説明

信号伝送装置

【課題】負荷のインピーダンスが所定値を超えると異常と判断して入力電流を完全に遮断し、負荷のインピーダンスが正常値になると正常動作に復帰する信号伝送装置を提供すること。
【解決手段】入力部と出力部が絶縁結合され、前記入力部側には前記入力部に電流を出力する電流源およびこの電流源の出力電流を検出する電流検出手段を有する上位機器が2線式伝送路を介して接続され、前記出力部側には所定の負荷を有するフィールド機器が2線式伝送路を介して接続される信号伝送装置において、
前記出力部に設けられた電圧検出手段は、前記フィールド機器の負荷の端子電圧の異常を検出することにより前記入力部に設けられたスイッチをOFFにするとともに、前記出力部に設けられた電圧加算手段が前記出力部に設けられた電圧電流変換部の入力電圧に所定の電圧を加算するように制御することを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送装置に関し、詳しくは、信号伝送装置を介して接続される出力負荷の異常検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロセス計装システムの一種に、制御室に設けられている制御用コンピュータやコントローラなどの上位機器と制御プラントの現場に設けられている伝送器や操作端末などのフィールド機器とが、2線式伝送路と信号伝送装置を介して接続されたものがある。上位機器は2線式伝送路と信号伝送装置を介してフィールド機器に駆動電流を供給し、フィールド機器は2線式伝送路と信号伝送装置を介して上位機器に測定信号を伝送する。そして、上位機器には、駆動電流を供給する対象であるフィールド機器の出力負荷の異常の有無を検出する機能も設けられている。
【0003】
図2は、従来のこのようなプロセス計装システムの一例を示す構成図である。図2において、上位機器10は、2線式伝送路L1と信号伝送装置20と2線式伝送路L2を介して、フィールド機器30と接続されている。
【0004】
上位機器10において、一方の端子Taには電流源11が接続され、他方の端子Tbは共通電位点に接続されている。電流源11には、電流の変化量を検出する電流検出回路12が接続されている。これら端子TaとTbには、2線式伝送路L1の一端が接続されている。
【0005】
信号伝送装置20において、一方の入力端子IN1は入力回路21に接続され、入力回路21にはトランスTの一次巻線が接続され、他方の入力端子IN2はトランスTの一次巻線の中点に接続されている。トランスTの二次巻線には出力回路22が接続され、出力回路22には出力端子OUT1とOUT2が接続されている。なお、トランスTの巻数比は1:1に設定されている。入力端子IN1とIN2には2線式伝送路L1の他端が接続され、出力端子OUT1とOUT2には2線式伝送路L2の一端が接続されている。この信号伝送装置20は、トランスTを介して絶縁結合されるアイソレータとして構成されている。
【0006】
フィールド機器30において、端子TaとTbには2線式伝送路L2の他端が接続されるとともに、負荷31として内部回路などが接続されている。
【0007】
このような構成において、上位機器10からたとえば4〜20mAの電流信号が信号伝送装置20の入力回路21に入力される。入力回路21は、入力電流を所定の周波数でスイッチングさせて、トランスTの一次巻線に出力する。ここで、トランスTの巻数比は1:1に設定されているので、二次巻線を介して出力回路22にも一次巻線と同じ電流が流れる。出力回路22は、二次巻線を介して入力される電流を整流し、フィールド機器30の負荷31に駆動電流として供給する。
【0008】
上位機器10は、信号伝送装置20がトランスTの結合のみで絶縁していることから、フィールド機器30の負荷31の変化を等価的に把握できる。すなわち、負荷31の抵抗値が大きくなると上位機器10の入力抵抗が大きくなり、上位機器10の電流源11は出力電流を流すことができなくなる。電流検出回路12は、このような電流源11の出力電流の変化を検出することにより、負荷31の異常の有無を検出できる。
【0009】
図3は従来のプロセス計装システムの他の例を示す構成図であり、図2と共通する部分には同一の符号を付けている。図3において、上位機器10は、2線式伝送路L1と信号伝送装置40と2線式伝送路L2を介して、フィールド機器30と接続されている。
【0010】
信号伝送装置40において、一方の入力端子IN1にはスイッチSWと抵抗R1との直列回路の一端が接続され、この直列回路の他端は他方の入力端子IN2に接続されるとともに共通電位点に接続されている。
【0011】
この直列回路のスイッチSWと抵抗R1との接続点には演算増幅器OP1の非反転入力端子が接続され、演算増幅器OP1の出力端子には反転入力端子が接続されるとともにパルス幅変調回路41とフォトカプラPC1とローパスフィルタLPFの直列回路が接続されている。これらスイッチSWと抵抗R1との直列回路と演算増幅器OP1とパルス幅変調回路41は、電流電圧変換部を含む入力部を構成している。
【0012】
ローパスフィルタLPFの他端は演算増幅器OP2の非反転入力端子に接続され、演算増幅器OP2の出力端子にはトランジスタTRのベースが接続され、トランジスタTRのエミッタには演算増幅器OP2の反転入力端子が接続されるとともに抵抗R2を介して共通電位点に接続されている。トランジスタTRのコレクタには出力端子OUT2が接続されるとともに電圧検出部43が接続され、電圧検出部43の出力信号はフォトカプラPC2を介してスイッチSWに駆動信号として入力されている。出力端子OUT1には電圧Vの電源線が接続されている。これら演算増幅器OP2とトランジスタTRと抵抗R2と電圧検出部43は、電圧電流変換部を含む出力部を構成している。
