説明

修飾された組換え第VIII因子およびフォンウィルブランド因子ならびにその使用方法

本発明は、in vivoで減少したクリアランスおよび増加した半減期を有するコンジュゲート化凝固タンパク質への当技術分野における必要性を満たす。本発明は、クリアランス受容体との相互作用を阻害することによって凝固タンパク質の残存を増加させる新規な方法を提供する。本発明はまた、凝固タンパク質クリアランス受容体を阻害する組成物を調製する方法も提供する。その組成物および製剤を含む、コンジュゲート化凝固タンパク質もまた、本発明によって提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2007年11月9日に出願したUSSN60/986,975に対する優先権を主張する。USSN60/986,975は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(連邦政府支援研究開発から創出された発明の権利に関する陳述)
なし
(コンパクトディスクで提出される表、またはコンピュータプログラムリスト付録である、「配列表」への言及。)
なし
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
止血は様々な止血反応経路の相互作用を含み、最終的に血栓の形成をもたらす。血栓は、主に凝集した血小板および不溶性の架橋化フィブリンからなる、血管壁表面への血液成分の堆積物である。フィブリン形成は、凝固酵素であるトロンビンによるフィブリノゲンの制限されたタンパク質分解の結果である。トロンビンは、活性化された血小板および白血球ならびに様々な血管細胞の表面で起こる一連の酵素前駆体の活性化、凝固カスケードの最終生成物である(概論に関しては、非特許文献1を参照されたい)。
【0004】
凝固カスケードにおける重要な機能は、活性化第IX因子(第IXa因子)および活性化第VIII因子(第VIIIa因子)の複合体による第X因子の活性化にある。この複合体の成分の欠乏または機能低下は、血友病として公知である血液疾患に関与している(非特許文献2)。血友病Aは第VIII因子活性の欠乏に関連しており、一方、血友病Bは第IX因子の欠乏に関連している。現在の治療は、正常な凝固因子を含む医薬製剤を使用した補充療法からなる。これらの血小板症のうち、血友病Aがより頻繁に起こり、男性10000人のうち約1人が罹患する。血友病A患者における補充療法は、静脈内注入による正常な第VIII因子を含有する製剤の反復投与を含む。注入の間隔は、血液循環における第VIII因子活性の低下の関数である。注入後の第VIII因子活性の半減期は、個体によって10〜30時間まで異なる。したがって、予防的療法は2〜3日おきの注入を必要とする。このことは、特に、静脈内注入のための頻繁な針穿刺後の局所的止血のために静脈アクセスが困難となった場合、血友病患者の生活の重い負担となる。
【0005】
半減期の長い第VIII因子を使用することによって注入の頻度を下げることができれば、特に有利であるだろう。第VIII因子の半減期は、例えば、当該のクリアランス受容体に対する(1つまたは複数の)結合部位上において第VIII因子を修飾することによって直接的に、またはそれらの受容体と第VIII因子の相互作用を妨害する化合物を使用することによって間接的に、そのクリアランスに不可欠な受容体に対する第VIII因子の親和性を減少させることによって、第VIII因子分解(クリアランス)の機構を妨害することによって延長することができる。しかしながら、第VIII因子クリアランス機構、このプロセスに関わる細胞受容体、および第VIII因子受容体相互作用に関わる分子部位が不明であることから、このような作用物質の設計はこれまで妨げられてきた。
【0006】
第VIII因子のクリアランス機構に関する分子領域における知見は限られている。第VIII因子タンパク質は、2332個のアミノ酸を含み、典型的なドメイン構造A1−A2−B−A3−C1−C2を有する一本鎖ポリペプチドとして合成される(非特許文献3;非特許文献4)。第VIII因子は、細胞内エンドプロテアーゼによるプロセシングの結果として、重鎖および軽鎖のヘテロ二量体複合体として血液循環に入る。軽鎖は、アミノ酸残基1649〜2332からなり、A3−C1−C2ドメインを含む。重鎖は、ドメインA1−A2−B(残基1〜1648)を含み、Bドメイン内の複数の位置における限定タンパク質分解のために不均一である。第VIII因子ヘテロ二量体は生物学的活性を有さないが、ヘテロ二量体は、トロンビンまたは第Xa因子のタンパク質分解による活性化後に、酵素第IXa因子の補因子として活性になる。タンパク質分解は、第VIII因子の重鎖および軽鎖の両方に影響を及ぼし(非特許文献5)、軽鎖のアミノ末端断片の切断および重鎖内のドメイン連結部位の開裂(ドメインA1−A2およびA2−Bの間)をもたらす。活性型補因子、第VIIIa因子は、A1ドメイン、A2ドメインおよびドメインA3−C1−C2を含む軽鎖からなるヘテロ三量体である。
【0007】
非活性型第VIII因子ヘテロ二量体の半減期は、(第VIIIa因子ではなく)第VIII因子に対する強い親和性を示し、キャリアタンパク質として働くフォンウィルブランド因子の存在に強く依存することが当技術分野において周知である(非特許文献2)。血液循環中に検出可能なフォンウィルブランド因子を有さない3型フォンウィルブランド病に罹患している患者は、二次的な第VIII因子欠乏症にも罹患することが公知である。加えて、こうした患者に静脈内投与された第VIII因子の半減期は2〜4時間であり、これは血友病A患者において観察される10〜30時間よりも著しく短い。
【0008】
これらの発見から、第VIII因子は血液循環からの急速なクリアランスが起こり易く、このプロセスは、天然の担体であるフォンウィルブランド因子との複合体形成によってある程度まで阻害されることになる。それにもかかわらず、望ましくないことにその半減期は短いままである。
【0009】
最近、トロンビンによって活性化された第VIII因子が、低密度リポタンパク質受容体タンパク質(「LRP」)に結合することが速報において示された(非特許文献6)。この要約は、トロンビンによって活性化された第VIII因子断片の細胞吸収および分解を記載し、A2ドメインが、第VIIIa因子ヘテロ三量体の2つの別のサブユニットとは異なり、細胞結合LRPと相互作用することを報告している。著者らは、A2ドメインのLRPへの結合が、第VIIIa因子ヘテロ三量体におけるA2ドメインの緩い相互作用をさらに不安定にし、それにより第VIIIa因子活性を低下させるように調節することを示唆した。
【0010】
LRPは、様々なタンパク質のクリアランスに関わる受容体の1つであることが公知である。この分野においてLRPは、低密度リポタンパク質(LDL)受容体のファミリーに属するアルファ2−マクログロブリン受容体としても公知である。これは、非共有結合によって連結された2つのポリペプチド鎖であるアルファ鎖(515kd)およびベータ鎖(85kd)で構成される(概説については非特許文献7を参照されたい)。LRPは、リポタンパク質およびプロテイナーゼ異化のマルチリガンド受容体である。β鎖は、膜貫通ドメインおよびエンドサイトーシスに不可欠な短い細胞質尾部を含む。アルファ鎖は大きな細胞外ドメインとして機能し、3種類の繰り返し:上皮成長因子様ドメイン、Tyr−Trp−Thr−Asp(配列番号:1)配列およびLDL受容体クラスAドメインを含む。これらのクラスAドメインは、4つの分かれたクラスター、クラスターI(2ドメイン)、II(8ドメイン)、III(20ドメイン)およびIV(11ドメイン)に存在する。これらのクラスターが、リガンド結合に関与していることが示された。LRPは、胎盤、肺、脳および肝臓などの複数の組織において発現される。肝臓において、LRPは実質細胞およびクッパー細胞上に存在する。さらにLRPは、線維芽細胞、平滑筋細胞、ライディッヒ細胞、セルトリ細胞、および単球などの複数の細胞型において発現される。単球からマクロファージへの分化は、LRP発現の劇的な増加と関連している。最後に、LRPは、ともに第VIII因子を含む哺乳動物タンパク質を発現させるために頻繁に使用される(非特許文献8)サル腎細胞(COS)またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)などの細胞型においても発現される(非特許文献9)。
【0011】
LRPは、プロテアーゼ、クニッツ型インヒビター、プロテアーゼセルピン複合体、リパーゼおよびリポタンパク質を含む多様なリガンドのクリアランスに関わっており、このことは、LRPが様々な生理学的および病態生理学的なクリアランスプロセスにおいて極めて重要な役割を果たすことを示唆している(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。LRPの生理学的重要性は、LRPノックアウトマウスが胚形成期後に残存しないという発見に端を発する(非特許文献13)。LRP分泌は、LRPが多数のリガンドと相互作用することによって複雑化されることがある。しかしながら、細胞内でLRPは、そのシャペロンタンパク質、受容体結合タンパク質(RAP)と結合している。RAPに結合すると、LRPはその公知のリガンドのいずれとも相互作用することができない(非特許文献14)。
【0012】
LRPとその天然リガンドとの相互作用は、可溶性LRP断片によって効果的に遮断することができる。こうした断片は、組換え技術を含む様々な当技術分野において公知の方法によって得ることができ、したがって有効なLRPアンタゴニストへのアクセスを提供する(非特許文献15;非特許文献16)。
【0013】
プロテアーゼ、インヒビターおよびプロテアーゼインヒビター複合体のクリアランスにおけるLRPの典型的な役割を考慮すると、LRPは活性化された非酵素補因子第VIIIa因子にも結合することに注意するべきである(非特許文献6)。この開示は第VIIIa因子の調節におけるLRPの役割を示唆しているものの、非活性型ヘテロ二量体第VIII因子の調節における役割に関して、これは血液循環からの第VIII因子のクリアランス、したがって第VIII因子の半減期に関して興味深い可能性があるのだが、何の手掛かりも与えない。
【0014】
そのため、非特許文献17および特許文献1において、第VIII因子の重鎖ではなく軽鎖が、表面が露出したLRP1受容体タンパク質に結合することがさらに示された。さらなる実験により、LRP1結合活性に関与する軽鎖のC2およびA3−C1領域の両方において、いくつかのエキソサイトの特定につながった。これにより、この領域の特定の突然変異がタンパク質間の相互作用を弱めるという発見につながった。
【0015】
フォンウィルブランド因子(vWF)は、約500〜20000kDの範囲の大きさの一連の多量体として血漿中を循環する糖タンパク質である。vWFの多量体形態は、ジスルフィド結合によって一緒に結合した250kDのポリペプチドサブユニットで構成される。vWFは、損傷した血管壁の内皮下への初期の血小板接着を仲介し、またより大きな多量体だけが止血活性を示す。多量体化したVWFは、血小板接着を促進するために、VWFのA1ドメインにおける相互作用によって血小板表面糖タンパク質Gp1bαに結合する。内皮細胞は大きいポリマー形態のvWFを分泌し、低分子量を有するこうした形態のvWF(低分子量vWF)はタンパク質分解による切断から生じることが推定される。大きい分子量を有する多量体は、内皮細胞のバイベル−パラーデ小体中に蓄積され、刺激されると遊離する。vWFの完全長cDNAがクローニングされた;プロポリペプチドは完全長プレプロvWFのアミノ酸残基23〜764に対応する(非特許文献18)。
【0016】
さらに、単量体vWFは、血漿中で第VIII因子(FVIII)の分子担体として機能し、凝固因子を安定化させる。vWFタンパク質レベルの減少またはFVIII結合親和性の低下によるFVIII結合活性の減少は、フォンウィルブランド病の3つの型のうちの1つを引き起こす。加えて、または代わりに、ある特定の型のフォンウィルブランド病は、Gp1bαを介した血小板結合レベルの、すなわち、2A、2B、および2M型の増加または減少によって特徴付けられる(非特許文献19に要約されている)。したがって、FVIIIおよびGp1bαの両方とのvWFの相互作用の調整は、血友病およびフォンウィルブランド病の両方の治療のために実行可能な戦略である。
【0017】
第VIII因子ポリペプチドの様々な領域における修飾を含む、第VIII因子の薬物動態プロファイルを向上させようと試みるいくつかの従来技術が存在した。
【0018】
特許文献2は、特定のプロテアーゼにより触媒される切断のための分子の不安定性を減少させる、アルギニンおよびリジン残基を含むタンパク質分解のインターフェース、例えば、Arg1721およびAla1722の間の第VIIIa因子インターフェースの様々な修飾を記載している。
【0019】
特許文献3、特許文献4および特許文献5は、重鎖のA2領域において修飾を有する第VIII因子誘導体を記載している。
【0020】
特許文献6は、修飾が分子の金属結合特性の改変を含む第VIII因子ポリペプチド類似体を開示している。
【0021】
特許文献7は、Arg残基に隣接する1つまたはいくつかのアミノ酸残基上に修飾が提供される第VIII:C因子ポリペプチド類似体を記載している。
【0022】
EP−0808901は、第VIII因子の少なくとも1つの免疫優勢領域中に少なくとも1つの突然変異を含む第VIII因子変異体の構築および第VIII因子インヒビターを用いた患者の治療におけるこれらの第VIII因子変異体の使用を記載している。こうした修飾は、in vivoでもin vitroでも、第VIII因子変異体の半減期の延長または安定性の向上をもたらさない。
【0023】
特許文献1は、in vitroでのLRP1に対する親和性の減少した突然変異第VIII因子変異体の構築を記載しており、これらのタンパク質変異体がin vivoで投与された場合に半減期が増加するであろうことをさらに示唆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第6919311号明細書
【特許文献2】国際公開第87/07144号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/18827号パンフレット
【特許文献4】国際公開第95/18828号パンフレット
【特許文献5】国際公開第95/18829号パンフレット
【特許文献6】国際公開第97/03193号パンフレット
【特許文献7】国際公開第97/03195号パンフレット
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】K. G. Mannら、Blood、1990年、76巻、1〜16頁
【非特許文献2】J. E. SadlerおよびE. W. Davie:Hemophilia A, Hemophilia B, and von Willebrand’s Disease、G. Stamatoyannopoulosら(編):The molecular basis of blood diseases. W.B. Saunders Co.、Philadelphia、1987年、576〜602頁
【非特許文献3】G. A. Veharら、Nature、312巻、1984年、337〜342頁
【非特許文献4】J. J. Tooleら、Nature、312巻、1984年、342〜347頁
【非特許文献5】M. J. S. H. Donathら、J. Biol. Chem.、270巻、1995年、3648〜3655頁
【非特許文献6】A. Yakhyaevら、Blood、第90巻(付録1)、1997年、126−I(要約)
【非特許文献7】D. K. Stricklandら、FASEB J 9巻、1995年、890〜898頁
【非特許文献8】R. J. Kaufmanら、Blood Coag. Fibrinol. 第8巻(付録2)、1997年、3〜14頁
【非特許文献9】D. J. FitzGeraldら、J. Cell Biol. 129巻、1995年、1533〜1541頁
【非特許文献10】Naritaら、Blood、2巻、555〜560頁、1998年
【非特許文献11】Orthら、Proc. Natl. Acad. Sci.、89巻、7422〜7426頁、1992年
【非特許文献12】Kounnasら、J. Biol. Chem.、271巻、6523〜6529頁、1996年
【非特許文献13】Herz, J. Curr. Opin. Lipidol 4巻、1993年、107〜113頁
【非特許文献14】Herzら、J. Biol. Chem.、266巻、21232〜21238頁、1991年
【非特許文献15】I. R. Horn, J. Biol. Chem.、272巻、1997年、13608〜13613頁
【非特許文献16】B. Vashら、Blood、92巻、1998年、3277〜3285頁
【非特許文献17】Lentigら(JBC 274巻(34号):23734〜9頁(1999年))
【非特許文献18】Eikenboomら(1995年)Haemophilia第1巻、77 90
【非特許文献19】Castamanら、Disorders of Hemostasis 第88巻(1):94〜108頁(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従来技術を考慮すると、第VIII因子またはフォンウィルブランド因子の化学的コンジュゲートが細胞のクリアランス受容体に対する修飾された結合親和性を示し、第VIII因子タンパク質のクリアランス率の減少、結果として第VIII因子の半減期の延長および安定性の向上をもたらすであろうと示唆する文献はない。本発明は、in vivoで減少したクリアランスおよび増加した半減期を有するコンジュゲート化凝固タンパク質への当技術分野における必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の簡単な説明)
本発明は、クリアランス受容体との相互作用を阻害することによって凝固タンパク質の残存を増加させる方法を提供する。一実施形態において、本発明の方法は、凝固タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程と、治療的有効量の、修飾された結合タンパク質を含む組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程とを含む。
【0028】
一実施形態において、本発明の修飾された凝固タンパク質は、凝固カスケードに関与するものから選択される。特定の実施形態において、凝固タンパク質は、第VIII因子(FVIII)またはフォンウィルブランド因子(VWF)であってもよい。一実施形態において、クリアランス受容体は、LFP受容体、vLDL受容体、LDL受容体関連タンパク質、メガリン受容体、およびマクロファージマンノース受容体のクラスから選択されてもよい。特定の実施形態において、クリアランス受容体はLRP1である。
