説明

信号補正装置、該信号補正装置を有する受信装置、及び信号補正プログラム

【課題】 高精度な信号の補正を実現する。
【解決手段】 映像又は画像から得られる輝度信号及び2つの色差信号により前記映像又は画像の補正を行う信号補正装置において、前記輝度信号及び2つの色差信号を三原色値に変換する三原色値変換部と、前記三原色値を所定画素数分遅延させる遅延部と、前記遅延部により得られる三原色値から所定の画素の三原色値を予測する三原色値予測部と、前記三原色値予測部により得られる予測値と、前記三原色値変換部により得られる三原色値とを比較評価する比較評価部とを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号補正装置、該信号補正装置を有する受信装置、及び信号補正プログラムに係り、特に高精度な信号の補正を実現するための信号補正装置、該信号補正装置を有する受信装置、及び信号補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像の符号化やフィルター処理に代表されるデジタル画像処理では、輝度信号、色差信号からなる映像信号を対象として画像処理が行われる。また、本来は色の三原色(赤(R)、青(B)、緑(G))の組み合わせによって表現され、人間の視覚は三原色の組み合わせによって感度が異なることが知られている。
【0003】
このような感度の違いから、画像処理を行うにあたり三原色によって表現される画素情報を、最も視覚的に感度が高い輝度軸と、二つの色差軸とに変換し、変換したそれぞれの情報に重み付けを行う手法が行われている。
【0004】
特に、輝度と色差信号に対する視覚感度の違いは積極的に利用され、一般的な映像信号の高画質フォーマットにおいても色差信号の帯域を抑制した4:2:2フォーマットと呼ばれる映像信号を用いられており、画像処理の基となる信号として使用されている(例えば、非特許文献1,非特許文献2参照。)。なお、上述した4:2:2フォーマットとは、一般にテレビ画面は走査線上に並ぶ画素によって画像が構成され、画素は画像の明るさを表す輝度信号Yと、画像の色を表す2つの色差信号C,Cで構成されている。このとき、上述したY,C,Cの3つの成分の比率を4:2:2という形式で表したものである。
【0005】
また、MPEG−2(Motion Picture Experts Group−2)やDV(Digital Video)規格に代表される符号化方式では、色差信号の情報を更に帯域抑制した4:2:0フォーマットや、4:1:1フォーマットと呼ばれる映像信号も用いられる。これは、人間の目は輝度信号に敏感であり、人間の視覚特性上、輝度信号と比較して色差信号はあまり大きな影響を受けないため、色差信号の情報を減らして符号化効率を向上させるために用いられている。
【0006】
なお、従来技術として、符号化処理における信号劣化によって発生したブロックノイズ等の劣化要素を低減するために、復号された信号に対してぼかし処理等を実現するフィルターにより、画像に補正処理を行う技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【非特許文献1】インプレス標準教科書シリーズ,「H.264/AVC教科書」,p.40.
【非特許文献2】共立出版,「デジタル放送・インターネットのための情報圧縮技術」,pp.9−10.
