説明

偏光板用アクリル系粘着剤組成物

本発明は、アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、ゲル分率が10〜55%であり、膨脹比が30〜110であり、最終粘着剤からエチルアセテートで溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、及び分子量分布が2.0〜7.0であることを特徴とする偏光板用アクリル系粘着剤組成物であり、本発明に係る組成物を含む偏光板及びこれを含む液晶表示装置は高温・多湿条件下でも優れた粘着耐久信頼性を示し、高いモジュラス及び応力緩和特性を效果的に付与し、偏光板生産時、作業性に優れ、光漏れ現象を改善させる効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用アクリル系粘着剤組成物に関するものである。特に、高温及び/又は多湿条件下で、耐久信頼性及び低い光漏れ特性に優れ、偏光板作業性が大幅に向上することができる偏光板用粘着剤組成物、これを含む偏光板及び液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置を製造するために 、基本的に液晶を含んでいる液晶セルと偏光板が必要とされ、これを接合するための適切な接着層または粘着層を使用しなければならない。さらに、液晶表示装置の機能を向上させるために、位相差板、広視野角補償板または輝度向上フィルムなどを付加的に偏光板に接着して使用することができる。
【0003】
液晶表示装置は、一定に配列されている液晶層;粘着層または接着層を含む多層構造の偏光板;位相差板;及び追加の機能性フィルム層などを含むのが一般的である。
【0004】
この時、偏光板は一定の方向に配列されたヨード系化合物または二色性偏光物質を含む構造であり、これらの偏光素子を保護するために両面にトリアセチルセルロース(TAC)系等の保護フィルムを使用し、多層を構成する。また、偏光板は一方性分子配列を持つ形状の位相差フィルムや液晶型フィルムなどの広視野角補償フィルムを付加的に含むことができる。
【0005】
上記言及された各フィルムは互いに異なる分子構造及び組成を有する材料で作られるため、互いに異なる物理的特性を持っている。特に、高温・多湿条件下では、一方性分子配列を有する材料等の収縮または膨脹による寸法安定性が足りなくなる。従って、偏光板が粘着剤で固定されている場合に、高温・多湿条件下での偏光板の収縮または膨脹による変形応力が残留した状態で残り、これにより、応力が集中した部分から光漏れが発生される。
【0006】
上記での光漏れ現象を改善させるための方法として、高温・多湿条件下で偏光板の収縮現象を低減することが求められるが、互いに異なる物理的特性を有する物質で構成された偏光板が付着された液晶パネルで発生される応力を除去することは非常に難しい。光漏れ現象を改善するさらに別の方法は偏光板を液晶パネルに固定する粘着剤層に優れた応力緩和機能を付与する方法である。一般に粘着剤はゴム系、アクリル系、及びシリコン系などがあるが、この中で、アクリル系粘着剤が接着特性、光学的特性、耐久性、または耐候性の面で有用であり、偏光板用粘着剤組成物の製造に最も広く使われている。
【0007】
上記の応力緩和機能を粘着層に付与するための通常的な粘着剤設計は、外部応力に対してずれ量が大きく、変形しやすいように設計することである。代表的な方法は多官能架橋剤と反応可能な架橋官能基を含む高分子量重合体に架橋可能官能基を少量含むか、含まない低分子量重合体を混合して粘着剤組成物に高温・多湿条件下で優れた耐久性及び応力緩和機能を付与する方法である。
【0008】
例えば、特許文献1(大韓民国特許公開公報第1998−079266号)は、重量平均分子量が100,000以上である高分子量アクリル系共重合体100重量部、重量平均分子量が30,000以下の低分子量アクリル系共重合体20〜200重量部及び多官能性架橋剤化合物0.005〜5重量部からなる偏光板用粘着剤組成物を通じて応力緩和特性を付与することによって光漏れ現象を改善しようとした。
【0009】
特許文献2(日本国特許公開公報第2002−47468号)は、重量平均分子量が800,000〜2,000,000の官能基を有する高分子量アクリル系共重合体100重量部、重量平均分子量が50,000以下で、分散度が1.0〜2.5である官能基を持たない低分子量アクリル系共重合体5〜50重量部、架橋剤及びシラン化合物からなる偏光板用粘着剤組成物を通じて応力緩和特性を付与しようとした。
【0010】
また、特許文献3(日本国特許公開公報第2003−49141号)は、重量平均分子量1,000,000〜2,000,000の官能基を含む高分子量アクリル系共重合体、重量平均分子量が30,000〜300,000の官能基が2個未満含まれた中分子量アクリル系共重合体、重量平均分子量が1,000〜20,000(分散度1.0〜2.5)である、官能基を持たない低分子量のアクリル系共重合体及び架橋剤からなる偏光板用粘着剤組成物を通じて応力緩和特性を付与することによって光漏れ現象を改善させようとした。
【0011】
上記特許公報は、粘着剤の応力緩和性を改善させるために、最終粘着剤をソフトにする技術的思想を具現している。即ち、添加された低分子量体によって粘着剤のモジュラスが減少し、外部の応力に対してずれ量が大きくなり、変形しやくなり、偏光板の収縮または膨脹により発生される局部的な応力を緩和させるように設計している。しかし、低分子量体添加を通じてソフトな粘着剤を具現する場合、最終粘着剤層のモジュラスが低下し、偏光板製造工程で偏光板をロール形態に保管時、粘着剤のピット(Pit)不良が生じやすく、製造された偏光板を切断する場合、切断される偏光板の断面から粘着剤が突出(粘着剤はみ出し)するか、突出された粘着剤によって偏光板が容易に汚染されるという問題点がある。また、添加された低分子量が液晶パネルのガラスとTACの界面層への移動が容易に行われるため、高温・多湿条件で耐久性の低下が容易になる。