【0029】
ある種の実施形態において、本発明の凝固タンパク質は、PEG、PEO、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、デンプン、ポリ炭水化物、ポリシアル酸などの水溶性ポリマーのコンジュゲーションによって修飾される。特定の実施形態において、水溶性ポリマーは、リンカーを介して凝固タンパク質にコンジュゲートされていてもよい。別の実施形態において、水溶性ポリマーは、タンパク質に直接結合されていてもよい。ある種の実施形態において、水溶性ポリマーは、凝固タンパク質に安定にコンジュゲートされていても、あるいは、切り離し可能なリンカーを介して凝固タンパク質にコンジュゲートされていてもよい。
【0030】
一実施形態において、本発明は、クリアランス受容体との相互作用を阻害することによって第VIII因子の残存を増加させる方法を提供する。ある種の実施形態において、この方法は、(a)第VIII因子の結合タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程と、(b)治療的有効量の、前記修飾された結合タンパク質を含む組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程とを含む。特定の実施形態において、結合タンパク質はフォンウィルブランド因子である。ある種の実施形態において、クリアランス受容体はLRP1である。特定の実施形態において、水溶性ポリマーは、PEG、PEO、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリ炭水化物、ポリシアル酸などから選択される。さらに別の実施形態において、第VIII因子とFVIII結合タンパク質の両方が水溶性ポリマーで修飾される。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、凝固タンパク質クリアランス受容体を阻害する組成物を調製する方法を提供する。ある種の実施形態において、この方法は、凝固タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程を含み、この修飾が、凝固タンパク質クリアランス受容体を阻害することによって哺乳動物の血液循環におけるタンパク質の残存を増加させる。本発明のある実施形態において、凝固タンパク質はFVIIIまたはVWFである。
【0032】
一実施形態において、本発明は、in vivoでクリアランス受容体への結合の減少を示し、増加した半減期を有する修飾された凝固タンパク質を提供する。ある種の実施形態において、本発明の凝固タンパク質は、水溶性ポリマーまたは炭水化物部分にコンジュゲートされる。一実施形態において、本発明の修飾された凝固タンパク質は、VWFおよびFVIIIから選択される。特定の実施形態において、本発明の修飾された凝固タンパク質は、血漿(血漿由来)VWFもしくはFVIII、組換えVWFもしくはFVIII、または生物学的に活性なVWFもしくはFVIII誘導体であってもよい。
【0033】
本発明は、in vivoで残存の増加した修飾凝固タンパク質を含む組成物であって、前記凝固タンパク質が水溶性ポリマーで修飾されている組成物もまた提供する。ある種の実施形態において、本発明の修飾された凝固タンパク質は、それらのクリアランス受容体に対して減少した結合親和性を有する。本発明はまた、血液凝固疾患の個体に投与するための修飾された凝固タンパク質の医薬製剤も提供する。ある種の実施形態において、本発明の医薬組成物は、修飾されたFVIII、修飾されたVWF、または両方を含む。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、血液凝固疾患の個体を治療する方法であって、修飾された凝固タンパク質を、それを必要とする患者に投与する工程を含み、前記凝固タンパク質がin vivoで増加した残存を有する方法を提供する。ある種の実施形態において、凝固タンパク質はFVIII、VWF、または両方である。別の実施形態において、凝固タンパク質は、PEG、PEO、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリ炭水化物、ポリシアル酸などの水溶性ポリマーで修飾される。一実施形態において、修飾された凝固タンパク質は、そのクリアランス受容体に対する減少した結合親和性を有する。特定の一実施形態において、クリアランス受容体はLRP1である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】固定化LRP1に対するwt−rFVIII(0〜50μg)の結合のSPR解析。
【図2】SPR解析によって決定された、固定化LRP1に対するwt−FVIIIの結合とhPEG化FVIIIの結合との比較。
【図3】SPR解析によって決定された、固定化LRP1に対するwt−FVIIIの結合とPSA−FVIIIの結合との比較。
【図4】SPR解析によって決定された、LRP1へのFVIII結合に対するvWFとPEG化vWFとの阻害性結合効果の比較。両方のvWF構築体について、同様の阻害がみられる。
【図5】SPR解析によって決定された、LRP1へのFVIII結合に対するvWFとPSA−vWFとの阻害性結合効果の比較。PSA−vWFは、FVIII−LRP1相互作用の妨害において、wt−vWFよりもわずかに効率が低いようである。
【図6】SPR解析によって決定された、ボトロセチンの存在下におけるGpIbαへのrVWF、天然VWFおよびコンジュゲート化VWFの結合の比較。GpIbαへのPEG化VWFの結合は約50%減少し、PSA−VWFはボトロセチン依存的なGpIbαへの結合能を実質的に欠く。
【図7】ナノボディAU/vWFa−11へのrVWF(wt)、天然VWF(NPP)、突然変異rVWF(2B)、およびコンジュゲート化VWFの結合の比較。ナノボディへのコンジュゲート化VWFの結合は、大幅に減少する。
【図8】血友病Aおよび3型フォンウィルブランド病に罹患している患者に投与された組換えFVIIIの生存アッセイ。投与されたrFVIIIは、おそらく前者における機能しうるvWFの存在によって、3型VWD患者と比較して血友病A患者において安定化されるようである。
【図9】VWFの計算された半減期および血友病A患者において投与されたrFVIIIの半減期の間の相関関係。38人の患者のうち33人において、VWFの半減期が投与されたrFVIIIの半減期以上であることに注意する。
【図10】in vivoでの遊離およびVWF−結合FVIII間の平衡の図。
【図11】固定化LRP1へのFVIII(0〜50μg)の結合のSPR解析。
【図12】固定化LRP1へのhPEG化FVIII(50μg)の結合のSPR解析。
【図13】(上パネル)SPR解析によって決定された、LRP1へのwt−rFVIIIおよびhPEG化rFVIIIの結合(0〜50μg)の比較。(下パネル)rFVIIIにコンジュゲートした加水分解性のPEG部分の化学構造。
【図14】固定化LRP1へのwt−rFVIIIおよびhPEG化rFVIIIの結合(50μg)を比較したSPRの結果。
【図15】(上パネル)SPR解析によって決定された、LRP1へのwt−rFVIIIおよびsPEG化rFVIIIの結合(0〜50μg)の比較。(下パネル)安定なrFVIIIにコンジュゲートしたPEG部分の化学構造。
【図16】トロンビン切断によって活性化されたwtおよびコンジュゲート化FVIIIタンパク質に関する平衡LRP1結合応答の比較。結果は、sPEG化FVIIIではなく、hPEG化FVIIIが、トロンビン活性化によってLRP1に結合するよう誘導されることを示す(バー7および8とバー3および4を比較)。
【図17】(上パネル)SPR解析によって決定された、LRP1へのFVIII結合に対するwt−VWFおよびsPEG化VWF(0〜100μg)の効果の比較。(中央パネル)安定なrFVIIIにコンジュゲートしたPEG部分の化学構造を示す図である。(下パネル)FVIII−LRP1結合に対するwt−VWFおよびsPEG−VWF効果についてIC50値を示す図である。
【図18】(上パネル)SPR解析によって決定された、LRP1へのFVIII結合に対するwt−VWFおよびhPEG化VWF(0〜100μg)の効果の比較。(中央パネル)rFVIIIにコンジュゲートされた加水分解性のPEG部分の化学構造を示す図である。(下パネル)FVIII−LRP1結合に対するwt−VWFおよびhPEG−VWFの効果についてIC50値を示す図である。
【図19】固定化ヘパリンへのwt−VWF、hPEG−VWF、およびsPEG−VWFの結合のSPR解析。
【図20】固定化されたwtおよびコンジュゲート化VWFへの、PMN静的接着の画像。
【図21】固定化LRP1へのFVIIIおよびsPEG−FVIIIの結合のSPR解析。
【図22】SPR解析によって決定された、固定化LRP1へのFVIIIおよびsPEG−FVIII(0〜150nM)の結合の比較。
【図23】固定化LRP1へのhPEG−FVIIIの結合のSPR解析。
【図24】固定化LRP1へのwtおよびコンジュゲート化VWFの結合のSPR解析。
【図25】SPR解析によって決定された、固定化LRP1へのwtおよびコンジュゲート化VWF(0〜1000nM)の結合の比較。
【図26】LRP1のクラスターIIへのwt−FVIIIおよびコンジュゲート化FVIIIの結合を比較したELISA実験の結果。
【図27】LRP1のクラスターIVへのwt−FVIIIおよびコンジュゲート化FVIIIの結合を比較したELISA実験の結果。
【図28】LRP1のクラスターIIへのwt−VWFおよびコンジュゲート化VWFの結合を比較したELISA実験の結果。
【図29】LRP1のクラスターIVへのwt−VWFおよびコンジュゲート化VWFの結合を比較したELISA実験の結果。
【図30a】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30b】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30c】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30d】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30e】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30f】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例を示す図である。
【図30g】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30h】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30i】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30j】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30k】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30l】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30m】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【図30n】本発明の凝固タンパク質とのコンジュゲーションによく適合する水溶性ポリマー部分の非限定的な例。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(発明の詳細な説明)
本発明は、クリアランス受容体との相互作用を阻害するまたは減少させることによって凝固タンパク質の残存または半減期を増加させる方法を提供する。一実施形態において、本発明の方法は、凝固タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程と、治療的有効量の、修飾された凝固因子を含む組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程とを含む。本発明により包含される凝固タンパク質は、凝固カスケードに関与する経路の調節に関与または加担するものを含む。
【0037】
本発明の凝固タンパク質は、プールされたヒト血漿などの内在性供給源から精製されてもよく、または組換え手段により製造されてもよい。一実施形態において、本発明の方法で修飾された凝固タンパク質は、第VIII因子(FVIII)およびフォンウィルブランド因子(VWF)から選択される。特定の実施形態において、凝固タンパク質は、組換え第VIII因子(rFVIII)および組換えフォンウィルブランド因子(rVWF)から選択される。
【0038】
FVIIIの1つの公知のクリアランス受容体は、LRP1である。ある種の実施形態において、本発明は、LRP1に対するFVIIIの結合親和性を阻害するまたは減少させることによってFVIIIの残存または半減期を増加させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、治療的有効量の、LRP1に対する減少した結合親和性を有する修飾またはコンジュゲートされたFVIII分子を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む。特定の実施形態において、修飾されたFVIIIは、VWFと同時にまたは予備形成されたFVIII/VWF複合体において投与されてもよい。
【0039】
関連する実施形態において、本発明の方法は、(a)凝固タンパク質の結合タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程と、(b)治療的有効量の、前記修飾された結合タンパク質を含む組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程とを含む。一実施形態において、FVIIIとクリアランス受容体LRP1の間の相互作用は、修飾されたVWFタンパク質を哺乳動物に投与することによって阻害される。ある種の実施形態において、修飾されたVWFは、FVIIIと同時にまたは予備形成されたFVIII/VWF複合体において投与される。さらに別の実施形態において、FVIIIおよびVWFの両方が修飾される。
【0040】
本発明は、凝固タンパク質およびクリアランス受容体間の相互作用を阻害する組成物を調製する方法もまた提供する。ある種の実施形態において、本方法は凝固タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程を含み、凝固タンパク質クリアランス受容体を阻害することによって、この修飾が哺乳動物の血液循環におけるタンパク質の残存を増加させる。特定の実施形態において、凝固タンパク質組成物は、FVIII、VWFまたは予備形成されたFVIII/VWF複合体を含む。
【0041】
一実施形態において、本発明は、in vivoでそのクリアランス受容体への結合の減少を示し、増加した半減期を有する、修飾またはコンジュゲートされた凝固タンパク質もまた提供する。別の実施形態において、本発明は、それを必要とする哺乳動物に投与するための、修飾またはコンジュゲートされた凝固タンパク質の医薬製剤を提供する。特定の実施形態において、この製剤は、修飾されたFVIII、VWF、または予備形成されたFVIII/VWF複合体を含む。
【0042】
別の実施形態において、本発明は、血液凝固疾患の個体を治療する方法であって、修飾された凝固タンパク質を、それを必要とする患者に投与する工程を含み、前記凝固タンパク質がin vivoで増加した残存を有する方法を提供する。本発明の方法は、本明細書に提示されている修飾された凝固タンパク質、その組成物、または製剤のいずれかによって実施することができる。特定の実施形態において、凝固疾患は、血友病またはフォンウィルブランド病である。
【0043】
一実施形態において、本発明は、修飾されたVWFを個体に投与することによって、FVIIIの欠乏により特徴付けられる疾患に罹患している個体を治療する方法であって、前記VWFが水溶性ポリマーにコンジュゲートされている方法を提供する。ある種の実施形態において、本方法は、FVIIIを個体に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、FVIIIもまた水溶性ポリマーによって修飾されていてもよい。別の実施形態において、FVIIIは水溶性ポリマーによって修飾されていない。特定の実施形態において、患者は、VWFが水溶性ポリマーにコンジュゲートされている、予備形成されたVWF/FVIII複合体を投与される。ある種の実施形態において、疾患は、血友病またはフォンウィルブランド病であってもよい。
【0044】
定義
本明細書において使用される場合、「凝固タンパク質」は、凝固カスケードの経路において機能し、または調節的な役割を有し、フィブリン分子の架橋をもたらすタンパク質を指す。本発明に包含される凝固タンパク質は、例えば、組織因子もしくは外因系凝固経路、接触活性化もしくは内因系経路、または最終共通凝固経路に関与していても、またはこれらを調節してもよい。凝固タンパク質の非限定的な例は、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、第IIa因子(トロンビン)、第III因子(組織因子)、第V因子、第VI因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、VWF、プレカリクレイン、高分子キニノゲン(HMWK)、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ−依存性プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノゲン、アルファ2−抗プラスミン、組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1(PAI1)、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター−2(PAI2)、癌凝血原などを含む。本発明の凝固タンパク質は、完全長タンパク質、ならびに成熟ポリペプチド、活性型ポリペプチド、前駆体ポリペプチド、部分的にタンパク質分解されたポリペプチドなどを含む。本発明の凝固タンパク質は、選択的にスプライスされた形態、保存的に修飾されたタンパク質、実質的に同一のタンパク質、相同体などを含むことが理解される。
【0045】
