説明

偏光変換素子及び偏光変換素子の製造方法

【課題】誘電体膜を備えることなく、円偏光をラジアル偏光に変換することができる偏光変換素子及び生産性のよい偏光変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】右円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子であって、両主面が二等辺三角形となっている三角柱形状となっている複数の1/4波長板と、を備え、1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とし、1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とし、1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺としたとき、出射側から見た場合、1/4波長板の光学軸が頂点から底辺に引いた垂線を
時計回りに45°面内回転された位置に設けられており、前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面同士が接合され、両主面が正多角形となっている正多角柱形状に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光をラジアル偏光に変換させる偏光変換素子及び円偏光をラジアル偏光に変換させる偏光変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光をラジアル偏光に変換させる偏光変換素子は、例えば、レーザ照射装置や顕微鏡等の光学機器に用いられる。
【0003】
ここで、偏光変換素子は、入射光の偏光状態を変換し出射させることができる光学部品素子である。
また、円偏光とは、電気ベクトルが円を描いている様な状態の光である。
また、電気ベクトルとは、光が進む方向に対して垂直に振動する横波の振動方向である。
また、ラジアル偏光とは、図3に示すように、放射状の電気ベクトルを備えた直線偏光になっている光である。従って、ラジアル偏光の電気ベクトルは、複数存在しており、放射状に沿って平行となっている。
また、直線偏光とは、電気ベクトルが一定となっている光とする。
【0004】
レーザ照射装置や顕微鏡等の光学機器では、一般的に、光源から出射された光がワークに照射される構造となっている。
【0005】
ワークにラジアル偏光が照射されると、レーザ照射装置では加工精度を向上させることができ、顕微鏡等の光学機器では測定感度を向上させることができる。
このため、レーザ照射装置や顕微鏡等の光学機器では、ワークにラジアル偏光を照射することができる構造となっている。
【0006】
しかしながら、前述したレーザ照射装置又は顕微鏡等の光学機器で用いられる光源は、直線偏光が出射されるものが一般的である。
【0007】
レーザ照射装置は、例えば、光源と1/4波長板と偏光変換素子を備えている。
【0008】
光源は、例えば、レーザ発振器が用いられ、直線偏光が出射される。
【0009】
1/4波長板は、主面が光学軸に平行となっており、光学軸と45°の角度を成す電気ベクトルを備えた直線偏光が入射されると円偏光が出射される。
また、1/4波長板は、光源から出射された直線偏光の電気ベクトルと1/4波長板の光学軸とが45°の角度を成すように1/4波長板が設けられる。
従って、1/4波長板は、光源から出射された直線偏光を円偏光に変換する役割を果たす。
【0010】
一般的に、1/4波長板は、1/4波長板の光学軸と45°の角度を成す電気ベクトルを備えた直線偏光が入射されると、円偏光が出射される。このとき、入射される直線偏光の電気ベクトルが出射される面からみたときに時計回りに面内回転された位置に光学軸がある場合、円偏光は、左回転となる。また、入射される直線偏光の電気ベクトルが出射される面からみたときに反時計回りに面内回転された位置に光学軸がある場合、円偏光は、右回転となる。
また、1/4波長板は、円偏光が1/4波長板の光学軸に平行な面に入射されると、光学軸と45°の角度を成す電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。このとき、右回転の円偏光が入射されると出射される直線偏光の電気ベクトルは、出射される面からみたときに光学軸を時計回りに45°回転させた位置となっている。また、左回転の円偏光が入射されると出射される直線偏光の電気ベクトルは、出射される面からみたときに光学軸を反時計回りに45°回転させた位置となっている。
【0011】
偏光変換素子は、例えば、アキシコンレンズと誘電体膜とを備えている。
【0012】
アキシコンレンズは、円錐形状となっている透明部材である。
また、アキシコンレンズは、例えば、断面を見た場合、円錐形状の頂点から円錐形状の底面に引いた垂線に対し、円錐の円錐面が45°となっている。
【0013】
誘電体膜は、アキシコンレンズの円錐面に成膜され設けられている。
従って、誘電体膜は、断面を見た場合、その主面が円錐形状の頂点から円錐形状の底面に垂直に引いた線に対し45°となっている。
【0014】
偏光変換素子では、アキシコンレンズの円錐形状の頂点側からアキシコンレンズの円錐形状の底面側に向かって円偏光が入射されると、アキシコンレンズの円錐の底面からラジアル偏光が出射される(例えば、特許文献1参照)。
【0015】
一般的に、誘電体膜を備えている偏光変換素子の製造方法は、誘電体膜を成膜する誘電体膜成膜工程を備えている。
誘電体膜成膜工程は、例えば、蒸着装置が用いられ、光が透過される透明基板の一方の主面に、透明基板の一方の主面に対して誘電体膜が斜めに成膜される工程である。このとき、透明基板は、矩形形状の平板状となっている。
【0016】
ここで、透明基板の一方の主面に対して誘電体膜が斜めに成膜されている状態とは、誘電体膜の膜厚が均一となっておらず、透明基板の一方の主面の所定の一つの辺から前記所定の一つの辺に対向する辺に向かうにつれて膜厚が厚くなっている状態である。
