説明

信号生成装置及該装置を備えた機器

【課題】 コストアップや回路規模を増大させずに、分解能の高い信号生成回路を実現できる。
【解決手段】 駆動素子の駆動を制御するパルス信号を生成する信号生成装置であって、差動伝送方式の第1クロック信号を入力し、前記第1クロック信号から第2クロック信号を生成するクロック信号生成部と、データ信号を入力する入力部と、データ信号に含まれる情報に基づいて第2クロック信号の立上りエッジまたは立下りエッジを選択し、情報に基づいて第2クロック信号の選択したエッジのカウントを行なって、第1信号を生成する第1タイミング生成部及第2信号を生成する第2タイミング生成部と、第1信号と第2信号とに基づいて、パルス信号を生成する論理回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス信号を生成する信号生成装置及びパルス信号を生成する機器に関する。特に記録装置から記録ヘッドへのデータ転送に関する。
【背景技術】
【0002】
信号線や信号端子の数を抑制できる理由により、多ビットのデータ信号を転送するために、シリアル転送が利用されている。特許文献1では、記録ヘッドの駆動期間等の制御情報を記録データとともに、記録装置から記録ヘッドへ転送する記載がある。この制御情報に基づいて、記録素子を駆動するHE信号を生成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−256883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、生成する信号の分解能を高めることが難しい。例えば特許文献1の構成で10nsの分解能の信号生成を実現しようとすると100MHzのクロック波数が必要となる。あるいは、10MHzのクロック周波数を10系統用意し、それぞれの信号の位相をずらす方法があるが、いずれもコストが高くなり、基板面積が大幅に増加する。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、コストや回路規模を抑制し、分解能の高い信号生成装置及該装置を備えた機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の信号生成装置は、駆動素子の駆動を制御するパルス信号を生成する信号生成装置であって、差動伝送方式の第1クロック信号を入力し、前記第1クロック信号から第2クロック信号を生成するクロック信号生成部と、データ信号を入力する入力部と、前記データ信号に含まれる第1情報に基づいて前記第2クロック信号の立上りエッジまたは立下りエッジを選択し、前記第1情報に基づいて前記第2クロック信号の選択したエッジのカウントを行なって第1信号を生成する第1タイミング生成部と、前記データ信号に含まれる第2情報に基づいて前記第2クロック信号の立上りエッジまたは立下りエッジを選択し、前記第2情報に基づいて前記第2クロック信号の選択したエッジのカウントを行なって第2信号を生成する第2タイミング生成部と、前記第1信号と前記第2信号とに基づいて、前記パルス信号を生成する論理回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成により、コストアップや回路を複雑にすることなく、分解能の高い信号生成回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態における信号生成装置の回路構成を説明する図である。
【図2】第1の実施形態における信号生成装置のタイミングチャートである。
【図3】第2の実施形態における機器の構成を説明する図である。
【図4】第2の実施形態における信号生成回路の構成を説明する図である。
【図5】第2の実施形態における信号のタイミングチャートである。
【図6】第2の実施形態における信号生成回路の構成を説明する図である。
【図7】第3の実施形態における信号生成回路を説明する図である。
【図8】第3の実施形態における信号のタイミングチャートである。
【図9】実施形態で適用する機器10の外観を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、駆動素子の駆動を制御するパルス信号Pを生成する信号生成装置を説明する図である。信号生成装置10は、クロック信号(CL)に基づいてデータ信号(DATA)をシリアル受信する。更に、LVDS(低電圧差動伝送)を用いて、クロック信号(CLK+、CLK−)を入力する。
【0010】
クロック信号(CL)は、不平衡接続で外部(例えば、機器20)から入力する。このクロック信号(CL)はシングルエンド信号と表現される。一方、クロック信号(CLK+、CLK−)は、平衡接続で電子機器20から入力する。このこのクロック信号(CLK+、CLK−)は差動信号と表現される。
