説明

信号処理装置、及びそれを用いた受信システム、並びに信号処理方法

【課題】選択的に圧縮センシングを適用することのできる信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置は、第1信号が第2信号より低い周波数帯域に配置された第3信号に対して、第1信号の帯域幅の2倍に第2信号の帯域幅を加えた周波数のM倍の周波数をサンプリング周波数とし、サンプリングにより得られるサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごとに所定のパターンでサンプリング値を選択する選択パターンを決定する制御部と、制御部が算出するサンプリング周波数で第3信号をサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値を制御部が決定した選択パターンに基づいて出力するサンプリング部と、サンプリング部が出力するサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを用いて第2信号を復元する復元部と、サンプリング値を用いて第1信号に対する処理を行い、復元された第2信号に対して異なる処理を行う信号処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアナログ信号をサンプリングする信号処理装置、及びそれを用いた受信システム、並びに信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログ信号をアナログ・デジタル変換(サンプリング)する際に、変換対象のアナログ信号に応じたナイキスト周波数に基づいて得られるデータ(標本値)量より少ないデータ量を用いて変換対象のアナログ信号を復元する研究が行われている(非特許文献2〜5)。このような技術は、CS(Compressed sensing;圧縮センシング、Compressive Sampling;圧縮サンプリング)などといわれ、ナイキスト周波数に基づいて得られるデータをランダムに、或いは、予め定めた選択パターンに基づいて、間引くことでデータ量を減らすとともに、間引かれたデータに対して所定のアルゴリズムを適用することでサンプリングしたアナログ信号を復元することができる技術である。
この技術を用いて、広帯域に割り当てられている複数のアナログ信号を、当該複数のアナログ信号が割り当てられている周波数領域全体に対して圧縮センシングを行うことで、サンプリングの際に出力されるデジタル信号のデータ量を削減し、このデジタル信号を用いて元の複数のアナログ信号を復元(デジタル・アナログ変換)する研究も行われている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Moshe Mishali et al., "Blind Multiband Signal Reconstruction: Compressed Sensing for Analog Signals", IEEE Transaction on Signal Processing, pp. 993-1009, March. 2009.
【非特許文献2】David L. Donoho, "Compressed Sensing," IEEE Transaction on Information Theory, pp. 1289-1306, April, 2006.
【非特許文献3】Emmanuel J. Candes et al., "An Introduction to Compressive Sampling," IEEE Signal Processing Magazine, pp. 21-30, March, 2008.
【非特許文献4】Yonina C. Eldar et al., "Beyond Bandlimited Sampling," IEEE Signal Processing Magazine, pp.48-68, May. 2009.
【非特許文献5】Emmanuel J. Candes et al., "Near-Optimal Signal Recovery from Random Projections: Universal Encoding Strategies?" IEEE Transaction on Information Theory, pp. 5406-5425, December, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1は、複数のアナログ信号を含む周波数領域全体に対して圧縮センシングを行うために、複数のアナログ信号を1つの信号として扱うのと同様であり、複数のアナログ信号それぞれの特徴や用途に応じて選択的に圧縮センシングを適用することができなかった。
そのため、複数のアナログ信号のうち幾つかのアナログ信号に対して圧縮センシングを適用したくない場合、圧縮センシングを適用するアナログ信号と、圧縮センシングを適用しないアナログ信号とに分け、それぞれを別のサンプリング回路を用いてサンプリングを行うなど、圧縮センシングの適用に応じて分けて処理しなければならなかった。例えば、分けて処理をするために複数のサンプリング回路を設けると、回路の小型化が困難になるとともに、製造コストの増加を招いてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、複数の信号をまとめてサンプリングする際に、サンプリング回路を増加させることなく選択的に圧縮センシングを適用することのできる信号処理装置、及びそれを用いた受信システム、並びに信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記問題を解決するために、本発明は、第1信号が第2信号より低い周波数帯域に配置された第3信号に対して、前記第1信号の帯域幅の2倍に前記第2信号の帯域幅を加えた周波数のM(Mは、2以上の自然数)倍の周波数をサンプリング周波数とし、サンプリングにより得られるサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごとに1つのサンプリング値を選択する第1の選択と、M個のサンプリング値ごとにランダム又は予め定めたパターンでサンプリング値を選択する第2の選択とを表す選択パターンを決定する制御部と、前記制御部が算出する前記サンプリング周波数で前記第3信号をサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値を前記制御部が決定した選択パターンに基づいて出力するサンプリング部と、前記サンプリング部が出力するサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを用いて前記第2信号を復元する復元部と、前記サンプリング部が出力するサンプリング値のうち前記第1の選択により選択されたサンプリング値に基づいて前記第1信号に対する第1の処理を行うとともに、前記復元部が復元した前記第2信号に対して前記第1の処理と異なる第2の処理を行う信号処理部とを備えることを特徴とする信号処理装置である。
