方法において半環状コルゲート状壁を形成した後、ワイヤハーネス本体の離脱を防止するために離脱防止部材が取り付けられるので、ワイヤハーネス本体を確実に保護部材に固定することができ、ワイヤハーネスを所定の設置面に沿って配策する際に、作業効率を損なうことがない。
また、(4)のワイヤハーネスの保護部材の製造方法によれば、上記(2)又は(3)のワイヤハーネスの保護部材の製造方法において、長手方向に直交する方向の環状コルゲート状壁の断面形を線対称とする対称軸が通る箇所で長手方向に沿って環状コルゲート状壁が第1部分と第2部分とに分割され、これにより二つの同形状の半環状コルゲート状壁が形成されるので、同形状のものを効率よく形成できて、より簡便且つ安価に保護部材を形成することができる。
さらに、(5)のワイヤハーネスによれば、ワイヤハーネス本体が、長手方向に交差する方向にある半環状コルゲート状壁の開口部から突出しないように収納されているので、従来のものと比較して、フラット状とすることができる。
また、(6)のワイヤハーネスによれば、上記(5)のワイヤハーネスにおいて、前記ワイヤハーネス本体が、前記半環状コルゲート状壁の開口部から突出しないように、前記離脱防止部材により規制されているので、ワイヤハーネス本体を確実に保護部材に固定することができ、ワイヤハーネスを所定の設置面に沿って配策する際に、作業効率を損なうことがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の電線を含むワイヤハーネス本体をフラット状にして効率よく配索することができる保護部材が取り付けられたワイヤハーネス、及びその保護部材を極めて簡易且つ安価に形成することのできるワイヤハーネスの保護部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。
なお、図1は本発明に係る保護部材の半環状コルゲート状壁の概略斜視図であり、図2は本発明に係る保護部材を形成するために用いられるコルゲートチューブの外観斜視図であり、図3は図1の保護部材が取り付けられたワイヤハーネスの使用状態を説明する外観斜視図であり、図4は図3のワイヤハーネスの縦断面図である。
【0015】
図1、図3に示すように、本実施形態に係る保護部材10は、可撓性を有する樹脂を用いて薄肉にして長手方向にコルゲート状に形成され、且つ該長手方向に交差する方向の断面視で半環状に形成されて長手方向に交差する方向(上方)に開口部52を有する半環状コルゲート状壁50と、当該半環状コルゲート状壁50から複数60の電線を含んだワイヤハーネス本体が離脱するのを防止するため、電線60を収納した上で前記半環状コルゲート状壁の外側全体から巻かれるテープ部材20(離脱防止部材)と、を備えて構成される。
【0016】
前記半環状コルゲート状壁50は、前記長手方向に山部14と谷部15とを連続的に有して折り曲げ自在に形成されており、また、図1に示すように、前記半環状コルゲート状壁50には、当接面部(平坦部)11が前記半環状コルゲート状壁50の周方向中間で前記長手方向にわたって形成され、また側方包囲部12,13が前記半環状コルゲート状壁50の周方向両端部に形成されている。
【0017】
当接面部11は、間欠的に連続する山部14においてその周方向中間底部に設けられた複数の平面部により構成されている。このため、当接面部11は、相手部材である車体パネル(図4参照)70の設置面71が凸状または凹状の湾曲面である場合は、それらに相似するように凸状または凹状に折り曲げられて、前記設置面71に当接されることとなる。
【0018】
また、側方包囲部12,13は、当接面部11の周方向両端部から半環状コルゲート状壁50の内方に向かって湾曲形状に延出するように形成されており、また前記長手方向にわたって湾曲面を間欠的に形成している。
【0019】
そして、当接面部11より内側に位置する、谷部15における内側平面部16と、側方包囲部12,13より内側に位置する、谷部15における内側曲面部17,18と、により、例えば車両のばらけた状態でありそれぞれ被覆された複数の電線を収納する電線収容部19が画成される。
【0020】
ここで、このような半環状コルゲート状壁を備えた保護部材10を製造する方法について説明する。
図2に示すように、長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で環状に形成された環状コルゲート状壁51を備え、前記長手方向にわたって対向しながら延長する二つの当接面部11が前記環状コルゲート状壁51に形成されたコルゲートチューブ100を例えば押出成形により予め用意しておく(準備ステップ)。そして、その後、前記二つの当接面部11の一方を含む第1部分と前記二つの当接面部11の他方を含む第2部分とに分けるように、前記コルゲートチューブ100の環状コルゲート状壁51を前記長手方向に沿って2つに分割し、これによりそれぞれ開口部52を長手方向に交差する方向に有した半環状コルゲート状壁50(図1参照)を二つ形成することとなる(半環状コルゲート状壁形成ステップ)。