本明細書において使用される場合、「クリアランス受容体」は、凝固タンパク質に結合し、これを個体の血液または血漿から除去し、それにより所与の凝固タンパク質の有効濃度を減少させる、タンパク質のクラスを指す。一般に、クリアランス受容体は、少なくとも細胞外ドメインおよび膜付着ドメインを含む膜タンパク質である。ある種の実施形態において、膜タンパク質は、膜貫通タンパク質、内在性膜タンパク質、または表在性膜タンパク質であってもよい。本発明に包含される例示的なクリアランス受容体は、LFP受容体、vLDL受容体、LDL受容体関連タンパク質、メガリン受容体、およびマクロファージマンノース受容体を含む。例えば、LRP1は、in vivoで第VIII因子に結合し、これを除去する。当業者は、本発明における使用によく適合する多くのクリアランス受容体を知っているであろう。
【0046】
用語「水溶性」は、水においてある程度の検出可能な溶解度を有する部分を指す。水溶性を検出および/または定量化する方法は、当技術分野において周知である。例示的な水溶性ポリマーは、ペプチド、糖、ポリ(ビニル)、ポリ(エーテル)、ポリ(アミン)、ポリ(カルボン酸)などを含む。ペプチドは、混合配列を有する、または単一のアミノ酸、例えば、ポリ(リジン)で構成することができる。例示的な多糖は、ポリ(シアル酸)またはヒドロキシルエチルデンプンである。例示的なポリ(エーテル)は、ポリ(エチレングリコール)、例えば、m−PEGである。ポリ(エチレンイミン)は例示的なポリアミンであり、ポリ(アクリル)酸は代表的なポリ(カルボン酸)である。本発明における使用に適切な別の水溶性ポリマーは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのポリアルキレン、ならびにポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(プルロニック);ポリメタクリレート;およびカルボマーを含む。当業者は、本発明における使用によく適合する別の水溶性ポリマーについて知っているであろう。
【0047】
水溶性ポリマーのポリマー骨格は、ポリ(エチレングリコール)(すなわち、PEG)とすることができる。しかしながら、別の関連するポリマーもまた、本発明の実施における使用に適すること、およびこの点において用語PEGまたはポリ(エチレングリコール)の使用は包含的であって排他的ではないことを意図するものであることが理解されるべきである。用語PEGは、アルコキシPEG、二官能性PEG、多分岐PEG、フォーク状PEG、分岐PEG、ペンダントPEG(すなわち、ポリマー骨格にぶら下がった1つまたは複数の官能基を有するPEGまたは関連ポリマー)、または中に分解可能な結合を有するPEGを含むその形態のいずれかにおけるポリ(エチレングリコール)を含む。
【0048】
ポリマー骨格は、直鎖状または分岐状とすることができる。分岐状ポリマー骨格は、当技術分野において一般に公知である。典型的には、分岐状ポリマーは、中心分岐コア部分、およびこの中心分岐コアに結合した複数の直鎖状ポリマー鎖を有する。PEGは、グリセロール、ペンタエリスリトールおよびソルビトールなどの様々なポリオールにエチレンオキシドを付加することによって調製することができる、分岐状形態においてよく使用される。中心分岐部分もまた、リジンなどのいくつかのアミノ酸から得ることができる。分岐状ポリ(エチレングリコール)は、式中、Rがグリセロールまたはペンタエリスリトールなどのコア部分を表し、mがアームの数を表す、R(−PEG−OH)の一般式で表すことができる。その全体が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5,932,462号に記載されているものなどの多分岐PEG分子もまた、ポリマー骨格として使用することができる。
【0049】
多くの他のポリマーもまた、本発明に適する。2〜約300個の末端を有する水溶性非ペプチドポリマー骨格は、本発明において特に有用である。適切なポリマーの例は、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)などの別のポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィン酸アルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、その全体が参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5629384号に記載されているものなどのポリ(N−アクリロイルモルホリン)、およびコポリマー、ターポリマー、ならびにこれらの混合物を含むがこれらに限定されるものではない。ポリマー骨格の各鎖の分子量は異なっていてもよく、典型的には約100Da〜約100,000Da、しばしば約6,000Da〜約80,000Daの範囲である。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「糖コンジュゲーション」は、ポリペプチド、例えば、本発明の凝固タンパク質のアミノ酸またはグリコシル残基への、酵素により仲介される修飾された糖部分のコンジュゲーションを指す。「糖コンジュゲーション」の亜属は、修飾された糖の修飾基がポリ(エチレングリコール)、およびそのアルキル誘導体(例えば、m−PEG)または反応性誘導体(例えば、H2N−PEG、HOOC−PEG)である、「グリコール−PEG化」である。
【0051】
用語「グリコシル結合基」は、本明細書において使用される場合、修飾基(例えば、PEG部分または別の水溶性ポリマー)が共有結合しているグリコシル残基を指し、グリコシル結合基はコンジュゲートの残部に修飾基を連結する。本発明の方法において、「グリコシル結合基」は、グリコシル化または非グリコシル化凝固タンパク質に共有結合し、それによりペプチド上のアミノ酸および/またはグリコシル残基に作用物質を結合させる。「グリコシル結合基」は一般に、凝固タンパク質のアミノ酸および/またはグリコシル残基へ「修飾された糖」を酵素により結合することによって、「修飾された糖」から得られる。グリコシル結合基は、修飾基−修飾糖カセットの形成(例えば、酸化シッフ塩基形成還元)中に分解される糖由来の構造とすることができ、またはグリコシル結合基はインタクトであってもよい。「インタクトなグリコシル結合基」は、修飾基を結合させコンジュゲートの残部に結合する糖モノマーが分解されない、例えば、メタ過ヨウ素酸ナトリウムによって、例えば、酸化された、グリコシル部分に由来する結合基を指す。本発明の「インタクトなグリコシル結合基」は、グリコシル単位(複数可)の付加または親糖構造からの1つまたは複数のグリコシル単位の除去によって、天然起源のオリゴ糖から得られてもよい。
【0052】
「生理学的に切断可能な」ならびに「加水分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解される)比較的弱い結合である。結合が水中で加水分解する傾向は、2つの中心原子を連結している結合の一般的なタイプだけでなく、これらの中心原子に結合された置換基にも依存する。例示的な加水分解可能な結合は、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、およびオルトエステルを含むがこれらに限定されるものではない。
【0053】
「切り離し可能な結合(releasable linkage)」、または「加水分解可能な結合(hydrolysable linkage)」、または「切り離し可能な結合(releasable linkage)」は、生理学的に切断可能な結合(bond)、加水分解可能な結合(bond)、および酵素により分解可能な結合(linkage)を含むがこれらに限定されるものではない。したがって、「切り離し可能な結合(releasable linkage)」は、生理学的条件下で加水分解または他の何らかの(例えば、酵素を触媒とする、酸を触媒とする、塩基を触媒とする、などの)機構による切断を受けうる結合(linkage)である。例えば、「切り離し可能な結合(releasable linkage)」は、駆動力としてプロトン(例えば、イオン化可能な水素原子、Hα)を塩基で抽出する脱離反応を含むことができる。本明細書における目的のため、「切り離し可能な結合(releasable linkage)」は「分解可能な結合(degradable linkage)」と同義である。したがって、切り離し可能な部分は、生理学的および/または実験室条件下で切り離し可能な、分解可能な、または除去もしくは切断可能な、したがって、例えば、コンジュゲーション部分に結合されたタンパク質、または保護基から水溶性ポリマーを遊離する、1つまたは複数の基(例えば、リンカー)を有する。
【0054】
「酵素により切り離し可能な結合」は、1つまたは複数の酵素による分解を受ける結合を意味する。
【0055】
「加水分解に安定な」結合(linkage)または結合(bond)は、水中で実質的に安定な、換言すると、生理学的条件下で長期間にわたって感知可能な程度の加水分解を受けない化学結合、典型的には共有結合を指す。加水分解に安定な結合の例は、以下のものを含むがこれらに限定されるものではない:炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖において)、エーテル、アミドなど。一般に、加水分解に安定な結合は、生理学的条件下で1日当たり約1〜5%未満の加水分解率を示す結合である。
【0056】
本明細書において使用される場合、受容体に対する「減少した結合親和性」を有するタンパク質は、特定の受容体との相互作用が部分的にまたは完全に阻害、低下、減少または下方制御された修飾または組換えタンパク質を指す。本発明との関連において、修飾または組換え凝固タンパク質は、低い親和性で結合する、または全く結合しない場合、そのクリアランス受容体との相互作用を阻害するといわれる。凝固タンパク質の結合減少は、クリアランス受容体との相互作用において約5%〜約100%またはそれより大きい減少であってもよい。例えば、減少は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、またはそれより大きくてもよい。同様に、修飾または組換え凝固タンパク質およびクリアランス受容体間の結合阻害は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%の相互作用の阻害であってもよい。ある種の実施形態において、減少した相互作用は、野生型凝固タンパク質およびクリアランス受容体間の相互作用と比較して約1倍〜約10倍減少した、例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれより減少した結合であってもよい。別の実施形態において、減少した相互作用は、野生型タンパク質と比較して約10倍〜約10倍減少した、例えば10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、またはそれより減少したものであってもよい。相互作用の親和性を測定する定量的手段は、当技術分野において周知であり、表面プラズモン共鳴(SPR)解析、等温滴定熱量測定、親和性クロマトグラフィー、蛍光偏光(FP)、および異方性(FA)アッセイなどを含むがこれらに限定されるものではない。
【0057】
本明細書において使用される場合、「コンジュゲーション部分」は、本発明のような凝固タンパク質などのタンパク質に共有結合した水溶性ポリマーを含む化学構造を指す。コンジュゲーション部分は、1つまたは複数の結合基ならびに1つまたは複数の分岐基をさらに含んでもよい。
【0058】
本明細書において使用される場合、「治療」は、治療される個体または状態、例えば、血友病またはフォンウィルブランド病などの血液凝固障害の自然経過を変更しようとする目的の臨床的介入を指し、予防のためにまたは臨床病理の経過中に行われてもよい。望ましい効果は、疾患の症状の発症または再発の予防、症状緩和、疾患の何らかの直接的または間接的な病理学的結果の減少、疾患進行速度の低減、病態の改善または一時的緩和、および寛解または予後改善を含む。
【0059】
「有効量」または「治療的有効量」は、例えば、血友病、フォンウィルブランド病、または関連する凝固疾患などの病態の治療において、有益なまたは所望の臨床結果をもたらすために十分な量である。疾患の対象の臨床反応に関して、有効量は、疾患を一時的緩和、改善、安定化、後退、または進行抑制する、あるいはそうでなければ疾患の病理学的結果を減少させるために十分な量である。有効量は、単回または分割投与されてもよい。
【0060】
本発明の方法および組成物で治療されてもよい凝固疾患の非限定的な例は、抗トロンビンIII欠乏、プロテインC欠乏、活性型プロテインC耐性、プロテインS欠乏、第V因ライデン、高プロトロンビン症などの凝固亢進疾患;本態性血小板血症;A、B、およびC型を含む血友病、フォンウィルブランド病、低プロトロンビン症/第II因子欠乏、低フィブリノゲン症、第XIII因子欠乏などの凝固低下疾患;Henoch−Schonlein、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、エバンス症候群、および血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)などの紫斑病;ならびにヘパリン起因性血小板減少症を含む血小板減少症を含む。
【0061】
本明細書において使用される場合、用語「血友病(Hemophilia)」または「血友病(Haemophilia)」は、血液の凝固(clotting)または凝固(coagulation)の減少によって広く特徴付けられる病態のグループを指す。血友病は、A型、B型、もしくはC型血友病、または3つ全ての疾患型の複合型を指してもよい。A型血友病(血友病A)は、第VIII因子(FVIII)活性の減少または欠損により引き起こされ、血友病サブタイプのうちで最も顕著なものである。B型血友病(血友病B)は、第IX因子(FIX)凝固機能の損失または減少によって起こる。C型血友病(血友病C)は、第XI因子(FXI)凝固活性の損失または減少の結果である。血友病AおよびBはX連鎖疾患であるが、血友病Cは常染色体疾患である。血友病の一般的な治療は、Bebulin(登録商標)VH、およびFXIを含むFVIII、FIXなどの凝固因子、ならびにFEIBA−VH、デスモプレシンの予防的およびオンデマンド投与の両方、および血漿注入を含む。
【0062】
本明細書において使用される場合、「フォンウィルブランド病(Von Willebrand Disease)」または「フォンウィルブランド病(Von Willebrand’s disease)」(vWD)は、フォンウィルブランド因子(vWF)の正常な活性の欠乏によって特徴付けられる疾患のクラスを指す。vWFの欠乏は、1型、3型、および一部の2型フォンウィルブランド病のように機能の欠損または減少を含んでもよく、または代替として、2B型および血小板型vWDのように機能獲得から生じてもよい。本発明に関連して、vWDは、1型、2型、3型、および血小板型vWD、2A型、2B型、2M型、もしくは2N型などの任意のサブタイプの疾患、または全体としての疾患グループを含む任意の型の疾患を指してよい。
【0063】
VWDのための一般的な治療は、Advate(登録商標)、Hemophil M、MONARC−M(商標)、およびRecombinateなど、VWF、FVIII、およびFVIII/VWF組成物ならびに同等物の投与を含む。別の治療は、経口もしくは静脈内(DDAVP)、皮下(octostim)、または経鼻(octostimスプレー)投与することができるデスモプレシン;定着した凝血塊の安定化を助けるシクロカプロンおよびアミカル;出血部位および全身血漿注入に直接適用することができるトロンビンを含む。
【0064】
第VIII因子(FVIII)は天然におよび治療製剤中に、単一遺伝子産物から生じたポリペプチドの不均一な分布として存在する(例えば、Anderssonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第83巻、2979〜2983頁、1986年5月を参照されたい)。用語「第VIII因子」は、本明細書において使用される場合、血漿由来であるか、または組換えDNA技術の使用によって製造されるかにかかわらず全てのポリペプチドを指す。第VIII因子を含有する治療製剤の市販の例は、HEMOFIL MおよびRECOMBINATE(Baxter Healthcare Corporation、Deerfield、III.、米国から入手可能)の商品名で販売されているものを含む。現在開発中の別の製剤は、分子のBドメイン部分を欠く第VIII因子分子の主に単一の亜集団を含む。本発明に関連して、FVIIIは、in vivoまたはin vitroで翻訳後修飾されていても、および/または水溶性ポリマー、例えば、PEG、PEO、POEなどのポリエーテルにコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、本発明のFVIII分子は、ポリシアル酸化、PEG化、または別の方法で翻訳後修飾されていてもよい。
【0065】
本発明における使用に特によく適合するVWFおよびFVIII分子は、完全長タンパク質構築体、前駆体タンパク質構築体、生物学的に活性な断片、サブユニット、またはこれらの誘導体、プラズモンポリペプチド、組換えポリペプチドなどを含む。
【0066】
ある種の実施形態において、本発明のVWFタンパク質は、例えば、組換えVWFを製造する方法に関して参照により本明細書に組み込まれるGinsburgらの、1986年10月23日に公開された国際公開第1986/06096号パンフレットおよび1990年7月23日に出願された米国特許出願シリアル番号07/559509の通り調製した構築体を含んでもよい。本発明に有用なVWFは、単量体および多量体形態を含む全ての潜在的な形態を含む。VWFの1つの特に有用な形態は、少なくとも2つのVWFのホモ多量体である。VWFタンパク質は、生物学的に活性な誘導体であってもよく、またはFVIIIの安定剤として単独で使用される場合、VWFは生物学的に活性でない形態であってもよい。本発明が、組み合わせて使用される異なる形態のVWFを包含することもまた理解されるべきである。例えば、本発明に有用な組成物は、異なる多量体、異なる誘導体ならびに生物学的に活性な誘導体および生物学的に活性でない誘導体の両方を含んでもよい。一時止血において、VWFは、血小板およびコラーゲンなどの細胞外マトリクスの特定成分の間の架橋として働く。このプロセスにおけるVWFの生物学的活性は、2つの異なるin vitroアッセイによって測定することができる(Turecekら、Semin. Thromb. Hemost. 28巻:149〜160頁、2002年)。リストセチン補因子アッセイは、VWF存在下で抗生物質リストセチンによって誘導される、新鮮なまたはホルマリンで固定した血小板の凝集に基づく。血小板凝集度は、VWF濃度に依存し、比濁法によって、例えば、アグリゴメーターを使用して測定することができる(Weissら、J. Clin. Invest. 52巻:2708〜2716頁、1973年;Macfarlaneら、Thromb. Diath. Haemorrh. 34巻:306〜308頁、1975年)。2つめの方法は、ELISA技術に基づくコラーゲン結合アッセイである(Brown et Bosak, Thromb. Res. 43巻:303〜311頁、1986年;Favaloro, Thromb. Haemost. 83巻:127〜135頁、2000年)。マイクロタイタープレートを、IまたはIII型コラーゲンでコーティングする。次いで、VWFをコラーゲン表面に結合させ、その後、酵素標識されたポリクローナル抗体を検出する。最終工程は基質反応であり、これはELISAリーダーを用いて光度測定によってモニター可能である。
