説明

偏光板用粘着剤、粘着剤付き偏光板及びその製造方法

【課題】偏光板を液晶セル又は位相差板に耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有する偏光板用粘着剤及び該粘着剤付き偏光板とその製造方法を提供する。
【解決手段】23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上である偏光板用粘着剤、偏光板上に上記粘着剤からなる層を有する粘着剤付き偏光板、及び剥離シートの剥離層上に設けられた粘着性材料層に、偏光板を貼合した後、剥離シート側から活性エネルギー線を照射することにより、前記粘着剤付き偏光板を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板用粘着剤、粘着剤付き偏光板及びその製造方法、並びに該粘着剤付き偏光板を用いた光学フィルム及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セル又は位相差板に耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有する偏光板用粘着剤、該粘着剤付き偏光板及びその製造方法、並びに光学フィルム及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、セラミックス、金属などの被着体に、粘着剤を介して有機材料からなるシートを貼合した場合、経時により、シート端部が剥がれてきたり、浮きが生じるなど、好ましくない事態がしばしば生じる。
このような事態を解決するために、一般的には、粘着剤を構成する成分の分子量を上げたり、架橋密度を高めるなどして、粘着性能を高めた強粘着性材料を用いることが行われている。しかしながら、このような強粘着性材料を用いた場合、保持力は向上するものの、高温高湿条件下では、有機材料からなるシートの収縮や膨潤によって、粘着剤が追従できなくなり、様々なトラブルの発生要因となっている。
【0003】
ところで、光学部品の中には、その表面に偏光板を貼合して使用するものがあり、その代表例として液晶表示装置(LCD)の液晶セルが挙げられる。以下、図1を用いて説明する。
この液晶セル13は、一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板の配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隔になるように配置し、その周辺をシールして、該間隔に液晶材料を挟持させると共に、上記2枚の透明電極基板に、それぞれ粘着剤12を介して、偏光板11が配置された講造を有している。前記偏光板は、一般的にポリビニルアルコール系偏光子の両面に、光学的等方性フィルム、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどを貼り合わせた3層講造を有する偏光フィルムからなり、さらにその片面には、液晶セルなどの光学部品に貼着することを目的に粘着剤層が設けられている。
また、図2に示す模式図のように、視野角特性の改善を図るため、偏光板21と液晶セル23の間に粘着剤22及び25を介して位相差板24が配置される場合もある。
【0004】
上述のような構成の偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼着した場合、又は偏光板と位相差板を貼着した場合、異種材料の多層構造となり、材料特性から寸法安定性が乏しく、特に高温高湿環境下では、収縮や膨潤による寸法変化が大きい。該偏光板には粘着剤として、一般に前述の強粘着性のものが用いられているため、偏光板の寸法変化に伴う浮きや剥がれは抑制することができるが、該偏光板の寸法変化に伴う応力を粘着剤層で吸収することができず、偏光板における残留応力が不均一になる。その結果、TN液晶セルでは、いわゆる「光漏れ」が、STN液晶では「色むら」が発現しやすくなるという問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば粘着剤に可塑剤などの低分子量体を添加することで、適度に軟らかくして応力緩和性を付与する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、低分子量体の添加は、偏光板を剥離した際に被着体を汚染する原因となる上、保持力を低下させることとなり、経時による浮きや剥がれが発生しやすくなる。
したがって、接着耐久性と光漏れ防止性を両立することが課題であった。
【0006】
【特許文献1】特許第3272921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セル又は位相差板に耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有する偏光板用粘着剤及び該粘着剤付き偏光板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の特性を有する偏光板用粘着剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の貯蔵弾性率(G’)を有する粘着剤が、その目的に適合し得ることを見出した。
また、上記粘着剤付きの偏光板は、剥離シートの剥離層上に設けられた粘着性材料層に偏光板を貼合し、剥離シート側から活性エネルギー線を照射することにより、効率よく製造し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上であることを特徴とする偏光板用粘着剤、
(2)23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3〜15MPaであることを特徴とする上記(1)に記載の偏光板用粘着剤、
(3)80℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上である上記(1)又は(2)に記載の偏光板用粘着剤、
(4)80℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3〜10MPaである上記(3)に記載の偏光板用粘着剤、
