説明

偏光変換素子、偏光変換ユニット及び投写型映像装置

【課題】構造がコンパクトになるとともに耐熱性や長寿命化を図ることができ、変換効率の良好な偏光変換素子の提供。
【解決手段】偏光分離素子21は、透光性基板21Aの入射側表面に、入射光をP偏光PとS偏光Sとに分離して、P偏光Pを透過させ、S偏光Sを反射する偏光分離部21Bを備える。反射素子22は、偏光分離部21Bで反射されたS偏光Sを、偏光分離部21Bを透過したP偏光Pの光路と略平行な方向に反射する。反射素子22は、複屈折性と旋光性を有する結晶材料の反射素子用基板23と、反射素子用基板23に設けられたミラー24とを有し、反射素子用基板23は、入射したS偏光Sが右に回転する円偏光の光線に変換され、この光線がミラー24で左に回転する円偏光の光線として反射されてP偏光Pとして出射させる1/4波長板23Aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光変換素子、この偏光変換素子を備えた偏光変換ユニット及び投写型映像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクター等の投影型映像装置は、光源装置から射出された光を画像情報に応じて変調し、この変調された光学像をスクリーンの上に拡大投射するものである。この液晶プロジェクターでは、光の利用効率を向上させるため、光源装置から出射されたランダムな偏光(互いに偏光面が直交するP偏光とS偏光や偏光面の方向がさまざまな直線偏光が混在した光)を有する光(以下、ランダム光と称す)を複数の中間光束に分割し、この分割された中間光束を1種類の直線偏光光に変換し統一して出射するために偏光変換素子が用いられている。
【0003】
偏光変換素子は、偏光分離膜と反射膜とを透明部材の内部に交互に配置して偏光ビームスプリッターアレイを成形し、この偏光ビームスプリッターアレイの表面に位相差板を設けた構造である。位相差板は、透明部材の光射出面側で偏光分離膜に対応した位置に所定間隔毎に複数配置されている(特許文献1)。
従来、位相差板としては、有機系材料、例えばポリカーボネートフィルム製の1/2波長板が用いられることがあり、この1/2波長板と偏光ビームスプリッターアレイとは有機系接着剤により接着されている。
この偏光変換素子の製造方法としては、両主面には偏光分離膜と反射膜とがそれぞれ形成された無色透明なガラス等の透光性基板を幾重にも積層して積層体を作り、入射面に対して、例えば45degの角度で切断して得られたレンズアレイの出射面に1/2波長板が接着剤により貼り付けられている。
このように製造された偏光変換素子は、平面矩形状のフレームに組み込まれた状態で、液晶プロジェクターの光学エンジン内に搭載されている(特許文献2)。
位相差板を透明部材の光射出面側に設ける代わりに、ポリカーボネート系フィルムやポリアクリレート系フィルムなどを2軸延伸したプラスチックフィルムを用いて製作された1/4波長板を反射膜に接着剤で接着固定した構造を有する偏光変換素子がある(特許文献3)。
【0004】
近年、光学部品としての長寿命化の要求が増してきたことに伴って、接着剤の劣化の問題が生じてきた。特許文献1〜3で示される従来例では、反射膜が形成された透光性基板と他の透光性基板とを接着剤で接着固定しているため、接着剤の劣化の問題がある。
この問題を解決するために、ガラスや水晶等の2枚の透光性基板を接合する手段として、表面にシロキサン(Si−O)結合を含み、結晶化度が45%以下であるSi骨格と、該Si骨格に結合する有機基からなる脱離基とを含む接合膜とプラズマ重合法により成膜し、当該接合膜にエネルギーを付与することにより前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより、接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記2枚の透光性基板を接合する接合方法が提案されている(特許文献4)。
この接合方法を採用することにより、接合手段は無機化され、接合膜の劣化の問題が解決されるとともに当該接合方法を用いて接合される光学部品の長寿命化を図ることが可能となる。
そして、特許文献4において提案された接合技術を用いて、多層膜からなる偏光分離膜の中間層のSiOを接合層の一部として利用し、最上層に第1の接合層を配置された第1の多層膜が形成された第1の透光性基板と、最上層に第2の接合層を配置された第2の多層膜が形成された第2の透光性基板とを、第1、第2の前記接合層を分子接合することにより一体化するともに、第1の多層膜と第2の多層膜とを積層して前記偏光分離膜を構成する偏光ビームスプリッターが提案されている(特許文献5)。
【0005】
しかしながら、特許文献5においては、プラズマ重合膜による分子接合膜の膜厚は数十nmという極めて薄い膜で構成されており、この接合膜を透光性基板の表面にプラズマ重合法を用いて形成する過程で透光性基板の表面に塵やゴミ等の付着物が付着してしまうと、接合膜の膜厚よりも付着物の高さの方が遥かに高いため、付着物が付着している領域を中心として所定の領域において透光性基板同士を接合することができず、気泡などがその領域に混入してしまい、光学特性上や接合信頼性、製品寿命に大きな悪影響を与えるという課題がある。
そこで、本願発明者らは、特許文献6において提案されている偏光変換素子の構造に着目した。この特許文献6では、光学ブロック(偏光変換素子)は、基板上に刻設されている溝に対してPBS(偏光分離素子)、ミラー及び1/2波長板等の光学部品が装着されて構成されている。PBSはガラス板に例えばTiO(高屈折率材料)とSiO(低屈折率材料)とを交互に繰り返し積層してなる誘電体多層膜、等を表面蒸着することによって形成され、光の入射方向に対して所定の角度で基板に圧入装着されている。ミラーは長方形のガラス板に例えばアルミや誘電体多層膜等を表面蒸着することによって入射した光を反射することができるようになっている。そして、PBSで分離され反射したS波(S偏光)を出射側に反射する角度で前記基板に装着されている。1/2波長板は、長方形のガラス板に例えばポリカーボネート、ポリビニールアルコール、ポリエチレンテレフタレートフィルムを一軸延伸した1/2位相差フィルムを貼り付けて形成されている。そして、ミラーで反射されたS波(S偏光)が入射する位置に装着され、P波(P偏光)に変換して出射する。このように、PBS、ミラー、1/2波長板等によって光学ブロックを構成することにより、入射したP波(P偏光)とS波(S偏光)を含むランダム偏光の光を、P波(P偏光)のみに統一して出射することができるとともに、光学ブロックの入射側面積と出射側面積とをほぼ同一にすることができるようになる。
【0006】
ところで、水晶は複屈折性を有するだけでなく旋光性も有しており、この旋光性は、水晶製波長板の性能に影響を及ぼし得ることがよく知られている。
この問題に対して、旋光能を有する光学結晶材料からなる2つの波長板を互いに各々の結晶光学軸を所定の角度で交差するように配置して積層し、ポアンカレ球を用いて偏光の軌跡を解析し、両波長板の複屈折位相差、光学軸方位角度、旋光能、及び回転軸と中性軸のなす角との関係を近似式により求めた所定の関係式を満足するように構成することにより、旋光能による影響を低減し、広帯域において特性を良くすることを試みた1/4波長板が提案されている(特許文献7)。
さらに、水晶等の無機材料からなる1枚の波長板に関し、複屈折性及び旋光性を有し、短波長で高出力の青紫色レーザに対して十分な耐光性、信頼性を発揮する水晶等の無機材料の結晶板で形成され、かつ楕円率を最適に即ち0.9以上の高い値に又は実質的に1に近付けることが可能な優れた光学特性の1/4波長板が提案されている(特許文献8)。
さらに、水晶基板からなる1/2波長板を45°傾斜して配置し、入射面側にワイヤーグリッド偏光子を配置して偏光ビームスプリッターとして機能させ、1/2波長板と主面に反射ミラーが形成されたガラス基板とを交互に順に配置することによって構成された偏光変換素子(特許文献9)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−298212号公報
【特許文献2】特許第3610764号公報
【特許文献3】特許第4191125号公報
【特許文献4】特許第4337935号公報
【特許文献5】特開2010−60770号公報
【特許文献6】再公表WO98/23993号公報
【特許文献7】特開2005−158121号公報
【特許文献8】特開2010−134414号公報
【特許文献9】特開2004−029168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献6で提案される従来の如き偏光変換素子では、PBSはガラス板の表面にTiO(光屈折率材料)とSiO(低屈折率材料)とを交互に繰り返し積層してなる誘電体多層膜、等を蒸着して偏光分離膜を形成しているため、熱膨張係数の違いに起因した熱歪みによるガラス基板と偏光分離膜との界面での剥離の恐れがあるだけでなく、ガラス板での放熱も限界があり、耐熱性や長寿命化の高い要請を十分に満足することができない。
ここで、放熱効果を考慮して、ガラス板に代えて水晶板をPBSに用いることも考えられるが、水晶は複屈折性を有するだけでなく旋光性も有しているので、単に、ガラス板を水晶板に代えたのでは、旋光性の問題が解決されない。
特許文献7は、1/4波長板において、旋光性の問題を解決するものであるが、偏光変換素子を構成する反射素子に関するものではないので、これらのアイデアをそのまま特許文献6に用いることは困難である。
これら特許文献7や特許文献8に記載された技術思想をそのまま特許文献9に適用することによってだけでは、本願発明者らが掲げた以下に示すような問題の解決を図ることは困難であることが判明した。
【0009】
そこで、本願発明者らは、旋光能が位相差に与える影響に着目した特許文献7や特許文献8で示される如き従来例で試みられている旋光能補償に係る技術思想を適用することによって、入射するP偏光の偏光面を90deg回転させてS偏光に変換して出射させるように光学作用を生じせしめることを可能とする偏光変換素子の実現を試みることを検討した。
即ち、先ず、プリズムアレイ(偏光ビームスプリッターアレイ)の積層界面に挟み込むように、45degに傾斜して配置した水晶製1/2波長板の光学設計に特許文献7や特許文献8において提案された技術思想を適用することを図53に基づいて考える。
この場合、水晶製1/2波長板を狭持する透光性基材は一般的なガラス材であり、ガラス材の屈折率n1=1.53と、水晶の屈折率n2=1.54との関係から、プリズムアレイの中を透過する光の光路(光軸)は、光が水晶製1/2波長板へ入射するときのガラスと水晶製1/2波長板との界面、及び光が水晶製1/2波長板から出射するときの水晶製1/2波長板とガラスとの界面でほとんど屈折は起こらずに、即ち、光路(光軸)はほとんど変化することなく光が偏光変換素子を透過することとなる。
図53において、水晶製1/2波長板WPの主面(入、出射面)の法線PLから見た光学軸方位をθとし、水晶製1/2波長板WPの中を進む光線R1に対する光学軸方位をθとし、水晶製1/2波長板WPの主面の法線PLと前記光線R1とのなす角度をθとすると、これらの角度には次の関係がなりたつ。
θ=atan(tanθ×cosθ) (A1)
このとき、θ=45deg、θ=45degであるから、θは、
θ=atan(tan(45deg)×cos(45deg))
=atan(1/21/2
=35.3deg
と、算出される。
ところが、特許文献9で提案されているような水晶製1/2波長板を45deg傾斜して配置し、入射面側にワイヤーグリッド偏光子や誘電体多層膜、等からなる偏光分離部を配置して偏光ビームスプリッターとして機能させ、1/2波長板と平行となるように反射部を45degに傾斜して配置し、これらを交互に順に配置することによって構成された偏光変換素子においては、水晶製1/2波長板を挟み込むガラスはなく、水晶製1/2波長板が接しているものは空気である。つまり、空気の屈折率n0=1.00と、水晶の屈折率n2=1.54との関係から、偏光変換素子を透過する光の光路(光軸)は、光が水晶製1/2波長板へ入射するときの空気と水晶製1/2波長板との界面、及び光が水晶製1/2波長板から出射するときの水晶製1/2波長板と空気との界面で屈折が生じるので、光路(光軸)が変化することとなる。
