保護部材付電線、および、その製造方法
【課題】電線の組み立てにかかる負担を軽減可能であり、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応可能な技術を提供する。
【解決手段】保護部材付電線1は、主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材3と、第1の保護部材3に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された標準電線2aと、第1の保護部材3の主面の全体を覆うことが可能な第2の保護部材4であって、第1の保護部材3の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材3と対向する側の第1主面と反対側の第2主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成される第2の保護部材4と、第2の保護部材4に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されたオプション電線2bと、を備える。
【解決手段】保護部材付電線1は、主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材3と、第1の保護部材3に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された標準電線2aと、第1の保護部材3の主面の全体を覆うことが可能な第2の保護部材4であって、第1の保護部材3の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材3と対向する側の第1主面と反対側の第2主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成される第2の保護部材4と、第2の保護部材4に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されたオプション電線2bと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両等に設けられる電線に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電線は、予め定められた経路に沿う枝形状(敷設形状)に組み立てられた上で車両等に搭載される。電線の組み立ては、例えば、電線を、組立図板に立設された治具によって受け止められた状態になるように布線板上において布線して定められた敷設形状とし、布線された電線をテープ巻きにより結束し、さらに、定められた位置に各種部品(樹脂製のプロテクタ、電線を車体等に固定するための固定用の部品(例えばクランプ)等)を取り付けることによって行われる。
【0003】
上記に例示した態様による電線の組み立て工程は、工程数が多いため、作業者の作業負担が大きい。また、組立図板や治具等、作業に必要な部品も多いため、コスト負担も大きい。そこで、より小さな負担で電線の組み立てを行えるような技術が求められていた。
【0004】
このような要求に応じて、例えば特許文献1には、成型用金型を用いて電線を組み立てる態様が提案されている。ここでは、定められた枝形状の溝が形成された成型用金型に電線を布線し、樹脂を充填して型締めしてモールドすることによって、定められた敷設形状に維持された電線を形成している。
【0005】
特許文献1で提案されている技術を用いると、組立図板および治具を用いなくとも、電線を定められた形状に組み立てることができる。また、得られる電線はプロテクタと一体化された構成となっているので、プロテクタの取付工程を別に行う必要がない。
【0006】
また、例えば特許文献2には、車両に搭載されるインストルメントパネル、ドアパネル等に配置された補強リブに、電線の配索経路を挟んで交互に位置するように配置された複数の固定手段を設ける構成が開示されている。ここでは、固定手段は、一対の突起により構成されており、電線を挟持固定する。
【0007】
特許文献2で提案されている技術を用いた場合も、組立図板および治具を用いなくとも、電線を定められた形状に組み立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−6129号公報
【特許文献2】特開2006−304496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、電線の敷設形状に対応した成型用金型を用いなければならず、様々な敷設形状に対応した成型用金型を準備しておく必要がある。また、電線の設計変更(経路の変更、分岐位置の変更、プロテクタの形状変更、電線束の総数の変更(すなわち、電線束の径サイズの変更)等)が生じるたびに、変更後の電線に応じた成型用金型を新たに準備しなければならない。一般に、電線の敷設形状は多様であり、また、電線の設計変更も頻繁に生じうる。したがって、特許文献1に開示の技術を用いようとすると、膨大な種類の成型用金型の作成が必要となり、コスト面において大きな負担が強いられることになる。
【0010】
また、特許文献2に開示の技術において、電線の固定手段が形成されるインストルメントパネル、ドアパネル等は、電線の経路に応じて仕様が変更される汎用性の低い部品であるため、同一の部品で敷設形状の異なる電線に対応することが難しい。また、固定手段を、電線の敷設形状に対応した位置に形成する必要があるため、電線の設計変更に柔軟に対応することが難しい。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電線の組み立てにかかる負担を軽減可能であり、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様に係る保護部材付電線は、主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材と、前記第1の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第1の電線と、前記第1の電線を間に挟み込むようにして前記第1の保護部材の主面の全体を覆うことが可能な第2の保護部材であって、前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材と対向する第2主面と反対側の第1主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成される第2の保護部材と、前記第2の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第2の電線と、を備える。
【0013】
第2の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が、前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、を備え、前記第2の保護部材が、前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起であって、それぞれが、他の筒状突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の筒状突起、を備え、前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となる。
【0014】
第3の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が、前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、を備え、前記第2の保護部材が、前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された、複数の貫通孔、を備え、前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔を介して前記第2の主面から突出し、前記第2主面から突出した前記複数の突起のそれぞれが、他の突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する。
【0015】
第4の態様に係る保護部材付電線は、第2または第3の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が備える前記複数の突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である。
【0016】
第5の態様に係る保護部材付電線は、第2の態様に係る保護部材付電線であって、前記第2の保護部材が備える前記複数の筒状突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である。
【0017】
第6の態様に係る保護部材付電線は、第2または第3の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が備える前記複数の突起が、格子点上に配列される。
【0018】
第7の態様に係る保護部材付電線は、第1から第6のいずれかの態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とのうちの少なくとも一方が、前記保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔、を備える。
【0019】
第8の態様に係る保護部材付電線の製造方法は、a)主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材において、前記経路網に対して選択経路を設定する工程と、b)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第1の電線を配設する工程と、c)前記第2の保護部材で、前記第1の電線が配設された前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態とする工程と、d)前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において前記第1の保護部材と対向する側の第2主面と反対側の第1主面に形成された複数の経路を選択可能な経路網に対して、選択経路を設定する工程と、e)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第2の電線を配設する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
第1,第8の態様によると、第1の保護部材に、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、第1の電線を定められた形状に規制することができるので、電線の組み立てにかかる負担が大幅に軽減される。さらに、第1の保護部材の主面の全体を覆う第2の保護部材にも、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、第1の電線とは別の第2の電線を定められた形状に規制することができる。したがって、2種類の電線をそれぞれ別の形状に規制して一体に形成することができる。また、選択する経路を変更するだけで電線を異なる形状に規制することができるので、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応することができる。
【0021】
第2の態様によると、第2の保護部材3が第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、第2の保護部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0022】
