説明

信号伝送用ケーブル及びこれを用いたケーブルハーネス

【課題】絶縁層へ損傷を与えることなく容易に端末加工が可能な信号伝送用ケーブルを提供する。
【解決手段】内部導体2の周囲に絶縁層3が形成された被覆線4の長手方向に沿って金属線からなる外部導体6が縦添えされ、被覆線4および外部導体6が共に撚り合わされた撚線5と、撚線5の周囲に設けられて被覆線4および外部導体6を一括して被覆するシールド層7と、シールド層7の周囲に設けられてシールド層7を被覆するジャケット8と、を備え、シールド層7は、金属蒸着層12を有する複合テープ10からなり、複合テープ10の金属蒸着層12が外部導体6に接するように螺旋状に巻回されて設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲・捻回、及びU字スライドについて高い信頼性を有し、機器の繰り返し屈曲・捻回、及びU字スライドを伴う部分で使用される信号伝送用ケーブル及びこれを用いたケーブルハーネスに係り、特に、シールド部分の端末接続性が向上した信号伝送用ケーブル及びこれを用いたケーブルハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンや携帯電話、PDA、ビデオカメラなどの電子機器において電子機器本体と液晶ディスプレイ間の信号伝送に使用されるケーブルには、例えば、内部導体と、該内部導体の周囲に設けられた絶縁層と、絶縁層の周囲に設けられたシールド層と、シールド層の周囲に設けられたジャケットとを備えたシールドケーブルが広範に用いられている(例えば、特許文献1参照)。特に近年では、EMI(Electro Magnetic Interference)特性やSKEW(スキュー)特性といった電気特性や、携帯電話の端末接続部の省スペース化に伴う薄型化等の電子機器の小型化、或いは電子機器の動作の多様化が進んでいる。更に、携帯電話やビデオカメラについては2軸タイプが増えるにつれ、ケーブルに対する屈曲・捻回、及びU字スライドについて高い信頼性が求められるようになってきており、また、諸受信機能増加のため、内部アンテナの数が増えることによって、ケーブルに対して高いEMI特性が要求されるようになってきている。
【0003】
このような背景から、シールド部分であるシールド層に、屈曲・捻回、及びU字スライドについての信頼性が高く、ケーブルの細径化に有利な横巻シールドを適用した信号伝送用ケーブルが用いられている。
【0004】
具体的には、図5に示すように、信号伝送用ケーブル50は、内部導体51を絶縁層52で被覆した1本又は複数本の被覆線53と、被覆線53の外周に設けられ、多数本の外部導体54からなる横巻シールドで構成されたシールド層55と、シールド層55の外周に被覆されたジャケット56とを有する。
【0005】
この信号伝送用ケーブル50を機器側に接続する際には、例えば、先端部分のジャケット56およびシールド層55を段剥きして被覆線53を突出させ、機器側の内部導体と接続される電極のピッチ間隔に合わせて被覆線53に曲げなどを施してすることが多い。
【0006】
このとき、ジャケット56から突出したシールド層55は、図6に示すように、横巻シールドされたままの形状でグランド電極(グランドバー)61に載置して接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−352640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シールド層が多数本の外部導体からなる横巻シールドで構成された従来の信号伝送用ケーブルの場合は、電気特性は優れているが、外部導体が1本の素線(単線)であるため、屈曲・捻回、及びU字スライドの動作において寿命が短く、外部導体の素線本数も多い(20〜50本程度)ため、信号伝送用ケーブルの端末加工(機器側の電極との接続)の際には切断作業に時間がかかるという問題がある。
【0009】
外部導体の切断方法には、主にYAGレーザ照射による切断方法と外部導体全体を半田で固めた後に切断部を折り曲げることで切断する2つの方法がある。
【0010】
しかし、YAGレーザ照射による切断方法では、YAGレーザの透過や外部導体がYAGレーザによって溶ける際の熱によって絶縁層が損傷し、絶縁不良が発生しやすいという問題がある。また、360度全周でのレーザパワーが均一ではないため、外部導体の切れ残しが発生し、内部導体との短絡不良が発生しやすいという問題もある。
【0011】
外部導体全体を半田で固めた後に切断部を折り曲げることで切断する方法では、折り曲げる際に絶縁層全体に外部導体が被覆されているため、折り曲げ部で絶縁層を擦ることによって絶縁不良が発生しやすいという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、絶縁層へ損傷を与えることなく容易に端末加工が可能な信号伝送用ケーブル及びこれを用いたケーブルハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、内部導体の周囲に絶縁層が形成された被覆線の長手方向に沿って金属線からなる外部導体が縦添えされ、前記被覆線および前記外部導体が共に撚り合わされた撚線と、前記撚線の周囲に設けられて前記被覆線および前記外部導体を一括して被覆するシールド層と、前記シールド層の周囲に設けられて前記シールド層を被覆するジャケットと、を備え、前記シールド層は、金属蒸着層を有する複合テープからなり、前記複合テープの前記金属蒸着層が前記外部導体に接するように螺旋状に巻回されて設けられている信号伝送用ケーブルである。