θ=atan(tanθ×cosθ) (A1)
このとき、θ=45deg、θ=27.2degであるから、θは、
θ=atan(tan(45deg)×cos(27.2deg))
=atan(1×0.88941)
=41.65deg
そこで、水晶製1/2波長板を45degに傾斜させ、空気と接することにより当該水晶製1/2波長板の入出射面との界面で入射光の光軸に屈折が生じる場合の水晶製1/2波長板の光学設計を検討した結果、以下の仕様となった。
設計波長 520 nm
設計位相差 460.11 deg
光学軸方位 41.65 deg
切断角度 90 deg
なお、切断角度は、水晶製1/2波長板の主面の法線と結晶光学軸とのなす角度で定義されている。設計位相差は、水晶製1/2波長板の主面の法線に平行な方向から設計波長λの光が入射したときの位相差を設計位相差として定義されている。光学軸方位角(θ)は水晶製1/2波長板の主面(入、出射面)の法線から見たときに入射する光の直線偏光の偏波面(偏光面)と結晶光学軸とのなす角度で定義されている。
この場合の水晶製1/2波長板の波長と偏光変換効率との関係が図54のグラフに設計値として示されている。
水晶製1/2波長板の内部の光路の距離をt1としたとき、前記光路を通って、水晶製1/2波長板を透過する光の位相差Γは、以下に示す関係式に算出される。
Γ1=2π/λ×(ne−no)×t1
この式において、Γ1=180degとなるように光路の長さt1が求まり、水晶製1/2波長板の主面の法線方向の厚みtoが求められ、前記法線方向の設計波長λにおける位相差Γoが算出される。
Γo=2π/λ×(ne−no)×to
cos(θ2)=to/t1
to=t1×cos(θ2)
Γo=2π/λ×(ne−no)×t1×cos(θ2)
となり、このΓoを設計位相差と定義し、ここでは、Γo=160.11(deg)である。
ところで、水晶製1/2波長板は、水晶原石を整形(ランバート加工)して得た水晶ランバートを設計値となる所定の切断角度でワイヤーソー等を用いて切断して得られたウェーハから個片に分離して製造される。
しかしながら、この製造工程において、ウェーハが水晶ランバートから誤った切断角度で切断されたり、許容範囲を超えた切断角度で切断されたりした場合、前述の設計板厚toの厚みで加工されてしまうと、表1に示される通り、設計位相差Γoにズレが生じ、即ち、Γo≠160.11degとなって、水晶製1/2波長板はすべて不良品となってしまうという問題があった。
【0010】
【表1】

【0011】
切断角度が設計値90degから80degにずれて切断されてしまった場合、その角度ズレを配慮せずに、前記設計板厚toのままで加工してしまうと、設計位相差Γoは、160.11degから175.50degに位相差が大きくずれてしまう。
これは、Γo=2π/λ×(ne−no)×toの式において、異常光屈折率neと常光屈折率noが、切断角度に依存しており、切断角度に応じてこれらの値が変化するからである。
従って、45degに傾斜して配置された水晶製1/2波長板の内部の光路の距離t1を透過した光の位相差Γは、180degから大きくずれてしまうことになる。
その結果、偏光変換効率は、図54に示されるように大きく変化し、550nm以下の波長帯で偏光変換効率が大きく低下し劣化してしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、水晶等の複屈折性と旋光性を有する結晶材料において、切断角度が設計値からずれて切断されてしまった場合でも、角度ズレに応じて、板厚を調整し、最適な設計板厚に修正することにより、設計位相差を見直し、所定の波長帯域における偏光変換効率を確実に規定値以上にすることを可能とした1/4波長板を備えた偏光変換素子、偏光変換ユニット及び投射型映像装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[適用例1]
本適用例に係る偏光変換素子は、入射光に対して所定角度をなすように配置された透光性基板と、当該透光性基板の入射側表面に、入射光を互いに直交する第1の直線偏光と第2の直線偏光とに分離して、前記第1の直線偏光を透過させ、第2の直線偏光を反射する偏光分離部と、前記透光性基板と略平行かつ間に空気層を介して配置され、前記偏光分離部で反射された前記第2の直線偏光を、前記偏光分離部を透過した前記第1の直線偏光の光路と略平行な方向に反射する反射素子と、を有し、前記反射素子は、複屈折性と旋光性を有する結晶材料からなる反射素子用基板と、当該反射素子用基板に設けられたミラーと、を有し、前記反射素子用基板は、入射した前記第2の直線偏光を第1の円偏光に変換し、当該第1の円偏光を前記ミラーで逆回転の第2の円偏光として反射し、当該第2の円偏光を第1の直線偏光に変換して出射する波長板であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、偏光分離部が透光性基板に設けられて構成された偏光分離素子と、反射素子用基板にミラーが設けられた反射素子とからレンズアレイを構成しているので、これらの間に設けられたガラス等の透明部材が不要とされ、構造がコンパクトになる。
しかも、反射素子の反射素子用基板として、熱伝導率がガラスより高い結晶材料を用いており、反射素子と透光性基板との間には空気層が形成されているので、従来に比べて放熱効果が高く、耐熱性や長寿命化を図ることができる。
そして、結晶材料は複屈折性と旋光性を有するので、光軸方向に伝搬する直線偏光の振動面が光の進行につれてねじれてしまい、偏光状態が変化して偏光変換効率が低下するという課題があるが、本適用例では、反射素子用基板に直線偏光を円偏光に変換する波長板を用いているので、入射した第2の直線偏光が左右のいずれか一方に回転する円偏光に変換され、この円偏光がミラーで左右のいずれか他方に回転する円偏光として反射された後、第1の直線偏光として出射するため、偏光分離部で透過される第1の直線偏光と揃えて偏光状態の変化をなくすことができる。
【0014】
[適用例2]
本適用例に係る偏光変換素子は、前記反射素子用基板は1枚の位相差板で構成され、前記反射素子用基板の法線から見た光学軸方位をθとし、前記反射素子用基板の中を進む光線に対する光学軸方位をθとし、前記光線の光路と結晶光学軸の法線とのなす角度をθとし、前記反射素子用基板の屈折率をn、前記反射素子用基板と隣接する層の屈折率をnとすると、光学軸方位θ
θ=atan(tanθ×cosθ) (A1)
sinα=nsinθ (A2)
の式から求めることを特徴とする。
この構成の本適用例では、反射素子用基板が1枚からなる場合において、変換効率の良好な偏光変換素子を簡易に提供することができる。
【0015】
[適用例3]
本適用例に係る偏光変換素子は、前記反射素子用基板を第1位相差板と第2位相差板との2枚の位相差板とし、前記反射素子用基板の法線から見た前記第1位相差板の光学軸方位をθ01とし、前記第1位相差板の中を進む光線に対する光学軸方位をθ11とし、この光線と結晶光学軸の法線とのなす角度をθ21とし、前記第1位相差板の屈折率をnc1、前記第1位相差板と隣接する層の屈折率をnとすると、
前記第1位相差板の光学軸方位θ01
θ01=atan(tanθ11×cosθ21) (A11)
sinα=nc1sinθ21 (A21)
の式から求め、
前記反射素子用基板の法線から見た前記第2位相差板の光学軸方位をθ02とし、前記第2位相差板の中を進む光線に対する光学軸方位をθ12とし、この光線と結晶光学軸の法線とのなす角度をθ22とし、前記第2位相差板の屈折率をnc2、前記第2位相差板と隣接する前記第1位相差板の屈折率をnc1とすると、
前記第2位相差板の光学軸方位θ02
θ02=atan(tanθ12×cosθ22) (A12)
C1sinα=nc2sinθ22 (A22)
の式から求めることを特徴とする。
この構成の本適用例では、反射素子用基板が2枚の位相差板からなる場合において、変換効率の良好な偏光変換素子を簡易に提供することができる。
【0016】
[適用例4]
本適用例に係る偏光変換素子は、前記透光性基板は、複屈折性と旋光性を有する結晶材料からなり、前記偏光分離部を透過し前記透光性基板に入射した前記第1の直線偏光は、この第1の直線偏光の偏波面を維持したまま前記透光性基板の出射側表面から出射することを特徴とする。
この構成の本適用例では、透光性基板も熱伝導率がガラスより高い結晶材料を用いているため、従来に比べて放熱効果が高く、耐熱性や長寿命化をより図ることができる。
【0017】
[適用例5]
本適用例に係る偏光変換素子は、前記所定角度は略45(deg)あるいは135(deg)であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、偏光分離部によって第2の直線偏光を入射光に対して略直角に反射素子に向けて反射させることができるので、反射素子で反射される光線を第1の直線偏光の光路と略平行な方向に反射させることができる。
【0018】
[適用例6]
本適用例に係る偏光変換素子は、前記結晶材料が水晶であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、結晶材料としてサファイヤ等の結晶材料に比べて安価に入手できる水晶を用いることで、偏光変換素子を安価に提供することができる。
【0019】
[適用例7]
本適用例に係る偏光変換ユニットは、前述の構成の偏光変換素子と、この偏光変換素子を保持する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記反射素子用基板の両端部と前記透光性基板の両端部とをそれぞれ保持する一対の保持板と、当該一対の保持板の両端部をそれぞれ連結する一対の連結板と、を有することを特徴とする。
この構成の本適用例では、透光性基板及び偏光分離部を備えて構成される偏光分離素子と反射素子とを保持部材にコンパクトに収納できるので、取り扱いが便利となる。
【0020】
[適用例8]
本適用例に係る偏光変換ユニットは、前記一対の保持板と前記一対の連結板とは一体に形成され、前記一対の保持板の互いに対向する部分には前記透光性基板と前記反射素子用基板とをそれぞれ案内するガイド溝が設けられ、前記ガイド溝は前記一対の保持板の一側面にそれぞれ開口されていることを特徴とする。
この構成の本適用例では、前記偏光分離素子と前記反射素子とをそれぞれガイド溝に沿って差し込むだけで偏光変換ユニットが組み立てられるので、組立作業が容易となる。
【0021】
[適用例9]
本適用例に係る偏光変換ユニットは、前記一対の保持板と前記一対の連結板とは別体に形成され、前記一対の連結板は前記一対の保持板を互いに向き合う方向に付勢する係合片を有することを特徴とする。
この構成の本適用例では、一対の連結板によって、一対の保持部材を互いに近接する方向に付勢して偏光分離素子と反射素子とを確実に保持することになり、偏光分離素子や反射素子が偏光分離ユニットから脱落することを防止することができる。
【0022】
[適用例10]
本適用例に係る投射型映像装置は、光源と、前記光源からの光を前記第2の直線偏光に変換して出射する偏光変換素子と、前記偏光変換素子からの出射光を、投写しようとする画像情報に応じて変調する光変調手段と、前記光変調手段により変調された光を投写する投写光学系と、を有し、前記偏光変換素子が前述の構成の偏光変換素子であることを特徴とする。
この構成の本適用例では、偏光変換素子の偏光変換効率が高いので、投影精度の高い投射型映像装置を提供することができる。
【0023】
[適用例11]
本適用例に係る投射型映像装置は、前記光変調手段は液晶パネルであることを特徴とする。