第3の態様によると、第2の保護部材が第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、第2の保護部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔に挿通されるので、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0023】
第4の態様によると、第1の保護部材が備える複数の突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状であるので、突起に沿うように這わせられた電線が傷つきにくい。
【0024】
第5の態様によると、第2の保護部材が備える複数の筒状突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状であるので、筒状突起に沿うように這わせられた電線が傷つきにくい。
【0025】
第6の態様によると、第1の保護部材が備える複数の突起が格子点上に配列されるので、第1、第2の各保護部材の主面に格子状の経路網を形成することができる。
【0026】
第7の態様によると、保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔を備えるので、保護部材付電線を外部部材に簡単に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線の側断面図である。
【図2】保護部材付電線の平面図である。
【図3】保護部材付電線の平面図である。
【図4】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図5】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図6】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図7】保護部材付電線を車両等の定位置に固定する際の様子を示す図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線の側断面図である。
【図9】保護部材付電線の平面図である。
【図10】保護部材付電線の平面図である。
【図11】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図12】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図13】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、この発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、この発明を具体化した一例であり、この発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0029】
<第1の実施の形態>
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1には保護部材付電線1の側断面図が、図2には保護部材付電線1の平面図が、図3には第2の保護部材4を取り外した状態の保護部材付電線1の平面図が、それぞれ示されている。
【0030】
保護部材付電線1は、電線2を備える。電線2としては、車両等において各種電気機器間を相互接続するワイヤーハーネスを構成するものが想定される。なお、保護部材付電線1が備える電線2は、1本であってもよいし、複数本であってもよい。すなわち、電線2は、複数の電線2が束ねられた電線束であってもよい。
【0031】
保護部材付電線1は、標準仕様となる電線2と、オプションにより取り付けられる電線2との二種類の電線2を備える。以下において、特に両者を区別する場合には、前者を「標準電線2a」と、後者を「オプション電線2b」と、それぞれ呼ぶ。
【0032】
保護部材付電線1は、複数(この実施の形態においては、例えば2個)の保護部材3,4を備える。保護部材3,4は、電線2を保護する保護部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に規制する形状規制部材として機能する。
【0033】
第1の保護部材3と、第2の保護部材4とはほぼ同様の構成を備える。すなわち、保護部材3,4は、平坦な矩形状のベース部31,41と、ベース部31,41の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起32,42とを備える。
【0034】
第1の保護部材3の各突起32は、格子点上に配置される(図3)。また、第2の保護部材4の各突起42は、第1の保護部材3における複数の突起32のいずれかと対応する位置に形成される(図2)。すなわち、第2の保護部材4の各突起42も格子点上に配列される。
【0035】
ただし、第2の保護部材4が備える各突起42は、底部が開口した筒形状の突起である。また、当該突起42は、第1の保護部材3が備える突起32をその内部に入れ子状に収容できるように、突起32よりも一回り大きく、突起32と相似形状に形成されている。
【0036】
突起32と突起32との間に形成される隙間、および、突起42と突起42との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起32,42は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起32,42が格子点上に配列されることによって、保護部材3,4の第1主面上に格子状の経路網が形成される。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいて各保護部材3,4に対して固定される。
【0037】
なお、突起32,42は、平面視において、角が丸められた(アールがつけられた)多角形状(例えば、矩形状)とすることが好ましい。複数の突起32,42のそれぞれを、角が丸められた多角形状としておけば、突起32,42に沿うように這わせられた電線2が傷つきにくいという利点が得られる。
【0038】
第1の保護部材3と第2の保護部材4とのうちの少なくとも一方(この実施の形態においては、例えば第1の保護部材3)は、ベース部31の端辺に形成された貫通孔33を備える。貫通孔33は、保護部材付電線1を車両等の定位置に固定するための固定用の部品を挿通させるための孔(固定部品取付用の貫通孔)である。
【0039】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1を製造する方法について、図4〜図6を参照しながら説明する。図4〜図6は、保護部材付電線1を製造する方法を説明するための図である。
【0040】
上述したとおり、第1の保護部材3の第1主面には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第1工程においては、第1の保護部材3の第1主面に形成された経路網から標準電線2aを配設すべき経路が選択される(図4の上段。なお、図4の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0041】
第2工程においては、第1工程で選択された経路に沿って突起32の間を這わせるようにして標準電線2aを第1の保護部材3の第1主面上に配設した状態とする(図4の中段)。これによって、標準電線2aが、第1の保護部材3の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0042】
第3工程においては、ベース部31の端辺と標準電線2aとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、標準電線2aを第1の保護部材3に対して固定した状態とする(図4の下段)。標準電線2aを第1の保護部材3に固定する態様として、例えば、以下の態様のいずれかを採用することができる。
【0043】
例えば、ベース部31に形成した貫通孔にバンドを挿通させ、当該バンドで標準電線2aを締結することにより標準電線2aを第1の保護部材3に固定することができる。
【0044】
また例えば、ベース部31の周囲に立設した壁と標準電線2aとの交差位置に切り欠きを形成しておき、標準電線2aを当該切り欠き部に挿通させるとともに、当該切り欠き部において標準電線2aを壁部に対して固定することによって、標準電線2aを第1の保護部材3に固定してもよい。切り欠き部における標準電線2aの固定には、例えばテープベラを用いることができる。すなわち、切り欠き部に舌状に延在するテープベラを形成し、このテープベラに標準電線2aを固定(例えば、テープで巻き付けることによって固定)することができる。
【0045】
また、切り欠き部における標準電線2aの固定は、例えば、切り欠き部と引っ掛かり合う部品を用いてもよい。すなわち、切り欠き部と引っ掛かり合う部品を標準電線2aに予め装着しておき、当該部品を切り欠き部に引っ掛けることによって標準電線2aを固定することができる。ここで、引っ掛かり用の部品は、例えば、電線を挿通させる貫通孔が中央付近に形成された直方体の部品であって、両側面に切り欠き部と引っ掛かり合う溝が形成された樹脂成型品により構成することができる。また、ゴムバンドにより構成することもできる。引っ掛かり用の部品としてゴムバンドを用いる場合、一対のゴムバンドを、間隔をあけて標準電線2aに巻き付けておき、標準電線2aを切り欠きに挿通させるとともに、壁部を一対のゴムバンドの間に挟み込むことによって、切り欠き部において標準電線2aを壁部に対して固定することができる。
【0046】
また、切り欠き部における標準電線2aの固定は、例えば、接着剤を用いてもよい。すなわち、切り欠き部と、ここに挿通された標準電線2aとの間に接着剤を充填することによって、標準電線2aを固定してもよい。
【0047】
第4工程においては、第2の保護部材4を第1の保護部材3の第1主面に被せた状態として標準電線2aを第1の保護部材3と第2の保護部材4との間に挟み込み、この状態で第2の保護部材4を第1の保護部材3に対して固定した状態とする。具体的には、まず、第2の保護部材4の第1主面と逆側の主面(第2主面)を第1の保護部材3の第1主面に対向させた状態とし、第2の保護部材4の第2主面の全体で第1の保護部材3の第1主面の全体が覆われるように、第2の保護部材4を第1の保護部材3に近づけていき、標準電線2aを第1の保護部材3と第2の保護部材4との間に挟み込む(図5の上段)。上述したとおり、第2の保護部材4には、第1の保護部材3の第1主面に形成された各突起32と対応する位置に、底部が開口した筒状突起42が形成されている。したがって、第2の保護部材4の第2主面を第1の保護部材3の第1主面に近づけていくと、第1の保護部材3の各突起32が、第2の保護部材4の各突起42の筒内部に入れ子状に差し込まれた状態となる(図5の下段)。この状態において、第1の保護部材3の端辺と第2の保護部材4の端辺とを例えば超音波溶接することによって、第1の保護部材3に被せられた第2の保護部材4を第1の保護部材3に対して固定する。なお、第2の保護部材4と第1の保護部材3との固定は、他の態様(例えば、クランプによる固定、嵌め合い構造による固定、接着剤を用いた固定等)により行われてもよい。
【0048】
第1の保護部材3に被せられた第2の保護部材4の第1主面には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第5工程においては、第2の保護部材4の第1主面に形成された経路網からオプション電線2bを配設すべき経路が選択される(図6の上段。なお、図6の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0049】
第6工程においては、第5工程で選択された経路に沿って突起42の間を這わせるようにしてオプション電線2bを第2の保護部材4の第1主面上に配設した状態とする(図6の中段)。これによって、オプション電線2bが、第2の保護部材4の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0050】