【0007】
(2)また、本発明は、上記記載の発明において、前記選択パターンで選択されるサンプリング値のうち、ランダム又は予め定められたパターンで選択されるサンプリング値の個数は、前記第2の信号に対して要求される復元の精度により定められることを特徴とする。
【0008】
(3)また、本発明は、上記記載の発明の信号処理装置と、受信した無線信号に含まれる前記第1信号及び前記第2信号に対して周波数変換を行い、前記第1信号を前記第2信号より低い周波数帯域に配置した前記第3の信号を出力する無線受信部と、前記信号処理装置により復元された前記第1信号及び前記第2信号に基づいて前記第1信号及び前記第2信号の重要度の変更を行う信号処理部とを備えることを特徴とする受信システムである。
【0009】
(4)また、本発明は、リモート局装置と中央局装置とが伝送線で接続された受信システムであって、前記リモート局装置が、受信した無線信号に含まれる第1信号及び第2信号に対して周波数変換を行い、前記第1信号を前記第2信号より低い周波数帯域に配置した第3信号を出力する無線受信部と、前記第3信号をサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値のいずれのサンプリング値を出力するかを示す選択パターンに基づいて送信するサンプリング部とを備え、前記中央局装置が、前記サンプリング部から受信したサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを用いて前記第1信号及び前記第2信号を復元する復元部と、前記復元部が復元した前記第1信号及び前記第2信号に対して所定の信号処理を行う信号処理部と、前記第1信号の帯域幅の2倍に前記第2信号の帯域幅を加えた周波数のM(Mは、2以上の自然数)倍の周波数を前記サンプリング部におけるサンプリング周波数にする制御を行うとともに、サンプリングして得られるサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごとに1個のサンプリング値を選択する第1の選択と、M個のサンプリング値ごとにランダム又は予め定めたパターンでサンプリング値を選択する第2の選択とを表す前記選択パターンを決定して前記サンプリング部に送信する制御部とを備えることを特徴とする受信システムである。
【0010】
(5)また、本発明は、第1信号が第2信号より低い周波数帯域に配置された第3信号に対して、前記第1信号の帯域幅の2倍に前記第2信号の帯域幅を加えた周波数のM(Mは、2以上の自然数)倍の周波数をサンプリング周波数とし、サンプリングにより得られるサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごとに1つのサンプリング値を選択する第1の選択と、M個のサンプリング値ごとにランダム又は予め定めたパターンでサンプリング値を選択する第2の選択とを表す選択パターンを決定する制御過程と、前記制御過程において算出する前記サンプリング周波数で前記第3信号をサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値を前記制御部が決定した選択パターンに基づいて出力するサンプリング過程と、前記サンプリング過程において出力されるサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを用いて前記第2信号を復元する復元過程と、前記サンプリング過程において出力されるサンプリング値のうち前記第1の選択により選択されたサンプリング値に基づいて前記第1信号に対する第1の処理を行うとともに、前記復元過程において復元された前記第2信号に対して前記第1の処理と異なる第2の処理を行う信号処理過程とを備えることを特徴とする信号処理方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数の信号をまとめてサンプリングする際に、重要度の高い信号の周波数帯域幅と、重要度の低い信号の周波数帯域幅とに応じて、サンプリン周波数及びサンプリング値の選択パターンを決定することにより、サンプリング回路を増加させずにサンプリング対象となる信号に対して選択的に圧縮センシングを適用することができる。また、本発明を複数の信号を伝送に用いた場合、圧縮センシングにより伝送するサンプリング値の数を削減することができるので、伝送路の使用帯域を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の受信システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態のサンプリング部220が出力するパケットの一構成例を示す図である。
【図3】同実施形態の無線受信部100の構成例を示す概略ブロック図である。
【図4】同実施形態における無線受信部100の動作例を示す模式図である。
【図5】同実施形態の制御部210の算出するサンプリング周波数を説明する模式図である。
【図6】同実施形態の受信システム1が受信する無線信号の一例を示す図である。
【図7】図6に示した無線信号に対する無線受信部100の周波数変換の結果を示す図である。
【図8】図7に示したようにベースバンド帯域に信号が配置されている場合のサンプリング周波数Bgridとサンプリング周波数BNyqとの関係を示す図である。
【図9】図8に示したようにサンプリング周波数Bgridが設定された場合の時間領域の例を示す図である。
【図10】第2実施形態の受信システム1aの構成を示す概略ブロック図である。
【図11】第3実施形態の受信システム5の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の信号処理装置、及びそれを用いた受信システム、並びに信号処理方法を図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の受信システム1の構成を示す概略ブロック図である。
