修飾アネキシンタンパク質および血栓症を防止するための方法
修飾アネキシンタンパク質、好ましくはアネキシンVを用いて、出血を増加させることなく、血栓症を防止する。アネキシンは、細胞膜外表面上のホスファチジルセリンに結合し、それによって、血栓形成に必要なプロトロンビナーゼ複合体の結合を防止する。しかし、アネキシンは、止血に必要な血小板凝集に影響を及ぼさない。修飾アネキシン分子は、アネキシンのホモ二量体、1以上のポリエチレングリコール鎖にカップリングしたアネキシン分子、または別のタンパク質にカップリングしたアネキシン分子であることも可能である。アネキシンの分子量を増加させることによって、修飾アネキシンを作製して、持続性療法効果を提供するのに十分な時間、循環中に留める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001]本発明は、一般的に、血栓症を治療するための方法および組成物に関する。より具体的には、本発明は、修飾アネキシンタンパク質およびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002]血栓症、すなわち血管における血塊(血栓)の形成、発展、または存在は、最も一般的な重篤な医学的障害である。動脈血栓症の最も頻繁な例は、冠動脈血栓症であり、これは冠動脈の閉塞につながり、そしてしばしば、心筋梗塞(心臓発作)につながる。北米では毎年130万人を超える患者が、心筋梗塞のため、入院している。標準的な療法では、血栓溶解タンパク質を注入によって投与する。急性心筋梗塞の血栓溶解治療は、治療した1000人の患者あたり、30人の生命を救っていると概算される;にもかかわらず、この障害の30日死亡率は、かなりのものであり続けている(Mehtaら, Lancet 356:449−454(2000))。Mehtaらの開示、並びに本明細書に引用される他の特許、特許出願および刊行物すべての開示は、本明細書に完全に援用される。ボーラス注射は、さらなる利点を伴って、入院前に使用可能であるため、この注射によって、抗血栓剤および血栓溶解剤を投与することが好適であろう(本明細書に援用される、Rawles, J. Am. Coll. Cardiol. 30:1181−1186(1997))。しかし、ボーラス注射は(より漸進的な静脈内注入とは対照的に)、脳出血のリスクを有意に増加させる(Mehtaら、2000)。出血のリスクを増大させることなく、血栓症を防止し、そして/または血栓溶解を増加させることが可能な剤の開発が望ましいであろう。
【0003】
[0003]冠動脈閉塞のため、心臓に適切に酸素が送達されずに引き起こされる、不安定狭心症は、入院の最も一般的な原因であり、アメリカ合衆国だけでも、年間150万の症例がある。冠動脈閉塞患者を血管形成術およびステント植込み術で治療する際、血小板gp IIb/IIIaに対する抗体を使用すると、再狭窄の可能性が減少する。しかし、血管形成術を伴わない不安定狭心症においては、同じ抗体に利益がないことが示されており、そしてこれらの患者では、冠動脈閉塞を防止する、よりよい方法が必要である。
【0004】
[0004]動脈血栓症の別の重要な例は、脳血栓症である。静脈内組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)は、食品医薬品局に認可された、急性虚血性脳卒中の唯一の治療法である。投与は、早ければ早いほどよい(本明細書に援用される、Ernstら, Stroke 31:2552−2527(2000))。しかし、静脈内rtPA投与は、脳内出血リスクの増加と関連する。発達した(full−blown)脳卒中には、しばしば一過性虚血発作(TIA)が先行し、そしてアメリカ合衆国では、毎年、約300,000人がTIAに罹患すると概算される。ボーラスとして投与可能であり、そして脳出血のリスクを増加させることなく、脳血栓症の再発を数日間防止するであろう、安全でそして有効な剤があることが望ましいであろう。血栓症はまた、糖尿病患者および他の患者における末梢動脈閉塞にも寄与し、そしてこうした患者で使用するための有効でそして安全な抗血栓剤が必要である。
【0005】
[0005]静脈血栓症は、股関節形成術および膝関節形成術などの外科手術に頻繁な合併症である。手術野への出血を増加させることなく、血栓症を防止することが望ましいであろう。妊娠および分娩に関連する静脈血栓症にも、同様の考慮が当てはまる。静脈血栓事象を反復しがちな人もあり、そして現在、こうした人は、クマリン型薬剤などの抗血栓剤によって治療される。こうした薬剤の用量は、各患者で力価決定されなければならず、そして有効な抗血栓用量および出血を増加させる用量の間の差は小さい。出血リスクの増加から、抗血栓活性をよりよく分離する治療があることが望ましい。近年導入された抗血栓療法はすべて、血小板gp IIb/IIIaのリガンド、低分子量ヘパリン、および因子Xaの五糖類阻害剤を含めて、出血リスクの増加を伴う(本明細書に援用される、Levineら, Chest 119:108S−121S(2001))。したがって、出血のリスクを増大させることなく、動脈血栓症および静脈血栓症を防止する代替戦略を探索する必要がある。
【0006】
[0006]出血を増加させることなく、動脈血栓または静脈血栓の拡大を阻害するため、止血に関与する機構、および大血管における血栓症に関与する機構の間の潜在的な相違を利用する必要がある。主な止血機構には、血小板微小凝集塊の形成が含まれ、この凝集体が毛細血管に栓をし、そして小血管において、損傷されたかまたは活性化された内皮細胞上に集積する。血小板凝集の阻害剤は、トロンボキサンA2の形成または作用を抑制する剤、gp IIa/IIIbのリガンド、およびADP受容体に作用する薬剤、例えばクロピドグレル(本明細書に援用される、Hallopeter, Nature 409:202−207(2001))を含めて、このプロセスに干渉し、そしてしたがって、出血のリスクを増加させる(Levineら、2001)。微小凝集塊形成とは対照的に、動脈血栓または静脈血栓による閉塞には、血栓に血小板が連続して補充され、そして取り込まれることが必要である。大血管においては、剪断力による剥離を克服するため、血小板は互いに、そして血小板周囲に沈着したフィブリンネットワークに、堅固に結合されなければならない。
【0007】
[0007]血小板の堅固な巨大凝集塊の形成は、細胞性増幅機構および体液性増幅機構によって促進され、これらは互いに強化しあうという証拠が集まってきている。細胞性機構において、血小板の比較的ゆるい微小凝集塊の形成が、ADP、トロンボキサンA2、またはコラーゲンなどのアゴニストの中程度の濃度によって誘導され、これには、血小板α顆粒からの85kDタンパク質Gas6の放出が伴う(本明細書に援用される、Angelillo−Scherrerら, Nature Medicine 7:215−221(2001))。放出されたGas6が、血小板表面上に発現される受容体チロシンキナーゼ(Axl、Sky、Mer)に結合すると、完全な脱顆粒およびこれらの細胞の堅固な巨大凝集塊の形成が誘導される。体液性増幅機構では、活性化された血小板および微小胞表面上に、プロトロンビナーゼ複合体が形成される。これは、トロンビンおよびフィブリンを生成する。トロンビンはそれ自体、強力な血小板活性化因子およびGas6放出の誘導因子である(本明細書に援用される、IshimotoおよびNakano, FEBS Lett. 446:197−199(2000))。完全に活性化された血小板は、血小板周囲に沈着したフィブリンネットワークに堅固に結合する。組織学的観察によって、血小板およびフィブリンはどちらも、ヒトにおいて、安定な冠動脈血栓を形成するのに必要であることが示されている(本明細書に援用される、Falkら Interrelationship between atherosclerosis and thrombosis. Vanstraeteら(監修), Cardiovascular Thrombosis: Thrombocardiology and Thromboneurology.中 フィラデルフィア:Lipincott−Raven Publishers(1998), pp.45−58)。別の血小板接着分子、アンホテリンは、活性化中に血小板表面に転位置し、そしてアニオン性リン脂質に結合する(本明細書に援用される、Rouhainenら, Thromb. Hemost. 84:1087−1094(2000))。Gas6同様、アンホテリンは、血小板凝集の期間中に架橋を形成することも可能である。
【0008】
[0008]これらの増幅機構を阻害するが、初期血小板凝集段階を阻害せず、それによって出血を増加させずに、血栓症を防止することが可能であるかどうかという疑問が生じる。Gas6のターゲット不活性化を用いたマウスの研究によって、細胞性増幅の重要性が、近年、確立されてきている(Angelillo−Scherrerら、2001)。Gas6−/−マウスは、コラーゲンおよびエピネフリンが誘導する血栓症および塞栓症に対して防御されることが見出された。しかし、Gas6−/−マウスは、自然発生的な出血を患わず、そして尾の切り落とし後、正常の出血を有した。さらに、Gas6に対する抗体は、in vitroで血小板凝集を阻害するとともに、コラーゲンおよびエピネフリンによってin vivoで誘導される血栓症も阻害した。原則として、受容体チロシンキナーゼに対するGas6結合に関して競合する抗体またはリガンドを用いて、血栓症を阻害することも可能である。しかし、体液性増幅の強度を考慮して、この段階を阻害することが好ましい可能性もある。理想的には、こうした阻害剤はまた、Gas6が仲介する細胞性増幅機構に対して、さらなる抑制活性を有するであろう。
【0009】
[0009]血小板凝集の細胞性増幅および体液性増幅の両方を防止するための戦略が、アネキシンによって提供され、アネキシンは、そのうちの10がいくつかのヒト組織で発現されている、非常に相同な抗血栓タンパク質のファミリーである(本明細書に援用される、BenzおよびHofmann, Biol. Chem. 378:177−183(1997))。アネキシンは、カルシウムおよび負荷電リン脂質に結合する特性を共有し、これらはどちらも凝血に必要なものである。生理学的条件下では、負荷電リン脂質は、主に、活性化されたかまたは損傷を受けた細胞膜において、ホスファチジルセリン(PS)によって供給される。損なわれていない細胞では、PSは、形質膜二重層の内部小葉に閉じ込められ、そして表面にアクセス不能である。血小板が活性化されると、表面にアクセス可能なPSの量、そしてしたがって、アネキシン結合の度合いが、非常に増加する(本明細書に援用される、Sunら, Thrombosis Res. 69:289−296(1993))。血小板の活性化中、微小胞が血小板表面から放出され、凝血促進活性を持つアニオン性リン脂質が発現される表面積が非常に増加する(どちらも本明細書に援用される、Mertenら, Circulation 99:2577−2582(1999);Chowら, J. Lab. Clin. Med. 135:66−72(2000))。これらは、血小板が仲介する動脈血栓の増殖に重要な役割を果たしうる。
【0010】
[0010]凝血カスケードに関与するタンパク質(因子X、Xa、およびVa)は、表面上にPSを所持する膜に結合し、そして互いに結合し、安定して堅固に結合したプロトロンビナーゼ複合体を形成する。II、V、およびVIIIを含むいくつかのアネキシンは、高い親和性でPSに結合し、それによって、プロトロンビナーゼ複合体の形成を防止し、そして抗血栓活性を発揮する。アネキシンVは、負荷電リン脂質に対して、因子X、Xa、およびVaの親和性よりも高い、非常に高い親和性でPSに結合する(Kd=1.7nmol/l)(本明細書に援用される、ThiagarajanおよびTait, J. Biol. Chem. 265:17420−17423(1990))。活性化されたか、または損傷を受けた内皮細胞表面上の組織因子依存性凝血にもまた、PSの表面発現が必要であり、そしてアネキシンVはこのプロセスを阻害することも可能である(本明細書に援用される、van Heerdeら, Arterioscl. Thromb. 14:824−830(1994))が、アネキシンは、プロトロンビナーゼ生成の阻害におけるより、この活性において、より有効でない(本明細書に援用される、Raoら, Thromb. Res. 62:517−531(1992))。
【0011】
[0011]活性化された血小板および損傷を受けた細胞に対するアネキシンVの結合は、おそらく、血栓において、このタンパク質が選択的に保持されることを説明する。これは、静脈血栓症および動脈血栓症の実験動物モデルにおいて示されてきており(どちらも本明細書に援用される、Strattonら, Circulation 92:3113−3121(1995);ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339−2347(1997))、そしてノイズが減少し、そして安定性が増加した、ヒトにおける血管血栓の医学的画像化に、標識アネキシンを用いることが提唱されてきている(本明細書に援用される、RenoおよびKasina、国際特許出願PCT/US95/07599(WO 95/34315)(1995年12月21日公開))。アネキシンVなどの強力な抗血栓剤の血栓への結合は、血栓の拡大または再発を防止する戦略を提供する。一過性心筋虚血もまた、アネキシンV結合を増加させる(本明細書に援用される、Dumontら, Circulation 102:1564−1568(2000))。ヒトにおけるアネキシンV画像化によって、心内膜心筋生検が血管拒絶を示した場合、移植心臓において、該タンパク質の結合が増加することが示されてきている(本明細書に援用される、Acioら, J. Nuclear Med. 41(5 Suppl.):127P(2000))。この結合は、おそらく、損傷を受けた内皮細胞、並びに、拒絶された心臓中のアポトーシス筋細胞の表面に露出されたPSのためである。したがって、心筋梗塞後にアネキシンを投与すると、血小板および内皮細胞の両方の上の血栓促進性複合体の形成が防止され、それによって血栓症の拡大または再発が防止されるはずである。アネキシンV結合はまた、ヒトにおいて、脳低酸素症後にも増大し(本明細書に援用される、D’Arceuilら, Stroke 2000:2692−2700(2000))、このことは、TIA後にアネキシンを投与すると、発達した脳卒中が発展する可能性が減少しうることを支持する。
【0012】
[0012]アネキシンは、いくつかのin vitroトロンビン依存性アッセイにおいて、並びに静脈血栓症(どちらも本明細書に援用される、Roemischら, Thrombosis Res. 61:93−104(1991);Van Ryn−McKennaら, Thrombosis Hemostasis 69:227−230(1993))および動脈血栓症(ThiagarajanおよびBenedict、1997)の実験動物モデルにおいて、抗凝血活性を示している。著しいことに、抗血栓用量のアネキシンは、処置したウサギにおいて、伝統的なex vivo凝血試験に対して、実証可能な影響を持たず(ThiagarajanおよびBenedict、1997)、そして処置したラットの出血時間を有意には延長しなかった(Van Ryn−McKennnaら、1993)。処置したウサギにおいて、アネキシンは、外科切開への出血を増加させなかった(ThiagarajanおよびBenedict、1997)。したがって、これまでに研究された剤すべての中で唯一、アネキシンは、出血の増加を伴わずに、抗血栓活性を発揮する。アネキシンは、トロンビン以外のアゴニストに誘発される血小板凝集を阻害せず(van Heerdeら、1994)、そして血小板凝集は、主な止血機構である。損傷を受けた血管壁において、そして血管外組織において、組織因子/VIIa複合体もまた、止血効果を発揮し、そしてこの系は、プロトロンビナーゼ複合体が受けるより、アネキシンVによる阻害に、より感受性でなかった(Raoら、1992)。これは、投与したアネキシンVを、可能な限り血管区画に限定することを支持する1つの議論であり;出血のリスクがおそらく減少する。
【0013】
[0013]血栓症を防止するこうした前途有望な結果にもかかわらず、アネキシン類の療法的使用に関連する主な問題は、循環中での半減期が短く、実験動物において、5〜15分間と概算されることであり(Roemischら、1991;Strattonら、1995;ThiagarajanおよびBenedict、1997);アネキシンVもまた、ヒトの循環において短い半減期を有する(本明細書に援用される、Straussら, J. Nuclear Med. 41(5 Suppl.):149P(2000))。大部分のアネキシンは、36kDaタンパク質で予測されるように、尿中に出て失われる(ThiagarajanおよびBenedict、1997)。したがって、アネキシンが、血管区画から血管外区画および尿に出て失われるのを防止し、それによって単回注射後の抗血栓活性を延長させる方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
[0014]本発明は、動脈血栓症または静脈血栓症を防止するための化合物および方法を提供する。組換えヒトアネキシンは、血管区画での半減期が延長されるような方式で修飾される。これは多様な方法で達成可能であり;ポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシン、アネキシンのホモポリマーまたはヘテロポリマー、およびアネキシンと別のタンパク質(例えば免疫グロブリンのFc部分)との融合タンパク質が、3つの態様である。修飾アネキシンは、高い親和性で、活性化された血小板または損傷を受けた細胞の表面上のホスファチジルセリンに結合し、それによって、Gas6そして凝血促進タンパク質の結合、およびプロトロンビナーゼ複合体の形成を防止する。したがって、修飾アネキシンは、血小板凝集を増幅する細胞性機構および体液性機構の両方を阻害し、それによって血栓症を防止する。
【0015】
[0015]1つの態様において、本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)にカップリングしたアネキシンタンパク質、好ましくはアネキシンVを含有する、単離修飾アネキシンタンパク質を提供する。好ましくは、各PEGが少なくとも5kDa、より好ましくは少なくとも10kDa、そして最も好ましくは少なくとも15kDaの分子量を有する、少なくとも2つのPEG鎖を、単一のアネキシン分子にカップリングする。別の態様において、単離修飾アネキシンタンパク質は、少なくとも1つのさらなるタンパク質、例えばさらなるアネキシンタンパク質(ホモ二量体を形成する)または免疫グロブリンのFc部分にカップリングした、アネキシンタンパク質を含有する。さらなるタンパク質は、好ましくは、少なくとも30kDaの分子量を有する。本発明がやはり提供するのは、本発明の修飾アネキシンタンパク質のいずれかの抗血栓に有効な量を含有する薬剤組成物である。
【0016】
[0016]本発明の方法において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質のいずれか1つを抗血栓に有効な量で有する薬剤組成物中、修飾アネキシンを、血栓症のリスクがある被験者に投与する。例えば、冠動脈血栓症、脳血栓症、または一過性脳虚血発作などの動脈血栓症後に、薬剤組成物を投与することも可能である。静脈血栓症に関連する外科手術後に投与することもまた可能である。さらに、動脈血栓症または静脈血栓症に罹りやすい状態を有する被験者、例えば糖尿病、妊娠、または分娩の被験者に投与することも可能である。
【0017】
[0017]本発明がやはり提供するのは、アネキシンのホモ二量体をコードする単離核酸分子、当該核酸分子の少なくとも一部を含有する組換え分子、および当該核酸分子の少なくとも一部を含有する組換え細胞である。本発明の方法において、組換え細胞を、適切な条件下で培養して、アネキシンのホモ二量体を産生する。
【0018】
[0018]本発明はまた、血栓症試験系を用いて、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質に関して、スクリーニングする方法も提供する。試験系を試験修飾アネキシンタンパク質と接触させて、その後、血栓溶解活性を評価し、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での系の活性と比較する。好ましくは、活性化部分トロンボプラスチン時間を測定する。やはり提供するのは、活性化された血小板を試験修飾アネキシンタンパク質と接触させて、そして血小板結合およびプロテインS結合活性を評価することによって、修飾アネキシンタンパク質を同定する方法である。
【0019】
[0019]本発明がやはり提供するのは、修飾アネキシンタンパク質に関してin vivoでスクリーニングする方法である。この方法において、血栓症動物モデルを、試験修飾アネキシンタンパク質と接触させ、その後、試験修飾アネキシンタンパク質のin vivo抗凝血活性および出血増加を評価する。抗凝血活性および時間を、アネキシンの抗凝血活性および時間と比較し、そして出血量を、試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下の動物モデルでの出血と比較する。
【0020】
[0020]したがって、本発明は、血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含む、前記方法を提供する。単離修飾アネキシンタンパク質を、冠動脈血栓症の後、顕性脳血栓症の後、一過性脳虚血発作の後、静脈血栓症に関連する外科手術後、前記被験者が糖尿病であり、そして前記血栓症が動脈血栓症である場合、または妊娠および分娩からなる群より選択される状態の期間中に投与する。単離修飾アネキシンタンパク質を、0.2mg/kg〜1.0mg/kgの範囲で投与する。
【0021】
[0021]本発明はまた、内皮細胞への白血球の付着を阻害する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質の有効量を、こうした方法を必要とする患者に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、該方法はさらに、内皮細胞損傷を減少させることを含む。
【0022】
[0022]本発明はまた、血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、ホスファチジルセリンに対するアネキシンVの親和性の少なくとも90%の、ホスファチジルセリンに対する親和性を有するタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含み、前記タンパク質がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である場合を含む、前記方法を提供する。
【0023】
発明の詳細な説明
[0038]本発明は、出血を増加させることなく、哺乳動物において、血栓症を防止する化合物および方法を提供する。本発明は部分的に、血小板凝集の初期機構が、動脈血栓または静脈血栓の形成に必要な、血小板凝集を増幅する機構とは異なるという認識に頼る。血栓形成を阻害するが、初期の血小板凝集を阻害しないことによって、出血を増加させることなく血栓症を防止することも可能である。
【0024】
[0039]本発明の化合物には、ヒトまたは他の哺乳動物において、産物の半減期が増加するように修飾されているアネキシンアミノ酸配列を含有する、いかなる産物も含まれる。本明細書において、天然存在タンパク質分子のアミノ酸配列に言及するために、「アミノ酸配列」が列挙される場合、「アミノ酸配列」および類似の用語、例えば「ポリペプチド」または「タンパク質」は、該アミノ酸配列を、列挙されたタンパク質に関連する完全天然アミノ酸配列に限定することを意味しない。アネキシンは、相同な、リン脂質結合性膜タンパク質のファミリーであり、このうち10が、哺乳動物で発現される別個の遺伝子産物に相当する(BenzおよびHofmann、1997)。結晶分析によって、アネキシンVに例示される、これまでに研究したファミリーメンバーすべての共通の三次構造が明らかになっている(本明細書に援用される、Huberら, EMBO Journal 9:3867(1990))。コア・ドメインは、リン脂質膜に近接して並置されることも可能な、凹状円盤状構造である。該タンパク質は、4つのサブドメインを含有し、各々、5つのαらせんで構成される70アミノ酸のアネキシン・リピートからなる。アネキシンはまた、異なるアネキシン間で、長さおよびアミノ酸配列が多様である、より親水性のテール・ドメインも有する。アネキシンをコードする遺伝子の配列が周知である(例えば、本明細書に援用される、Funakoshiら, Biochemistry 26:8087−8092(1987)(アネキシンV))。
【0025】
[0040]アネキシンタンパク質には、アネキシンファミリーのタンパク質、例えばアネキシンII(リポコルチン2、カルパクチン1、プロテインI、p36、クロモビンディン(chromobindin)8)、アネキシンIII(リポコルチン3、PAP−III)、アネキシンIV(リポコルチン4、エンドネキシンI、プロテインII、クロモビンディン4)、アネキシンV(リポコルチン5、エンドネキシン2、VAC−アルファ、アンコリンCII、PAP−I)、アネキシンVI(リポコルチン6、プロテインIII、クロモビンディン20、p68、p70)、アネキシンVII(シネキシン)、アネキシンVIII(VAC−ベータ)、アネキシンXI(CAP−50)、およびアネキシンXIII(ISA)が含まれる。
【0026】
[0041]アネキシンIVは、アネキシンVと同じ特性を多く共有する。アネキシンVと同様、アネキシンIVは、カルシウムの存在下で、酸性リン脂質膜に結合する。アネキシンIVは、アネキシンVの近縁構造相同体である。アネキシンIVの配列が知られている。Hammanら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 156:660−667(1988)。アネキシンIVは、カルシウム依存性リン脂質結合タンパク質のアネキシンファミリーに属する。その機構はいまだ明らかに定義されていない。
【0027】
[0042]アネキシンIV(エンドネキシン)は、32kDaのカルシウム依存性膜結合タンパク質である。アネキシンIVの翻訳されたアミノ酸配列は、この種のタンパク質に特徴的な4ドメイン構造を示す。アネキシンIVは、ファミリーの他のメンバーと45〜59%の同一性を有し、そして類似のサイズおよびエクソン−イントロン構成を共有する。ヒト胎盤から単離されたアネキシンIVは、in vitro抗凝血活性を有し、そしてホスホリパーゼA2活性を阻害するタンパク質をコードする。アネキシンIVは、ほぼ上皮細胞でのみ発現される。
【0028】
[0043]アネキシンVIIIは、CA(2+)依存性リン脂質結合性タンパク質(アネキシン)のファミリーに属し、そしてアネキシンVに対して、高い同一性を有する(56%)。Hauptmannら, Eur J Biochem. 1989 Oct 20;185(1):63−71。該タンパク質は最初に、2.2kb血管抗凝血因子−ベータとして単離された。アネキシンVIIIは、細胞外タンパク質でもなく、また細胞表面に会合してもいない。該タンパク質は、in vivoで、血液凝固に役割を果たしていない可能性もある。その生理学的役割は未知のままである。該タンパク質は、ヒト胎盤において、低レベルで発現され、そして肺、内皮および皮膚、肝臓および腎臓に限定された発現を示す。
【0029】
[0044]本発明において、アネキシンタンパク質を、ヒトまたは他の哺乳動物において、半減期が増加するように修飾する。いくつかの態様において、アネキシンタンパク質は、アネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIである。アネキシンの適切な修飾の1つは、有効サイズの増加であり、これによって、血管区画から血管外区画および尿への損失を防止し、それによって単回注射後の抗血栓活性を延長させる。ホスファチジルセリンとの十分な結合親和性を維持するのに有効なサイズのいかなる増加も、本発明の範囲内である。
【0030】
[0045]本発明の1つの態様において、修飾アネキシンは、ホスファチジルセリン(PS)結合アッセイにおいて、アネキシンの機能を実行することが可能であるような方式で、ポリエチレングリコール(PEG)にカップリングされた組換えヒトアネキシンタンパク質を含有する。静脈内投与されたアネキシン−PEGコンジュゲートの抗血栓作用は、未結合(free)アネキシンのものと比較した際に延長されている。PEGにカップリングする組換えアネキシンタンパク質は、アネキシンVタンパク質または別のアネキシンタンパク質であることも可能である。1つの態様において、アネキシンタンパク質はアネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIである。
【0031】
[0046]PEGは、酸化エチレンの反復単位からなり、直鎖、またはいくつかの場合、分枝鎖の両末端のヒドロキシル基で終結する。カップリングするPEG鎖のサイズおよび分子量は、含有する酸化エチレン単位の数に応じ、この数は選択可能である。本発明のためには、PSへの修飾分子の結合機能を保持しつつ、アネキシンに比較して、修飾アネキシンの半減期が増加するような、いかなるPEGのサイズおよびアネキシン分子あたりのPEG鎖の数も使用可能である。上述のように、十分な結合には、非修飾アネキシンのものから減少しているが、それでもなお、Gas6およびプロトロンビナーゼ複合体の因子の結合と競合し、そしてしたがって、血栓症を防止可能な結合が含まれる。コンジュゲート化するPEGの最適分子量は、PEG鎖の数によって変動する。1つの態様において、各々、少なくとも約15kDaの分子量の2つのPEG分子が、各アネキシン分子にカップリングする。PEG分子は直鎖または分枝鎖であることも可能である。PSへのアネキシンのカルシウム依存性結合は、カップリングするPEG分子のサイズだけでなく、PEGが結合するタンパク質上の部位によっても影響を受ける。最適な選択は、所望の特性が保持されることを確実にする。分子の三次元構造を知り、そしてリン脂質膜と分子との相互作用を突然変異分析および結晶分析で分析することによって、PEG付着部位の選択が容易になる(本明細書に援用される、Camposら, Biochemistry 37:8004−8008(1998))。
【0032】
[0047]薬剤送達分野において、PEG誘導体は、可溶性を増進させ、並びに免疫原性、タンパク質分解、および腎臓クリアランスを減少させるため、タンパク質に共有結合(PEG化と称される)させて、広く用いられている。PEGにカップリングした組換え産物の優れた臨床的有効性がよく確立されている。例えば、週1回投与されるPEG−インターフェロン−2aは、C型肝炎ウイルスに対して、未結合インターフェロンの週3回の用量より有意により有効である(本明細書に援用される、Heathcoteら, N. Engl. J. Med. 343:1673−1680(2000))。PEGへのカップリングは、in vivoで組換えタンパク質の半減期を延長させるため(本明細書に援用される、Knaufら, J. Biol. Chem. 266:2796−2804(1988))、並びに組換えタンパク質の酵素分解を防止するため、そして相同産物では時々観察される免疫原性を減少させるため(本明細書に援用される、Hermanson, Bioconjugate techniques. ニューヨーク, Academic Press(1996), pp.173−176の参考文献)、用いられてきている。
【0033】
[0048]本発明の別の態様において、修飾アネキシンタンパク質は、増加した有効サイズを有する、アネキシンタンパク質のポリマーである。有効サイズの増加は、血管区画における半減期の延長、および抗血栓活性の延長を生じると考えられる。1つのこうした修飾アネキシンは、アネキシンタンパク質の二量体である。1つの態様において、アネキシンの二量体は、アネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIのホモ二量体である。別の態様において、アネキシン二量体は、アネキシンVおよび他のアネキシンタンパク質(例えばアネキシンIVまたはアネキシンVIII)、アネキシンIVおよび別のアネキシンタンパク質(例えばアネキシンVまたはアネキシンVIII)またはアネキシンVIIIおよび別のアネキシンタンパク質(例えばアネキシンVまたはアネキシンIV)のヘテロ二量体である。別のこうしたポリマーは、アネキシンIIと、カルシウム結合性タンパク質のS100ファミリーのメンバーである、p11とのヘテロ四量体である。S100タンパク質がアネキシンに結合すると、Ca2+に対するアネキシンの親和性が増加する。バイオコンジュゲート法または組換え法によって、アネキシン・ホモポリマーまたはヘテロ四量体を産生することも可能であるし、該ポリマーを単独でまたはPEGコンジュゲート化型で投与することも可能である。
【0034】
[0049]いくつかの態様において、修飾アネキシンは、PSに対して増加した親和性を有する。実施例4に記載するように、組換えDNA技術のよく確立された方法を用いて、ヒトアネキシンVのホモ二量体(DAV)を調製した。ホモ二量体のアネキシン分子は、ペプチド結合を通じて、柔軟なリンカーに連結される(図1)。いくつかの態様において、柔軟なリンカーは、いずれかの端に、スイベル(swivel)として作用する、グリシンおよびセリン残基が隣接したアミノ酸配列を含有する。リンカーは、好ましくは、1以上のこうした「スイベル」を含む。好ましくは、リンカーは2つのスイベルを含み、これらは、少なくとも2アミノ酸、より詳細には少なくとも4アミノ酸、より詳細には少なくとも6アミノ酸、より詳細には少なくとも8アミノ酸、より詳細には少なくとも10アミノ酸、離れていることも可能である。好ましくは、リンカーの全体の長さは、5〜30アミノ酸、5〜20アミノ酸、5〜10アミノ酸、10〜15アミノ酸、または10〜20アミノ酸である。二量体は、Ca2+およびPSに結合する、単量体の凸状表面が、どちらも、露出したPSにアクセス可能であるような方式でフォールディング可能である。柔軟なリンカーは、当該技術分野に知られ、例えば、Araiら, Proteins. 2004 Dec 1;57(4):829−38に記載される、(GGGGS)(n)(n=3〜4)、およびらせんリンカー(EAAAK)(n)(n=2〜5)がある。実施例IIに記載するように、アネキシンVホモ二量体は、細胞表面上のPSへの結合に際して、アネキシン単量体を競合して追い出す(out−compete)(図2)。
【0035】
[0050]本発明の別の態様において、組換えアネキシンを、免疫グロブリンのFc部分などの別のタンパク質とともに発現させるか、またはこうした別のタンパク質に化学的にカップリングする。こうした発現またはカップリングによって、分子の有効サイズが増加し、血管区画からのアネキシンの損失が防止され、そして抗凝血作用が延長される。
【0036】
[0051]好ましくは、本発明の修飾アネキシンタンパク質は、単離修飾アネキシンタンパク質である。修飾アネキシンタンパク質は、アネキシンII、アネキシンIV、アネキシンV、またはアネキシンVIIIを含有することも可能である。いくつかの態様において、タンパク質は、修飾ヒトアネキシンである。いくつかの態様において、修飾アネキシンは、組換えヒトアネキシンを含有する。本発明にしたがって、単離されたかまたは生物学的に純粋なタンパク質は、天然環境から取り除かれているタンパク質である。こうしたものとして、「単離された」および「生物学的に純粋な」は、必ずしも、タンパク質が精製されている度合いを反映しない。本発明の単離修飾アネキシンタンパク質を天然供給源から得ることも可能であるし、組換えDNA技術を用いて産生することも可能であるし、また、化学合成によって産生することも可能である。本明細書において、単離修飾アネキシンタンパク質は、全長修飾タンパク質またはこうしたタンパク質の相同体いずれであることも可能である。また、(例えばPEG化タンパク質に関して)修飾された全長タンパク質またはこうしたタンパク質の修飾された相同体であることも可能である。
【0037】
[0052]本発明のタンパク質相同体の最小サイズは、対応する天然タンパク質をコードする核酸分子の相補配列と、安定なハイブリッドを形成可能な核酸分子にコードされるのに十分なサイズである。こうしたものとして、こうしたタンパク質相同体をコードする核酸分子のサイズは、核酸組成、並びに核酸分子および相補配列間の相同性パーセント、並びにハイブリダイゼーション条件自体(例えば温度、塩濃度、およびホルムアミド濃度)に依存する。こうした核酸分子の最小サイズは、典型的には、核酸分子がGCリッチであれば、少なくとも長さ約12〜約15ヌクレオチドであり、そしてATリッチであれば、少なくとも長さ約15〜約17塩基である。こうしたものとして、本発明のタンパク質相同体をコードするのに用いられる核酸分子の最小サイズは、長さ約12〜約18ヌクレオチドである。核酸分子が、遺伝子の一部、全遺伝子、または多数の遺伝子あるいはその一部を含むことも可能であるため、こうした核酸分子の最大サイズには限界はない。同様に、本発明のアネキシンタンパク質相同体または修飾アネキシンタンパク質相同体の最小サイズは、長さ約4〜約6アミノ酸であり、サイズは、全長、多価(すなわち、各々機能を有する、1より多いドメインを有する、融合タンパク質)タンパク質、またはこうしたタンパク質の機能部分のいずれが望ましいかに依存する。本発明のアネキシンおよび修飾アネキシン相同体は、好ましくは、血栓形成を防止するアネキシンタンパク質の活性を実行可能であるなど、天然サブユニットに対応する活性を有する。
【0038】
[0053]アネキシンタンパク質および修飾アネキシン相同体は、天然アレル変動または天然突然変異の結果であることも可能である。当該技術分野に知られる技術を用いて、本発明のタンパク質相同体を産生することもまた可能であり、こうした技術には、限定されるわけではないが、タンパク質への直接修飾、あるいは例えば、ランダム突然変異誘発またはターゲッティング突然変異誘発を達成する古典的または組換えDNA技術を用いた、タンパク質をコードする遺伝子の修飾が含まれる。
【0039】
[0054]やはり含まれるのは、アミノ酸配列、配列番号3、配列番号6、配列番号12、配列番号15、またはこれらの配列いずれかを含有するタンパク質をコードする核酸分子のアレル変異体にコードされるタンパク質に、少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、そして最も好ましくは少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含有する、修飾アネキシンタンパク質である。やはり含まれるのは、配列番号3、配列番号6、配列番号12、配列番号15の1より多くを含む修飾アネキシンタンパク質;例えば配列番号3および配列番号12を含み、そしてリンカーに分離されたタンパク質である。アミノ酸配列間および核酸配列間の同一性パーセントを決定する方法は、当業者に知られる。配列間の同一性パーセントを決定する方法には、GCG(登録商標)ウィスコンシン・パッケージTM(Accelrys Corporationより入手可能)、DNAsisTMプログラム(Hitachi Software、カリフォルニア州サンブルノ)、Vector NTI一式(Informax, Inc. メリーランド州ノースベセスダから入手可能)、またはNCBIウェブサイトで入手可能なBLASTソフトウェアなどのコンピュータプログラムが含まれる。
【0040】
[0055]1つの態様において、修飾アネキシンタンパク質には、少なくとも約5アミノ酸、好ましくは少なくとも約50アミノ酸、より好ましくは少なくとも約100アミノ酸、より好ましくは少なくとも約200アミノ酸、より好ましくは少なくとも約250アミノ酸、より好ましくは少なくとも約275アミノ酸、より好ましくは少なくとも約300アミノ酸、そして最も好ましくは少なくとも約319アミノ酸または全長アネキシンタンパク質のいずれか短いほうのアミノ酸配列が含まれる。別の態様において、アネキシンタンパク質は、全長タンパク質、すなわち全長コード領域にコードされるタンパク質、またはその翻訳後修飾されたタンパク質、例えば開始メチオニンおよび/またはシグナル配列または「プロ」配列が取り除かれた成熟タンパク質を含有する。