(5)偏光板を液晶ガラスセルに貼合させるのに用いられる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(6)偏光板を位相差板に貼合させるのに用いられる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(7)(A)アクリル系共重合体と、(B)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる上記(1)〜(6)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(8)(B)成分の活性エネルギー線硬化型化合物が、分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーである上記(7)に記載の偏光板用粘着剤、
(9)多官能(メタ)アクリレート系モノマーが環状構造を有する上記(8)に記載の偏光板用粘着剤、
(10)(A)成分と(B)成分の含有割合が、質量比で100:1〜100:100である上記(7)〜(9)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(11)粘着性材料が、さらに(C)成分として架橋剤を含む上記(7)〜(10)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(12)粘着性材料が、さらに(D)成分としてシランカップリング剤を含む上記(7)〜(11)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(13)偏光板が偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなるものである上記(1)〜(12)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(14)無アルカリガラスに対する粘着力が0.2N/25mm以上である上記(1)〜(13)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(15)ポリカーボネートに対する粘着力が5N/25mm以上である上記(1)〜(13)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(16)ゲル分率が85%以上である上記(1)〜(15)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤、
(17)偏光板上に、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の粘着剤からなる層を有することを特徴とする粘着剤付き偏光板、
(18)剥離シートの剥離層上に設けられた粘着性材料層に、偏光板を貼合した後、剥離シート側から活性エネルギー線を照射することを特徴とする上記(17)に記載の粘着剤付き偏光板の製造方法、
(19)偏光板と位相差板からなる光学フィルムであって、偏光板と位相差板が上記(1)〜(16)のいずれかに記載の粘着剤にて貼合されることを特徴とする光学フィルム、
(20)2枚の剥離シートの剥離層側に接するように上記(1)〜(16)のいずれかに記載の偏光板用粘着剤を挟持してなる粘着シート、及び
(21)上記(20)に記載の粘着シートを用いて偏光板と位相差板を貼合する光学フィルムの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セル又は位相差板に耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有する偏光板用粘着剤、及び該粘着剤付き偏光板を提供することができる。
また、本発明によれば、前記粘着剤付き偏光板を効率よく製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の偏光板用粘着剤は、23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上であることを要す。この貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上であれば十分な光漏れ防止性が得られる。23℃における貯蔵弾性率(G’)の上限については特に限定されないが、接着耐久性がより良好な粘着剤を得るためには、50MPa以下であることが好ましく、さらに15MPa以下であることが好ましい。以上の観点から特に好ましい23℃の貯蔵弾性率(G’)は0.35〜12MPaである。また、80℃の貯蔵弾性率(G’)も、通常0.3MPa以上が好ましく、さらには0.3〜10MPaであることが好ましい。
なお、前記貯蔵弾性率(G’)は、下記の方法で測定した値である。
<貯蔵弾性率(G’)の測定方法>
貯蔵弾性率(G’)は、厚さ30μmの粘着剤を積層し、8mmφ×3mm厚の円柱状の試験片を作製し、ねじり剪断法により、下記の条件で測定する。
測定装置:レオメトリック社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDAII」
周波数 :1Hz
温度 :23℃、80℃
また、本発明の偏光板用粘着剤は、無アルカリガラスに対する粘着力が、0.2N/25mm以上であることが好ましい。この粘着力が0.2N/25mm以上であれば、偏光板を十分な粘着力でもって、例えば液晶ガラスセルに貼合することができる。より好ましい粘着力は1.0〜30N/25mmである。
また、ポリカーボネートに対する粘着力が、5N/25mm以上であることが好ましい。この粘着力が5N/25mm以上であれば、偏光板を十分な粘着力でもって、例えば位相差板に貼合することができる。より好ましい粘着力は10〜50N/25mmである。
なお、上記粘着力の測定方法については、後に詳述する。
【0011】
前記の貯蔵弾性率及び粘着力を有する本発明の偏光板用粘着剤としては、(A)アクリル系共重合体と、(B)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる粘着剤が好適である。
当該粘着性材料における(A)成分のアクリル系共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を挙げることができる。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、各種架橋方法によって架橋が可能な架橋点を有するものが用いられる。このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては特に制限はなく、従来粘着剤の樹脂成分として慣用されている(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の中から、任意のものを適宣選択して用いることができる。