【0012】
応力緩和機能を粘着層に付加するためのまた別の方法は、架橋官能基を含む高分子量体で製造された最終粘着剤のゲル含量を、非常に少なく保持する方法である。このような方法は、粘着剤のモジュラスが大きく低下しない長所があるが、均一な低いゲル含量を保持するように再現することは非常に難しく、粘着剤架橋後、偏光板が切断可能な時点までの時間(熟成時間)が長い短所があり、高温・多湿下で耐久性が大きく低下される短所がある。
【0013】
上記の高分子量体で構成された低いゲル含量を有する粘着剤を再現性よく製造する方法として、特許文献4(日本国特許公開公報昭60−207101)を利用できる。この公報では、架橋可能な官能基を含むアクリル共重合体(A)と架橋可能な官能基を含まないアクリル共重合体(B)と官能基2個以上の多官能性架橋剤とを混合し、上記A/Bの重量比率が1/4〜4/1の領域で粘着剤を製造する発明を開示している。即ち、この公報は、架橋時、架橋可能な官能基の量に対し、対応する多官能架橋剤量を添加し、遊離された官能基を除去することで製造された偏光板の長期保管性に優れた技術的思想を示しているが、用いられるアクリル重合体の分子量に対する条件やその架橋構造に対する技術的思想は表現されておらず、特に光漏れ現象と関連した粘着剤の応力緩和特性に対する技術的思想は記載されていない。
【0014】
従って、高温・多湿条件下だけでなく、長期間使用時、発生しうる耐久信頼性などの偏光板製品の主要特性をほとんど変化させることなく、最終粘着剤のモジュラス減少を最小化し、偏光板作業性低下を抑制しながら、光漏れ現象が改善された偏光板用粘着剤の開発及びこれを適用した偏光板が求められている実状にある。
【特許文献1】大韓民国特許公開公報第1998−079266号
【特許文献2】日本国特許公開公報第2002−47468号
【特許文献3】日本国特許公開公報第2003−49141号
【特許文献4】日本国特許公開公報昭60−207101号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記のような従来の問題点を解決するために、本発明の目的は、高温・多湿条件下で発生しうる粘着耐久信頼性などの主要特性を変化させることなく、粘着剤のモジュラスを大きく減少せず、偏光板の作業性低下を抑制しながら、応力緩和特性向上を通じて光漏れ現象を改善した偏光板用アクリル系粘着剤組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記特性を有するアクリル系粘着剤組成物を用いた偏光板を提供することにある。
【0016】
本発明のまた別の目的は、上記した特性を有するアクリル系粘着剤組成物から製造された偏光板を含む液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明はアルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、下記数式(1)で示されるゲル分率が10〜55%であり、下記数式(2)で示される膨脹比が30〜110であり、最終粘着剤からエチルアセテートで溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、及び分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比率)が2.0〜7.0であることを特徴とするアクリル系粘着剤組成物を提供する:
ゲル分率(%)=B/A×100 (1)
膨脹比=C/B (2)
(上記式で、Aはアクリル系粘着剤組成物の重量を示し、Bは常温で、エチルアセテートに48時間、浸漬後のアクリル系粘着剤組成物の不溶解分の乾燥質量を示し、Cは常温で、エチルアセテートに48時間、浸漬後のエチルアセテートによって膨脹された不溶解分の質量(アクリル粘着剤不溶解分質量+浸透溶剤の質量)を示す。)。
【0018】
また、本発明は偏光フィルムの一面または両面に上記の偏光板用アクリル系粘着剤組成物で形成された粘着剤層を含むことを特徴とする粘着偏光板を提供する。
【0019】
また、本発明は上記で製造された粘着偏光板を液晶セルの一面または両面に接合する液晶パネルを含むことを特徴とする液晶表示装置を提供する。
【0020】
本発明は、最終粘着剤のゲル含量、膨脹比、溶剤によって溶出されたゾルの分子量及び分子量分布を調節することによって高温・多湿条件で耐久信頼性を保持し、最終粘着剤のモジュラスを偏光板作業性において問題のない水準に保持しながら、粘着剤の応力緩和特性を向上させ、光漏れを改善させたことを特徴とする。
【0021】
通常的に最終粘着剤を低いゲル含量で調節し、溶剤によって浸漬する場合、ゲルが溶剤によって膨脹された量(膨脹比または膨脹指数)は非常に大きく増大する。このような架橋構造を有する粘着剤の場合、非常に緩い架橋構造を形成する。従って、外部から応力が付加される場合、そのずれ量が大きく、容易に変形されるため、粘着剤の応力緩和特性が非常に優れ、且つ光漏れを改善させることができるが、高温・多湿下で耐久性が非常に悪くなる。
【0022】