この構成の本適用例では、前述の効果を奏することができる液晶プロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる偏光変換素子の概略図。
【図2】反射素子を構成する1/4波長板の概略図。
【図3】図2の原理を説明するためのポアンカレ球を示す概略図。
【図4】1/4波長板の光学軸方位を説明するための図。
【図5】(A)は切断角度Zと設計波長λとの関係を示すグラフであり、(B)は切断角度Zと板厚toとの関係を示すグラフである。
【図6】第1実施形態の1/4波長板の偏光変換効率を示すグラフ。
【図7】(A)は偏光分離素子を構成する水晶板の端面図、(B)は水晶板の一部を示す正面図。
【図8】水晶の波長板における光学軸方位、板厚、切断角度の関係を示すもので、(A)は端面図、(B)は斜視図。
【図9】図7の原理を説明するためのポアンカレ球を示す概略図。
【図10】屈折角度φを説明するための概略図。
【図11】切断角度qが0degの場合の透光性基板の模式図。
【図12】切断角度qが0degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図13】切断角度qが15degの場合の透光性基板の模式図。
【図14】切断角度qが15degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図15】切断角度qが30degの場合の透光性基板の模式図。
【図16】切断角度qが30degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図17】切断角度qが45degの場合の透光性基板の模式図。
【図18】切断角度qが45degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図19】切断角度qが60degの場合の透光性基板の模式図。
【図20】切断角度qが60degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図21】切断角度qが75degの場合の透光性基板の模式図。
【図22】切断角度qが75degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図23】切断角度qが90degの場合の透光性基板の模式図。
【図24】切断角度qが90degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図25】切断角度qが105degの場合の透光性基板の模式図。
【図26】切断角度qが105degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図27】切断角度qが120degの場合の透光性基板の模式図。
【図28】切断角度qが120degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図29】切断角度qが135degの場合の透光性基板の模式図。
【図30】切断角度qが135degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図31】切断角度qが150degの場合の透光性基板の模式図。
【図32】切断角度qが150degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図33】切断角度qが165degの場合の透光性基板の模式図。
【図34】切断角度qが165degの場合の0度方向強度(透過特性)を示すグラフ。
【図35】交差角xと許容される板厚yoの最大値yとの関係を示すグラフ。
【図36】(A)は交差角xが−90degの状態を示す概略図、(B)は交差角xが−45degの状態を示す概略図、(C)は交差角xが0degの状態を示す概略図。
【図37】本発明の第2実施形態にかかる偏光変換素子の概略図。
【図38】1/4波長板の光学軸方位を説明するための図。
【図39】図38の1/4波長板とは異なる例の1/4波長板の光学軸方位を説明するための図。
【図40】図38の1/4波長板に関するもので(A)は切断角度Zと設計波長λとの関係を示すグラフであり、(B)は切断角度Zと板厚toとの関係を示すグラフである。
【図41】図39の1/4波長板に関するもので(A)は切断角度Zと設計波長λとの関係を示すグラフであり、(B)は切断角度Zと板厚toとの関係を示すグラフである。
【図42】図38で示される1/4波長板の偏光変換効率を示すグラフ。
【図43】図39で示される1/4波長板の偏光変換効率を示すグラフ。
【図44】本発明の第3実施形態にかかる偏光変換素子の概略図。
【図45】本発明の第4実施形態が組み込まれた液晶プロジェクターの概略構成図。
【図46】第4実施形態にかかる偏光変換ユニットを示す斜視図。
【図47】(A)は保持部材の平面図、(B)は保持部材の断面図。
【図48】保持部材の一部を示す分解斜視図。
【図49】本発明の第5実施形態にかかる偏光変換ユニットを示す斜視図。
【図50】保持部材の一部を示す分解斜視図。
【図51】本発明の第6実施形態にかかる偏光分離素子の斜視図。
【図52】本発明の変形例にかかる偏光変換素子の概略図。
【図53】本発明の前提となる技術であって水晶製1/2波長板の光学軸方位を説明するための図。
【図54】従来例の透光性基板の偏光変換効率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態において、同一の構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図1から図36には第1実施形態が示されている。
図1は第1実施形態の概略を示す。
図1において、第1実施形態の偏光変換ユニット1は、偏光変換素子2と、この偏光変換素子2を保持する保持部材3とを備える。保持部材3は平面矩形状の例えば合成樹脂製の板材である。
偏光変換素子2は交互に配置される偏光分離素子21及び反射素子22を備え、これらの偏光分離素子21及び反射素子22のそれぞれの一端部は、保持部材3の凹部(図示せず)に嵌合されている。
偏光分離素子21及び反射素子22は、図1中、保持部材3の中心を挟んで左右に複数枚、例えば、2枚ずつ配置され、このうち、中心に対して左側に配置された偏光分離素子21及び反射素子22と右側に配置された偏光分離素子21及び反射素子22とは、前記中心に対して対称関係に配置されている。
【0026】
偏光分離素子21は、その入射側主表面及び出射側主表面が入射光ILに対して所定角度、本実施形態では、45degをなすように配置された透光性基板21Aと、この透光性基板21Aの入射側表面に、入射光ILを、互いに直交する第1の直線偏光であるP偏光Pと第2の直線偏光であるS偏光Sとに分離して、P偏光Pを透過させ、S偏光Sを反射する偏光分離部21Bの表面と、この偏光分離部21Bが配置された透光性基板21Aの入射光ILが入射する側の主面とは反対側の主面(出射側の主面)にそれぞれ設けられた反射防止部21Cとを有する。
透光性基板21Aは、複屈折性と旋光性を有する水晶から平面矩形の板状に形成されている。
偏光分離部21Bは、例えば、酸化ケイ素(SiO)よりなる低屈折率層と、例えば酸化アルミナ(Al)よりなる高屈折率層とが所定の順序及び光学膜厚で形成され、光学的に面内均一とされた誘電体多層膜から構成される。
反射防止部21Cは、例えば、二酸化ケイ素と、酸化チタンとを交互に順次積層してなる誘電体多層膜、等の物質を蒸着することで形成される。
【0027】
反射素子22は、複屈折性と旋光性を有する結晶材料からなる反射素子用基板23と、この反射素子用基板23に所定間隔離して設けられた板状のミラー24とを有する。反射素子用基板23とミラー24とは、互いに平行配置され、かつ、偏光分離素子21とも平行に配置されている。このミラー24は、水晶板24Aと、この水晶板24Aの反射素子用基板23と対向する面に設けられた反射膜24Bとを有する。反射膜24Bは、例えば、二酸化ケイ素、酸化チタン等の物質を蒸着することで形成される多層膜で構成される。
反射素子用基板23は、板厚がmの1/4波長板23Aと、1/4波長板23Aの両面に設けられた反射防止部23Bとを有する。反射防止部23Bは偏光分離素子21の反射防止部22Bと同じ構造である。
1/4波長板23Aの原理について、図2から図4に基づいて説明する。
図2には1/4波長板23Aの概略が示され、図3には図2の原理を説明するためのポアンカレ球が示されている。なお、図2は、1/4波長板23Aの光路を説明するための概略と1/4波長板23Aの法線から見た概略とが示されている。
【0028】
図2において、1/4波長板23Aの一方の主面23aから入射角αが45degで入射したS偏光Sは、位相差=90degがついて右に回転する円偏光に変換されて1/4波長板23Aの他方の主面23bから出射する。出射した右回りの円偏光は、反射ミラー24Bで反射され、回転方向が逆の円偏光となって、再度、1/4波長板23Aの他方の主面23bに入射する。回転方向が左回りの円偏光は位相差=90degがついてP偏光Pに変換されて、1/4波長板23Aの一方の主面23aから出射することとなる。なお、図2では、1/4波長板23Aの中を進む往路の光線T1に対する光学軸方位がθとして示され、1/4波長板23Aの中を進む復路の光線T1に対する光学軸方位がθ’として示されている。1/4波長板23Aの主面に直交する法線PLと結晶光学軸POとのなす角度が切断角度qであり、本実施形態では、切断角度qは90degである。
【0029】
以上の光学作用の原理を図3のポアンカレ球を用いて説明する。図3では、1/4波長板の主面に対する法線に沿って光線が入射される場合である。
図3において、まず、S1軸を2θだけ赤道上を回して往路の回転軸はR1軸となる。本実施形態に係る1/4波長板23Aでは、光学軸方位θが45degであり(θ=45deg)、ポアンカレ球上の光学軸R1(往路)の位置は、赤道上のS1軸から2θ=90degのところに位置する。1/4波長板23Aに入射したS偏光Sは、位相差=90degがついて右回りの円偏光となる。即ち、図3で示すように、先ず往路において、S1軸の点P1から入射した直線偏光(S偏光S)は、R1軸を回転軸として位相差=90degだけ回転させると、点P1からポアンカレ球の北極である点P2に移動する。そして、円偏光の光線R1がミラー24で反射されると、前記円偏光の回転方向が逆転する。したがって、復路では、回転が逆転した円偏光の光となるので、点P2は、ポアンカレ球の南極である点P3に変換され、光学軸方位θ1’は、
θ1’=180deg−θ1=180−45=135deg
になるから、
2θ=2×135=270deg
となる。
復路における光学軸R2は、光学軸方位θ’が135degであり(θ’=135deg)、ポアンカレ球上の光学軸の位置は、赤道上のS1軸から2θ=270degのところに位置し、R2で示すことができる。
図3で示すように、R2軸を回転軸として位相差=90degだけ回転させると、南極である点P3から点P4へ至る軌跡を辿り、1/4波長板23Aから出射される光はP偏光Pとなる。
【0030】
ここで、本実施形態では、1/4波長板23Aの法線PLと内部を進む光線の方向とが一致していないので、実際の光学軸方位θは45degではない。
図4は1/4波長板の光学軸方位を説明するための図である。
図4において、1/4波長板23Aの法線から見た光学軸方位をθとし、1/4波長板23Aの中を進む光線Q1に対する光学軸方位をθとし、結晶光学軸POの法線PLと光線Q1とのなす角度をθとすると、これらの角度には次の関係がなりたつ。
θ=atan(tanθ×cosθ) (A1)
また、1/4波長板23Aの屈折率をn、1/4波長板23Aと隣接する層を空気層とし、この空気の屈折率をnとすると、1/4波長板23Aでの屈折角はθであるから、スネルの方式により、次の関係がなりたつ。
sinα=nsinθ (A2)
本実施形態では、1/4波長板23Aの材料である水晶の屈折率ncは1.54であり、空気の屈折率nは1.00であり、入射角αは45degであるので、式(A2)から、θは27.2degとなる。
