説明

信号分析装置

【課題】周期信号の欠損が発生した場合の影響を低減できる信号分析装置を得る。
【解決手段】相違パラメータを設定する相違パラメータ設定部1と、到来時刻間隔の範囲等を設定する間隔設定部3と、連続周期信号数を設定する信号数設定部5と、各信号の継続時間と相違パラメータを加算して複数の到来時刻間隔を算出する間隔算出部2と、複数の到来時刻間隔が、複数の間隔細分区間のいずれに対応するかを選出する間隔細分区間選出部4と、連続周期信号数を用いて到来時刻細分区間を設定し、到来時刻、到来時刻間隔がどの到来時刻細分区間に該当するかを選出し、到来時刻細分区間毎に到来時刻、到来時刻間隔に基づき複素数を算出し、到来時刻細分区間毎に複素数の合計値を算出する複数個の位相累積算出部6と、到来時刻細分区間毎の複素数の合計値に基づき、周期信号の系列数及び到来時刻間隔、並びに周期信号が到来した時刻を推定する周期性判定部7とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の電波源から放射された放射信号が混在する受信信号の中から、信号の到来した時間(到来時刻)が周期的な信号(周期信号)の系列数を推定し、周期信号がある場合にはその到来時刻の周期を推定する信号分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような周期信号を検出する方法として、2つの信号の到来時刻の差を到来時刻間隔として、その到来時刻間隔の頻度を基に周期信号の有無、および周期信号の周期を求める発明がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭56−80925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の周期信号を検出する方法は、1つの放射信号の到来時刻を基に、2つの到来時刻間隔を求めるため、1つの信号が欠損すると、つまり、本来存在している信号を、放射信号レベルが低いなどの理由により、ないと誤って認識してしまうと、2つの到来時刻間隔を正しく求めることができなくなる。つまり、欠損した放射信号数の約2倍の数の到来時刻間隔を正しく認識することができなくなり、欠損が多発する状況では処理を誤ってしまうという問題点があった。
【0005】
また、電波源が放射した電波を常に受信できるとは限らず、例えば電波源がアンテナビームを走査するようなケースでは、電波源のメインビームが信号分析装置のアンテナの方向を向いた時間しか周期信号を受信できない。さらに、電波源自体が間欠に電波放射する場合も、電波源が電波を放射した時間しか周期信号を受信できない。このような場合、常に周期信号を受信できた場合と比較して、受信できる周期信号の信号数は極端に少なくなる。
【0006】
一方で、周期信号を受信できない時間においても、周期信号以外の信号は受信できてしまう。ゆえに、周期信号を受信できない時間のデータも含めて従来方式で処理を実施すると、周期信号数が少ないために累積回路から出力される所望の複素数の絶対値は小さくなり、その一方で、周期信号以外の信号の影響により、所望以外の複素数の絶対値は大きくなってしまう。そのため、所望の複素数絶対値が相対的に小さくなり、その検出が困難になってしまうという問題点があった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、周期信号の欠損が発生した場合の影響を、従来方式よりも低減することができ、加えて、電波源からの周期信号を受信できない場合も、その影響を軽減して処理を実施するため、累積回路から出力される複素数の絶対値が相対的に小さくなることを防止し、その検出を容易にすることができる信号分析装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る信号分析装置は、到来時刻が周期的な周期信号の周期である到来時刻間隔と、受信信号が消えた時間である消滅時刻から受信信号の到来時刻を減算した時間である継