【0012】
このような架橋点を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体と、所望により用いられる他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
一方、分子内に架橋性官能基を有する単量体は、官能基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種を含むことが好ましく、具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
当該粘着性材料において、(A)成分として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量としては、重量平均分子量で50万以上であるものが用いられる。この重量平均分子量が50万以上であると、被着体との密着性や接着耐久性が十分となり、浮きや剥がれなどが生じない。密着性及び接着耐久性などを考慮すると、この重量平均分子量は、60万〜200万のものが好ましく、特に70万〜180万のものが好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0015】
さらに、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体においては、分子内に架橋性官能基を有する単量体単位の含有量は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。この含有量が0.01質量%以上であると、後述する架橋剤との反応により、架橋が十分となり、耐久性が良好となる。一方、10質量%以下であると、架橋度が高くなりすぎることによる、液晶ガラスセルや位相差板への貼合適性の低下がなく好ましい。耐久性と液晶ガラスセルや位相差板への貼合適性などを考慮すると、この架橋性官能基を有する単量体単位のより好ましい含有量は0.05〜7.0質量%であり、特に0.2〜6.0質量%の範囲が好ましい。
本発明においては、この(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
当該粘着性材料において、(B)成分として用いられる活性エネルギー線硬化型化合物としては、分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
この分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどの3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型などが挙げられる。
【0017】
本発明において、これらの多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、骨格構造に環状構造を有するものを含有することが好ましい。環状構造は、炭素環式構造でも、複素環式構造でもよく、また、単環式構造でも多環式構造でもよい。このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えばジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート,トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有するもの、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、アダマンタンジアクリレートなどが好適である。
また、(B)成分として活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることができる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
【0018】
ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、50,000以下が好ましく、より好ましくは500〜50,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明においては、(B)成分として(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、前述の(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体において説明した(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基及び架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。該アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、通常50万〜200万である。
本発明においては、(B)成分として、前記の多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマー及びアダクトアクリレート系ポリマーの中から、適宜1種を選び用いてもよく、2種以上を選び併用してもよい。
本発明においては、前記(A)成分のアクリル系共重合体と、(B)成分の活性エネルギー線硬化型化合物の含有割合は、得られる粘着剤の性能の面から、質量比で、100:1〜100:100が好ましく、より好ましくは100:5〜100:50、さらに好ましくは100:10〜100:40の範囲である。
なお、本発明の粘着剤が、上記(A)成分及び(B)成分を含有する場合は、活性エネルギー線を照射した後の貯蔵弾性率(G’)が、前記条件を満足するものである。すなわち、23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上であり、さらに80℃における貯蔵弾性率(G’)が0.3MPa以上であることが好ましい。
【0020】
当該粘着性材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、前記(B)成分100質量部に対して、通常0.2〜20質量部の範囲で選ばれる。
【0021】