図示するように、受信システム1は、無線受信部100と、信号処理装置200と、ベースバンド信号処理部300とを具備している。信号処理装置200は、制御部210と、サンプリング部220と、分配部230と、復元部240とを備えている。
【0015】
無線受信部100は、無線信号を受信し、受信した無線信号に含まれる複数の信号に対して周波数変換及びゲイン調整を行い、各信号のベースバンド信号を生成する。また、無線受信部100は、制御部210から入力される各信号の重要度を示す情報を含む受信制御信号に基づいて、生成したベースバンド信号を直流付近に重要度の高い信号を配置し、重要度の低い信号を重要度の高い信号より高い周波数帯域に配置する。
この重要度は、信号に対する処理の内容で設定される。例えば、受信して処理すべきデータが含まれている信号に対しては、当該データを得るための復調及び復号を行うために高いノイズ等が少ないことが要求されるので重要度を高くし、受信して処理すべきデータが含まれているか否かを判定することが要求される信号に対しては、受信して処理すべきデータが含まれている信号より低い重要度が設定される。或いは、信号に対する通信品質、具体的には、BER(Bit Error Rate;ビット誤り率)などが予め定めた基準値より高い場合には重要度を低くし、基準値より低い場合には重要度を高くする設定がされる。
【0016】
制御部210は、予め設定された情報又は入力された情報に基づいて、無線信号に含まれるいずれの周波数帯域の信号を選択するか、及び、選択した信号に対して重要度を定め、選択した周波数帯域と、定めた重要度とを示す情報を含む受信制御信号を無線受信部100に出力する。また、制御部210は、重要度の高いベースバンド信号の周波数帯域と、重要度の低いベースバンド信号の周波数帯域とから、サンプリング部220におけるサンプリング周波数を算出するとともに、サンプリング部220においてサンプリングにより得られたサンプリング値のいずれを出力するかを選択する選択パターンを決定し、算出したサンプリング周波数を示す情報と、決定した選択パターンを示す情報とを含むサンプリング制御信号をサンプリング部220、分配部230、復元部240、及びベースバンド信号処理部300に出力する。
また、制御部210は、ベースバンド信号処理部300から重要度を変更する要求を示す情報を含む重要度変更信号が入力され、当該要求に基づいて無線信号に含まれる信号の重要度を変更して、変更を反映した受信制御信号及びサンプリング制御信号を出力する。
【0017】
サンプリング部220は、制御部210から入力されるサンプリング制御信号に含まれるサンプリング周波数及び選択パターンを設定する。また、サンプリング部220は、無線受信部100が周波数変換した各ベースバンド信号を設定されたサンプリング周期でサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値からなる時系列データを生成する。また、サンプリング部220は、時系列データ中のサンプリング値を設定された選択パターンに応じて選択し、選択したサンプリング値を出力する。
【0018】
図2は、同実施形態のサンプリング部220が出力するパケットの一構成例を示す図である。図示するように、サンプリング部220が出力するパケットは、ヘッダ情報(Header)と、サンプリング値(Sampled Data)とを含んでいる。ヘッダ情報は、有効なサンプリング値の開始位置を示す情報であり、例えば、連続する8個の「1」により構成される。サンプリング部220におけるサンプリング周期と、選択パターンは、制御部210から入力されるサンプリング制御信号により設定される。
【0019】
分配部230は、制御部210から入力されるサンプリング制御信号に含まれる選択パターンを設定する。また、サンプリング部220から入力されるパケットからヘッダ情報に基づいて有効なサンプリング値を抽出するとともに、抽出したサンプリング値を復元部240に出力する。また、分配部230は、設定された選択パターンに基づいて、抽出したサンプリング値のうちいずれをベースバンド信号処理部300に出力するかを選択し、選択したサンプリング値をベースバンド信号処理部300に出力する。
【0020】
復元部240は、分配部230から入力されるサンプリング値と、制御部210から入力されるサンプリング制御信号とに基づいて、サンプリング部220がサンプリング対象とした各ベースバンド信号を所定のアルゴリズムを用いて復元し、復元した各ベースバンド信号をベースバンド信号処理部300に出力する。ここで、所定のアルゴリズムとは、例えば、l1ノルム最小化法(l1-minimization 復元アルゴリズム、参考文献1:E. Candes et al., "l1-Magic:Recovery of Sparse Signals via Convex Programming," Octorber, 2005.)や、マッチング追跡法(mathcing pursuit 復元アルゴリズム、参考文献2:J. Tropp et al., "Signal Recovery from Random Measurement via Orthogonal Matching Pursuit," IEEE Transaction on Information Theory, pp.4655-4666, December, 2007.)である。
【0021】
ベースバンド信号処理部300は、分配部230から入力されたサンプリング値と、サンプリング制御信号に含まれるサンプリング周波数を示す情報とを用いて、サンプリング対象となった重要度の高いベースバンド信号に対する所望の処理を行う。また、ベースバンド信号処理部300は、復元部240から入力される復元された各ベースバンド信号のうち重要度の低いベースバンド信号に対して所望の処理を行う。また、ベースバンド信号処理部300は、ベースバンド信号に対する処理の結果に応じて、重要度の変更を要求する情報を制御部210に出力する。
ベースバンド信号に対して行う処理としては、例えば、重要度の高いベースバンド信号に対しては、復調及び復号を行うことでベースバンド信号に含まれるデータを取得し、重要度の低いベースバンド信号に対しては、復調を行い当該ベースバンド信号に受信すべきデータが含まれるか否かを判定する。そして、ベースバンド信号処理部300は、当該ベースバンド信号に受信すべきデータが含まれていると判定した場合、当該ベースバンド信号の重要度を高くする要求を示す情報を制御部210に出力する。