続時間との差である相違パラメータを所定範囲内で複数個設定する相違パラメータ設定部と、前記到来時刻間隔の範囲、及び前記範囲を複数個に分割した間隔細分区間の幅を設定する間隔設定部と、前記周期信号を連続して受信できると想定して連続周期信号数を設定する信号数設定部と、観測データとして得られた各受信信号の複数個の継続時間と、前記相違パラメータ設定部で設定された複数個の相違パラメータとをそれぞれ加算して複数個の到来時刻間隔を算出する間隔算出部と、前記間隔算出部で算出された複数個の到来時刻間隔が、前記間隔設定部に従い設定された複数個の間隔細分区間のいずれに対応するかを選出する間隔細分区間選出部と、前記信号数設定部で設定された連続周期信号数を用いて到来時刻細分区間を設定し、前記到来時刻及び到来時刻間隔がどの到来時刻細分区間に該当するかを選出し、到来時刻細分区間毎に前記到来時刻及び到来時刻間隔に基づいて複素数を算出し、到来時刻細分区間毎に複素数の合計値を算出する複数個の位相累積算出部と、前記到来時刻細分区間毎の複素数の合計値に基づいて、周期信号の系列数及び到来時刻間隔、並びに周期信号が到来した時刻を推定する周期性判定部とを設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る信号分析装置は、1つの信号の継続時間を基に到来時刻間隔を求めて、受信信号に含まれる放射信号の周期性の有無および周期を特定することができ、その結果、1つの信号が欠損した場合に、正しく求めることができない到来時刻間隔の数を1とすることができ、信号の欠損が発生した場合の影響を従来方式よりも低減することができるという効果を奏する。
【0010】
加えて、電波源が周期信号を放射していない時間の影響を軽減して周期信号の系列数を推定するため、従来方式のように複素数の絶対値が相対的に小さくなり、検出が困難になることなく、系列数の推定精度を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る信号分析装置について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の位相累積算出部の構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0012】
この発明の実施の形態1に係る信号分析装置は、複数の電波源からの放射信号が混在する受信信号から、この受信信号に含まれるそれぞれの信号の到来時刻と継続時間を観測データとして抽出し、抽出結果に基づいて到来時刻が周期的な周期信号の系列数を推定すると共に、到来時刻が周期的な周期信号の到来時刻間隔とその周期信号を受信した時間を推定する。
【0013】
まず始めに、本発明の原理について説明する。
【0014】
今、1つの電波源のみから放射信号を受信している場合を考える。そして、この1つの電波源からの放射信号は、各信号の到来時間が周期的な周期信号で、周期信号の到来時刻の間隔がrであるとする。受信した信号の総数をN(Nは1以上の自然数)とし、各周期信号の到来時刻をtTOA、n(1≦n≦N)とすると、到来時刻tTOA、nは、次の式(1)で表すことができる。
【0015】
TOA、n=tTOA、1+(n−1)・r (1)
【0016】
また、各信号が消えた時間(以下、消滅時刻と呼ぶ)から各信号の到来時刻を減算した時間を継続時間と呼び、tDOC、n(1≦n≦N)とする。まず、次の式(2)に示す到来時刻間隔Δtn、mを計算する。
【0017】
Δtn、m=tDOC、n+tm (2)
【0018】
ここで、tmは、次の式(3)に示す予め定められたM個(Mは1以上の自然数、mは1≦m≦M)の値をとるパラメータ(以下、相違パラメータと呼ぶ)とする。
【0019】
tm=tmmin,(tmmin+Δtm),(tmmin+2・Δtm),・・・,(tmax−Δtm),tmmax (3)
【0020】
相違パラメータtmがM個の値をとるため、N個の周期信号に対して到来時刻間隔Δtn、mはN×M個として計算される。次に、式(4)に示すような複素数pn、mを考える。