【0067】
本明細書において使用される場合、「血漿由来VWF(pdVWF)」は、少なくとも1つのFVIII分子を、in vivo安定化させる、例えば、結合させる特性を有する哺乳動物から得られた成熟VWFを含む、血液中にみられる全ての形態のタンパク質を含む。しかしながら、本発明は成熟VWFに限定されるものではない。1つの、前記pVWFの生物学的に活性な誘導体は、プロ−ペプチドを含有するプロ−VWFである。本発明に有用なVWFの別の形態は、内皮細胞および巨大核細胞により合成された前駆体VWF分子(プレ−プロ−VWF)を含む未成熟VWF、および/またはVWFプロペプチド(プロ−VWF)および/またはそれぞれ前駆体分子のシグナルペプチドおよびプロ−ペプチドの切断により得られる成熟pdVWFを含むタンパク質構築体を含む。pdVWFの生物学的に活性な誘導体のさらなる例は、生物学的に活性な形態にプロセシングもしくは転換される、またはそれ自体が生物学的に活性な、切断型形態、欠失を有する形態、置換を有する形態、プロ形態以外の付加を有する形態、成熟形態の断片、キメラ形態、および天然形態と比較して翻訳後修飾を有する形態である、プロドラッグを含む。本発明に有用なpdVWFはまた、生物学的に活性でない形態も含む。これは、成熟VWFまたは血液中にみられる別の天然形態の修飾によって達成することができる。本発明に有用なVWF源は、ブタおよびヒトバージョンを含む哺乳動物である。
【0068】
本明細書において使用される場合、「組換えVWF(rVWF)」は、組換えDNA技術によって得られたVWFを含む。有用なrVWFの1つの形態は、少なくとも1つのFVIII分子を少なくともin vivo安定化させる、例えば、結合させる、および薬理学的に許容可能なグリコシル化パターンを任意選択で有する特性を有する。これらの特定の例は、A2ドメインを有さない、したがってタンパク質分解に耐性のVWF、(Lankhofら、Thromb. Haemost. 77巻:1008〜1013頁、1997年)、糖タンパク質1b−結合ドメインならびにコラーゲンおよびヘパリン結合部位を含むVal449〜Asn730のVWF断片(Pietuら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 164巻:1339〜1347頁、1989年)を含む。少なくとも1つのFVIII分子の安定化の決定は、当技術分野の現状において公知の方法に従って、VWF−欠損哺乳動物において行うことができる。FVIII活性レベルは、例えば、ヨーロッパ薬局方において発表されたもの(Ph. Eur.、第3版増補版、1997年:2.7.4)などの発色アッセイによって測定することができる。
【0069】
ある種の実施形態において、本発明のFVIIIタンパク質は、例えば、米国特許第4757006号;同第5733873号;同第5250421号;および同第5919766号のいずれかの通り、またはEP306968の通り調製された構築体を含んでもよい。一般に、本発明のFVIIIタンパク質は、野生型FVIIIに関連する生物学的活性を有するインタクトなBドメインの少なくとも一部を有する任意のFVIII分子を含んでもよい。例えば、構築体は、完全長FVIII、第VIII因子:Cをコードする核酸に加水分解することができるヌクレオチドにコードされる構築体であってもよい。このようなタンパク質は、ドメインA1−A2−B−A3−C1−C2の間または中の様々な部位にアミノ酸欠失を含有してもよい(米国特許第4868112号)。FVIII分子はまた、部位特異的突然変異誘発法によって1つまたは複数のアミノ酸残基が置換されたネイティブなFVIIIの類似体であってもよい。本発明の方法における使用によく適合する構築体の非限定的な例は、例えば、国際公開第2007/126808号パンフレットに記載されているものを含む。
【0070】
rVWFまたはrFVIIIの産生は、(i)例えば、RNAの逆転写および/またはDNA増幅を介した、遺伝子工学による組換えDNAの産生、(ii)例えば、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションを介した、トランスフェクションによる原核または真核細胞中への組換えDNAの導入、(iii)例えば、連続またはバッチ式の、前記形質転換細胞の培養、(iv)例えば、構成的または誘導性の、rVWFまたはrFVIIIの発現、および(v)例えば、培養培地からの、または形質転換細胞の回収による前記rVWFまたはrFVIIIの単離のための、(vi)例えば、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどによって精製されたrVWFまたはrFVIIIを得るための、当技術分野において公知の任意の方法を含むことができる。
【0071】
rVWFまたはrFVIIIは、薬理学的に許容可能なrVWFまたはrFVIII分子を産生することによって特徴付けられる、適切な原核または真核宿主系に発現によって産生することができる。真核細胞の例は、CHO、COS、HEK293、BHK、SK−Hep、およびHepG2などの哺乳動物細胞である。本発明によるrVWFまたはrFVIIIを産生または単離するために使用される試薬または条件に特に制限はなく、当技術分野において公知の、または市販の任意の系を採用することができる。
【0072】
広範な種類のベクターが、rVWFまたはrFVIIIの調製のために使用可能であり、真核および原核生物発現ベクターから選択することができる。原核生物発現のためのベクターの例は、pRSET、pET、pBADなどのプラスミドを含み、原核生物発現ベクターにおいて使用されるプロモーターは、lac、tre、tip、recA、araBADなどを含む。真核生物発現のためのベクターの例は、(i)酵母における発現用の、AOX1、GAP、GAL1、AUG1などのプロモーターを使用したpAO、pPIC、pYES、pMETなどのベクター;(ii)昆虫細胞における発現用の、PH、p10、MT、Ac5、OpIE2、gp64、polhなどのプロモーターを使用したpMT、pAc5、pIB、pMIB、pBACなどのベクター、および(iii)哺乳動物細胞における発現用の、pSVL、pCMV、pRc/RSV、pcDNA3、pBPVなどのベクター、ならびにCMV、SV40、EF−1、UbC.RSV、ADV、BPV、およびアクチンなどのプロモーターを使用した、ワクシニアウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルスなどのウイルス系由来のベクターを含む。
【0073】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために、本明細書において交換して使用される。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然のアミノ酸ポリマーおよび非天然のアミノ酸ポリマーに適用される。
【0074】
用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸と同様に機能する天然および合成アミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を指す。天然アミノ酸は、遺伝子コードにコードされているもの、ならびに後で修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリンなどである。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0075】
本明細書において、一般に公知の3文字記号によって、またはIUPAC−IUB生化学命名委員会により推奨されている1文字記号によってアミノ酸を指す場合がある。ヌクレオチドも同様に、一般に認められている1文字コードで指す場合がある。
【0076】
「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を、または核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合は本質的に同一の配列を指す。遺伝子コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、コドンによってアラニンが指定される全ての位置で、コードされているポリペプチドを変更することなく、コドンを記載の対応するコドンのいずれかに変更することができる。このような核酸変異は、保存的に修飾された変異の一種である、「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書中の全ての核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレント変異も示す。当業者は、核酸における各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾することにより、機能的に同一の分子を得ることができることを理解するであろう。したがって、発現産物に関して、ポリペプチドをコードする核酸の全てのサイレント変異が各記載の配列に含まれる。
【0077】
アミノ酸配列について、当業者は、コード配列中の単一アミノ酸または少数のアミノ酸を変更、付加または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、変更により、化学的に類似したアミノ酸とのアミノ酸の置換をもたらす「保存的に修飾された変異体」であることを理解するであろう。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的な置換の表は、当技術分野において周知である。このような保存的に修飾された変異体は、本発明の多型変異体、種間相同体、および対立遺伝子に追加されるものであり、これらを除外しない。当業者はまた、本発明に包含されるタンパク質に対する保存的な置換が、特に、活性部位に関与しないまたは特定の触媒機能に必要な残基においてなされる場合、耐容性良好となることも理解するであろう。当業者は、相同性の低い領域においてまたは活性部位もしくはタンパク質結合インターフェースから遠位でなされる過度の保存的な突然変異ならびに非保存的な突然変異が耐性良好となりえ、当技術分野において容易に入手できる高分解能構造情報の調査によって設計することができることを理解するであろう。
【0078】
以下の8グループは、互いに保存的な置換であるアミノ酸をそれぞれ含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984年)を参照されたい)。
【0079】
用語「組換え」は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される場合、異種核酸もしくはタンパク質の導入によって、ネイティブな核酸もしくはタンパク質の変更によって、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが修飾されていること、または、細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、ネイティブな(非組換え)形態の細胞内にはみられない遺伝子を発現するか、または組み換えなければ異常に発現された、発現不足の、または全く発現されないネイティブな遺伝子を発現する。
【0080】
用語「単離された」、「精製された」、または「生物学的に純粋な」は、ネイティブな状態においてみられるような通常それに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を指す。純度および均質性は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を使用して一般に決定される。製剤中に存在する優勢種である凝固タンパク質または凝固タンパク質複合体、例えば、FVIII、VWF、またはFVIII/VWFは、十分に精製される。用語「精製された」は、いくつかの実施形態において、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを示す。別の実施形態において、核酸またはタンパク質が、少なくとも純度50%、より好ましくは少なくとも純度60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上であることを意味する。別の実施形態において「精製する」または「精製」は、少なくとも1つの夾雑物を精製しようとする組成物から除去することを意味する。この意味において、精製は、精製された化合物が均質、例えば、純度100%であることを必要としない。
【0081】
用語「同一な」または「同一性」パーセントは、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列に関して、同じである、あるいは、BLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを下記の初期設定パラメータを用いて使用して、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって測定した場合に同じアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定のパーセンテージ(すなわち、指定領域にわたって、比較ウィンドウまたは指定の領域にわたって最大の対応関係が得られるように比較およびアラインメントを行った場合に、約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性)を有する(例えば、NCBIのウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照されたい)、2つ以上の配列または部分配列を指す。このような配列はしたがって、「実質的に同一」であるといわれる。この定義は、試験配列の相補体のことも指し、またはこれに適用される場合がある。この定義はまた、欠知および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものも含む。上述のように、好ましいアルゴリズムはギャップなどを考慮することができる。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸もしくはヌクレオチド長領域にわたって、または、より好ましくは、50〜100、200、300、400、500以上のアミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域にわたって存在する。
【0082】
配列比較のために、典型的には1つの配列が、試験配列と比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用した場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。好ましくは、初期設定プログラムパラメータを使用することができ、または代替パラメータを指定することができる。配列比較アルゴリズムは次いで、プログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較した試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0083】
「比較ウィンドウ」は、本明細書において使用される場合、2つの配列の最適アラインメント後に、配列を同数の隣接位置の参照配列と比較することができる、20〜600、通常は約50〜約200、より通常は約100〜約150からなる群から選択される隣接位置の数の任意の1つのセグメントの参照を含む。比較のための配列アラインメントの方法は、当技術分野において周知である。比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math.2巻:482頁(1981年)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch, J. Mol. Biol. 48巻:443頁(1970年)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁(1988年)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または手作業によるアラインメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987〜2005、Wiley Interscience)を参照されたい)によって実施することができる。
【0084】
配列同一性および配列類似性パーセントを決定するために適切なアルゴリズムの例は、Altschulら、Nuc. Acids Res. 25巻:3389〜3402頁(1977年)およびAltschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜410頁(1990年)にそれぞれ記載されているBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムを含む。BLASTおよびBLAST2.0は、本明細書に記載のパラメータを用いて、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一性パーセントを決定するために使用される。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センターから公開(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)されている。このアルゴリズムは、クエリ配列中の長さWの短いワードを同定することによって、データベース配列において同じ長さのワードとアライメントしたときにある正の値の閾値スコアTとマッチするかまたはそれを満たす高スコア配列の対(HSP)をまず同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(Altschulら、上記)。これらの初期隣接ワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するシードとして機能する。このワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加する限り、各配列の両方向に伸長する。例えば、ヌクレオチド配列では、パラメータM(マッチしている残基対についてのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して、累積スコアが計算される。アミノ酸配列では、スコアリングマトリクスを使用して累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量X減少する場合;1つまたは複数の負のスコアの残基アラインメントの蓄積のために累積スコアがゼロ以下になる場合;またはいずれかの配列の末端に到達する場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、初期設定として、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、初期設定として、ワード長3、および期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリクス(HenikoffおよびHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:10915頁(1989年)を参照されたい)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を使用する。