【0022】
次に、無線受信部100の具体的な構成について説明する。
図3は、同実施形態の無線受信部100の構成例を示す概略ブロック図である。
無線受信部100は、局部信号生成部10、電力位相調整部20、周波数変換部30、帯域制限部40、可変利得増幅部50を備える。
【0023】
局部信号生成部10は、選択された周波数帯域に応じた局部発振信号(局発信号)を生成して出力する。局部信号生成部10は、周波数LO−1、LO−2、…、LO−Nとして示される異なる複数の周波数の局発信号部11−1、11−2、…、11−Nを備える。
電力位相調整部20は、局部信号生成部10から供給される各局発信号の電力を設定に応じて減衰させる可変減衰部(ATT)21−1、21−2、…、21−Nを有している。可変減衰部21−1は、局発信号部11−1が出力する局発信号の電力を設定された減衰率に応じて減衰させて出力することにより、局発信号に対して要求される電力設定を行うことができる。可変減衰部21−2、…、21−Nは、可変減衰部21−1と同様に、局発信号部11−2、…、11−Nが出力する局発信号の電力を設定された減衰率に応じて減衰させて出力する。
【0024】
周波数変換部30は、受信した無線信号に含まれ選択された周波数帯域の信号に対して周波数変換を行う。周波数変換部30は、電力位相調整部20が変更した局発信号を用いて、選択された周波数帯域の信号を周波数変換後のベースバンド帯域における所望の周波数に変換する。この周波数変換により、選択された周波数帯域の信号のベースバンド帯域における周波数配置を制御するとともに、入力される局発信号の振幅に応じてゲイン調整を行う。
具体的には、周波数変換部30は、バンドパスフィルタ(BPF)31、ローノイズアンプ(LNA)32、合成部33、ミキサ34を有して構成される。バンドパスフィルタ31は、アンテナに接続され、アンテナを介して受信された無線信号のうち処理対象の範囲の周波数帯域の無線信号を抽出する。ローノイズアンプ32は、バンドパスフィルタ31によって選択された無線信号を増幅する。合成部33は、局部信号生成部10から供給される各局発信号を合成して1つの信号にする。ミキサ34は、ローノイズアンプ32が増幅した無線信号を合成部33が合成した信号と混合することでベースバンド帯域のベースバンド信号に周波数変換を行う。
【0025】
帯域制限部40は、ローパス特性又はバンドパス特性の伝達関数を有するフィルタである。ローパス特性の伝達関数を有するフィルタであっても、図示されない直流を遮断する直流成分除去コンデンサなどによってバンドパス特性を形成するため、この図ではバンドパス特性の伝達関数を有するフィルタとして示す。帯域制限部40の伝達特性における低域側のカットオフ周波数は、帯域制限部40を構成するバンドパスフィルタの帯域で定められるか、回路の特性インピーダンスとDCカットキャパシタなどによって定められるカットオフ周波数によって定められる。また、帯域制限部40の伝達特性における高域側のカットオフ周波数は、周波数変換部30において最も高い周波数帯域に配置されたベースバンド信号の中心周波数及び周波数帯域幅に応じて定められる。
可変利得増幅部50は、帯域制限部40が選択した周波数帯域の信号を増幅する。
【0026】
続いて、図4を参照して、無線受信部100の行う周波数変換について説明する。
図4は、同実施形態における無線受信部100の動作例を示す模式図である。
図4(a)は、バンドパスフィルタ31で選択された無線信号がローノイズアンプ32で増幅された信号の配置を示す図である。横軸は、無線信号帯域の周波数範囲を示し、縦軸は各周波数帯域(バンド)の信号電力を示す。
図示するように、無線信号は、周波数の低い方から順に配置されるバンドS11からS13の信号を含む。また、バンドS13の信号は、他のバンドの信号より信号電力が大きい。ここでは、局部信号生成部10から供給される局発信号の周波数LO−1、LO−2、及びLO−3を併せて示している。
【0027】
周波数LO−1は、バンドS11が当該周波数の局発信号の上側波帯(USB)に配置されるように選択される。周波数LO−2は、バンドS12が当該周波数の局発信号の下側波帯(LSB)に配置されるように選択される。周波数LO−3は、バンドS13の周波数帯域の上限付近となるように選択される。
周波数変換部30は、バンドS11〜S13の信号それぞれの周波数と、局発信号の周波数との差によって示される周波数にバンドS11〜S13の信号の周波数を変換してベースバンド帯域に配置する。バンドS11〜S13の周波数に対して局発信号の周波数LO−1〜LO−3をバンドS11〜S13の周波数帯域幅に応じて選択することにより、バンドS11〜S13それぞれの信号をベースバンド帯域の所望の周波数に変換するとともに、周波数の低い領域にそれぞれ信号の帯域を隣接させ並べて配置する。
【0028】
図4(b)は、図4(a)に配置された各帯域の信号の周波数変換結果を示す模式図である。横軸は、ベースバンド信号帯域の周波数範囲を示し、縦軸は、各周波数(チャネル)における信号電力を示す。この図に示された信号は、周波数変換部30によって周波数変換され、帯域制限部40及び可変利得増幅部50を介して出力される信号である。
周波数変換の結果により直流付近から、バンドS13、バンドS11、バンドS12の順にそれぞれの帯域が配置される。ここで、バンドS13の帯域については、他のバンドS11、S12の信号に比べて電力が減衰した状態を示している。また、周波数の高い領域に局発信号のリークが生じる。
【0029】
さらに、帯域制限部40及び直流成分除去コンデンサによって定められる低域側のカットオフ周波数より、最も低周波数側に配置されたバンドS13の帯域の少なくとも一部を低周波数側に配置することにより、バンドS13の信号の電力を減衰させることができ、他のバンドの電力と整合させることが可能となる。
以上に示したように、無線受信部100は、局部信号生成部10の局発信号の周波数を、適宜設定することにより、信号電力が大きいチャネルの信号を抑圧してゲインを調整するとともに、限られた周波数範囲にそれぞれの帯域の信号を配置することができる。
【0030】