【0021】
n、m=exp(2πjtTOA、n/Δtn、m) (4)
【0022】
到来時刻間隔Δtn、mがN×M個の値をとるため、N個の信号に対して複素数pn、mは、同様にN×M個として計算されることに注意する。ここで、M個の相違パラメータの中で、次の式(5)の条件を満たす相違パラメータtm(mは1≦m≦M)の場合を考える。
【0023】
tm=r−tDOC、n (5)
【0024】
式(5)を式(2)に代入すると、到来時刻間隔Δtn、m1は、次の式(6)のようになり、さらに、式(1)、(6)を式(4)に代入すると、複素数pn、m1は、次の式(7)のようになり、周期信号の番号nによらず等しい値になる。なお、式(7)のθは、次の式(8)で表される。
【0025】
Δtn、m1=tDOC、n+(r−tDOC、n)=r (6)
n、m1=exp(2πj(tTOA、1+(n−1)・r)/Δtn、m1
=exp(2πjtTOA,1/r)
=exp(jθ) (7)
θ=2πtTOA、1/r (8)
【0026】
そこで、到来時刻間隔Δtn、mの大きさごとの複素数pn、mの合計を計算する。すると、到来時間間隔Δtn、mがrと等しくなる所望の複素数pn、m(1≦n≦N)は、全て上記の式(7)の値となるため、これら複素数pn、mの合計の絶対値は、Nになる。
【0027】
一方、到来時刻間隔Δtn、mがrと等しくない場合には、信号1〜Nの複素数pn、m(1≦n≦N)が全て等しい値になることはないので、それらの合計を計算しても互いに打ち消しあうため積み上がらず、その絶対値は、大きくならない。また、周期信号以外の信号も、上記の式(7)のように複素数pn、mが等しくなることはないため、複素数の合計の絶対値が大きくなることはない。
【0028】
ゆえに、到来時刻間隔の大きさごとに計算された複素数の絶対値の大きさから、その到来時刻間隔の周期信号が存在するか否かを判断でき、また、複素数の絶対値が大きくなった到来時刻間隔から、周期信号の周期(到来時刻間隔)を特定することができる。
【0029】
但し上記は、信号を受信していた間、常に周期信号を受信できた場合である。つまり、信号の受信時間をtrecとすると、周期信号の到来時間の間隔rと、周期信号数Nの間に次の式(9)の関係がある場合である。
【0030】
rec≒N・r (9)
【0031】
このような場合には、rを含む到来時刻間隔の複素数の積み上がりは、他の到来時刻間隔の複素数のつみ上がりと比較して大きくなる。
【0032】
しかし、例えば、電波源自体が電波を放射せず、信号の受信時間trecと比較して数分の1程度の時間しか周期信号を受信できていないとすると、周期信号数が数分の1になり、所望の複素数絶対値も数分の1になってしまう。一方、周期信号を受信できない間も放射信号は受信されるので、所望以外の複素数絶対値は、少しずつ大きな値にあり、所望の複素数絶対値と、所望以外の複素数絶対値の差が縮まってしまう。その結果、周期信号の系列数の推定を誤る共に、その到来事項間隔の値も誤るケースが発生してしまう。
【0033】
ところで、周期信号は、電波源が電波を放射するときと電波を止める場合(電波源がビームを走査する場合も同様)があるので、周期信号を連続して複数個受信できる時間と、全く受信できない時間に分かれてしまう。そこで、複素数を計算する際、到来時刻を基に分割して合計を計算することを考える。すると、周期信号を連続して受信できた場合には、その区間の放射信号数に占める周期信号数の比率が高まり、その検出が容易になる。そこで、具体的方法としては、まず周期信号を連続して受信できる連続周期信号数s(整数)を設定する。そして、到来時刻間隔がrについて複素数を合計する場合には、到来時間により複素数を次の式(10)、(11)に示すI個に分割し、それぞれについて合計値の絶対値を計算する。
【0034】
I=(trec−(s+1/2)・r)/(r/2) (10)
(i−1)・1/2・r≦tTOA、n<(i−1)・1/2・r+(1+1/2)r