【0085】
コンジュゲートおよび翻訳後修飾
一般に、本発明の凝固タンパク質のコンジュゲーション、翻訳後修飾,または共有結合修飾は、NまたはC末端残基の修飾ならびに選択された側鎖、例えば、遊離スルフヒドリル基の、第1級アミン、およびヒドロキシル基の修飾を含む。一実施形態において、水溶性ポリマーは、リジン基または別の第1級アミンによってタンパク質(直接またはリンカーを介して)に結合されている。一実施形態において、本発明の凝固タンパク質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリシアル酸、ヒドロキシルエチルデンプン、ポリ炭水化物部分などを含むがこれらに限定されない、水溶性ポリマーのコンジュゲーションによって、修飾されていてもよい。
【0086】
本発明の凝固タンパク質を修飾するために使用してもよい水溶性ポリマーは、直鎖状および分岐状構造を含む。コンジュゲート化ポリマーは、本発明の凝固タンパク質に直接結合されてもよく、または代替として結合部分を介して結合されていてもよい。水溶性ポリマーによるタンパク質コンジュゲーションの非限定的な例は、米国特許第4640835号;同第4496689号;同第4301144号;同第4670417号;同第4791192号、および同第4179337号において、ならびにAbuchowskiおよびDavis「Enzymes as Drugs」、HolcenbergおよびRoberts編、367巻383頁、John Wiley and Sons、New York(1981年)、およびHermanson G.、Bioconjugate Techniques 第2版、Academic Press, Inc. 2008年において見ることができる。
【0087】
タンパク質コンジュゲーションは、当技術分野において周知の多くの技術によって行うことができ、例えば、Hermanson G.、Bioconjugate Techniques 第2版、Academic Press, Inc. 2008年を参照されたい。例は、凝固タンパク質または水溶性ポリマー部分のうち一方のカルボキシル基と他方のアミン基の間のペプチド結合、または一方のカルボキシル基と他方のヒドロキシル基の間のエステル結合による結合を含む。本発明の凝固タンパク質を水溶性ポリマー化合物にコンジュゲートしうる別の結合は、シッフ塩基を介する、過ヨウ素酸酸化によりポリマーの非還元末端で形成されるアルデヒド基と反応するポリマー部分の遊離アミノ基間である(JenningsおよびLugowski、J. Immunol. 1981年;127巻:1011〜8頁;FemandesおよびGregonradis、Biochim Biophys Acta. 1997年;1341巻;26〜34頁)。生成したシッフ塩基は、NaCNBHによる特異的還元によって安定化することができ、第2級アミンを生成する。別のアプローチは、事前酸化後のNHClを用いた還元的アミノ化による、ポリマー上での末端遊離アミノ基の生成である。2つのアミノまたは2つのヒドロキシル基を結合するために、二官能性試薬を使用することができる。例えば、アミノ基を含有するポリマーは、BS(ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート/Pierce、Rockford、Ill.)のような試薬を用いて凝固タンパク質のアミノ基に結合することができる。加えて、例えば、アミンおよびチオール基を結合するために、スルホ−EMCS(N−ε−マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル/Pierce)のようなヘテロ二官能性架橋試薬を使用することができる。別の実施形態において、PEGアルコキシド+ブロモアセトアルデヒドのジエチルアセタール;PEG+DMSOおよび無水酢酸、およびPEGクロリド+4−ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシド、スクシンイミジル活性エステル、活性化ジチオカーボネートPEG、2,4,5−トリクロロフェニルクロロホルメートおよびp−ニトロフェニルクロロホルメート活性化PEGなどのアルデヒド反応基が、凝固タンパク質のコンジュゲーションにおいて使用されてもよい。
【0088】
本発明のさらに別の実施形態において、様々な反応基、例えば、イミドエステル、ヒドロキシメチルホスフィン、カルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS−エステル)、ペンタフルオロフェニルエステル(PFP−エステル)、ソラレン基、アリールアジド、ヒドラジド、イソシネート、マレイミド、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホンなどを使用して水溶性ポリマーを本発明の凝固タンパク質にコンジュゲートさせてもよい。
【0089】
用語「シアル酸」は、9炭素カルボキシル化糖ファミリーの任意のメンバーを指す。シアル酸ファミリーの最もよく見られるメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノス−1−オン酸(しばしばNeu5Ac、NeuAc、またはNANAと略される)ファミリーの2番目のメンバーは、NeuAcのN−アセチル基がヒドロキシル化されているN−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)である。3番目のシアル酸ファミリーメンバーは、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)(Nadanoら(1986年)J. Biol. Chem. 261巻:11550〜11557頁;kanamoriら、J. Biol. Chem. 265巻:21811〜21819頁(1990年))である。9−O−ラクチル−Neu5Acのような9−O−C〜Cアシル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acなどの9−置換シアル酸もまた含まれる。シアル酸ファミリーの総説については、例えば、Varki、Glycobiology 2巻:25〜40頁(1992年);Sialic Acids: Chemistry, Metabolism and Function、R. Schauer編、(Springer−Verlag、New York(1992年))を参照されたい。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4356170号に記載されている方法によって、ポリシアル酸部を本発明の凝固タンパク質にコンジュゲートすることができる。本発明の一実施形態において、多糖化合物は、天然多糖、天然多糖の誘導体、または天然の多糖誘導体であってもよい。
【0090】
本発明の範囲内に含まれる共有結合修飾の1つの種類は、凝固タンパク質のネイティブなグリコシル化パターンを変更することを含む。一般に、タンパク質のネイティブなグリコシル化パターンを変更することは、凝固タンパク質とそのクリアランス受容体の間の相互作用が減少または阻害されるように、1つまたは複数のグリコシル化部位を、凝固タンパク質から除去する、および/またはこれに付加することを指す。さらに、凝固タンパク質のネイティブなグリコシル化パターンは、存在する様々な炭水化物部分を量的または質的に変化させることによって変更されてもよく、すなわち、1分子当たりのグリコシル化の量を増加させてもよく、または炭水化物部分の同一性を変化させてもよい。一実施形態において、本発明の凝固タンパク質は、例えば、国際公開第87/05330号パンフレットまたはAplinおよびWriston、CRC Crit. Rev. Biochem.、259〜306頁(1981年)のように、化学的または酵素的にグリコシドに結合されてもよい。
【0091】
一実施形態において、本発明は、O−結合型グリコシル化凝固タンパク質、これらの種のコンジュゲート、および選択されたアミノ酸配列を含むO−結合型グリコシル化ペプチド(「O−結合型グリコシル化部位」)を形成するための方法を提供する。対応する野生型凝固タンパク質中には存在しないO−結合型グリコシル化部位を含む突然変異凝固タンパク質は特に興味深い。O−結合型グリコシル化部位は、修飾基を有するグリコシル残基の結合のための場所である。
【0092】
一実施形態において、本発明の凝固因子にコンジュゲートされたポリマーは、分岐していてもまたは分岐していなくてもよい多糖を含む。コンジュゲーションのために使用される多糖のモノマー単位は、D−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコースおよびノイラミン酸などを含むがこれらに限定されない。使用することができる多糖の非限定的な例は、ラクトース、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、デキストランサルフェート、デキストラン、デキストリン、グリコーゲンなどのホモ多糖およびヘテロ多糖、または酸性ムコ多糖、例えば、ヒアルロン酸の多糖サブユニット;ポリソルビトールおよびポリマンニトールなどの糖アルコールポリマー;ヘパリン、ヘパリンなどを含む。
【0093】
特定の一実施形態において、本発明の凝固タンパク質は、図30に示されたものから選択される水溶性ポリマーにコンジュゲートされていてもよい。
【0094】
本発明の凝固タンパク質のコンジュゲーションに使用されるポリマーは、約100Da〜約500000Daの平均分子量を有してもよい。ある種の実施形態において、ポリマーは、約1000Da〜約20000Daの平均分子量を有してもよい。別の実施形態において、ポリマーの平均分子量は、約1kDa、または約2kDa、3kDa、3.5kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、15kDa、16kDa、17kDa、18kDa、19kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、75kDa、100kDa、125kDa、150kDa、200kDa、250kDa、300kDa、400kDa、500kDa以上であってもよい。本発明の凝固タンパク質をコンジュゲートさせるために使用されるポリマーの平均分子量は、凝固タンパク質の性質、ポリマーの性質、コンジュゲーションの程度などを含む多くの要因に依存するはずである。
【0095】
ある種の実施形態において、本発明は、第1のリンカー基、第1の分岐基、および前記分岐基に結合された1つまたは複数の水溶性ポリマーを含むコンジュゲーション部分に結合された凝固タンパク質を含む。別の実施形態において、コンジュゲーション部分は、前記分岐基および前記水溶性ポリマーを連結する少なくとも第2の結合基をさらに含んでもよい。適切な結合基は、ウレタン、アミド、尿素、エステル、チオエーテルなどを含むがこれらに限定されない。当業者は、本発明における使用に特によく適合する別の結合基を知っているであろう。さらに別の実施形態において、コンジュゲーション部分は、コポリマー、例えば、交互コポリマー、周期コポリマー、ランダムコポリマー、ジブロックもしくはトリブロックなどのブロックコポリマー、または分岐コポリマーを含んでもよい。本発明での使用によく適合する多くのコンジュゲーション部分が、当技術分野において公知であり、例えば、Hermanson G.、Bioconjugate Techniques 第2版、Academic Press,Inc. 2008年において見ることができる。
【0096】
一実施形態において、本発明の凝固タンパク質は、可逆的なまたは加水分解可能な結合によって水溶性ポリマーにコンジュゲートされていてもよい。米国特許出願公開第2005/0079155号は、可逆的な結合を使用したコンジュゲートを記載している。この公開に記載されているように、可逆的な結合は、酵素基質部分の使用によって実施することができる。可逆的なPEG化のための別のアプローチは、米国特許第7060259号に記載されており、生物学的に活性な作用物質が加水分解可能なカルバメート結合によって水溶性非免疫原性ポリマーに結合されている、水溶性プロドラッグを記載している。これに記載されているように、生物学的に活性な作用物質は、カルバメート結合の加水分解によって、酵素または触媒物質を添加する必要なくin vivoで容易に遊離することができる。可逆的部分のコンジュゲーションのための異なるアプローチが、Peleg−Schulman(2004年)J. Med. Chem. 47巻:4897〜4904頁、国際公開第2004/089280号パンフレットおよび米国特許出願公開第2006/0171920号によって記載されている。限定された数の活性薬剤にこのアプローチが適用されたが、これらの参照は、可逆的なPEG化が特に適合するであろう別の活性薬剤を無視している。さらに別の切り離し可能なアプローチが、米国特許出願公開第2006/0293499号に記載されている。
【0097】
一実施形態において、本発明は、一般構造:
【0098】
【化1】

【0099】
(式中、Rは凝固タンパク質であり、Lは結合基であり、およびXは水溶性ポリマーである)を有する修飾された凝固タンパク質を提供する。
【0100】
本発明における使用によく適合する凝固部分の例は、例えば、全てが全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、分解可能な結合を有するコンジュゲーション部分の使用を記載している米国特許出願第20060293499号;9−ヒドロキシメチル−7−スルホフルオレン−N−ヒドロキシスクシンイミド結合(PEG−FMS)によってタンパク質に結合されたPEG化部分を含む、可逆的なPEG化部分の使用を記載している国際公開第2004/089280号パンフレット、ポリマーを本発明の凝固タンパク質に結合させるために使用することができる様々な結合部分の使用を記載している米国特許出願第20050009988号;タンパク質コンジュゲーションのための一置換ポリ(エチレングリコール)および関連部分の使用を記載している米国特許第5672662号;ポリマーのタンパク質へのコンジュゲーションのための、Fmocおよび2−スルホ−9−フルオレニルメトキシカルボニル(FMS)などの緩和な塩基性条件に感受性の修飾基の使用を記載している米国特許出願第20060171920号;FVIIIのポリマーコンジュゲートを記載している米国特許出願第20040235723号および同第20080058504号;ならびにVWFおよびFVIIIポリマーコンジュゲートを記載している米国特許出願第20060160948号において見ることができる。ある種の実施形態において、本発明の方法は、例えば、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2008/082669号パンフレットまたは国際公開第2007/126808号パンフレットに記載されている修飾された凝固タンパク質を使用して実践されてもよい。
【0101】
本発明のコンジュゲートは、様々な式を含んでもよい。一実施形態において、本発明のコンジュゲートは、一般式;
【0102】
【化2】

【0103】
(式中、Rは凝固タンパク質であり、L、L、およびLはリンカー部分であり、Bは第1の分岐部分、およびXおよびXは水溶性ポリマー基である)を含んでもよい。ある種の実施形態において、L、L、およびLは任意選択である。特定の実施形態において、コンジュゲーション部分は、化学的に安定であってもよい。別の実施形態において、本発明において使用されるコンジュゲーション部分は、加水分解可能であってもよい。ある種の実施形態において、LまたはBは、アルコール保護基、アミン保護基、カルボニル保護基、カルボキシル保護基などの保護基を含んでもよい。
【0104】
特定の実施形態において、保護基は置換されたFmoc基である。一実施形態において、本発明のコンジュゲートは、式;
【0105】
【化3】

【0106】
(式中、POLYは第1の水溶性ポリマーであり;POLYは第2の水溶性ポリマーであり;Xは第1のスペーサー部分であり;Xは第2のスペーサー部分であり;Hαはイオン化可能な水素原子であり;RはHまたは有機ラジカルであり;RはHまたは有機ラジカルであり;(a)は0または1であり;(b)は0または1であり;Re1は、存在する場合、第1の電子変更基であり;Re2、存在する場合、第2の電子変更基であり;YはOまたはSであり;YはOまたはSであり;Rは凝固タンパク質である)を含んでもよい。
【0107】
特定の一実施形態において、本発明は、構造;
【0108】
【化4】

【0109】
(式中、Rは凝固タンパク質であり、LおよびLはリンカーであり、XおよびXは水溶性ポリマーである)を含む凝固タンパク質のコンジュゲートを提供する。別の実施形態において、本発明のコンジュゲーション部分は、図13または15に示すもののうちの1つであってもよい。ある種の実施形態において、コンジュゲーション部分は、アミノ酸側で、タンパク質のカルボキシ末端で、またはタンパク質のアミノ末端でコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、水溶性部分は、遊離スルフヒドリル基、第1級アミン、ヒドロキシル基、またはこれらの組合せで側鎖にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、水溶性タンパク質はVWFまたはFVIIIである。
【0110】
一実施形態において、本発明は、構造;