次に、制御部210のサンプリング周波数を算出方法と、選択パターンの決定方法とを説明する。図5は、同実施形態の制御部210の算出するサンプリング周波数を説明する模式図である。図5(a)は、サンプリング部220に入力される信号の例を示す図である。図5(a)に示すように、サンプリング部220に入力されるベースバンド帯域には、N(Nは、2以上の自然数)個の信号S(1≦i≦N)が含まれ、N個の信号のうちI(Iは、1≦I≦Nを満たす自然数)個の重要度の高い信号と、(N−I)個の重要度の低い信号とが含まれている場合について説明する。また、無線信号に含まれるN個の信号それぞれの周波数帯域幅をB(1≦i≦N)とする。また、重要度の高い信号は、直流付近、例えば、0Hzから周波数の高い方に順に配置され、重要度の低い信号は、重要度の高い信号より高い周波数帯域に配置されている。
【0031】
このとき、I個の重要度の高い信号の総周波数帯域幅B、及び(N−I)この重要度の低い信号の総周波数帯域幅Bは、それぞれ次式(1)及び(2)で表される。*
【0032】
=B+B+…+B …(1)
=Bi+1+Bi+2+…+B …(2)
【0033】
また、ベースバンド帯域のN個の信号の総周波数帯域幅Btotalは、次式(3)で表され、Btotal、B、及びBの関係は、次式(4)で表される。
【0034】
total=B+B+…+B …(3)
total=B+B …(4)
【0035】
制御部210は、重要度の高い信号S1〜Sに対して重要度の低い信号Si+1〜SNが折り返されたスペクトルが重なるエリアシングが発生しないようにサンプリングを行えるサンプリング周波数BNyqを算出する。このサンプリング周波数BNyqは、次式(5)及び図5(b)で表される周波数である。図5(b)は、サンプリング周波数BNyqを示す図である。
【0036】
Nyq=2B+B …(5)
【0037】
重要度の低い信号Si+1〜Sに対する圧縮センシングのため、サンプリング周波数を重要度の高い信号S〜Sのサンプリング周波数BNyqの定数倍(M倍)とすると、圧縮センシングのためのサンプリング周波数Bgridは、次式(6)で表される。なお、この定数Mは、重要度の低い信号Si+1〜Sに対して許容できるノイズ及び要求される復元の精度により定められる値であり、2以上の自然数である。
【0038】
grid=M・BNyq=2M・B+M・B …(6)
【0039】
制御部210は、上述のように算出されたサンプリング周波数Bgridを示す情報を含むサンプリング制御信号をサンプリング部220に出力し、サンプリング部220が行うサンプリングのサンプリング周波数を設定する。すなわち、重要度の高い信号の帯域幅の周波数の2倍に、重要度の低い信号の帯域幅の周波数を加えた周波数の定数倍をサンプリング周波数とする。
【0040】
制御部210は、サンプリング部220が出力するサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごと1個のサンプリング値を選択するとともに、選択されない(M−1)個のサンプリング値のうちランダム又は予め定められたパターンでサンプリング値を選択する、前述の2通りの選択を含む選択パターンを決定する。予め定められたパターンは、復元部240において復元される重要度の低い信号に許容されるノイズ及び復元の精度によりシミュレーションや実測により定められるサンプリング値を選択するパターンである。また、ランダムに選択する場合は、サンプリング値を選択する程度は、復元部240において復元される重要度の低い信号に許容されるノイズ及び復元の精度により予め定められる。
【0041】
サンプリング部220出力するサンプリング値をM個ごとに1個のサンプリング値を選択することで、サンプリング周波数BNyqによるサンプリングを行うことと同じになり、重要度の高い信号に含まれる情報を損なうことなくサンプリングできる。また、M個ごとに1個のサンプリング値を選択して、さらに、M個のサンプリング値ごとにランダム又は予め定められたパターンでサンプリング値を選択することで、サンプリング周波数Bgridに対する圧縮センシングを実現することができる。
【0042】
続いて、図6から図8を用いて、本実施形態の受信システム1における受信した無線信号に対する処理の概要を説明する。ここでは、無線信号に含まれる信号の数が5(N=5)であり、重要度の高い信号の数が2(I=2)であり、Bgridを定める定数Mが2(M=2)の場足について説明する。すなわち、無線信号が、5つのバンドS1〜S5の信号を含み、バンドS1及びS2が、バンドS3〜S5より高い重要度が設定されている場合である。
【0043】
図6は、同実施形態の受信システム1が受信する無線信号の一例を示す図である。この図において、横軸は、無線信号帯域の周波数範囲を示し、縦軸は、各周波数帯域(バンド)における信号電力を示す。受信システム1が受信する無線信号は、図示するように、周波数の低い方から順にバンドS3、バンドS4、バンドS2、バンドS5、バンドS1それぞれの信号が配置されている。
【0044】
図7は、図6に示した無線信号に対する無線受信部100の周波数変換の結果を示す図である。図示するように、無線受信部100は、受信した無線信号に含まれるバンドS1〜S5の信号に対して上述した周波数変換を行い、直流付近からバンドS1、バンドS2、バンドS3、バンドS4、バンド5の順にそれぞれの帯域を配置されたベースバンド信号をサンプリング部220に出力する。このとき、重要度の高いバンドS1及びS2のベースバンド信号を、重要度の低いバンドS3〜S5のベースバンド信号より低い周波数帯域に配置する。ここでは、バンドS1及びS2のベースバンド信号をデコーディング信号といい、バンドS3〜S4のベースバンド信号をセンシング信号といい、それぞれの帯域幅をBdec(=B=B1+B2)及びBsens(=B=B3+B4+B5)とする。また、バンドS1〜S5のベースバンド信号全体の帯域幅をBtotal(=Bdec+Bsens=B1+B2+B3+B4+B5)である。
【0045】
図8は、図7に示したようにベースバンド帯域に信号が配置されている場合のサンプリング周波数Bgridとサンプリング周波数BNyqとの関係を示す図である。制御部210は、上述したように、サンプリング周波数BNyq(=2Bdec+Bsens)を算出し、サンプリング周波数Bgrid(=2BNyq=4Bdec+2Bsens)を算出する。これにより、ベースバンド帯域の信号は、エリアシングが生じないナイキスト周波数サンプリング領域である周波数帯域Bdecと、エリアシングが生じるナイキスト周波数サンプリング領域である周波数帯域Bsensとに分けられる。すなわち、重要度の高い信号を含むバンドS1及びS2が周波数帯域Bdecであり、重要度の低い信号を含むバンドS3〜S5が周波数帯域Bsensとなる。