第7工程においては、ベース部41の端辺とオプション電線2bとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、オプション電線2bを第2の保護部材4に対して固定した状態とする(図6の下段)。この工程は、第3工程と同様の態様で行うことができる。
【0051】
以上の工程により、保護部材付電線1を得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1を外部部材(例えば車体パネル)に固定する際には、図7に示すように、第1の保護部材3に形成された固定部品取付用の貫通孔33に固定用の部品(クランプ)9を差し込んで挿通させ、当該固定用の部品9を外部部材90に取り付ければよい。これによって、保護部材付電線1を車両等の定位置に簡単に固定することができる。
【0052】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1が備える標準電線2aは、定められた敷設形状に規制された状態で、第1の保護部材3と第2の保護部材4との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。また、オプション電線2bは、定められた敷設形状に規制された状態で、外部部材90と第2の保護部材4との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。
【0053】
<3.効果>
上記の実施の形態によると、第1の保護部材3に、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、標準電線2aを定められた形状に規制することができるので、標準電線2aの組み立てにかかる負担が大幅に軽減される。さらに、第1の保護部材3の主面の全体を覆う第2の保護部材4にも、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、標準電線2aとは別のオプション電線2bを定められた形状に規制することができる。すなわち、2種類の電線20a,20bをそれぞれ別の形状に規制して一体に形成することができる。この構成は、特に、オプションで搭載される電線が比較的多いエリア(例えば、車両のシート付近、ドア付近等)に敷設される電線の組み立てにおいて特に有効である。
【0054】
また、選択する経路を変更するだけで電線2を異なる形状に規制することができるので、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応することができる。例えば、電線2の経路の変更、分岐位置の変更等が生じた場合にも、保護部材3,4に形成された経路網に対して別の経路を選択するだけで当該変更に対応することができる。つまり、電線2の設計変更にも柔軟に対応することが可能となる。
【0055】
さらに、経路の選択態様により、電線2の余長を保護部材付電線1において吸収させることができる。例えば、蛇行した経路を選択することによって、電線2の余長を保護部材付電線1において吸収させることができる。
【0056】
また、単純な作業で電線2を組み立てることができるので、当該作業を自動化することも可能となる。
【0057】
さらに、従来において、電線2を定められた形状に規制する作業において必要とされていた図板や治具等が不要となるので、電線の組み立てにかかるコストも低減できる。また、従来において、電線2を定められた形状に保つために必要とされていたテープ等も不要となるので、電線の製造にかかるコストも低減できる。
【0058】
また、電線2を定められた形状に規制する工程と、電線2を保護するための部材を電線2に取り付ける工程とが同時に行われることになるので、この点においても、電線2の組み立てにかかる負担が軽減される。
【0059】
特に、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1によると、第2の保護部材4が第1の保護部材3の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材3が備える突起群を構成する各突起32が、第2の保護部材45が備える筒状突起群を構成する各筒状突起42の中に入れ子状に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線1の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0060】
<第2の実施の形態>
この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。以下においては、保護部材付電線1と相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0061】
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線の全体構成について、図8〜図10を参照しながら説明する。図8には保護部材付電線1aの側断面図が、図9には保護部材付電線1aの平面図が、図10には積層保護部材6を取り外した状態の保護部材付電線1aの平面図が、それぞれ示されている。
【0062】
保護部材付電線1aは、電線2と、ベース保護部材5と、積層保護部材6とを備える。
【0063】
ベース保護部材5、積層保護部材6はいずれも、電線2を保護する保護部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に規制する形状規制部材として機能する。
【0064】
ベース保護部材5は、図10に示されるように、平坦な矩形状のベース部51と、ベース部51の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起52とを備える。各突起52は、断面円形の棒状突起であり、格子点上に配置されている。
【0065】
突起52と突起52との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起52は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起52が格子点上に配列されることによって、ベース保護部材5の第1主面に格子状の経路網が形成される。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいてベース保護部材5に対して固定される。なお、複数の突起52を、断面円形状としておけば、突起52に沿うように這わせられた電線2が傷つきにくいという利点が得られる。
【0066】
ベース保護部材5は、ベース部51の端辺に形成された貫通孔53をさらに備える。貫通孔53は、保護部材付電線1を車両等の定位置に固定するための固定用の部品を挿通させるための孔(固定部品取付用の貫通孔)である。なお、貫通孔53は、ベース保護部材5ではなく積層保護部材6に形成されてもよい。
【0067】
積層保護部材6は、図9に示されるように、平坦な矩形状のベース部61と、ベース部61の全体に形成された複数の貫通孔62とを備える。貫通孔62は、平面視においてベース保護部材5が備える突起52よりも大きなサイズに形成されており、その中に突起52を挿通させることができる。また、各貫通孔62は、ベース保護部材5の第1主面における複数の突起52のいずれかと対応する位置に形成される。すなわち、各貫通孔62は、格子点上に配列される。
【0068】
後に明らかになるように、積層保護部材6がベース保護部材5の第1主面の全体を覆った状態において、ベース保護部材5が備える各突起52が、積層保護部材6が備える各貫通孔62を介して積層保護部材6の主面から突出する。つまり、この状態において、当該主面から突出した複数の突起52と突起52との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起52は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起52が格子点上に配列されることによって、積層保護部材6のベース部61上に格子状の経路網が形成されることになる。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいてベース保護部材5に対して固定される。
【0069】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1aを製造する方法について、図11〜図13を参照しながら説明する。図11〜図13は、保護部材付電線1aを製造する方法を説明するための図である。
【0070】
上述したとおり、ベース保護部材5の第1主面には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第1工程においては、ベース保護部材5の第1主面に形成された経路網から標準電線2aを配設すべき経路が選択される(図11の上段。なお、図11の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0071】
第2工程においては、第1工程で選択された経路に沿って突起52の間を這わせるようにして標準電線2aをベース保護部材5の第1主面上に配設した状態とする(図11の中段)。これによって、標準電線2aが、ベース保護部材5の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0072】
第3工程においては、ベース部51の端辺と標準電線2aとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、標準電線2aをベース保護部材5に対して固定した状態とする(図11の下段)。この工程は、第1の実施の形態に係る第3工程と同様の態様で行うことができる。
【0073】
第4工程においては、積層保護部材6をベース保護部材5の第1主面に被せた状態として標準電線2aをベース保護部材5と積層保護部材6との間に挟み込み、この状態で積層保護部材6をベース保護部材5に対して固定した状態とする。具体的には、まず、積層保護部材6の全体でベース保護部材5の第1主面の全体が覆われるように、積層保護部材6をベース保護部材5に近づけていき、標準電線2aをベース保護部材5と積層保護部材6との間に挟み込む(図12の上段)。上述したとおり、積層保護部材6のベース部61には、ベース保護部材5の第1主面に形成された各突起52と対応する位置に、各突起52が挿通可能な貫通孔62が形成されている。したがって、積層保護部材6をベース保護部材5の第1主面に近づけていくと、ベース保護部材5の各突起52が、積層保護部材6の各貫通孔62に挿通した状態となる(図12の下段)。この状態において、ベース保護部材5の端辺と積層保護部材6の端辺とを例えば超音波溶接することによって、ベース保護部材5に被せられた積層保護部材6をベース保護部材5に対して固定する。なお、積層保護部材6とベース保護部材5との固定は、他の態様(例えば、クランプによる固定、嵌め合い構造による固定、接着剤を用いた固定等)により行われてもよい。
【0074】
ベース保護部材5に積層保護部材6が被せられた状態においては、積層保護部材6に形成された複数の貫通孔62のそれぞれから、ベース保護部材5が備える各突起52が突出した状態となっている。つまり、この状態において、積層保護部材6のベース部61の主面上には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第5工程においては、積層保護部材6の主面に形成された経路網からオプション電線2bを配設すべき経路が選択される(図13の上段。なお、図13の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0075】
第6工程においては、第5工程で選択された経路に沿って突起52の間を這わせるようにしてオプション電線2bを積層保護部材6の主面上に配設した状態とする(図13の中段)。これによって、オプション電線2bが、積層保護部材6の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0076】