【0041】
[0056]本発明の修飾アネキシンタンパク質の断片は、好ましくは、少なくとも長さ約5アミノ酸、より好ましくは少なくとも約10アミノ酸、より好ましくは少なくとも約15アミノ酸、より好ましくは少なくとも約20アミノ酸、より好ましくは少なくとも約25アミノ酸、より好ましくは少なくとも約30アミノ酸、より好ましくは少なくとも約35アミノ酸、より好ましくは少なくとも約40アミノ酸、より好ましくは少なくとも約45アミノ酸、より好ましくは少なくとも約50アミノ酸、より好ましくは少なくとも約55アミノ酸、より好ましくは少なくとも約60アミノ酸、より好ましくは少なくとも約65アミノ酸、より好ましくは少なくとも約70アミノ酸、より好ましくは少なくとも約75アミノ酸、より好ましくは少なくとも約80アミノ酸、より好ましくは少なくとも約85アミノ酸、より好ましくは少なくとも約90アミノ酸、より好ましくは少なくとも約95アミノ酸、そしてさらにより好ましくは少なくとも約100アミノ酸を含有する。
【0042】
[0057]1つの態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号4を有する核酸分子にコードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる、1より多いタンパク質配列を含有する。
【0043】
[0058]1つの態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる、1より多いタンパク質配列を含有する(例えば配列番号12−リンカー−配列番号12)。
【0044】
[0059]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる修飾タンパク質である。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる、1より多いタンパク質配列を含有する(例えば配列番号15−リンカー−配列番号15)。
【0045】
[0060]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、および核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、またはこれらの核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する修飾タンパク質である(例えば配列番号3−リンカー−配列番号12または配列番号12−リンカー−配列番号3)。
【0046】
[0061]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、および核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、またはこれらの核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する修飾タンパク質である(例えば配列番号3−リンカー−配列番号15または配列番号15−リンカー−配列番号3)。
【0047】
[0062]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、および核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、またはこれらの核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する修飾タンパク質である(例えば配列番号12−リンカー−配列番号15または配列番号15−リンカー−配列番号12)。
【0048】
[0063]本発明の1つの態様には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、アネキシン遺伝子とハイブリダイズする核酸分子によってコードされる、非天然修飾アネキシンタンパク質が含まれる。本明細書において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、オリゴヌクレオチドを含む核酸分子を用いて、類似の核酸配列を有する分子を同定する、標準的なハイブリダイゼーション条件を指す。こうした標準的な条件は、例えば、本明細書に援用される、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Press(1989)に開示される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、典型的には、ハイブリダイゼーション反応において、探査する(probe)ために用いた核酸分子と、少なくとも約70%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能にする。30%以下のヌクレオチドのミスマッチを許容するハイブリダイゼーションを達成するのに適したハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を計算する式が、例えば本明細書に援用される、Meinkothら, Anal. Biochem. 138:267−284(1984)に開示されている。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探査に用いた核酸分子と、少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。他の態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探査に用いた核酸分子と、少なくとも約90%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。さらに他の態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探査に用いた核酸分子と、少なくとも約95%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。
【0049】
[0064]修飾アネキシンタンパク質には、少なくとも約50ヌクレオチドであり、そして配列番号1、配列番号4、配列番号10、配列番号13からなる群より選択される核酸分子、またはこれらの核酸分子のいずれかの相補体と、好ましくは約20%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、より好ましくは約15%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、より好ましくは約10%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、より好ましくは約5%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、そしてさらにより好ましくは約2%の塩基対ミスマッチを許容する条件下でハイブリダイズする核酸分子にコードされる、タンパク質が含まれる。
【0050】
[0065]本明細書において、アネキシン遺伝子には、コード領域自体に加えて、天然アネキシン遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えばこの遺伝子にコードされるアネキシンタンパク質の産生を調節する制御領域(例えば限定されるわけではないが、転写、翻訳または翻訳後調節領域)が含まれる。1つの態様において、アネキシン遺伝子には、核酸配列、配列番号1が含まれる。別の態様において、アネキシン遺伝子には、核酸配列、配列番号10が含まれる。別の態様において、アネキシン遺伝子には、核酸配列、配列番号13が含まれる。核酸配列決定技術は、完全にエラーがないわけではないため、配列番号1(並びに本明細書に提示する他の配列)は、よくても、本発明のアネキシンタンパク質をコードする核酸分子の見かけの核酸配列に相当することに注目すべきである。
【0051】
[0066]別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号1に類似であるが、同一でない配列を含む、アレル変異体であることも可能である。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号10に類似であるが、同一でない配列を含む、アレル変異体であることも可能である。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号13に類似であるが、同一でない配列を含む、アレル変異体であることも可能である。配列番号1を含むアネキシン遺伝子のアレル変異体は、ゲノムにおいて、配列番号1を含む遺伝子と本質的に同じ遺伝子座(単数または複数)に存在するが、例えば突然変異または組換えによって引き起こされる天然変動のため、類似であるが同一でない配列を有する遺伝子である。アレル変異体は、典型的には、比較中の遺伝子にコードされるタンパク質と類似の活性を有するタンパク質をコードする。アレル変異体はまた、遺伝子の5’または3’非翻訳領域(例えば制御調節領域)に改変を含むことも可能である。アレル変異体は、当業者に周知であり、そしてゲノムが二倍体であるため、既定のヒトの内部で、そして/または2人以上のヒトを含む集団の中で、見出されると予期されるであろう。
【0052】
[0067]本発明の単離修飾アネキシンタンパク質を天然供給源から得ることも可能であるし、組換えDNA技術を用いて産生することも可能であるし、また化学合成によって産生することも可能である。本明細書において、単離修飾アネキシンタンパク質は、全長タンパク質またはこうしたタンパク質の相同体いずれかを含有することも可能である。アネキシンおよび修飾アネキシン相同体の例には、相同体がアネキシンタンパク質に対する免疫応答を誘発可能な少なくとも1つのエピトープを含むように、アミノ酸が欠失し(例えばタンパク質の一部切除(truncated)型、例えばペプチド、あるいはイントロンが除去されるかまたは2つのエクソンが連結される際のタンパク質スプライシング反応によるもの)、挿入され、反転し、置換され、そして/または誘導体化されている(例えばグリコシル化、リン酸化、アセチル化、メチル化、ミリスチル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化および/またはグリセロホスファチジルイノシトールの付加によるもの)、アネキシンおよび修飾アネキシンタンパク質が含まれる。すなわち、当業者に知られる技術を用いて、相同体を免疫原として動物に投与した際、動物は、アネキシンタンパク質の少なくとも1つのエピトープに対して体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を生じるであろう。アネキシンおよび修飾アネキシン相同体を、免疫血清に選択的に結合する能力によって、選択することもまた可能である。こうした活性を測定する方法を本明細書に開示する。アネキシンおよび修飾アネキシン相同体はまた、機能アッセイにおいて、天然アネキシンの機能を実行可能なタンパク質;すなわちホスファチジルセリンに、または活性化された血小板に結合するか、あるいは抗血栓活性を示すことが可能なタンパク質も含む。こうしたアッセイの方法を、本明細書の実施例項および別の箇所に記載する。
【0053】
[0068]機能アッセイにおいて、アネキシンタンパク質の機能を実行する能力によって、本発明の修飾アネキシンタンパク質を同定することも可能である。句「機能アッセイにおいて、その機能を実行可能」は、タンパク質または修飾タンパク質が、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約10%を有することを意味する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約20%を有する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約30%を有する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約40%を有する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約50%を有する。他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約60%を有する。さらに他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約70%を有する。さらに他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約80%を有する。他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約90%を有する。機能アッセイの例を本明細書に記載する。
【0054】
[0069]本発明の単離タンパク質を多様な方法で産生することも可能であり、こうした方法には、こうしたタンパク質を細菌から回収すること、およびこうしたタンパク質を組換え的に産生することが含まれる。本発明の1つの態様は、組換えDNA技術を用いて、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質を産生する方法である。こうした方法には、(a)本発明の修飾アネキシンタンパク質をコードする核酸分子を含有する組換え細胞を培養して、該タンパク質を産生し、そして(b)該タンパク質をそこから回収する工程が含まれる。組換え細胞の産生およびその培養に関する詳細を以下に提示する。句「タンパク質の回収」は、単純に、タンパク質を含有する全発酵培地を回収することを指し、そして必ずしも分離または精製のさらなる工程を含む必要はない。多様な標準的タンパク質精製技術を用いて、本発明のタンパク質を精製することも可能である。
【0055】
[0070]本発明の単離タンパク質は、好ましくは、「実質的に純粋な」型で回収される。本明細書において、「実質的に純粋な」は、機能アッセイにおいて、タンパク質の有効な使用を可能にする純度を指す。
【0056】
修飾アネキシン核酸分子または遺伝子
[0071]本発明の別の態様は、アネキシンVのホモ二量体、アネキシンIVのホモ二量体、アネキシンVIIIのホモ二量体、アネキシンVおよびアネキシンVIIIのヘテロ二量体、アネキシンVおよびアネキシンIVのヘテロ二量体、またはアネキシンIVおよびアネキシンVIIIのヘテロ二量体などの修飾アネキシンタンパク質をコードする遺伝子と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な単離核酸分子である。こうした核酸分子もまた、本明細書において、修飾アネキシン核酸分子と称される。修飾アネキシン遺伝子と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離核酸分子が含まれる。こうした遺伝子の特徴を本明細書に開示する。本発明にしたがって、単離核酸分子は、天然環境から取り除かれている核酸分子(すなわちヒトの操作にさらされたもの)である。こうしたものとして、「単離」は、核酸分子が精製されている度合いを反映しない。単離核酸分子は、DNA、RNA、あるいはDNAまたはRNAいずれかの誘導体を含むことも可能である。
【0057】
[0072]上述のように、修飾アネキシン遺伝子には、コード領域自体に加えて、天然アネキシン遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えばこの遺伝子にコードされるアネキシンタンパク質の産生を調節する制御領域(例えば限定されるわけではないが、転写、翻訳または翻訳後調節領域)が含まれる。本発明の核酸分子は、単離修飾アネキシン核酸分子またはその相同体であることも可能である。本発明の核酸分子は、1以上の制御領域、全長または部分的コード領域、あるいはその組み合わせを含むことも可能である。本発明の修飾アネキシン核酸分子の最小サイズは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、対応する天然遺伝子と、安定なハイブリッドを形成可能な最小サイズである。アネキシン核酸分子はまた、ハイブリッドタンパク質、融合タンパク質、多価タンパク質または一部切除断片をコードする核酸分子も含むことも可能である。
【0058】
[0073]本発明の単離核酸分子を、全(すなわち完全)遺伝子、またはその遺伝子と安定なハイブリッドを形成可能な全遺伝子の一部として、天然供給源から得ることも可能である。本明細書において、句、実体(entity)の「少なくとも一部」は、その実体の機能的側面を有するのに少なくとも十分な、実体の量を指す。例えば、本明細書において、核酸配列の少なくとも一部は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、対応する遺伝子と安定なハイブリッドを形成可能な、核酸配列の量である。
【0059】
[0074]組換えDNA技術(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニングなど)または化学合成を用いて、本発明の単離核酸分子を産生することもまた可能である。単離修飾アネキシン核酸分子には、天然核酸分子およびその相同体が含まれ、限定されるわけではないが、核酸分子が本発明のアネキシンタンパク質をコードするか、またはストリンジェントな条件下で、天然核酸分子単離体と安定なハイブリッドを形成する能力に、こうした修飾が実質的に干渉しないような方式で、ヌクレオチドが挿入され、欠失し、置換され、そして/または反転している、天然アレル変異体および修飾核酸分子が含まれる。
【0060】
[0075]当業者に知られるいくつかの方法を用いて、修飾アネキシン核酸分子相同体を産生することも可能である(例えばSambrookら、1989を参照されたい)。例えば、多様な技術を用いて、核酸分子を修飾することも可能であり、こうした技術には、限定されるわけではないが、古典的突然変異誘発技術および組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発、突然変異を誘導するための、核酸分子の化学処理、核酸断片の制限酵素切断、核酸断片の連結、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および/または核酸配列の選択した領域の突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成、および核酸分子混合物を「構築する」混合物群の連結、並びにその組み合わせが含まれる。核酸にコードされるタンパク質の機能(例えば、相同体が、アネキシンタンパク質に対する免疫応答を誘発する能力、および/または凝血アッセイまたは他の機能アッセイにおいて、機能する能力)に関してスクリーニングすることによって、および/またはストリンジェントな条件下の、単離アネキシンコード核酸とのハイブリダイゼーションによって、修飾核酸の混合物から、核酸分子相同体を選択することも可能である。
【0061】
[0076]本発明の単離修飾アネキシン核酸分子は、本発明の少なくとも1つの修飾アネキシンタンパク質をコードする核酸配列を含むことも可能であり、こうしたタンパク質の例を本明細書に開示する。句「核酸分子」は、主に、物理的核酸分子を指し、そして句「核酸配列」は、主に、核酸分子上のヌクレオチドの配列を指すが、2つの句は交換可能に使用可能であり、特に修飾アネキシンタンパク質をコードすることが可能な核酸分子または核酸配列に関しては、交換可能に使用可能である。
【0062】
[0077]本発明の1つの態様は、ストリンジェントな条件下で、修飾アネキシンタンパク質またはその相同体の少なくとも一部をコードする核酸鎖に、あるいはこうした核酸鎖の相補体に、ハイブリダイズ可能な、修飾アネキシン核酸分子である。本発明の核酸配列いずれかの核酸配列相補体は、配列が引き出された(cited)鎖に相補的な(すなわちこうした鎖と完全二重らせんを形成可能な)核酸鎖の核酸配列を指す。一方の鎖に関して、核酸配列が決定された、すなわち配列番号に代表される、本発明の二本鎖核酸分子は、また、その配列番号の相補体である配列を有する相補鎖も含むことに注目すべきである。こうしたものとして、二本鎖または一本鎖いずれであることも可能な、本発明の核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に示す既定の配列番号および/または本明細書に示されていてもまたいなくてもよいその配列番号の相補体のいずれかと、安定なハイブリッドを形成する核酸分子を含む。相補配列を推定する方法が当業者に知られる。修飾アネキシンタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸配列の対応する領域(単数または複数)と、少なくとも約65パーセント、好ましくは少なくとも約70パーセント、より好ましくは少なくとも約75パーセント、より好ましくは少なくとも約80パーセント、より好ましくは少なくとも約85パーセント、より好ましくは少なくとも約90パーセント、そしてさらにより好ましくは少なくとも約95パーセントの相同性を有する核酸配列を含む、修飾アネキシン核酸分子が含まれる。アネキシンタンパク質またはその相同体のホモ二量体をコード可能な修飾アネキシン核酸分子が含まれる。
【0063】
[0078]アネキシン核酸分子には、配列番号4および配列番号4のアレル変異体、配列番号1および配列番号1のアレル変異体、配列番号10および配列番号10のアレル変異体;並びに配列番号13および配列番号13のアレル変異体が含まれる。
【0064】
[0079]本発明の修飾アネキシンタンパク質の核酸分子を知ると、当業者が、核酸分子のコピーを作製し、加えて、アネキシンタンパク質コード遺伝子のさらなる部分を含む核酸分子(例えば翻訳開始部位および/または転写調節領域および/または翻訳調節領域を含む核酸分子)、および/またはアネキシン核酸分子相同体を得ることが可能になる。本発明のアネキシンタンパク質のアミノ酸配列の一部を知ると、当業者が、こうしたアネキシンタンパク質をコードする核酸配列をクローニングすることが可能になる。さらに、多様な方法で、所望の修飾アネキシン核酸分子を得ることも可能であり、こうした方法には、本発明のアネキシンタンパク質と結合する抗体を用いた、適切な発現ライブラリーのスクリーニング;適切なライブラリーまたはDNAをスクリーニングするのに本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いる、伝統的なクローニング技術;および本発明のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた、適切なライブラリー、あるいはRNAまたはDNAのPCR増幅(ゲノムライブラリーおよび/またはcDNAライブラリーが使用可能である)が含まれる。
【0065】
[0080]本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、修飾アネキシンタンパク質の少なくとも一部をコードする、本発明の他の、好ましくはより長い核酸分子の相補領域と、ハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである核酸分子も含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA、DNA、またはいずれかの誘導体であることも可能である。こうしたオリゴヌクレオチドの最小サイズは、既定のオリゴヌクレオチド、および本発明の別の核酸分子上の相補配列の間に、安定なハイブリッドを形成するのに必要なサイズである。最小サイズの特徴を本明細書に開示する。オリゴヌクレオチドのサイズはまた、本発明にしたがってオリゴヌクレオチドを使用するために十分でなければならない。本発明のオリゴヌクレオチドを多様な適用に使用することも可能であり、こうした適用には、限定されるわけではないが、さらなる核酸分子を同定するプローブとして、核酸分子を増幅するかたまは伸長するプライマーとして、あるいは修飾アネキシン産生を調節する療法適用においての適用が含まれる。こうした療法適用には、こうしたオリゴヌクレオチドを、例えばアンチセンス、三重鎖形成、リボザイムおよび/またはRNA薬剤に基づく技術において使用することが含まれる。本発明は、したがって、こうしたオリゴヌクレオチド、および1以上のこうした技術の使用によって、修飾アネキシンタンパク質の産生を調節する方法を含む。
【0066】
天然野生型細菌細胞、並びに組換え分子および細胞
[0081]本発明はまた、宿主細胞に核酸分子を送達することが可能なベクターいずれかに挿入された、本発明の修飾アネキシン核酸分子を含む、組換えベクターも含む。こうしたベクターは、異種核酸配列、すなわち本発明の修飾アネキシン核酸分子に、天然には隣接して見出されない核酸配列を含有する。ベクターは、RNAまたはDNAいずれか、原核または真核いずれかであることも可能であり、そして典型的にはウイルスまたはプラスミドである。本発明の修飾アネキシン核酸分子をクローニングし、配列決定し、そして/または別の方式で操作する際に、組換えベクターを使用することも可能である。本明細書において、組換え分子と称し、そして以下により詳細に記載する、組換えベクターの1つの型を、本発明の核酸分子の発現に使用することも可能である。いくつかの組換えベクターは、形質転換細胞において、複製が可能である。本発明の組換えベクターに含まれる核酸分子を本明細書に開示する。
【0067】
[0082]ここまでに開示されていたように、本発明の1つの態様は、タンパク質を発現可能な細胞を、タンパク質を産生するのに有効な条件下で培養し、そしてタンパク質を回収することによって、本発明の修飾アネキシンタンパク質を産生する方法である。別の態様において、方法は、タンパク質を発現可能な細胞を、アネキシンタンパク質を産生するのに有効な条件下で培養し、タンパク質を回収し、そしてその有効サイズを増加させる剤にカップリングすることにより、タンパク質を修飾することによって、アネキシンタンパク質を産生することを含む。
【0068】
[0083]1つの態様において、培養する細胞は天然細菌細胞であり、そして修飾アネキシンをこれらの細胞から単離する。別の態様において、培養する細胞は、修飾アネキシンタンパク質を発現可能な組換え細胞であり、この組換え細胞は、本発明の1以上の核酸分子で、宿主細胞を形質転換することによって、産生されている。核酸分子を細胞に挿入することが可能な方法のいずれによって、核酸分子の細胞への形質転換を達成することも可能である。形質転換技術には、限定されるわけではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が含まれる。組換え細胞は、単細胞のままであることも可能であるし、あるいは組織、臓器または多細胞生物に成長することも可能である。形質転換された本発明の核酸分子は、染色体外に留まることも可能であるし、または発現される能力が保持されるような方式で、形質転換(すなわち組換え)細胞の染色体内の1以上の部位に組み込まれることも可能である。宿主細胞を形質転換する核酸分子を本明細書に開示する。
【0069】
[0084]形質転換に適した宿主細胞には、形質転換可能であり、そして導入された修飾アネキシンタンパク質を発現可能ないかなる細胞も含まれる。こうした細胞は、したがって、本発明の少なくとも1つの核酸分子で形質転換された後、本発明の修飾アネキシンタンパク質を産生可能である。宿主細胞は、未形質転換細胞、または少なくとも1つの核酸分子ですでに形質転換された細胞のいずれであることも可能である。本発明の適切な宿主細胞には、細菌、真菌(酵母を含む)、昆虫、動物、および植物細胞が含まれることも可能である。宿主細胞には、細菌細胞が含まれ、大腸菌(E. coli)細胞が特に好ましい。別の宿主細胞は、同族修飾アネキシンタンパク質を産生する、未形質転換(野生型)細菌細胞であり、必要に応じて、病原性が減少した弱毒化株が含まれる。
【0070】
[0085]好ましくは、1以上の転写調節配列を含有する発現ベクターに機能可能であるように連結された、本発明の1以上の核酸分子を各々含む、1以上の組換え分子で、宿主細胞を形質転換することによって、組換え細胞を産生する。句「機能可能であるように連結された」は、分子が宿主細胞に形質転換された際に発現されることが可能であるような方式での、発現ベクターへの核酸分子の挿入を指す。本明細書において、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換し、そして明記する核酸分子の発現を達成することが可能な、DNAベクターまたはRNAベクターである。好ましくは、発現ベクターはまた、宿主細胞内で複製することも可能である。発現ベクターは、原核または真核のいずれであることも可能であり、そして典型的にはウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターは、細菌、真菌、昆虫、動物、および/または植物細胞中を含めて、本発明の組換え細胞中で機能する(すなわち遺伝子発現を指示する)、いかなるベクターも含む。こうしたものとして、本発明の核酸分子は、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、終結配列、複製起点、および組換え細胞と適合し、そして本発明の核酸分子の発現を調節する他の制御配列などの制御配列を含有する発現ベクターに、機能可能であるように連結されることも可能である。本明細書において、転写調節配列には、転写の開始、伸長、および終結を調節可能な配列が含まれる。特に重要な転写調節配列は、転写開始を調節するもの、例えばプロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列である。適切な転写調節配列には、本発明の組換え細胞の少なくとも1つにおいて機能可能な転写調節配列いずれかが含まれる。多様なこうした転写調節配列が、当該技術分野に知られる。転写調節配列には、細菌、酵母、昆虫および哺乳動物細胞で機能するもの、例えば限定されるわけではないが、tac、lac、tzp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージ・ラムダ(λ)(λpLおよびλpR、並びにこうしたプロモーターを含む融合体)、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ接合因子、ピキア(Pichia)・アルコールオキシダーゼ、アルファウイルス・サブゲノムプロモーター(シンドビスウイルス・サブゲノムプロモーターなど)、バキュロウイルス、ヘリオシス・ジー(Heliothis zea)昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40、レトロウイルス・アクチン、レトロウイルス末端反復配列(long terminal repeat)、ラウス肉腫ウイルス、熱ショック、ホスフェートおよびナイトレート転写調節配列、並びに原核細胞または真核細胞において、遺伝子発現を調節可能な他の配列が含まれる。さらなる適切な転写調節配列には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、並びにリンホカイン誘導性プロモーター(例えばインターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が含まれる。本発明の転写調節配列にはまた、アネキシンタンパク質をコードするDNA配列と天然に関連する、天然存在転写調節配列も含まれることも可能である。1つの転写調節配列は、コザック強力プロモーターおよび開始配列である。
【0071】
[0086]本発明の発現ベクターはまた、発現されたアネキシンタンパク質が、タンパク質を産生する細胞から分泌されることを可能にする分泌シグナル(すなわちシグナルセグメント核酸配列)も含有することも可能である。適切なシグナルセグメントには、アネキシンタンパク質シグナルセグメント、または融合タンパク質を含む、本発明のアネキシンタンパク質の分泌を指示することが可能な異種シグナルセグメントいずれかが含まれる。シグナルセグメントには、限定されるわけではないが、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、インターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、組織適合性、およびウイルスエンベロープ糖タンパク質シグナルセグメントが含まれる。
【0072】
[0087]本発明の発現ベクターはまた、本発明の挿入核酸分子の発現を、融合タンパク質として導く、融合配列も含有することも可能である。本発明の修飾アネキシン核酸分子の一部として、融合配列を含むと、核酸分子にコードされるタンパク質の産生、保存、および/または使用中に、安定性を増進することも可能である。さらに、融合セグメントは、修飾アネキシンタンパク質の精製を単純にするツールとして、例えばアフィニティークロマトグラフィーを用いて生じた融合タンパク質の精製を可能にするツールとして、機能することも可能である。タンパク質精製に使用可能な1つの融合セグメントは、8アミノ酸ペプチド配列asp−tyr−lys−asp−asp−asp−asp−lys(配列番号9)である。
【0073】
[0088]適切な融合セグメントは、所望の機能(例えば増加した安定性および/または精製ツール)を有する、いかなるサイズのドメインであることも可能である。1以上の融合セグメントの使用は、本発明の範囲内である。融合セグメントを、アネキシンタンパク質のアミノ末端および/またはカルボキシル末端に連結することも可能である。別の種類の融合タンパク質は、融合セグメントを2以上のアネキシンタンパク質または修飾アネキシンタンパク質に連結する融合タンパク質である。アネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質の簡単な回収を可能にするため、切断に感受性であるように、融合セグメントおよびアネキシンタンパク質間の連結を構築することも可能である。好ましくは、アネキシンタンパク質のカルボキシル末端および/またはアミノ末端のいずれかに付着した融合セグメントを含むタンパク質をコードする融合核酸配列で形質転換した組換え細胞を培養することによって、融合タンパク質を産生する。
【0074】
[0089]本発明の組換え分子は、形質転換しようとする細胞において、核酸分子の発現を有効に制御することが可能な転写調節配列いずれかの少なくとも1つに、機能可能であるように連結された、これまで記載した核酸分子いずれかの少なくとも1つを含むことが可能な分子である。組換え分子には、本発明の1以上の核酸分子が含まれ、1以上の修飾アネキシンタンパク質をコードするものが含まれる。本発明の組換え分子およびその産生を、実施例項に記載する。同様に、組換え細胞には、1以上のアネキシンタンパク質をコードする、本発明の1以上の核酸分子が含まれる。本発明の組換え細胞には、実施例項に開示されるものが含まれる。
【0075】
[0090]組換えDNA技術を使用すると、例えば宿主細胞内の核酸分子のコピー数、こうした核酸分子が転写される効率、生じた転写物が翻訳される効率、および翻訳後修飾の効率を操作することによって、形質転換核酸分子の発現を改善可能であることが、当業者には、認識可能である。本発明の核酸分子の発現を増加させるのに有用な組換え技術には、限定されるわけではないが、核酸分子の高コピー数プラスミドへの機能可能であるような連結、1以上の宿主細胞染色体中への核酸分子の組込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写調節シグナル(例えばプロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳調節シグナル(例えばリボソーム結合部位、シャイン−ダルガノ配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン慣用法に対応するような本発明の核酸分子の修飾、転写を不安定化する配列の欠失、および発酵中の組換えタンパク質産生から組換え細胞増殖を一時的に分離する調節シグナルの使用が含まれる。生じたタンパク質を断片化し、修飾し、または誘導体化することによって、発現された本発明の組換えタンパク質の活性を改善することも可能である。
【0076】
[0091]本発明にしたがって、組換え細胞を、本発明のアネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質を産生するのに有効な条件下で培養して、そして該タンパク質を回収することによって、こうした細胞を用いて、こうしたタンパク質を産生することも可能である。タンパク質を産生するのに有効な条件には、限定されるわけではないが、タンパク質産生を可能にする、適切な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれる。適切な、または有効な培地は、本発明の細胞を培養した場合、該細胞がアネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質を産生可能な、いかなる培地も指す。こうした培地は、典型的には、同化可能な(assimilable)炭水化物、窒素およびホスフェート供給源、並びに適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養素、例えばビタミンを含む水性培地である。培地は、複雑な栄養素を含むことも可能であるし、また定義される最小培地であることも可能である。
【0077】
[0092]本発明の細胞を慣用的な発酵バイオリアクターで培養することも可能であり、こうしたバイオリアクターには、限定されるわけではないが、バッチ、流加、細胞リサイクルおよび連続発酵槽が含まれる。振盪フラスコ、試験管、マイクロタイタープレート、およびペトリ皿中で、培養を行うこともまた可能である。組換え細胞に適した温度、pHおよび酸素含量で、培養を行う。こうした培養条件は、一般の当業者の専門的技術の範囲内である。
【0078】
[0093]産生に用いるベクターおよび宿主系に応じて、生じるアネキシンタンパク質は、組換え細胞内に留まるか;発酵培地内に分泌されるか;2つの細胞膜間の空間内、例えば大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌されるか;あるいは細胞またはウイルス膜の外表面に保持されることも可能である。こうしたタンパク質を精製する方法を、実施例項に開示する。
【0079】
抗体
[0094]本発明はまた、単離抗修飾アネキシン抗体およびその使用も含む。抗修飾アネキシン抗体は、修飾アネキシンタンパク質に選択的に結合可能な抗体である。単離抗体は、天然環境から取り除かれている抗体である。用語「単離」は、こうした抗体の純度の状態を指さない。こうしたものとして、単離抗体は、こうした抗体を含有する抗血清、または多様な度合いまで精製されている抗体を含むことも可能である。本明細書において、用語「選択的に結合する」は、こうした抗体が、それに対して抗体が作製されたタンパク質に、優先的に結合する(すなわち、混合物中の関連しない構成要素から、該タンパク質を区別可能である)能力を指す。一般的に平衡会合定数として表される結合親和性は、典型的には、約103M−1〜約1012M−1の範囲である。当業者に知られる多様な方法を用いて、結合を測定することも可能であり、こうした方法には、イムノブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫アッセイ(例えばELISA)、免疫蛍光抗体アッセイ、および免疫電子顕微鏡が含まれる;例えばSambrookら、1989を参照されたい。
【0080】