【0013】
すなわち、入力部と出力部は、フォトカプラPC1とPC2を介して絶縁結合されている。
【0014】
図3の構成において、入力部は上位機器10から入力されるたとえば4〜20mAの電流信号をパルス幅変調方式により電圧信号に変換し、フォトカプラPC1を介して出力部に絶縁伝送する。出力部は、入力部からフォトカプラPC1を介して絶縁伝送された電圧信号を、電流吸込み型により電流信号に変換する。
【0015】
ここで、フィールド機器30の負荷31が大きくなると、トランジスタTRのコレクタと電圧検出部43が接続されている出力端子OUT2の電圧V1が低下する。そして、電圧V1があらかじめ設定されている閾値を超えると電圧検出部43が作動し、フォトカプラPC2を介してスイッチSWをOFFにし、入力電流ラインを遮断する。これにより、上位機器10の電流検出回路12は低電流になったことを検出でき、負荷31の異常の有無を検出できる。
【0016】
特許文献1には、入出力間の信号変換器を電気的に絶縁するアイソレータを具備する二線式伝送器の構成が記載されている。
【0017】
【特許文献1】実公平1−24711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、図2の構成は、ほぼトランスTのみに依存する設計となることから、トランスの設計に関して以下のような問題点がある。
【0019】
たとえば4〜20mAの電流伝送を行うためには、トランスTに約30mAの電流を流さなければならず、サイズが大きくなってしまう。
【0020】
また、精度を出すのは難しく、結合を高めた設計が必要になることから歩留まりが低下し、高価になる。
【0021】
さらに、トランスには漏れインダクタンスがあるので、入力電流を完全に遮断することは不可能である。
【0022】
一方、図3の構成では、負荷31がOpenになると電圧V1が0Vになり、それを電圧検出部43で検出して入力部のスイッチSWをOFFにすることにより入力電流を遮断するが、負荷31が100KΩ〜1MΩ程度のインピーダンスでOpenとなっている場合は、スイッチSWをOFFにした時の入力電流はほぼ0mAになる。
【0023】
ところが、出力部は0mAを出力できる状態であるため電圧検出部43は正常に戻り、再びスイッチSWをONにする。そして、入力電流が正常に戻ると出力部は再び負荷31の異常を検出し、電圧検出部43がまた動作してスイッチSWをOFFにするという動作が繰り返され、スイッチSWはON/OFFを繰り返すことになる。この結果、タイミングにもよるが、上位機器10の電流検出回路12は負荷31の異常を検出できない場合がある。
【0024】
本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的は、負荷のインピーダンスが所定値を超えると異常と判断して入力電流を完全に遮断し、負荷のインピーダンスが正常値になると正常動作に復帰する信号伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
入力部と出力部が絶縁結合され、前記入力部側には前記入力部に電流を出力する電流源およびこの電流源の出力電流を検出する電流検出手段を有する上位機器が2線式伝送路を介して接続され、前記出力部側には所定の負荷を有するフィールド機器が2線式伝送路を介して接続される信号伝送装置において、
前記入力部には前記上位機器から入力される電流を選択的にON/OFFするスイッチと前記上位機器から入力される電流を電圧に変換する電流電圧変換部が設けられ、
前記出力部には前記入力部から入力される電圧を電流に変換する電圧電流変換部と前記フィールド機器の負荷の端子電圧を検出する電圧検出手段と電圧加算手段が設けられ、
前記電圧検出手段は、前記端子電圧の異常を検出することにより前記スイッチをOFFにするとともに、前記電圧加算手段が前記電圧電流変換部の入力電圧に所定の電圧を加算するように制御することを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の信号伝送装置において、
前記入力部の電流電圧変換部は、パルス幅変調回路を含むことを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の信号伝送装置において、
前記フィールド機器の負荷の値を読み返して負荷の診断を行う負荷診断手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
このような信号伝送装置を用いることにより、負荷のインピーダンスの状態を正確に検出でき、制御プラントの正しい制御が行える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】従来のプロセス計装システムの一例を示す構成図である。
【図3】従来のプロセス計装システムの他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成図であって、図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図3の相違点は、図1では、出力部に、電圧検出部43による負荷31の異常検出に連動して、演算増幅器OP2で構成される電圧電流変換部に電圧を加算する電圧加算部44を設けていることである。すなわち、電圧加算部44は、電圧検出部43が異常電圧を検出することにより駆動され、ローパスフィルタ42に所定の電圧を出力するように構成されている。