当該粘着性材料には、所望により、(C)成分として架橋剤を含有させることができる。この架橋剤としては、特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
ここで、ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などを挙げることができる。
本発明においては、この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、架橋剤の種類にもよるが、前記(A)成分のアクリル系共重合体100質量部に対し、通常0.01〜20質量部、好ましくは、0.1〜10質量部である。
【0022】
当該粘着性材料には、所望により、(D)成分としてシランカップリング剤を含有させることができる。このシランカップリング剤を含有させることにより、偏光板を、例えば液晶ガラスセルなどに貼合する場合に、粘着剤とガラスセルの間の密着性がより良好となる。このシランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着剤成分との相溶性がよく、かつ光透過性を有するもの、例えば実質上透明なものが好適である。このようなシランカップリング剤の添加量は、粘着性材料の固形分100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲が好ましく、特に0.005〜5質量部の範囲が好ましい。
前記シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
当該粘着性材料には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望によりアクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
本発明の偏光板用粘着剤は、このようにして得られた前記粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなるものである。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、粘着剤を形成することができる。
当該粘着性材料に対する活性エネルギー線の照射量としては、前述の貯蔵弾性率、無アルカリガラス及びポリカーボネートに対する粘着力を有する架橋化粘着剤が得られるように、適宜選定されるが、紫外線の場合は照度50〜1000mW/cm2、光量50〜1000mJ/cm2、電子線の場合は10〜1000kradの範囲が好ましい。
【0024】
本発明の偏光板用粘着剤は、偏光フィルム単独からなる偏光板に適用して、該偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに用いることができるが、特に偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板に適用し、この偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに、好ましく用いることができる。
前記偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板としては、例えばポリビニルアルコール系偏光子の両面に、それぞれトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを貼り合わせてなる偏光フィルムの片面に、例えばディスコティック液晶からなる視野角拡大機能層を塗布により設けたもの、あるいは視野角拡大フィルムを接着剤で貼り合わせたものなどを挙げることができる。この場合、粘着剤は、前記視野角拡大機能層又は視野角拡大フィルム側に設ける。
また、図2に示すように偏光板と液晶ガラスセルの間に位相差板がある場合にも、本発明の偏光板用粘着剤は好適に使用し得る。すなわち、偏光フィルム単独からなる偏光板と位相差板を本発明の粘着剤で貼合して光学フィルムを製造し、該光学フィルムの位相差板と液晶ガラスセルを粘着剤で貼合するものである。ここで位相差板と液晶ガラスセルを貼合する粘着剤としては特に限定されず、通常偏光板と液晶ガラスセルの貼合に用いられる粘着剤を使用することができる。具体的には、特開平11−131033に開示されるアクリル系共重合体、架橋剤及びシランカップリング剤からなる粘着性材料などが挙げられる。なお、偏光板と液晶ガラスセルの貼合に、本発明の粘着剤を用いることもできる。
本発明の粘着剤はゲル分率が85%以上であることが好ましい。すなわち、有機溶媒にて抽出される程度の低分子量成分が少ない場合は、加熱下や温熱下の環境で浮きや剥がれ、被着体への汚染が少なく、ゲル分率が85%以上である粘着性材料は耐久性や安定性が高い。ゲル分率はさらに90〜99.9%であることが好ましい。
本発明の偏光板用粘着剤を用いて、前記のようにして液晶ガラスセル又は位相差板に偏光板を接着させることにより作製した液晶表示装置は、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくい上、偏光板と液晶ガラスセルとの接着耐久性に優れている。
【0025】
本発明はまた、偏光板上に、前述の本発明の偏光板用接着剤からなる層を有する粘着剤付き偏光板をも提供する。この偏光板としては、前述したように、偏光フィルム単独からなるものであってもよいが、図1に示すような構成の場合には、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなるものが好ましい。
また、前記の偏光板用粘着剤からなる層の厚さは、通常5〜100μm程度、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
この粘着剤付き偏光板の製造方法については、偏光板上に本発明の粘着剤からなる層が設けられたものが得られる方法であればよく、特に制限はないが、以下に示す本発明の方法によれば、効率よく所望の粘着剤付き偏光板を製造することができる。
本発明の方法においては、剥離シートの剥離層上に設けられた粘着性材料層に、偏光板を貼合した後、該剥離シート側から活性エネルギー線を、前記粘着剤材料層が、前述の所定の特性を有する本発明の粘着剤から構成される層になるように照射することによって、本発明の粘着剤付き偏光板が得られる。
【0026】
前記剥離シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し剥離層を設けたものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