[0095]本発明の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであることも可能である。本発明の抗体には、抗体を得るのに用いられるタンパク質の少なくとも1つのエピトープに選択的に結合することが可能な、一本鎖抗体を含む、抗体断片および遺伝子操作された抗体などの、機能上の同等物が含まれる。本発明の抗体にはまた、1より多いエピトープに結合可能なキメラ抗体も含まれる。抗体は、少なくとも部分的に、本発明の修飾アネキシン核酸分子にコードされるタンパク質に反応して作成される。
【0081】
[0096]本発明の抗修飾アネキシン抗体には、修飾アネキシンを投与した動物において作製される抗体が含まれる。本発明の抗修飾アネキシン抗体にはまた、当業者に知られる技術を用いて、本発明の1以上の修飾アネキシンタンパク質に対して、動物において作製され、次いで細胞から回収された、抗体も含まれる。本発明のさらなる抗体は、本発明の修飾アネキシンタンパク質に関して本明細書に開示する技術を用いて、組換え的に産生される。定義されるタンパク質に対して産生される抗体は、そうでなければ、診断アッセイにおける干渉、または療法組成物中で用いた場合には副作用を引き起こしうる、他の物質に対する抗体が、実質的に混入していないため、好適でありうる。
【0082】
[0097]本発明の抗修飾アネキシン抗体は、本発明の範囲内である多様な使用を有する。抗修飾アネキシン抗体をツールとして用いて、発現ライブラリーをスクリーニングし、そして/または本発明の所望のタンパク質をタンパク質および他の混入物質の混合物から回収することも可能である。
【0083】
[0098]本発明の抗修飾アネキシン抗体は、修飾アネキシンタンパク質に選択的に結合可能である。
療法
[0099]上述の修飾アネキシンタンパク質のいずれかを本発明の方法で用いて、医学的方法または状態いずれかによって引き起こされる動脈血栓症または静脈血栓症を治療する。一般的に、本発明で用いる療法剤を有効量で動物に投与する。一般的に、有効量は、(1)治療しようとする疾患の症状を減少させるか、または(2)治療しようとする疾患を治療するのに相当する薬理学的変化を誘導するのに有効な量である。
【0084】
[00100]血栓症に関して、有効な量には、出血のリスクを実質的に増加させることなく、延長された抗血栓活性を発揮するか、または罹患した動物の平均余命を増加させるのに有効な量が含まれる。本明細書において、延長された抗血栓活性は、非修飾アネキシンタンパク質と同量(モル濃度)の活性の時間に対する、修飾アネキシンタンパク質の活性の時間を指す。好ましくは、抗血栓活性は、少なくとも約2倍(factor of two)、より好ましくは少なくとも約5倍(factor of five)、そして最も好ましくは少なくとも約10倍(factor of ten)、延長される。好ましくは、有効量は、修飾アネキシンを投与していない同じ被験者の出血リスクに比較して、出血リスクを実質的に増加させない。好ましくは、出血リスクは非常に小さく、そして最大でも、先行技術で利用可能な別の抗血栓治療に提供されるものより低い。療法的に有効な量の療法剤は、所望の抗血栓効果を引き起こすのに十分な量または用量いずれであることも可能であり、そして部分的に、血栓の状態、タイプ、および位置、患者の大きさおよび状態、並びに当業者に知られる他の要因に応じる。投薬量を、単回用量として、または例えば数週間の経過に渡って分割される、数回の用量として、投与することも可能である。
【0085】
[00101]好ましくは、さらなる血栓症を防止するために、血栓症後に、あるいは被験者が血栓症に罹患しやすいかまたは血栓症のリスクを持つ状態下で、ボーラス注射によるか、または静脈内注入によって、投与を行う。
【0086】
[00102]例えば非経口投与あるいは局所投与、例えば静脈内注射もしくは皮下注射、またはエアロゾルによるものを含む、適切な手段いずれかによって、本発明の療法剤を投与することも可能である。投与法に応じて、多様な単位投薬型で療法組成物を投与することも可能である。本発明の療法組成物の送達法には、例えば注射による、静脈内投与および局所投与が含まれる。送達の特定の様式では、本発明の療法組成物を本発明の賦形剤中に配合することも可能である。本発明の療法剤を、動物いずれか、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトに投与することも可能である。
【0087】
[00103]1つの適切な投与時間は、冠動脈血栓症後に生じ、それによって、出血のリスクを実質的に増加させることなく、血栓症の再発を防止する。修飾アネキシンのボーラス注射は、好ましくは、血栓症後まもなく、例えば入院前に行われる。修飾アネキシンを、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、または細菌酵素などの血栓溶解療法剤と組み合わせて投与することも可能である。
【0088】
[00104]本発明の修飾アネキシンタンパク質を使用する方法には、顕性脳血栓症または一過性脳虚血発作を含む脳血栓症を治療する方法が含まれ、この方法は、脳血栓症を治療する必要がある患者に、有効量の修飾アネキシンタンパク質を投与することによる。発達した脳卒中には、しばしば一過性虚血発作が先行する。末梢動脈における血栓症のリスクが増加した糖尿病患者および他の患者に、修飾アネキシンを投与することもまた可能である。したがって、本発明は、血栓症のリスクが増加した患者において、血栓症のリスクを減少させる方法であって、血栓症のリスクを減少させる必要がある患者に、有効量の修飾アネキシンタンパク質を投与することを含む、前記方法を提供する。成人患者には、約1〜約100mgの投薬範囲の修飾アネキシンを静脈内投与するか、またはボーラスとして投与することも可能である。
【0089】
[00105]本発明はまた、股関節形成術および膝関節形成術などの、いくつかの外科手術に関連する静脈血栓症のリスクを減少させる方法であって、こうした血栓症のリスクを減少させる必要がある患者に、本発明の修飾アネキシンタンパク質の有効量を投与することによる、前記方法も提供する。修飾アネキシン治療は、手術野への出血を増加させることなく、血栓症を防止することも可能である。別の態様において、本発明は、出血を増加させることなく、妊娠および分娩に関連する血栓症を防止する方法であって、血栓症を防止する必要がある患者に、本発明の修飾アネキシンタンパク質の有効量を投与することによる、前記方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、再発性静脈血栓症の治療法であって、再発性静脈血栓症を治療する必要がある患者に、本発明の修飾アネキシンタンパク質の有効量を投与することによる、前記方法を提供する。成人患者には、約1〜約100mgの投薬範囲の修飾アネキシンを、ボーラスとして静脈内投与することも可能である。
【0090】
[00106]本発明はまた、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質に関してスクリーニングする方法であって、血栓症試験系を、血栓症を許容する条件下で、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質と接触させ、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での抗血栓活性と、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での抗血栓活性を比較することにより、ここで、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、抗血栓活性に変化があると、修飾アネキシンタンパク質が血栓活性を調節するものであることの指標となる、前記方法を提供する。1つの態様において、血栓症試験系は、活性化部分的トロンボプラスチン時間を測定するための系である。この方法によって同定されるような、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0091】
[00107]本発明はまた、アネキシン活性に関して、修飾アネキシンタンパク質を同定する方法であって、活性化された血小板と、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質を、結合を許容する条件下で接触させ、そして試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での、試験修飾アネキシン結合活性および血小板のプロテインS結合活性と、非修飾アネキシンタンパク質の存在下での、アネキシン結合活性およびプロテインS結合活性を比較して、これによって、アネキシン活性を持つ修飾アネキシンタンパク質が同定可能である、前記方法も提供する。この方法によって同定される修飾アネキシンタンパク質もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0092】
[00108]さらなる態様において、本発明は、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質に関してスクリーニングする方法であって、in vivo血栓症試験系を、血栓症を許容する条件下で、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質と接触させ、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での抗血栓活性と、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での抗血栓活性を比較することによる、前記方法を提供する。試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、抗血栓活性に変化があると、修飾アネキシンタンパク質が血栓活性を調節するものであることの指標となる。さらに、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、抗血栓活性が維持される時間を、非修飾アネキシンの存在下での抗血栓活性の時間と比較して、試験修飾アネキシンタンパク質に関連する抗血栓活性の延長を決定する。試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での出血の度合いを、例えば尾の出血時間を測定することによって評価し、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での出血の度合いと比較する。1つの態様において、in vivo血栓症試験系は、挙睾筋における、光化学的に誘導された血栓のマウスモデルである。この方法に同定されるような、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0093】
[00109]さらなる態様において、本発明の療法剤は、遺伝子治療に有用である。本明細書において、句「遺伝子治療」は、目的の遺伝物質(例えばDNAまたはRNA)を、宿主に移入して、遺伝性または後天性の疾患または状態を治療するかまたは防止することを指す。目的の遺伝物質は、in vivoでの産生が望ましい産物(例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは機能性RNA)をコードする。例えば、目的の遺伝物質は、療法的価値がある、ホルモン、受容体、酵素または(ポリ)ペプチドをコードすることも可能である。特定の態様において、本発明は、本明細書に援用される、Hughesら、米国特許第6,169,078号に記載されるような、核酸と複合体形成することも可能な、非ウイルス遺伝子治療で使用するための脂質分子種を利用し、該分子種において、脂質の極性頭基および親油性テール基の間に、ジスルフィド・リンカーが提供されている。
【0094】
[00110]本発明のこれらの療法化合物は、DNAと有効に複合体形成し、そして細胞膜を通じて、異種DNAで形質転換しようとする細胞の細胞内空間へのDNAの移入を促進する。さらに、これらの脂質分子は、細胞質における異種DNAの放出を促進し、それによって、ヒトまたは動物における遺伝子治療中の遺伝子トランスフェクションを増加させる。
【0095】
[00111]当該技術分野に知られる多様な方法によって、カチオン性脂質−ポリアニオン性巨大分子凝集塊を形成することも可能である。代表的な方法が、すべて本明細書に援用される、Felgnerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7413−7417(1987);Eppsteinら、米国特許第4,897,355号;Behrら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6982−6986(1989);Banghamら, J. Mol. Biol. 23:238−252(1965);Olsonら, Biochim. Biophys. Acta 557:9(1979);Szokaら, Proc. Natl. Acad. Sci. 75:4194(1978);Mayhewら, Biochim. Biophys. Acta 775:169(1984);Kimら, Biochim. Biophys. Acta 728:339(1983);およびFukunagaら, Endocrinol. 115:757(1984)に開示される。一般的に、(1)カチオン性脂質または(2)共脂質(colipid)と混合したカチオン性脂質のいずれかからなる脂質粒子を調製し、その後、ほぼ室温(約18〜26℃)で脂質粒子にポリアニオン性巨大分子を添加することによって、凝集塊を形成することも可能である。一般的に、保護基の脱保護を導かない条件を選択する。1つの態様において、次いで、約10分間〜約20時間の期間に渡って、混合物が凝集塊を形成するのを可能にするが、約15〜60分間が最も好適に用いられる。特定の脂質型には、他の期間が適切である可能性もある。より長い期間に渡って、複合体を形成することも可能であるが、複合体形成期間がより長くても、通常、トランスフェクション効率のさらなる増進は得られないであろう。
【0096】
[00112]本発明の化合物および方法を用いて、所望の分子、例えばポリヌクレオチドを、ターゲット細胞に細胞内送達することも可能である。所望のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAあるいはその類似体で構成されることも可能である。本発明の方法を用いて送達される、所望のポリヌクレオチドは、異なる機能または活性を提供するヌクレオチド配列、例えば制御機能を有するヌクレオチド、例えばプロモーター配列、またはポリペプチドをコードするヌクレオチドで構成されることも可能である。所望のポリヌクレオチドはまた、細胞において、他のヌクレオチド配列に対してアンチセンスであるヌクレオチド配列を提供することも可能である。例えば、所望のポリヌクレオチドは、細胞において転写された際、細胞において、他のヌクレオチド配列に対してアンチセンスである配列を有するポリヌクレオチドを提供することも可能である。アンチセンス配列は、細胞において、センス鎖配列にハイブリダイズ可能である。一般の当業者は、アンチセンス配列を提供するポリヌクレオチドを容易に調製可能である。細胞に送達される所望のポリヌクレオチドはまた、細胞において、二本鎖DNAと三重鎖複合体を形成することが可能な、ヌクレオチド配列を含むことも可能である。
【0097】
[00113]本発明は、哺乳動物において、再灌流傷害を防止するかまたは減弱するための化合物および方法を提供する。再灌流傷害(RI)は、臓器または組織への血液供給が中断されて、そして間隔を置いた後、回復された際に起こる。内皮細胞および他の細胞におけるリン脂質非対称性の喪失は、RIの発症において、重大な事象と考えられる。これらの細胞の表面上にPSが暴露されると、活性化された単球の結合が可能になる。この結合が、RIの別の重大な事象である、内皮細胞および他の細胞の不可逆的アポトーシスにつながる、一連の事象を誘発する。さらに、細胞表面上のPS、およびそれに由来する小胞は、脂質仲介因子を生成するホスホリパーゼにアクセス可能である。これらの脂質仲介因子は、上述の機構によって生じる損傷を増幅し、そして急性心筋梗塞後の心室性不整脈などの深刻な合併症を生じる。
【0098】
[00114]組換えヒトアネキシン、好ましくはアネキシンVは、血管区画における半減期が延長されるような方式で修飾される。これは、多様な方式で達成可能であり;ポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシン、アネキシンのホモポリマーまたはヘテロポリマー、およびアネキシンと別のタンパク質(例えば免疫グロブリンのFc部分)の融合タンパク質が3つの態様である。どちらも本明細書に完全に援用される、Allison, “Modified Annexin Proteins and Methods for Preventing Thrombosis,” 米国特許出願第10/080,370号(2002年2月21日出願)およびAllison, “Modified Annexin Proteins and Methods for Treating Vaso−Occlusive Sickle−Cell Disease,” 米国特許出願第10/632,694号(2003年8月1日出願)を参照されたい。
【0099】
[00115]修飾アネキシンは、上皮細胞および他の細胞の表面上のホスファチジルセリンに高親和性で結合し、それによって、食細胞の結合、および脂質仲介因子を放出するホスホリパーゼの操作を防止する。したがって、修飾アネキシンは、再灌流傷害の細胞性機構および体液性機構の両方を阻害する。
【0100】
[00116]1つの態様において、本発明は、少なくとも1つのさらなるタンパク質、例えばさらなるアネキシンタンパク質(ホモ二量体を形成する)、ポリエチレングリコール、または免疫グロブリンのFc部分にカップリングした、アネキシンタンパク質を含有する、単離修飾アネキシンタンパク質を提供する。さらなるタンパク質は、好ましくは、少なくとも30kDaの分子量を有する。本発明がやはり提供するのは、本発明の修飾アネキシンタンパク質のいずれかを、再灌流傷害を防止するかまたは減少させるのに有効な量で含有する薬剤組成物である。
【0101】
[00117]本発明のいくつかの方法において、本発明の修飾アネキシンタンパク質のいずれか1つを、再灌流傷害を防止するかまたは減弱させるのに有効な量で有する薬剤組成物中、再灌流傷害のリスクがある被験者に修飾アネキシンを投与する。例えば、臓器移植、関節形成術、あるいは臓器または組織への血液供給が中断されて、そして間隔を置いた後、回復される、他の外科手術の前および後に、薬剤組成物を投与することも可能である。冠動脈血栓症または脳血栓症後に、該組成物を投与することもまた可能である。
【0102】
[00118]修飾アネキシンは、細胞表面上のアクセス可能なPSに結合し(細胞をシールドし)、それによって、単球の付着およびアポトーシスの不可逆的な段階を防止する。さらに、修飾アネキシンは、やはりRIに寄与する脂質仲介因子を生成するホスホリパーゼの活性を阻害する。修飾アネキシンは、死体ドナーから移植された臓器において、冠動脈血栓症および脳血栓症患者において、関節形成術を受ける患者において、そして他の状況において、RIを防止するかまたは減弱させるのに有用であろう。さらに、修飾アネキシンは、出血を増加させることなく、延長された抗血栓活性を発揮するであろう。RIを減弱させる能力と、抗血栓効力のこの組み合わせは、現在用いられているか、または開発中であることが知られるいかなる療法剤にも提示されない、ユニークなプロフィールの望ましい活性を提示する。
【0103】
[00119]実施例6に記載するように、アネキシン・ホモ二量体は、sPLA2の強力な阻害剤である(図4)。アネキシンVは、細胞表面上のPSに高親和性で結合するため、sPLA2および他のホスホリパーゼによる分解からPSをシールドする。
【0104】
[00120]ヒトアネキシンVのホモ二量体を産生すると、PSに対する親和性が増加し、それによって、療法剤としての有効性が改善され;そしてそれだけでなく、サイズが増大し、それによって循環中の存続および作用期間が延長される。36kDaの単量体は、血流から腎臓に迅速に失われた。ウサギにおいて、循環中に注入した標識アネキシンVの80%より多くが、7分間で消失した(ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339, 1997)。カニクイザル(cynomolgus monkey)において、注入したアネキシンVの半減期は、11〜15分であることが見出された(Romischら, Thrombosis Res., 61:93, 1991)。99MTcで標識したアネキシンを注入したヒトにおいて、主要(α)区画に関する半減期は、24分であった(Kemerinkら, J. Nucl. Med. 44:947, 2003)。
【0105】
[00121]好適な方法いずれによって、アネキシン・ホモ二量体を産生することも可能である。組換えDNA技術は、単量体中の1つの利用可能なスルフィドリル基への連結、またはポリエチレングリコールとのカップリングなどの、翻訳後の処置の必要性を回避するため、いくつかの態様において、組換えDNA技術によって、アネキシン・ホモ二量体を産生する。一方のアネキシン単量体のアミノ末端および他方の単量体のカルボキシ末端に付着させた柔軟なペプチドリンカーを使用することによって、組換えホモ二量体化を達成した(図1)。アネキシンV、並びにCa2+およびPSに結合する残基の三次元構造が、X線結晶学および部位特異的突然変異誘発から知られる(Huberら, J. Mol. Biol. 223:683, 1992;Camposら, 37:8004, 1998)。Ca2+結合部位およびPS結合部位は、分子の凸状表面上であり、一方、アミノ末端は、凹状表面上にゆるいテールを形成する。どちらの凸状表面も、細胞表面上のPSにアクセス可能であるような方式で、フォールディング可能であるように、図1に示すアネキシンVホモ二量体を設計する。したがって、このため、二量体は、単量体のものよりも、PSにより高い親和性を有するであろう。実施例4に報告するように、これを実験的に検証した。アネキシンVのホモ二量体の別の利点は、36kDaの分子(単量体)が、循環から腎臓に迅速に失われる一方、73kDaのもの(二量体)は、腎臓ろ過閾値を超えており、失われることはないであろうことである。したがって、療法的に有用な活性は、二量体で延長されるであろう。この予測を、実験で確認した。
【0106】
[00122]再梗塞およびRIを防止するかまたは減弱するため、いくつかの場合、より長い活性期間を有することが望ましい。ホモ二量体化して76kDaにすることによって、アネキシンVの分子量を増加させると、腎臓への損失が防止され、そして循環中の存続が延長される。したがって、こうした修飾アネキシンは、臓器への血液供給が中断される数時間前に投与されたとしても、RIを有効に減弱させることも可能である。
【0107】
[00123]本発明の解説は、アネキシンVがRIを阻害しないと示唆した文献中の報告とは相反する。例えば、d’Amicoらは、ラット心臓において、アネキシンVはRIを阻害しないが、リポコルチンI(アネキシンI)は阻害したと報告する(d’Amicoら, FASEB J. 14:1867, 2000)。リポコルチンIの断片をラットの脳室に注入すると、脳虚血後の梗塞サイズおよび脳浮腫が減少すると報告された(Peltonら, J. Exp. Med. 174:305, 1991);これらの著者らは、再灌流を研究しなかった。肝臓の虚血傷害を防止する戦略の包括的概説(Selznerら, Gastroenterology 15:917, 2003)において、アネキシンは言及されていない。
【0108】
[00124]実施例7に記載するように、マウス肝臓モデル(Teohら, Hepatology 36:94, 2002)において、アネキシンVホモ二量体がRIを減弱する能力を試験した。このモデルでは、肝臓の左側葉および中葉への血流を90分間中断し、そして次いで回復させる。24時間後、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清レベルおよび肝臓組織像によって、肝臓傷害の重症度を評価する。肝動脈をクランプする6時間前に注入した、アネキシンVホモ二量体(DAV)、分子量73kDa、およびポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシンV(PEG−AV)、分子量57kDaは、どちらも、血清ALTレベル(図5)および肝臓組織像に示されるように、RIを減弱するのに非常に有効であった。アネキシンV単量体(AV)は、このモデルにおいて、防御性がより低かった。
【0109】
[00125]したがって、実験の証拠によって、本発明の修飾アネキシンは、被験者において、RIを減弱するのに有用であろうことが確認される。上に論じるように、異なる臓器で起こる型のRIにも、同様の発症機構が関与し、したがって、アネキシンVホモ二量体を、これらすべてにおけるRIを減弱するのに用いることも可能である。
【0110】
[00126]PSに対して親和性が高く、そして循環からの損失が減少しているため、アネキシンVホモ二量体は、延長された抗血栓活性を発揮するであろう。これは、再梗塞を防止するのに臨床的に有用であり、再梗塞は、冠動脈血栓後の重要な事象であることが知られ(Andersenら, N. Engl. J. Med. 349:733, 2003)、そして脳卒中に重要である可能性がある。関節形成術を受ける患者における血栓症の防止もまた、臨床的に重要な必要性を持つ。したがって、抗凝血剤としての修飾アネキシンのさらなる活性には、価値がある。いくつかの実験動物モデルにおいて、アネキシンVは、出血を増加させることなく、動脈血栓症および静脈血栓症を阻害する(Roemischら, Thromb. Res. 61:93, 1991;Van Ryn−McKennaら, Thromb. Hemost. 69:227, 1993;ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339, 1997)。修飾アネキシンは、出血を増加させることなく、抗凝血活性を発揮し、そして再灌流傷害を減弱させる能力を有する。この作用の組み合わせは、いくつかの臨床状況において、有用でありうる。現在使用されているか、または開発中であることが知られる、他の療法剤のいずれも、この活性の望ましいプロフィールを共有しない。
【0111】
[00127]アネキシンV以外のいくつかのアネキシンが、Ca2+およびPSに結合する。これらのいずれを用いて、再灌流傷害を防止するかまたは減少させることも可能である。ホモ二量体化以外の方法によって、アネキシンV、または別のアネキシンの分子量を増加させることも可能である。こうした方法には、他のホモポリマーまたはヘテロポリマーの調製が含まれる。あるいは、組換えDNA技術または化学的操作によって、アネキシンを別のタンパク質にコンジュゲート化することも可能である。ポリエチレングリコールまたは別の非ペプチド化合物へのアネキシンのコンジュゲート化もまた、想定される。
【0112】
[00128]アネキシンVホモ二量体が、よく寛容されるであろうことが予期される。別のアネキシン、アネキシンVIは、保存されるアネキシン配列の天然存在ホモ二量体である。しかし、アネキシンVIは、高親和性でPSに結合しない。アネキシン以外のPS結合タンパク質もまた、本発明の方法で使用可能である。例えば、PSに高親和性を有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(Diazら, Bioconjugate Chem. 9:250, 1998;Thorpeら、米国特許第6,312,694号)を、(例えば再灌流傷害を減少させるかまたは防止するため)本発明にしたがって用いることも可能である。
【0113】
[00129]ジアネキシン(定義されたい−配列番号6か)は、ラットにおいて、用量に関連する抗血栓活性を有する(図7)。ジアネキシンを5.0mg/kg(抗血栓用量のおよそ7倍)で投与した場合であっても、ラット尾を切断した後、血液損失は有意に増加しない。対照的に、同時に行った実験において、140aXa単位/kg(療法用量のおよそ7倍)のフラグミン(低分子量ヘパリン)を投与すると、血液損失が有意に増加した(表4および図10)。APTT(活性化プロトロンビン時間)に関して、用いたジアネキシンの用量のいずれもAPTTを増加させなかったが、20aXa単位/kg(表2)および140aXa単位/kg(表5および図11)のフラグミンのどちらも、APTTを有意に増加させた。ヨウ素標識ジアネキシンのクリアランスは、2区画モデル、9〜14分のα期および6〜7時間のβ期によって表現可能である。後者は、いくつかの種で、アネキシンIV単量体に関して先に報告されたものより有意に長い。ジアネキシンの多くの臨床的適用には、単回ボーラス注射で十分であるため、6.5時間の半減期は、療法的に好適である。ジアネキシンが出血を誘導する、ありそうにない事象の場合も、その効果はかなり早く消失するであろう。ジアネキシンおよびフラグミンはどちらも、尾切断後のラットの出血時間を有意に増加させる(図9および表4)。ジアネキシンの場合、これはホスホリパーゼA2作用およびトロンボキサン生成を阻害するためである可能性もある。ヒトにおいて、薬剤によって、または遺伝子不全の結果として、シクロオキシゲナーゼが阻害される(irhbited)と、出血時間が増加する。ジアネキシンは、血液損失を有意に増加させないため、出血時間が増加したにもかかわらず、ジアネキシンが、初期止血機構に大きな影響を持たないことは明らかである。ジアネキシン投与は、体重に影響を及ぼさない。
【0114】
[00130]本発明はまた、本発明の修飾アネキシンタンパク質を含む療法組成物にも関する。本発明の組成物はまた、薬学的に許容しうる賦形剤、アジュバント、および/またはキャリアーなどの他の構成要素も含むことも可能である。例えば、本発明の組成物を、処置しようとする動物が許容しうる賦形剤中に配合することも可能である。こうした賦形剤の例には、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス溶液、および他の水性生理学的平衡塩溶液が含まれる。非水性ビヒクル、例えばトリグリセリドを用いることもまた可能である。賦形剤はまた、少量の添加剤、例えば等張性および化学的安定性を増進する物質も含有することも可能である。緩衝剤の例には、リン酸緩衝剤、重炭酸緩衝剤、Tris緩衝剤、ヒスチジン、クエン酸塩およびグリシン、またはその混合物が含まれ、一方、保存剤の例には、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが含まれる。標準的配合物は、液体注射物質または固体のいずれかであることも可能であり、固体は、注射用の懸濁物または溶液として、適切な液体中に取り込まれることも可能である。したがって、非液体配合物において、賦形剤は、デキストロース、ヒト血清アルブミン、保存剤等を含むことも可能であり、投与前に、これに無菌水または生理食塩水を添加することも可能である。
【0115】
[00131]本発明の1つの態様は、動物に、本発明の組成物を持続放出することが可能な徐放配合物である。本明細書において、徐放配合物は、徐放ビヒクル中に本発明の組成物を含む。適切な徐放ビヒクルには、限定されるわけではないが、生体適合ポリマー、他のポリマーマトリックス、カプセル、微小カプセル、微小粒子、ボーラス調製物、浸透圧ポンプ、分散デバイス、リポソーム、リポ球体(liposphere)、および経皮送達系が含まれる。本発明の他の徐放配合物には、動物に投与した際、in situで、固体またはゲルを形成する液体が含まれる。好ましい徐放配合物は、生体分解性(すなわち生体内分解性)である。
【0116】
[00132]一般的に、本発明で用いる療法剤は、有効量で動物に投与される。一般的に、有効量は、(1)治療しようとする疾患の症状を減少させるか、または(2)治療しようとする疾患を治療するのに相当する薬理学的変化を誘導するか、いずれかに有効な量である。
【0117】
[00133]療法剤の療法的に有効な量は、所望の効果を引き起こすのに十分な量または用量いずれであることも可能であり、そして部分的に、癌の状態、タイプ、および位置、患者の大きさおよび状態、並びに当業者に容易に知られる他の要因に応じる。投薬量を、単回用量として、または例えば数週間の経過に渡って分割される、数回の用量として、投与することも可能である。
【0118】
[00134]本発明はまた、本発明の療法組成物を利用した治療法にも関する。本発明の方法は、こうした投与が必要な被験者に療法剤を投与することを含む。
[00135]適切な手段いずれによって、本発明の療法剤を投与することも可能であり、これには例えば、非経口投与、局所投与、経口投与、または皮内投与などの局部投与、注射によるもの、またはエアロゾルによるものが含まれる。本発明の1つの態様において、注射によって剤を投与する。罹患した領域いずれに、こうした注射を局部的に注射することも可能である。投与法に応じて、多様な単位投薬型で療法組成物を投与することも可能である。本発明の療法組成物の適切な送達法には、例えば注射による、静脈内投与および局部投与が含まれる。特定の送達様式のため、本発明の療法組成物を、賦形剤中で配合することも可能である。本発明の療法試薬を、動物いずれか、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトに、投与することも可能である。
【0119】
[00136]投与の特定の様式は、治療しようとする状態に応じるであろう。本発明の剤の投与は、体液いずれか、あるいは体液を通じてアクセス可能なターゲットいずれかまたは組織いずれかを介することも可能である。
【0120】
[00137]以下の実施例は、本発明の修飾アネキシンタンパク質の調製、並びに修飾アネキシンタンパク質の抗凝血活性のin vitroアッセイおよびin vivoアッセイを例示する。本発明は、実施例に記載する典型的な研究または実施例に示す特定の詳細に限定されないことが理解されるものとする。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
修飾アネキシン調製
[00138]ヒト組織からアネキシンを精製することも可能であるし、または組換え技術によって産生することも可能である。例えば、Funakoshiら(1987)に記載されるように、ヒト胎盤から、アネキシンVを精製することも可能である。組換え産物の例は、大腸菌におけるアネキシンIIおよびアネキシンVの発現である(Kang, H.−M., Trends Cardiovasc. Med. 9:92−102(1999);ThiagarajanおよびBenedict、1997、2000)。Ca2+が増進する、ホスファチジルセリン含有リポソームへの結合、およびそれに続くEDTAによる溶出に基づく、組換えアネキシンVの迅速でそして効率的な精製法が、Berger, FEBS Lett. 329:25−28(1993)に記載されてきている。固相支持体にカップリングしたホスファチジルセリンの使用によって、この方法を改善することも可能である。
【0122】
[00139]PEG化と称されるプロセスにおいて、いくつかのよく確立された方法のいずれか(Hermanson、1996に概説される)によって、アネキシンをポリエチレングリコール(PEG)にカップリングすることも可能である。本発明には、モノまたはポリ(例えば2〜4)PEG部分を有する、化学的に誘導体化されたアネキシン分子が含まれる。PEG化アネキシンを調製する方法は、一般的に、(a)アネキシンとポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)を、アネキシンが1以上のPEG基に付着する条件下で、反応させ、そして(b)単数または複数の反応産物を得る工程を含む。一般的に、既知のパラメーターおよび所望の結果に基づいて、ケースバイケースで、反応の最適反応条件を決定しなければならない。さらに、反応は、異なる数のPEG鎖を有する異なる産物を産生する可能性もあり、そして所望の産物を得るために、さらなる精製が必要である可能性もある。
【0123】
[00140]EDCに加えてスルホ−NHSを用いる方法を用いて、アネキシンVへのPEGのコンジュゲート化を行うことも可能である。EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩)を用い、スルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホスクシンアミド)を用いて、カルボキシレート基で、活性エステル基を形成する。これは、活性中間体の安定性を増加させ、この中間体がアミンと反応して、安定なアミド連結を生じる。Hermanson、1996に記載されるように、コンジュゲート化を行うことも可能である。
【0124】
[00141]バイオコンジュゲート法を用いて、アネキシンのホモポリマーまたはヘテロポリマーを産生することも可能であり;この方法は、Hermanson、1996に概説される。組換え法を用いて、融合タンパク質、例えば免疫グロブリンのFc部分または別のタンパク質と発現されたアネキシンを産生することもまた可能である。アネキシンIIとp11のヘテロ四量体もまた、大腸菌で産生されている(Kangら、1999)。これらの方法はすべて、アネキシンの分子量を増加させ、そして循環中のアネキシンの半減期を増加させ、そしてその抗凝血効果を延長させる潜在能力を有する。
【0125】
[00142]図1Cに図示され(5’−3’センス鎖)(配列番号4)、そして配列番号6に示すアミノ酸配列をコードするDNA構築物を用いて、アネキシンVのホモ二量体を産生することも可能である。この例では、アネキシンV遺伝子を、EcoRIおよびBglII部位で、発現ベクターpCMV FLAG2(Sigma−Aldrichから入手可能)にクローニングする。アネキシンV配列の前および後の正確な配列は未知であり、そして「x」と示す。したがって、コドン並列が適切であることを確実にするため、修飾の前に構築物を配列決定する必要がある。pCMV FLAG2ベクターには、強力なプロモーターおよび開始配列(コザック)、並びに開始部位(ATG)が内蔵されている。したがって、各アネキシンV遺伝子の前の開始コドンを除去しなければならず、そして第二のアネキシンV遺伝子の終結部に、堅固な発現のための強力な停止コドンを付加しなければならない。該ベクターはまた、タンパク質精製に使用可能な8アミノ酸ペプチド配列(asp−tyr−lys−asp−asp−asp−asp−lys)(配列番号9)も装備している。グリシン−セリン・スイベル端を備えた14アミノ酸スペーサーは、タンデムな遺伝子コードタンパク質間の最適な回転を可能にする。制限部位、PvuIIおよびScaIを付加することによって、必要な場合は、リンカーの除去が可能になる。プロテアーゼ部位を付加することによって、発現後のタンデムタンパク質の切断が可能になる。Amersham Pharmacia BitechからPreScissionTMプロテアーゼが入手可能であり、そして該プロテアーゼを用いて、タンデムタンパク質を切断することも可能である。2つのアネキシンVホモ二量体を生成した。第一の二量体では、二量体のアミノ末端に「Hisタグ」を配置して、精製を容易にした(図1A)。12アミノ酸のリンカー配列の両端にグリシンおよびセリン残基が隣接し、これがスイベルとして働いた。図1Aに構造図を示す。Hisタグ化アネキシンVホモ二量体のアミノ酸配列を以下に提供する:
【0126】
【化1】
【0127】
[00143]リンカーの「スイベル」アミノ酸を太字および下線で示す。このHisタグ化アネキシンVホモ二量体を、大腸菌において、高レベルで発現させ、そしてニッケルカラムを用いて精製した。構築物中のDNAは、正確な配列を有することが示され、そして二量体は、予測される分子量(74kDa)を有した。直線状に操作するPerSeptive Biosystems Voyager−DE Proワークステーション、25kVの静的加速度電圧の陽イオンモード、および40ナノ秒の遅延時間を用いて、MALDI−TOF質量分析を達成した。
【0128】