【0111】
【化5】

【0112】
(式中、Rは凝固タンパク質であり、m−PEGOは、エーテル結合を介して構造の残部に連結されたPEG部分、または別の水溶性ポリマーである)を含む凝固タンパク質のコンジュゲートを提供する。ある種の実施形態において、コンジュゲーション部分は、アミノ酸側で、タンパク質のカルボキシ末端で、またはタンパク質のアミノ末端でコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、水溶性部分は、遊離スルフヒドリル基、第1級アミン、ヒドロキシル基、またはこれらの組合せで側鎖にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、水溶性タンパク質はVWFまたはFVIIIである。
【0113】
特定の一実施形態において、本発明は、構造;
【0114】
【化6】

(式中、Rは凝固タンパク質である)を含む凝固タンパク質のコンジュゲートを提供する。ある種の実施形態において、コンジュゲーション部分は、アミノ酸側で、タンパク質のカルボキシ末端で、またはタンパク質のアミノ末端でコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、水溶性部分は、遊離スルフヒドリル基、第1級アミン、ヒドロキシル基、またはこれらの組合せで側鎖にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、水溶性タンパク質はVWFまたはFVIIIである。
【0115】
特定の一実施形態において、本発明は、構造;
【0116】
【化7】

【0117】
(式中、Rは凝固タンパク質である)を含む凝固タンパク質のコンジュゲートを提供する。ある種の実施形態において、コンジュゲーション部分は、アミノ酸側で、タンパク質のカルボキシ末端で、またはタンパク質のアミノ末端でコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、水溶性部分は、遊離スルフヒドリル基、第1級アミン、ヒドロキシル基、またはこれらの組合せで側鎖にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、水溶性タンパク質はVWFまたはFVIIIである。
【0118】
さらに別の実施形態において、本発明は、構造;
【0119】
【化8】

【0120】
(式中、Rは凝固タンパク質であり、YはPEGなどの水溶性ポリマーである)を含む凝固タンパク質のコンジュゲートを提供する。ある種の実施形態において、コンジュゲーション部分は、アミノ酸側で、タンパク質のカルボキシ末端で、またはタンパク質のアミノ末端でコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、水溶性部分は、遊離スルフヒドリル基、第1級アミン、ヒドロキシル基、またはこれらの組合せで側鎖にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、水溶性タンパク質はVWFまたはFVIIIである。
【0121】
さらに別の実施形態において、本発明は、式;
【0122】
【化9】

【0123】
(式中、Rは凝固タンパク質であり、XはNH、S、CO、COO、CH、SO、SO、PO、およびPOからなる群から選択され、Xは水溶性部分をXに連結する結合またはリンカーであり、Yは水溶性部分である)を含む凝固タンパク質のコンジュゲートを提供する。特定の実施形態において、水溶性部分はPEGである。ある種の実施形態において、コンジュゲーション部分は、アミノ酸側で、タンパク質のカルボキシ末端で、またはタンパク質のアミノ末端でコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、水溶性部分は、遊離スルフヒドリル基、第1級アミン、ヒドロキシル基、またはこれらの組合せで側鎖にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、水溶性タンパク質はVWFまたはFVIIIである。
【0124】
修飾またはコンジュゲートされた本発明の凝固タンパク質は、一般に、所与のバッチまたは溶液中のタンパク質の少なくとも約40%が同程度に修飾される場合、「実質的に均一に修飾された」とみなされる。別の実施形態において、均一に修飾されたバッチまたは溶液中の凝固タンパク質は、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上が同程度に修飾されてもよい。ある種の実施形態において、タンパク質修飾の程度は、タンパク質モル数当たりの修飾しているポリマーモル数で決定されてもよい。例えば、修飾された本発明の凝固タンパク質は、約1〜約30個の水溶性ポリマーによってコンジュゲートされていてもよい。ある種の実施形態において、本発明の凝固タンパク質は、1モルタンパク質当たり約1、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30モル以上のコンジュゲート化ポリマーを含んでもよい。典型的には、コンジュゲーション反応において起こる修飾の程度は、制御することができる。例えば、平均的な反応は、約50%未満のコンジュゲーションの程度の変化をもたらすことができる。別の実施形態において、コンジュゲーションの程度の変化は、約40%未満、約35%、30%、25%、20%、15%、10%、もしくは5%未満であってもよい。代替として、特定のバッチの凝固タンパク質のコンジュゲーションの程度の変化は、コンジュゲーション反応後の分画によって、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに制御されてもよい。したがって、コンジュゲーションの程度の少量の変化を達成することができる。別の実施形態において、修飾の程度は、修飾されている可能性のあるコンジュゲーション部位のパーセントで表されてもよい。例えば、凝固タンパク質は、約1%〜約100%修飾されていてもよい。ある種の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、約1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%以上修飾されていてもよい。
【0125】
組成物および製剤
ある種の実施形態において、本発明の凝固タンパク質組成物、すなわち、FVIII、vWF、またはFVIII/vWFは、充填剤、安定化剤、緩衝剤、塩化ナトリウム、カルシウム塩、および、有利には、別の賦形剤をさらに含む。これらの賦形剤は、凍結乾燥製剤における第VIII因子の安定性を最大にするために選択された。しかしながら、本発明の血液因子組成物は、液体状態においても同様に安定性を示す。
【0126】
本明細書において使用される場合、「充填剤」は、凍結乾燥された後に医薬製剤の「ケーキ」または残渣固体塊に構造を提供し、医薬製剤の崩壊を防ぐ化学的実体を指す。「結晶化可能な充填剤」は、塩化ナトリウム以外の、凍結乾燥中に結晶化することができる本明細書に記載の充填剤を意味するものとする。本発明における使用に特に良く適合する充填剤は、マンニトール、グリシン、アラニン、およびヒドロキシエチルデンプン(HES)を含むがこれらに限定されない。
【0127】
凍結乾燥産物の結晶部分を形成する(HESの場合を除く)、本製剤において使用される充填剤は、マンニトール、グリシン、アラニン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)などからなる群から選択される。当業者は、本発明での使用に特によく適合する別の充填剤を知っているであろう。マンニトール、グリシンまたはアラニンは、約1%〜約15%の量で存在する。ある種の実施形態において、この量は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%以上である。充填剤としてHESが使用される場合、約1%〜約10%の量で存在する。ある種の実施形態において、この量は約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%以上のHESである。
【0128】
いくつかの実施形態において、本発明の製剤において使用される安定化剤は、スクロース、トレハロース、ラフィノース、ソルビトール、グリセロール、またはアルギニンなどからなる群から選択される。当業者は、本発明での使用に特によく適合する別の安定剤を知っているであろう。これらの作用物質は、本発明の製剤において約1%〜約10%の量で存在する。ある種の実施形態において、この量は約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%以上の安定化剤である。
【0129】
様々な生理学的に適合可能な塩もまた、本発明の製剤において使用することができる。本発明の一実施形態において、塩化ナトリウムは、約100〜約300mM、または約150〜約250mM、または約225mMの量で本製剤中に含まれる。本発明の一実施形態において、いずれの前述の充填剤も用いずに塩化ナトリウム自体を使用することができ、この場合NaCl約300mM〜約500mMの量で製剤中に含まれる。本発明のある実施形態において、生理学的に適合可能な塩は、約50〜約1000mMで使用することができる。別の実施形態において、製剤中の塩濃度は、約50mM、または約100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000mM以上であってもよい。薬学的に許容可能な塩は非毒性であることが理解される。適切な薬学的に許容可能な塩に関するさらなる情報は、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985年において見ることができる。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、約10mM〜約200mMの濃度で緩衝液を含む。別の実施形態において、緩衝液濃度は、約10mM〜約50mMである。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、75mM、100mM、125mM、150mM、175mM、または200mM以上の緩衝液を含んでもよい。本発明における使用によく適合する緩衝液は、ヒスチジン、Tris、BIS−Trisプロパン、PIPES、MOPS、HEPES、MES、ACESなどを含むがこれらに限定されない。当業者は、本発明の組成物において使用するために特に良く適合する他の緩衝液を知っているであろう。本発明の組成物は、酸化防止剤をさらに含んでもよい。
【0131】
本明細書において使用される場合、「投与すること」は、対象への経口投与、坐剤としての投与、局所接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病変内、鼻腔内もしくは皮下投与、または徐放デバイス、例えば、ミニ浸透圧ポンプの埋め込みを意味する。投与は、非経口、および経粘膜(例えば、経口、経鼻、経膣、経直腸、または経皮)を含む任意の経路によるものである。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内を含む。別の送達方法は、リポソーム製剤、静脈内注入、経皮パッチなどの使用を含むがこれらに限定されるものではない。
【0132】
例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内、および皮下経路などによる非経口投与に適切な製剤は、製剤を対象のレシピエントの血液と等張にする、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、および溶質を含有することができる水性および非水性等張無菌注射液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含むことができる水性および非水性無菌懸濁液を含む。本発明の実践において、組成物は、例えば、静脈内注入によって、経口的に、局所的に、腹腔内に、膀胱内にまたは髄腔内に投与することができる。化合物の製剤は、アンプルおよびバイアルなどの単位用量または多用量密封容器で、提供することができる。注射液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0133】
ある種の実施形態において、医薬製剤は、単位剤形である。このような形態では、製剤は、適当な量の活性成分を含有する単位用量にさらに分割される。単位剤形は、バイアルまたはアンプル中にパケット化された錠剤、カプセル、および粉末など、個別量の製剤を収容しているパッケージ化製剤とすることができる。また、単位剤形は、それ自体をカプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはトローチ剤とすることができ、または、適当な数のこれらのパッケージ化形態のいずれかとすることができる。組成物は、所望であれば、別の適合可能な治療剤も含有することができる。
【0134】
薬学的に許容可能な担体は、一部には投与される特定の組成物によって、ならびに、組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本発明の医薬組成物の様々な適切な処方が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2003年、上記、を参照されたい)。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」は、コンジュゲートと組み合わせる場合にコンジュゲートの活性を保持し、対象の免疫系と反応しない任意の材料を含む。例は、リン酸緩衝生理食塩液、水、水中油型乳剤などの乳剤、および様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを含むがこれらに限定されるものではない。別の担体はまた、無菌溶液、コーティングされた錠剤およびカプセルを含む錠剤も含んでもよい。典型的には、このような担体は、デンプン、乳、糖、特定の種類の粘土、ゼラチン、ステアリン酸もしくはその塩、ステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウム、タルク、植物性脂肪もしくは油、ガム、グリコール、または別の公知の賦形剤などの賦形剤を含有する。このような担体はまた、香料および着色添加物または別の成分も含んでもよい。このような担体を含む組成物は、従来の周知の方法によって処方される。
【0135】
本発明の組成物の有効な剤形、投与方法および投薬量は、経験的に決定することができ、このような決定を行うことは当業者の範囲内である。投薬量は、採用される特定の組成物、治療される状態、状態の重症度、投与経路、排泄速度、治療期間、哺乳動物に投与されている他の任意の薬剤の種類、哺乳動物の年齢、大きさおよび種、ならびに医学および獣医学分野において周知の類似の要因によって異なることが当業者によって理解される。一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低の用量である量であろう。しかしながら、1日総用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当の医師または獣医によって決定されるであろう。所望であれば、1日を通して適当な間隔で別々に投与される、複数の分割用量で、1日用量を投与してもよい。
【実施例】
【0136】
(実施例1)
LRP1は、FVIII血漿レベルの調節に寄与することが示された。LRP1は、FVIIIに結合し、これを細胞内分解経路に輸送することができる細胞受容体である。本実施例は、FVIIIのPEG化またはポリシアル化がin vitroでLRP1への結合を妨害することを示す。
【0137】
成分:精製された組換え野生型FVIII(バッチMOQ−Hepes−08E;2.28mg/ml;12117IU/ml);PEG化FVIII(バッチ加水分解可能なPEG−rFVIIIORHLUFB07001PHR;1.76mg/ml;2498IU/ml);ポリシアル化FVIII(バッチPSA−rFVIII−11.0KD NHS;0.613mg/ml;268IU/ml)。精製LRP1は、Biomac(Leipzig;カタログ番号04−03)から入手した。
【0138】
実験設計:FVIIIまたはその誘導体のLRP1への結合を、Biacore2000装置を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)解析を使用して評価した。詳述:LRP1を、標準的なCM5−バイオセンサーチップ(Biacore)上に固定化した。物質輸送制限のために起こり得る再結合を避けるために、流速を20μl/分に設定した。25℃で、0.005%のTween−20、150mMのNaCl、2mMのCaCl、および20mMのHepes(pH7.4)を含有している緩衝液中に試料を流した。タンパク質含量に基づいてタンパク質を希釈した。平衡に達するまでタンパク質を10分間注入し、続いてさらに2.5分間解離を行った。データ解析では、タンパク質濃度に対する平衡での応答のプロッティングを行うことを含んでいた。解析の間、実験系は緩衝液組成の変化に強く影響を受けるため(緩衝液屈折指数)、注入される全ての製剤を、同様の緩衝液組成を含有するように設計した。したがって、wt−FVIIIおよびPEG−FVIII間の比較では、等量のそれぞれの緩衝液が最終製剤中に存在していた。wt−rFVIIIおよび加水分解可能なPEG−FVIIIのための、実験のセットアップの例を表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
一例として、固定化LRP1へのwt−rFVIII結合についてのセンサーグラムの生データを、図1に示す。公開されているデータ(例えば、Lentingら、1999年、JBC274巻:23734頁)と一致して、FVIIIは用量依存的に、LRP1に効率的に結合する。10分の注入は、平衡に達するのに実際に十分であるようであった。図2および3に、それぞれPEG−FVIIIおよびPSA−FVIIIについての典型的な平衡−応答を示す。注目すべきことに、固定化LRP1へのPEG−FVIIIまたはPSA−FVIIIの結合は、50μg/ml(通常の血漿濃度の50倍に相当)の濃度でさえ、検出されなかった。
【0141】
(実施例2)
FVIIIがVWFに結合するとFVIII軽鎖内のLRP1相互作用部位に到達できないため、LRP1へのFVIIIの結合はVWFの存在下で阻害される。本実施例は、vWFのPEG化またはポリシアル化が、FVIIIによるvWFを介するLRP1結合阻害を妨害しないことを示す。
【0142】