本発明者はこのような問題点を解決するために鋭意研究した結果、最終粘着剤のゲル含量が低く、且つ膨脹比が少ないように粘着剤を設計する場合、粘着剤は応力緩和特性に優れながら、さらに高温・多湿下で耐久性を保持することを見出し、本発明の完成に至った。理論的に制限されないが、ゲル含量が低く、且つ膨脹比が少ない粘着剤の場合、相対的に緻密な架橋構造を形成し、このような架橋構造を粘着剤のゾル(未架橋の自由高分子)を互いに連結し、耐久性と応力緩和特性を同時に満足させることができる。従って、本発明において架橋構造の調節は非常に重要である。類似なゲル含量でも架橋構造が非常に緻密になれば、未架橋高分子が架橋構造間を浸透し難くなるため、耐久信頼性が大きく低下される。反面に架橋構造が緩すぎると、未架橋高分子が架橋構造間で容易に浸透することができるが、粘着剤に力が加えられたとき、未架橋高分子が架橋構造間を容易に抜け出すようになり、やはり耐久信頼性が低下される。
【0023】
本発明の偏光板用粘着剤組成物は、種々の形態のアクリル系、シリコン系、ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系などの光学的に使われる諸般粘着、接着素材に制限なく、適用することができるが、その中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明は、アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、
下記数式(1)で示されるゲル分率が10〜55%であり、
下記数式(2)で示される膨脹比が30〜110であり、
最終粘着剤からエチルアセテートで溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、及び
重量平均分子量と数平均分子量の比率(以下、‘分子量分布’)が2.0〜7.0であることを特徴とするアクリル系粘着剤組成物を提供する:
ゲル分率(%)=B/A×100 (1)
膨脹比=C/B (2)
(ここで、A、B及びCは上記同義である。)。
【0025】
本発明に係るアクリル系粘着剤組成物において、ゲル分率は15〜45%のものが好ましく、この場合、ゲル分率及び膨脹比が下記数式(3)を満足させることがより好ましい:
【数1】

(ここで、xはゲル分率を、yは膨脹比をそれぞれ示す。)。
【0026】
本発明によるアクリル系粘着剤組成物のゲル含量は、10〜55%、好ましくは15〜45%、より好ましくは15〜35%の範囲である。
【0027】
上記ゲル分率が55%を超えると、粘着剤の応力緩和特性が大きく落ち、10%未満であれば、高温・多湿条件下での耐久信頼性が非常に悪くなる。
【0028】
同時にゲルによって測定される膨脹比が30未満であれば、架橋構造が緻密になり過ぎて粘着剤の応力緩和特性が不充分となり、110を超えると、架橋構造が緩くなり過ぎ、耐久性が悪くなる。
【0029】
また、溶剤によって溶出されたゾルの分子量が800,000未満であれば、それぞれの架橋構造がゾル部分によって十分に連結されず、耐久性が悪くなる。
【0030】
一方、ゾルの分子量分布が2未満であれば、応力緩和特性が不足し、7を超えると、耐久性に問題が発生する。従って、上記ゾルの分子量分布は2.0〜7.0が好ましくて、3〜5.5の間に調節することが最も好ましい。
【0031】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基が2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜99.8重量部及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を有するビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体 0.01〜5重量部を含むことが好ましい。
【0032】
上記アルキルの炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体は、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、またはテトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。 アルキルの炭素数が上記範囲に属しないとき、粘着剤のガラス遷移温度(Tg)が高くなるか、粘着性の調節が難しいため、2〜14の範囲に限定される。上記アルキル(メタ)アクリル酸エステルは単独で使われてもよく、2種類以上が併用されていてもよい。粘着力及び凝集力調節のために全体単量体成分中、上記アルキル基が2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜99.8重量部の範囲内で使用することが好ましい。
【0033】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体は、粘着力及び凝集力を調節するために、多官能性架橋剤と架橋可能な水酸基またはカルボキシル基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を共重合できる。
【0034】
上記架橋性単量体の例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸又はマレイン酸無水物の群から1種以上選択することができる。好ましくは、ビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体の量があまり多い場合、粘着性が低下され、剥離力が低下されるため、全体単量体成分中の0.01〜5重量部の使用が好ましい。
【0035】
本発明に係る(メタ)アクリル系共重合体は、粘着剤のガラス転移温度を調節するか、またはその他の機能性を付与するために、任意成分として総単量体重量対比0〜20重量部の下記一般式(1)のビニル系単量体をさらに含むことが好ましい:
【0036】