第7工程においては、ベース部61の端辺とオプション電線2bとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、オプション電線2bを積層保護部材6に対して固定した状態とする(図13の下段)。この工程は、第1の実施の形態に係る第3工程と同様の態様で行うことができる。
【0077】
以上の工程により、保護部材付電線1aを得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1aを外部部材(例えば車体パネル)に固定する態様は、第1の実施の形態と同様である。
【0078】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1aが備える標準電線2aは、定められた敷設形状に規制された状態で、ベース保護部材5と積層保護部材6との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。また、オプション電線2bは、定められた敷設形状に規制された状態で、外部部材90と積層保護部材6との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。
【0079】
<3.効果>
この実施の形態に係る保護部材付電線1aにおいては、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同様の効果が得られる。特に、この実施の形態に係る保護部材付電線1aによると、積層保護部材6がベース保護部材5の主面の全体を覆った状態において、ベース保護部材5が備える突起群を構成する各突起52が、積層保護部材6が備える貫通孔群を構成する各貫通孔62に挿通されるので、保護部材付電線1bの全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0080】
<変形例>
上記の各実施の形態においては、第2の保護部材4(あるいは、積層保護部材6)は、その上にオプション電線2bが配設されるものとしたが、必ずしもオプション電線2bが配設される必要はない。オプション電線2bが配設されない場合、第2の保護部材4(あるいは、積層保護部材6)は、第1の保護部材3(あるいは、ベース保護部材5)との間に標準電線20aを挟み込んで、これを一方側から保護するカバー部材として機能することになる。第1の保護部材3(あるいは、ベース保護部材5)をカバー部材として機能させる態様は、保護部材付電線1,1aが取り付けられる外部部材に電線2を直接接触させたくない場合(例えば、外部部材が、電線2を傷つける可能性のある比較的硬い部材である場合)に特に有効である。
【0081】
また、第1の実施の形態においては、第1の保護部材3と第2の保護部材4との2個の保護部材を備える構成としたが、3個以上の保護部材を備える構成としてもよい。例えば、オプション電線2bが配設された第2の保護部材4の上に重ね合わせる第3の保護部材をさらに備える構成としてもよい。この場合、第3の保護部材が備える突起の形状は、その筒内部に第2の保護部材4の突起42を入れ子状に入り込ませることができるように、突起42よりも一回り大きく、突起42と相似形状の突起とする。この変形例によると、第2の保護部材4の上に重ね合わされた第3の保護部材の上に形成された格子状の経路網に、さらに別のオプション用の電線を配設することができる。また、さらに別のオプション電線を配設せずに、第3の保護部材を、第2の保護部材4との間にオプション電線2bを挟み込んで、これを一方側から保護するカバー部材として機能させてもよい。
【0082】
また、第2の実施の形態においては、1個の積層保護部材6を備える構成としたが、2個以上の保護部材を備える構成としてもよい。例えば、オプション電線2bが配設された積層保護部材6の上に重ね合わせるもう一つの積層保護部材6(第2の積層保護部材6)をさらに備える構成としてもよい。この場合、ベース保護部材5が備える各突起52は、第1の積層保護部材6が備える各貫通孔62、第2の積層保護部材6が備える各貫通孔62を順に挿通して、第2の積層保護部材6の主面から突出する。この変形例によると、第2の積層保護部材6の上に形成された格子状の経路網に、さらに別のオプション用の電線を配設することができる。また、さらに別のオプション電線を配設せずに、第2の積層保護部材6を、第1の積層保護部材6との間にオプション電線2bを挟み込んで、これを一方側から保護するカバー部材として機能させてもよい。
【0083】
また上記の各実施の形態において、保護部材付電線1,1aを製造する工程において、第1の保護部材3および第2の保護部材4における(あるいは、ベース保護部材5および積層保護部材6における)、配設された電線2の経路領域を含まない部分領域を切り取る工程をさらに設けてもよい。この工程を設けることによって、保護部材付電線1,1aを、それが配置されるスペースに応じた形状とすることができる。
【0084】
また第1の実施の形態においては、第1の保護部材3、第2の保護部材4において複数の突起32,42がそれぞれ形成されることによりこれら各部材3,4の第1主面に経路網が形成されることとしたが、経路網を形成する態様は、必ずしも突起を形成する態様に限らない。例えば、ベース部31,41上に溝(例えば、格子状の溝)を形成することにより経路網を形成してもよい。
【0085】
また、上記の各実施の形態においては、複数の突起32,42,52が格子点上に配置されることにより保護部材3,4、あるいはベース保護部材5の第1主面に格子状の経路網が形成されることとしたが、第1主面に形成される経路網は、少なくとも2以上の経路を選択可能な経路網であればよい。つまり、第1主面に形成される経路網は、必ずしも格子状でなくともよく、また、必ずしも規則的でなくともよい。例えば、複数の突起32,42,52を同心の円周上に間隔をおいてベース部31,41,51上に配置することにより、放射状の経路網を形成してもよい。また例えば、複数の突起32,42,52を不規則に配置して不規則な経路網を形成してもよい。
【0086】
また、上記の実施の形態においては、保護部材3,4,5の第1主面の全体に経路網が形成されることとしたが、経路網は第1主面の一部領域に形成されてもよい。
【0087】
また、上記の実施の形態において、第1の実施の形態に係る第1の保護部材3に、第2の実施の形態に係る積層保護部材6が組み合わされてもよい。また、第2の実施の形態に係るベース保護部材5に、第1の実施の形態に係る第2の保護部材4が組み合わされてもよい。
【0088】
また、上記の第1の実施の形態においては、第1の保護部材3の各突起32と第2の保護部材4の各突起42とは、一方の保護部材(第2の保護部材4)が備える突起42は、他方の保護部材(第1の保護部材3)が備える突起32よりも一回り大きく、突起32と相似形状に形成されていいたが、突起32,42の形状はこれに限らない。例えば、各突起32,42を先端が先細りの形状(テーパー状)としてもよい。この場合、突起32と突起42とが同じ形状およびサイズであってもよい。つまり、同じ部材を、第1の保護部材3として用いることもでき、第2の保護部材4として用いることもできる。したがって、保護部材付電線1の製造にかかるコストを抑えることができる。
【0089】
また、上記の第1の実施の形態において、第1の保護部材3、第2の保護部材4にそれぞれ形成される各突起32,42は、平面視において、角が丸められた多角形状であるとしたが、平面視において円形状であってもよい。また、上記の第2の実施の形態において、ベース保護部材5に形成される各突起52は、平面視において、円形状であるとしたが、平面視において角が丸められた多角形状であってもよい。
【0090】
また、上記の各実施の形態において、第1の保護部材3、第2の保護部材4、ベース保護部材5、および積層保護部材6の各部材は、例えば樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂)により形成することができる。
【符号の説明】
【0091】
1,1a 保護部材付電線
2 電線
2a 標準電線
2b オプション電線
3 第1の保護部材
4 第2の保護部材
5 ベース保護部材
6 積層保護部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両等に設けられる電線に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される電線は、予め定められた経路に沿う枝形状(敷設形状)に組み立てられた上で車両等に搭載される。電線の組み立ては、例えば、電線を、組立図板に立設された治具によって受け止められた状態になるように布線板上において布線して定められた敷設形状とし、布線された電線をテープ巻きにより結束し、さらに、定められた位置に各種部品(樹脂製のプロテクタ、電線を車体等に固定するための固定用の部品(例えばクランプ)等)を取り付けることによって行われる。
【0003】
上記に例示した態様による電線の組み立て工程は、工程数が多いため、作業者の作業負担が大きい。また、組立図板や治具等、作業に必要な部品も多いため、コスト負担も大きい。そこで、より小さな負担で電線の組み立てを行えるような技術が求められていた。
【0004】
このような要求に応じて、例えば特許文献1には、成型用金型を用いて電線を組み立てる態様が提案されている。ここでは、定められた枝形状の溝が形成された成型用金型に電線を布線し、樹脂を充填して型締めしてモールドすることによって、定められた敷設形状に維持された電線を形成している。
【0005】
特許文献1で提案されている技術を用いると、組立図板および治具を用いなくとも、電線を定められた形状に組み立てることができる。また、得られる電線はプロテクタと一体化された構成となっているので、プロテクタの取付工程を別に行う必要がない。
【0006】
また、例えば特許文献2には、車両に搭載されるインストルメントパネル、ドアパネル等に配置された補強リブに、電線の配索経路を挟んで交互に位置するように配置された複数の固定手段を設ける構成が開示されている。ここでは、固定手段は、一対の突起により構成されており、電線を挟持固定する。
【0007】
特許文献2で提案されている技術を用いた場合も、組立図板および治具を用いなくとも、電線を定められた形状に組み立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−6129号公報
【特許文献2】特開2006−304496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の技術によると、電線の敷設形状に対応した成型用金型を用いなければならず、様々な敷設形状に対応した成型用金型を準備しておく必要がある。また、電線の設計変更(経路の変更、分岐位置の変更、プロテクタの形状変更、電線束の総数の変更(すなわち、電線束の径サイズの変更)等)が生じるたびに、変更後の電線に応じた成型用金型を新たに準備しなければならない。一般に、電線の敷設形状は多様であり、また、電線の設計変更も頻繁に生じうる。したがって、特許文献1に開示の技術を用いようとすると、膨大な種類の成型用金型の作成が必要となり、コスト面において大きな負担が強いられることになる。
【0010】