[00144]Hisタグなしで、第二のヒトアネキシンVホモ二量体を合成した。構造図を図1Bに示す。(非Hisタグ化)アネキシンVホモ二量体のアミノ酸配列を以下に提供する:
【0129】
【化2】
【0130】
[00145]ここでも、リンカーの「スイベル」アミノ酸を太字および下線で示す。この二量体を、大腸菌において、高レベルで発現させ、そしてイオン交換クロマトグラフィー、その後、ヘパリン親和性クロマトグラフィーによって、精製した。イオン交換カラムはBio−Radのものであり(Econo−pak HighQ Support)、そしてヘパリン親和性カラムはAmersham Biosciences(HiTrapヘパリンHP)のものであった。どちらも、製造者の指示にしたがって用いた。ここでも、アネキシンVホモ二量体のDNA配列は正しいことが見出された。質量分析計は、予期されるように、73kDaのタンパク質を示した。アネキシンおよび他のタンパク質のアミノ酸配列は、この実験室において、ペプチド断片の質量分析によって、日常的に決定されている。予期される配列が得られた。
【0131】
[00146]ヒトアネキシンVは、以下のアミノ酸配列を有する:
【0132】
【化3】
【0133】
[00147]図1Cに例示するDNA構築物に示すように挿入されるヒトアネキシンVのヌクレオチド配列は、以下のとおりである:
【0134】
【化4】
【0135】
(実施例2)
in vitroアッセイおよびin vivoアッセイ
[00148]in vitroアッセイは、修飾アネキシンタンパク質が、活性化された血小板に結合する能力を決定する。アネキシンVは血小板に結合し、そしてこの結合は、トロンビンでの血小板の活性化によって、in vitroで顕著に増加する(ThiagarajanおよびTait、1990;Sunら、1993)。好ましくは、アネキシンが血小板に結合し、そしてプロテインSが血小板に結合するのを防止する(Sunら、1993)点で、アネキシンの機能を実行するような方式で、本発明の修飾アネキシンタンパク質を調製する。修飾アネキシンタンパク質はまた、非修飾アネキシンタンパク質が示すのと同じin vitroの抗凝血活性を示す機能も実行する。凝血時間を測定する方法は、活性化部分トロンボプラスチン時間である(本明細書に援用される、Fritsma, Hemostasis and thrombosis in the clinical laboratory(Corriveau, D.M.およびFritsma, G.A.監修)中 J.P. Lipincott Co., フィラデルフィア(1989), pp.92−124)。
【0136】
[00149]in vivoアッセイは、アネキシンタンパク質の抗血栓活性を測定する。アネキシンVは、ラットにおいて、レーザーまたは光化学的に誘導される静脈血栓を減少させることが示されている(Roemischら、1991)。トロンボエラストグラフィーによって機能的に決定した際、アネキシンVの静脈内投与の15〜30分後の間に、最大抗凝血効果が観察された。好ましくは、本発明の修飾アネキシンタンパク質は、こうしたモデルにおいて、非修飾アネキシンより延長された活性を示す。アネキシンVはまた、頸部静脈血栓症のウサギモデルにおいて、フィブリン付着物を減少させることも見出された(Van Ryn−McKennaら、1993)。空気噴射を用いて内皮を取り除き、そしてアネキシンVは、処置した静脈には結合するが、対照の対側性静脈には結合しないことが示された。傷害を受けた静脈における、フィブリン集積の減少は、全身凝血とは関連しなかった。ヘパリンは、傷害を受けた静脈におけるフィブリン集積を阻害しなかった。本発明の修飾アネキシンタンパク質は、好ましくは、静脈血栓症のこのモデルにおいて、アネキシンの機能を実行する。ThiagarajanおよびBenedict、1997は、動脈血栓症のウサギモデルを使用した。電流を適用することによって、左頸動脈に部分的閉塞血栓が形成された。アネキシンV注入は、血流の測定、血栓重量、標識フィブリン沈着および標識血小板集積によって明らかであるように、血栓症を強く阻害した。近年、光化学的に誘導された挙睾筋中の血栓のマウスモデルが発表された(本明細書に援用される、Vollmarら Thromb. Haemost. 85:160−164(2001))。この技術を用いて、所望の動脈または静脈いずれかにおいて、血栓症を誘導することも可能である。本発明の修飾アネキシンタンパク質は、好ましくは、ボーラス注射によって投与された場合であっても、こうしたモデルにおいて、アネキシンの機能を実行する。
【0137】
(実施例3)
[00150]ヒト組換えアネキシンVおよびPEG化ヒト組換えアネキシンVの抗凝血能を、in vitroで比較した。
【0138】
[00151]アネキシンV産生。ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、ヒト胎盤cDNAライブラリーから、特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用い、開始メチオニンから停止コドンまで、cDNAを増幅した。順方向プライマーは、5’−ACCTGAGTAGTCGCCATGGCACAGGTTCTC−3’(配列番号7)であり、そして逆方向プライマーは、5’−CCCGAATTCACGTTAGTCATCTTCTCCACAGAGCAG−3’(配列番号8)であった。増幅された1.1kb断片を、NcoIおよびEcoRIで消化し、そして原核発現ベクターpTRC 99Aに連結した。連結産物を用いて、コンピテント大腸菌株JM105を形質転換して、そして配列決定した。
【0139】
[00152]いくつかの修飾を加えて、Bergerら、1993に記載されるように、細菌溶解物から組換えアネキシンVを単離した。pTRC 99A−アネキシンVで形質転換した大腸菌JM105の一晩培養物を、10mg/lのアンピシリンを含有する新鮮なLuria−Bertrani培地中で、50倍に増殖させた。2時間後、イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドを1mmol/lの最終濃度まで添加した。誘導16時間後、3500g、4℃で15分間、細菌をペレットにした。1mmol/l PMSF、5mmol/l EDTA、および6mol/l尿素を含有するTBS、pH7.5に、細菌ペレットを懸濁した。6にセットした超音波プローブを用いて、氷上で3分間、細菌懸濁物を超音波処理した。溶解物を10,000gで15分間遠心分離し、そして1mmol/lのEDTAを含有する50体積のTBSに対して2回、そして50体積のTBSに対して1回、上清を透析した。
【0140】
[00153]モル比10:15:1で、クロロホルム中、ホスファチジルセリン、凍結乾燥ウシ脳抽出物、コレステロール、およびジセチルホスフェートを溶解し、そしてコニカルフラスコ中で、窒素流で乾燥させることによって、多層リポソームを調製した。TBS(5ml)をフラスコに添加し、そしてボルテックスミキサー中で1分間勢いよく攪拌した。3500gで15分間遠心分離することによって、リポソームを洗浄し、次いで、細菌抽出物とインキュベーションし、そして最終濃度5mmol/lまで塩化カルシウムを添加した。37℃で15分間インキュベーションした後、10,000gで10分間の遠心分離によって、リポソームを沈降させ、そして結合したアネキシンVを10mmol/lのEDTAで溶出した。溶出したアネキシンVをAmicon限外ろ過によって濃縮し、そしてSephacryl S 200カラム上に装填した。アネキシンVは内包容量(included volume)中に回収され、一方、大部分のリポソームは、空隙容量(void volume)中にあった。アネキシンVを含有する分画をプールし、そして10mmol/l Trisおよび2mmol/l EDTA、pH8.1中で透析し、陰イオン交換カラム上に装填し、そして同じ緩衝液中の0〜200mmol/l NaClの直線勾配で溶出させた。精製された調製物は、還元条件下で、SDS−PAGE中、単一のバンドを示した。
【0141】
[00154]上述のように、Hermanson、1996の方法を用いて、上述のように産生したアネキシンVをPEG化した。
[00155]抗凝血アッセイ。アネキシンVおよびPEG化アネキシンVによって誘導される、凝血時間の延長(活性化部分トロンボプラスチン時間)を比較した。Fritsma、1989に記載されるように、クエン酸塩加した正常のプール血漿を用いて、活性化部分トロンボプラスチン時間をアッセイした。上述のように産生した、異なる濃度のアネキシンVおよびPEG化アネキシンVを用いて、凝血時間延長に関する用量−反応曲線を得た。結果を図6に示し、図6は、アネキシンVおよびPEG化アネキシンV用量に対する、凝血時間のプロットである。図に示すように、組換えヒトアネキシンVおよびPEG化組換えヒトアネキシンVの抗凝血強度は、実質的に同等である。観察される小さな相違は、PEG化後の分子量の変化に起因する。この実験は、抗血栓効果を有意に減少させることなく、アネキシンVのPEG化を達成可能であるという、本明細書で行う主張を立証する。
【0142】
(実施例4)
[00156]細胞表面上のPSに対する、組換えアネキシンV(AV)および組換えアネキシンVホモ二量体(DAV)の親和性を比較した。表面上にPSが暴露された細胞を産生するため、ヒト末梢赤血球(RBC)をCa2+イオノフォア(A23187)で処理した。PSを形質膜二重層の内部小葉に移動させるリン脂質転移酵素(フリパーゼ)を、未結合スルフィドリル基に共有結合するN−エチルマレイミド(NEM)で処理することによって不活性化した。細胞内Ca2+が上昇すると、スクランブラーゼ酵素が活性化され、したがって、形質膜二重層の外部小葉のPS量が増加する。
【0143】
[00157]洗浄したヒトRBCを、K緩衝液(80mM KCl、7mM NaCl、10mM HEPES、pH7.4)中で30%ヘマトクリットに再懸濁した。これらを、10mM NEMの存在下、37℃で30分間インキュベーションしてフリパーゼを阻害した。NEM処理細胞を洗浄し、そして2mM CaCl2を添加した同じ緩衝液中で16%ヘマトクリットに懸濁した。A23187(最終濃度4μM)と、37℃で30分間インキュベーションすることによって、スクランブラーゼ酵素を活性化した。この方法の結果、95%を超えるRBCが、フローサイトメトリーによって明示できるPSを、表面上に有した。
【0144】
[00158]FluReporterタンパク質標識キット(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)を用いて、組換えAVおよびDAVをビオチン化した。最終濃度2μg/mlのR−フィコエリトリン−コンジュゲート化ストレプトアビジン(PE−SA)を用いて、ビオチン−AVおよびビオチン−DAVコンジュゲートを視覚化した。Becton Dickinson FACScaliber上でフローサイトメトリーを行い、そしてCell Questソフトウェア(Becton Dickinson、カリフォルニア州サンホセ)でデータを分析した。
【0145】
[00159]AVまたはDAVの結合はいずれも、正常RBCを用いた場合には検出不能であった。しかし、AVおよびDAVはどちらも、PS暴露RBCの少なくとも95%に結合した。PS暴露RBCを、多様な量のAVおよびDAVと、(a)別個に、または(b)1:1モル比で混合して、インキュベーションした後、PE−SAを添加し、そしてフローサイトメトリーを行った。こうした混合物中で、AVまたはDAVのいずれかがビオチン化され、そして結合した各タンパク質の量を上述のようにアッセイした。AVよりもDAVにおいて、ビオチン標識がより高く、これに関して、実験を調整した。
【0146】
[00160]代表的な結果を図2に示す。この実験セットでは、PS暴露RBCを、(a)0.2μgのビオチン化DAV(図2A);(b)0.2μgのビオチン化DAV(図2B);(c)0.2μgのビオチン化AVおよび0.2μgの非ビオチン化DAV;並びに(d)0.2μgのビオチン化DAVおよび0.2μgの非ビオチン化AV(図2D)とインキュベーションした。図2Bおよび図2Dを比較すると、0.2μgの非ビオチン化AVが、ビオチン化DAVの結合にまったく影響がなかったことが示される。しかし、図2Aおよび図2Cを比較すると、0.2μgの非ビオチン化DAVが存在する場合、PS暴露細胞に結合したビオチン化AV量が非常に減少したことが示される。これらの結果によって、DAVおよびAVがRBC上の同じPS結合部位に関して競合するが、親和性が異なり;DAVは、AVよりも高い親和性で、細胞表面上に暴露されたPSに結合することが示される。
【0147】
(実施例5)
[00161]マウス血清に添加した既知の量のアネキシンV単量体(AV)および二量体(DAV)を用いて、細胞結合アッセイを確立した。上述のように露出したPCを持つRBCを、AVおよびDAVの希釈物を含有する血清とインキュベーションした。洗浄後、標識ストレプトアビジンを添加して、そして再度洗浄し、RBCに結合したAVおよびDAVをフローサイトメトリーによってアッセイした。露出したPSがないRBCを用いた場合、結合は検出不能であった。細胞結合によってアッセイした、マウス血清中のAVおよびDAV濃度は、独立のELISAアッセイによって決定したものと非常に相関した。したがって、マウス血漿中のAVおよびDAVは、細胞表面上に露出したPSと相互作用する能力を損なう方式で、他の血漿タンパク質に結合することはない。これらの観察によって、循環中のAVおよびDAVの存続を比較するため、細胞結合アッセイを適用することが正当であることが確認された。
【0148】
[00162]マウスにAVおよびDAVを静脈内注射し、そしてその後、数回、末梢血試料を回収した。各時点で異なるマウスを用いた。代表的な結果を図3に示す。ウサギ(ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339, 1977)、カニクイザル(Roemischら, Thrombosis Res. 61:93, 1991)およびヒト(Kemerinkら, J. Nucl. Med. 44:947, 2003)における観察によって、AVが循環中で短い半減期を有し(それぞれ、7〜24分)、主な損失分は腎臓へのものであることが示される。これらの報告と一致して、マウスにAVを注射した20分後、AVは末梢血中で実質的にまったく検出不能であった(図3B)。しかし、マウスにDAVを静脈内注射すると、120分後であっても、かなりの量のタンパク質が、循環中で検出可能であった(図3E)。したがって、アネキシンVを二量体化すると、循環中の存続が増加し、そしてしたがって、療法効果の期間が増加する。
【0149】
(実施例6)
[00163]ヒトsPLA2(Cayman、ミシガン州アナーバー)の活性に対するアネキシンV(AV)およびアネキシンVホモ二量体(DAV)の阻害効果を比較した。上述のように、NEMおよびA23187で処理したRBC上に露出したPSを、基質として用いた。対照細胞において、AVおよびDAVは、フローサイトメトリーで立証可能であるように、PS暴露RBCに結合することが見出された。PS曝露細胞をsPLA2とインキュベーションするとPSが除去され、したがって細胞はもはやアネキシンに結合しなかった。PS暴露細胞をPLA2とインキュベーションする前に、AVまたはDAVで処理すると、PSは除去されない。細胞をCa2+キレート剤に曝露することも可能であり、該キレート剤はPSからAVまたはDAVを解離させ、そして続いて標識AVが結合すると、細胞表面上に残ったPSが示される。こうしたアッセイにおいて、AVおよびDAVを力価決定すると、どちらも、細胞表面PSに対するsPLA2活性の強力な阻害剤であることが示される。
【0150】
[00164]ホスホリパーゼの阻害はまた、別の方法によっても立証可能である。sPLA2の活性は、溶血性であるリソホスファチジルコリン(LPS)を放出する。したがって、溶血アッセイにおいて、PLA2に対するAVおよびDAVの阻害効果を比較することが可能である。図4に示すように、AVおよびDAVはどちらもPLA2の作用を阻害し、DAVが幾分、より有効であった。pPLA2で60分間インキュベーションした後、溶血は、DAVまたはAVの非存在下と比較して、その存在下で強く減少した。これらの結果から、アネキシンVのホモ二量体は、分泌性PLA2の強力な阻害剤であると結論付け可能である。したがって、アネキシンVのホモ二量体は、再灌流傷害の発症に寄与すると考えられる、トロンボキサンA2、並びにリソホスファチジルコリンおよびリソホスファチジン酸などの仲介因子の形成を減少させるはずである(Hashizumeら Jpn. Heart J., 38:11, 1997;Okuzaら, J. Physiol., 285:F565, 2003)。
【0151】
(実施例7)
[00165]温虚血−再灌流傷害のマウス肝臓モデルを用いて、修飾アネキシンが再灌流傷害(RI)に対して防御するかどうかを確認し、修飾アネキシンとアネキシンVの活性を比較し、そして修飾アネキシンの活性の期間を決定した。モデルは、Teohら(Hepatology 36:94, 2002)に記載されている。体重18〜25gの雌C57BL6マウスを用いた。ケタミン/キシラジン麻酔下、非外傷性の微小血管クランプを用いて、肝臓の左側葉および中葉への血液供給を90分間閉塞させた。次いで、血管クランプを除去して、再灌流を確立した。動物を回復させ、そして24時間後、放血によって屠殺した。血清アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)活性の測定および組織学的検査によって、肝臓損傷を評価した。対照群を麻酔および擬似開腹術に供した。アネキシンVおよび修飾アネキシンの活性をアッセイするため、4匹のマウスの群を用いた。第一の群の各マウスに、25マイクログラムのアネキシンV(AV)を、第二の群の各マウスに、25マイクログラムのアネキシン・ホモ二量体(DAV)を、そして第三の群のマウスに、2.5マイクログラムの、ポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシンV(PEG−AV、57kDa)を静脈内注射した。対照には、生理食塩水、またはアネキシンを保存したHEPES緩衝液を投与した。第一の実験セットでは、肝動脈枝をクランピングする数分前に、アネキシンを投与した。第二の実験セットでは、アネキシンおよびHEPESを、虚血開始の6時間前に投与した。それぞれの実験結果を図5に要約する。
【0152】
[00166]虚血直前にアネキシンV(AV)を投与した動物では、わずかな防御が観察された。対照的に、虚血直前または6時間前のいずれかに、アネキシン二量体(DAV)またはPEG−AVを投与した動物では、RIに対する劇的な防御が示された。組織学的研究によって、これらの群では肝細胞壊死がほとんどまたはまったくないことが確認された。結果は、修飾アネキシン(DAVおよびPEG−AV)が、肝臓において、虚血再灌流傷害に対して、AVよりも有意により防御性であることを示す。さらに、修飾アネキシン(DAVおよびPEG−AV)は、RIを減弱する能力を少なくとも6時間保持する。
【0153】
[00167]擬似手術した動物では、循環中のALTレベルは非常に低かった。虚血直前に生理食塩水を投与するか、または虚血6時間前にHEPESを投与した動物では、ALTレベルが非常に高く、そして組織像によって、重度の肝細胞壊死があったことが確認された。虚血直前に投与したHEPESは、RIに対して防御活性を有することが見出された。
【0154】
(実施例8)
[00168]血栓症研究
[00169]各8匹のラットの6群を用いた。この研究用のラットは、雄ウィスターラットであり、体重約300グラムであった(Charles River Nederland、オランダ・マーストリヒト)。動物をマクロロン(macrolon)・ケージで飼育し、そして標準的げっ歯類食物ペレットおよび酸性化水道水を随意に与えた。実験は、オランダの動物実験に関する法律が推進する、規則および規制にしたがった。ラットをFFM(フェンタニル/フルアニソン/ミダゾラム)で麻酔し、そして加熱パッド上に置いた。大腿静脈にカニューレを挿入し、そして生理食塩水を満たした。下大静脈を単離し、そして結紮または焼灼によって、側枝を閉じた。左腎静脈下の大静脈(caval vein)周囲にゆるい結紮を適用した。第一のものの1.5cm上流、分岐の上に、第二のゆるい結紮を適用した。大腿静脈カニューレを介して、試験(または対照)化合物を静脈内投与し、そして次いで、カニューレを生理食塩水で勢いよく洗浄した。
【0155】
[00170]試験化合物または対照化合物には、リン酸緩衝生理食塩水1.0ml/kg体重(10分);リン酸緩衝生理食塩水1.0ml/kg体重(12時間);ジアネキシン0.04mg/kg体重;ジアネキシン0.2mg/kg体重;ジアネキシン1.0mg/kg体重(10分);ジアネキシン1.0mg/kg体重(12時間);フラグミン20aXa U/kg体重が含まれる。10分後(または2群では12時間後)、組換えヒトトロンボプラスチン(0.15ml/kg)を静脈カニューレ内に迅速に注入し、カニューレを生理食塩水で勢いよく洗浄し、そして正確に10秒後、腎静脈近くの下流結紮を閉じた。9分後、クエン酸塩加静脈血試料を得て、そして氷上に置いた。
【0156】
[00171]1分後(10分の時点)、分岐近くの上流結紮を閉じ、そしてこのセグメントに形成されていた血栓を回収した。血栓を生理食塩水中で簡単に洗浄し、水分を吸い取り、そして湿重量を測定した。2000g、4℃で15分間の遠心分離によって、クエン酸塩加血漿を調製し、そして分析のため、−60℃で保存した。血栓誘導を、化合物注入の12時間後に行った2群では、異なるi.v.注射法を用いた。ラットをs.c.DDF(ドミトール/ドルミカム/フェンタニル)で麻酔し、そしてペニス静脈を介して注射した。次いで、ラットに解毒剤(アネキセート/アンチセダン/ナロキソン)をs.c.投与し、そしてケージ中に一晩置いた。
【0157】
[00172]大腿静脈カニューレを挿入した後、ラットに静脈内注入した。化合物を静脈内注入した10分後(2つの群では、注入の12時間後)、希釈したトロンボプラスチンをi.v.注入し、そして10秒後、下大静脈を結紮した。結紮の9分後、血液を収集し、そしてクエン酸塩加血漿を調製した。結紮の10分後、血栓が形成されたセグメントを結紮し、そして血栓を回収し、そして重量測定した。aPTT(秒)もまた測定した。0.04mg/kgで、ジアネキシンは、血栓重量を約40%減少させた。ジアネキシン(1mg/kg)注入の12時間後、血栓形成は、対照と異ならなかった。体重はパラメトリックANOVAでは群間に相違はなかった。血栓湿重量(表1)は、0〜44.5mgの範囲であった。
【0158】
[00173]表1:10分間血栓症研究における血栓湿重量(mg)に対する処置の効果
【0159】
【表1】
【0160】
パラメトリックANOVAによって;F=24.48;p<0.00001
すべての群<生理食塩水対照(p<0.01)
3つのジアネキシン群のパラメトリックANOVAによって:
F=4600、p<0.0001
1mg=0.2mg<0.04mg;p<0.001
[00174]処置は、血栓重量に有意な効果を有した。フラグミン(20aXa U/kg)およびジアネキシン(0.04、0.2および1.0mg/kg)のどちらも、血栓重量を有意に減少させた(p<0.0001)。実施例7および本文の表を参照されたい。ジアネキシンでは、効果は用量依存性であった。APTT値を表2および図8に示す。
【0161】
[00175]表2:10分間血栓症研究におけるAPTT(秒)に対する処置の効果
【0162】
【表2】
【0163】
パラメトリックANOVAによって;F=6.66;p=0.0005
フラグミン群>他のすべての群(p<0.05)
生理食塩水群およびジアネキシン群は、有意には異ならない
[00176]フラグミンは、すべての他の群に比較して、APTTを有意に増加させた。APTTは、フラグミン群でのみ、わずかに、しかし有意に増加していた。ジアネキシン群は、生理食塩水対照群とは異ならなかった。
【0164】
[00177]血栓形成を誘導する12時間前にラットを処置した、第二の血栓症研究において、生理食塩水注入対照群およびジアネキシン処置群の間に有意な相違は見られなかった(表3)。
【0165】
[00178]表3:12時間血栓症研究における血栓湿重量(mg)に対する処置の効果
【0166】
【表3】
【0167】
*血栓誘導までの平均時間:13.6時間
t検定によって有意差なし
[00179]生理食塩水群の血栓重量はまた、10分間血栓症研究の生理食塩水対照群の血栓重量(25.7±12.3mg、表1を参照されたい)と有意には異ならなかった。APTT値は異ならなかった(未提示)。
【0168】
[00180]血栓誘導の10分前にジアネキシンを静脈内注入(0.2mg/kgおよび1.0mg/kg)すると、ウェスラー(Wesslar)ラット静脈血栓モデルにおいて、血栓形成が強く阻害された。
【0169】
(実施例9)
[00181]出血研究。3群を研究した。実施例8に記載するように、8匹のラットの群を用いた。ラットをイソフルランで麻酔し、挿管して、そして酸素を供給し、そして加熱パッド上に置いた。大腿静脈を介してカニューレを挿入し、そして生理食塩水で満たした。試験化合物または対照化合物を、カニューレを介して注入し、そして次いで、カニューレを生理食塩水で勢いよく洗浄した。試験化合物または対照化合物は、リン酸緩衝生理食塩水1.0ml/kg体重;ジアネキシン5.0mg/kg体重;フラグミン140aXa Ukg体重であった。試験化合物注入の10分後、ラット尾を水平位置に置き、そして次いで、定義した、尾からの固定距離で、鋏によって切断した。続いて、ろ紙によって、尾から滲み出た血をすべて穏やかに拭き取ることによって、尾からの出血を測定した。出血が止まった時間を測定した。いずれも記録した。尾を切断した30分後に、実験を終結させた。実験終了の直前に、クエン酸塩加血液試料をカニューレから得た。2000g、4℃で15分間の遠心分離によって、クエン酸塩加血漿を調製し、そして分析のため、−60℃で保存した。0.05% Triton X−100(登録商標)を含有する10mMリン酸緩衝液(pH=7.8)20ml中で、ろ紙を抽出した。リン酸緩衝液のヘモグロビン含量を測定することによって、血液損失量を測定した(Drabkinのシアン化カリウム1フェリシアン化カリウム法)。体重(表3)は、パラメトリックANOVAによれば、群間で異ならなかった。ジアネキシン(5mg/kg)またはフラグミン(140Ukg)のいずれかによる処置は、出血時間をほぼ2倍にした(図9、表3)が、これらの効果は、有意ぎりぎりでしかなかった(ノンパラメトリックANOVA;KW=5.72、p=0.057)。血液損失(図10、表4)は、対照群に比較して、ジアネキシン群でわずかに増加し、そしてフラグミン群でほぼ2倍であった。
【0170】
[00182]表4.尾出血研究における出血時間および血液損失
【0171】
【表4】
【0172】
[00183]しかし、これらの相違は有意ではなかった(ノンパラメトリックANOVA、p=0.490)。APTT値を表5および図11に示す。
[00184]表5.尾出血研究におけるAPTT(秒)に対する処置の効果
【0173】
【表5】
【0174】
[00185]フラグミンはAPTTをほぼ2倍にしたが、ジアネキシン群のAPTTは、生理食塩水対照群と異ならなかった。
[00186]血液損失およびaPTTは、尾出血研究において、フラグミン群では、ジアネキシン群のほぼ2倍であった。5.0mg/kg i.v.のジアネキシンは、切断したラット尾からの出血を誘導したが、140aXa U/kgのフラグミンの注入後より、血液損失が少なかった。
【0175】
(実施例10)
[00187]クリアランス研究。ラットに放射標識ジアネキシンを注射し、5分、10分、15分、20分、30分、45分および60分、並びに2時間、3時間、4時間、8時間、16時間および24時間後に血液試料を得て、そして血液放射能を測定して、血液消失曲線を構築した。血液からのジアネキシンの消失は、2区画モデルによって表現され、α期には、約75〜80%の消失(t/2、約10分)、そしてβ期には、15〜20%の消失(t/2、約400分)があった。それぞれ半減期9〜14分および6〜7時間の2区画モデルによって、クリアランスを表現することも可能である。各3匹の雄ウィスターラット(300グラム)を用いて、2回の実験を行った。Macfarlaneの方法によって、ジアネキシンを125Iで標識し、そして未結合(free)Sephadex G−50によって、標識タンパク質を分離した。NaI(5mg/kg)を注射して、標識が甲状腺に取り込まれるのを防止した後、大腿静脈カテーテルを介して(ラット1および2)、またはペニス静脈を介して(ラット3)、約8x106cpm(50μlのタンパク質溶液を生理食塩水で0.5mlに希釈)を注射した。その後、明記した時点で(以下の表を参照されたい)、尾静脈から血液試料(150μl)を得て、そして100μlをカウントした。最後の血液試料を採取した後、ネンブタールi.v.によって、ラットを屠殺し、そしてカウント用に、肝臓、肺、心臓、脾臓および腎臓(片)を収集した。
【0176】
[00188]クリアランス研究のための試料採取スキーム:
【0177】
【表6】
【0178】
[00189]45分および24時間の間に収集したデータから、β期パラメーターを計算した。次いで、サブトラクション法によって、5分および45分の間のデータから、α期パラメーターを計算した。サブトラクション法を用いて、2区画モデルによって、血液放射能曲線を分析した。α期およびβ期の線形相関係数は、実験1では−0.99および−0.99、そして実験2では−0.95および−0.96であった。クリアランス・パラメーターを表6に示す。
【0179】
[00190]表6.ジアネキシン・クリアランス・パラメーター
【0180】
【表7】
【0181】
[00191]図15および16は、α期およびβ期を重ね合わせたクリアランス曲線を示す。表7では、肺、心臓、肝臓、脾臓および腎臓に回収されたcpm(組織消化後)を示す。ジアネキシン注入2時間後に肺で高いカウント数が見られたことが注目される。
【0182】
[00192]表7.125I−ジアネキシン注入の2時間、8時間、および24時間後の、選択された組織に回収された放射能
【0183】
【表8】
【0184】
(実施例11)
[00193]虚血−再灌流傷害(IRI)の発症およびジアネキシン作用様式を確かめるため、研究を行った。虚血−再灌流傷害の発症の仮説によれば、虚血中、ホスファチジルセリン(PD)は、肝臓微小血管系の内皮細胞(EC)管腔表面上でアクセス可能になる。再灌流期中、白血球および血小板がEC表面上のPSに付着し、そしてECにおいてアポトーシスの最終段階を誘発する。ジアネキシンは、EC表面上のPSに結合して、そしてPSへの白血球および血小板の付着を減少させる。この機構によって、ジアネキシンは、ECへの不可逆的損傷を防止し、そしてそれによって、虚血−再灌流傷害を減弱する。
【0185】
[00194]公表された方法(McCuskeyら, Hepatology 40:386, 2004)を用いて、in vivoのマウス肝臓において、微小循環を観察することによって、この仮説を試験した。実施例7に記載するように、90分間の虚血後、多様な時間の再灌流を行った。図12Aおよび12Bは、再灌流中、多くの白血球が、門脈周辺領域および小葉中心(centrilobular)領域の両方でECに付着したことを示す(IR)。ジアネキシン(1mg/kg)IVは、統計的に有意な方式で、こうした付着を減少させる(IR+D)。図13Aおよび13Bは、これがまた、再灌流中のECへの血小板の付着にも当てはまることを示す。予測されるように、EC損傷(腫脹に反映される)は、再灌流中に顕著であり、そしてジアネキシンによって有意に減少する(図14Aおよび14B)。したがって、虚血−再灌流傷害を減弱させる際のジアネキシン作用様式の我々の仮説が確認される。図15Aおよび15Bに示されるように、ジアネキシンは、どちらの位置でもクッパー細胞の食作用活性に影響を及ぼさない。したがって、ジアネキシンは、病原性生物に対するこの防御機構には影響を持たない。この知見は、ジアネキシンが副作用を持たないという他の証拠を裏付ける。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】[0023]図1A〜Cは、2つの修飾アネキシン態様の構造図を示す。図1Aは、Hisタグを持つヒトアネキシンVホモ二量体の構造図を示し;図1Bは、Hisタグを持たないヒトアネキシンVホモ二量体の構造図を示す。図1Cは、アネキシンVのホモ二量体を作製するためのDNA構築物を示す。
【図2】[0024]図2A〜Dは、各場合で、0.2μg/mlのビオチン化AV(図2A);0.2μg/mlのビオチン化DAV(図2B);0.2μg/mlのビオチン化AVおよび0.2μg/mlの非ビオチン化DAV(図2C);並びに0.2μg/mlのビオチン化DAVおよび0.2μg/mlの非ビオチン化AV(図2D)とインキュベーションした後、R−フィコエリトリン−コンジュゲート化ストレプトアビジンとインキュベーションした、正常(1x107/ml)およびPS暴露(1x107/ml)RBCの混合物のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図3】[0025]図3A〜Eは、注射後の多様な時点のマウス循環におけるAVまたはDAVのレベルを例示する。図3A〜Bは、それぞれ、マウスにAVを注射した5分後および20分後に回収した血清試料を示す。図3C〜Eは、それぞれ、マウスにアネキシンVホモ二量体(DAV)を注射した5分後、25分後および120分後に回収した血清試料を示す。
【図4】[0026]図4は、PSが暴露されたRBCのPLA2誘導性溶血を示す。正常(1x107/ml)およびPS暴露(1x107/ml)RBCの混合物を、100ng/mlの膵臓PLA2(pPLA2)または分泌性PLA2(sPLA2)とインキュベーションした。時間の関数として溶血を測定し、そして浸透圧ショックによって誘導した100%溶血と比較して表した。ビオチン化DAVおよびR−フィコエリトリン−コンジュゲート化ストレプトアビジンで標識した後、細胞懸濁物のフローサイトメトリーによって、PS暴露細胞のパーセンテージを決定した。図4Aは、2μg/mlのDAV(円)またはAV(正方形)の非存在下(三角形)または存在下で、100ng/mlのpPLA2に誘導される溶血を示す。図4Bは、多様な量のDAV(円)またはAV(正方形)の存在下で、100ng/mlのpPLA2に誘導される溶血を示す。図4Cは、2μg/mlのDAVの存在下で、100ng/mlのpPLA2と60分間インキュベーションした後の細胞懸濁物中のPS暴露細胞を示す。
【図5】[0027]図5は、擬似手術したマウス(擬似)、生理食塩水を投与したマウス、肝動脈をクランピングする6時間前にHEPES緩衝液を投与したマウス、動脈をクランピングする6時間前にPEG化アネキシン(PEGアネキシン)またはアネキシン二量体を投与したマウス、および単量体アネキシンを投与したマウス(アネキシン)における、血清アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。PEGアネキシンおよびアネキシン二量体の上のアステリスクは、p<0.001を示す。
【図6】[0028]図6は、組換えヒトアネキシンVおよびPEG化組換えヒトアネキシンVの凝血強度を比較するin vitro凝血アッセイの凝血時間のプロットである。
【図7】[0029]図7は、10分間血栓症研究の5つの処置群における血栓重量を示す(平均±sd;n=8)。
【図8】[0030]図8は、血栓症研究の5つの処置群におけるAPTTを示す(平均±sd;n=8)。
【図9】[0031]図9は、尾出血研究の3群における出血時間を示す(平均±sd;n=8)。
【図10】[0032]図10は、尾出血研究の3群における血液損失を示す(平均±sem;n=8)。
【図11】[0033]図11は、尾出血研究の3群におけるAPTTを示す(平均±sd;n=8)。
【図12】[0034]図12Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への白血球の付着を示す。図12Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への白血球の付着を示す。
【図13】[0035]図13Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への血小板の付着を示す。図13Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への血小板の付着を示す。
【図14】[0036]図14Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞の腫脹を示す。図14Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞の腫脹を示す。
【図15】[0037]図15Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中のクッパー細胞の食作用活性を示す。図15Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中のクッパー細胞の食作用活性を示す。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001]本発明は、一般的に、血栓症を治療するための方法および組成物に関する。より具体的には、本発明は、修飾アネキシンタンパク質およびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002]血栓症、すなわち血管における血塊(血栓)の形成、発展、または存在は、最も一般的な重篤な医学的障害である。動脈血栓症の最も頻繁な例は、冠動脈血栓症であり、これは冠動脈の閉塞につながり、そしてしばしば、心筋梗塞(心臓発作)につながる。北米では毎年130万人を超える患者が、心筋梗塞のため、入院している。標準的な療法では、血栓溶解タンパク質を注入によって投与する。急性心筋梗塞の血栓溶解治療は、治療した1000人の患者あたり、30人の生命を救っていると概算される;にもかかわらず、この障害の30日死亡率は、かなりのものであり続けている(Mehtaら, Lancet 356:449−454(2000))。Mehtaらの開示、並びに本明細書に引用される他の特許、特許出願および刊行物すべての開示は、本明細書に完全に援用される。ボーラス注射は、さらなる利点を伴って、入院前に使用可能であるため、この注射によって、抗血栓剤および血栓溶解剤を投与することが好適であろう(本明細書に援用される、Rawles, J. Am. Coll. Cardiol. 30:1181−1186(1997))。しかし、ボーラス注射は(より漸進的な静脈内注入とは対照的に)、脳出血のリスクを有意に増加させる(Mehtaら、2000)。出血のリスクを増大させることなく、血栓症を防止し、そして/または血栓溶解を増加させることが可能な剤の開発が望ましいであろう。
【0003】
[0003]冠動脈閉塞のため、心臓に適切に酸素が送達されずに引き起こされる、不安定狭心症は、入院の最も一般的な原因であり、アメリカ合衆国だけでも、年間150万の症例がある。冠動脈閉塞患者を血管形成術およびステント植込み術で治療する際、血小板gp IIb/IIIaに対する抗体を使用すると、再狭窄の可能性が減少する。しかし、血管形成術を伴わない不安定狭心症においては、同じ抗体に利益がないことが示されており、そしてこれらの患者では、冠動脈閉塞を防止する、よりよい方法が必要である。
【0004】