【化1】

(式中、Rは水素またはアルキルを示し、Rはシアノ、アルキルで置換されていてもよいフェニル、アセチルオキシまたはCOR(ここで、Rはアルキルで置換されていてもよいアミノまたはグリシジルオキシを示す。)を示す。
【0037】
好ましくは、R〜Rの定義中のアルキルは、炭素数1〜6の低級アルキル、より好ましくはメチルまたはエチルを示す。
【0038】
上記一般式(1)の化合物の例は、スチレン、アルファメチルスチレンのようなスチレン系単量体;酢酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル;(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有ビニル単量体などが挙げられる。上記アクリル系共重合体中の上記ビニル系単量体の量があまり多い場合、粘着剤組成物の柔軟性が低下され、剥離力が低下されるため、全体単量体成分中の20重量部以下の使用が好ましい。
【0039】
上記成分を含む本発明のアクリル系粘着剤組成物は架橋剤を、さらに含んでいてもよい。
【0040】
上記アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を主成分とするアクリル系共重合体を架橋するのに使用される架橋剤は、アクリル系重合体のカルボキシル基及び水酸基などと反応することによって粘着剤の凝集力を高める機能を有する。上記架橋剤はイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及び金属キレート系化合物よりなる群から選択され得る。
【0041】
特に、上記イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、アイソフォームジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、またはこれらのトリメチロールプロパンのようなポリオールとの反応物などがある。また、エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミン、またはグリセリンジグリシジルエーテルなどが上げられる。上記アジリジン系架橋剤は、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、N,N’−ジフェニルメタン-4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、またはトリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイドなどがある。上記金属キレート系架橋剤は、アルミニウム、鉄、亜鉛、スズ、チタン、アンチモン、マグネシウム、またはバナジウムなどの多価金属がアセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルに配位した化合物などが挙げられる。上記架橋剤の含量は(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部で使われることが好ましい。
【0042】
また、本発明の粘着剤組成物は、シラン系カップリング剤をさらに含んでいてもよく、これはガラス板と接着する場合に接着安定性を向上させ、耐熱/耐湿特性を向上させることができる。上記シラン系カップリング剤は、特に高温と高湿下で、長時間放置された場合、接着信頼性を向上させる機能を持っている。その含量はアクリル共重合体100重量部に対して0.005〜5重量部で使用することができる。上記シラン系カップリング剤化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、またはγ−アセトアセテートプロピルトリメトキシシランである。これらは単独または混合して使用できる。
【0043】
さらに、必要に応じて、本発明のアクリル系粘着剤組成物は粘着性能を調節するために粘着性付与樹脂をさらに含んでいてもよい。その含量はアクリル系共重合体100重量部に対して1〜100重量部の範囲で使用することができる。この時、上記粘着性付与樹脂が過量使われれば、粘着剤の相溶性または凝集力を減少する場合があるので、注意して適切に添加しなければならない。上記粘着性付与樹脂の例は、(水添)ハイドロカーボン系樹脂、(水添)ロジン樹脂、(水添)ロジンエステル樹脂、(水添)テルペン樹脂、(水添)テルペンフェノール樹脂、重合ロジン樹脂、または重合ロジンエステル樹脂などが上げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0044】
また、本発明のアクリル系粘着剤組成物は、特定の目的のために可塑剤、エポキシ樹脂及び硬化剤などをさらに含んでいてもよい。また、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤などを適当に加えられる。
【0045】
さらに、本発明は、アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を有するビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させて架橋用構造用アクリル系重合体を製造する段階;
アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させて未架橋構造用アクリル系重合体を製造する段階;及び
上記架橋構造用アクリル系重合体及び未架橋構造用アクリル系重合体を混合する段階;を含む本発明に係る偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法、または
アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を有するビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させて架橋用構造を含有するアクリル系重合体を製造する第1段階;及び
上記第1段階で得た架橋構造用アクリル系重合体の存在下で、アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体をさらに反応させ、未架橋用構造を提供する第2段階;を含む本発明に係る偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法に関するものである。
【0046】
上記のような本発明に係るアクリル系粘着剤組成物の製造方法は下記によって具体化される。
【0047】
上記アクリル系粘着剤は、本発明に好適な架橋構造を持つために、別途の2つのアクリル系重合体、即ち、架橋構造を形成する重合体と未架橋構造を形成する重合体を製造した後、一定の重量比率で混合するか、または反応器中で順次に2つのアクリル系重合体を製造した後、多官能架橋剤と反応させて製造することができる。上記架橋構造を形成する重合体は、架橋可能官能基を含有する必要がある。架橋官能基量が過度に多くなれば、架橋構造が緻密になり過ぎ、未架橋構造を形成する重合体が架橋構造間に浸透することが非常に難しくなり、耐久信頼性が大きく低下され、本発明のゲル分率と膨脹比を達成することができない。逆に、架橋構造を形成する重合体内に架橋官能基が一定含量以下の場合には、架橋構造が緩くなり過ぎ、未架橋構造を形成する重合体が架橋構造間への浸透は容易になるが、粘着剤に力が加えられた場合、未架橋構造形成重合体が架橋構造から容易に離脱され、耐久信頼性が低下される。一方、架橋構造を形成する重合体と未架橋構造を形成する重合体との組成が大きく異なれば、2つの重合体間の完全な混合が難しいため、可能なかぎり類似の組成が好ましい。また、2つ重合体の混合の側面で架橋官能基は、カルボキシル基より水酸基が有利である。未架橋構造を形成する重合体は架橋官能基(水酸基またはカルボキシル基)を含有しないことが好ましいが、架橋官能基を有していてもよい。
【0048】
上記アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されず、溶液重合法、光重合法、バルク重合法、サスペンション重合法またはエマルジョン重合法によって製造することができる。好ましくは、アクリル系共重合体は溶液重合法を使用して製造し、重合温度は50℃〜140℃が好ましく、単量体が均一に混合された状態で開始剤を添加することが好ましい。
【0049】
このような重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ系重合開始剤と過酸化ベンゾイル、過酸化アセチルなどの過酸化物を単独または混合して使用することが可能である。
【0050】
本発明の粘着剤組成物の製造方法は、特に限定されず、上記したアクリル系共重合体と架橋剤を常法で混合して得ることができる。
【0051】
この時、多官能性架橋剤は粘着層の形成のために実施する配合過程で、均一なコーティングのため、架橋剤の官能基架橋反応が起きるべきではない。上記コーティング作業が終了し、乾燥及び熟成過程を経ると、架橋構造が形成され、弾性があり、且つ凝集力の強い粘着層を得ることができる。
【0052】
また、本発明は上記アクリル系粘着剤組成物を偏光フィルムの粘着層として含む偏光板を提供する。
【0053】
本発明の偏光板は、偏光フィルムの一方または両方面に上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層を含み、偏光板を構成する偏光フィルムまたは偏光素子は特に制限されない。
【0054】
例えば、好ましい偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素または二色性染料などの偏光成分を含有させ、延伸することによって得られた。これらの偏光フィルムの膜厚は特に制限されないので、通常的な膜厚を形成することができる。この時、上記ポリビニルアルコール系樹脂はポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール及びエチレン、酢酸ビニル共重合体のけん化物などが用いられる。
【0055】
上記偏光フィルムの両面には、トリアセチルセルロースなどのセルロース系フィルム 、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム、ポリエチレン、ポリプロフィレン、シクロ系やノルボルネン構造を持つポリオレフィン系、エチレンプロピレン共重合体のようなポリオレフィン系などの保護フィルムが積層された多層フィルムなどを形成することができる。この時、これらの保護フィルムの膜厚は特に制限されず、通常的な膜厚を形成することができる。
【0056】
本発明で偏光フィルムに粘着剤層を形成する方法は、特に制限がなく、この偏光フィルム表面に直接バーコーターなどを使用して上記粘着剤を塗布し、乾燥する方法、または上記粘着剤をまず剥離性基材表面に塗布し、乾燥した後、この剥離性基材表面に形成された粘着剤層を偏光フィルム表面に転写し、次いで熟成させる方法を用いることができる。
【0057】
また、本発明の偏光板には保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム、及び輝度向上フィルムなどの追加機能を提供する層が1種以上積層されていてもよい。
【0058】