【0021】
なお、このとき当該半環状コルゲート状壁形成ステップにおいて、前記長手方向に直交する方向の前記環状コルゲート状壁51の断面形を線対称とする対称軸が通る箇所で、前記長手方向に沿って前記環状コルゲート状壁51を前記第1部分と前記第2部分とに分割し、これにより二つの同形状の前記半環状コルゲート状壁50を形成する。
【0022】
以上の製造ステップを踏むことにより、押出成形されるコルゲートチューブ100を2つに分割するだけの簡易な工程で保護部材10の半環状コルゲート状壁50を形成できるので、専用の成形の金型や特別な成形部品を伴うことなく、例えば既存設備などをそのまま利用することができて、極めて簡易且つ安価に保護部材10を製造することができる。
また、長手方向に直交する方向の前記環状コルゲート状壁51の断面形を線対称とする対称軸が通る箇所で、前記長手方向に沿って前記環状コルゲート状壁51を前記第1部分と前記第2部分とに分割するので、同形状の保護部材10を効率よく形成できて、より簡便且つ安価に形成することができ、さらに品質管理もし易い。
【0023】
次に、本実施形態に係る保護部材10の最終的な製造ステップ、そして当該保護部材10が取り付けられたワイヤハーネスの配索方法について説明する。
図3に示すように、保護部材10の電線収容部19に、例えば14本のばらけた状態の被覆された電線60を上下に7本ずつ並べ、当該電線60を含んだ束(ワイヤハーネス本体)が前記半環状コルゲート状壁50の開口部52から突出しないように内側のみで収納されるように保持する。そして、この保持状態を維持したまま、当接面部11と側方包囲部12,13との外側全部を覆うようにテープ部材(離脱防止部材)20を巻きつける。
【0024】
以上の工程を経て、半環状コルゲート状壁50とテープ部材20とを備えたテープ部材とを備えた保護部材10が最終的に組み立てられ、そしてその結果、当該保護部材10が外周部に取り付けられたワイヤハーネス1Aが構成されることとなる。
【0025】
ここで、前記ワイヤハーネス本体の底部が内側平面部16上に並べられ、当接面部11と平行になるように配置されるとともに、前記ワイヤハーネス本体の側部が側方包囲部12,13によって包囲されることになる。そして、その上で、それら全体が外側からテープ部材20によって覆われるので、電線60を含んだワイヤハーネス本体が前記半環状コルゲート状壁50の開口部52から突出しないように規制され、保護部材10の内部にワイヤハーネス本体が固定される。このため、ワイヤハーネスを所定の設置面に沿って配索する際に、作業効率を損なうことがない。また、前記ワイヤハーネス本体が、前記長手方向に交差する方向にある前記半環状コルゲート状壁50の開口部52から突出しないように収納されることになるので、従来のものと比較して、フラット状とすることができる。
さらに、テープ部材20を用いてワイヤハーネス本体の固定が行われるので、従来の電線60の配索作業と同じ作業で済み、また電線60の周囲全体を覆うために、外部干渉物との干渉防止に加えて、雨水や塵埃等が付着しないように電線60を保護することができる。なお、テープ部材20としては粘着テープが例示される。
【0026】
そして、図4に示すように、ワイヤハーネス本体を車体パネル70における平面状の設置面71に沿って配策するように前記保護部材10を介して前記設置面71に配置する際には、前記当接面部11が設置面71に当接されることとなる。
【0027】
即ち、当接面部11が平面状の設置面71に面接触することとなる。
このため、例えば上記特許文献4に示された従来の半環形状のものと比較して、ワイヤハーネスを配索する際、電線60を含んだワイヤハーネス本体を設置面71に対して安定にして効率的に組み付けることができ、さらに経年変化に伴う位置ずれなどが起こり難い。そして、当接面部11を設置面71に対して選択的に面接触させることができ、配索作業の効率化を図ることができる。
【0028】
また、ワイヤハーネス1Aの外周部に取り付けられる保護部材10は当接面部11を有しているため、設置面71に対する高さH1は、例えば上記特許文献4に示された従来の半環形状の保護部材と比較して、低い寸法とすることができ、そして保護部材10の断面形状が設置面71に沿って細長になるので、車体内の狭いスペースにおいても多数の電線60を確実に保護することができるとともに、フラット状に電線60を配索することができる。
【0029】