(1≦i≦I) (11)
【0035】
この方式の場合、放射信号数に占める周期信号数の比率を高めて複素数の合計を計算できるため、上記の様にtrecと比較して数分の1程度の時間しか周期信号を受信できないケースでも、周期信号を受信できた時間に対応した区間では周期信号の比率が高まり、その検出が可能となる。これが、本発明の原理である。この原理を踏まえて、続いて、本発明の実施の形態1に係る信号分析装置について詳細を説明する。
【0036】
図1において、この実施の形態1に係る信号分析装置は、相違パラメータ設定部1と、間隔算出部2と、間隔設定部3と、間隔細分区間選出部4と、信号数設定部5と、K個の位相累積算出部6(6、6、・・・、6)と、周期性判定部7とが設けられている。
【0037】
また、図2において、位相累積算出部6は、到来時刻細分区間選出部61と、I個の到来位相算出部62(62、62、・・・、62I)と、I個の累積算出部63(63、63、・・・、63I)とが設けられている。
【0038】
相違パラメータ設定部1は、到来時刻間隔と継続時間との差である相違パラメータtmを所定の範囲でM個設定する。また、間隔算出部2は、各信号の継続時間に相違パラメータtmを加算して到来時刻間隔を求める。また、間隔設定部3は、分析する到来時刻間隔の範囲や、この範囲を複数個に分割した間隔細分区間の幅を設定する。また、間隔細分区間選出部4は、間隔算出部2から出力された到来時刻間隔の大きさに対応した間隔細分区間を選ぶ。
【0039】
信号数設定部5は、周期信号を連続して受信できる連続周期信号数を設定するもので、この設定結果に従い、後述の到来時刻細分区間の時間幅が決定する。また、位相累積算出部6は、間隔細分区間選出部4から出力された到来時刻間隔値と到来時刻に基づいて、該当する到来時刻細分区間を選択すると共に、到来時刻間隔値と到来時刻に基づいて複素数を求め、さらに到来時刻細分区間毎に複素数の合計を求める。また、周期性判定部7は、位相累積算出部6から出力された複素数を基に、周期信号の系列数とその周期、さらに周期信号が到来し始めた時刻を推定する。
【0040】
つぎに、この実施の形態1に係る信号分析装置の動作について図面を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の間隔細分区間の選出方法を説明するための図である。また、図4は、この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の到来時刻細分区間の選出方法を説明するための図である。
【0041】
受信信号に含まれる信号の総数がNで、各信号の到来時刻がtTOA、n(1≦n≦N)、継続時間がtDOC、n(1≦n≦N)として観測されている場合を例に、具体的に説明する。ここで、受信信号の到来時刻、消滅時刻及び継続時間の関係は、図3(a)に示す通りである。
【0042】
相違パラメータ設定部1は、信号の到来時刻間隔と継続時間との差である相違パラメータtmの最小値tmminと、最大値tmmaxと、ステップ間隔Δtmを設定する。最小値tmminと最大値tmmaxは、各信号の継続時間に予め設定した定数を乗算した値(以下、乗算値と呼ぶ)や、継続時間を予め設定した値で除算した値(以下、除算値と呼ぶ)などを用いる。
【0043】
また、最小値tmminと最大値tmmaxが事前に想定されている場合には、その値(以下、想定値と呼ぶ)を用いてもよいし、乗算値や除算値、想定値のうち、最大値や最小値を用いてもよい。また、ステップ間隔Δtmは、分析する対象の信号を想定して設定する。以下では、相違パラメータ設定部1において、相違パラメータが次の式(12)に示すように、M個(Mは1以上の自然数)設定されたものとして説明する。
【0044】
tm=tmmin、tmmin+Δtm、tmmin+2Δtm、・・・、tmmin+(M−1)Δtm (12)
【0045】