成分:精製された組換え野生型FVIII(バッチMOQ−Hepes−08E;2.28mg/ml;12117IU/ml);組換え−wt−vWF(バッチORWSEC06006FlHL;0.464mg/ml;72.1IU Ag/ml;20.6IU RCo/ml)、安定なPEG−vWF(バッチNTT−VWF−600−S2I;1.021mg/ml;61.4IU Ag/ml;41.9IU RCo/ml);および安定なPSA−vWF(バッチPSA−RVWF−19.3KD CAOバッチ2(06.10.2006);0.0087mg/ml;11.3IU Ag/ml;0.2IU RCo/ml)。
【0143】
野生型組換えFVIII(40nM)を、様々な濃度のvWF(wt−vWFおよびPEG−vWFについては0〜400nMおよびPSA−vWFについては0〜200nM)でプレインキュベートした。vWF濃度は、タンパク質濃度およびvW単量体1つ当たり250kDaの分子量を基にした。この場合もやはり、様々なタンパク質が異なる緩衝液中に存在したため、解析全体にわたって緩衝液組成が等しいままであるような方法で希釈スキームを設計した。FVIII/vWFの混合物を、25℃で、0.005%のTween−20、150mMのNaCl、2mMのCaCl、20mMのHepes(pH7.4)を含有している系−緩衝液中で、20μl/分の流速で、LRP1(CM5−バイオセンサーチップ上に固定化)に適用した。
【0144】
vWFの非存在下で、効率的なLRP1へのFVIIIの結合が観察された。しかしながら、vWF濃度を増加させると、LRP1へのFVIIIの結合は一致して減少した。PEG−vWFに関して、この調節されたタンパク質は、FVIII−LRP1相互作用を妨害するのにwt−vWFと同程度に効率的であるようであった(図4)。PSA−vWFもまたLRP1結合を妨害したが(図5)、このコンジュゲート化タンパク質は、wt−vWFよりもわずかに効率が悪いようであった。しかしながら、これらのデータは単一の濃度範囲に基づいており、この差異が実験の範囲内であるのか、またはFVIII/LRP1相互作用を阻害する能力の実際の減少を表すのかを判断するために、追加実験を行う必要がある。それにもかかわらず、両方のコンジュゲーションが、LRP1へのFVIIIの結合を阻害するvWFの能力に、あったとしてもごくわずかにしか影響を及ぼさなかったので、これらのデータは、PEGまたはPSAのいずれかによってvWFをコンジュゲートすることが、FVIIIと相互作用するvWFの能力に、あったとしても重大な程度には影響を及ぼさないことも示す。
【0145】
FVIIIのキャリアタンパク質として機能することは別として、vWFはまた、血小板の血管損傷部位への動員においても重大な役割を果たす。VWFは、内皮下マトリクスおよび血小板糖タンパク質(Gp)−Ib/IX/V受容体複合体間の分子架橋として働く。GpIbαと相互作用するために、vWFは潜在性の立体配座から活性な立体配座に転換される必要がある。vWFの化学修飾はGplbα結合部位の露出に影響を及ぼしうるため、本発明者らは、wt−vWFおよびそのコンジュゲート化誘導体の、Gplbαに対する(ボトロセチンの非存在下および存在下で)、およびナノボディAU/vWFa−11、活性な立体配座でvWFへの優先的な結合を示す抗体断片に対する結合を試験した。
【0146】
成分:組換え−wt−vWF(バッチORWSEC06006FlHL;0.464mg/ml;72.1IU Ag/ml;20.6IU RCo/ml)、安定なPEG−vWF(バッチNTT−vWF−600−S2I;1.021mg/ml;61.4IU Ag/ml;41.9IU RCo/ml);および安定なPSA−vWF(バッチPSA−RvWF−19.3KD CAOバッチ2(06.10.2006);0.0087mg/ml;11.3IU Ag/ml;0.2IU RCo/ml)。組換えGplbα(残基1〜290を含む)は、以前に記載されている(Huizingaら(2002年)Science 2973176)。ボトロセチンはKordia BV (Leiden、オランダ)から入手した。抗−Gplbα抗体2D4は、H.Deckmyn博士(Kortrijk、ベルギー)より親切にも提供された。ナノボディAU/vWFa−11は以前に記載されている(Hulsteinら2005年 Blood 106巻:3035頁)。HRP−コンジュゲート化ポリクローナル抗−vWF抗体は、Dako(Glostrup、デンマーク)から購入した。
【0147】
本質的に記載されている通り(それぞれ、van Schooteら、2005年、JTH 3:2228およびHulsteinら2005年 Blood 106巻:3035頁)、免疫吸着検定法でGplbαおよびAU/vWFa−11への結合を行った。ボトロセチンの非存在下で、wt−vWFまたはそのコンジュゲート化誘導体(1μg/mlまで)のGplbaへの結合を観察することができなかった。したがって、試験したいずれの製剤においても(wt−vWFを含む)、自発的にGplbαと相互作用することができるvWF分子は存在しないようである。しかしながらボトロセチンの存在は、wt−vWFの場合においてGplbαへの効率的な結合を誘導するのに十分である(図6)。実際、Baxterから提供されたwt−vWFは、通常のプール血漿中に存在するVWF、または大学の研究室環境において作製された組換えVWFよりもわずかに効率が良いようである。PEG−vWFおよびPSA−vWFはともに、非コンジュゲート化vWFと比較して低い親和性でGplBαに結合するため、vWFのコンジュゲーションはボトロセチン−誘導性Gplbα結合を減少させる。PEG−vWFは、wt−vWFよりも約2倍低い親和性で結合したが、PSA−vWFはボトロセチンの存在下においてGplbαに実質的に結合することができなかった。PSA−vWFがGplbαへのボトロセチン結合の強い阻害を示したという事実は、このタンパク質(2.3IU/mgのタンパク質)について報告されている低いリストセチン−補因子活性と一致する。対照的に、PEG−vWFは、wt−vWFと比較して同様のリストセチン−補因子活性(それぞれ、44.4IU/mgと比較して41.0IU/mg)を有する。しかしながら、両方のアッセイが、リストセチンまたはボトロセチンによるvWFの活性化に依存しているということが重要である。vWFのPEG化および/またはポリシアル化がこれらのアクチベーターとの相互作用に影響を及ぼすのを排除することはできない。VWFおよびGplba間の相互作用に関する決定的なデータは、in vitroでの灌流実験から得ることができる。
【0148】
AU/vWFa−11結合実験の結果を図7に示す。通常のプール血漿(NPP)を結合対照参照として使用し、この勾配を1と任意に割り当てる。陽性対照として、本発明者らは、血小板−結合立体配座を誘導するArg1306Gln突然変異(2B型)を有する組換えvWFを含めた。この製剤の相対的な活性(通常のプール血漿の勾配に対する製剤の勾配の比として定義される)は、6.9である。ユトレヒト大学医療センター調製の組換えwt−vWFは、ナノボディAU/vWFa−11への結合のわずかな上昇を示した(相対活性1.6)が、一方、Baxterにより提供された組換えwt−vWFは通常のプール血漿と同様(相対活性1.1)であった。対照的に、PEG−vWFおよびPSA−vWFはともに、AU/vWFa−11への結合の減少を示した(それぞれ、相対活性0.04および0.3)。通常、これらのタイプの相対活性の減少は2A型突然変異を有するvWF分子において見られる。AU/vWFa−11への結合の減少は、vWFのPEGまたはPSAとのコンジュゲーションが分子を活性な、血小板結合立体配座に転換しないことを示す。あるいは、VWFのコンジュゲーションは、vWFA1ドメイン内のその結合部位に対するナノボディのアクセスを変更させる可能性がある。
【0149】
(実施例3)
VWF存在および非存在下におけるFVIIIの半減期残存率間の関係を、血友病Aおよび3型フォンウィルブランド病患者において試験した。血友病A患者はFVIIIレベルが欠乏しているが、典型的には正常なVWF発現を示す。反対に、3型フォンウィルブランド病(VWD)患者はVWFの欠乏については同じであるが、正常なFVIII発現を示す。しかしながら、3型フォンウィルブランド病患者における正常なFVIII発現にもかかわらず、おそらくVWFのFVIIIへの安定な結合によって正常に提供されるタンパク質の欠乏のために、凝固因子の血漿レベルは大幅に減少する。したがって、FVIII濃縮物の血友病A患者への投与は、3型フォンウィルブランド病患者への投与よりも長い半減期の凝固因子をもたらすであろうことが予想される。
【0150】
上記で提起された仮説を、血友病A患者および3型VWD患者において投与されたFVIIIの残存率を測定することによって試験した。簡潔に述べると、30IU/kgb.w.の第VIII因子濃縮物(Advate、Baxter Healthcare Corp.)を、血友病Aおよび3型VWD患者に投与した。血液試料を採取し、クエン酸血漿を調製し、ELISA(Asserachrom、Stago;Asnieres sur Seine、フランス)によって、FVIIIに特異的なモノクローナル抗体を使用して、投与後の異なる時点でFVIIIレベルを測定した。図8において見られるように、血友病A患者において投与されたFVIIIの半減期はおよそ20時間であるが、3型フォンウィルブランド病患者における半減期は、わずか1〜2時間である。したがって、3型フォンウィルブランド病患者に投与されたFVIIIの半減期の減少によって示されるように、in vivoでのFVIIIクリアランスは、野生型VWFの非存在下において非常に大きい割合で起こる。
【0151】
次に、投与されたFVIIIおよびVWFの半減期の関係を血友病A患者において判定した。患者におけるVWFの半減期を、Nossentら(Journal of ThrombosisおよびHaemostasis、4巻(12号):2556〜62頁(2006年))により提案されている通り計算した。特に、VWFの時間での半減期は、プロペプチドの定常状態濃度に対する定常状態VWF濃度の比の2倍に等しいと想定された。このようにして、38人の重症血友病A患者において、30IU FVIII/kg b.w.の第VIII因子濃縮物を投与した後、VWFに特異的なポリクローナル抗体(DAKO Cytomation、Glostrup、デンマーク)を使用したELISAによりVWF−抗原の血漿レベル、および特異的モノクローナル抗体によってVWFプロペプチドレベル(Sanquin Research;Amsterdam、NL)を測定することによって半減期を計算した。試料コホートから測定されたFVIIIおよびVWFの半減期をプロットし、2つの半減期が強い相関を有することを示す0.6(P=0.0001)のピアソンの順位相関係数を見出した(図F)。注目すべきことに、38人のうち33人の患者において、VWFの半減期がFVIII半減期よりも大きかった。in vivoでFVIIIクリアランスについて提案された平衡を、図10に示す。
【0152】
(実施例4)
LDL−受容体関連タンパク質(LRP1、CD91)/メガリン(Lentingら、JBC 274巻:23734〜9頁(1999年);Saenkoら、JBC 274巻:37685〜92頁))、LDL−受容体/vLDL−受容体Bovenschenら、Blood 106巻:906〜12頁(2005年))、アシアロ糖タンパク質−受容体(Bovenschenら、J Thromb Haemost 3巻:1257〜65頁(2005年))、およびCD206(マクロファージマンノース−受容体)(Lentingら、J Thromb Haemost 5巻:1353〜60頁(2007年))を含む、in vivoでFVIIIクリアランスに関与すると推定されるいくつかの受容体が記載されている。これらの受容体へのFVIII結合の結合は、VWF存在下において防止されるまたは減少することが公知である。しかしながら、LRP1だけが、FVIIIクリアランスに関して生理学的に適切であると示されている(Bovenschenら、Blood 101巻(10号):3933〜9頁(2003年))。そのため、FVIIIおよびLRP1間の相互作用の動態試験は、LRP1を介するFVIIIクリアランスの減少をもたらす条件を決定する試みにおいて行われた。
【0153】
化学的コンジュゲーションおよびさらなる血液因子の存在がFVIII−LRP1結合の動態に与える影響を測定するために、Biacore2000システムで表面プラズモン共鳴(SPR)実験を行った。簡潔に述べると、Huizingaら(J Thromb Haemost 3巻:2228〜37頁(2005年)により記載された通りに精製したLRP1を、CM5バイオセンサーチップ上に4000RU/mmで固定化し、これは約6.7fmol/mmのLRP1であると測定された。様々な濃度の組換えFVIII、PEG化(図11)および非コンジュゲート化(図12)を、チップ上に20μl/分で流し、Biacore2000システムおよびBIAevaluationソフトウェアを使用して相互作用の定常状態の動態を測定した。hPEG化FVIIIは、図13に示す加水分解可能なPEG部分で修飾し、US2008/0234193A1に記載の通り結合させた。図13において見られるように、hPEG化FVIIIは、50μg/mlという高濃度でさえLRP1を結合させることができなかった。次いで、図Lに示す安定なPEG部分によって修飾した、sPEG化FVIIIを用いて実験を繰り返した。図14および15において見られるように、sPEG化FVIII(白丸)は、LRP1に結合したレベルは、修飾されていないFVIII(黒丸)と比較して、実質的に減少した。これらの実験は、FVIIIのPEG化がLRP1への結合を阻害することを示す。
【0154】
LRP1は、完全長FVIII重鎖ではなくFVIII軽鎖と相互作用することが公知である(Lentingら、JBC 274巻(34号):23734〜9頁(1999年))。しかしながら、トロンビンによる部分的なタンパク質分解の後、FVIII重鎖はLRP1に結合できるようになる(Bovenschenら、J Thromb Haemost. 4巻(7号):1487〜93頁(2006年))。したがって、トロンビン活性化FVIIIのLRP1への結合に対するPEG化の影響を調べた。簡潔に述べると、250μg/mlの修飾されていないFVIII、hPEG化FVIII、およびsPEG化FVIIIを、2nMのトロンビンで5分間、37℃でインキュベートした。タンパク質分解を停止させるために、反応混合物を、トロンビン特異的インヒビター(PPACK、Biomol Int.、ドイツ)の50nM水溶液中に10倍希釈した。次いで活性型FVIII溶液のLRP1結合を、前述の通りBiacore2000システムを使用してSPRによって解析した。図16に示すSPRFVIII結合実験の結果に見られるように、トロンビン切断はsPEG化FVIIIではなく、修飾されていないおよびhPEG化FVIIIのLRP−結合を誘導する。
【0155】
次に、FVIII−LRP1結合に対するVWFの影響をSPR解析によって試験した。40nMの修飾されていないFVIIIを、0〜400nMの修飾されていないまたはPEG化VWFと一緒に37で25分間プレインキュベートした。VWF/FVIII複合体を次いで、上述の通りSPR解析にかけた。sPEG化(図17)およびhPEG化(図18)VWFはともに、修飾されていないVWFに対して、LRP1へのFVIII結合をさらに阻害した。これらのデータは、VWFのPEG化が、LRP1受容体を介するFVIIIクリアランスをさらに減少させることができることを示す。
【0156】
要約すると、FVIII−LRP1結合実験は、FVIIIのPEG化がFVIIIおよびそのクリアランス受容体LRP1間の相互作用を大幅に減少させることを示す。さらに、sPEG化FVIIIではなく、hPEG化FVIIIのトロンビン切断は、修飾されていないFVIIIと同レベルまでではないが、LRP1への結合を誘導する。最後に、VWFのPEG化は、FVIIIおよびそのクリアランス受容体LRP1間の相互作用のVWFを介する阻害を妨害しない。反対に、PEG化は、示されている通り、LRP1へのFVIII結合に対するVWFの阻害効果を実際に増加させる。これらの実験は、組換えVWFおよびFVIIIのいずれかまたは両方のPEG化が、血友病およびフォンウィルブランド病などの血液凝固障害の患者における投与に有益な効果を有する可能性があることを示す。
【0157】
(実施例5)
VWFのPEG化の影響をさらに特徴付けるために、Biacore2000システムにおいてSPR実験を使用して、コンジュゲート化VWFのヘパリンへの結合を試験した。簡潔に述べると、ビオチニル化ヘパリンを、ストレプトアビジンでコーティングされたセンサーチップ(GE Healthcare)に70RU/mmでコンジュゲートさせた。次いで、20mMのHEPES(pH7.4)および100mMのNaClを含有する緩衝液において、25μg/mlの非コンジュゲート化、sPEG化、およびhPEG化VWFを、10μl/mlの流速でチップ上に流した。前述同様に、データを収集し、Biacore2000システム(GE Healthcare)においてBIAevaluationソフトウェアパッケージを使用して解析した。図19において見られるように、非コンジュゲート化VWFは、低い親和性でヘパリンに結合した。これは、ヘパリンに全く結合しなかったPEG化VWFと対照的である。これらのデータは、VWFのPEG化が、タンパク質のヘパリンに結合する能力を低減または除去することを示す。
【0158】
(実施例6)
GpIbαへのVWF結合に対してPEG化が与える影響を測定するために、ELISA実験を行った。簡潔に述べると、組換えGpIbαを、抗体をコンジュゲートしたマイクロタイタープレート上に固定化し、pH7.4の、3%ウシ血清アルブミン(BSA)および0.1%Tween20を含有するPBS緩衝液でブロックした。様々な起源由来の0〜500ng/mlのVWFを、3%BSAおよび0.1%Tween20を含有するPBS緩衝液中に透析し、次いでマイクロタイターウェル中で37℃で120分間インキュベートした。次いで結合していないタンパク質を除去し、ウェルを洗浄緩衝液(0.1%Tween20含有PBS緩衝液、pH7.4)で3回洗浄した。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識したポリクローナル抗−VWF抗体(DAKO Cytomatin)を使用して、VWFを検出した。図6において見られるように、PEG化VWFは、非コンジュゲート化VWFと比較してわずかに低い親和性でGpIbαに結合した。これらの結果は、PEG化VWFが、依然としてGpIbαを介する血小板結合能を有することを示す。
【0159】
(実施例7)