また、特許文献2に開示の技術において、電線の固定手段が形成されるインストルメントパネル、ドアパネル等は、電線の経路に応じて仕様が変更される汎用性の低い部品であるため、同一の部品で敷設形状の異なる電線に対応することが難しい。また、固定手段を、電線の敷設形状に対応した位置に形成する必要があるため、電線の設計変更に柔軟に対応することが難しい。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、電線の組み立てにかかる負担を軽減可能であり、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様に係る保護部材付電線は、主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材と、前記第1の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第1の電線と、前記第1の電線を間に挟み込むようにして前記第1の保護部材の主面の全体を覆うことが可能な第2の保護部材であって、前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材と対向する第2主面と反対側の第1主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成される第2の保護部材と、前記第2の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第2の電線と、を備える。
【0013】
第2の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が、前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、を備え、前記第2の保護部材が、前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起であって、それぞれが、他の筒状突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の筒状突起、を備え、前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となる。
【0014】
第3の態様に係る保護部材付電線は、第1の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が、前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、を備え、前記第2の保護部材が、前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された、複数の貫通孔、を備え、前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔を介して前記第2の主面から突出し、前記第2主面から突出した前記複数の突起のそれぞれが、他の突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する。
【0015】
第4の態様に係る保護部材付電線は、第2または第3の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が備える前記複数の突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である。
【0016】
第5の態様に係る保護部材付電線は、第2の態様に係る保護部材付電線であって、前記第2の保護部材が備える前記複数の筒状突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である。
【0017】
第6の態様に係る保護部材付電線は、第2または第3の態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材が備える前記複数の突起が、格子点上に配列される。
【0018】
第7の態様に係る保護部材付電線は、第1から第6のいずれかの態様に係る保護部材付電線であって、前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とのうちの少なくとも一方が、前記保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔、を備える。
【0019】
第8の態様に係る保護部材付電線の製造方法は、a)主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材において、前記経路網に対して選択経路を設定する工程と、b)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第1の電線を配設する工程と、c)前記第2の保護部材で、前記第1の電線が配設された前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態とする工程と、d)前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において前記第1の保護部材と対向する側の第2主面と反対側の第1主面に形成された複数の経路を選択可能な経路網に対して、選択経路を設定する工程と、e)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第2の電線を配設する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
第1,第8の態様によると、第1の保護部材に、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、第1の電線を定められた形状に規制することができるので、電線の組み立てにかかる負担が大幅に軽減される。さらに、第1の保護部材の主面の全体を覆う第2の保護部材にも、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、第1の電線とは別の第2の電線を定められた形状に規制することができる。したがって、2種類の電線をそれぞれ別の形状に規制して一体に形成することができる。また、選択する経路を変更するだけで電線を異なる形状に規制することができるので、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応することができる。
【0021】
第2の態様によると、第2の保護部材3が第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、第2の保護部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0022】
第3の態様によると、第2の保護部材が第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、第2の保護部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔に挿通されるので、保護部材付電線の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0023】
第4の態様によると、第1の保護部材が備える複数の突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状であるので、突起に沿うように這わせられた電線が傷つきにくい。
【0024】
第5の態様によると、第2の保護部材が備える複数の筒状突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状であるので、筒状突起に沿うように這わせられた電線が傷つきにくい。
【0025】
第6の態様によると、第1の保護部材が備える複数の突起が格子点上に配列されるので、第1、第2の各保護部材の主面に格子状の経路網を形成することができる。
【0026】
第7の態様によると、保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔を備えるので、保護部材付電線を外部部材に簡単に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線の側断面図である。
【図2】保護部材付電線の平面図である。
【図3】保護部材付電線の平面図である。
【図4】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図5】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図6】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図7】保護部材付電線を車両等の定位置に固定する際の様子を示す図である。
【図8】この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線の側断面図である。
【図9】保護部材付電線の平面図である。
【図10】保護部材付電線の平面図である。
【図11】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図12】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【図13】保護部材付電線を製造する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら、この発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、この発明を具体化した一例であり、この発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0029】
<第1の実施の形態>
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第1の実施の形態に係る保護部材付電線について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1には保護部材付電線1の側断面図が、図2には保護部材付電線1の平面図が、図3には第2の保護部材4を取り外した状態の保護部材付電線1の平面図が、それぞれ示されている。
【0030】
保護部材付電線1は、電線2を備える。電線2としては、車両等において各種電気機器間を相互接続するワイヤーハーネスを構成するものが想定される。なお、保護部材付電線1が備える電線2は、1本であってもよいし、複数本であってもよい。すなわち、電線2は、複数の電線2が束ねられた電線束であってもよい。
【0031】
保護部材付電線1は、標準仕様となる電線2と、オプションにより取り付けられる電線2との二種類の電線2を備える。以下において、特に両者を区別する場合には、前者を「標準電線2a」と、後者を「オプション電線2b」と、それぞれ呼ぶ。
【0032】
保護部材付電線1は、複数(この実施の形態においては、例えば2個)の保護部材3,4を備える。保護部材3,4は、電線2を保護する保護部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に規制する形状規制部材として機能する。
【0033】
第1の保護部材3と、第2の保護部材4とはほぼ同様の構成を備える。すなわち、保護部材3,4は、平坦な矩形状のベース部31,41と、ベース部31,41の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起32,42とを備える。
【0034】
第1の保護部材3の各突起32は、格子点上に配置される(図3)。また、第2の保護部材4の各突起42は、第1の保護部材3における複数の突起32のいずれかと対応する位置に形成される(図2)。すなわち、第2の保護部材4の各突起42も格子点上に配列される。
【0035】
ただし、第2の保護部材4が備える各突起42は、底部が開口した筒形状の突起である。また、当該突起42は、第1の保護部材3が備える突起32をその内部に入れ子状に収容できるように、突起32よりも一回り大きく、突起32と相似形状に形成されている。
【0036】
突起32と突起32との間に形成される隙間、および、突起42と突起42との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起32,42は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起32,42が格子点上に配列されることによって、保護部材3,4の第1主面上に格子状の経路網が形成される。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいて各保護部材3,4に対して固定される。