【0017】
誘電体膜形成工程で成膜された誘電体膜は、透明基板の一方の主面に対し所定の角度で円偏光を入射すると、円偏光が誘電体膜に対し所定の角度で入射されることとなり、直線偏光が出射される(例えば、特許文献2参照)。
【0018】
従って、前述したような、偏光変換素子は、円錐形状のアキシコンレンズの円錐面に誘電体膜が成膜されて形成されており、アキシコンレンズの円錐形状の頂点側から円偏光を入射するとき円偏光が誘電体膜に対し所定の角度で入射されることとなるので、円偏光がアキシコンレンズの円錐形状の頂点から入射されるとラジアル偏光となって出射される。
【0019】
偏光変換素子がレーザ照射装置に用いられている場合について説明したが、例えば、顕微鏡等の光学機器にも用いられている。
顕微鏡等の光学機器は、例えば、第二高調波顕微鏡、レーザ蛍光顕微鏡、ラマン顕微鏡、近接場顕微鏡がある。
また、顕微鏡等の光学機器は、例えば、光源から直線偏光が出射され、ラジアル偏光に変換され、ワークにラジアル偏光が照射される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2010−134328号公報
【特許文献2】特公平7−3486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、従来の偏光変換素子によれば、円錐形状のアキシコンレンズとアキシコンレンズの円錐面に成膜されている誘電体膜とから構成されており、アキシコンレンズの円錐形状の頂点から円偏光を入射するとき、円錐面に成膜されている誘電体膜と円偏光とが所定の角度を成す構造となっているので、誘電体膜の膜厚が均一でない場合、電気ベクトルが一定でない光が放射状に出射され、ラジアル偏光が出射されない恐れがある。
つまり、従来の偏光変換素子によれば、アキシコンレンズの円錐形状の頂点に円偏光が入射されても、ラジアル偏光が出射されない恐れがある。
【0022】
また、従来の偏光変換素子の製造方法によれば、円錐形状のアキシコンレンズの円錐面に誘電体膜を成膜しているので、アキシコンレンズの円錐面に膜厚が均一な誘電体膜を成膜することができない恐れがある。
このため、従来の偏光変換素子の製造方法によれば、円偏光を所定の角度で誘電体膜に入射させることができない構造となり、円偏光をラジアル偏光に変換することができないといった不良が発生し、生産性が悪化する恐れがある。
【0023】
そこで、本発明は、誘電体膜を備えることなく、円偏光をラジアル偏光に変換することができる偏光変換素子及び生産性のよい偏光変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記課題を解決するため、右回転の円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子であって、両主面が二等辺三角形となっている三角柱形状となっている複数の1/4波長板を備え、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺としたとき、出射側から見た場合、前記1/4波長板の光学軸が前記頂点から前記底辺に引いた垂線を時計回りに45°面内回転された位置に設けられており、前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面同士が接合され、両主面が正多角形となっている正多角柱形状に形成されていることを特徴とする。
【0025】
また、前記課題を解決するため、左回転の円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子であって、両主面が二等辺三角形となっている三角柱形状となっている複数の1/4波長板を備え、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺としたとき、出射側から見た場合、前記1/4波長板の光学軸が前記頂点から前記底辺に引いた垂線を反時計回りに45°面内回転された位置に設けられており、前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面同士が接合され、両主面が正多角形となっている正多角柱形状に形成されていることを特徴とする。
【0026】
また、前記課題を解決するため、円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子の製造方法であって、両主面が光学軸に平行でかつ二等辺三角形となっている三角柱形状となる1/4波長板となる部分が設けられている1/4波長板ウエハを切断し複数の1/4波長板を形成する1/4波長板形成工程と、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺とするとき、前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面を接合する1/4波長板接合工程と、を備え、前記1/4波長板形成工程で、それぞれの1/4波長板の光学軸が出射側から見たとき垂線を時計回り又は反時計回りに45°面内回転させた位置になるように1/4波長板が形成されており、
前記1/4波長板接合工程で接合された1/4波長板が正多角柱形状となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
このような偏光変換素子によれば、両主面が二等辺三角形となっている複数の1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板の側面が接合され正多角柱形状に形成されているので、1/4波長板の頂点から底辺に引いた垂線が放射状となっている。