【特許文献1】特開平10−191332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の画像処理では、輝度信号と色差信号とが独立して処理が行われる。そのため、非可逆な画像処理の場合には復号映像において輝度信号と色差信号のそれぞれの劣化の程度が異なることになる。
【0008】
更に、人間の視覚特性は、個々に異なる色を知覚した時の弁別感度は高くないが、隣接する色の違いに対する感度は高いことが知られている。したがって、上述したように非可逆な画像処理によって輝度信号と色差信号とが個々に劣化を生じると、各信号成分の劣化程度が異なるため、映像の品質が悪化してしまう。
【0009】
例えば、境界部分における各信号の劣化程度のばらつきは、輝度信号によって形成された境界と、色差信号によって形成された境界とが個々の劣化によって一致せず、境界をまたいで色がにじむような現象等が発生しやすい。このような劣化は、特に高圧縮を目的とした符号化処理で顕著に発生してしまう。
【0010】
また、特許文献1に示されている補正処理は、信号の急激な変化を鈍らせる処理であり、輝度信号と色差信号の各信号間で独立に処理が行われる。つまり、上述した補正処理は、輝度信号と、色差信号とが個々にフィルター処理を行うものであり、輝度信号と色差信号とを統合して処理を行うことはない。したがって、上述したように画像処理により個々の信号で異なる変化を生じてしまい、結果として画像が劣化するという問題が生じてしまう。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、高精度な信号の補正を実現するための信号補正装置、該信号補正装置を有する受信装置、及び信号補正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0013】
請求項1に記載された発明は、映像又は画像から得られる輝度信号及び2つの色差信号により前記映像又は画像の補正を行う信号補正装置において、前記輝度信号及び2つの色差信号を三原色値に変換する三原色値変換部と、前記三原色値を所定画素数分遅延させる遅延部と、前記遅延部により得られる三原色値から所定の画素の三原色値を予測する三原色値予測部と、前記三原色値予測部により得られる予測値と、前記三原色値変換部により得られる三原色値とを比較評価する比較評価部とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、映像又は画像に対して高精度な信号の補正を実現することができる。これにより、デジタル符号化方式において、基準とする1つの信号から他の2つの信号の品質を向上させることができる。
【0015】
請求項2に記載された発明は、前記三原色値予測部は、前記輝度信号及び2つの色差信号のうち、少なくとも1つの信号を基準として、基準信号の変化量から三原色空間上における前記所定の画素の三原色値を予測することを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、輝度及び2つの色差のうち少なくとも1つの軸と、三原色空間上における原点と三原色値とを通る直線との関係から所定の画素の三原色値を高精度に予測することができる。
【0017】
請求項3に記載された発明は、前記三原色値予測部は、前記輝度信号を基準として三原色値を予測し、前記比較評価部は、前記三原色値予測部により得られる前記三原色値に基づいて前記2つの色差信号を補正することを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、色差信号の品質を向上させることができる。特に、現在広く普及しているデジタル符号化方式による映像伝送方式において、ある程度の劣化が許容されている色差信号の品質を向上させることができる。
【0019】
請求項4に記載された発明は、前記比較評価部は、比較対象の画素間における輝度差分量に基づいて、前記予測値又は前記三原色値を出力することを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、通常の符号化方式で誤差が少なく符号化されている輝度信号の差分量に基づいて、輝度信号よりも誤差が大きく符号化されている色差信号を高精度に補正することができる。
【0021】
請求項5に記載された発明は、前記比較評価部は、最小弁別閾に基づいて許容誤差範囲を設定し、前記輝度差分量と前記許容誤差範囲とを比較して、前記許容誤差範囲内である場合に前記予測値を出力することを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、三原色比の変化が少なくなるように画素値を補正することができる。これにより、高精度な信号の補正を実現することができる。
【0023】
請求項6に記載された発明は、前記請求項1乃至前記請求項5の何れか1項に記載の信号補正装置を有する受信装置である。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、受信装置において、映像又は画像に対して高精度な信号の補正を実現することができる。これにより、デジタル符号化方式における色差信号の品質を向上させることができる。