さらに、θは27.2degであり、θは45degであるため、式(A1)からθは41.7degとなる。さらに、本実施形態では、1/4波長板23Aの板厚mを0.014mmとし、波長を520nmとし、位相差は80degとして設計した。
【0031】
本実施形態では、1/4波長板23Aが単板であるAタイプの場合であり、1/4波長板23Aへの入射角度は45(deg)を中心とし、当該中心から±10(deg)度の範囲の角度で傾いた場合、5(deg)ステップで入射角度を変化させたときの偏光変換効率をシミュレーションにより分析し、所定の波長帯域の偏光変換効率を当該波長帯域で平均化したとき、その平均した偏光変換効率における透過損失を平均で評価した。即ち、本実施形態に係る偏光変換素子を投射型映像装置に搭載したときの透過特性を、
M:500〜600nm帯域では、透過損失を10%以内、
N:400〜700nm帯域では、透過損失を20%以内
という規格に設定し、これらの2つのM,Nの規格を満足するように設計条件を設定する。
Aタイプでは、次の条件(A)を満たすことが条件とされる。
条件(A):設計波長をλ、1/4波長板23Aの板厚をto、1/4波長板23Aを構成する無機結晶材料の切断角度をZとしたとき、設計波長λ、切断角度Z、板厚toの関係が、式(1)(2)(3)(4)を満足する。
λ ≦-0.1186×Z + 20.288×Z- 226.56 ・・・(1)
λ ≧ 0.1089×Z - 18.802×Z+ 1265.4 ・・・(2)
to ≦ 3E-06×Z - 0.0003×Z+ 0.0209 ・・・(3)
to ≧ 9E-06×Z - 0.0013×Z+ 0.0626 ・・・(4)
式(1)(2)は設計波長λと切断角度Zとの関係を示すものであり、このうち、式(1)は上限の関係式であり、式(2)は下限の関係式である。また、式(3)(4)は切断角度Zと板厚toとの関係を示すものであり、このうち、式(3)は上限の関係式であり、式(4)は下限の関係式である。
表2は偏光変換効率をシミュレーションにより分析した結果であり、切断角度Zと設計波長λとの関係と切断角度Zと板厚toとの関係が示されている。切断角度Zと設計波長λとの関係が図5(A)にも示され、切断角度Zと板厚toとの関係が図5(B)にも示されている。
【0032】
【表2】

【0033】
表2及び図5(A)(B)から、透過特性を満足させるための設計波長λと切断角度Zの範囲は、
455≦λ≦640(nm)
65≦Z≦110(deg)
である。
設計波長λと切断角度Zの関係が、上限の関係式である式(3)と、下限の関係式である式(4)とを満足するように設計すれば、例えば、図6に示される通り、前述の透過特性(透過損失)の規格M,Nを満足させることができる。
【0034】
図6には、以上の通り、設計された1/4波長板23Aの偏光変換効率が示されている。図6では、横軸に波長が示され、縦軸に偏光変換効率が示されており、入射角αを35deg、40deg、45deg、50deg、55degとしてS偏光Sを1/4波長板23Aに入射させ、1/4波長板23Aから出射されたP偏光Pの偏光変換効率が示されている。これらの入射角αにおいて、偏光変換効率に大きな相違がなく、図6では、太く図示した曲線Lに35degから55degまでの入射角αでのデータが含まれる。
図6で示される通り、偏光変換効率は波長が400nmから700nmまで0.7以上という値を示し、特に、波長が450nmから650nmまでは0.9以上という高い値を示す。
【0035】
透光性基板21Aの概略構成が図7に示されている。図7(A)は端面からみた透光性基板21Aの概略図であり、図7(B)は透光性基板21Aの一部を示す正面図である。
図7(A)において、透光性基板21Aは、その板厚がyoであり、入射光ILが入射され、出射光OLとして透過される。入射光ILは発散角+αから−αの範囲で入射される。入射光ILに対応して出射光OLも発散角+αから−αの範囲で出射される。
透光性基板21Aの主面に直交する法線PLと結晶光学軸POとのなす角度が切断角度qである。
透光性基板21Aの結晶光学軸POと入射光ILの光軸とのなす角が交差角xである。
【0036】
偏光分離素子21の透光性基板21Aは、複屈折性と旋光性を有する水晶板であるため、入射光ILに対する出射光OLの偏光変換効率が高くなるように設計する必要がある。
その設計に至った経緯について、図8及び図9に基づいて説明する。図8は、水晶の波長板における光学軸方位、板厚、切断角度の関係を示すもので、(A)は端面図、(B)は斜視図である。
一般に、水晶からなる波長板を設計するためのパラメータとして、光学軸方位θ、切断角度qで設定される旋光能、板厚yoで設定される位相差Γがある。ここで、ポアンカレ球で定義される
図7に示される通り、本発明者らは、結晶光学軸POを設定して、直線複屈折性による位相差Γの生じない結晶板の構成を検討し、さらに、円複屈折性による位相差2ρ、所謂、旋光性による偏光の回転をも抑圧した光学素子を偏光変換素子に応用することを検討した。
入射光ILの光軸に垂直な平面に結晶板の結晶光学軸POを投影した投影光学軸と、P偏光Pの偏波面とのなす角を方位角θとしたとき、θ=0(deg)となるように水晶板を配置すると、直線複屈折位相差Γは0となる。
方位角θを0(deg)に固定し、旋光能に対応する2qよる位相差Γ’(板厚yoに対応)へ影響度をシミュレーションと実験と繰り返し評価、検証を行った。
図9には、偏光状態を説明するためのポアンカレ球の概略構成が示されている。
図9において、まず、S1軸上であって赤道上に直線偏光P1の偏光の位置を設定する。S1軸を2θだけ赤道上を回してR1軸とし、このR1軸を切断角度2qだけ起こしてR2軸とし、このR2軸を位相差Γに対応した角度だけ回転させてP1がP2となる。このP2を所望の偏光状態になるように、光学軸方位θ、切断角度q、位相差Γを調整する。
【0037】
本実施形態では、切断角度qを、透光性基板21Aの主面に対する法線PLと結晶光学軸POとのなす角度と定義する。
各切断角度により切り出された透光性基板(水晶板)毎に、入射光IL(P偏光)に作用するΓ’の値を評価した。
【0038】
【数1】

【0039】
入射光ILは、透光性基板21Aへ入射すると、屈折して透光性基板21Aの中を進行する。そして、透光性基板21Aから出射するとき入射光ILの光軸と平行な方向に屈折した出射光となって出射することとなる。ここで、図10に示される通り、入射光ILが透光性基板21Aへ入射したときに屈折角度φで屈折することになる。
本願発明者らは、入射光が透光性基板21Aへ入射したときに屈折する屈折角度φが、実際の透光性基板21Aの中を進行する光の光軸と結晶光学軸POとのなす角度βを決定し、βに応じて、旋光能2qが変化することに着目して実験、評価を行った。
【0040】
切断角度qと透光性基板21Aの透過特性との関係を説明する。
図11は切断角度qが0degの場合の透光性基板の模式図であり、図12は、その場合の透過特性としての0度方向強度を示すグラフである。図12では、入射光ILの入射角が0degとされている。透光性基板21Aは、その主面が入射角に対して45deg傾けて配置されているため、透光性基板21Aの主面に直交する法線は135degである。一方、結晶光学軸POは図11から明らかなように、135degとされている。そのため、図11では、切断角度qは0degである。
図12において、発散角αが−10degの場合を−10、発散角αが−5degの場合をα−5、発散角αが0degの場合をα0、発散角αが+5degの場合をα+5、発散角αが+10degの場合をα+10として表示する。図12に対応する他の図でも同じである。
図12において、α0、α+5、α+10では、0度方向強度(透過特性)が0.9以上と高いが、α−10、α−5では、波長によっては0度方向強度が0.8未満の場合もある。
【0041】
図13は、切断角度qが−10degの場合の透光性基板の模式図であり、図14は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図14では、α−5、α0、α+5、α−10では、0度方向強度(透過特性)が0.9以上と高いが、α+10では、波長によっては0度方向強度が0.8未満の場合もある。
図15は切断角度qが30degの場合の透光性基板の模式図であり、図16は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図16では、α+10では、0度方向強度(透過特性)が0.9以上と高いが、α−5、α0、α+5、α−10では、波長によっては0度方向強度が0.8未満の場合もある。
【0042】
図17は切断角度qが45degの場合の透光性基板の模式図であり、図18は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図18では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.9以上と高いものであった。
図19は切断角度qが60degの場合の透光性基板の模式図であり、図20は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図20では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.8未満の場合があった。
図21は切断角度qが75degの場合の透光性基板の模式図であり、図22は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図22では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.8未満の場合があった。
【0043】
図23は切断角度qが90degの場合の透光性基板の模式図であり、図24は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図24では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.8未満の場合があった。
図25は切断角度qが−75degの場合の透光性基板の模式図であり、図26は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図26では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.8未満の場合があった。
図27は切断角度qが−60degの場合の透光性基板の模式図であり、図28は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図28では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.8未満の場合があった。
【0044】
図29は切断角度qが−45degの場合の透光性基板の模式図であり、図30は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図30では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.8未満の場合があった。
図31は切断角度qが−30degの場合の透光性基板の模式図であり、図32は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図32では、α―10、α−5、α0、α+5、α+10の全てで0度方向強度が0.8未満の場合があった。
図33は切断角度qが−15degの場合の透光性基板の模式図であり、図34は、その場合の0度方向強度を示すグラフである。
図34では、α―10、α−5、α+5、α+10で0度方向強度が0.8未満の場合があった。
【0045】