【0011】
差動伝送方式で信号の転送を行えば、伝送線路の輻射ノイズの影響を最小限にすることができ、シングルエンド信号よりも高速でデータ転送ができるので、生成する信号の高時間分解能を実現できる。
【0012】
信号生成装置10は、クロック信号(CLK+、CLK−)からクロック信号CLKを生成する信号生成部(クロック信号生成部)11を備えている。入力部14は、クロック信号(CL)に基づいて、データ信号(DATA)を入力する。入力部14の例として、シフトレジスタ(SR)14が、データ信号(DATA)はD0からD15の16ビットの情報で構成されている。
【0013】
第1タイミング生成部12Aは、データ信号に含まれる第1情報(D15からD8の8ビットデータ)に基づいて、クロック信号(CLK)の立上りエッジまたは立下りエッジの一方を選択する。そして、第1情報に基づいてクロック信号(CLK)の選択したエッジでカウントを行って第1信号(15A)を生成する。第2タイミング生成部12Bも、同様に、データ信号に含まれる第2情報(D0からD7の8ビットデータ)に基づいて、クロック信号(CLK)の立上りエッジまたは立下りエッジの一方を選択する。そして、第2情報に基づいてクロック信号(CLK)の選択したエッジのカウントを行なって第2信号(15B)を生成する。論理回路13は、第1信号と第2信号とに基づいて、パルス信号(EN)を生成する。第1タイミング生成部12A、第2タイミング生成部12Bは、クロック信号(CLK)が入力される前の、タイミングTsまでに情報を入力する。予め定められた数のパルスが転送された後クロック信号(CLK)は停止する。この転送シーケンスが周期的に行われる。
【0014】
図2は信号生成装置10の信号のタイミングチャートである。第1タイミング生成部12A及び第2タイミング生成部12Bがカウントした結果出力する信号の波形を示す。第1タイミング生成部12Aは、クロック信号(CLK)の立上りエッジを選択し、第1信号をタイミングT1で、ロウレベルからハイレベルへ切替える。第2タイミング生成部12Bは、クロック信号(CLK)の立下りエッジを選択し、第2信号をタイミングT2で、ロウレベルからハイレベルへ切替える。論理回路13は、両方の信号の論理積(AND処理)を行い、信号ENにパルスPを出力する。
【0015】
機器20は、制御回路21と送信制御回路22を備えている。制御回路21は、例えば16ビットの情報を保持するレジスタ21aを備えている。制御回路21はレジスタ21aに保持されている情報を送信回路22へ送信する。送信回路22は、信号生成装置10へデータやクロック信号(CLK+、CLK−)、クロック信号(CL)等を転送する。
【0016】
以上のように、信号ENの有効と定めるタイミング(図2のT1、T2)を、クロック信号(CLK)の立上りエッジまたは立下りエッジを選択的に使用することで、クロック信号(CLK)の一方のエッジを固定して使用する場合より、信号ENの有効(ハイレベル)期間の分解能を2倍にすることができる。
【0017】
(第2の実施形態)
図3は、図1に示した機器10の回路をより具体的に示した図である。機器10は、記録素子110を複数配列した記録素子列109を駆動する駆動回路108と、記録素子110を駆動する期間を決めるイネーブル信号(HE)を生成する信号生成回路107と、データを入力するシフトレジスタ(SR)106で構成されている。DATAはCL信号と同期してシフトレジスタ106に取り込まれ、LT信号の立上りのタイミングで信号生成回路107および駆動回路108が入力する。このCL信号の周波数の値は、クロック信号(CLK+、CLK−)の周波数の値と等しいか低くすることができる。
【0018】
図4は信号生成回路107のブロック図である。信号生成回路107は、図4に示すシングルパルス(矩形状のパルス)のイネーブル信号を生成する。
【0019】
信号生成回路107は、両エッジカウンタ205A、205B、LVDSレシーバ206、論理回路207、ゲート回路204で構成されている。両エッジカウンタ(タイミング生成部)205Aはタイミングデータ201を入力し、両エッジカウンタ(タイミング生成部)205Bはタイミングデータ202を入力する。
【0020】