また、粘着性材料及び活性エネルギー線の照射条件については、前述の本発明の偏光板用粘着剤において説明したとおりである。
剥離シート上に粘着性材料層を設ける方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、粘着性材料をコーティングして塗膜を形成させ、乾燥させる方法を用いることができる。乾燥条件は特に制限されないが、通常50〜150℃で10秒〜10分程度である。
【0027】
また、図2に示すような構成の場合には、偏光板としては、偏光フィルム単独からなるものである場合が多く、偏光板用粘着剤からなる層の厚さは前記と同様である。図2に示すような構成における粘着剤付き偏光板の製造方法についても、上記と同様に偏光板上に本発明の粘着剤からなる層が設けられたものが得られる方法であればよく、特に制限はない。上記した本発明の製造方法によって効率的に製造することができる。
さらに、図2に示すような構成の場合には、2枚の剥離シートの剥離層側に接するように上述の偏光板用粘着剤を挟持してなる粘着シートを作製しておき、該粘着シートを用いて偏光板と位相差板を貼合することができる。ここで粘着剤として上記(B)成分を用いる場合には、活性エネルギー線は2枚の剥離シートに粘着剤を挟持した後に照射してもよいし、一方の剥離シートに粘着剤を設け、活性エネルギー線を照射した後に他の剥離シートで挟持してもよい。なお、活性エネルギー線の照射条件は、前述の所定の特性を有する本発明の粘着剤から構成される層になるように選択される。
この粘着シートを用いて本発明の光学フィルムを製造する場合には、粘着シートの剥離シートが剥がされ、通常の方法により偏光板と貼合される。
【実施例】
【0028】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、実施例1〜6、比較例1で得られた粘着剤の性能及び粘着剤付き偏光板の性能を、以下に示す要領で求めた。
(1)粘着剤の貯蔵弾性率
明細書本文に記載の方法に従って、23℃及び80℃における貯蔵弾性率を測定する。
(2)粘着力(無アルカリガラスとの粘着力)
粘着剤付き偏光板から、25mm幅、100mm長のサンプルを切り出し、剥離シートを剥がして(粘着剤層の厚さ25μm)、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧する。その後、23℃、50%RH環境下で24時間放置したのち、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン)を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力を測定する。
【0029】
(3)粘着剤付き偏光板の耐久性
粘着剤付き偏光板を、裁断装置(荻野精機製作所社製スーパーカッター「PN1−600」)により、233mm×309mmサイズに調整したのち、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]に貼合後、栗原製作所社製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧する。その後、下記の各耐久条件の環境下に投入し、200時間後に、10倍率ルーペを用いて観察を行い、以下の判定基準で耐久性を評価する。
○:4辺において、外周端部から0.6mm以上に欠点がないもの。
×:4辺のいずれか1辺に、外周端部から0.6mm以上に浮き、剥がれ、発泡、スジなどの0.1mm以上の粘着剤の外観異常欠点があるもの。
<耐久条件>
60℃・相対湿度90%環境、80℃、90℃
−20℃⇔60℃の各30分のヒートショック試験、200サイクル
【0030】
(4)光漏れ性能
粘着剤付き偏光板を、裁断装置(荻野精機製作所社製スーパーカッター「PN1−600」)により、233mm×309mmサイズに調整したのち、無アルカリガラス[コーニング社製「1737」]に貼合後、栗原製作所社製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧する。なお、上記貼合は、無アルカリガラスの表裏に、粘着剤付き偏光板を偏光軸がクロスニコル状態になるように行う。この状態で80℃、200時間放置後、23℃、相対湿度50%の環境下に2時間放置して、以下に示す方法で光漏れ性を評価する。
大塚電子社製MCPD−2000を用い、図3に示す各領域の明度を測定し、明度差ΔL*を、式
ΔL*=[(b+c+d+e)/4]−a
(ただし、a、b、c、d及びeは、それぞれA領域、B領域、C領域、D領域及びE領域のあらかじめ定められた測定点(各領域の中央部1箇所)における明度である。)で求め、光漏れ性とする。ΔL*の値が小さいほど、光漏れが少な
いことを示す。
【0031】
実施例1〜6及び比較例1
第1表に示す組成の粘着性材料(a)を調製し、剥離シートとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム[リンテック社製「SP−PET3811」]の剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して粘着性材料層を形成した。
次いで、ディスコティック液晶層付偏光フィルムからなる、偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化した偏光板を、粘着性材料層とディスコティック液晶層が接するように貼合した。貼合してから30分後に剥離フィルム側から、紫外線(UV)を下記の条件で照射し、粘着剤付き偏光板を作製した。
<UV照射条件>
・フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
・照度600mW/cm2、光量150mJ/cm2
UV照度・光量計は、アイグラフィックス社製「UVPF−36」を使用した。
粘着剤の性能及び粘着剤付き偏光板の性能の評価結果を第2表に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
(注)
1)TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量=296、3官能型(化薬サートマ社製、商品名「KS−TMPTA」)
2)M−315:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、分子量=423、3官能型(東亜合成社製、商品名「アロニックスM−315」)
