説明

信号入力回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、温度、圧力、流量などの工業プロセス量を測定するのに使用される信号入力回路に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の信号入力回路は、電圧、電流、温度などの多種のアナログ信号をそれぞれ個別に入力に受けて測定し、これをデジタル信号に変換して、マイクロプロセッサ等のデータ処理装置に伝送している。そして、これらのアナログの信号入力回路のゼロオフセット(ゼロ補正)やゲイン(スパン補正)の調整は、可変抵抗器(ボリューム)により行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の信号入力回路では、ゼロオフセットやゲインの調整を可変抵抗器で行っているが、この調整は熟練を要し、調整に手間がかかる。その上、可変抵抗器は、信頼性がそれほど高くないので、しばしば故障の原因となるという問題があった。
【0004】この発明は、上記問題点に着目してなされたものであって、故障が少なく、ゼロ補正やスパン補正の容易な信号入力回路を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】この発明の信号入力回路は、各々がそれぞれ個別に入力信号を測定し、その結果をアナログ/デジタル変換してデジタルデータとしてデータ処理装置に伝送する複数の信号入力回路において、各信号入力回路は、シリアル伝送可能なA/Dコンバータと、シリアル伝送可能な不揮発性記憶手段とを備え、同一シリアル伝送線でデータ処理装置とデータの送受を行い、かつそれぞれのゼロ補正値、スパン補正値を前記不揮発性記憶手段に記憶するようにしている。
【0006】この信号入力回路では、校正時に0〔%〕と100〔%〕レンジの入力を与え、その時の出力信号を、データ処理装置に伝送し、データ処理装置で、0〔%〕と100〔%〕点における誤差を算出し、ゼロ補正値及びスパン補正値を算出し、その入力信号回路に伝送し、不揮発性記憶手段に記憶しておく。測定時に、データ処理装置で、入力信号回路の不揮発性記憶手段から、ゼロ補正値とスパン補正値を読出し、またA/Dコンバータからの測定データを受取り、測定データに対し、ゼロ補正、及びスパン補正の演算を行う。
【0007】
【実施例】以下、実施例により、この発明をさらに詳細に説明する。図1は、この発明の一実施例システムを示すブロック図である。この実施例システムは、複数の信号入力回路1-1、1-2、…とデータ処理部2とから構成されている。データ処理部2には、例えばワンチップマイクロプロセッサが使用される。信号入力回路1-1、1-2、…には、それぞれ個別に、測定対象の温度、圧力、流量、電圧、等に応じた入力信号1、2、…が入力される。
【0008】信号入力回路1-1は、入力信号を受けて増幅する増幅回路11と、この増幅回路11の出力をアナログからデジタルに変換し、そのデータをシリアルに出力するシリアルインタフェース付A/Dコンバータ12と、フォトカプラ13と、シリアルインタフェースEEPROM14とを備えている。フォトカプラ13は、データ処理部2と電気的にアイソレートするために設けられており、両者間はA/D制御信号線15と、シリアル伝送信号線16で接続されている。シリアルインタフェースEEPROM14は、ゼロ補正値、スパン補正値等を記憶するために設けており、データ処理部2とは、シリアル伝送信号線16と、EEPROM制御信号線17に接続されている。
【0009】他の信号入力回路1-2、…も信号入力回路1-1と、同様の回路を備え、データ処理部2と、同様の態様で接続されている。各信号入力回路1-1、1-2、…からシリアル伝送信号線11を経て、データ処理部2に、時分割で、測定信号がシリアルに伝送され、またデータ処理部2からの指令により、シリアル伝送信号線16を介して、データがシリアルインタフェースEEPROM14に書込まれ、また読出されるようになっている。
【0010】次に上記実施例システムの動作について説明する。実施例システムにおいて、信号の測定に先立ち、信号入力回路1(1-1、1-2、…)の校正を行う。まず、入力レンジ0〔%〕に相当する信号を入力信号として印加し、これを増幅回路11、シリアルインタフェース付A/Dコンバータ12、フォトカプラ13、シリアル伝送信号線16を通してデータ処理部2に取込み、データ処理部2で、信号入力回路1の入力0〔%〕における誤差を計測する。
【0011】次に、入力レンジ100〔%〕に相当する信号を入力信号として印加し、同様に信号入力回路1の入力100〔%〕点における誤差をデータ処理部2で計測する。次に、この2つの測定結果を用いて、データ処理部2で演算を行い、入力信号回路1のゼロ補正値とスパン補正値を算出し、シリアル伝送信号線16を通して、シリアルインタフェースEEPROM14に書込み、記憶する。この記憶された校正値は、電源を切断してもEEPROMに保存されているので、一度校正を行えば即座に測定に入ることができる。
【0012】測定時には、データ処理部2より、シリアルインタフェースEEPROM14に、EEPROM制御信号線17により、指令を出し、シリアルインタフェースEEPROM14から、ゼロ補正値とスパン補正値を読み出す。その後、増幅回路11、シリアルインタフェース付A/Dコンバータ12を経て、フォトカプラ13、シリアル伝送信号線16を通して測定データを、データ処理部2に受取る。そしてデータ処理部2で測定データにゼロ補正値とスパン補正値を演算し、ゼロ補正及びスパン補正を行う。これにより、増幅回路及びA/Dコンバータのゼロオフセット及びゲインエラーを補正する。
【0013】
【発明の効果】この発明によれば、信号入力回路に不揮発性記憶手段を備え、この信号入力回路のゼロ補正値、スパン補正値を記憶するので、信号入力回路を、別のものに交換しても再校正なしに同一精度が得られる。またA/Dコンバータと不揮発性記憶手段とをシリアルインタフェースとし、同一シリアル伝送信号線に接続できるので1チャンネルの通信線で多点データ計測が可能となる。またシリアル伝送信号線でデータを伝送するので、アイソレーションが容易である。その上、ゼロ補正、スパン補正がデジタル演算で行えるので、校正が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
-1、1-2、… 信号入力回路
2 データ処理部
12 シリアルインタフェース付A/Dコンバータ
14 シリアルインタフェースEEPROM
16 シリアル伝送信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】各々がそれぞれ個別に入力信号を測定し、その結果をアナログ/デジタル変換してデジタルデータとしてデータ処理装置に伝送する複数の信号入力回路において、各信号入力回路は、シリアル伝送可能なA/Dコンバータと、シリアル伝送可能な不揮発性記憶手段とを備え、同一シリアル伝送線でデータ処理装置とデータの送受を行い、かつそれぞれのゼロ補正値、スパン補正値を前記不揮発性記憶手段に記憶するようにしたことを特徴とする信号入力回路。

【図1】
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【特許番号】第2541438号
【登録日】平成8年(1996)7月25日
【発行日】平成8年(1996)10月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−32363
【出願日】平成5年(1993)2月23日
【公開番号】特開平6−241827
【公開日】平成6年(1994)9月2日
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【参考文献】
【文献】特開平6−502722(JP,A)
【文献】特開平6−12590(JP,A)
【文献】特開平5−215569(JP,A)
【文献】特開平5−215568(JP,A)
【文献】特開平5−209760(JP,A)
【文献】特開平5−209759(JP,A)
【文献】特開平5−203460(JP,A)
【文献】特開平2−183114(JP,A)
【文献】特開昭61−199199(JP,A)
【文献】実開平4−26900(JP,U)
【文献】特公平3−13535(JP,B2)