間隔設定部3は、以下で分析を行う到来時刻間隔の範囲や、その範囲を複数個に分割した幅などを設定する。なお、分割された到来時刻間隔の区間を、間隔細分区間と呼ぶ。分析する到来時刻間隔の範囲は、分析対象とする周期信号を想定して設定する。また、間隔細分区間の幅は、到来時刻や継続時間の分解能と等しい値や、分解能をある値で乗算や除算した値を用いる。以下では、分析する到来時刻間隔の範囲がτ〜τに設定され、間隔細分区間がK個であるとする。なお、間隔細分区間の幅とは、τ−τ(k−1)(1≦k≦K)を表す。
【0046】
また、信号数設定部5は、周期信号を連続して受信できる連続周期信号数を設定する。この連続信号設定数は、分析対象とする周期信号を想定して設定する。以下では、信号数設定部5において、連続周期信号数がsに設定されたとして説明をする。
【0047】
間隔算出部2は、図3に示すように、観測データとして得られた各信号のN個の継続時間の値tDOC、nと、相違パラメータ設定部1から得られたM個の相違パラメータtmとをそれぞれ加算したN×M通りの到来時刻間隔Δtn、mを算出し、間隔細分区間選出部4に出力する。具体的には、間隔算出部2は、次の式(13)により到来時刻間隔Δtn、mを算出して出力する。
【0048】
Δtn、m=tDOC、n+tm (13)
【0049】
間隔細分区間選出部4は、間隔算出部2から出力されたN×M個の到来時刻間隔Δtn、mが、間隔設定部3に従い設定されたK個の間隔細分区間〔τ、τ)、〔τ、τ)、・・・、〔τ(K−1)、τ)のいずれに対応するかを選出する。ただし、k番目(1≦k≦K)の区間〔τ(k−1)、τ)は、間隔細分区間の範囲を意味し、次の式(14)の区間を意味する。
【0050】
τ(k−1)≦Δtn,m<τ (14)
【0051】
また、kは、間隔細分区間の番号であり、間隔細分区間〔τ(k−1)、τ)と間隔細分区間kは、同義であるとする。間隔細分区間選出部4は、上記の式(14)に従い、到来時刻間隔Δtn、mに対応する間隔細分区間〔τ(k−1)、τ)を選出する。
【0052】
なお、間隔算出部2から出力される到来時刻間隔Δtn、mは、N×M個であるため、間隔細分区間選出部4は、N×M個それぞれに対応した間隔細分区間を選出する。図3(b)は、1つ信号の到来時刻にM個の相異パラメータを加算し、得られた到来時刻間隔に対応する間隔細分区間k〜間隔細分区間k(M−1)を選出する様子を表している。
【0053】
位相累積算出部6は、間隔細分区間選出部4から出力された到来時刻間隔Δtn、mと、信号の到来時刻tTOA、n(1≦n≦N)を用いて複素数を求めるとともに、信号の到来時刻tTOA、nを基に求めた複素数が対応する到来時刻細分区間毎にそれら複素数の合計を算出する。
【0054】
ここでは、位相累積算出部6(1≦k≦K)は、間隔細分区間kと対応しているものとし、k番目の位相累積算出部6を例に、その動作を説明する。
【0055】
まず、位相累積算出部6を構成する到来時刻細分区間選出部61は、図4に示すように、入力された到来時刻tTOA、nと、間隔算出部2で算出した到来時刻間隔Δtn,mがどの到来時刻細分区間に該当するかを選出する。例えば、図4(a)では、最初の受信信号が到来時刻細分区間i〜iに該当する様子を表している。なお、到来時刻細分区間は、信号数設定部5により設定された連続周期信号数sを用いて予め設定されているものとする。いま、間隔細分区間がkであるので、その到来時刻間隔の中心値Tは、次の式(15)のようになる。
【0056】
=(τ(k−1)+τ)/2 (15)
【0057】
この場合、到来時刻細分区間のステップ間隔をT/2とする。また、到来時刻細分区間の範囲(幅)は、図4(b)に示すように、連続周期信号数sを用いて、(s+1/2)Tとする。ゆえに、到来時刻細分区間の数がI個であったとすると、到来時刻細分区間i(1≦i≦I)は、次の式(16)のようになる。
【0058】
(i−1)T/2≦tTOA、n<(i−1)T/2+(s+1/2)T
(16)
【0059】