さらに、その組み付けの際、別途特別な保持手段を必要とせず、従来と同様にテープ部材20によるワイヤハーネス本体の固定が可能であるので、簡易・安価な構造でありながらも従来と同様な配策作業で済み、作業効率を損なうことがない。
【0030】
さらに次に、図5,6を参照して、本発明に係る保護部材が取り付けられたワイヤハーネスの別の配索方法について説明する。
なお、図5は、本発明に係る別の配索方法を説明するための保護部材の外観斜視図であり、図6は図5の保護部材が取り付けられたワイヤハーネスの使用状態を説明する外観斜視図である。
また、以下の説明において、上述した説明と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号或いは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0031】
図5に示すように、本発明に係るワイヤハーネスの別の配索方法は、保護部材10の当接面部11にブラケット31を用いて組み付けるようにしたものである。
【0032】
ブラケット31は、当接面部11に当接する平面状の保護部材当接板部32と、この保護部材当接板部32の中央部から側部に突出する突出板部33と、突出板部33上に突出形成されている押部34と、突出板部33下に突出形成されている設置面係止部35と、を備えて構成されている。
【0033】
そして、図5に示すように、保護部材10の電線収容部19に電線60を含んだワイヤハーネス本体が半環状コルゲート状壁50の開口部52から突出しないように内側のみで収納されるように保持し、この保持状態を維持したまま、当接面部11にブラケット31の保護部材当接板部32を当接させて、この保護部材当接板部32を含めて、当接面部11と側方包囲部12,13との外側全体を覆うようにテープ20を巻きつけて、ブラケット31を一体的に組み立てて、外周部に保護部材10が取り付けられたワイヤハーネス1Bを最終的に構成する。
【0034】
そして、ブラケット31の設置面係止部35を、車体パネル70等に形成されている不図示の固定孔に押部34を押圧することにより嵌入することで、その車体パネル70に沿って電線60を含んだワイヤハーネス本体が配索されることとなる(図6参照)。
【0035】
即ち、このブラケット31を用いることにより、設置面71に対し確実に固定することができる。
なお、ワイヤハーネス1Bを配索する際、当接面部11に設置面71を当接させるようにしてもよく、或いはブラケット31の保護部材当接板部32を側方包囲部12または13に当接させてテープ部材20を巻きつけるようにしてもよい。さらに、当接面部11に組み付けられるブラケット31として既存のものをそのまま利用してもよい。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0037】
例えば、上記実施形態では環状コルゲート状壁51に形成されたコルゲートチューブ100を2分割して、半環状コルゲート状壁50を2つ形成するとして説明したが、これに限らず、例えば押出成形などにより予め半環状コルゲート状壁50を直接成形するようにしてもよい。
【0038】
また、当接面部11、側方包囲部12,13の形状は一例であって、これに限定されることはなく、全体を多角形の筒形状にした母材を2分割し、一つの辺を当接面部として用いてもよい。
そして、当接面部11は平面形状に限らず、設置面71との当接時に平坦形状になっていればよく、例えば他の部位に比べ曲率が大きくされた形状、又はその上で所定の弾性を有するような構造としてもよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、固定手段としてテープ20を用いたものを説明したが、これに限定される、結束バンド、接着剤、シリコン樹脂などの種々のもの、そしてそれに適した固定方法を適宜採用することができる。
【0040】
また、上記実施形態では、保護部材に収納されるワイヤハーネス本体について電線を含んだものとして説明したが、これに限らず、例えばウォッシャーホースなどのチューブも含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る保護部材の半環状コルゲート状壁の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る保護部材を形成するために用いられるコルゲートチューブの外観斜視図である。
【図3】図1の保護部材が取り付けられたワイヤハーネスの使用状態を説明する外観斜視図である。
【図4】図3のワイヤハーネスの縦断面図である。
【図5】本発明に係る別の配索方法を説明するための保護部材の外観斜視である。
【図6】図5の保護部材が取り付けられたワイヤハーネスの使用状態の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B ワイヤハーネス