【0025】
請求項7に記載された発明は、映像又は画像から得られる輝度信号及び2つの色差信号により前記映像又は画像の補正を行う信号補正処理をコンピュータに実行させるための信号補正プログラムにおいて、前記輝度信号及び2つの色差信号を三原色値に変換する三原色値変換処理と、前記三原色値を所定画素数分遅延させる遅延処理と、前記遅延処理により得られる三原色値から所定の画素の三原色値を予測する三原色値予測処理と、前記三原色値予測処理により得られる予測値と、前記三原色値変換処理により得られる三原色値とを比較評価する比較評価処理とをコンピュータに実行させる。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、映像又は画像に対して高精度な信号の補正を実現することができる。これにより、デジタル符号化方式において、基準とする1つの信号から他の2つの信号の品質を向上させることができる。また、実行プログラムをコンピュータにインストールすることにより、容易に本発明における信号補正処理を実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高精度な信号の補正を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<本発明の概要>
本発明は、輝度信号及び色差信号で表現される映像信号又は画像信号を三原色信号に変換し、三原色空間において、その統計的性質を利用し、三原色値を用いて補正を行う。
【0029】
具体的に説明すると、一般的に映像信号又は画像信号は、撮影機器において光を赤(R)、青(B)、緑(G)の三原色の強度を測定し、記録のために輝度信号(Y)及び2つの色差信号(C,C)の伝送用の三原色に変換される。なお、本発明では、三原色とは色の三原色R,G,Bのことをいう。また、一般的に自然画像では、統計的な性質として隣接する画素の画素値は非常に近いことが知られている(例えば、オーム社,「先端技術の手ほどきシリーズ 画像情報圧縮」,pp.75−77参照。)。なお、このような性質は、DPCM(Differential Pulse Code Modulation)や、MPEG等の符号化技術では積極的に利用されているが、輝度信号もしくは色差信号の個々の信号について利用されているのみである。
【0030】
ここで、上述した輝度信号及び色差信号は、三原色信号と1対1の対応関係であるため、同様の性質が三原色信号についてもいえる。したがって、本発明は、上述した隣接画素等の所定の画素の統計的性質を用いて輝度信号及び2つの色差信号を三原色信号に変換し、画素間の三原色比の変化が少なくなるように画素値を補正することによって映像信号又は画像信号を補正する。
【0031】
以下に、上述したような特徴を有する本発明における信号補正装置、該信号補正装置を有する受信装置、及び信号補正プログラムを好適に実施した形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、後述する信号補正装置においては、例えば通信ネットワーク等の伝送路を介して受信装置側で受信した符号化された映像信号又は画像信号を復号して得られる輝度信号及び色差信号(YC信号)の補正を行う信号補正装置について説明する。
【0032】
<実施例>
図1は、本発明における信号補正装置の一構成例を示す図である。図1に示す信号補正装置10は、YC−RGB変換部11と、遅延部12と、RGB予測部13と、比較評価部14とを有するよう構成されている。
【0033】
信号補正装置10は、YC信号をYC−RGB変換部11で入力する。YC−RGB変換部11は、入力したYC信号から画素毎に三原色(RGB)信号に変換する。
【0034】
なお、YC−RGB変換部11は、本発明により補正された最終的な映像や画像信号を表示装置の制約等に応じて、帯域拡張フィルター等により例えばYC信号の帯域を4:4:4に拡張してからRGB変換を行うようにしてもよい。
【0035】
これは、入力されるYC信号では、上述したように4:2:2や4:2:0等のフォーマット形式としていたが、RGB信号では、R,G,Bのそれぞれの信号にそれほど大きな差がないため、各信号成分の比率を均一にするためにYC信号の帯域を4:4:4フォーマットに拡張した後に変換を行う。これにより、RGB信号に高精度に変換することができる。
【0036】
なお、YC信号からRGB信号への変換手法は、特に限定されるものではないが、例えば、「ITR−U勧告.601/709」等、素材となる画像に応じて適切な変換方式を用いて変換を行う。また、YC−RGB変換部11は、変換されたRGB信号を遅延部12及び比較評価部14に出力する。
【0037】
遅延部12は、YC−RGB変換部11より得られるRGB信号における画素情報を所定の画素数分遅延する。なお、本実施例においては、遅延部12により1画素分遅延させているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、後述する比較評価部14において、どの画素間で比較評価を行うかにより所定画素数分の遅延を行う。つまり、遅延部12は、少なくとも1画素分の遅延を行う。また、遅延部12は、遅延させた画素情報をRGB予測部13に出力する。