また、このような偏光変換素子によれば、出射側から見た場合、1/4波長板の光学軸が頂点から底辺に引いた垂線を時計周りに45°面内回転された位置に設けられているので、それぞれの1/4波長板に右回転の円偏光が入射されたとき、それぞれの1/4波長板から垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、このような偏光変換素子によれば、1/4波長板の頂点から底辺に引いた垂線が放射状となっており、それぞれの1/4波長板に右回転の円偏光が入射されると垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射されるので、円偏光をそれぞれの1/4波長板に入射すると直線偏光が放射状となっているラジアル偏光を出射させることができる。
このような偏光変換素子によれば、誘電体膜を備えることなく右回転の円偏光をラジアル偏光に変換することができる。
【0028】
また、このような偏光変換素子によれば、両主面が二等辺三角形となっている複数の1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板の側面が接合され正多角柱形状に形成されているので、1/4波長板の頂点から底辺に引いた垂線が放射状となっている。
また、このような偏光変換素子によれば、出射側から見た場合、1/4波長板の光学軸が頂点から底辺に引いた垂線を反時計周りに45°面内回転された位置に設けられているので、それぞれの1/4波長板に左回転の円偏光が入射されたとき、それぞれの1/4波長板から垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、このような偏光変換素子によれば、1/4波長板の頂点から底辺に引いた垂線が放射状となっており、それぞれの1/4波長板に左回転の円偏光が入射されると垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射されるので、円偏光をそれぞれの1/4波長板に入射すると直線偏光が放射状となっているラジアル偏光を出射させることができる。
このような偏光変換素子によれば、誘電体膜を備えることなく左回転の円偏光をラジアル偏光に変換することができる。
【0029】
このような偏光変換素子の製造方法によれば、1/4波長板ウエハを切断し、主面が光学軸に平行でかつ二等辺三角形となっている三角柱形状の1/4波長板を複数、形成し、出射側から見たとき、1/4波長板の光学軸が垂線を45°時計回り又は反時計回りに回転させた位置に設けられるので、複数の1/4波長板を一つの1/4波長板ウエハから容易に切断し形成することができ、生産性を向上させることができる。
【0030】
このような偏光変換素子の製造方法によれば、複数の1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板の側面が接合され、正多角柱形状となるので、頂点から底辺に引いた垂線が頂点を基準に放射状となっている。
また、このような偏光変換素子の製造方法によれば、それぞれの1/4波長板の光学軸が出射側から見たとき垂線を時計周り又は反時計回りに45°面内回転させた位置になるように1/4波長板が形成されているので、それぞれの1/4波長板に円偏光を入射したときそれぞれの1/4波長板から垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、このような偏光変換素子の製造方法によれば、同形状の1/4波長板を複数形成し、頂角が合わされて360°となるように接合することで、誘電体膜を成膜することなく、容易に偏光変換素子を製造することができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子の一例を示す状態図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子の一例を示す状態図である。
【図3】ラジアル偏光の電気ベクトルの概念の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において各構成要素の状態をわかりやすくするために誇張して図示している。
【0033】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子100は、図1に示すように、複数の1/4波長板111から主に構成されている。
ここで、本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子100は、例えば、両主面が正六角形の正六角柱の形状に形成されている。
【0034】
一般的に、1/4波長板といわれる光学部品素子は、光学軸と45°の角度を成す電気ベクトルを備えた直線偏光が入射されると、円偏光が出射される。このとき、入射される直線偏光の電気ベクトルが出射される面からみたときに時計回りに面内回転された位置に光学軸がある場合、円偏光は、左回転となる。また、入射される直線偏光の電気ベクトルが出射される面からみたときに反時計回りに面内回転された位置に光学軸がある場合、円偏光は、右回転となる。
また、1/4波長板といわれる光学部品素子は、円偏光が光学軸に平行な面に入射されると、光学軸を反時計回りに45°回転させた線と平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。このとき、右回転の円偏光が入射されると出射される直線偏光の電気ベクトルは、出射される面からみたときに光学軸を時計回りに45°回転させた位置となっている。また、左回転の円偏光が入射されると出射される直線偏光の電気ベクトルは、出射される面からみたときに光学軸を反時計回りに45°回転させた位置となっている。
【0035】
以下本実施形態では、1/4波長板111を、例えば、6つ設けられている場合について説明する。
また、1/4波長板111は、両主面が二等辺三角形となっており、三角柱形状となっている。
【0036】
ここで、1/4波長板111の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とする。