【0031】
図1において、負荷31が異常になってインピーダンスが高くなると、出力端子OUT2の電圧V1が低下する。電圧検出部43は、電圧V1があらかじめ設定されている閾値よりも低下したことを検出すると、図3と同様にフォトカプラPC2を介してスイッチSWをOFFにして入力電流ラインを遮断するとともに、ローパスフィルタ42に所定の電圧を出力するように電圧加算部44を駆動する。ここで、電圧加算部44の出力電圧は、演算増幅器OP2の出力端子に接続されているトランジスタTRが安定してONになるのに十分な値であればよく、回路条件に応じて任意の値に調整する。
【0032】
具体例を説明する。出力端子OUT1には電圧Vとしてたとえば24Vが印加されている。負荷31のインピーダンスは、正常状態では、たとえば0〜750Ωの範囲で変化する。これらから、たとえば負荷31のインピーダンスが750Ωの状態で20mAの電流が流れると、負荷31における電圧降下は、750Ω*20mAから15Vになる。これにより、電圧検出部43は、出力端子OUT2の電圧V1として、24V−15V=9Vを検出する。
【0033】
このような状態から、負荷31がOpenになると電圧V1は0Vになる。電圧検出部43は、電圧V1が0Vになったことを検出すると、入力部のスイッチSWをOFFにして入力電流を遮断するとともに、電圧加算部44からローパスフィルタ42にたとえば0.5Vを出力するように電圧加算部44を駆動する。
【0034】
ローパスフィルタ42に入力された電圧加算部44の出力電圧は演算増幅器OP2で増幅され、演算増幅器OP2の出力端子に接続されているトランジスタTRをONにする。入力部のスイッチSWがOFFになっているにもかかわらず、トランジスタTRがONになることにより、電圧検出部43は出力端子OUT2の電圧V1が所定の閾値以下の異常電圧になっていることを安定に検出できる。この状態は、負荷31のインピーダンスが正常状態に復旧するまで解除されることなく維持される。すなわち、電圧検出部43の閾値は負荷31の異常時におけるインピーダンスに基づいて任意に設定でき、電圧加算部44の出力電圧は負荷31の正常時におけるインピーダンスに基づいて任意に設定できる。
【0035】
これにより、負荷のインピーダンスが所定値を超えると異常と判断して入力電流を完全に遮断し、負荷のインピーダンスが正常値になると正常動作に復帰する信号伝送装置を提供することができ、制御プラントの正しい制御が行える。
【0036】
なお、上記実施例では、入力部としてパルス幅変調回路41を含む例を示しているが、これに限るものではなく、その他の方式であってもよい。
【0037】
また、上記実施例では、出力部を構成する電圧電流変換部として電流吸込み型を用いる例を示しているが、これに限るものではなく、電流吐き出し型であってもよい。
【0038】
また、上記実施例では、フィールド機器30の負荷31のインピーダンス異常を、入力電流をスイッチSWで遮断することで上位機器10に伝えているが、たとえばリレー接点信号などのその他の信号に変換してもよい。
【0039】
さらに、負荷31のインピーダンスの値をたとえばマイクロコンピュータなどで読み返して負荷31の状態を診断するように構成することもできる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、負荷のインピーダンスが所定値を超えると異常と判断して入力電流を完全に遮断し、負荷のインピーダンスが正常値になると正常動作に復帰することにより、制御プラントの正しい制御が行える信号伝送装置が実現できる。
【符号の説明】
【0041】
10 上位機器
11 電流源
12 電流検出回路
30 フィールド機器
31 負荷
40 信号伝送装置
41 パルス幅変調回路
42 ローパスフィルタ
43 電圧検出部
44 電圧加算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と出力部が絶縁結合され、前記入力部側には前記入力部に電流を出力する電流源およびこの電流源の出力電流を検出する電流検出手段を有する上位機器が2線式伝送路を介して接続され、前記出力部側には所定の負荷を有するフィールド機器が2線式伝送路を介して接続される信号伝送装置において、
前記入力部には前記上位機器から入力される電流を選択的にON/OFFするスイッチと前記上位機器から入力される電流を電圧に変換する電流電圧変換部が設けられ、
前記出力部には前記入力部から入力される電圧を電流に変換する電圧電流変換部と前記フィールド機器の負荷の端子電圧を検出する電圧検出手段と電圧加算手段が設けられ、
前記電圧検出手段は、前記端子電圧の異常を検出することにより前記スイッチをOFFにするとともに、前記電圧加算手段が前記電圧電流変換部の入力電圧に所定の電圧を加算するように制御することを特徴とする信号伝送装置。
【請求項2】
前記入力部の電流電圧変換部は、パルス幅変調回路を含むことを特徴とする請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記フィールド機器の負荷の値を読み返して負荷の診断を行う負荷診断手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−23660(P2012−23660A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161608(P2010−161608)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】