【0038】
RGB予測部13は、遅延部12により得られる画素毎のRGB信号に基づいて所定の画素(本実施例においては、隣接画素)のRGB値を予測する。なお、RGB値の具体的な予測例については後述する。RGB予測部13は、予測したRGB値を比較評価部14に出力する。比較評価部14は、RGB予測部13により得られるRGB値とYC−RGB変換部11により得られる実際のRGB値(三原色値)とを用いて比較評価し信号の補正を行う。なお、本実施例では、遅延部12により1画素分遅延しているため、比較評価部14により評価される画素は、予測値の算出に用いられた画素よりも1画素分後の画素、つまり水平隣接画素の三原色値となる。
【0039】
また、比較評価部14は、比較評価した結果、RGB予測部13により得られる予測したRGB値(予測値)、又は実際のRGB値(三原色値)の何れか一方を出力する。
【0040】
<RGB値の具体的な予測例>
次に、上述したRGB予測部13におけるRGB値の予測例について、具体的に説明する。図2は、RGB空間上の画素値と輝度軸との関係の一例を示す図である。また、図3は、RGB空間上の画素値の変化量を説明するための一例の図である。
【0041】
まず、YC−RGB変換部11により入力された映像又は画像から得られる現在の画素におけるRGB値を(R,G,B)とする。ここで、比較対象となる隣接画素のRGB値は、図2においてRGB空間上の原点(0,0,0)及び上述した(R,G,B)の2点を通る直線l上もしくは直線lの近くに位置すると予測できる。ここで、上述した直線lは、以下に示す(1)式(直線の方程式)によって表現される。
【0042】
【数1】

なお、(1)式において、tは媒体変数を示す。
【0043】
一方、図2において、輝度信号であるY軸は、RGB空間上では、従来の規格(例えば、標準テレビ放送用の規格[BT.601],ハイビジョン放送用の規格[BT.709])に基づく方向ベクトルv=(1,1,1)の直線であり、原点(0,0,0)を通る直線である。
【0044】
ところで、上述したように隣接画素は略同じ色を有し、RGB値の各成分比は略等しく、また輝度信号は色差信号より多くの原画信号の性質を残す傾向がある。また、上述したように輝度信号Yは、色差信号C、Cと比較して視覚上の影響が大きい。以上のことから、YC軸の三次元空間上におけるY軸を基準として、隣接画素のRGB値を予測する。
【0045】
つまり、図3に示すように、色差は直線l上で変化するものとし(色差の変化量δc)、輝度信号Y軸のRGB空間上での方向ベクトルをvとおくと、予測されるRGB値(予測値)(R’,G’,B’)は、以下に示す(2)式のように推定することができる。
【0046】
【数2】

ここで、δyは輝度の変化量を示し、y+δyは予測の対象画像の輝度に等しい。
【0047】
RGB予測部13では、上述した(2)式により予測値(R’,G’,B’)を算出し、算出したRGB値を比較評価部14に出力する。また、比較評価部14は、実際の三原色値(復号値)(R,G,B)と予測値(R’,G’,B’)とを用いて、その正当性を評価する。
【0048】
<比較評価部14:評価手法>
次に、上述した比較評価部14における評価手法について説明する。比較評価部14は、YC−RGB変換部11により得られる実際の三原色値(R,G,B)と、RGB予測部13から得られる予測値(R’,G’,B’)とに基づいて正当性を評価する。
【0049】
具体的には、例えば、以下に示す(3)式等を用いて正当性を評価し、予測値(R’,G’,B’)又は実際の三原色値(R,G,B)の何れか一方の値を出力する。
【0050】
【数3】

ここで、上述した(3)式において、Kは予め設定される閾値である。なお、Kの値は任意に設定することができるが、より画像データに対応して正確にKの値を求める場合、例えばJND(Just Noticeable Difference:最小弁別閾)によって求められる閾値を利用することもできる。つまり、JNDは、心理学上、色等の同種の刺激を変化させたとき、その相違を感知できる最小の刺激差を示すものであり、最小可知差異、丁度可知差異ともいわれる。また、閾値Kは、人によって感知できる最小の輝度差が異なるため、例えば平均値を設定してもよい。
【0051】
つまり、比較評価部14は、上述した(3)式に示すように、赤、青、黄のそれぞれの原色の差分(R’−R,G’−G,B’−B)により得られる画像情報が、その相違が感知できるほどである場合には、三原色値(R,G,B)を出力し、相違が感知できない程度のものであれば、予測値(R’,G’,B’)を出力する。
【0052】
上述したように本実施例に示す信号補正装置により、高精度に映像信号又は画像信号を補正することができる。これにより、デジタル符号化方式において、基準とする1つの信号から他の2つの信号の品質を向上させることができる。
【0053】
なお、上述した実施例では、輝度信号(Y信号)を基準としてRGBへの変換を行っているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、色差信号のCb又はCrを基準にしてもよい。また、Y,C,Cのうち複数を基準としてもよい。