10 保護部材
11 当接面部(平坦部)
12,13 側方包囲部
20 テープ部材(離脱防止部材)
31 ブラケット
50 半環状コルゲート状壁
51 環状コルゲート状壁
52 開口部
60 電線
70 車体パネル
71 設置面
100 コルゲートチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を含むワイヤハーネス本体と、前記ワイヤハーネス本体を外部から保護するために該ワイヤハーネス本体の外周部に取り付けられた保護部材と、を備え、前記ワイヤハーネス本体が所定の設置面に沿って配索されるように前記保護部材を介して前記所定の設置面に配置されるワイヤハーネスであって、
前記保護部材が、長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で半環状に形成された半環状コルゲート状壁と、当該半環状コルゲート状壁から前記ワイヤハーネス本体が離脱するのを防止する離脱防止部材と、を備え、
前記半環状コルゲート状壁には平坦部が前記長手方向にわたって形成されている
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
複数の電線を含むワイヤハーネス本体を外部から保護するために該ワイヤハーネス本体の外周部に取り付けられ、該ワイヤハーネス本体と共にワイヤハーネスに具備され且つ、前記ワイヤハーネス本体が所定の設置面に沿って配索されるように前記所定の設置面に配置される保護部材の製造方法であって、
長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で環状に形成された環状コルゲート状壁を備え、前記長手方向にわたって対向しながら延長する二つの平坦部が前記環状コルゲート状壁に形成されたコルゲートチューブを用意する準備ステップと、
前記二つの平坦部の一方を含む第1部分と前記二つの平坦部の他方を含む第2部分とに分けるように、前記コルゲートチューブの環状コルゲート状壁を前記長手方向に沿って2つに分割し、これにより半環状コルゲート状壁を二つ形成する半環状コルゲート状壁形成ステップと、
を含む
ことを特徴とするワイヤハーネスの保護部材の製造方法。
【請求項3】
さらに、
二つの前記半環状コルゲート状壁のうち一方の半環状コルゲート状壁の内側に前記長手方向に沿って収容された前記ワイヤハーネス本体の前記一方の半環状コルゲート状壁からの離脱を防止するために離脱防止部材を前記一方の半環状コルゲート状壁に取り付ける離脱防止部材取付ステップと、
を含む
ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤハーネスの保護部材の製造方法。
【請求項4】
前記半環状コルゲート状壁形成ステップにおいて、
前記長手方向に直交する方向の前記環状コルゲート状壁の断面形を線対称とする対称軸が通る箇所で前記長手方向に沿って前記環状コルゲート状壁が前記第1部分と前記第2部分とに分割され、
これにより二つの同形状の前記半環状コルゲート状壁が形成される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のワイヤハーネスの保護部材の製造方法。
【請求項5】
複数の電線を含むワイヤハーネス本体と、前記ワイヤハーネス本体を外部から保護するために該ワイヤハーネス本体の外周部に取り付けられた保護部材と、を備え、前記ワイヤハーネス本体が所定の設置面に沿って配索されるように前記保護部材を介して前記所定の設置面に配置されるワイヤハーネスであって、
前記保護部材が、長手方向にコルゲート状に形成され且つ該長手方向に交差する方向の断面視で半環状に形成された半環状コルゲート状壁と、当該半環状コルゲート状壁から前記ワイヤハーネス本体が離脱するのを防止する離脱防止部材と、を備え、
前記ワイヤハーネス本体が、前記長手方向に交差する方向にある前記半環状コルゲート状壁の開口部から突出しないように収納されている
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項6】
前記ワイヤハーネス本体が、前記半環状コルゲート状壁の開口部から突出しないように、前記離脱防止部材により規制されている
ことを特徴とする請求項5に記載のワイヤハーネス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−55740(P2009−55740A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221461(P2007−221461)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】