本発明の粘着剤が適用された偏光板は、通常的な液晶表示装置に適用可能であり、その液晶パネルの種類は特に限定されない。好ましくは、本発明は上記粘着偏光板を液晶セルの一面または両面に接合した液晶パネルを含む液晶表示装置を構成することができる。
【0059】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的理解を助けるためにだけであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
〔製造例1:アクリル系共重合体(A−1)の製造〕
窒素ガスが還流及び温度調節が容易な冷却装置を備えた1L反応器に、下記表1に示した組成のように、n−ブチルアクリレート(BA)98重量部、ヒドロキシメタクリレート2.0重量部で構成される単量体の混合物を投入した。そして、溶剤として、エチルアセテート(EAc)120重量部を投入した。酸素を除去するために、窒素ガスを60分間パージ(purging)した後、温度は60℃に保持し、反応開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を投入し、8時間、反応した。反応後、エチルアセテート(EAc)で希釈し、固形分15重量%、重量平均分子量が1,600,000、分子量分布4.9のアクリル系共重合体(A−1)を製造した。
【0061】
〔製造例2、3:アクリル系共重合体A−2、A−3の製造〕
上記製造例1で、下記表1のように、 高分子量アクリル系共重合体(A−1)の組成を基準に、各成分の一部を添加しないか、部分添加して高分子量アクリル系共重合体(A−2とA−3)を製造した。これに対する結果値は表1に示した。
【0062】
〔製造例4、5、6:アクリル系共重合体(B−1、B−2、B−3)の製造〕
上記製造例1で、下記表1のように、高分子量アクリル系共重合体(A−1)の組成を基準に、各成分の一部を添加しないか、部分添加して高分子量アクリル系共重合体(B−1、B−2、B−3)を製造した。その結果は表1に示した。
【0063】
〔製造例7:低分子量体アクリル系共重合体(L−1)の製造〕
上記製造例1で、下記表1のように、 高分子量アクリル系共重合体(A−1)の組成を基準に、各成分の一部を添加しないか、部分添加して低分子量アクリル系共重合体(L−1)を製造した。これに対する結果値は、表1に示した。
【0064】
〔製造例8、9:アクリル系共重合体(I−1、I−2)の製造〕
上記下記表2のように、第1段階反応で水酸基含有単量体が含まれる組成で、製造例1のような条件で、水酸基含有高分子量アクリル系共重合体を、まず製造した後、第1段階で製造した高分子の存在下で、第2段階組成で表2の組成のように投入し、同じ組件で反応した後、最終高分子量アクリル重合体を得た。
【0065】
〔実施例1〕
<配合>
上記の準備段階で得られた高分子量アクリル系共重合体(A−1)固形分20重量部に対して高分子量アクリル系共重合体(B−1)を固形分80重量部になるように混合した後、ここに、多官能性架橋剤としてイソシアネート系トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(TDI−1)0.1重量部を投入し、コーティング性を考慮して適正の濃度で希釈し、均一に混合した後、離型紙にコーティングして乾燥した後、30ミクロンの均一な粘着層を得た。
<合板過程>
上記で製造された粘着層を、膜厚185ミクロンのヨード系偏光板に粘着加工した。得られた偏光板を適切なサイズで切断し、評価に用いた。上記粘着剤が適用された偏光板に関し、以下の評価の結果を下記の表3aに示した。
【0066】
〔実施例2〜7〕
下記表3aの配合比のように実施例1の配合を基準に一部を配合しないか、部分配合することによって上記実施例1と同様の方法でアクリル系共重合体を配合及び合板過程を実施した。以後、実施例1と同様の方法で耐久信頼性及び光透過均一性を評価し、その結果を表3aに示した。
【0067】
〔比較例1〜6〕
表3bで示されるように、下記表2の配合比のように実施例1の配合を基準に、一部を配合しないか、部分配合することによって上記実施例1と同様の方法でアクリル系共重合体を配合及び合板過程を実施した。以後、実施例1と同様の方法で耐久信頼性及び光透過均一性を評価し、その結果を表3bに示した。
【0068】
<偏光板特性テスト>
A.耐久信頼性
上記実施例1で製造された粘着剤がコーディングされた偏光板(90mm×170mm)をガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)の両面に光学吸収軸がクロスされた状態で接着した。この時、加えられた圧力は約5kg/cmであり、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業を行った。この試片を、耐湿熱特性を把握するために、60℃の温度及び90%の相対湿度条件下で、1,000時間放置した後、気泡や剥離の発生の有無を観察した。耐熱特性は80℃の温度で1000時間放置した後、気泡や剥離の発生の有無を観察した。試験片の状態を評価する直前に、常温で24時間放置した後、実施した。また、上記で製造された粘着偏光板を5ケ月以上放置後、上記の方法で信頼性を評価した。信頼性に対する評価基準は次の通りである。
○:気泡や剥離現象無し
△:気泡や剥離現象若干発生
×:気泡や剥離現象多量発生
【0069】
B.光透過均一性(光漏れ)
上記と同じ試片を用いて、光透過度の均一性を調べるために、バックライトを利用して暗室で光が漏れる部分があるかを観察した。光透過均一性を試験する方法としてはコーティングされた偏光板(200mm×200mm)をガラス基板(210mm×210mm×0.7mm)に90度で交差して両面に接着し、観察する方法を採択した。光透過性の均一性は次のような基準で評価した。