【0046】
図9は、図8に示したようにサンプリング周波数Bgridが設定された場合の時間領域の例を示す図である。サンプリング部220は、サンプリング周波数Bgridで無線受信部100から入力される信号を時刻t1、t2、…、t30、…においてサンプリングする。このとき、サンプリング部220は、サンプリングにより得られたサンプリング値を制御部210から入力される選択パターンで選択して出力する。
サンプリング部220は、2(M=2)個のサンプリング値ごとに1個のサンプリング値、具体的には、時刻t1、t3、t5、…、t29、…において得られたサンプリング値を選択するとともに、ランダム又は予め定められたパターンで示されたサンプリング値、具体的には、時刻t2、t10、t20、t26、t30、…において得られたサンプリング値を選択し、選択したサンプリング値を時刻順に出力する。
換言すると、サンプリング部220は、制御部210が決定したサンプリング周波数Bgridと、選択パターンとに基づいて、周波数帯域Bdecに対する通常のサンプリングと、周波数帯域Bdec及び周波数帯域Bsensに対してサンプリング周波数Bgridによる圧縮センシング(圧縮サンプリング)とを同時に行っていることになる。
【0047】
そして、分配部230は、制御部210から入力されたサンプリング制御信号に基づいて、サンプリング部220から入力されたサンプリング値のうち、サンプリング部220において2個ごとに1個選択されたサンプリング値をベースバンド信号処理部300に出力する。また、分配部230は、サンプリング部220から入力されたサンプリング値の全て又は一部を復元部240に出力する。なお、サンプリング部220から入力されたサンプリング値のうち一部のサンプリング値を出力する場合、予め定められた選択のパターン或いはランダムなパターンにより、サンプリング値を選択して出力する。このとき、用いられる選択のパターン又はランダムなパターンは、制御部210により周波数帯域Bsensの信号S3〜S5に対する信号処理において要求される信号の品質に応じて決定される。
復元部240は、所定のアルゴリズムを適用して、分配部230から入力されたサンプリング値と、制御部210から入力されたサンプリング制御情報とから周波数帯域Bdecの信号S1及びS2と、周波数帯域Bsensの信号S3〜S5を復元してベースバンド信号処理部300に出力する。すなわち、復元部240は、分配部230から入力された信号に基づいて圧縮センシングされた周波数帯域Bsensの信号S3〜S5を復元することになる。
【0048】
ベースバンド信号処理部300は、分配部230から入力されたサンプリング値に基づいて周波数帯域Bdecの信号S1及びS2に対する所望の処理を行うとともに、復元部240から入力された信号S1〜S5のうち信号S3〜S5に対して所望の処理を行う。
なお、時刻t1、t3、t5、…、t29、…において得られたサンプリング値は、サンプリング周波数BNyqでサンプリングしたものであり、これらのサンプリング値からエリアシングの生じていない周波数帯域Bdecの信号と、エリアシングの生じている周波数帯域Bsensの一部の信号とを得ることができる。
【0049】
上述のように、本実施形態の受信システム1は、制御部210が、サンプリング対象の複数の信号それぞれの重要度に応じてサンプリング部220におけるサンプリング周波数を算出し、サンプリングにより得られたサンプリング値のうちいずれを出力するかを示す選択パターンを決定するようにしたので、1つのサンプリング部220で複数の信号に対して選択的に圧縮センシングを適用することができる。すなわち、受信システム1の信号処理装置200は、複数の信号をサンプリングする際にサンプリング部を増加させることなく、重要度を高く設定した信号に対してエリアシングの生じないサンプリングと、重要度を低く設定した信号に対して圧縮センシングとをまとめて行うことができる。
【0050】
また、制御部210が算出するサンプリング周波数は、重要度の高い信号の周波数帯域幅の2倍に、重要度の低い周波数帯域の帯域幅を加えた周波数のM倍(Mは、2以上の自然数)の周波数である。そして、サンプリング部220は、サンプリングにより得られるサンプリング値のうちM個ごとに1個のサンプリング値を選択して出力するようにした。これにより、サンプリング部220の出力するサンプリング値を用いた信号処理では、重要度の高い信号に対してエリアシングが生じていないので誤差やノイズの少ない処理を行うことができる。サンプリング部220は、さらに、サンプリングにより得られるサンプリング値のうちM個ごとにランダム又は予め定めたパターンで選択したサンプリング値も出力する圧縮センシングを行うようにした。当該サンプリング値の選択と、前述のM個ごとに1個のサンプリング値の選択との両方により選択されたサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを適用することにより、重要度の低い信号に生じているエリアシングの影響を低減した復元を行うことができ、復元された重要度の低い信号に対しても処理を行うことができる。
【0051】
また、分配部230は、重要度の高い信号を表すサンプリング値を復元部240を介さずにベースバンド信号処理部300に直接出力するようにしたので、復元部240において重要度の低い信号の復元を待たずとも重要度の高い信号に対する処理を行うことができ、重要度の高い信号に対する処理遅延を短くすることができる。
【0052】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態の受信システム1aの構成を示す概略ブロック図である。
図示するように、受信システム1aは、無線受信部100と、信号処理装置200aと、ベースバンド信号処理部300とを具備している。信号処理装置200aは、制御部210と、サンプリング部220と、分配部230と、復元部240と、検波部250とを備えている。同図において、第1実施形態の受信システム1と同一の構成には同一の符号(100、220、230、240、300)を付し、その説明を省略する。
【0053】
制御部210aは、第1実施形態の制御部210の構成に加え、検波部250から入力される受信電力値を示す情報に基づいて、無線受信部100から出力される複数のベースバンド信号に対する重要度を決定する。例えば、受信電力が予め定めた基準値より低いベースバンド信号に対して重要度を高くし、受信電力が基準値より高いベースバンド信号に対して重要度を低くする。