[0004]動脈血栓症の別の重要な例は、脳血栓症である。静脈内組換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rtPA)は、食品医薬品局に認可された、急性虚血性脳卒中の唯一の治療法である。投与は、早ければ早いほどよい(本明細書に援用される、Ernstら, Stroke 31:2552−2527(2000))。しかし、静脈内rtPA投与は、脳内出血リスクの増加と関連する。発達した(full−blown)脳卒中には、しばしば一過性虚血発作(TIA)が先行し、そしてアメリカ合衆国では、毎年、約300,000人がTIAに罹患すると概算される。ボーラスとして投与可能であり、そして脳出血のリスクを増加させることなく、脳血栓症の再発を数日間防止するであろう、安全でそして有効な剤があることが望ましいであろう。血栓症はまた、糖尿病患者および他の患者における末梢動脈閉塞にも寄与し、そしてこうした患者で使用するための有効でそして安全な抗血栓剤が必要である。
【0005】
[0005]静脈血栓症は、股関節形成術および膝関節形成術などの外科手術に頻繁な合併症である。手術野への出血を増加させることなく、血栓症を防止することが望ましいであろう。妊娠および分娩に関連する静脈血栓症にも、同様の考慮が当てはまる。静脈血栓事象を反復しがちな人もあり、そして現在、こうした人は、クマリン型薬剤などの抗血栓剤によって治療される。こうした薬剤の用量は、各患者で力価決定されなければならず、そして有効な抗血栓用量および出血を増加させる用量の間の差は小さい。出血リスクの増加から、抗血栓活性をよりよく分離する治療があることが望ましい。近年導入された抗血栓療法はすべて、血小板gp IIb/IIIaのリガンド、低分子量ヘパリン、および因子Xaの五糖類阻害剤を含めて、出血リスクの増加を伴う(本明細書に援用される、Levineら, Chest 119:108S−121S(2001))。したがって、出血のリスクを増大させることなく、動脈血栓症および静脈血栓症を防止する代替戦略を探索する必要がある。
【0006】
[0006]出血を増加させることなく、動脈血栓または静脈血栓の拡大を阻害するため、止血に関与する機構、および大血管における血栓症に関与する機構の間の潜在的な相違を利用する必要がある。主な止血機構には、血小板微小凝集塊の形成が含まれ、この凝集体が毛細血管に栓をし、そして小血管において、損傷されたかまたは活性化された内皮細胞上に集積する。血小板凝集の阻害剤は、トロンボキサンA2の形成または作用を抑制する剤、gp IIa/IIIbのリガンド、およびADP受容体に作用する薬剤、例えばクロピドグレル(本明細書に援用される、Hallopeter, Nature 409:202−207(2001))を含めて、このプロセスに干渉し、そしてしたがって、出血のリスクを増加させる(Levineら、2001)。微小凝集塊形成とは対照的に、動脈血栓または静脈血栓による閉塞には、血栓に血小板が連続して補充され、そして取り込まれることが必要である。大血管においては、剪断力による剥離を克服するため、血小板は互いに、そして血小板周囲に沈着したフィブリンネットワークに、堅固に結合されなければならない。
【0007】
[0007]血小板の堅固な巨大凝集塊の形成は、細胞性増幅機構および体液性増幅機構によって促進され、これらは互いに強化しあうという証拠が集まってきている。細胞性機構において、血小板の比較的ゆるい微小凝集塊の形成が、ADP、トロンボキサンA2、またはコラーゲンなどのアゴニストの中程度の濃度によって誘導され、これには、血小板α顆粒からの85kDタンパク質Gas6の放出が伴う(本明細書に援用される、Angelillo−Scherrerら, Nature Medicine 7:215−221(2001))。放出されたGas6が、血小板表面上に発現される受容体チロシンキナーゼ(Axl、Sky、Mer)に結合すると、完全な脱顆粒およびこれらの細胞の堅固な巨大凝集塊の形成が誘導される。体液性増幅機構では、活性化された血小板および微小胞表面上に、プロトロンビナーゼ複合体が形成される。これは、トロンビンおよびフィブリンを生成する。トロンビンはそれ自体、強力な血小板活性化因子およびGas6放出の誘導因子である(本明細書に援用される、IshimotoおよびNakano, FEBS Lett. 446:197−199(2000))。完全に活性化された血小板は、血小板周囲に沈着したフィブリンネットワークに堅固に結合する。組織学的観察によって、血小板およびフィブリンはどちらも、ヒトにおいて、安定な冠動脈血栓を形成するのに必要であることが示されている(本明細書に援用される、Falkら Interrelationship between atherosclerosis and thrombosis. Vanstraeteら(監修), Cardiovascular Thrombosis: Thrombocardiology and Thromboneurology.中 フィラデルフィア:Lipincott−Raven Publishers(1998), pp.45−58)。別の血小板接着分子、アンホテリンは、活性化中に血小板表面に転位置し、そしてアニオン性リン脂質に結合する(本明細書に援用される、Rouhainenら, Thromb. Hemost. 84:1087−1094(2000))。Gas6同様、アンホテリンは、血小板凝集の期間中に架橋を形成することも可能である。
【0008】
[0008]これらの増幅機構を阻害するが、初期血小板凝集段階を阻害せず、それによって出血を増加させずに、血栓症を防止することが可能であるかどうかという疑問が生じる。Gas6のターゲット不活性化を用いたマウスの研究によって、細胞性増幅の重要性が、近年、確立されてきている(Angelillo−Scherrerら、2001)。Gas6−/−マウスは、コラーゲンおよびエピネフリンが誘導する血栓症および塞栓症に対して防御されることが見出された。しかし、Gas6−/−マウスは、自然発生的な出血を患わず、そして尾の切り落とし後、正常の出血を有した。さらに、Gas6に対する抗体は、in vitroで血小板凝集を阻害するとともに、コラーゲンおよびエピネフリンによってin vivoで誘導される血栓症も阻害した。原則として、受容体チロシンキナーゼに対するGas6結合に関して競合する抗体またはリガンドを用いて、血栓症を阻害することも可能である。しかし、体液性増幅の強度を考慮して、この段階を阻害することが好ましい可能性もある。理想的には、こうした阻害剤はまた、Gas6が仲介する細胞性増幅機構に対して、さらなる抑制活性を有するであろう。
【0009】
[0009]血小板凝集の細胞性増幅および体液性増幅の両方を防止するための戦略が、アネキシンによって提供され、アネキシンは、そのうちの10がいくつかのヒト組織で発現されている、非常に相同な抗血栓タンパク質のファミリーである(本明細書に援用される、BenzおよびHofmann, Biol. Chem. 378:177−183(1997))。アネキシンは、カルシウムおよび負荷電リン脂質に結合する特性を共有し、これらはどちらも凝血に必要なものである。生理学的条件下では、負荷電リン脂質は、主に、活性化されたかまたは損傷を受けた細胞膜において、ホスファチジルセリン(PS)によって供給される。損なわれていない細胞では、PSは、形質膜二重層の内部小葉に閉じ込められ、そして表面にアクセス不能である。血小板が活性化されると、表面にアクセス可能なPSの量、そしてしたがって、アネキシン結合の度合いが、非常に増加する(本明細書に援用される、Sunら, Thrombosis Res. 69:289−296(1993))。血小板の活性化中、微小胞が血小板表面から放出され、凝血促進活性を持つアニオン性リン脂質が発現される表面積が非常に増加する(どちらも本明細書に援用される、Mertenら, Circulation 99:2577−2582(1999);Chowら, J. Lab. Clin. Med. 135:66−72(2000))。これらは、血小板が仲介する動脈血栓の増殖に重要な役割を果たしうる。
【0010】
[0010]凝血カスケードに関与するタンパク質(因子X、Xa、およびVa)は、表面上にPSを所持する膜に結合し、そして互いに結合し、安定して堅固に結合したプロトロンビナーゼ複合体を形成する。II、V、およびVIIIを含むいくつかのアネキシンは、高い親和性でPSに結合し、それによって、プロトロンビナーゼ複合体の形成を防止し、そして抗血栓活性を発揮する。アネキシンVは、負荷電リン脂質に対して、因子X、Xa、およびVaの親和性よりも高い、非常に高い親和性でPSに結合する(Kd=1.7nmol/l)(本明細書に援用される、ThiagarajanおよびTait, J. Biol. Chem. 265:17420−17423(1990))。活性化されたか、または損傷を受けた内皮細胞表面上の組織因子依存性凝血にもまた、PSの表面発現が必要であり、そしてアネキシンVはこのプロセスを阻害することも可能である(本明細書に援用される、van Heerdeら, Arterioscl. Thromb. 14:824−830(1994))が、アネキシンは、プロトロンビナーゼ生成の阻害におけるより、この活性において、より有効でない(本明細書に援用される、Raoら, Thromb. Res. 62:517−531(1992))。
【0011】
[0011]活性化された血小板および損傷を受けた細胞に対するアネキシンVの結合は、おそらく、血栓において、このタンパク質が選択的に保持されることを説明する。これは、静脈血栓症および動脈血栓症の実験動物モデルにおいて示されてきており(どちらも本明細書に援用される、Strattonら, Circulation 92:3113−3121(1995);ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339−2347(1997))、そしてノイズが減少し、そして安定性が増加した、ヒトにおける血管血栓の医学的画像化に、標識アネキシンを用いることが提唱されてきている(本明細書に援用される、RenoおよびKasina、国際特許出願PCT/US95/07599(WO 95/34315)(1995年12月21日公開))。アネキシンVなどの強力な抗血栓剤の血栓への結合は、血栓の拡大または再発を防止する戦略を提供する。一過性心筋虚血もまた、アネキシンV結合を増加させる(本明細書に援用される、Dumontら, Circulation 102:1564−1568(2000))。ヒトにおけるアネキシンV画像化によって、心内膜心筋生検が血管拒絶を示した場合、移植心臓において、該タンパク質の結合が増加することが示されてきている(本明細書に援用される、Acioら, J. Nuclear Med. 41(5 Suppl.):127P(2000))。この結合は、おそらく、損傷を受けた内皮細胞、並びに、拒絶された心臓中のアポトーシス筋細胞の表面に露出されたPSのためである。したがって、心筋梗塞後にアネキシンを投与すると、血小板および内皮細胞の両方の上の血栓促進性複合体の形成が防止され、それによって血栓症の拡大または再発が防止されるはずである。アネキシンV結合はまた、ヒトにおいて、脳低酸素症後にも増大し(本明細書に援用される、D’Arceuilら, Stroke 2000:2692−2700(2000))、このことは、TIA後にアネキシンを投与すると、発達した脳卒中が発展する可能性が減少しうることを支持する。
【0012】
[0012]アネキシンは、いくつかのin vitroトロンビン依存性アッセイにおいて、並びに静脈血栓症(どちらも本明細書に援用される、Roemischら, Thrombosis Res. 61:93−104(1991);Van Ryn−McKennaら, Thrombosis Hemostasis 69:227−230(1993))および動脈血栓症(ThiagarajanおよびBenedict、1997)の実験動物モデルにおいて、抗凝血活性を示している。著しいことに、抗血栓用量のアネキシンは、処置したウサギにおいて、伝統的なex vivo凝血試験に対して、実証可能な影響を持たず(ThiagarajanおよびBenedict、1997)、そして処置したラットの出血時間を有意には延長しなかった(Van Ryn−McKennnaら、1993)。処置したウサギにおいて、アネキシンは、外科切開への出血を増加させなかった(ThiagarajanおよびBenedict、1997)。したがって、これまでに研究された剤すべての中で唯一、アネキシンは、出血の増加を伴わずに、抗血栓活性を発揮する。アネキシンは、トロンビン以外のアゴニストに誘発される血小板凝集を阻害せず(van Heerdeら、1994)、そして血小板凝集は、主な止血機構である。損傷を受けた血管壁において、そして血管外組織において、組織因子/VIIa複合体もまた、止血効果を発揮し、そしてこの系は、プロトロンビナーゼ複合体が受けるより、アネキシンVによる阻害に、より感受性でなかった(Raoら、1992)。これは、投与したアネキシンVを、可能な限り血管区画に限定することを支持する1つの議論であり;出血のリスクがおそらく減少する。
【0013】
[0013]血栓症を防止するこうした前途有望な結果にもかかわらず、アネキシン類の療法的使用に関連する主な問題は、循環中での半減期が短く、実験動物において、5〜15分間と概算されることであり(Roemischら、1991;Strattonら、1995;ThiagarajanおよびBenedict、1997);アネキシンVもまた、ヒトの循環において短い半減期を有する(本明細書に援用される、Straussら, J. Nuclear Med. 41(5 Suppl.):149P(2000))。大部分のアネキシンは、36kDaタンパク質で予測されるように、尿中に出て失われる(ThiagarajanおよびBenedict、1997)。したがって、アネキシンが、血管区画から血管外区画および尿に出て失われるのを防止し、それによって単回注射後の抗血栓活性を延長させる方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
[0014]本発明は、動脈血栓症または静脈血栓症を防止するための化合物および方法を提供する。組換えヒトアネキシンは、血管区画での半減期が延長されるような方式で修飾される。これは多様な方法で達成可能であり;ポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシン、アネキシンのホモポリマーまたはヘテロポリマー、およびアネキシンと別のタンパク質(例えば免疫グロブリンのFc部分)との融合タンパク質が、3つの態様である。修飾アネキシンは、高い親和性で、活性化された血小板または損傷を受けた細胞の表面上のホスファチジルセリンに結合し、それによって、Gas6そして凝血促進タンパク質の結合、およびプロトロンビナーゼ複合体の形成を防止する。したがって、修飾アネキシンは、血小板凝集を増幅する細胞性機構および体液性機構の両方を阻害し、それによって血栓症を防止する。
【0015】
[0015]1つの態様において、本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)にカップリングしたアネキシンタンパク質、好ましくはアネキシンVを含有する、単離修飾アネキシンタンパク質を提供する。好ましくは、各PEGが少なくとも5kDa、より好ましくは少なくとも10kDa、そして最も好ましくは少なくとも15kDaの分子量を有する、少なくとも2つのPEG鎖を、単一のアネキシン分子にカップリングする。別の態様において、単離修飾アネキシンタンパク質は、少なくとも1つのさらなるタンパク質、例えばさらなるアネキシンタンパク質(ホモ二量体を形成する)または免疫グロブリンのFc部分にカップリングした、アネキシンタンパク質を含有する。さらなるタンパク質は、好ましくは、少なくとも30kDaの分子量を有する。本発明がやはり提供するのは、本発明の修飾アネキシンタンパク質のいずれかの抗血栓に有効な量を含有する薬剤組成物である。
【0016】
[0016]本発明の方法において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質のいずれか1つを抗血栓に有効な量で有する薬剤組成物中、修飾アネキシンを、血栓症のリスクがある被験者に投与する。例えば、冠動脈血栓症、脳血栓症、または一過性脳虚血発作などの動脈血栓症後に、薬剤組成物を投与することも可能である。静脈血栓症に関連する外科手術後に投与することもまた可能である。さらに、動脈血栓症または静脈血栓症に罹りやすい状態を有する被験者、例えば糖尿病、妊娠、または分娩の被験者に投与することも可能である。
【0017】
[0017]本発明がやはり提供するのは、アネキシンのホモ二量体をコードする単離核酸分子、当該核酸分子の少なくとも一部を含有する組換え分子、および当該核酸分子の少なくとも一部を含有する組換え細胞である。本発明の方法において、組換え細胞を、適切な条件下で培養して、アネキシンのホモ二量体を産生する。
【0018】
[0018]本発明はまた、血栓症試験系を用いて、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質に関して、スクリーニングする方法も提供する。試験系を試験修飾アネキシンタンパク質と接触させて、その後、血栓溶解活性を評価し、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での系の活性と比較する。好ましくは、活性化部分トロンボプラスチン時間を測定する。やはり提供するのは、活性化された血小板を試験修飾アネキシンタンパク質と接触させて、そして血小板結合およびプロテインS結合活性を評価することによって、修飾アネキシンタンパク質を同定する方法である。
【0019】
[0019]本発明がやはり提供するのは、修飾アネキシンタンパク質に関してin vivoでスクリーニングする方法である。この方法において、血栓症動物モデルを、試験修飾アネキシンタンパク質と接触させ、その後、試験修飾アネキシンタンパク質のin vivo抗凝血活性および出血増加を評価する。抗凝血活性および時間を、アネキシンの抗凝血活性および時間と比較し、そして出血量を、試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下の動物モデルでの出血と比較する。
【0020】
[0020]したがって、本発明は、血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含む、前記方法を提供する。単離修飾アネキシンタンパク質を、冠動脈血栓症の後、顕性脳血栓症の後、一過性脳虚血発作の後、静脈血栓症に関連する外科手術後、前記被験者が糖尿病であり、そして前記血栓症が動脈血栓症である場合、または妊娠および分娩からなる群より選択される状態の期間中に投与する。単離修飾アネキシンタンパク質を、0.2mg/kg〜1.0mg/kgの範囲で投与する。
【0021】
[0021]本発明はまた、内皮細胞への白血球の付着を阻害する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質の有効量を、こうした方法を必要とする患者に投与することを含む、前記方法も提供する。いくつかの態様において、該方法はさらに、内皮細胞損傷を減少させることを含む。
【0022】
[0022]本発明はまた、血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、ホスファチジルセリンに対するアネキシンVの親和性の少なくとも90%の、ホスファチジルセリンに対する親和性を有するタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含み、前記タンパク質がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である場合を含む、前記方法を提供する。
【0023】
発明の詳細な説明
[0038]本発明は、出血を増加させることなく、哺乳動物において、血栓症を防止する化合物および方法を提供する。本発明は部分的に、血小板凝集の初期機構が、動脈血栓または静脈血栓の形成に必要な、血小板凝集を増幅する機構とは異なるという認識に頼る。血栓形成を阻害するが、初期の血小板凝集を阻害しないことによって、出血を増加させることなく血栓症を防止することも可能である。
【0024】
[0039]本発明の化合物には、ヒトまたは他の哺乳動物において、産物の半減期が増加するように修飾されているアネキシンアミノ酸配列を含有する、いかなる産物も含まれる。本明細書において、天然存在タンパク質分子のアミノ酸配列に言及するために、「アミノ酸配列」が列挙される場合、「アミノ酸配列」および類似の用語、例えば「ポリペプチド」または「タンパク質」は、該アミノ酸配列を、列挙されたタンパク質に関連する完全天然アミノ酸配列に限定することを意味しない。アネキシンは、相同な、リン脂質結合性膜タンパク質のファミリーであり、このうち10が、哺乳動物で発現される別個の遺伝子産物に相当する(BenzおよびHofmann、1997)。結晶分析によって、アネキシンVに例示される、これまでに研究したファミリーメンバーすべての共通の三次構造が明らかになっている(本明細書に援用される、Huberら, EMBO Journal 9:3867(1990))。コア・ドメインは、リン脂質膜に近接して並置されることも可能な、凹状円盤状構造である。該タンパク質は、4つのサブドメインを含有し、各々、5つのαらせんで構成される70アミノ酸のアネキシン・リピートからなる。アネキシンはまた、異なるアネキシン間で、長さおよびアミノ酸配列が多様である、より親水性のテール・ドメインも有する。アネキシンをコードする遺伝子の配列が周知である(例えば、本明細書に援用される、Funakoshiら, Biochemistry 26:8087−8092(1987)(アネキシンV))。
【0025】
[0040]アネキシンタンパク質には、アネキシンファミリーのタンパク質、例えばアネキシンII(リポコルチン2、カルパクチン1、プロテインI、p36、クロモビンディン(chromobindin)8)、アネキシンIII(リポコルチン3、PAP−III)、アネキシンIV(リポコルチン4、エンドネキシンI、プロテインII、クロモビンディン4)、アネキシンV(リポコルチン5、エンドネキシン2、VAC−アルファ、アンコリンCII、PAP−I)、アネキシンVI(リポコルチン6、プロテインIII、クロモビンディン20、p68、p70)、アネキシンVII(シネキシン)、アネキシンVIII(VAC−ベータ)、アネキシンXI(CAP−50)、およびアネキシンXIII(ISA)が含まれる。
【0026】
[0041]アネキシンIVは、アネキシンVと同じ特性を多く共有する。アネキシンVと同様、アネキシンIVは、カルシウムの存在下で、酸性リン脂質膜に結合する。アネキシンIVは、アネキシンVの近縁構造相同体である。アネキシンIVの配列が知られている。Hammanら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 156:660−667(1988)。アネキシンIVは、カルシウム依存性リン脂質結合タンパク質のアネキシンファミリーに属する。その機構はいまだ明らかに定義されていない。
【0027】
[0042]アネキシンIV(エンドネキシン)は、32kDaのカルシウム依存性膜結合タンパク質である。アネキシンIVの翻訳されたアミノ酸配列は、この種のタンパク質に特徴的な4ドメイン構造を示す。アネキシンIVは、ファミリーの他のメンバーと45〜59%の同一性を有し、そして類似のサイズおよびエクソン−イントロン構成を共有する。ヒト胎盤から単離されたアネキシンIVは、in vitro抗凝血活性を有し、そしてホスホリパーゼA2活性を阻害するタンパク質をコードする。アネキシンIVは、ほぼ上皮細胞でのみ発現される。
【0028】
[0043]アネキシンVIIIは、CA(2+)依存性リン脂質結合性タンパク質(アネキシン)のファミリーに属し、そしてアネキシンVに対して、高い同一性を有する(56%)。Hauptmannら, Eur J Biochem. 1989 Oct 20;185(1):63−71。該タンパク質は最初に、2.2kb血管抗凝血因子−ベータとして単離された。アネキシンVIIIは、細胞外タンパク質でもなく、また細胞表面に会合してもいない。該タンパク質は、in vivoで、血液凝固に役割を果たしていない可能性もある。その生理学的役割は未知のままである。該タンパク質は、ヒト胎盤において、低レベルで発現され、そして肺、内皮および皮膚、肝臓および腎臓に限定された発現を示す。
【0029】
[0044]本発明において、アネキシンタンパク質を、ヒトまたは他の哺乳動物において、半減期が増加するように修飾する。いくつかの態様において、アネキシンタンパク質は、アネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIである。アネキシンの適切な修飾の1つは、有効サイズの増加であり、これによって、血管区画から血管外区画および尿への損失を防止し、それによって単回注射後の抗血栓活性を延長させる。ホスファチジルセリンとの十分な結合親和性を維持するのに有効なサイズのいかなる増加も、本発明の範囲内である。
【0030】
[0045]本発明の1つの態様において、修飾アネキシンは、ホスファチジルセリン(PS)結合アッセイにおいて、アネキシンの機能を実行することが可能であるような方式で、ポリエチレングリコール(PEG)にカップリングされた組換えヒトアネキシンタンパク質を含有する。静脈内投与されたアネキシン−PEGコンジュゲートの抗血栓作用は、未結合(free)アネキシンのものと比較した際に延長されている。PEGにカップリングする組換えアネキシンタンパク質は、アネキシンVタンパク質または別のアネキシンタンパク質であることも可能である。1つの態様において、アネキシンタンパク質はアネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIである。
【0031】
[0046]PEGは、酸化エチレンの反復単位からなり、直鎖、またはいくつかの場合、分枝鎖の両末端のヒドロキシル基で終結する。カップリングするPEG鎖のサイズおよび分子量は、含有する酸化エチレン単位の数に応じ、この数は選択可能である。本発明のためには、PSへの修飾分子の結合機能を保持しつつ、アネキシンに比較して、修飾アネキシンの半減期が増加するような、いかなるPEGのサイズおよびアネキシン分子あたりのPEG鎖の数も使用可能である。上述のように、十分な結合には、非修飾アネキシンのものから減少しているが、それでもなお、Gas6およびプロトロンビナーゼ複合体の因子の結合と競合し、そしてしたがって、血栓症を防止可能な結合が含まれる。コンジュゲート化するPEGの最適分子量は、PEG鎖の数によって変動する。1つの態様において、各々、少なくとも約15kDaの分子量の2つのPEG分子が、各アネキシン分子にカップリングする。PEG分子は直鎖または分枝鎖であることも可能である。PSへのアネキシンのカルシウム依存性結合は、カップリングするPEG分子のサイズだけでなく、PEGが結合するタンパク質上の部位によっても影響を受ける。最適な選択は、所望の特性が保持されることを確実にする。分子の三次元構造を知り、そしてリン脂質膜と分子との相互作用を突然変異分析および結晶分析で分析することによって、PEG付着部位の選択が容易になる(本明細書に援用される、Camposら, Biochemistry 37:8004−8008(1998))。
【0032】
[0047]薬剤送達分野において、PEG誘導体は、可溶性を増進させ、並びに免疫原性、タンパク質分解、および腎臓クリアランスを減少させるため、タンパク質に共有結合(PEG化と称される)させて、広く用いられている。PEGにカップリングした組換え産物の優れた臨床的有効性がよく確立されている。例えば、週1回投与されるPEG−インターフェロン−2aは、C型肝炎ウイルスに対して、未結合インターフェロンの週3回の用量より有意により有効である(本明細書に援用される、Heathcoteら, N. Engl. J. Med. 343:1673−1680(2000))。PEGへのカップリングは、in vivoで組換えタンパク質の半減期を延長させるため(本明細書に援用される、Knaufら, J. Biol. Chem. 266:2796−2804(1988))、並びに組換えタンパク質の酵素分解を防止するため、そして相同産物では時々観察される免疫原性を減少させるため(本明細書に援用される、Hermanson, Bioconjugate techniques. ニューヨーク, Academic Press(1996), pp.173−176の参考文献)、用いられてきている。
【0033】
[0048]本発明の別の態様において、修飾アネキシンタンパク質は、増加した有効サイズを有する、アネキシンタンパク質のポリマーである。有効サイズの増加は、血管区画における半減期の延長、および抗血栓活性の延長を生じると考えられる。1つのこうした修飾アネキシンは、アネキシンタンパク質の二量体である。1つの態様において、アネキシンの二量体は、アネキシンV、アネキシンIVまたはアネキシンVIIIのホモ二量体である。別の態様において、アネキシン二量体は、アネキシンVおよび他のアネキシンタンパク質(例えばアネキシンIVまたはアネキシンVIII)、アネキシンIVおよび別のアネキシンタンパク質(例えばアネキシンVまたはアネキシンVIII)またはアネキシンVIIIおよび別のアネキシンタンパク質(例えばアネキシンVまたはアネキシンIV)のヘテロ二量体である。別のこうしたポリマーは、アネキシンIIと、カルシウム結合性タンパク質のS100ファミリーのメンバーである、p11とのヘテロ四量体である。S100タンパク質がアネキシンに結合すると、Ca2+に対するアネキシンの親和性が増加する。バイオコンジュゲート法または組換え法によって、アネキシン・ホモポリマーまたはヘテロ四量体を産生することも可能であるし、該ポリマーを単独でまたはPEGコンジュゲート化型で投与することも可能である。
【0034】
[0049]いくつかの態様において、修飾アネキシンは、PSに対して増加した親和性を有する。実施例4に記載するように、組換えDNA技術のよく確立された方法を用いて、ヒトアネキシンVのホモ二量体(DAV)を調製した。ホモ二量体のアネキシン分子は、ペプチド結合を通じて、柔軟なリンカーに連結される(図1)。いくつかの態様において、柔軟なリンカーは、いずれかの端に、スイベル(swivel)として作用する、グリシンおよびセリン残基が隣接したアミノ酸配列を含有する。リンカーは、好ましくは、1以上のこうした「スイベル」を含む。好ましくは、リンカーは2つのスイベルを含み、これらは、少なくとも2アミノ酸、より詳細には少なくとも4アミノ酸、より詳細には少なくとも6アミノ酸、より詳細には少なくとも8アミノ酸、より詳細には少なくとも10アミノ酸、離れていることも可能である。好ましくは、リンカーの全体の長さは、5〜30アミノ酸、5〜20アミノ酸、5〜10アミノ酸、10〜15アミノ酸、または10〜20アミノ酸である。二量体は、Ca2+およびPSに結合する、単量体の凸状表面が、どちらも、露出したPSにアクセス可能であるような方式でフォールディング可能である。柔軟なリンカーは、当該技術分野に知られ、例えば、Araiら, Proteins. 2004 Dec 1;57(4):829−38に記載される、(GGGGS)(n)(n=3〜4)、およびらせんリンカー(EAAAK)(n)(n=2〜5)がある。実施例IIに記載するように、アネキシンVホモ二量体は、細胞表面上のPSへの結合に際して、アネキシン単量体を競合して追い出す(out−compete)(図2)。
【0035】
[0050]本発明の別の態様において、組換えアネキシンを、免疫グロブリンのFc部分などの別のタンパク質とともに発現させるか、またはこうした別のタンパク質に化学的にカップリングする。こうした発現またはカップリングによって、分子の有効サイズが増加し、血管区画からのアネキシンの損失が防止され、そして抗凝血作用が延長される。
【0036】
[0051]好ましくは、本発明の修飾アネキシンタンパク質は、単離修飾アネキシンタンパク質である。修飾アネキシンタンパク質は、アネキシンII、アネキシンIV、アネキシンV、またはアネキシンVIIIを含有することも可能である。いくつかの態様において、タンパク質は、修飾ヒトアネキシンである。いくつかの態様において、修飾アネキシンは、組換えヒトアネキシンを含有する。本発明にしたがって、単離されたかまたは生物学的に純粋なタンパク質は、天然環境から取り除かれているタンパク質である。こうしたものとして、「単離された」および「生物学的に純粋な」は、必ずしも、タンパク質が精製されている度合いを反映しない。本発明の単離修飾アネキシンタンパク質を天然供給源から得ることも可能であるし、組換えDNA技術を用いて産生することも可能であるし、また、化学合成によって産生することも可能である。本明細書において、単離修飾アネキシンタンパク質は、全長修飾タンパク質またはこうしたタンパク質の相同体いずれであることも可能である。また、(例えばPEG化タンパク質に関して)修飾された全長タンパク質またはこうしたタンパク質の修飾された相同体であることも可能である。
【0037】
[0052]本発明のタンパク質相同体の最小サイズは、対応する天然タンパク質をコードする核酸分子の相補配列と、安定なハイブリッドを形成可能な核酸分子にコードされるのに十分なサイズである。こうしたものとして、こうしたタンパク質相同体をコードする核酸分子のサイズは、核酸組成、並びに核酸分子および相補配列間の相同性パーセント、並びにハイブリダイゼーション条件自体(例えば温度、塩濃度、およびホルムアミド濃度)に依存する。こうした核酸分子の最小サイズは、典型的には、核酸分子がGCリッチであれば、少なくとも長さ約12〜約15ヌクレオチドであり、そしてATリッチであれば、少なくとも長さ約15〜約17塩基である。こうしたものとして、本発明のタンパク質相同体をコードするのに用いられる核酸分子の最小サイズは、長さ約12〜約18ヌクレオチドである。核酸分子が、遺伝子の一部、全遺伝子、または多数の遺伝子あるいはその一部を含むことも可能であるため、こうした核酸分子の最大サイズには限界はない。同様に、本発明のアネキシンタンパク質相同体または修飾アネキシンタンパク質相同体の最小サイズは、長さ約4〜約6アミノ酸であり、サイズは、全長、多価(すなわち、各々機能を有する、1より多いドメインを有する、融合タンパク質)タンパク質、またはこうしたタンパク質の機能部分のいずれが望ましいかに依存する。本発明のアネキシンおよび修飾アネキシン相同体は、好ましくは、血栓形成を防止するアネキシンタンパク質の活性を実行可能であるなど、天然サブユニットに対応する活性を有する。
【0038】
[0053]アネキシンタンパク質および修飾アネキシン相同体は、天然アレル変動または天然突然変異の結果であることも可能である。当該技術分野に知られる技術を用いて、本発明のタンパク質相同体を産生することもまた可能であり、こうした技術には、限定されるわけではないが、タンパク質への直接修飾、あるいは例えば、ランダム突然変異誘発またはターゲッティング突然変異誘発を達成する古典的または組換えDNA技術を用いた、タンパク質をコードする遺伝子の修飾が含まれる。
【0039】
[0054]やはり含まれるのは、アミノ酸配列、配列番号3、配列番号6、配列番号12、配列番号15、またはこれらの配列いずれかを含有するタンパク質をコードする核酸分子のアレル変異体にコードされるタンパク質に、少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、そして最も好ましくは少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含有する、修飾アネキシンタンパク質である。やはり含まれるのは、配列番号3、配列番号6、配列番号12、配列番号15の1より多くを含む修飾アネキシンタンパク質;例えば配列番号3および配列番号12を含み、そしてリンカーに分離されたタンパク質である。アミノ酸配列間および核酸配列間の同一性パーセントを決定する方法は、当業者に知られる。配列間の同一性パーセントを決定する方法には、GCG(登録商標)ウィスコンシン・パッケージTM(Accelrys Corporationより入手可能)、DNAsisTMプログラム(Hitachi Software、カリフォルニア州サンブルノ)、Vector NTI一式(Informax, Inc. メリーランド州ノースベセスダから入手可能)、またはNCBIウェブサイトで入手可能なBLASTソフトウェアなどのコンピュータプログラムが含まれる。
【0040】
[0055]1つの態様において、修飾アネキシンタンパク質には、少なくとも約5アミノ酸、好ましくは少なくとも約50アミノ酸、より好ましくは少なくとも約100アミノ酸、より好ましくは少なくとも約200アミノ酸、より好ましくは少なくとも約250アミノ酸、より好ましくは少なくとも約275アミノ酸、より好ましくは少なくとも約300アミノ酸、そして最も好ましくは少なくとも約319アミノ酸または全長アネキシンタンパク質のいずれか短いほうのアミノ酸配列が含まれる。別の態様において、アネキシンタンパク質は、全長タンパク質、すなわち全長コード領域にコードされるタンパク質、またはその翻訳後修飾されたタンパク質、例えば開始メチオニンおよび/またはシグナル配列または「プロ」配列が取り除かれた成熟タンパク質を含有する。
【0041】
[0056]本発明の修飾アネキシンタンパク質の断片は、好ましくは、少なくとも長さ約5アミノ酸、より好ましくは少なくとも約10アミノ酸、より好ましくは少なくとも約15アミノ酸、より好ましくは少なくとも約20アミノ酸、より好ましくは少なくとも約25アミノ酸、より好ましくは少なくとも約30アミノ酸、より好ましくは少なくとも約35アミノ酸、より好ましくは少なくとも約40アミノ酸、より好ましくは少なくとも約45アミノ酸、より好ましくは少なくとも約50アミノ酸、より好ましくは少なくとも約55アミノ酸、より好ましくは少なくとも約60アミノ酸、より好ましくは少なくとも約65アミノ酸、より好ましくは少なくとも約70アミノ酸、より好ましくは少なくとも約75アミノ酸、より好ましくは少なくとも約80アミノ酸、より好ましくは少なくとも約85アミノ酸、より好ましくは少なくとも約90アミノ酸、より好ましくは少なくとも約95アミノ酸、そしてさらにより好ましくは少なくとも約100アミノ酸を含有する。
【0042】
[0057]1つの態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号4を有する核酸分子にコードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる、1より多いタンパク質配列を含有する。
【0043】
[0058]1つの態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる、1より多いタンパク質配列を含有する(例えば配列番号12−リンカー−配列番号12)。
【0044】
[0059]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる修飾タンパク質である。あるいは、修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によって、またはこの配列を有する核酸分子のアレル変異体によってコードされる、1より多いタンパク質配列を含有する(例えば配列番号15−リンカー−配列番号15)。
【0045】
[0060]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、および核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、またはこれらの核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する修飾タンパク質である(例えば配列番号3−リンカー−配列番号12または配列番号12−リンカー−配列番号3)。
【0046】
[0061]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号1を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、および核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、またはこれらの核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する修飾タンパク質である(例えば配列番号3−リンカー−配列番号15または配列番号15−リンカー−配列番号3)。