【0037】
なお、突起32,42は、平面視において、角が丸められた(アールがつけられた)多角形状(例えば、矩形状)とすることが好ましい。複数の突起32,42のそれぞれを、角が丸められた多角形状としておけば、突起32,42に沿うように這わせられた電線2が傷つきにくいという利点が得られる。
【0038】
第1の保護部材3と第2の保護部材4とのうちの少なくとも一方(この実施の形態においては、例えば第1の保護部材3)は、ベース部31の端辺に形成された貫通孔33を備える。貫通孔33は、保護部材付電線1を車両等の定位置に固定するための固定用の部品を挿通させるための孔(固定部品取付用の貫通孔)である。
【0039】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1を製造する方法について、図4〜図6を参照しながら説明する。図4〜図6は、保護部材付電線1を製造する方法を説明するための図である。
【0040】
上述したとおり、第1の保護部材3の第1主面には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第1工程においては、第1の保護部材3の第1主面に形成された経路網から標準電線2aを配設すべき経路が選択される(図4の上段。なお、図4の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0041】
第2工程においては、第1工程で選択された経路に沿って突起32の間を這わせるようにして標準電線2aを第1の保護部材3の第1主面上に配設した状態とする(図4の中段)。これによって、標準電線2aが、第1の保護部材3の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0042】
第3工程においては、ベース部31の端辺と標準電線2aとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、標準電線2aを第1の保護部材3に対して固定した状態とする(図4の下段)。標準電線2aを第1の保護部材3に固定する態様として、例えば、以下の態様のいずれかを採用することができる。
【0043】
例えば、ベース部31に形成した貫通孔にバンドを挿通させ、当該バンドで標準電線2aを締結することにより標準電線2aを第1の保護部材3に固定することができる。
【0044】
また例えば、ベース部31の周囲に立設した壁と標準電線2aとの交差位置に切り欠きを形成しておき、標準電線2aを当該切り欠き部に挿通させるとともに、当該切り欠き部において標準電線2aを壁部に対して固定することによって、標準電線2aを第1の保護部材3に固定してもよい。切り欠き部における標準電線2aの固定には、例えばテープベラを用いることができる。すなわち、切り欠き部に舌状に延在するテープベラを形成し、このテープベラに標準電線2aを固定(例えば、テープで巻き付けることによって固定)することができる。
【0045】
また、切り欠き部における標準電線2aの固定は、例えば、切り欠き部と引っ掛かり合う部品を用いてもよい。すなわち、切り欠き部と引っ掛かり合う部品を標準電線2aに予め装着しておき、当該部品を切り欠き部に引っ掛けることによって標準電線2aを固定することができる。ここで、引っ掛かり用の部品は、例えば、電線を挿通させる貫通孔が中央付近に形成された直方体の部品であって、両側面に切り欠き部と引っ掛かり合う溝が形成された樹脂成型品により構成することができる。また、ゴムバンドにより構成することもできる。引っ掛かり用の部品としてゴムバンドを用いる場合、一対のゴムバンドを、間隔をあけて標準電線2aに巻き付けておき、標準電線2aを切り欠きに挿通させるとともに、壁部を一対のゴムバンドの間に挟み込むことによって、切り欠き部において標準電線2aを壁部に対して固定することができる。
【0046】
また、切り欠き部における標準電線2aの固定は、例えば、接着剤を用いてもよい。すなわち、切り欠き部と、ここに挿通された標準電線2aとの間に接着剤を充填することによって、標準電線2aを固定してもよい。
【0047】
第4工程においては、第2の保護部材4を第1の保護部材3の第1主面に被せた状態として標準電線2aを第1の保護部材3と第2の保護部材4との間に挟み込み、この状態で第2の保護部材4を第1の保護部材3に対して固定した状態とする。具体的には、まず、第2の保護部材4の第1主面と逆側の主面(第2主面)を第1の保護部材3の第1主面に対向させた状態とし、第2の保護部材4の第2主面の全体で第1の保護部材3の第1主面の全体が覆われるように、第2の保護部材4を第1の保護部材3に近づけていき、標準電線2aを第1の保護部材3と第2の保護部材4との間に挟み込む(図5の上段)。上述したとおり、第2の保護部材4には、第1の保護部材3の第1主面に形成された各突起32と対応する位置に、底部が開口した筒状突起42が形成されている。したがって、第2の保護部材4の第2主面を第1の保護部材3の第1主面に近づけていくと、第1の保護部材3の各突起32が、第2の保護部材4の各突起42の筒内部に入れ子状に差し込まれた状態となる(図5の下段)。この状態において、第1の保護部材3の端辺と第2の保護部材4の端辺とを例えば超音波溶接することによって、第1の保護部材3に被せられた第2の保護部材4を第1の保護部材3に対して固定する。なお、第2の保護部材4と第1の保護部材3との固定は、他の態様(例えば、クランプによる固定、嵌め合い構造による固定、接着剤を用いた固定等)により行われてもよい。
【0048】
第1の保護部材3に被せられた第2の保護部材4の第1主面には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第5工程においては、第2の保護部材4の第1主面に形成された経路網からオプション電線2bを配設すべき経路が選択される(図6の上段。なお、図6の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0049】
第6工程においては、第5工程で選択された経路に沿って突起42の間を這わせるようにしてオプション電線2bを第2の保護部材4の第1主面上に配設した状態とする(図6の中段)。これによって、オプション電線2bが、第2の保護部材4の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0050】
第7工程においては、ベース部41の端辺とオプション電線2bとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、オプション電線2bを第2の保護部材4に対して固定した状態とする(図6の下段)。この工程は、第3工程と同様の態様で行うことができる。
【0051】
以上の工程により、保護部材付電線1を得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1を外部部材(例えば車体パネル)に固定する際には、図7に示すように、第1の保護部材3に形成された固定部品取付用の貫通孔33に固定用の部品(クランプ)9を差し込んで挿通させ、当該固定用の部品9を外部部材90に取り付ければよい。これによって、保護部材付電線1を車両等の定位置に簡単に固定することができる。
【0052】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1が備える標準電線2aは、定められた敷設形状に規制された状態で、第1の保護部材3と第2の保護部材4との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。また、オプション電線2bは、定められた敷設形状に規制された状態で、外部部材90と第2の保護部材4との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。
【0053】
<3.効果>
上記の実施の形態によると、第1の保護部材3に、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、標準電線2aを定められた形状に規制することができるので、標準電線2aの組み立てにかかる負担が大幅に軽減される。さらに、第1の保護部材3の主面の全体を覆う第2の保護部材4にも、複数の経路を選択可能な経路網が形成されており、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設することによって、標準電線2aとは別のオプション電線2bを定められた形状に規制することができる。すなわち、2種類の電線20a,20bをそれぞれ別の形状に規制して一体に形成することができる。この構成は、特に、オプションで搭載される電線が比較的多いエリア(例えば、車両のシート付近、ドア付近等)に敷設される電線の組み立てにおいて特に有効である。
【0054】
また、選択する経路を変更するだけで電線2を異なる形状に規制することができるので、さまざまな組み立て形状に柔軟に対応することができる。例えば、電線2の経路の変更、分岐位置の変更等が生じた場合にも、保護部材3,4に形成された経路網に対して別の経路を選択するだけで当該変更に対応することができる。つまり、電線2の設計変更にも柔軟に対応することが可能となる。
【0055】
さらに、経路の選択態様により、電線2の余長を保護部材付電線1において吸収させることができる。例えば、蛇行した経路を選択することによって、電線2の余長を保護部材付電線1において吸収させることができる。
【0056】
また、単純な作業で電線2を組み立てることができるので、当該作業を自動化することも可能となる。
【0057】
さらに、従来において、電線2を定められた形状に規制する作業において必要とされていた図板や治具等が不要となるので、電線の組み立てにかかるコストも低減できる。また、従来において、電線2を定められた形状に保つために必要とされていたテープ等も不要となるので、電線の製造にかかるコストも低減できる。
【0058】
また、電線2を定められた形状に規制する工程と、電線2を保護するための部材を電線2に取り付ける工程とが同時に行われることになるので、この点においても、電線2の組み立てにかかる負担が軽減される。
【0059】
特に、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1によると、第2の保護部材4が第1の保護部材3の主面の全体を覆った状態において、第1の保護部材3が備える突起群を構成する各突起32が、第2の保護部材45が備える筒状突起群を構成する各筒状突起42の中に入れ子状に差し込まれた状態となるので、保護部材付電線1の全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0060】
<第2の実施の形態>
この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線について説明する。以下においては、保護部材付電線1と相違しない構成についてはその説明を省略するとともに、同じ符号を付して示す。
【0061】
<1.保護部材付電線の全体構成>
この発明の第2の実施の形態に係る保護部材付電線の全体構成について、図8〜図10を参照しながら説明する。図8には保護部材付電線1aの側断面図が、図9には保護部材付電線1aの平面図が、図10には積層保護部材6を取り外した状態の保護部材付電線1aの平面図が、それぞれ示されている。
【0062】
保護部材付電線1aは、電線2と、ベース保護部材5と、積層保護部材6とを備える。
【0063】
ベース保護部材5、積層保護部材6はいずれも、電線2を保護する保護部材として機能するとともに、電線2を定められた敷設形状に規制する形状規制部材として機能する。
【0064】
ベース保護部材5は、図10に示されるように、平坦な矩形状のベース部51と、ベース部51の一方の主面(第1主面)の全体に立設された複数の突起52とを備える。各突起52は、断面円形の棒状突起であり、格子点上に配置されている。