以上の関係から交差角xと許容される板厚yoの最大値yとの関係を求める。交差角xと許容される板厚yoの最大値yとの関係が図35に示されている。ここで、許容される板厚yoの最大値yは、全発散光(αが±10deg)の範囲において偏光変換効率(0度方向強度)が0.8以上となる板厚である。
そして、透光性基板21Aの結晶光学軸POと入射光ILの光軸との交点に、結晶光学軸POと入射光ILの光軸とを含む平面に垂直な方向にたてた軸を中心軸とし、結晶光学軸POと入射光ILの光軸とを含む平面に垂直な方向から見て、中心軸の反時計周りの方向を正(プラス)とすると、交差角xは、−90(deg)≦x≦+90(deg)である。
図35において、交差角xが
−90deg<x≦−80degの場合(エリアQ1)では、
透光性基板21Aの板厚yoの最大値yは、
y=−0.0058x−0.9672x−38.858(mm)……(1)
で求められる。
ここで、交差角xが−90degでは、yは0.8653mmであり、交差角xが−80degでは、yは1.1257mmであるから、エリアQ1の範囲では、
0.8653mm<y≦1.1257mm である。
なお、図36(A)には、交差角xが−90degの状態が示されている。
【0046】
交差角xが
−80deg<x≦−55degの場合(エリアQ2)では、
透光性基板21Aの板厚yoの最大値yは、
y=2×10−6+0.0008x+0.1145x
+7.9738x+276.92x+3842.1(mm)……(2)
で求められる。
ここで、交差角xが−80degでは、yは1.1257mmであり、交差角xが−55degでは、yは3.8506mmであるから、エリアQ2の範囲では、
1.1257mm<y≦3.8506mm である。
交差角xが
−55deg<x≦−35degの場合(エリアQ3)では、
透光性基板21Aの板厚yoの最大値yは、
3.7(mm)≦yである。つまり、板厚yoの許容される最大値yは3.7mm以上であるならば、フリーである。
なお、図36(B)には、交差角xが−45degの状態が示されている。
【0047】
交差角xが
−35deg<x≦−15degの場合(エリアQ4)では、
透光性基板21Aの板厚yoの最大値yは、
y=−4×10−5−0.0045x−0.1828x
−3.1831x−18.449 ……(3)
で求められる。
ここで、交差角xが−35degでは、yは3.7030mmであり、交差角xが−15degでは、yは1.2999mmであるから、エリアQ4の範囲では、
3.7030mm<y≦1.2999mm である。
交差角xが
−15deg<x≦+5degの場合(エリアQ5)では、透光性基板21Aの板厚yoの最大値yは、
y=9×10−06x+0.0002x+0.0071x
+0.1786x+2.4607 ……(4)
で求められる。
ここで、交差角xが−15degでは、yは1.2999mmであり、交差角xが+5degでは、yは3.5554mmであるから、エリアQ6の範囲では、1.2999mm<y≦3.5554mm である。
なお、図36(C)には、交差角xが0degの状態が示されている。
交差角xが
+5deg<x≦+10degの場合(エリアQ6)では、
透光性基板21Aの板厚yは
y=−0.5597x+6.3541 ……(5)
で求められる。
ここで、交差角xが+5degでは、yは3.5554mmであり、交差角xが+10degでは、yは0.7566mmであるから、エリアQ6の範囲では、0.7566mm≦y<3.5554mmである。
【0048】
交差角xが
+10deg<x≦+30degの場合(エリアQ7)では、
透光性基板21Aの板厚yは
y=1×10−5−0.0008x−0.0224x−0.2833x
+2.0276 ……(6)
で求められる。
ここで、交差角xが+10degでは、yは0.7566mmであり、交差角xが+30egでは、yは0.7016mmであるから、エリアQ7の範囲では、0.7016mm≦y<0.7566mmである。
交差角xが
+30deg<x≦+35degの場合(エリアQ8)では、
透光性基板21Aの板厚yは
y=0.3878x−10.931 ……(7)
で求められる。
ここで、交差角xが+30degでは、yは0.7016mmであり、交差角xが+35degでは、yは2.6404mmであるから、エリアQ8の範囲では、0.7016mm≦y<2.6404mmである。
【0049】
交差角xが
+35deg<x≦+75degの場合(エリアQ9)では、
透光性基板21Aの板厚yは
y=5×10−9−2×10−6+0.0002x−0.0176x
+0.7441x−16.972x+165.72 ……(8)
で求められる。
ここで、+35degでは、yは2.6404mmであり、交差角xが+70degでは、yは0.6906mmであり、+75degでは、yは0.9520mmであるから、エリアQ9の範囲では0.6906mm≦y≦2.6404mmである。
交差角xが
+75deg<x<+90degの場合(エリアQ10)では、
透光性基板21Aの板厚yは
y=9×10−5−0.0215x+1.6761x−42.176……(9)
で求められる。
ここで、交差角xが+75degでは、yは0.9520mmであり、交差角xが+85degでは、yは0.8284mmであり、交差角xが+90degでは、yは0.8653mmであるから、エリアQ10の範囲では、0.8284mm≦y≦0.9520mmである。
【0050】
以上の構成の第1実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)偏光変換素子2は、偏光分離素子21と反射素子22とを備え、偏光分離素子21は入射光ILに対して所定角度をなすように配置された透光性基板21Aと、この透光性基板21Aの入射側表面に、入射光をP偏光PとS偏光Sとに分離して、P偏光Pを透過させ、S偏光Sを反射する偏光分離部21Bとを備え、反射素子22は、透光性基板21Aと略平行かつ間に空気層を介して配置され、偏光分離部21Bで反射されたS偏光Sを、偏光分離部21Bを透過したP偏光Pの光路と略平行な方向に反射するものである。反射素子22は、複屈折性と旋光性を有する結晶材料からなる反射素子用基板23と、この反射素子用基板23に設けられたミラー24とを有し、反射素子用基板23は、入射したS偏光Sが右に回転する円偏光の光線R1に変換され、この光線R1がミラー24で左に回転する円偏光の光線R2として反射されてP偏光Pとして出射させる1/4波長板23Aを有する。従って、偏光分離部21Bが透光性基板21Aに設けられて構成された偏光分離素子21と、反射素子用基板23にミラー24が設けられた反射素子22とから偏光変換素子2が構成されているので、これらの間に設けられたガラス等の透明部材が不要とされ、軽量かつ構造がコンパクトになる。しかも、反射素子用基板23として、熱伝導率がガラスより高い結晶材料を用いており、反射素子22と偏光分離素子21との間には空気層が形成されているので、従来に比べて放熱効果が高く、耐熱性や長寿命化を図ることができる。そして、反射素子用基板23として1/4波長板23Aを用いているので、入射したS偏光Sが右に回転する円偏光に変換され、この円偏光がミラー24で左に回転する円偏光として反射された後、P偏光Pとして出射するため、偏光分離部21Bで透過されるP偏光Pと揃えられることになって偏光状態の変化をなくすことができる。
【0051】
(2)1/4波長板23Aを1つの反射素子22に対して1枚とし、1/4波長板23Aの法線PLから見た光学軸方位をθとし、1/4波長板23Aの中を進む光線R1に対する光学軸方位をθとし、この光線R1と結晶光学軸POの法線PLとのなす角度をθとし、1/4波長板23Aの屈折率をn、1/4波長板23Aと隣接する空気層の屈折率をnとすると、光学軸方位θを、「θ=atan(tanθ×cosθ)(A1)」「nsinα=nsinθ(A2)」の式から求めたから、1/4波長板23Aが1つの反射素子22あたり1枚からなる場合において、変換効率の良好な偏光変換素子2を簡易に提供することができる。
【0052】
(3)反射素子22のミラー24の一部を構成する板材がガラスではなく水晶板24Aであるため、この点からも、放熱効果が高くなり、耐熱性や長寿命化を一層図ることができる。
(4)透光性基板21Aとして結晶材料を用いているため、この結晶材料がガラスに比べて放熱効果が高いので、耐熱性や長寿命化を図ることができる。
(5)透光性基板21Aとして、複屈折性と旋光性を有する結晶材料を用いているため、偏光状態が変化して偏光変換効率が低下するという恐れがあるが、偏光分離部21Bを透過し透光性基板21Aに入射したP偏光Pをこの偏波面を維持したまま透光性基板21Aの出射側表面から出射する構成としたので、偏光状態の変化をなくすことができ、光学特性を良好なものにできる。
【0053】
(6)透光性基板21Aを、入射光ILに対して略45(deg)あるいは135(deg)として配置したから、偏光分離素子21の偏光分離部21BによってS偏光Sを入射光に対して略直角に反射素子22に向けて反射させることができるので、反射素子22で反射される光S偏光SをP偏光Pと略平行にすることができる。そのため、反射素子22の反射光と偏光分離素子21の透過光とを容易に揃えることができるので、偏光変換素子2を容易に組み立てることができる。
【0054】
(7)透光性基板21Aは水晶から形成されるので、水晶がサファイヤ等の他の結晶材料に比べて安価に入手できるから、偏光変換素子2を安価に提供することができる。
(8)入射光ILの光軸に垂直な平面に透光性基板21Aの結晶光学軸POを投影した投影光学軸とP偏光Pの偏波面とのなす角を方位角θとしたとき、θ=0(deg)としたから、複屈折性による位相差Γの生じない(Γ=0)という条件で、偏光変換効率が高い透光性基板21Aを容易に設定することができる。
【0055】
(9)透光性基板21Aの結晶光学軸POと入射光ILの光軸とのなす角を交差角xとし、透光性基板21Aの結晶光学軸POと入射光ILの光軸との交点に、結晶光学軸POと入射光ILの光軸とを含む平面に垂直な方向にたてた軸を中心軸とし、結晶光学軸POと入射光ILの光軸とを含む平面に垂直な方向から見て、中心軸の反時計周りの方向を正としたとき、交差角xを、−90(deg)≦x≦+90(deg)を満足するように設定した。そのため、偏光分離部21Bを透過し透光性基板21Aに入射したP偏光Pを確実にその偏波面を維持したまま透光性基板21Aの出射側表面から出射させることができる。
【0056】
(10)交差角xと透光性基板21Aの板厚yoの最大値yとを、複数のエリア毎に近似式から求めた。つまり、「−90(deg)≦x≦−80(deg)」の場合に、「y=−0.0058x−0.9672x−38.858(mm)」を満足するようにし、「−80(deg)<x≦−55(deg)」の場合に、「y=2×10−6+0.0008x+0.1145x+7.9738x+276.92x+3842.1(mm)」を満足するようにし、「−35(deg)<x≦−15(deg)」の場合に、「y=−4×10−5−0.0045x−0.1828x−3.1831x−18.449(mm)」を満足するようにし、「−15(deg)<x≦+5(deg)」の場合に、「y=9×10−6+0.0002x+0.0071x+0.1786x+2.4607(mm)」を満足するようにし、「+5(deg)<x≦+10(deg)」の場合に、「y=−0.5597x+6.3541(mm)」を満足するようにし、「+10(deg)<x≦+30(deg)」の場合に、「y=1×10−5−0.0008x−0.0224x−0.2833x+2.0276 (mm)」を満足するようにし、「+30(deg)<x≦+35(deg)」の場合に、「y=0.3878x−10.931(mm)」を満足するようにし、「+35(deg)<x≦+75(deg)」の場合に、「y=5×10−9−2×10−6+0.0002x−0.0176x+0.7441x−16.972x+165.72(mm)」を満足するようにし、「+75(deg)<x<+90(deg)」の場合に、「y=9×10−5−0.0215x+1.6761x−42.176(mm)」を満足するようにした。従って、エリア毎に適正な板厚yoの最大値yを求めることができるので、高い偏光変換効率を得ることで、光学特性を良好なものにできる。