3)DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、分子量=578、6官能型(日本化薬社製、商品名「カヤラッドDPHA」)
4)アクリル系共重合体:アクリル酸ブチル、アクリル酸メチル及びアクリル酸を、質量比77:20:3の割合で用い、常法に従って重合してなる、重量平均分子量80万の共重合体
5)光重合開始剤:ベンゾフェノンと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの質量比1:1の混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア500」
6)イソシアネート系架橋剤:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製「コロネートL」)
7)シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−403」)
【0034】
【表2】

【0035】
実施例7
(粘着剤付き偏光板の作製)
第3表に示す組成の粘着性材料(a)を調製し、剥離シートとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム[リンテック社製「SP−PET3811」]の剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して粘着性材料層を形成した。
次いで、偏光フィルムからなる偏光板と粘着性材料層を貼合し、貼合してから30分後に剥離フィルム側から、紫外線(UV)を照射し、粘着剤付き偏光板を作製した。紫外線の照射条件は実施例1に記載の条件と同様とした。その後、23℃、相対湿度50%の条件で10日間養生した。
(位相差板の粘着加工)
剥離シートとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム[リンテック社製「SP−PET3811」]の剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で粘着剤(b)を塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して粘着性材料層を形成した。
粘着剤(b)としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸の比が95/5であるベース材料100質量部に、イソシアネート系架橋剤であるトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製「コロネートL」)を0.3質量部及びシランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−403」)0.03質量部を配合した粘着剤を用いた。
位相差フィルムとしてポリカーボネートフィルムを用い、これに上記粘着性材料層を貼合した。
(光学フィルムの作製)
粘着剤付き偏光板の剥離フィルムを剥がし、粘着加工を施した位相差板の粘着加工を行っていない側と貼合し、本発明の光学フィルムを得た。
実施例7〜10及び比較例2における粘着剤付き偏光板及び光学フィルムの評価方法に関しては、以下のとおりである。
【0036】
(評価方法)
(1)粘着剤の貯蔵弾性率;上記と同様の方法を用いた。
(2’)粘着力(ポリカーボネートとの粘着力)
粘着剤付き偏光板から、25mm幅、100mm長のサンプルを切り出し、剥離シートを剥がして(粘着剤層の厚さ25μm)、ポリカーボネート[帝人化成社製「ピュアエースC110−100」]に貼付したのち、栗原製作所製オートクレーブにて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧する。その後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で168時間放置したのち、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン)を用いて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力を測定する。
(3’)光学フィルムの耐久性;上記(3)と同様の方法を用いた。
(4’)光漏れ性能;上記(4)と同様の方法を用いた。
(5)ゲル分率
粘着剤厚25μmを80mm×80mmのサイズにサンプリングして、ポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み粘着剤のみの重さを精密天秤にて秤量した。このときの重さをM1とする。ソックスレーを用いて酢酸エチル溶剤に粘着剤を浸漬させ、還流を行い16時間処理した。その後粘着剤をとり出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下、24時間で風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後の粘着剤のみの重さを精密天秤にて秤量した。このときの重さをM2とする。ゲル分率は、(M2/M1)×100で表される(%)。
【0037】
実施例8及び9
粘着性材料(a)の配合を第3表に示すものとしたこと以外は実施例7と同様にして、粘着剤付き偏光板及び光学フィルムを作製した。実施例7と同様にして評価した結果を第4表に示す。
【0038】
実施例10
(粘着剤の調製)
第3表に示す組成の粘着性材料(a)を調製し、剥離シートとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム[リンテック社製「SP−PET3811」]の剥離層上に、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布したのち、90℃で1分間乾燥処理して粘着性材料層を形成した。該粘着性材料層に上記と同様の厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム[リンテック社製「SP−PET381110」]を貼合し、30分後に剥離フィルムSP−PET3811側から、紫外線(UV)を照射した。紫外線の照射条件は、実施例1に記載の条件と同様とした。その後、温度23℃、相対湿度50%の条件で10日間養生した。