図5は信号生成回路107の入出力信号および回路内部の信号のタイミングチャートである。タイミングデータ201はPT1D0〜PT1D8の9ビットのデータであり、HE信号の立ち上りタイミングを定める。タイミングデータ202はPT0D0〜PT0D8の9ビットのデータであり、HE信号の立ち下がりタイミングを定める。このタイミングの設定により、HE信号を有効にする期間(記録素子を駆動できる期間)307を定めることができる。例えば、PT1の値は「2」と設定すると、図5に示すようにCLの2番目の立上りエッジでHE信号が立ち上がる。同様にPT0の値を設定すれば、設定値に応じたタイミングでHE信号が立ち下がる。なお、PT1の値とPT0の値を等しく設定することで記録素子の駆動を禁止することでも可能である。
【0021】
シフトレジスタ106から送られるタイミングデータ201は、LT信号の立上りのタイミングにて両エッジカウンタ205Aにセットされる。同様に、タイミングデータ202は、LT信号の立上りのタイミングにて両エッジカウンタ205Bにセットされる。両エッジカウンタ205A、205Bは、CLK301の両エッジに同期し、それぞれタイミングデータ201、202の設定値に基づいてカウント(ダウンカウント)をスタートさせる。カウントを終了すると、キャリー信号302、303をそれぞれ出力し、動作を停止する。
【0022】
論理回路207はキャリー信号302、303を入力し、PT信号を出力する。論理回路207の動作は真理値表203に示す論理に従ってPT信号を出力する。ゲート回路204はPT信号を入力し、LT信号とAND処理を行い、HE信号として出力する。このHE信号に基づいて記録素子が駆動することで、記録ヘッドからインクが吐出される。
【0023】
図6は、両エッジカウンタ(タイミング生成部)205の説明図である。両エッジカウンタ205は9ビットのダウンカウント回路(非同期式のカウンタ)405、CLK反転回路403、CLK停止回路402を備えている。両エッジカウンタ205は、CLK301とLTとタイミングデータ201あるいはタイミングデータ202を入力する。タイミングデータ201(202)は、図5では、PTxD0〜PTxD8に対応する。CLK反転回路403は、PTxD0〜PTxD8のうち、LSBであるPTxD0(所定ビット)を入力すれる。CLK反転回路403は、LSBが偶数であればCLK信号を出力し、LSBが奇数であればCLK信号を反転して出力する。つまり、PTxD0〜PTxD8の値が、偶数であればCLK信号を、奇数であればCLK信号の反転信号を出力する。
【0024】
カウンタ405は、このCLK反転回路403の出力を入力する。カウンタ405は、立上りエッジをカウントする9ビットの非同期ダウンカウンタである。この組み合わせにより、片エッジカウンタ405を両エッジカウンタと同等に使うことが可能となる。カウンタ405は、PTxD1〜PTxD8を入力する。ダウンカウンタ405は8つのDフリップフロップ407と1つのDフリップフロップ408を備えている。Dフリップフロップ407はLT信号の立上りのタイミングでPTxD1〜PTxD8をそれぞれセットする。9ビット目(出力側)のDフリップフロップ408は、LT信号103の立上りのタイミングで値がリセットされる。カウンタ405はCLK反転回路403の出力CLKの立上りエッジに同期して、設定値からダウンカウントする。そして、カウンタが値‘000H’(‘000000000B’)から‘1FFH’(111111111B)に戻るときのDフリップフロップ408の出力をキャリー信号406として出力する。この信号は図3の論理回路207が入力する。カウンタ405の出力は、CLK停止回路402が入力し、カウンタの動作を停止する。
【0025】
この両エッジカウンタ205は、生成するHE信号の時間分解能に対し半分の速度で駆動される。これは、予めカウントする値により、一方のエッジのタイミングを選択して、選択したエッジ(一方のエッジ)でカウントする。従って、両エッジカウンタと比較して、実際のカウンタの駆動周波数は半分となる。従って、両エッジカウンタ205の消費電力は半分、駆動限界周波数は2倍となる。非同期カウンタはビット数が増えても動作限界周波数は落ちないため、高速で大きな数値をカウントするのに向いている。また、回路構成も同じビット数の同期カウンタと比較し非常に単純なため、チップサイズのシュリンクも実現できる。
【0026】
(第3の実施形態)
第2の実施形態の信号生成回路107は、シングルパルス(矩形状のパルス)のイネーブル信号を生成したが、第3の実施形態では、複数パルスの信号を生成する回路構成について、図7に示す信号生成回路602について説明する。図7の信号生成回路602と第1の実施形態の信号生成回路107と相違点について説明を行い、同様の内容は説明を省く。信号生成回路602は4つの両エッジカウンタ205A〜205Dを備えており、論理回路601が4つの信号の論理演算を行う点が、第1の実施形態の信号生成回路107と異なる。
【0027】