【0057】
(11)交差角xを、−55(deg)<x≦−35(deg)を満足するように、特に、−45(deg)に近づくように設定することで、板厚yoの最大値yにかかわらず、良好な偏光変換効率を得ることができる。
(12)偏光分離部21Bは誘電体多層膜で構成されるから、簡単に偏光分離素子21を製造することができる。
【0058】
(13)単板からなる1/4波長板23Aとして、複屈折性と旋光性を有する無機結晶材料を用いているため、偏光状態が変化して偏光変換効率が低下するという恐れがあるが、設計波長λ、切断角度Z、板厚toの関係が、λ ≦-0.1186×Z + 20.288×Z- 226.56 ・・・(1)、λ ≧ 0.1089×Z - 18.802×Z+ 1265.4 ・・・(2)、to ≦ 3E-06×Z - 0.0003×Z+ 0.0209 ・・・(3)、to ≧ 9E-06×Z - 0.0013×Z+ 0.0626 ・・・(4)の関係を満足するように設定したから、偏光状態の変化をなくすことができ、光学特性を良好なものにできる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態を図37から図41に基づいて説明する。
第2実施形態は1つの反射素子22あたりの1/4波長板23Aの数を2枚にした点に特徴があり、他の構成は第1実施形態と同じである。
図37には本発明の第2実施形態にかかる偏光変換素子の概略が示されている。
図37において、1つの反射素子22において、反射素子用基板23は、積層1/4波長板23Aと、この1/4積層波長板23Aの偏光分離部21Bに対向する側に設けられた反射膜(図示せず)とを備えている。積層1/4波長板23Aは、それぞれ水晶からなる第1位相差板231と第2位相差板232との2枚の位相差板から構成され、第1位相差板231には図示しない反射膜が設けられている。本実施形態では、ミラー24は第2位相差板232に直接形成された反射膜24Bである。
【0060】
1/4積層波長板23Aとして、図38に示される、通称Dタイプ、つまり、それぞれ水晶からなる第1の無機結晶材料231と第2の無機結晶材料232とを貼り合わせてなる積層位相差板や、図39に示される、通称、WB1タイプ、第1の無機結晶材料231と第2の無機結晶材料232とを貼り合わせてなる広域帯の位相差板がある。
図38に示されるDタイプは、第1位相差板231と第2位相差板232との結晶光学軸PO,POが互いに交差するように貼り合わされ、第1位相差板231の位相差をΓ=360°+γ+n×360°(但し、−90°≦γ≦+90°、n:非負整数)、第2位相差板232の位相差をΓ=Γ−90°又は270°とし、かつ、第1位相差板231の結晶光学軸POの方位角をθ01=45°+k、第2位相差板232の結晶光学軸POの方位角をθ02=135°+kとして、出射光の偏光状態が所望の楕円率を満足するように、第1位相差板231の位相差の許容偏差γ、第1位相差板231及び第2位相差板232の光学軸の方位の許容偏差k、kを決定する構成(例えば、特開2010−107912公報)である。
【0061】
図38で示される通称Dタイプの例は、第1位相差板231と第2位相差板232の材料である水晶の屈折率nc1,c2は1.54であり、空気の屈折率nは1.00であり、入射角αは45degであるので、式(A12)式(A21)から、θ01は41.7degとなり、θ02は138.3degとなる。さらに、例1では、第1位相差板231の板厚mを0.055mmとし、波長を520nmとし、位相差を310degとして設計し、第2位相差板232の板厚mを0.041mmとし、波長を520nmとし、位相差を230degとして設計した。
図39に示される通称WB1タイプの例は、第1位相差板231と第2位相差板232とを結晶光学軸PO,POが互いに交差するよう重ね合わせ、第1位相差板231と第2位相差板232のそれぞれの位相差、光学軸方位、旋光能を所定の数式を満たす構成(例えば、特許第4553056号公報)である。
通称WB1タイプの例では、第1位相差板231と第2位相差板232の材料である水晶の屈折率nc1,c2は1.54であり、空気の屈折率nは1.00であり、入射角αは45degであるので、式(A12)式(A21)から、θ01は20.2degとなり、θ02は90degとなる。さらに、例2では、第1位相差板231の板厚mを0.031mmとし、波長を520nmとし、位相差を160degとして設計し、第2位相差板232の板厚mを0.013mmとし、波長を520nmとし、位相差を80degとして設計した。
【0062】
これらの図38と図39で示される例では、第1位相差板231の光学軸方位θ01と、第2位相差板232の光学軸方位θ02とは次の式から求められる。
つまり、第1位相差板231の中を進む光線に対する光学軸方位をθ11とし、光線と結晶光学軸POの法線とのなす角度をθ21とし、第1位相差板231の屈折率をnc1、空気層の屈折率をnとすると、
第1位相差板231の光学軸方位θ01
θ01=atan(tanθ11×cosθ21) (A11)
sinα=nc1sinθ21 (A21)
の式から求められる。
同様に、第2位相差板232の中を進む光線に対する光学軸方位をθ12とし、光線と結晶光学軸POの法線とのなす角度をθ22とし、第2位相差板231の屈折率をnc2、第2位相差板231と隣接する第1位相差板231の屈折率をnc1とすると、
第2位相差板232の光学軸方位θ02
θ02=atan(tanθ12×cosθ22) (A12)
C1sinα=nc2sinθ22 (A22)
の式から求められる。
【0063】
図38で示される通称Dタイプの例では、1/4波長板23Aへの入射角度は45(deg)を中心とし、当該中心から±10(deg)度の範囲の角度で傾いた場合、5(deg)ステップで入射角度を変化させたときの偏光変換効率をシミュレーションにより分析し、所定の波長帯域の偏光変換効率を当該波長帯域で平均化したとき、その平均した偏光変換効率における透過損失を平均で評価した。即ち、本実施形態に係る偏光変換素子を投射型映像装置に搭載したときの透過特性を、
M:500〜600nm帯域では、透過損失を10%以内、
N:400〜700nm帯域では、透過損失を20%以内
という規格に設定し、これらの2つのM,Nの規格を満足するように設計条件を設定する。
Dタイプでは、次の条件(B)を満たすことが条件とされる。
条件(B):設計波長をλ、1/4波長板23Aの板厚をto、1/4波長板23Aを構成する無機結晶材料の切断角度をZとしたとき、設計波長λ、切断角度Z、板厚toの関係が、式(5)(6)(7)(8)を満足する。
λ ≦-10.899×Z + 1959.9×Z- 87469 ・・・(5)
λ ≧ 6.4048×Z - 1154.5×Z+ 52476 ・・・(6)
to ≦ -0.0142×Z + 2.5613×Z- 114.36 ・・・(7)
to ≧ 0.0088×Z - 1.594×Z+ 72.352 ・・・(8)
ここで、前記板厚toは、前記第1の無機結晶材料231と前記第2の無機結晶材料232とを貼り合わせてなる位相差板の板厚で定義されている。即ち、前記第1の無機結晶材料231の板厚m1と前記第2の無機結晶材料232の板厚m2との合計の板厚となっている。
式(5)(6)は設計波長λと切断角度Zとの関係を示すものであり、このうち、式(5)は上限の関係式であり、式(6)は下限の関係式である。また、式(7)(8)は切断角度Zと板厚toとの関係を示すものであり、このうち、式(7)は上限の関係式であり、式(8)は下限の関係式である。
表3は偏光変換効率をシミュレーションにより分析した結果であり、切断角度Zと設計波長λとの関係と切断角度Zと板厚toとの関係が示されている。切断角度Zと設計波長λとの関係が図40(A)にも示され、切断角度Zと板厚toとの関係が図40(B)にも示されている。
【0064】
【表3】

【0065】
表3及び図40(A)(B)から、透過特性を満足させるための設計波長λと切断角度Zの範囲は、
455≦λ≦640(nm)
87≦Z≦93(deg)
である。
設計波長λと切断角度Zの関係が、上限の関係式である式(7)と、下限の関係式である式(8)とを満足するように設計すれば、前述の透過特性(透過損失)の規格M,Nを満足させることができる。
【0066】
図39で示される通称WB1タイプの例では、1/4波長板23Aへの入射角度は45(deg)を中心とし、当該中心から±10(deg)度の範囲の角度で傾いた場合、5(deg)ステップで入射角度を変化させたときの偏光変換効率をシミュレーションにより分析し、所定の波長帯域の偏光変換効率を当該波長帯域で平均化したとき、その平均した偏光変換効率における透過損失を平均で評価した。即ち、本実施形態に係る偏光変換素子を投射型映像装置に搭載したときの透過特性を、
M:500〜600nm帯域では、透過損失を10%以内、
N:400〜700nm帯域では、透過損失を20%以内
という規格に設定し、これらの2つのM,Nの規格を満足するように設計条件を設定する。
WB1タイプでは、次の条件(C)を満たすことが条件とされる。
条件(C):設計波長をλ、1/4波長板23Aの板厚をto、1/4波長板23Aを構成する無機結晶材料の切断角度をZとしたとき、設計波長λ、切断角度Z、板厚toの関係が、式(9)(10)(11)(12)を満足する。
λ ≦-0.0488×Z + 5.8238×Z+ 552.71 ・・・(9)
λ ≧ 0.0149×Z -0.281×Z+ 290.79 ・・(10)
to ≦ 2E-05×Z - 0.0024×Z+ 0.1453 ・・(11)
to ≧ 1E-05×Z - 0.0018×Z+ 0.0824 ・・・(12)
ここで、前記板厚toは、前記第1の無機結晶材料231と前記第2の無機結晶材料232とを貼り合わせてなる位相差板の板厚で定義されている。即ち、前記第1の無機結晶材料231の板厚m1と前記第2の無機結晶材料232の板厚m2との合計の板厚となっている。
式(9)(10)は設計波長λと切断角度Zとの関係を示すものであり、このうち、式(9)は上限の関係式であり、式(10)は下限の関係式である。また、式(11)(12)は切断角度Zと板厚toとの関係を示すものであり、このうち、式(11)は上限の関係式であり、式(12)は下限の関係式である。
表4は偏光変換効率をシミュレーションにより分析した結果であり、切断角度Zと設計波長λとの関係と切断角度Zと板厚toとの関係が示されている。切断角度Zと設計波長λとの関係が図41(A)にも示され、切断角度Zと板厚toとの関係が図41(B)にも示されている。
【0067】
【表4】

【0068】
表4及び図41(A)(B)から、透過特性を満足させるための設計波長λと切断角度Zの範囲は、
315≦λ≦725(nm)
50≦Z≦110(deg)
である。
設計波長λと切断角度Zの関係が、上限の関係式である式(11)と、下限の関係式である式(12)とを満足するように設計すれば、前述の透過特性(透過損失)の規格M,Nを満足させることができる。
【0069】
図42には、以上の通り、通称Dタイプの例の積層1/4波長板23Aの偏光変換効率が示されている。図42では、横軸に波長が示され、縦軸に偏光変換効率が示されており、入射角αを35deg、40deg、45deg、50deg、55degとしてS偏光Sを積層1/4波長板23Aに入射させ、積層1/4波長板23Aから出射されたP偏光Pの偏光変換効率が示されている。これらの入射角αにおいて、偏光変換効率に大きな相違がなく、図42では、太く図示した曲線Lに35degから55degまでの入射角αでのデータが含まれる。図42で示される通り、偏光変換効率は波長が400nmから700nmまで0.7以上という値を示し、特に、波長が450nmから650nmまでは0.9以上という高い値を示す。
【0070】