◎:光透過性の不均一現象が肉眼で判断し難い
○:光透過性の不均一現象が若干ある
△:光透過性の不均一現象が多少ある
×:光透過性の不均一現象が多量ある
【0070】
C.粘着剤ピット欠陥(貯蔵弾性率)
粘着剤ピット不良は、粘着剤の弾性率(貯蔵弾性率)が高いほど少ない。粘着剤の弾性率はレオメトリックス(Rheometrics)社のRMS−800を利用して測定した。直径が8mmの平行板フィクスチャー(Fixture)を用いて、温度30℃で、粘着剤の膜厚1mm、変形率10%、周波数1rad/sec条件下で、貯蔵弾性率(storage modulus)を測定して粘着剤の弾性率を測定しており、測定された貯蔵弾性率を通じて下記の通りに判断した。
5点:粘着剤ピット不良が大変少ない(貯蔵弾性率>1.8×10Pa)
4点:粘着剤ピット不良が少しある(1.4×10Pa<貯蔵弾性率<1.7×10Pa)
3点:粘着剤ピット不良が多少ある(1.0×10Pa<貯蔵弾性率<1.3×10Pa)
2点:粘着剤ピット不良がたくさんある(0.8×10Pa<貯蔵弾性率<1.0×10Pa)
1点:粘着剤ピット不良が非常に多い(0.8×10Pa<貯蔵弾性率)
【0071】
D.粘着剤はみ出しの測定
トムソン(Thompson)カッターを利用して上記合板後の偏光板を切断し、各偏光板の切断面を顕微鏡で観察し、次ぎのような基準で評価した。
3点:切断面の粘着剤のはみ出し程度が良好(0.2mm未満)
2点:切断面の粘着剤のはみ出し程度が多少不良(0.2〜0.5mm)
1点:切断面の粘着剤のはみ出し程度が激しい(0.5mm以上)
【0072】
E.ゲル分率の測定
上記配合過程で乾燥された粘着剤を約10日間、恒温恒湿室(23℃、60%RH)に放置した後、約0.3gの粘着剤を#200ステンレス金網に入れて100mLのエチルアセテートに浸漬し、常温、暗室で3日間保管後、不溶解分を分離後、不溶解分を70℃オーブンで4時間、乾燥後、質量を測定した。
【0073】
F.膨脹比
上記ゲル含量測定時、不溶解分を分離した後、不溶解分と不溶解分に含まれていた(膨脹された)溶剤の重量を測定し、乾燥後、不溶解分の質量で割り、膨脹比を求めた。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
上記表1及び2で、略語は次の通りに定義される。
n−BA:n−ブチルアクリレート、
EHA:エチルヘキシルアクリレート、
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル、
EAc:エチルアセテート。
【0077】
【表3A】

【0078】
【表3b】

【0079】
上記表3aの結果より、本発明の実施例1〜7の場合、耐久信頼性、光漏れ特性に優れており、また粘着剤生産時、作業性と関連した粘着剤はみ出し、粘着剤ピット不良が少ない。反面、比較例1の場合、膨脹比が非常に高く、架橋構造が緩すぎて耐久性が不足しており、比較例2の場合には、ゲル含量が高く、膨脹比が低すぎて架橋構造が緻密過ぎ、応力緩和特性が不足して光漏れが改善されない場合である。比較例3の場合は、ゾルの分子量が低すぎて耐久性が不足した場合であり、比較例4は従来の技術である低分子量体を混合し、光漏れを改善した場合である。この場合には、モジュラスが急激に減少し、偏光板作業性が大きく劣る。比較例5の場合は、従来の技術のように多官能性架橋剤量を少量添加し、低いゲル含量を調節した場合や架橋構造が緩く、膨脹比が非常に大きく、これにより耐久性が大きく不足する場合であり、比較例6の場合は、一般的なゲル含量調節条件で粘着剤の応力緩和が大きく不足する場合である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
上記のように、本発明は粘着耐久性などの主要特性を変化させることなく、高温・多湿条件下で長期間使用時、偏光板の収縮により発生される応力を緩和させ、光漏れ改善に効果があり、最終粘着剤のモジュラスの高い偏光板用アクリル系粘着剤組成物を提供することができる。従って、本発明は上記粘着剤組成物を液晶表示装置の偏光板に適用し、長時間使用しても応力集中による光漏れ現象を防止することができ、高いモジュラスによって優れた作業性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施例に係るアクリル系粘着剤組成物のゲル分率及び膨脹比の関係を図示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、
下記数式(1)で示されるゲル分率が10〜55%であり、
下記数式(2)で示される膨脹比が30〜110であり、
粘着剤からエチルアセテートで溶出されたゾルの重量平均分子量が800,000以上であり、及び
分子量分布が2.0〜7.0であることを特徴とする偏光板用アクリル系粘着剤組成物:
ゲル分率(%)=B/A×100 (1)
膨脹比=C/B (2)
(上記式で、Aはアクリル系粘着剤組成物の質量を示し、
Bは常温で、エチルアセテートに48時間、浸漬後のアクリル系粘着剤組成物の不溶解分の乾燥質量を示し、
Cは常温で、エチルアセテートに48時間、浸漬後のエチルアセテートによって膨脹された不溶解分の質量(アクリル粘着剤不溶解分の質量+浸透溶剤の質量)を示す。)。
【請求項2】
ゲル分率が15〜45%であることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
ゲル分率及び膨脹比が下記数式(3)の条件を、さらに満足させることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物:
【数1】

(上記式(3)で、xはゲル分率を示し、及びyは膨脹比を示す。)。
【請求項4】
(メタ)アクリル系共重合体は、
アルキル基が2〜14のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体80〜99.8重量部;
多官能性架橋剤0.01〜10重量部;及び
上記多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系0.01〜5重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項5】
アルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体が、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
架橋性単量体は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物よりなる群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項4に記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリル系共重合体は、共重合可能なビニル系単量体20重量部以下を、さらに含むことを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項8】
多官能性架橋剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及び金属キレート系化合物よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項4に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項9】
上記アクリル系共重合体100重量部に対して、シラン系カップリング剤0.05〜5重量部及び粘着性付与樹脂1〜100重量部を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項10】
可塑剤、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、及び界面活性剤よりなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物。
【請求項11】
アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体を反応させて架橋用構造用アクリル系重合体を製造する段階;
アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を反応させて未架橋構造用アクリル系重合体を製造する段階;及び
上記架橋構造用アクリル系重合体及び未架橋構造用アクリル系重合体を混合する段階;
を含むことを特徴とする請求項1に係る偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項12】
アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体及び多官能性架橋剤と架橋可能なカルボキシル基又は水酸基を含むビニル系及び/又はアクリル系を反応させて架橋用構造を含有するアクリル系重合体を製造する第1段階;及び
上記第1段階で製造された架橋構造用アクリル系重合体の存在下で、アルキルの炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリル酸エステル単量体を、さらに反応させて未架橋用構造を提供する第2段階;
を含むことを特徴とする第1項に係る偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項13】
反応が、溶液重合法、光重合法、バルク重合法、サスペンション重合法、及びエマルジョン重合法よりなる群から選択される重合方法で製造されることを特徴とする請求項11又は12に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項14】
ビニル系及び/又はアクリル系架橋性単量体は、水酸基を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項15】
偏光フィルムの一面または両面に、請求項1に記載の偏光板用アクリル系粘着剤組成物で形成された粘着剤層を含むことを特徴とする粘着偏光板。
【請求項16】
保護層、反射層、位相差板、広視野角補償フィルム及び輝度向上フィルムよりなる群から選択される1種以上の層を、さらに含むことを特徴とする請求項15に記載の粘着偏光板。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の粘着偏光板が液晶セルの一面又は両面に接合された液晶パネルを含むことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公表番号】特表2009−507255(P2009−507255A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528937(P2008−528937)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003404
【国際公開番号】WO2007/029936
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】