到来時刻細分区間選出部61は、式(16)に従い、入力された到来時刻tTOA、nと到来時刻間隔Δtn,mがどの到来時刻細分区間に該当するかを選出し、到来時刻細分区間毎に設けられた到来位相算出部62(1≦i≦I)に出力する。なお、1つの到来時刻に対して、上記の式(16)を満たす到来時刻細分区間は複数個になる場合があるが、その場合は複数個の到来時刻細分区間に到来時刻と到来時刻間隔を出力する。
【0060】
以下の説明では、到来時刻細分区間選出部61において、該当する到来時刻細分区間が次の式(17)を満たす到来時刻細分区間iであったとして説明を進める。
【0061】
(i−1)T/2≦tTOA、n<(i−1)T/2+(s+1/2)T
(17)
【0062】
到来時刻細分区間iに対応した到来位相算出部62iでは、到来時刻細分区間選出部61から出力された到来時刻tTOA、nと到来時刻間隔Δtn,mを基に、次の式(18)に従い複素数pn、mを計算し、到来時刻細分区間iに対応した累積算出部63iに出力する。
【0063】
n,m=exp(2πjtTOA、n/Δtn,m) (18)
【0064】
累積算出部63iでは、到来位相算出部62iから出力された複素数pn、mの合計を計算し、周期性判定部7に出力する。
【0065】
周期性判定部7は、位相累積算出部6から出力されたI×K個(I:到来時刻細分区間数、K:間隔細分区間数)の複素数の合計値について、その絶対値を計算するとともに、その絶対値が予め設定された閾値よりも大きいか否かを判定する。大きい場合、その細分区間に周期信号が含まれていると判定する。
【0066】
いま、間隔細分区間k、到来時刻細分区間iで絶対値が閾値を越えたとする。この場合、間隔細分区間kから、その到来時刻間隔がτ(k2−1)以上でτk2未満であることが分かり、到来時刻細分区間iから、その周期信号が到来した時刻が、(i−1)Tk2/2以上で(i−1)T/2+(s+1/2)Tk2未満であったことも特定できる。なお、周期性判定部7で用いる閾値は、信号数設定部5で設定された連続周期信号数sにある値(設定値)を乗算や除算したものや、sにある値を加算もしくは減算したものなどが用いられる。
【0067】
なお、上記の説明では、放射信号の到来時刻に注目して説明を行ったが、到来時刻細分区間選出部61において、到来時刻の代わりに、放射信号の消滅時刻(到来時刻(tTOA、n)と継続時間(tDOC、n)を加算した値:tTOA、n+tDOC、n)を用いて到来時刻細分区間を選出しても良い。
【0068】
また、到来時刻細分区間選出部61は、到来時刻の代わりに、放射信号の中心時刻(到来時刻(tTOA、n)と消滅時刻(tTOA、n+tDOC、n)を加算して2で除算した値:(2tTOA、n+tDOC、n)/2)を用いて到来時刻細分区間を選出してもよい。
【0069】
また、到来位相算出部62においても、到来時刻の代わりに、消滅時刻を用いて、次の式(19)により複素数を計算しても、上記と同様の効果が得られる。
【0070】
n,m=exp(2πj(tTOA、n+tDOC、n)/Δtn,m) (19)
【0071】
また、到来位相算出部62において、到来時刻の代わりに、中心時刻を用いて、次の式(20)により複素数を計算しても、上記と同様の効果が得られる。
【0072】
n,m=exp(πj(2tTOA、n+tDOC、n)/Δtn,m) (20)
【0073】
さらに、電波に限らず、音波を受信した信号、光波を受信した信号などに本方式を適応することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の位相累積算出部の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の間隔細分区間の選出方法を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る信号分析装置の到来時刻細分区間の選出方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