図43には、以上の通り、通称WB1タイプの例の積層1/4波長板23Aの偏光変換効率が示されている。図43では、横軸に波長が示され、縦軸に偏光変換効率が示されており、入射角αを35deg、40deg、45deg、50deg、55degとしてS偏光Sを1/4波長板23Aに入射させ、1/4波長板23Aから出射されたP偏光Pの偏光変換効率が示されている。図43において、符号L35は入射角αが35degの場合であり、L40は入射角αが40degの場合であり、L45は入射角αが45degの場合であり、L50は入射角αが50degの場合であり、L55は入射角αが55degの場合である。
図43で示される通り、偏光変換効率は波長が400nmから700nmまで0.7以上という値を示し、特に、波長が450nmから700nmまでは0.9以上という高い値を示す。
【0071】
従って、第2実施形態では、第1実施形態の(1)(4)〜(12)と同様の作用効果を奏する他、次の作用効果を奏することができる。
(14)反射素子用基板23を第1位相差板231と第2位相差板232との2枚組とし、法線PLから見た第1位相差板231の光学軸方位をθ01とし、第1位相差板231の中を進む光線R1に対する光学軸方位をθ11とし、この光線R1と結晶光学軸POの法線とのなす角度をθ21とし、第1位相差板231の屈折率をnc1、空気層の屈折率をnとすると、第1位相差板231の光学軸方位θ01を、θ01=atan(tanθ11×cosθ21)(A11)、nsinα=nc1sinθ21(A21)の式から求める。そして、法線PLから見た第2位相差板232の光学軸方位をθ02とし、第2位相差板232の中を進む光線R1に対する光学軸方位をθ12とし、この光線R2と結晶光学軸POの法線PLとのなす角度をθ22とし、第2位相差板232の屈折率をnc2、第1位相差板231の屈折率をnc1とすると、第2位相差板232の光学軸方位θ02を、θ02=atan(tanθ12×cosθ22)(A12)、nC1sinα=nc2sinθ22(A22)の式から求める。そのため、反射素子用基板23が2枚の位相差板231,232からなる場合において、変換効率の良好な偏光変換素子を簡易に提供することができる。
(15)反射素子22を第2位相差板232に直接設けられた反射膜24Bから構成したから、水晶板24Aが不要となり、第1実施形態に比べて、偏光変換ユニットの軽量化を図ることができる。
【0072】
(16)通称Dタイプの積層型の1/4波長板23Aとして、複屈折性と旋光性を有する無機結晶材料を用いているため、偏光状態が変化して偏光変換効率が低下するという恐れがあるが、設計波長λ、切断角度Z、板厚toの関係が、λ ≦-10.899×Z + 1959.9×Z- 87469 ・・・(5)、λ ≧ 6.4048×Z - 1154.5×Z+ 52476 ・・・(6)、to ≦ -0.0142×Z + 2.5613×Z- 114.36 ・・・(7)、to ≧ 0.0088×Z - 1.594×Z+ 72.352 ・・・(8)の関係を満足するように設定したから、偏光状態の変化をなくすことができ、光学特性を良好なものにできる。
(17)通称WB1タイプの広帯域の1/4波長板23Aとして、複屈折性と旋光性を有する無機結晶材料を用いているため、偏光状態が変化して偏光変換効率が低下するという恐れがあるが、設計波長λ、切断角度Z、板厚toの関係が、λ ≦-0.0488×Z + 5.8238×Z+ 552.71 ・・・(9)、λ ≧ 0.0149×Z -0.281×Z+ 290.79 ・・(10)、to ≦ 2E-05×Z - 0.0024×Z+ 0.1453 ・・(11)、to ≧ 1E-05×Z - 0.0018×Z+ 0.0824 ・・・(12)の関係を満足するように設定したから、偏光状態の変化をなくすことができ、光学特性を良好なものにできる。
【0073】
次に、本発明の第3実施形態を図44に基づいて説明する。
第3実施形態は反射素子の構造が第1実施形態と異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。
図44には第3実施形態にかかる偏光変換素子の概略が示されている。
図44において、第3実施形態では、1/4波長板23Aの両面に設けられた反射防止部23Bのうち入射光が入射する面とは反対側の面に設けられた反射防止部23Bに代えて反射膜24Bを設けたものである。つまり、第3実施形態では、反射素子22を1/4波長板23Aに直接設けられた反射膜24Bから構成した。
従って、第3実施形態では、第1実施形態の(1)〜(13)の効果と、第2実施形態の(14)〜(17)の効果とを奏することができる。
【0074】
次に、本発明の第4実施形態を図45から図48に基づいて説明する。
第4実施形態は偏光変換ユニット4を投影型映像装置である液晶プロジェクター100に設けた例であり、第3実施形態の偏光変換ユニット1とは保持部材5の構造が異なる。
図45は液晶プロジェクターの概略構成を示す。
図45において、液晶プロジェクター100は、インテグレーター照明光学系110と、色分離光学系120と、リレー光学系130と、光源から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置140と、光変調装置140で変調された光を拡大投射する投写光学装置150とを備える。
インテグレーター照明光学系110は、後述する3枚の透過型液晶パネル141R,141G,141Bの画像形成領域をほぼ均一に照明するための光学系であり、光源装置111と、第1レンズアレイ112と、偏光変換装置200と、重畳レンズ113とを備える。
【0075】
光源装置111は、光源ランプ114から射出された輻射状の光線をリフレクター115で反射して略平行光線とし、この略平行光線を外部へと射出する。
偏光変換装置200は、第2レンズアレイ210と、遮光板220と、偏光変換ユニット4とを備える。
色分離光学系120は、2枚のダイクロイックミラー121,122と、反射ミラー123とを備え、ダイクロイックミラー121、122によりインテグレーター照明光学系110から射出された複数の光を赤、緑、青の3色の色光に分離する。ダイクロイックミラー121で分離された青色光は、反射ミラー123によって反射され、フィールドレンズ142を通って、青色用の透過型液晶パネル141Bに到達する。
ダイクロイックミラー121を透過した赤色光と緑色光のうちで、緑色光は、ダイクロイックミラー122によって反射され、フィールドレンズ142を通って、緑色用の透過型液晶パネル141Gに到達する。
リレー光学系130は、入射側レンズ131と、リレーレンズ133と、反射ミラー132、134とを備える。色分離光学系120で分離された赤色光は、ダイクロイックミラー122を透過して、リレー光学系130を通り、さらにフィールドレンズ142を通って、赤色光用の透過型液晶パネル141Rに到達する。
光変調装置140は、透過型液晶パネル141R,141G,141Bと、クロスダイクロイックプリズム143とを備える。このクロスダイクロイックプリズム143は、色光毎に変調された光学像を合成してカラーの光学像を形成するものである。
【0076】
偏光変換ユニット4は、偏光変換素子2と、この偏光変換素子2を保持する保持部材5とを備える。
保持部材5の具体的な構造が図46から図48に示されている。
図46は保持部材5の斜視図、図47(A)は保持部材5の平面図、図47(B)は保持部材5の断面図である。
これらの図において、保持部材5は、偏光分離素子21の両端部と反射素子22の両端部とを、それぞれ保持する一対の保持板51と、これらの一対の保持板51の両端部をそれぞれ連結する一対の連結板52とを有する構造である。これらの保持板51及び連結板52は合成樹脂から一体に平面矩形の枠状に形成されている。
一対の保持板51の互いに対向する部分には、偏光分離素子21と反射素子22とをそれぞれ案内するガイド溝51Aが複数対形成されている。これらのガイド溝51Aは、その長手方向が入射光に対して45degまたは135degとなるように形成されている。
【0077】
なお、図46及び図47において、ガイド溝51Aは、偏光分離素子21を収納するために4対が図示され、反射素子22を収納するために2対が図示されているが、これは、ガイド溝51Aの構成をわかりやすく図示するために拡大図示したためであり、実際は、図45に示される偏光変換素子2に合わせて、2枚の偏光分離素子21を収納するために2対が設けられ、2枚の反射素子22を収納するために2対が設けられる構造である。ただし、ガイド溝51Aの数は前述のものに限定されるものではなく、実際に設けられる偏光分離素子21や反射素子22の数に対応する。
【0078】
図48は保持部材5の一部の分解斜視図である。図48において、ガイド溝51Aは、一端部が保持板51の一側面に開口され、他端部が偏光分離素子21や反射素子22の端部が突き当たるように段差が形成されている。ガイド溝51Aは、その幅寸法が偏光分離素子21や反射素子22の幅寸法と同じあるいはやや大きく形成され、その長さ寸法が偏光分離素子21や反射素子22の長さ寸法と同じあるいはやや大きく形成されている。
【0079】
従って、第4実施形態では、第3実施形態の(1)〜(17)までの作用効果と同様の作用効果を奏することができる他に、次の作用効果を奏することができる。
(18)光源装置111からの光をP偏光Pに変換して出射する偏光変換素子2を有する偏光変換ユニット4と、偏光変換素子2からの出射光を画像情報に応じて変調する光変調装置140と、この光変調装置140により変調された光を投写する投写光学装置150とを備えて液晶プロジェクター100を構成したから、偏光変換素子2の偏光変換効率が高いことに伴って液晶プロジェクター100の投影精度を高いものにできる。
【0080】
(19)光変調装置140は、透過型液晶パネル141R,141G,141Bを備えて構成されるので、この点からも、投影精度の高い液晶プロジェクター100を提供することができる。
(20)偏光変換ユニット4は、偏光変換素子2を保持する保持部材5を備え、この保持部材5は、偏光分離素子21の両端部と反射素子22の両端部とをそれぞれ保持する一対の保持板51と、これらの一対の保持板51の両端部をそれぞれ連結する一対の連結板52とを有する構造であるため、偏光分離素子21及び反射素子22を保持部材にコンパクトに収納することができ、取り扱いが便利となる。
【0081】
(21)一対の保持板51と一対の連結板52とが一体に形成されているので、射出成形等の適宜な手段によって、保持部材5を容易に製造することができる。
(22)一対の保持板51の互いに対向する部分には偏光分離素子21と反射素子22とをそれぞれ案内するガイド溝51Aが形成され、これらのガイド溝は一対の保持板51の一側面にそれぞれ開口されているので、偏光分離素子21と反射素子22とをそれぞれガイド溝51Aに沿って差し込むだけで偏光変換ユニット4が組み立てられることになり、組立作業が容易となる。
【0082】
次に、本発明の第5実施形態を図49及び図50に基づいて説明する。
第5実施形態は保持部材の構造が第4実施形態とは異なるもので、他の構成は第4実施形態と同じである。
図49は第5実施形態にかかる偏光変換ユニットを示す斜視図であり、図50は保持部材の一部を示す分解斜視図である。
これらの図において、偏光変換ユニット6は第3実施形態と同じ構造の偏光変換素子2と、この偏光変換素子2を保持する保持部材7とを備える。
保持部材7は、一対の保持板71と、一対の保持板71の端部に設けられた一対の連結板72とを備え、一対の保持板71と一対の連結板72とは別体に形成されている。
【0083】
一対の保持板71は合成樹脂から形成された板状であり、その互いに対向する部分には、偏光分離素子21と反射素子22との端部をそれぞれガイドするガイド溝71Aが複数対形成されている。これらのガイド溝71Aは、その長手方向が入射光に対して45degまたは135degとなるように形成されている。そして、ガイド溝71Aは、平面が矩形状とされた凹部である。