【0054】
例えば、Y、C、Cの各信号のうち、画素間の差が大きい信号を基準とすることもできる。なお、一般的に色差信号C,Cは、輝度信号Yと比較してあまり変化が見られない比較的なだらかな画素であるため、C信号,C信号に所定の係数を付加してY信号と調整して比較を行うことが好ましい。更に、Y、C、Cのそれぞれを基準として比較評価を行い、例えばその中で変化量が最も少なかった値(理想とする直線に最も近づいた値)を出力するといった処理を行ってもよい。
【0055】
<他の実施例>
ここで、上述した実施例では、水平隣接間における画素を補正する例について示しているが、本発明における補正手法についてはこれに限定されるものではない。例えば、1つの画素に対して水平、垂直に隣接する4近傍画素を用いて比較評価を行ってもよい。また、1つの画素に対して周囲8方向で隣接する8近傍画素を用いて比較評価を行ってもよい。
【0056】
なお、上述したように4近傍又は8近傍で画素の補正を行う場合には、例えばそれぞれ4つ又は8つの対応する隣接画素の予測値を算出した後、その予測値の加重平均値を求め、その平均値と実際の三原色値とにおいて比較評価を行うようにしてもよい。また、それぞれの予測値と実際の三原色値との比較評価を行い、評価結果で多かった方の値(同数の場合は、予め設定した方の値)を出力するようにしてもよい。
【0057】
<受信装置>
なお、上述した本発明における信号補正装置10は、例えば受信装置に設けることができる。これにより、本発明を受信装置の復号処理の後段に構成することで、色差信号の品質の向上が行うことができ、最終的な復号信号の品質向上を実現することができる。ここで、本発明における信号補正装置を有する受信装置の構成例について図を用いて説明する。
【0058】
図4は、本発明における信号補正装置を有する受信装置の一構成例を示す図である。なお、以下に示す受信装置の受信形態としては、一例としてMPEG2の符号化方式からなる映像信号が無線伝送され、その信号を受信して信号を受信者に提供するための形態を示すが、本発明における受信形態はこれに限定されるものではない。
【0059】
図4に示す受信装置20は、受信アンテナ21と、低雑音増幅器22と、周波数変換部23と、復調部24と、MPEG2デコーダ25と、信号補正装置26とを有するように構成されている。また、受信装置20は、表示装置であるモニタ27と接続されている。
【0060】
まず、受信装置20は、送信側から送信された映像信号の電波を受信アンテナ21で受信する。受信アンテナ21は、受信した信号を低雑音増幅器22に出力する。低雑音増幅器22は、受信アンテナ21により得られる信号の伝送減衰等を増幅して周波数変換部23に出力する。周波数変換部23は、低雑音増幅器22より得られる信号を周波数変換(ダウンコンバート)して復調部24に出力する。また、復調部24は、周波数変換部23より得られるデジタル変調信号を復調してMPEG2デコーダ25に出力する。
【0061】
MPEG2デコーダ25は、復調部24から得られる復調後のデジタル信号をデコードし、復号信号を信号補正装置26に出力する。信号補正装置26は、上述したように入力された信号の補正を行い、補正された映像信号をモニタ27に出力する。モニタ27は、信号補正装置26により補正された映像等を表示する。これにより、ユーザは、本発明における信号補正装置により補正され、画質が向上した画像を視聴することができる。
【0062】
なお、本発明における信号補正装置は、上述した受信装置に限定されるものではなく、画像処理を行う装置等に設けられていてもよい。
【0063】
<信号補正プログラム>
ここで、本発明における信号補正装置は、上述した専用の装置構成等を用いて本発明における信号補正処理を行うこともできるが、各構成における処理をコンピュータに実行させることができる実行プログラムを生成し、例えば、汎用のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等にそのプログラムをインストールすることにより、本発明に係る信号補正処理を実現することができる。
【0064】
<ハードウェア構成>
ここで、本発明における信号補正処理が実行可能なコンピュータのハードウェア構成例について図を用いて説明する。図5は、本発明における信号補正処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
【0065】
図5におけるコンピュータ本体には、入力装置31と、出力装置32と、ドライブ装置33と、補助記憶装置34と、メモリ装置35と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)36と、ネットワーク接続装置37とを有するよう構成されており、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0066】