また、前記1/4波長板111の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とする。
また、前記1/4波長板111の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺とする。
また、前記1/4波長板111の頂点から底辺に垂直に引いた線を垂線Sとする。
【0037】
1/4波長板は、両主面に平行となっている光学軸Cを備えている。
また、1/4波長板は、垂線Sと光学軸Cとが45°の角度を成している。このとき、1/4波長板の光が出射される面から見た場合、光学軸Cは、垂線Sを時計回りに45°面内回転させた線と平行になっている。
【0038】
前述したように、1/4波長板は、一般に、光学軸に平行な面に右回転する円偏光を入射したとき、光学軸を反時計回りに45°回転させた線と平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、1/4波長板111は、光学軸Cに平行な面に右回転する円偏光を入射させると、垂線Sに平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
【0039】
1/4波長板111は、頂角が合わされて360°となるように1/4波長板111の側面同士が接合されている。このとき、1/4波長板111の頂点が一点で接しつつ、底辺が外縁側に設けられている状態となっている。
【0040】
ここで、1/4波長板111の側面とは、一方の主面の等しい二辺を含む面であって一方の主面に垂直な面とする。
【0041】
従って、接合された1/4波長板111は、それぞれの頂点から底辺に引いた垂線Sが頂点の接している点から放射状に設けられている。
【0042】
6つの1/4波長板111は、例えば、頂角の角度が60°となっており、6つの頂角を合わせて360°にするようにそれぞれの1/4波長板111の側面同士を接合していくと正六角柱となる。
【0043】
また、1/4波長板111は、例えば、1nm以下の金属膜(図示せず)を設けることで接合する原子拡散接合により接合されている。このとき、金属膜の厚みが1nm以下となっているため、陽極接合により接合する場合の金属膜と比較して、金属膜による光の吸収や反射の影響を抑えることが可能となっている。また、樹脂を用いて接合する場合と比較して、加工精度よく接合させることが可能となっている。
【0044】
このような本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子100によれば、両主面が二等辺三角形となっている複数の1/4波長板111の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板111の側面が接合され正多角柱形状に形成されているので、1/4波長板111の頂点から底辺に引いた垂線Sが放射状となっている。
また、このような本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子100によれば、出射側から見た場合、1/4波長板111の光学軸Cが頂点から底辺に引いた垂線Sを時計周りに45°面内回転された位置に設けられているので、それぞれの1/4波長板111に右回転する円偏光が入射されたとき、それぞれの1/4波長板111から垂線Sに平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、このような本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子100によれば、1/4波長板111の頂点から底辺に引いた垂線Sが放射状となっており、それぞれの1/4波長板111に右回転する円偏光が入射されると垂線Sに平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射されるので、右回転する円偏光をそれぞれの1/4波長板111に入射すると直線偏光が放射状となっているラジアル偏光を出射させることができる。
このような本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子100によれば、誘電体膜を備えることなく右回転する円偏光をラジアル偏光に変換することができる。
【0045】
次に、本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法について説明する。
なお、ここで、第一の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法により製造される偏光変換素子は、例えば、右回転する円偏光がラジアル偏光に変換される偏光変換素子とする。
【0046】
本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法は、1/4波長板形成工程、1/4波長板接合工程を備えている。
【0047】
(1/4波長板形成工程)
1/4波長板形成工程は、両主面が光学軸に平行でかつ二等辺三角形となっている三角柱形状となる1/4波長板となる部分が設けられている1/4波長板ウエハを切断し複数の1/4波長板を形成する工程である。
【0048】
1/4波長板ウエハは、光学軸を備えており、光学軸が両主面に平行となっている。
また、1/4波長板ウエハは、一方の主面に右回転の円偏光が入射されたとき、例えば、反時計回りに45°回転させた光学軸に平行なの電気ベクトルを備えた直線偏光が他方の主面から出射される。
また、1/4波長板ウエハは、左回転の円偏光が入射されたとき、例えば、時計回りに45°回転させた光学軸に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が他方の主面から出射される。
【0049】
1/4波長板形成工程では、例えば、ワイヤソー切断装置が用いられる。
【0050】
1/4波長板形成工程で形成される1/4波長板は、両主面が二等辺三角形となっている三角柱形状となっている。