なお、図49において、ガイド溝71Aは、合計6対が図示されているが、実際には、偏光変換素子2に合わせて、4枚の偏光分離素子21を収納するために4対が設けられ、4枚の反射素子22を収納するために4対が設けられる構造である。
【0084】
一対の連結板72は、長尺状の板材721と、この板材721に連結され一対の保持板71を互いに向き合う方向に付勢する係合片722とを有する。
これらの板材721と係合片722とは弾性を有する材料、例えば、金属、合成樹脂等から一体に形成されている。係合片722は板材721に対して折り曲げて形成されており、その中央部分に保持板71に形成された凹部71Bに係合する凸状の抑え部722Aが形成されている。凸状の抑え部722Aと凹部71Bとは保持板71の長手方向と直交する方向に延びて形成されている。
【0085】
従って、第5実施形態では、第3実施形態の作用効果と同様の作用効果と、第4実施形態のの作用効果と同様の作用効果を奏することができる他に、次の作用効果を奏することができる。
(23)保持部材7は、一対の保持板71と、一対の保持板71の端部に設けられた一対の連結板72とを備え、一対の連結板72は、長尺状の板材721と、この板材721に連結され一対の保持板71を互いに向き合う方向に付勢する係合片722とを有する。そのため、一対の連結板72によって、一対の保持板71を互いに近接する方向に付勢するので、偏光分離素子21と反射素子22とを確実に保持部材7で保持することができるから、偏光分離素子21や反射素子22が保持部材7から誤って脱落することがない。
【0086】
(24)係合片722は保持板71に形成された凹部71Bに係合する抑え部722Aを有するので、連結板72が保持板71の長手方向にずれて外れることがない。そのため、保持板71から連結板72が誤って外れることを防止できる。
(25)保持板71に形成され偏光分離素子21や反射素子22の端部が保持されるガイド溝71Aは、平面が矩形状とされた凹部であるため、保持板71の平面内での偏光分離素子21や反射素子22の移動が規制される。そのため、この点からも、偏光分離素子21や反射素子22が保持部材7から誤って脱落することがない。
【0087】
次に、本発明の第6実施形態を図51に基づいて説明する。
第6実施形態は偏光分離素子の構成が第1実施形態と異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。
図51は第5実施形態にかかる偏光分離素子21の偏光分離部210Bの斜視図である。図51において、偏光分離素子21の偏光分離部210Bは誘電基板21Dによって支持される多数の平行な金属ワイヤーからなる導電電極21Eから形成される。導電電極21Eは、そのピッチまたは周期がPであり、個別の導体の幅がWであり、その厚さがtである。入射光ILは、垂線からの角度Rで偏光分離素子21に入射する。入射光ILは、S偏光Sとして反射し、回折されないで、P偏光Pとして透過される。ここで、周期P、幅W、厚さtは、使用する光の周波数領域、その他条件により設定される。
【0088】
従って、第6実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(26)偏光分離素子21の偏光分離部210Bを金属ワイヤーグリッドで構成したから、簡単に偏光変換素子を製造することができる。
【0089】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的および効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。
例えば、前記実施形態では、偏光分離素子21及び反射素子22の両面に反射防止部21C,22Bを設けたが、本発明では、必ずしも反射防止部21C,22Bを設けることを要しない。しかし、前記各実施形態のように、反射防止部21C,22Bを設ければ、偏光分離素子21及び反射素子22を透過する光の量が多くなる。
さらに、第2実施形態では、第1位相差板231と第2位相差板232とを積層した構成としたが、本発明では、図52に示される通り、第1位相差板231と第2位相差板232とを離隔配置し、かつ、第1位相差板231の両面と第2位相差板232の片面とに反射防止部23Bを形成するものでもよい。
【0090】
また、偏光変換素子を液晶プロジェクターに用いたが、本発明では、液晶プロジェクター以外の投射装置に利用することができる。
さらに、反射素子22は必ずしも水晶を用いることを要せず、水晶に代えてガラスを用いてもよい。そして、偏光分離素子21では、透光性基板21Aに水晶を必ずしも用いることを要せず、水晶に代えてサファイヤ等の複屈折性と旋光性を有する結晶材料を用いてもよい。
さらに、前記実施形態では、偏光分離素子21を入射光ILに対して略45(deg)あるいは135(deg)としたが、本発明では、これに限定されるものではなく、例えば、60(deg)や120(deg)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、液晶プロジェクター、その他の投写型映像装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,4,6…偏光変換ユニット、2…偏光変換素子、3,5,7…保持部材、21…偏光分離素子、21A…透光性基板、21B…偏光分離部、22…反射素子、23…反射素子用基板、23A…1/4波長板、23B…反射防止部、231…第1位相差板、232…第2位相差板、24…ミラー、24A…水晶板、24B…反射膜、51,71…保持板、51A,71A…ガイド溝、52,72…連結板、100…液晶プロジェクター(投写型映像装置)、111…光源装置、140…光変調装置(光変調手段)、141R,141G,141B…透過型液晶パネル、150…投写光学装置(投写光学系)、210B…偏光分離部、722…係合片、722A…抑え部、IL…入射光、OL…出射光、PO…結晶光学軸、P…P偏光(第1の直線偏光)、S…S偏光(第2の直線偏光)、x…交差軸、q…切断角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に対して所定角度をなすように配置された透光性基板と、
当該透光性基板の入射側表面に、入射光を互いに直交する第1の直線偏光と第2の直線偏光とに分離して、前記第1の直線偏光を透過させ、第2の直線偏光を反射する偏光分離部と、
前記透光性基板と略平行かつ間に空気層を介して配置され、前記偏光分離部で反射された前記第2の直線偏光を、前記偏光分離部を透過した前記第1の直線偏光の光路と略平行な方向に反射する反射素子と、
を有し、
前記反射素子は、
複屈折性と旋光性を有する結晶材料からなる反射素子用基板と、
当該反射素子用基板に設けられたミラーと、
を有し、
前記反射素子用基板は、
入射した前記第2の直線偏光を第1の円偏光に変換し、
当該第1の円偏光を前記ミラーで逆回転の第2の円偏光として反射し、
当該第2の円偏光を第1の直線偏光に変換して出射する波長板であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載された偏光変換素子において、
前記反射素子用基板は1枚の位相差板で構成され、
前記反射素子用基板の法線から見た光学軸方位をθとし、
前記反射素子用基板の中を進む光線に対する光学軸方位をθとし、
前記光線の光路と結晶光学軸の法線とのなす角度をθとし、
前記反射素子用基板の屈折率をn、前記反射素子用基板と隣接する層の屈折率をnとすると、光学軸方位θ
θ=atan(tanθ×cosθ) (A1)
sinα=nsinθ (A2)
の式から求めることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項3】
請求項1に記載された偏光変換素子において、
前記反射素子用基板を第1位相差板と第2位相差板との2枚の位相差板とし、
前記反射素子用基板の法線から見た前記第1位相差板の光学軸方位をθ01とし、前記第1位相差板の中を進む光線に対する光学軸方位をθ11とし、この光線と結晶光学軸の法線とのなす角度をθ21とし、前記第1位相差板の屈折率をnc1、前記第1位相差板と隣接する層の屈折率をnとすると、前記第1位相差板の光学軸方位θ01
θ01=atan(tanθ11×cosθ21) (A11)
sinα=nc1sinθ21 (A21)
の式から求め、
前記反射素子用基板の法線から見た前記第2位相差板の光学軸方位をθ02とし、前記第2位相差板の中を進む光線に対する光学軸方位をθ12とし、この光線と結晶光学軸の法線とのなす角度をθ22とし、前記第2位相差板の屈折率をnc2、前記第2位相差板と隣接する前記第1位相差板の屈折率をnc1とすると、前記第2位相差板の光学軸方位θ02
θ02=atan(tanθ12×cosθ22) (A12)
C1sinα=nc2sinθ22 (A22)
の式から求めることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された偏光変換素子において、
前記透光性基板は、複屈折性と旋光性を有する結晶材料からなり、
前記偏光分離部を透過し前記透光性基板に入射した前記第1の直線偏光は、この第1の直線偏光の偏波面を維持したまま前記透光性基板の出射側表面から出射することを特徴とする偏光変換素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された偏光変換素子において、
前記所定角度は略45(deg)あるいは135(deg)であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された偏光変換素子において、
前記結晶材料が水晶であることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載された偏光変換素子と、この偏光変換素子を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、前記反射素子用基板の両端部と前記透光性基板の両端部とをそれぞれ保持する一対の保持板と、
当該一対の保持板の両端部をそれぞれ連結する一対の連結板と、を有することを特徴とする偏光変換ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載された偏光変換ユニットにおいて、
前記一対の保持板と前記一対の連結板とは一体に形成され、
前記一対の保持板の互いに対向する部分には前記透光性基板と前記反射素子用基板とをそれぞれ案内するガイド溝が設けられ、
前記ガイド溝は前記一対の保持板の一側面にそれぞれ開口されていることを特徴とする偏光変換ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載された偏光変換ユニットにおいて、
前記一対の保持板と前記一対の連結板とは別体に形成され、
前記一対の連結板は前記一対の保持板を互いに向き合う方向に付勢する係合片を有することを特徴とする偏光変換ユニット。
【請求項10】
光源と、
前記光源からの光を前記第2の直線偏光に変換して出射する偏光変換素子と、
前記偏光変換素子からの出射光を、投写しようとする画像情報に応じて変調する光変調手段と、
前記光変調手段により変調された光を投写する投写光学系と、
を有し、
前記偏光変換素子が請求項1から請求項6のいずれかに記載の偏光変換素子であることを特徴とする投写型映像装置。
【請求項11】
請求項10に記載された投射型映像装置において、
前記光変調手段は液晶パネルであることを特徴とする投写型映像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2012−255821(P2012−255821A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127302(P2011−127302)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】