1 相違パラメータ設定部、2 間隔算出部、3 間隔設定部、4 間隔細分区間選出部、5 信号数設定部、6 位相累積算出部、7 周期性判定部、61 到来時刻細分区間選出部、62 到来位相算出部、63 累積算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
到来時刻が周期的な周期信号の周期である到来時刻間隔と、受信信号が消えた時間である消滅時刻から受信信号の到来時刻を減算した時間である継続時間との差である相違パラメータを所定範囲内で複数個設定する相違パラメータ設定部と、
前記到来時刻間隔の範囲、及び前記範囲を複数個に分割した間隔細分区間の幅を設定する間隔設定部と、
前記周期信号を連続して受信できると想定して連続周期信号数を設定する信号数設定部と、
観測データとして得られた各受信信号の複数個の継続時間と、前記相違パラメータ設定部で設定された複数個の相違パラメータとをそれぞれ加算して複数個の到来時刻間隔を算出する間隔算出部と、
前記間隔算出部で算出された複数個の到来時刻間隔が、前記間隔設定部に従い設定された複数個の間隔細分区間のいずれに対応するかを選出する間隔細分区間選出部と、
前記信号数設定部で設定された連続周期信号数を用いて到来時刻細分区間を設定し、前記到来時刻及び到来時刻間隔がどの到来時刻細分区間に該当するかを選出し、到来時刻細分区間毎に前記到来時刻及び到来時刻間隔に基づいて複素数を算出し、到来時刻細分区間毎に複素数の合計値を算出する複数個の位相累積算出部と、
前記到来時刻細分区間毎の複素数の合計値に基づいて、周期信号の系列数及び到来時刻間隔、並びに周期信号が到来した時刻を推定する周期性判定部と
を備えたことを特徴とする信号分析装置。
【請求項2】
前記複数個の位相累積算出部は、それぞれ、
前記到来時刻及び前記信号数設定部で設定された連続周期信号数を用いて到来時刻細分区間を設定し、前記到来時刻及び到来時刻間隔がどの到来時刻細分区間に該当するかを選出する到来時刻細分区間選出部と、
到来時刻細分区間毎に設けられ、前記到来時刻細分区間選出部から出力された到来時刻及び到来時刻間隔に基づいて複素数を算出する複数個の到来位相算出部と、
対応する到来位相算出部から出力された複素数の合計を算出する複数個の累積算出部とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の信号分析装置。
【請求項3】
前記周期性判定部は、前記複素数の合計の絶対値を計算し、前記絶対値と前記信号数設定部で設定された連続周期信号数を基に算出された閾値とを比較し、前記絶対値が前記閾値よりも大きい場合には当該到来時刻細分区間に周期信号が含まれていると判定する
ことを特徴とする請求項1記載の信号分析装置。
【請求項4】
前記到来時刻細分区間選出部は、前記到来時刻の代わりに、到来時刻と継続時間を加算した消滅時刻を用いて到来時刻細分区間を選出する
ことを特徴とする請求項2記載の信号分析装置。
【請求項5】
前記到来時刻細分区間選出部は、前記到来時刻の代わりに、到来時刻と消滅時刻を加算して2で除算した中心時刻を用いて到来時刻細分区間を選出する
ことを特徴とする請求項2記載の信号分析装置。
【請求項6】
前記到来位相算出部は、前記到来時刻の代わりに、到来時刻と継続時間を加算した消滅時刻及び到来時刻間隔に基づいて複素数を算出する
ことを特徴とする請求項2記載の信号分析装置。
【請求項7】
前記到来位相算出部は、前記到来時刻の代わりに、到来時刻と消滅時刻を加算して2で除算した中心時刻及び到来時刻間隔に基づいて複素数を算出する
ことを特徴とする請求項2記載の信号分析装置。
【請求項8】
前記到来位相算出部及び累積算出部に対応する到来時刻細分区間の範囲が、互いの該当する到来時刻間隔の1/2ずつ異なっている
ことを特徴とする請求項2記載の信号分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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