評価を行うにあたっては、剥離フィルムSP−PET381110を剥がし、偏光板と貼合して、粘着剤付き偏光板を作製し、また実施例7に記載されるのと同様の方法で位相差板の粘着加工、及び光学フィルムを作製し評価を行った。評価結果を第4表に示す。
【0039】
比較例2
粘着性材料(a)の配合を第3表に示すものとしたこと以外は実施例7と同様にして、粘着剤付き偏光板及び光学フィルムを作製した。評価結果を第4表に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
(注)
8)A1(アクリル系共重合体):アクリル酸ブチル及びアクリル酸を、質量比95:5の割合で用い、常法に従って重合してなる、重量平均分子量150万の共重合体
9)A2(アクリル系共重合体):アクリル酸ブチル及びアクリル酸2−ヒドロキシエチルを、質量比99:1の割合で用い、常法に従って重合してなる、重量平均分子量120万の共重合体
10)R−684:トリシクロデカンジメタノールアクリレート(日本化薬(株)製「KAYARAD R−684」)
【0042】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の偏光板用粘着剤は、偏光板、特に視野角拡大フィルムなどと一体化してなる偏光板に、又は偏光板に位相差板が積層される場合に好適に適用され、該偏光板を液晶セル又は位相差板に耐久性よく接着し得ると共に、得られた液晶表示装置が、高温高湿環境下でも光漏れが生じにくいなどの特性を有している。また、偏光板に位相差板が積層される本発明の光学フィルムは、LCDの他、有機EL、PDPなどの各種画像表示装置にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】LCDの構成を示す概略図である。
【図2】LCDの構成を示す概略図である。
【図3】実施例、比較例で得られた粘着剤付き偏光板の光漏れ性を評価する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1,2;液晶表示装置
11,21;偏光板
12,22,25;粘着剤
13,23;ガラス(液晶セル)
24;位相差板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上であることを特徴とする偏光板用粘着剤。
【請求項2】
23℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3〜15MPaであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用粘着剤。
【請求項3】
80℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3MPa以上である請求項1又は2に記載の偏光板用粘着剤。
【請求項4】
80℃における貯蔵弾性率(G’)が、0.3〜10MPaである請求項3に記載の偏光板用粘着剤。
【請求項5】
偏光板を液晶ガラスセルに貼合させるのに用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項6】
偏光板を位相差板に貼合させるのに用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項7】
(A)アクリル系共重合体と、(B)活性エネルギー線硬化型化合物を含む粘着性材料に、活性エネルギー線を照射してなる請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項8】
(B)成分の活性エネルギー線硬化型化合物が、分子量1000未満の多官能(メタ)アクリレート系モノマーである請求項7に記載の偏光板用粘着剤。
【請求項9】
多官能(メタ)アクリレート系モノマーが環状構造を有する請求項8に記載の偏光板用粘着剤。
【請求項10】
(A)成分と(B)成分の含有割合が、質量比で100:1〜100:100である請求項7〜9のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項11】
粘着性材料が、さらに(C)成分として架橋剤を含む請求項7〜10のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項12】
粘着性材料が、さらに(D)成分としてシランカップリング剤を含む請求項7〜11のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項13】
偏光板が偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなるものである請求項1〜12のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項14】
無アルカリガラスに対する粘着力が0.2N/25mm以上である請求項1〜13のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項15】
ポリカーボネートに対する粘着力が5N/25mm以上である請求項1〜13のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項16】
ゲル分率が85%以上である請求項1〜15のいずれかに記載の偏光板用粘着剤。
【請求項17】
偏光板上に、請求項1〜16のいずれかに記載の粘着剤からなる層を有することを特徴とする粘着剤付き偏光板。
【請求項18】
剥離シートの剥離層上に設けられた粘着性材料層に、偏光板を貼合した後、剥離シート側から活性エネルギー線を照射することを特徴とする請求項17に記載の粘着剤付き偏光板の製造方法。
【請求項19】
偏光板と位相差板からなる光学フィルムであって、偏光板と位相差板が請求項1〜16のいずれかに記載の粘着剤にて貼合されることを特徴とする光学フィルム。
【請求項20】
2枚の剥離シートの剥離層側に接するように請求項1〜16のいずれかに記載の偏光板用粘着剤を挟持してなる粘着シート。
【請求項21】
請求項20に記載の粘着シートを用いて偏光板と位相差板を貼合する光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−235568(P2006−235568A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244880(P2005−244880)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】