【0047】
[0062]別の態様において、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質は、核酸配列、配列番号10を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、および核酸配列、配列番号13を有する核酸分子によってコードされるタンパク質、またはこれらの核酸分子のアレル変異体によってコードされるタンパク質を含有する修飾タンパク質である(例えば配列番号12−リンカー−配列番号15または配列番号15−リンカー−配列番号12)。
【0048】
[0063]本発明の1つの態様には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、アネキシン遺伝子とハイブリダイズする核酸分子によってコードされる、非天然修飾アネキシンタンパク質が含まれる。本明細書において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、オリゴヌクレオチドを含む核酸分子を用いて、類似の核酸配列を有する分子を同定する、標準的なハイブリダイゼーション条件を指す。こうした標準的な条件は、例えば、本明細書に援用される、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Press(1989)に開示される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、典型的には、ハイブリダイゼーション反応において、探査する(probe)ために用いた核酸分子と、少なくとも約70%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を可能にする。30%以下のヌクレオチドのミスマッチを許容するハイブリダイゼーションを達成するのに適したハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を計算する式が、例えば本明細書に援用される、Meinkothら, Anal. Biochem. 138:267−284(1984)に開示されている。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探査に用いた核酸分子と、少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。他の態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探査に用いた核酸分子と、少なくとも約90%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。さらに他の態様において、ハイブリダイゼーション条件は、探査に用いた核酸分子と、少なくとも約95%の核酸配列同一性を有する核酸分子の単離を許容するであろう。
【0049】
[0064]修飾アネキシンタンパク質には、少なくとも約50ヌクレオチドであり、そして配列番号1、配列番号4、配列番号10、配列番号13からなる群より選択される核酸分子、またはこれらの核酸分子のいずれかの相補体と、好ましくは約20%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、より好ましくは約15%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、より好ましくは約10%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、より好ましくは約5%の塩基対ミスマッチを許容する条件下で、そしてさらにより好ましくは約2%の塩基対ミスマッチを許容する条件下でハイブリダイズする核酸分子にコードされる、タンパク質が含まれる。
【0050】
[0065]本明細書において、アネキシン遺伝子には、コード領域自体に加えて、天然アネキシン遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えばこの遺伝子にコードされるアネキシンタンパク質の産生を調節する制御領域(例えば限定されるわけではないが、転写、翻訳または翻訳後調節領域)が含まれる。1つの態様において、アネキシン遺伝子には、核酸配列、配列番号1が含まれる。別の態様において、アネキシン遺伝子には、核酸配列、配列番号10が含まれる。別の態様において、アネキシン遺伝子には、核酸配列、配列番号13が含まれる。核酸配列決定技術は、完全にエラーがないわけではないため、配列番号1(並びに本明細書に提示する他の配列)は、よくても、本発明のアネキシンタンパク質をコードする核酸分子の見かけの核酸配列に相当することに注目すべきである。
【0051】
[0066]別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号1に類似であるが、同一でない配列を含む、アレル変異体であることも可能である。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号10に類似であるが、同一でない配列を含む、アレル変異体であることも可能である。別の態様において、アネキシン遺伝子は、配列番号13に類似であるが、同一でない配列を含む、アレル変異体であることも可能である。配列番号1を含むアネキシン遺伝子のアレル変異体は、ゲノムにおいて、配列番号1を含む遺伝子と本質的に同じ遺伝子座(単数または複数)に存在するが、例えば突然変異または組換えによって引き起こされる天然変動のため、類似であるが同一でない配列を有する遺伝子である。アレル変異体は、典型的には、比較中の遺伝子にコードされるタンパク質と類似の活性を有するタンパク質をコードする。アレル変異体はまた、遺伝子の5’または3’非翻訳領域(例えば制御調節領域)に改変を含むことも可能である。アレル変異体は、当業者に周知であり、そしてゲノムが二倍体であるため、既定のヒトの内部で、そして/または2人以上のヒトを含む集団の中で、見出されると予期されるであろう。
【0052】
[0067]本発明の単離修飾アネキシンタンパク質を天然供給源から得ることも可能であるし、組換えDNA技術を用いて産生することも可能であるし、また化学合成によって産生することも可能である。本明細書において、単離修飾アネキシンタンパク質は、全長タンパク質またはこうしたタンパク質の相同体いずれかを含有することも可能である。アネキシンおよび修飾アネキシン相同体の例には、相同体がアネキシンタンパク質に対する免疫応答を誘発可能な少なくとも1つのエピトープを含むように、アミノ酸が欠失し(例えばタンパク質の一部切除(truncated)型、例えばペプチド、あるいはイントロンが除去されるかまたは2つのエクソンが連結される際のタンパク質スプライシング反応によるもの)、挿入され、反転し、置換され、そして/または誘導体化されている(例えばグリコシル化、リン酸化、アセチル化、メチル化、ミリスチル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化および/またはグリセロホスファチジルイノシトールの付加によるもの)、アネキシンおよび修飾アネキシンタンパク質が含まれる。すなわち、当業者に知られる技術を用いて、相同体を免疫原として動物に投与した際、動物は、アネキシンタンパク質の少なくとも1つのエピトープに対して体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を生じるであろう。アネキシンおよび修飾アネキシン相同体を、免疫血清に選択的に結合する能力によって、選択することもまた可能である。こうした活性を測定する方法を本明細書に開示する。アネキシンおよび修飾アネキシン相同体はまた、機能アッセイにおいて、天然アネキシンの機能を実行可能なタンパク質;すなわちホスファチジルセリンに、または活性化された血小板に結合するか、あるいは抗血栓活性を示すことが可能なタンパク質も含む。こうしたアッセイの方法を、本明細書の実施例項および別の箇所に記載する。
【0053】
[0068]機能アッセイにおいて、アネキシンタンパク質の機能を実行する能力によって、本発明の修飾アネキシンタンパク質を同定することも可能である。句「機能アッセイにおいて、その機能を実行可能」は、タンパク質または修飾タンパク質が、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約10%を有することを意味する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約20%を有する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約30%を有する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約40%を有する。他の態様において、該タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約50%を有する。他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約60%を有する。さらに他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約70%を有する。さらに他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約80%を有する。他の態様において、タンパク質または修飾タンパク質は、機能アッセイにおいて、天然タンパク質の活性の少なくとも約90%を有する。機能アッセイの例を本明細書に記載する。
【0054】
[0069]本発明の単離タンパク質を多様な方法で産生することも可能であり、こうした方法には、こうしたタンパク質を細菌から回収すること、およびこうしたタンパク質を組換え的に産生することが含まれる。本発明の1つの態様は、組換えDNA技術を用いて、本発明の単離修飾アネキシンタンパク質を産生する方法である。こうした方法には、(a)本発明の修飾アネキシンタンパク質をコードする核酸分子を含有する組換え細胞を培養して、該タンパク質を産生し、そして(b)該タンパク質をそこから回収する工程が含まれる。組換え細胞の産生およびその培養に関する詳細を以下に提示する。句「タンパク質の回収」は、単純に、タンパク質を含有する全発酵培地を回収することを指し、そして必ずしも分離または精製のさらなる工程を含む必要はない。多様な標準的タンパク質精製技術を用いて、本発明のタンパク質を精製することも可能である。
【0055】
[0070]本発明の単離タンパク質は、好ましくは、「実質的に純粋な」型で回収される。本明細書において、「実質的に純粋な」は、機能アッセイにおいて、タンパク質の有効な使用を可能にする純度を指す。
【0056】
修飾アネキシン核酸分子または遺伝子
[0071]本発明の別の態様は、アネキシンVのホモ二量体、アネキシンIVのホモ二量体、アネキシンVIIIのホモ二量体、アネキシンVおよびアネキシンVIIIのヘテロ二量体、アネキシンVおよびアネキシンIVのヘテロ二量体、またはアネキシンIVおよびアネキシンVIIIのヘテロ二量体などの修飾アネキシンタンパク質をコードする遺伝子と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な単離核酸分子である。こうした核酸分子もまた、本明細書において、修飾アネキシン核酸分子と称される。修飾アネキシン遺伝子と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離核酸分子が含まれる。こうした遺伝子の特徴を本明細書に開示する。本発明にしたがって、単離核酸分子は、天然環境から取り除かれている核酸分子(すなわちヒトの操作にさらされたもの)である。こうしたものとして、「単離」は、核酸分子が精製されている度合いを反映しない。単離核酸分子は、DNA、RNA、あるいはDNAまたはRNAいずれかの誘導体を含むことも可能である。
【0057】
[0072]上述のように、修飾アネキシン遺伝子には、コード領域自体に加えて、天然アネキシン遺伝子に関連するすべての核酸配列、例えばこの遺伝子にコードされるアネキシンタンパク質の産生を調節する制御領域(例えば限定されるわけではないが、転写、翻訳または翻訳後調節領域)が含まれる。本発明の核酸分子は、単離修飾アネキシン核酸分子またはその相同体であることも可能である。本発明の核酸分子は、1以上の制御領域、全長または部分的コード領域、あるいはその組み合わせを含むことも可能である。本発明の修飾アネキシン核酸分子の最小サイズは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、対応する天然遺伝子と、安定なハイブリッドを形成可能な最小サイズである。アネキシン核酸分子はまた、ハイブリッドタンパク質、融合タンパク質、多価タンパク質または一部切除断片をコードする核酸分子も含むことも可能である。
【0058】
[0073]本発明の単離核酸分子を、全(すなわち完全)遺伝子、またはその遺伝子と安定なハイブリッドを形成可能な全遺伝子の一部として、天然供給源から得ることも可能である。本明細書において、句、実体(entity)の「少なくとも一部」は、その実体の機能的側面を有するのに少なくとも十分な、実体の量を指す。例えば、本明細書において、核酸配列の少なくとも一部は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、対応する遺伝子と安定なハイブリッドを形成可能な、核酸配列の量である。
【0059】
[0074]組換えDNA技術(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニングなど)または化学合成を用いて、本発明の単離核酸分子を産生することもまた可能である。単離修飾アネキシン核酸分子には、天然核酸分子およびその相同体が含まれ、限定されるわけではないが、核酸分子が本発明のアネキシンタンパク質をコードするか、またはストリンジェントな条件下で、天然核酸分子単離体と安定なハイブリッドを形成する能力に、こうした修飾が実質的に干渉しないような方式で、ヌクレオチドが挿入され、欠失し、置換され、そして/または反転している、天然アレル変異体および修飾核酸分子が含まれる。
【0060】
[0075]当業者に知られるいくつかの方法を用いて、修飾アネキシン核酸分子相同体を産生することも可能である(例えばSambrookら、1989を参照されたい)。例えば、多様な技術を用いて、核酸分子を修飾することも可能であり、こうした技術には、限定されるわけではないが、古典的突然変異誘発技術および組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発、突然変異を誘導するための、核酸分子の化学処理、核酸断片の制限酵素切断、核酸断片の連結、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅および/または核酸配列の選択した領域の突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成、および核酸分子混合物を「構築する」混合物群の連結、並びにその組み合わせが含まれる。核酸にコードされるタンパク質の機能(例えば、相同体が、アネキシンタンパク質に対する免疫応答を誘発する能力、および/または凝血アッセイまたは他の機能アッセイにおいて、機能する能力)に関してスクリーニングすることによって、および/またはストリンジェントな条件下の、単離アネキシンコード核酸とのハイブリダイゼーションによって、修飾核酸の混合物から、核酸分子相同体を選択することも可能である。
【0061】
[0076]本発明の単離修飾アネキシン核酸分子は、本発明の少なくとも1つの修飾アネキシンタンパク質をコードする核酸配列を含むことも可能であり、こうしたタンパク質の例を本明細書に開示する。句「核酸分子」は、主に、物理的核酸分子を指し、そして句「核酸配列」は、主に、核酸分子上のヌクレオチドの配列を指すが、2つの句は交換可能に使用可能であり、特に修飾アネキシンタンパク質をコードすることが可能な核酸分子または核酸配列に関しては、交換可能に使用可能である。
【0062】
[0077]本発明の1つの態様は、ストリンジェントな条件下で、修飾アネキシンタンパク質またはその相同体の少なくとも一部をコードする核酸鎖に、あるいはこうした核酸鎖の相補体に、ハイブリダイズ可能な、修飾アネキシン核酸分子である。本発明の核酸配列いずれかの核酸配列相補体は、配列が引き出された(cited)鎖に相補的な(すなわちこうした鎖と完全二重らせんを形成可能な)核酸鎖の核酸配列を指す。一方の鎖に関して、核酸配列が決定された、すなわち配列番号に代表される、本発明の二本鎖核酸分子は、また、その配列番号の相補体である配列を有する相補鎖も含むことに注目すべきである。こうしたものとして、二本鎖または一本鎖いずれであることも可能な、本発明の核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に示す既定の配列番号および/または本明細書に示されていてもまたいなくてもよいその配列番号の相補体のいずれかと、安定なハイブリッドを形成する核酸分子を含む。相補配列を推定する方法が当業者に知られる。修飾アネキシンタンパク質の少なくとも一部をコードする核酸配列の対応する領域(単数または複数)と、少なくとも約65パーセント、好ましくは少なくとも約70パーセント、より好ましくは少なくとも約75パーセント、より好ましくは少なくとも約80パーセント、より好ましくは少なくとも約85パーセント、より好ましくは少なくとも約90パーセント、そしてさらにより好ましくは少なくとも約95パーセントの相同性を有する核酸配列を含む、修飾アネキシン核酸分子が含まれる。アネキシンタンパク質またはその相同体のホモ二量体をコード可能な修飾アネキシン核酸分子が含まれる。
【0063】
[0078]アネキシン核酸分子には、配列番号4および配列番号4のアレル変異体、配列番号1および配列番号1のアレル変異体、配列番号10および配列番号10のアレル変異体;並びに配列番号13および配列番号13のアレル変異体が含まれる。
【0064】
[0079]本発明の修飾アネキシンタンパク質の核酸分子を知ると、当業者が、核酸分子のコピーを作製し、加えて、アネキシンタンパク質コード遺伝子のさらなる部分を含む核酸分子(例えば翻訳開始部位および/または転写調節領域および/または翻訳調節領域を含む核酸分子)、および/またはアネキシン核酸分子相同体を得ることが可能になる。本発明のアネキシンタンパク質のアミノ酸配列の一部を知ると、当業者が、こうしたアネキシンタンパク質をコードする核酸配列をクローニングすることが可能になる。さらに、多様な方法で、所望の修飾アネキシン核酸分子を得ることも可能であり、こうした方法には、本発明のアネキシンタンパク質と結合する抗体を用いた、適切な発現ライブラリーのスクリーニング;適切なライブラリーまたはDNAをスクリーニングするのに本発明のオリゴヌクレオチドプローブを用いる、伝統的なクローニング技術;および本発明のオリゴヌクレオチドプライマーを用いた、適切なライブラリー、あるいはRNAまたはDNAのPCR増幅(ゲノムライブラリーおよび/またはcDNAライブラリーが使用可能である)が含まれる。
【0065】
[0080]本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、修飾アネキシンタンパク質の少なくとも一部をコードする、本発明の他の、好ましくはより長い核酸分子の相補領域と、ハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである核酸分子も含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA、DNA、またはいずれかの誘導体であることも可能である。こうしたオリゴヌクレオチドの最小サイズは、既定のオリゴヌクレオチド、および本発明の別の核酸分子上の相補配列の間に、安定なハイブリッドを形成するのに必要なサイズである。最小サイズの特徴を本明細書に開示する。オリゴヌクレオチドのサイズはまた、本発明にしたがってオリゴヌクレオチドを使用するために十分でなければならない。本発明のオリゴヌクレオチドを多様な適用に使用することも可能であり、こうした適用には、限定されるわけではないが、さらなる核酸分子を同定するプローブとして、核酸分子を増幅するかたまは伸長するプライマーとして、あるいは修飾アネキシン産生を調節する療法適用においての適用が含まれる。こうした療法適用には、こうしたオリゴヌクレオチドを、例えばアンチセンス、三重鎖形成、リボザイムおよび/またはRNA薬剤に基づく技術において使用することが含まれる。本発明は、したがって、こうしたオリゴヌクレオチド、および1以上のこうした技術の使用によって、修飾アネキシンタンパク質の産生を調節する方法を含む。
【0066】
天然野生型細菌細胞、並びに組換え分子および細胞
[0081]本発明はまた、宿主細胞に核酸分子を送達することが可能なベクターいずれかに挿入された、本発明の修飾アネキシン核酸分子を含む、組換えベクターも含む。こうしたベクターは、異種核酸配列、すなわち本発明の修飾アネキシン核酸分子に、天然には隣接して見出されない核酸配列を含有する。ベクターは、RNAまたはDNAいずれか、原核または真核いずれかであることも可能であり、そして典型的にはウイルスまたはプラスミドである。本発明の修飾アネキシン核酸分子をクローニングし、配列決定し、そして/または別の方式で操作する際に、組換えベクターを使用することも可能である。本明細書において、組換え分子と称し、そして以下により詳細に記載する、組換えベクターの1つの型を、本発明の核酸分子の発現に使用することも可能である。いくつかの組換えベクターは、形質転換細胞において、複製が可能である。本発明の組換えベクターに含まれる核酸分子を本明細書に開示する。
【0067】
[0082]ここまでに開示されていたように、本発明の1つの態様は、タンパク質を発現可能な細胞を、タンパク質を産生するのに有効な条件下で培養し、そしてタンパク質を回収することによって、本発明の修飾アネキシンタンパク質を産生する方法である。別の態様において、方法は、タンパク質を発現可能な細胞を、アネキシンタンパク質を産生するのに有効な条件下で培養し、タンパク質を回収し、そしてその有効サイズを増加させる剤にカップリングすることにより、タンパク質を修飾することによって、アネキシンタンパク質を産生することを含む。
【0068】
[0083]1つの態様において、培養する細胞は天然細菌細胞であり、そして修飾アネキシンをこれらの細胞から単離する。別の態様において、培養する細胞は、修飾アネキシンタンパク質を発現可能な組換え細胞であり、この組換え細胞は、本発明の1以上の核酸分子で、宿主細胞を形質転換することによって、産生されている。核酸分子を細胞に挿入することが可能な方法のいずれによって、核酸分子の細胞への形質転換を達成することも可能である。形質転換技術には、限定されるわけではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が含まれる。組換え細胞は、単細胞のままであることも可能であるし、あるいは組織、臓器または多細胞生物に成長することも可能である。形質転換された本発明の核酸分子は、染色体外に留まることも可能であるし、または発現される能力が保持されるような方式で、形質転換(すなわち組換え)細胞の染色体内の1以上の部位に組み込まれることも可能である。宿主細胞を形質転換する核酸分子を本明細書に開示する。
【0069】
[0084]形質転換に適した宿主細胞には、形質転換可能であり、そして導入された修飾アネキシンタンパク質を発現可能ないかなる細胞も含まれる。こうした細胞は、したがって、本発明の少なくとも1つの核酸分子で形質転換された後、本発明の修飾アネキシンタンパク質を産生可能である。宿主細胞は、未形質転換細胞、または少なくとも1つの核酸分子ですでに形質転換された細胞のいずれであることも可能である。本発明の適切な宿主細胞には、細菌、真菌(酵母を含む)、昆虫、動物、および植物細胞が含まれることも可能である。宿主細胞には、細菌細胞が含まれ、大腸菌(E. coli)細胞が特に好ましい。別の宿主細胞は、同族修飾アネキシンタンパク質を産生する、未形質転換(野生型)細菌細胞であり、必要に応じて、病原性が減少した弱毒化株が含まれる。
【0070】
[0085]好ましくは、1以上の転写調節配列を含有する発現ベクターに機能可能であるように連結された、本発明の1以上の核酸分子を各々含む、1以上の組換え分子で、宿主細胞を形質転換することによって、組換え細胞を産生する。句「機能可能であるように連結された」は、分子が宿主細胞に形質転換された際に発現されることが可能であるような方式での、発現ベクターへの核酸分子の挿入を指す。本明細書において、発現ベクターは、宿主細胞を形質転換し、そして明記する核酸分子の発現を達成することが可能な、DNAベクターまたはRNAベクターである。好ましくは、発現ベクターはまた、宿主細胞内で複製することも可能である。発現ベクターは、原核または真核のいずれであることも可能であり、そして典型的にはウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターは、細菌、真菌、昆虫、動物、および/または植物細胞中を含めて、本発明の組換え細胞中で機能する(すなわち遺伝子発現を指示する)、いかなるベクターも含む。こうしたものとして、本発明の核酸分子は、プロモーター、オペレーター、リプレッサー、エンハンサー、終結配列、複製起点、および組換え細胞と適合し、そして本発明の核酸分子の発現を調節する他の制御配列などの制御配列を含有する発現ベクターに、機能可能であるように連結されることも可能である。本明細書において、転写調節配列には、転写の開始、伸長、および終結を調節可能な配列が含まれる。特に重要な転写調節配列は、転写開始を調節するもの、例えばプロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列である。適切な転写調節配列には、本発明の組換え細胞の少なくとも1つにおいて機能可能な転写調節配列いずれかが含まれる。多様なこうした転写調節配列が、当該技術分野に知られる。転写調節配列には、細菌、酵母、昆虫および哺乳動物細胞で機能するもの、例えば限定されるわけではないが、tac、lac、tzp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージ・ラムダ(λ)(λpLおよびλpR、並びにこうしたプロモーターを含む融合体)、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ接合因子、ピキア(Pichia)・アルコールオキシダーゼ、アルファウイルス・サブゲノムプロモーター(シンドビスウイルス・サブゲノムプロモーターなど)、バキュロウイルス、ヘリオシス・ジー(Heliothis zea)昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40、レトロウイルス・アクチン、レトロウイルス末端反復配列(long terminal repeat)、ラウス肉腫ウイルス、熱ショック、ホスフェートおよびナイトレート転写調節配列、並びに原核細胞または真核細胞において、遺伝子発現を調節可能な他の配列が含まれる。さらなる適切な転写調節配列には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、並びにリンホカイン誘導性プロモーター(例えばインターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が含まれる。本発明の転写調節配列にはまた、アネキシンタンパク質をコードするDNA配列と天然に関連する、天然存在転写調節配列も含まれることも可能である。1つの転写調節配列は、コザック強力プロモーターおよび開始配列である。
【0071】
[0086]本発明の発現ベクターはまた、発現されたアネキシンタンパク質が、タンパク質を産生する細胞から分泌されることを可能にする分泌シグナル(すなわちシグナルセグメント核酸配列)も含有することも可能である。適切なシグナルセグメントには、アネキシンタンパク質シグナルセグメント、または融合タンパク質を含む、本発明のアネキシンタンパク質の分泌を指示することが可能な異種シグナルセグメントいずれかが含まれる。シグナルセグメントには、限定されるわけではないが、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)、インターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、組織適合性、およびウイルスエンベロープ糖タンパク質シグナルセグメントが含まれる。
【0072】
[0087]本発明の発現ベクターはまた、本発明の挿入核酸分子の発現を、融合タンパク質として導く、融合配列も含有することも可能である。本発明の修飾アネキシン核酸分子の一部として、融合配列を含むと、核酸分子にコードされるタンパク質の産生、保存、および/または使用中に、安定性を増進することも可能である。さらに、融合セグメントは、修飾アネキシンタンパク質の精製を単純にするツールとして、例えばアフィニティークロマトグラフィーを用いて生じた融合タンパク質の精製を可能にするツールとして、機能することも可能である。タンパク質精製に使用可能な1つの融合セグメントは、8アミノ酸ペプチド配列asp−tyr−lys−asp−asp−asp−asp−lys(配列番号9)である。
【0073】
[0088]適切な融合セグメントは、所望の機能(例えば増加した安定性および/または精製ツール)を有する、いかなるサイズのドメインであることも可能である。1以上の融合セグメントの使用は、本発明の範囲内である。融合セグメントを、アネキシンタンパク質のアミノ末端および/またはカルボキシル末端に連結することも可能である。別の種類の融合タンパク質は、融合セグメントを2以上のアネキシンタンパク質または修飾アネキシンタンパク質に連結する融合タンパク質である。アネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質の簡単な回収を可能にするため、切断に感受性であるように、融合セグメントおよびアネキシンタンパク質間の連結を構築することも可能である。好ましくは、アネキシンタンパク質のカルボキシル末端および/またはアミノ末端のいずれかに付着した融合セグメントを含むタンパク質をコードする融合核酸配列で形質転換した組換え細胞を培養することによって、融合タンパク質を産生する。
【0074】
[0089]本発明の組換え分子は、形質転換しようとする細胞において、核酸分子の発現を有効に制御することが可能な転写調節配列いずれかの少なくとも1つに、機能可能であるように連結された、これまで記載した核酸分子いずれかの少なくとも1つを含むことが可能な分子である。組換え分子には、本発明の1以上の核酸分子が含まれ、1以上の修飾アネキシンタンパク質をコードするものが含まれる。本発明の組換え分子およびその産生を、実施例項に記載する。同様に、組換え細胞には、1以上のアネキシンタンパク質をコードする、本発明の1以上の核酸分子が含まれる。本発明の組換え細胞には、実施例項に開示されるものが含まれる。
【0075】
[0090]組換えDNA技術を使用すると、例えば宿主細胞内の核酸分子のコピー数、こうした核酸分子が転写される効率、生じた転写物が翻訳される効率、および翻訳後修飾の効率を操作することによって、形質転換核酸分子の発現を改善可能であることが、当業者には、認識可能である。本発明の核酸分子の発現を増加させるのに有用な組換え技術には、限定されるわけではないが、核酸分子の高コピー数プラスミドへの機能可能であるような連結、1以上の宿主細胞染色体中への核酸分子の組込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写調節シグナル(例えばプロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳調節シグナル(例えばリボソーム結合部位、シャイン−ダルガノ配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン慣用法に対応するような本発明の核酸分子の修飾、転写を不安定化する配列の欠失、および発酵中の組換えタンパク質産生から組換え細胞増殖を一時的に分離する調節シグナルの使用が含まれる。生じたタンパク質を断片化し、修飾し、または誘導体化することによって、発現された本発明の組換えタンパク質の活性を改善することも可能である。
【0076】
[0091]本発明にしたがって、組換え細胞を、本発明のアネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質を産生するのに有効な条件下で培養して、そして該タンパク質を回収することによって、こうした細胞を用いて、こうしたタンパク質を産生することも可能である。タンパク質を産生するのに有効な条件には、限定されるわけではないが、タンパク質産生を可能にする、適切な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれる。適切な、または有効な培地は、本発明の細胞を培養した場合、該細胞がアネキシンまたは修飾アネキシンタンパク質を産生可能な、いかなる培地も指す。こうした培地は、典型的には、同化可能な(assimilable)炭水化物、窒素およびホスフェート供給源、並びに適切な塩、ミネラル、金属および他の栄養素、例えばビタミンを含む水性培地である。培地は、複雑な栄養素を含むことも可能であるし、また定義される最小培地であることも可能である。
【0077】
[0092]本発明の細胞を慣用的な発酵バイオリアクターで培養することも可能であり、こうしたバイオリアクターには、限定されるわけではないが、バッチ、流加、細胞リサイクルおよび連続発酵槽が含まれる。振盪フラスコ、試験管、マイクロタイタープレート、およびペトリ皿中で、培養を行うこともまた可能である。組換え細胞に適した温度、pHおよび酸素含量で、培養を行う。こうした培養条件は、一般の当業者の専門的技術の範囲内である。
【0078】
[0093]産生に用いるベクターおよび宿主系に応じて、生じるアネキシンタンパク質は、組換え細胞内に留まるか;発酵培地内に分泌されるか;2つの細胞膜間の空間内、例えば大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌されるか;あるいは細胞またはウイルス膜の外表面に保持されることも可能である。こうしたタンパク質を精製する方法を、実施例項に開示する。
【0079】
抗体
[0094]本発明はまた、単離抗修飾アネキシン抗体およびその使用も含む。抗修飾アネキシン抗体は、修飾アネキシンタンパク質に選択的に結合可能な抗体である。単離抗体は、天然環境から取り除かれている抗体である。用語「単離」は、こうした抗体の純度の状態を指さない。こうしたものとして、単離抗体は、こうした抗体を含有する抗血清、または多様な度合いまで精製されている抗体を含むことも可能である。本明細書において、用語「選択的に結合する」は、こうした抗体が、それに対して抗体が作製されたタンパク質に、優先的に結合する(すなわち、混合物中の関連しない構成要素から、該タンパク質を区別可能である)能力を指す。一般的に平衡会合定数として表される結合親和性は、典型的には、約103M−1〜約1012M−1の範囲である。当業者に知られる多様な方法を用いて、結合を測定することも可能であり、こうした方法には、イムノブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫アッセイ(例えばELISA)、免疫蛍光抗体アッセイ、および免疫電子顕微鏡が含まれる;例えばSambrookら、1989を参照されたい。
【0080】
[0095]本発明の抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであることも可能である。本発明の抗体には、抗体を得るのに用いられるタンパク質の少なくとも1つのエピトープに選択的に結合することが可能な、一本鎖抗体を含む、抗体断片および遺伝子操作された抗体などの、機能上の同等物が含まれる。本発明の抗体にはまた、1より多いエピトープに結合可能なキメラ抗体も含まれる。抗体は、少なくとも部分的に、本発明の修飾アネキシン核酸分子にコードされるタンパク質に反応して作成される。
【0081】
[0096]本発明の抗修飾アネキシン抗体には、修飾アネキシンを投与した動物において作製される抗体が含まれる。本発明の抗修飾アネキシン抗体にはまた、当業者に知られる技術を用いて、本発明の1以上の修飾アネキシンタンパク質に対して、動物において作製され、次いで細胞から回収された、抗体も含まれる。本発明のさらなる抗体は、本発明の修飾アネキシンタンパク質に関して本明細書に開示する技術を用いて、組換え的に産生される。定義されるタンパク質に対して産生される抗体は、そうでなければ、診断アッセイにおける干渉、または療法組成物中で用いた場合には副作用を引き起こしうる、他の物質に対する抗体が、実質的に混入していないため、好適でありうる。
【0082】
[0097]本発明の抗修飾アネキシン抗体は、本発明の範囲内である多様な使用を有する。抗修飾アネキシン抗体をツールとして用いて、発現ライブラリーをスクリーニングし、そして/または本発明の所望のタンパク質をタンパク質および他の混入物質の混合物から回収することも可能である。
【0083】
[0098]本発明の抗修飾アネキシン抗体は、修飾アネキシンタンパク質に選択的に結合可能である。
療法
[0099]上述の修飾アネキシンタンパク質のいずれかを本発明の方法で用いて、医学的方法または状態いずれかによって引き起こされる動脈血栓症または静脈血栓症を治療する。一般的に、本発明で用いる療法剤を有効量で動物に投与する。一般的に、有効量は、(1)治療しようとする疾患の症状を減少させるか、または(2)治療しようとする疾患を治療するのに相当する薬理学的変化を誘導するのに有効な量である。
【0084】
[00100]血栓症に関して、有効な量には、出血のリスクを実質的に増加させることなく、延長された抗血栓活性を発揮するか、または罹患した動物の平均余命を増加させるのに有効な量が含まれる。本明細書において、延長された抗血栓活性は、非修飾アネキシンタンパク質と同量(モル濃度)の活性の時間に対する、修飾アネキシンタンパク質の活性の時間を指す。好ましくは、抗血栓活性は、少なくとも約2倍(factor of two)、より好ましくは少なくとも約5倍(factor of five)、そして最も好ましくは少なくとも約10倍(factor of ten)、延長される。好ましくは、有効量は、修飾アネキシンを投与していない同じ被験者の出血リスクに比較して、出血リスクを実質的に増加させない。好ましくは、出血リスクは非常に小さく、そして最大でも、先行技術で利用可能な別の抗血栓治療に提供されるものより低い。療法的に有効な量の療法剤は、所望の抗血栓効果を引き起こすのに十分な量または用量いずれであることも可能であり、そして部分的に、血栓の状態、タイプ、および位置、患者の大きさおよび状態、並びに当業者に知られる他の要因に応じる。投薬量を、単回用量として、または例えば数週間の経過に渡って分割される、数回の用量として、投与することも可能である。
【0085】
[00101]好ましくは、さらなる血栓症を防止するために、血栓症後に、あるいは被験者が血栓症に罹患しやすいかまたは血栓症のリスクを持つ状態下で、ボーラス注射によるか、または静脈内注入によって、投与を行う。
【0086】
[00102]例えば非経口投与あるいは局所投与、例えば静脈内注射もしくは皮下注射、またはエアロゾルによるものを含む、適切な手段いずれかによって、本発明の療法剤を投与することも可能である。投与法に応じて、多様な単位投薬型で療法組成物を投与することも可能である。本発明の療法組成物の送達法には、例えば注射による、静脈内投与および局所投与が含まれる。送達の特定の様式では、本発明の療法組成物を本発明の賦形剤中に配合することも可能である。本発明の療法剤を、動物いずれか、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトに投与することも可能である。
【0087】