【0051】
ここで、形成される1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺の成す角を頂角とする。
また、形成される1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とする。
また、形成される1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺とする。
また、形成される1/4波長板の一方の主面であって、頂点から底辺に垂直に引いた線を垂線とする。
【0052】
形成される1/4波長板は、両主面が光学軸に平行となっている。
また、形成される1/4波長板は、例えば、垂線を時計回りに45°回転した線が光学軸に平行となっている。
【0053】
1/4波長板形成工程では、同形状の1/4波長板が複数形成される。
従って、1/4波長板形成工程では、1枚の1/4波長板ウエハを用いて3方向切断することにより、同時に複数の1/4波長板を容易に形成することができる。
【0054】
(1/4波長板接合工程)
1/4波長板接合工程は、前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面を接合する工程である。
【0055】
1/4波長板接合工程では、1nm以下の金属膜を用いて接合する原子拡散接合を用いて接合される。このとき、金属膜の厚みが1nm以下となっているため、陽極接合により接合する場合の金属膜と比較して、金属膜による光の吸収や反射の影響を抑えることが可能となっている。また、樹脂を用いて接合する場合と比較して、加工精度よく接合させることが可能となっている。
【0056】
1/4波長板接合工程では、1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板の側面が接合され、正多角柱形状となる。
従って、1/4波長板接合工程では、1/4波長板の頂点が一点で接しつつ1/4波長板の底辺が外縁側に位置する様に複数の1/4波長板が接合されることとなる。
このとき、それぞれの1/4波長板の垂線は、1/4波長板の頂点から放射状に設けられている。
【0057】
従って、本発明の第一の実施形態に係る実施形態に係る偏光変換素子の製造方法は、右回転の円偏光を入射させると垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される1/4波長板を形成し、垂線が頂点から放射状に設けられる様に複数の1/4波長板を接合している。
【0058】
このような本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法によれば、複数の1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板の側面が接合され、正多角柱形状となるので、頂点から底辺に引いた垂線が頂点を基準に放射状となっている。
また、このような偏光変換素子の製造方法によれば、それぞれの1/4波長板の光学軸が出射側から見たとき垂線を時計周りに45°面内回転させた位置になるように1/4波長板が形成されているので、それぞれの1/4波長板に右回転の円偏光を入射したときそれぞれの1/4波長板から垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、このような本発明の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法によれば、同形状の1/4波長板を複数形成し、頂角が合わされて360°となるように接合することで、誘電体膜を成膜することなく、容易に偏光変換素子を製造することができ、生産性を向上させることができる。
【0059】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子200について説明する。
本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子200は、旋光板211の光学軸が旋光板211の一方の主面の垂線Sを反時計回りに45°面内回転された位置に設けられている点で第一の実施形態と異なる。
【0060】
本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子200は、複数の1/4波長板211から主に構成されている。
ここで、本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子200は、例えば、両主面が正六角形の正六角柱の形状に形成されている。
【0061】
1/4波長板211は、例えば、6つ設けられている。
また、1/4波長板211は、両主面が二等辺三角形となっており、三角柱形状となっている。
【0062】
ここで、1/4波長板211の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とする。
また、前記1/4波長板211の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とする。
また、前記1/4波長板211の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺とする。
また、前記1/4波長板211の頂点から底辺に垂直に引いた線を垂線Sとする。
【0063】
1/4波長板211は、両主面に平行となっている光学軸Cを備えている。
また、1/4波長板211は、垂線Sと光学軸Cとが45°の角度を成している。このとき、1/4波長板の光が出射される面から見た場合、光学軸Cは、垂線Sを反時計回りに45°面内回転させた線と平行になっている。
【0064】