【0014】
請求項2の発明は、前記複合テープは、プラスチックテープの片面、或いは両面に金属蒸着層が設けられている請求項1に記載の信号伝送用ケーブルである。
【0015】
請求項3の発明は、前記外部導体の素線径が前記内部導体の素線径の1.0倍以上1.5倍以下であり、前記シールド層の前記金属蒸着層の厚さが0.1μm以上0.4μm未満である請求項1又は2に記載の信号伝送用ケーブルである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の信号伝送用ケーブルが複数本所定ピッチでフラット状に配列されてなるケーブルハーネスである。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の信号伝送用ケーブルを含むケーブル群の両端部に接続端末を有し、機器の屈曲・捻回、及びU字スライドを伴う部分で使用されるケーブルハーネスである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、絶縁層へ損傷を与えることなく容易に端末加工が可能な信号伝送用ケーブル及びこれを用いたケーブルハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る信号伝送用ケーブルを示す横断面図である。
【図2】図1の信号伝送用ケーブルの端末部、及びシールド層の詳細を示す図である。
【図3】図1の信号伝送用ケーブルと機器側との接続を説明する図である。
【図4】図1の信号伝送用ケーブルを用いたケーブルハーネスを示す横断面図である。
【図5】従来の信号伝送用ケーブルを示す横断面図である。
【図6】図5の信号伝送用ケーブルと機器側との接続を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る信号伝送用ケーブルを示す横断面図である。図2は、図1の信号伝送用ケーブルの端末部を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係る信号伝送用ケーブル1は、内部導体2の周囲に絶縁層3が形成された被覆線4の長手方向に沿って金属線からなる外部導体6が縦添えされ、被覆線4および外部導体6が共に撚り合わされた撚線5と、撚線5の周囲に設けられて被覆線4および外部導体6を一括して被覆するシールド層7と、シールド層7の周囲に設けられてシールド層7を被覆するジャケット8と、を備える。この信号伝送用ケーブル1は、ノートパソコンや携帯電話などの狭いヒンジ部を通して配線されること、繰返し捻りを受けることなどから外径が0.5mm以下に形成されることが望ましい。
【0023】
内部導体2は複数の銅線9(例えば、銀めっき銅合金線)を撚り合わせてなる。銅線9としては、ノートパソコンや携帯電話のヒンジ部へ通すことを考慮すると、40AWG(7本/0.028mm〜0.032mm)〜46AWG(7本/0.014mm〜0.018mm)が望ましい。
【0024】
絶縁層3は、ふっ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)などのうちのいずれかの樹脂を用いて形成することが好ましい。特に、耐熱性等の点を考慮するとふっ素樹脂が好適である。
【0025】
外部導体6は、例えば軟銅線などの金属線が1本で形成されるか、又は金属線が複数本撚り合わされて形成されてなる。耐屈曲性の観点から、外部導体6としては、錫めっき又は銀めっき銅合金線の撚線を用いるのが望ましい。
【0026】
また、ケーブル細径化とシールド特性を考え、外部導体6の素線径は、内部導体2の素線径の1.0倍以上1.5倍以下とすることが好ましい。さらに、外部導体6の外径は、被覆線4の外径の0.7倍の太さにするのが好ましい。
【0027】
ジャケット8は、薄肉で且つ繰返し曲げに強い材料である、接着層付プラスチックテープ(ポリエステルテープ)を接着層が内側(撚線5側)となるようにラップ巻きして形成される。或いはふっ素樹脂(例えば、PFA、FEP、ETFE)を押出成形によってシールド層7を被覆するように押出被覆して形成される。
【0028】
さて、本実施の形態に係る信号伝送用ケーブル1では、図2に示すように、シールド層7は、プラスチックテープ(例えば、PETテープ)11の片面、或いは両面に、金属(例えば、銅、アルミニウムなど)を蒸着して形成した金属蒸着層12を形成してなる複合テープ10を螺旋状に巻回されて形成される。プラスチックテープ11の片面のみに金属蒸着層12を形成することで、複合テープ10の柔軟性が向上し、その結果として耐屈曲性を向上させることができる。
【0029】
なお、複合テープ10の金属蒸着層12が外部導体6に接するように巻回されることが好ましい。これにより、シールド層7の内周面の長手方向に沿って外部導体6が接触している状態となり、シールド層7と外部導体6とが一体となってシールドが形成され、従来と同等或いは従来より優れた電気特性が得られる。
【0030】
また、複合テープ10は、ラップ巻き、突き合わせ巻きなどの巻き方で巻かれているか、又は、縦添えでも良い。信号伝送用ケーブル1の細径化を考慮すると、被覆線4と外部導体6との外周に複合テープ10の側面(複合テープ10の幅方向(図2では左右方向)に位置して対向する1対の面)同士が接するように突き合わせ巻きすることが好ましい。
【0031】