[00103]1つの適切な投与時間は、冠動脈血栓症後に生じ、それによって、出血のリスクを実質的に増加させることなく、血栓症の再発を防止する。修飾アネキシンのボーラス注射は、好ましくは、血栓症後まもなく、例えば入院前に行われる。修飾アネキシンを、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ、または細菌酵素などの血栓溶解療法剤と組み合わせて投与することも可能である。
【0088】
[00104]本発明の修飾アネキシンタンパク質を使用する方法には、顕性脳血栓症または一過性脳虚血発作を含む脳血栓症を治療する方法が含まれ、この方法は、脳血栓症を治療する必要がある患者に、有効量の修飾アネキシンタンパク質を投与することによる。発達した脳卒中には、しばしば一過性虚血発作が先行する。末梢動脈における血栓症のリスクが増加した糖尿病患者および他の患者に、修飾アネキシンを投与することもまた可能である。したがって、本発明は、血栓症のリスクが増加した患者において、血栓症のリスクを減少させる方法であって、血栓症のリスクを減少させる必要がある患者に、有効量の修飾アネキシンタンパク質を投与することを含む、前記方法を提供する。成人患者には、約1〜約100mgの投薬範囲の修飾アネキシンを静脈内投与するか、またはボーラスとして投与することも可能である。
【0089】
[00105]本発明はまた、股関節形成術および膝関節形成術などの、いくつかの外科手術に関連する静脈血栓症のリスクを減少させる方法であって、こうした血栓症のリスクを減少させる必要がある患者に、本発明の修飾アネキシンタンパク質の有効量を投与することによる、前記方法も提供する。修飾アネキシン治療は、手術野への出血を増加させることなく、血栓症を防止することも可能である。別の態様において、本発明は、出血を増加させることなく、妊娠および分娩に関連する血栓症を防止する方法であって、血栓症を防止する必要がある患者に、本発明の修飾アネキシンタンパク質の有効量を投与することによる、前記方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、再発性静脈血栓症の治療法であって、再発性静脈血栓症を治療する必要がある患者に、本発明の修飾アネキシンタンパク質の有効量を投与することによる、前記方法を提供する。成人患者には、約1〜約100mgの投薬範囲の修飾アネキシンを、ボーラスとして静脈内投与することも可能である。
【0090】
[00106]本発明はまた、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質に関してスクリーニングする方法であって、血栓症試験系を、血栓症を許容する条件下で、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質と接触させ、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での抗血栓活性と、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での抗血栓活性を比較することにより、ここで、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、抗血栓活性に変化があると、修飾アネキシンタンパク質が血栓活性を調節するものであることの指標となる、前記方法を提供する。1つの態様において、血栓症試験系は、活性化部分的トロンボプラスチン時間を測定するための系である。この方法によって同定されるような、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0091】
[00107]本発明はまた、アネキシン活性に関して、修飾アネキシンタンパク質を同定する方法であって、活性化された血小板と、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質を、結合を許容する条件下で接触させ、そして試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での、試験修飾アネキシン結合活性および血小板のプロテインS結合活性と、非修飾アネキシンタンパク質の存在下での、アネキシン結合活性およびプロテインS結合活性を比較して、これによって、アネキシン活性を持つ修飾アネキシンタンパク質が同定可能である、前記方法も提供する。この方法によって同定される修飾アネキシンタンパク質もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0092】
[00108]さらなる態様において、本発明は、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質に関してスクリーニングする方法であって、in vivo血栓症試験系を、血栓症を許容する条件下で、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質と接触させ、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での抗血栓活性と、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での抗血栓活性を比較することによる、前記方法を提供する。試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、抗血栓活性に変化があると、修飾アネキシンタンパク質が血栓活性を調節するものであることの指標となる。さらに、試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、抗血栓活性が維持される時間を、非修飾アネキシンの存在下での抗血栓活性の時間と比較して、試験修飾アネキシンタンパク質に関連する抗血栓活性の延長を決定する。試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での出血の度合いを、例えば尾の出血時間を測定することによって評価し、そして試験修飾アネキシンタンパク質の非存在下での出血の度合いと比較する。1つの態様において、in vivo血栓症試験系は、挙睾筋における、光化学的に誘導された血栓のマウスモデルである。この方法に同定されるような、血栓症を調節する修飾アネキシンタンパク質もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0093】
[00109]さらなる態様において、本発明の療法剤は、遺伝子治療に有用である。本明細書において、句「遺伝子治療」は、目的の遺伝物質(例えばDNAまたはRNA)を、宿主に移入して、遺伝性または後天性の疾患または状態を治療するかまたは防止することを指す。目的の遺伝物質は、in vivoでの産生が望ましい産物(例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは機能性RNA)をコードする。例えば、目的の遺伝物質は、療法的価値がある、ホルモン、受容体、酵素または(ポリ)ペプチドをコードすることも可能である。特定の態様において、本発明は、本明細書に援用される、Hughesら、米国特許第6,169,078号に記載されるような、核酸と複合体形成することも可能な、非ウイルス遺伝子治療で使用するための脂質分子種を利用し、該分子種において、脂質の極性頭基および親油性テール基の間に、ジスルフィド・リンカーが提供されている。
【0094】
[00110]本発明のこれらの療法化合物は、DNAと有効に複合体形成し、そして細胞膜を通じて、異種DNAで形質転換しようとする細胞の細胞内空間へのDNAの移入を促進する。さらに、これらの脂質分子は、細胞質における異種DNAの放出を促進し、それによって、ヒトまたは動物における遺伝子治療中の遺伝子トランスフェクションを増加させる。
【0095】
[00111]当該技術分野に知られる多様な方法によって、カチオン性脂質−ポリアニオン性巨大分子凝集塊を形成することも可能である。代表的な方法が、すべて本明細書に援用される、Felgnerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7413−7417(1987);Eppsteinら、米国特許第4,897,355号;Behrら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6982−6986(1989);Banghamら, J. Mol. Biol. 23:238−252(1965);Olsonら, Biochim. Biophys. Acta 557:9(1979);Szokaら, Proc. Natl. Acad. Sci. 75:4194(1978);Mayhewら, Biochim. Biophys. Acta 775:169(1984);Kimら, Biochim. Biophys. Acta 728:339(1983);およびFukunagaら, Endocrinol. 115:757(1984)に開示される。一般的に、(1)カチオン性脂質または(2)共脂質(colipid)と混合したカチオン性脂質のいずれかからなる脂質粒子を調製し、その後、ほぼ室温(約18〜26℃)で脂質粒子にポリアニオン性巨大分子を添加することによって、凝集塊を形成することも可能である。一般的に、保護基の脱保護を導かない条件を選択する。1つの態様において、次いで、約10分間〜約20時間の期間に渡って、混合物が凝集塊を形成するのを可能にするが、約15〜60分間が最も好適に用いられる。特定の脂質型には、他の期間が適切である可能性もある。より長い期間に渡って、複合体を形成することも可能であるが、複合体形成期間がより長くても、通常、トランスフェクション効率のさらなる増進は得られないであろう。
【0096】
[00112]本発明の化合物および方法を用いて、所望の分子、例えばポリヌクレオチドを、ターゲット細胞に細胞内送達することも可能である。所望のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAあるいはその類似体で構成されることも可能である。本発明の方法を用いて送達される、所望のポリヌクレオチドは、異なる機能または活性を提供するヌクレオチド配列、例えば制御機能を有するヌクレオチド、例えばプロモーター配列、またはポリペプチドをコードするヌクレオチドで構成されることも可能である。所望のポリヌクレオチドはまた、細胞において、他のヌクレオチド配列に対してアンチセンスであるヌクレオチド配列を提供することも可能である。例えば、所望のポリヌクレオチドは、細胞において転写された際、細胞において、他のヌクレオチド配列に対してアンチセンスである配列を有するポリヌクレオチドを提供することも可能である。アンチセンス配列は、細胞において、センス鎖配列にハイブリダイズ可能である。一般の当業者は、アンチセンス配列を提供するポリヌクレオチドを容易に調製可能である。細胞に送達される所望のポリヌクレオチドはまた、細胞において、二本鎖DNAと三重鎖複合体を形成することが可能な、ヌクレオチド配列を含むことも可能である。
【0097】
[00113]本発明は、哺乳動物において、再灌流傷害を防止するかまたは減弱するための化合物および方法を提供する。再灌流傷害(RI)は、臓器または組織への血液供給が中断されて、そして間隔を置いた後、回復された際に起こる。内皮細胞および他の細胞におけるリン脂質非対称性の喪失は、RIの発症において、重大な事象と考えられる。これらの細胞の表面上にPSが暴露されると、活性化された単球の結合が可能になる。この結合が、RIの別の重大な事象である、内皮細胞および他の細胞の不可逆的アポトーシスにつながる、一連の事象を誘発する。さらに、細胞表面上のPS、およびそれに由来する小胞は、脂質仲介因子を生成するホスホリパーゼにアクセス可能である。これらの脂質仲介因子は、上述の機構によって生じる損傷を増幅し、そして急性心筋梗塞後の心室性不整脈などの深刻な合併症を生じる。
【0098】
[00114]組換えヒトアネキシン、好ましくはアネキシンVは、血管区画における半減期が延長されるような方式で修飾される。これは、多様な方式で達成可能であり;ポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシン、アネキシンのホモポリマーまたはヘテロポリマー、およびアネキシンと別のタンパク質(例えば免疫グロブリンのFc部分)の融合タンパク質が3つの態様である。どちらも本明細書に完全に援用される、Allison, “Modified Annexin Proteins and Methods for Preventing Thrombosis,” 米国特許出願第10/080,370号(2002年2月21日出願)およびAllison, “Modified Annexin Proteins and Methods for Treating Vaso−Occlusive Sickle−Cell Disease,” 米国特許出願第10/632,694号(2003年8月1日出願)を参照されたい。
【0099】
[00115]修飾アネキシンは、上皮細胞および他の細胞の表面上のホスファチジルセリンに高親和性で結合し、それによって、食細胞の結合、および脂質仲介因子を放出するホスホリパーゼの操作を防止する。したがって、修飾アネキシンは、再灌流傷害の細胞性機構および体液性機構の両方を阻害する。
【0100】
[00116]1つの態様において、本発明は、少なくとも1つのさらなるタンパク質、例えばさらなるアネキシンタンパク質(ホモ二量体を形成する)、ポリエチレングリコール、または免疫グロブリンのFc部分にカップリングした、アネキシンタンパク質を含有する、単離修飾アネキシンタンパク質を提供する。さらなるタンパク質は、好ましくは、少なくとも30kDaの分子量を有する。本発明がやはり提供するのは、本発明の修飾アネキシンタンパク質のいずれかを、再灌流傷害を防止するかまたは減少させるのに有効な量で含有する薬剤組成物である。
【0101】
[00117]本発明のいくつかの方法において、本発明の修飾アネキシンタンパク質のいずれか1つを、再灌流傷害を防止するかまたは減弱させるのに有効な量で有する薬剤組成物中、再灌流傷害のリスクがある被験者に修飾アネキシンを投与する。例えば、臓器移植、関節形成術、あるいは臓器または組織への血液供給が中断されて、そして間隔を置いた後、回復される、他の外科手術の前および後に、薬剤組成物を投与することも可能である。冠動脈血栓症または脳血栓症後に、該組成物を投与することもまた可能である。
【0102】
[00118]修飾アネキシンは、細胞表面上のアクセス可能なPSに結合し(細胞をシールドし)、それによって、単球の付着およびアポトーシスの不可逆的な段階を防止する。さらに、修飾アネキシンは、やはりRIに寄与する脂質仲介因子を生成するホスホリパーゼの活性を阻害する。修飾アネキシンは、死体ドナーから移植された臓器において、冠動脈血栓症および脳血栓症患者において、関節形成術を受ける患者において、そして他の状況において、RIを防止するかまたは減弱させるのに有用であろう。さらに、修飾アネキシンは、出血を増加させることなく、延長された抗血栓活性を発揮するであろう。RIを減弱させる能力と、抗血栓効力のこの組み合わせは、現在用いられているか、または開発中であることが知られるいかなる療法剤にも提示されない、ユニークなプロフィールの望ましい活性を提示する。
【0103】
[00119]実施例6に記載するように、アネキシン・ホモ二量体は、sPLA2の強力な阻害剤である(図4)。アネキシンVは、細胞表面上のPSに高親和性で結合するため、sPLA2および他のホスホリパーゼによる分解からPSをシールドする。
【0104】
[00120]ヒトアネキシンVのホモ二量体を産生すると、PSに対する親和性が増加し、それによって、療法剤としての有効性が改善され;そしてそれだけでなく、サイズが増大し、それによって循環中の存続および作用期間が延長される。36kDaの単量体は、血流から腎臓に迅速に失われた。ウサギにおいて、循環中に注入した標識アネキシンVの80%より多くが、7分間で消失した(ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339, 1997)。カニクイザル(cynomolgus monkey)において、注入したアネキシンVの半減期は、11〜15分であることが見出された(Romischら, Thrombosis Res., 61:93, 1991)。99MTcで標識したアネキシンを注入したヒトにおいて、主要(α)区画に関する半減期は、24分であった(Kemerinkら, J. Nucl. Med. 44:947, 2003)。
【0105】
[00121]好適な方法いずれによって、アネキシン・ホモ二量体を産生することも可能である。組換えDNA技術は、単量体中の1つの利用可能なスルフィドリル基への連結、またはポリエチレングリコールとのカップリングなどの、翻訳後の処置の必要性を回避するため、いくつかの態様において、組換えDNA技術によって、アネキシン・ホモ二量体を産生する。一方のアネキシン単量体のアミノ末端および他方の単量体のカルボキシ末端に付着させた柔軟なペプチドリンカーを使用することによって、組換えホモ二量体化を達成した(図1)。アネキシンV、並びにCa2+およびPSに結合する残基の三次元構造が、X線結晶学および部位特異的突然変異誘発から知られる(Huberら, J. Mol. Biol. 223:683, 1992;Camposら, 37:8004, 1998)。Ca2+結合部位およびPS結合部位は、分子の凸状表面上であり、一方、アミノ末端は、凹状表面上にゆるいテールを形成する。どちらの凸状表面も、細胞表面上のPSにアクセス可能であるような方式で、フォールディング可能であるように、図1に示すアネキシンVホモ二量体を設計する。したがって、このため、二量体は、単量体のものよりも、PSにより高い親和性を有するであろう。実施例4に報告するように、これを実験的に検証した。アネキシンVのホモ二量体の別の利点は、36kDaの分子(単量体)が、循環から腎臓に迅速に失われる一方、73kDaのもの(二量体)は、腎臓ろ過閾値を超えており、失われることはないであろうことである。したがって、療法的に有用な活性は、二量体で延長されるであろう。この予測を、実験で確認した。
【0106】
[00122]再梗塞およびRIを防止するかまたは減弱するため、いくつかの場合、より長い活性期間を有することが望ましい。ホモ二量体化して76kDaにすることによって、アネキシンVの分子量を増加させると、腎臓への損失が防止され、そして循環中の存続が延長される。したがって、こうした修飾アネキシンは、臓器への血液供給が中断される数時間前に投与されたとしても、RIを有効に減弱させることも可能である。
【0107】
[00123]本発明の解説は、アネキシンVがRIを阻害しないと示唆した文献中の報告とは相反する。例えば、d’Amicoらは、ラット心臓において、アネキシンVはRIを阻害しないが、リポコルチンI(アネキシンI)は阻害したと報告する(d’Amicoら, FASEB J. 14:1867, 2000)。リポコルチンIの断片をラットの脳室に注入すると、脳虚血後の梗塞サイズおよび脳浮腫が減少すると報告された(Peltonら, J. Exp. Med. 174:305, 1991);これらの著者らは、再灌流を研究しなかった。肝臓の虚血傷害を防止する戦略の包括的概説(Selznerら, Gastroenterology 15:917, 2003)において、アネキシンは言及されていない。
【0108】
[00124]実施例7に記載するように、マウス肝臓モデル(Teohら, Hepatology 36:94, 2002)において、アネキシンVホモ二量体がRIを減弱する能力を試験した。このモデルでは、肝臓の左側葉および中葉への血流を90分間中断し、そして次いで回復させる。24時間後、アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清レベルおよび肝臓組織像によって、肝臓傷害の重症度を評価する。肝動脈をクランプする6時間前に注入した、アネキシンVホモ二量体(DAV)、分子量73kDa、およびポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシンV(PEG−AV)、分子量57kDaは、どちらも、血清ALTレベル(図5)および肝臓組織像に示されるように、RIを減弱するのに非常に有効であった。アネキシンV単量体(AV)は、このモデルにおいて、防御性がより低かった。
【0109】
[00125]したがって、実験の証拠によって、本発明の修飾アネキシンは、被験者において、RIを減弱するのに有用であろうことが確認される。上に論じるように、異なる臓器で起こる型のRIにも、同様の発症機構が関与し、したがって、アネキシンVホモ二量体を、これらすべてにおけるRIを減弱するのに用いることも可能である。
【0110】
[00126]PSに対して親和性が高く、そして循環からの損失が減少しているため、アネキシンVホモ二量体は、延長された抗血栓活性を発揮するであろう。これは、再梗塞を防止するのに臨床的に有用であり、再梗塞は、冠動脈血栓後の重要な事象であることが知られ(Andersenら, N. Engl. J. Med. 349:733, 2003)、そして脳卒中に重要である可能性がある。関節形成術を受ける患者における血栓症の防止もまた、臨床的に重要な必要性を持つ。したがって、抗凝血剤としての修飾アネキシンのさらなる活性には、価値がある。いくつかの実験動物モデルにおいて、アネキシンVは、出血を増加させることなく、動脈血栓症および静脈血栓症を阻害する(Roemischら, Thromb. Res. 61:93, 1991;Van Ryn−McKennaら, Thromb. Hemost. 69:227, 1993;ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339, 1997)。修飾アネキシンは、出血を増加させることなく、抗凝血活性を発揮し、そして再灌流傷害を減弱させる能力を有する。この作用の組み合わせは、いくつかの臨床状況において、有用でありうる。現在使用されているか、または開発中であることが知られる、他の療法剤のいずれも、この活性の望ましいプロフィールを共有しない。
【0111】
[00127]アネキシンV以外のいくつかのアネキシンが、Ca2+およびPSに結合する。これらのいずれを用いて、再灌流傷害を防止するかまたは減少させることも可能である。ホモ二量体化以外の方法によって、アネキシンV、または別のアネキシンの分子量を増加させることも可能である。こうした方法には、他のホモポリマーまたはヘテロポリマーの調製が含まれる。あるいは、組換えDNA技術または化学的操作によって、アネキシンを別のタンパク質にコンジュゲート化することも可能である。ポリエチレングリコールまたは別の非ペプチド化合物へのアネキシンのコンジュゲート化もまた、想定される。
【0112】
[00128]アネキシンVホモ二量体が、よく寛容されるであろうことが予期される。別のアネキシン、アネキシンVIは、保存されるアネキシン配列の天然存在ホモ二量体である。しかし、アネキシンVIは、高親和性でPSに結合しない。アネキシン以外のPS結合タンパク質もまた、本発明の方法で使用可能である。例えば、PSに高親和性を有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体(Diazら, Bioconjugate Chem. 9:250, 1998;Thorpeら、米国特許第6,312,694号)を、(例えば再灌流傷害を減少させるかまたは防止するため)本発明にしたがって用いることも可能である。
【0113】
[00129]ジアネキシン(定義されたい−配列番号6か)は、ラットにおいて、用量に関連する抗血栓活性を有する(図7)。ジアネキシンを5.0mg/kg(抗血栓用量のおよそ7倍)で投与した場合であっても、ラット尾を切断した後、血液損失は有意に増加しない。対照的に、同時に行った実験において、140aXa単位/kg(療法用量のおよそ7倍)のフラグミン(低分子量ヘパリン)を投与すると、血液損失が有意に増加した(表4および図10)。APTT(活性化プロトロンビン時間)に関して、用いたジアネキシンの用量のいずれもAPTTを増加させなかったが、20aXa単位/kg(表2)および140aXa単位/kg(表5および図11)のフラグミンのどちらも、APTTを有意に増加させた。ヨウ素標識ジアネキシンのクリアランスは、2区画モデル、9〜14分のα期および6〜7時間のβ期によって表現可能である。後者は、いくつかの種で、アネキシンIV単量体に関して先に報告されたものより有意に長い。ジアネキシンの多くの臨床的適用には、単回ボーラス注射で十分であるため、6.5時間の半減期は、療法的に好適である。ジアネキシンが出血を誘導する、ありそうにない事象の場合も、その効果はかなり早く消失するであろう。ジアネキシンおよびフラグミンはどちらも、尾切断後のラットの出血時間を有意に増加させる(図9および表4)。ジアネキシンの場合、これはホスホリパーゼA2作用およびトロンボキサン生成を阻害するためである可能性もある。ヒトにおいて、薬剤によって、または遺伝子不全の結果として、シクロオキシゲナーゼが阻害される(irhbited)と、出血時間が増加する。ジアネキシンは、血液損失を有意に増加させないため、出血時間が増加したにもかかわらず、ジアネキシンが、初期止血機構に大きな影響を持たないことは明らかである。ジアネキシン投与は、体重に影響を及ぼさない。
【0114】
[00130]本発明はまた、本発明の修飾アネキシンタンパク質を含む療法組成物にも関する。本発明の組成物はまた、薬学的に許容しうる賦形剤、アジュバント、および/またはキャリアーなどの他の構成要素も含むことも可能である。例えば、本発明の組成物を、処置しようとする動物が許容しうる賦形剤中に配合することも可能である。こうした賦形剤の例には、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、マンニトール、ハンクス溶液、および他の水性生理学的平衡塩溶液が含まれる。非水性ビヒクル、例えばトリグリセリドを用いることもまた可能である。賦形剤はまた、少量の添加剤、例えば等張性および化学的安定性を増進する物質も含有することも可能である。緩衝剤の例には、リン酸緩衝剤、重炭酸緩衝剤、Tris緩衝剤、ヒスチジン、クエン酸塩およびグリシン、またはその混合物が含まれ、一方、保存剤の例には、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが含まれる。標準的配合物は、液体注射物質または固体のいずれかであることも可能であり、固体は、注射用の懸濁物または溶液として、適切な液体中に取り込まれることも可能である。したがって、非液体配合物において、賦形剤は、デキストロース、ヒト血清アルブミン、保存剤等を含むことも可能であり、投与前に、これに無菌水または生理食塩水を添加することも可能である。
【0115】
[00131]本発明の1つの態様は、動物に、本発明の組成物を持続放出することが可能な徐放配合物である。本明細書において、徐放配合物は、徐放ビヒクル中に本発明の組成物を含む。適切な徐放ビヒクルには、限定されるわけではないが、生体適合ポリマー、他のポリマーマトリックス、カプセル、微小カプセル、微小粒子、ボーラス調製物、浸透圧ポンプ、分散デバイス、リポソーム、リポ球体(liposphere)、および経皮送達系が含まれる。本発明の他の徐放配合物には、動物に投与した際、in situで、固体またはゲルを形成する液体が含まれる。好ましい徐放配合物は、生体分解性(すなわち生体内分解性)である。
【0116】
[00132]一般的に、本発明で用いる療法剤は、有効量で動物に投与される。一般的に、有効量は、(1)治療しようとする疾患の症状を減少させるか、または(2)治療しようとする疾患を治療するのに相当する薬理学的変化を誘導するか、いずれかに有効な量である。
【0117】
[00133]療法剤の療法的に有効な量は、所望の効果を引き起こすのに十分な量または用量いずれであることも可能であり、そして部分的に、癌の状態、タイプ、および位置、患者の大きさおよび状態、並びに当業者に容易に知られる他の要因に応じる。投薬量を、単回用量として、または例えば数週間の経過に渡って分割される、数回の用量として、投与することも可能である。
【0118】
[00134]本発明はまた、本発明の療法組成物を利用した治療法にも関する。本発明の方法は、こうした投与が必要な被験者に療法剤を投与することを含む。
[00135]適切な手段いずれによって、本発明の療法剤を投与することも可能であり、これには例えば、非経口投与、局所投与、経口投与、または皮内投与などの局部投与、注射によるもの、またはエアロゾルによるものが含まれる。本発明の1つの態様において、注射によって剤を投与する。罹患した領域いずれに、こうした注射を局部的に注射することも可能である。投与法に応じて、多様な単位投薬型で療法組成物を投与することも可能である。本発明の療法組成物の適切な送達法には、例えば注射による、静脈内投与および局部投与が含まれる。特定の送達様式のため、本発明の療法組成物を、賦形剤中で配合することも可能である。本発明の療法試薬を、動物いずれか、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトに、投与することも可能である。
【0119】
[00136]投与の特定の様式は、治療しようとする状態に応じるであろう。本発明の剤の投与は、体液いずれか、あるいは体液を通じてアクセス可能なターゲットいずれかまたは組織いずれかを介することも可能である。
【0120】
[00137]以下の実施例は、本発明の修飾アネキシンタンパク質の調製、並びに修飾アネキシンタンパク質の抗凝血活性のin vitroアッセイおよびin vivoアッセイを例示する。本発明は、実施例に記載する典型的な研究または実施例に示す特定の詳細に限定されないことが理解されるものとする。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
修飾アネキシン調製
[00138]ヒト組織からアネキシンを精製することも可能であるし、または組換え技術によって産生することも可能である。例えば、Funakoshiら(1987)に記載されるように、ヒト胎盤から、アネキシンVを精製することも可能である。組換え産物の例は、大腸菌におけるアネキシンIIおよびアネキシンVの発現である(Kang, H.−M., Trends Cardiovasc. Med. 9:92−102(1999);ThiagarajanおよびBenedict、1997、2000)。Ca2+が増進する、ホスファチジルセリン含有リポソームへの結合、およびそれに続くEDTAによる溶出に基づく、組換えアネキシンVの迅速でそして効率的な精製法が、Berger, FEBS Lett. 329:25−28(1993)に記載されてきている。固相支持体にカップリングしたホスファチジルセリンの使用によって、この方法を改善することも可能である。
【0122】
[00139]PEG化と称されるプロセスにおいて、いくつかのよく確立された方法のいずれか(Hermanson、1996に概説される)によって、アネキシンをポリエチレングリコール(PEG)にカップリングすることも可能である。本発明には、モノまたはポリ(例えば2〜4)PEG部分を有する、化学的に誘導体化されたアネキシン分子が含まれる。PEG化アネキシンを調製する方法は、一般的に、(a)アネキシンとポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)を、アネキシンが1以上のPEG基に付着する条件下で、反応させ、そして(b)単数または複数の反応産物を得る工程を含む。一般的に、既知のパラメーターおよび所望の結果に基づいて、ケースバイケースで、反応の最適反応条件を決定しなければならない。さらに、反応は、異なる数のPEG鎖を有する異なる産物を産生する可能性もあり、そして所望の産物を得るために、さらなる精製が必要である可能性もある。
【0123】
[00140]EDCに加えてスルホ−NHSを用いる方法を用いて、アネキシンVへのPEGのコンジュゲート化を行うことも可能である。EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩)を用い、スルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホスクシンアミド)を用いて、カルボキシレート基で、活性エステル基を形成する。これは、活性中間体の安定性を増加させ、この中間体がアミンと反応して、安定なアミド連結を生じる。Hermanson、1996に記載されるように、コンジュゲート化を行うことも可能である。
【0124】
[00141]バイオコンジュゲート法を用いて、アネキシンのホモポリマーまたはヘテロポリマーを産生することも可能であり;この方法は、Hermanson、1996に概説される。組換え法を用いて、融合タンパク質、例えば免疫グロブリンのFc部分または別のタンパク質と発現されたアネキシンを産生することもまた可能である。アネキシンIIとp11のヘテロ四量体もまた、大腸菌で産生されている(Kangら、1999)。これらの方法はすべて、アネキシンの分子量を増加させ、そして循環中のアネキシンの半減期を増加させ、そしてその抗凝血効果を延長させる潜在能力を有する。
【0125】
[00142]図1Cに図示され(5’−3’センス鎖)(配列番号4)、そして配列番号6に示すアミノ酸配列をコードするDNA構築物を用いて、アネキシンVのホモ二量体を産生することも可能である。この例では、アネキシンV遺伝子を、EcoRIおよびBglII部位で、発現ベクターpCMV FLAG2(Sigma−Aldrichから入手可能)にクローニングする。アネキシンV配列の前および後の正確な配列は未知であり、そして「x」と示す。したがって、コドン並列が適切であることを確実にするため、修飾の前に構築物を配列決定する必要がある。pCMV FLAG2ベクターには、強力なプロモーターおよび開始配列(コザック)、並びに開始部位(ATG)が内蔵されている。したがって、各アネキシンV遺伝子の前の開始コドンを除去しなければならず、そして第二のアネキシンV遺伝子の終結部に、堅固な発現のための強力な停止コドンを付加しなければならない。該ベクターはまた、タンパク質精製に使用可能な8アミノ酸ペプチド配列(asp−tyr−lys−asp−asp−asp−asp−lys)(配列番号9)も装備している。グリシン−セリン・スイベル端を備えた14アミノ酸スペーサーは、タンデムな遺伝子コードタンパク質間の最適な回転を可能にする。制限部位、PvuIIおよびScaIを付加することによって、必要な場合は、リンカーの除去が可能になる。プロテアーゼ部位を付加することによって、発現後のタンデムタンパク質の切断が可能になる。Amersham Pharmacia BitechからPreScissionTMプロテアーゼが入手可能であり、そして該プロテアーゼを用いて、タンデムタンパク質を切断することも可能である。2つのアネキシンVホモ二量体を生成した。第一の二量体では、二量体のアミノ末端に「Hisタグ」を配置して、精製を容易にした(図1A)。12アミノ酸のリンカー配列の両端にグリシンおよびセリン残基が隣接し、これがスイベルとして働いた。図1Aに構造図を示す。Hisタグ化アネキシンVホモ二量体のアミノ酸配列を以下に提供する:
【0126】
【化1】
【0127】
[00143]リンカーの「スイベル」アミノ酸を太字および下線で示す。このHisタグ化アネキシンVホモ二量体を、大腸菌において、高レベルで発現させ、そしてニッケルカラムを用いて精製した。構築物中のDNAは、正確な配列を有することが示され、そして二量体は、予測される分子量(74kDa)を有した。直線状に操作するPerSeptive Biosystems Voyager−DE Proワークステーション、25kVの静的加速度電圧の陽イオンモード、および40ナノ秒の遅延時間を用いて、MALDI−TOF質量分析を達成した。
【0128】
[00144]Hisタグなしで、第二のヒトアネキシンVホモ二量体を合成した。構造図を図1Bに示す。(非Hisタグ化)アネキシンVホモ二量体のアミノ酸配列を以下に提供する:
【0129】
【化2】
【0130】
[00145]ここでも、リンカーの「スイベル」アミノ酸を太字および下線で示す。この二量体を、大腸菌において、高レベルで発現させ、そしてイオン交換クロマトグラフィー、その後、ヘパリン親和性クロマトグラフィーによって、精製した。イオン交換カラムはBio−Radのものであり(Econo−pak HighQ Support)、そしてヘパリン親和性カラムはAmersham Biosciences(HiTrapヘパリンHP)のものであった。どちらも、製造者の指示にしたがって用いた。ここでも、アネキシンVホモ二量体のDNA配列は正しいことが見出された。質量分析計は、予期されるように、73kDaのタンパク質を示した。アネキシンおよび他のタンパク質のアミノ酸配列は、この実験室において、ペプチド断片の質量分析によって、日常的に決定されている。予期される配列が得られた。
【0131】
[00146]ヒトアネキシンVは、以下のアミノ酸配列を有する:
【0132】
【化3】
【0133】
[00147]図1Cに例示するDNA構築物に示すように挿入されるヒトアネキシンVのヌクレオチド配列は、以下のとおりである:
【0134】
【化4】
【0135】
(実施例2)
in vitroアッセイおよびin vivoアッセイ
[00148]in vitroアッセイは、修飾アネキシンタンパク質が、活性化された血小板に結合する能力を決定する。アネキシンVは血小板に結合し、そしてこの結合は、トロンビンでの血小板の活性化によって、in vitroで顕著に増加する(ThiagarajanおよびTait、1990;Sunら、1993)。好ましくは、アネキシンが血小板に結合し、そしてプロテインSが血小板に結合するのを防止する(Sunら、1993)点で、アネキシンの機能を実行するような方式で、本発明の修飾アネキシンタンパク質を調製する。修飾アネキシンタンパク質はまた、非修飾アネキシンタンパク質が示すのと同じin vitroの抗凝血活性を示す機能も実行する。凝血時間を測定する方法は、活性化部分トロンボプラスチン時間である(本明細書に援用される、Fritsma, Hemostasis and thrombosis in the clinical laboratory(Corriveau, D.M.およびFritsma, G.A.監修)中 J.P. Lipincott Co., フィラデルフィア(1989), pp.92−124)。
【0136】
[00149]in vivoアッセイは、アネキシンタンパク質の抗血栓活性を測定する。アネキシンVは、ラットにおいて、レーザーまたは光化学的に誘導される静脈血栓を減少させることが示されている(Roemischら、1991)。トロンボエラストグラフィーによって機能的に決定した際、アネキシンVの静脈内投与の15〜30分後の間に、最大抗凝血効果が観察された。好ましくは、本発明の修飾アネキシンタンパク質は、こうしたモデルにおいて、非修飾アネキシンより延長された活性を示す。アネキシンVはまた、頸部静脈血栓症のウサギモデルにおいて、フィブリン付着物を減少させることも見出された(Van Ryn−McKennaら、1993)。空気噴射を用いて内皮を取り除き、そしてアネキシンVは、処置した静脈には結合するが、対照の対側性静脈には結合しないことが示された。傷害を受けた静脈における、フィブリン集積の減少は、全身凝血とは関連しなかった。ヘパリンは、傷害を受けた静脈におけるフィブリン集積を阻害しなかった。本発明の修飾アネキシンタンパク質は、好ましくは、静脈血栓症のこのモデルにおいて、アネキシンの機能を実行する。ThiagarajanおよびBenedict、1997は、動脈血栓症のウサギモデルを使用した。電流を適用することによって、左頸動脈に部分的閉塞血栓が形成された。アネキシンV注入は、血流の測定、血栓重量、標識フィブリン沈着および標識血小板集積によって明らかであるように、血栓症を強く阻害した。近年、光化学的に誘導された挙睾筋中の血栓のマウスモデルが発表された(本明細書に援用される、Vollmarら Thromb. Haemost. 85:160−164(2001))。この技術を用いて、所望の動脈または静脈いずれかにおいて、血栓症を誘導することも可能である。本発明の修飾アネキシンタンパク質は、好ましくは、ボーラス注射によって投与された場合であっても、こうしたモデルにおいて、アネキシンの機能を実行する。