両エッジカウンタ205A〜205Dはそれぞれ、実施形態1の両エッジカウンタ205A、205Bと同様に動作する。両エッジカウンタ205Aはキャリー信号701を出力する。以下同様に、両エッジカウンタ205Bはキャリー信号702を出力し、両エッジカウンタ205Cはキャリー信号703を出力し,両エッジカウンタ205Dはキャリー信号704を出力する。論理回路601は、キャリー信号701〜704を入力し、真理値表603に基づいて信号PTを出力する。
【0028】
図8は、図7で説明した信号生成回路602の信号のタイミングチャートである。信号PTの出力により、信号HEのプレパルス707とメインパルス708が生成される。
【0029】
(機器の説明)
図9は、上述した機器10の一例としてラインヘッド(記録ヘッド)Hを説明する図である。複数の記録素子基板101が配置される。102はヘッド基板を示し、FPC(Flexible Printed Circuit)やPCB(Printed Circuit Board)やセラミックの配線体等の電気配線構造をもつ配線基板である。記録素子基板101はヘッド基板102にワイヤボンディング等により電気的に接続される。例えば、図3に示す回路は、記録素子基板101に配置されている。接続電極104は、図3に示すDATA信号、LT信号、CL信号などを入力する端子を含む。機器20は、記録媒体を搬送する搬送手段を備えている。機器20は、記録媒体を搬送手段へ給送する給送手段や、記録済みの記録媒体を排出する排出手段等を備えている記録装置である。
【0030】
(その他の実施形態)
以上、パルス信号を生成する信号生成回路について説明したが、駆動素子は、記録素子に限定するものではなく、表示装置に用いられる発光素子や読取装置に適用されるラインセンサ、DCモータやステッピングモータ等でも構わない。従って、第2の実施形態で説明した駆動回路は、発光素子を駆動する回路、ラインセンサを駆動する回路、モータを駆動する回路である。
【0031】
また、上述した実施形態において、図6に示す、カウンタ405は、立上りエッジであるが、立下りエッジをカウントする形態であっても構わない。また、シフトレジスタに入力するデータのビット数も、上述した実施形態で説明した値に限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動素子の駆動を制御するパルス信号を生成する信号生成装置であって、
差動伝送方式の第1クロック信号を入力し、前記第1クロック信号から第2クロック信号を生成するクロック信号生成部と、
データ信号を入力する入力部と、
前記データ信号に含まれる第1情報に基づいて前記第2クロック信号の立上りエッジまたは立下りエッジを選択し、前記第1情報に基づいて前記第2クロック信号の選択したエッジのカウントを行なって第1信号を生成する第1タイミング生成部と、
前記データ信号に含まれる第2情報に基づいて前記第2クロック信号の立上りエッジまたは立下りエッジを選択し、前記第2情報に基づいて前記第2クロック信号の選択したエッジのカウントを行なって第2信号を生成する第2タイミング生成部と、
前記第1信号と前記第2信号とに基づいて、前記パルス信号を生成する論理回路とを備えることを特徴とする信号生成装置。
【請求項2】
前記入力部は、第3クロック信号に基づいて、前記データ信号を入力するシフトレジスタであることを特徴とする請求項1に記載の信号生成装置。
【請求項3】
前記第1タイミング生成部は前記第1情報の所定ビットの値に基づいて前記第2クロック信号の波形を反転させる回路を備え、前記第2タイミング生成部は前記第2情報の所定ビットの値に基づいて前記第2クロック信号の波形を反転させる回路を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号生成装置。
【請求項4】
前記第1タイミング生成部及び前記第2タイミング生成部は、非同期のカウント回路を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の信号生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の信号生成装置と、
前記駆動素子を駆動する駆動回路とを備えることを特徴とする機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−235531(P2011−235531A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108791(P2010−108791)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】