前述したように、1/4波長板は、一般に、光学軸に平行な面に左回転する円偏光を入射したとき、光学軸を時計回りに45°回転させた線と平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、1/4波長板211は、光学軸Cに平行な面に左回転する円偏光を入射させると、垂線Sに平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
【0065】
1/4波長板211は、頂角が合わされて360°となるように1/4波長板211の側面同士が接合されている。このとき、1/4波長板211の頂点が一点で接しつつ、底辺が外縁側に設けられている状態となっている。
【0066】
ここで、1/4波長板211の側面とは、一方の主面の等しい二辺を含む面であって一方の主面に垂直な面とする。
【0067】
従って、接合された1/4波長板211は、それぞれの頂点から底辺に引いた垂線Sが頂点の接している点から放射状に設けられている。
【0068】
6つの1/4波長板211は、例えば、頂角の角度が60°となっており、6つの頂角を合わせて360°にするようにそれぞれの1/4波長板211の側面同士を接合していくと正六角柱となる。
【0069】
また、1/4波長板211は、例えば、1nm以下の金属膜(図示せず)を設けることで接合する原子拡散接合により接合されている。このとき、金属膜の厚みが1nm以下となっているため、陽極接合により接合する場合の金属膜と比較して、金属膜による光の吸収や反射の影響を抑えることが可能となっている。また、樹脂を用いて接合する場合と比較して、加工精度よく接合させることが可能となっている。
【0070】
このような本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子200によれば、両主面が二等辺三角形となっている複数の1/4波長板211の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板211の側面が接合され正多角柱形状に形成されているので、1/4波長板211の頂点から底辺に引いた垂線Sが放射状となっている。
また、このような本発明の第一の実施形態に係る偏光変換素子200によれば、出射側から見た場合、1/4波長板211の光学軸Cが頂点から底辺に引いた垂線Sを反時計周りに45°面内回転された位置に設けられているので、それぞれの1/4波長板211に左回転する円偏光が入射されたとき、それぞれの1/4波長板211から垂線Sに平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、このような本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子200によれば、1/4波長板211の頂点から底辺に引いた垂線Sが放射状となっており、それぞれの1/4波長板211に左回転する円偏光が入射されると垂線Sに平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射されるので、左回転する円偏光をそれぞれの1/4波長板211に入射すると直線偏光が放射状となっているラジアル偏光を出射させることができる。
このような本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子200によれば、誘電体膜を備えることなく左回転する円偏光をラジアル偏光に変換することができる。
【0071】
次に、本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法について説明する。
本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法は、1/4波長板形成工程で形成される1/4波長板の光学軸が垂線を反時計回りに45°回転した線と平行となる点で第一の実施形態と異なる。

第二の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法は、左回転する円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子を製造する点で第一の実施形態と異なる。
【0072】
1/4波長板形成工程は、両主面が光学軸に平行でかつ二等辺三角形となっている三角柱形状となる1/4波長板となる部分が設けられている1/4波長板ウエハを切断し複数の1/4波長板を形成する工程である。
【0073】
1/4波長板ウエハは、光学軸を備えており、光学軸が両主面に平行となっている。
また、1/4波長板ウエハは、一方の主面に右回転の円偏光が入射されたとき、例えば、反時計回りに45°回転させた光学軸に平行なの電気ベクトルを備えた直線偏光が他方の主面から出射される。
また、1/4波長板ウエハは、左回転の円偏光が入射されたとき、例えば、時計回りに45°回転させた光学軸に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が他方の主面から出射される。
【0074】
1/4波長板形成工程では、例えば、ワイヤソー切断装置が用いられる。
【0075】
1/4波長板形成工程で形成される1/4波長板は、両主面が二等辺三角形となっている三角柱形状となっている。
【0076】
ここで、形成される1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺の成す角を頂角とする。
また、形成される1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とする。
また、形成される1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺とする。
また、形成される1/4波長板の一方の主面であって、頂点から底辺に垂直に引いた線を垂線とする。
【0077】
形成される1/4波長板は、両主面が光学軸に平行となっている。
また、形成される1/4波長板は、例えば、垂線を反時計回りに45°回転した線が光学軸に平行となっている。
【0078】