入力装置31は、ユーザが操作するキーボード及びマウス等のポインティングデバイスを有しており、ユーザからのプログラムの実行指示等、各種操作信号を入力する。出力装置32は、本発明における処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するモニタを有し、CPU36が有する制御プログラムにより実行経過や結果等を表示することができる。
【0067】
ここで、本発明において、コンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えば、CD−ROM等の記録媒体38等により提供される。プログラムを記録した記録媒体38は、ドライブ装置33にセット可能であり、記録媒体38に含まれる実行プログラムが、記録媒体38からドライブ装置33を介して補助記憶装置34にインストールされる。
【0068】
また、ドライブ装置33は、本発明に係る実行プログラムを記録媒体38に記録することができる。これにより、その記録媒体38を用いて、他の複数のコンピュータに容易にインストールすることができ、容易に信号補正処理を実現することができる。
【0069】
補助記憶装置34は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本発明における実行プログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム等を蓄積し必要に応じて入出力を行うことができる。
【0070】
CPU36は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ装置35により読み出され格納されている実行プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して、信号補正処理における各処理を実現することができる。また、プログラムの実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置34から取得することができ、また格納することもできる。
【0071】
ネットワーク接続装置37は、電話回線やLAN(Local Area Network)ケーブル等の通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている他の端末等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本発明における実行プログラムを他の端末等に提供することができる。
【0072】
上述したようなハードウェア構成により、特別な装置構成を必要とせず、低コストで上述した信号補正処理を実現することができる。また、プログラムをインストールすることにより、容易に信号補正処理を実現することができる。
【0073】
次に、実行プログラムにおける処理手順についてフローチャートを用いて説明する。
【0074】
<信号補正処理>
図6は、本発明における信号補正処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、後述する処理手順は、すでに符号化信号を復号した信号の補正部分のみを示したものである。また、後述する処理手順は、水平隣接画素の比較により信号の補正を行う例を示すものであるが、本発明における評価対象画素はこれに限定されるものではなく、例えば上述したように4近傍や8近傍画素を用いた比較評価を行ってもよい。
【0075】
まず、YC信号における画素を入力し(S01)、入力した画素をRGBに変換する(S02)。また、水平隣接画素間における予測値と実際の三原色値との比較評価を行うため、RGB変換された三原色値を1画素分遅延させる(S03)。
【0076】
次に、S03により遅延された三原色値に基づいて隣接する次の画素のRGB値を予測する(S04)。なお、予測手法としては、例えば上述した予測例等を用いることができる。
【0077】
次に、S04の処理により得られる予測値と、S02の処理により得られる次の画素の実際の三原色値とで比較評価を行う(S05)。ここで、比較評価の結果、予測値と、三原色値との差が許容誤差範囲内であるか否かを判断し(S06)、許容誤差範囲内である場合(S06において,YES)は、予測値を出力する(S07)。
【0078】
また、予測値と、三原色値との差が許容誤差範囲内でない場合(S06において、NO)は、S02で変換した実際の三原色値を出力する(S08)。
【0079】
次に、S07又はS08の処理が終了後、信号補正を終了するかを判断し(S09)、まだ信号補正を行っていない映像信号が存在する等、信号補正を終了しない場合(S09において、NO)は、S01に戻り、対象となる入力された信号の補正を行う。また、信号補正を終了する場合(S09において、YES)は、信号補正処理を終了する。
【0080】
上述した信号補正処理をコンピュータに実行させる信号補正プログラムを生成し、コンピュータ等にインストールして実行することにより、高精度な信号の補正を実現することができる。これにより、デジタル符号化方式において、基準とする1つの信号から他の2つの信号の品質を向上させることができる。
【0081】