検波部250は、無線受信部100から出力される複数のベースバンド信号それぞれの受信電力値を測定し、測定した受信電力値を示す情報を制御部210aに出力する。
【0054】
上述の構成により、本実施形態の受信システム1aは、無線受信部100が出力するベースバンド信号の受信電力値に応じて、エリアシングの生じないサンプリングと、圧縮センシングとのいずれを適用するかを選択することができる。これにより、受信電力値が低く、ノイズ等の影響を受けやすいベースバンド信号には、エリアシングの生じないサンプリングを行い、受信電力値が高くノイズ等に対する耐性が高いベースバンド信号に対して圧縮センシングを適用して、選択的に圧縮センシング適用することができる。
【0055】
なお、本実施形態において、無線受信部100が出力する複数のベースバンド信号それぞれの受信電力値が変動する場合、制御部210aは、検波部250から出力される受信電力値に応じて動的に重要度を変更するようにしてもよい。
【0056】
[第3実施形態]
図11は、第3実施形態の受信システム5の構成を示す概略ブロック図である。
図示するように、受信システム5は、中央局装置6と、リモート局装置7とを具備し、中央局装置6及びリモート局装置7が伝送路8を介して接続されている。中央局装置6は、分配部230と、復元部240と、中央局制御部260と、ベースバンド信号処理部300とを備えている。リモート局装置7は、無線受信部100と、サンプリング部220と、リモート局制御部270とを備えている。同図において、第1実施形態の受信システム1と同一の構成には同一の符号(100、220、230、240、300)を付し、その説明を省略する。
【0057】
中央局制御部260は、第1実施形態の制御部210と同様に、予め設定された情報又は入力された情報に基づいて、無線信号に含まれるいずれの周波数帯域の信号を選択するか、及び、選択した信号に対して重要度を定める。また、中央局制御部260は、重要度の高いベースバンド信号の周波数帯域と、重要度の低いベースバンド信号の周波数帯域とから、サンプリング部220におけるサンプリング周波数を算出するとともに、サンプリング部220においてサンプリングにより得られたサンプリング値のいずれを出力するかを選択する選択パターンを決定する。
【0058】
また、中央局制御部260は、選択した周波数帯域、及び定めた重要度を示す情報を含む受信制御信号と、算出したサンプリング周波数を示す情報、及び決定した選択パターンを示す情報を含むサンプリング制御信号とを伝送路8を介してリモート局装置7のリモート局制御部270に送信する。また、中央局制御部260は、サンプリング制御信号を分配部230、復元部240、及びベースバンド信号処理部300に出力する。
リモート局制御部270は、中央局制御部260から受信した受信制御信号を無線受信部100に出力し、中央局制御部260から受信したサンプリング制御信号をサンプリング部220に出力する。
【0059】
上述のように構成された、受信システム5において、リモート局装置7は、受信する無線信号に含まれる複数の信号をベースバンド信号に周波数変換し、重要度の高いベースバンド信号に対してエリアシングの生じないサンプリングを行い、重要度の低いベースバンド信号に対して圧縮センシングを行い、得られたサンプリング値を中央局装置6に送信する。また、中央局装置6において、圧縮センシングされた重要度の低い信号を所定のアルゴリズムを用いて復元する。その結果、重要度の低いベースバンド信号を復元するためのサンプリング値を削減することができるので、無線信号に含まれる複数の信号それぞれに対して設定された重要度に応じて、中央局装置6に伝送するサンプリング値のデータ量を削減することができる。
【0060】
なお、本実施形態において、リモート局装置7が1つの場合を示して説明したが、これに限らず、中央局装置6に対して複数のリモート局装置7を接続してもよい。この場合、中央局装置6には、接続するリモート局装置7ごとに対応する分配部230、復元部240、及びベースバンド信号処理部300が設けられ、各リモート局装置7から送信されるサンプリング値を含むパケットを処理する。
また、本実施形態において、第2実施形態と同様に、検波部250をリモート局装置7に設けて、無線受信部100が出力する各ベースバンド信号の受信電力値を検出して伝送路8を介して中央局制御部260に送信し、中央局制御部260が受信した受信電力値に応じて重要度を変更するようにしてもよい。これにより、受信システム5においても受信電力値に応じて重要度を変更することができ、受信する無線信号の変動に適応したサンプリング値の伝送を行うことができる。
また、本実施形態の構成を示す図11には、サンプリング値を含むパケットを送る伝送路8と、受信制御信号及びサンプリング制御信号を送る伝送路8とを異なる線を用いて表しているが、物理的に1つの伝送線路に重畳して伝送してもよい。
【0061】
また、上述の各実施形態において、重要度を決定する指標としてベースバンド信号に対する処理の許容遅延を用いてもよい。この場合、許容遅延の小さい信号処理、例えば、VoIPなどの処理に対して重要度を高くし、許容遅延の大きい信号処理、例えば、ファイル転送などの処理に対して重要度を低くする。これにより、許容遅延に応じてベースバンド信号に対する信号処理を行うことができる。
また、上述の各実施形態において、無線受信部100が受信する無線信号の周波数帯域ごとに予め定められた重要度に応じて、サンプリングを行うようにしてもよい。
【0062】
また、上述の各実施形態において、ベースバンド信号処理部300が、分配部230から入力された重要度の高いベースバンド信号のサンプリング値(信号の成分)を分配部230に出力する。そして、分配部230が、サンプリング部220より入力されるサンプリング値から、ベースバンド信号処理部300より入力されるサンプリング値を除いたサンプリング値を復元部240に出力するようにしてもよい。すなわち、重要度の低いベースバンド信号に対応するサンプリング値のみを復元部240に出力するようにしてもよい。これにより、復元部240は、重要度の低いベースバンド信号のみを復元することができ、復元の処理における計算量を削減することができる。
【0063】