複合テープ10を構成するプラスチックテープ11の厚さは、ケーブル全体の硬さや耐屈曲性を考慮し、4μm程度とすることが好ましい。また、金属蒸着層12の厚さは、0.1μm以上0.4μm未満であることが好ましい。これは、金属蒸着層12の厚さが0.1μm未満の場合、十分なシールド特性を確保することができず、金属蒸着層の厚さが0.4μm以上の場合、ケーブル全体として硬くなって耐屈曲性などが低下する虞があるからである。
【0032】
この信号伝送用ケーブル1を機器に接続する場合には、図3に示すように、信号伝送用ケーブル1の端部で、ジャケット8から外部導体6、被覆線4を並列して突出させた後、被覆線4から更に突出させた内部導体2を機器側に設けられた内部導体用電極(図示せず)に接続し、他方、外部導体6を機器側に設けられたグランド電極61に接続する。
【0033】
信号伝送用ケーブル1では、ジャケット8から外部導体6と被覆線4を突出させたとき、外部導体6と被覆線4は並列して配置されるので、被覆線4と外部導体6とは物理的に独立した状態となっている。外部導体6を切断する際は、外部導体6を半田で固めた後に折り曲げることで切断するが、外部導体6が被覆線4と並列されているため、容易に切断が可能であり、また、切断部が被覆線4の絶縁層3にダメージを与えることはない。
【0034】
また、複合テープ10からなるシールド層7は、従来の丸型の外部導体を用いたシールド層に比べて薄い(厚さ方向の大きさを小さくすることができる)ため、結果として信号伝送用ケーブル1の細径化にも寄与する。さらに、シールド層7が従来のそれに比べて薄いため、屈曲時にシールド層7が受けるダメージが従来よりも少なく、耐屈曲性を向上させることができる。
【0035】
次に、信号伝送用ケーブル1を用いたケーブルハーネスを説明する。
【0036】
信号伝送用ケーブル1を用いたケーブルハーネスは、信号伝送用ケーブル1が複数本所定ピッチでフラット状に配列されてなる。より具体的には、図4に示すように、ケーブルハーネス40は、信号伝送用ケーブル1を複数本並列に配置し、これらをPETテープ41などで挟むように被覆することで作製した多心同軸ケーブルである。このケーブルハーネス40は、両端部に接続端末を有し、機器の屈曲・捻回、及びU字スライドを伴う部分で使用される。
【0037】
このケーブルハーネス40によれば、信号伝送用ケーブル1を用いているため、その端末加工時に外部導体6を容易に切断することが可能であり、また、切断部が被覆線4の絶縁層3にダメージを与えることはない。
【0038】
なお、信号伝送用ケーブル1を少なくとも1本含むケーブル群をPETテープ41などで挟むように被覆することでケーブルハーネスを構成しても良い。
【0039】
以上より、本発明によれば、内部導体の周囲に絶縁層が形成された被覆線の長手方向に沿って金属線からなる外部導体が縦添えされ、前記被覆線および前記外部導体が共に撚り合わされた撚線と、前記撚線の周囲に設けられて前記被覆線および前記外部導体を一括して被覆するシールド層と、前記シールド層の周囲に設けられて前記シールド層を被覆するジャケットと、を備え、前記シールド層は、金属蒸着層を有する複合テープからなり、前記複合テープの前記金属蒸着層が前記外部導体に接するように螺旋状に巻回されて設けられている信号伝送用ケーブルとしたことにより、絶縁層へ損傷を与えることなく容易に端末加工が可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 信号伝送用ケーブル
2 内部導体
3 絶縁層
4 被覆線
5 撚線
6 外部導体
7 シールド層
8 ジャケット
10 複合テープ
11 プラスチックテープ
12 金属蒸着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体の周囲に絶縁層が形成された被覆線の長手方向に沿って金属線からなる外部導体が縦添えされ、前記被覆線および前記外部導体が共に撚り合わされた撚線と、
前記撚線の周囲に設けられて前記被覆線および前記外部導体を一括して被覆するシールド層と、
前記シールド層の周囲に設けられて前記シールド層を被覆するジャケットと、を備え、 前記シールド層は、金属蒸着層を有する複合テープからなり、前記複合テープの前記金属蒸着層が前記外部導体に接するように螺旋状に巻回されて設けられていることを特徴とする信号伝送用ケーブル。
【請求項2】
前記複合テープは、プラスチックテープの片面、或いは両面に金属蒸着層が設けられている請求項1に記載の信号伝送用ケーブル。
【請求項3】
前記外部導体の素線径が前記内部導体の素線径の1.0倍以上1.5倍以下であり、前記シールド層の前記金属蒸着層の厚さが0.1μm以上0.4μm未満である請求項1又は2に記載の信号伝送用ケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の信号伝送用ケーブルが複数本所定ピッチでフラット状に配列されてなることを特徴とするケーブルハーネス。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の信号伝送用ケーブルを含むケーブル群の両端部に接続端末を有し、機器の屈曲・捻回、及びU字スライドを伴う部分で使用されることを特徴とするケーブルハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−243458(P2011−243458A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115550(P2010−115550)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【Fターム(参考)】