【0137】
(実施例3)
[00150]ヒト組換えアネキシンVおよびPEG化ヒト組換えアネキシンVの抗凝血能を、in vitroで比較した。
【0138】
[00151]アネキシンV産生。ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、ヒト胎盤cDNAライブラリーから、特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用い、開始メチオニンから停止コドンまで、cDNAを増幅した。順方向プライマーは、5’−ACCTGAGTAGTCGCCATGGCACAGGTTCTC−3’(配列番号7)であり、そして逆方向プライマーは、5’−CCCGAATTCACGTTAGTCATCTTCTCCACAGAGCAG−3’(配列番号8)であった。増幅された1.1kb断片を、NcoIおよびEcoRIで消化し、そして原核発現ベクターpTRC 99Aに連結した。連結産物を用いて、コンピテント大腸菌株JM105を形質転換して、そして配列決定した。
【0139】
[00152]いくつかの修飾を加えて、Bergerら、1993に記載されるように、細菌溶解物から組換えアネキシンVを単離した。pTRC 99A−アネキシンVで形質転換した大腸菌JM105の一晩培養物を、10mg/lのアンピシリンを含有する新鮮なLuria−Bertrani培地中で、50倍に増殖させた。2時間後、イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドを1mmol/lの最終濃度まで添加した。誘導16時間後、3500g、4℃で15分間、細菌をペレットにした。1mmol/l PMSF、5mmol/l EDTA、および6mol/l尿素を含有するTBS、pH7.5に、細菌ペレットを懸濁した。6にセットした超音波プローブを用いて、氷上で3分間、細菌懸濁物を超音波処理した。溶解物を10,000gで15分間遠心分離し、そして1mmol/lのEDTAを含有する50体積のTBSに対して2回、そして50体積のTBSに対して1回、上清を透析した。
【0140】
[00153]モル比10:15:1で、クロロホルム中、ホスファチジルセリン、凍結乾燥ウシ脳抽出物、コレステロール、およびジセチルホスフェートを溶解し、そしてコニカルフラスコ中で、窒素流で乾燥させることによって、多層リポソームを調製した。TBS(5ml)をフラスコに添加し、そしてボルテックスミキサー中で1分間勢いよく攪拌した。3500gで15分間遠心分離することによって、リポソームを洗浄し、次いで、細菌抽出物とインキュベーションし、そして最終濃度5mmol/lまで塩化カルシウムを添加した。37℃で15分間インキュベーションした後、10,000gで10分間の遠心分離によって、リポソームを沈降させ、そして結合したアネキシンVを10mmol/lのEDTAで溶出した。溶出したアネキシンVをAmicon限外ろ過によって濃縮し、そしてSephacryl S 200カラム上に装填した。アネキシンVは内包容量(included volume)中に回収され、一方、大部分のリポソームは、空隙容量(void volume)中にあった。アネキシンVを含有する分画をプールし、そして10mmol/l Trisおよび2mmol/l EDTA、pH8.1中で透析し、陰イオン交換カラム上に装填し、そして同じ緩衝液中の0〜200mmol/l NaClの直線勾配で溶出させた。精製された調製物は、還元条件下で、SDS−PAGE中、単一のバンドを示した。
【0141】
[00154]上述のように、Hermanson、1996の方法を用いて、上述のように産生したアネキシンVをPEG化した。
[00155]抗凝血アッセイ。アネキシンVおよびPEG化アネキシンVによって誘導される、凝血時間の延長(活性化部分トロンボプラスチン時間)を比較した。Fritsma、1989に記載されるように、クエン酸塩加した正常のプール血漿を用いて、活性化部分トロンボプラスチン時間をアッセイした。上述のように産生した、異なる濃度のアネキシンVおよびPEG化アネキシンVを用いて、凝血時間延長に関する用量−反応曲線を得た。結果を図6に示し、図6は、アネキシンVおよびPEG化アネキシンV用量に対する、凝血時間のプロットである。図に示すように、組換えヒトアネキシンVおよびPEG化組換えヒトアネキシンVの抗凝血強度は、実質的に同等である。観察される小さな相違は、PEG化後の分子量の変化に起因する。この実験は、抗血栓効果を有意に減少させることなく、アネキシンVのPEG化を達成可能であるという、本明細書で行う主張を立証する。
【0142】
(実施例4)
[00156]細胞表面上のPSに対する、組換えアネキシンV(AV)および組換えアネキシンVホモ二量体(DAV)の親和性を比較した。表面上にPSが暴露された細胞を産生するため、ヒト末梢赤血球(RBC)をCa2+イオノフォア(A23187)で処理した。PSを形質膜二重層の内部小葉に移動させるリン脂質転移酵素(フリパーゼ)を、未結合スルフィドリル基に共有結合するN−エチルマレイミド(NEM)で処理することによって不活性化した。細胞内Ca2+が上昇すると、スクランブラーゼ酵素が活性化され、したがって、形質膜二重層の外部小葉のPS量が増加する。
【0143】
[00157]洗浄したヒトRBCを、K緩衝液(80mM KCl、7mM NaCl、10mM HEPES、pH7.4)中で30%ヘマトクリットに再懸濁した。これらを、10mM NEMの存在下、37℃で30分間インキュベーションしてフリパーゼを阻害した。NEM処理細胞を洗浄し、そして2mM CaCl2を添加した同じ緩衝液中で16%ヘマトクリットに懸濁した。A23187(最終濃度4μM)と、37℃で30分間インキュベーションすることによって、スクランブラーゼ酵素を活性化した。この方法の結果、95%を超えるRBCが、フローサイトメトリーによって明示できるPSを、表面上に有した。
【0144】
[00158]FluReporterタンパク質標識キット(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)を用いて、組換えAVおよびDAVをビオチン化した。最終濃度2μg/mlのR−フィコエリトリン−コンジュゲート化ストレプトアビジン(PE−SA)を用いて、ビオチン−AVおよびビオチン−DAVコンジュゲートを視覚化した。Becton Dickinson FACScaliber上でフローサイトメトリーを行い、そしてCell Questソフトウェア(Becton Dickinson、カリフォルニア州サンホセ)でデータを分析した。
【0145】
[00159]AVまたはDAVの結合はいずれも、正常RBCを用いた場合には検出不能であった。しかし、AVおよびDAVはどちらも、PS暴露RBCの少なくとも95%に結合した。PS暴露RBCを、多様な量のAVおよびDAVと、(a)別個に、または(b)1:1モル比で混合して、インキュベーションした後、PE−SAを添加し、そしてフローサイトメトリーを行った。こうした混合物中で、AVまたはDAVのいずれかがビオチン化され、そして結合した各タンパク質の量を上述のようにアッセイした。AVよりもDAVにおいて、ビオチン標識がより高く、これに関して、実験を調整した。
【0146】
[00160]代表的な結果を図2に示す。この実験セットでは、PS暴露RBCを、(a)0.2μgのビオチン化DAV(図2A);(b)0.2μgのビオチン化DAV(図2B);(c)0.2μgのビオチン化AVおよび0.2μgの非ビオチン化DAV;並びに(d)0.2μgのビオチン化DAVおよび0.2μgの非ビオチン化AV(図2D)とインキュベーションした。図2Bおよび図2Dを比較すると、0.2μgの非ビオチン化AVが、ビオチン化DAVの結合にまったく影響がなかったことが示される。しかし、図2Aおよび図2Cを比較すると、0.2μgの非ビオチン化DAVが存在する場合、PS暴露細胞に結合したビオチン化AV量が非常に減少したことが示される。これらの結果によって、DAVおよびAVがRBC上の同じPS結合部位に関して競合するが、親和性が異なり;DAVは、AVよりも高い親和性で、細胞表面上に暴露されたPSに結合することが示される。
【0147】
(実施例5)
[00161]マウス血清に添加した既知の量のアネキシンV単量体(AV)および二量体(DAV)を用いて、細胞結合アッセイを確立した。上述のように露出したPCを持つRBCを、AVおよびDAVの希釈物を含有する血清とインキュベーションした。洗浄後、標識ストレプトアビジンを添加して、そして再度洗浄し、RBCに結合したAVおよびDAVをフローサイトメトリーによってアッセイした。露出したPSがないRBCを用いた場合、結合は検出不能であった。細胞結合によってアッセイした、マウス血清中のAVおよびDAV濃度は、独立のELISAアッセイによって決定したものと非常に相関した。したがって、マウス血漿中のAVおよびDAVは、細胞表面上に露出したPSと相互作用する能力を損なう方式で、他の血漿タンパク質に結合することはない。これらの観察によって、循環中のAVおよびDAVの存続を比較するため、細胞結合アッセイを適用することが正当であることが確認された。
【0148】
[00162]マウスにAVおよびDAVを静脈内注射し、そしてその後、数回、末梢血試料を回収した。各時点で異なるマウスを用いた。代表的な結果を図3に示す。ウサギ(ThiagarajanおよびBenedict, Circulation 96:2339, 1977)、カニクイザル(Roemischら, Thrombosis Res. 61:93, 1991)およびヒト(Kemerinkら, J. Nucl. Med. 44:947, 2003)における観察によって、AVが循環中で短い半減期を有し(それぞれ、7〜24分)、主な損失分は腎臓へのものであることが示される。これらの報告と一致して、マウスにAVを注射した20分後、AVは末梢血中で実質的にまったく検出不能であった(図3B)。しかし、マウスにDAVを静脈内注射すると、120分後であっても、かなりの量のタンパク質が、循環中で検出可能であった(図3E)。したがって、アネキシンVを二量体化すると、循環中の存続が増加し、そしてしたがって、療法効果の期間が増加する。
【0149】
(実施例6)
[00163]ヒトsPLA2(Cayman、ミシガン州アナーバー)の活性に対するアネキシンV(AV)およびアネキシンVホモ二量体(DAV)の阻害効果を比較した。上述のように、NEMおよびA23187で処理したRBC上に露出したPSを、基質として用いた。対照細胞において、AVおよびDAVは、フローサイトメトリーで立証可能であるように、PS暴露RBCに結合することが見出された。PS曝露細胞をsPLA2とインキュベーションするとPSが除去され、したがって細胞はもはやアネキシンに結合しなかった。PS暴露細胞をPLA2とインキュベーションする前に、AVまたはDAVで処理すると、PSは除去されない。細胞をCa2+キレート剤に曝露することも可能であり、該キレート剤はPSからAVまたはDAVを解離させ、そして続いて標識AVが結合すると、細胞表面上に残ったPSが示される。こうしたアッセイにおいて、AVおよびDAVを力価決定すると、どちらも、細胞表面PSに対するsPLA2活性の強力な阻害剤であることが示される。
【0150】
[00164]ホスホリパーゼの阻害はまた、別の方法によっても立証可能である。sPLA2の活性は、溶血性であるリソホスファチジルコリン(LPS)を放出する。したがって、溶血アッセイにおいて、PLA2に対するAVおよびDAVの阻害効果を比較することが可能である。図4に示すように、AVおよびDAVはどちらもPLA2の作用を阻害し、DAVが幾分、より有効であった。pPLA2で60分間インキュベーションした後、溶血は、DAVまたはAVの非存在下と比較して、その存在下で強く減少した。これらの結果から、アネキシンVのホモ二量体は、分泌性PLA2の強力な阻害剤であると結論付け可能である。したがって、アネキシンVのホモ二量体は、再灌流傷害の発症に寄与すると考えられる、トロンボキサンA2、並びにリソホスファチジルコリンおよびリソホスファチジン酸などの仲介因子の形成を減少させるはずである(Hashizumeら Jpn. Heart J., 38:11, 1997;Okuzaら, J. Physiol., 285:F565, 2003)。
【0151】
(実施例7)
[00165]温虚血−再灌流傷害のマウス肝臓モデルを用いて、修飾アネキシンが再灌流傷害(RI)に対して防御するかどうかを確認し、修飾アネキシンとアネキシンVの活性を比較し、そして修飾アネキシンの活性の期間を決定した。モデルは、Teohら(Hepatology 36:94, 2002)に記載されている。体重18〜25gの雌C57BL6マウスを用いた。ケタミン/キシラジン麻酔下、非外傷性の微小血管クランプを用いて、肝臓の左側葉および中葉への血液供給を90分間閉塞させた。次いで、血管クランプを除去して、再灌流を確立した。動物を回復させ、そして24時間後、放血によって屠殺した。血清アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)活性の測定および組織学的検査によって、肝臓損傷を評価した。対照群を麻酔および擬似開腹術に供した。アネキシンVおよび修飾アネキシンの活性をアッセイするため、4匹のマウスの群を用いた。第一の群の各マウスに、25マイクログラムのアネキシンV(AV)を、第二の群の各マウスに、25マイクログラムのアネキシン・ホモ二量体(DAV)を、そして第三の群のマウスに、2.5マイクログラムの、ポリエチレングリコールにカップリングしたアネキシンV(PEG−AV、57kDa)を静脈内注射した。対照には、生理食塩水、またはアネキシンを保存したHEPES緩衝液を投与した。第一の実験セットでは、肝動脈枝をクランピングする数分前に、アネキシンを投与した。第二の実験セットでは、アネキシンおよびHEPESを、虚血開始の6時間前に投与した。それぞれの実験結果を図5に要約する。
【0152】
[00166]虚血直前にアネキシンV(AV)を投与した動物では、わずかな防御が観察された。対照的に、虚血直前または6時間前のいずれかに、アネキシン二量体(DAV)またはPEG−AVを投与した動物では、RIに対する劇的な防御が示された。組織学的研究によって、これらの群では肝細胞壊死がほとんどまたはまったくないことが確認された。結果は、修飾アネキシン(DAVおよびPEG−AV)が、肝臓において、虚血再灌流傷害に対して、AVよりも有意により防御性であることを示す。さらに、修飾アネキシン(DAVおよびPEG−AV)は、RIを減弱する能力を少なくとも6時間保持する。
【0153】
[00167]擬似手術した動物では、循環中のALTレベルは非常に低かった。虚血直前に生理食塩水を投与するか、または虚血6時間前にHEPESを投与した動物では、ALTレベルが非常に高く、そして組織像によって、重度の肝細胞壊死があったことが確認された。虚血直前に投与したHEPESは、RIに対して防御活性を有することが見出された。
【0154】
(実施例8)
[00168]血栓症研究
[00169]各8匹のラットの6群を用いた。この研究用のラットは、雄ウィスターラットであり、体重約300グラムであった(Charles River Nederland、オランダ・マーストリヒト)。動物をマクロロン(macrolon)・ケージで飼育し、そして標準的げっ歯類食物ペレットおよび酸性化水道水を随意に与えた。実験は、オランダの動物実験に関する法律が推進する、規則および規制にしたがった。ラットをFFM(フェンタニル/フルアニソン/ミダゾラム)で麻酔し、そして加熱パッド上に置いた。大腿静脈にカニューレを挿入し、そして生理食塩水を満たした。下大静脈を単離し、そして結紮または焼灼によって、側枝を閉じた。左腎静脈下の大静脈(caval vein)周囲にゆるい結紮を適用した。第一のものの1.5cm上流、分岐の上に、第二のゆるい結紮を適用した。大腿静脈カニューレを介して、試験(または対照)化合物を静脈内投与し、そして次いで、カニューレを生理食塩水で勢いよく洗浄した。
【0155】
[00170]試験化合物または対照化合物には、リン酸緩衝生理食塩水1.0ml/kg体重(10分);リン酸緩衝生理食塩水1.0ml/kg体重(12時間);ジアネキシン0.04mg/kg体重;ジアネキシン0.2mg/kg体重;ジアネキシン1.0mg/kg体重(10分);ジアネキシン1.0mg/kg体重(12時間);フラグミン20aXa U/kg体重が含まれる。10分後(または2群では12時間後)、組換えヒトトロンボプラスチン(0.15ml/kg)を静脈カニューレ内に迅速に注入し、カニューレを生理食塩水で勢いよく洗浄し、そして正確に10秒後、腎静脈近くの下流結紮を閉じた。9分後、クエン酸塩加静脈血試料を得て、そして氷上に置いた。
【0156】
[00171]1分後(10分の時点)、分岐近くの上流結紮を閉じ、そしてこのセグメントに形成されていた血栓を回収した。血栓を生理食塩水中で簡単に洗浄し、水分を吸い取り、そして湿重量を測定した。2000g、4℃で15分間の遠心分離によって、クエン酸塩加血漿を調製し、そして分析のため、−60℃で保存した。血栓誘導を、化合物注入の12時間後に行った2群では、異なるi.v.注射法を用いた。ラットをs.c.DDF(ドミトール/ドルミカム/フェンタニル)で麻酔し、そしてペニス静脈を介して注射した。次いで、ラットに解毒剤(アネキセート/アンチセダン/ナロキソン)をs.c.投与し、そしてケージ中に一晩置いた。
【0157】
[00172]大腿静脈カニューレを挿入した後、ラットに静脈内注入した。化合物を静脈内注入した10分後(2つの群では、注入の12時間後)、希釈したトロンボプラスチンをi.v.注入し、そして10秒後、下大静脈を結紮した。結紮の9分後、血液を収集し、そしてクエン酸塩加血漿を調製した。結紮の10分後、血栓が形成されたセグメントを結紮し、そして血栓を回収し、そして重量測定した。aPTT(秒)もまた測定した。0.04mg/kgで、ジアネキシンは、血栓重量を約40%減少させた。ジアネキシン(1mg/kg)注入の12時間後、血栓形成は、対照と異ならなかった。体重はパラメトリックANOVAでは群間に相違はなかった。血栓湿重量(表1)は、0〜44.5mgの範囲であった。
【0158】
[00173]表1:10分間血栓症研究における血栓湿重量(mg)に対する処置の効果
【0159】
【表1】
【0160】
パラメトリックANOVAによって;F=24.48;p<0.00001
すべての群<生理食塩水対照(p<0.01)
3つのジアネキシン群のパラメトリックANOVAによって:
F=4600、p<0.0001
1mg=0.2mg<0.04mg;p<0.001
[00174]処置は、血栓重量に有意な効果を有した。フラグミン(20aXa U/kg)およびジアネキシン(0.04、0.2および1.0mg/kg)のどちらも、血栓重量を有意に減少させた(p<0.0001)。実施例7および本文の表を参照されたい。ジアネキシンでは、効果は用量依存性であった。APTT値を表2および図8に示す。
【0161】
[00175]表2:10分間血栓症研究におけるAPTT(秒)に対する処置の効果
【0162】
【表2】
【0163】
パラメトリックANOVAによって;F=6.66;p=0.0005
フラグミン群>他のすべての群(p<0.05)
生理食塩水群およびジアネキシン群は、有意には異ならない
[00176]フラグミンは、すべての他の群に比較して、APTTを有意に増加させた。APTTは、フラグミン群でのみ、わずかに、しかし有意に増加していた。ジアネキシン群は、生理食塩水対照群とは異ならなかった。
【0164】
[00177]血栓形成を誘導する12時間前にラットを処置した、第二の血栓症研究において、生理食塩水注入対照群およびジアネキシン処置群の間に有意な相違は見られなかった(表3)。
【0165】
[00178]表3:12時間血栓症研究における血栓湿重量(mg)に対する処置の効果
【0166】
【表3】
【0167】
*血栓誘導までの平均時間:13.6時間
t検定によって有意差なし
[00179]生理食塩水群の血栓重量はまた、10分間血栓症研究の生理食塩水対照群の血栓重量(25.7±12.3mg、表1を参照されたい)と有意には異ならなかった。APTT値は異ならなかった(未提示)。
【0168】
[00180]血栓誘導の10分前にジアネキシンを静脈内注入(0.2mg/kgおよび1.0mg/kg)すると、ウェスラー(Wesslar)ラット静脈血栓モデルにおいて、血栓形成が強く阻害された。
【0169】
(実施例9)
[00181]出血研究。3群を研究した。実施例8に記載するように、8匹のラットの群を用いた。ラットをイソフルランで麻酔し、挿管して、そして酸素を供給し、そして加熱パッド上に置いた。大腿静脈を介してカニューレを挿入し、そして生理食塩水で満たした。試験化合物または対照化合物を、カニューレを介して注入し、そして次いで、カニューレを生理食塩水で勢いよく洗浄した。試験化合物または対照化合物は、リン酸緩衝生理食塩水1.0ml/kg体重;ジアネキシン5.0mg/kg体重;フラグミン140aXa Ukg体重であった。試験化合物注入の10分後、ラット尾を水平位置に置き、そして次いで、定義した、尾からの固定距離で、鋏によって切断した。続いて、ろ紙によって、尾から滲み出た血をすべて穏やかに拭き取ることによって、尾からの出血を測定した。出血が止まった時間を測定した。いずれも記録した。尾を切断した30分後に、実験を終結させた。実験終了の直前に、クエン酸塩加血液試料をカニューレから得た。2000g、4℃で15分間の遠心分離によって、クエン酸塩加血漿を調製し、そして分析のため、−60℃で保存した。0.05% Triton X−100(登録商標)を含有する10mMリン酸緩衝液(pH=7.8)20ml中で、ろ紙を抽出した。リン酸緩衝液のヘモグロビン含量を測定することによって、血液損失量を測定した(Drabkinのシアン化カリウム1フェリシアン化カリウム法)。体重(表3)は、パラメトリックANOVAによれば、群間で異ならなかった。ジアネキシン(5mg/kg)またはフラグミン(140Ukg)のいずれかによる処置は、出血時間をほぼ2倍にした(図9、表3)が、これらの効果は、有意ぎりぎりでしかなかった(ノンパラメトリックANOVA;KW=5.72、p=0.057)。血液損失(図10、表4)は、対照群に比較して、ジアネキシン群でわずかに増加し、そしてフラグミン群でほぼ2倍であった。
【0170】
[00182]表4.尾出血研究における出血時間および血液損失
【0171】
【表4】
【0172】
[00183]しかし、これらの相違は有意ではなかった(ノンパラメトリックANOVA、p=0.490)。APTT値を表5および図11に示す。
[00184]表5.尾出血研究におけるAPTT(秒)に対する処置の効果
【0173】
【表5】
【0174】
[00185]フラグミンはAPTTをほぼ2倍にしたが、ジアネキシン群のAPTTは、生理食塩水対照群と異ならなかった。
[00186]血液損失およびaPTTは、尾出血研究において、フラグミン群では、ジアネキシン群のほぼ2倍であった。5.0mg/kg i.v.のジアネキシンは、切断したラット尾からの出血を誘導したが、140aXa U/kgのフラグミンの注入後より、血液損失が少なかった。
【0175】
(実施例10)
[00187]クリアランス研究。ラットに放射標識ジアネキシンを注射し、5分、10分、15分、20分、30分、45分および60分、並びに2時間、3時間、4時間、8時間、16時間および24時間後に血液試料を得て、そして血液放射能を測定して、血液消失曲線を構築した。血液からのジアネキシンの消失は、2区画モデルによって表現され、α期には、約75〜80%の消失(t/2、約10分)、そしてβ期には、15〜20%の消失(t/2、約400分)があった。それぞれ半減期9〜14分および6〜7時間の2区画モデルによって、クリアランスを表現することも可能である。各3匹の雄ウィスターラット(300グラム)を用いて、2回の実験を行った。Macfarlaneの方法によって、ジアネキシンを125Iで標識し、そして未結合(free)Sephadex G−50によって、標識タンパク質を分離した。NaI(5mg/kg)を注射して、標識が甲状腺に取り込まれるのを防止した後、大腿静脈カテーテルを介して(ラット1および2)、またはペニス静脈を介して(ラット3)、約8x106cpm(50μlのタンパク質溶液を生理食塩水で0.5mlに希釈)を注射した。その後、明記した時点で(以下の表を参照されたい)、尾静脈から血液試料(150μl)を得て、そして100μlをカウントした。最後の血液試料を採取した後、ネンブタールi.v.によって、ラットを屠殺し、そしてカウント用に、肝臓、肺、心臓、脾臓および腎臓(片)を収集した。
【0176】
[00188]クリアランス研究のための試料採取スキーム:
【0177】
【表6】
【0178】
[00189]45分および24時間の間に収集したデータから、β期パラメーターを計算した。次いで、サブトラクション法によって、5分および45分の間のデータから、α期パラメーターを計算した。サブトラクション法を用いて、2区画モデルによって、血液放射能曲線を分析した。α期およびβ期の線形相関係数は、実験1では−0.99および−0.99、そして実験2では−0.95および−0.96であった。クリアランス・パラメーターを表6に示す。
【0179】
[00190]表6.ジアネキシン・クリアランス・パラメーター
【0180】
【表7】
【0181】
[00191]図15および16は、α期およびβ期を重ね合わせたクリアランス曲線を示す。表7では、肺、心臓、肝臓、脾臓および腎臓に回収されたcpm(組織消化後)を示す。ジアネキシン注入2時間後に肺で高いカウント数が見られたことが注目される。
【0182】
[00192]表7.125I−ジアネキシン注入の2時間、8時間、および24時間後の、選択された組織に回収された放射能
【0183】
【表8】
【0184】
(実施例11)
[00193]虚血−再灌流傷害(IRI)の発症およびジアネキシン作用様式を確かめるため、研究を行った。虚血−再灌流傷害の発症の仮説によれば、虚血中、ホスファチジルセリン(PD)は、肝臓微小血管系の内皮細胞(EC)管腔表面上でアクセス可能になる。再灌流期中、白血球および血小板がEC表面上のPSに付着し、そしてECにおいてアポトーシスの最終段階を誘発する。ジアネキシンは、EC表面上のPSに結合して、そしてPSへの白血球および血小板の付着を減少させる。この機構によって、ジアネキシンは、ECへの不可逆的損傷を防止し、そしてそれによって、虚血−再灌流傷害を減弱する。
【0185】
[00194]公表された方法(McCuskeyら, Hepatology 40:386, 2004)を用いて、in vivoのマウス肝臓において、微小循環を観察することによって、この仮説を試験した。実施例7に記載するように、90分間の虚血後、多様な時間の再灌流を行った。図12Aおよび12Bは、再灌流中、多くの白血球が、門脈周辺領域および小葉中心(centrilobular)領域の両方でECに付着したことを示す(IR)。ジアネキシン(1mg/kg)IVは、統計的に有意な方式で、こうした付着を減少させる(IR+D)。図13Aおよび13Bは、これがまた、再灌流中のECへの血小板の付着にも当てはまることを示す。予測されるように、EC損傷(腫脹に反映される)は、再灌流中に顕著であり、そしてジアネキシンによって有意に減少する(図14Aおよび14B)。したがって、虚血−再灌流傷害を減弱させる際のジアネキシン作用様式の我々の仮説が確認される。図15Aおよび15Bに示されるように、ジアネキシンは、どちらの位置でもクッパー細胞の食作用活性に影響を及ぼさない。したがって、ジアネキシンは、病原性生物に対するこの防御機構には影響を持たない。この知見は、ジアネキシンが副作用を持たないという他の証拠を裏付ける。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】[0023]図1A〜Cは、2つの修飾アネキシン態様の構造図を示す。図1Aは、Hisタグを持つヒトアネキシンVホモ二量体の構造図を示し;図1Bは、Hisタグを持たないヒトアネキシンVホモ二量体の構造図を示す。図1Cは、アネキシンVのホモ二量体を作製するためのDNA構築物を示す。
【図2】[0024]図2A〜Dは、各場合で、0.2μg/mlのビオチン化AV(図2A);0.2μg/mlのビオチン化DAV(図2B);0.2μg/mlのビオチン化AVおよび0.2μg/mlの非ビオチン化DAV(図2C);並びに0.2μg/mlのビオチン化DAVおよび0.2μg/mlの非ビオチン化AV(図2D)とインキュベーションした後、R−フィコエリトリン−コンジュゲート化ストレプトアビジンとインキュベーションした、正常(1x107/ml)およびPS暴露(1x107/ml)RBCの混合物のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図3】[0025]図3A〜Eは、注射後の多様な時点のマウス循環におけるAVまたはDAVのレベルを例示する。図3A〜Bは、それぞれ、マウスにAVを注射した5分後および20分後に回収した血清試料を示す。図3C〜Eは、それぞれ、マウスにアネキシンVホモ二量体(DAV)を注射した5分後、25分後および120分後に回収した血清試料を示す。
【図4】[0026]図4は、PSが暴露されたRBCのPLA2誘導性溶血を示す。正常(1x107/ml)およびPS暴露(1x107/ml)RBCの混合物を、100ng/mlの膵臓PLA2(pPLA2)または分泌性PLA2(sPLA2)とインキュベーションした。時間の関数として溶血を測定し、そして浸透圧ショックによって誘導した100%溶血と比較して表した。ビオチン化DAVおよびR−フィコエリトリン−コンジュゲート化ストレプトアビジンで標識した後、細胞懸濁物のフローサイトメトリーによって、PS暴露細胞のパーセンテージを決定した。図4Aは、2μg/mlのDAV(円)またはAV(正方形)の非存在下(三角形)または存在下で、100ng/mlのpPLA2に誘導される溶血を示す。図4Bは、多様な量のDAV(円)またはAV(正方形)の存在下で、100ng/mlのpPLA2に誘導される溶血を示す。図4Cは、2μg/mlのDAVの存在下で、100ng/mlのpPLA2と60分間インキュベーションした後の細胞懸濁物中のPS暴露細胞を示す。
【図5】[0027]図5は、擬似手術したマウス(擬似)、生理食塩水を投与したマウス、肝動脈をクランピングする6時間前にHEPES緩衝液を投与したマウス、動脈をクランピングする6時間前にPEG化アネキシン(PEGアネキシン)またはアネキシン二量体を投与したマウス、および単量体アネキシンを投与したマウス(アネキシン)における、血清アラニン・アミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを示す。PEGアネキシンおよびアネキシン二量体の上のアステリスクは、p<0.001を示す。
【図6】[0028]図6は、組換えヒトアネキシンVおよびPEG化組換えヒトアネキシンVの凝血強度を比較するin vitro凝血アッセイの凝血時間のプロットである。
【図7】[0029]図7は、10分間血栓症研究の5つの処置群における血栓重量を示す(平均±sd;n=8)。
【図8】[0030]図8は、血栓症研究の5つの処置群におけるAPTTを示す(平均±sd;n=8)。
【図9】[0031]図9は、尾出血研究の3群における出血時間を示す(平均±sd;n=8)。
【図10】[0032]図10は、尾出血研究の3群における血液損失を示す(平均±sem;n=8)。
【図11】[0033]図11は、尾出血研究の3群におけるAPTTを示す(平均±sd;n=8)。
【図12】[0034]図12Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への白血球の付着を示す。図12Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への白血球の付着を示す。
【図13】[0035]図13Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への血小板の付着を示す。図13Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞への血小板の付着を示す。
【図14】[0036]図14Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞の腫脹を示す。図14Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中の内皮細胞の腫脹を示す。
【図15】[0037]図15Aは、門脈周辺類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中のクッパー細胞の食作用活性を示す。図15Bは、小葉中心類洞に関する、ジアネキシンを用いたおよび用いない、虚血−再灌流傷害中のクッパー細胞の食作用活性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を冠動脈血栓症の後に投与する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を、顕性脳血栓症および一過性脳虚血発作からなる群より選択される状態の後に投与する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を、静脈血栓症に関連する外科手術後に投与する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記被験者が糖尿病であり、そして前記血栓症が動脈血栓症である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を、妊娠および分娩からなる群より選択される状態の期間中に投与する、請求項1の方法。
【請求項7】
単離修飾アネキシンタンパク質を、0.2mg/kg〜1.0mg/kgの範囲で投与する、請求項1の方法。
【請求項8】
アネキシン活性に関して、修飾アネキシンタンパク質を同定する方法であって:
a)活性化された血小板を、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質と、結合を許容する条件下で接触させ;
b)前記血小板の試験修飾アネキシン結合活性を評価し;
c)前記試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、プロテインS結合活性を評価し;そして
d)前記試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での試験修飾アネキシン結合活性およびプロテインS結合活性と、非修飾アネキシンタンパク質の存在下での非修飾アネキシン結合活性およびプロテインS結合活性を比較し、それによって、アネキシン活性を持つ修飾アネキシンタンパク質を同定可能である
ことを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項8の方法によって同定される、修飾アネキシンタンパク質。
【請求項10】
内皮細胞への白血球の付着を阻害する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質の有効量を、こうした方法を必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
内皮細胞損傷を減少させることをさらに含む、請求項10の方法。
【請求項12】
血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、ホスファチジルセリンに対するアネキシンVの親和性の少なくとも90%の、ホスファチジルセリンに対する親和性を有するタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記タンパク質がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項12の方法。
【請求項1】
血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を冠動脈血栓症の後に投与する、請求項1の方法。
【請求項3】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を、顕性脳血栓症および一過性脳虚血発作からなる群より選択される状態の後に投与する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を、静脈血栓症に関連する外科手術後に投与する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記被験者が糖尿病であり、そして前記血栓症が動脈血栓症である、請求項1の方法。
【請求項6】
前記単離修飾アネキシンタンパク質を、妊娠および分娩からなる群より選択される状態の期間中に投与する、請求項1の方法。
【請求項7】
単離修飾アネキシンタンパク質を、0.2mg/kg〜1.0mg/kgの範囲で投与する、請求項1の方法。
【請求項8】
アネキシン活性に関して、修飾アネキシンタンパク質を同定する方法であって:
a)活性化された血小板を、少なくとも1つの試験修飾アネキシンタンパク質と、結合を許容する条件下で接触させ;
b)前記血小板の試験修飾アネキシン結合活性を評価し;
c)前記試験修飾アネキシンタンパク質の存在下で、プロテインS結合活性を評価し;そして
d)前記試験修飾アネキシンタンパク質の存在下での試験修飾アネキシン結合活性およびプロテインS結合活性と、非修飾アネキシンタンパク質の存在下での非修飾アネキシン結合活性およびプロテインS結合活性を比較し、それによって、アネキシン活性を持つ修飾アネキシンタンパク質を同定可能である
ことを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項8の方法によって同定される、修飾アネキシンタンパク質。
【請求項10】
内皮細胞への白血球の付着を阻害する方法であって、アネキシン二量体を含む単離修飾アネキシンタンパク質の有効量を、こうした方法を必要とする患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
内皮細胞損傷を減少させることをさらに含む、請求項10の方法。
【請求項12】
血栓症のリスクがある被験者を治療する方法であって、ホスファチジルセリンに対するアネキシンVの親和性の少なくとも90%の、ホスファチジルセリンに対する親和性を有するタンパク質を、抗血栓に有効な量で、前記被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記タンパク質がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である、請求項12の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2008−502592(P2008−502592A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503052(P2007−503052)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008193
【国際公開番号】WO2005/086955
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506306813)アラビタ・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008193
【国際公開番号】WO2005/086955
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506306813)アラビタ・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】
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