1/4波長板形成工程では、同形状の1/4波長板が複数形成される。
従って、1/4波長板形成工程では、1枚の1/4波長板ウエハを用いて3方向切断することにより、同時に複数の1/4波長板を容易に形成することができる。
【0079】
従って、本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法は、左回転の円偏光を入射したとき垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される1/4波長板を形成している。
また、本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法は、両主面が二等辺三角形の三角柱形状の1/4波長板を形成し、この1/4波長板を接合して正多角柱形状に形成している。このとき、1/4波長板の頂点を基準に垂線が放射状に沿って位置している構造となっている。
【0080】
このような本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法によれば、複数の1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように1/4波長板の側面が接合され、正多角柱形状となるので、頂点から底辺に引いた垂線が頂点を基準に放射状となっている。
また、このような本発明の第二の偏光変換素子の製造方法によれば、それぞれの1/4波長板の光学軸が出射側から見たとき垂線を反時計周りに45°面内回転させた位置になるように1/4波長板が形成されているので、それぞれの1/4波長板に左回転の円偏光を入射したときそれぞれの1/4波長板から垂線に平行な電気ベクトルを備えた直線偏光が出射される。
従って、このようなだ本発明の第二の実施形態に係る偏光変換素子の製造方法によれば、同形状の1/4波長板を複数形成し、頂角が合わされて360°となるように接合することで、誘電体膜を成膜することなく、容易に偏光変換素子を製造することができ、生産性を向上させることができる。
【0081】
なお、偏光変換素子が6枚の1/4波長板から構成されている場合について説明しているが、1/4波長板の頂角の角度の和が360°となれば、例えば、8枚であってもよい。このとき、頂角は45°となる。
【0082】
また、偏光変換素子が偶数の6枚の1/4波長板から構成されている場合について説明しているが、1/4波長板の頂角の角度の和が360°となれば、例えば、9枚であってもよい。このとき、頂角は40°となる。
【符号の説明】
【0083】
100,200 偏光変換素子
111,211 1/4波長板
C 光学軸
S 垂線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右回転の円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子であって、
両主面が二等辺三角形となっている三角柱形状となっている複数の1/4波長板を備え、
前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺としたとき、
出射側から見た場合、前記1/4波長板の光学軸が前記頂点から前記底辺に引いた垂線を時計回りに45°面内回転された位置に設けられており、
前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面同士が接合され、両主面が正多角形となっている正多角柱形状に形成されている
ことを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
左回転の円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子であって、
両主面が二等辺三角形となっている三角柱形状となっている複数の1/4波長板を備え、
前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺としたとき、
出射側から見た場合、前記1/4波長板の光学軸が前記頂点から前記底辺に引いた垂線を反時計回りに45°面内回転された位置に設けられており、
前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面同士が接合され、両主面が正多角形となっている正多角柱形状に形成されている
ことを特徴とする偏光変換素子。
【請求項3】
円偏光をラジアル偏光に変換する偏光変換素子の製造方法であって、
両主面が光学軸に平行でかつ二等辺三角形となっている三角柱形状となる1/4波長板となる部分が設けられている1/4波長板ウエハを切断し複数の1/4波長板を形成する1/4波長板形成工程と、
前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が成す角を頂角とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺が接する点を頂点とし、前記1/4波長板の一方の主面であって等しい二辺を結ぶ辺を底辺とするとき、
前記1/4波長板の頂角が合わされて360°となるように前記1/4波長板の側面を接合する1/4波長板接合工程と、
を備え、
前記1/4波長板形成工程で、それぞれの1/4波長板の光学軸が出射側から見たとき垂線を時計回り又は反時計回りに45°面内回転させた位置になるように1/4波長板が形成されており、
前記1/4波長板接合工程で接合された1/4波長板が正多角柱形状となっている
ことを特徴とする偏光変換素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−73415(P2012−73415A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218143(P2010−218143)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】