上述したように本発明によれば、映像又は画像に対して高精度な信号の補正を実現することができる。具体的には、非可逆な画像処理を施された映像信号を補正し、輝度信号と色差信号とで表現される映像信号を三原色信号に変換し、三原色信号の統計的性質を用いて輝度信号、色差信号を補正することができる。これにより、デジタル符号化方式において、基準とする1つの信号から他の2つの信号の品質を向上させることができる。
【0082】
特に符号化処理では、視覚感度の差から、輝度信号を正確に、色差信号を相対的に粗く符号化することによって総合的な復号品質の劣化を抑制する。そのため、輝度信号に比べて色差信号の劣化は大きくなり、信号間の精度に差が生じる。そこで、本発明では、画素の三原色値を輝度信号、色差信号により求め、隣接画素間の輝度差分量から隣接画素の三原色値の予測を行い、実際の隣接画素を変換して得られた三原色値と予測値を比較し、両者が許容誤差範囲であれば、予測値を補正値として出力することで、高精度な信号の補正を実現することができる。
【0083】
また、本発明における信号補正装置は、例えば受信装置の復号処理の後段に設けることにより,色差信号の品質の向上が行うことができ、最終的な復号信号の品質向上を実現することができる。
【0084】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明における信号補正装置の一構成例を示す図である。
【図2】RGB空間上の画素値と輝度軸との関係の一例を示す図である。
【図3】RGB空間上の画素値の変化量を説明するための一例の図である。
【図4】本発明における信号補正装置を有する受信装置の一構成例を示す図である。
【図5】本発明における信号補正処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
【図6】本発明における信号補正処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
10,26 信号補正装置
11 YC−RGB変換部
12 遅延部
13 RGB予測部
14 比較評価部
20 受信装置
21 受信アンテナ
22 低雑音増幅器
23 周波数変換部
24 復調部
25 MPEG2デコーダ
31 入力装置
32 出力装置
33 ドライブ装置
34 補助記憶装置
35 メモリ装置
36 CPU
37 ネットワーク接続装置
38 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像又は画像から得られる輝度信号及び2つの色差信号により前記映像又は画像の補正を行う信号補正装置において、
前記輝度信号及び2つの色差信号を三原色値に変換する三原色値変換部と、
前記三原色値を所定画素数分遅延させる遅延部と、
前記遅延部により得られる三原色値から所定の画素の三原色値を予測する三原色値予測部と、
前記三原色値予測部により得られる予測値と、前記三原色値変換部により得られる三原色値とを比較評価する比較評価部とを有することを特徴とする信号補正装置。
【請求項2】
前記三原色値予測部は、
前記輝度信号及び2つの色差信号のうち、少なくとも1つの信号を基準として、基準信号の変化量から三原色空間上における前記所定の画素の三原色値を予測することを特徴とする請求項1に記載の信号補正装置。
【請求項3】
前記三原色値予測部は、
前記輝度信号を基準として三原色値を予測し、
前記比較評価部は、
前記三原色値予測部により得られる三原色値に基づいて前記2つの色差信号を補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号補正装置。
【請求項4】
前記比較評価部は、
比較対象の画素間における輝度差分量に基づいて、前記予測値又は前記三原色値を出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の信号補正装置。
【請求項5】
前記比較評価部は、
最小弁別閾に基づいて許容誤差範囲を設定し、前記輝度差分量と前記許容誤差範囲とを比較して、前記許容誤差範囲内である場合に前記予測値を出力することを特徴とする請求項4に記載の信号補正装置。
【請求項6】
前記請求項1乃至前記請求項5の何れか1項に記載の信号補正装置を有する受信装置。
【請求項7】
映像又は画像から得られる輝度信号及び2つの色差信号により前記映像又は画像の補正を行う信号補正処理をコンピュータに実行させるための信号補正プログラムにおいて、
前記輝度信号及び2つの色差信号を三原色値に変換する三原色値変換処理と、
前記三原色値を所定画素数分遅延させる遅延処理と、
前記遅延処理により得られる三原色値から所定の画素の三原色値を予測する三原色値予測処理と、
前記三原色値予測処理により得られる予測値と、前記三原色値変換処理により得られる三原色値とを比較評価する比較評価処理とをコンピュータに実行させるための信号補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−325154(P2006−325154A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148627(P2005−148627)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】