【0065】
突起52と突起52との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起52は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起52が格子点上に配列されることによって、ベース保護部材5の第1主面に格子状の経路網が形成される。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいてベース保護部材5に対して固定される。なお、複数の突起52を、断面円形状としておけば、突起52に沿うように這わせられた電線2が傷つきにくいという利点が得られる。
【0066】
ベース保護部材5は、ベース部51の端辺に形成された貫通孔53をさらに備える。貫通孔53は、保護部材付電線1を車両等の定位置に固定するための固定用の部品を挿通させるための孔(固定部品取付用の貫通孔)である。なお、貫通孔53は、ベース保護部材5ではなく積層保護部材6に形成されてもよい。
【0067】
積層保護部材6は、図9に示されるように、平坦な矩形状のベース部61と、ベース部61の全体に形成された複数の貫通孔62とを備える。貫通孔62は、平面視においてベース保護部材5が備える突起52よりも大きなサイズに形成されており、その中に突起52を挿通させることができる。また、各貫通孔62は、ベース保護部材5の第1主面における複数の突起52のいずれかと対応する位置に形成される。すなわち、各貫通孔62は、格子点上に配列される。
【0068】
後に明らかになるように、積層保護部材6がベース保護部材5の第1主面の全体を覆った状態において、ベース保護部材5が備える各突起52が、積層保護部材6が備える各貫通孔62を介して積層保護部材6の主面から突出する。つまり、この状態において、当該主面から突出した複数の突起52と突起52との間に形成される隙間は、電線2を這わすことができる経路となっている。また、各突起52は当該経路の分岐部を構成している。つまり、複数の突起52が格子点上に配列されることによって、積層保護部材6のベース部61上に格子状の経路網が形成されることになる。電線2は、当該経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設されることによって選択経路に沿う形状に規制され、この状態で、その延在方向の定められた位置(固定位置)Pにおいてベース保護部材5に対して固定される。
【0069】
<2.保護部材付電線の製造方法>
次に、保護部材付電線1aを製造する方法について、図11〜図13を参照しながら説明する。図11〜図13は、保護部材付電線1aを製造する方法を説明するための図である。
【0070】
上述したとおり、ベース保護部材5の第1主面には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第1工程においては、ベース保護部材5の第1主面に形成された経路網から標準電線2aを配設すべき経路が選択される(図11の上段。なお、図11の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0071】
第2工程においては、第1工程で選択された経路に沿って突起52の間を這わせるようにして標準電線2aをベース保護部材5の第1主面上に配設した状態とする(図11の中段)。これによって、標準電線2aが、ベース保護部材5の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0072】
第3工程においては、ベース部51の端辺と標準電線2aとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、標準電線2aをベース保護部材5に対して固定した状態とする(図11の下段)。この工程は、第1の実施の形態に係る第3工程と同様の態様で行うことができる。
【0073】
第4工程においては、積層保護部材6をベース保護部材5の第1主面に被せた状態として標準電線2aをベース保護部材5と積層保護部材6との間に挟み込み、この状態で積層保護部材6をベース保護部材5に対して固定した状態とする。具体的には、まず、積層保護部材6の全体でベース保護部材5の第1主面の全体が覆われるように、積層保護部材6をベース保護部材5に近づけていき、標準電線2aをベース保護部材5と積層保護部材6との間に挟み込む(図12の上段)。上述したとおり、積層保護部材6のベース部61には、ベース保護部材5の第1主面に形成された各突起52と対応する位置に、各突起52が挿通可能な貫通孔62が形成されている。したがって、積層保護部材6をベース保護部材5の第1主面に近づけていくと、ベース保護部材5の各突起52が、積層保護部材6の各貫通孔62に挿通した状態となる(図12の下段)。この状態において、ベース保護部材5の端辺と積層保護部材6の端辺とを例えば超音波溶接することによって、ベース保護部材5に被せられた積層保護部材6をベース保護部材5に対して固定する。なお、積層保護部材6とベース保護部材5との固定は、他の態様(例えば、クランプによる固定、嵌め合い構造による固定、接着剤を用いた固定等)により行われてもよい。
【0074】
ベース保護部材5に積層保護部材6が被せられた状態においては、積層保護部材6に形成された複数の貫通孔62のそれぞれから、ベース保護部材5が備える各突起52が突出した状態となっている。つまり、この状態において、積層保護部材6のベース部61の主面上には格子状の経路網が形成されており、そこから無数の経路を選択することができるようになっている。第5工程においては、積層保護部材6の主面に形成された経路網からオプション電線2bを配設すべき経路が選択される(図13の上段。なお、図13の上段においては、選択された経路が一点鎖線で例示されている)。
【0075】
第6工程においては、第5工程で選択された経路に沿って突起52の間を這わせるようにしてオプション電線2bを積層保護部材6の主面上に配設した状態とする(図13の中段)。これによって、オプション電線2bが、積層保護部材6の第1主面に形成された経路網に対して設定された選択経路に沿う形状に規制された状態となる。
【0076】
第7工程においては、ベース部61の端辺とオプション電線2bとの交差位置を固定位置Pとし、当該固定位置Pにおいて、オプション電線2bを積層保護部材6に対して固定した状態とする(図13の下段)。この工程は、第1の実施の形態に係る第3工程と同様の態様で行うことができる。
【0077】
以上の工程により、保護部材付電線1aを得ることができる。なお、得られた保護部材付電線1aを外部部材(例えば車体パネル)に固定する態様は、第1の実施の形態と同様である。
【0078】
車両等の定位置に固定された状態において、保護部材付電線1aが備える標準電線2aは、定められた敷設形状に規制された状態で、ベース保護部材5と積層保護部材6との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。また、オプション電線2bは、定められた敷設形状に規制された状態で、外部部材90と積層保護部材6との間に挟み込まれ、他の部分との接触が抑制されるように保護される。これによって、電線2が他の部分と接触して損傷する、また、騒音を発する、といった事態が回避される。
【0079】
<3.効果>
この実施の形態に係る保護部材付電線1aにおいては、第1の実施の形態に係る保護部材付電線1と同様の効果が得られる。特に、この実施の形態に係る保護部材付電線1aによると、積層保護部材6がベース保護部材5の主面の全体を覆った状態において、ベース保護部材5が備える突起群を構成する各突起52が、積層保護部材6が備える貫通孔群を構成する各貫通孔62に挿通されるので、保護部材付電線1bの全体の厚みを薄く抑えることができる。
【0080】
<変形例>
上記の各実施の形態においては、第2の保護部材4(あるいは、積層保護部材6)は、その上にオプション電線2bが配設されるものとしたが、必ずしもオプション電線2bが配設される必要はない。オプション電線2bが配設されない場合、第2の保護部材4(あるいは、積層保護部材6)は、第1の保護部材3(あるいは、ベース保護部材5)との間に標準電線20aを挟み込んで、これを一方側から保護するカバー部材として機能することになる。第1の保護部材3(あるいは、ベース保護部材5)をカバー部材として機能させる態様は、保護部材付電線1,1aが取り付けられる外部部材に電線2を直接接触させたくない場合(例えば、外部部材が、電線2を傷つける可能性のある比較的硬い部材である場合)に特に有効である。
【0081】
また、第1の実施の形態においては、第1の保護部材3と第2の保護部材4との2個の保護部材を備える構成としたが、3個以上の保護部材を備える構成としてもよい。例えば、オプション電線2bが配設された第2の保護部材4の上に重ね合わせる第3の保護部材をさらに備える構成としてもよい。この場合、第3の保護部材が備える突起の形状は、その筒内部に第2の保護部材4の突起42を入れ子状に入り込ませることができるように、突起42よりも一回り大きく、突起42と相似形状の突起とする。この変形例によると、第2の保護部材4の上に重ね合わされた第3の保護部材の上に形成された格子状の経路網に、さらに別のオプション用の電線を配設することができる。また、さらに別のオプション電線を配設せずに、第3の保護部材を、第2の保護部材4との間にオプション電線2bを挟み込んで、これを一方側から保護するカバー部材として機能させてもよい。
【0082】
また、第2の実施の形態においては、1個の積層保護部材6を備える構成としたが、2個以上の保護部材を備える構成としてもよい。例えば、オプション電線2bが配設された積層保護部材6の上に重ね合わせるもう一つの積層保護部材6(第2の積層保護部材6)をさらに備える構成としてもよい。この場合、ベース保護部材5が備える各突起52は、第1の積層保護部材6が備える各貫通孔62、第2の積層保護部材6が備える各貫通孔62を順に挿通して、第2の積層保護部材6の主面から突出する。この変形例によると、第2の積層保護部材6の上に形成された格子状の経路網に、さらに別のオプション用の電線を配設することができる。また、さらに別のオプション電線を配設せずに、第2の積層保護部材6を、第1の積層保護部材6との間にオプション電線2bを挟み込んで、これを一方側から保護するカバー部材として機能させてもよい。
【0083】
また上記の各実施の形態において、保護部材付電線1,1aを製造する工程において、第1の保護部材3および第2の保護部材4における(あるいは、ベース保護部材5および積層保護部材6における)、配設された電線2の経路領域を含まない部分領域を切り取る工程をさらに設けてもよい。この工程を設けることによって、保護部材付電線1,1aを、それが配置されるスペースに応じた形状とすることができる。
【0084】
また第1の実施の形態においては、第1の保護部材3、第2の保護部材4において複数の突起32,42がそれぞれ形成されることによりこれら各部材3,4の第1主面に経路網が形成されることとしたが、経路網を形成する態様は、必ずしも突起を形成する態様に限らない。例えば、ベース部31,41上に溝(例えば、格子状の溝)を形成することにより経路網を形成してもよい。
【0085】
また、上記の各実施の形態においては、複数の突起32,42,52が格子点上に配置されることにより保護部材3,4、あるいはベース保護部材5の第1主面に格子状の経路網が形成されることとしたが、第1主面に形成される経路網は、少なくとも2以上の経路を選択可能な経路網であればよい。つまり、第1主面に形成される経路網は、必ずしも格子状でなくともよく、また、必ずしも規則的でなくともよい。例えば、複数の突起32,42,52を同心の円周上に間隔をおいてベース部31,41,51上に配置することにより、放射状の経路網を形成してもよい。また例えば、複数の突起32,42,52を不規則に配置して不規則な経路網を形成してもよい。
【0086】
また、上記の実施の形態においては、保護部材3,4,5の第1主面の全体に経路網が形成されることとしたが、経路網は第1主面の一部領域に形成されてもよい。