上述の受信システム1、中央局装置6は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、上述した分配部230、復元部240、ベースバンド信号処理部300が行う処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本願発明は、複数のアナログ信号をデジタル化し、デジタル化した信号を伝送路を介して伝送する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1a、5…受信システム
6…中央局装置
7…リモート局装置
8…伝送路
10…局部信号生成部
11−1、11−2、11−N…局発信号部
20…電力位相調整部
21−1、21−2、21−N…可変減衰部
30…周波数変換部
31…バンドパスフィルタ
32…ローノイズアンプ
33…合成部
34…ミキサ
40…帯域制限部
50…可変利得増幅部
100…無線受信部
200、200a…信号処理装置
210、210a…制御部
220…サンプリング部
230…分配部
240…復元部
250…検波部
260…中央局制御部
270…リモート局制御部
300…ベースバンド信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号が第2信号より低い周波数帯域に配置された第3信号に対して、前記第1信号の帯域幅の2倍に前記第2信号の帯域幅を加えた周波数のM(Mは、2以上の自然数)倍の周波数をサンプリング周波数とし、サンプリングにより得られるサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごとに1つのサンプリング値を選択する第1の選択と、M個のサンプリング値ごとにランダム又は予め定めたパターンでサンプリング値を選択する第2の選択とを表す選択パターンを決定する制御部と、
前記制御部が算出する前記サンプリング周波数で前記第3信号をサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値を前記制御部が決定した選択パターンに基づいて出力するサンプリング部と、
前記サンプリング部が出力するサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを用いて前記第2信号を復元する復元部と、
前記サンプリング部が出力するサンプリング値のうち前記第1の選択により選択されたサンプリング値に基づいて前記第1信号に対する第1の処理を行うとともに、前記復元部が復元した前記第2信号に対して前記第1の処理と異なる第2の処理を行う信号処理部と
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記選択パターンで選択されるサンプリング値のうち、ランダム又は予め定められたパターンで選択されるサンプリング値の個数は、前記第2の信号に対して要求される復元の精度により定められる
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の信号処理装置と、
受信した無線信号に含まれる前記第1信号及び前記第2信号に対して周波数変換を行い、前記第1信号を前記第2信号より低い周波数帯域に配置した前記第3の信号を出力する無線受信部と、
前記信号処理装置により復元された前記第1信号及び前記第2信号に基づいて前記第1信号及び前記第2信号の重要度の変更を行う信号処理部と
を備えることを特徴とする受信システム。
【請求項4】
リモート局装置と中央局装置とが伝送線で接続された受信システムであって、
前記リモート局装置が、
受信した無線信号に含まれる第1信号及び第2信号に対して周波数変換を行い、前記第1信号を前記第2信号より低い周波数帯域に配置した第3信号を出力する無線受信部と、
前記第3信号をサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値のいずれのサンプリング値を出力するかを示す選択パターンに基づいて送信するサンプリング部と
を備え、
前記中央局装置が、
前記サンプリング部から受信したサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを用いて前記第1信号及び前記第2信号を復元する復元部と、
前記復元部が復元した前記第1信号及び前記第2信号に対して所定の信号処理を行う信号処理部と、
前記第1信号の帯域幅の2倍に前記第2信号の帯域幅を加えた周波数のM(Mは、2以上の自然数)倍の周波数を前記サンプリング部におけるサンプリング周波数にする制御を行うとともに、サンプリングして得られるサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごとに1個のサンプリング値を選択する第1の選択と、M個のサンプリング値ごとにランダム又は予め定めたパターンでサンプリング値を選択する第2の選択とを表す前記選択パターンを決定して前記サンプリング部に送信する制御部と
を備える
ことを特徴とする受信システム。
【請求項5】
第1信号が第2信号より低い周波数帯域に配置された第3信号に対して、前記第1信号の帯域幅の2倍に前記第2信号の帯域幅を加えた周波数のM(Mは、2以上の自然数)倍の周波数をサンプリング周波数とし、サンプリングにより得られるサンプリング値のうち、M個のサンプリング値ごとに1つのサンプリング値を選択する第1の選択と、M個のサンプリング値ごとにランダム又は予め定めたパターンでサンプリング値を選択する第2の選択とを表す選択パターンを決定する制御過程と、
前記制御過程において算出する前記サンプリング周波数で前記第3信号をサンプリングし、サンプリングで得られたサンプリング値を前記制御部が決定した選択パターンに基づいて出力するサンプリング過程と、
前記サンプリング過程において出力されるサンプリング値に対して所定のアルゴリズムを用いて前記第2信号を復元する復元過程と、
前記サンプリング過程において出力されるサンプリング値のうち前記第1の選択により選択されたサンプリング値に基づいて前記第1信号に対する第1の処理を行うとともに、前記復元過程において復元された前記第2信号に対して前記第1の処理と異なる第2の処理を行う信号処理過程と
を備えることを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−146813(P2011−146813A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4329(P2010−4329)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】