VWFは、灌流および静止条件下の両方で白血球に結合する(Penduら、Blood 108巻(12号):3746〜52頁(2006年))。静止結合アッセイを行い、PEG化がこれらの相互作用に対して与える影響を調べた。簡潔に述べると、修飾されていない、hPEG化、およびsPEG化VWFを、マイクロタイターウェル中に固定化し、次いでPMN細胞を前処理し、その後タンパク質コーティングしたウェルに添加し、37℃で60分間インキュベートした(Penduら、Blood 108巻(12号):3746〜52頁(2006年))。次いで、PBS緩衝液、pH7.4でウェルを穏やかに洗浄することによって、結合していない細胞を除去した。図20において見られるように、静止条件下で、sPEG化およびhPEG化VWFはともに、非コンジュゲート化VWFと同様のレベルで、PMN細胞に安定に結合した。このデータは、VWFのコンジュゲーションが白血球との特異的な相互作用に影響を与えないことを示す。
【0160】
(実施例9)
PEG化がFVIII/VWFおよびLRP1間の相互作用に与える影響を特徴付けるため、SPR実験を行った。簡潔に述べると、前述と同様に、LRP1をCM5−バイオセンサーチップ(Biacore Life Sciences)にコンジュゲートし、約8fmol/mmのLPR1でコンジュゲーションを測定した。様々な濃度のコンジュゲート化および非コンジュゲート化VWFおよびFVIIIの両方を、150mMのNaCl、2mMのCaClおよび0.005%(v/v)Tween20を含有する20mMのHepes緩衝液(pH6.5)で希釈した。次いで、タンパク質試料を、20μL/mlの流速でチップ上に流し、Biacore2000システムを使用してBIAevaluationソフトウェアを使用して平衡動態を測定した。以前に見られたように、sPEG化FVIIIは、非コンジュゲート化FVIIIと比較して低い親和性でLRP1に結合し(図21および22)、hPEG化FVIIIは、LRP1に全く結合しなかった(図23)。驚くべきことに、非コンジュゲートおよびPEG化VWFの両方が、FVIIIよりもはるかに低い親和性であるが、LRP1にも結合することが分かった(図24および25)。PEG化VWFは、非コンジュゲート化タンパク質のおよそ半分の親和性でLRP1に結合した。これらのデータは、クリアランス受容体LRP1に対するFVIIIおよびVWFの両方の親和性が、PEGの血液凝固因子へのコンジュゲーションによって減少することを示す。まとめると、これにより、これらの修飾された因子はLRP1クリアランス受容体に対する親和性の減少を示すため、FVIIIおよび/またはVWFのPEG化は、血友病およびフォンウィルブランド病などの血液凝固障害に罹患している患者に投与された前記タンパク質の、in vivoでの半減期を高めることを示す。
【0161】
(実施例10)
LRP1の細胞外ドメインにおいて異なるクラスターは、異なる基質に異なる親和性で結合することが広く認められている(Willnowら、JBC 269巻(22号):15827〜32頁(1994年))。特に、クラスターIIおよびIVは、最大の結合の乱交雑を示し、そのためFVIIIおよびVWFなど血液因子に対する結合親和性に寄与する可能性が高いと考えられている。個々のLRP1クラスターについてFVIII/VWFおよびLRP1間の相互作用を特徴付けるため、コンジュゲート化および非コンジュゲート化血液因子のLRP1クラスターIIおよびIVに対する結合親和性を比較するELISA実験を行った。簡潔に述べると、組換えクラスターIIまたはクラスターIVペプチドを、マイクロタイターウェル中に固定化し、Tris/NaCl緩衝液、pH7.4(50mMのTris、150mMのNaCl、5mMのCaCl、1%のHSA、0.1%のTween20)でブロックした。コンジュゲート化および非コンジュゲート化FVIIIおよびVWFを同じTris/NaCl緩衝液、pH7.4中に透析した。次いで、マイクロタイターウェル中で、血液因子を37℃で120分間インキュベートした。結合していないタンパク質を除去し、ウェルをTris/NaCl緩衝液、pH7.4で3回洗浄した。HRP標識FVIIIモノクローナル抗体(Lentingら、JBC 269巻:7150〜5頁(1994年)またはHRP標識VWFポリクローナル抗体(DAKO Cytomation)で、結合したFVIIIまたはVWFを検出した。図26および27において見られるように、コンジュゲート化および非コンジュゲート化FVIIIは、LRP1クラスターIIおよびIVの両方に結合した。SPRデータと一致して、コンジュゲート化FVIIIは、非コンジュゲート化タンパク質と比較して低い親和性でLRP1クラスターに一定して結合した。同様に、コンジュゲート化および非コンジュゲート化VWFもまた、両方のLRP1クラスターに結合した。この場合もやはりSPR結果と一致して、PEG化VWFは、顕著に低い親和性でクラスターIIおよびIVの両方に再現可能に結合した。
【0162】
(実施例11)
本実施例は、MAL−FMS−OSU−リンカーを使用したPSAによるrFVIIIのコンジュゲーションを示す。rFVIII−PSAコンジュゲートの調製のために、20mMのHepes緩衝液、pH7.4中に、Advate製造プロセスから入手した組換えFVIII溶液(4.5mg/ml)6ml、二官能性リンカーMAL−FMS−OSU(Tsuberyら、JBC 2004年;279巻:38118〜24頁に概説されている通りに調製)を加え(濃度:0.315mg/mgタンパク質)、室温で30分間インキュベートした。次いで、末端SH基を含む誘導体化PSAを調製した。PSA誘導体を、混合物に加え(濃度:27.8mg PSA−SH/mgタンパク質−450倍モル過剰)、さらに2時間、室温でインキュベートした。0.1Mグリシン(最終濃度10mM)および5mMシステイン(最終濃度0.5mM)の水溶液を添加することによって反応を停止させた。予め充填されたButyl Sepharoseカラム(HiTrap Butyl FF5ml、GE Healthcare)を使用して、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって遊離試薬をrFIX−PSAコンジュゲートから分離した。5MのNaCl(50mMのHepes−緩衝液、5MのNaCl、0.01%のTween80、6.7mMのCaCl、pH6.9)を含有する緩衝液をPSA−rFIX含有溶液に加え、最終濃度3MのNaClを得た。次いでこの混合物をカラムに添加し、続いて、10CV平衡緩衝液(50mMのHepes−緩衝液、3MのNaCl、0.1%のTween80、5mMのCaCl、p 6.9)で洗浄し、クエン酸緩衝液、pH7.4(13.6mMのクエン酸Na、20mMのCaCl、20mMのヒスチジン、0.01%のTween80)でrFIX−PSAコンジュゲートの溶出を行った。コンジュゲートを溶出した後、pHを6.9に調製した。溶出物は、2.5mg/mlのタンパク質(BCAアッセイ)を含んでいた。
【0163】
本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示を目的としたものにすぎず、これに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書に引用された全ての出版物、特許、特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリアランス受容体との相互作用を阻害することによって凝固タンパク質の残存を増加させる方法であって、
(a)凝固タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程と、
(b)治療的有効量の、該修飾された凝固因子を含む組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程と
を含み、
該修飾が哺乳動物の血液循環における該タンパク質の残存を増加させる方法。
【請求項2】
前記凝固タンパク質が、第VIII因子またはフォンウィルブランド因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クリアランス受容体が、LFP受容体、vLDL受容体、LDL受容体関連タンパク質、メガリン受容体、およびマクロファージマンノース受容体のクラスに由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クリアランス受容体がLRP1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性ポリマーが、ポリシアル酸およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーが前記凝固タンパク質から切り離し可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが前記タンパク質に安定に結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーが前記タンパク質にリンカーを介して結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
クリアランス受容体との相互作用を阻害することによって第VIII因子の残存を増加させる方法であって、
(a)第VIII因子の結合タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程と、
(b)治療的有効量の、該修飾された結合タンパク質を含む組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する工程と
を含み、
該結合タンパク質がフォンウィルブランド因子である方法。
【請求項10】
前記クリアランス受容体がLRP1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶性ポリマーが、ポリシアル酸およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
第VIII因子が、修飾されたフォンウィルブランド因子とともに投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
投与される前記第VIII因子も水溶性ポリマーで修飾されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
凝固タンパク質クリアランス受容体を阻害する組成物を調製する方法であって、凝固タンパク質を水溶性ポリマーで修飾する工程を含み、該修飾が、凝固タンパク質クリアランス受容体を阻害することによって哺乳動物の血液循環における該タンパク質の残存を増加させる方法。
【請求項15】
前記凝固タンパク質が、第VIII因子およびフォンウィルブランド因子からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記クリアランス受容体が、LFP受容体、vLDL受容体、LDL受容体関連タンパク質、メガリン受容体、およびマクロファージマンノース受容体のクラスに由来する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記受容体がLRP1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記水溶性ポリマーが前記凝固タンパク質から切り離し可能である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記水溶性ポリマーが前記タンパク質に安定に結合されている、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記水溶性ポリマーが、前記タンパク質にリンカーを介して結合されている、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
血液凝固疾患の個体を治療する方法であって、血液凝固疾患に罹患している患者に水溶性ポリマーで修飾された凝固タンパク質を投与する工程を含み、該修飾された凝固タンパク質がそのクリアランス受容体に対する減少した結合親和性を有する方法。
【請求項22】
前記凝固タンパク質が第VIII因子またはVWFである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記水溶性ポリマーが、ポリシアル酸およびポリエチレングリコールからなる群から選択される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記クリアランス受容体がLRP1である、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記血液凝固疾患が、血友病およびフォンウィルブランド病からなる群から選択される、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
個体において第VIII因子欠乏を特徴とする疾患を治療する方法であって、修飾されたVWFを該個体に投与する工程を含み、該VWFが水溶性ポリマーにコンジュゲートされている方法。
【請求項27】
FVIIIを前記個体に投与する工程をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記FVIIIが水溶性ポリマーにコンジュゲートされていない、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記FVIIIが水溶性ポリマーにコンジュゲートされている、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
水溶性ポリマーにコンジュゲートされた凝固タンパク質を含む修飾された凝固タンパク質であって、そのクリアランス受容体に対する減少した結合親和性を有する修飾された凝固タンパク質。
【請求項31】
前記凝固タンパク質がFVIIIまたはVWFのいずれかである、請求項30に記載の修飾された凝固タンパク質。
【請求項32】
前記クリアランス受容体が、LFP受容体、vLDL受容体、LDL受容体関連タンパク質、メガリン受容体、およびマクロファージマンノース受容体のクラスに由来する、請求項30に記載の修飾された凝固タンパク質。
【請求項33】
前記クリアランス受容体がLRP1である、請求項30から32のいずれか一項に記載の修飾された凝固タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30a】
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【図30b】
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【図30c】
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【図30d】
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【図30e(Sheet1)】
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【図30e(Sheet2)】
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【図30e(Sheet3)】
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【図30e(Sheet4)】
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【図30f(Sheet1)】
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【図30f(Sheet2)】
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【図30f(Sheet3)】
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【図30g(Sheet1)】
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【図30g(Sheet2)】
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【図30h(Sheet1)】
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【図30h(Sheet2)】
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【図30h(Sheet3)】
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【図30i(Sheet1)】
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【図30i(Sheet2)】
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【図30i(Sheet3)】
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【図30i(Sheet4)】
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【図30j(Sheet1)】
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【図30j(Sheet2)】
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【図30k】
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【図30l(Sheet1)】
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【図30l(Sheet2)】
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【図30m(Sheet1)】
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【図30m(Sheet2)】
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【図30n】
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【公表番号】特表2011−503101(P2011−503101A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533298(P2010−533298)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082888
【国際公開番号】WO2009/062100
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】