【0087】
また、上記の実施の形態において、第1の実施の形態に係る第1の保護部材3に、第2の実施の形態に係る積層保護部材6が組み合わされてもよい。また、第2の実施の形態に係るベース保護部材5に、第1の実施の形態に係る第2の保護部材4が組み合わされてもよい。
【0088】
また、上記の第1の実施の形態においては、第1の保護部材3の各突起32と第2の保護部材4の各突起42とは、一方の保護部材(第2の保護部材4)が備える突起42は、他方の保護部材(第1の保護部材3)が備える突起32よりも一回り大きく、突起32と相似形状に形成されていいたが、突起32,42の形状はこれに限らない。例えば、各突起32,42を先端が先細りの形状(テーパー状)としてもよい。この場合、突起32と突起42とが同じ形状およびサイズであってもよい。つまり、同じ部材を、第1の保護部材3として用いることもでき、第2の保護部材4として用いることもできる。したがって、保護部材付電線1の製造にかかるコストを抑えることができる。
【0089】
また、上記の第1の実施の形態において、第1の保護部材3、第2の保護部材4にそれぞれ形成される各突起32,42は、平面視において、角が丸められた多角形状であるとしたが、平面視において円形状であってもよい。また、上記の第2の実施の形態において、ベース保護部材5に形成される各突起52は、平面視において、円形状であるとしたが、平面視において角が丸められた多角形状であってもよい。
【0090】
また、上記の各実施の形態において、第1の保護部材3、第2の保護部材4、ベース保護部材5、および積層保護部材6の各部材は、例えば樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂)により形成することができる。
【符号の説明】
【0091】
1,1a 保護部材付電線
2 電線
2a 標準電線
2b オプション電線
3 第1の保護部材
4 第2の保護部材
5 ベース保護部材
6 積層保護部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材と、
前記第1の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第1の電線と、
前記第1の電線を間に挟み込むようにして前記第1の保護部材の主面の全体を覆うことが可能な第2の保護部材であって、前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材と対向する第2主面と反対側の第1主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成される第2の保護部材と、
前記第2の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第2の電線と、
を備える保護部材付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が、
前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、
を備え、
前記第2の保護部材が、
前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起であって、それぞれが、他の筒状突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の筒状突起、
を備え、
前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となる保護部材付電線。
【請求項3】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が、
前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、
を備え、
前記第2の保護部材が、
前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された、複数の貫通孔、
を備え、
前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔を介して前記第2の主面から突出し、前記第2主面から突出した前記複数の突起のそれぞれが、他の突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する保護部材付電線。
【請求項4】
請求項2または3に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が備える前記複数の突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である保護部材付電線。
【請求項5】
請求項2に記載の保護部材付電線であって、
前記第2の保護部材が備える前記複数の筒状突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である保護部材付電線。
【請求項6】
請求項2または3に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が備える前記複数の突起が、格子点上に配列される保護部材付電線。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とのうちの少なくとも一方が、
前記保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔、
を備える保護部材付電線。
【請求項8】
a)主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材において、前記経路網に対して選択経路を設定する工程と、
b)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第1の電線を配設する工程と、
c)前記第2の保護部材で、前記第1の電線が配設された前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態とする工程と、
d)前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において前記第1の保護部材と対向する側の第2主面と反対側の第1主面に形成された複数の経路を選択可能な経路網に対して、選択経路を設定する工程と、
e)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第2の電線を配設する工程と、
を備える保護部材付電線の製造方法。
【請求項1】
主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材と、
前記第1の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第1の電線と、
前記第1の電線を間に挟み込むようにして前記第1の保護部材の主面の全体を覆うことが可能な第2の保護部材であって、前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材と対向する第2主面と反対側の第1主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成される第2の保護部材と、
前記第2の保護部材に形成される経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で配設された第2の電線と、
を備える保護部材付電線。
【請求項2】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が、
前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、
を備え、
前記第2の保護部材が、
前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された複数の筒状突起であって、それぞれが、他の筒状突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の筒状突起、
を備え、
前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える筒状突起群を構成する各筒状突起の中に入れ子状に差し込まれた状態となる保護部材付電線。
【請求項3】
請求項1に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が、
前記主面に形成された複数の突起であって、それぞれが、他の突起との間に前記第1の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する、複数の突起、
を備え、
前記第2の保護部材が、
前記第1主面における、前記第1の保護部材の前記複数の突起とそれぞれ対応する位置に形成された、複数の貫通孔、
を備え、
前記第2の保護部材が前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において、前記第1の保護部材が備える突起群を構成する各突起が、前記第2の保護部材が備える貫通孔群を構成する各貫通孔を介して前記第2の主面から突出し、前記第2主面から突出した前記複数の突起のそれぞれが、他の突起との間に前記第2の電線を這わすことができる経路を形成するとともに、当該経路の分岐部を構成する保護部材付電線。
【請求項4】
請求項2または3に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が備える前記複数の突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である保護部材付電線。
【請求項5】
請求項2に記載の保護部材付電線であって、
前記第2の保護部材が備える前記複数の筒状突起のそれぞれが、平面視において角が丸められた多角形状、あるいは円形状である保護部材付電線。
【請求項6】
請求項2または3に記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材が備える前記複数の突起が、格子点上に配列される保護部材付電線。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の保護部材付電線であって、
前記第1の保護部材と前記第2の保護部材とのうちの少なくとも一方が、
前記保護部材付電線を外部部材に固定させるための固定用部品を挿通させる貫通孔、
を備える保護部材付電線。
【請求項8】
a)主面に、複数の経路を選択可能な経路網が形成された第1の保護部材において、前記経路網に対して選択経路を設定する工程と、
b)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第1の電線を配設する工程と、
c)前記第2の保護部材で、前記第1の電線が配設された前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態とする工程と、
d)前記第1の保護部材の主面の全体を覆った状態において前記第1の保護部材と対向する側の第2主面と反対側の第1主面に形成された複数の経路を選択可能な経路網に対して、選択経路を設定する工程と、
e)前記経路網に対して設定された選択経路に沿う状態で第2の電線を配設する工程と、
を備える保護部材付電線の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−157095(P2012−157095A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11780(P2011−11780)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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